説明

ラジエータの受け構造

【課題】自動車前部のラジエータの受け構造を提供する。
【解決手段】ラジエータ11の受け構造を前方に向かう延長部19を有する受け部材17で構成し、延長部19に十分に大きい力が作用した場合、受け部材17が車体構造部23からは移動し、ラジエータ11が水平揺動しながら後方に移動するように、ラジエータ11を収容する車体構造部23に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車前部のラジエータの受け部材であって、ラジエータの下縁領域が少なくとも1箇所で受け部材を介して車体構造部に固定され、固定箇所が自動車フェンダー水準よりも低い水準となる受け部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の前部衝突の際に一定の範囲で水平揺動をするようにラジエータを配置して取り付けることはすでに知られている。それによって比較的低速度で衝突した際には、ラジエータまたはそれに接続する構造部分の損傷が回避あるいは減少される。
【0003】
そのために、前方のフェンダー横支持部材とラジエータの間に変形部材を配置する特許文献1が知られ、衝突の際にフェンダー横支持部材から結合解除できる構造部分にラジエータが結合され、さらにラジエータの後方には変形し難い構成部分のない自由スペースが設けられ、そのため限定されたラジエータの後方運動が可能となる。
【0004】
特許文献2には下部に保持ピボットを備えたラジエータの固定装置が開示されるが、適当な力がラジエータに作用すると、接続する長孔を介して移動するように収容部材に保持される。
【0005】
この公知の配置には、ラジエータの運動がフェンダー横支持部材の運動に連動されるか、または力がラジエータに直接作用したときラジエータのみが水平揺動するという欠点がある。
【特許文献1】DE10260171A1
【特許文献2】DE202004011632U1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、フェンダー横支持部材または一般にフェンダーの高さまたは存在に依存せずにラジエータに水平揺動を起こさせ、また揺動運動をさせるためにラジエータに直接当接させないための前提条件を簡単な手段で作り出すことに基礎を置く。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、自動車の受け部材に前方に向かう延長部を設け、かつ延長部に十分に大きい力が作用した場合に受け部材を車体構造部から外して水平後方に移動させ、同時にラジエータも移動させることによって解決される。
【0008】
受け部材の延長部の働きによって、衝突の際にはラジエータに直接当接することなくラジエータの受け箇所、すなわちラジエータが後方に移動することになる。つまり特許文献2の対象のものと異なり、受け部材内のラジエータのみではなく、ラジエータと受け部材とが共に移動する。
【0009】
受け部材の延長部によって、ラジエータ位置に関係なく、衝撃の際にラジエータが水平揺動する領域に受け部材が導かれるという利点を有する。これは自動車が非常に低い障害物、例えば低い石柱に乗り上げたときにほぼ決定的となる。その場合、ラジエータの水平揺動をフェンダーシステムから結合解除することが特に有利となることがわかる。すなわち、多くのケースが考えられ、その場合、確かにフェンダー横支持部材の移動は有意義であるが、しかしラジエータの水平揺動は不必要である。補足すると、提案するラジエータの新しい受け構造はそれ以外の構造、特にフェンダーシステムの形態および高さには全く依存しない。フェンダーの存在は発明によるラジエータ受け構造を使用する前提条件ではない。
【0010】
発明による有利な実施形態によると、受け部材はプラスチック部材とすることができ、また保持部材を備えるが、この保持部材は受け部材が移動運動を開始する時に破損する。このようなプラスチック製受け部材は非常に安価に製造できる。受け部材は発明によるラジエータ受け構造の範囲内で完全に課題が考慮され、固定部材を追加使用せずに組み立てることができる。一定形状の嵌合が存在するか置き台が使用されると固定には十分である。これらすべての固定装置は一定の衝撃力で破損するように簡単な方法で構成することができる。また発明により受け部材に形成される延長部は補強材またはリブによって、少なくとも発生する力をラジエータの水平揺動に伝達できるように構成することができる。
【0011】
ラジエータ自体は公知の手段によって、例えばゴム緩衝部品を使用して受け部材に収容することができる。
多くの場合、衝突の際にはラジエータを少しだけ後方に水平揺動させることで十分であるので、ある程度揺動軸を形成する上部の固定点をこの目的のために特別に形成することはほとんど必要ない。
【発明の効果】
【0012】
本発明の受け構造により、自動車の衝突の際にはラジエータに直接当接することなくラジエータと受け部材とを共に後方に移動させることになる。したがって、この場合の取り替え修理は受け部材のみで済む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
発明の実施形態を図面に示し、以下に詳細に記載する。
図1は原理図としてフェンダー横支持部材7を有するフェンダーシステム5およびフェンダーカバー9の側面図を示す。フェンダー横支持部材7の後方にラジエータ11が配置される。
【0014】
ラジエータ11を収容するためにラジエータ11に下部ピボット13を設け、これをゴム製ライナ15に挿入する。ゴム製ライナ15は受け部材17に取り囲まれ、前方に向かう延長部19が受け部材17に一体で形成される。受け部材17を固定するため、受け部材17に前方ブラケット21を設け、このブラケット21は受け部材17の前側を支える車体構造部23に当接する。この場合、車体構造部23は自動車横方向に延びる前端下部支持部材で構成される。さらに受け部材17を固定するために留め具25も形成し、車体構造部23と協働で受け部材17を自動車縦方向に固定するための役割をする。
【0015】
図2および3によって両ブラケット21を詳細に説明する。ブラケット21に切欠き溝27を設け、ここにピン29を嵌合させて受け部材17を自動車横方向に固定する。
衝突の際、延長部19に十分に大きい力が作用すると、ブラケット21は破損して、受け部材17は収容したラジエータ11とともに後方に移動する。起こりうるこの移動運動量はほぼ延長部19の長さに相当する。激しい衝突の場合は、受け部材17と車体構造部23との間に相対移動はなく、つまり受け部材17および車体構造部23は共に後方に移動する。
【0016】
しかし、衝突がそれほど激しくない場合は、車体構造部23はもとの位置に残るので、修理するには受け部材のみを取り替えればよい。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明による受け部材は自動車の前部に設けたラジエータの受け構造に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】原理図としてラジエータとその受け部材およびフェンダーシステムの側面図を示す。
【図2】図1によるラジエータ受け部材の斜視図を示す。
【図3】はめ込まれたラジエータを除いた、図2に類似する図を示す。
【符号の説明】
【0019】
5 フェンダーシステム
7 フェンダー横支持部材
9 フェンダーカバー
11 ラジエータ
13 下部ピボット
15 ゴム製ライナ
17 受け部材
19 延長部
21 ブラケット
23 車体構造部
25 留め具
27 切欠き溝
29 ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車前部のラジエータの受け部材であって、ラジエータの下縁領域が少なくとも1箇所で受け部材を介して車体構造部に固定され、固定箇所が自動車フェンダー水準よりも低い水準となる受け部材において、
受け部材(17)は前方に向かう延長部(19)を備え、かつ、延長部(19)に十分に大きい力が作用した場合に受け部材(17)が車体構造部(23)から外れ、ラジエータ(11)が水平揺動しながら水平後方に移動するように車体構造部(23)に固定されることを特徴とする受け部材。
【請求項2】
受け部材(17)はプラスチックであり、受け部材(17)が移動運動を開始するときに破損する保持部材(21,25)を備えることを特徴とする請求項1に記載の受け部材。
















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−45396(P2007−45396A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−209324(P2006−209324)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(500085758)アウディー アーゲー (41)
【Fターム(参考)】