説明

ラインプリンタおよびラインプリンタの印刷制御方法

【課題】ホストコンピュータから送信される印刷データの実際の転送レートに基づいて、適切な印刷速度を設定するラインプリンタの印刷制御方法を提案すること。
【解決手段】ラインサーマルプリンタ1は、ホストコンピュータ30から単位時間当たりに受信した印刷データから印刷バッファ9に展開されるラインサーマルヘッド8による印刷形式に従った1ライン分毎の印刷データのデータ量を実効転送レートとして取得する(工程ST3、ST4)。取得した実効転送レートに基づいて、ラインサーマルヘッド8の印刷速度の上限値を設定する(工程ST5、ST6)。設定された上限速度以下の印刷速度になるように、駆動制御手段13はラインサーマルヘッド8の印刷速度を制御するとともに、記録紙4の搬送速度を制御して印刷する(工程ST7)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部装置から送信される印刷データの実際の転送レートに基づいて、印刷速度を変更するラインプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
店舗のレジスタ装置に接続されて会計明細書やクーポンを印刷するプリンタとして、ロール紙を搬送しながら1ライン毎に印刷を行なうラインサーマルプリンタが広く用いられている。近年、ラインサーマルプリンタの印刷速度が向上しているので、レジスタ装置から送信されてくる印刷データが、ライン型印字ヘッドの1ライン分毎の印刷に間に合わず、ラインサーマルプリンタが印刷データの受信待ちのために停止してしまうということがある。
【0003】
印刷データの受信待ちが頻繁に起こり、ラインサーマルプリンタが印刷と停止を繰り返すと、その前後でロール紙の送り量が変動する。この結果として、印刷ピッチの乱れや印刷濃度が変化して印刷にムラが発生し、印刷品質が低下してしまう。このような問題を回避するために、ホストコンピュータからラインプリンタの印刷速度を制御して、印刷データの受信待ちを防止するものが、例えば、特許文献1に記載されている。また、ホストコンピュータがラインプリンタの通信クロックを制御することによって両者の間の通信速度を高速に維持して印刷データの受信待ちを防止するものが、例えば、特許文献2に記載されている。
【特許文献1】特開2003−50777号公報
【特許文献2】特開平9−146724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ホストコンピュータが接続されているラインプリンタの印刷速度や通信クロックを制御する方法では、ホストコンピュータにラインプリンタを制御するためのアプリケーションやハードウエアを搭載する必要がある。
【0005】
また、ホストコンピュータとラインプリンタとの間の通信速度を高速に維持することができたとしても、ホストコンピュータに搭載されているアプリケーションの処理効率が低い場合や、転送されてくるデータの形式によっては、受信した印刷データを印刷バッファに展開する速度がライン型印字ヘッドの1ライン分の印刷に間に合わず、ラインサーマルプリンタが印刷データ待ちのため停止してしまうという問題がある。
【0006】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、ホストコンピュータから送信される印刷データの実際の転送レートに基づいてラインプリンタ自身が印刷速度を制御することにより、印刷データの受信待ちのために印刷が停止してしまうことがないラインプリンタの印刷制御方法を提案することにある。また、当該印刷制御方法によって印刷を行なうラインプリンタを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、外部装置から受信する印刷データを、ライン型印刷ヘッドにより1ラインずつ印刷するラインプリンタの印刷制御方法であって、受信した前記印刷データを、前記ライン型印刷ヘッドによる1ライン分毎、印刷バッファに展開するデータ量と、前記印刷データを受信する受信時間と、から実効転送レートとして取得する実効転送レート取得工程と、1ライン分の印刷毎に印刷データの受信待ちのための印
刷中断状態が生じないように、前記実効転送レートに基づいて、前記ラインプリンタが前記ライン型印刷ヘッドの上限速度を算出して記憶する上限速度算出工程と、前記上限速度を印刷速度の上限値として設定する上限値設定工程と、設定された上限値以下の印刷速度で前記ライン型印刷ヘッドを駆動すると共に、記録媒体を当該印刷速度に対応する搬送速度で搬送して、印刷を行わせる印刷工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、受信する印刷データから、ラインプリンタ自身が、実効転送レートをを取得して、この実効転送レートに基づいてラインプリンタ自身が印刷速度の上限値を設定する。また、設定された上限値以下の印刷速度になるように、ライン型印刷ヘッドの印刷速度を制御するとともに、記録紙の搬送速度を制御して、印刷する。従って、ホストコンピュータ等の外部機器とラインプリンタとの間の通信速度や、ホストコンピュータに搭載されたアプリケーションの処理効率に関係なく、実効転送レートが低い場合にはラインプリンタの印刷速度を遅くすることができる。この結果、印刷データの受信待ちのためにライン型印刷ヘッドの1ライン分の印刷毎に印刷が中断してしまうことを回避できるので、記録紙の送り量に変動が生じて印刷ピッチが乱れたり、印刷濃度が変化して印刷にムラが発生することを回避して、印刷品質を高品質に保つことができる。
【0009】
本発明において、印刷データの受信待ちを必要としない印刷モードであるか否かを判定する印刷モード判定工程と、前記印刷モード判定工程において、印刷データの受信待ちを必要としない印刷モードであると判定された場合には、前記実効転送レートに拘りなく、前記ライン型印刷ヘッドを最高印刷速度で駆動する最高速度印刷工程を含むことが好ましい。このような印刷モードでは、印刷データの受信待ちの必要がないので、ラインプリンタが本来備えている最高印刷速度で印刷を行なえばよい。
【0010】
ここで、前記の印刷データの受信待ちを必要としない印刷モードとしては、受信した印刷データを当該印刷データの区切りまで印刷バッファに蓄えた後に印刷を開始するモードがある。
【0011】
本発明において、前記実効転送レート取得工程は、前記外部装置から送信される印刷データを受信する受信工程と、前記受信工程で印刷データの中に印刷データの区切りを示す制御指令を検出すると、当該制御指令の後から次に前記制御指令と同じ制御指令を受信するまでのトランザクション時間を計測するトランザクション時間計測工程と、計測された前記トランザクション時間に受信した前記印刷データから印刷バッファに展開される1ライン分毎の印刷データのデータ量を測定するデータ量測定工程と、計測された前記トランザクション時間と測定された前記データ量とから印刷データの転送レートを逐次取得する転送レート取得工程と、逐次取得される前記転送レートを平均して平均転送レートを取得する平均転送レート取得工程とを含んでおり、前記平均転送レートを所定のタイミングで実効転送レートとして取得することが好ましい。このようにすれば、実効転送レートとして、ライン型印刷ヘッドによる印刷形式に従った1ライン分毎の印刷データが印刷バッファに展開される平均転送レートの平均値を取得することができる。ラインプリンタに接続されたホストコンピュータに搭載されているアプリケーションが特定されており、ホストコンピュータとラインプリンタを接続する通信環境が変化しない場合には、単位時間当たりに受信した印刷データから印刷バッファに展開される印刷データのデータ量は収束してくるので、それに従って、平均転送レートの平均値も収束してくる。従って、その値を実効転送レートとして取得すれば、適切な上限速度を算出することができる。
【0012】
ここで、実効転送レート取得工程は、前記平均転送レート取得手段で取得した前記平均転送レートを不揮発性メモリに記憶保持する平均転送レート記憶保持工程を含み、前記ラインプリンタの電源投入時には、前記実効転送レート取得工程は、前記平均転送レート記憶保持工程で不揮発性メモリに記憶保持されていた前記平均転送レートを実効転送レート
として取得することを特徴とする。このようにすれば、ラインプリンタの電源を消しても、次に電源が投入された場合には、実効転送レート取得手段はそれまでに取得していた平均転送レートを実効転送レートとして取得することができる。従って、ラインプリンタの電源のON、OFFが繰り返される場合でも、ラインプリンタが接続されている外部装置に搭載されているアプリケーションが特定されており、外部装置とラインプリンタを接続する通信環境が変化しない場合には、実効転送レートの値を収束させることができる。
【0013】
ここで、前記外部装置からの設定指令に基づき、前記区切りを示す制御指令を設定する制御指令設定工程を含むようにすることができる。ラインプリンタがレジスタ装置などに接続されており、会計明細書の発行が主な用途になっている場合には、例えば、記録紙をオートカッタでカットするためのカット指令を、区切りを示す制御指令として設定しておけば、用途に即した実効転送レートを取得することができるので、適切な上限速度を算出することができる。
【0014】
また、前記外部装置からの設定指令に基づき、前記上限値の設定を行なうか否かを決める工程を備えていることが好ましい。ラインプリンタが接続されている外部装置に搭載されているアプリケーションが特定されており、外部装置とラインプリンタを接続する通信環境が変化しない場合には、取得される実効転送レートが収束した後に上限速度算出工程によって算出されて記憶される上限速度は、印刷データの受信待ちのためにライン型印刷ヘッドの1ライン分の印刷毎に印刷が中断してしまうことを回避できる最速の印刷速度になっている。従って、このような上限速度が算出され記憶された後には、新たな上限値を設定しないようにすれば、それ以降は、前回までに記憶されている上限速度が印刷速度の上限値として設定される。従って、一定期間使用した後は、ラインプリンタの印刷速度の上限値の設定処理を軽減することができる。また、予め上限速度が判明している場合には、判明している上限速度を記憶しておけば、ラインプリンタを設置した直後から、印刷データの受信待ちのためにライン型印刷ヘッドの1ライン分の印刷毎に印刷が中断してしまうことを回避でき、印刷品質を高品質に保つことができる。
【0015】
ここで、前記上限値の設定を行なわない場合には、前記ライン型印刷ヘッドを最高印刷速度で駆動するようにしてもよい。このように設定しておけば、ライン型印刷ヘッドの印刷速度の上限値を設定する必要がない場合には、ラインプリンタが本来備えている最高印刷速度による印刷が行なわれる。
【0016】
本発明において、前記ライン型印刷ヘッドはライン型サーマルヘッドとすることができる。サーマルヘッドの場合には、印刷の中断により印刷品質の低下が著しいので、本発明を採用することにより、そのような弊害を確実に防止できる。
【0017】
次に、本発明のラインプリンタは、上述した印刷制御方法によって、外部装置から送信される印刷データを印刷することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のラインプリンタおよびラインプリンタの印刷制御方法によれば、受信する印刷データから、ラインプリンタ自身が、実効転送レートを取得して、この実効転送レートに基づいてラインプリンタ自身が印刷速度の上限値を設定する。また、設定された上限値以下の印刷速度になるように、ライン型印刷ヘッドの印刷速度を制御するとともに、記録紙の搬送速度を制御して、印刷する。従って、ホストコンピュータとラインプリンタとの間の通信速度や、ホストコンピュータに搭載されたアプリケーションの処理効率に関係なく、実効転送レートが低い場合にはラインプリンタの印刷速度を遅くすることができる。この結果、印刷データの受信待ちのためにライン型印刷ヘッドの1ライン分の印刷毎に印刷が中断してしまうことを回避できるので、記録紙の送り量に変動が生じて印刷ピッチが乱
れたり、印刷濃度が変化して印刷にムラが発生することを回避して、印刷品質を高品質に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したラインサーマルプリンタの実施の形態を説明する。図1は本形態のラインサーマルプリンタを含む会計処理システムの概略構成図である。図2は取得した実効転送レートに基づいて印刷速度を設定する動作を示すフローチャートである。
【0020】
(ラインサーマルプリンタの構成)
図1に示すように、本形態のラインサーマルプリンタ1はレジスタ装置(ホストコンピュータ)30と接続され、ホストコンピュータ30から送信される印刷データに基づいてロール紙(記録紙4)に会計明細書やクーポンを印刷するものである。ラインサーマルプリンタ1とホストコンピュータ30とで、店舗の会計カウンタに設定される会計処理システム40を構成している。
【0021】
ラインサーマルプリンタ1は、ホストコンピュータ30から送信される印刷データを通信インターフェース2を介して受信する。受信した印刷データは、一旦、受信バッファ6に蓄えられる。受信バッファ6に蓄えられた印刷データには、文字データや画像データと共にそれらの印刷位置や大きさを指定する装飾指令、記録紙4の排出を制御する排出指令や記録紙4のカットを指示するカット指令等の制御指令が含まれている。従って、制御部7は、それら制御指令を解析して、ラインサーマルヘッド8による印刷形式に従った1ライン分毎の印刷データを生成する。
【0022】
生成された1ライン分毎の印刷データは、印刷バッファ9に展開されて記憶保持される。また、1ライン分毎の印刷データが印刷バッファ9に展開されるのと並行して、印刷バッファ9に既に展開され記憶保持されている1ライン分毎の印刷データが、ラッチ回路10に読み込まれる。そしてラッチ回路10からラインサーマルヘッド8に送られて、1ライン分毎に印刷が行なわれる。
【0023】
ラインサーマルヘッド8による1ライン分の印刷が終了すると、ステッピングモータ11はプラテンローラ12を駆動して記録紙4を1ライン分搬送する。搬送が終わると、ラインサーマルヘッド8は次の1ライン分の印刷を行なう。これらの動作は、印刷データが終了するまで繰返し行なわれる。ラインサーマルヘッド8による印刷速度とステッピングモータによる記録紙4の搬送速度は制御部7の駆動制御手段13により制御されている。
【0024】
ここで、制御部7は、設定情報を記憶する設定記憶手段14、区切りを示す制御信号が検出されてから次にその制御信号を検出するまでのトランザクション時間と、その間に受信した印刷データから印刷バッファ9に展開される1ライン分毎の印刷データのデータ量とから平均転送レートを取得して設定記憶手段14に記憶する平均転送レート取得手段15、所定のタイミングで平均転送レートから実効転送レートを取得する実効転送レート取得手段16、取得した実効転送レートに基づいてラインサーマルヘッド8の上限速度を算出して、設定記憶手段14に記憶する上限速度算出記憶手段17、設定記憶手段14に記憶された上限速度を上限値として設定する上限値設定手段18を備えている。設定記憶手段14は、電源が消されても記憶内容を保持可能な不揮発性メモリ(フラッシュメモリ)から構成されている。上限値設定手段18によって印刷速度の上限値が設定されると、駆動制御手段13は、取得した上限値以下の印刷速度でラインサーマルヘッド8を駆動すると共に、ステッピングモータ11を制御して、記録紙4をラインサーマルヘッド8の印刷速度に対応する搬送速度で搬送する。
【0025】
また、実効転送レートを取得してラインサーマルヘッド8の印刷速度の上限値を設定するための一連の手段(平均転送レート取得手段15、実効転送レート取得手段16、上限速度算出記憶手段17、上限値設定手段18)は、ホストコンピュータ30からの動作設定指令によって、その動作を有効にするか、無効にするかを設定できるようになっている。従って、制御部7は、これら一連の手段の動作が有効に設定されているか否かを検出する動作設定検出手段19を備えている。また、印刷データの受信待ちを必要としない印刷モードか否かを検出する印刷モード検出手段20を備えている。
【0026】
さらに、ラインサーマルプリンタ1は、クーポン発行の際に定型的に印刷される店のロゴマークや広告などのグラフィックデータを記憶している画像記憶部21を備えている。
【0027】
(印刷速度の設定の動作)
次に、図2を参照して、ラインサーマルプリンタ1が実効転送レートに基づいてラインサーマルヘッド8の印刷速度の上限速度を設定する動作を説明する。
【0028】
ホストコンピュータ30から印刷データが送信されてくると、工程ST1において、印刷モード検出手段20が、印刷データの受信待ちを必要としない印刷モードか否かを判定する。印刷データの受信待ちを必要としないモードであると判定される場合としては、例えば、以下の3つの場合がある。
【0029】
第1の場合は、印刷モードがページモードの場合である。ページモードでは、通信インターフェース2を介して受信した印刷データを当該印刷データの区切りまで印刷バッファ9に蓄えた後に印刷を開始するので、印刷の開始から印刷が終了する区切りまでの間は印刷データの受信待ちを必要としない。すなわち、通常の印刷モードでは、印刷データを解析して得られた1ライン分毎の印刷データは、印刷バッファ9に展開されて記憶保持されるのと並行して、ラッチ回路10に読み込まれて印刷が行なわれる。このため、ラインサーマルヘッド8の印刷速度が高速な場合には、ラッチ回路10による読み込みのタイミングが1ライン分毎の印刷データが印刷バッファ9へ展開されるタイミングよりも早くなってしまい、印刷データの受信待ちが必要になる。これに対して、ページモードでは、印刷データを解析して得られた1ライン分毎の印刷データは、その印刷データの区切りまで印刷バッファ9に展開されて記憶保持された後にラッチ回路10により読み込まれて印刷が行なわれるので、印刷の開始から印刷が終了する区切りまでは、印刷データの受信待ちを必要としない。
【0030】
ページモードは、ホストコンピュータ30から送信されてくる印刷データに含まれているページモード指令によって設定される。従って、制御部7が印刷データの中にページモード指令を検出した場合には、そのページモード指令を解除するページモード解除指令を検出するまでは、印刷モードはページモードに維持される。印刷データの区切りを示す指令としては、例えば、改ページ指令、記録紙4の排出指令、記録紙4をオートカッタでカットするためのカット指令があり、それらを検出することにより、ページモードにおける印刷データの区切りが判断される。
【0031】
第2の場合は、画像記憶部21に予め記憶保持されているグラフィックデータを印刷する場合である。画像記憶部21に記憶保持されているグラフィックデータは、ホストコンピュータ30から送信されるグラフィック印刷指令により印刷される。
【0032】
印刷データの中にグラフィック印刷指令を検出すると、制御部7は、画像記憶部21にあるグラフィックデータから1ライン分毎の印刷データを生成する。生成された1ライン分毎の印刷データは、そのグラフィックデータの終了(区切り)まで印刷バッファ9に展開され記憶保持された後に、ラッチ回路10により読み込まれて印刷が行なわれる。従っ
て、印刷の開始から印刷が終了する区切りまでは、印刷データの受信待ちを必要としない。よって、制御部7がグラフィック印刷指令を検出した後、当該グラフィックデータの印刷が終了するまでは、この印刷モードが維持される。
【0033】
第3の場合は、ホストコンピュータ30から送信されてくるグラフィックデータを、この印刷モードに指定して印刷する場合である。送信されてくるグラフィックデータは、通常の印刷モードで印刷されるが、ホストコンピュータ30からモード指定印刷指令が送信されると、画像記憶部21に予め記憶保持されているグラフィックデータを印刷する場合と同様に、そのグラフィックデータの終了(区切り)まで印刷バッファ9に展開されて記憶保持された後に、ラッチ回路10により読み込まれて印刷が行なわれるようになる。よって、制御部7がモード指定印刷指令を検出した後、指令によって指定されたグラフィックデータの印刷が終了するまでは、この印刷モードが維持される。
【0034】
工程ST1において、印刷データの受信待ちを必要としない印刷モードであると判定された場合には、検出される実効転送レートに拘らず、印刷データの受信待ちのためにラインサーマルヘッド8の1ライン分の印刷毎に印刷が中断してしまうという状態は発生しない。そこで、ラインサーマルヘッド8の印刷速度の上限速度は設定せずに、ラインサーマルプリンタ1が本来備えている最高印刷速度で印刷を行なう工程ST8にジャンプする。
【0035】
工程ST1において、印刷データの受信待ちを必要とする印刷モードであると判定された場合には、実効転送レートを取得してラインサーマルヘッド8の印刷速度の上限値を設定するための一連の手段(平均転送レート取得手段15、実効転送レート取得手段16、上限速度算出記憶手段17、上限値設定手段18)の動作が有効に設定されているか否かを検出する工程ST2に移行する。
【0036】
印刷速度の上限値を設定するための一連の手段の動作の有効/無効は、ホストコンピュータ30から送信される動作設定指令によって設定され、設定された有効/無効のステータスは設定記憶手段14に記憶保持されている。従って、動作設定検出手段19は、設定記憶手段14に記憶保持されているステータスから、印刷速度の上限値を設定するための一連の手段の動作が有効に設定されているか否かを検出する。
【0037】
工程ST2において、印刷速度の上限値を設定するための一連の手段の動作が無効に設定されていることが検出された場合には、その時点で、設定記憶手段14に記憶保持されている上限速度をラインサーマルヘッド8の印刷速度の上限値として設定する工程ST7にジャンプする。
【0038】
工程ST2において、印刷速度の上限値を設定するための一連の手段の動作が有効に設定されていることが検出された場合には、平均転送レートを取得する工程ST3へ移行する。
【0039】
工程ST3では、平均転送レート取得手段15が、通信インターフェース2を介して受信する印刷データと、制御部7によって印刷バッファ9に展開される1ライン分毎の印刷データを監視しており、印刷データの中にカット指令などの印刷データの区切りを示す制御指令を検出すると、その指令の後から次に区切りを示す同じ制御指令を受信するまでのトランザクション時間を計測する。また、測定されたトランザクション時間に受信した印刷データから制御部7が印刷バッファ9に展開する1ライン分毎の印刷データのデータ量を計測する。そして、計測されたトランザクション時間およびデータ量から、単位時間当たりに受信する1ライン分毎の印刷データのデータ量(転送レート)を算出する。この転送レートは逐次算出されるので、それらの平均を逐次算出して、これを平均転送レートとして取得する。また、取得した平均転送レートを設定記憶手段14に記憶する。
【0040】
区切りを示す制御指令のうちのいずれの制御指令をトランザクション時間を計測する区切りとして採用するかは、ホストコンピュータ30から送信される区切設定指令によって、予め設定しておくことができる。本形態の会計処理システム40では、ラインサーマルプリンタ1の主な用途は会計明細書の発行なので、記録紙4をオートカッタでカットするカット指令を区切りを示す制御指令として採用している。
【0041】
工程ST3で平均転送レートが取得されると、取得された平均転送レートから実効転送レートを取得する工程ST4に移行する。工程ST4では、実効転送レート取得手段16が、所定のタイミングで、設定記憶手段14に記憶保持されている平均転送レートを実効転送レートとして取得する。
【0042】
新たな実効転送レートを取得する所定のタイミングは、制御部7がメンテナンス情報をシステム領域に保存するタイミングと同じタイミングである。また、ラインラインプリンタ1の電源が投入された場合には、その時点で設定記憶手段14に記憶保持されている平均転送レートが実効転送レートとして取得される。なお、メンテナンス情報とは、ラインサーマルプリンタ1の累積可動時間や累積印刷行数などであり、消耗した部品を交換する目安をユーザー等に知らせるために利用される情報である。
【0043】
工程ST4で実効転送レートが取得されると、工程ST5に移行する。工程ST5では、上限速度算出記憶手段17が、実効転送レートからラインサーマルヘッド8の1ライン分の印刷毎に印字データが間に合う範囲で、最も高速の印刷速度を上限速度として算出し、これを設定記憶手段14に記憶する。
【0044】
本形態のラインサーマルプリンタ1の仕様を、例えば、解像度203dpi、64桁/行、24dot/改行、最高印刷速度300mm/sとした場合には、上限速度算出記憶手段17は、取得した実効転送レートが57600bpsならば、上限速度として270mm/sを算出する。取得した実効転送レートが38400bpsならば、上限速度として180mm/sを算出する。取得した実効転送レート9600bpsならば、上限速度として45mm/sを算出する。そして、算出した上限速度を、設定記憶手段14に記憶する。
【0045】
工程ST5で算出された上限速度が設定記憶手段14に記憶されると、工程ST6に移行して、上限値設定手段18が、設定記憶手段14に記憶保持されている上限速度をラインサーマルヘッド8の印刷速度の上限値として設定する。
【0046】
工程ST6で印刷速度の上限値が設定されると、工程ST7に移行して、駆動制御手段13は、設定された上限値以下の印刷速度でラインサーマルヘッド8を駆動すると共に、ステッピングモータ11を制御して、記録紙4をラインサーマルヘッド8の印刷速度に対応する搬送速度で搬送して、印刷を行う。
【0047】
ここで、工程ST2において印刷速度の上限値を設定するための一連の手段の動作が無効に設定されていることが検出された場合には、工程ST3〜ST5を経ないで、印刷速度の上限値の設定の動作は工程ST6に移行してくる。この場合には、工程ST6に移行してきた時点で設定記憶手段14に記憶保持されている上限速度がラインサーマルヘッド8の印刷速度の上限値として設定される。その後、工程ST7に移行して、設定された上限値以下の印刷速度による印刷が行なわれる。
【0048】
以上、本形態のラインサーマルプリンタ1は、ホストコンピュータ30から送信された印刷データから、単位時間当たりに印刷バッファ9に展開されるラインサーマルヘッド8
による印刷形式に従った1ライン分毎の印刷データのデータ量を実効転送レートとして取得する(工程ST3、ST4)。また、取得した実効転送レートに基づいて、ラインサーマルヘッド8の印刷速度の上限値を設定する(工程ST5、ST6)。そして、設定された上限値以下の印刷速度になるように、駆動制御手段13はラインサーマルヘッド8の印刷速度を制御するとともに、記録紙4の搬送速度を制御して印刷する(工程ST7)。
【0049】
この結果、ホストコンピュータ30とラインサーマルプリンタ1との間の通信速度や、ホストコンピュータ30に搭載されたアプリケーションの処理効率に関係なく、印刷データの実効転送レートが遅い場合には、ラインサーマルプリンタ1自身が印刷速度を遅くするので、印刷データの受信待ちのためにラインサーマルヘッド8の1ライン分の印刷毎に印刷が中断してしまうことを回避できる。従って、記録紙4の送り量に変動が生じて印刷ピッチが乱れたり、印刷濃度が変化して印刷にムラが発生することを回避して、印刷品質を高品質に保つことができる。
【0050】
また、本形態のラインサーマルプリンタ1によれば、ページモード指令やグラフィック印刷指令が検出された場合には、取得される実効転送レートに拘らず、最高印刷速度による印刷を行うことができる(工程ST9)。
【0051】
さらに、本形態のラインサーマルプリンタ1は、上限速度を設定する一連の手段(平均転送レート取得手段15、実効転送レート取得手段16、上限速度算出記憶手段17、上限値設定手段18)の動作をホストコンピュータ30から送信される機能制御指令により無効にすることができる。
【0052】
例えば、本形態の会計処理システム40のように、ホストコンピュータ30に搭載されているアプリケーションが固定されており、ラインサーマルプリンタ1の主な用途が購入物品とその金額の一覧を羅列した会計明細書の発行の場合には、店舗で一定期間会計処理システム40を使用すると、実効転送レート取得手段16によって取得される実効転送レートの値は収束してくる。また、これに伴って、上限速度算出記憶手段17によって設定記憶手段14に記憶保持される上限速度の値の収束してくる。そこで、会計処理システム40を設置して一定期間が経過した後に、印刷速度の上限値を設定するための一連の手段の動作を無効に設定すれば、それ以降は、印刷速度の上限値を設定する一連の手段の動作(工程ST3〜ST5)を経ることなく、工程ST6で設定記憶手段14に記憶保持されている収束した値の上限速度を印刷速度の上限値として設定することができる。また、工程ST7では、設定された上限速度以下の印刷速度によって印刷を行なうことができる。
【0053】
また、本形態の会計処理システム40を開発するベンダーは、ユーザーに会計処理システム40を納入する前に、ユーザーの使用環境と同一の環境で一定期間使用テストを行なって、上限速度が収束した後に、印刷速度の上限値を設定するための一連の手段の動作を無効に設定すれば、ユーザーは会計処理システム40の設置時点から、印刷データの受信待ちのためにライン型印刷ヘッドの1ライン分の印刷毎に印刷が中断してしまうことを回避でき、印刷品質を高品質に保つことができる。また、ユーザーが印刷速度の上限値を設定する機能が必要ないとしている場合にも、印刷速度の上限値を設定するための一連の手段の動作を無効に設定すれば対応できる。この場合には、設定記憶手段に記憶されている上限速度の初期値はラインサーマルプリンタが本来備えている最高印刷速度としておけばよい。
【0054】
さらに、本形態のラインサーマルプリンタ1では、トランザクション時間を測定するためのデータの区切り示す制御指令として、いずれの制御指令を採用するかを区切設定指令により設定できるようになっている。従って、ラインサーマルプリンタ1が用いられる用途に即して区切り示す制御指令を選択すれば、適切な実効転送レートを取得できるので、
ラインサーマルヘッド8の印刷速度の上限値を適切なものに設定することができる。
【0055】
なお、本実施の形態のラインプリンタの印刷ヘッドはライン型サーマルヘッドであったが、他の方式の印刷ヘッドを備えたラインプリンタに本発明を適用することもできる。
【0056】
また、ホストコンピュータ30とラインサーマルプリンタ1とを接続する通信インターフェース2がどのような通信インターフェース2であっても本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明を適用したラインサーマルプリンタを含む会計処理システムの概略構成図である。
【図2】取得した実効転送レートに基づいて印刷速度を設定する動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
1・ラインサーマルプリンタ、2・通信インターフェース、4・記録紙、6・受信バッファ、7・制御部、8・ラインサーマルヘッド、9・印刷バッファ、10・ラッチ回路、11・ステッピングモータ、12・プラテンローラ、13・駆動制御手段、14・設定記憶手段、15・平均転送レート取得手段、16・実効転送レート取得手段、17・上限速度算出記憶手段、18・上限値設定手段、19・動作設定検出手段、20・印刷モード検出手段、21・画像記憶部、30・ホストコンピュータ、40・会計処理システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部装置から受信する印刷データを、ライン型印刷ヘッドにより1ラインずつ印刷するラインプリンタの印刷制御方法であって、
受信した前記印刷データを、前記ライン型印刷ヘッドによる1ライン分毎、印刷バッファに展開するデータ量と、
前記印刷データを受信する受信時間と、
から実効転送レートとして取得する実効転送レート取得工程と、
1ライン分の印刷毎に印刷データの受信待ちのための印刷中断状態が生じないように、前記実効転送レートに基づいて、前記ラインプリンタが前記ライン型印刷ヘッドの上限速度を算出して記憶する上限速度算出工程と、
前記上限速度を印刷速度の上限値として設定する上限値設定工程と、
設定された上限値以下の印刷速度で前記ライン型印刷ヘッドを駆動すると共に、記録媒体を当該印刷速度に対応する搬送速度で搬送して、印刷を行わせる印刷工程と、
を含むことを特徴とするラインプリンタの印刷制御方法。
【請求項2】
請求項1において、
印刷データの受信待ちを必要としない印刷モードであるか否かを判定する印刷モード判定工程と、
前記印刷モード判定工程において、印刷データの受信待ちを必要としない印刷モードであると判定された場合には、前記実効転送レートに拘りなく、前記ライン型印刷ヘッドを最高印刷速度で駆動する最高速度印刷工程を含むことを特徴とするラインプリンタの印刷制御方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記の印刷データの受信待ちを必要としない印刷モードには、受信した印刷データを当該印刷データの区切りまで印刷バッファに蓄えた後に印刷を開始するモードが含まれていることを特徴とするラインプリンタの印刷制御方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記実効転送レート取得工程は、前記外部装置から送信される印刷データを受信する受信工程と、
前記受信工程で印刷データの中に印刷データの区切りを示す制御指令を検出すると、当該制御指令の後から次に前記制御指令と同じ制御指令を受信するまでのトランザクション時間を計測するトランザクション時間計測工程と、
計測された前記トランザクション時間に受信した前記印刷データから印刷バッファに展開される1ライン分毎の印刷データのデータ量を測定するデータ量測定工程と、
計測された前記トランザクション時間と測定された前記データ量とから印刷データの転送レートを逐次取得する転送レート取得工程と、
逐次取得される前記転送レートを平均して平均転送レートを取得する平均転送レート取得工程とを含んでおり、
前記平均転送レートを所定のタイミングで実効転送レートとして取得することを特徴とするラインプリンタの印刷制御方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記実効転送レート取得工程は、前記平均転送レート取得手段で取得した前記平均転送レートを不揮発性メモリに記憶保持する平均転送レート記憶保持工程を含み、
前記ラインプリンタの電源投入時には、前記実効転送レート取得工程は、前記平均転送レート記憶保持工程で不揮発性メモリに記憶保持されている前記平均転送レートを実効転送レートとして取得することを特徴とするラインプリンタの印刷制御方法。
【請求項6】
請求項4または5において、
前記外部装置からの設定指令に基づき、前記区切りを示す制御指令を設定する制御指令設定工程を含むことを特徴とするラインプリンタの印刷制御方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記外部装置からの設定指令に基づき、前記上限値の設定を行なうか否かを決める工程を備えていることを特徴とするラインプリンタの印刷制御方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記上限値の設定を行なわない場合には、前記ライン型印刷ヘッドを最高印刷速度で駆動することを特徴とするラインプリンタの印刷制御方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかにおいて
前記ラインプリンタはラインサーマルプリンタであることを特徴とするラインプリンタの印刷制御方法。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の印刷制御方法によって、外部装置から送信される印刷データを印刷することを特徴とするラインプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−18584(P2008−18584A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−191084(P2006−191084)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】