ラインヘッドおよびそれを用いた画像形成装置
【課題】発光の安定した誤動作の少ないラインヘッドおよびそれを用いた画質の劣化の少ない画像形成装置を提供すること。
【解決手段】有機EL素子2951は、ガラス基板293の遮光部材297に対向するおもて面2931とは反対のうら面2932に設けられている。有機EL素子2951から射出された光ビームは、ガラス基板293を透過しおもて面2931に向かう。ここで、光ビームの一部は、遮光部材297とガラス基板293との接触部300へと向かう。接触部300には光吸収層2972が設けられているので、そこでの反射が抑えられ、再びガラス基板293のうら面2932に向かう光ビームが減少し、ガラス基板293のうら面2932に設けられた有機EL素子2951およびその駆動回路296への光ビームによる影響を低減できる。したがって、発光の安定した誤動作の少ないラインヘッド29を得ることができる。
【解決手段】有機EL素子2951は、ガラス基板293の遮光部材297に対向するおもて面2931とは反対のうら面2932に設けられている。有機EL素子2951から射出された光ビームは、ガラス基板293を透過しおもて面2931に向かう。ここで、光ビームの一部は、遮光部材297とガラス基板293との接触部300へと向かう。接触部300には光吸収層2972が設けられているので、そこでの反射が抑えられ、再びガラス基板293のうら面2932に向かう光ビームが減少し、ガラス基板293のうら面2932に設けられた有機EL素子2951およびその駆動回路296への光ビームによる影響を低減できる。したがって、発光の安定した誤動作の少ないラインヘッド29を得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被走査面に対して光ビームを走査するラインヘッドおよびそれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被走査面に対して光ビームを走査するラインヘッドとしては、例えば特許文献1に記載のように、発光素子であるLED(Light Emitting Diode)を複数個配列して構成される発光素子グループ(同特許文献における「LEDアレイチップ」)を用いたものが提案されている。特許文献1記載のラインヘッドでは、さらに、複数の発光素子グループを並べて配置するとともに、複数の発光素子グループに対して、一対一で複数の結像レンズを対向配置している。
さらに、これらLEDアレイチップと結像レンズとの間の空間は、遮光部材である遮光板等によってボックス状に囲まれ、LEDアレイチップからの光が隣の空間あるいは外部に漏れ出て印字品質を悪化させる現象、いわゆるクロストークを発生させない構成が知られている。
発光素子としての有機EL(Electro Luminescence)を透明基板であるガラス基板または基板シリコンに形成した例が、特許文献2に記載されている。特許文献2では、有機ELは、シリコン基板の一方の面に駆動回路とともに形成され、基板に貫通孔を設け基板の他方の面から指向性のない光ビームを取り出す構成となっている。また、有機EL素子をライン状に並べて制御することにより、ラインヘッドと用いることができる。
【0003】
【特許文献1】特許2510423号公報(4頁、図1および図2)
【特許文献2】特開2002−170662号公報(4頁および5頁、図1および図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発光素子から射出された光ビームは、発光素子グループに対向する結像レンズにより結像されて、被走査面にスポットが形成される。
しかしながら、透明基板の一方の面(うら面とする)に形成された発光素子である有機ELで射出される指向性のない光ビームは、透明基板を透過してその一部が他方の面(おもて面とする)と対向する遮光板等に向かい、遮光板等で色々な角度で反射される。特に、反射された光ビームのうち、うら面に向かう光ビームは、うら面に形成された発光素子や駆動回路に入射し、発光素子の発光が乱れたり、駆動回路が誤動作したりする。それによって、画像形成装置で得られる画像が劣化する。
本発明の目的は、発光の安定した誤動作の少ないラインヘッドおよびそれを用いた画質の劣化の少ない画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のラインヘッドは、被走査面に光ビームを結像してスポットを形成するラインヘッドであって、発光素子を複数個有するとともに、前記光ビームを透過可能な透明基板に離散的に並べて配置された複数の発光素子グループと、前記発光素子グループに対して一対一で対応して配置されるとともに、それぞれが対向する前記発光素子グループに属する複数の前記発光素子から射出される前記光ビームを前記被走査面に結像する複数の結像レンズと、その一方面が前記透明基板に対向するとともにその他方面が前記複数の結像レンズに対向するように配置され、さらに、複数の前記発光素子グループに対して一対一で前記一方面から前記他方面に貫通して穿設された複数の導光孔を有する遮光部材とを備え、前記透明基板のおもて面が前記遮光部材に対向するように配置され、前記発光素子および前記発光素子の駆動回路が前記透明基板のうら面に設けられ、前記遮光部材と前記透明基板との接触部が光吸収性を有していることを特徴とする。
【0006】
この発明によれば、発光素子から射出される光ビームを、被走査面に結像する発光素子に対応した結像レンズに導くために、導光孔を有する遮光部材を備えている。ここで、発光素子は、透明基板の遮光部材に対向するおもて面とは反対のうら面に設けられている。発光素子から射出された光ビームは、透明基板を透過しおもて面に向かう。ここで、光ビームの一部は、遮光部材と透明基板との接触部へと向かう。接触部は光吸収性を有しているので、そこでの反射が抑えられ、再び透明基板のうら面に向かう光ビームが減少し、透明基板のうら面に設けられた発光素子およびその駆動回路への光ビームによる影響が低減される。したがって、発光の安定した誤動作の少ないラインヘッドが得られる。
【0007】
本発明では、前記導光孔の内面が光吸収性を有しているのが好ましい。
この発明では、導光孔の内面が光吸収性を有するので、導光孔の内面での光ビームの反射が減少する。したがって、前述の効果に加えて、被走査面でのゴーストの発生が抑えられ、良好なスポットが形成されるラインヘッドが得られる。
【0008】
本発明では、前記発光素子は、有機EL素子であるのが好ましい。
この発明では、光ビームによる発光に対する影響の大きな有機EL素子に対し、より前述の効果が得られる。
【0009】
本発明では、前記駆動回路は、TFTを含むのが好ましい。
この発明では、光ビームによる誤動作の大きなTFTに対し、より前述の効果が得られる。
【0010】
本発明の画像形成装置は、その表面が副走査方向に搬送される潜像担持体と、前記潜像担持体の表面を被走査面として該潜像担持体表面にスポットを形成する前述のラインヘッドと同一構成を有する露光手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、前述の効果を有するラインヘッドと同一構成を有する露光手段を備えているので、発光が安定し、誤動作が少なくなる。したがって、所定スポットから画像が形成され、画質の劣化の少ない画像形成装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態にかかる画像形成装置1および露光手段としてのラインヘッド29を示す図である。
また、図2は図1の画像形成装置1およびラインヘッド29の電気的構成を示す図である。
【0013】
画像形成装置1は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能である。
図1において、画像形成装置1は、各色に対応した画像を形成するためのラインヘッド29を備えている。なお、図1はカラーモード実行時に対応する図である。
【0014】
図2において、この画像形成装置1では、ホストコンピューターなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリなどを有するメインコントローラMCに与えられると、このメインコントローラMCはエンジンコントローラECに制御信号などを与えるとともに画像形成指令に対応するビデオデータVDをヘッドコントローラHCに与える。また、このヘッドコントローラHCは、メインコントローラMCからのビデオデータVDとエンジンコントローラECからの垂直同期信号Vsyncおよびパラメータ値とに基づき各色のラインヘッド29を制御する。これによって、エンジン部EGが所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シート等のシートに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0015】
図1において、画像形成装置1は、ハウジング本体3を備えている。ハウジング本体3内には、電源回路基板、メインコントローラMC、エンジンコントローラECおよびヘッドコントローラHCを内蔵する電装品ボックス5が設けられている。
また、画像形成ユニット7、転写ベルトユニット8および給紙ユニット11もハウジング本体3内に配設されている。
さらに、ハウジング本体3内には、2次転写ユニット12、定着ユニット13、シート案内部材15が配設されている。
なお、給紙ユニット11および転写ベルトユニット8については、それぞれ取り外して修理または交換を行うことが可能な構成になっている。
【0016】
画像形成ユニット7は、複数の異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーションY(イエロー用)、M(マゼンダ用)、C(シアン用)、K(ブラック用)を備えている。また、各画像形成ステーションY、M、C、Kには、それぞれの色のトナー像がその表面に形成される潜像担持体としての感光体ドラム21が設けられている。各感光体ドラム21はそれぞれ専用の駆動モータに接続され、図中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。これにより被走査面としての感光体ドラム21の表面211が副走査方向に搬送されることとなる。
【0017】
感光体ドラム21の周囲には、回転方向に沿って帯電部23、ラインヘッド29、現像部25および感光体クリーナ27が配設されている。これらによって、それぞれ帯電動作、静電潜像形成動作、トナー現像動作およびクリーニング動作が実行される。
カラーモード実行時は、全ての画像形成ステーションY、M、C、Kで形成されたトナー像を転写ベルトユニット8が有する転写ベルト81に重ね合わせてカラー画像を形成するとともに、モノクロモード実行時は、画像形成ステーションKで形成されたトナー像のみを用いてモノクロ画像を形成する。
なお、図1において、画像形成ユニット7の各画像形成ステーションは構成が互いに同一のため、図示の便宜上一部の画像形成ステーションのみに符号をつけて、他の画像形成ステーションについては符号を省略する。
【0018】
帯電部23は、その表面が弾性ゴムで構成された帯電ローラを備えている。この帯電ローラは帯電位置で感光体ドラム21の表面211と当接して従動回転するように構成されており、感光体ドラム21の回転動作に伴って感光体ドラム21に対して従動方向に周速で従動回転する。また、この帯電ローラは、図示しない帯電バイアス発生部に接続されており、帯電バイアス発生部からの帯電バイアスの給電を受けて帯電部23と感光体ドラム21が当接する帯電位置で感光体ドラム21の表面211を帯電させる。
【0019】
ラインヘッド29は、帯電部23により帯電された感光体ドラム21の表面211に対して光を照射して表面211に静電潜像を形成する。
以下に、図2に基づいて、ラインヘッド29の制御について詳しく説明する。
本実施形態では、画像形成指令に含まれる画像データがメインコントローラMCの画像処理部51に入力される。そして、該画像データに対して種々の画像処理が施されて各色のビデオデータVDが作成されるとともに、該ビデオデータVDがメイン側通信モジュール52を介してヘッドコントローラHCに与えられる。また、ヘッドコントローラHCでは、ビデオデータVDはヘッド側通信モジュール53を介してヘッド制御モジュール54に与えられる。このヘッド制御モジュール54には、上記したように静電潜像形成に関連するパラメータ値を示す信号と垂直同期信号VsyncがエンジンコントローラECから与えられている。そして、これらの信号およびビデオデータVDなどに基づきヘッドコントローラHCは各色のラインヘッド29に対して素子駆動を制御するための信号を作成し、各ラインヘッド29に出力する。こうすることで、各ラインヘッド29において図示しない発光素子としての有機EL素子2951(図3参照)の作動が適切に制御されて画像形成指令に対応する静電潜像が形成される。
なお、有機EL素子2951を備えたラインヘッド29の構成については後に詳しく述べる。
【0020】
図1において、現像部25は、その表面にトナーを担持する現像ローラ251を有する。そして、現像ローラ251と電気的に接続された図示しない現像バイアス発生部から現像ローラ251に印加される現像バイアスによって、現像ローラ251と感光体ドラム21とが当接する現像位置において、帯電トナーが現像ローラ251から感光体ドラム21に移動してラインヘッド29により形成された静電潜像が顕在化され、トナー像となる。
【0021】
このように上記現像位置において顕在化されたトナー像は、感光体ドラム21の回転方向D21に搬送された後、後に詳述する転写ベルト81と各感光体ドラム21が当接する1次転写位置TR1において転写ベルト81に1次転写される。
【0022】
また、本実施形態では、感光体ドラム21の回転方向D21の1次転写位置TR1の下流側で且つ帯電部23の上流側に、感光体ドラム21の表面211に当接して感光体クリーナ27が設けられている。この感光体クリーナ27は、感光体ドラム21の表面211に当接することで1次転写後に感光体ドラム21の表面211に残留するトナーをクリーニング除去する。
【0023】
本実施形態においては、各画像形成ステーションY、M、C、Kの感光体ドラム21、帯電部23、現像部25および感光体クリーナ27を感光体カートリッジとしてユニット化している。また、各感光体カートリッジには、該感光体カートリッジに関する情報を記憶するための不揮発性メモリがそれぞれ設けられている。そして、エンジンコントローラECと各感光体カートリッジとの間で無線通信が行われる。こうすることで、各感光体カートリッジに関する情報がエンジンコントローラECに伝達されるとともに、各メモリ内の情報が更新記憶される。
【0024】
転写ベルトユニット8は、駆動ローラ82と、図1において駆動ローラ82の左側に配設される従動ローラ83(ブレード対向ローラ)と、これらのローラに張架され図示矢印D81の方向(搬送方向)へ循環駆動される転写ベルト81とを備えている。また、転写ベルトユニット8は、転写ベルト81の内側に、感光体カートリッジ装着時において各画像形成ステーションY、M、C、Kが有する感光体ドラム21各々に対して一対一で対向配置される、4個の1次転写ローラ85Y、85M、85C、85Kを備えている。これらの1次転写ローラ85は、それぞれ図示しない1次転写バイアス発生部と電気的に接続される。そして、後に詳述するように、カラーモード実行時は、図1に示すように全ての1次転写ローラ85Y、85M、85C、85Kを画像形成ステーションY、M、C、K側に位置決めすることで、転写ベルト81を画像形成ステーションY、M、C、Kそれぞれが有する感光体ドラム21に押し遣り当接させて、各感光体ドラム21と転写ベルト81との間に1次転写位置TR1を形成する。そして、適当なタイミングで上記1次転写バイアス発生部から1次転写ローラ85に1次転写バイアスを印加することで、各感光体ドラム21の表面211上に形成されたトナー像を、それぞれに対応する1次転写位置TR1において転写ベルト81表面に転写してカラー画像を形成する。
【0025】
一方、モノクロモード実行時は、4個の1次転写ローラ85のうち、カラー1次転写ローラ85Y、85M、85Cをそれぞれが対向する画像形成ステーションY、M、Cから離間させるとともにモノクロ1次転写ローラ85Kのみを画像形成ステーションKに当接させることで、モノクロ画像形成ステーションKのみを転写ベルト81に当接させる。その結果、モノクロ1次転写ローラ85Kと画像形成ステーションKとの間にのみ1次転写位置TR1が形成される。そして、適当なタイミングで前記1次転写バイアス発生部からモノクロ1次転写ローラ85Kに1次転写バイアスを印加することで、各感光体ドラム21の表面211上に形成されたトナー像を、1次転写位置TR1において転写ベルト81表面に転写してモノクロ画像を形成する。
【0026】
さらに、転写ベルトユニット8は、モノクロ1次転写ローラ85Kの下流側で且つ駆動ローラ82の上流側に配設された下流ガイドローラ86を備える。また、この下流ガイドローラ86は、モノクロ1次転写ローラ85Kが画像形成ステーションKの感光体ドラム21に当接して形成する1次転写位置TR1での1次転写ローラ85Kと感光体ドラム21との共通内接線上において、転写ベルト81に当接するように構成されている。
【0027】
給紙ユニット11は、シートを積層保持可能である給紙カセット77と、給紙カセット77からシートを一枚ずつ給紙するピックアップローラ79とを有する給紙部を備えている。ピックアップローラ79により給紙部から給紙されたシートは、レジストローラ対80において給紙タイミングが調整された後、シート案内部材15に沿って2次転写位置TR2に給紙される。
【0028】
2次転写ユニット12は、2次転写ローラ121と駆動ローラ82とを備えている。
駆動ローラ82は、転写ベルト81を図示矢印D81の方向に循環駆動するとともに、2次転写ローラ121のバックアップローラを兼ねている。駆動ローラ82の周面には、厚さ3mm程度、体積抵抗率が1000kΩ・cm以下のゴム層が形成されており、金属製の軸を介して接地することにより、図示しない2次転写バイアス発生部から2次転写ローラ121を介して供給される2次転写バイアスの導電経路としている。このように駆動ローラ82に高摩擦で、且つ衝撃吸収性を有するゴム層を設けることにより、駆動ローラ82と2次転写ローラ121との当接部分である2次転写位置TR2へのシートが進入する際の衝撃が転写ベルト81に伝達しにくく、画質の劣化を防止することができる。
2次転写ローラ121は、転写ベルト81に対して離当接自在に設けられ、図示しない2次転写ローラ駆動機構により離当接駆動される。
2次転写位置TR2に給紙されたシートには、転写ベルト81に転写された画像が2次転写される。
【0029】
定着ユニット13は、ハロゲンヒータ等の発熱体を内蔵して回転自在な加熱ローラ131と、この加熱ローラ131を押圧付勢する加圧部132とを有している。
加圧部132は、2つのローラ1321,1322と、これらに張架される加圧ベルト1323とで構成されている。
画像が2次転写されたシートは、シート案内部材15により、加熱ローラ131と加圧部132の加圧ベルト1323とで形成するニップ部に案内され、該ニップ部において所定の温度で画像が熱定着される。
加圧ベルト1323の表面のうち、2つのローラ1321,1322により張られたベルト張面を加熱ローラ131の周面に押し付けることで、加熱ローラ131と加圧ベルト1323とで形成するニップ部が広くとれるように構成されている。
定着処理を受けたシートは、ハウジング本体3の上面部に設けられた排紙トレイ4に搬送される。
【0030】
また、画像形成装置1では、ブレード対向ローラ83に対向してクリーナ部71が配設されている。クリーナ部71は、クリーナブレード711と廃トナーボックス713とを備えている。
クリーナブレード711は、その先端部を転写ベルト81を介してブレード対向ローラ83に当接することで、2次転写後に転写ベルトに残留するトナーや紙粉等の異物を除去する。そして、このように除去された異物は、廃トナーボックス713に回収される。また、クリーナブレード711および廃トナーボックス713は、ブレード対向ローラ83と一体的に構成されている。
【0031】
以下に、本実施形態におけるラインヘッド29を図面に基づいて詳しく説明する。
図3は、本発明の実施形態にかかるラインヘッド29の概略を示す斜視図である。また、図4は、ラインヘッド29の副走査方向の断面図である。
図1および図3において、ラインヘッド29は、感光体ドラム21の軸方向(図1の紙面に対して垂直な方向)に配列された複数の有機EL素子2951からなる発光素子グループ295を備えるとともに、感光体ドラム21から離間配置されている。そして、これらの有機EL素子2951から、帯電部23により帯電された感光体ドラム21の被走査面である表面211に対して光を照射して表面211に静電潜像を形成する。
【0032】
図3において、本実施形態におけるラインヘッド29は、主走査方向XXを長手方向とするケース291を備えるとともに、かかるケース291の両端には、位置決めピン2911とねじ挿入孔2912が設けられている。そして、かかる位置決めピン2911を、感光体ドラム21を覆うとともに感光体ドラム21に対して位置決めされた図示しない感光体カバーに穿設された位置決め孔に嵌め込むことで、ラインヘッド29が感光体ドラム21に対して位置決めされている。そしてさらに、ねじ挿入孔2912を介して固定ねじを感光体カバーのねじ孔(図示省略)にねじ込んで固定することで、ラインヘッド29が感光体ドラム21に対して位置決め固定されている。
【0033】
図3および図4において、ケース291は、感光体ドラム21の表面211に対向する位置に結像レンズが配列されたマイクロレンズアレイ299を保持するとともに、その内部に、マイクロレンズアレイ299に近い順番で、遮光部材297および透明基板としてのガラス基板293を備えている。
ガラス基板293のうら面2932(ガラス基板293が有する2つの面のうち遮光部材297に対向するおもて面2931と逆側の面)には、複数の発光素子グループ295およびそれを駆動する駆動回路296が設けられている。図3に示すように、複数の発光素子グループ295は、ガラス基板293のうら面2932に、主走査方向XXおよび副走査方向YYに互いに所定間隔だけ離れて2次元的に、離散的に並べて配置されている。ここで、複数の発光素子グループ295の各々は、図3内円で囲んだ部分に示すように、複数の有機EL素子2951を2次元的に配列して構成されている。
複数の有機EL素子2951それぞれから感光体ドラム21の方向に射出される光ビームは、ガラス基板293を透過して遮光部材297へ向かう。
【0034】
図3および図4において、遮光部材297には、複数の発光素子グループ295に対して一対一で複数の導光孔2971が穿設されている。導光孔2971は、ガラス基板293に対する垂線と平行な線(図中一点差線で示した)を中心軸として遮光部材297を貫通する略円柱状の孔として穿設されている。つまり、発光素子グループ295に属する有機EL素子2951から出た光は、該発光素子グループ295に対応する導光孔2971によって、マイクロレンズアレイ299に導かれる。そして、遮光部材297に穿設された導光孔2971を通過した光ビームは、2点鎖線で示すように、マイクロレンズアレイ299により、感光体ドラム21の表面211にスポットとして結像されることとなる。
【0035】
ここで、遮光部材297とガラス基板293との接触部300には、光吸収性を有する光吸収層2972が設けられている。
光吸収層2972としては、黒色顔料入り接着剤、つや消し黒色塗料層、クロムメッキ層、亜鉛メッキ層、ニッケルメッキ層、ニッケル−リン系メッキ層、酸化銅層、黒色アルマイト処理層、ダイアモンドライクカーボン等の黒色皮膜を用いることができる。
なお、接触部300とは、遮光部材297とガラス基板293とが対向する部分で、直接接触する部分だけでなく、光吸収層2972を介して接触する部分も含む。直接接触する場合は、遮光部材297とガラス基板293との接触する部分の表面が光吸収性を有していてもよい。
【0036】
図4に示すように、固定器具2914によって、裏蓋2913がガラス基板293を介してケース291に押圧されている。つまり、固定器具2914は、裏蓋2913をケース291側に押圧する弾性力を有するとともに、かかる弾性力により裏蓋2913を押圧することで、ケース291の内部を光密に(つまり、ケース291内部から光が漏れないように、および、ケース291の外部から光が侵入しないように)密閉している。なお、固定器具2914は、ケース291の長手方向に複数箇所設けられている。また、発光素子グループ295は、封止部材294により覆われている。
【0037】
図5は、ガラス基板293をうら面2932から見た平面図である。
ガラス基板293のうら面2932には、8個の有機EL素子2951からなる発光素子グループ295と有機EL素子2951を駆動する駆動回路296と駆動回路296に接続された信号線298とが形成されている。
駆動回路296は、TFT(Thin Film Transistor)を含んでおり、有機EL素子2951毎に形成されている。
信号線298を伝わる信号によって駆動回路296が駆動し、所定の有機EL素子2951が発光する。
【0038】
図6は、マイクロレンズアレイ299の概略を示す斜視図である。また、図7は、マイクロレンズアレイ299の主走査方向の断面図である。
図6および図7において、マイクロレンズアレイ299は、ガラス基板2991を有するとともに、ガラス基板2991を挟むように一対一で配置された2枚のレンズ2993A,2993Bにより構成されるレンズ対を複数有している。なお、これらレンズ2993A,2993Bは樹脂により形成することができる。
【0039】
図7において、ガラス基板2991の表面2991Aには複数のレンズ2993Aが配置されるとともに、複数のレンズ2993Aに一対一で対応するように、複数のレンズ2993Bがガラス基板2991の裏面2991Bに配置されている。また、レンズ対を構成する2枚のレンズ2993A,2993Bは、相互に図中一点差線で示した光軸OAを共通にする。また、これら複数のレンズ対は、複数の発光素子グループ295に一対一で配置されている。なお、この明細書では、一対一の対を成すレンズ対2993A,2993Bと、かかるレンズ対によって挟まれたガラス基板2991とから成る光学系を「マイクロレンズML」と称することとする。結像レンズとしてのマイクロレンズMLは、発光素子グループ295の配置に対応して、主走査方向XXおよび副走査方向YYに互いに所定間隔だけ離れて2次元的に配置されている。
【0040】
図8は、複数の発光素子グループ295の配置を示す図である。
本実施形態では、主走査方向XXに4個の有機EL素子2951を所定間隔毎に並べて構成される発光素子列L2951を、副走査方向YYに2列並べて、1つの発光素子グループ295を構成している。つまり、同図の2点鎖線で示される円形の1つのマイクロレンズMLの位置に対応して8個の有機EL素子2951が、発光素子グループ295を構成している。そして、複数の発光素子グループ295は次のように配置されている。
【0041】
主走査方向XXに発光素子グループ295を所定個数(2個以上)並べて構成される発光素子グループ列L295(グループ列)が副走査方向YYに3列並ぶように、発光素子グループ295は2次元的に配置されている。また、全ての発光素子グループ295は、互いに異なる主走査方向位置に配置されている。さらに、主走査方向位置が隣り合う発光素子グループ(例えば、発光素子グループ295C1と発光素子グループ295B1)の副走査方向位置が互いに異なるように、複数の発光素子グループ295は配置されている。なお、主走査方向位置および副走査方向位置とはそれぞれ注目する位置の主走査方向成分および副走査方向成分を意味する。また、本明細書において「発光素子グループの幾何重心」とは、同一の発光素子グループ295に属する全ての有機EL素子2951の位置の幾何重心を意味する。
【0042】
そして、かかる発光素子グループ295の配置に対応して、遮光部材297に導光孔2971が穿設されるとともに、マイクロレンズMLが配置される。つまり、本実施形態においては、発光素子グループ295の重心位置と、導光孔2971の中心軸と、マイクロレンズMLの光軸OAとは、略一致するように構成されている。そして、発光素子グループ295の有機EL素子2951から射出された光ビームは、対応する導光孔2971を介してマイクロレンズアレイ299に入射するとともに、マイクロレンズアレイ299により感光体ドラム21の表面211にスポットとして結像される。
【0043】
以下に、マイクロレンズアレイ299による感光体ドラム21の表面211へのスポットの結像状態を光吸収層2972を設けない場合と設けた場合とについて説明する。
図9は、本実施形態における光吸収層2972を設けない場合のマイクロレンズアレイ299による結像状態を示す図である。図10は、有機EL素子2951から射出された光ビームが向かう位置の一例を示した図である。
図11は、本実施形態における光吸収層2972を設けた場合のマイクロレンズアレイ299による結像状態を示す図である。
図9および図10において、ガラス基板293のうら面2932に、複数の発光素子グループ295および駆動回路296が離散的に並べて配置されている。そして、複数の発光素子グループ295に対して、一対一で対応して複数のマイクロレンズMLが配置されている。また、遮光部材297は、その一方面がガラス基板のおもて面2931に対向するとともにその他方面が複数のマイクロレンズMLに対向するように配置されている。そして、遮光部材297には、複数の発光素子グループ295に対して一対一で複数の導光孔2971が、遮光部材297の一方面から他方面に貫通して穿設されている。また、これら複数の導光孔2971は、対応するマイクロレンズMLの光軸OAに対して軸対称に穿設されている。
【0044】
また、図9では、マイクロレンズアレイ299の結像特性を示すために、発光素子グループ295の幾何重心位置E0と、幾何重心位置E0より所定間隔だけ離れた位置E1,E2とから射出された光ビームの軌跡を2点鎖線で表している。
かかる軌跡が示すように、各位置から射出された光ビームは、ガラス基板293のうら面2932に入射した後、ガラス基板293のおもて面2931から射出される。そして、ガラス基板293のおもて面2931から射出された光ビームはマイクロレンズアレイ299を介して被走査面である感光体ドラム21の表面211に到達する。
【0045】
発光素子グループ295の幾何重心位置E0から射出される光ビームは、感光体ドラム21の表面211と図7に示したマイクロレンズMLの光軸OAとの交点I0に結像される。これは、上述の通り、本実施形態では、発光素子グループ295の幾何重心位置E0がマイクロレンズMLの光軸OAの上に在ることに起因するものである。また、位置E1,E2から射出される光ビームは、それぞれ感光体ドラム21の表面211の位置I1,I2に結像される。つまり、位置E1から射出される光ビームは、主走査方向XXにおいてマイクロレンズMLの光軸OAを挟んで逆側の位置I1に結像されるとともに、位置E2から射出される光ビームは、主走査方向XXにおいてマイクロレンズMLの光軸OAを挟んで逆側の位置I2に結像される。即ち、マイクロレンズMLは、反転特性を有するいわゆる倒立光学系である。
【0046】
また、位置E1,E0の間の距離と比較して、光ビームが結像される位置I1,I0の間の距離は長い。即ち、本実施形態における上記光学系の倍率(光学倍率)の絶対値は1より大きい。つまり、本実施形態における上記光学系は、拡大特性を有するいわゆる拡大光学系である。このように本実施形態では、マイクロレンズMLが、本発明における「結像レンズ」として機能している。
【0047】
次に、一例として、位置E2の有機EL素子2951から射出される指向性のない光ビームのうち、遮光部材297に向かう光ビームについて説明する。この光ビームは、太い点線で示されている。
図9および図10において、遮光部材297によって反射された光ビームは、以下のように、本来結像する位置とは別の位置に向かう。
【0048】
図9において、位置E2の有機EL素子2951から射出される指向性のない光ビームのうち一部は、遮光部材297とガラス基板293との接触部300で反射し、ガラス基板のうら面2932に向かい、IGの位置に到達する。この位置IGには、発光素子グループ295およびTFTを含む駆動回路296が形成されている。
図10は、ガラス基板293をうら面2932から見た図である。導光孔2971は実線の円で描き、位置がわかるように表現してある。
E2の位置の有機EL素子2951から射出される光ビームは、接触部300で反射され、破線で示すIGの位置に広がりをもって到達する。この光ビームは、その位置の有機EL素子2951および駆動回路296に入射する。
【0049】
一方、図11に示した本実施形態においては、遮光部材297とガラス基板293との接触部300には、光吸収層2972が設けられているので、接触部300での反射が減少し、ガラス基板293のうら面2932に向かう光ビームが減少する。
【0050】
図12は、ラインヘッド29によるスポット形成動作を示す図である。
以下に、図2、図8、図12を用いて本実施形態におけるラインヘッドによるスポット形成動作を説明する。また、発明の理解を容易にするため、ここでは主走査方向XXに伸びる直線上に複数のスポットを並べて形成する場合について説明する。本実施形態では、感光体ドラム21の表面211を副走査方向YYに搬送しながら、ヘッド制御モジュール54により複数の発光素子を所定のタイミングで発光させることで、主走査方向XXに伸びる直線上に複数のスポットを並べて形成する。
【0051】
図8において、本実施形態のラインヘッド29では、副走査方向位置Y1〜Y6の各位置に対応して、副走査方向YYに6組の発光素子列L2951が並べて配置されている。本実施形態では、同一の副走査方向位置にある発光素子列L2951は、略同一のタイミングで発光させるとともに、異なる副走査方向位置にある発光素子列L2951は、互いに異なるタイミングで発光させる。より具体的には、副走査方向位置Y1〜Y6の順番で、発光素子列L2951を発光させる。そして、感光体ドラム21の表面211を副走査方向YYに搬送しながら、上述の順番で発光素子列L2951を発光させることで、表面211の主走査方向XXに伸びる直線上に複数のスポットを並べて形成する。
【0052】
かかる動作を、図8、図12を用いて説明する。最初に、副走査方向YYに最上流の発光素子グループ295A1,295A2,295A3,…に属する副走査方向位置Y1の発光素子列L2951の有機EL素子2951を発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光ビームは、上述の反転拡大特性を有する「結像レンズ」により、反転されつつ拡大されて感光体ドラム21の表面211に結像される。つまり、図12の「1回目」のハッチングパターンの位置にスポットが形成される。
なお、同図において、白抜きの丸印は、未だ形成されておらず今後形成される予定のスポットを表す。また、同図において、符号295C1,295B1,295A1,295C2でラベルされたスポットは、それぞれに付された符号に対応する発光素子グループ295により形成されるスポットであることを示す。
【0053】
次に、同発光素子グループ295A1,295A2,295A3,…に属する副走査方向位置Y2の発光素子列L2951の有機EL素子2951を発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光ビームは、マイクロレンズMLにより、反転されつつ拡大されて感光体ドラム21の表面211に結像される。つまり、図12において、「2回目」のハッチングパターンの位置にスポットが形成される。ここで、感光体ドラム21の表面211の搬送方向が副走査方向YYであるのに対して、副走査方向YYの下流側の発光素子列L2951から順番に(つまり、副走査方向位置Y1,Y2の順番に)発光させたのは、マイクロレンズMLが反転特性を有することに対応するためである。
【0054】
次に、副走査方向YYの上流側から2番目の発光素子グループ295B1,295B2,295B3,…に属する副走査方向位置Y3の発光素子列L2951の有機EL素子2951を発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光ビームは、マイクロレンズMLより、反転されつつ拡大されて感光体ドラム21の表面211に結像される。つまり、図12の「3回目」のハッチングパターンの位置にスポットが形成される。
【0055】
次に、同発光素子グループ295B1,295B2,295B3,…に属する副走査方向位置Y4の発光素子列L2951の有機EL素子2951を発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光ビームは、マイクロレンズMLにより、反転されつつ拡大されて感光体ドラム21の表面211に結像される。つまり、図12の「4回目」のハッチングパターンの位置にスポットが形成される。
【0056】
次に、副走査方向YY最下流の発光素子グループ295C1,295C2,295C3,…に属する副走査方向位置Y5の発光素子列L2951の有機EL素子2951を発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光ビームは、マイクロレンズMLにより、反転されつつ拡大されて感光体ドラム21の表面211に結像される。つまり、図12の「5回目」のハッチングパターンの位置にスポットが形成される。
【0057】
そして最後に、同発光素子グループ295C1,295C2,295C3,…に属する副走査方向位置Y6の発光素子列L2951の有機EL素子2951を発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光ビームは、マイクロレンズMLにより、反転されつつ拡大されて感光体ドラム21の表面211に結像される。つまり、図12の「6回目」のハッチングパターンの位置にスポットが形成される。このように、1〜6回目までの発光動作を実行することで、主走査方向XXに伸びる直線上に複数のスポットを並べて形成する。
【0058】
このような本実施形態によれば、以下の効果がある。
(1)有機EL素子2951から射出される光ビームを、その光ビームを表面211に結像する有機EL素子2951に対応したマイクロレンズアレイMLに導くために、導光孔2971を有する遮光部材297を備えている。また、有機EL素子2951は、ガラス基板293の遮光部材297に対向するおもて面2931とは反対のうら面2932に設けられている。有機EL素子2951から射出された光ビームは、ガラス基板293を透過しおもて面2931に向かう。ここで、光ビームの一部は、遮光部材297とガラス基板293との接触部300へと向かう。接触部300には光吸収層2972が設けられているので、接触部300での反射が抑えられ、再びガラス基板293のうら面2932に向かう光ビームが減少し、ガラス基板293のうら面2932に設けられた有機EL素子2951およびその駆動回路296への光ビームによる影響を低減できる。したがって、発光の安定した誤動作の少ないラインヘッド29を得ることができる。
【0059】
(2)光ビームによる発光への影響が大きな有機EL素子2951に対し、より前述の効果を得ることができる。
【0060】
(3)光ビームによる誤動作の大きなTFTに対し、より前述の効果を得ることができる。
【0061】
(4)前述の効果を有するラインヘッド29と同一構成を有する露光手段を備えているので、発光を安定し、誤動作を少なくできる。したがって、所定スポットから画像を形成でき、画質の劣化の少ない画像形成装置1を得ることができる。
【0062】
(第2実施形態)
本実施形態と第1実施形態とは、光吸収層2972の設けられた位置が異なる以外は同様の構成となっている。
以下に、マイクロレンズアレイ299による感光体ドラム21の表面211へのスポットの結像状態を光吸収層2972を設けない場合と設けた場合とについて説明する。
図13は、本実施形態における光吸収層2972を設けない場合のマイクロレンズアレイ299による結像状態を示す図である。
図14は、本実施形態における光吸収層2972を設けた場合のマイクロレンズアレイ299による結像状態を示す図である。
【0063】
位置E0,E2の有機EL素子2951から射出される指向性のない光ビームのうち、遮光部材297に向かう光ビームの反射について説明する。これらの光ビームは、一例として太い点線で示されている。
図13において、遮光部材297によって、光ビームが隣接するマイクロレンズアレイMLに直接入射するいわゆるクロストークは防げる。しかしながら、遮光部材297によって反射された光ビームは、以下のように、本来結像する位置とは別の位置に向かう。そして、被走査面上である表面211でいわゆるゴーストを発生させる。
なお、接触部300における光ビームの反射の様子は、第1実施形態と同様である。
【0064】
反射される光ビームのうち、発光素子グループ295側の導光孔2971の内面2970に入射角θ1で入射した光ビームは、小さな反射角θ1で反射され、マイクロレンズアレイMLに大きな入射角で入射する。この光ビームは、本来の結像位置I0とは大きく外れたIθ1の位置に向かい、感光体ドラム21の表面211上にゴーストを発生させる。
反射位置がマイクロレンズアレイMLに近づくにつれ、光ビームの入射角および反射角は、θ2、θ3と大きくなる。それにしたがい、ゴーストの発生位置もIθ2、Iθ3と本来の結像位置I0に近づく。
【0065】
一方、図14に示した本実施形態においては、接触部300の他に導光孔2971の内面2970全体に光吸収層2972が設けられているので、内面2970に対してどんな入射角の光ビームであっても内面2970での反射が減少し、ゴーストの発生が抑えられる。
【0066】
このような本実施形態によれば、以下の効果がある。
(5)導光孔2971の内面2970も光吸収性を有するので、導光孔2971の内面2970での光ビームの反射を減少できる。したがって、前述の効果に加えて、表面211でのゴーストの発生を抑えることができ、良好なスポットが形成されるラインヘッド29および同様の効果を有する画像形成装置1を得ることができる。
【0067】
なお、本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
各実施形態では透明基板をガラスで構成しているが、透明基板の材質がガラスに限られないことは言うまでもない。つまり、光ビームを透過可能である材質により透明基板を構成することができる。
【0068】
また、第2実施形態においては、導光孔2971の内面2970全体に光吸収層2972を設けたが、内面の一部に設けても前述の効果がある。例えば、発光素子グループ295側の導光孔2971の内面2970での反射は、マイクロレンズアレイMLに大きな入射角で入射し、顕著なゴーストを発生するので、その反射を抑えるために、発光素子グループ295側の導光孔2971の内面2970にのみ光吸収層2972を設けてもよい。
【0069】
また、上記各実施形態では、図8で示すように、複数の発光素子グループ295を配置している。つまり、主走査方向XXに4個の有機EL素子2951を所定間隔毎に並べて構成される発光素子列L2951を、副走査方向YYに2列並べて、1つの発光素子グループ295を構成している。しかしながら、発光素子グループ295を構成する有機EL素子2951の個数や、これら複数の有機EL素子2951の配置方法はこれに限られるものではなく、適宜変更が可能である。ただし、複数の有機EL素子2951の配置については、上記対称配置を採用することで良好なスポット形成が簡易に実現されるという点で好適であるということは、上述の通りである。
【0070】
また、上記各実施形態では、主走査方向XXに発光素子グループ295を所定個数(2個以上)並べて構成される発光素子グループ列L295(グループ列)が副走査方向YYに3列並ぶように、発光素子グループ295は2次元的に配置されている。しかし、複数の発光素子グループ295の配置の態様は、これに限られるものではなく適宜変更が可能である。
【0071】
また、上記各実施形態では、結像レンズとして拡大光学系を採用したが、これは本発明に必須の要件ではない。つまり、倍率(光学倍率)が1未満の縮小光学系や、倍率が略1である等倍光学系を結像レンズとして用いても良い。
【0072】
また、上記各実施形態では、本発明にかかるラインヘッドを用いて、図12に示すような主走査方向XXに直線状に複数個のスポットを並べて形成している。しかしながら、かかるスポット形成動作は、本発明にかかるラインヘッドの動作の一例を示すものであり、該ラインヘッドが実行可能な動作はこれに限られるものではない。つまり、形成されるスポットは、主走査方向XXに並んで直線状に形成される必要はなく、例えば、主走査方向XXに所定の角度を有するように並べて形成しても良いし、ジグザグ状あるいは波状に形成しても良い。
【0073】
また、上記各実施形態では、カラー画像形成装置に本発明が適用されているが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、いわゆる単色画像を形成するモノクロ画像形成装置に対しても本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる画像形成装置およびラインヘッドを示す図。
【図2】画像形成装置およびラインヘッドの電気的構成を示す図。
【図3】ラインヘッドの概略を示す斜視図。
【図4】ラインヘッドの副走査方向の断面図。
【図5】ガラス基板をうら面から見た平面図。
【図6】マイクロレンズアレイの概略を示す斜視図。
【図7】マイクロレンズアレイの主走査方向の断面図。
【図8】複数の発光素子グループの配置を示す図。
【図9】第1実施形態における光吸収層を設けない場合のマイクロレンズアレイによる結像状態を示す図。
【図10】第1実施形態における光吸収層を設けない場合の有機EL素子から射出された光ビームが向かう位置の一例を示した図。
【図11】第1実施形態における光吸収層を設けた場合のマイクロレンズアレイによる結像状態を示す図。
【図12】ラインヘッドによるスポット形成動作を示す図。
【図13】本発明の第2実施形態における光吸収層を設けない場合のマイクロレンズアレイによる結像状態を示す図。
【図14】第2実施形態における光吸収層を設けた場合のマイクロレンズアレイによる結像状態を示す図。
【符号の説明】
【0075】
1…画像形成装置、21…潜像担持体としての感光体ドラム、211…被走査面としての感光体ドラムの表面、29…露光手段としてのラインヘッド、293…透明基板としてのガラス基板、2931…おもて面、2932…うら面、295…発光素子グループ、2951…発光素子としての有機EL素子、296…TFTを含む駆動回路、297…遮光部材、2971…導光孔、2972…光吸収性を有する光吸収層、299…結像レンズの集まりであるマイクロレンズアレイ、295C1,295B1,295A1,295C2…スポットの集まり、2970,2973,2974…内面、300…接触部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、被走査面に対して光ビームを走査するラインヘッドおよびそれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被走査面に対して光ビームを走査するラインヘッドとしては、例えば特許文献1に記載のように、発光素子であるLED(Light Emitting Diode)を複数個配列して構成される発光素子グループ(同特許文献における「LEDアレイチップ」)を用いたものが提案されている。特許文献1記載のラインヘッドでは、さらに、複数の発光素子グループを並べて配置するとともに、複数の発光素子グループに対して、一対一で複数の結像レンズを対向配置している。
さらに、これらLEDアレイチップと結像レンズとの間の空間は、遮光部材である遮光板等によってボックス状に囲まれ、LEDアレイチップからの光が隣の空間あるいは外部に漏れ出て印字品質を悪化させる現象、いわゆるクロストークを発生させない構成が知られている。
発光素子としての有機EL(Electro Luminescence)を透明基板であるガラス基板または基板シリコンに形成した例が、特許文献2に記載されている。特許文献2では、有機ELは、シリコン基板の一方の面に駆動回路とともに形成され、基板に貫通孔を設け基板の他方の面から指向性のない光ビームを取り出す構成となっている。また、有機EL素子をライン状に並べて制御することにより、ラインヘッドと用いることができる。
【0003】
【特許文献1】特許2510423号公報(4頁、図1および図2)
【特許文献2】特開2002−170662号公報(4頁および5頁、図1および図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発光素子から射出された光ビームは、発光素子グループに対向する結像レンズにより結像されて、被走査面にスポットが形成される。
しかしながら、透明基板の一方の面(うら面とする)に形成された発光素子である有機ELで射出される指向性のない光ビームは、透明基板を透過してその一部が他方の面(おもて面とする)と対向する遮光板等に向かい、遮光板等で色々な角度で反射される。特に、反射された光ビームのうち、うら面に向かう光ビームは、うら面に形成された発光素子や駆動回路に入射し、発光素子の発光が乱れたり、駆動回路が誤動作したりする。それによって、画像形成装置で得られる画像が劣化する。
本発明の目的は、発光の安定した誤動作の少ないラインヘッドおよびそれを用いた画質の劣化の少ない画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のラインヘッドは、被走査面に光ビームを結像してスポットを形成するラインヘッドであって、発光素子を複数個有するとともに、前記光ビームを透過可能な透明基板に離散的に並べて配置された複数の発光素子グループと、前記発光素子グループに対して一対一で対応して配置されるとともに、それぞれが対向する前記発光素子グループに属する複数の前記発光素子から射出される前記光ビームを前記被走査面に結像する複数の結像レンズと、その一方面が前記透明基板に対向するとともにその他方面が前記複数の結像レンズに対向するように配置され、さらに、複数の前記発光素子グループに対して一対一で前記一方面から前記他方面に貫通して穿設された複数の導光孔を有する遮光部材とを備え、前記透明基板のおもて面が前記遮光部材に対向するように配置され、前記発光素子および前記発光素子の駆動回路が前記透明基板のうら面に設けられ、前記遮光部材と前記透明基板との接触部が光吸収性を有していることを特徴とする。
【0006】
この発明によれば、発光素子から射出される光ビームを、被走査面に結像する発光素子に対応した結像レンズに導くために、導光孔を有する遮光部材を備えている。ここで、発光素子は、透明基板の遮光部材に対向するおもて面とは反対のうら面に設けられている。発光素子から射出された光ビームは、透明基板を透過しおもて面に向かう。ここで、光ビームの一部は、遮光部材と透明基板との接触部へと向かう。接触部は光吸収性を有しているので、そこでの反射が抑えられ、再び透明基板のうら面に向かう光ビームが減少し、透明基板のうら面に設けられた発光素子およびその駆動回路への光ビームによる影響が低減される。したがって、発光の安定した誤動作の少ないラインヘッドが得られる。
【0007】
本発明では、前記導光孔の内面が光吸収性を有しているのが好ましい。
この発明では、導光孔の内面が光吸収性を有するので、導光孔の内面での光ビームの反射が減少する。したがって、前述の効果に加えて、被走査面でのゴーストの発生が抑えられ、良好なスポットが形成されるラインヘッドが得られる。
【0008】
本発明では、前記発光素子は、有機EL素子であるのが好ましい。
この発明では、光ビームによる発光に対する影響の大きな有機EL素子に対し、より前述の効果が得られる。
【0009】
本発明では、前記駆動回路は、TFTを含むのが好ましい。
この発明では、光ビームによる誤動作の大きなTFTに対し、より前述の効果が得られる。
【0010】
本発明の画像形成装置は、その表面が副走査方向に搬送される潜像担持体と、前記潜像担持体の表面を被走査面として該潜像担持体表面にスポットを形成する前述のラインヘッドと同一構成を有する露光手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、前述の効果を有するラインヘッドと同一構成を有する露光手段を備えているので、発光が安定し、誤動作が少なくなる。したがって、所定スポットから画像が形成され、画質の劣化の少ない画像形成装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態にかかる画像形成装置1および露光手段としてのラインヘッド29を示す図である。
また、図2は図1の画像形成装置1およびラインヘッド29の電気的構成を示す図である。
【0013】
画像形成装置1は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能である。
図1において、画像形成装置1は、各色に対応した画像を形成するためのラインヘッド29を備えている。なお、図1はカラーモード実行時に対応する図である。
【0014】
図2において、この画像形成装置1では、ホストコンピューターなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリなどを有するメインコントローラMCに与えられると、このメインコントローラMCはエンジンコントローラECに制御信号などを与えるとともに画像形成指令に対応するビデオデータVDをヘッドコントローラHCに与える。また、このヘッドコントローラHCは、メインコントローラMCからのビデオデータVDとエンジンコントローラECからの垂直同期信号Vsyncおよびパラメータ値とに基づき各色のラインヘッド29を制御する。これによって、エンジン部EGが所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シート等のシートに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0015】
図1において、画像形成装置1は、ハウジング本体3を備えている。ハウジング本体3内には、電源回路基板、メインコントローラMC、エンジンコントローラECおよびヘッドコントローラHCを内蔵する電装品ボックス5が設けられている。
また、画像形成ユニット7、転写ベルトユニット8および給紙ユニット11もハウジング本体3内に配設されている。
さらに、ハウジング本体3内には、2次転写ユニット12、定着ユニット13、シート案内部材15が配設されている。
なお、給紙ユニット11および転写ベルトユニット8については、それぞれ取り外して修理または交換を行うことが可能な構成になっている。
【0016】
画像形成ユニット7は、複数の異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーションY(イエロー用)、M(マゼンダ用)、C(シアン用)、K(ブラック用)を備えている。また、各画像形成ステーションY、M、C、Kには、それぞれの色のトナー像がその表面に形成される潜像担持体としての感光体ドラム21が設けられている。各感光体ドラム21はそれぞれ専用の駆動モータに接続され、図中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。これにより被走査面としての感光体ドラム21の表面211が副走査方向に搬送されることとなる。
【0017】
感光体ドラム21の周囲には、回転方向に沿って帯電部23、ラインヘッド29、現像部25および感光体クリーナ27が配設されている。これらによって、それぞれ帯電動作、静電潜像形成動作、トナー現像動作およびクリーニング動作が実行される。
カラーモード実行時は、全ての画像形成ステーションY、M、C、Kで形成されたトナー像を転写ベルトユニット8が有する転写ベルト81に重ね合わせてカラー画像を形成するとともに、モノクロモード実行時は、画像形成ステーションKで形成されたトナー像のみを用いてモノクロ画像を形成する。
なお、図1において、画像形成ユニット7の各画像形成ステーションは構成が互いに同一のため、図示の便宜上一部の画像形成ステーションのみに符号をつけて、他の画像形成ステーションについては符号を省略する。
【0018】
帯電部23は、その表面が弾性ゴムで構成された帯電ローラを備えている。この帯電ローラは帯電位置で感光体ドラム21の表面211と当接して従動回転するように構成されており、感光体ドラム21の回転動作に伴って感光体ドラム21に対して従動方向に周速で従動回転する。また、この帯電ローラは、図示しない帯電バイアス発生部に接続されており、帯電バイアス発生部からの帯電バイアスの給電を受けて帯電部23と感光体ドラム21が当接する帯電位置で感光体ドラム21の表面211を帯電させる。
【0019】
ラインヘッド29は、帯電部23により帯電された感光体ドラム21の表面211に対して光を照射して表面211に静電潜像を形成する。
以下に、図2に基づいて、ラインヘッド29の制御について詳しく説明する。
本実施形態では、画像形成指令に含まれる画像データがメインコントローラMCの画像処理部51に入力される。そして、該画像データに対して種々の画像処理が施されて各色のビデオデータVDが作成されるとともに、該ビデオデータVDがメイン側通信モジュール52を介してヘッドコントローラHCに与えられる。また、ヘッドコントローラHCでは、ビデオデータVDはヘッド側通信モジュール53を介してヘッド制御モジュール54に与えられる。このヘッド制御モジュール54には、上記したように静電潜像形成に関連するパラメータ値を示す信号と垂直同期信号VsyncがエンジンコントローラECから与えられている。そして、これらの信号およびビデオデータVDなどに基づきヘッドコントローラHCは各色のラインヘッド29に対して素子駆動を制御するための信号を作成し、各ラインヘッド29に出力する。こうすることで、各ラインヘッド29において図示しない発光素子としての有機EL素子2951(図3参照)の作動が適切に制御されて画像形成指令に対応する静電潜像が形成される。
なお、有機EL素子2951を備えたラインヘッド29の構成については後に詳しく述べる。
【0020】
図1において、現像部25は、その表面にトナーを担持する現像ローラ251を有する。そして、現像ローラ251と電気的に接続された図示しない現像バイアス発生部から現像ローラ251に印加される現像バイアスによって、現像ローラ251と感光体ドラム21とが当接する現像位置において、帯電トナーが現像ローラ251から感光体ドラム21に移動してラインヘッド29により形成された静電潜像が顕在化され、トナー像となる。
【0021】
このように上記現像位置において顕在化されたトナー像は、感光体ドラム21の回転方向D21に搬送された後、後に詳述する転写ベルト81と各感光体ドラム21が当接する1次転写位置TR1において転写ベルト81に1次転写される。
【0022】
また、本実施形態では、感光体ドラム21の回転方向D21の1次転写位置TR1の下流側で且つ帯電部23の上流側に、感光体ドラム21の表面211に当接して感光体クリーナ27が設けられている。この感光体クリーナ27は、感光体ドラム21の表面211に当接することで1次転写後に感光体ドラム21の表面211に残留するトナーをクリーニング除去する。
【0023】
本実施形態においては、各画像形成ステーションY、M、C、Kの感光体ドラム21、帯電部23、現像部25および感光体クリーナ27を感光体カートリッジとしてユニット化している。また、各感光体カートリッジには、該感光体カートリッジに関する情報を記憶するための不揮発性メモリがそれぞれ設けられている。そして、エンジンコントローラECと各感光体カートリッジとの間で無線通信が行われる。こうすることで、各感光体カートリッジに関する情報がエンジンコントローラECに伝達されるとともに、各メモリ内の情報が更新記憶される。
【0024】
転写ベルトユニット8は、駆動ローラ82と、図1において駆動ローラ82の左側に配設される従動ローラ83(ブレード対向ローラ)と、これらのローラに張架され図示矢印D81の方向(搬送方向)へ循環駆動される転写ベルト81とを備えている。また、転写ベルトユニット8は、転写ベルト81の内側に、感光体カートリッジ装着時において各画像形成ステーションY、M、C、Kが有する感光体ドラム21各々に対して一対一で対向配置される、4個の1次転写ローラ85Y、85M、85C、85Kを備えている。これらの1次転写ローラ85は、それぞれ図示しない1次転写バイアス発生部と電気的に接続される。そして、後に詳述するように、カラーモード実行時は、図1に示すように全ての1次転写ローラ85Y、85M、85C、85Kを画像形成ステーションY、M、C、K側に位置決めすることで、転写ベルト81を画像形成ステーションY、M、C、Kそれぞれが有する感光体ドラム21に押し遣り当接させて、各感光体ドラム21と転写ベルト81との間に1次転写位置TR1を形成する。そして、適当なタイミングで上記1次転写バイアス発生部から1次転写ローラ85に1次転写バイアスを印加することで、各感光体ドラム21の表面211上に形成されたトナー像を、それぞれに対応する1次転写位置TR1において転写ベルト81表面に転写してカラー画像を形成する。
【0025】
一方、モノクロモード実行時は、4個の1次転写ローラ85のうち、カラー1次転写ローラ85Y、85M、85Cをそれぞれが対向する画像形成ステーションY、M、Cから離間させるとともにモノクロ1次転写ローラ85Kのみを画像形成ステーションKに当接させることで、モノクロ画像形成ステーションKのみを転写ベルト81に当接させる。その結果、モノクロ1次転写ローラ85Kと画像形成ステーションKとの間にのみ1次転写位置TR1が形成される。そして、適当なタイミングで前記1次転写バイアス発生部からモノクロ1次転写ローラ85Kに1次転写バイアスを印加することで、各感光体ドラム21の表面211上に形成されたトナー像を、1次転写位置TR1において転写ベルト81表面に転写してモノクロ画像を形成する。
【0026】
さらに、転写ベルトユニット8は、モノクロ1次転写ローラ85Kの下流側で且つ駆動ローラ82の上流側に配設された下流ガイドローラ86を備える。また、この下流ガイドローラ86は、モノクロ1次転写ローラ85Kが画像形成ステーションKの感光体ドラム21に当接して形成する1次転写位置TR1での1次転写ローラ85Kと感光体ドラム21との共通内接線上において、転写ベルト81に当接するように構成されている。
【0027】
給紙ユニット11は、シートを積層保持可能である給紙カセット77と、給紙カセット77からシートを一枚ずつ給紙するピックアップローラ79とを有する給紙部を備えている。ピックアップローラ79により給紙部から給紙されたシートは、レジストローラ対80において給紙タイミングが調整された後、シート案内部材15に沿って2次転写位置TR2に給紙される。
【0028】
2次転写ユニット12は、2次転写ローラ121と駆動ローラ82とを備えている。
駆動ローラ82は、転写ベルト81を図示矢印D81の方向に循環駆動するとともに、2次転写ローラ121のバックアップローラを兼ねている。駆動ローラ82の周面には、厚さ3mm程度、体積抵抗率が1000kΩ・cm以下のゴム層が形成されており、金属製の軸を介して接地することにより、図示しない2次転写バイアス発生部から2次転写ローラ121を介して供給される2次転写バイアスの導電経路としている。このように駆動ローラ82に高摩擦で、且つ衝撃吸収性を有するゴム層を設けることにより、駆動ローラ82と2次転写ローラ121との当接部分である2次転写位置TR2へのシートが進入する際の衝撃が転写ベルト81に伝達しにくく、画質の劣化を防止することができる。
2次転写ローラ121は、転写ベルト81に対して離当接自在に設けられ、図示しない2次転写ローラ駆動機構により離当接駆動される。
2次転写位置TR2に給紙されたシートには、転写ベルト81に転写された画像が2次転写される。
【0029】
定着ユニット13は、ハロゲンヒータ等の発熱体を内蔵して回転自在な加熱ローラ131と、この加熱ローラ131を押圧付勢する加圧部132とを有している。
加圧部132は、2つのローラ1321,1322と、これらに張架される加圧ベルト1323とで構成されている。
画像が2次転写されたシートは、シート案内部材15により、加熱ローラ131と加圧部132の加圧ベルト1323とで形成するニップ部に案内され、該ニップ部において所定の温度で画像が熱定着される。
加圧ベルト1323の表面のうち、2つのローラ1321,1322により張られたベルト張面を加熱ローラ131の周面に押し付けることで、加熱ローラ131と加圧ベルト1323とで形成するニップ部が広くとれるように構成されている。
定着処理を受けたシートは、ハウジング本体3の上面部に設けられた排紙トレイ4に搬送される。
【0030】
また、画像形成装置1では、ブレード対向ローラ83に対向してクリーナ部71が配設されている。クリーナ部71は、クリーナブレード711と廃トナーボックス713とを備えている。
クリーナブレード711は、その先端部を転写ベルト81を介してブレード対向ローラ83に当接することで、2次転写後に転写ベルトに残留するトナーや紙粉等の異物を除去する。そして、このように除去された異物は、廃トナーボックス713に回収される。また、クリーナブレード711および廃トナーボックス713は、ブレード対向ローラ83と一体的に構成されている。
【0031】
以下に、本実施形態におけるラインヘッド29を図面に基づいて詳しく説明する。
図3は、本発明の実施形態にかかるラインヘッド29の概略を示す斜視図である。また、図4は、ラインヘッド29の副走査方向の断面図である。
図1および図3において、ラインヘッド29は、感光体ドラム21の軸方向(図1の紙面に対して垂直な方向)に配列された複数の有機EL素子2951からなる発光素子グループ295を備えるとともに、感光体ドラム21から離間配置されている。そして、これらの有機EL素子2951から、帯電部23により帯電された感光体ドラム21の被走査面である表面211に対して光を照射して表面211に静電潜像を形成する。
【0032】
図3において、本実施形態におけるラインヘッド29は、主走査方向XXを長手方向とするケース291を備えるとともに、かかるケース291の両端には、位置決めピン2911とねじ挿入孔2912が設けられている。そして、かかる位置決めピン2911を、感光体ドラム21を覆うとともに感光体ドラム21に対して位置決めされた図示しない感光体カバーに穿設された位置決め孔に嵌め込むことで、ラインヘッド29が感光体ドラム21に対して位置決めされている。そしてさらに、ねじ挿入孔2912を介して固定ねじを感光体カバーのねじ孔(図示省略)にねじ込んで固定することで、ラインヘッド29が感光体ドラム21に対して位置決め固定されている。
【0033】
図3および図4において、ケース291は、感光体ドラム21の表面211に対向する位置に結像レンズが配列されたマイクロレンズアレイ299を保持するとともに、その内部に、マイクロレンズアレイ299に近い順番で、遮光部材297および透明基板としてのガラス基板293を備えている。
ガラス基板293のうら面2932(ガラス基板293が有する2つの面のうち遮光部材297に対向するおもて面2931と逆側の面)には、複数の発光素子グループ295およびそれを駆動する駆動回路296が設けられている。図3に示すように、複数の発光素子グループ295は、ガラス基板293のうら面2932に、主走査方向XXおよび副走査方向YYに互いに所定間隔だけ離れて2次元的に、離散的に並べて配置されている。ここで、複数の発光素子グループ295の各々は、図3内円で囲んだ部分に示すように、複数の有機EL素子2951を2次元的に配列して構成されている。
複数の有機EL素子2951それぞれから感光体ドラム21の方向に射出される光ビームは、ガラス基板293を透過して遮光部材297へ向かう。
【0034】
図3および図4において、遮光部材297には、複数の発光素子グループ295に対して一対一で複数の導光孔2971が穿設されている。導光孔2971は、ガラス基板293に対する垂線と平行な線(図中一点差線で示した)を中心軸として遮光部材297を貫通する略円柱状の孔として穿設されている。つまり、発光素子グループ295に属する有機EL素子2951から出た光は、該発光素子グループ295に対応する導光孔2971によって、マイクロレンズアレイ299に導かれる。そして、遮光部材297に穿設された導光孔2971を通過した光ビームは、2点鎖線で示すように、マイクロレンズアレイ299により、感光体ドラム21の表面211にスポットとして結像されることとなる。
【0035】
ここで、遮光部材297とガラス基板293との接触部300には、光吸収性を有する光吸収層2972が設けられている。
光吸収層2972としては、黒色顔料入り接着剤、つや消し黒色塗料層、クロムメッキ層、亜鉛メッキ層、ニッケルメッキ層、ニッケル−リン系メッキ層、酸化銅層、黒色アルマイト処理層、ダイアモンドライクカーボン等の黒色皮膜を用いることができる。
なお、接触部300とは、遮光部材297とガラス基板293とが対向する部分で、直接接触する部分だけでなく、光吸収層2972を介して接触する部分も含む。直接接触する場合は、遮光部材297とガラス基板293との接触する部分の表面が光吸収性を有していてもよい。
【0036】
図4に示すように、固定器具2914によって、裏蓋2913がガラス基板293を介してケース291に押圧されている。つまり、固定器具2914は、裏蓋2913をケース291側に押圧する弾性力を有するとともに、かかる弾性力により裏蓋2913を押圧することで、ケース291の内部を光密に(つまり、ケース291内部から光が漏れないように、および、ケース291の外部から光が侵入しないように)密閉している。なお、固定器具2914は、ケース291の長手方向に複数箇所設けられている。また、発光素子グループ295は、封止部材294により覆われている。
【0037】
図5は、ガラス基板293をうら面2932から見た平面図である。
ガラス基板293のうら面2932には、8個の有機EL素子2951からなる発光素子グループ295と有機EL素子2951を駆動する駆動回路296と駆動回路296に接続された信号線298とが形成されている。
駆動回路296は、TFT(Thin Film Transistor)を含んでおり、有機EL素子2951毎に形成されている。
信号線298を伝わる信号によって駆動回路296が駆動し、所定の有機EL素子2951が発光する。
【0038】
図6は、マイクロレンズアレイ299の概略を示す斜視図である。また、図7は、マイクロレンズアレイ299の主走査方向の断面図である。
図6および図7において、マイクロレンズアレイ299は、ガラス基板2991を有するとともに、ガラス基板2991を挟むように一対一で配置された2枚のレンズ2993A,2993Bにより構成されるレンズ対を複数有している。なお、これらレンズ2993A,2993Bは樹脂により形成することができる。
【0039】
図7において、ガラス基板2991の表面2991Aには複数のレンズ2993Aが配置されるとともに、複数のレンズ2993Aに一対一で対応するように、複数のレンズ2993Bがガラス基板2991の裏面2991Bに配置されている。また、レンズ対を構成する2枚のレンズ2993A,2993Bは、相互に図中一点差線で示した光軸OAを共通にする。また、これら複数のレンズ対は、複数の発光素子グループ295に一対一で配置されている。なお、この明細書では、一対一の対を成すレンズ対2993A,2993Bと、かかるレンズ対によって挟まれたガラス基板2991とから成る光学系を「マイクロレンズML」と称することとする。結像レンズとしてのマイクロレンズMLは、発光素子グループ295の配置に対応して、主走査方向XXおよび副走査方向YYに互いに所定間隔だけ離れて2次元的に配置されている。
【0040】
図8は、複数の発光素子グループ295の配置を示す図である。
本実施形態では、主走査方向XXに4個の有機EL素子2951を所定間隔毎に並べて構成される発光素子列L2951を、副走査方向YYに2列並べて、1つの発光素子グループ295を構成している。つまり、同図の2点鎖線で示される円形の1つのマイクロレンズMLの位置に対応して8個の有機EL素子2951が、発光素子グループ295を構成している。そして、複数の発光素子グループ295は次のように配置されている。
【0041】
主走査方向XXに発光素子グループ295を所定個数(2個以上)並べて構成される発光素子グループ列L295(グループ列)が副走査方向YYに3列並ぶように、発光素子グループ295は2次元的に配置されている。また、全ての発光素子グループ295は、互いに異なる主走査方向位置に配置されている。さらに、主走査方向位置が隣り合う発光素子グループ(例えば、発光素子グループ295C1と発光素子グループ295B1)の副走査方向位置が互いに異なるように、複数の発光素子グループ295は配置されている。なお、主走査方向位置および副走査方向位置とはそれぞれ注目する位置の主走査方向成分および副走査方向成分を意味する。また、本明細書において「発光素子グループの幾何重心」とは、同一の発光素子グループ295に属する全ての有機EL素子2951の位置の幾何重心を意味する。
【0042】
そして、かかる発光素子グループ295の配置に対応して、遮光部材297に導光孔2971が穿設されるとともに、マイクロレンズMLが配置される。つまり、本実施形態においては、発光素子グループ295の重心位置と、導光孔2971の中心軸と、マイクロレンズMLの光軸OAとは、略一致するように構成されている。そして、発光素子グループ295の有機EL素子2951から射出された光ビームは、対応する導光孔2971を介してマイクロレンズアレイ299に入射するとともに、マイクロレンズアレイ299により感光体ドラム21の表面211にスポットとして結像される。
【0043】
以下に、マイクロレンズアレイ299による感光体ドラム21の表面211へのスポットの結像状態を光吸収層2972を設けない場合と設けた場合とについて説明する。
図9は、本実施形態における光吸収層2972を設けない場合のマイクロレンズアレイ299による結像状態を示す図である。図10は、有機EL素子2951から射出された光ビームが向かう位置の一例を示した図である。
図11は、本実施形態における光吸収層2972を設けた場合のマイクロレンズアレイ299による結像状態を示す図である。
図9および図10において、ガラス基板293のうら面2932に、複数の発光素子グループ295および駆動回路296が離散的に並べて配置されている。そして、複数の発光素子グループ295に対して、一対一で対応して複数のマイクロレンズMLが配置されている。また、遮光部材297は、その一方面がガラス基板のおもて面2931に対向するとともにその他方面が複数のマイクロレンズMLに対向するように配置されている。そして、遮光部材297には、複数の発光素子グループ295に対して一対一で複数の導光孔2971が、遮光部材297の一方面から他方面に貫通して穿設されている。また、これら複数の導光孔2971は、対応するマイクロレンズMLの光軸OAに対して軸対称に穿設されている。
【0044】
また、図9では、マイクロレンズアレイ299の結像特性を示すために、発光素子グループ295の幾何重心位置E0と、幾何重心位置E0より所定間隔だけ離れた位置E1,E2とから射出された光ビームの軌跡を2点鎖線で表している。
かかる軌跡が示すように、各位置から射出された光ビームは、ガラス基板293のうら面2932に入射した後、ガラス基板293のおもて面2931から射出される。そして、ガラス基板293のおもて面2931から射出された光ビームはマイクロレンズアレイ299を介して被走査面である感光体ドラム21の表面211に到達する。
【0045】
発光素子グループ295の幾何重心位置E0から射出される光ビームは、感光体ドラム21の表面211と図7に示したマイクロレンズMLの光軸OAとの交点I0に結像される。これは、上述の通り、本実施形態では、発光素子グループ295の幾何重心位置E0がマイクロレンズMLの光軸OAの上に在ることに起因するものである。また、位置E1,E2から射出される光ビームは、それぞれ感光体ドラム21の表面211の位置I1,I2に結像される。つまり、位置E1から射出される光ビームは、主走査方向XXにおいてマイクロレンズMLの光軸OAを挟んで逆側の位置I1に結像されるとともに、位置E2から射出される光ビームは、主走査方向XXにおいてマイクロレンズMLの光軸OAを挟んで逆側の位置I2に結像される。即ち、マイクロレンズMLは、反転特性を有するいわゆる倒立光学系である。
【0046】
また、位置E1,E0の間の距離と比較して、光ビームが結像される位置I1,I0の間の距離は長い。即ち、本実施形態における上記光学系の倍率(光学倍率)の絶対値は1より大きい。つまり、本実施形態における上記光学系は、拡大特性を有するいわゆる拡大光学系である。このように本実施形態では、マイクロレンズMLが、本発明における「結像レンズ」として機能している。
【0047】
次に、一例として、位置E2の有機EL素子2951から射出される指向性のない光ビームのうち、遮光部材297に向かう光ビームについて説明する。この光ビームは、太い点線で示されている。
図9および図10において、遮光部材297によって反射された光ビームは、以下のように、本来結像する位置とは別の位置に向かう。
【0048】
図9において、位置E2の有機EL素子2951から射出される指向性のない光ビームのうち一部は、遮光部材297とガラス基板293との接触部300で反射し、ガラス基板のうら面2932に向かい、IGの位置に到達する。この位置IGには、発光素子グループ295およびTFTを含む駆動回路296が形成されている。
図10は、ガラス基板293をうら面2932から見た図である。導光孔2971は実線の円で描き、位置がわかるように表現してある。
E2の位置の有機EL素子2951から射出される光ビームは、接触部300で反射され、破線で示すIGの位置に広がりをもって到達する。この光ビームは、その位置の有機EL素子2951および駆動回路296に入射する。
【0049】
一方、図11に示した本実施形態においては、遮光部材297とガラス基板293との接触部300には、光吸収層2972が設けられているので、接触部300での反射が減少し、ガラス基板293のうら面2932に向かう光ビームが減少する。
【0050】
図12は、ラインヘッド29によるスポット形成動作を示す図である。
以下に、図2、図8、図12を用いて本実施形態におけるラインヘッドによるスポット形成動作を説明する。また、発明の理解を容易にするため、ここでは主走査方向XXに伸びる直線上に複数のスポットを並べて形成する場合について説明する。本実施形態では、感光体ドラム21の表面211を副走査方向YYに搬送しながら、ヘッド制御モジュール54により複数の発光素子を所定のタイミングで発光させることで、主走査方向XXに伸びる直線上に複数のスポットを並べて形成する。
【0051】
図8において、本実施形態のラインヘッド29では、副走査方向位置Y1〜Y6の各位置に対応して、副走査方向YYに6組の発光素子列L2951が並べて配置されている。本実施形態では、同一の副走査方向位置にある発光素子列L2951は、略同一のタイミングで発光させるとともに、異なる副走査方向位置にある発光素子列L2951は、互いに異なるタイミングで発光させる。より具体的には、副走査方向位置Y1〜Y6の順番で、発光素子列L2951を発光させる。そして、感光体ドラム21の表面211を副走査方向YYに搬送しながら、上述の順番で発光素子列L2951を発光させることで、表面211の主走査方向XXに伸びる直線上に複数のスポットを並べて形成する。
【0052】
かかる動作を、図8、図12を用いて説明する。最初に、副走査方向YYに最上流の発光素子グループ295A1,295A2,295A3,…に属する副走査方向位置Y1の発光素子列L2951の有機EL素子2951を発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光ビームは、上述の反転拡大特性を有する「結像レンズ」により、反転されつつ拡大されて感光体ドラム21の表面211に結像される。つまり、図12の「1回目」のハッチングパターンの位置にスポットが形成される。
なお、同図において、白抜きの丸印は、未だ形成されておらず今後形成される予定のスポットを表す。また、同図において、符号295C1,295B1,295A1,295C2でラベルされたスポットは、それぞれに付された符号に対応する発光素子グループ295により形成されるスポットであることを示す。
【0053】
次に、同発光素子グループ295A1,295A2,295A3,…に属する副走査方向位置Y2の発光素子列L2951の有機EL素子2951を発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光ビームは、マイクロレンズMLにより、反転されつつ拡大されて感光体ドラム21の表面211に結像される。つまり、図12において、「2回目」のハッチングパターンの位置にスポットが形成される。ここで、感光体ドラム21の表面211の搬送方向が副走査方向YYであるのに対して、副走査方向YYの下流側の発光素子列L2951から順番に(つまり、副走査方向位置Y1,Y2の順番に)発光させたのは、マイクロレンズMLが反転特性を有することに対応するためである。
【0054】
次に、副走査方向YYの上流側から2番目の発光素子グループ295B1,295B2,295B3,…に属する副走査方向位置Y3の発光素子列L2951の有機EL素子2951を発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光ビームは、マイクロレンズMLより、反転されつつ拡大されて感光体ドラム21の表面211に結像される。つまり、図12の「3回目」のハッチングパターンの位置にスポットが形成される。
【0055】
次に、同発光素子グループ295B1,295B2,295B3,…に属する副走査方向位置Y4の発光素子列L2951の有機EL素子2951を発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光ビームは、マイクロレンズMLにより、反転されつつ拡大されて感光体ドラム21の表面211に結像される。つまり、図12の「4回目」のハッチングパターンの位置にスポットが形成される。
【0056】
次に、副走査方向YY最下流の発光素子グループ295C1,295C2,295C3,…に属する副走査方向位置Y5の発光素子列L2951の有機EL素子2951を発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光ビームは、マイクロレンズMLにより、反転されつつ拡大されて感光体ドラム21の表面211に結像される。つまり、図12の「5回目」のハッチングパターンの位置にスポットが形成される。
【0057】
そして最後に、同発光素子グループ295C1,295C2,295C3,…に属する副走査方向位置Y6の発光素子列L2951の有機EL素子2951を発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光ビームは、マイクロレンズMLにより、反転されつつ拡大されて感光体ドラム21の表面211に結像される。つまり、図12の「6回目」のハッチングパターンの位置にスポットが形成される。このように、1〜6回目までの発光動作を実行することで、主走査方向XXに伸びる直線上に複数のスポットを並べて形成する。
【0058】
このような本実施形態によれば、以下の効果がある。
(1)有機EL素子2951から射出される光ビームを、その光ビームを表面211に結像する有機EL素子2951に対応したマイクロレンズアレイMLに導くために、導光孔2971を有する遮光部材297を備えている。また、有機EL素子2951は、ガラス基板293の遮光部材297に対向するおもて面2931とは反対のうら面2932に設けられている。有機EL素子2951から射出された光ビームは、ガラス基板293を透過しおもて面2931に向かう。ここで、光ビームの一部は、遮光部材297とガラス基板293との接触部300へと向かう。接触部300には光吸収層2972が設けられているので、接触部300での反射が抑えられ、再びガラス基板293のうら面2932に向かう光ビームが減少し、ガラス基板293のうら面2932に設けられた有機EL素子2951およびその駆動回路296への光ビームによる影響を低減できる。したがって、発光の安定した誤動作の少ないラインヘッド29を得ることができる。
【0059】
(2)光ビームによる発光への影響が大きな有機EL素子2951に対し、より前述の効果を得ることができる。
【0060】
(3)光ビームによる誤動作の大きなTFTに対し、より前述の効果を得ることができる。
【0061】
(4)前述の効果を有するラインヘッド29と同一構成を有する露光手段を備えているので、発光を安定し、誤動作を少なくできる。したがって、所定スポットから画像を形成でき、画質の劣化の少ない画像形成装置1を得ることができる。
【0062】
(第2実施形態)
本実施形態と第1実施形態とは、光吸収層2972の設けられた位置が異なる以外は同様の構成となっている。
以下に、マイクロレンズアレイ299による感光体ドラム21の表面211へのスポットの結像状態を光吸収層2972を設けない場合と設けた場合とについて説明する。
図13は、本実施形態における光吸収層2972を設けない場合のマイクロレンズアレイ299による結像状態を示す図である。
図14は、本実施形態における光吸収層2972を設けた場合のマイクロレンズアレイ299による結像状態を示す図である。
【0063】
位置E0,E2の有機EL素子2951から射出される指向性のない光ビームのうち、遮光部材297に向かう光ビームの反射について説明する。これらの光ビームは、一例として太い点線で示されている。
図13において、遮光部材297によって、光ビームが隣接するマイクロレンズアレイMLに直接入射するいわゆるクロストークは防げる。しかしながら、遮光部材297によって反射された光ビームは、以下のように、本来結像する位置とは別の位置に向かう。そして、被走査面上である表面211でいわゆるゴーストを発生させる。
なお、接触部300における光ビームの反射の様子は、第1実施形態と同様である。
【0064】
反射される光ビームのうち、発光素子グループ295側の導光孔2971の内面2970に入射角θ1で入射した光ビームは、小さな反射角θ1で反射され、マイクロレンズアレイMLに大きな入射角で入射する。この光ビームは、本来の結像位置I0とは大きく外れたIθ1の位置に向かい、感光体ドラム21の表面211上にゴーストを発生させる。
反射位置がマイクロレンズアレイMLに近づくにつれ、光ビームの入射角および反射角は、θ2、θ3と大きくなる。それにしたがい、ゴーストの発生位置もIθ2、Iθ3と本来の結像位置I0に近づく。
【0065】
一方、図14に示した本実施形態においては、接触部300の他に導光孔2971の内面2970全体に光吸収層2972が設けられているので、内面2970に対してどんな入射角の光ビームであっても内面2970での反射が減少し、ゴーストの発生が抑えられる。
【0066】
このような本実施形態によれば、以下の効果がある。
(5)導光孔2971の内面2970も光吸収性を有するので、導光孔2971の内面2970での光ビームの反射を減少できる。したがって、前述の効果に加えて、表面211でのゴーストの発生を抑えることができ、良好なスポットが形成されるラインヘッド29および同様の効果を有する画像形成装置1を得ることができる。
【0067】
なお、本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
各実施形態では透明基板をガラスで構成しているが、透明基板の材質がガラスに限られないことは言うまでもない。つまり、光ビームを透過可能である材質により透明基板を構成することができる。
【0068】
また、第2実施形態においては、導光孔2971の内面2970全体に光吸収層2972を設けたが、内面の一部に設けても前述の効果がある。例えば、発光素子グループ295側の導光孔2971の内面2970での反射は、マイクロレンズアレイMLに大きな入射角で入射し、顕著なゴーストを発生するので、その反射を抑えるために、発光素子グループ295側の導光孔2971の内面2970にのみ光吸収層2972を設けてもよい。
【0069】
また、上記各実施形態では、図8で示すように、複数の発光素子グループ295を配置している。つまり、主走査方向XXに4個の有機EL素子2951を所定間隔毎に並べて構成される発光素子列L2951を、副走査方向YYに2列並べて、1つの発光素子グループ295を構成している。しかしながら、発光素子グループ295を構成する有機EL素子2951の個数や、これら複数の有機EL素子2951の配置方法はこれに限られるものではなく、適宜変更が可能である。ただし、複数の有機EL素子2951の配置については、上記対称配置を採用することで良好なスポット形成が簡易に実現されるという点で好適であるということは、上述の通りである。
【0070】
また、上記各実施形態では、主走査方向XXに発光素子グループ295を所定個数(2個以上)並べて構成される発光素子グループ列L295(グループ列)が副走査方向YYに3列並ぶように、発光素子グループ295は2次元的に配置されている。しかし、複数の発光素子グループ295の配置の態様は、これに限られるものではなく適宜変更が可能である。
【0071】
また、上記各実施形態では、結像レンズとして拡大光学系を採用したが、これは本発明に必須の要件ではない。つまり、倍率(光学倍率)が1未満の縮小光学系や、倍率が略1である等倍光学系を結像レンズとして用いても良い。
【0072】
また、上記各実施形態では、本発明にかかるラインヘッドを用いて、図12に示すような主走査方向XXに直線状に複数個のスポットを並べて形成している。しかしながら、かかるスポット形成動作は、本発明にかかるラインヘッドの動作の一例を示すものであり、該ラインヘッドが実行可能な動作はこれに限られるものではない。つまり、形成されるスポットは、主走査方向XXに並んで直線状に形成される必要はなく、例えば、主走査方向XXに所定の角度を有するように並べて形成しても良いし、ジグザグ状あるいは波状に形成しても良い。
【0073】
また、上記各実施形態では、カラー画像形成装置に本発明が適用されているが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、いわゆる単色画像を形成するモノクロ画像形成装置に対しても本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる画像形成装置およびラインヘッドを示す図。
【図2】画像形成装置およびラインヘッドの電気的構成を示す図。
【図3】ラインヘッドの概略を示す斜視図。
【図4】ラインヘッドの副走査方向の断面図。
【図5】ガラス基板をうら面から見た平面図。
【図6】マイクロレンズアレイの概略を示す斜視図。
【図7】マイクロレンズアレイの主走査方向の断面図。
【図8】複数の発光素子グループの配置を示す図。
【図9】第1実施形態における光吸収層を設けない場合のマイクロレンズアレイによる結像状態を示す図。
【図10】第1実施形態における光吸収層を設けない場合の有機EL素子から射出された光ビームが向かう位置の一例を示した図。
【図11】第1実施形態における光吸収層を設けた場合のマイクロレンズアレイによる結像状態を示す図。
【図12】ラインヘッドによるスポット形成動作を示す図。
【図13】本発明の第2実施形態における光吸収層を設けない場合のマイクロレンズアレイによる結像状態を示す図。
【図14】第2実施形態における光吸収層を設けた場合のマイクロレンズアレイによる結像状態を示す図。
【符号の説明】
【0075】
1…画像形成装置、21…潜像担持体としての感光体ドラム、211…被走査面としての感光体ドラムの表面、29…露光手段としてのラインヘッド、293…透明基板としてのガラス基板、2931…おもて面、2932…うら面、295…発光素子グループ、2951…発光素子としての有機EL素子、296…TFTを含む駆動回路、297…遮光部材、2971…導光孔、2972…光吸収性を有する光吸収層、299…結像レンズの集まりであるマイクロレンズアレイ、295C1,295B1,295A1,295C2…スポットの集まり、2970,2973,2974…内面、300…接触部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被走査面に光ビームを結像してスポットを形成するラインヘッドであって、
発光素子を複数個有するとともに、前記光ビームを透過可能な透明基板に離散的に並べて配置された複数の発光素子グループと、
前記発光素子グループに対して一対一で対応して配置されるとともに、それぞれが対向する前記発光素子グループに属する複数の前記発光素子から射出される前記光ビームを前記被走査面に結像する複数の結像レンズと、
その一方面が前記透明基板に対向するとともにその他方面が前記複数の結像レンズに対向するように配置され、さらに、複数の前記発光素子グループに対して一対一で前記一方面から前記他方面に貫通して穿設された複数の導光孔を有する遮光部材とを備え、
前記透明基板のおもて面が前記遮光部材に対向するように配置され、
前記発光素子および前記発光素子の駆動回路が前記透明基板のうら面に設けられ、
前記遮光部材と前記透明基板との接触部が光吸収性を有している
ことを特徴とするラインヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のラインヘッドにおいて、
前記導光孔の内面が光吸収性を有している
ことを特徴とするラインヘッド。
【請求項3】
請求項1および請求項2に記載のラインヘッドにおいて、
前記発光素子は、有機EL素子である
ことを特徴とするラインヘッド。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のラインヘッドにおいて、
前記駆動回路は、TFTを含む
ことを特徴とするラインヘッド。
【請求項5】
その表面が副走査方向に搬送される潜像担持体と、
前記潜像担持体の表面を被走査面として該潜像担持体表面にスポットを形成する請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のラインヘッドと同一構成を有する露光手段と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
被走査面に光ビームを結像してスポットを形成するラインヘッドであって、
発光素子を複数個有するとともに、前記光ビームを透過可能な透明基板に離散的に並べて配置された複数の発光素子グループと、
前記発光素子グループに対して一対一で対応して配置されるとともに、それぞれが対向する前記発光素子グループに属する複数の前記発光素子から射出される前記光ビームを前記被走査面に結像する複数の結像レンズと、
その一方面が前記透明基板に対向するとともにその他方面が前記複数の結像レンズに対向するように配置され、さらに、複数の前記発光素子グループに対して一対一で前記一方面から前記他方面に貫通して穿設された複数の導光孔を有する遮光部材とを備え、
前記透明基板のおもて面が前記遮光部材に対向するように配置され、
前記発光素子および前記発光素子の駆動回路が前記透明基板のうら面に設けられ、
前記遮光部材と前記透明基板との接触部が光吸収性を有している
ことを特徴とするラインヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のラインヘッドにおいて、
前記導光孔の内面が光吸収性を有している
ことを特徴とするラインヘッド。
【請求項3】
請求項1および請求項2に記載のラインヘッドにおいて、
前記発光素子は、有機EL素子である
ことを特徴とするラインヘッド。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のラインヘッドにおいて、
前記駆動回路は、TFTを含む
ことを特徴とするラインヘッド。
【請求項5】
その表面が副走査方向に搬送される潜像担持体と、
前記潜像担持体の表面を被走査面として該潜像担持体表面にスポットを形成する請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のラインヘッドと同一構成を有する露光手段と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−73905(P2008−73905A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−253880(P2006−253880)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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