説明

ラップフィルム収納容器およびラップフィルム供給具

【課題】フィルムを収納容器から引き出す際に、左右どちらの手でもフラップを起こせ、フィルムが摘め、スムーズに引き出せる収納容器を提供する。
【解決手段】フィルム12の巻回体2を収納し、開口面を有し、底板4、前板5、後板6、前板に連接される副前板7とを有する容器本体15と、第2の連接辺で後板6に回動可能に連接され、開口面を塞ぐ蓋板22と、蓋板が開口面を塞いだとき、前板に重なる蓋前板23とを備え、副前板7は、前板に重なり前板の内側に配置され、容器本体は、開口面から引き出されたフィルムの先端部36を前板から離間させる二つのフラップ20を有し、該フラップは第1の連接辺に連接し、前板の一部分を切り起こして形成され、第1の連接辺に沿う方向の前板の中央部を挟んで配置され、該フラップが切り起こされた一部分の底板の一辺に対向する側に、指をいれフィルムをつまみ、引き出せる大きさの刳貫部29のある収納容器とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラップフィルムが円筒状に巻かれたラップ巻回体を収納するラップフィルム収納容器に関し、特に、ラップフィルム収納容器からラップフィルムを左右どちらの手でも摘み出すことのできるラップフィルム収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
図5に示すように、従来のラップフィルム供給具101は、ラップ巻回体102(以下、適宜、巻回体102)と、巻回体102を収納するラップフィルム収納容器103(以下、適宜、収納容器103)とを含んで構成される(例えば、特許文献1参照)。巻回体102は、食品包装用等に使用されるラップフィルム112(以下、適宜、フィルム112)を円筒状の巻芯110に巻きつけて巻回体102としたものである。巻回体102は、細長い直方体形状である紙製の収納容器103の中に収納される。
【0003】
収納容器103は、一面全体に渡って開口している一面130を、図中、上部に有する容器本体115と、容器本体115の開口している一面130を覆って蓋をするように形成され、一端が容器本体115に回動可能に連接された蓋板122とを含んで構成されている。
【0004】
容器本体115は、底板104と、前板105と、後板106と、前板105に重ねて配置された副前板(図1(B)参照)とを有する。収納容器103は、蓋板122に立設された蓋前板123であって、蓋板122が開口している一面130を塞いだときに、前板105に重なる蓋前板123を備える。蓋前板123の一端140であって蓋板122に連接された一端140に対向する他端には、カッター124が形成されている。前板105の、図中、上部の長手方向中央部には切り込みが入れられ、切り込みを境にしてフラップ120が分離して起こされ、前板105に対して角度をなして配置されている。起こされたフラップ120によって、フラップ120にもたれかかるフィルム112の先端部136が前板105から離間している。
【0005】
フィルム112を使用するときは、収納容器103を手に持ち、蓋板122を開け、フィルム112を摘んで引き出すと、巻回体102は収納容器103内で回転し、フィルム112を巻回体102から剥離させ、収納容器103の外部に引き出すことができる。必要な長さのフィルム112を引き出した後に、蓋板122を閉め、蓋前板123の長手方向中央を、フィルム112を引き出した手と反対の手の親指で押さえ、カッター124を使用してフィルム112を切断し、切り離したフィルム112を使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3088078号公報(図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、フィルム112を引き出すためにフラップ120を起こしてフィルム112を摘もうする際に、フラップ120を起こしにくく、またフィルム112が摘みにくく、フィルム112がうまく摘めず、フィルム112を収納容器103からうまく引き出せない場合があり、また左右どちらの手でもフィルム112を収納容器からスムーズに引き出せるようにしてほしいとの要望があった。
【0008】
そこで、本発明は、ラップフィルムをラップフィルム収納容器から引き出す際に、左右どちらの手でもフラップを起こしやすく、かつラップフィルムが摘みやすく、ラップフィルムをラップフィルム収納容器からスムーズに引き出すことのできるラップフィルム収納容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係るラップフィルム収納容器3は、例えば図1(A)、(B)に示すように、ラップフィルム12が円筒状に巻かれたラップ巻回体2を収納する、一面30が開口された容器本体15であって、一面30に対向する底板4と、底板4の一辺31に立設された前板5と、一辺31に対向する底板4の他の一辺32に立設された後板6と、底板4の一辺31に対向する第1の連接辺38を有する副前板7であって、第1の連接辺38において前板5に連接される副前板7とを有する容器本体15と;底板4の他の一辺32に対向する第2の連接辺39を有し、第2の連接辺39において後板6に回動可能に連接され、開口された一面30を塞ぐよう構成された蓋板22と;第2の連接辺39に対向する蓋板22の一辺40に立設され、蓋板22が一面30を塞いだ状態のとき、前板5に重なるよう配置された蓋前板23とを備え;副前板7は、前板5に重なって前板5の内側に配置され;容器本体15は、開口された一面30から引き出されたラップフィルム12の先端部36を前板5から離間させる二つのフラップ20を有し;二つのフラップ20は、第1の連接辺38に連接し、前板5の一部分を切り起こしてそれぞれ形成され、第1の連接辺38に沿った方向Xの前板5の中央部を挟んで配置され;二つのフラップ20が切り起こされた一部分の底板4の一辺31に対向する側に、指をいれ、引き出されたラップフィルム12をつまみ、さらに引き出すことのできる大きさの刳貫部29がそれぞれ形成される。
【0010】
このように構成にすると、ラップフィルム収納容器の容器本体は、フラップを有し、刳貫部が形成されたものとなる。よって、開口された一面から引き出されたラップフィルムの先端部を、第1の連接辺に沿った方向の前板の中央部を挟んで配置された二つのフラップによって前板から離間させることができるので、ラップフィルムの使用者は、刳貫部に指を入れ、前板から離間されたラップフィルムを容易に摘み、さらにスムーズに引き出すことができる。フラップは、二つ形成され、第1の連接辺に沿った方向の前板の中央部を挟んで配置されているので、ラップフィルムをラップフィルム収納容器から引き出す際に、左右どちらの手でもフラップを起こしやすく、かつ左右どちらの手でもラップフィルムが摘みやすく、ラップフィルムをラップフィルム収納容器からスムーズに引き出すことができる。
【0011】
本発明の第2の態様に係るラップフィルム収納容器3は、例えば図1(A)に示すように、第1の態様のラップフィルム収納容器において、前板5上の二つのフラップ20の間に、引き出されたラップフィルム12を保持するフィルム保持部33を備える。
【0012】
このように構成すると、前板上の二つのフラップの間に、引き出されたラップフィルムを保持するフィルム保持部を備えるので、ラップフィルムの使用者は、刳貫部に指を入れ、引き出されフィルム保持部に保持されているラップフィルムを確実に摘み、ラップフィルム容器内のラップフィルムをラップフィルム容器からスムーズに引き出すことができる。
【0013】
本発明の第3の態様に係るラップフィルム収納容器3は、例えば図1(A)に示すように、第1の態様または第2の態様のラップフィルム収納容器において、二つのフラップ20の間の第1の連接辺38に沿った方向Xの距離(2×W)が10mm以上である。
【0014】
このように構成すると、二つのフラップの間の第1の連接辺に沿った方向の距離が10mm以上であるので、二つのフラップの間の前板の中央部分にフォルムを保持するフィルム保持部を設けることができ、引き出されたラップフィルムをフィルム保持部に確実に保持することができる。
【0015】
二つのフラップの間の第1の連接辺に沿った方向の距離を20mm以上とすることが好ましい。このように構成すると、より確実に二つのフラップの間の前板の中央部分にフィルムを保持するフォルム保持部を設けることができ、引き出されたラップフィルムをフィルム保持部により確実に保持することができる。
【0016】
二つのフラップの間の第1連接辺に沿った方向の距離(2×W)は、200mm以下、好ましくは150mm以下とするとよい。このように構成すると、ラップフィルムを摘む箇所が、前板の長手方向における端により過ぎないので、その後のラップフィルムを引き出して切断する作業をスムーズに行うことができる。
【0017】
本発明の第4の態様に係るラップフィルム収納容器3は、例えば図1(A)、(B)に示すように、第3の態様のラップフィルム収納容器において、蓋板22が一面30を塞いだ状態のとき蓋前板23のフィルム保持部33に重なる部分に、前板5の側に隆起する隆起部34を有するエンボス加工部28を備える。
【0018】
このように構成すると、蓋板が一面を塞いだ状態のとき蓋前板のフィルム保持部に重なる部分に、前板の側に隆起する隆起部を有するエンボス加工部を備えるので、ラップフィルム収納容器を片手で持ったときに、ラップフィルムを持った手の親指で蓋前板のエンボス加工部を容易に押さえることができるので、ラップフィルムをフィルム保持部により確実に保持することができる。
【0019】
本発明の第5の態様に係るラップフィルム収納容器3は、例えば図3、図4に示すように、第1の態様乃至第4の態様のいずれか1の態様のラップフィルム収納容器3において、二つのフラップ20の少なくとも一方の副前板7側の表面上に、あるいは副前板7の二つのフラップ20に対向する側の表面上であって、二つのフラップ20の少なくとも一方に対向する位置に隆起部51、52が形成されている。
【0020】
このように構成すると、二つのフラップの少なくとも一方の副前板側の表面上に形成された隆起部が副前板に当たり、二つのフラップの少なくとも一方を起こすことができる。あるいは副前板の二つのフラップに対向する側の表面上であって、二つのフラップの少なくとも一方に対向する位置に形成された隆起部が当該二つのフラップの少なくとも一方に当たり、当該二つのフラップの少なくとも一方を起こすことができる。起こされた二つのフラップの少なくとも一方は、手でさらに起こすことができ、当該一方によって、ラップフィルムを前板から確実に離間させることができる。
【0021】
上記目的を達成するために、本発明の第6の態様に係るラップフィルム供給具1は、例えば図1(A)に示すように、第1の態様乃至第5の態様のいずれか1の態様のラップフィルム収納容器3と;ラップフィルム12が円筒状に巻かれたラップ巻回体2とを備える。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明のラップフィルム収納容器によれば、二つのフラップを有し、刳貫部が形成されたものとなる。よって、開口された一面から引き出されたラップフィルムの先端部を、第1の連接辺に沿った方向の前板の中央部を挟んで配置された二つのフラップによって前板から離間させることができるので、ラップフィルムの使用者は、刳貫部に指を入れ、前板から離間されたラップフィルムを容易に摘み、さらにスムーズに引き出すことができる。フラップは、二つ形成され、第1の連接辺に沿った方向の前板の中央部を挟んで配置されているので、ラップフィルムをラップフィルム収納容器から引き出す際に、左右どちらの手でもフラップを起こしやすく、かつ左右どちらの手でもラップフィルムが摘みやすく、ラップフィルムをラップフィルム収納容器からスムーズに引き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(A)は、本発明の実施の形態に係る、ラップフィルム収納容器を備えるラップフィルム供給具の斜視図である。(B)は、(A)に示すラップフィルム収納容器の長手方向に直角な方向のラップフィルム供給具の断面図である。
【図2】図1(A)に示す立体状のラップフィルム収納容器とする前の、平面状の前板の部分を示す図である。
【図3】図1(A)に示すラップフィルム収納容器のフラップを裏から見た図である。
【図4】図1(A)に示すラップフィルム収納容器の副前板の部分を示す正面図であり、ラップフィルム収納容器の前板を省略して書いた図である。
【図5】従来のラップフィルム供給具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図において互いに同一あるいは相当する部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0025】
図1(A)、(B)を参照して、実施の形態に係る、ラップフィルム収納容器3を備えるラップフィルム供給具1の構成を説明する。図1(A)は、水平に配置された状態のラップフィルム供給具1の斜視図であり、図1(B)は、図1(A)のラップフィルム収納容器の長手方向中央部における長手方向Xに直角な方向の断面図である。図1(A)では、後述の蓋板22は、開いた状態であり、図1(B)では、蓋板22は、部分的に閉まっている状態であり(すなわち、蓋板22が底板4に平行になっていない)、また後述のラップフィルム12をラップフィルム収納容器3から引き出した状態が示されている。
【0026】
ラップフィルム供給具1は、ラップ巻回体2(以下、適宜、巻回体2)と、巻回体2を収納するラップフィルム収納容器3(以下、適宜、収納容器3)とを含んで構成される。巻回体2は、食品包装用等に使用されるラップフィルム12(以下、適宜、フィルム12)を円筒状の巻芯10に巻きつけて巻回体2としたものである。巻回体2は、細長い直方体形状である紙製の収納容器3の中に収納される。収納容器3は、例えば、厚紙またはボール紙などの紙素材により形成される。収納容器3は、複数枚、または、1枚の紙素材から形成することが可能である。
【0027】
収納容器3は、容器本体15を備える。容器本体15は略直方体形状をなす。容器本体15は、紙素材を折り曲げて形成され、当該紙素材は一度折り曲げても元に戻ろうとする曲げに対する弾力性(復元性)を有している。容器本体15は、フィルム12が円筒状に巻かれた巻回体2を収容し、一面30が開口され、当該開口された一面30から巻回体2を出し入れすることができる。巻芯10に巻かれたラップフィルム12は、ポリ塩化ビニリデンを原材料とする透明フィルムであるが、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、もしくはこれらを組み合わせた多層ラップフィルムであってもよい。容器本体15は、図1(A)中、一面30に対向する底板4と、底板4の一辺31(長辺)に底板4に対し直角に立設された前板5と、一辺31に対向する底板4の他の一辺32(長辺)に底板4に対し直角に立設された後板6と、底板4の一辺31に対向する第1の連接辺38を有する副前板7を有する。底板4は、一面30に対向するよう配置されている。副前板7は、第1の連接辺38において前板5に連接される。副前板7は、略直方体形状の容器本体15の形成に際し、第1の連接辺38上で連接辺38に沿って、収納容器3の内側に180°折り込まれ、前板5に重ねられる。折り込まれた副前板7は、前板5の側の表面に接着剤がライン状に塗布され、前板5と接着され、固定される。底板4、フラップ20が分離される前のフラップ20を含む前板5、後板6、副前板7は、長方形である。
【0028】
底板4は長辺である一辺31および他の一辺32に加えて、短辺61、62を有する。容器本体15は、側面板71、72を有する。側面板71、72は、それぞれ短辺61、62に立設されている。側面板71、72は略正方形である。
【0029】
収納容器3は、さらに、蓋板22と、蓋前板23とを備える。蓋板22は、略長方形である。蓋板22は、底板4の他の一辺32に対向する第2の連接辺39を有し、第2の連接辺39において後板6に回動可能に連接され、開口された一面30を塞ぐよう構成される。蓋前板23は、第2の連接辺39に対向する蓋板22の一辺40に蓋板22に対して直角に立設され、蓋板22が一面30を塞いだ状態のとき、前板5に沿って前板5の外側に重なるよう配置される。
【0030】
蓋板22は長辺である第2の連接辺39と一辺40に加えて、短辺63、64を有する。容器本体15は、蓋側面板73、74を有する。蓋側面板73、74は、それぞれ短辺63、64に立設されている。蓋側面板73、74は略長方形である。
【0031】
容器本体15は、開口された一面30から引き出されたラップフィルム12の先端部36を前板5から離間させる二つのフラップ20を有する。フラップ20は第1の連接辺38にて副前板7に連接している。前板5には、フラップ20の第1の連接辺38にて副前板7に連接する部分を除いた周囲を取り囲むように切り込み47(図2)が入れられている。二つのフラップ20は、第1の連接辺38に沿って前板5の長手方向Xに並んで配置されている。フラップ20は、基部21と、凸部25とを有する。フラップ20は、基部21において第1の連接辺38に連接する。凸部25は、基部21の第1の連接辺38に対向する側(第1の連接辺38とは反対側)で、基部21と繋がっている。フラップ20は、底板4の一辺31に対向する側(凸部25側)に先端37を有する。すなわち、先端37は凸部25の先端を構成する。
【0032】
副前板7と前板5とは、第1の連接辺38に沿って折り曲げて重なるよう形成されている。フラップ20は、切り込み47によって前板5と分離され、さらに第1の連接辺38に沿って折り曲げて形成されているため、副前板7と同一平面になろうとする復元力を有し、この復元力に基づく第1の連接辺38周りの曲げモーメントが、フラップ20に働く。この原理により、フラップ20は、前板5から起き上がった状態となる。
【0033】
フラップ20は、フラップ20の第1の連接辺38に沿った長さWが、第1の連接辺38から先端37までの長さHより長く形成されている。長さHの長さWに対する比(W/H)は、2以上とすることが望ましい。長さHの長さWに対する比(W/H)を2以上とすることで、第1の連接辺38でフラップ20を折り曲げたことによるフラップ20の復元力がフラップ20の重量に比して十分に働き、それによりフラップ20が前板5から適切な角度で起き上がるようにすることができるので、フィルム12を前板5から確実に離間させることができる。
【0034】
なお、基部21とは、フラップ20の第1の連接辺38に連接する側の部分をいう。基部21は、図1(A)に示すように、典型的には収納容器3の長手方向Xに長い形状であり、第1の連接辺38に連接する長さがWに等しい。基部21には、前述のように凸部25が繋がっており、凸部25の収納容器3の長手方向Xの長さに、さらに後述の刳貫部29の長手方向Xの長さを加えた長さは、Wより短く形成されている。
【0035】
フラップ20は、前板5から切り込み47(図2)によって分離されており、前板5からフラップ20が切り起こされている。すなわち、フラップ20は前板5に対し角度θをなすように第1の連接辺38で副前板7に連接されている。よって、フラップ20の起き上がりが良く、またフラップ20を起こしやすい。切り込み47は、基部21の第1の連接辺38に連接している部分と、基部21の凸部25と繋がっている部分と、凸部25の基部21と繋がっている部分とを除いた箇所に形成されている。前板5には、さらに切り込み47(図2)が入れられており、切り込み47(図2)に囲まれることにより刳貫部29が二つ形成されている。刳貫部29は、切り起こされたフラップ20の底板4の一辺31に対向する側に、形成されている。刳貫部29は、指をいれ、引き出されたフィルム12を摘まみ、さらに引き出すことのできる大きさである。副前板7は刳貫部29が設けられた前板5の対応する部分を遮蔽し、外部からチリ等の異物が入ることを防ぐ。
【0036】
前板5のフラップ20の先端37の下方(底板5へ向かう方向)に切り込み49(図2にて破線で表示)を設け、刳貫部29に代えて、もしくは刳貫部29と共に、フラップ20の先端37の下方に刳貫部50(図2にて破線で表示)を設けるようにしてもよい。
【0037】
フラップ20は、前板5の長手方向Xに直角な中心線41(図1(A)中、一点鎖線にて表示)に対して鏡対称に配置されており、中心線41からフラップ20(フラップ20の中心線41に最も近い箇所)までの第1の連接辺38に沿った方向X(前板5の長手方向X)の距離(W)が5mm以上である。したがって、二つのフラップ20によってフィルム12を確実に起こす(フィルム12を前板5から離す)ことができる。
【0038】
刳貫部29は前板5の長手方向Xに直角な方向の中心線41から長手方向Xにずれて配置されているが、どちらか一方の刳貫部29に指を入れ、フィルム12をさらに引き出したときに、フィルム12をスムーズに引き出せる位置に形成されている。すなわち、刳貫部29は当該中心線41から長手方向Xにあまりずれていない位置に形成されている。また、刳貫部29に指をいれた場合、当該指が基部21の図1(A)中、下部及び凸部25の側部に接触する構造になっている。刳貫部50(図2)も同様である。
【0039】
前板5の二つのフラップ20に挟まれた中央部分には、フィルム保持部33が形成されている。フィルム保持部33の形成方法としては、フィルム12に対して粘着性を有する粘着剤を塗布し粘着剤層を設ける方法や、フィルム12に対して密着性を有し、平滑性のあるニスを塗布し平滑層を設ける方法、さらには、フィルム12自体の自己密着性を利用し、フィルム12と実質的に同一材料からなる自己密着性フィルム層を設ける方法等がある。フィルム保持部33はフラップ20のフィルム12に接する方の面に形成されている。
【0040】
蓋前板23の底板の一辺31に対向する側(蓋板22が閉じた状態で対向)には、フィル ム12を切断するためのカッター24が一辺46に沿って設けられている。カッター24の先端には複数の鋸刃80が形成されている。カッター24の一部は、蓋板22を完全に閉じて、開口している一面30(図1(A))を塞いだ場合、底板4方向に突出するように構成されているが、これには限定されないものとする。
【0041】
図2に、蓋板22を完全に閉じて(すなわち、蓋板22が底板4(図1(A))に平行になって)、開口している一面30(図1(A))を塞いだ場合のフラップ20とカッター24との位置関係を示す。蓋板22が完全に閉じた場合の蓋前板23(図1(A))の一辺46(図1(A))およびカッター24の前板5上における位置を破線にて示す。起伏形状を有するフラップ20は、蓋前板23に設けられたカッター24の複数の鋸刃80と重ならない位置に形成され、かつ、カッター24の複数の鋸刃80は、フラップ20の先端37から離れて先端37に沿うように形成される。よって、フラップ20の先端37付近であって先端37から離れた位置に、フィルム12(図1(A))の先端部36(図1(B))を形成することが可能となる。これにより、切断時に複数の鋸刃80によりこすれ磨耗し脆弱化したフィルム12が、切断時にフラップ20の起伏形状の影響を受けないようにすることができ、フィルム12が不規則な切断となることを防止することが可能となる。
【0042】
図1(A)に示すように、蓋前板23の外側の長手方向Xの中央には、エンボスが加工されたエンボス加工部28が、蓋板22が開口した一面30を塞いだ状態のとき、フィルム保持部33に重なるよう形成されている。エンボス加工部28は、前板5の側に隆起する隆起部34を有する。フィルム12を収納容器3から引き出した後、蓋板22を完全に閉じた状態で、エンボス加工部28を親指でフラップ20に向けて垂直に押した場合、フィルム12がフィルム保持部33に押し付けられ、フィルム保持部33に確実に保持される。したがって、フィルム12が収納容器3に対して確実に固定され、フィルム12をカッター24でスムーズに切断することができる。エンボス加工部28は、前板5の側に隆起する隆起部34を有しているので、エンボス加工部28に指で触れた場合、触れたことを目視しなくとも、エンボス加工部28に触れた指の触感にて確認することができる。
【0043】
図3に示すように、容器本体15(図1(A))の二つのフラップ20は、二つのフラップ20の裏側(副前板7(図1(A))側)の表面上に隆起部としての凸エンボス51を有する。凸エンボス51は、フラップ20の凸部25に形成されている。凸エンボス51は、フラップ20の先端37になるべく近く(例えば、先端37から1mm離して)形成するとよい。凸エンボス51は、収納容器3(図1(A))の長手方向Xに長い長方形である。凸エンボス51は、副前板7に向かって隆起し、エンボス加工にて形成される。フラップ20の凸エンボス51は、副前板7の後述の凸エンボス52(副前板7に後述の凸エンボス52が形成されていないときは副前板7)に当たり、切り込み47によって前板5から分離されたフラップ20が再び前板5に嵌まり込む現象を防ぎ、前板5(図1(A))から確実に起き上がらせることを可能とするので、フィルム12(図1(B))を前板5から確実に離間させることができる。
【0044】
図4に副前板7を示す。副前板7は第1の連接辺38(図4に一点鎖線にて表示)にて前板5(図1(A))に連接されている。図に示すように、副前板7は、副前板7の二つのフラップ20に対向する側の表面上であって、二つのフラップ20に対向する位置に隆起部としての凸エンボス52を有する。図中、フラップ20と刳貫部29を二点差線で描き、前板5と副前板7が重なった場合の、フラップ20と刳貫部29の副前板7上の対応位置を示す。凸エンボス52は、中心を第1の連接辺38(図1(A))上に有する円の円弧形状である(円弧の中心部における半径は第1の連接辺38に直角)。凸エンボス52は、二つのフラップ20に向かって隆起し、エンボス加工にて形成される。副前板7の凸エンボス52は、フラップ20の凸エンボス51に当たるように形成されているので、切り込み47によって前板5から分離されたフラップ20が再び前板5に嵌まり込む現象を防ぎ、前板5(図1(A))から確実に起き上がらせることを可能とするので、フィルム12(図1(A))を前板5から確実に離間させることができる。
【0045】
図3および図4において、凸エンボス51は、副前板7と前板5が重なって配置された状態のとき、すなわち容器本体15が組み立てられたとき、凸エンボス52の全体が凸エンボス51に当たるように形成される。すなわち、凸エンボス52の全体が、凸エンボス51の領域内に入るよう形成される。
【0046】
本実施の形態では、凸エンボス51と凸エンボス52を両方形成しているが、凸エンボス51と凸エンボス52のどちらか一方を形成するようにしてもよい。また、二つのフラップ20の両方に凸エンボス51を形成しているが、どちらか一方のフラップ20のみに凸エンボス51を形成してもよい。このようにすると簡易な構成で、フラップ20が前板5(図1(A))から起き上がるようにし、フィルム12(図1(A))を前板5から確実に離間させることができる。副前板7の二つのフラップ20に対向する位置にそれぞれ凸エンボス52を形成しているが、どちらか一方のフラップ20に対向する位置にのみ凸エンボス52を形成してもよい。このようにすると、より簡易な構成で、フラップ20が前板5(図1(A))から起き上がるようにし、フィルム12(図1(A))を前板5から確実に離間させることができる。
【0047】
図1(A)、図1(B)を参照して、実施の形態の作用について説明する。
収納容器3は、巻回体2を収納し、蓋板22は完全に閉じた状態で保管される。フィルム12を収納容器3から引き出した後には、蓋板22を完全に閉じた状態にし、フィルム12をカッター24により切断した後に、通常は底板4を下にして収納容器3を例えば台所の棚(不図示)に置いて保管する。この状態で、フィルム12は、蓋前板23の内側(蓋板22が完全に閉じた場合の、前板5側)と、フラップ20の外側(副前板7側とは反対の側)および前板5の外側との間に挟まれている。
【0048】
次に、フィルム12を使用するため、収納容器3を例えば台所の棚(不図示)から手に取り、蓋板22を開ける。フラップ20は、前板5から切り起こされている構造であり、長手方向Xに長い構造であるので、すなわち、フラップ20の第1の連接辺38に沿った長さWが、第1の連接辺38から先端37まで長さHより長い構造なので、フラップ20はフィルム12を起こす十分な力を有し、フィルム12のフラップ20に接触している部分は、フラップ20によって蓋前板23の内側の方向に押され、前板5から離間している。特にフィルム12のフラップ20に接触している部分の先端部36は、確実に前板5から離間している。したがって、フィルム12が摘みやすく、フィルム12を収納容器3からスムーズに引き出すことができる。
【0049】
蓋板22が完全に閉じた状態のとき、蓋前板23に取り付けられたカッター24の先端は、フラップ20の先端37を超えて配置され、フラップ20は、蓋前板23およびカッター24により外部から見えない構造になっている。カッター24により前回使用されたフィルム12の部分が切断されており、残った方のフィルム12の先端部36は、フラップ20の先端37より図1(A)中、下側(底板4側)にある。
【0050】
この状態から、今回フィルム12を使用する場合は、蓋板22を開き、刳貫部29に指を入れ、切断されたフィルム12の先端部36を摘み、フィルム12をさらに必要な長さだけ引き出す。フィルム12を引きだしている間、巻回体2は収納容器3内で回転する。その後、蓋板22を閉め、蓋前板23のエンボス加工部28を親指で押さえると、エンボス加工部28は、この状態で、フィルム保持部33に重なるよう形成されているので、フィルム12がフィルム保持部33に押し付けられる。よって、フィルム保持部33にフィルム12が確実に保持され、フィルム12の収納容器3に対する位置が安定するのでフィルム12をカッター24によってスムーズに切断することができる。フィルム12の切断が終了し、エンボス加工部28から親指を離すと、二つのフラップ20がフィルム12を蓋前板23の内側の方向、すなわち前板5から離れる方向に押し付ける力が働く。次回のフィルム12の使用時に、蓋板22を開けた場合は、蓋前板23が二つのフラップ20の起き上がりを拘束することがなくなるので、二つのフラップ20がさらに起き上がり、フィルム12を前板5から離れる方向にさらに押すので、フィルム12は、フィルム保持部33による保持を確保しつつ、前板5から確実に離れる。
【0051】
実施の形態に係るラップフィルム収納容器3によれば、容器本体15が二つのフラップ20を有するので、開口された一面30から引き出されたラップフィルム12の先端部36を二つのフラップ20によって前板5から確実に離間させることができる。ラップフィルム12の先端部36を前板5から確実に離間させることができるので、ラップフィルム12の使用者は、刳貫部29に指を入れ、前板5から離間されたラップフィルム12を容易に摘み、収納容器3からさらにスムーズに引き出すことができる。フラップ20は、二つ形成されているので、フィルム12を収納容器3から引き出す際に、左右どちらの手でもフラップ20を起こしやすく、かつ左右どちらの手でもフィルム12が摘みやすく、フィルム12を収納容器3からスムーズに引き出すことができる。
【0052】
前板5のフィルム保持部33が設けられる箇所に蓋前板23側に隆起する凸エンボス(不図示)を施してもよい。この場合、フィルム保持部33が、凸エンボスを施さない場合よりも蓋前板23に、より近づくことになるので、エンボス加工部28によるフィルム保持部33への押しつけがより確実になり、フィルム12が確実にフィルム保持部33に保持されるようになる。
【0053】
フィルム保持部33は、前板5の中央部分に設置されているが、二つのフラップ20の引き出されたフィルム12に対向する表面に設置されてもよい。この場合、フラップ20の起き上がりにより、フィルム保持部33が蓋前板23側に近づくことになるので、前述と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 ラップフィルム供給具
2 ラップ巻回体
3 ラップフィルム収納容器
4 底板
5 前板
6 後板
7 副前板
10 巻芯
12 ラップフィルム
15 容器本体
20 フラップ
21 基部
22 蓋板
23 蓋前板
24 カッター
25 凸部
28 エンボス加工部
29 刳貫部
30 一面
31 一辺
32 他の一辺
33 フィルム保持部
34 隆起部
36 先端部
37 先端
38 第1の連接辺
39 第2の連接辺
40 一辺
41 中心線
46 一辺
47、49 切り込み
50 刳貫部
51、52 凸エンボス
61、62、64、64 短辺
71、72 側面板
73、74 蓋側面板
80 鋸刃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラップフィルムが円筒状に巻かれたラップ巻回体を収納する、一面が開口された容器本体であって、前記一面に対向する底板と、前記底板の一辺に立設された前板と、前記一辺に対向する前記底板の他の一辺に立設された後板と、前記底板の一辺に対向する第1の連接辺を有する副前板であって、前記第1の連接辺において前記前板に連接される副前板とを有する容器本体と;
前記底板の他の一辺に対向する第2の連接辺を有し、前記第2の連接辺において前記後板に回動可能に連接され、前記開口された一面を塞ぐよう構成された蓋板と;
前記第2の連接辺に対向する前記蓋板の一辺に立設され、前記蓋板が前記一面を塞いだ状態のとき、前記前板に重なるよう配置された蓋前板とを備え;
前記副前板は、前記前板に重なって前記前板の内側に配置され;
前記容器本体は、前記開口された一面から引き出された前記ラップフィルムの先端部を前記前板から離間させる二つのフラップを有し;
前記二つのフラップは、前記第1の連接辺に連接し、前記前板の一部分を切り起こしてそれぞれ形成され、前記第1の連接辺に沿った方向の前記前板の中央部を挟んで配置され;
前記二つのフラップが切り起こされた一部分の底板の一辺に対向する側に、指をいれ、前記引き出されたラップフィルムをつまみ、さらに引き出すことのできる大きさの刳貫部がそれぞれ形成された;
ラップフィルム収納容器。
【請求項2】
前記前板上の前記二つのフラップの間に、前記引き出されたラップフィルムを保持するフィルム保持部を備える;
請求項1に記載のラップフィルム収納容器。
【請求項3】
前記二つのフラップの間の前記第1の連接辺に沿った方向の距離が10mm以上である;
請求項1または請求項2に記載のラップフィルム収納容器。
【請求項4】
前記蓋板が前記一面を塞いだ状態のとき前記蓋前板の前記フィルム保持部に重なる部分に、前記前板の側に隆起するエンボス加工部を備える;
請求項3に記載のラップフィルム収納容器。
【請求項5】
前記二つのフラップの少なくとも一方の前記副前板側の表面上に、あるいは前記副前板の前記二つのフラップに対向する側の表面上であって、前記二つのフラップの少なくとも一方に対向する位置に隆起部が形成された;
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のラップフィルム収納容器。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のラップフィルム収納容器と;
前記ラップフィルムが円筒状に巻かれた前記ラップ巻回体とを備える;
ラップフィルム供給具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−101814(P2012−101814A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250532(P2010−250532)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】