説明

ライニング配管内の洗浄方法及び洗浄具

【課題】 スラリー配管内面の合成ゴムライニング面に付着したスケールをライニング表面に損傷を与えることなく除去・洗浄すると共に、除去したスケールや発生した濁水の回収を周囲の環境に負荷を与えることなく安全に行え、作業の均質化を図るライニング配管内の洗浄方法を提供せんとする。
【解決手段】 管1内を移動し、内壁の円周面に沿って回転しながら、剥離用ノズル8から管内面に一定角度で高圧水を噴射して付着したスケール16を剥離すると共に、管の中心線に沿って剥離方向へ高圧水を粉砕用ノズル9から噴射して剥離したスケール16Aを粉砕し、さらに、前記剥離・粉砕のための噴射方向と反対方向へ高圧洗浄水を洗浄用ノズル7で噴射してスケール16Bを管1内から排出し洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配管内面の付着物の除去に関するものである。
さらに詳しく言えば、例えば火力発電所等の排煙脱硫用のライニング配管(スラリー配管とも言う。)内面の合成ゴムライニング面に付着したスケールをライニング表面に損傷を与えることなく除去・洗浄する方法及び洗浄具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
火力発電所等の排脱スラリー配管の内面には合成ゴムライニングが施されており、その内面に付着するスケールを定期的に除去する必要が生じる。
その除去方法として、従来はハンドガンを駆使してスケールの除去・洗浄を行っているが、内面の合成ゴムライニングは弾性に富んだ材質であるため、スケールを除去する際に合成ゴムライニング面にまで影響が及んで損傷を与えると、ライニング効果を得られず、通過内容物の流動性の低下で搬送機能の阻害となるのである。
【0003】
また、ハンドガンでは、長尺管のスケールを除去するのは困難であり、一定の噴射角度の維持も難しく作業の均質化が図れない問題もあった。
【0004】
ハンドガンを利用しない方法として、特開2003−245620では、ノズルから所定の角度をもって、管内面に噴射素材を噴射することが開示されている。
圧搾空気により噴射素材を被管内面に所定の角度で吹きつけてスケールを除去するもので、噴射素材に粉末重曹を用いて管内表面を均一に処理せんとするものである。
【特許文献1】特開2003−245620
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明はライニング配管内面の合成ゴムライニング面(以下「ライニング面」とする。)に付着したスケールをライニング面に損傷を与えることなく除去・洗浄すると共に、除去したスケールや発生した濁水の回収を周囲の環境に負荷を与えることなく安全に行い、作業の均質化を図るライニング配管内の洗浄方法及び洗浄具を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のライニング配管内の洗浄方法は、管内を移動し、内壁の円周面に沿って回転しながら、剥離用ノズルから管内面に一定角度で高圧水を噴射して付着したスケールを剥離すると共に、管の中心線に沿って剥離方向へ高圧水を粉砕用ノズルから噴射して剥離したスケールを粉砕し、さらに、前記剥離・粉砕のための噴射方向と反対方向へ高圧洗浄水を洗浄用ノズルで噴射してスケールを管内から排出し洗浄することを特徴とし、また、洗浄用ノズルの高圧水噴射方向の管先端口から積極的に吸引して粉砕したスケールを洗浄水と共に管外へ排出するようにしても良い。
【0007】
また、本発明のライニング配管内の洗浄具は、主供給パイプから高圧水供給側へ先端が開口した2本の分岐パイプが設けられ、一方の分岐パイプは主供給パイプに対して外側へ傾斜角をもち、他方の分岐パイプは平行に設置され、主供給パイプの高圧水供給側にはホース連結部を有し、主供給パイプ先端の開口部に洗浄用ノズルを、傾斜角をもつ分岐パイプ先端の開口部に剥離用ノズルを、平行な分岐パイプ先端の開口部に粉砕用ノズルを夫々装着したことを特徴とするものである。
【0008】
洗浄具は、主供給パイプの両端部近くに放射状に腕を突設し、先端にライニング配管の内周に当接する回転子を設け、及び/又は、主供給パイプの両端部近くに、先端がライニング配管の内周に近接するガイドバーを放射状に突設したものとしても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明のライニング配管内の洗浄方法は、管内を移動し、内壁の円周面に沿って回転して行うため、管内を万遍なく均質に高圧水を内面に噴射することができる効果を有する。
また、管内面に一定角度の高圧水を剥離用ノズルから噴射するものであるから、管の内周面に直角に噴射圧が当たらず、噴射圧を高くしてもライニング面の損傷を回避できると共に、噴射角度を有するためスケールを剥ぎ取る作用効果が得られるのである。
【0010】
そして、剥離されたスケールを粉砕用ノズルで粉砕しておき、剥離・粉砕のための噴射方向と反対方向へ洗浄用ノズルで高圧洗浄水を噴射することで、管内を洗浄すると共に、管内に残存する粉砕して小さくなったスケールを管内から確実に排出することができる効果を有する。
【0011】
さらに、洗浄用ノズルの高圧水の噴射方向が、剥離用ノズル及び粉砕用ノズルとの噴射方向と逆方向であるため、反力作用を奏することとなって、構成部材や移動の負荷を軽減する効果が得られ、作業性が向上すると共に作業が安定し、高圧水を噴射しながらの洗浄具の移動も容易となる効果も期待できるのである。
そして、洗浄用ノズルの高圧水噴射方向の管先端口から積極的に吸引することで、粉砕したスケールを洗浄水と共に管内から確実に排出できる効果が得られるものである。
【0012】
本発明のライニング配管内の洗浄具は、主供給パイプから高圧水供給側へ先端が開口した2本の分岐パイプが設けられ、一方の分岐パイプは主供給パイプに対して外側へ傾斜角をもち、他方の分岐パイプは平行に設置されているため、互いに一体的に連結され互いの位置関係も固定して安定したものになる効果を有する。
【0013】
そして、主供給パイプの高圧水供給側にはホース連結部を有し、主供給パイプ先端の開口部に洗浄用ノズルを、傾斜角をもつ分岐パイプ先端の開口部に剥離用ノズルを、平行な分岐パイプ先端の開口部に粉砕用ノズルを夫々装着したものであるから、主供給パイプに高圧水を供給するホースを連結すれば洗浄用ノズル、各分岐パイプの剥離用ノズル及び粉砕用ノズルの全てに高圧水を供給でき、夫々の方向へ噴射できる効果を得られる。
【0014】
更に、主供給パイプを軸として回転を与えれば分岐パイプの開口部の剥離用ノズル及び粉砕用ノズルも回転し、管内を万遍なく均質に高圧水を噴射できる効果を得られるのである。
【0015】
また、主供給パイプの両端部近くに腕を放射状に突設し、先端にライニング配管の内周に当接する回転子を設けることで、主供給パイプを配管の中心線上へ確実に位置決めできると共に、回転力が付与されると、主供給パイプを軸として滑らかで安定した回転となる効果を得られる。
【0016】
そして、主供給パイプの両端部近くに、先端がライニング配管の内周に近接するガイドバーを放射状に突設したものは、洗浄具の移動時に内壁等にスケールが引っ掛るため、剥離残しや、未洗浄部分の確認ができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施の形態の構成図の概略を示す正面図であり、洗浄対象であるライニング配管1の両端部に、ライニング配管と同一の内径を有するケーシング2A及び2Bが互いに当接する端部フランジをボルト・ナットで着脱可能に取付けてある。
一方のケーシング2Aの開口部には吸引ホース18が装着され、吸引機(図示せず)に連結されて積極的に吸引作用をなす。
他方のケーシング2Bの外部には、高圧水を供給する高圧水発生装置13が配置され、発生した高圧水を供給する供給ホース14の先端部は、回転駆動装置15を経由して他方のケーシング2B内を通過し、ライニング配管1内を洗浄する洗浄具3の主供給パイプ4の基部と連結されている。
【0018】
図1では、ライニング配管1のケーシング2A側からケーシング2B側(左から右方向)へ洗浄具3が移動して洗浄するため、準備段階ではケーシング2A内に洗浄具3が挿置されている。
より具体的には、先ず、ケーシング2Bをライニング配管1に取り付けた後、回転駆動装置15を経由した供給ホース14をケーシング2B内及びライニング配管1内を通して洗浄具3の主供給パイプ4の基部と連結し、洗浄具3を挿置してケーシング2Aをライニング配管1に取り付けることになる。
【0019】
ケーシング2A、2Bは、作業中に高圧水が外部へ流出しないように、また、供給ホース14の取り扱いや吸引ホース12の取り付けを容易とし、作業の安全と周囲への不測の害の発生を防止するものである。
【0020】
回転駆動装置(変速機能付、又は変速機と構成する)15を経由した供給ホース14は、例えば、スイベルジョイントを介して供給ホース14の先方部分に回転力を与えるものとし、任意の回転数に制御可能とするものである。
当然に、供給ホース14は長さ方向を軸として回転(自転)可能で、且つその回転力を洗浄具3へ伝達できる素材及び構成を有するものを選択するものとなる。
【0021】
洗浄具3は、主供給パイプ4から高圧水供給側(ケーシング2B側)へ先端が開口した2本の分岐パイプ5,6が形成され、一方の分岐パイプ5は主供給パイプ4に対して外側へ傾斜角θをもち、他方の分岐パイプ6は平行に設置されている。
主供給パイプ4の高圧水供給側にはホース連結部4Bを有し、主供給パイプ4先端の開口部4Aに洗浄用ノズル7を、傾斜角θをもつ分岐パイプ5先端の開口部5Aに剥離用ノズル8を、平行な分岐パイプ6先端の開口部6Aに粉砕用ノズル9を夫々装着してある。
【0022】
また、2本の分岐パイプ5,6が分岐している主供給パイプ4内の当該部には、供給ホース14から供給される高圧水が各ノズル7、8、9へ分配できるように、コック等の分配部品を必要により内装する。
更に、主供給パイプ4の両端部近くに、放射状にライニング配管1の内周に当接する回転子11、11及び、先端がライニング配管1の内周に近接するガイドバー12、12を突設してある。
【0023】
図2は洗浄具3の正面図、図3は左側面図を示す一実施の形態例である。
洗浄具3は、主供給パイプ4の先方部に設けた十字管およびエルボー管を経て高圧水供給側(ケーシング2B側)に2本の分岐パイプ5,6が180度の間隔で設けられている。
当該一方の分岐パイプ5は主供給パイプ4に対して外側へ傾斜角θをもち、先端の開口部5Aに剥離用ノズル8を有し、他方の分岐パイプ6は平行に設置され、先端の開口部6Aに粉砕用ノズル9を有する。
また、主供給パイプ4の基端である高圧水供給側のホース連結部4Bに供給ホース14の先端部が連結され、他方の主供給パイプ4先端の開口部4Aに洗浄用ノズル7を有する。
【0024】
したがって、ライニング配管1の内面に一定角度θの高圧水を剥離用ノズル8から噴射するものであるから、管の内周面のスケール16を剥ぎ取る作用を奏するであり、剥離されたスケール16Aを粉砕用ノズル9で粉砕しておき、剥離・粉砕のための噴射方向と反対方向へ洗浄用ノズル7で高圧洗浄水を噴射することで、管内に残存する粉砕して小さくなったスケール16Bを管内から排出するものである。
【0025】
さらに、洗浄用ノズル7の高圧水の噴射方向が、剥離用ノズル8及び粉砕用ノズル9との噴射方向と逆方向となるため、反力作用を奏して構成部材や洗浄具3の移動の負荷を軽減するため、作業性が向上すると共に作業が安定し、高圧水を噴射しながらの洗浄具3の移動も容易となるのである。
【0026】
分岐パイプ5の外側への傾斜角θは、剥離用ノズル8から噴射してライニング配管の内面に付着したスラリーに当たる入射角θとなるものであり、ライニングの損傷と吐出圧力及び入射角θの関係を試験した結果を示す図4の表から、傾斜角θは5度以下にすると良好な洗浄結果が得られるものとなる。
【0027】
また、主供給パイプ4の両端部近くに、主供給パイプ4から放射状に腕10、10を突設し、先端にライニング配管1の内周に当接する回転子11、11を設けると共に、先端がライニング配管1の内周に近接するガイドバー12、12を主供給パイプ4から放射状に突設している。
腕10,10及びガイドバー12、12の四部材は、互いに干渉しないように45度の間隔で放射配設してあり、ホース連結部4Bの側では分岐パイプ5、6とも干渉しない角度で配設されている。
そして、図中17は主供給パイプ4と分岐パイプ5、6の位置関係を固定する固定用補助バーである。
【0028】
ライニング配管1の内周に当接する回転子11、11により、主供給パイプ4をライニング配管1の中心線上へ確実に位置決めできると共に、回転力を付与されると主供給パイプ4を軸として滑らかで安定した回転作用をえられるのである。
また、先端がライニング配管の内周に近接するガイドバー12、12によって、洗浄具3の移動時に内壁に残存しているスケール16が引っ掛り移動の抵抗となるため、再度の洗浄の要否を確認できるものである。
【0029】
ライニング配管1の洗浄は、前記説明の通り図1の状態に準備をし、高圧水発生装置13を作動して高圧水の各ノズルへの供給、回転駆動装置15により洗浄具3の回転及び吸引装置による吸引を開始し、高圧水の圧力を制御し、ライニング配管1の内周面のスケール16を剥ぎ取り、剥離されたスケール16Aを粉砕し、一方のケーシング2Aの開口部の吸引ホース18で粉砕して小さくなったスケール16Bを管外へ排出するものである(図5)。
【0030】
そして、間欠的に供給ホース14をケーシング2Bから引き出して、洗浄具3を進めライニング管1内のスケール16を剥離して行くのである。
この時の洗浄具3を進める距離は、前記ガイドバー12、12から伝わる抵抗の存否で知得できるものとなる。
そして、この引き出しは人手によってでもよく、供給ホース14の回転を抑え(必要なら停止し)、回転部分の供給ホース14が弛む等で回転に支障が出る場合は回転駆動装置15の位置を変えて対応すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施の形態の構成図の概略を示す一部縦断正面図である。
【図2】洗浄具の正面図である。
【図3】洗浄具の側面図である。
【図4】傾斜角の実験結果を示す表である。
【図5】スケールの洗浄作業を示す断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 ライニング配管
2A、2B ケーシング
3 洗浄具
4 主供給パイプ
4A、5A、6A 開口部
4B ホース連結部
5、6 分岐パイプ
7 洗浄用ノズル
8 剥離用ノズル
9 粉砕用ノズル
10 腕
11 回転子
12 ガイドバー
13 高圧水発生装置
14 供給ホース
15 回転駆動装置
16 スケール
16A 剥離スケール
16B 粉砕スケール
17 固定用補助バー
18 吸引ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管内を移動し、内壁の円周面に沿って回転しながら、剥離用ノズルから管内面に一定角度で高圧水を噴射して付着したスケールを剥離すると共に、管の中心線に沿って剥離方向へ高圧水を粉砕用ノズルから噴射して剥離したスケールを粉砕し、さらに、前記剥離・粉砕のための噴射方向と反対方向へ高圧洗浄水を洗浄用ノズルで噴射してスケールを管内から排出し洗浄することを特徴とするライニング配管内の洗浄方法。
【請求項2】
洗浄用ノズルの高圧水噴射方向の管先端口から積極的に吸引して粉砕したスケールを洗浄水と共に管外へ排出することを特徴とする請求項1記載のライニング配管内の洗浄方法。
【請求項3】
主供給パイプから高圧水供給側へ先端が開口した2本の分岐パイプが設けられ、一方の分岐パイプは主供給パイプに対して外側へ傾斜角をもち、他方の分岐パイプは平行に設置され、主供給パイプの高圧水供給側にはホース連結部を有し、主供給パイプ先端の開口部に洗浄用ノズルを、傾斜角をもつ分岐パイプ先端の開口部に剥離用ノズルを、平行な分岐パイプ先端の開口部に粉砕用ノズルを夫々装着したことを特徴とするライニング配管内の洗浄具。
【請求項4】
主供給パイプの両端部近くに放射状に腕を突設し、先端にライニング配管の内周に当接する回転子を設けた請求項2記載のライニング配管内の洗浄具。
【請求項5】
主供給パイプの両端部近くに、先端がライニング配管の内周に近接するガイドバーを放射状に突設した請求項2又は3記載のライニング配管内の洗浄具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−279401(P2008−279401A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127739(P2007−127739)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(507155993)株式会社山崎塗装店 (1)
【Fターム(参考)】