説明

ラバーヒータ

【課題】加熱すべき箇所の形状に合わせて密着させつつ加熱をすることを容易に行うことができるラバーヒータを提供する。
【解決手段】
シリコンゴム層1の一面側の周縁にシリコンゴム製のパッキン2が貼り付けられている。パッキン2の内側には、ヒータ3aがシリコンゴム層3bとシリコンゴム層3cとによって両側から挟まれたラバーヒータ部3が、シリコンゴム層1に接着されている。さらに、シリコンゴム層1にはパッキン2の内側の空気を排気するための排気口4が取り付けられており、排気口4の周囲には、閉塞防止リング5が取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性を有した面状発熱体である、ラバーヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
電気抵抗式ヒータをシリコンゴムやフッ素ゴム等の耐熱ゴムで覆ったラバーヒータは、加熱対象物の表面形状に沿ってフレキシブルに密着させることができるという特性を有している(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−63755号公報
【特許文献2】実用新案登録第3133051号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のラバーヒータでは、例えば立設されたパイプを温めたり、車のフロントガラスの内側にヒータ線を貼り付けて内側から加熱したりする場合、そのままではラバーヒータが重力によって落下してしまうため、特別な治具を用いてラバーヒータを押さえつける必要があった。また、小さな曲率半径を有する曲面では、密接させようとしても、皺がよって隙間ができやすいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、どのような曲面に対しても特別な治具を用いることなくそのまま隙間なく密着させながらの加熱を容易に行うことができるラバーヒータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のラバーヒータは、屈曲可能な電気抵抗式ヒータが可撓性耐熱層によって両側から挟まれたラバーヒータ本体と、該ラバーヒータ本体の一面側の所定領域を包囲するパッキンと、該所定領域内の空気を排気するための排気口と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明のラバーヒータに用いられているラバーヒータ本体は、屈曲可能な電気抵抗式ヒータが可撓性耐熱層によって両側から挟まれた構造とされている。このため、ラバーヒータ本体を自由に屈曲させることができ、加熱したい箇所の形状に合わせてラバーヒータ本体を屈曲させることによって、密着させることができる。このため、ラバーヒータからの熱を効率よく加熱したい箇所に伝えることができる。
【0008】
また、ラバーヒータ本体の一面側には、所定領域を包囲するパッキンと、該所定領域内の空気を排気するための排気口とを備えているため、排気口から真空ポンプ等を利用して所定領域内の空気を排気することにより、加熱したい箇所付近の空気が排除され、ラバーヒータ本体は大気圧によって加熱したい箇所に強く押し付けられる。そして、ラバーヒータ本体の電気抵抗式ヒータに電流を流すことによってラバーヒータ本体が発熱し、加熱される箇所はラバー本体から圧力を受けながら加熱されることになる。
【0009】
したがって、本発明のラバーヒータによれば、どのような曲面に対しても特別な治具を用いることなくそのまま隙間なく密着させながらの加熱を容易に行うことができる。
【0010】
本発明のラバーヒータにおいて、パッキンは該ラバーヒータ本体の一面側の所定領域を包囲するものであれば、ラバーヒータ本体と別体とされていてもよいが、ラバーヒータ本体と一体になっていることが好ましい。こうであれば、加熱箇所へのパッキンの設置及びラバーヒータ本体の設置を同時に行うことができ、加熱に要する手間及び時間をさらに削減させることができる。
【0011】
また、本発明のラバーヒータでは、ラバーヒータ本体と被補修部材との間には、所定領域が排気された場合に該ラバーヒータ本体における排気口の周辺が被補修部材と密着して閉塞し、該所定領域の排気ができなくなることを防止するための閉塞防止部材が設けられていることが好ましい。こうであれば、排気口から真空ポンプ等で所定領域の空気を排気する場合、排気口の周辺のラバーヒータ本体の一部が大気圧によって押されて被補修部材に密着し、閉塞状態となってしまうことが閉塞部材によって回避できる。このため、排気口からの排気を確実に行うことができる。
【0012】
閉塞防止部材の具体的な形状としては特に限定はないが、ラバーヒータ本体と被補修部材との間であって排気口の周辺位置に、弾性体からなる閉塞防止ブロックを間隔を開けて設けたり、ドーナツ状であって中心の孔から外方に向かって外部と連通する孔が多数開けられた閉塞防止リングを排気口を中心にして取り付けたり、ラバーヒータ本体と被補修部材との間に通気性を有する布帛を挟んだりすること等が挙げられる。
【0013】
さらに、閉塞部材は、所定領域の周縁と排気口とを連通するための連通部材が設けられていることも好ましい。こうであれば、パッキンによって包囲された所定領域内の空気を排気口から排気する際、所定領域内の周縁まで確実に排気することができる。このため、所定領域内の大気圧による加圧を均一かつ確実に行うことができる。
【0014】
連通部材の具体的な形状としては、所定領域の周縁近傍から排気口近傍まで管を配設したり、通気性のある布帛を挟んだり、弾性体からなるブロック等を配設したりすること等が挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施形態のラバーヒータは、ラバーヒータ本体と、ラバーヒータ本体の一面側の所定領域を包囲するパッキンと、該所定領域内の空気を排気するための排気口とを備えている。
【0016】
<ラバーヒータ本体>
ラバーヒータ本体は、屈曲可能な電気抵抗式ヒータが可撓性耐熱層によって両側から挟まれた構造とされている。屈曲可能な電気抵抗式ヒータとしては、可撓性耐熱層によって挟まれた状態において、ラバーヒータが可撓性を発揮できるものであれば特に限定はされない。このような電気抵抗式ヒータとしては、ニクロム線等の金属からなる電熱線を平面状に配置させたヒータの他、薄膜状の電気抵抗体からなるヒータ等を用いてもよい。
【0017】
また、可撓性耐熱層としては、具体的にはシリコンゴム層やフッ素ゴム層等が挙げられる。なお、可撓性耐熱層の片方には中空断熱層が介在されていることが好ましい。こうであれば、補修を行う側と反対側に中空断熱層を配置させることにより、電気抵抗式ヒータからの熱の外部への散逸を中空断熱層による断熱効果によって少なくすることができる。また、中空断熱層を設ける代わりに、泡入りの可撓性耐熱層を用いてもよい。こうであっても、断熱硬化による熱の外部への散逸を防ぐことができる。
【0018】
可撓性耐熱層は、シリコンゴムやフッ素ゴム等の耐熱性ゴムを用いることができるが、機械的強度を高めるために耐熱繊維で強化することも好ましい。耐熱性繊維としては特に限定はないが、例えばガラス繊維や炭素繊維等を用いることができる。ただし、炭素繊維を用いる場合には、炭素繊維を介しての短絡に注意をする必要がある。この中空織物に、架橋前のゴム原料と、硬化剤と、必要に応じて適宜溶媒とを加えた混合物を含浸させ、加熱等により硬化させることにより、ゴムコーティング中空織物を製造することができる。
【0019】
<パッキン>
パッキンはラバーヒータ本体の一面側の所定領域を包囲している。パッキンの材質については、ヒータからの熱に耐えうる耐熱性を有する弾性体であって、通気性のないものであれば特に制限はない。例えば、稠密のシリコンゴムやフッ素ゴム等や、ゴムチューブの両端をつないで内部を中空にしたパッキンでもよい。
【0020】
さらに、パッキンはラバーヒータ本体と別体とされていても良いが、ラバーヒータ本体と一体とされていることが好ましい。こうであれば、補修箇所へのパッキンの設置及びラバーヒータ本体の設置を同時に行うことができ、補修の手間及び時間をさらに削減させることができる。
【0021】
<排気口>
また、本発明のラバーヒータでは、所定領域内の空気を排気するための排気口を備えている。排気口から真空ポンプ等を利用して所定領域内の空気を排気することにより、加熱したい箇所付近の空気が排除され、ラバーヒータ本体は大気圧によって加熱したい箇所に強く押し付けられる。そして、ラバーヒータ本体の電気抵抗式ヒータに電流を流すことによってラバーヒータ本体が発熱し、加熱される箇所はラバー本体から強い圧力を受けつつ加熱されることになる。したがって、本発明のラバーヒータによれば、どのような曲面に対しても特別な治具を用いることなくそのまま隙間なく密着させながらの加熱を容易に行うことができる。
【0022】
以下、本発明をさらに具体化した実施例について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
(実施例1)
実施例1のラバーヒータは、図1に示すように、略長方形状のシリコンゴム層1を備えており、シリコンゴム層1の一面側の周縁は、断面が長方形のシリコンゴム製のパッキン2が取り囲むように貼り付けられている。また、シリコンゴム層1のパッキン2が貼り付けられた側(以後シリコンゴム層1の内側という)には、ラバーヒータ部3が接着されている。ラバーヒータ部3は、図2にも示すように、つづれ折に屈曲して平面状配置されたニクロム線からなるヒータ3aが平織りのガラス繊維布帛によって強化されたシリコンゴム層3b、3cで挟まれた構造とされている。シリコンゴム層1とヒータ3aとシリコンゴム層3b、3cとがラバーヒータ本体である。
【0024】
さらに、シリコンゴム層1には、ラバーヒータ部3に近接して排気口4が取り付けられている。シリコンゴム層1の内側の排気口4の周囲には、中心に孔5aを有する断面略ドーナツ形状の閉塞防止リング5が孔5aを中心として取り付けられており、閉塞防止リング5の側面には、孔5aに連通する孔5bが放射状に多数開けられている。さらにシリコンゴム層1には、閉塞防止リング5に隣接して閉塞防止リング5と同じ厚さのシリコンゴムからなる閉塞防止板6、7が貼り付けられている。
【0025】
次に、以上のように構成された実施例1のラバーヒータの使用方法について、プリプレグを用いたFRPの補修を例に挙げて説明する。
【0026】
図3aに示すように、FRP部材10の破損部10aをグラインダーで削った後、紙やすりを用いて研磨し、研摩部10bとする(図3b)。そして研摩部10bの大きさ及び形状に合わせて補修用のプリプレグ11を切り出し、研摩部10a上に載置する(図3c)。そして、プリプレグ11をラバーヒータ部3が完全に覆うように上記実施例1のラバーヒータを被せる(図3d)。
【0027】
次に、図示しない真空ポンプに接続される吸引ホース12を排気口4に接続し、真空ポンプを駆動させて排気する。これにより、シリコンゴム層1の内側が減圧され、大気圧によってパッキン2がFRP部材10を圧縮し、パッキン2の内部の気密性を保持するとともに、ラバーヒータ部3がプリプレグ11及びFRP部材10を圧縮する(図3e)。
【0028】
ここで、閉塞防止リング5の役割は、排気口4の周辺の被補修部材と密着されることによる閉塞状態を回避することにある。すなわち、もし閉塞リング5が存在しない場合、図4に示すように、排気口4の周辺のシリコンゴム層1が大気圧によって圧縮されてFRP部材10と密着し、閉塞状態になり、排気が密着された部分から内部のみになってしまうおそれがある。この点、閉塞防止リング5があれば、排気口4の周辺のシリコンゴム層1が大気圧によって圧縮されてFRP部材10と密着したとしても、排気口4は孔5a及び孔5bを介してパッキン2の内側周辺と連通するため、閉塞状態とはならない。
閉塞防止板6、7の役割も同様である。すなわち、閉塞防止板6、7が存在することにより、シリコンゴム層1と被補修部材FRP部材10とが密着して閉塞状態になることを防止できるのである。すなわち、閉塞防止リング5及び閉塞防止板6、7が閉塞防止部材である。
【0029】
そして、ヒータ3aに通電し、加熱する。こうしてラバーヒータ部3によってプリプレグ11を押し付けながら加熱することにより、プリプレグ11は重合して研摩部10bに確実に接着される。こうして接着を行なった後、真空ポンプによる排気及びヒータ3aへの通電を停止し、ラバーヒータを撤去し、表面をグラインダーや紙やすりで研磨して修理が完了する。
【0030】
こうして、実施例1のラバーヒータによって、加熱箇所へのパッキン10の設置及びラバーヒータ本体の設置を同時に行うことができ、FRP部材10の形状に合わせてラバーヒータ部3をプリプレグ11に密着させつつ加熱をすることを容易に行うことができる。
【0031】
(実施例1の第1変形例)
実施例1のラバーヒータの第1変形例として、図5に示すように、ラバーヒータ部3とFRP部材3との間であってパッキン2の内側に、通気性のある不織布13を挟んでも良い。こうであれば、不織布13が排気のための流路となり、パッキン2の内側全体を漏れなく排気することができる。
【0032】
(実施例1の第2変形例)
実施例1のラバーヒータの第2変形例として、図6に示すように、閉塞防止リング15をアルミニウム等の金属で作製し、排気口14に形成した雄ネ14aに螺合可能とさせてもよい。こうであれば、排気口14の取り付けと閉塞防止リング15の取付を同時に行うことができる。
【0033】
この発明は上記発明の実施の態様及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のラバーヒータは、どのような曲面に対しても特別な治具を用いることなくそのまま隙間なく密着させながらの加熱を容易に行うことができる。このため、曲面ガラスへヒータ線の接着するときの加熱や、FRPの破損個所のプリプレグを用いた修理や、FRP成形品の作製に等に用いることができる。
【符号の説明】
【0035】
1、3、3a、3b、3c…ラバーヒータ本体(1、3a、3b…シリコンゴム層、3…ラバーヒータ部、3a…ヒータ)
2…パッキン
4、14…排気口
10…FRP部材(被補修部材)
5、15、6、7、13…閉塞防止部材(5、15…閉塞リング、6、7…閉塞防止板、13…不織布)
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1のラバーヒータの平面図である。
【図2】実施例1のラバーヒータのII−II矢視断面図である。
【図3】実施例1でラバーヒータを用いたFRPの補修工程を示した断面図である。
【図4】閉塞防止リングがないラバーヒータにおける排気口の閉塞状態を示す部分断面図である。
【図5】実施例1の変形例1として、閉塞防止部材として不織布を用いた場合の排気状態を示す断面図である。
【図6】実施例1の変形例2として、閉塞防止部材をねじ込み式とした部分断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲可能な電気抵抗式ヒータが可撓性耐熱層によって両側から挟まれたラバーヒータ本体と、
該ラバーヒータ本体の一面側の所定領域を包囲するパッキンと、
該所定領域内の空気を排気するための排気口と、
を備えたことを特徴とするラバーヒータ。
【請求項2】
前記パッキンは前記ラバーヒータ本体と一体になっていることを特徴とする請求項1記載のラバーヒータ。
【請求項3】
前記ラバーヒータ本体と被補修部材との間には、前記所定領域が排気された場合に該ラバーヒータ本体における前記排気口の周辺が被補修部材と密着して閉塞し該所定領域の排気ができなくなることを防止するための閉塞防止部材が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のラバーヒータ。
【請求項4】
前記閉塞防止部材によって前記所定領域の周縁と前記排気口とが連通されていることを特徴とする請求項4記載のラバーヒータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−113986(P2012−113986A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262455(P2010−262455)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(310024000)ミズホクラフト株式会社 (1)
【Fターム(参考)】