説明

ライニング材反転装置

【課題】管ライニング材を収納容器から円滑に反転ノズルに導くことができるライニング材反転装置を提供する。
【解決手段】管ライニング材17が収納容器から引き出されて、導管40を介して反転ノズル10に導かれる。導管には、管ライニング材と接触して接触による摩擦圧を軽減させて管ライニング材を反転ノズルに案内するローラー43が複数設けられる。管ライニング材の進行につれて管ライニング材がローラーと接触し回転することにより、管ライニング材の厚みが増加した場合や、大口径の管ライニング材で重量が増加した場合にも、管ライニング材を円滑に反転ノズルまで案内することができ、管ライニング材の反転が途中で停止してしまうことを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライニング材反転装置、更に詳細には、老朽化した管路の内面にライニングを施して該管路を修復する管ライニング材を反転させるライニング材反転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設された下水管、ガス管、通信ケーブル管、電力ケーブル管等の管路が老朽化した場合、この管路を地中から掘出することなく、その内面にライニングを施して該管路を補修する管ライニング工法が提案され、既に実用に供されている。
【0003】
上記管ライニング工法の1つとして、外表面がプラスチックフィルムで気密的に被覆された管状樹脂吸着材に未硬化の液状硬化性樹脂を含浸せしめて成る管ライニング材を用いて施工されるものが知られており、この工法においては、ライニング反転装置を用いて管ライニング材を流体圧によって管路内に反転挿入した後、該管ライニング材を流体圧によって膨張させて管路の内面に押圧した状態で、管ライニング材に含浸された硬化性樹脂を硬化させている。
【0004】
通常、管ライニング材は、これをリールに巻き取り、リール全体を密閉容器内に配備し、該リールに巻き取られた管ライニング材の一端を外側に折り曲げてこれを密閉容器に接続された反転ノズルの開口端外周に取り付け、密閉容器内に流体圧を作用させて反転させながら管路内に挿入されている。また、管ライニング材は、リールとして密閉容器に収納されるのではなく、平坦状にして折りたたんだ状態で密閉容器に収納されることも行われている(特許文献1)。
【0005】
また、管ライニング材を、密閉容器から反転ノズルまで円滑に移送させるために、ローラーコンベアを用いることが行われている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2003−165158号公報
【特許文献2】特開平10−151671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のライニング材反転装置においては、密閉容器内部のライニング材収納部から反転ノズルに至る通路内を反転中のライニング材が通過する場合、通路内面にライニング材が接触する個所において摩擦が生じ反転の抵抗となっていた。特に、ライニング材の厚みが増加し多くの反転圧力が必要な場合や、大口径のライニング材で重量が増加した場合には、ライニング材の反転が途中で停止してしまうなどの問題があった。特に、ライニング材収納部から反転ノズルまでの通路が長い場合には、これらの欠点が顕著になる。
【0007】
特許文献1では、密閉容器内にガイドローラを設けることによって管ライニング材を反転ノズルに案内するようにしているが、円滑に反転ノズルまで導くためには、管ライニング材を密閉容器内で水中に浮遊させることが必要となり、特に通路が長い場合には、上記問題を解決することができない。また、特許文献2に記載されている構成では、管ライニング材をローラーコンベアの上に載せて搬送するために、動力を必要とする搬送手段が必要となり、高価な構成となる。
【0008】
また、ライニング材のねじれ等により反転が停止した場合には、密閉容器内部のライニング材収納部から反転ノズルに至る通路を取り外し、ライニング材のねじれ等を修正するしかなく、多くの作業人員を要していた。また、通路を取り外す際に、通路構成材とライニング材が接触し、ライニング材を損傷することがあった。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、簡単な構成で、管ライニング材を収納容器から円滑に反転ノズルに導くことができるライニング材反転装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明(請求項1)は、
外表面がプラスチックフィルムで気密的に被覆された管状樹脂吸着材に未硬化の液状硬化性樹脂を含浸せしめて成る管ライニング材を反転させるライニング材反転装置であって、
前記管ライニング材を収納する収納容器と、
管ライニング材を反転させる反転ノズルと、
収納容器から引き出された未反転の管ライニング材を反転ノズルに導く導管と、
前記導管内で管ライニング材と接触して接触による摩擦圧を軽減させて管ライニング材を反転ノズルに案内する案内手段と、
を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明(請求項6)では、導管の一部に、管ライニング材の監視及び/又は管ライニング材の詰まりを直す作業を行うための開口部が設けられ、該開口部が開閉可能な蓋で密閉される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、密閉容器内部の管ライニング材をその収納容器から反転ノズルに導くために導管が設けられ、その導管に、管ライニング材と接触して接触による摩擦圧を軽減させて管ライニング材を反転ノズルに案内する案内手段が設けられる。従って、管ライニング材の厚みが増加した場合や、大口径の管ライニング材で重量が増加した場合にも、また、収納容器から反転ノズルまでの距離が長くても、管ライニング材を円滑に反転ノズルまで案内することができ、管ライニング材の反転が途中で停止してしまうことを回避することができ、また反転時に必要な圧力を低くすることができる。
【0013】
また本発明では、管ライニング材のねじれや詰まり等により反転が停止した場合にも、反転ノズルに至る導管を取り外すことなく、ライニング材のねじれや詰まり等を修正することが可能となる。また、導管の取り外しを回避することができるので、導管の構成部材と管ライニング材が接触しライニング材を損傷することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0015】
図1には、ライニング材反転装置の構成が図示されており、1は密閉容器であって、該密閉容器1は、円筒状の本体2の両端に蓋3,4を着脱可能に取り付けて構成され、その上部には温度計5と圧力計6が取り付けられている。
【0016】
図1及び図2に示すように、一方の蓋3には上から下方に向かって順次給水管7、挿通管8及び排水管9が取り付けられており、他方の蓋4には導管40を介して反転ノズル10が着脱可能に取り付けられている。蓋3,4は複数のボルト11とナット12によって本体に着脱可能に取り付けられる。
【0017】
導管40は、その断面が矩形状となっていて、湾曲しており、水平に延びる水平部40a、湾曲部40b、垂直に延びる垂直部40cからなる一体部材として構成されている。導管40の水平部40aは、蓋4の突起部4aに、ボルト11とナット12と同様な取り付け手段13を介して着脱可能に取り付けられ、また導管40の垂直部40cは、ボルトナットによる取り付け手段14により反転ノズル10の円錐部10aと着脱可能に取り付けられている。また、反転ノズル10はノズル部10bを有し、円錐部10aは、ボルトナットによる取り付け手段15によりノズル部10bと着脱可能に取り付けられている。
【0018】
また、密閉容器1内には、図1に示すように、上面が開口する矩形ボックス状の収納容器16が配置され、この収納容器16には、平坦状を成す管ライニング材17がエンド端側から交互に折り畳まれて順次積み重ねされて収納される。通常、管ライニング材17を収納した収納容器16は、氷水内又は保冷庫内で保冷された状態で施工現場まで搬送され、作業が開始される約1時間〜10時間前に氷水内又は保冷庫内から取り出され、蓋4を外すことにより密閉容器1内の所定位置に搬入される。
【0019】
ここで、管ライニング材17は、図3に示すように、外表面がプラスチックフィルム21で気密的に被覆された管状樹脂吸着材22に未硬化の液状硬化性樹脂を含浸せしめて構成される。尚、プラスチックフィルム21としてはポリエチレン、塩化ビニル、ビニロン、ポリウレタン、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン−ナイロン共重合体等のフィルムが用いられ、管状樹脂吸着材22としてはポリエステル、ナイロン、アクリル、ビニロン等の不織布が用いられる。又、管状樹脂吸着材22に含浸される未硬化の液状硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられるが、この熱硬化性樹脂にはシリカ(アエロジル)、タルク、酸化マグネシウム等の充填剤が添加され、該熱硬化性樹脂の温度25℃における粘度は30poise以上、揺変度は1.5以上に設定されている。
【0020】
また、図4に示すように、導管40の底部には、導管のほぼ全長にわたって複数のローラー(回転体)43が等間隔に設けられている。ローラー43は、図5(A)、(B)に示すように、導管40の側壁に固定された軸43aを中心に回転自在に取り付けられており、管ライニング材17が導管40に導かれて進行すると、管ライニング材17がローラー43と接触し、管ライニング材の進行につれて各ローラー43が回転するので、ローラー43は、管ライニング材17に作用する接触による摩擦圧を軽減させる案内手段となり、管ライニング材17を反転ノズル10に円滑に案内することができる。
【0021】
管ライニング材17が収納容器16と共に密閉容器1内に搬入されると、図1に示すように、密閉容器1の一端開口部に蓋4を複数のボルト11とナット12によって取り付ける。尚、この蓋4の突起部4aには、導管40の一端が取り付けられ、また導管40の他端には、反転ノズル10が取り付けられる。
【0022】
又、図1に示す状態では、蓋3に取り付けられた前記給水管7には給水ホース23の一端が取り付けられ、挿通管8はカップリング24によって塞がれ、排水管9には排水ホース25の一端が取り付けられている。ここで、排水ホース25の途中にはバルブ26が設けられている。
【0023】
ところで、前記給水ホース23の他端は水槽27に接続されており、その途中にはバルブ28と給水ポンプ29が設けられている。又、水槽27には水が収容されており、この水の温度は温度計30によって検出される。
【0024】
他方、図1において、31は地中に埋設された通信ケーブル管等の既設管路であって、この管路31内には、スタートライナー(不図示)がエアー圧等によって予め反転挿入されている。その管路31をライニングするために、ライニング反転装置が、マンホール20の近くに配備され、反転ノズル10がマンホール20に垂直方向に挿入される。
【0025】
ここで、密閉容器1内に配備された管ライニング材17の一端は、図示のように外側に折り返されてガイドローラー18を介して、導管40に導かれ、反転ノズル10の開口端外周にバンド33によって取り付けられる。その状態で給水ポンプ29が駆動されて水槽27内の水が給水ホース23から密閉容器1内に供給される。尚、このとき、排水ホース25に設けられたバルブ26は閉じられ、給水ホース23に設けられたバルブ28は開けられている。
【0026】
上述のように、密閉容器1内に水が供給されると、管ライニング材17は水圧によって反転しながら管路31内に順次挿入される。このとき、収納容器16から引き出される未反転の管ライニング材17はガイドローラ18から、導管40内に進み、各導管内のローラー43と接触するが、各ローラー43は、管ライニング材17の進行につれて管ライニング材と接触し、その接触圧で回転する。従って、導管内で管ライニング材17が接触する部分で摩擦が軽減し、管ライニング材17はスムーズに反転ノズル10へと導かれる。
【0027】
また、本実施例では、熱硬化性樹脂に充填剤を添加し、該熱硬化性樹脂の温度25℃における粘度を30poise以上、揺変度を1.5以上に設定し、これにより、小径で厚さの厚い管ライニング材17の反転のために反転圧力を高めたり、反転を容易にするために管ライニング材17の温度を上げた場合であっても、管ライニング材17の先端から熱硬化性樹脂が絞り出されることがなく、管ライニング材17の反転作業を何ら問題なくスムーズに行うことができるようにしている。
【0028】
なお、管ライニング材17は、垂直方向から水平方向に向きを変えられて、管路31に挿入されるので、その向きを変えるのを容易にするために、図1で仮想線で示したようなシューター45が設けられる。
【0029】
このように、管ライニング材17が水圧によって管路31内に反転挿入されると、該管ライニング材17が温水によって加温され、管ライニング材17に含浸された熱硬化性樹脂が熱によって硬化するため、管路31の内面は、硬化した管ライニング材17によってライニングされて修復される。
【0030】
ところで、管ライニング材17は、水平状態で密閉容器から引き出されて、導管40の屈曲部40bで垂直方向に向きを変えられる。従って、この部分で管ライニング材は、ねじれたり、あるいは詰まりが発生することが多くなる。そこで、本実施例では、導管の一部、特に屈曲部40bに、管ライニング材17の進行状態を監視したり、あるいは管ライニング材の詰まりを直す作業を行うための開口部が設けられる。
【0031】
この開口部は、図4、図6(B)に示したように、導管40の屈曲部40bの枠部41に矩形状の開口部41aを形成することにより設けられる。また、この開口部41aは、図6(A)に示したように、枠41に設けたねじ孔41bにねじ止め可能な開閉蓋42により密閉して覆うことか可能となっている。蓋42には、透明部42bが形成されているので、作業者はこの蓋42の透明部42bを介して搬送される管ライニング材の状態を常時監視することができ、管ライニング材が、ねじれたり、あるいは詰まりが生じた場合には、蓋42のねじを取り外し、取手42aを手にもって蓋42を取り外し、開口部41aから管ライニング材のねじれや詰まり等を修正することが可能になる。また、この開口部41aは、最もねじれや詰まりが発生しやすい導管40の屈曲部40bに形成されるので、その作業効率を高めることができる。
【0032】
また、上述した実施例では、案内手段はローラー43として形成されているが、図5(C)に示したように、導管40底面に設けられ、管ライニング材の進行方向に延びる、例えばテフロン(商品名)のような摩擦係数の小さい材質の案内レール46から構成することもできる。また、この案内レールは、図5(D)に示したように、細片状の複数の案内レール47とし、これらを管ライニング材の進行方向と垂直な方向に等間隔に並べて配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係るライニング反転装置の構成を示す構成図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】管ライニング材の横断面図である。
【図4】導管及び反転ノズルの側面図である。
【図5】(A)は図4のB−B線断面図、(B)は図4のC−C線断面図、(C)は案内手段の他の実施例を示すC−C線断面図に対応する断面図、(D)は案内手段の更に他の実施例を示すC−C線断面図に対応する断面図である。
【図6】(A)は導管の屈曲部に設けた開口部を塞ぐ蓋の図4のD方向から見た正面図、(B)は蓋を取り外したときの正面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 密閉容器
10 反転ノズル
16 収納容器
17 管ライニング材
40 導管
41a 開口部
42 蓋
43 ローラー
46、47 案内レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面がプラスチックフィルムで気密的に被覆された管状樹脂吸着材に未硬化の液状硬化性樹脂を含浸せしめて成る管ライニング材を反転させるライニング材反転装置であって、
前記管ライニング材を収納する収納容器と、
管ライニング材を反転させる反転ノズルと、
収納容器から引き出された未反転の管ライニング材を反転ノズルに導く導管と、
前記導管内で管ライニング材と接触して接触による摩擦圧を軽減させて管ライニング材を反転ノズルに案内する案内手段と、
を有することを特徴とするライニング材反転装置。
【請求項2】
前記案内手段が、前記導管の底面に設けられた複数の回転体からなり、管ライニング材の進行につれて管ライニング材が前記回転体と接触し回転することを特徴とする請求項1に記載のライニング材反転装置。
【請求項3】
前記回転体が導管のほぼ全長にわたって設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載のライニング材反転装置。
【請求項4】
前記案内手段が、導管底面に設けられ、管ライニング材の進行方向に延びる摩擦係数の小さな案内レールから構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のライニング材反転装置。
【請求項5】
前記案内レールが管ライニング材の進行方向と垂直な方向に複数設けられることを特徴とする請求項4に記載のライニング材反転装置。
【請求項6】
前記導管の一部に、管ライニング材の監視及び/又は管ライニング材の詰まりを直す作業を行うための開口部が設けられ、該開口部が開閉可能な蓋で密閉されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のライニング材反転装置。
【請求項7】
前記蓋の少なくとも一部が透明になっていることを特徴とする請求項6に記載のライニング材反転装置。
【請求項8】
前記導管が、ほぼ直角に屈曲した導管であり、水平に引き出された管ライニング材が垂直方向に向きを変えられて反転ノズルに導かれることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のライニング材反転装置。
【請求項9】
前記開口部が、導管の屈曲部に設けられることを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載のライニング材反転装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−35439(P2006−35439A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214155(P2004−214155)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(592057385)株式会社湘南合成樹脂製作所 (61)
【Fターム(参考)】