説明

ラビリンス、散乱光式煙検知器およびその射出成形型

【課題】射出成形によって一体成形されるラビリンス構成部材を備えたラビリンス用の射出成形型の強度不足を緩和ないし回避しうるようなラビリンスを提供すること。
【解決手段】検煙部本体3と、検煙部本体3を覆うように検煙部本体3に付設される本体カバー2とを含んでなる、散乱光式煙検知器の検煙部1において使用されるラビリンス13である。ラビリンス13は、検煙部本体3に対し射出成形によって一体成形される本体側ラビリンス構成部材5と、本体カバー2に対し射出成形によって一体成形されるカバー側ラビリンス構成部材9とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラビリンス、このラビリンスを有する検煙部を備えた散乱光式煙検知器およびこのラビリンスを有する検煙部を形成するための射出成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、初期火災時には不完全燃焼を生じて多量の煙が発生していることが多い。このような煙を光学的に検知し火災の発生を感知し、警報を発する散乱光式煙検知器がよく知られている。
【0003】
散乱光式煙検知器は、火災発生時に発生した煙が検煙部に流入し、流入した煙の中を通過するときの散乱光を捉えて煙を検知する方式の煙検知器である。この検煙部は、通常、発光部と受光部とを備えた検煙部本体と、この検煙部本体を覆うように付設した本体カバーとからなり、検煙部の内部には、検煙部外部からの煙は流入させるが検煙部外部からの光を遮光するような構造を有するラビリンスがその検煙部空間を形成するように設けられている。なお、光源と、受光素子は、かかる受光素子が光源から発せられる光を直接受光しないような位置関係に配置されており、また受光素子は、非火災時には光を受光せずに、火災時には煙の存在によって散乱した散乱光を受光して、煙の存在を検知することができる。
【0004】
前記した従来技術のラビリンスは、一般に射出成形によって検煙部本体または本体カバーのいずれか一方に対し一体成形されているが、実用上、問題がある。
例えば、以下の特許文献1は、ラビリンスを備えた光電式煙感知器を開示する。開示のラビリンスでは、このラビリンスを構成する各ラビリンス構成部材を、本体カバー(下面開放のカバーブロック)のみに付設している。このようなタイプのラビリンスを射出成形によって一体成形するには、複数のラビリンス構成部材を近接した状態で配置してなる、射出成形型を使用する必要がある。このため、射出成形型は、各ラビリンス構成部材が隣り合う部分の壁が薄くなり、この部分の射出成形型が強度不足になる傾向を示すという、問題点がある。
【0005】
【特許文献1】特開平02−224094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、射出成形によって一体成形されるラビリンス構成部材を備えたラビリンス用の射出成形型の強度不足を緩和ないし回避しうるような構造を有するラビリンスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、従来技術のようにラビリンスを構成する複数のラビリンス構成部材を、検煙部本体または本体カバーのいずれか一方のみに設けるのではなく、これら複数のラビリンス構成部材を、検煙部本体と本体カバーとに分割して設けることにより、ラビリンス構成部材相互間の距離を拡大させ、これによりラビリンス構成部材の隣り合う型間の壁を厚くすることができ、その結果、射出成形型の強度を向上させることができ、これにより、前記課題を解決できることを見出した。本発明は、この知見に基づき本発明が完成するに至ったのである。
【0008】
すなわち、本発明は、検煙部本体と、前記検煙部本体を覆うように前記検煙部本体に付設される本体カバーとを含んでなる、散乱光式煙検知器の検煙部において使用されるラビリンスであって、前記検煙部本体に対し射出成形によって一体成形される本体側ラビリンス構成部材と、前記本体カバーに対し射出成形によって一体成形されるカバー側ラビリンス構成部材とを備えることを特徴とするラビリンスを提供する。
また好適には、前記本体側ラビリンス構成部材は、前記検煙部本体と前記本体カバーとの取付け方向であって前記検煙部本体内面から前記本体カバーへ向かう方向に延在して前記本体カバーに当接し、前記カバー側ラビリンス構成部材は、前記取付け方向であって前記本体カバー内面から前記検煙部本体へ向かう方向に延在して前記検煙部本体に当接していることを特徴とする。
さらに好適には、前記本体カバーは、前記カバー側ラビリンス構成部材の前記内面を形成する平板と、前記平板を包囲するように連設された側面とを備え、前記カバー側ラビリンス構成部材は、前記本体カバーの前記側面に当接していることを特徴とする。
さらに好適には、当該ラビリンスは、複数の前記本体側ラビリンス構成部材および複数の前記カバー側ラビリンス構成部材から構成され、これら本体側ラビリンス構成部材およびカバー側ラビリンス構成部材は、交互に並置されていることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、その第2の態様によれば、本発明のラビリンスを有する検煙部を備えていることを特徴とする散乱光式煙検知器を提供する。
さらに本発明は、その第3の態様によれば、本発明のラビリンスを構成する本体側ラビリンス構成部材を備えた検煙部本体および本発明のラビリンスを構成するカバー側ラビリンス構成部材を備えた本体カバーを射出成形によって形成するための型であることを特徴とする散乱光式煙検知器・検煙部の射出成形型を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、本発明の構成要件、特に、本体側ラビリンス構成部材およびカバー側ラビリンス構成部材のような検煙部本体側と本体カバー側とに分割して設けたラビリンス構成部材を備えたラビリンス構造を採用することにより、隣り合うラビリンス構成部材相互の距離を拡大することができ、これによりラビリンス構成部材の隣り合う型間の壁を厚くすることができ、その結果射出成形型の強度不足を緩和ないし回避できるという、技術的効果を奏することができたのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
前記したように、本発明は、検煙部本体3と、検煙部本体3を覆うように検煙部本体3に付設される本体カバー2とを含んでなる、散乱光式煙検知器21の検煙部1において使用されるラビリンス13であって、検煙部本体3に対し射出成形によって一体成形される本体側ラビリンス構成部材5と、本体カバー2に対し射出成形によって一体成形されるカバー側ラビリンス構成部材9とを備えることを特徴とするラビリンス13を提供する(番号は、添付の図1〜5を参照)。
ここに、「検煙部本体3を覆うように検煙部本体3に付設される本体カバー2」なる用語には、網部14が本体カバー2の主要部を構成する構造(以下の図3、参照)の他に、少なくとも、カバー側ラビリンス構成部材9と共に、別部材としての網部を保持しうるような構造を有する態様も包含される(図示せず)。
【0012】
次に、添付の図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態を説明することにより、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、これら実施形態に限定されるものではない。
【0013】
<散乱光式煙検知器>
図1は、本発明の実施形態である散乱光式煙検知器21を示す斜視図である。
図1に示すように、散乱光式煙検知器21は、検知器本体22と検煙部1と保護カバー23とブザー24とから構成され、検知器本体22には、散乱光式検知器が正常に動作するか否かのテスト用およびブザー24一次停止用のスイッチ25/引き紐26が付設される。また、検知器本体22には、ブザー24/検煙部1用の電池と回路基板が収納される。また、検査器本体22は、その背面が天井面や壁面等に予め取り付けた取付けベース(図示せず)に面接触するよう、付設される。
【0014】
<ラビリンスを備えた検煙部>
図2は、図1に示した散乱光式煙検知器21を構成する検煙部1の検煙部本体3を示す斜視図である。また、図3は、図1に示した散乱光式煙検知器21を構成する検煙部1の本体カバー2を示す斜視図である。
図2に示すように、この実施形態の検煙部本体3は、内面4を有する円形平板状の底板であり、また、当該検煙部本体3に対し射出成形によって一体成形される複数の本体側ラビリンス構成部材5と、LED(特に近赤外線域のもの)などの光源を付設するための発光部6と、フォトダイオード、フォトトランジスタ、シリコン光電池などのシリコン系素子からなる受光素子を付設するための受光部7と、検煙部本体3と本体カバー2(図3、参照)とを嵌合により結合させるための突起8とを備える。なお、本体側ラビリンス構成部材5は、前記底板の内面4から図中上方に立設されている。
【0015】
検煙部本体3の発光部6、受光部7および突起8は、いずれも検煙部本体3に対し射出成形によって一体成形される樹脂材料からなるものであるが、別部品として形成され接着剤、嵌合などで検煙部本体3に取り付けられてもよい。また、突起8を設けずに、検煙部本体3と本体カバー2とを、例えば接着剤のみで結合してもよい。また、検煙部本体3の内面4を有する底板の形状は、略円形であるが、三角形、四角形などの多角形や、楕円形としてもよい。また、検煙部本体3を2分割など複数に分割して、その分割した部品を嵌合や接着などにより結合して1つの検煙部本体を形成してもよい。
【0016】
図3に示すように、本体カバー2は、その外形が切頭円錐体の形態を有し、内面12を形成する円形の平板(底板)と、この平板を包囲するように連設された側面(網部14)とを有する。さらに詳しくは、本体カバー2は、当該本体カバー2(内面12)に対し射出成形によって一体成形される複数のカバー側ラビリンス構成部材9と、発光部6を覆う発光部カバー6’と、前記受光部7を覆う受光部カバー7’と、防虫のための網部(側面)14とを備えている。また、本体カバー2の発光部6’近傍の網部14の外周には突起10が設けられている。突起10は、検煙部本体3と本体カバー2とを結合させるための位置を明確にするためのものであり、突起10を目印とすることにより検煙部本体3と本体カバー2との相互の結合位置を容易に特定できる。なお、突起10は必ずしも必要なものではない。また、網部14は、外部からの煙は流入させるが、外部からの蚊、ハエなどの虫の侵入を防止するためのものである。網部14の網目は、四角形状の微小な隙間として形成されているが、円状の微小な隙間として形成されていてもよい。なお、ラビリンス構成部材9は、切頭円錐体の天井部分に相当する底板の内面12から図中下方に立設されている。検査部本体2の底板と同様に、本体カバー底板は、円形の他に、三角形、四角形などの多角形や、楕円形であってよく、これに対応して検煙部本体3は三角錐や四角錐などであってよい。なお、本体カバー2側面(網部14)は、図示した実施形態のように成形の容易性の観点から、傾斜した形態が好適であるが、側面が傾斜していない円柱形態の本体カバー2であってもよい。
【0017】
また、カバー側ラビリンス構成部材9の本体カバー2側の側面は、本体カバー2側面(網部14)まで延在し、本体カバー2側面(網部14)と当接している(位置11)。そして、カバー側ラビリンス構成部材9と本体カバー2側面(網部14)とは、この当接部(位置11)において連続するように射出成形により一体成形されている。これにより、比較的強度の低い本体カバー2側面(網部14)の強度向上を図ることができる。ただし、カバー側ラビリンス構成部材9と本体カバー2側面(網部14)とは、必ずしも射出成形により一体成形されている必要はなく、少なくとも当接するようにしておけば、本体カバー2側面(網部14)の強度向上を図ることができる。なお、カバー側ラビリンス構成部材9と本体カバー2側面(網部14)とを必ずしも当接するようにしておく必要はない。
【0018】
また、発光部カバー6’は、検煙部本体3の発光部6に配置された光源に被せて光源を固定するためのものであり、受光部カバー7’は、検煙部本体3の受光部7に配置された受光素子に被せて受光素子を固定するためのものである。これら発光部カバー6’および受光部カバー7’は、検煙部本体3の発光部6および受光部7のみを用いて、例えば嵌合、または接着剤による接着などにより光源および受光素子を検煙部本体3に付設すれば、本体カバー2に特に設ける必要はない。同様に、検煙部本体3の発光部6および受光部7は、発光部カバー6’および受光部カバー7’のみを用いて、例えば嵌合、または接着剤による接着などによって光源および受光素子を本体カバー2に付設すれば、検煙部本体3に特に設ける必要はない。
【0019】
また、本発明の実施形態では、発光部カバー6’、受光部カバー7’、網部14および突起10は、いずれも本体カバー2に対し射出成形によって一体成形される樹脂材料からなるものであるが、別部品として形成され接着剤、嵌合などで本体カバー2に取り付けられてもよい。また、本体カバー2の内面12を有する天井板の形状は、前記した検煙部本体3の場合と同様に、円形であるが、三角形、四角形などの多角形や、楕円形としてもよい。なお、検煙部本体3の内面4を形成する底板と、本体カバー2の内面12を形成する天井板とは、相互に同じ形状としても、相互に異なる形状としてもよい。また、本体カバー2を2分割など複数に分割して、その分割した部品を嵌合や接着などにより結合して1つの本体カバーを形成してもよい。
【0020】
図4は、本発明の実施形態であるラビリンスを備えた検煙部1の組み立て前の状態を示し、(a)は、図3に示した本体カバー2のB−B断面図であり、(b)は、図2に示した検煙部本体3のA−A断面図である。また、図5は、組み立て後の検煙部1(図1、参照)を模式的に示す水平断面図である。
【0021】
図2、図4(a)に示すように、各本体側ラビリンス構成部材5は、検煙部本体3と本体カバー2との取付け方向であって検煙部本体内面4から本体カバー2へ向かう方向Uに沿って延在している。また、図3、図4(b)に示すように、各カバー側ラビリンス構成部材9は、検煙部本体3と本体カバー2との取付け方向であって本体カバー内面12から検煙部本体3へ向かう方向Dに沿って延在している。光源および受光素子を配置した検煙部本体3と本体カバー2とを突起10を目印にして重ね合わせて嵌合することにより、検煙部本体3と本体カバー2とからなる検煙部1が形成され、検煙部1の内部に光源および受光素子が配置される。これら本体側ラビリンス構成部材5およびカバー側ラビリンス構成部材9は、以上のように延在して、各々、本体内面およびカバー内面に当接している。ラビリンスの機能、特に遮光作用に対し、このような当接状態が好適である。
【0022】
図5に示すように、検煙部1は、検煙部本体3と本体カバー2とに分割して設けた複数の本体側ラビリンス構成部材5および複数のカバー側ラビリンス構成部材9から、外部からの煙は流入させるが外部からの光は遮光するラビリンス13が形成され、当該ラビリンス13の内側に検煙部空間100が形成されている。この実施形態においては、検煙部本体3に設けられた本体側ラビリンス構成部材5と、本体カバー2に設けられたカバー側ラビリンス構成部材9とは、略同数であるが、同数に限られることはなく、本体側ラビリンス構成部材5をカバー側ラビリンス構成部材9よりも多くしてもよいし、カバー側ラビリンス構成部材9を本体側ラビリンス構成部材5よりも多くしてもよい。
以上、ラビリンス構成部材を検煙部本体と本体カバーとに分割して設けることにより、ラビリンス構成部材の隣り合う型間の壁を厚くすることが可能となり射出成形型の強度不足を緩和ないし回避できた。
【0023】
次に、本発明の特に好適な実施形態であるラビリンスについて説明する。
図6は、テーパ付きラビリンス構成部材の縦断面を模式的に示し、(a)は、従来技術に相当するラビリンス構成部材9aを示す模式的断面図である一方、(b)は、本発明の実施形態に相当するラビリンス部材5b,9bを示す模式的断面図である。
従来技術によれば、図6(a)に示すように、射出成形によって形成されるラビリンスは、通常、本体カバー2aのみから延在する複数のラビリンス構成部材9aから構成され、型からの取り出しのためテーパ付きである。このように、従来技術では、本体カバー2aのみから延在するラビリンス構造であるため、その隣り合うラビリンス構成部材9aによって形成される煙通路101aは、基部(本体カバー2aへのラビリンス構成部材9aの付設部分)で狭く、基部からラビリンス構成部材9aの延在する方向に向かって広がり、煙通路101aの断面積が不均一となっている。このため、ラビリンス構成部材の延在する方向に沿って煙の流入量が不均一になり、その結果、煙検出が不安定になるという付加的な問題があったのである。この問題を解決したのが本発明の特に好適な実施形態である(図6(b)、参照)。
【0024】
すなわち、付加的な前記問題点は、複数のラビリンス構成部材を検煙部本体と本体カバーとに分割して設ける本発明の必須要件に加え、これら複数のラビリンス構成部材を、交互に並置させることによって、解決することができた。
【0025】
図6(b)に示すように、複数の本体側ラビリンス構成部材5bおよび複数のカバー側ラビリンス構成部材9bとは、検煙部空間が形成されるよう交互に並置されている。したがって、これら各ラビリンス構成部材5b,9bは、検煙部空間を形成するような方向(以下、検煙部空間形成方向)に沿って交互に、並置されている。例えば、図5に示す実施形態では、円形の天井板/底板から延在するこれら各ラビリンス構成部材は、円周方向に沿って交互に並置することができる。好適な実施形態では、かかる検煙部空間形成方向(円周方向)は、検煙部本体と本体カバーとの前記取付け方向と略直交するような方向である。
このように、テーパ付きラビリンス構成部材(5b,9b)を、検煙部本体3b側と本体カバー2b側とに分割しかつ交互に並置することによって、隣り合うラビリンス構成部材(5bと9b)によって形成される煙通路101bの断面積を均一化させることができる。すなわち、本発明の特に好適な実施形態では、煙通路101bの幅を、略等しくすることができ、これにより、ラビリンス13b間を通って流入する煙の流入量を均一化でき、その結果、煙の検出を安定化することができた。このようにして、図6(b)、図5などに示す実施形態のラビリンス13b(13)は、前記した付加的な問題をも解決することができたのである。
【0026】
なお、前記実施形態と同様に、本体側ラビリンス構成部材5bは、検煙部本体3bに対し射出成形により一体成形されたラビリンス構成部材であり、カバー側ラビリンス構成部材9bは、本体カバー2bに対し射出成形により一体成形されたラビリンス構成部材であり、検煙部本体3b側と本体カバー2b側とに分割して設けられたラビリンス構成部材(5b、9b)の集合体としてラビリンス13bが形成されている。
【0027】
図7は、本発明のラビリンスの変形例を示し、(a)は、第1変形例を示す模式図であり、(b)は、第2変形例を示す模式図である。
<第1変形例>
図7(a)に示すように、ラビリンス13cを構成する本体側ラビリンス構成部材5cは、検煙部本体内面4cから、検煙部本体内面4cと本体カバー内面12cとの間の略中央位置まで延在する一方、ラビリンス13cを構成するカバー側ラビリンス構成部材9cは、本体カバー内面12cから、本体カバー内面12cと検煙部本体内面4cとの間の略中央位置まで延在する。本体側ラビリンス構成部材5cの端部とカバー側ラビリンス構成部材9cの端部とを当接させて、ラビリンス構成部材(5c、9c)の集合体としてラビリンス13cを形成する(以下、この変形例を当接変形例という)。
【0028】
前記した本発明の実施形態は、ラビリンス構成部材が、検煙部本体内面4c(または、本体カバー内面12c)から、本体カバー内面12c(または、検煙部本体内面4c)まで延在しており、この実施形態に比し、当接変形例のラビリンス構成部材(5c、9c)は、それぞれの長さを短縮させることができる。したがって、当接変形例は、検煙部空間形成方向の強度に関してやや好適ではないものの、ラビリンス構成部材(5c、9c)のそれぞれの型の長さを短縮することができ、長くて折れ易いラビリンス構成部材を用いた前記実施形態に比し、射出成形型の強度不足を緩和ないし回避できるという、技術的効果を奏することができる。
【0029】
なお、図7(a)において点線で示すように、本体側ラビリンス構成部材5cを、カバー側ラビリンス構成部材9cに対して検煙部空間形成方向に所定の距離だけずらすことにより、従来技術が有する煙通路101c断面積の不均一性を改善することができる。
【0030】
<第2変形例>
第2変形例は、第1変形例と同様に、本体側ラビリンス構成部材5dと、カバー側ラビリンス構成部材9dとが当接しているが、異なる長さの構成部材を当接させている点で、第1変形例とは、異なっている。このような構成にすることにより、種々の長さの材料を適用でき、設計の自由度を拡大できる利点がある。なお、第2変形例の他の構成およびそれによる効果は、前記第1変形例と同じであって、本体カバー内面12dは本体カバー内面12cに対応し、ラビリンス13dはラビリンス13cに対応し、検煙部本体内面4dは検煙部本体内面4cに対応する。
【0031】
<射出成形型の実施形態>
本発明の実施形態である検煙部の射出成形型は、前記したような図2〜図5に示す本体側ラビリンス構成部材5を備えた検煙部本体3およびカバー側ラビリンス構成部材9を備えた本体カバー2を射出成形によって成形するための型であり、一つの型に一つの検煙部本体3(または一つの本体カバー2)を形成する型であってもよいし、一つの型に複数の検煙部本体3(または複数の本体カバー2)を形成する型であってもよい。また、一つの型で一対の検煙部本体3および本体カバー2を形成する型であってもよいし、一つの型で複数の検煙部本体3および複数の本体カバー2を形成する型であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のラビリンスは、このラビリンスを備えた散乱光式煙検知器として、住宅、商業施設用ビル、学校・病院などの公益施設、工場などの様々な建築物で広く利用することができる。特に、住宅用火災警報器として利用する散乱光式煙検知器として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態である散乱光式煙検知器を示す斜視図である。
【図2】図1に示した散乱光式煙検知器を構成する検煙部の検煙部本体を示す斜視図である。
【図3】図1に示した散乱光式煙検知器を構成する検煙部の本体カバーを示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態であるラビリンスを備えた検煙部の組み立て前の状態を示し、(a)は、図3に示した本体カバーのB−B断面図であり、(b)は、図2に示した検煙部本体のA−A断面図である。
【図5】組み立て後の検煙部を模式的に示す水平断面図である。
【図6】テーパ付きの複数のラビリンス構成部材を示し、(a)は、従来技術に相当するラビリンス構成部材を示す模式的断面図である一方、(b)は、本発明の実施形態に相当するラビリンス部材を示す模式的断面図である。
【図7】本発明のラビリンスの変形例を示し、(a)は、第1変形例を示す模式図であり、(b)は、第2変形例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0034】
1:検煙部、2:本体カバー、3:検煙部本体、5:本体側ラビリンス構成部材、9:カバー側ラビリンス構成部材、13:ラビリンス、21:散乱光式煙検知器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検煙部本体と、前記検煙部本体を覆うように前記検煙部本体に付設される本体カバーとを含んでなる、散乱光式煙検知器の検煙部において使用されるラビリンスであって、
前記検煙部本体に対し射出成形によって一体成形される本体側ラビリンス構成部材と、
前記本体カバーに対し射出成形によって一体成形されるカバー側ラビリンス構成部材とを備えることを特徴とするラビリンス。
【請求項2】
前記本体側ラビリンス構成部材は、前記検煙部本体と前記本体カバーとの取付け方向であって前記検煙部本体内面から前記本体カバーへ向かう方向に延在して前記本体カバーに当接し、
前記カバー側ラビリンス構成部材は、前記取付け方向であって前記本体カバー内面から前記検煙部本体へ向かう方向に延在して前記検煙部本体に当接していることを特徴とする請求項1記載のラビリンス。
【請求項3】
前記本体カバーは、前記カバー側ラビリンス構成部材の前記内面を形成する平板と、前記平板を包囲するように連設された側面とを備え、
前記カバー側ラビリンス構成部材は、前記本体カバーの前記側面に当接していることを特徴とする請求項2記載のラビリンス。
【請求項4】
当該ラビリンスは、複数の前記本体側ラビリンス構成部材および複数の前記カバー側ラビリンス構成部材から構成され、
これら本体側ラビリンス構成部材およびカバー側ラビリンス構成部材は、交互に並置されていることを特徴とする請求項1〜3の1つに記載のラビリンス。
【請求項5】
請求項1〜4の1つに記載のラビリンスを有する検煙部を備えていることを特徴とする散乱光式煙検知器。
【請求項6】
請求項1〜4の1つに記載の本体側ラビリンス構成部材を備えた検煙部本体および請求項1〜4の1つに記載のカバー側ラビリンス構成部材を備えた本体カバーを射出成形によって形成するための型であることを特徴とする散乱光式煙検知器・検煙部の射出成形型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−242634(P2008−242634A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−79815(P2007−79815)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(593122789)ユーテック株式会社 (118)
【Fターム(参考)】