説明

ラベル貼付機

【課題】
多種多様な大きさや形状のラベル貼付作業を確実に行なうことが可能であり、かつラベルの供給方法を必ずしもロール帯状での供給形態に変更することなく、単葉もしくは枚葉での供給形態に対応可能なラベル貼付機を、より単純な機構で実現すること。

【解決手段】
ラベル貼付機において、ラベル20を剥離し、保持し、貼付する手段として、エステル系ウレタン樹脂からなる保持ヘッド11を有し、剥離工程では保持ヘッド11がより高速に、貼付工程では保持ヘッド11の速度がより低速に動作するように制御することを特徴とする装置を発明し前記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、樹脂製フィルムなどの素材の裏面に接着材を塗布して台紙に予め貼られているラベルを、所定の位置から剥離し、保持し、所定の位置に貼付する工程を自動化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、様々な製品の製造過程において、製品にラベルを貼り付ける作業が広く行なわれている。このようなラベル貼付作業を自動化するための発明がなされてきている一方で、依然として作業員の手指を使用した作業に依存している場合も数多くある。
【0003】
ラベルを所定位置に貼付する作業を自動化するための発明は、真空吸着式や爪機構での把持による保持ヘッドを具備する装置が知られている。また従来の発明では、装置の実現を容易にするために、ロール帯状でラベルを供給する方法がよく行なわれている。例えば、ロール帯状で供給されるラベルを真空吸着式の保持ヘッドとクランプ爪により剥離し貼付させる装置がある(例えば、特許文献1参照)。また、装置の汎用性を高める目的で、複数異種のラベルに対応するために、真空吸着式の保持ヘッドを容易に換装できるように工夫した装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平5−310237号公報
【特許文献2】特開平9−104426号公報
【0004】
また、ラベルの剥離を容易にするために、さらには爪によりラベル表面に傷がつくことを防ぐために、摘み突部をラベルに設ける方法も知られている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献3】特開2005−225082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、真空吸着式によるラベル貼付装置の場合、真空発生装置が必須となるので装置全体が大型化するとともに、構造も複雑になり、装置あるいは保持ヘッドがより高価になるという問題がある。また、大きさや形状の違う複数異種のラベルに適応する別の保持ヘッドに取り替える作業は、保持ヘッドだけでなく真空配管も着脱する必要があるために作業が煩雑になるという欠点がある。
【0006】
また、少量を生産する製品に貼付するようなラベルの場合、ラベルの供給方法をそれまでのが単葉や枚葉供給から、新たにロール帯状の供給方法に変更すること、あるいはラベルに新たに摘み突部を設けるように変更することなどの追加的なコストをかけてまで自動化するということは、生産コストの面から難しい場合が多い。このような場合は、手作業が継続されることになり、作業に確実性が不足したり、作業の効率を高めることが難しいといった問題を解決できない。
【0007】
本発明は、前記従来の技術の問題や欠点を解決するためになされたものであって、多種多様な大きさや形状のラベルの剥離作業や貼付作業を確実に行なうことが可能であり、かつラベルの供給方法を必ずしもロール帯状での供給形態に変更することなく、単葉もしくは枚葉での供給形態に対応可能なラベルの剥離または貼付装置を、より単純な機構で実現することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1または請求項2の発明は、ラベルを剥離し、保持し、貼付する手段として、エステル系ウレタン樹脂からなる保持ヘッドを有することを特徴としたラベル貼付機である。本発明では、前記課題を解決するために、前記エステル系ウレタン樹脂の粘着力について、強く急激な力を加る動作の場合は貼付対象物に対する粘着力が強くて剥がれにくく、そっと剥がす動作の場合は粘着力が弱まり綺麗に剥がれて貼付対象物を汚したり傷つけたりしないという性質を利用している。
【0009】
また請求項2の発明は、前記保持ヘッドがラベルを剥離するとき、前記保持ヘッドがラベルに直接に接して後に乖離移動する速度である剥離工程速度と、前記保持ヘッドがラベルを貼付対象物に貼付するとき、前記保持ヘッドが保持しているラベルを貼付対象物に直接に接して後に乖離移動する速度である貼付工程速度において、前記剥離工程速度が前記貼付工程速度よりも大きいことを特徴とするラベル貼付機である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ラベルの剥離、保持、及び貼付を自動化する装置を、前記エステル系ウレタン樹脂からなる保持ヘッドという簡易な機構によって実現した。本発明では、真空発生装置などの付加的な装置は不要であり、装置を小型化、軽量化でき、製造コストや設計レイアウトの点で有利な装置を提供できる。また保持ヘッドの構造は、従来の真空吸着式の保持ヘッドに比べて小型、軽量であり、大きさや形状の違う複数異種のラベルに適応する別の保持ヘッドに取り替える作業を簡単に行なうことができる。
【0011】
また本発明は、ロール帯状に巻かれたラベル供給形態だけでなく、単葉や枚葉での供給形態にもそのまま対応可能な汎用性の高い装置であり、ラベルの供給方法をロール帯状にわざわざ変更することが難しい少量多品種の製品の貼付作業を自動化することができる。
【0012】
また、前記保持ヘッドがラベル全体を面で保持するために、貼付時にラベルに皺が生じにくいという効果があるとともに、爪で保持する場合に発生する傷が生じないという効果がある。従って、前記摘み突部のようなラベルに特別な構造を設けるといった、傷を防止するための付加的なコストは不要となる。
【0013】
また、前記保持ヘッドをなすエステル系ウレタン樹脂は弾性作用があるため、貼付対象物の貼付面が平面の場合だけでなく、曲面の場合や凸凹を有する面である場合でも、前記保持ヘッドをなすエステル系ウレタン樹脂の弾性作用の範囲内であればラベルを確実に貼り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して説明する。図1は装置全体概略を示す斜視図である。図2は、垂直多関節形ロボットのアーム部とハンド部を示す平面図である。図3は、ハンド部の正面図、側面図、平面図である。
【実施例1】
【0015】
ハンド部10の先端にある保持ヘッド11は、例えば中性ウレタンエラストマーに硬化剤を混入して半架橋状態にした粘性および弾性を有するウレタン樹脂を用いれば良く、これを好適な大きさ、形状に切断し、アルミニウム製の筐体に固定して構成した。前記エステル系ウレタン樹脂は、衝撃吸収率が80%以上、粘着力が0.3kg/cm2以上1.6kg/cm2以下、アスカーC硬度が1以上50以下の特性を有する。本実施例では、直径7.4mmの円形のラベルを対象とし、このラベルに好適となるよう、前記エステル系ウレタン樹脂を直径9.5mmの円形に切断したものを用いて保持ヘッド11を構成した。
【0016】
また、保持ヘッド11の動作を制御するために、図1のAである三菱電機株式会社製、垂直多関節形ロボットMELFA RV−3Sと、図1のCであるロボットコントローラーCR1B−571及び制御ソフトウェアのMELFA BASIC 4言語を用いた。
【0017】
ラベル20は裏面に接着剤が塗布されて台紙21に張り付いている枚葉の形態で供給され、一対の押さえ棒30により台上に固定される。
【0018】
貼付対象物41はインデックステーブル40により供給され、貼付工程のときに所定位置に固定される。
【0019】
ラベルの剥離工程は以下の手順で実施した。(1)保持ヘッド11を目的のラベル20の表面の鉛直上方位置に移動させる。本実施例では、20mm上方位置とした。(2)保持ヘッド11を鉛直に下降させ、所定位置を通過後は速度をより遅くし、目的のラベル表面まで下降させる。本実施例では、速度をより遅くする位置をラベルの5mm上方位置とした。(3)ラベル表面上で、一定時間静止させる。この間にラベルが保持ヘッドに粘着し保持される。本実施例では静止時間は0.5秒とした。(4)保持ヘッド11を鉛直上方に移動させ、ラベルを台紙より剥離する。このときの速度が、請求項2に記載の剥離工程速度である。
【0020】
ラベルの貼付工程は以下の手順で実施した。(1)前記の剥離工程後、ラベルを粘着し保持している保持ヘッド11を貼付対象物41の表面の鉛直上方位置に移動させる。本実施例では、20mm上方位置とした。(2)保持ヘッド11を鉛直に下降させ、一定の位置より速度をより遅くして、保持ヘッド11を目的の貼付対象物表面まで下降させる。本実施例では、速度をより遅くする位置を5mm上方位置とした。(3)貼付対象物の表面上で、一定時間静止させる。本実施例では静止時間は0.6秒とした。(4)保持ヘッド11を鉛直上方に移動させ、ラベルを貼付対象物に貼付する。このときの速度が、請求項2に記載の貼付工程速度である。
【0021】
保持ヘッド11の動作速度の制御は、ロボットコントローラーCに設定する速度制御パラメータであるOVRD値、及びソフトウェアであるMELFA BASIC 4言語の速度制御命令であるOVRD値をそれぞれに設定することで可能である。但し、前記速度制御パラメータ及び速度制御命令たるOVRD値は、1から100までの範囲で設定可能な値であり、値が100で動作速度が最大、値が1で動作速度が最小となる。前記エステル系ウレタン樹脂の粘着力が、強く急激な力を加える動作の場合は貼付対象物に対する粘着力が強くて剥がれにくく、そっと剥がす動作の場合は粘着力が弱まり綺麗に剥がれて貼付対象物を汚したり傷つけたりしないという性質に基づいて、前記剥離工程速度が前記貼付工程速度よりも大きくなるように動作を制御した。
【0022】
剥離工程は以下のようにMELFA BASIC 4言語を記述した。なお、BASICプログラム内の行番号1010、1050、及び1090に記載されるP_LABELは、ラベル位置を示す座標変数であり、MVSは直線移動命令である。
1000 '--剥離工程
1010 MVS P_LABEL ,-20
1020 OVRD 100
1030 MVS,15
1040 OVRD 10
1050 MVS P_LABEL
1060 DLY 0.5
1070 '--
1080 OVRD 100
1090 MVS P_LABEL ,-20
【0023】
貼付工程は以下のようにMELFA BASIC 4言語を記述した。なお、BASICプログラム内の行番号2010、2050、及び2110に記載されるP_OBJECTは、貼付対象物位置を示す座標変数であり、MVSは直線移動命令である。
2000 '--貼付工程
2010 MVS P_OBJECT ,-20
2020 OVRD 100
2030 MVS,-15
2040 OVRD 10
2050 MVS P_OBJECT
2060 DLY 0.6
2070 '--
2080 OVRD 1
2090 MVS,-15
2100 OVRD 100
2110 MVS P_OBJECT,-20
【0024】
さらに、ロボットコントローラーCに設定する速度制御パラメータであるOVRD値を80に設定した。以上の設定で装置を動作させたところ、ラベル20について、保持ヘッド11による剥離、保持、及び貼付対象物41への貼付が連続して良好に行なわれた。また、貼付されたラベルに傷や皴の発生はみられず、所定の位置からのずれもみられなかった。
【0025】
本実施例では、枚葉によるラベル供給でなされたので、保持ヘッド11は、それぞれのラベルの位置、すなわち複数の座標位置に移動して剥離動作を行なわせた。また、インデックステーブル40により貼付対象物の供給がなされたので、保持ヘッド11は、唯一の座標位置に移動して貼付動作を行なわせた。このように、本発明は、剥離動作及び貼付動作について、ラベルや貼付対象物の供給形態に応じて、複数の座標位置と唯一の座標位置のどちらの場合でも実施が可能な装置である。
【実施例2】
【0026】
本実施例では、前記実施例1で用いた保持ヘッド11の筐体にスクリューねじを切り、さらにハンド部10にもスクリューねじをもたせ、保持ヘッド11を容易に着脱可能とした。また、縦10mm、横35mmの矩形のラベルを用いるために、このラベルに好適となるよう縦12mm、横37mmの矩形に前記エステル系ウレタン樹脂を切断し、スクリューねじを切った筐体に収めて構成した保持ヘッドを新たに設け、前記実施例1で用いた保持ヘッドを取り外した後にハンド部10取り付け、装置を動作させた。このように本実施例によれば、一台のラベル剥離または貼付装置を用いて、大きさや形状の違う複数異種のラベルを貼付対象物に貼付できる。
【実施例3】
【0027】
本実施例では、前記実施例1の装置に、さらに、所定の位置にラベルが存在するか存在しないかを検知するためのセンサー12として、株式会社キーエンス製、デジタルレーザーセンサーLV−S41を、ハンド部10に設けた。このセンサー12は、保持ヘッド11の粘着面が、目標物となるラベル20の表面から鉛直方向に20mmの位置にあるときに、前記ラベルの有無が検知できるように設定し、センサー12からのラベル有無情報が、ロボットコントローラーCで動作するMELFA BASIC 4言語にて参照できるように、センサー12と垂直多関節形ロボットのアーム部AとロボットコントローラーCとの間を結線した。
【0028】
ラベルの剥離工程は以下の手順で実施した。(1)保持ヘッド11を目的のラベルの表面の鉛直上方位置に移動させる。本実施例では、センサー設定位置である20mm上方位置とした。(2)もし所定の位置にラベルがないことをセンサーが感知した場合、ラベルの欠落であるので、次のラベルを目的ラベルとして前記(1)を行なう。あるいはラベルがあることを感知した場合、(3)に手順を進める。(3)保持ヘッド11を鉛直に下降させ、一定の位置より速度をより遅くして、保持ヘッド11を目的のラベル表面まで下降させる。本実施例では、速度をより遅くする位置を5mm上方位置とした。(4)ラベル表面上で、一定時間静止させる。本実施例では静止時間は0.5秒とした。(5)鉛直上方に移動させる。本実施例では、センサー設定位置である20mm上方位置とした。(6)もし所定の位置にラベルがないことをセンサーが感知した場合、剥離工程を終了する。あるいはラベルがあることを感知した場合、剥離の失敗であるので再度(3)からの手順を行なう。
【0029】
ラベルの貼付工程は以下の手順で実施した。(1)前記の剥離工程でラベルを保持している保持ヘッド11を目的の貼付対象物41の表面の鉛直上方位置に移動させる。本実施例では、20mm上方位置とした。(2)保持ヘッド11を鉛直に下降させ、一定の位置より速度をより遅くして、保持ヘッド11を目的の貼付対象物表面まで下降させる。本実施例では、速度をより遅くする位置を5mm上方位置とした。(3)貼付対象物の表面上で、一定時間静止させる。本実施例では静止時間は0.6秒とした。(4)鉛直上方に移動させる。本実施例では、センサー設定位置である20mm上方位置とした。(5)もし所定の位置にラベルがないことをセンサーが感知した場合、貼付の失敗であるので、再度(2)からの手順を行なう。あるいはラベルがあることを感知した場合、貼付工程を終了する。
【0030】
本実施例の装置は、ラベルの剥離工程において、予め所定の位置にラベルが存在することを確認してから剥離動作を開始することができる。従って、供給されたラベルシートに不具合があって所定の箇所のラベルが欠落している場合に、直ちに次の位置のラベルの剥離工程に移ることを可能とし作業時間の不要な遅延を防止する。また、剥離工程の動作が完了した後にラベルが剥離できずに台紙に残っている場合を検知し、再度の剥離工程の動作を行なうことにより、ラベル裏面の接着剤塗布のばらつきなどに起因するラベルの剥離ミスを防ぐことができる。また、ラベルの貼付工程において、貼付工程の動作が完了した後にラベルが貼付できなかった場合を検知し、再度の貼付工程の動作を行なうことにより、ラベル裏面の接着剤塗布のばらつきや貼付対象物表面の汚れなどに起因するラベルの貼付ミスを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明を実施するための最良形態の装置全体概略を示す斜視図である。
【図2】垂直多関節形ロボットのアーム部とハンド部を示す平面図である。
【図3】ハンド部の正面図、側面図、平面図である。
【符号の説明】
【0032】
A 垂直多関節形ロボットのアーム部
C ロボットコントローラー
10 ハンド部
11 保持ヘッド
12 センサー
20 ラベル
21 台紙
30 押さえ棒
40 インデックステーブル
41 貼付対象物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラベルを所定の位置から剥離し、保持し、所定の位置に貼付するラベル貼付機であって、粘着力を有するエステル系ウレタン樹脂からなる保持ヘッドを具備することを特徴とするラベル貼付機。
【請求項2】
ラベルを所定の位置から剥離し、保持し、所定の位置に貼付するラベル貼付機であって、粘着力が0.3kg/cm2以上1.6kg/cm2以下のエステル系ウレタン樹脂からなる保持ヘッドを有し、前記保持ヘッドがラベルを剥離するとき、前記保持ヘッドがラベルに直接に接して後に乖離移動する速度である剥離工程速度と、前記保持ヘッドがラベルを貼付対象物に貼付するとき、前記保持ヘッドが保持するラベルを貼付対象物に直接に接して後に乖離移動する速度である貼付工程速度において、前記剥離工程速度が前記貼付工程速度よりも大きいことを特徴とするラベル貼付機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−137471(P2007−137471A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−333550(P2005−333550)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(503192974)光城精工有限会社 (3)
【Fターム(参考)】