説明

ラジオブイ用アンテナ上竿及びその製造方法

【課題】品質にばらつきを生じさせることなく容易に製造可能なラジオブイ用アンテナ上竿竿並びにその製造方法を提供する。
【解決手段】アンテナ上竿10は、所定の長さを有する同軸ケーブル20と、同軸ケーブル20の強度を補強する補強部材である管状部材12とを含む。同軸ケーブル20は、管状部材12中に挿入され、外部導体24の一端側の端末は上部取付金具14に接続され、外部導体24及び内部導体26の他端側の端末は、下部取付金具16に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海上で使用されるラジオブイ用のアンテナ上竿に関し、特に、導体として同軸ケーブルを使用したアンテナ上竿及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海上での航路標識として、また漁網などの設置標識として所謂ブイが使用されおり、これらのブイのうち、電波を発信してその位置を明らかにし、標識の助けとするラジオブイがある。ラジオブイのアンテナは、一般に、アンテナ導体が組み込まれた上竿、(必要な場合)ローディングコイル、及び、アンテナをブイに固定する下竿から構成され、従来、アンテナ導体として編組線が広く使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなアンテナ導体は、例えば、芯棒上に編組線をかぶせ、その状態をエポキシ樹脂等により固めた後、芯棒を引き抜くことによって製造される。また、特許文献1には、管状部材の内壁に密着するように編組線を展開し、その後、管状部材の中空部分にウレタン発泡体を充填して、編組線を管状部材の内壁に接着固定する製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平4−61521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、導体素線を編んで構成されている編組線は容易に伸縮するため、上述したような製造工程(例えば、アンテナ芯棒上に編組線をかぶせる工程、または、管状部材の内壁に密着するように編組線を展開する工程)において、編組線を構成する導体の密度を一様に保つことが困難であり、その結果、アンテナ上竿の品質にばらつきが生じるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、品質にばらつきを生じさせることなく容易に製造可能なラジオブイ用アンテナ上竿竿並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、または、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0008】
(1)所定の長さを有する同軸ケーブルと、前記同軸ケーブルの強度を補強する補強部材とを含むことを特徴とするラジオブイ用アンテナ上竿(請求項1)。
【0009】
(2)(1)項に記載のアンテナ上竿において、前記同軸ケーブルの外部導体と内部導体の給電側の端末が短絡されていることを特徴とするラジオブイ用アンテナ上竿(請求項2)。
【0010】
(3)所定の長さを有する同軸ケーブルを準備する工程と、前記同軸ケーブルの強度を補強する工程とを含むことを特徴とするラジオブイ用アンテナ上竿の製造方法(請求項3)。
【0011】
(4)(3)項に記載の製造方法において、前記同軸ケーブルの外部導体と内部導体の給電側の端末を短絡する工程をさらに含むことを特徴とするラジオブイ用アンテナ上竿の製造方法(請求項5)。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るラジオブイ用アンテナ上竿によれば、一様に展開された状態で同軸ケーブルに組み込まれている外部導体(編組線)をアンテナ導体として活用し、高周波特性に優れ、かつ、品質にばらつきのないアンテナ上竿を実現することが可能となる。
また、本発明に係るラジオブイ用アンテナ上竿の製造方法によれば、編組線を展開または配置する工程を要することなく、高周波特性に優れ、かつ、品質にばらつきのないアンテナ上竿を容易に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は、本発明の一実施形態におけるラジオブイ用アンテナ上竿の側面図、(b)は、A部の内部構成を示す拡大図、(c)は、B部の内部構成を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1(a)に示すように、本実施形態におけるラジオブイ用アンテナ上竿(以下、アンテナ上竿ともいう)10は、管状部材12を有しており、その上端部(図上、右端部)には上部取付金具14が、下端部(図上、左端部)には下部取付金具16が取付けられている。管状部材12の内部には、図1(b)、(c)に示すように、アンテナ上竿10における放射素子として機能する同軸ケーブル20が収容されている。管状部材12は、例えばFRP(Fiber Reinforced Plastics)から形成され、同軸ケーブル20の強度を補強する補強部材として機能する。
【0015】
尚、アンテナ上竿10は、通常、アンテナ下竿及び(必要な場合)ローディングコイル等とともにラジオブイ用のアンテナを構成し、ラジオブイのフロート部等に立設されるものである。但し、これらの部材及び構成については、従来周知のものを適用することが可能であるため、その図示及び説明は省略する。
【0016】
ここで、同軸ケーブル20は、銅線からなる内部導体26、内部導体26の周囲を覆う絶縁体22、絶縁体22の周囲を覆う編組線から構成される外部導体24、及び、外部導体24の周囲を覆う保護被覆28から構成され、アンテナ上竿10を含むアンテナで使用する周波数に応じた所定の長さを有するものである。
このような同軸ケーブル20は、例えば、JISC3501準拠の5C−2Vケーブルであってもよい。この場合、絶縁体22はポリエチレン、外部導体24は軟銅線の一重編組、保護被覆28はPVCから、それぞれ構成される。
【0017】
ここで、図1(a)のA部拡大図である図1(b)及び図1(a)のB部拡大図である図1(c)を参照して、アンテナ上竿10の製造方法とともにその詳細な構成を説明する。
まず、長尺の未加工同軸ケーブルを所定の長さに切断すること等により、同軸ケーブル20を準備する。そして、同軸ケーブル20の両端の保護被覆28及び一端の絶縁体22を必要な長さだけ剥離する。次に、図1(b)に示すように、絶縁体22を剥離した側の一端について、露出した内部導体26及び外部導体24を上部取付金具14内に挿入し、外部導体24を上部取付金具14の内部に半田付けする(C(網掛け)部)。次に、同軸ケーブル20を管状部材12内に挿入する。尚、同軸ケーブル20を管状部材12に挿入する前に、露出された外部導体24に防水用のコーティング材(例えば、シリコーンポッティング材)を塗布するものであってもよい。
【0018】
そして、上部取付金具14にOリング31を嵌め、上部取付金具14上に先端キャップ18を装着した後、上部取付金具14を、その内部に管状部材12が挿入されるように、管状部材12の一端側に取付ける。この際、管状部材12の上部取付金具14と対応する表面に接着剤を塗布するものであってもよい。
【0019】
次に、同軸ケーブル20の他端の絶縁体22を必要な長さだけ剥離する。次に、図1(c)に示すように、下部取付金具16を、その内部に管状部材12が挿入されるように、管状部材12の他端側に取付ける。この際、管状部材12の下部取付金具16と対応する表面に接着剤を塗布するものであってもよい。そして、下部取付金具16の管状部材12への取付けによって下部取付金具16内に挿入された外部導体24及び内部導体16を(必要な場合、外部導体24の余分な部分を取り除いた後)、下部取付金具16の内部に半田付けする(D(ハッチング)部)。これによって、同軸ケーブル20の外部導体24と内部導体22のアンテナ上竿10の下端側の端末は、短絡されることになる。
【0020】
尚、図示は省略するが、この後、下部取付金具16にワッシャー及びOリング等の必要な部材を取付けた後、下部取付金具16をアンテナ下竿(または、ローディングコイル)に取付け、下部取付金具16を給電側の接続導体として、ラジオブイが備える送信装置及び/又は受信装置等の通信装置から引き出されるアンテナ線を、(存在する場合、ローディングコイルを介して)下部取付金具16に接続することによって、アンテナ上竿10を含むラジオブイ用のアンテナが構成される。
【0021】
また、構造補強及び防水等のため、下部取付金具16と管状部材12との境界部分に、例えばエポキシFRP含浸布19を巻回することによって、樹脂材料を付着固化させ(図1(a))、また、先端キャップ18と上部取付金具14との境界部分に、樹脂(例えば、ふっ素樹脂)を基材とする粘着テープ33を巻回付着させるものであってもよい(図1(b))。
【0022】
このように、アンテナ上竿10では、同軸ケーブル20を放射素子として使用するため、その製造工程において、従来のアンテナ上竿のように編組線を展開及び配置する工程が不要となり、同軸ケーブル20が備える一様に展開された編組線(外部導体)22をアンテナ導体として活用し、品質にばらつきのないアンテナ上竿10を構成することが可能となる。また、同軸ケーブル20は、高周波伝送路として必要な優れた高周波特性を有する材料及び構成を備えており、高周波送受信用のアンテナの放射素子として、有利なものである。
【0023】
尚、アンテナ上竿10において、同軸ケーブル20の外部導体24と内部導体26の下端側(すなわち、給電側)の端末は、短絡されるものとした。この構成は、遠距離での受信感度が向上する点で有利な構成である。本発明者等による調査によれば、アンテナ上竿10を含むアンテナは、同軸ケーブル20の外部導体24と内部導体26の下端側の端末を短絡しないことを除いて同様に構成されたアンテナ上竿を含むアンテナと比較して、70kmの遠距離測定において約0.6dB〜1.0dB、及び、290kmの遠距離測定において約1.0dB、受信感度が向上することが明らかになった。
【0024】
また、同調査において、同軸ケーブル20の外部導体24と内部導体26の上端側の端末を短絡するか否かは、アンテナの感度に対する影響が小さいことも判明しており、本発明に係るアンテナ上竿において、同軸ケーブル20の外部導体24と内部導体26の上端側の端末を短絡するか否かは、半田付け作業の作業性等を勘案の上、適切に決定することができる。
【0025】
以上、本発明を好ましい実施形態にしたがって説明したが、本発明は、上述した実施形態によって限定されるものではない。例えば、アンテナ上竿10では、同軸ケーブル20の強度を補強する補強部材を管状部材12とし、同軸ケーブル20を管状部材12内に挿入することによって同軸ケーブル20の強度を補強するものとしたが、同軸ケーブル20の補強は、エポキシFRP等の樹脂材料を補強部材とし、同軸ケーブル20上に樹脂材料を付着固化させることによって実施するものであってもよい。
【符号の説明】
【0026】
10:アンテナ上竿、12:管状部材(補強部材)、14:上部取付金具、16:下部取付金具、18:先端キャップ、20:同軸ケーブル、22:絶縁体、24:外部導体、26:内部導体、28:保護被覆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の長さを有する同軸ケーブルと、前記同軸ケーブルの強度を補強する補強部材とを含むことを特徴とするラジオブイ用アンテナ上竿。
【請求項2】
前記同軸ケーブルの外部導体と内部導体の給電側の端末が短絡されていることを特徴とする請求項1に記載のラジオブイ用アンテナ上竿。
【請求項3】
所定の長さを有する同軸ケーブルを準備する工程と、前記同軸ケーブルの強度を補強する工程とを含むことを特徴とするラジオブイ用アンテナ上竿の製造方法。
【請求項4】
前記同軸ケーブルの外部導体と内部導体の給電側の端末を短絡する工程をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載のラジオブイ用アンテナ上竿の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−227694(P2012−227694A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92982(P2011−92982)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(591101674)株式会社緑星社 (4)
【Fターム(参考)】