説明

ラジエータ冷却風巻返し防止構造

【課題】ラジエータへの走行風の導入を容易化するための走行風導板機能を、ラジエータからの高温気流の巻き返し風を防止する巻返し防止構造に一体に設けることによって、ラジエータ周りの部品点数を削減できるとともにラジエータ周りの構造をコンパクト化できるラジエータ冷却風巻返し防止構造を提供することを課題とする。
【解決手段】ラジエータ13の両側面および上側面を覆うように、シャシフレーム1とシャシフレームに載置されるキャビン3の床面4との間に形成される領域内に設置される巻返し防止本体部31と、該巻返し防止本体部31の両側に、前記シャシフレーム1の上面に載置されて車体前方に向って延びて設けられ、車幅内側面に車体前方からの走行風をラジエータ13の外気取り入れ口32に導く導風面35を有した導風部材33a、33bとを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前後方向に延びる一対のシャシフレームを有し、該シャシフレームの前方にラジエータおよびエンジンを配置し、ラジエータを通過した冷却風がエンジンに当たって巻き返され熱風となって再びラジエータの入り口に戻ることを防止するラジエータ冷却風巻返し防止構造に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
キャブトラック車両においては、車体前後方向に延びる一対のシャシフレームを有し、該シャシフレームの前方にラジエータおよびエンジンを配置し、ラジエータを通過した冷却風がエンジンに当たって巻き返され熱風となって再びラジエータの入り口に戻ることを防止するラジエータ冷却風巻返し防止構造が採用されている。
【0003】
このラジエータ冷却風巻返し防止構造には、ラジエータを通過した冷却風が、エンジンルーム内からラジエータ前面に巻き返してこないように、ラジエータ上部、左右、下部に冷却風巻返し防止板を設置する構造が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1(実開平6−55842号公報)には、図7に示すように、断面コ字状をなし、その開口部が互いに対向して前後に延びる車体の一対のメインフレーム010を有し、これらメインフレーム010の間に車体の前方から順にラジエータ011、エンジン012と配設されるトラック型の車両において、メインフレーム010の開口部をラジエータ011側から車体前方に向けて塞ぎ、内部に通風路020を形成するサイドプレート014と、サイドプレート014とラジエータ011との間に設けられ、前記メインフレーム010間の領域をラジエータ011の前面側とエンジン012側とに仕切るバッフルプレート013と、各メインフレーム010の外側面にラジエータ011よりも前方に位置して形成された通風孔010aとを備えて構成されている。
【0005】
一方、ラジエータの近傍には、ラジエータへの走行風の導入を容易にさせるために、走行風導板が設けられている。例えば、特許文献2(2002−337539号公報)には、図8に示すように、車両に設けられたラジエータと、ラジエータの前方に配置され、且つ車両前方に傾斜するように配置されたコンデンサ01と、コンデンサ01の上面前端側及び下面後端側に夫々導風板08、07を設け、導風板08により高温気流の巻き返し風の改善効果を図り、導風板07によりコンデンサに走行風の導風効果を改善して、コンデンサの放熱能率の向上を図る技術が示されている。
【0006】
【特許文献1】実開平6−55842号公報
【特許文献2】2002−337539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前記特許文献1に示される技術においては、メインフレーム010の内部に通風路020を形成するものであり、構造が複雑化する。またラジエータ011への走行風の導入を容易化するための走行風導板の設置については示されていない。
また、前記特許文献2においては、コンデンサへの走行風の導風効果を改善するための導風板07と、高温気流の巻き返し風の改善効果を図る導風板08とが設けられているが、それぞれ別々の個所に別部品として取り付けるため、部品点数が増加し取り付け作業および部品コストの増大をもたらす。
【0008】
そこで、本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、ラジエータへの走行風の導入を容易化するための走行風導板機能を、ラジエータからの高温気流の巻き返し風を防止する巻返し防止構造に一体に設けることによって、ラジエータ周りの部品点数を削減できるとともにラジエータ周りの構造をコンパクト化できるラジエータ冷却風巻返し防止構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、車体前後方向に延びる一対のシャシフレームを有し、該シャシフレームの前方にラジエータおよびエンジンを配置し、ラジエータを通過した冷却風がエンジンに当たって巻き返され熱風となって再びラジエータの入り口に戻ることを防止するラジエータ冷却風巻返し防止構造において、前記ラジエータの両側面および上側面を覆うように、前記シャシフレームと該シャシフレームに載置されるキャビンの床面との間に形成される領域内に設置される巻返し防止本体部と、該巻返し防止本体部の両側に、前記シャシフレームの上面に載置されて車体前方に向って延びて設けられ、車幅内側面に車体前方からの走行風をラジエータの外気取り入れ口に導く導風面を有した導風部とを備えて構成されることを特徴とする。
【0010】
かかる発明によれば、前記ラジエータの両側面および上側面を覆うように、前記シャシフレームと該シャシフレームに載置されるキャビンの床面との間に形成される領域内に設置される巻返し防止本体部の両側に、前記シャシフレームの上面に載置されて車体前方に向って延びて設けられ、車幅内側面に車体前方からの走行風をラジエータの外気取り入れ口に導く導風面を有した導風部とを備えたので、すなわち、ラジエータへの走行風の導入を容易化するための走行風導板機能を、巻き返し風を防止する巻返し防止構造に一体に設けたので、ラジエータ周りの部品点数を削減できるとともにラジエータ周りの構造をコンパクト化でき、軽量化、コスト低減できる。
【0011】
また、本発明において、好ましくは、前記巻返し防止本体部が両側部分と上側部分との3部材から構成され、前記両側部分に前記導風部が一体に形成されるとよい。
このため、コ字状に形成される巻返し防止本体部の製造型を簡単化でき、巻返し防止本体部の製造が容易化される。さらに、両側部だけを別々に成形することによって、両側部に一体成型される導風部の導風面の形状設定の自由度が増して、導風部の製造が容易となる。
【0012】
また、本発明において、好ましくは、前記3部材がウレタン発泡材によって成型されるとよく、エンジンルーム内における耐熱性に優れるとともに軽量に構成できる。
【0013】
また、本発明において、好ましくは、左右の両側部材に、樹脂製の取付けブラケットがインサートされ、該取付けブラケットによって前記ラジエータの両側面にそれぞれ取り付けられると共に、前記上側部材はラジエータの上面と前記キャビンの床面との間に挟み込まれて保持されるとよい。
【0014】
かかる構成によれば、左右の両側部材はラジエータに樹脂製の取付けブラケットを介してボルト締結される。樹脂製の取付けブラケットであるため、両側部材の一体成型時に取り付けブラケットを一体に成型できるので、製作が容易となる。
また、上側部材はラジエータの上面と前記キャビンの床面との間に挟み込まれて保持されるので、特別な取り付け手段を設けることなく簡単に固定でき、取り付け作業性がよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ラジエータへの走行風の導入を容易化するための走行風導板機能を、ラジエータからの高温気流の巻き返し風を防止する巻返し防止構造に一体に設けたことによって、ラジエータ周りの部品点数を削減できるとともにラジエータ周りの構造をコンパクト化できるラジエータ冷却風巻返し防止構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。但しこの実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0017】
図1〜図6を参照して、本発明のラジエータ冷却風巻返し防止構造について説明する。
図1は車体前方部の斜視図であり、図1のA−A線の一部断面図を図2に示し、図1のB−B線の一部断面図を図3に示す。
大型トラック等の車体構造は、左右に車体前後に延びる断面コ字状のシャシフレーム1を骨格として備え、その前方側は、乗員用のキャビン3およびその下方にエンジン5が配置され、後方側に図示しない荷箱が配置される。
【0018】
図2に示すように、車体前方にフロントグリル7、その下方に、フロントバンパ9が設けられ、また、左右のシャシフレーム1、1の間には、車体前から順に、エンジンへの過給気を冷却するインタクーラ11、ラジエータ13が配置され、その後方には、シュラウド15内にエンジンで駆動される冷却ファン17が設けられている。また、インタクーラ11には給排気用のホース19、ラジエータ13にも給排水用のホース21がそれぞれ接続されている。
【0019】
そして、車両の走行風はフロントグリル7から流れ込み、インタクーラ11、およびラジエータ13に流入して熱交換によってエンジンへの吸入空気冷却、およびエンジン冷却水を冷却して、その後、ラジエータ13の後方に、冷却ファン17の吸引力も加わってエンジン5に向かって流れる。このときにエンジン5に冷却空気流が衝突しその後、ラジエータ13の前面側に巻き返して戻ってくる。この巻き返し流はエンジン5によって加熱された温風のため、再びラジエータ13に流入すると熱交換の効率を悪化させるため、ラジエータ13の前面側に戻らないように巻返し防止部材25が設けられている。
【0020】
この巻返し防止部材25は、図4〜6に示す全体形状をしている。図4は平面視図であり、図5は正面視図、図6は側面視図である。
図5に示すように、ラジエータ13の外周を覆うように、全体が略門形状をしており、巻返し防止本体部31と導風部(導風部材)33a、33bとから構成されている。
さらに、巻返し防止本体部31は、両側部分を形成する両側部材27a、27bと、上側部分を形成する上側部材29との3部材からなっている。そして両側部材27a、27bの下端部であって車体前方部分には、車体前方からの走行風をラジエータ13の外気取り入れ口32に導く導風面を有した導風部材33a、33bが、側部材27a、27bに一体的に設けられている。
【0021】
導風面35は、図3または図4に示すように、直線状または曲面状に形成され走行風に対して抵抗とならずにスムーズに外気取り入れ口32に導かれるような形状となっており、直線形状の場合には傾斜角度θは、ほぼ45°とするのが好ましい。このθが大きいと空気流に対して抵抗となりスムーズな流入を害する。
【0022】
また、導風部材33a、33bはシャシフレーム1の上面に設置されるようになっていて、導風面35が形成された先端部分には車体前方に向かって突出して、導風部材33a、33bそれぞれを安定的にシャシフレーム1の上面に載置できるように載置部37を有している。
さらに、両側部材27a、27bには、その高さ方向の中央部に、ラジエータ13の側面への固定のための樹脂製の取付けブラケット39がインサートされている。
【0023】
また、上側部材29は、単独で成形型によって成形され、ラジエータ13の上面と、キャビン3の床面4の下面との間に挟み込まれるようにして取り付けられる(図1参照)。
ラジエータ13の上面には、図5に示すクリップ取付け穴30を介してクリップ止めされるようになっている。
【0024】
なお、両側部材27a、27b、上側部材29、さらに、導風部材33は、エンジンルーム内における耐熱性に優れるとともに軽量に優れる発泡ウレタン材によって成型されている。
両側部材27a、27bと導風部材33a、33bとは一体的に成型されるが、別々に成型後に接着して一体化してもよい。上側部材29は前記のように単独で別成型され、その後、組み付けにおいて両側部材27a、27bの上に位置されて門形状に組み込まれる。
【0025】
以上のように構成された、ラジエータ冷却風巻返し防止構造の冷却風巻返し防止作用について説明する。
車両の走行風はフロントグリル7から流れ込み、インタクーラ11、およびラジエータ13に流入して熱交換によって吸入空気、および冷却水を冷却して、その後、ラジエータ13の後方に、冷却ファン17の吸引力も加わってエンジン5に向かって流れる。
このとき、エンジン5に冷却空気流が衝突しその後、温風となってラジエータ13の前面側に巻き返して戻ってくるが、ラジエータ13の上側においては、上側部材29がラジエータ13の上面と、キャビン3の床面4の下面との間に挟まれて配置されるため、ラジエータ13の前方側への巻き込みが抑制され、また、ラジエータ13の両側においては、両側部材27a、27bによってラジエータ13の前方側への巻き込みが抑制される。
【0026】
さらに、車両の走行風は、フロントグリル7から流れ込み、図1の矢印で示すように、インタクーラ11に流れ込むとともに、ラジエータ13に流れ込む。このとき、シャシフレーム1の上面の位置に、導風部材33が形成されて載置されるため、導風部材33a、33bの導風面35に沿って走行風がラジエータ13の外気取り入れ口32に導かれ、走行風が効率的にラジエータ13に導入される。
【0027】
また、導風部材33a、33bが、シャシフレーム1の上面から上方向の近傍部分に形成され、その位置がラジエータ13の高さ方向の中央付近に位置されているため、ラジエータ13への走行風を効率的に導くことができる。
【0028】
本実施形態によると、ラジエータ13への走行風の導入を容易化するための走行風導板機能を、巻き返し風を防止する巻返し防止部材25に一体的に設けたので、ラジエータ13周りの部品点数を削減できるとともにラジエータ13周りの構造をコンパクト化でき、軽量化、コスト低減できる。
【0029】
また、巻返し防止本体部31が両側部材27a、27bと上側部材29との3部材から構成されるため、すなわち、別々に成型されるため、両側部材27a、27bに導風部材33a、33bが一体に設けられる場合であっても容易に成型でき、組み立て時に門形状に組み立てればよく、巻返し防止部材25の製造が容易となる。
さらに、両側部材27a、27bと導風部材33a、33bとを一体で成型する場合、または両側部材27a、27bと導風部材33a、33bとを別々に成型してから接着する場合のいずれにおいても、上側部材29とは別に成型するので、導風部材33の導風面35の形状自由度が増すとともに導風部材33の製造が容易となる。
【0030】
また、左右の両側部材27a、27bそれぞれには、樹脂製の取付けブラケット39が両側部材27a、27bの成型と同時にインサートされるため、樹脂製の取付けブラケット39の装着が容易であるとともに、取り付け位置の変更等への対応が容易である。
また、上側部材29はラジエータ13の上面と前記キャビン3の床面4の下面との間に挟み込まれて保持されるので、特別な取り付け手段を設けることなく簡単に固定でき、取り付け作業性がよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、ラジエータへの走行風の導入を容易化するための走行風導板機能を、ラジエータからの高温気流の巻き返し風を防止する巻返し防止構造に一体に設けることによって、ラジエータ周りの部品点数を削減できるとともにラジエータ周りの構造をコンパクト化できるので、ラジエータ冷却風巻返し防止構造への適用に際して有益である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】車体前方部の斜視説明図である。
【図2】図1のA−A線の一部断面図である。
【図3】図1のB−B線の一部断面図である。
【図4】巻返し防止部材の平面視図である。
【図5】巻返し防止部材の正面視図である。
【図6】巻返し防止部材の側面視図である。
【図7】従来技術の説明図である。
【図8】従来技術の説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1 シャシフレーム
3 キャビン
4 床面
5 エンジン
7 フロントグリル
9 フロントバンパ
11 インタクーラ
13 ラジエータ
25 巻返し防止部材
27a、27b 両側部材(両側部分)
29 上側部材(上側部分)
31 巻返し防止本体部
33a、33b 導風部材(導風部)
35 導風面
37 載置部
39 樹脂製の取付けブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に延びる一対のシャシフレームを有し、該シャシフレームの前方にラジエータおよびエンジンを配置し、ラジエータを通過した冷却風がエンジンに当たって巻き返され熱風となって再びラジエータの入り口に戻ることを防止するラジエータ冷却風巻返し防止構造において、
前記ラジエータの両側面および上側面を覆うように、前記シャシフレームと該シャシフレームに載置されるキャビンの床面との間に形成される領域内に設置される巻返し防止本体部と、
該巻返し防止本体部の両側に、前記シャシフレームの上面に載置されて車体前方に向って延びて設けられ、車幅内側面に車体前方からの走行風をラジエータの外気取り入れ口に導く導風面を有した導風部とを備えて構成されることを特徴とするラジエータ冷却風巻返し防止構造。
【請求項2】
前記巻返し防止本体部が両側部分と上側部分との3部材から構成され、前記両側部分に前記導風部が一体に形成されていることを特徴とする請求項1記載のラジエータ冷却風巻返し防止構造。
【請求項3】
前記3部材がウレタン発泡材によって成型されることを特徴とする請求項2記載のラジエータ冷却風巻返し防止構造。
【請求項4】
左右の両側部材に、樹脂製の取付けブラケットがインサートされ、該取付けブラケットによって前記ラジエータの両側面にそれぞれ取り付けられると共に、前記上側部材はラジエータの上面と前記キャビンの床面との間に挟み込まれて保持されることを特徴とする請求項3記載のラジエータ冷却風巻返し防止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−149623(P2010−149623A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328474(P2008−328474)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】