説明

ラジエータ前方ダクト構造

【課題】 流入風量を減らすことなくエアガイド部材の必要開口面積を小さくし得るようにする。
【解決手段】 ラジエータ1の前方に前部グリル部材4が配設され、前部グリル部材4に形成された開口部5とラジエータ1の側部との間に一対のエアガイド部材7が設けられたラジエータ前方ダクト構造であって、一対のエアガイド部材7を車両後方へ向けて開く拡散形状に配置するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ラジエータ前方ダクト構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両は、車体の前部にラジエータが配設されている。このラジエータの前方には所要の間隔を有してアッパーグリル部材やバンパーグリル部材などの前部グリル部材が配設され、この前部グリル部材に形成された開口部とラジエータの側部との間には一対のエアガイド部材が設けられて、開口部から流入された風を一対のエアガイド部材によって効率良くラジエータへと導き、冷却を行わせるようにしている。
【0003】
従来のラジエータ前方ダクト構造には、一対のエアガイド部材を、車両後方へ向けて閉じる縮流形状に配置したものなどが存在している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平04−331670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のラジエータ前方ダクト構造では、ラジエータへ当る風量を増やして冷却性能を上げることを目的として、通常は、一対のエアガイド部材を縮流形状としているが、このようにした場合、前部グリル部材に形成される開口部の必要開口面積が大きくなってしまうという問題があった。また、前部グリル部材の必要開口面積が大きくなっていたため、車両全体としての空気抵抗の低減に対して寄与しないものとなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明では、ラジエータの前方に前部グリル部材が配設され、該前部グリル部材に形成された開口部とラジエータの側部との間に一対のエアガイド部材が設けられたラジエータ前方ダクト構造において、一対の前記エアガイド部材を車両後方へ向けて開く拡散形状に配置したラジエータ前方ダクト構造を特徴としている。
【0006】
請求項2に記載された発明では、前記各エアガイド部材のガイド壁面を、平板状とした請求項1記載のラジエータ前方ダクト構造を特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、一対のエアガイド部材を拡散形状としたことにより、風の流速が増すので、その分、流入風量が増加し、縮流形状とした場合とほぼ等価なものとすることができる。また、流入風量が増加することにより、前部グリル部材の必要開口面積を小さくすることができる。そして、必要開口面積が小さくなることにより、エンジンルーム内の抵抗が小さくなり、その分、車両全体としての空気抵抗を低減することが可能となる。
【0008】
請求項2の発明によれば、各エアガイド部材のガイド壁面を、平板状としたことにより、流入抵抗が更に低減され、流入風量を更に増加することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
流入風量を減らすことなくエアガイド部材の必要開口面積を小さくするという目的を、一対のエアガイド部材を車両後方へ向けて開く拡散形状に配置する、という手段で実現した。
【実施例】
【0010】
以下、本発明を具体化した実施例について、図示例と共に説明する。
【0011】
図1〜図5は、この発明の実施例を示すものである。
【0012】
まず、構成を説明すると、自動車などの車両は、車体の前部にラジエータ1が配設されている。
【0013】
このラジエータ1の前方には所要の間隔を有してアッパーグリル部材やバンパーグリル部材3などの前部グリル部材4が配設され、この前部グリル部材4に形成された開口部5とラジエータ1の側部との間に一対のエアガイド部材7が設けられている。ここで、ラジエータ1の側部とは、ラジエータ1の車幅方向の側縁部のことであり、ラジエータ1の本体と風受面との大きさがほぼ同じであれば、本体または風受面のどちらの側部としても良い。但し、ラジエータ1の本体と風受面との大きさが異なる場合には、基本的には風受面の側部を採用するのが効率の面で好ましい。
【0014】
より詳細には、車体の前部には、ラジエータコア部材9が配設され、このラジエータコア部材9に対し、その後部にラジエータ1が取付けられ、前部に前部グリル部材4が取付けられている。ラジエータコア部材9と前部グリル部材4との間には補強部材10が設けられている。また、ラジエータ1の前面にはコンデンサ11が付設されて熱交換器部12を構成している。
【0015】
この実施例のものでは、一対のエアガイド部材7を車両後方へ向けて開く拡散形状(角度θ)に配置する。なお、一対のエアガイド部材7の前端が、前部グリル部材4の開口部5の側部と一致するように、開口部5の大きさを設定するのが機能的には好ましいが、デザインを優先するという場合には、一対のエアガイド部材7の前端よりも外側に前部グリル部材4の開口部5の側部を設定することも可能ではある。
【0016】
そして、各エアガイド部材7のガイド壁面15(内壁面)を平板状とする。
【0017】
次に、この実施例の作用について説明する。
【0018】
前部グリル部材4の開口部5から流入される風aは、一対のエアガイド部材7によって効率良くラジエータ1へと導かれて、ラジエータ1などの熱交換器部12の冷却に使用される。
【0019】
この実施例によれば、一対のエアガイド部材7を車両後方へ向けて開く拡散形状としたことにより、風aの流速が増すので、その分、流入風量が増加し、縮流形状とした場合とほぼ等価なものとすることができる。また、流入風量が増加することにより、前部グリル部材4の開口部5の必要開口面積を小さくすることができる。そして、必要開口面積が小さくなることにより、エンジンルーム内の抵抗が小さくなり、その分、車両全体としての空気抵抗を低減することが可能となる。
【0020】
また、各エアガイド部材7のガイド壁面15(内壁面)を、平板状とすることにより、流入抵抗が更に低減され、流入風量を更に増加することができる。
【0021】
上記をより詳細に説明すると、前部グリル部材4の開口部5が同じ開口面積を有している場合、図4(b)に示す従来の縮流型のものでは、前方の圧力高状態の影響で風aは開口部5外へ流れようとするのに対し(矢印ロ)、図4(a)に示す本願の拡散型のものでは、前方の圧力低状態の影響で風aは開口部5内へ流れようとする(矢印イ)。よって、開口部5が同じ必要開口面積であれば拡散型の方が流入風量を多く確保することができる。
【0022】
そして、空気抵抗について見た場合、図5(b)に示す従来の縮流型のものでは、エアガイド部材のガイド壁面が動圧を受けて壁面圧力が高くなるため、抵抗となるのに対し、図5(a)に示す本願の拡散型のものでは、エアガイド部材7のガイド壁面15の壁面圧力が低くなることにより抵抗となるが、動圧を受ける縮流型のものよりは抵抗が小さくなる。また、前部グリル部材4表面における風aの淀み点Aが、縮流型のものに比べて車体中心に近くなるので、前部グリル部材4の表面に沿って風aが流れる距離が稼げて整流効果を増すことができるので、車両全体としての空気抵抗の低減が可能となる。
【0023】
なお、図4、図5は、いずれもエアガイド部材7の前端が前部グリル部材4の開口部5の側部と一致している場合としている。
【0024】
実際に風洞実験を行った所、角度θ=0゜の平行流型を基準として、角度θ=10゜の拡散型とした場合には、空気抵抗が−0.004減少し、角度θ=20゜の拡散型とした場合には、空気抵抗が−0.005減少することが確認された。
【0025】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例の車両前部の斜視図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】エアガイド部材部分の斜視図である。
【図4】流入風量の説明図で、(a)は拡散型、(b)は縮流型を示している。
【図5】空気抵抗の説明図で、(a)は拡散型、(b)は縮流型を示している。
【符号の説明】
【0027】
1 ラジエータ
4 前部グリル部材
7 エアガイド部材
15 ガイド壁面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジエータの前方に前部グリル部材が配設され、該前部グリル部材に形成された開口部とラジエータの側部との間に一対のエアガイド部材が設けられたラジエータ前方ダクト構造において、
一対の前記エアガイド部材を車両後方へ向けて開く拡散形状に配置したことを特徴とするラジエータ前方ダクト構造。
【請求項2】
前記各エアガイド部材のガイド壁面を、平板状としたことを特徴とする請求項1記載のラジエータ前方ダクト構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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