説明

ライノウイルスの感染の治療および予防のための薬学的組成物

本発明は、VP1、VP2、VP3およびVP4からなる群から選択されるライノウイルスのカプシドタンパク質の1番目〜8番目のアミノ酸残基を包含している、最小で8個および最大で50個のアミノ酸残基からなる少なくとも1つのペプチドを含んでいる薬学的組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ライノウイルスの感染の治療および予防のための薬学的組成物に関する。
【0002】
ライノウイルスはエンベロープを有していないウイルスであって、20面体カプシド内に一本鎖RNAゲノムを含んでいるウイルスである。ライノウイルスはピコルナウイルス(Picornaviridae)科に属する。上記ピコルナウイルス科にはエンテロウイルス属(ポリオウイルス、コクサッキーウイルスAおよびB、エコーウイルス、番号が付されたエンテロウイルス、パレコウイルス)およびヘパトウイルス属(A型肝炎ウイルス)が包含される。110以上の血清型が同定されている。
【0003】
ライノウイルスは通常、エアロゾルを介して、または直接的接触によって感染する。接種の最初の部位(primary site)は鼻粘膜であり、より少ない程度で結膜も関連し得る。ライノウイルスは気道上皮に付着し、局所的に広がる。上記ライノウイルスの付着において主要なヒトライノウイルスレセプターは細胞間接着分子1(ICAM−1)である。損傷に対するヒトの防衛システムの自然な反応はICAM−1に関連し、当該ICAM−1は内皮細胞と白血球との結合を支持する。ライノウイルスはICAM−1を付着のためのレセプターとして用いることによってICAM−1を巧みに利用する。
【0004】
気道におけるウイルスに対する局所的な炎症反応は、鼻汁、鼻詰まり、くしゃみ、および喉の炎症を引き起こし得る。鼻上皮の損傷は起こらないが、サイトカインおよび他の介在物質の産生によって炎症が媒介される。
【0005】
鼻汁中のヒスタミン濃度は増加しない。疾患の3〜5日目までに、化学誘引物質(例えばインターロイキン−8)に対する反応として感染部位に移動してきた多核白血球によって鼻汁が粘液膿性となり得る。上記疾患の間、鼻粘液線毛輸送は顕著に減少し、数週間に渡って正常に機能しないこともある。分泌性免疫グロブリンAおよび血清抗体は両方とも、上記疾患の治癒および再感染の防止に関連している。
【0006】
ライノウイルスの感染によって引き起こされる風邪は、温暖な気候である9月から4月に最も頻繁に生じる。ライノウイルスの感染は一年中見られるが、秋の間の風邪の発生率の最初の増加および春の終わりの二回目の発生率のピークの主な原因となる。いくつかの研究によって、風邪の発生率は就学前および小学校の年齢の子供において最も高いことが実証されている。上記年齢のグループでは平均して1年あたり3〜8回の風邪が観察され、託児所(daycare)および幼稚園(preschool)に通っている子供ではより高い発生率を示す。関連する多数のウイルス性因子およびライノウイルスの多数の血清型のため、冬の間の各月に新規に風邪を発症する幼い子供は珍しくはない。成人および青年は一般的に1年あたり2〜4回の風邪を発症する。
【0007】
最も一般的なライノウイルスの徴候、すなわち風邪は軽度であり、自然治癒性である。しかし、細気管支炎および肺炎を包含する重度の呼吸器疾患はめったに起こらない。
【0008】
ライノウイルスの感染をワクチン接種によって予防する初期の試みは成功していないため(Mc Cray et al. Nature 329: 736-738 (1987); Brown et al. Vaccine 9: 595-601 (1991); Francis et al. PNAS USA 87: 2545-2549 (1990))、現在のライノウイルスの治療は、鎮痛剤、充血除去剤、抗ヒスタミン剤および鎮咳薬を用いた対症療法に限定されている。ライノウイルスの血清型の多様性および異種の血清型による再感染の間の交差防御の欠如により、ワクチン接種による予防の成功は不可能であると考えられている(Bardin PG, Intern. Med. J. 34 (2004): 358-360)。それゆえ、それぞれの薬学的化合物の発達は主に抗ウイルス性分子(例えばインターフェロンおよび合成抗ライノウイルス化合物)の発達に集中しており、当該抗ウイルス性分子は予防のみではなく治療に用いることもできる。
【0009】
WO 2008/057158は、ヒトライノウイルスのカプシドタンパク質VP1のC末端領域に由来するライノウイルス中和免疫原ペプチドを含んでいるワクチンに関する。しかし、上記文献に開示されているペプチドのいくつかは、幅広いメンバーのライノウイルスの血清型を対象とする抗体の形成を誘導することができる。
【0010】
EP 0 358 485には、40個未満のアミノ酸残基を有しているライノウイルス血清型2のVP2カプシドタンパク質のペプチドを含んでいるT細胞エピトープが開示されている。
【0011】
本発明の目的は、ライノウイルスの感染を治療または予防するためのワクチンとして使用するための薬剤を初めて提供することである。
【0012】
本発明は、VP1、VP2、VP3およびVP4からなる群から選択されるライノウイルスのカプシドタンパク質の1番目〜8番目のアミノ酸残基を包含している、最小で8個および最大で50個のアミノ酸残基からなる少なくとも1つのペプチドを含んでいる薬学的組成物に関する。
【0013】
ライノウイルスのカプシドタンパク質VP1、VP2、VP3およびVP4に由来するペプチドは、上記カプシドタンパク質の最初の8つのN末端アミノ酸残基を含んでおり、ライノウイルス粒子を対象とする抗体のin vivoでの形成を誘導することができるということが判明した。上記少なくとも1つのペプチドは全部で、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個、49個または50個のアミノ酸残基を含んでいてもよい。従って、上記少なくとも1つのペプチドはライノウイルスカプシドタンパク質VP1、VP2、VP3またはVP4のアミノ酸残基1番目〜8番目, 好ましくは1番目〜9番目、1番目〜10番目、1番目〜11番目、1番目〜12番目、1番目〜13番目、1番目〜14番目、1番目〜15番目、1番目〜16番目、1番目〜17番目、1番目〜18番目、1番目〜19番目、1番目〜20番目、1番目〜21番目、1番目〜22番目、1番目〜23番目、1番目〜24番目、1番目〜25番目、1番目〜26番目、1番目〜27番目、1番目〜28番目、1番目〜29番目、1番目〜30番目、1番目〜31番目、1番目〜32番目、1番目〜33番目、1番目〜34番目、1番目〜35番目、1番目〜36番目、1番目〜37番目、1番目〜38番目、1番目〜39番目、1番目〜40番目、1番目〜41番目、1番目〜42番目、1番目〜43番目、1番目〜44番目、1番目〜45番目、1番目〜46番目、1番目〜47番目、1番目〜48番目、1番目〜49番目または1番目〜50番目を含んでいる。
【0014】
上記ペプチドは、ライノウイルスの感染の予防および/または治療においてそれぞれの組成物中で使用され得る。
【0015】
本発明の別の局面は、ライノウイルスの感染を予防および/または治療するための、ライノウイルスの少なくとも1つの全長カプシドタンパク質の少なくとも80個の連続したアミノ酸残基の一続きの配列からなるアミノ酸配列を含んでいる少なくとも1つのポリペプチド(タンパク質)を含んでいる薬学的組成物に関する。
【0016】
驚くべきことに、ライノウイルスの少なくとも1つの全長カプシドタンパク質の少なくとも80個の連続したアミノ酸残基の一続きの配列からなるアミノ酸配列を含んでいる少なくとも1つのポリペプチドを投与することによって、個体において、ライノウイルス(特にライノウイルスのカプシドタンパク質)を対象とする抗体の形成が誘導されることが判明した。
【0017】
本発明の組成物のポリペプチドおよびペプチドは、上述したように、抗体の形成(特にIgAの形成)を誘導する。IgAは粘膜免疫において重要な役割を果たしている。粘膜内層においては、結合する他のタイプの抗体全てと比較してより多くのIgAが産生されている。IgAの分泌形態においては、IgAは、涙液、唾液、腸液および気道上皮からの分泌物を包含する粘液性分泌物において見られる主要な免疫グロブリンである。IgAはまた、血液中において少量見られる。驚くべきことに、本発明に係るペプチドを個体に投与した場合、(他の抗体クラスと比較して)IgAクラスの抗体が主に形成されることがわかった。以上のことは、本発明のペプチドがライノウイルスの感染に対して優れた予防を可能にすることを示している。なぜならライノウイルスの最初の感染経路は気道(特に気道の粘膜)であり、IgAは粘膜免疫において重要な役割を果たしていることが知られているためである。連続したアミノ酸残基の一続きの配列は、好ましくは上記少なくとも1つの全長カプシドタンパク質ののうちの少なくとも90個、100個、110個、120個、150個、200個、250個、260個、270個、280個、290個、またはちょうど全てのアミノ酸残基からなり得る。本発明の特に好ましい実施形態では、連続したアミノ酸残基の一続きの配列は少なくとも90個、特に100個のアミノ酸残基を含んでいる。
【0018】
ライノウイルスは、4つのウイルスタンパクVP1、VP2、VP3およびVP4を含んでいるカプシドからなる。VP1、VP2およびVP3はタンパク質カプシドの主要な部分を形成している。それゆえ、好ましいカプシドタンパク質はVP1、VP2またはVP3である。
【0019】
特に好ましい実施形態では、上記ライノウイルスのカプシドタンパク質はVP1であり、好ましくはヒトライノウイルス89のVP1である。本発明の組成物において使用される特に好ましいポリペプチドは、以下のアミノ酸配列からなる、または以下のアミノ酸配列を含んでいる:
【0020】
【表1】

【0021】
(ヒトライノウイルス89のVP1の1番目〜100番目のアミノ酸残基)。
【0022】
本発明に従って使用されるカプシドタンパク質の例としては、ヒトライノウイルス株1(特に1Aおよび1B)、2、3、6、14、15、16、18、23、25、29、35、37、44、54、72、83、86、89、92およびCが挙げられる。上記アミノ酸配列のそれぞれは以下の表中で特定されている。
【0023】
【表2】

【0024】
【表3】

【0025】
【表4】

【0026】
【表5】

【0027】
【表6】

【0028】
【表7】

【0029】
【表8】

【0030】
【表9】

【0031】
最も好ましいカプシドタンパク質はヒトライノウイルス89に由来する。
【0032】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記ライノウイルスは、ライノウイルス株89およびライノウイルス株14からなる群から選択されるライノウイルス株である。
【0033】
もちろん、本発明のワクチンの交差反応をさらに促進するために、1つ以上のほかのライノウイルスの血清型の1つ以上の他のカプシドタンパク質を上記ワクチン中に使用してもよい(例えば、ヒトライノウイルス89のVP1とヒトライノウイルス14のVP1との組み合わせ)。
【0034】
ライノウイルス株89およびライノウイルス株14のカプシドタンパク質は、約100の公知のライノウイルス株の大部分と交差反応を示す。上記ライノウイルス株の1つに由来する本発明のポリペプチドの投与により、ヒトライノウイルスの血清型の大部分を対象とする抗体(特にIgA)の形成が誘導される。それゆえ、上記ライノウイルス株のカプシドタンパク質に由来するポリペプチドを使用することが特に好ましい。
【0035】
特に好ましい実施形態によれば、上記カプシドタンパク質はヒトライノウイルス89のカプシドタンパク質であり、以下のアミノ酸および核酸配列を含んでいる。
【0036】
【表10】

【0037】
【表11】

【0038】
【表12】

【0039】
【表13】

【0040】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記ライノウイルスのカプシドタンパク質VP1の1番目〜8番目のアミノ酸残基は、NPVENYIDというアミノ酸配列を有している。
【0041】
本明細書で提供される配列情報および先行技術において公知の配列情報によって、本発明において好適に用いられるペプチドを決定することができる。それぞれのアミノ酸の範囲は上述した通りである。
【0042】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、上記少なくとも1つのペプチドは、NPVENYIDSVLNEVLVVPNIQPSTSVSSHAA、および、NPVENYIDSVLNEVLVVPNIQからなる群から選択される。
【0043】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、本発明に係るペプチドは、キャリアーに融合または結合されている。
【0044】
好適なキャリアーは特に限定されるものではないが、Limulus polyphemusヘモシアニン(LPH)、Tachypleus tridentatusヘモシアニン(TTH)、およびウシ血清アルブミン(BSA)、破傷風トキソイドおよびジフテリア毒素、DHBcAg、ポリリボトールリボシルリン酸(polyribotol ribosyl phosphate:PRP)、PncPD11、マルトース結合タンパク質(MBP)並びにナノ粒子製剤(nanoparticle formulations)が挙げられる。一実施形態では、好適な免疫原性キャリアータンパク質はキーホールリンペットヘモシアニンである(KLH)。
【0045】
免疫系を刺激し、ワクチンに対する反応を増加させるために、本発明の組成物は少なくとも1つの薬学的賦形剤、および/または、アジュバントを含んでいる。
【0046】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、上記アジュバントは、ミョウバン、好ましくはリン酸アルミニウムもしくは水酸化アルミニウム、または炭水化物をベースとした粒子(CBP)である。
【0047】
本発明に係る製剤の有効性を高めるために、あらゆる種類のアジュバントが使用され得る。しかしながら、好ましいアジュバントはアルミニウムをベースとした化合物である。他の有用なアジュバントには、脂肪含有化合物または不活性化されたマイコバクテリアが挙げられる。PBCは、例えばEP 1 356 826によって公知である。
【0048】
ミョウバンはIgG分子の形成をもたらすTh2駆動アジュバント(Th2 driving adjuvant)として知られている。しかしながら、驚くべきことに、ミョウバンと本発明の上記少なくとも1つのポリペプチドとを組み合わせて使用すると、結果としてIgGよりもむしろIgAを誘導することが見出された。IgAは粘膜の分泌物において見られる分泌性免疫グロブリンであり、それゆえ、侵入してくるウイルスに対する防御の第1線であるため、IgAの誘導は特に有利である。
【0049】
アジュバントは一般的に、ヒトへの投与に好適であれば異なる形態であってもよい。上記アジュバントのさらなる例としては、鉱物の油エマルジョンもしくは植物由来の油性エマルジョン、鉱物化合物(例えばリン酸アルミニウムもしくは水酸化アルミニウム、またはリン酸カルシウム)、細菌生産物および誘導体(例えばP40(Corynebacterium granulosumの細胞壁に由来する)、モノホスホリルリピドA(MPL:LPSの誘導体)、並びにムラミールペプチド誘導体および当該誘導体の複合体(マイコバイクテリウム成分の誘導体)、ミョウバン、不完全フロイントアジュバント、リポシン、サポニン、スクアレン等が挙げられる(例えばGupta R. K. et al. (Vaccine 11:293-306 (1993)) および Johnson A. G. (Clin. Microbiol. Rev. 7:277-289)参照)。
【0050】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、上記製剤は10ng〜1g、好ましくは100ng〜10mg、特に0.5μg〜200μgの上記ポリペプチドを含んでいる。本発明のポリペプチドは上記の量で哺乳類に投与される。しかし、投与されるポリペプチドの量は治療される被験体の体質(例えば体重)に依存する。さらに、投与される量はまた、投与経路にも依存する。
【0051】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、上記組成物は皮内投与、筋肉内投与、皮下投与、経口投与、直腸投与、膣内投与または経皮投与に適用されるものである。
【0052】
本発明の製剤の好ましい投与方法には、一般的なワクチン接種のために記載および推奨されている全ての標準的な投与レジーム(経口、経皮、静脈内、経鼻、粘膜経由、直腸等)が包含される。しかし、本発明に係る分子およびタンパク質を皮下投与または筋肉内投与することが特に好ましい。
【0053】
本発明の別の局面は上述したペプチドに関する。つまり、本発明のペプチドはVP1、VP2、VP3およびVP4からなる群から選択されるライノウイルスのカプシドタンパク質の1番目〜8番目のアミノ酸残基を包含している最小で8個および最大で50個のアミノ酸残基からなる。
【0054】
本発明のさらなる局面は、上述のように規定されるポリペプチドまたはペプチドの、ライノウイルスの感染の予防および/または治療のための薬物を製造するための使用に関する。
【0055】
上記薬物は、皮内投与、筋肉内投与、皮下投与、経口投与、直腸投与、膣内投与または例えばパッチを貼ることによって経皮投与されることが好ましい。
【0056】
ヒトライノウイルス(HRVs)は、一般的に風邪として知られている急性呼吸器疾患(ARTI)および上気道(URT)感染症の主要な原因である。しかし、上記ウイルスはまた、下気道において増殖することもでき、より重度の気道機能不全の原因となる。重要な一連の証拠が増加していることから、HRVが喘息の悪化(exacerbations)の〜50%の原因となっており、幼児の免疫系を喘息の表現型へと導き得る要因の1つであることが実証されている。喘息へのHRVの関与を示すさらなる証拠は、悪化の季節性に基づいている。HRVの感染は、一年中起こるが、通常は春および秋にピークとなる。また、上気道感染症の季節的パターンと喘息による入院との間には強い相関関係が見出されている。
【0057】
HRVの感染の症状には明確なパターンがないため、HRVsの存在を確認するためだけに臨床検査所(diagnostic laboratory)に譲渡されている。残念なことに、検査が常に利用可能なわけではないため、またはHRVの感染が無害と考えられるため、HRV株をスクリーニングする業務はめったに生じない。現在、ライノウイルスの感染の診断はPCRをベースにした方法によるウイルスの直接的な検出によって主に行われている。しかし、陽性の結果によって属のレベルを超えて特定することはめったにできず、通常は「呼吸ピコルナウイルス(respiratory picornaviruses)」として報告される。株特異的な感染の中和に基づいた一般的に使用されている血清診断はまた、大集団を用いた調査には実用的ではない。それゆえ、HRVの感染の診断のため、およびヒトライノウイルスによって他の呼吸器疾患(例えば喘息)が引き起こされているかどうか決定するために、血清診断技術を改良する必要がある。
【0058】
それゆえ、本発明の別の局面は、哺乳類におけるライノウイルスの感染をin vitroにて診断する方法であって、以下の工程を含んでいる方法に関する:
−哺乳類のサンプルを含んでいる抗体を準備する工程、
−上記サンプルと、ライノウイルス株89またはライノウイルス株14のVP1、VP2、VP3およびVP4からなる群から選択されるライノウイルスのカプシドタンパク質の1番目〜8番目のアミノ酸残基を包含している、最小で8個および最大で50個のアミノ酸残基からなる少なくとも1つのペプチドと、を接触させる工程、
−上記少なくとも1つのポリペプチドに対する抗体の結合が検出された場合に、ライノウイルスの感染を診断する工程。
【0059】
さらに、本発明の別の局面は、哺乳類におけるライノウイルスの感染をin vitroにて診断する方法であって、以下の工程を含んでいる方法に関する:
−哺乳類のサンプルを準備する工程、
−上記サンプルと、ライノウイルス株89および/またはライノウイルス株14の全長カプシドタンパク質の少なくとも80個の連続したアミノ酸残基の一続きの配列からなるアミノ酸配列を含んでいる少なくとも1つのポリペプチドと、を接触させる工程、
−上記少なくとも1つのポリペプチドに対する免疫グロブリンの結合が検出された場合に、ライノウイルスの感染を診断する工程。
【0060】
ライノウイルス株89および14のカプシドタンパク質(特にVP1)を対象とする抗体は、驚くべきことに、幅広い種類のライノウイルス株のカプシドタンパク質に結合することもできる。上記の驚くべき事実は、哺乳類において(好ましくはヒトにおいて)あらゆるライノウイルス株によって引き起こされるライノウイルスの感染を診断するために利用される。それゆえ、本発明の方法は、特異的な血清型とは独立してライノウイルスの感染を診断することができる。上記少なくとも1つのポリペプチドは上述した特性を有している。
【0061】
本発明に係る上記少なくとも1つのポリペプチドは、固相の支持体上に固定されていることが好ましい。上記構成によれば、上記少なくとも1つのポリペプチドに結合している抗体を固相の支持体に対して結合させることができ、分析されているサンプルがライノウイルスのカプシドタンパク質を対象とする抗体を含んでいるかどうか検出することができる。上記抗体の存在はライノウイルスの感染の診断を可能にする。
【0062】
本発明に係る方法では、IgA、IgG、IgMおよび/またはIgEが測定されることが好ましい。
【0063】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記サンプルは血液サンプル、好ましくは血清もしくは血漿、唾液サンプル、神経洗浄液サンプル(neural lavage fluid sample)、または、涙液サンプルである。
【0064】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、上記カプシドタンパク質はVP1、VP2、VP3またはVP4である。
【0065】
本発明の別の局面は、ライノウイルスの感染に関連した、哺乳類における呼吸器疾患をin vitroにて診断する方法であって、以下の工程を含んでいる方法に関する:
−哺乳類のサンプルを含んでいる抗体を準備する工程、
−上記サンプルと、ライノウイルスのVP1ポリペプチド、VP2ポリペプチド、VP3ポリペプチドおよびVP4ポリペプチドまたは当該ポリペプチドのフラグメントと、を接触させる工程、
−上記ポリペプチドに結合している抗体のクラスを決定する工程、ならびに、
−以下の診断を行う工程、
−VP3に特異的なIgG1抗体およびVP4に特異的なIgG1抗体、ならびに、VP3に特異的なIgM抗体が検出された場合の、細気管支炎の診断、
−VP4に特異的なIgG1抗体、ならびに、VP1に特異的なIgA抗体およびVP2に特異的なIgA抗体が検出された場合の、喘息の診断、
−VP4に特異的なIgG1抗体が検出された場合の、クループ(croup)の診断、
−VP1に特異的なIgM抗体が検出された場合の、けいれんの診断、
−VP1に特異的なIgA、VP2に特異的なIgA、VP3に特異的なIgAおよびVP4に特異的なIgAが検出された場合の、二重ウイルス感染(HRV/インフルエンザ)の診断。
【0066】
ライノウイルスVP1、VP2、VP3およびVP4ポリペプチドを対象とする特異的なクラス/アイソタイプの抗体の存在は、個体がどの種類の呼吸器疾患を患っている可能性があるかを示していることが見出された。それゆえ、抗体クラスおよび抗体特異性の決定は、個体における呼吸器疾患の診断を可能にする。特異的な標的に結合する抗体の存在を決定する手段および方法は当該分野において公知である。また、抗体のアイソタイプ/クラスの決定は当業者に知られている。
【0067】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記サンプルは、血液サンプル、好ましくは血清もしくは血漿、唾液サンプル、神経洗浄液サンプル、または、涙液サンプルである。
【0068】
VP1、VP2、VP3および/またはVP4ポリペプチドのフラグメントは、VP1、VP2、VP3およびVP4からなる群から選択されるライノウイルスのカプシドタンパク質の1番目〜8番目のアミノ酸残基を包含している、最小で8個および最大で50個のアミノ酸残基からなることが好ましい。
【0069】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、上記ライノウイルスはライノウイルス株89であり、上記カプシドタンパク質はVP1である。
【0070】
上記ライノウイルスのカプシドタンパク質の上記1番目〜8番目のアミノ酸残基は、NPVENYIDというアミノ酸配列を有している。
【0071】
上記フラグメントは、NPVENYIDSVLNEVLVVPNIQPSTSVSSHAA、および、NPVENYIDSVLNEVLVVPNIQからなる群から選択されることが好ましい。
【0072】
本発明は、以下の図面および実施例によってさらに説明されるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
図1は、1年間にわたって採取されたヒトの血清におけるVP1に対するIgAの反応の季節性を示している。8名のアレルギー患者および6名の非アレルギー患者に由来する血清を冬、春、夏および秋に採集した。また、VP1に特異的なIgA抗体の力価はELISAによって決定され、Y軸上に光学値(optical value)として示されている(OD 405nm)。光学値はヒトの血清における抗体の濃度と対応している。結果はボックスプロットとして示され、値の50%はボックスの中にあり、外れ値ではない値(non-outliers)はバーの間にある。ボックスの中の線は中央値を示している。
【0074】
図2は、調査期間における、ワクチン接種を受けた個体のVP1に特異的なIgAの濃度を示している。VP1に特異的なIgAの力価はELISAによって測定した。献血(blood donation)の日をX軸上に当てはめ、光学的濃度(OD)をY軸上に当てはめている。光学値はヒトの血清におけるIgA抗体の濃度と対応している。
【0075】
図3は、マウスにおけるVP1に特異的なIgA反応を示している。各グループのマウスにVP1抗原を用いて免疫接種した。VP1に特異的なIgAの力価はELISAによって測定され、Y軸上に光学値として示されている(OD 405nm)。光学値はマウスの血清におけるIgA抗体の濃度と対応している。
【0076】
図4は、ヒトライノウイルスの血清型14のVP1を用いた中和試験を示している。
【0077】
図5は、ヒトライノウイルスの血清型89のVP1を用いた中和試験を示している。
【0078】
図6は、組み換えVP1タンパク質の精製を示している。(A)89VP1および(B)14VP1は、SDS−PAGE後にクマシーブルーを用いて染色され(左)、ニトロセルロース上でのブロッティング後に抗His6抗体を用いて染色された(右)。分子量(kDa)は左側に示されている。
【0079】
図7は、免疫接種されたウサギおよびマウスの、VP1に特異的な免疫反応を示している。(A)ウサギにおける、89VP1に特異的なIgGおよび14VP1に特異的なIgGの反応。ウサギには89VP1または14VP1を用いて免疫接種した。血清サンプルは、1回目の免疫接種の日(免疫前の血清(pre-immune serum))、ならびに、2回目および3回目の注射の後に3〜4週間の間隔(ボックスの上:免疫血清1;免疫血清2)で採取した。血清の希釈(ウサギα89VP1;ウサギα14VP1)はX軸上に示されている(対数で示された10−3〜10−6)。免疫原(89VP1、14VP1)に対するIgGの反応性はバーとして示されている。(B)5匹のマウスのグループに89VP1を用いて免疫接種した。血清サンプルは、1回目の免疫接種の日(0)および3週間の間隔(w3〜w9)で採取した(X軸)。上記グループのIgG1の反応性はボックスプロットとして示され、値の50%はボックスの中にあり、外れ値ではない値はバーの間にある。ボックスの中の線は中央値を示している。89VP1に対して特異的なIgG1の濃度は光学的濃度の値として示されている(Y軸)。
【0080】
図8は、組み換えVP1に対して作製された抗VP1抗体がライノウイルス由来のVP1およびウイルス全体と反応することを示している。(A)ニトロセルロースにブロッティングされたHRV14タンパク質抽出物および組み換え14VP1を、抗14VP1抗体および対応する免疫前の血清(pre−IS)と共にインキュベートした。分子量(kDa)は左側に示されている。(B)ネガティブ染色後のラベルされたウイルス調整物の電子顕微鏡写真。固定されたHRV89を抗89VP1IgG抗体と共にインキュベートし、直径10nmのコロイド金粒子に結合した二次IgG抗体プローブによって結合部位を視覚化した。左側の顕微鏡写真は、4つの金粒子(GP)に結合したウイルス粒子(VP)の詳細を示している。右側の顕微鏡写真は免疫前のIgを用いた対照調製物を示している。バー:左側の顕微鏡写真、50nm;右側の顕微鏡写真、100nm。
【0081】
図9は、組み換え14VP1タンパク質または14VP1由来のペプチドに対するウサギの抗血清の反応性を示している。ウサギには、組み換え14VP1、PVP1A、PVP1BまたはPVP3A(ボックスの上側)を用いて免疫接種し、血清を14VP1(上側)または89VP1(下側)に接触させた。上記血清の希釈はX軸に示されている(対数で示された10−3〜10−6)。14VP1に特異的なIgGおよび89VP1に特異的なIgGの濃度は光学的濃度の値と対応している(バー:Y軸)。
【0082】
図10は、HRV14が抗14VP1抗体によって中和されたことを示している。100TCID50のHRV14を、図に示されているような抗血清の連続した希釈物を用いて、37℃で2時間、予めインキュベートした。上記の混合物を24ウェルプレート内のサブコンフルエント(subconfluent)なHeLa細胞に加えた。34℃で4日後、残った細胞を、クリスタルバイオレットを用いて染色した。Pre−IS、免疫前の血清が対照として用いられた。
【0083】
図11は、(A)調査したHRVのVP1配列の系統樹を示している。VP1配列はデータバンクから検索し、ClustalWを用いて当該配列の類似性を分析した。(B)VP1に特異的なそれぞれの抗体による、HRVの感染の阻害。100TCID50のHRV14を、1:2(a)〜1:16(d)まで2倍ずつ連続して希釈したそれぞれの抗血清の希釈物を用いて、37℃で3時間、予めインキュベートした。上記の混合物を96ウェルプレート内のサブコンフルエントなHeLa細胞に加えた。34℃で3日間の培養後、クリスタルバイオレットを用いて細胞を染色し、洗浄し、染色液を溶解させた。ODは560nmで読み取られた。4つの独立した実験における平均値±標準誤差が示されている。
【0084】
図12は、精製されたVP1、VP2、VP3およびVP4のhisタグタンパク質を含んでいる、クマシーブルーで染色された12.5%SDS−PAGEゲルを示している(レーン1:5μlの分子マーカー;レーン2:10μlのVP1;以下それぞれ、10μlのVP2;10μlのVP3;10μlのVP4)。
【0085】
図13は、HRVに特異的なPCR試験の結果、陽性であると判定された患者由来のヒトの血液において検出されたVP1、VP2、VP3およびVP4に対するIgA、IgM、IgG1およびIgG2の反応を示している。ライノウイルス由来のカプシドタンパク質に特異的な4つの抗体について、57人の患者の血清を試験した。力価はELISAによって測定され、光学値としてY軸上に示されている(OD 405nm)。光学値はヒトの血清における抗体の濃度と対応している。上記の結果はボックスプロットとして示され、値の50%はボックスの中にあり、外れ値ではない値はバーの間にある。ボックスの中の線は中央値を示している。
【0086】
図14Aは、HRVプロトタイプ株のVP1アミノ酸配列のマルチプルアラインメントを示している。配列はProtein Databaseから検索し、GeneDocを用いて並べた後に手動で編集した。上記アラインメントは異なる種および異なるレセプターグループに属するHRV血清型を示している:HRV37および89はメジャーグループジーナスAであり、HRV3、14および72はメジャーグループジーナスBであり、HRV1A、18および54はK−タイプであり、HRV1A、HRV29および44はマイナーグループジーナスAである。黒い正方形は、HRV89株のVP1に由来する3つのエピトープを意味している。
【0087】
図14Bは、HRVに特異的なPCR試験の結果、陽性であると判定された患者由来のヒトの血液において検出されたEp_1、Ep_2およびEp_3に対するIgA、IgM、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4の反応を示している。VP1由来のエピトープに特異的な6つの抗体について、57人の患者の血清を試験した。力価はELISAによって測定され、光学値としてY軸上に示されている(OD 405nm)。光学値はヒトの血清における抗体の濃度と対応している。上記の結果はボックスプロットとして示され、値の50%はボックスの中にあり、外れ値ではない値はバーの間にある。ボックスの中の線は中央値を示している。
【0088】
図15は、組み換えVP1、VP2、VP3およびVP1由来のエピトープに対するモルモットIgGの交差反応を示している。しかし、当該図15は(診断のために使用される)抗原の認識のみに関する。図15は各ウイルスの中和の証拠ではなく、交差防御を示している。異なるHRV株の中和は図11Bに示されている。当該データは相関しているため、HRV89に由来するVP1またはVP1に由来するN末端フラグメントに対する抗体は、中和試験によって調べた場合に他の株も中和すると仮定することができる。
【0089】
図16は、主要なカプシドタンパク質VP1のエピトープマッピングを示している。
【0090】
図17は、HRVに特異的なPCR試験の結果、陽性であると判定された患者由来のヒトの血液において検出された、VP1のN末端エピトープに由来する合成ペプチドに対するIgGの免疫反応を、既知のペプチド(Mc Cray et al., Nature 329 (1987): 736-738)と比較して示している。
【0091】
図18は、HRV/インフルエンザ二重感染の患者における抗体の値に対するROC曲線を示している。
【0092】
図19は、HRVに特異的なPCR試験の結果、陽性であると判定された57人の患者に由来するヒトの血液において検出された、P1由来のペプチド(それぞれ、およそ30個のアミノ酸(図19A)または20個のアミノ酸(図19B)を含んでいる)、またはP1A由来のペプチド(B)(それぞれ、20個のアミノ酸を含んでいる)に対するIgGの反応を示している。IgGの反応性はELISAによって測定され、光学値としてY軸上に示されている(OD 405nm)。光学値はヒトの血清における抗体の濃度と対応している。上記の結果はボックスプロットとして示され、値の50%はボックスの中にあり、外れ値ではない値はバーの間にある。ボックスの中の線は中央値を示している。図20は、抗VP1抗体、抗VP2抗体、抗VP3抗体、抗VP4抗体によるHRVの感染の阻害を示している。10TCID50(A)、100TCID50(B)または1000TCID50(C)のHRVを、1:2〜1:1:128まで2倍ずつ連続して希釈したそれぞれの抗血清の希釈物を用いて、37℃で3時間、予めインキュベートした。上記の混合物を96ウェルプレート内のサブコンフルエントなHeLa細胞に加えた。34℃で3日間の培養後、クリスタルバイオレットを用いて細胞を染色し、洗浄し、染色液を溶解させた。ODは560nmで読み取られた。
【0093】
図21は、14VP1、89VP1および3つの組み換え89VP1フラグメントとのウサギ抗89VP1抗体およびウサギ抗14VP1抗体の反応性を示している。ウサギの血清は1:5000に希釈されており、結合したIgG抗体に対応するA560がY軸上に示されている。
【0094】
〔実施例〕
〔実施例1:異なる季節に測定された3人のアレルギー患者における、VP1に特異的なIgA抗体の反応〕
2006年の冬(win06)、2007年の春(spr)、2007年の夏(sum)、2007年の秋(aut)および2007年の冬(win07)に、血液サンプルを採取した。ELISA実験によって、抗体の力価を測定した。ELISA用のプレート(Nunc Maxisorb,Denmark)を、5μg/mlのVP1(ライノウイルス株89のVP1)にてコーティングするとともに、1:50に希釈したマウスの血清にてインキュベートした。全ての実験を2回行い、ODの平均値(mean OD)を算出した。結合した抗体は、1:1000に希釈されたモノクローナルなマウスの抗マウス ヒトIgA抗体(BD Pharmingen,San Diego,CA,USA)と、次いで、1:2000に希釈されたラットの抗マウスIgG POX結合抗体(Amersham Bioscience)と、を用いて検出した。ODを、ELISA reader(Dynatech,Germany)中で、405nmおよび490nmにおいて測定した。
【0095】
抗体の力価は、季節によって異なるとともに、患者によって異なった。このことは、VP1によって、ライノウイルスへの暴露を判定できることを結論付けている(図1)。
【0096】
〔実施例2:ライノウイルスのVP1タンパク質による、健康なボランティア中での強力なIgA反応の誘導〕
健康なボランティアに対して、ライノウイルスのタンパク質であって、Al(OH)に吸着された完全なVP1分子、を含む製剤を接種した(20μg/注射)。当該ワクチンは、被験者の上腕の皮下に対して3回注射された(0日、21日、42日)。最初のワクチン接種の前、並びに、65日、79日、91日、98日および119日目に、抗原特異的な免疫反応の進行を解析するために、血液を採取した。
【0097】
図2では、ELISA測定によって、VP1に特異的なIgA抗体の増加が証明された。X軸は、血液をサンプリングした日を示し、Y軸は、光学的濃度(Optical density:OD)の値に対応している。VP1に特異的なIgA抗体は、65日目に最大量に達し(OD=0.551)、このとき、免疫前の血清(0日)と比較して、3倍に増加したVP1に特異的な抗体が検出された。65日目の後、IgAの濃度の緩やかな低下が検出された。しかしながら、119日目において、VP1に特異的なIgA抗体の濃度(OD=0.372)は、0日目の濃度(OD=0.195)の略2倍であった。
【0098】
〔実施例3:免疫されたマウスにおける、VP1に特異的なIgA反応〕
VP1に特異的なIgA反応を測定するために、5匹のマウスのグループに対して、3週間の間隔にて、水酸化アルミニウムに吸着させた5μgのVP1抗原を皮下投与した。最初の免疫接種の前の日(0)、および、2回目の免疫接種の後の日(6w)に、尾の血管から血清サンプルを採取した。ELISAによって、VP1に特異的なIgA抗体の濃度を測定した。プレートを、5μg/mlのVP1タンパク質によってコーティングするとともに、1:500に希釈されたマウスの血清を用いて一晩インキュベートした。結合したIgAは、それぞれ、1:1000に希釈されたモノクローナルなラットの抗マウスIgA抗体と、それに続く、1:2000に希釈されたヤギの抗ラットIgG POX結合抗体と、を用いて検出した。ODを、405nmおよび490nmにおいて測定した。全てのELISA実験を2回行い、平均値を算出した。
【0099】
組み換えVP1タンパク質を用いた免疫接種が、マウスにおいて、VP1に特異的なIgA反応を誘導したが、6週間後の抗体濃度の増加は顕著ではなかった(図3)。
【0100】
〔実施例4:風邪感染に対するワクチンのための、ライノウイルス由来のVP1の組み換え体〕
〔材料および方法〕
〔HRV14またはHRV89のVP1 cDNAを含む発現ベクターの構築〕
HRV14(33)の全ゲノムを含んでいるプラスミドを、PCRにて14VP1(HRV14のVP1)を増幅するための鋳型として用いた。以下のプライマーを用いた。つまり、
5’ CGGAATTCCCATGGGCTTAGGTGATGAATTAGAAGAAGTCATCGTTGAGA 3’
5’ GATGGAATTCTCAGTGGTGGTGGTGGTGGTGATAGGATTTAATGTCAC 3’
というプライマーを用いた。
【0101】
制限酵素認識部位(NcoI,EcoRI)に下線を付している。14VP1のコーディング領域(データベース # AY355195)をコードしているcDNAを、プラスミドpET23d(Novagen,Merck Bioscience,Germany)のNcoIサイトおよびEcoRIサイト内へ挿入した。
【0102】
株89のウイルスストックを、「Institute of Virology, Medical University of Vienna」のコレクションから入手した。ウイルスのRNAを、QIAamp viral RNA kit(Qiagen,Germany)を用いて、細胞培養上清から調製し、最終濃度が0.01U/μlとなるように、RNase阻害剤(Boehringer GmbH,Germany)を加えた。Invitrogen社(USA)のSuperScript One Step RT PCR Kitを用いて、RT−PCRによって、89VP1 cDNA(HRV89のVP1)を増幅した。なお、当該増幅には、以下のプライマーを用いた。つまり、
5’ CGGAATTCATTAATATGAACCCAGTTGAAAATTATATAGATAGTGTATTA 3’
5’ CGATTAATTCAGTGGTGGTGGTGGTGGTGGACGTTTGTAACGGTAA 3’
というプライマーを用いた。
【0103】
制限酵素認識部位(EcoRI,AseI)に下線を付している。完全な89VP1のコーディング領域(データベース # AY355270)をコードしているcDNAを、ベクターpET17b(Novagen,Merck Bioscience,Darmstadt,Germany)のNdeIサイトおよびEcoRIサイト内へサブクローニングした。
【0104】
〔組み換え89VP1および組み換え14VP1の、発現および精製〕
E.coli BL21(DE3)(Stratagene,USA)内で、組み換え89VP1、および、組み換え14VP1を発現させた。1mMのIPTGを用いて、5時間、37℃の条件下にてタンパク質の合成を誘導した。6M 塩酸グアニジン、100mM NaHPO、10mM Tris、pH8の溶液中に可溶化させた後で、Ni−NTA affinity matrix(Qiagen,Hilden,Germany)を用いることによって、封入体画分(inclusion body fraction)から、組み換えタンパク質を精製した。洗浄バッファー(100mM NaHPO,10mM Tris−HCl,8M 尿素 pH5.9)を用いてタンパク質を洗浄し、そして、pH3.5である同じバッファーを用いてタンパク質を溶出した。タンパク質の調製物を、尿素の濃度を減少させた複数のバッファーに対して透析し、そして、最後にHOddに対して透析した。SDS−PAGEおよびクマシーブルー染色によって、タンパク質の純度と濃縮度とを確認した。
【0105】
〔合成ペプチドおよびペプチド結合物(peptide conjugates)〕
HRV14に由来するペプチド(PVP1A、PVP1B、および、PVP3A)を、Applied Biosystems(USA) peptide synthesizer Model 433Aにて合成した。なお、当該合成は、HBTU[2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−yl)1,1,3,3 テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスファート]活性剤を用いるFmoc(9 フルオレニル メトキシ カルボニル)法を用いて行った。以下のペプチドを、前段階のHPLCによって90%よりも高い純度にまで精製し、これらが所望のものであることを、質量分析法によって確認した。つまり、
PVP1A:VVQAMYVPPGAPNPKEC VP1の147番目〜162番目のアミノ酸(10);
PVP1B:CRAPRALPYTSIGRTNYPKNTEPVIKKRKGDIKSY VP1の256番目〜289番目のアミノ酸(WO2008/057158参照);
PVP3A:KLILAYTPPGARGPQDC VP3の126番目〜141番目のアミノ酸(10)。
【0106】
Imject Maleimide Activated Immunogen Conjugation Kit(Pierce,USA)を用い、製造元の使用説明書にしたがって、精製したペプチドをKLHへ結合させた。
【0107】
〔マウスおよびウサギへの免疫接種〕
ウサギ(Charles River,Kisslegg,Germany)へ免疫接種することによって、14VP1、89VP1、PVP1A、PVP1BまたはPVP3Aに対するウサギ抗体を得た。5匹のマウスのグループに対しても、3週間の間隔で、ミョウバンに結合した5μgの89VP1を皮下に免疫接種し、尾の血管から採血した。
【0108】
〔ELISA実験〕
ELISAプレートを、5μg/mlの89VP1または14VP1にてコーティングした。マウスの血清を1:500に希釈し、ウサギの血清を1:10〜1:10に希釈した。1:1000に希釈した、アルカリホスファターゼが連結したモノクローナルなマウスの抗マウスIgG1抗体(Pharmingen)を用いて、抗原に特異的なマウスのIgG1抗体を検出した。1:2000に希釈した、ペルオキシダーゼが連結したロバの抗ウサギIgG抗体(Amersham Bioscience)を用いて、抗原に特異的なウサギのIgG抗体を検出(developed)した。結合した抗体に対応するODは、ELISA reader(Dynatech,Germany)を用いて、ウサギ抗体に関しては405nmおよび490nmにて測定し、マウス抗体に関しては405nmおよび450nmにて測定した。
【0109】
〔抗VP1抗体の、ブロットされたライノウイルス抽出物、および、ライノウイルスに対する反応性〕
HRVが感染したHeLa細胞に由来する細胞培養上清を、ベンチフュージ(bench fuge)(15.000rpm,10分間,20℃)にて遠心分離し、不溶性粒子を除去した。次いで、0.5mlのPEG(40% v/v ポリエチレングリコール6000,2.4% w/v NaCl,pH7.2)を、2mlのウイルス含有上清へ加えた。上記溶液を、4℃で一晩インキュベートし、その後、室温でベンチフュージにて2,300×rpm、45分間の遠心分離を行った。ペレットを、100μlのPBS中に再懸濁し、そして、50μlのSDSサンプルバッファー中に溶解した。10μlの当該HRV14タンパク質抽出物と、0.5μgの精製した14VP1と、を12%のSDS−PAGEによって分離するとともに、ニトロセルロース膜上にブロットした。同様に準備したブロットを、1:500に希釈したウサギの抗14VP1抗体、または、これに対応する免疫前の血清イムノグロブリンを用いてインキュベートした。結合した抗体を、125Iにてラベルしたロバの抗ウサギIgGを用いて検出し、オートラジオグラフィーによって可視化した。
【0110】
金免疫電子顕微鏡のために、再懸濁したウイルスの沈殿物の試料(4.2μl)を、カーボンにてコーティングされたプラズマ洗浄された銅製のグリッド上にピペットで取り、空気乾燥させた。5分後に、紙フィルターを用いて、残っている液体を除去した。次いで、上記グリッドを、以下のバッファー中で、うつぶせにしてインキュベートした(室温のモイストチャンバー)。つまり、初めに、1%(w/v)のBSAを含むpH7.4のPBS、次いで、1%(w/v)のBSAを含むpH8.2のTris バッファーを用いた。
【0111】
次いで、以下のインキュベーション工程を行った。つまり、(a)5%(w/v)BSAにて5分間;(b)OD28nmが0.6になるように調製したプロテインGにて精製した抗VP1 Igまたは免疫前のIgにて45分間;(c)6×PBSバッファーにて各5秒間;(d)6×Tris バッファーにて各5秒間;(e)10nmの直径を有するコロイド様の金粒子に結合したヤギの抗ウサギIg(Plano,Wetzlar,Germany)をTris バッファー中に1:20で希釈したものにて30分間;(f)6×Tris バッファーにて各5秒間;(g)6×蒸留水にて各5秒間。グリッド上で酢酸ウラニルの飽和溶液をピペッティングすることによって、ラベリングの後で、ネガティブ染色を行った。1分後に、湿った紙フィルターを用いて余剰のネガティブな染色を除去した。次いで、風によってグリッドを乾燥させ、当該グリッドを、高解像度のCCDカメラを備えたPhilips EM 410 transmission electron microscopeを用いて観察した。165,000x、または、240,000xの倍率にて、顕微鏡写真を撮った。
【0112】
〔HRV中和試験〕
ライノウイルスのストックと、HRVに対して感受性であるHela細胞の「Ohio」株(Stott EJ and Tyrrell DA, Arch. Gesamte Virusforsch. 1968; 23:236-244.)と、を用いた。24ウエルプレート中にHela細胞を播き、略90%コンフルエンス(confluence)にまで増殖させた。第1の実験のセットでは、培地中のHRV14(100 TCID50)の300μlの試料を、300μlのウサギの抗血清(抗14VP1、抗PVP1A、抗PVP1B、若しくは、PVP3A)、または、対応する免疫前の血清(希釈なし、若しくは、1:2〜1:32に希釈)を用いて2時間、37℃にてインキュベートし、そして、当該試料を、細胞へ加えた。当該試験では、1%のFCSおよび40mMのMgClを含んでいるMEM−Eagle培地(Invitrogen,USA)を、希釈液として用いた。湿気を帯びた5%のCO雰囲気下にて34℃にてプレートをインキュベートし、3日後に、クリスタルバイオレットを用いて生存細胞を染色した。96ウエルプレート中で、交差中和試験(Cross-neutralization tests)を行った。Hela細胞を、2%のウシ胎仔血清、30mMのMgCl、および、1mMのグルタミン(感染培地)を含む最小必須培地(minimal essential medium:MEM)中に播き、略70%コンフルエンスにまで、37℃で一晩増殖させた。HRV(100μlの感染培地中で、100 TCID50)を、100μlの、希釈していない抗血清の各々、および、これらを同じ培地にて2倍に希釈した一連のもの、と混合した。3時間、37℃にてインキュベートした後、細胞をこれらの溶液によって覆い、34℃、3日間のインキュベーションを続けた。培地を除去し、クリスタルバイオレット(水中に1%)にて10分間、細胞を染色した。水を用いて洗浄した後、プレートを乾燥させ、1時間攪拌しながら、30μlの1%SDS中で染色液を溶解させた。そして、細胞防御(cell protection)を、plate readerにて、560nmにおけるODとして定量化した。
【0113】
〔結果〕
〔HRV89およびHRV14に由来する組み換えVP1タンパク質の、発現および精製〕
HRV89の組み換えVP1(89VP1;図6A)、および、HRV14の組み換えVP1(14VP1;図6B)を、これらのC末端にHis6−tagを付した状態で、E.coli中で発現させた。そして、これらを、1工程のニッケルアフィニティークロマトグラフィーによって、可溶化した封入体から精製した。SDS−PAGEにてクマシーブルー染色を行うと、精製されたタンパク質のバンドは、略34kDaに現れた。組み換えタンパク質89VP1および組み換えタンパク質14VP1は、これらのC末端にあるヘキサヒスチジンタグ(右側のレーン:図6)により、抗His−tag抗体と特異的に反応した。
【0114】
89VP1および14VP1は、動物において、VP1に特異的な免疫反応を誘導する。組み換え89VP1および組み換え14VP1によってウサギに対して免疫接種をすると、VP1に特異的なIgG反応が誘導された(図7A)。2回目の免疫接種の後で10−5の血清希釈まで検出された抗体、および、3回目の免疫接種の後で10−6の血清希釈まで検出された抗体に関して、89VP1に対する免疫反応は、14VP1に対する免疫反応よりも強かった。14VP1に特異的なIgG反応は、2回目の免疫接種の後では、10−3の血清希釈まで検出可能であり、3回目の免疫接種の後では、10−4の血清希釈まで検出可能であった(図7A)。VP1に特異的な抗体反応は、ミョウバンに吸着したVP1タンパク質を用いてマウスを免疫接種した場合にも得られた。89VP1に特異的なIgG1抗体は、1回目の免疫接種の後で既に検出され、2回目および3回目の免疫接種の時に増加し続けた(図7B)。
【0115】
〔組み換えVP1タンパク質に対して作製した抗体の、ウイルス由来のVP1および完全なビリオンに対する反応性〕
組み換えVP1タンパク質、天然のウイルス由来のVP1、および、ウイルス全体を用いた免疫接種によって誘導される抗体の反応性を、イムノブロッティングおよび電子顕微鏡の各々で試験した。代表例として、ニトロセルロースにブロットされたHRV14タンパク質および14VP1に対する、ウサギの抗14VP1抗体の結合、および、免疫前のIgの結合を図8Aに示す。組み換え14VP1に対して作製された抗体は、略34kDaである天然の14VP1および組み換えの14VP1と反応したが、免疫前のIgは反応しなかった(図8A)。抗89VP1抗体のHRV89に対する特異的な結合を、金免疫電子顕微鏡法を用いて視覚化した。固定化したビリオンを、抗89VP1抗体、および、金が結合した二次抗体へ接触させると、略10%のウイルス粒子が、1個から最大5個のコロイド金粒子によって覆われていることが観察された(図8B)。免疫前のIgを用いた対照とする調製物では、ビリオンに対する金の付着が全く観察されなかった。なお、2,3個の金粒子が存在したが、これらは、ウイルス粒子と結合していなかった(図8B;右側のパネル)。
【0116】
〔組み換え14VP1を用いたウサギの免疫接種によって生じる、KLHに結合したHRV14に由来するペプチドを免疫接種した場合よりも高い、14VP1に特異的な抗体および89VP1に特異的な抗体の力価〕
ワクチン候補になり得るものとして先に記載したKLHに結合されたペプチドに対して、抗体を作製した。抗ペプチド血清は、ペプチドに特異的な抗体の高い力価(PVP1A:10−3;PVP1B:10−5;PVP3A:10−5)を有していた。しかしながら、組み換え14VP1に対して作製した抗血清と比較した場合、これらは、14VP1タンパク質と弱く反応するのみであるとともに、89VP1と弱い交差反応を示した(図9)。最も著しくは、組み換え14VP1に対して作製した抗血清は、14VP1および89VP1と同程度の反応性を示した。VP1タンパク質に対する抗血清は、ペプチドの抗血清よりも少なくとも10倍強く、両方のウイルスタンパク質と反応した(図9)。
【0117】
〔14VP1に特異的な抗体による、ペプチドに特異的な抗体よりも良好な、HeLa細胞に対するHRVの感染の阻害〕
次いで、組み換え14VP1タンパク質に対して作製したウサギのIgG抗体が、HeLa細胞に対するHRVの感染を阻害し得るか否か、検討した。HRV14を用いて行った1セットの細胞防御試験の結果を、図10に示す。14VP1抗体が存在すると、抗血清を1:32に希釈するまで、100 TCID50において、HRV14の投与(challenge)による細胞死を阻害した。
【0118】
14VP1に由来するペプチドに対する抗体および完全な14VP1に対する抗体の、ウイルス感染に対する細胞防御能力も解析した。抗14VP1血清、抗PVP1B血清、または、抗PVP3A血清の連続希釈物(希釈なし、または、1:2〜1:32に希釈)を、HRV14と共にインキュベートし、そして、HeLa細胞へ添加した。3つの全ての抗ペプチド血清の細胞感染を阻害する能力は、互いの間で似ていた。抗PVP1Aおよび抗PVP1Bの1:8の希釈物、および、抗PVP3Aの1:4の希釈物において、CPEの明確な減少が観察された。同程度の感染の阻害(換言すれば、部分的なCPE(partial CPE))が、抗14VP1血清を1:32に希釈するまで観察された。このことは、ウイルス感染を阻害する上で、後の抗血清(latter antiserum)の方が、略8倍、効果が高いことを示している(表1)。
【0119】
【表14】

【0120】
表1に、14VP1およびHRV14に由来するペプチドに対して作製した抗体による、感染の中和を示す。抗14VP1抗体、抗PVP1A抗体、抗PVP1B抗体、または、抗PVP3A抗体の希釈物(希釈なし、または、1:2〜1:32に希釈)を、100 TCID50のHRV14と予めインキュベーションし、これを、HeLa細胞へ加えた。観察されたウイルスの中和効果、および、細胞変性効果(cytopathic effects:CPE)を、以下のように記載した。+++:完全な中和; ++:最小CPE; +:部分的なCPE; +/−:略完全なCPE; −:完全なCPE。
【0121】
〔組み換えVP1タンパク質に対して作製した抗体が示す、遠縁(distantly related)のHRV株に対する交差防御(cross-protection)〕
図11Aに、交差防御試験に用いたライノウイルスのタイプの進化上の関係を示す。これらは、異なる種、および、異なるレセプターグループに属するように選ばれている。つまり、HRV37およびHRV89は、メジャーグループジーナスA(major group genus A)であり、HRV3、HRV14およびHRV72は、メジャーグループジーナスB(major group genus B)であり、HRV1A、HRV18およびHRV54は、K−タイプ(換言すれば、VP1のHIループ中にリシンが存在するメジャーグループHRV(major group HRVs))であり、HRV29およびHRV44は、マイナーグループジーナスA(minor group genus A)である。抗89VP1抗体および抗14VP1抗体は共に、半分のHRV血清型(HRV serotypes)のHeLa細胞への感染を阻害した。なお、当該阻害は、ウイルスの進化上の関係とは無関係であるとともに、濃度依存的であった(図11B)。興味深いことに、抗14VP1抗体は、抗89VP1抗体よりも強く、HRV89の感染を阻害し、一方、抗89VP1抗体は、HRV14の感染のみを弱く阻害した(図11B)。両方の抗血清は、著しく、関連が弱いHRVとの広範な交差反応を示した(図11Aと比較)。
【0122】
〔結論〕
ライノウイルスの感染に対するワクチンによる防御は、ライノウイルスによって引き起こされる喘息の悪化を軽減するために有用であり得る。HRVに由来するVP1カプシドタンパク質を、幾つかの原因に対する、潜在的なワクチン抗原として検討した。HRV14の結晶構造を明らかにしたRossmann等の研究は、HRVの、ヒトの上皮細胞上に存在する自身のレセプターへの結合に、VP1が決定的に関与していることを示している。5コピーのVP1が、キャニオンと呼ばれる窪みを形成すること、および、ICAM−1レセプターが当該キャニオンの中心部内へ結合すること、が見出されている。その上、ウイルスコート内の自然突然変異に関する研究により、HRV14の表面上の4つの中和免疫原性サイト(neutralizing immunogenic (NIm) sites)が同定された。更なる研究によって、VP1タンパク質上に存在する上記4つの抗原部位のうちの2つに対する抗体が、細胞の付着を阻害することが示された。
【0123】
HRV89およびHRV14に由来する完全なVP1タンパク質は、系統学的に遠いHRV−A種とHRV−B種とに属するが、これらの各々を、E.coli内で発現させ、その後で精製した。アラインメントには、ClustalW program(http://www.ebi.ac.uk/clustalw)を用い、89VP1と14VP1との間で、わずかに、45%のヌクレオチドにおける同一性および41%のアミノ酸における同一性が見出された。組み換え14VP1および89VP1を、1つの工程で、C末端のHis−tagを利用したニッケルアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。金免疫電子顕微鏡で示したように、89VP1タンパク質と同様に、組み換え14VP1を用いたマウスおよびウサギの免疫接種は、ウイルスおよび無傷のウイルスから天然のVP1を識別する、VP1に特異的な抗体反応の進行を誘導した。
【0124】
VP1タンパク質によって得られる抗体反応を、ワクチンの候補として先に記載したHRV14 VP1およびVP3に由来するペプチドによって誘導される抗体反応と比較するとともに、HRV14内のICAM−1付着部位の一部分である、VP1タンパク質のC末端に存在するPVP1Bペプチドによって得られる抗体反応と比較した。抗ペプチド血清よりも抗HRV14 VP1血清の方が、VP1とより強く反応すること、および、抗HRV14 VP1血清は、より高い中和力価を示すことが明らかになった。完全なタンパク質に対して作製された抗体の中和能力がより高いことは、完全なタンパク質に対して作製された抗血清はVP1タンパク質上の幾つかの異なるエピトープを認識するが故に、ペプチドに特異的な抗体よりも高い親和力を示し得るという事実に起因していると考えられる。
【0125】
89VP1と14VP1との間には、ヌクレオチドのレベルで45%、アミノ酸のレベルで41%という、比較的低い配列の同一性しかない。それにもかかわらず、これらの株の各々に由来する組み換えVP1タンパク質に対して作製された抗体が、メジャーグループおよびマイナーグループに属する様々な異なるライノウイルス株の培養HeLa細胞への感染を阻害することが見出された。後者の発見は、重要であり得る。というのも、このことは、幾つかのライノウイルス株に由来するVP1タンパク質を組み合わせることによって、広範囲に交差防御ができる効果的なHRVワクチンを作製することが可能であることを示している。このようなワクチンの効果は、別のカプシドタンパク質(例えば、VP2、VP3および/またはVP4)を加えることによって、改良することも可能である。後者は、交差防御をも誘導するので、近年、注目を集めている。ライノウイルスの組み換えカプシドタンパク質に基づいたワクチンの主要な利点は、外来の宿主(例えば、E.coli)内におけるラージスケールの組み換え体の発現により、適当なコストにて、制御された条件下でワクチン抗原を容易に製造し得ることにある。広範囲に交差防御ができるHRVワクチンは、ライノウイルスによって引き起こされる喘息の発作に苦しんでいる患者のワクチン接種にとって特に有用であり得、喘息の悪化を軽減し得る。
【0126】
〔実施例5:HRV89のVP1、VP2、VP3およびVP4 cDNAを含むベクターの構築〕
HRV89のVP1、VP2、VP3およびVP4をコードしているcDNAは、コドンがE.coliにとって適しており、3’末端に6個のヒスチジン残基を付加した状態で、合成によって作製された。pET−27b(ATG Biosynthetics,Germany)のマルチクローニングサイトのNdeI/XhoIフラグメント内へ、完全な遺伝子を挿入した。その結果生じた構築物を、p89VP1ベクター、p89VP2ベクター、p89VP3ベクター、p89VP4ベクター、VP1遺伝子産物、VP2遺伝子産物、VP3遺伝子産物、および、VP4遺伝子産物と名付けた。VP1、VP2、VP3およびVP4のDNA配列を、ヌクレオチド配列決定および二重消化によって確認した。VP1、VP2、VP3およびVP4のDNA配列を、図11に示す。
【0127】
〔実施例6:VP1、VP2、VP3およびVP4の組み換え体の発現および精製〕
組み換えカプシドタンパク質の発現を達成するために、Escherichia coliの株であるBL21(DE3)をp89VP1、p89VP2、p89VP3またはp89VP4の各々を用いて形質転換した。そして、当該形質転換体を、100μg/mlにてカナマイシンを含んでいるLBプレート上に播いた。100mg/Lにてカナマイシンを含んでいる250mlのLB培地へ、1つのコロニーを植菌した。当該培養物を、光学濃度(600nm)が0.6になるまで増殖させ、最終濃度が1mMになるようにIPTGを加えることによって、タンパク質の発現を誘導した。3500rpm、40C、10分間の遠心分離によって、細胞を回収した。Ni−NTAを用いたQiagenのプロトコールを用いて、精製を行った。10mlの6M 塩酸グアニジン中で4時間、変性条件下で、細胞の沈殿物を再懸濁した。遠心分離(20分間、18000rpm)の後、上清を、2mlのNi−NTAと共に更に2時間インキュベートした。次いで、懸濁液をカラムに加え、当該カラムを10mlの洗浄バッファー(8M 尿素,100mM NaHPO4,10mM Tris−HCl pH6.1)を用いて2回洗浄し、その後、12mlの溶出バッファー(8M 尿素,100mM NaHPO4,10mM Tris−HCl pH3.5)を用いて溶出した。尿素のモル濃度を低下させる透析を行うことによって、再生を達成した。
【0128】
図12に示すように、SDS−PAGEによって、組み換えタンパク質の純度とサイズと、を解析した。推定タンパク質サイズが33.6kDaであるタンパク質のバンドがVP1に対応し、推定タンパク質サイズが30.8kDaであるタンパク質のバンドがVP2に対応し、推定タンパク質サイズが27.8kDaであるタンパク質のバンドがVP3に対応し、推定タンパク質サイズが8.3kDaであるタンパク質のバンドがVP4に対応する。タンパク質のサイズを、MALDI−TOF解析によっても確認した。
【0129】
〔実施例7:MBP−VP1エピトープ融合タンパク質を発現するコンストラクトのクローニング〕
VP1をコードするcDNAを、VP1に由来するエピトープをPCRによって増幅するための鋳型として用いた(表I)。pMalc4XベクターのEcoRIおよびBamHI制限酵素認識部位(表I中の下線)を、E.coliのmalE遺伝子(当該遺伝子は、マルトース結合タンパク質(MBP)をコードする)の下流側にPCR産物を挿入するために用いた。これによって、MBP融合タンパク質を発現することができる(New England BioLabs)。VP1に由来するエピトープのためのcDNAの挿入をヌクレオチド配列決定によって確認した。なお、遺伝子産物を、Ep_1、Ep_2、および、Ep_3と呼ぶ(図14A)。
【0130】
【表15】

【0131】
【表16】

【0132】
〔実施例8:MBP融合タンパク質の発現および精製〕
実施例6に記載したように、組み換えの融合タンパク質(Ep_1、Ep_2、Ep_3)を、E.coli株であるBL21(DE3)内で発現させた。マルトースに対するMBPの親和性を利用して、精製を行った。封入体の分画を、8M 尿素、100mM NaHPO、10mM Tris−HClを用いて可溶化させるとともに、カラムバッファー(20mM Tris,200mM NaCl,1mM EDTA pH=7.4)に対して透析した。透明な溶解物を、平衡化されたアミロースレジンアフィニティーカラムへ加え、60mlのカラムバッファーによって2回洗浄し、その後、10mMのマルトースを含む20mlのカラムバッファーを用いて溶出した。
【0133】
抗VP1ウサギ血清を用いたウエスタンブロット解析によって、融合タンパク質が所望のものであることを確認した。
【0134】
〔実施例9:HRVに特異的なPCR試験の結果、陽性であると判定された患者に由来する血液中の、VP1に特異的な抗体、VP2に特異的な抗体、VP3に特異的な抗体、および、VP4に特異的な抗体の検出〕
ヒトの血液中の、VP1に特異的な抗体、VP2に特異的な抗体、VP3に特異的な抗体、および、VP4に特異的な抗体の存在を調べるために、固相酵素免疫検定法(ELISA)を行った。ELISAのプレート(Nunc)を、5μg/mlのライノウイルスに由来するカプシドタンパク質の組み換え体(VP1、VP2、VP3、VP4)を用いてコーティングし、対照としてヒト血清アルブミン(HSA)を用いた。57人のHRV陽性患者に由来する全血を、1:50に希釈した。結合した1:000のヒトIgA、IgM、IgGおよびIgG(BD Pharmingen)を、1:2000のヒツジの抗マウス ペルオキシダーゼ結合抗体(Amersham Bioscience)を用いて検出した。光学値(OD 405nm)を、Y軸に示し、当該光学値は、ヒトの血液中のVP1に特異的な抗体、VP2に特異的な抗体、VP3に特異的な抗体、および、VP4に特異的な抗体濃度(level)に対応している(図13)。HRV陽性の患者では、アイソタイプおよびサブクラスに特異的な免疫反応について、興味深い精巧な特異性が見られた。4種類のウイルスカプシドタンパク質のうち、VP1およびVP2は、主としてIgGおよびIgAによって認識され、VP3およびVP4は、主としてIgMと反応する。これらの結果は、HRVが感染した患者が、好ましくはIgG抗体およびIgA抗体によって、異なるライノウイルス由来タンパク質(VP1、VP2、VP3およびVP4)を認識していることを示している。また、これらの結果は、ライノウイルスによって引き起こされる呼吸器疾患の悪化に苦しむ患者を識別するための、一般的および特別な、ライノウイルスの感染の診断およびモニターに、これらのタンパク質を利用可能であることを示している。
【0135】
〔実施例10:VP1、VP2、VP3およびVP1に由来するエピトープに対する、抗HRV モルモットIgGの反応性〕
HRV89の組み換えカプシドタンパク質およびVP1に由来するエピトープが、様々な異なるライノウイルス株と交差反応するか否かを調べるために、5μg/mlの各抗原を用いてELISAプレートをコーティングした。27種類のライノウイルス株(異なる種、および、異なるレセプターグループに属している)に対して作製したモルモットの血清を、1:1000に希釈した。抗原に特異的なIgGを、1:2000に希釈したヤギの抗モルモット ペルオキシダーゼ結合抗体(Jackson ImmunoResearch)を用いて検出した。結合した抗体に対応するODを、ELISA readerによって、405nmおよび490nmにて測定した。対照として、抗HRV89血清および抗モルモット血清(Sigma)を用いた(図15)。
【0136】
試験された株の略半数に対して作製した血清中で、抗VP1 IgGの高い力価が検出された。また、抗VP1抗体の濃度が高い血清中で、抗Ep_1 IgGの力価の上昇が検出された。これらの発見は、HRVの感染(特に、気道疾患(airway diseases)との関連において)の診断にとって重要な暗示を含んでいる。というのも、これらの発見は、VP1、および、完全なタンパク質の殆どN末端の領域に存在するVP1のエピトープが、メジャーグループに対して作製した抗モルモット血清によってのみならず、マイナーグループのライノウイルスに対して作製した血清によっても認識されることを示しているからである。
【0137】
〔実施例11:様々な患者の臨床データを用いたHRVに特異的な抗体の反応の比較〕
VP1に特異的な抗体、VP2に特異的な抗体、VP3に特異的な抗体およびVP4に特異的な抗体の反応と種々の臨床症状との間に相関関係を見出すことが可能かどうかを調べるために、「Mann-Whitney」検定を用いた単変量解析を利用した(p値<0.05であれば陽性であると見なす)。以下の臨床データについて考慮した:
・熱
・けいれん
・性
・クループ
・HRV PCRおよびインフルエンザPCR
・妊娠期間
・鼻炎
・咳
・煙への曝露
・喘鳴(Wheeze)
・喘鳴(Whistle)
・気管支拡張薬の投与
・喘息
・細気管支炎。
【0138】
有意な統計的関係が以下の間に見出された:
・VP1に特異的なIgMおよびけいれん
・VP4に特異的なIgG1およびクループ
・VP1、VP2、VP3およびVP4に特異的なIgA、ならびにHRV/インフルエンザ二重陽性PCR
・VP3およびVP4に特異的なIgG1m、VP3に特異的なIgM、ならびに細気管支炎
・VP4に特異的なIgG1、および、VP1およびVP2に特異的なIgA、ならびに喘息
・VP1に特異的なIgG2、および、VP3およびVP4に特異的なIgA、ならびに煙への曝露。
【0139】
次に、多変量解析を行った。基本的に当該試験では、臨床データを様々な方法でグループ化してから、単変量解析と同様に抗体の値と比較する。仮説が正しいとされたグループ(p<0.05)は以下の2グループのみである:
グループ1:
喘息/細気管支炎/けいれん/クループ
グループ2:
喘息、細気管支炎、ウイルス陽性PCR、けいれん、クループ。
【0140】
グループ2は、統計的に有意である種々の結果を生じた。当該結果は、単変量および多変量解析において非常に重要であると考えられるウイルス二重感染の存在の影響を主に受けていた。VP2に特異的なIgMについては、ウイルス二重感染とけいれんとの間に関係があり、一方、VP1に特異的なIgAについては、ウイルス二重感染と喘息との間に関係が見出された。
【0141】
さらに、抗体の濃度がHRV/インフルエンザ二重感染に対する生物学的マーカーとして使用され得ることが見出された。図20は、二重感染の患者におけるIgの値に対するROC曲線を示している。仮説において統計的な有意性があるだけではなく(生物学的マーカーとしてのIgの値)、VP1、VP2、VP3およびVP4に特異的なIgAに対する閾値を設定できる可能性もある。
【0142】
上記結果に基づけば、ライノウイルスの感染および当該感染と呼吸器疾患との関連性の診断のために血清検査を発展させることが可能であると想定される。
【0143】
〔実施例12:主要なカプシドタンパク質VP1の抗原決定基のマッピング〕
HRV89の組み換えVP1は、ヒトの血液サンプルにおいて免疫学的に最も重要な表面タンパク質であることがわかっている(図13)。それゆえ、3つのVP1に由来するフラグメントを、鋳型としてVP1をコードしているcDNAを用いたPCRによって増幅し、マルトース結合タンパク質(MBP)のC末端に融合させた。VP1に由来するフラグメントを含んでいるMBP融合タンパク質(それぞれ、およそ100個のアミノ酸を含んでいる(図14A))を、E.coliに発現させた。上記融合タンパク質をアフィニティークロマトグラフィーによって精製し、SDS−PAGEによって分析した。抗MBPウサギ血清および抗VP1ウサギ血清を用いたイムノブロッティングによって、融合タンパク質の完全性を確認した(データは示されていない)。エピトープに特異的な抗体がヒトの血液中に見出されるかどうか、および、どの抗体のサブクラスが同定され得るかを評価するために、精製されたMBP融合タンパク質を用いた。図14Bに示されているように、主要なIgGエピトープは、タンパク質全体の最初の100個を含んでいるN末端組み換えVP1フラグメントに位置していた。IgAについては、促進された反応性が検出されたが、一方、IgM、IgG、IgGおよびIgGについては反応性が見られなかった(図14B)。エピトープの特異性をさらに分析するために、VP1のN末端に由来する種々のペプチド(それぞれ、およそ30個のアミノ酸(図19A)または20個のアミノ酸(図19B)を含んでいる)を合成した。その後、上記ペプチドを使用して、HRVに感染した患者における抗体反応の発生を調べた。両方の実験において、主要なIgG1のエピトープは、VP1タンパク質の最初の32個のアミノ酸(図19A)または15個のアミノ酸(図19B)中にも位置していた。
【0144】
本実施例および図19において参照されるアミノ酸配列は以下のものである:
VP1 HRV89の1番目〜100番目のアミノ酸残基(P1と呼ばれる)
M N P V E N Y I D S V L N E V L V V P N I Q P S T S V S S H A A P A L D A A E T G H T S S V Q P E D M I E T R Y V I T D Q T R D E T S I E S F L G R S G C I A M I E F N T S S D K T E H D K I G K G F K
【0145】
【表17】

【0146】
VP1 89HRVのP1Aに由来するペプチド
1.P1a
N P V E N Y I D S V L N E V L V V P N I Q
2.P1b
V V P N I Q P S T S V S S H A A P A L D
3.P1c
A P A L D A A E T G H T S S V Q P E D M
4.P1d
Q P E D M I E T R Y V I T D Q T R D E T
5.P1e
T R D E T S I E S F L G R S G C I A M I
6.P1f
C I A M I E F N T S S D K T E H D K I G
7.P1g
H D K I G K G F K T W K I S L Q E M A Q
【0147】
〔実施例13:組み換えカプシドタンパク質に対して作製された抗体による、HeLa細胞へのHRVの感染の阻害〕
組み換えVP1、VP2、VP3およびVP4カプシドタンパク質に対するウサギIgG抗体がHeLa細胞へのHRVの感染を阻害し得るかどうかについて調べた。1セットの実験の結果が図19に示されている。抗VP1、抗VP2、抗VP3および抗VP4の連続した希釈物(1:2〜1:128)を、10TCID50、100TCID50および1000TCID50のHRV89と共にインキュベートし、HeLa細胞に加えた。10TCID50のHRV89を用いて試した場合、4つの全ての抗血清が細胞への感染を阻害する能力を示した。より多量のウイルスを使用した場合、抗VP1、抗VP2および抗VP4において、CPEの顕著な減少が見られた。
【0148】
以上のことは、VP1に対して作製された抗体だけではなく、VP2およびVP4に対して作製された抗体もHRVの感染からHeLa細胞を保護することができることを示唆している(図20)。それゆえ、種々の組み換えカプシドタンパク質の混合物からなるワクチンは、他のHRV株に対して、より広範な交差反応を示す可能性があることが想定され得る。
【0149】
〔実施例14:14VP1、89VP1および3つの組み換え89VP1フラグメントとの、ウサギ抗89VP1抗体および抗14VP1抗体の反応性〕
ウサギ抗HRV14VP1血清および抗HRV89VP1血清の特異性を確認するために、HRV89由来のVP1の3つの組み換えフラグメントと同様に、HRV14および89に由来する、精製された組み換えVP1タンパク質を用いたELISA実験を行った。抗HRV14VP1抗体はVP1、ならびに、aa1〜100(実施例12を参照)、aa101〜200およびaa201〜293にわたる3つのVP1フラグメントと交差反応するが、抗HRV89VP1抗体に比べて、ずっと低い力価を有することがわかっている。上記の文脈において、注目すべきことに、HRV14およびHRV89に由来するVP1を用いた免疫接種によって得られた抗VP1血清は、異なった形で、89VP1の上記の組み換えフラグメントと反応した。従って、後者の抗血清は、14VP1に対して作製された抗血清に比べて、より多くのエピトープと反応するIgGを含んでいると考えられる。さらに、以上のことは、VP1に由来するフラグメントを用いれば、遠縁のライノウイルスに対する抗体を検出することが可能であるという仮説を支持する。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】1年間にわたって採取されたヒトの血清におけるVP1に対するIgAの反応の季節性を示している。8名のアレルギー患者および6名の非アレルギー患者に由来する血清を冬、春、夏および秋に採集した。また、VP1に特異的なIgA抗体の力価はELISAによって決定され、Y軸上に光学値(optical value)として示されている(OD 405nm)。光学値はヒトの血清における抗体の濃度と対応している。結果はボックスプロットとして示され、値の50%はボックスの中にあり、外れ値ではない値(non-outliers)はバーの間にある。ボックスの中の線は中央値を示している。
【図2】調査期間における、ワクチン接種を受けた個体のVP1に特異的なIgAの濃度を示している。VP1に特異的なIgAの力価はELISAによって測定した。献血(blood donation)の日をX軸上に当てはめ、光学的濃度(OD)をY軸上に当てはめている。光学値はヒトの血清におけるIgA抗体の濃度と対応している。
【図3】マウスにおけるVP1に特異的なIgA反応を示している。各グループのマウスにVP1抗原を用いて免疫接種した。VP1に特異的なIgAの力価はELISAによって測定され、Y軸上に光学値として示されている(OD 405nm)。光学値はマウスの血清におけるIgA抗体の濃度と対応している。
【図4】ヒトライノウイルスの血清型14のVP1を用いた中和試験を示している。
【図5】ヒトライノウイルスの血清型89のVP1を用いた中和試験を示している。
【図6】組み換えVP1タンパク質の精製を示している。(A)89VP1および(B)14VP1は、SDS−PAGE後にクマシーブルーを用いて染色され(左)、ニトロセルロース上でのブロッティング後に抗His6抗体を用いて染色された(右)。分子量(kDa)は左側に示されている。
【図7A】免疫接種されたウサギおよびマウスの、VP1に特異的な免疫反応を示している。(A)ウサギにおける、89VP1に特異的なIgGおよび14VP1に特異的なIgGの反応。ウサギには89VP1または14VP1を用いて免疫接種した。血清サンプルは、1回目の免疫接種の日(免疫前の血清(pre-immune serum))、ならびに、2回目および3回目の注射の後に3〜4週間の間隔(ボックスの上:免疫血清1;免疫血清2)で採取した。血清の希釈(ウサギα89VP1;ウサギα14VP1)はX軸上に示されている(対数で示された10−3〜10−6)。免疫原(89VP1、14VP1)に対するIgGの反応性はバーとして示されている。
【図7B】免疫接種されたウサギおよびマウスの、VP1に特異的な免疫反応を示している。(B)5匹のマウスのグループに89VP1を用いて免疫接種した。血清サンプルは、1回目の免疫接種の日(0)および3週間の間隔(w3〜w9)で採取した(X軸)。上記グループのIgG1の反応性はボックスプロットとして示され、値の50%はボックスの中にあり、外れ値ではない値はバーの間にある。ボックスの中の線は中央値を示している。89VP1に対して特異的なIgG1の濃度は光学的濃度の値として示されている(Y軸)。
【図8A】組み換えVP1に対して作製された抗VP1抗体がライノウイルス由来のVP1およびウイルス全体と反応することを示している。(A)ニトロセルロースにブロッティングされたHRV14タンパク質抽出物および組み換え14VP1を、抗14VP1抗体および対応する免疫前の血清(pre−IS)と共にインキュベートした。分子量(kDa)は左側に示されている。
【図8B】組み換えVP1に対して作製された抗VP1抗体がライノウイルス由来のVP1およびウイルス全体と反応することを示している。(B)ネガティブ染色後のラベルされたウイルス調整物の電子顕微鏡写真。固定されたHRV89を抗89VP1IgG抗体と共にインキュベートし、直径10nmのコロイド金粒子に結合した二次IgG抗体プローブによって結合部位を視覚化した。左側の顕微鏡写真は、4つの金粒子(GP)に結合したウイルス粒子(VP)の詳細を示している。右側の顕微鏡写真は免疫前のIgを用いた対照調製物を示している。バー:左側の顕微鏡写真、50nm;右側の顕微鏡写真、100nm。
【図9】組み換え14VP1タンパク質または14VP1由来のペプチドに対するウサギの抗血清の反応性を示している。ウサギには、組み換え14VP1、PVP1A、PVP1BまたはPVP3A(ボックスの上側)を用いて免疫接種し、血清を14VP1(上側)または89VP1(下側)に接触させた。上記血清の希釈はX軸に示されている(対数で示された10−3〜10−6)。14VP1に特異的なIgGおよび89VP1に特異的なIgGの濃度は光学的濃度の値と対応している(バー:Y軸)。
【図10】HRV14が抗14VP1抗体によって中和されたことを示している。100TCID50のHRV14を、図に示されているような抗血清の連続した希釈物を用いて、37℃で2時間、予めインキュベートした。上記の混合物を24ウェルプレート内のサブコンフルエント(subconfluent)なHeLa細胞に加えた。34℃で4日後、残った細胞を、クリスタルバイオレットを用いて染色した。Pre−IS、免疫前の血清が対照として用いられた。
【図11A】調査したHRVのVP1配列の系統樹を示している。VP1配列はデータバンクから検索し、ClustalWを用いて当該配列の類似性を分析した。
【図11B】VP1に特異的なそれぞれの抗体による、HRVの感染の阻害。100TCID50のHRV14を、1:2(a)〜1:16(d)まで2倍ずつ連続して希釈したそれぞれの抗血清の希釈物を用いて、37℃で3時間、予めインキュベートした。上記の混合物を96ウェルプレート内のサブコンフルエントなHeLa細胞に加えた。34℃で3日間の培養後、クリスタルバイオレットを用いて細胞を染色し、洗浄し、染色液を溶解させた。ODは560nmで読み取られた。4つの独立した実験における平均値±標準誤差が示されている。
【図12】精製されたVP1、VP2、VP3およびVP4のhisタグタンパク質を含んでいる、クマシーブルーで染色された12.5%SDS−PAGEゲルを示している(レーン1:5μlの分子マーカー;レーン2:10μlのVP1;以下それぞれ、10μlのVP2;10μlのVP3;10μlのVP4)。
【図13】HRVに特異的なPCR試験の結果、陽性であると判定された患者由来のヒトの血液において検出されたVP1、VP2、VP3およびVP4に対するIgA、IgM、IgG1およびIgG2の反応を示している。ライノウイルス由来のカプシドタンパク質に特異的な4つの抗体について、57人の患者の血清を試験した。力価はELISAによって測定され、光学値としてY軸上に示されている(OD 405nm)。光学値はヒトの血清における抗体の濃度と対応している。上記の結果はボックスプロットとして示され、値の50%はボックスの中にあり、外れ値ではない値はバーの間にある。ボックスの中の線は中央値を示している。
【図14A】HRVプロトタイプ株のVP1アミノ酸配列のマルチプルアラインメント(multiple alignment)を示している。配列はProtein Databaseから検索し、GeneDocを用いて並べた後に手動で編集した。上記アラインメントは異なる種および異なるレセプターグループに属するHRV血清型を示している:HRV37および89はメジャーグループジーナスAであり、HRV3、14および72はメジャーグループジーナスBであり、HRV1A、18および54はK−タイプであり、HRV1A、HRV29および44はマイナーグループジーナスAである。黒い正方形は、HRV89株のVP1に由来する3つのエピトープを意味している。
【図14B】HRVに特異的なPCR試験の結果、陽性であると判定された患者由来のヒトの血液において検出されたEp_1、Ep_2およびEp_3に対するIgA、IgM、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4の反応を示している。VP1由来のエピトープに特異的な6つの抗体について、57人の患者の血清を試験した。力価はELISAによって測定され、光学値としてY軸上に示されている(OD 405nm)。光学値はヒトの血清における抗体の濃度と対応している。上記の結果はボックスプロットとして示され、値の50%はボックスの中にあり、外れ値ではない値はバーの間にある。ボックスの中の線は中央値を示している。
【図15】組み換えVP1、VP2、VP3およびVP1由来のエピトープに対するモルモットIgGの交差反応を示している。しかし、当該図15は(診断のために使用される)抗原の認識のみに関する。図15は各ウイルスの中和の証拠ではなく、交差防御を示している。異なるHRV株の中和は図11Bに示されている。当該データは相関しているため、HRV89に由来するVP1またはVP1に由来するN末端フラグメントに対する抗体は、中和試験によって調べた場合に他の株も中和すると仮定することができる。
【図16】主要なカプシドタンパク質VP1のエピトープマッピングを示している。
【図17】HRVに特異的なPCR試験の結果、陽性であると判定された患者由来のヒトの血液において検出された、VP1のN末端エピトープに由来する合成ペプチドに対するIgGの免疫反応を、既知のペプチド(Mc Cray et al., Nature 329 (1987): 736-738)と比較して示している。
【図18】HRV/インフルエンザ二重感染の患者における抗体の値に対するROC曲線を示している。
【図19A】HRVに特異的なPCR試験の結果、陽性であると判定された57人の患者に由来するヒトの血液において検出された、P1由来のペプチド(それぞれ、およそ30個のアミノ酸(図19A)または20個のアミノ酸(図19B)を含んでいる)、またはP1A由来のペプチド(B)(それぞれ、20個のアミノ酸を含んでいる)に対するIgGの反応を示している。IgGの反応性はELISAによって測定され、光学値としてY軸上に示されている(OD 405nm)。光学値はヒトの血清における抗体の濃度と対応している。上記の結果はボックスプロットとして示され、値の50%はボックスの中にあり、外れ値ではない値はバーの間にある。ボックスの中の線は中央値を示している。
【図19B】HRVに特異的なPCR試験の結果、陽性であると判定された57人の患者に由来するヒトの血液において検出された、P1由来のペプチド(それぞれ、およそ30個のアミノ酸(図19A)または20個のアミノ酸(図19B)を含んでいる)、またはP1A由来のペプチド(B)(それぞれ、20個のアミノ酸を含んでいる)に対するIgGの反応を示している。IgGの反応性はELISAによって測定され、光学値としてY軸上に示されている(OD 405nm)。光学値はヒトの血清における抗体の濃度と対応している。上記の結果はボックスプロットとして示され、値の50%はボックスの中にあり、外れ値ではない値はバーの間にある。ボックスの中の線は中央値を示している。
【図20A】抗VP1抗体、抗VP2抗体、抗VP3抗体、抗VP4抗体によるHRVの感染の阻害を示している。10TCID50のHRVを、1:2〜1:1:128まで2倍ずつ連続して希釈したそれぞれの抗血清の希釈物を用いて、37℃で3時間、予めインキュベートした。上記の混合物を96ウェルプレート内のサブコンフルエントなHeLa細胞に加えた。34℃で3日間の培養後、クリスタルバイオレットを用いて細胞を染色し、洗浄し、染色液を溶解させた。ODは560nmで読み取られた。
【図20B】抗VP1抗体、抗VP2抗体、抗VP3抗体、抗VP4抗体によるHRVの感染の阻害を示している。100TCID50のHRVを、1:2〜1:1:128まで2倍ずつ連続して希釈したそれぞれの抗血清の希釈物を用いて、37℃で3時間、予めインキュベートした。上記の混合物を96ウェルプレート内のサブコンフルエントなHeLa細胞に加えた。34℃で3日間の培養後、クリスタルバイオレットを用いて細胞を染色し、洗浄し、染色液を溶解させた。ODは560nmで読み取られた。
【図20C】抗VP1抗体、抗VP2抗体、抗VP3抗体、抗VP4抗体によるHRVの感染の阻害を示している。1000TCID50のHRVを、1:2〜1:1:128まで2倍ずつ連続して希釈したそれぞれの抗血清の希釈物を用いて、37℃で3時間、予めインキュベートした。上記の混合物を96ウェルプレート内のサブコンフルエントなHeLa細胞に加えた。34℃で3日間の培養後、クリスタルバイオレットを用いて細胞を染色し、洗浄し、染色液を溶解させた。ODは560nmで読み取られた。
【図21】14VP1、89VP1および3つの組み換え89VP1フラグメントとのウサギ抗89VP1抗体およびウサギ抗14VP1抗体の反応性を示している。ウサギの血清は1:5000に希釈されており、結合したIgG抗体に対応するA560がY軸上に示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
VP1、VP2、VP3およびVP4からなる群から選択されるライノウイルスのカプシドタンパク質の1番目〜8番目のアミノ酸残基を包含している、最小で8個および最大で50個のアミノ酸残基からなる少なくとも1つのペプチドを含んでいる薬学的組成物。
【請求項2】
上記組成物は、ライノウイルスの感染の予防および/または治療に使用されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
上記ライノウイルスは、ライノウイルス株89およびライノウイルス株14からなる群から選択されるライノウイルス株であることを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
上記ライノウイルスは、ライノウイルス株89であり、
上記カプシドタンパク質は、VP1であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
上記ライノウイルスのカプシドタンパク質の上記1番目〜8番目のアミノ酸残基は、NPVENYIDというアミノ酸配列を有していることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
上記少なくとも1つのペプチドは、NPVENYIDSVLNEVLVVPNIQPSTSVSSHAA、および、NPVENYIDSVLNEVLVVPNIQからなる群から選択されることを特徴とする請求項4または5に記載の組成物。
【請求項7】
上記少なくとも1つのペプチドは、キャリアーに結合または融合されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
上記組成物は、少なくとも1つの薬学的賦形剤、および/または、少なくとも1つのアジュバントをさらに含んでいることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
上記アジュバントは、ミョウバン、好ましくはリン酸アルミニウムもしくは水酸化アルミニウム、または炭水化物をベースとした粒子であることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
上記組成物は、皮内投与、筋肉内投与、皮下投与、経口投与、直腸投与、膣内投与または経皮投与に適用されるものであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか1項に規定されるペプチド。
【請求項12】
請求項1〜7に規定されるペプチドの、ライノウイルスの感染の予防および/または治療のための薬物を製造するための使用。
【請求項13】
上記薬物は、皮内投与、筋肉内投与、皮下投与、経口投与、直腸投与、膣内投与または経皮投与されるものであることを特徴とする請求項12に記載の使用。
【請求項14】
あらゆるライノウイルス株によって引き起こされる、哺乳類におけるライノウイルスの感染をin vitroにて診断する方法であって、以下の工程を含んでいる方法:
−哺乳類のサンプルを含んでいる抗体を準備する工程、
−上記サンプルと、ライノウイルス株89またはライノウイルス株14のVP1、VP2、VP3およびVP4からなる群から選択されるライノウイルスのカプシドタンパク質の1番目〜8番目のアミノ酸残基を包含している、最小で8個および最大で50個のアミノ酸残基からなる少なくとも1つのペプチドと、を接触させる工程、
−上記少なくとも1つのポリペプチドに対する抗体の結合が検出された場合に、ライノウイルスの感染を診断する工程。
【請求項15】
上記サンプルは、血液サンプル、好ましくは血清もしくは血漿、唾液サンプル、神経洗浄液サンプル、または、涙液サンプルであることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
上記ライノウイルスは、ライノウイルス株89であり、
上記カプシドタンパク質は、VP1であることを特徴とする請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
上記ライノウイルスのカプシドタンパク質の1番目〜8番目のアミノ酸残基は、NPVENYIDというアミノ酸配列を有していることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
上記少なくとも1つのペプチドは、NPVENYIDSVLNEVLVVPNIQPSTSVSSHAA、および、NPVENYIDSVLNEVLVVPNIQからなる群から選択されることを特徴とする請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
ライノウイルスの感染に関連した、哺乳類における呼吸器疾患をin vitroにて診断する方法であって、以下の工程を含んでいる方法:
−哺乳類のサンプルを含んでいる抗体を準備する工程、
−上記サンプルと、ライノウイルスのVP1ポリペプチド、VP2ポリペプチド、VP3ポリペプチドおよびVP4ポリペプチドまたは当該ポリペプチドのフラグメントと、を接触させる工程、
−上記ポリペプチドに結合している抗体のクラスを決定する工程、ならびに、
−以下の診断を行う工程、
−VP3に特異的なIgG1抗体およびVP4に特異的なIgG1抗体、ならびに、VP3に特異的なIgM抗体が検出された場合の、細気管支炎の診断、
−VP4に特異的なIgG1抗体、ならびに、VP1に特異的なIgA抗体およびVP2に特異的なIgA抗体が検出された場合の、喘息の診断、
−VP4に特異的なIgG1抗体が検出された場合の、クループの診断、
−VP1に特異的なIgM抗体が検出された場合の、けいれんの診断、
−VP1に特異的なIgA、VP2に特異的なIgA、VP3に特異的なIgAおよびVP4に特異的なIgAが検出された場合の、二重ウイルス感染(HRV/インフルエンザ)の診断。
【請求項20】
上記サンプルは、血液サンプル、好ましくは血清もしくは血漿、唾液サンプル、神経洗浄液サンプル、または、涙液サンプルであることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
上記VP1ポリペプチド、VP2ポリペプチド、VP3ポリペプチドおよび/またはVP4ポリペプチドのフラグメントは、VP1、VP2、VP3およびVP4からなる群から選択されるライノウイルスのカプシドタンパク質の1番目〜8番目のアミノ酸残基を包含している、最小で8個および最大で50個のアミノ酸残基からなることを特徴とする請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
上記ライノウイルスは、ライノウイルス株89であり、
上記カプシドタンパク質は、VP1であることを特徴とする請求項19〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
上記ライノウイルスのカプシドタンパク質の上記1番目〜8番目のアミノ酸残基は、NPVENYIDというアミノ酸配列を有していることを特徴とする請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
上記フラグメントは、NPVENYIDSVLNEVLVVPNIQPSTSVSSHAA、および、NPVENYIDSVLNEVLVVPNIQからなる群から選択されることを特徴とする請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
ライノウイルスの感染を予防および/または治療するための、ライノウイルスの少なくとも1つの全長カプシドタンパク質の少なくとも80個の連続したアミノ酸残基の一続きの配列からなるアミノ酸配列を含んでいる少なくとも1つのポリペプチドを含んでいる薬学的組成物。
【請求項26】
上記ライノウイルスは、ライノウイルス株89およびライノウイルス株14からなる群から選択されるライノウイルス株であることを特徴とする請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
上記カプシドタンパク質は、VP1、VP2またはVP3であることを特徴とする請求項25または26に記載の組成物。
【請求項28】
上記連続したアミノ酸残基の一続きの配列は、上記少なくとも1つの全長カプシドタンパク質の少なくとも90個、好ましくは100個のアミノ酸残基からなることを特徴とする請求項25〜27のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
上記組成物は、少なくとも1つの薬学的賦形剤および/またはキャリアーをさらに含んでいることを特徴とする請求項25〜28のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
上記組成物は、少なくとも1つのアジュバントをさらに含んでいることを特徴とする請求項25〜29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
上記アジュバントは、ミョウバン、好ましくはリン酸アルミニウムもしくは水酸化アルミニウム、または炭水化物をベースとした粒子であることを特徴とする請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
上記組成物は、皮内投与、筋肉内投与、皮下投与、経口投与、直腸投与、膣内投与または経皮投与に適用されるものであることを特徴とする請求項25〜31のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項33】
請求項25〜28に規定されるポリペプチドの、ライノウイルスの感染の予防および/または治療のための薬物を製造するための使用。
【請求項34】
上記薬物は、皮内投与、筋肉内投与、皮下投与、経口投与、直腸投与、膣内投与または経皮投与されるものであることを特徴とする請求項33に記載の使用。
【請求項35】
哺乳類におけるライノウイルスの感染をin vitroにて診断する方法であって、以下の工程を含んでいる方法:
−哺乳類のサンプルを含んでいる抗体を準備する工程、
−上記サンプルと、ライノウイルス株89および/またはライノウイルス株14の少なくとも1つの全長カプシドタンパク質の少なくとも80個の連続したアミノ酸残基の一続きの配列からなるアミノ酸配列を含んでいる少なくとも1つのポリペプチドと、を接触させる工程、
−上記少なくとも1つのポリペプチドに対する抗体の結合が検出された場合に、ライノウイルスの感染を診断する工程。
【請求項36】
上記サンプルは、血液サンプル、好ましくは血清もしくは血漿、唾液サンプル、神経洗浄液サンプル、または、涙液サンプルであることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
上記カプシドタンパク質は、VP1、VP2またはVP3であることを特徴とする請求項35または36に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20A】
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【図20B】
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【図20C】
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【図21】
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【公表番号】特表2013−508427(P2013−508427A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535540(P2012−535540)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【国際出願番号】PCT/AT2010/000416
【国際公開番号】WO2011/050384
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(507180423)ビオマイ アクチエンゲゼルシャフト (12)
【Fターム(参考)】