説明

ラジエータコアサポートのシール構造

【課題】 ラジエータコアサポートと熱交換器が相対的に移動を許容しつつ、両者の隙間を覆うことができるラジエータコアサポートのシール構造の提供。
【解決手段】 自動車のラジエータコアサポート1の後方側に熱交換器2が搭載されると共に、両者の隙間にシール部材3が設けられるラジエータコアサポート1のシール構造であって、シール部材3の中途部に薄肉の脆弱部3aを形成することにより、ラジエータコアサポート1と熱交換器2の相対移動を脆弱部3aで許容しつつ両者の隙間を覆うこととした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器のキャリアとして自動車に搭載されるラジエータコアサポートのシール構造に関し、特に、熱交換器との隙間を少なくして熱気の吹き返しを防止できるラジエータコアサポートのシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ラジエータコアサポートは熱交換器、ヘッドランプ、バンパステイ、バンパアーマチュア、モータファンシュラウド、モータファン等が組み付けられてフロントエンドモジュールとして車体組立工場へ搬送された後、車体のエンジンルームに搭載される(特許文献1参照)。
【0003】
また、ラジエータコアサポートと熱交換器の間に隙間が生じていると、該隙間からエンジン側の熱気が熱交換器の前方側に吹き返してしまうため、熱交換器の冷却性能が低下するという問題点がある。
そこで、通常、前記隙間を覆うようにラジエータコアサポート側または熱交換器側にシール部材を固定してエンジンの熱気の吹き返しを防止している。
【特許文献1】特開2003−306046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載のラジエータコアサポートのシール構造にあっては、自動車の振動等によってラジエータコアサポートと熱交換器が相対的に移動を繰り返すため、シール部材が破損して耐久性が低くなるという問題点があった。
【0005】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、ラジエータコアサポートと熱交換器が相対的に移動を許容しつつ、両者の隙間を覆うことができるラジエータコアサポートのシール構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明では、自動車のラジエータコアサポートの前方側または後方側に熱交換器が搭載されると共に、両者の隙間にシール部材が設けられるラジエータコアサポートのシール構造であって、前記シール部材の中途部に薄肉の脆弱部を形成することにより、ラジエータコアサポートと熱交換器の相対移動を脆弱部で許容しつつ両者の隙間を覆うことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明では、請求項1記載のラジエータコアサポートのシール構造において、前記シール部材をラジエータコアサポートまたは熱交換器に着脱可能に固定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明にあっては、自動車のラジエータコアサポートの前方側または後方側に熱交換器が搭載されると共に、両者の隙間にシール部材が設けられるラジエータコアサポートのシール構造であって、前記シール部材の中途部に薄肉の脆弱部を形成することにより、ラジエータコアサポートと熱交換器の相対移動を脆弱部で許容しつつ両者の隙間を覆うため、振動等によってラジエータコアサポートと熱交換器が相対移動した場合でも前記隙間が広がったり、シール部材が亀裂したり破損するのを回避できる。
【0009】
請求項2記載の発明にあっては、シール部材をラジエータコアサポートまたは熱交換器に着脱可能に固定したため、熱交換器を容易に修理または交換でき、メンテナンス性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施例1のラジエータコアサポートのシール構造が適用されたラジエータコアサポートを示す分解斜視図、図2は本実施例1のラジエータコアサポートのシール構造が適用されたラジエータコアサポートを示す斜視図である。
図3はシール部材の斜視図、図4は同上面図、図5は同底面図、図6は同正面図、図7は同背面図、図8は図4のS8−S8線における断面図、図9はシール部材の固定を説明する図、図10は本実施例1のラジエータコアサポートのシール構造の作用を説明する図である。
【0011】
先ず、全体構成を説明する。
図1に示すように、本実施例1のラジエータコアサポートのシール構造が適用されたラジエータコアサポート1は、熱交換器2と、シール部材3を主要な構成としている。
【0012】
前記ラジエータコアサポート1は、車幅方向に延在するラジエータコアサポートアッパ1aと、該ラジエータコアサポートアッパ1aに並行するラジエータコアサポートロア1bと、両者を上下方向に結合するラジエータコアサポートサイド1c,1dから構成され、全体が樹脂で一体的に形成されている。
【0013】
前記熱交換器2は、上下のタンク2a,2bの間にチューブとフィンが交互に並べられたコア部2cを備えるラジエータであって、タンク2aには、左右両側に上方へ向かって突設された車両搭載ピンP1,P2が設けられ、タンク2bには、左右両側に下方へ向かって突設された車両搭載ピンP3,P4が設けられている。
なお、前記熱交換器2の種類はラジエータに限定されず、コンデンサでも良いし、ラジエータとコンデンサとが一体的に形成された一体型熱交換器でも良い。
【0014】
前記シール部材3は、ラジエータコアサポートアッパ1aとタンク2aとの間を覆うためのものであって、図3〜8に示すように、樹脂製の板材で形成される他、その中途部には一部薄肉波型形状の脆弱部3aが形成されている。
前記シール部材3の一端側には、上方にL字型に屈曲したフランジ部3bが形成されると共に、該フランジ部3bには2片から成る錨形状の固定部3c〜3eが車幅方向に所定間隔を置いて形成されている。
なお、前記固定部3dは固定部3c,3eに比べて90度回転した状態で設けられている。
また、前記ラジエータコアサポートアッパ1aには、前記固定部3c〜3eを圧入して係止可能な係止孔1e〜1gが形成されている。
前記シール部材3の他端側には、前記固定部3cと同一形状の固定部3f〜3hが車幅方向に所定間隔を置いて形成されている。
なお、前記固定部3gは固定部3f,3hに比べて90度回転した状態で設けられている。
また、前記熱交換器2のタンク2aには、前記固定部3f〜3hを圧入して係止可能な係止孔4a〜4cを有する基部5a〜5cが形成されている。
【0015】
次に作用を説明する。
このように構成されたラジエータコアサポート1を製造するには、先ず、熱交換器2のタンク2bの車両搭載ピンP3,P4をラジエータコアサポートロア1bの取付孔T1、T2に図外のブッシュを介して固定し、タンク2aの車両搭載ピンP1,P2を図外のブラケットを介してラジエータコアサポートアッパ1aの取付孔T3,T4に固定することにより、熱交換器2をラジエータコアサポート1に搭載する。
【0016】
次に、図9に示すように、シール部材3の固定部3c〜3eをラジエータコアサポートアッパ1aの係止孔1e〜1gにそれぞれ圧入して係止し、シール部材3の固定部3f〜3hを熱交換器2の基部5a〜5cの係止孔4a〜4cにそれぞれ圧入して係止することにより、シール部材3を装着してラジエータコアサポートアッパ1aとタンク2aとの隙間を覆う。
この際、シール部材3の固定部3dは固定部3c,3eに比べて90度回転した状態で設けられているため、ラジエータコアサポートアッパ1aに対して堅固に固定できる。
同様に、シール部材3の前記固定部3gは固定部3f,3hに比べて90度回転した状態で設けられているため、タンク2aに対して堅固に固定できる。
【0017】
次に、前記熱交換器2及びシール部材3が搭載されたラジエータコアサポート1に、ウォッシャタンク、モータファン、左右ヘッドランプ、モータファンシュラウド、モータファン等を組み付けてフロントエンドモジュールとして車体組立工場へ搬送した後、車体に搭載する。
【0018】
そして、前記搬送の際及び車両走行時の振動によって熱交換器2がラジエータコアサポート1に対して上方に移動した場合には、図10(a)に示すように、脆弱部3aが上方に伸びて両者の相対移動を許容し、熱交換器2がラジエータコアサポート1に対して下方に移動した場合には、図10(b)に示すように、脆弱部3aが下方に伸びて両者の相対移動を許容するため、ラジエータコアポート1と熱交換器2の相対移動を脆弱部3aで許容でき、シール部材3に余計な力が掛かって亀裂・破損することなく、両者の隙間を常に安定した状態で覆うことができる。
【0019】
以下、効果を説明する。
以上、説明したように、本実施例1のラジエータコアサポートのシール構造にあっては、自動車のラジエータコアサポート1の後方側に熱交換器2が搭載されると共に、両者の隙間にシール部材3が設けられるラジエータコアサポート1のシール構造であって、シール部材3の中途部に薄肉の脆弱部3aを形成することにより、ラジエータコアサポート1と熱交換器2の相対移動を脆弱部3aで許容しつつ両者の隙間を覆うため、振動等によってラジエータコアサポート1と熱交換器2が相対移動した場合でも前記隙間が広がったり、シール部材3が亀裂したり破損するのを回避できる。
【0020】
また、シール部材3をラジエータコアサポート1及び熱交換器2に着脱可能に固定したため、熱交換器2を容易に修理または交換でき、メンテナンス性に優れる。
【0021】
以上、本実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、本実施例では、ラジエータコアサポートアッパ1aと熱交換器のタンク2aとの隙間にシール部材3を設けたが、ラジエータコアサポートサイド1c,1dやラジエータコアサポートロア1bと熱交換器2との隙間にシール部材3を設けても良い。
また、本実施例では、熱交換器2をラジエータコアサポート1の後方側に設置した場合について説明したが、熱交換器2を前方側に設置する場合についても適用できる。
また、本実施例では、シール部材3の一端側及び他端側の両方を着脱自在に設けたが、一方のみを着脱自在に設けても良い。
さらに、脆弱部3a、固定部3c〜3hの設置数、形状については適宜設定できる。
同様にシール部材3の形状も適宜設定でき、例えば、ラジエータコアサポート1と熱交換器2との隙間が略三角形状である場合、図11に示すようにシール部材3も前記隙間に合わせた形状にすることで材料費及びコストを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例1のラジエータコアサポートのシール構造が適用されたラジエータコアサポートを示す分解斜視図である。
【図2】本実施例1のラジエータコアサポートのシール構造が適用されたラジエータコアサポートを示す斜視図である。
【図3】シール部材の斜視図である。
【図4】シール部材の上面図である。
【図5】シール部材の底面図である。
【図6】シール部材の正面図である。
【図7】シール部材の背面図である。
【図8】図4のS8−S8線における断面図である。
【図9】シール部材の固定を説明する図である。
【図10】本実施例1のラジエータコアサポートのシール構造の作用を説明する図である。
【図11】その他の実施例のラジエータコアサポートのシール構造を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
P1、P2、P3、P4 車両搭載ピン
T1、T2、T3、T4 取付孔
1 ラジエータコアサポート
1a ラジエータコアサポートアッパ
1b ラジエータコアサポートロア
1c、1d ラジエータコアサポートサイド
1e、1f、1g、4a、4b、4c 係止孔
2 熱交換器
2a、2b タンク
2c コア部
3 シール部材
3a 脆弱部
3b フランジ部
3c、3d、3e、3f、3g、3h 固定部
5a、5b、5c 基部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のラジエータコアサポートの前方側または後方側に熱交換器が搭載されると共に、両者の隙間にシール部材が設けられるラジエータコアサポートのシール構造であって、
前記シール部材の中途部に薄肉の脆弱部を形成することにより、ラジエータコアサポートと熱交換器の相対移動を脆弱部で許容しつつ両者の隙間を覆うことを特徴とするラジエータコアサポートのシール構造。
【請求項2】
請求項1記載のラジエータコアサポートのシール構造において、
前記シール部材をラジエータコアサポートまたは熱交換器に着脱可能に固定したことを特徴とするラジエータコアサポートのシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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