説明

ラッカセイ種皮抽出物含有リキュール及びその製造方法

【課題】高濃度にポリフェノール類を含有していながら、味や香りが落ちることのない、優れた風味を有する酒類を提供する。
【解決手段】少なくとも蒸留酒と添加物とを含むリキュールであって、該蒸留酒が乙類焼酎であり、該添加物がラッカセイ種皮由来の抽出物であることを特徴とする、ラッカセイ種皮抽出物含有リキュールおよび乙類焼酎にラッカセイ種皮を添加する添加工程と、該乙類焼酎中にラッカセイ種皮由来の成分を溶出させる抽出工程と、該ラッカセイ種皮を該乙類焼酎から除去する分離工程と、を含む、ラッカセイ種皮抽出物含有リキュールの製造方法により解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラッカセイ種皮抽出物含有リキュール及びその製造方法に関し、詳細には、ラッカセイ種皮抽出物を含有し、良好な風味を有するリキュール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向の高まりを反映して、種々の機能性を付加した食品が研究・開発されている。その一つとしてポリフェノール類を含有させた機能性食品がある。ポリフェノール類は、体内の活性酸素を抑制する効果を有しているといわれ、ポリフェノール類を摂取することにより、活性酸素を原因とする種々の症状の改善が期待できるといわれている。
【0003】
食品に機能性を付与する要望は飲料にも及んでおり、近年では酒類の分野においても機能性を付与したアルコール飲料が開発されている。特に、ポリフェノール類を含有するアルコール飲料については、例えば、低アルコール飲料において、従来の低アルコール飲料にリンゴワインを添加し、さらにホップポリフェノール等を添加した、アルコール飲料が開示されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−204585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ポリフェノール類は渋味やエグ味を有しているものが多く、健康効果を期待してより多くのポリフェノール類を摂取しようとしても、その渋味やエグ味があるために摂取しずらいという問題や、食品にポリフェノール類を添加すると、その食品本来の味や香りに悪影響を与えることがあるという問題があった。特に、飲料については、水分含量が多く、微量成分の微妙な変化が商品の価値を大きく左右するため、お茶やワインなど、もともと苦味や渋味を有する飲料に、更にポリフェノール類を添加する場合が多かった。
【0005】
一方、ラッカセイ種皮には多くのポリフェノール類が含まれていることが知られている。一般にラッカセイ加工品の製造過程においては、ラッカセイ種皮は不要なものとして除去されるため、ラッカセイ種皮を有効利用する方法が検討されている。しかしながら、ラッカセイ種皮には独特の香味と渋味があり、かつ、食品に添加する際には上述するような問題があったため、ラッカセイ種皮を有効利用する方法の開発が望まれていた。
【0006】
そこで、本発明の目的は、高濃度にポリフェノール類を含有していながら、味や香りが落ちることのない、優れた風味を有する酒類を提供することにある。また、本発明の他の目的は、ラッカセイ種皮を有効利用する方法を開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らはラッカセイ種皮由来のポリフェノール類に特有の渋味やエグ味を効果的にマスキングする酒類の検討を行った結果、蒸留酒、特に乙類焼酎を用いて製造したリキュールが、ラッカセイ種皮由来のポリフェノール類を高濃度に含有しながら風味を損なわないとの知見を得た。本発明はかかる知見に基づくものであり、少なくとも蒸留酒と添加物とを含むリキュールであって、該蒸留酒が乙類焼酎であり、該添加物がラッカセイ種皮由来の抽出物であることを特徴とする、ラッカセイ種皮抽出物含有リキュールを提供するものである。
【0008】
また、本発明は、乙類焼酎にラッカセイ種皮を添加する添加工程と、該乙類焼酎中にラッカセイ種皮由来の成分を溶出させる抽出工程と、該ラッカセイ種皮を該乙類焼酎から除去する分離工程と、を含む、ラッカセイ種皮抽出物含有リキュールの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るラッカセイ種皮抽出物含有リキュール及びその製造方法は、ラッカセイ種皮を原料として用いることから、ラッカセイ種皮の有効利用が図れると共に、乙類焼酎を用いることにより、ラッカセイ種皮に特有の渋味やエグ味をマスクし、風味に優れたリキュールとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[ラッカセイ種皮抽出物含有リキュール]
まず、ラッカセイ種皮抽出物含有リキュールについて説明する。本実施形態に係るラッカセイ種皮抽出物含有リキュールは、少なくとも蒸留酒と添加物とを含むリキュールであって、該蒸留酒が乙類焼酎であり、該添加物がラッカセイ種皮由来の抽出物である。
【0011】
乙類焼酎としては、芋焼酎、黒糖焼酎、麦焼酎、米焼酎からなる群から選択される少なくとも1種以上であることが好ましい。この中でも特に、ラッカセイ種皮に特有の渋味やエグ味をマスクし、風味に優れたリキュールを得るという観点からは、芋焼酎を使用することが最も好ましい。芋焼酎を使用することにより、ラッカセイ種皮から得られた抽出物の香味や渋味を最も効果的にマスキングすることができ、芋焼酎が有する芋の原料香と甘い味わいを保持したまま、ラッカセイ種皮の有効成分を含むリキュールを製造することができる。
【0012】
市販されている芋焼酎には多くの銘柄があるが、芋焼酎であればその種類に特に限定はなく、原料を芋とする乙類焼酎であればいずれの芋焼酎でも使用可能である。なお、ラッカセイ種皮からポリフェノール類等の有用成分を溶出させることのみを目的とする場合は、焼酎甲類を使用することも考えられるが、乙類焼酎以外の焼酎を用いると、乙類焼酎のようなマスキング効果を得ることができず、ラッカセイ種皮の香味や渋味がリキュールの風味を損ねる恐れがある。
【0013】
前記乙類焼酎のアルコール濃度は、一般的に市販されている乙類焼酎を使用する観点および飲用に適したアルコール濃度を選択する観点から、20〜35%であることが好ましい。もちろん、上記範囲には必ずしも限定されず、上記範囲以外のアルコール濃度を有する乙類焼酎を使用することもできる。
【0014】
本実施形態において、「ラッカセイ種皮」とは、ラッカセイ種子を包む薄皮部分をいう。ラッカセイ種皮には、ポリフェノール類が豊富に含まれており、そのポリフェノール類は、体内の活性酸素を抑制する効果を有しているといわれていることから、本実施形態に係るラッカセイ種皮抽出物含有リキュールを摂取することにより、ポリフェノール類に起因する健康効果を期待することができる。
【0015】
また、本実施形態で使用する「ラッカセイ」としては、ラッカセイ属に属する植物であればその種類は問わない。特に好ましいのは、ラッカセイ属に属するラッカセイ(A.hypogaea)である。
【0016】
前記ラッカセイ種皮由来の抽出物は、前記乙類焼酎に前記ラッカセイ種皮を添加して抽出されたものであることが好ましい。乙類焼酎自体がエタノールを含んでいるため、特に他の方法で抽出物を得ることなく、直接、乙類焼酎中にラッカセイ種皮由来の抽出物を乙類焼酎中に溶出させることができる。
【0017】
従来公知の溶媒抽出方法によりラッカセイ種皮の抽出物を得ることもできるが、かかる場合、本実施形態に係るラッカセイ種皮抽出物含有リキュールが食品であることを考慮すれば、使用する溶媒としては、例えば、水または温水、メタノール、またはこれらを組み合わせた溶媒が好ましい。
【0018】
前記ラッカセイ種皮の添加量は、前記乙類焼酎の全量を基準として0.5〜2%(W/V)であることが好ましく、1.0〜1.75%(W/V)であることがより好ましく、1.00〜1.50%(W/V)であることが更に好ましい。ラッカセイ種皮の添加量が0.5%(W/V)未満の場合は、得られるラッカセイ種皮抽出物含有リキュールの風味には影響はないが、落花生種皮から得られるエキス分が少なくなる。一方、ラッカセイ種皮の添加量が2.0%(W/V)を超える場合は、ラッカセイ種皮に含まれる香りと渋味が過剰となり、嫌味を感じる恐れがある。
【0019】
なお、ラッカセイ種皮から得られた抽出物を精製し、その精製物を乙類焼酎に添加してもよい。ラッカセイ種皮抽出物の精製は、当業者に既知の方法を単独または組み合わせて用いることによって行うことができる。例えば、合成吸着樹脂、活性炭、イオン交換樹脂、セファデックス、バイオゲルなどのゲル濾過剤、カラムクロマトグラフィー、再結晶などを適宜組み合わせることによって、さらに目的とする化合物の精製効率や純度を上げることができる。
【0020】
前記ラッカセイ種皮抽出物含有リキュールのエキス分は、糖添加による甘味の観点から、12〜20度であることが好ましい。酒税法上の「リキュール」であるためには、エキス分が2度以上であることが必要であるが、上記範囲のエキス分であれば、酒税法上のリキュールの要件を満たす。
【0021】
更に、前記ラッカセイ種皮抽出物含有リキュールは、より好ましい風味を付与するために、本発明の目的を逸脱しない範囲で、甘味料、酸味料、醸造酒、蒸留酒(芋焼酎を除く)等、種々の物品を添加することもできる。
【0022】
甘味料は、リキュールに甘味を追加し、飲みやすさを向上させる観点から好ましい。甘味料としては、果糖などの単糖類、ショ糖などの二糖類、キシリトールなどの糖アルコール、ハチミツなどの天然甘味料、アスパルテームなどの人口甘味料のいずれも使用することができる。甘味料の添加量は、好みに応じて適宜調整されるが、乙類焼酎の量を基準として、5〜20%(W/V)であることが好ましい。
【0023】
酸味料は、ラッカセイ種皮抽出物含有リキュールに酸味を付加し、味わいを整えるほか、ラッカセイ種皮由来のポリフェノール色を安定させる効果がある観点から好ましい。酸味料としては、食品製造分野において一般的に使用されている酸味料を使用することができ、具体的には、例えば、乳酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸等を挙げることができる。酸味料の添加量は、好みに応じて適宜調整されるが、乙類焼酎の量を基準として、0.1〜0.2%(W/V)であることが好ましい。
【0024】
醸造酒及び蒸留酒の添加は、本実施形態のラッカセイ種皮抽出物含有リキュールをカクテルベースとして用いる場合など、味にバリエーションを付与する観点から好ましい。醸造主としては、ビール、ワイン、日本酒等を挙げることができ、蒸留酒としては、乙類焼酎以外の本格焼酎、ブランデー、ウイスキー等を挙げることができる。
【0025】
[ラッカセイ種皮抽出物含有リキュールの製造方法]
次に、ラッカセイ種皮抽出物含有リキュールの製造方法について説明する。本実施形態に係るラッカセイ種皮抽出物含有リキュールの製造方法は、乙類焼酎にラッカセイ種皮を添加する添加工程と、該乙類焼酎中にラッカセイ種皮由来の成分を溶出させる抽出工程と、該ラッカセイ種皮を該乙類焼酎から除去する分離工程と、を含む。
【0026】
本実施形態においては、乙類焼酎として、芋焼酎、黒糖焼酎、麦焼酎、米焼酎からなる群から選択される少なくとも1種以上を使用することが好ましい。この中でも特に、ラッカセイ種皮に特有の渋味やエグ味をマスクし、風味に優れたリキュールを得るという観点からは、芋焼酎を使用することが最も好ましい。芋焼酎を使用することにより、ラッカセイ種皮から得られた抽出物の香味や渋味を最も効果的にマスキングすることができ、芋焼酎が有する芋の原料香と甘い味わいを保持したまま、落花生種皮の有効成分を含むリキュールを製造することができる。
【0027】
市販されている芋焼酎には多くの銘柄があるが、芋焼酎であればその種類に特に限定はなく、原料を芋とする乙類焼酎であればいずれの芋焼酎でも使用可能である。なお、ラッカセイ種皮からポリフェノール類等の有用成分を溶出させることのみを目的とする場合は、焼酎甲類を使用することも考えられるが、乙類焼酎以外の焼酎を用いると、乙類焼酎のようなマスキング効果を得ることができず、ラッカセイ種皮の香味や渋味がリキュールの風味を損ねる恐れがある。
【0028】
前記乙類焼酎のアルコール濃度は、一般的に市販されている乙類焼酎を使用する観点および飲用に適したアルコール濃度を選択する観点から、20〜35%のものを使用することが好ましい。もちろん、上記範囲以外のアルコール濃度を有する乙類焼酎を使用することもできる。
【0029】
前記ラッカセイ種皮の添加量は乙類焼酎のアルコール濃度にもよるが、乙類焼酎のアルコール濃度が20〜35%であることを前提とすると、嗜好性の観点から、前記乙類焼酎の全量を基準として0.5〜2%(W/V)であることが好ましく、1.0〜1.75%(W/V)であることがより好ましく、1.00〜1.50%(W/V)であることが更に好ましい。ラッカセイ種皮の添加量が0.5%(W/V)未満の場合は、得られるラッカセイ種皮抽出物含有リキュールの風味には影響はないが、落花生種皮から得られるエキス分が少なくなる。一方、ラッカセイ種皮の添加量が2.0%(W/V)を超える場合は、ラッカセイ種皮に含まれる香りと渋味が過剰となり、リキュールの品質に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0030】
前記抽出工程は、ラッカセイ種皮の添加量が0.5〜2%(W/V)であることを前提とすると、少なくとも0.5時間以上、2時間以下で行われることが適当である。ラッカセイ種皮を芋焼酎に浸漬する時間が長ければ、その分得られる抽出物の量も多くなる。しかしながら、2時間以上ラッカセイ種皮を浸漬するとラッカセイ種皮中に含まれる香味や渋味が過剰となり、リキュールの品質に悪影響を及ぼす恐れがある。一方、前記抽出工程が0.5時間未満の場合は、得られるポリフェノール類の量が少なく、ポリフェノール類等の有用成分の健康効果を享受できない恐れがある。
【0031】
前記分離工程は、公知の方法によりラッカセイ種皮を焼酎中から除去すればよい。例えば、圧搾や濾過、遠心分離等の方法を用いて、ラッカセイ種皮抽出物含有リキュールを得ることができる。
【0032】
更に、前記ラッカセイ種皮抽出物含有リキュールは、より好ましい風味を付与するために、本発明の目的を逸脱しない範囲で、甘味料、酸味料、醸造酒、蒸留酒(乙類焼酎を除く)等、種々の添加物を添加することもできる。
【0033】
なお、ラッカセイ種皮抽出物含有リキュールの製造は、常温常圧下で行うことができ、特別な装置等も必要ない。本実施形態において特に説明を行わなかったものについては、ラッカセイ種皮抽出物含有リキュールについて説明した事項が適宜適用される。
【0034】
[試験例1]各焼酎とラッカセイ種皮との相性の検討
ラッカセイ種皮には、独特の香りと渋みが含まれている。そのため、リキュールの製造にラッカセイ種皮を用いた場合に、この独特の香りと渋みが製品の価値を左右し得る要素となりうる。そこで本試験例においては、ラッカセイ種皮の香りとの相性が良好な焼酎を検討した。
【0035】
1.供試焼酎
試験に供した焼酎としては、市販されているアルコール濃度25%の芋焼酎、米焼酎、麦焼酎、黒糖焼酎および甲類焼酎の5種類を用いた。
【0036】
2.ラッカセイ種皮抽出物含有リキュールの製造
千葉県の某ラッカセイ加工工場より提供されたラッカセイ種皮を用い、これを各供試焼酎に、1%(W/V)になるよう添加した。そして、その後、無加圧、常温条件下で2時間浸漬し、ラッカセイ種皮に含まれる成分(特にポリフェノール類)を供試焼酎中に溶出させた。2時間経過後、濾過によりラッカセイ種皮と焼酎を分離し、所望のラッカセイ種皮抽出物含有リキュールを得た。
【0037】
ここで、芋焼酎、米焼酎、麦焼酎、黒糖焼酎をそれぞれベースにしたラッカセイ種皮抽出物含有リキュールを実施例とし、甲類焼酎をベースにしたラッカセイ種皮抽出物含有リキュールを比較例とした。
【0038】
3.官能評価
上記実施例及び比較例のラッカセイ種皮抽出物含有リキュールをサンプルとして、以下の要領で官能評価を行った。即ち、6名のパネリストにより、ラッカセイ種皮の香り渋みと、焼酎との相性が良好と思われるラッカセイ種皮抽出物含有リキュールを、順位付けする方法によって評価した。評価基準は、ラッカセイ種皮独特の香りをマスクしているか否か、並びに、ラッカセイ種皮の渋みが抑制されているか否か、の総合判断とした。そして、評価基準に基づいて1(最もよい)〜5(最もよくない)の順位を決定し、各パネリストの評価(順位)を集計して、5名のパネリストの評価結果が一致する順位を最終的な順位とした。結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
表1に示すように、官能評価の結果から、ベースとなる焼酎としては、芋の原料香と甘い味わいを有する芋焼酎が最もラッカセイ種皮と相性がよいという結果となった。次いで、黒糖の原料香と甘い味わいを有する黒糖焼酎であった。
【0041】
米焼酎、麦焼酎は、パネリストの結果が2対4(米焼酎対麦焼酎)となり、官能評価に有意差が見られなかったことから、順位を共に3位とした。しかし、あえて順位をつけると麦焼酎が3位に、米焼酎が4位となる。米焼酎と麦焼酎は原料香と味わいが軽い分、ラッカセイ種皮の香りと渋みが若干焼酎に勝っていたが、飲用には問題はないレベルであった。
【0042】
一方、甲類焼酎においては、焼酎自体にほとんど香りがなく、味わいも本格焼酎(乙類焼酎)と比較して強くないため、ラッカセイ種皮の香りと渋味が強くなり、甘味と酸味との味わいのバランスを損ねるものであった。
【0043】
以上の結果から、ラッカセイ種皮抽出物含有リキュールの製造には、ラッカセイ種皮の持つ独特の香りと渋みをマスクできる乙類焼酎を用いることが好ましいことが判明し、特に芋焼酎が適当であるとの結論を得た。
【0044】
[試験例2]ラッカセイ種皮の添加量の検討
試験例1の結果より、芋焼酎がラッカセイ種皮との相性が最も良好であることが明らかになった。そこで本試験例では、芋焼酎におけるラッカセイ種皮の適正な使用量を検討することを目的として、ラッカセイ種皮の添加量の検討を行った。
【0045】
1.供試焼酎
試験に供した焼酎として、市販されているアルコール濃度25%の芋焼酎を用いた。
【0046】
2.ラッカセイ種皮抽出物含有リキュールの製造
試験例1で用いたラッカセイ種皮と同じ種類のラッカセイ種皮を用い、芋焼酎中の添加量が、それぞれ1.0%(W/V)、1.5%(W/V)、1.75%(W/V)、2.0%(W/V)、2.5%(W/V)および3.0%(W/V)となるように添加した。そして、その後、無加圧、常温条件下で2時間浸漬し、ラッカセイ種皮に含まれる成分を供試焼酎中に溶出させた。2時間経過後、濾過によりラッカセイ種皮と焼酎を分離し、所望のラッカセイ種皮抽出物含有リキュールを得た。
【0047】
3.官能評価
上記のようにして得られたラッカセイ種皮抽出物含有リキュールをサンプルとして、以下の要領により官能評価を行った。即ち、6名のパネリストにより、ラッカセイ種皮の香り渋みと、焼酎との相性が良好と思われるラッカセイ種皮抽出物含有リキュールを、3点評価法(1点;良い、2点;普通、3点;やや劣る)にて評価し、6名の平均点で示した。評価基準は、ラッカセイ種皮独特の香りをマスクしているか否か、並びに、ラッカセイ種皮の渋みが抑制されているか否か、の総合判断とした。結果を表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
官能的には、添加量が1.00%(W/V)から1.75%(W/V)までラッカセイ種皮の持つ香りと渋みがマスクされたことを感じたが、添加量が2.0%(W/V)以上になると、ラッカセイ種皮の持つ香りと渋みが強く感じられ、添加量が2.5%(W/V)以上になると、更にラッカセイ種皮の持つ香りと渋味が強くなり、甘味と酸味との味わいのバランスを損ねるものであった。
【0050】
[試験例3]ラッカセイ種皮抽出物含有リキュールの成分分析(1)
1.供試焼酎
試験に供した焼酎として、市販されているアルコール濃度25%の芋焼酎を用いた。
【0051】
2.ラッカセイ種皮抽出物含有リキュールの製造
試験例1で用いたラッカセイ種皮と同じ種類のラッカセイ種皮を用い、芋焼酎中の添加量が、それぞれ1.0%(W/V)、1.5%(W/V)、1.75%(W/V)および2.0%(W/V)となるように添加した。そして、その後、無加圧、常温条件下で2時間浸漬し、ラッカセイ種皮に含まれる成分を供試焼酎中に溶出させた。2時間経過後、ラッカセイ種皮を焼酎から取り出し、ラッカセイ種皮の抽出物を含有するリキュールを得た。
【0052】
次いで、これらのリキュールに、氷砂糖10%(W/V)と、酸味料として85%乳酸を0.1%(V/V)添加し、1昼夜静置して氷砂糖を完全に溶解させることにより、所望のラッカセイ種皮抽出物含有リキュールを得た(下記表3において、サンプル7〜10と表記する)。
【0053】
更に、氷砂糖10%(W/V)、85%乳酸0.1%(V/V)に替えて、氷砂糖15%(W/V)と85%乳酸0.2(V/V)を添加したものを調製した(下記表4において、サンプル11〜14と表記する)。
【0054】
3.成分分析
(1)アルコール濃度の測定
アルコール濃度の測定は、国税庁所定分析法注解に準じて行った。
(2)エキス分の測定
エキス分の測定は、国税庁所定分析法注解に準じて行った。
(3)ポリフェノール濃度の測定
ポリフェノール濃度の測定は、フォーリン・デニス法にて行った。
(4)分析結果
表3にサンプル7〜10のアルコール濃度、エキス分およびポリフェノール濃度の分析結果を示す。エキス分は、氷砂糖の添加量が10%(W/V)であることから、リキュールの酒税法基準である「2度以上」を超えて、12.1度から13.2度の範囲であった。またポリフェノール濃度はラッカセイ種皮の添加量に応じて高くなり、88mg%から171mg%の範囲であった。
【0055】
【表3】

【0056】
表4にサンプル11〜14のアルコール濃度、エキス分およびポリフェノール濃度の分析結果を示す。エキス分は、氷砂糖の添加量が10%(W/V)であることから、リキュールの酒税法基準である「2度以上」を超えて、18.8度から19.1度の範囲であった。ポリフェノール濃度については示さないが、サンプル11〜14とほぼ同様の傾向であった(表3参照)。
【0057】
【表4】

【0058】
なお、サンプル7〜14の各リキュールを試飲したところ、1%ラッカセイ種皮添加のものは、スイートタイプ(10%および15%氷砂糖添加)と評価され、2%ラッカセイ種皮添加のものは、ビタータイプ(10%氷砂糖)と評価された。従って、ラッカセイ種皮および氷砂糖の添加濃度を適宜調整することにより、スイートタイプからビタータイプのリキュールを任意に調製できることが判明した。
【0059】
[試験例4]ラッカセイ種皮抽出物含有リキュールの成分分析(2)
試験に供した焼酎として、市販されているアルコール濃度35%の芋焼酎を用いた以外は、試験例3におけるサンプル11〜14と同様の製造方法によりラッカセイ種皮抽出物含有リキュールを製造した。得られたラッカセイ種皮抽出物含有リキュールをサンプル(15〜18)として、エキス分とポリフェノール濃度について、試験例3に示した方法と同じ方法を用いて分析した。結果を表5に示す。
【0060】
【表5】

【0061】
エキス分は、氷砂糖の添加量が15%(W/V)であることから、リキュールの酒税法基準である「2度以上」を超えて、18.8度から19.2度の範囲であった。また、ポリフェノール濃度については、アルコール濃度が25%の焼酎を用いた場合と比較してポリフェノールの抽出効果が高い傾向にあり、1%ラッカセイ種皮添加で約30mg%高い118.2mg%、2%ラッカセイ種皮添加で68mg%高い239mg%の値を示した。
【0062】
さらにサンプル15〜18のリキュールを試飲したところ、アルコールの刺激が強かったものの、サンプル11〜14を試飲した場合と同様、スイートタイプ(1%ラッカセイ種皮添加)とビタータイプ(2%ラッカセイ種皮添加)のバリエーションが得られることが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも蒸留酒と添加物とを含むリキュールであって、
該蒸留酒が乙類焼酎であり、該添加物がラッカセイ種皮由来の抽出物であることを特徴とする、ラッカセイ種皮抽出物含有リキュール。
【請求項2】
前記乙類焼酎が、芋焼酎、黒糖焼酎、麦焼酎、米焼酎からなる群から選択される少なくとも1種以上である、請求項1に記載の落花生種皮抽出物含有リキュール。
【請求項3】
前記乙類焼酎が、芋焼酎である請求項1に記載の落花生種皮抽出物含有リキュール。
【請求項4】
前記ラッカセイ種皮由来の抽出物が、前記乙類焼酎に前記ラッカセイ種皮を添加して抽出されたものである請求項1〜3のいずれか1項に記載のラッカセイ種皮抽出物含有リキュール。
【請求項5】
前記ラッカセイ種皮の添加量が、前記乙類焼酎の全量を基準として0.5〜2.0%(W/V)である請求項4に記載のラッカセイ種皮抽出物含有リキュール。
【請求項6】
前記ラッカセイ種皮抽出物含有リキュールのエキス分が、12〜20度である請求項1〜5のいずれか1項に記載のラッカセイ種皮抽出物含有リキュール。
【請求項7】
前記乙類焼酎のアルコール濃度が、20〜35%である請求項1〜6のいずれか1項に記載のラッカセイ種皮抽出物含有リキュール。
【請求項8】
前記ラッカセイ種皮抽出物含有リキュールが、更に、甘味料と、酸味料と、を含んでなる、請求項1〜7のいずれか1項に記載のラッカセイ種皮抽出物含有リキュール。
【請求項9】
乙類焼酎にラッカセイ種皮を添加する添加工程と、
該乙類焼酎中にラッカセイ種皮由来の成分を溶出させる抽出工程と、
該ラッカセイ種皮を該乙類焼酎から除去する分離工程と、
を含む、ラッカセイ種皮抽出物含有リキュールの製造方法。
【請求項10】
前記乙類焼酎として、芋焼酎、黒糖焼酎、麦焼酎、米焼酎からなる群から選択される少なくとも1種以上を使用する、請求項9に記載のラッカセイ種皮抽出物含有リキュールの製造方法。
【請求項11】
前記乙類焼酎として、芋焼酎を使用する請求項9に記載のラッカセイ種皮抽出物含有リキュールの製造方法。
【請求項12】
前記ラッカセイ種皮の添加量が、前記乙類焼酎の全量を基準として0.5〜2.0%(W/V)である請求項9〜11のいずれか1項に記載のラッカセイ種皮抽出物含有リキュールの製造方法。
【請求項13】
前記抽出工程が、2時間以下で行われる請求項9〜12のいずれか1項に記載のラッカセイ種皮抽出物含有リキュールの製造方法。
【請求項14】
前記乙類焼酎のアルコール濃度が、20〜35%である請求項9〜13のいずれか1項に記載のラッカセイ種皮抽出物含有リキュールの製造方法。
【請求項15】
前記除去工程の後、更に甘味料及び/又は酸味料を添加する工程を含む請求項9〜14のいずれか1項に記載のラッカセイ種皮抽出物含有リキュールの製造方法。


【公開番号】特開2007−236342(P2007−236342A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66253(P2006−66253)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(598096991)学校法人東京農業大学 (85)
【Fターム(参考)】