説明

ラマン分光装置

【目的】安定してラマン散乱強度を増強し、より微小、微量な物質のラマンスペクトルを取得できるラマン分光装置を提供すること。
【解決手段】分析物22のある試料基板17を金属膜23で被覆し、レーザ光2を照射することで、ラマン散乱光3を安定して増強できて、より微小、微量な物質のラマンスペクトルを取得できるラマン分光装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体や磁性媒体などクリーンルームで製造されるデバイスの製造環境から発生する1μm程度の微小な物質の解析に用いられるラマンスペクトルを取得する顕微ラマン分光器において、そのラマン信号強度を数桁大きくすることによって、より微小、微量な物質のラマンスペクトルの取得を実現するラマン分光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ラマン散乱は、近赤外から紫外域の一定周波数((1)のレーザ光を物質に照射したときに発生する(1(Ωの散乱光(入射光の振動数に対して物質の固有振動数Ωだけ異なる振動数の散乱光)を検出するものである。ここでΩは分子や格子の固有振動数である。ラマン散乱の散乱断面積は10-35〜10-30cm2程度と非常に小さいため、ラマン散乱光はワット換算で1×10-14W〜1×10-9W程度と非常に微弱な光である。
【0003】
しかし、レーザ光源およびCCD(Charge Coupled Device)など半導体センサの改良により微弱な光(1秒間に数10個程度の光子)のスペクトルを短時間で検出できるようになったため、微小な物質の同定法として利用されるようになってきている。
同じように分子や格子の固有振動数を検出する赤外分光法と比較すると、赤外分光法は赤外線(波長は10μm程度)を試料に照射しその吸収または反射を検出する手法であるため、1μm以下の微小異物に効率的にビームを照射して信号を取り出すにはラマン分光よりも不利である。
【0004】
一方、ラマン分光法では可視光域(波長700nm〜400nm)の光を試料にフォーカスできるため、より小さな物質に対して空間的に分離してスペクトルを取得できる。
しかし、前述したように基本的には非常に微弱な光であることから、1μm以下の粒子の物質同定は困難と考えられている(なぜならば、散乱強度が物質の体積の減少にともなって減少していくためである)。
【0005】
微弱なラマン強度を増強する手法としてSERS(Surface Enhanced Raman Scattering)という現象の利用が考えられている。SERSという現象は、その発生機構についてはまだ解明されていないが、以下のような状況下で発現することが知られている。
Cu、Pt、Agなどの金属表面におもに有機分子が吸着した場合、ラマン散乱強度が自由分子の散乱断面積から予想されるよりも数桁高くなる。この現象を利用して微小な異物のラマン散乱強度を取得する場合、基板上に物質が付着している必要があるが、例えば適当な金属基板に付着していない微小異物の強度を増強したい場合などは、一度適当な金属基板上に異動しなければならないなど、対象となる微小な異物を汚染または破壊してしまう危険性がある。
【0006】
このため、対象となる異物を金属基板上に移動させるのではなく、例えば形状がナノオーダの針状の金属プローブを異物に押し当てた状態で、その金属と異物の界面にレーザ光を照射するなどの方法が考えられている(非特許文献1など)。
また、特許文献1には、プラズモンによるラマン散乱増強を利用したラマン分光分析を行なう分子センシング装置において、センサーの高感度化、安定化、および小型化を実現するためのラマン散乱増強用チップについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−208271号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】表面科学 Vol.26 No.11 pp667−674(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の金属針を微小異物に押し当てることによってSERSという現象を発現させることによってラマン散乱強度を増強する方法は、異物と金属針との機械的な接触をともなうため、同種の異物分子であったとしても接触面積や接触圧などを一定にすること、または一定である確認をとることが困難である。
この発明の目的は、前記の課題を解決して、安定してラマン散乱強度を増強し、より微小、微量な物質のラマンスペクトルを取得できるラマン分光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、特許請求の範囲の請求項1記載の発明であって、金属膜を透過して分析物にレーザ光を照射しSERS(Surface Enhanced Raman Scattering)現象で増強したラマン散乱光のスペクトルを観察する試料観察室と、分析物に前記金属膜を被覆する前処理室と、前記前処理室と前記試料観察室とを連結する連結部と、前記試料基板を前記前処理室から前記試料観察室に搬送する搬送手段と、を備えるラマン分光装置とする。
【0011】
また、特許請求の範囲の請求項2記載の発明であって、請求項1記載の発明において、前記試料観察室が、レーザ光源と、増強されたラマン散乱光をスペクトルに分光する分光器と、前記金属膜を被覆した前記分析物のある試料基板を載せる第1試料台と、該第1試料台を支持する第1支持台と、前記レーザ光源から出射される前記レーザ光を前記金属膜で被覆された前記分析物の方向へ導き、前記分析物からのラマン散乱光を前記分光器の方向に導くビームスプレッターと、前記分析物に照射される前記レーザ光を前記金属膜で被覆された前記分析物に焦点を合わせ該分析物からの増強されたラマン散乱光を前記ビームスプレッターに導く対物レンズと、前記ビームスプレッターを通過する前記ラマン散乱光を絞るレンズと、該レンズで絞られたラマン散乱光を通過させて前記分光器に入射させるピンホールを有するスリットと、前記第1試料台と前記第1支持台を収納し前記対物レンズの端部が気密固着される第1チャンバーと、該第1チャンバー内の空気を排気する第1排気口と、を具備するとする。
【0012】
また、特許請求の範囲の請求項3記載の発明であって、請求項1または2記載の発明において、前記前処理室が、ターゲット電極と、該ターゲット電極と対向して配置され前記分析物のある前記試料基板を載せる第2試料台と、該第2試料台を支持する第2支持台と、前記ダーゲット電極と前記第2試料台との間に直流電圧を印加して前記第2試料台に載せた前記分析物がある前記試料基板にスパッタで前記金属膜を被覆する電源と、前記ターゲート電極と前記第2試料台と前記第2支持台を収納した第2チャンバーと、該第2チャンバー内の空気を排気する第2排気口と、を具備する構成とする。
【0013】
また、特許請求の範囲の請求項4記載の発明であって、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発明において、前記連結部が、前記前処理室と前記試料観察室を分離する分離ゲート、または、該分離ゲートと前記搬送手段とを具備する構成とする。
また、特許請求の範囲の請求項5記載の発明であって、請求項1または4に記載の発明であって、前記搬送手段が、前記金属膜が被覆した前記分析物のある前記試料基板を前記前処理室の前記第2試料台から持ち上げ、前記試料観察室の前記第1試料台に移動し、前記試料基板を前記第1試料台に設置する機能を有する保持機構および移動機構を具備する構成とする。
【0014】
また、特許請求の範囲の請求項6記載の発明であって、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発明において、前記金属膜の厚さが、10nm〜200nmであるとよい。
また、特許請求の範囲の請求項7記載の発明であって、請求項1〜3、5、6のいずれか一項に記載の発明において、前記金属膜の材質が、少なくともCu、Ag、Au、PdおよびRuのいずれかであるとよい。
【0015】
また、特許請求の範囲の請求項8記載の発明であって、請求項1または2に記載の発明において、前記分析物に分極を誘起するラマン散乱の励起光としての前記レーザ光を出射する前記レーザ光源が、近赤外から紫外までの連続光源またはパルス光源を用いるとよい。
また、特許請求の範囲の請求項9記載の発明であって、請求項8記載の発明において、前記分析物に分極を誘起するラマン散乱の励起光としての前記レーザ光を出射する前記レーザ光源が、2種以上の周波数からなる近赤外から紫外までの連続光源またはパルス光源を用いるとよい。
【0016】
また、特許請求の範囲の請求項10記載の発明であって、請求項9記載の発明において、前記の2種類の光源において,第1の光源は近赤外から紫外までの範囲にあるいずれかの一定周波数であり、第2の光源は第1の光の周波数を含み第1の周波数のまわりに広がる連続スペクトルをもつ光源であるとよい。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、分析物のある試料基板を金属膜で被覆し、レーザ光を照射することで、ラマン散乱光を安定して増強できて、より微小、微量な物質のラマンスペクトルを取得できるラマン分光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の一実施例のラマン分光装置の要部構成図である。
【図2】分析物22に金属膜23を被覆する様子を示す図であり、(a)は金属膜22を被覆する前の図、(b)は金属膜22を被覆した後の図である。
【図3】連結部10に分離ゲートのみを設ける場合の搬送手段の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態を以下の実施例で説明する。
【実施例】
【0020】
図1は、この発明の一実施例のラマン分光装置の要部構成図である。この発明のラマン分光装置100は、顕微ラマン分光分析を行なう試料観察室26と分析物22に金属膜23を被覆する前処理室27および試料観察室26と前処理室27を連結する連結部10から構成されている。図1では試料観察室26と前処理室27は点線で示し、それらの具体的な外枠は示していない。また、図1では、レーザ光源および分光器は省略されている。
【0021】
試料観察室26は、レーザ光源と、レーザ光源からレーザ光2を対象物質(金属膜23で被覆され分析物22)へ照射する光学系(対物レンズ4)と、金属膜23で被覆された分析物22からのラマン散乱光3を集光する光学系(レンズ5)、分析物22がある試料基板17を設置する観察ステージ24(第1試料台)、この観察ステージ24を支持する支持台18(第1支持台)、レンズ5を通過したラマン散乱光3を通すピンホール20を有するスルット25と、ラマン散乱光3をスペクトルに分離する分光器(検出器を含む)と、観察ステージ24と支持台18とを収納するチャンバー7(第1チャンバー)およびチャンバ7内の空気を排気する真空排気口8(第1排気口)から構成される。尚、真空排気口8は図示しない真空ポンプに接続する。また、試料基板17とは、分析物22を載せる基板または分析の対象となる試料をいう。また、図中の符号において、1は入射レーザ光とラマン散乱光が導かれる光路である。
【0022】
前処理室27は、ターゲット電極12と、該ターゲット電極12と対向して配置され分析物22がある試料基板17を載せる成膜ステージ14(第2試料台)と、この成膜ステージ14を支持する支持台19(第2支持台)と、ダーゲット電極12と成膜ステージ14との間に直流電圧を印加して分析物22がある試料基板17にスパッタで金属膜23を被覆する電源21と、ターゲート電極12と成膜ステージ14と支持台19を収納したチャンバー9と、チャンバー9内の空気を排気する真空排気口13(第2排気口)とおよびチャンバー9内に不活性ガスを導入するガス導入口15から構成される。真空排気口13は図示しない真空ポンプに接続し、ガス導入口15は不活性ガス(または反応性ガス)を送る図示しないパイプに接続する。尚、ターゲット電極12とはターゲット材で形成された電極またはターゲット材とターゲット材を載せた電極を合わせたものをいう。また、チャンバー9内が真空状態であれば、必ずしも不活性ガスや反応性ガスをチャンバー9内に導入しなくてもよい。
【0023】
図2は、分析物22に金属膜23を被覆する様子を示す図であり、同図(a)は金属膜22を被覆する前の図、同図(b)は金属膜22を被覆した後の図である。金属膜23はスパッタにより分析物22に被覆される。このとき、試料基板17にも金属膜23が被覆される。
連結部10は、試料観察室26と前処理室27を分離する図示しない分離ゲートのみ設置されている場合と、金属膜23で被覆された分析物22がある試料基板17を前処理室27から試料観察室26へ搬送する搬送手段を合わせて設置されている場合がある。
【0024】
この分離ゲートの働きは、これを閉じることで、試料観察室26と前処理室27のそれぞれの雰囲気を独立に制御できるようにすることである。
図3は、連結部10に分離ゲートのみを設ける場合の搬送手段の構成図である。この搬送手段は、チャック(保持機構)とこのチャックが固定している伸縮棒(移動機構)で構成される。試料基板17を真空吸着などで脱着するチャックを、例えば、試料観察室26内のチャンバー7に設け、開いてる連結部10の分離ゲートを通してチャックが固定している伸縮棒を成膜ステージ14まで伸ばし、成膜ステージ14に載っている試料基板17をチャックで吸着して持ち上げる。つぎに、伸縮棒を縮めて試料基板17を観察ステージ24上に移動させ、チャックから試料基板17を離して観察ステージ24に載せる。
【0025】
連結部10に分離ゲートと搬送手段を設ける場合について説明する。図示しないが搬送手段は試料基板17を搬送する搬送台(移動機構)と、成膜ステージ14から試料基板17を持ち上げ搬送台に移すチャック(保持機構)と、搬送台から観察ステージ24に試料基板17を移して設置するチャック(保持機構)とで構成される。搬送台とチャックの支持部は連結部10から試料観察室26と前処理室27に延びている。分離ゲートは試料基板17が搬送するときにのみ開けられ、それ以外は搬送台を挟み込むようにして閉まっており、試料観察室26と前処理室27のそれぞれの雰囲気は閉まった分離ゲートでそれぞれ独立に制御される。
【0026】
ラマン分光装置100についてさらに詳細に説明する。平行なレーザ光2(ここでレーザ光の波長は1.5μm付近の近赤外光から0.35μm付近の紫外光の範囲)がビームスプリッター6で対物レンズ4に導かれる。レーザ光2は対物レンズ4で試料基板23にある分析物22に光路1を通って集光される。
集光されたレーザ光2によって発生させられたラマン散乱光3は、光路1を通って対物レンズ4によって平行光にされレンズ5に導かれる。レンズ5に導かれたラマン散乱光3はピンホール20を通過するように集光される。このピンホール20によって、分析物22以外からの妨害光(迷光)が除去される。
【0027】
ピンホール22を通過したラマン散乱光3は図示しない分光器とのFマッチング(焦点を合わせること)をとるようにレンズ系によって調整されたのち分光器で分光されラマンスペクトルとして取り出される。
この分光器では、回折格子に導かれ光の波長に応じて分散された光が半導体CCD上に結像されスペクトルとして取り出される。
【0028】
分析物22を金属膜23で被覆することで、ラマン散乱光3はSERS現象で増強されて分光器に入射する。
レーザ光2は、分析物22に分極を誘起するラマン散乱の励起光であり、このレーザ光源には、近赤外から紫外までの連続光源またはパルス光源を用いる。
また、これらの光源には、2種以上の周波数からなる近赤外から紫外までの連続光源またはパルス光源を用いるとよい。
【0029】
また、この2種類の光源のうち第1の光源は近赤外から紫外までの範囲にあるいずれかの一定周波数(例えば、5.8×1014Hz、 λ=514.5nm)であり、第2の光源は第1の光の周波数を含み第1の周波数のまわりに広がる(例えば、第1の周波数を(1とすると第2の光源の周波数は(2=(1±1×1014Hz 程度の広がり)連続スペクトルをもつ光源であるとよい。
【0030】
このように2種以上の周波数からなる光源を用いると単光源を用いる場合に比べて、以下のようなメリットがある。
ラマン散乱で、物質に第1のレーザ光(1(例えば、5。8×1014Hz、 λ=514。5nm)を照射し、物質を構成する結晶格子の振動または分子振動を励起するとき、物質からはラマン散乱光(1−Ω(ここで、Ωは格子振動または分子振動の周波数で1×1013Hz程度)が発生する。このとき、物質に周波数が(1−Ωの第2のレーザ光を照射すると、物質からは、(1+ΩのCARS(Coherent Anti−stokes Raman Scattering)と呼ばれるラマン散乱に比較して10倍から1000倍程度の強い散乱光が放出される。したがって、上述のように第1の周波数を(1として、周波数 (2=(1±1×1014Hz程度の広がりを持つ第2の光源をフィルターを用いて、(2の中の(1よりも短波長側の成分をカットし、(1よりも長波長側の連続光を物質に照射することによって、(1よりも短波長側に強度の強いラマン散乱(Anti−Stokes散乱)スペクトルを得ることが可能となる。応用物理 第75巻、第6号 pp682−688(2006)には、上記CARS現象を第1のレーザ光源(一定周波数)と第2のレーザ光源(連続光)を照射する方法の記載がある。
【0031】
本発明においては、分析物22が置いてある試料基板17は、観察試料室26の観察ステージ24上に設置する前に、前処理室27の成膜ステージ14上で金属膜23がスパッタで成膜される。
図1では分析物22が試料基板17上に置かれてあるが、分析物22は必ずしも試料基板17上に置かれるような微小物質である必要はなく、試料基板17程度の大きさのものでもかまわない。この場合は分析物22を試料基板17上に置く必要はなく、試料基板17の代わりに分析物22を成膜ステージ14や観察ステージ24に設置すればよい。
【0032】
前処理室27のチャンバー9はスパッタリングが可能な成膜室になっている。図1では、成膜ステージ14が陽極、成膜材料で構成されたターゲット電極12(勿論、ターゲット材を設置したターゲット台であってもよい)が陰極になっている。成膜においてはガス導入口15からマスフローコントロールで流量制御された不活性ガスであるアルゴンガスがチャンバー9内に導入され、直流電界によってプラズマが発生される。尚、不活性ガスの代わりに反応性ガスも場合もある。
【0033】
ターゲット材であるターゲット電極12の材質としてはCu、Ag、Au、Pd、Ruなどの金属が挙げられる。成膜される金属膜23の膜厚は、10nm〜200nmの範囲であり、得られるSERSの強度が最大となるように調整される。膜厚が10nm未満では、ラマン散乱光3の増強が微弱になり、200nmを超えるとレーザ光2が金属膜23を透過する程度が少なくなりやはりラマン散乱光3の増強が弱まり分析が困難になる。
【0034】
このように、分析物22がある試料基板17を金属膜23で被覆し、レーザ光2を照射することで、ラマン散乱光3を安定して増強することができて、より微小、微量な分析物22のラマンスペクトルを取得できる。
【符号の説明】
【0035】
1 入射レーザ光とラマン散乱光が導かれる光路(試料観察室)
2 平行に入射するレーザ光(試料観察室)
4 端物レンズ(試料観察室)
5 レンズ(試料観察室)
6 ビームスプレッター(試料観察室)
7 チャンバー(試料観察室)
8 真空排気口(試料観察室)
9 チャンバー(前処理室)
10 連結部
12 ターゲット電極(前処理室)
13 真空排気口(前処理室)
14 成膜ステージ(前処理室)
15 ガス導入口(前処理室)
16 支持台(ターゲット電極用)
17 試料基板
18 支持台(観察ステージ用)
19 支持台(成膜ステージ用)
20 ピンホール
21 電源
22 分析物
23 金属膜
24 観察ステージ
25 スリット
26 試料観察室
27 前処理室
100 ラマン分光装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属膜を透過して分析物のある試料基板にレーザ光を照射しSERS(Surface Enhanced Raman Scattering)現象で増強したラマン散乱光のスペクトルを観察する試料観察室と、分析物に前記金属膜を被覆する前処理室と、前記前処理室と前記試料観察室とを連結する連結部と、前記分析物を前記前処理室から前記試料観察室に搬送する搬送手段と、を備えることを特徴とするラマン分光装置。
【請求項2】
前記試料観察室が、レーザ光源と、増強されたラマン散乱光をスペクトルに分光する分光器と、前記金属膜を被覆した前記分析物のある前記試料基板を載せる第1試料台と、該第1試料台を支持する第1支持台と、前記レーザ光源から出射される前記レーザ光を前記金属膜で被覆された前記分析物の方向へ導き、前記分析物からのラマン散乱光を前記分光器の方向に導くビームスプレッターと、前記分析物に照射される前記レーザ光を前記金属膜で被覆された前記分析物に焦点を合わせ該分析物からの増強されたラマン散乱光を前記ビームスプレッターに導く対物レンズと、前記ビームスプレッターを通過する前記ラマン散乱光を絞るレンズと、該レンズで絞られたラマン散乱光を通過させて前記分光器に入射させるピンホールを有するスリットと、前記第1試料台と前記第1支持台を収納し前記対物レンズの端部が気密固着される第1チャンバーと、該第1チャンバー内の空気を排気する第1排気口と、を具備することを特徴とする請求項1に記載のラマン分光装置。
【請求項3】
前記前処理室が、ターゲット電極と、該ターゲット電極と対向して配置され前記分析物のある前記試料基板を載せる第2試料台と、該第2試料台を支持する第2支持台と、前記ダーゲット電極と前記第2試料台との間に直流電圧を印加して前記第2試料台に載せた前記分析物がある前記試料基板にスパッタで前記金属膜を被覆する電源と、前記ターゲート電極と前記第2試料台と前記第2支持台を収納した第2チャンバーと、該第2チャンバー内の空気を排気する第2排気口と、を具備することを特徴とする請求項1または2に記載のラマン分光装置。
【請求項4】
前記連結部が、前記前処理室と前記試料観察室を分離する分離ゲート、または、該分離ゲートと前記搬送手段とを具備することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のラマン分光装置。
【請求項5】
前記搬送手段が、前記金属膜が被覆した前記分析物のある前記試料基板を前記前処理室の前記第2試料台から持ち上げ、前記試料観察室の前記第1試料台に移動し、前記試料基板を前記第1試料台に設置する機能を有する保持機構および移動機構を具備することを特徴とする請求項1または4に記載のラマン分光装置。
【請求項6】
前記金属膜の厚さが、10nm〜200nmであることを特徴とする請求項1〜3、5のいずれか一項に記載のラマン分光装置。
【請求項7】
前記金属膜の材質が、少なくともCu、Ag、Au、PdおよびRuのいずれかであることを特徴とする請求項1〜3、5、6のいずれか一項に記載のラマン分光装置。
【請求項8】
前記分析物に分極を誘起するラマン散乱の励起光としての前記レーザ光を出射する前記レーザ光源が、近赤外から紫外までの連続光源またはパルス光源を用いることを特徴とする請求項1または2に記載のラマン分光装置。
【請求項9】
前記分析物に分極を誘起するラマン散乱の励起光としての前記レーザ光を出射する前記レーザ光源が、2種以上の周波数からなる近赤外から紫外までの連続光源またはパルス光源を用いることを特徴とする請求項8に記載のラマン分光装置。
【請求項10】
前記の2種類の光源において,第1の光源は近赤外から紫外までの範囲にあるいずれかの一定周波数であり、第2の光源は第1の光の周波数を含み第1の周波数のまわりに広がる連続スペクトルをもつ光源であることを特徴とする請求項9に記載のラマン分光装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−181352(P2010−181352A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26845(P2009−26845)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】