説明

ラベルの熱転写方法並びに熱転写装置

【課題】ラベルを内装部品表面に熱転写する際の冷却時間の短縮化並びにラベルの剥離不良を確実に防止することを課題とする。
【解決手段】内装部品(センターピラーガーニッシュ)10表面にコーションラベル21を熱転写装置30を使用して貼付する際、コーションラベル21を加熱ヒーター40により加熱圧着処理した後、コーションラベル21と加熱ヒーター40との間にヒーターカバー60を介在させて、加熱ヒーター40の冷却工程時における温度低下防止を図りつつ、ヒーターカバー60に組み込んだ冷却機構を活用し、ヒーターカバー60のラベル対向面60aに開設した開口63を通じてコーションラベル21の表面に冷却用エアを吹き付け、冷却用エアが滞ることなく、スムーズな流れを確保することで、効率の良い熱交換を行ない、冷却時間の短縮化並びにラベルの剥離不良を皆無とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コーションラベル等のラベルを内装部品の表面所定位置に熱転写するラベルの熱転写方法並びに熱転写装置に係り、ラベルを熱圧着加工した後の冷却工程において、冷却時間を短縮化でき、かつ剥離不良等を確実になくし、品質性能を高めることができるラベルの熱転写方法並びに熱転写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図14は車両のフロントドアとリヤドアとの中間に位置するセンターピラーパネルの室内面に装着されるセンターピラーガーニッシュ1を示す正面図であり、この種センターピラーガーニッシュ1は、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ABS樹脂等の汎用の熱可塑性樹脂を射出成形、あるいはモールドプレス成形することにより所要形状に成形されている。このセンターピラーガーニッシュ1の中央には、図示しないシートベルトのアンカー位置を上下方向に調節できる調節長孔2が開設され、その上方には「SRS AIR BAG」等の装備システムを表示する文字情報3が転写されている。
【0003】
上記文字情報3の熱転写方法の従来例及びその方法に使用する従来の熱転写装置の構成について以下に説明する。熱転写装置4は、図15乃至図17に示すように、コーション事項等の文字情報3を仮接着したコーションラベル3aをセンターピラーガーニッシュ1の貼付面に所定プレス圧及び所定温度で熱圧着するための加熱ヒーター5と、コーションラベル3aを材料セット位置からセンターピラーガーニッシュ1の貼付面まで搬送するラベルセット枠6と、製品セット時の過熱防止と、冷却時の加熱ヒーター5における温度低下防止を目的として設定されたヒーターカバー7と、コーションラベル3aを熱圧着加工した後、冷却用エアにより冷却するための冷却管8とから構成されている。
【0004】
そして、この熱転写装置4を使用して、センターピラーガーニッシュ1の表面所定位置にコーション事項等の文字情報3を貼り付ける熱転写方法についてその概要を説明する。まず、図15,図16に示すように、センターピラーガーニッシュ1において製品表面を下側に向けて所定位置にセットした後、ヒーターカバー7を外部に退避するように移動させると同時に、コーションラベル3aを保持するラベルセット枠6が図15,図16中矢印方向に搬送されて、センターピラーガーニッシュ1の貼付面に位置決めされる。そして、センターピラーガーニッシュ1の所定位置にコーションラベル3aを重ね合わせた状態で加熱ヒーター5が昇降シリンダ5aの駆動により上昇し、コーションラベル3aが所定プレス圧、所定温度でセンターピラーガーニッシュ1の製品表面に熱圧着加工される。
【0005】
その後、加熱ヒーター5が下降するとともに、ラベルセット枠6も外部に退避した後、ヒーターカバー7が退避位置からコーションラベル3aと加熱ヒーター5との間に侵入し、図17に示すように冷却管8から冷却用エアを矢印に示すように吹き付け、コーションラベル3aに対して冷却を行なった後、製品を取り出して、センターピラーガーニッシュ1の製品表面に文字情報3を転写させ、転写済みのコーションラベル3aを剥がして熱転写加工を完了させる。コーションラベル3aの熱転写方法の従来例については、特許文献1に詳細に記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−127255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、コーションラベル3aをセンターピラーガーニッシュ1のような自動車用内装部品の表面に熱転写する際に使用する熱転写装置4は、コーションラベル3aを熱圧着する加熱ヒーター5と、コーションラベル3aをセットするためのラベルセット枠6と、熱圧着処理したコーションラベル3aを冷却するための冷却管8から構成されているが、製品セット時の過熱防止と、冷却時の加熱ヒーター5の温度低下防止を兼用するためのヒーターカバー7は必要不可欠なパーツである。
【0008】
ここで、加工対象となるセンターピラーガーニッシュ1の製品表面とヒーターカバー7との隙間(図15中符号dで示す)は1〜5mmに設定され、この手狭なスペース内に冷却管8から冷却用エアを吹き付けるため、センターピラーガーニッシュ1の製品表面とコーションラベル3aとの間に冷却用エアが入り込み、接着剤が乾く前にコーションラベル3aが剥離してしまう恐れがある。更に、コーションラベル3aを冷却する際、効率良く冷却するには、コーションラベル3aの正面から冷却用エアを吹き付けることが望ましいにもかかわらず、ヒーターカバー7が障害となり、冷却管8の最適ポジションをとることができず、かつ冷却用エアの流れが外方から中央に向かうため、エアが滞り易く、冷却効率が悪化する傾向にある。そのため、冷却時間が長期化するという問題点が指摘されている。
【0009】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、自動車用内装部品の表面にコーションラベル等のラベルを熱転写するラベルの熱転写方法並びに熱転写装置において、ラベルを内装部品の製品表面に熱圧着処理した後、冷却する際の冷却時間を短縮化でき、かつ剥離不良を皆無とでき、品質性能を高めたラベルの熱転写方法並びに熱転写装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明者は、鋭意研究の結果、従来から冷却用エア配管のポジショニングにおいて障害となっていたヒーターカバーの内部に冷却用エアを通し、ヒーターカバーのラベル対向面に設けた開口を通してラベルの正面に冷却用エアを吹き付けることで、ラベルとヒーターカバーとの間の手狭な間隙内に冷却用エアの理想的な流れを達成することができることに着目し、本発明を解決するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、内装部品の表面所定位置にラベルを位置決めし、加熱ヒーターによる熱圧着加工を施し、ラベルに仮接着されている文字情報を熱転写するラベルの熱転写方法において、所望の文字情報を仮接着したラベルをラベルセット枠を介して内装部品の所定位置に位置決めした後、加熱ヒーターを昇降シリンダの駆動により上昇させ、上記ラベルを内装部品の表面に加熱押圧し、その後、加熱ヒーターを後退させて、ラベルと加熱ヒーターとの間にヒーターカバーを投入して、加熱ヒーターの冷却工程での温度低下を防止しつつ、ヒーターカバーに接続された冷却用エア配管からヒーターカバーのエア通路を経由してヒーターカバーのラベル対向面に開設した開口からラベル正面に向けて冷却用エアを吹き付け、このラベルとヒーターカバーとの間の手狭なスペース内で冷却用エアが滞ることなくラベルの冷却を行なうことを特徴とする。
【0012】
更に、本発明方法に使用する熱転写装置は、内装部品の表面所定位置にラベルを熱圧着し、ラベルに仮接着された文字情報を内装部品の表面に熱転写するラベルの熱転写装置において、前記熱転写装置は、昇降シリンダの駆動により上下方向に駆動され、内装部品の表面に対してラベルを所定プレス圧、所定温度で熱圧着する加熱ヒーターと、ラベルをセット位置から内装部品の貼付位置まで搬送するラベルセット枠と、上記加熱ヒーターの上昇動作時には外部に退避して、加熱ヒーターの後退時にはラベルの貼付位置まで進出し、製品セット時の過熱防止と、冷却時の加熱ヒーターの温度低下防止を目的として設定されたヒーターカバーとから構成されており、上記ヒーターカバーには、冷却用エア配管が接続されるとともに、冷却用エアを案内する冷却用エア通路が内部に形成され、かつ、ラベル対向面に開口が開設されており、ラベルの冷却工程において、冷却用エア配管からヒーターカバー内の冷却用エア通路に供給される冷却用エアは、ヒーターカバーのラベル対向面に開設した開口からラベルの表面に吹き付けられることにより、冷却用エアのスムーズな流れを確保するようにしたことを特徴とする。
【0013】
ここで、熱転写装置は、加熱ヒーター、ラベルセット枠、冷却機構を組み込んだヒーターカバーとから構成されている。加熱ヒーターは、ヒーター支持体が昇降シリンダに連結され、昇降シリンダの伸縮動作により、所定ストローク上下動作を行ない、所定プレス圧及び所定温度で内装部品に対してラベルを熱圧着処理する。また、ラベルセット枠は、貼付対象となるラベルを保持して、セット位置から貼付位置まで搬送機構により搬送して、正規の貼付位置にラベルの位置決めを行なう。更に、ヒーターカバーは、ラベルの位置決め及び圧着加工時には、貼付位置から後退し、加熱ヒーターと干渉しない位置まで退避しており、加熱ヒーターの熱圧着加工が終了した段階で、加熱ヒーターとラベルとの間に位置決めされるため、ヒーターカバーについても搬送機構を備えており、更にこのヒーターカバーには冷却機構が組み込まれている。すなわち、ヒーターカバーには、外部の冷却用エアの供給源から冷却用エア配管が接続されて、ヒーターカバーの内部に冷却用エアが供給され、ヒーターカバー内部の冷却用エア通路からカバー対向面に開設されている開口を通して冷却用エアがラベル正面に向けてエアブローされる。また、ラベル対向面に開設される開口の位置や、開口の個数については、転写範囲を拡大させるために、ラベルのほぼ全面に対応するように複数の開口を設けても良いが、部分的に偏らせて開口を設けても良い。
【0014】
そして、自動車用内装部品としては、センターピラーガーニッシュ、サンバイザ、ドアトリム等、コーション事項等の文字情報を熱転写により貼り付けられる部品全般に適用できる。そして、ラベルの熱転写方法は、以下の(1)〜(4)の各工程から構成されている。
【0015】
(1)内装部品及びラベルの位置決め工程
熱転写装置における加熱ヒーターの上方位置に、ラベルの貼付対象となる内装部品が位置決めされる。そして、内装部品と加熱ヒーターとの間には、ヒーターカバーが位置しており、内装部品のセット時に加熱ヒーターからの熱の影響を製品表面に与えないようにしている。そして、所定位置に内装部品が位置決めされた後、ヒーターカバーは加熱ヒーターと干渉しない位置まで後退する。併行して、ラベルセット枠に保持されたラベル(コーション事項等の文字情報を仮接着したラベル)がセット位置から貼付位置まで搬送され、内装部品のラベル貼付面にラベルが位置決めされる。
【0016】
(2)加熱ヒーターによるラベルの熱圧着工程
内装部品のラベル貼付面に対してラベルが精度良く位置決めされた後、加熱ヒーターが昇降シリンダの駆動により上昇して、所定プレス圧、所定温度でラベルを内装部品の表面に加熱押圧する熱圧着加工を施す。加熱ヒーターの温度は、100±10℃に設定され、実際のヒーターの表面温度は70〜100℃に調整されている。また、加熱時間は5±3秒に設定されている。
【0017】
(3)熱圧着加工後のラベルの冷却工程
所定時間加熱ヒーターによる熱圧着加工が施された後、加熱ヒーターは昇降シリンダの収縮動作により下降するとともに、ラベルを保持していたラベルセット枠も外方に退避する。そして、それと併行して、ヒーターカバーがラベルと加熱ヒーターとの間に投入され、ヒーターカバーに接続された冷却用エア配管からヒーターカバー内部の冷却用エア通路に冷却用エアが供給され、ラベル対向面に開設した開口を通して冷却用エアがラベルの正面に向けてエアブローが行なわれる。この時、冷却用エアは、ラベルとヒーターカバーとの間という狭いスペース内にもかかわらず、中央から外方に向けて冷却用エアの理想的な流れが期待できる。
【0018】
(4)製品取り出し後の転写済みラベルの剥がし工程
冷却工程により接着剤を乾燥させた後、製品を取り出し、転写済みのラベルを剥がすことで、製品表面にコーション事項等の文字情報のみを転写させることができる。
【0019】
以上の構成から明らかなように、本発明に係るラベルの熱転写方法は、特に、ヒーターカバーに冷却機構を組み込んだ装置を使用して、ラベルに熱圧着加工を施した後、ラベルと加熱ヒーターとの間にヒーターカバーが投入され、冷却用エア配管を通じて、ヒーターカバー内のエア通路に冷却用エアが供給されてラベル対向面に開設した開口を通じてラベル表面に冷却用エアをエアブローし、冷却用エアが滞ることなく冷却用エアの流れを制御するというものであるから、従来のように、内装部品表面とラベルとの間にエアが入り込んで、ラベルの剥離不良を招くことがなく、また、冷却用エアが滞り、冷却効率を低下させることがないため、少ない時間で冷却効率を飛躍的に高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明した通り、本発明に係るラベルの熱転写方法並びに熱転写装置は、冷却機構を組み付けたヒーターカバーを使用して、内装部品のラベル貼付面にラベルを圧着加工処理した後、ヒーターカバーを挿入して冷却工程時において加熱ヒーターの温度低下を防止することができる。更に、ヒーターカバーに組み込んだ冷却機構により、ラベル対向面の開口からラベル正面に向けて冷却用エアをブローして、冷却用エアが滞ることなく効率良く流れるようにエア流れを制御できるため、ラベルの剥離不良を招くことがなく、剥離不良等の不良率を大幅に低減することができるとともに、冷却効率を著しく高めることができ、加工時間を大幅に短縮することができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係るラベルの熱転写方法並びに熱転写装置の好適な実施例について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚、念のため付言すれば、本発明の要旨は特許請求の範囲に記載した通りであり、以下に説明する実施例の内容は、本発明の一例を単に示すものに過ぎない。
【実施例】
【0022】
図1は本発明を適用して文字情報を転写したセンターピラーガーニッシュを示す正面図、図2は同センターピラーガーニッシュにおける文字情報の転写箇所の構成を示す断面図、図3は本発明に係るラベルの熱転写装置の全体構成を示す概要図、図4は同熱転写装置におけるヒーターカバーをラベル側からみた平面図、図5は同熱転写装置におけるラベルセット枠とヒーターカバーとの関係を示す説明図、図6乃至図12は、本発明に係るラベルの熱転写方法の各工程を示す説明図、図13(a),(b)は本発明に係る熱転写装置におけるヒーターカバーの変形例を示す各説明図である。
【0023】
図1,図2において、車両の側壁部の中央に位置するセンターピラーパネルの室内面に装着されるセンターピラーガーニッシュ10は、中央に図示しないシートベルトのアンカー位置を上下方向に調節するための調節長孔11が開設されており、調節長孔11の上方に「SRS AIR BAG」なる装備システムを表示する文字情報20が転写されている。尚、センターピラーガーニッシュ10は、図2に示すように、樹脂芯材10aの表面に表皮10bを貼付して構成されており、樹脂芯材10aの素材としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等がある。また、表皮10bとしては、TPO(サーモプラスチックオレフィン)樹脂シート、塩ビシート等の合成樹脂シートが使用でき、樹脂芯材10aの射出成形時に表皮10bが一体成形されている。
【0024】
ところで、本発明の特徴は、装備システムやコーション事項等の文字情報20をセンターピラーガーニッシュ10の表面に熱転写方法により転写する際、加工時間の短縮化が図れるとともに、剥離不良等がほぼ皆無となり、品質性能に優れ、加工時間を短縮できることからコストも低減することができる。そして、文字情報20を含めたコーションラベル21を熱転写により貼付する際に使用する熱転写装置30の全体構成について、図3乃至図5を基に説明する。まず、図3に示すように、熱転写装置30は、センターピラーガーニッシュ10のラベル貼付面に対してコーションラベル21を熱圧着するための加熱ヒーター40と、コーションラベル21をセット位置から貼付位置まで搬送するために使用するラベルセット枠50と、図3中紙面と直交する方向に搬送されるヒーターカバー60とから構成されており、特に、このヒーターカバー60に冷却機構を組み付けたことが本発明方法に使用する熱転写装置30の構成上の特徴である。
【0025】
すなわち、ヒーターカバー60は、図示しない搬送機構により、図5中矢印方向に移動でき、使用位置と非使用位置との間で移動できるとともに、図3に示すように、冷却用エア配管61と接続され、冷却用エア配管61を通じて外部の冷却用エア供給源から冷却用エアがヒーターカバー60内に設けた冷却用エア通路62に供給されている。そして、供給された冷却用エアは、ヒーターカバー60のラベル対向面60aに開設された開口63を通じて外部にエアブローされる。特に、コーションラベル21の貼付対象となるセンターピラーガーニッシュ10の製品表面とヒーターカバー60との間が1〜5mmという狭いスペースで冷却用エアがエアブローされるため、図4中矢印で示す冷却用エアの流れが促進され、冷却用エアが滞ることなく、常にコーションラベル21との間で効率の良い熱交換が行なわれ、冷却時間の大幅な短縮が期待できる。更に、開口63を通じてコーションラベル21の正面にエアブローされるため、冷却用エアが従来のように製品表面とラベルとの間に入り込むことがなく、コーションラベル21の剥離不良がほぼ皆無となる。尚、加熱ヒーター40を支持するヒーター支持体41が昇降シリンダ42のピストンロッド42aに連結されており、昇降シリンダ42の収縮ストロークに応じて加熱ヒーター40が上下駆動される。
【0026】
次に、図6乃至図12に沿って、センターピラーガーニッシュ10の表面にコーションラベル21を熱転写する工程について説明する。まず、図6に示すように、センターピラーガーニッシュ10が所定位置に位置決めされれば、ヒーターカバー60は、点線位置から実線位置まで退避するとともに、コーションラベル21を保持するラベルセット枠50は、点線位置から矢印方向に搬送されて、図7に示すように、センターピラーガーニッシュ10のラベル貼付面に対してコーションラベル21が精度良く位置決めされる。
【0027】
その後、昇降シリンダ42の伸長動作により、加熱ヒーター40が上昇して、センターピラーガーニッシュ10の製品表面に対してコーションラベル21が所定プレス圧、所定温度で熱圧着される。この時の加熱ヒーター40のヒーター温度は100±10℃で、加熱時間は5±3秒に設定されている。
【0028】
そして、コーションラベル21に対する熱圧着加工が完了すれば、加熱ヒーター40は昇降シリンダ42の収縮動作により下降動作するとともに、ラベルセット枠50は、図8中矢印方向に退避する。更に、図9に示すように、センターピラーガーニッシュ10に貼付されたコーションラベル21と基位置に下降した加熱ヒーター40との間にヒーターカバー60が図9中矢印方向に搬送されて、図10に示す位置まで侵入し、コーションラベル21を冷却する。すなわち、図10,図11に示すように、外部の冷却用エア供給源から冷却用エア配管61を通してヒーターカバー60内の冷却用エア通路62に冷却用エアが供給され、ヒーターカバー60におけるラベル対向面60aのほぼ中央に開設された開口63を通じて、冷却用エアがコーションラベル21の正面に吹き付けられ、中央から外方に向けて図10,図11中矢印で示すように冷却用エアが滞ることなくスムーズに流れ、熱交換が効率良く行なわれ、迅速にコーションラベル21を冷却することができる。従って、従来のように、冷却用エア配管の面倒な位置決め作業や、製品表面とラベルとの間に冷却用エアが入り込むことが原因での剥離不良を誘発することがなく、剥離不良がほぼ皆無となり、かつ冷却時間を大幅に短縮できることから、加工時間の短縮化に繋がる。
【0029】
そして、冷却工程が完了すれば、コーションラベル21を貼付したセンターピラーガーニッシュ10を熱転写装置30から取り出し、転写済みのラベル21aを図12に示すように剥離操作することで、図1に示すように、コーション事項等の文字情報20を適正位置に貼付したセンターピラーガーニッシュ10が得られる。
【0030】
更に、図13は、本発明の変形例を示すもので、熱転写装置30におけるヒーターカバー60に冷却機構を組み込むことは上述実施例と同一である。図13(a)は、ヒーターカバー60のラベル対向面60aに開設する開口63をコーションラベル21の全領域に亘るように多数開設する変形例であり、図13(b)は、部分冷却するように開口63を中央から隅部にずらした位置に設定してある。このように、冷却範囲が広い場合等、開口63の孔数を増大させることで対応でき、冷却物の部位集中冷却も可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上説明した実施例は、コーションラベル21をセンターピラーガーニッシュ10の製品表面に熱転写方法により貼付したが、コーションラベル21に限定することなく、その他の各種ラベル類をセンターピラーガーニッシュ10以外の内装部品全般に本発明方法及び本発明に係る熱転写装置30を採用することも可能であり、ラベル類や内装部品の用途は限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係るラベルの熱転写方法を適用して製作したセンターピラーガーニッシュを示す正面図である。
【図2】図1中II−II線断面図である。
【図3】本発明に係る熱転写装置の一実施例の全体構成を示す説明図である。
【図4】図3に示す熱転写装置におけるヒーターカバーのラベル対向面の構成を示す説明図である。
【図5】図3に示す熱転写装置におけるラベルセット枠とヒーターカバーとの動作関係を示す説明図である。
【図6】図3に示す熱転写装置を使用する熱転写方法における内装部品とコーションラベルの位置決め工程を示す説明図である。
【図7】図3に示す熱転写装置を使用する熱転写方法における加熱ヒーターによる熱圧着工程を示す説明図である。
【図8】図3に示す熱転写装置を使用する熱転写方法における加熱ヒーターの下降操作、ラベルセット枠の退避状態を示す説明図である。
【図9】図3に示す熱転写装置を使用するラベルの熱転写方法におけるヒーターカバーの投入状態を示す説明図である。
【図10】図3に示す熱転写装置を使用するラベルの熱転写方法におけるコーションラベルの冷却工程を示す説明図である。
【図11】図10に示すコーションラベルの冷却工程における冷却用エアの流れを説明する模式図である。
【図12】図3に示す熱転写装置を使用するラベルの熱転写方法における冷却工程後の転写済みラベルの剥ぎ取り工程を示す説明図である。
【図13】本発明方法に係るラベルの熱転写装置におけるヒーターカバーに開設する開口の変形例を示す説明図である。
【図14】コーションラベルを貼付した従来のセンターピラーガーニッシュを示す正面図である。
【図15】従来のラベルの熱転写装置の構成を示す全体図である。
【図16】従来の熱転写装置におけるラベルセット枠とヒーターカバーとの関係を示す説明図である。
【図17】従来の熱転写装置を使用した熱転写方法における冷却工程を示す説明図である。
【符号の説明】
【0033】
10 センターピラーガーニッシュ
10a 樹脂芯材
10b 表皮
11 調節長孔
20 コーション事項等の文字情報
21 コーションラベル
30 熱転写装置
40 加熱ヒーター
41 ヒーター支持体
42 昇降シリンダ
50 ラベルセット枠
60 ヒーターカバー
61 冷却用エア配管
62 冷却用エア通路
63 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内装部品(10)の表面所定位置にラベル(21)を位置決めし、加熱ヒーター(40)による熱圧着加工を施し、ラベル(21)に仮接着されている文字情報(20)を熱転写するラベル(21)の熱転写方法において、
所望の文字情報(20)を仮接着したラベル(21)をラベルセット枠(50)を介して内装部品(10)の所定位置に位置決めした後、加熱ヒーター(40)を昇降シリンダ(42)の駆動により上昇させ、上記ラベル(21)を内装部品(10)の表面に加熱押圧し、その後、加熱ヒーター(40)を後退させて、ラベル(21)と加熱ヒーター(40)との間にヒーターカバー(60)を投入して、加熱ヒーター(40)の冷却工程での温度低下を防止しつつ、ヒーターカバー(60)に接続された冷却用エア配管(61)からヒーターカバー(60)のエア通路(62)を経由してヒーターカバー(60)のラベル対向面(60a)に開設した開口(63)からラベル(21)正面に向けて冷却用エアを吹き付け、このラベル(21)とヒーターカバー(60)との間の手狭なスペース内で冷却用エアが滞ることなくラベル(21)の冷却を行なうことを特徴とするラベルの熱転写方法。
【請求項2】
内装部品(10)の表面所定位置にラベル(21)を熱圧着し、ラベル(21)に仮接着された文字情報(20)を内装部品(10)の表面に熱転写するラベル(21)の熱転写装置(30)において、
前記熱転写装置(30)は、昇降シリンダ(42)の駆動により上下方向に駆動され、内装部品(10)の表面に対してラベル(21)を所定プレス圧、所定温度で熱圧着する加熱ヒーター(40)と、ラベル(21)をセット位置から内装部品(10)の貼付位置まで搬送するラベルセット枠(50)と、上記加熱ヒーター(40)の上昇動作時には外部に退避して、加熱ヒーター(40)の後退時にはラベル(21)の貼付位置まで進出し、製品セット時の過熱防止と、冷却時の加熱ヒーター(40)の温度低下防止を目的として設定されたヒーターカバー(60)とから構成されており、上記ヒーターカバー(60)には、冷却用エア配管(61)が接続されるとともに、冷却用エアを案内する冷却用エア通路(62)が内部に形成され、かつ、ラベル対向面(60a)に開口(63)が開設されており、ラベル(21)の冷却工程において、冷却用エア配管(61)からヒーターカバー(60)内の冷却用エア通路(62)に供給される冷却用エアは、ヒーターカバー(60)のラベル対向面(60a)に開設した開口(63)からラベル(21)の表面に吹き付けられることにより、中央から外方に向けて冷却用エアのスムーズな流れを確保するようにしたことを特徴とするラベルの熱転写装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−137906(P2010−137906A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318253(P2008−318253)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】