説明

ラゲッジトリム

【課題】装着前には管理、保管、運搬等の部品の取扱いが容易であり、装着時には装着作業が容易で安定した内装品質を実現し易いラゲッジトリムを提供する。
【解決手段】車体のラゲッジルーム形成部の底部に対応する平面視形状を有する底トリム部11と、底トリム部11の周囲から立設した周囲トリム部30,40とを備え、ラゲッジルーム形成部内に装着することで内側にラゲッジラゲッジルームを形成するラゲッジトリムであって、底トリム部11と周囲トリム部30,40とを、直線状又は曲線状の底部折り曲げ線を介して一体に連結した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体のラゲッジルーム形成部に装着されるラゲッジトリムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セダン型車両の車体後部には、板金構造により構成されて上部にリッドが装着されたラゲッジルーム形成部が設けられている。ラゲッジルーム形成部には、内部に樹脂製のラゲッジトリムが装着されることで、ラゲッジルームが形成される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ラゲッジトリムは、例えば図10に示すように、図示しない車体のラゲッジルーム形成部の底部に配置される底トリム材111と、底トリム材111の車体前方側に立設されるフロントボード130と、底トリム材111の車体後方側に立設されるリアフィニッシャ140と、底トリム材111、フロントボード130及びリアフィニッシャ140の車体側方側に配置されるサイドトリム160とを備える。
【0004】
車体のラゲッジルーム形成部は、車体構造や意匠等に応じた内部形状を有し、例えば、車体側面や後端面の形状に応じた曲面形状や、タイヤハウスが張り出した形状など、複雑な形状を呈する。そのため、底トリム材111、フロントボード130、リアフィニッシャ140及びサイドトリム160は、それぞれ車体形状の対応する部位に応じた形状となっている。
【0005】
このような底トリム材111、フロントボード130、リアフィニッシャ140及びサイドトリム160は、所定の強度を確保するため、例えばハニカムボード等により作製され、複雑な形状の場合には射出成形等により成形されており、車体のラゲッジルーム形成部にそれぞれ固定されて装着されることで、ラゲッジルームが構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−338681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このようなラゲッジトリムは、底トリム材111、フロントボード130、リアフィニッシャ140及びサイドトリム160のような多数の部品を組み合わせて車体のラゲッジルーム形成部に装着しなければならない。
【0008】
そのため、車体に装着する前には、多数の部品を別々に管理しなければならず、装着前の部品の管理に手間を要していた。また、一部或いは全部の部品が、車体形状に応じた立体的な形状を呈するため嵩張り易く、運搬や保管などの際に大きな占有空間が必要となり易かった。そのため、装着前には、部品の管理、運搬、保管などの部品の取り扱いに手間を要するものであった。
【0009】
さらに、トリム材の装着時には、各部品をそれぞれ車体のラゲッジルーム形成部に固定すると共に、各部品同士を互いに位置合わせして連結しなければならない。そのため、部品点数に応じた手間を要し、また、連結や固定時に部品同士の位置ずれが生じることで、ラゲッジルームの内装品質にむらが生じ易かった。
【0010】
そこで、本発明では、トリム材の装着前には、管理、保管、運搬等の部品の取扱いが容易であり、装着時には、装着作業が容易で安定した内装品質を実現し易いラゲッジトリムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成する請求項1に記載の発明は、車体のラゲッジルーム形成部の底部に対応した平面視形状を有する底トリム部と、底トリム部の周囲から立設される周囲トリム部とを備え、ラゲッジルーム形成部に装着されるラゲッジトリムにおいて、底トリム部と周囲トリム部とが、直線状又は曲線状の底部折り曲げ線を介して一体に連結されていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、周囲トリム部が、底トリム部の車体前方に立設されるフロントボード部、及び、底トリム部の車体後方に立設されるリアフィニッシャ部のうちの一方又は双方であることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加え、周囲トリム部が、底部折り曲げ線を介して底トリム部と直接連結された周囲連結部から、底部折り曲げ線に沿う方向に延長されて底トリム部と離間して形成された延長部を備え、周囲連結部に対してこの延長部を屈曲又は湾曲させた状態で、該延長部と底トリム部とを互いに固定可能な固定構造部を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の構成に加え、延長部が、底部折り曲げ線と交差方向に設けられた周囲折り曲げ線を介して周囲連結部と連結されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載の構成に加え、固定構造部が、底トリム部と延長部のうちの一方に設けられた嵌合孔と、他方に設けられ該嵌合孔と嵌合可能な嵌合突起とを備え、嵌合孔の周囲に該嵌合孔から連続する弾性変形用スリットが設けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項3乃至5の何れかに記載の構成に加え、固定構造部が、底トリム部と延長部のうちの一方に設けられた嵌合孔と、他方に設けられ該嵌合孔と嵌合可能な嵌合突起とを備え、嵌合突起に外周囲から連続する弾性変形用スリットが設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の構成に加え、嵌合孔が、互いに対向する第1及び第2内表面を有し、第1内表面の深さ方向の長さが第2内表面の深さ方向の長さより長く形成されると共に、第1内表面の端部に係止部を備え、嵌合突起は、第1内表面と第2内表面との間の距離と同じ幅を有する基部と、該基部から突出して設けられ第1内表面と第2内表面との間の距離より狭い幅を有する易挿入部と、易挿入部の先端に側方へ突出して設けられ係止部と係止可能なフック部とを備え、基部が嵌合孔に挿入された状態で、フック部が係止部に係止可能に構成されたことを特徴とする。
【0018】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7の何れかに記載の構成に加え、底トリム部及び周囲トリム部の背面側に、折り曲げ線に沿うリブが該折り曲げ線に隣接して設けられていることを特徴とする。
【0019】
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8の何れかに記載の構成に加え、底トリム部及び周囲トリム部のうちの一方又は双方の背面側に、該トリム部を補強する補強板材が固定して設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、底トリム部と周囲トリム部とが直線状又は曲線状の底部折り曲げ線を介して一体に連結されているので、トリム材の装着前には、底トリム部と周囲トリム部とを展開状態又は完全に折り畳んだ状態に保てば、ラゲッジトリムを略平坦な形状に維持できる。そのため、ラゲッジトリムが嵩張らず、運搬時や保管時の配置スペースを少なく抑えることができる。また、底トリム部と周囲トリム部とが一体化されているため、部品点数を少なく抑えることができ、部品管理も容易である。
【0021】
一方、装着時には、底トリム部と周囲トリム部とを底部折り曲げ線で折り曲げることで、確実に位置合わせした状態で所定形状に成形することができ、装着作業が容易であると共に、安定した内装品質を確保し易い。
【0022】
その結果、車体への装着前には部品の管理、運搬、保管などの取扱いが容易であり、装着時には装着作業が容易で安定した内装品質を実現し易いラゲッジトリムを提供することができる。
【0023】
周囲トリム部がフロントボード部及びリアフィニッシャ部のうちの一方又は双方である場合は、フロントボード部は、車体のラゲッジルームと車室との仕切部位の形状に対応する形状を呈するため、フロントボード部と底トリム部との間の連結部分が滑らかな形状となり易い。また、リアフィニッシャ部は、車体の後端面の形状に対応する形状を呈するため、リアフィニッシャ部と底トリム部との間の連結部が滑らかな形状となり易い。
【0024】
そのため、フロントボード部及びリアフィニッシャ部うちの一方又は双方であれば、底トリム部と底部折り曲げ線を介して連結した構成とすることが容易であり、上述のような車体装着前や装着時の効果を達成し易い。
【0025】
底トリム部と直接連結された周囲連結部から、底部折り曲げ線に沿う方向に延長された延長部を備えている場合は、底トリム部に対して折り曲げて形成することが困難な形状であっても、延長部により実現することが可能である。しかも、周囲連結部に対して延長部を屈曲又は湾曲させた状態で、延長部と底トリム部とを固定構造部により互いに固定できるので、周囲連結部及び延長部を底部折り曲げ線において折り曲げて立ち上げた形状で、安定して維持することが可能である。そのため、ラゲッジルームの形状の自由度を向上でき、所望の形状のラゲッジルームを実現し易い。
【0026】
延長部が底部折り曲げ線と交差方向に設けられた周囲折り曲げ線を介して周囲連結部と連結されていれば、延長部を周囲折り曲げ線で屈曲させて周囲連結部に固定することで、十分な剛性を付与して周囲トリム部を立ち上げた形状で成形することができる。
【0027】
固定構造部を、底トリム部及び延長部のうちの一方に設けられた嵌合孔と、他方に設けられて嵌合孔と嵌合可能な嵌合突起とで構成し、嵌合孔の周囲又は嵌合突起に弾性変形用スリットを設けることにより、嵌合孔又は嵌合突起が弾性変形し易くでき、嵌合作業を容易にできる。
【0028】
嵌合突起が嵌合孔の幅と同じ幅の基部と、嵌合孔の幅より狭い幅の易挿入部と、挿入孔の先端に設けられたフック部とを有し、基部が嵌合孔に挿入された状態で、フック部が嵌合孔の係止部に係止可能に構成されている場合は、嵌合孔を嵌合孔に挿入した際、フック部を係止部に係止するまでは易挿入部を容易に弾性変形させて嵌合孔内に挿入でき、フック部を係止部に係止すると、嵌合突起の挿脱方向への移動がフック部及び係止部により阻止され、嵌合突起の横方向の移動が嵌合孔及び基部により阻止される。そのため、嵌合突起を嵌合孔に容易に嵌合させることができる。
【0029】
折り曲げ線に沿うリブが折り曲げ線に隣接して設けられている場合は、周囲トリム部を折り曲げ線で折り曲げる際、リブにより折り曲げ位置を規制することができ、折り曲げ線からずれた位置で折れ曲がることを防止できる。そのため、ラゲッジトリムを所望の形状に精度よく成形し易い。
【0030】
底トリム部及び周囲トリム部のうちの一方又は双方の背面側に、各トリム部を補強する補強板材が固定して設けられている場合は、各トリム部の強度を確保し易いことに加え、車体のラゲッジルーム形成部の表面が凹凸形状を有していても、補強板材を凸部間に架け渡すことで、底トリム部や周囲トリム部を当接させて安定して配置し易い。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】(a)は本発明の実施の形態に係るラゲッジトリムの展開状態を示す斜視図であり、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図2】(a)は図1のラゲッジトリムの固定構造を示す斜視図、(b)は(a)中のS部の部分平面図、(c)は部分断面図である。
【図3】(a)は図1のラゲッジトリムの折りたたみ状態を示す斜視図、(b)は側面図、(c)は他の折りたたみ状態を示す側面図である。
【図4】図1のラゲッジトリムの組み立て状態を示す斜視図である。
【図5】図1のラゲッジトリムにサイドトリムを装着する状態を示す分解斜視図である。
【図6】(a)、(b)は図1のラゲッジトリムの装着状態を示す部分断面図である。
【図7】(a)は本発明に係る実施の形態2のラゲッジトリムの固定構造部を示す斜視図、(b)は部分断面図である。
【図8】(a)は本発明による実施の形態3のラゲッジトリムの固定構造部を示す斜視図、(b)は部分断面図である。
【図9】(a)は本発明による実施の形態3のラゲッジトリムの固定構造部を示す斜視図、(b)は部分断面図である。
【図10】従来のラゲッジトリムを示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図1〜図9を参照して本発明の幾つかの実施の形態について説明する。
【0033】
[実施の形態1]
図1乃至図6は実施の形態1を示す。この実施の形態に係るラゲッジトリム10は、板金構造により構成された図示しない車体のラゲッジルーム形成部に装着されることで、内部にラゲッジルームを形成するものである。
【0034】
ラゲッジトリム10は、図1に示すように、ラゲッジルーム形成部の底部に配置される底トリム部11と、底トリム部11の車体前方に立設される周囲トリム部としてのフロントボード部30と、底トリム部11の車体後方に立設される周囲トリム部としてのリアフィニッシャ部40とを備える。
【0035】
このラゲッジトリム10は、例えば全体が各種の合成樹脂からなる板材や、ハニカムボード等の板材を表皮材で被覆した複合材などにより形成されており、底トリム部11とフロントボード部30との間、底トリム部11とリアフィニッシャ部40との間が、それぞれ底部折り曲げ線21,23を介して一体に連結されている。各底部折り曲げ線21,23は、例えば、他の部位より薄くした薄肉部、溝、切り込みなどにより形成されている。
【0036】
底トリム部11、フロントボード部30及びリアフィニッシャ部40のラゲッジルームに露出しない背面であって、底部折り曲げ線21,23に隣接する部位には、図1(b)に示すように、底部折り曲げ線21,23に沿うリブ22,24が設けられている。この実施の形態では、底部折り曲げ線21,23の全長の両側に連続して設けられている。
【0037】
また、底トリム部11、フロントボード部30及びリアフィニッシャ部40の背面側には、図1(b)に示すように、適宜な幅を有し車体幅方向に配向された補強板材12が、複数所定間隔で接合されている。
【0038】
底トリム部11は、ラゲッジルーム形成部の底部に応じた平面視形状を有する。車両前方側の縁部は、車体の車室との仕切部位に応じた形状を呈し、車体幅方向の略全長にわたり直線形状となっている。車体前方側の両側方には、タイヤハウスの逃げ部13が設けられている。一方、車体後方側の縁部は、車体後端面の形状に応じた緩やかな曲線形状となっている。
【0039】
フロントボード部30は、底トリム部11の車体前方側の縁部に連結されている。このフロントボード部30は、直線状の底部折り曲げ線21を介して底トリム部11と直接に連結されている周囲連結部としてのフロント連結部31と、フロント連結部31から底部折り曲げ線21に沿う方向に延長され、底トリム部11と離間して形成されたフロント延長部33とを備える。
【0040】
この実施の形態では、フロント連結部31は底部折り曲げ線21に隣接して略長方形形状に形成され、底部折り曲げ線21で折り曲げられたとき、フロント連結部31の頂部が一定高さに配置される。
【0041】
また、フロント延長部33は、底部折り曲げ線21と直交する直線形状の周囲折り曲げ線25を介して、フロント連結部31と一体に連結されており、周囲折り曲げ線25に隣接して略長方形形状に形成されている。フロント延長部33の底トリム部11側の縁部には、後述する固定構造部50の一部を構成する嵌合突起51が設けられている。
【0042】
リアフィニッシャ部40は、底トリム部11の車体後方側の縁部に底部折り曲げ線23を介して連結されている。底トリム部11の車体後方側の縁部が、曲線形状に形成されているという理由で、底部折り曲げ線23は、底トリム部11の縁部の一部にのみ形成され、リアフィニッシャ部40の車幅方向中間位置で、底部折り曲げ線23を介して連結されている。
【0043】
底部折り曲げ線23は、直線状に形成されていてもよいが、折り曲げ可能な範囲において、大きな曲率半径を有する曲線形状に形成することも可能である。この実施の形態では、底トリム部11の縁部の曲率半径を有する曲線形状に形成されており、底トリム部11の車両後方側の縁部の他の部位と屈曲せずに滑らかに連続して形成されている。
【0044】
このリアフィニッシャ部40は、底部折り曲げ線23を介して直接底トリム部11と連結している車幅方向中間部のリア連結部45と、リア連結部45に対して底部折り曲げ線23に沿う接線方向に延長されたリア延長部47とを有し、リア連結部45とリア延長部47とが仕切られることなく連続した略長方形形状に形成されている。
【0045】
ここでは、リア延長部47の底トリム部11側の縁部は、底トリム部11の車体後方側の縁部との間の距離が車体側方側ほど離間するように形成され、後述する固定構造部50の一部を構成する嵌合突起51を備えている。
【0046】
底トリム部11にフロント延長部33やリア延長部47を固定するための固定構造部50は、図2(a)〜(c)に示すように、フロント延長部33やリア延長部47の縁部に、各延長部33,47の表面に沿う方向に突出して設けられた嵌合突起51と、底トリム部11に設けられた嵌合孔53とを有する。この実施の形態では、嵌合突起51は係止孔55を有し、嵌合孔53には、係止孔55に係止可能な係止凸部57を有すると共に、嵌合孔53の周囲に、嵌合孔から長手方向に連続するように弾性変形用スリット59が設けられている。嵌合孔53内の係止凸部57は、嵌合孔53の内壁面に互いに対向するように突出して一対設けられ、嵌合突起51を挿入させ易くするなどの理由で、各係止凸部57が少なくとも嵌合突起51の挿入方向に対して傾斜面を有する曲面形状に形成されている。ここでは、各係止凸部57の表面が半球形状に形成され、頂部が互いに近接又は当接している。
【0047】
このようなラゲッジトリム10は、車体に装着前の状態では、図1に示すように、各折り曲げ線21,23,25を折り曲げない状態で、底トリム部11、フロントボード部30及びリアフィニッシャ部40が一平面方向に沿って配置された平坦な形状に維持される。
【0048】
また、図3(a),(b)に示すように、底部折り曲げ線21,23で折り曲げて、フロントボード部30及びリアフィニッシャ部40を完全に折り畳んだ状態で底トリム部11上に配置すれば、平面視における外形形状を小さくした状態で平坦な形状に維持することもできる。
【0049】
なお、この実施の形態1では、底トリム部11には、底部折り曲げ線21,23と略平行に、且つ、複数の補強板材12間に折り曲げ線27を設けていてもよい。その場合、図3(c)に示すように、底トリム部11を折り畳んだ状態にすることで、外形形状を更に小さくした状態で、平坦な形状にすることもできる。
【0050】
このようなラゲッジトリム10を車体のラゲッジルーム形成部に装着するには、次のように行う。
【0051】
車体のラゲッジルーム形成部に収容する前或いは収容した状態で、図4に示すように、底トリム部11に対してフロントボード部30を底部折り曲げ線21において所定形状に折り曲げると共に、フロント延長部33をフロント連結部31に対して周囲折り曲げ線25において所定形状に折り曲げる。
【0052】
同時に、図2(a),(b)に示すように、フロント延長部33の縁部に設けられた嵌合突起51を底トリム部11の嵌合孔53にそれぞれ挿入し、嵌合孔53及び弾性変形用スリット59を弾性変形させつつ、フロント延長部33の縁部が底トリム部11に当接するまで挿入し、嵌合突起51の係止孔55に嵌合孔53の係止凸部57を係止させることで、フロント延長部33を底トリム部11に固定する。
【0053】
次いで、底トリム部11に対してリアフィニッシャ部40を、底部折り曲げ線23において所定形状に折り曲げると共に、リアフィニッシャ部40及びリア延長部47を底トリム部11の車両後方側の縁部の曲線形状に対応させて湾曲させる。
【0054】
同時に、図2に示すように、リア延長部47の縁部に設けられた嵌合突起51を底トリム部11の嵌合孔にそれぞれ挿入し、嵌合孔53及び弾性変形用スリット59を弾性変形させつつ、リア延長部47の縁部が底トリム部11に当接するまで挿入し、嵌合突起51の係止孔55に嵌合孔53の係止凸部57を係止させることで、リア延長部47を底トリム部11に固定する。これによりラゲッジトリム10が所定形状に成形される。
【0055】
次いで、図5に示すように、成形されたラゲッジトリム10の車両の両側方側にサイドトリム60を連結して固定する。図では、一方のサイドトリム60の図示を省略している。
【0056】
このサイドトリム60のラゲッジトリム10に対する固定方法は、特に制限されるものではないが、この実施の形態では、サイドトリム60の底トリム部11に対向する部位を、底トリム部11の車両側方の縁部の形状に略一致させると共に、底トリム部11の縁部を載置或いは収容可能な形状に形成しておき、この部位に底トリム部11を連結している。また、フロント延長部33にサイドトリム60への連結孔61を設けておき、図示しないクリップを用いて連結している。
【0057】
ラゲッジトリム10とサイドトリム60とを連結すると共に、これらを車体のラゲッジルーム形成部にクリップ等を用いて固定することで、ラゲッジトリム10の装着を完了し、これによりラゲッジトリム10の成形体の内部にラゲッジルームが形成される。
【0058】
以上のようなラゲッジトリム10によれば、底トリム部11とフロントボード部30及びリアフィニッシャ部40とが底部折り曲げ線21,23を介して一体に連結されているので、フロントボード部30及びリアフィニッシャ部40が底トリム部11との間の連結部を滑らかな形状に形成し易いことから、複数の部品を連結して一体化することが容易である。
【0059】
このように底トリム部11とフロントボード部30及びリアフィニッシャ部40とを底部折り曲げ線21,23を介して一体に連結しているので、装着前には、底トリム部11とフロントボード部30及びリアフィニッシャ部40とを展開状態又は完全に折り畳んだ状態に保つことで、ラゲッジトリム10を略平坦な形状に維持できる。そのため、ラゲッジトリム10が嵩張らず、運搬時や保管時の配置スペースを少なく抑えることができる。また、底トリム部11とフロントボード部30及びリアフィニッシャ部40とが一体化されているため、部品点数を少なく抑えることができ、部品管理も容易である。
【0060】
一方、装着時には、底トリム部11とフロントボード部30及びリアフィニッシャ部40とを底部折り曲げ線21,23で折り曲げることで、確実に位置合わせした状態で所定形状に成形することができ、装着作業が容易である。しかも、互いに位置ずれを生じることがないので安定した品質を確保し易い。
【0061】
このラゲッジトリム10では、底トリム部11と連結されたフロント連結部31やリア連結部47から延長されたリア延長部47を備え、これらが底トリム部11と離間して設けられているので、底トリム部11に対して折り曲げて形成することが困難な形状であっても、フロント延長部33やリア延長部47を変形させることで、実現させることができる。
【0062】
しかも、フロント延長部33やリア延長部47をフロント連結部31やリア連結部45に対して屈曲又は湾曲させた状態で、固定構造部50により底トリム部11に固定できるので、各連結部31,45や、各延長部33,47を折り曲げて立ち上げた形状で、安定して維持することが可能である。そのため、これらにより形成されるラゲッジルームの形状の自由度を向上できる。
【0063】
このラゲッジトリム10では、フロント延長部33が底部折り曲げ線21と交差方向に設けられた周囲折り曲げ線25を介してフロント連結部31と連結されているので、フロント延長部33を周囲折り曲げ線25で屈曲させてフロアボード部11に固定することで、フロントボード部30を立ち上げた形状で剛性を付与して成形することができる。
【0064】
また、このラゲッジトリム10では、固定構造部50は嵌合孔53及び嵌合突起51を備え、嵌合孔53の周囲に弾性変形用スリット59が設けられているので、嵌合時に嵌合孔53を弾性変形させ易く、嵌合作業が容易である。
【0065】
底部折り曲げ線21,23に沿うリブ22、24は底部折り曲げ線21,23に隣接して設けられているので、フロントボード部30及びリアフィニッシャ部40を底部折り曲げ線21,23で折り曲げる際、リブ22,24により折り曲げ位置を規制することができ、底部折り曲げ線21,23からずれた位置で折れ曲がることを防止できる。そのため、ラゲッジトリム10を所望の形状に精度よく成形し易い。
【0066】
また、底トリム部11、フロントボード部30、リアフィニッシャ部40の背面側に、補強板材12が固定して設けられているので、底トリム部11、フロントボード部30、リアフィニッシャ部40の強度を確保し易い。
【0067】
しかも、図6(a)(b)に示すように、車体のラゲッジルーム形成部の表面65が凹凸形状を有していても、補強板材12を凸部67間に架渡すように配置することで、底トリム部11、フロントボード部30、リアフィニッシャ部40を当接させて安定して配置することができる。
【0068】
上記実施形態は、本発明の範囲内において適宜変更可能である。例えば、上記実施の形態では、底トリム部11にフロントボード部30とリアフィニッシャ部40とが連結された例について説明したが、特に限定されるものではなく、何れか一方が底トリム部11に連結されたものであってもよく、底トリム部11との間が直線や曲率の小さい曲線形状となる部位であれば、サイドトリム60であっても折り曲げ線を介して底トリム部11に一体に連結させることができる。
【0069】
また、上記では、底トリム部11、フロントボード部30及びリアフィニッシャ部40の全てに補強板材12を接合した例について説明したが、十分な強度が確保できれば補強部材12を設けなくてもよく、底トリム部11などの一部だけに補強板材12を接合することで構成することも可能である。
【0070】
また、上記では、固定構造部50として、フロント延長部33やリア延長部47の縁部に嵌合突起51を設け、底トリム部11に嵌合孔53を設けた例について説明したが、フロント延長部33やリア延長部47の縁部に嵌合孔53を設け、底トリム部11に嵌合突起51を設けることも可能である。
【0071】
[実施の形態2]
図7は実施の形態2に係るラゲッジトリム10の一部を示す。
【0072】
この実施の形態2のラゲッジトリム10は、固定構造部50の構造が異なる他は、実施の形態1と同様の構成を有している。
【0073】
この固定構造部50では、嵌合突起51が対称に形成された一対の分割突起71,71を備え、各分割突起71,71が互いに対向するように分割フック部73,73を有すると共に、分割フック部73,73間が当接して、その間に弾性変形用スリット75が形成されている。一方、嵌合孔53は、各分割突起71,71の幅以上の幅を有し、分割フック部73,73に対応する間隔で形成された一対の分割孔77,77からなる。
【0074】
この固定構造部50では、嵌合突起51を嵌合孔53に嵌合させる際、各分割フック部73,73をそれぞれ分割孔77,77に挿入すると、弾性変形用スリット75により各分割フック部73,73が互いに離間方向に弾性変位する。そして、フロント延長部33或いはリア延長部47の縁部が底トリム部11に当接することで、各フック部73,73が分割孔77,77間の係止部79に固定される。
【0075】
このような実施の形態2のラゲッジトリム10によっても、実施の形態1と同様の作用効果を得ることができ、しかも、嵌合突起51に弾性変形用スリット75が設けられているため、嵌合突起51を嵌合孔53に嵌合させ易い。
【0076】
[実施の形態3]
図8は実施の形態3のラゲッジトリム10の一部を示す。
この実施の形態3のラゲッジトリム10は、固定構造部50の構造が異なる他は、実施の形態1と同様の構成を有している。
【0077】
このラゲッジトリム10の固定構造部50では、嵌合突起51が、側方に突出して嵌合孔53の背面側の角部と係止可能なフック部87と、外周囲から連続するように突出方向に形成された弾性変形用スリット部81とを備える。この弾性変形用スリット部81は、先端に形成された当接スリット83と、当接スリット83から連続して突出方向に延びるように、嵌合突起51の広幅方向の中間位置に形成された中空部85とを有する。
【0078】
上記実施の形態3のラゲッジトリム10によっても、実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。しかも、固定構造部50では、嵌合突起51を嵌合孔53に嵌合させる際、中空部85が形成されている分、嵌合突起51の広幅方向の弾性変形が容易であり、そのため、嵌合突起51を嵌合孔53に嵌合させることが容易である。
【0079】
[実施の形態4]
図9は実施の形態4のラゲッジトリム10の一部を示す。
【0080】
この実施の形態4に係るラゲッジトリム10は、固定構造部50の構造が異なる他は、実施の形態1と同様の構成を有している。
【0081】
このラゲッジトリム10の固定構造部50では、嵌合孔53が互いに対向する第1内表面91と第2内表面92とを有しており、底トリム部11の背面側に突起部分を形成することで、第1内表面91の深さ方向の長さL1が第2内表面の深さ方向の長さL2より長く形成されている。
【0082】
一方、嵌合突起51には、第1内表面91と第2内表面92との間の幅W1と同じ幅を有する基部93と、第1内表面91と第2内表面92との間の幅W1より狭い幅W2を有する易挿入部95とが設けられ、易挿入部95の先端にフック部96が側方側に向けて突出して設けられている。このフック部96は、基部93が嵌合孔53に挿入された状態で、係止部としての第1内表面91の端部の角部に係止可能に構成されている。なお、嵌合突起51の各延長部33,47との連結部分には、嵌合突起51の外周囲から連続する弾性変形用スリット99が設けられている。
【0083】
上記実施の形態4のラゲッジトリム10でも実施の形態1と同様の作用効果を得ることが可能である。しかも、このような固定構造部50では、嵌合突起51を嵌合孔53に挿入した際、フック部96を第1内表面91の角部に係止するまでは、易挿入部95を容易に弾性変形させて嵌合孔内に挿入することができる。そして、十分に挿入させてフック部96を第1内表面91の角部に係止すると、嵌合突起51の挿脱方向への移動が阻止されると共に、嵌合孔53と基部93とが当接することで嵌合突起51の横方向の移動が阻止される。
【0084】
そのため、嵌合突起を嵌合孔に挿入し易く、嵌合後には確実に固定することが可能であり、嵌合突起を嵌合孔に嵌合させる嵌合作業を容易に行うことが可能である。
【符号の説明】
【0085】
10 ラゲッジトリム
11 底トリム部
21,23 底部折り曲げ線
25 周囲折り曲げ線
30 フロントボード部(周囲トリム部)
31 フロント連結部(周囲連結部)
33 フロント延長部(周囲延長部)
40 リアフィニッシャ部(周囲トリム部)
45 リア連結部(周囲連結部)
47 リア延長部(周囲延長部)
50 固定構造部
51 嵌合突起
53 嵌合孔
59,75,83,99 弾性変形用スリット
91 第1内表面
92 第2内表面
93 基部
95 易挿入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のラゲッジルーム形成部の底部に対応した平面視形状を有する底トリム部と、上記底トリム部の周囲から立設される周囲トリム部とを備え、上記ラゲッジルーム形成部に装着されるラゲッジトリムにおいて、
上記底トリム部と上記周囲トリム部とが、直線状又は曲線状の底部折り曲げ線を介して一体に連結されていることを特徴とする、ラゲッジトリム。
【請求項2】
前記周囲トリム部は、前記底トリム部の車体前方に立設されるフロントボード部、及び、上記底トリム部の車体後方に立設されるリアフィニッシャ部のうちの一方又は双方であることを特徴とする、請求項1に記載のラゲッジトリム。
【請求項3】
前記周囲トリム部は、前記底部折り曲げ線を介して前記底トリム部と直接連結された周囲連結部から、上記底部折り曲げ線に沿う方向に延長されて上記底トリム部と離間して形成された延長部を備え、
上記周囲連結部に対して上記延長部を屈曲又は湾曲させた状態で、該延長部と上記底トリム部とを互いに固定可能な固定構造部を設けたことを特徴とする、請求項1又は2に記載のラゲッジトリム。
【請求項4】
前記延長部が、前記底部折り曲げ線と交差方向に設けられた周囲折り曲げ線を介して前記周囲連結部と連結されていることを特徴とする、請求項3に記載のラゲッジトリム。
【請求項5】
前記固定構造部は、前記底トリム部と前記延長部のうちの一方に設けられた嵌合孔と、他方に設けられ該嵌合孔と嵌合可能な嵌合突起とを備え、上記嵌合孔の周囲に該嵌合孔から連続する弾性変形用スリットが設けられていることを特徴とする、請求項3又は4に記載のラゲッジトリム。
【請求項6】
前記固定構造部は、前記底トリム部と前記延長部のうちの一方に設けられた嵌合孔と、他方に設けられ該嵌合孔と嵌合可能な嵌合突起とを備え、上記嵌合突起に外周囲から連続する弾性変形用スリットが設けられていることを特徴とする、請求項3乃至5の何れかに記載のラゲッジトリム。
【請求項7】
前記嵌合孔は、互いに対向する第1及び第2内表面を有し、前記第1内表面の深さ方向の長さが前記第2内表面の深さ方向の長さより長く形成されると共に、上記第1内表面の端部に係止部を備え、
前記嵌合突起は、上記第1内表面と上記第2内表面との間の幅と同じ幅を有する基部と、該基部から突出して設けられ第1内表面と上記第2内表面との間の幅より狭い幅を有する易挿入部と、易挿入部の先端に側方へ突出して設けられ上記係止部と係止可能なフック部とを備え、
上記基部が上記嵌合孔に挿入された状態で、上記フック部が上記係止部に係止可能に構成されたことを特徴とする、請求項5又は6に記載のラゲッジトリム。
【請求項8】
前記底トリム部及び前記周囲トリム部の背面側に、前記折り曲げ線に沿うリブが該折り曲げ線に隣接して設けられていることを特徴とする、請求項1乃至7の何れかに記載のラゲッジトリム。
【請求項9】
前記底トリム部及び前記周囲トリム部のうちの一方又は双方の背面側に、該トリム部を補強する補強板材が固定して設けられていることを特徴とする、請求項1乃至8の何れかに記載のラゲッジトリム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−247715(P2010−247715A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100411(P2009−100411)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】