説明

ラクトンの開環(共)重合用の新規な触媒システム

本発明は、ラクトンの開環(共)重合用触媒としての、塩基とスルホンアミドからなるシステムの利用に関するものである。本発明は又、新規なスルホンアミド及び、塩基と組合せたスルホンアミドの触媒システムとしての利用を含むラクトンの開環(共)重合方法にも関係する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクトンの開環(共)重合用触媒としての、塩基及びスルホンアミドにより構成されるシステムの利用に関係する。本発明は又、新規なスルホンアミド及び、触媒システムとして塩基と組み合わせたスルホンアミドの利用を含むラクトンの開環(共)重合方法にも関係する。
【背景技術】
【0002】
今日では、人工臓器の開発及び医薬の配合物用合成ポリマーに関心が高まっている[Chem. Eng. News 2001, 79(6), 30]。これらの関心を持たれているポリマーは、幾つかの基準を満たさなければならず、特に、それらは、生体適合性でなければならない。生物分解性があると、ポリマーが生物体への移植後適当な期間の後に排除されなければならばいならば、更なる利点となる。この点において、乳酸及びグリコール酸ベースのコポリマー(PLGA)は、イン・ビボで非毒性の副生物を放出して加水分解されて分解しやすいので、大きな関心がもたれている。PLGAの応用分野は、非常に広い(Adv. Mater. 1996, 8, 305及びChemosphere 2001, 43, 49)。外科分野において、それらは、マルチストランドワイヤ、縫合糸、インプラント、プロテーゼなどの合成に用いられている。薬理学においては、それらは、活性成分のカプセル封入、移送及び制御された放出を可能にする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Chem. Eng. News 2001, 79(6), 30
【非特許文献2】Adv. Mater. 1996, 8, 305
【非特許文献3】Chemosphere 2001, 43, 49
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらのすべての応用に関して、鍵となる因子は、PLGAの分解速度であり、それは、当然、それらの構造(モノマーの鎖長、分散度、割合、立体化学及び鎖形成など)に依存する。それ故、最近数年間、多くの仕事が、制御された構造を有するPLGAを製造することを可能にする(共)重合即ちラクチド及び/又はグリコリドの重合又は共重合の触媒及び/又はプライマーの開発に向けられてきた。
【0005】
金属システムの利用は、最も頻繁に、得られるコポリマーの金属塩の存在による汚染へと導き、それは、ときに、予定された用途によっては、大幅な限界を構成する。それ故、ラクチド及び/又はグリコリドの制御された(共)重合を可能にする非金属システムの開発は、主要な課題を構成する。本発明は、これらの状況からなされた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記より、出願人は、(共)重合触媒と添加剤により構成され、製造された(コ)ポリマーの鎖長だけでなく鎖末端の性質をも制御することを可能にする、単純な触媒システムの利用を提案する。
【0007】
それ故、本発明の主題は、塩基と組み合わせたスルホンアミドの、ラクトンの開環(共)重合用触媒システムとしての利用である。
【0008】
用語「(共)重合」は、重合又は共重合を意味する。この用語は、用語「(共)オリゴマー化」を包含し、これは、30未満の重合度(DP)のオリゴマー化又は共オリゴマー化を意味する。それ故、例えば、ラクチドとグリコリドの(共)重合は、ラクチドの重合、グリコリドの重合だけでなく、ラクチドとグリコリドの共重合をもカバーする。用語「(コ)ポリマー」は、ポリマー又はコポリマーを意味する。この用語は、用語「(コ)オリゴマー」を包含し、これは、30未満の重合度(DP)のオリゴマー又はコオリゴマーを意味する。それ故、例えば、ラクチドとグリコリドの(コ)ポリマーは、ラクチドのポリマー、グリコリドのポリマーだけでなく、ラクチドとグリコリドのコポリマーをもカバーする。
【0009】
本発明によれば、用語「スルホンアミド」は、少なくとも一つの−SO2−NH−官能基を含む分子例えばモノスルホンアミド又はビスルホンアミドを表す。用語「モノスルホンアミド」は、一つの−SO2−NH−官能基を含む分子を表し、用語「ビスルホンアミド」は、2つの−SO2−NH−官能基を含む分子を表す。
【0010】
この発明の一層特別な主題は、上で規定したスルホンアミドの、ジラクトンの(共)重合のための利用である。
【0011】
この発明の主題は又、上で規定したスルホンアミドの、ラクチド及び/又はグリコリドの共重合、優先的にはラクチドの重合のための利用でもある。
【0012】
本発明によれば、用いられる塩基は、優先的に、三級アミンであり;
一層好ましくは、下記から選択される三級アミンである:
− ジイソプロピルエチルアミン;
− スパルテイン;
− N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン;
− N,N,N”N”−テトラメチル−1,2−シクロヘキサンジアミン;及び
− 4−ジメチルアミノピリジン。
【0013】
この発明の一変形によれば、用いられるスルホンアミドは、モノスルホンアミドであり、好ましくは、下記の一般式(I)のモノスルホンアミドである:
【化1】

(これは、ラセミ型、又はエナンチオマー型又はこれらの型の任意の組合せであり、式中、R1及びR2は、独立に、任意で置換されていてもよいアルキル、ハロアルキル又はアリール基を表す)。
【0014】
本発明の意味の範囲内で、アリール基は、単環式又は多環式芳香族型であってよい。単環式アリール基は、フェニル、トリル、キシリル、メシチル、クメニルから、好ましくはフェニル基から選択されうる。多環式アリール基は、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル基から選択されうる。それらは、任意で、一つ以上の基例えばアルキル、ハロアルキル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、アリール、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アリールカルボニルオキシにより置換されていてよい。
【0015】
ハロという表現は、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを意味し、好ましくは、フルオロを意味する。
【0016】
アルキルという表現は、1〜8炭素原子を有するアルキル基を表す。この表現は、1〜6炭素原子を有する直鎖の又は分枝鎖のアルキル基をカバーし、特に、1〜4炭素原子を有するアルキル基例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル及びtert−ブチル基、好ましくはメチル基をカバーする。この表現は又、6個より多くの炭素原子を含む基例えばヘプチル及びオクチル基をもカバーする。
【0017】
用語「ハロアルキル」は、上で規定した同一又は異なるハロ基一つ以上により置換された上で規定したアルキル基例えばトリフルオロメチル、1,2−ジクロロエチル、好ましくはトリフルオロメチルを表す。
【0018】
用語「アリールオキシ」は、アリール基が上で規定したようなものである基例えばフェニルオキシ、トリルオキシ、ナフチルオキシ、アントリルオキシ及びフェナントリルオキシ基を示す。用語「アリールオキシカルボニル」は、好ましくは、アリールオキシ基が上で規定されたようなものである基例えばフェニルオキシカルボニル、トリルオキシカルボニルを示す。
【0019】
用語「アリールカルボニルオキシ」は、好ましくは、アリール基が上で規定されたようなものである基、例えばフェニルカルボニルオキシ、トリルカルボニルオキシ又はナフチルカルボニルオキシを示す。
【0020】
用語「アルコキシ」は、アルキル基が上で規定したような1〜8炭素原子を有する基である基、例えばメトキシ、エトキシ、プロピルオキシ又はイソプロピルオキシを示すだけでなく、直鎖の、二級又は三級のブトキシ、ペンチルオキシ基をも示す。
【0021】
用語「アルコキシカルボニル」は、好ましくは、アルキル基が上で規定したような基で、アルキル−O−C(O)−型の基、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルを示す。
【0022】
用語「アルキルカルボニルオキシ」は、好ましくは、アルキル基が上で規定したような基で、アルキル−C(O)−O−型の基、例えばメチルカルボニルオキシ、エチルカルボニルオキシを示す。
【0023】
この発明の主題は、やはり、優先的には、一般式(I)のモノスルホンアミドの利用である(式中、R1及びR2は、独立に、フェニル、アルキル又はハロアルキル基を表す)。
【0024】
この発明の一層特別な主題は、下記から選択される上で規定されたスルホンアミドの利用である:
【化2】

【0025】
この発明の他の変形によれば、用いられるスルホンアミドは、ビスルホンアミドであり、好ましくは、下記の一般式(IIa)又は(IIb)のビスルホンアミドである
【化3】

(これらは、ラセミ型、又はエナンチオマー型又はこれらの型の任意の組合せであって、式中:
R1及びR2は、任意で置換されていてもよいアルキル、ハロアルキル又はアリール基を表し;
R’1及びR’2は、アリーレン、アルキレン、シクロアルキレン基を表し、これらのすべての基は、任意で置換されてもよく;
R3及びR4は、独立に、水素原子又はアルキル基を表し、優先的に、R3及びR4は、独立に、水素原子又はメチル基を表し、そして非常に優先的にR3及びR4は、水素原子を表す)。
【0026】
本発明の意味の範囲内で、用語「アリーレン」は、二価のアリール基を表し、そのアリール基は上で規定したものであり、用語「アルキレン」は、二価のアルキル基を表し、そのアルキル基は、上で規定したものであり、そして用語「シクロアルキレン」は、二価のシクロアルキル基を示し、そのシクロアルキル基は、下記に規定するものである。
【0027】
これらのシクロアルキル基は、飽和の又は不飽和の単環式シクロアルキルから選択される。飽和の単環式シクロアルキル基は、3〜7炭素原子を有する基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチル基から選択することができる。不飽和のシクロアルキル基は、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン基から選択することができる。
【0028】
非常に優先的に、R1及びR2は、任意で置換されていてもよいフェニル、アルキル又はハロアルキル基を表し;R’1は、フェニル基により任意で置換されていてもよいシクロアルキレン、アルキレン基を表し;R’2は、アルキレン又はフェニレン基を表す。
【0029】
一層特には、R1及びR2は、アルキル、トリフルオロメチル基又はメチル若しくはトリフルオロメチルにより任意で置換されていてもよいフェニル基を表す。
【0030】
この発明の一層特別な主題は、下記から選択され:
【化4】

尚一層特には、下記から選択されるスルホンアミドの利用である:
【化5】

【0031】
非常に優先的には、本発明に用いられる塩基は、4-ジメチルアミノピリジンである。
【0032】
この発明の主題は又、スルホンアミドとして上で規定した下記の化合物でもあり:
【化6】

一層優先的には、この発明の主題は、下記の化合物でもある:
【化7】

【0033】
この発明の一層特別な主題は又、前記のように、触媒として、塩基と組み合わせてのスルホンアミドの利用を含むことを特徴とする開環(共)重合方法でもある。
【0034】
優先的には、この方法は、(共)重合用溶媒を、0〜250℃の温度(一層優先的には、周囲温度〜150℃)で、数分〜300時間(一層優先的には、1〜72時間)の間にわたり利用する。この温度は、溶媒のファンクションに関して、上記の範囲に入り、溶媒の沸騰温度が250℃未満であるならば、その温度以下となるように選択される。
【0035】
非常に優先的には、この方法は、ラクチド及び/又はグリコリドをモノマーとして含む。
【発明の効果】
【0036】
本発明は、多くの利点を有し、特に、下記の利点を有する:
− これらの触媒システムは、容易に利用できて安価であり;
− これらのスルホンアミドは、容易に高収率で合成され;
− これらのスルホンアミドは、様々な構造を有し、それは、多くの異なる触媒システムを構想することを可能にし;
− これらのスルホンアミドは、空気中で、周囲温度で安定である構造を有し;
− 得られるポリマーの質量分布は、非常に狭く;本発明により得られる多分散性インデックスは、実際、1.05〜1.20であり;
− これらのスルホンアミドにより触媒される開環(共)重合は、再現性があり;
− これらのスルホンアミドにより触媒される開環(共)重合は、ジクロロメタン、トルエン又はテトラヒドロフランなどの様々な溶媒中で実施することができる。
【0037】
この発明は、最後に、上記の方法の実施によって得られ又は得られうるラクチド及び/又はグリコリドのポリマー又はコポリマーに関係する。
【発明を実施するための形態】
【0038】
別途規定しない限り、本願において用いられるすべての技術的及び科学的用語は、発明が属する分野の当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。
【0039】
調製されるこれらの触媒は、すべて、1つ又は2つの−SO2−NH−官能基を含み:それ故、用語「モノスルホンアミド」及び「ビスルホンアミド」が、それぞれ用いられる。
【0040】
下記の実験部は、上記の手順を説明するために与えられるものであり、この発明の範囲を制限するものと考えるべきではない。
【0041】
実験部
これらの生成物は、当業者に公知の下記の標準的方法に従って特性決定された。
【0042】
1H、13C及び19F NMRスペクトルは、商品名Bruker Avance 300分光器にて得られる。これらのシフトは、強い場に対して正に計数されて、ppmで表される。対照は、1H及び13Cについては、テトラメチルシランであり、19Fについては、トリフルオロ酢酸である。次の略号を、シグナルを記載するために用いた:s(一重項状態)、brs(ブロード一重項)、d(二重項)、t(三重項)、q(四重項)、qt(五重項)、dd(二重項の二重項)、m(多重項)。
【0043】
融点を、電熱式デジタル測定器にて測定した。
【0044】
化学イオン化(CI)又は電子衝撃イオン化(EI)法を用いて、商品名Thermo TSQ 700、Applied Biosystem API−365又はApplied Biosystem Qtrap分光器にてマススペクトルを生成した。高分解能の分析(HRMS)が、商品名Waters Micromass LCT測定器にて行なわれた。
【0045】
これらのポリマーの、数平均(Mn)及び重量平均(Mw)分子質量並びに多分散性インデックス(PI)は、商品名HPLC Waters 712 システム上での立体排除クロマトグラフィーにより測定される(THF中で、1mL/分で、T=35℃で、Styragel HR1又はStyragel HR4Eカラムで、ポリスチレン標準で較正)。
【実施例】
【0046】
調製1:スルホンアミドの塩化スルホニルからの調製(実施例1〜6)
第一のファミリーは、1つ又は2つの塩化スルホニル官能基を含む基幹から得られ、これには、選択されたアミンがグラフトされる。空気中で及び周囲温度で安定であるこれらの触媒は、十分に特性表示された(1H、13C NMR、MS、元素分析、融点)。
【0047】
調製1a:モノスルホンアミドの調製
これらのモノスルホンアミドは、次のように調製された:
【化8】

【0048】
塩化スルホニルR2SO2Cl(1当量)は、テトラヒドロフラン(1.8モルL-1)中のアミンR1NH2(1当量)及びピリジン(1当量)の混合物に、ゆっくりと加えられて、その反応媒質は、試薬の全体的転化が達成されるまで周囲温度即ち18〜30℃の温度で攪拌され、反応の進行は、1H NMRによりモニターされる。この溶液を、次いで、真空下で蒸発させて、得られた粗生成物をシリカカラム上でのクロマトグラフィー(移動相は、CH2Cl2/MeOH勾配)により精製する。
【0049】
下記のモノスルホンアミドが、こうして調製された:
【化9】

【0050】
実施例1
NMR1H(CDCl3,300MHz):δ7.03(s,1H,NH);7.23−7.31(m,3H,CH);7.39−7.43(m,2H,CH);7.58−7.63(m,2H,CH);7.68−7.73(m,1H,CH);7.96(d,3J=7.7Hz,2H,CH)ppm;13C(CDCl3,75MHz):δ121.7(CH);125.5(CH);127.3(CH);129.1(CH);129.4(CH);133.1(CH);136.4(C),138.96(C)ppm;MS(EI):233[M]+;元素分析:(C1211NO2S)についての計算値C61.78%,H4.75%,N6.00%、測定値C61.86%,H4.50%,N5.97%.融点:110.5−112.0℃。
【0051】
実施例2
NMR1H(CDCl3,300MHz):δ0.90(t,3J=7.2Hz,3H,CH3);1.36−1.48(m,2H,CH2);1.75−1.86(m,2H,CH2);3.06−3.12(m,2H,CH2);6.31(s,1H,NH);7.15−7.21(m,3H,CH);7.32−7.38(m,2H,CH)ppm;13C(CDCl3,75MHz):δ13.4(CH3);21.3(CH2);25.2(CH2);51.1(CH2);120.3(CH);124.8(CH);129.5(CH);137.1(C)ppm;MS(EI):213[M]+;元素分析:(C1015NO2S)についての計算値C56.31%,H7.09%,N6.57%、測定値C55.72%,H7.27%,N6.42%。
【0052】
調製1b:ビスルホンアミドの調製
ビスルホンアミドを、下記の手順によって調製した:
【化10】

【0053】
塩化スルホニル(1当量)を、テトラヒドロフラン(1モルL-1)中のアミンR1NH2 (2当量)とピリジン(2当量)の混合物に加える。この反応媒質を、周囲温度で、これらの試薬の全体的転化が達成されるまで攪拌し、反応の進行は、1H NMRによってモニターする。次いで、溶媒を、真空下で蒸発させて、得られた粗生成物をシリカカラム上でのクロマトグラフィーにより精製する(移動相は、CH2Cl2/MeOH勾配である)。
【0054】
下記のビスルホンアミドが、こうして調製された:
【化11】

【0055】
実施例3
NMR1H(CD3OD,300MHz):δ6.97−7.21(m,10H,CH);7.55(t,3J=7.8Hz,1H,CH);7.86(dd,2H,4J=1.5Hz及び3J=7.8Hz,2H,CH);8.16(t,4J=1.5Hz,1H,CH)ppm;13C(CD3OD,75MHz):δ122.6(CH);126.2(CH);127.0(CH);130.3(CH);131.0(CH);132.0(CH);138.3(C);142.3(C)ppm;MS(EI):388[M]+;元素分析:(C1814242)についての計算値C55.65%,H5.15%,N7.21%、測定値C56.13%,H3.82%,N7.21%;融点:157℃。
【0056】
実施例4
NMR1H(CDCl3,300MHz):δ2.36−2.41(qt,3J=7.2Hz,2H,CH2);3.27−3.32(t,3J=7.2Hz,4H,CH2);7.04(s,2H,NH);7.18−7.23(m,4H,CH);7.27(m,2H,CH);7.35(m,4H,CH)ppm;13C(CDCl3,75MHz):δ18.1(CH2);48.8(CH2);121.2(CH);125.7(CH);129.8(CH);136.4(C)ppm;MS(EI):354[M]+;元素分析:(C1518242)についての計算値C50.83%,H5.12%,N7.90%.測定値C51.01%,H4.74%,N7.85%、融点:129.8−131.6℃。
【0057】
実施例5
NMR1H(CD3OD,300MHz):δ7.58(s,4H,CH);7.60(s,2H,CH);7.74(t,1H,3J=1.7Hz,CH);8.03(dd,4J=1.7Hz,3J=7.7Hz,2H,CH);8.21(t,3J=7.7Hz,1H,CH)ppm;13C(CD3OD,75MHz):δ118.7(q,JCF=3.9Hz,CH);120.9(q,JCF=3.5Hz,CH);124.2(q,JCF=271.6Hz,CF3);126.6(C);132.1(CH);132.5(CH);133.9(q,JCF=33.7Hz,C);140.6(C);142.2(C)ppm;19F(CD3OD,280MHz):δ-63.2ppm;MS(CI):678[M+NH4+;元素分析:(C221212242)についての計算値C40.01%,H1.83%,N4.24%、測定値C40.38%,H1.26%,N4.19%;融点:159.0−159.6℃。
【0058】
実施例6
NMR1H(CDCl3,300MHz):δ2.00(s,12H,CH3);2.25(s,6H,CH3);6.71(s,2H,NH);6.84(s,4H,CH);7.51(t,3J=7.8Hz,1H,CH);7.80−7.83(q,4J=1.7Hz,3J=7.8Hz,2H,CH);8.58(t,4J=1.7Hz,1H,CH)ppm;13C(CDCl3,75MHz):δ18.7(CH3);20.9(CH3);125.8(CH);129.3(C);129.7(CH);130.0(CH);131.1(CH);137.5(C);138.1(C);142.6(C)ppm;MS(EI):233[M]+;元素分析:(C2428242)についての計算値C60.99%,H5.97%,N5.93%、測定値C60.90%,H5.91%,N5.85%、融点:197.9−199.5℃。
【0059】
調製2:スルホンアミドの、無水スルホン酸からの調製(実施例7〜11)
スルホンアミドの第二のファミリーは、無水トリフルオロメタンスルホン酸との反応によって、アミンから合成することもできた。
【0060】
こうして調製した触媒を特性決定した。それらは、空気中で、周囲温度で安定である。
【0061】
調製2a:モノスルホンアミドの調製
モノスルホンアミドを、下記の手順によって、調製した:
【化12】

【0062】
無水トリフルオロメタンスルホン酸(1.1当量、3モルL-1)の無水ジクロロメタン中の溶液を、0℃の無水ジクロロメタン中のアミン(1当量、3モルL-1)とトリエチルアミン(1.1当量)の混合物にゆっくりと加える。この反応媒質を0℃で1時間撹拌してから、周囲温度に戻った後に、NaClの飽和水溶液を加える。その水相をジクロロメタンで2回抽出する。有機相を合わせて無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過して、濃縮乾固させる。得られた粗残留物をシリカカラム上でのクロマトグラフィーにより精製する(移動相は、CH2Cl2/MeOH勾配である)。
【0063】
下記のモノスルホンアミドを調製した:
【化13】

【0064】
実施例7
NMR1H(CDCl3,300MHz):δ0.95−1.00(t,3J=7.1Hz,3H,CH3);1.58−1.70(m,2H,CH2);3.25−3.30(t,3J=7.4Hz,2H,CH2);4.89(brs,1H,NH)ppm;19F(CDCl3,280MHz):δ−77.4ppm;MS(EI):191[M]+,162[M−C25+
【0065】
実施例8
NMR1H(CDCl3,300MHz):δ7.19−7.28(m,3H,CH);7.31−7.36(m,2H,CH);6.63(brs,1H,NH)ppm;19F(CDCl3,280MHz):δ−75.2ppm;MS(EI):225[M]+
【0066】
調製2b:ビスルホンアミドの調製
ビスルホンアミドを、下記の手順によって、調製した:
【化14】

【0067】
無水トリフルオロメタンスルホン酸(2.1当量、5モルL-1)の無水ジクロロメタン中の溶液を、0℃の無水ジクロロメタン中のジアミン(1当量、3モルL-1)とトリエチルアミン(2.1当量)の混合物にゆっくりと加える。この反応媒質を低温で1時間撹拌してから、周囲温度に戻った後、NaClの飽和溶液を加える。その水相をジクロロメタンで2回抽出する。有機相を合わせて、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過して、濃縮乾固する。得られた粗残留物をシリカカラム上でのクロマトグラフィーにより精製する(移動相は、CH2Cl2/MeOH勾配である)。
【0068】
下記のビスルホンアミドを調製した:
【化15】

【0069】
実施例9
NMR1H((CD32CO),300MHz):δ1.37−1.41(m,2H,CH);1.67−1.71(m,2H,CH);1.77−1.81(m,2H,CH);2.11−2.15(m,2H,CH);3.34(m,2H,CH);7.98(brs,2H,NH)ppm;13C((CD32CO),75MHz):δ24.3(CH2);33.2(CH2);58.8(CH);115−128(q,JCF=320.5Hz,CF3);19F((CD32CO),280MHz):δ−77.5ppm;MS(EI):378[M]+,245[M−SO2CF3+;融点:184.5−185.5℃。
【0070】
実施例10
NMR1H(C66,300MHz):δ2.28(s,4H,CH2);4.00(brs,2H,NH);13C(C66,75MHz):δ43.4(CH2);117−122(q,JCF=321.5Hz,CF3);19F(C66,280MHz):δ−77ppm;MS(CI):342(M+NH4+);元素分析:(C466242)についての計算値C14.8%,H1.87%,N8.64%.測定値C14.6%,H1.90%,N8.5%第一試験及びC40.48%,H2.36%,N5.83%第二試験。融点:115−116℃。
【0071】
実施例11
NMR1H(CDCl3,300MHz):δ4.79(s,2H,CH);5.87(brs,2H,NH);6.97−7.00(m,4H,CH);7.27(m,6H,CH)ppm;19F(CDCl3,280MHz):δ−77.3ppm;MS(EI):元素分析:(C16146242)についての計算値C40.34%,H2.96%,N5.88%、測定値C40.43%,H2.36%,N5.82%;融点:213−215℃。
【0072】
調製3:アルキル化ビスルホンアミドの調製(実施例12〜13)
アルキル化ビスルホンアミドを、下記の手順A又はBによって、調製した:
【化16】

【0073】
実施例12
1当量の1,3−ジスルホニルベンゼンクロリド(5g、18mモル)を、50mlのTHF中の1当量のピリジン(1.47mL、18mモル)と1当量のN−メチルアニリン(1.97mL、18mモル)に導入する。周囲温度で2時間撹拌後、1当量のアニリン(1.66mL、18mモル)と1当量のピリジン(1.47mL、18mモル)を加える。この混合物を、一晩、周囲温度で撹拌する。溶媒を真空下で蒸発させる。得られた粗生成物をCH2Cl2に溶解させ、0.1N HCl溶液で洗ってから、水で洗い、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過して、蒸発させる。得られた固体(非メチル化/モノメチル化/ジメチル化混合物0.33/1/0.33)をシリカゲル上でのクロマトグラフィーにより精製する(溶離剤CH2Cl2/MeOH95/5)。モノメチル化スルホンアミド12が、白色固体の形態で収率50%で得られる。
【化17】

【0074】
NMR1H(CDCl3,300MHz):δ3.09(s,3H,CH3);6.84(brs,1H,NH);6.94−6.98(m,2H,CH);7.06(m,1H,CH);7.09(m,1H,CH);7.26−7.29(m,6H,CH);7.49(m,1H,CH);7.56−7.60(m,1H,CH);7.91−7.94(m,1H,CH);8.09(t,4J=1.5Hz,1H,CH)ppm;13C(CDCl3,75.5MHz):δ38.4(CH3);122.1(CH);126.2(CH);126.4(CH);126.6(CH);127.9(CH);129.2(CH);129.6(CH);129.7(CH);131.2(CH);131.9(CH);135.7(C);138.0(C);140.2(C);140.7(C)ppm;HRMSDCI(CH4):計算値403.0786(M+H+−C1919242),測定値403.0769(−1.7;−4.2);融点:162.0−162.6℃。
【0075】
実施例13
アルゴン大気下で、1.1当量のNaH(206mg、8.6mモル、ペンタンで3回洗浄により油除去)を、100mLの乾燥ジエチルエーテル中の1当量のジスルホンアミド4(2.75g、7.8mモル)の溶液に加える。周囲温度で30分間の撹拌後に、1当量のメチルトリフラート(880μL、7.8mモル)を加える。この反応媒質を周囲温度で一晩撹拌してから、溶媒を蒸発させる。粗生成物をCH2Cl2に再溶解させ、1N HCl溶液で2回洗ってから、飽和塩溶液で洗い、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過して、再蒸発させる。得られた固体(非メチル化/モノメチル化/ジメチル化混合物0.4/0.2/0.4)をシリカゲル上でのクロマトグラフィーにより精製する(溶離剤CH2Cl2/MeOH95/5)。スルホンアミド13が、白色粉末の形態で、収率12%で単離される。
【化18】

【0076】
NMR1H(CDCl3,300MHz):δ2.23(m,2H,CH2);3.13(m,4H,CH2);3.21(s,3H,CH3);7.08(m,1H,CH);7.13−7.16(m,2H,CH);7.19−7.24(m,3H,CH);7.27(m,4H,CH);7.34(brs,1H,NH)ppm;13C(CDCl3,75.5MHz):δ18.0(CH2);38.6(CH3);47.1(CH2);49.4(CH2);120.8(CH);125.3(CH);126.7(CH);127.7(CH);129.5(CH);129.7(CH);136.6(C);140.9(C)ppm;HRMSDCI(CH4):計算値369.0943(M+H+−C1621242),測定値369.0957(1.4;−3.8);融点:93.6−94.2℃。
【0077】
調製4:スルホンアミド触媒の、ラクチドの開環重合(ROP)における利用
調製した触媒を、D,L−ラクチド(又はL−ラクチド)の開環重合(ROP)において、次の種々の塩基と組み合わせて、試験した:4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、スパルテイン、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン(Me2NCy)、N,N,N”,N”−テトラメチル−1,2−シクロヘキサンジアミン((Me2N)2Cy)。
【0078】
これらのラクチドポリマーを、下記の手順によって調製した:
【化19】

【0079】
これらのすべての重合について、これらのラクチド、触媒及び塩基を、シュレンク管内で、アルゴン下で、無水溶媒(ジクロロメタン、トルエン又はテトラヒドロフランなど)に溶解させる。ペンタノールを加えて、反応媒質を周囲温度で撹拌する。ラクチドのポリマーへの転化を、溶液の試料を定期的に採取して、濃縮し、CDCl3に再溶解させて、1H NMRによりチェックすることによりモニターする。
【0080】
実施例14
ラクチド(500mg、10当量、3.47mモル)、実施例3の触媒(134mg、1当量、0.347mモル)及びDMAP(42mg、1当量、0.347mモル)を、シュレンク管内で、アルゴン下で、3.5mLの無水ジクロロメタンに溶解させる。ペンタノール(38μL、1当量、0.347mモル)を加えて、反応媒質を26℃で撹拌する。ラクチドのポリマーへの転化を、溶液のアリコートを定期的に採取して、濃縮し、CDCl3に再溶解させて、1H NMRによりチェックすることによりモニターする。
【0081】
完全転化Mn=1983、Mw=2217、PI=1.12
【0082】
様々な短鎖ポリマーの合成は、多様性な使用できるスルホンアミド/塩基の対を、他のすべての実験条件を同じにして、示すことを可能にした(CH2Cl2;ラクチド/ペンタノール/スルホンアミド/三級アミンのモル比5/1/1/1)。
【0083】
【表1】

【0084】
異なる鎖長のポリマーを、用いた触媒に関係なく、制御された条件で、合成することができる。
【0085】
オリゴマー(CH2Cl2中の、ラクチド/ペンタノール/スルホンアミド/DMAPのモル比5/1/1/1又は10/1/1/1)を、こうして、迅速且つ制御された条件で得ることができる。
【0086】
【表2】

I/Mは、重合に用いた初期モノマー/プライマーモル比を示す。
【0087】
DPNMRは、形成されたポリマーの重合度である。それは、1H NMRスペクトル上の適当なシグナルの積分により決定される。
【0088】
更に大きいポリマーを合成することも可能である。その場合、用いる比は、50/1/10/10(ラクチド/ペンタノール/スルホンアミド/DMAP)又は100/1/10/10である。得られるポリマーの再現性のある多分散性インデックスに注意することが重要である:
【0089】
【表3】

【0090】
合成されたポリマーは、用いたモノマー/プライマー比に対応する質量を有し、これは、この重合の優れた制御を示している。反応時間は、用いた触媒及び企図した重合度(DP)によって、8時間から3日まで変化する。
【0091】
上記の実験結果は、これらのスルホンアミド触媒が、ラクチドの重合を可能にすることを示している。その上、得られた1に近い多分散性インデックスは、これらの触媒が、エステル交換を禁じることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトンの開環(共)重合用触媒システムとして塩基と組み合わせたスルホンアミドの利用。
【請求項2】
ジラクトンの(共)重合のための、請求項1に記載の利用。
【請求項3】
ラクチド及び/又はグリコリドの共重合のための、請求項1に記載の利用。
【請求項4】
ラクチドの重合のための、請求項3に記載の利用。
【請求項5】
前記の塩基が三級アミンである、請求項1〜4の一つに記載の利用。
【請求項6】
前記の塩基が、下記から選択される三級アミンである、請求項5に記載の利用:
− ジイソプロピルエチルアミン;
− スパルテイン;
− N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン;
− N,N,N”N”−テトラメチル−1,2−シクロヘキサンジアミン;及び
− 4−ジメチルアミノピリジン。
【請求項7】
前記のスルホンアミドが、モノスルホンアミドである、請求項1〜6の一つに記載の利用。
【請求項8】
前記のスルホンアミドが、下記の一般式(I)のモノスルホンアミドであることを特徴とする請求項7の利用:
【化1】

(これは、ラセミ型、又はエナンチオマー型又はこれらの型の任意の組合せであり、式中、R1及びR2は、独立に、任意で置換されていてもよいアルキル、ハロアルキル又はアリール基を表す)。
【請求項9】
R1及びR2が、独立に、フェニル、アルキル又はハロアルキル基を表す、請求項8に記載の利用。
【請求項10】
請求項1〜9の一つに記載の利用であって、スルホンアミドが、下記から選択される化合物であることを特徴とする当該利用:
【化2】

【請求項11】
前記のスルホンアミドが、ビスルホンアミドであることを特徴とする、請求項1〜6の一つに記載の利用。
【請求項12】
請求項11に記載の利用であって、スルホンアミドが、下記の一般式(IIa)又は(IIb)のビスルホンアミドであることを特徴とする当該利用:
【化3】

(これらは、ラセミ型、又はエナンチオマー型又はこれらの型の任意の組合せであって、式中:
R1及びR2は、任意で置換されていてもよいアルキル、ハロアルキル又はアリール基を表し;
R’1及びR’2は、アリーレン、アルキレン又はシクロアルキレン基を表し、これらのすべての基は、任意で置換されてもよく;
R3及びR4は、独立に、水素原子又はアルキル基を表す)。
【請求項13】
R3及びR4が、独立に、水素原子又はメチル基を表す、請求項12に記載の利用。
【請求項14】
R3及びR4が、水素原子をあらわす、請求項12又は13に記載の利用。
【請求項15】
R1及びR2が、任意で置換されていてもよいフェニル基、アルキル又はハロアルキルを表し;R’1が、任意でフェニル基により置換されたシクロアルキレン、アルキレン基を表し;R’2が、アルキレン又はフェニレン基を表す、請求項12〜14の一つに記載の利用。
【請求項16】
R1及びR2が、アルキル、トリフルオロメチル又は任意でメチル若しくはトリフルオロメチルにより置換されたフェニル基を表す、請求項12〜15の一つに記載の利用。
【請求項17】
請求項12又は13に記載の利用であって、スルホンアミドが、下記から選択される化合物であることを特徴とする当該利用:
【化4】

【請求項18】
請求項12〜17の一つに記載の利用であって、スルホンアミドが、下記から選択される化合物であることを特徴とする当該利用:
【化5】

【請求項19】
塩基が、4−ジメチルアミノピリジンである、請求項1〜18の一つに記載の利用。
【請求項20】
下記の構造の化合物:
【化6】

【請求項21】
請求項1〜19の一つに記載の、塩基と組み合わせてのスルホンアミドの触媒としての利用を含むことを特徴とする開環(共)重合方法。
【請求項22】
(共)重合用溶媒を、0〜250℃の温度で、数分〜300時間の間にわたり利用することを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
(共)重合用溶媒を、周囲温度〜150℃の温度で、1〜72時間の間にわたり利用することを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ラクチド及び/又はグリコリドをモノマーとして使用する、請求項22に記載の方法。

【公表番号】特表2011−519991(P2011−519991A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506744(P2011−506744)
【出願日】平成21年4月29日(2009.4.29)
【国際出願番号】PCT/FR2009/000503
【国際公開番号】WO2009/138589
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(509120469)イプセン ファルマ ソシエテ パール アクシオン サンプリフィエ (51)
【氏名又は名称原語表記】IPSEN PHARMA S.A.S.
【住所又は居所原語表記】65 Quai Georges Gorse,F−92100 Boulogne Billancourt FRANCE
【Fターム(参考)】