説明

ラミネートインキ用ポリウレタン樹脂

積層包装材用印刷インキにおける使用に特に適しているポリウレタン樹脂が開示される。該ポリウレタン樹脂は、該ポリウレタン樹脂を含有する該インキで印刷された積層品が滅菌条件にさらされる前後において、該積層品の積層接着強度を維持する。画像を保有する積層品および滅菌後の該積層品の構造的一体性をも開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層構造を印刷するために使用される溶剤型のフレキソ印刷またはグラビア印刷用インキに対応する皮膜形成基材として、単独で使用する場合または他の適当なバインダー樹脂と併用する場合(前者の場合が好ましい)、印刷して積層される包装用フィルムの接着強度を滅菌処理(レトルト処理)の前後において維持する特定のポリウレタン樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の包装袋または包装容器に関する多様化に伴い、これらの装飾または表面保護のために使用される印刷用インキまたはコーティング剤に対して、高度な性能が要求されている。このようなインキまたはコーティング剤は、様々な種類のプラスチックフィルムに対する優れた接着性、耐ブロッキング性、および低温滅菌条件と滅菌条件における耐性を示さなければならない。
【0003】
例えば、プラスチックフィルムのための印刷用インキは、常套のインキと比べて、より優れた印刷適正と、より広範囲のフィルムに対する接着性と、より優れた耐ブロッキング性および光沢を示す必要がある。
【0004】
特に、食品包装分野においては、積層フィルム材料製の袋または容器は、衛生的であり、該袋または容器の内容物がインキと直接的に接触することがなく、印刷された製品に高品位で満足な外観をもたらすという理由から使用されている。
【0005】
一般に、このような積層フィルム材料を製造するための方法には2種類ある。1つの方法は押出積層法であり、該方法においては、プラスチックフィルム製支持体をインキで印刷し(必要に応じてプライマーをインキ塗布面上に塗布する)、次いで、ポリオレフィンなどの溶融した樹脂を、インキ塗布面上に押し出す。別の方法は接着積層法であり、該方法においては、プラスチックフィルム製支持体のインキ塗布面上に接着剤を塗布し、次いで、プラスチックフィルムを、接着剤塗布面上に積層する。したがって、ラミネートインキは、積層されるフィルムと印刷支持体に対して優れた接着性を示さなければならない。
【0006】
例えば、スーパーマーケットの棚に陳列される場合、長期間にわたる微生物の攻撃とそれによる時期尚早の腐敗から、充填商品(特に食料品)の品質を保つために、しばしば、包装された充填商品を包装後直ちに滅菌処理に付すことによって、貯蔵寿命の著しい短縮をもたらす潜在的原因となるあらゆる種類の痕跡量の微生物をも消滅させている。以下において用いる滅菌という用語は、乾熱滅菌、蒸気滅菌および沸騰水中への浸漬などの当該分野の技術を含む。単層の印刷された包装フィルムのみでは、例えば、水蒸気または酸素に対しては、一般的に、適切なシール特性を確保して所望のバリア特性を付与するためにはが不十分であるので、積層品が一般的に使用される。該積層品においては、2枚またはそれ以上のフィルムが、所望の性能特性を兼ね備える適当な接着剤によって、相互に接着される。装飾および情報用途のために必要なインキ皮膜は、積層構造を構成する複数のフィルムのうちの一枚のフィルムの内側に印刷されるので、該インキ皮膜が充填商品と直接接触することはない。印刷した後に、印刷されたフィルムは、接着剤を介して他の非印刷フィルムに接して積層され、または1枚よりも多いフィルムからなる非印刷の積層構造体に接して積層される。
【0007】
積層されたフィルム材料がさらに滅菌処理に付される場合、このフィルム積層品においては、滅菌処理の間に層間剥離が生じてはならない。印刷用インキまたは塗料に対して要求されるこれらの性能の大部分は、主に、使用する樹脂バインダーの性能に依存する。したがって、プラスチックフィルムのための印刷用インキの場合、個々の印刷用インキが所望の性能を満たすように、1種または複数種の様々な樹脂バインダーが選択される。種々のポリマーが印刷用インキの配合処方において使用されており、例えば、ポリアミド、セルロース誘導体、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ケトン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステルおよびポリビニルブチラール(PVB)が使用されている。しかしながら、異なる支持体に対する接着特性の不整合と、アルコールまたはエステルに対する選択溶解性と、コレジン(coresins)との不適合性と不十分な積層接着強度のため、これらのポリマーを使用することには制限がある。
【0008】
既存の市販されているポリウレタン樹脂は、積層包装用途に用いる液状インキにおいて有用である。これらのポリウレタン樹脂は、多数の支持体に対して良好な接着性を示し、特にポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリプロピレン(PP)などのプラスチックフィルムに対して良好な接着性を示す。既存のポリウレタン樹脂は、フレキソ印刷およびグラビア印刷の用途において使用される典型的なインキ用溶媒、例えばアルコール、エステルおよびアルコール/エステル混合物にも可溶である。
【0009】
しかしながら、このようなポリウレタン樹脂は不十分な滅菌特性を有する。
【0010】
既存の市販されているポリウレタンは、滅菌処理後に、積層接着強度の50%を上回る急激な減少を示す。このことは、漏出などの無視できない危険性を伴う包装加工機にとっては許容できないものであり、また、ガスおよび微生物に対する所望のバリア特性に反し、さらに、輸送中または取り扱いの間に積層構造体の各フィルムの剥離を伴う機械的破壊をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、滅菌処理後と滅菌処理前で高い積層接着強度を維持するポリウレタン樹脂であって、アルコール、エステルおよびアルコール/エステル混合物に対する溶解性を保ち、一般的には二酸化ケイ素/酸化アルミニウムで被覆された接着妨害性の高い支持体に対する接着性、良好な顔料粉砕性および安定な流動性を示す該ポリウレタン樹脂を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、積層包装用途のためのインキ組成物において使用されるポリウレタン樹脂であって、滅菌条件にさらされる前後において、高い積層接着強度を有効に維持する該ポリウレタン樹脂が提供される。
【0013】
即ち、本発明の対象はポリイソシアネートおよびポリアルコールの反応生成物であるイソシアネートを末端基とするプレポリマーを、ジアミンで連鎖延長させることによって得られるポリウレタン樹脂である。本発明による該樹脂は、滅菌の前後で高い積層接着強度を実質的に維持する。
【0014】
本発明によるポリウレタン樹脂は、滅菌処理の前後で少なくとも同等の高い積層接着強度を保持すると共に、アルコール、エステルおよびアルコール/エステル混合物に対する溶解性、一般的には二酸化ケイ素/酸化アルミニウムで被覆された接着妨害性の高い支持体に対する接着性、良好な顔料粉砕性および安定な流動性を示す。
【0015】
本発明の別の対象は、ポリウレタン樹脂、着色剤および有機溶媒を含有する積層用途に適当な印刷用インキ組成物であり、該インキ組成物は、フレキソまたはグラビア包装用途、特に、滅菌条件にさらされるこれらの包装用途に対して適当である。
【0016】
したがって、本発明の別の対象は、本発明によるインキ組成物で印刷された一つの印刷面を有する積層品であり、該インキ組成物中に本発明のポリウレタン樹脂に起因して、積層品が滅菌条件にさらされた後において、印刷画像は実質的に不変のままであり、また、積層品には層間剥離に基づく欠陥は生じない。
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1の態様において、本発明は、積層包装用途のためのラミネートインキ用バインダーとしてポリウレタン樹脂を使用することに関する。該樹脂は、イソシアネートを末端基とするプレポリマーを形成するジイソシアネートおよびポリアルコールとの反応生成物を含有し、該プレポリマーをジアミンで連鎖延長することによってポリウレタン樹脂が形成される。該ポリウレタン樹脂は、滅菌処理の前後において、少なくとも同等の高い積層接着強度を維持する。即ち、滅菌処理が121℃/30分/1.03bar(飽和水蒸気圧)の条件下で行われる場合において、滅菌処理の前後における該ポリウレタン樹脂の積層接着強度は、300mm/分で剥離した場合、少なくとも0.5N/15mmである。なお、該積層接着強度は、厚みが1〜5マイクロメータの範囲である乾燥インキ被膜を用いて計測される。
【0018】
好ましい実施態様において、本発明は、積層包装用途のためのラミネートインキ用バインダーとしてポリウレタン樹脂を使用することに関する。該樹脂は、イソシアネートを末端基とするプレポリマーを形成するジイソシアネートおよびポリアルコールとの反応生成物を含有し、該プレポリマーをジアミンで連鎖延長することによってポリウレタン樹脂が形成される。該ポリウレタン樹脂は、滅菌処理の前後において、少なくとも同等の高い積層接着強度を維持する。即ち、滅菌処理が121℃/30分/1.03barの飽和水蒸気圧の条件下で行われる場合において、滅菌処理の前後における該ポリウレタン樹脂の積層接着強度は、300mm/分で剥離させた場合、少なくとも1.2N/15mm(この値は200g/インチに相当する)である。なお、該積層接着強度は、厚みが1〜5マイクロメータの範囲である乾燥インキフィルムを用いて計測される。
【0019】
本明細書に記載されるポリウレタン樹脂は、包装用途のための印刷用インキを配合する場合のバインダーとして有用であり、積層品を作成する場合、該積層品は、滅菌条件にさらされた後において、印刷されるインキ画像および構造的一体性を維持する。
【0020】
本発明によるポリウレタン樹脂は、有機溶媒、例えばアルコール、エステルおよび、アルコール/エステル混合物に対して可溶性であり、包装に用いるラミネートインキを配合する場合に特に有用である。アルコール、エステルおよびアルコール/エステル混合物に対する該ポリウレタン樹脂の溶解性は、フレキソ印刷またはグラビア印刷用途のためのインキまたは塗布組成物を調製することを可能にする。
【0021】
本発明によるポリウレタン樹脂を用いて調製されるラミネートインキおよび塗布組成物は、常套の市販のポリウレタン樹脂バインダー系を用いて調製されるラミネートインキおよび塗布組成物と比べて、優れた押出接着強度(extrusion bond strength)、耐ブロック性、印刷適正、再溶解性、耐滅菌性および多種多様のフィルムに対する優れた接着性を示す。特に、本発明によるポリウレタン樹脂を含有するインキ組成物は、該インキ組成物で印刷される積層品が滅菌処理に付される包装用途に対して特に適する。
【0022】
上記のポリウレタン樹脂は、脂肪族、脂環式、芳香族またはアルキル芳香族のジイソシアネートをポリアルコールと反応させて、イソシアネートを末端基とするポリウレタンプレポリマーを形成させることにより調製される。次いで、該プレポリマーを、ジアミンを用いて連鎖延長させることによってウレア結合を形成させる。一般的には、この方法によって得られるポリウレタン樹脂は10000〜100000ダルトン、好ましくは20000〜60000ダルトンの数平均分子量を有する。
【0023】
下記式で表されるジイソシアネート:
OCN−Z−NCO
(式中、Zは脂肪族基、脂環式基、芳香族基またはアルキル芳香族基を示す)をポリアルコール(例えばポリエーテルジオール、ポリエステルジオールまたはこれらの混合物等と反応させることによって、イソシアネートを末端基とするポリウレタンプレポリマーを調製することができる。ジイソシアネートの例には、以下のものが含まれる(ただしこれらに限定されない):1,4−ジイソシアナトブタン、1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,5−ジイソシアナト−2,2−ジメチルペンタン、2,2,4−または2,4,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,10−ジイソシアナトデカン、1,3−および1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1−イソシアナト−5−イソシアナトメチル−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)、2,3−、2,4−または2,6−ジイソシアナト−1−メチルシクロヘキサン、4,4’−または2,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、1−イソシアナト−3(4)−イソシアナトメチル−1−メチル−シクロヘキサン、2,4−,2,5−または2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−または1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−または2,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,3−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン、ジイソシアネート二量体およびこれらの混合物。ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが好ましい。
【0024】
適当なポリアルコールには、1種または複数種のポリエーテルジオール、1種または複数種のポリエステルジオールおよびこれらの混合物が含まれる。
【0025】
適当なポリエーテルジオールには、下記式で表されるものが含まれる:
【0026】
【化1】

式中、Rは、2〜8個の炭素原子を有する直鎖状または枝分状のアルキレン基を示す。好ましくは、RはC〜Cのアルキレン基である。特に有用なポリエーテルジオールの例には、ポリ(エチレンエーテル)グリコール、ポリ(プロピレン)エーテルグリコールおよびポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールが含まれ(ただしこれらに限定されない)、就中、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールが好ましい。混合比が50:50の、ポリテトラメチレングリコールとポリプロピレングリコールとの混合物が特に好ましい。ポリエーテルジオールの数平均分子量は、一般的に250〜10000の範囲であり、好ましくは1000〜2500であり、より好ましくは1250〜2000である。この種のポリエーテルジオールは、副次的な量、例えば40重量パーセントまでのエステル単位も含有できる。これらのジオールは、例えば、1種または複数種の上述したポリエーテルジオールとラクトン、例えばε−カプロラクトンなどを反応させることによって得ることができる。
【0027】
有用なポリエステルジオールには、下記式で表されるもが含まれる:
【0028】
【化2】

式中、
・RはジオールHOROH残基を示す(式中、Rは、2〜8個の炭素原子を有する直鎖状または枝分状のアルキレン基を示す)。
・Yは−OCRCOOROを示し[式中Rは上述した意義を有し、Rはジカルボン酸HOOCRCOOHまたはこれらの無水物(I)の残基を示す(式中Rは、2〜8個の炭素原子を有する直鎖状または枝分状のアルキレン基を示す)]、pおよびqは独立して0〜600、好ましくは1〜100の数を示し、p+qは1〜1200、好ましくは1〜250である。あるいは、Yは−OCRO−を示し(式中、Rはラクトン(II)またはα,ω−ヒドロキシカルボン酸HORCOOHの残基を示す)、p、qおよびp+qは上記の値を示す。本発明において使用できるジオールHOROHと、カルボン酸HOOCRCOOHと、無水物(I)と、ラクトン(II)とα,ω−ヒドロキシカルボン酸HORCOOHには、ポリエステルジオールを調製するために知られているものが含まれる。適当なジオールには、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルジオール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコールおよびジプロピレングリコールなどが含まれる。適当なジカルボン酸および無水物には、アジピン酸、フタル酸および無水フタル酸などが含まれる。適当なラクトンおよびα,ω−ヒドロキシカルボン酸には、ブチロラクトン、カプロラクトンおよびα,ω−ヒドロキシカプロン酸などが含まれる。特に有用なポリエステルジオールの例には、ポリ(カプロラクトン)ジオール、ポリ(ジエチレングリコール−コ−オルト−フタル酸)、ポリ(1,6ヘキサンジオール−コ−オルト−フタル酸)、ポリ(ネオペンチルグリコール−コ−アジピン酸)およびポリ(エチレングリコール−コ−アジピン酸)が含まれる(ただし、これらに限定されない)。ポリエステルジオールの数平均分子量は、一般的に250〜10000の範囲であり、好ましくは500〜2500であり、より好ましくは1000〜2000である。ポリエステルジオールもエーテル単位を含有できる。好ましい実施態様においては、ポリエステルジオールは、40重量%までの量でエーテル単位を含有する。これらのジオールは、例えば、1種または複数種の上述したポリエステルジオールと、1種または複数種の1,2−アルキレンオキシド、例えば、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドなどを反応させることにより得ることができる。
【0029】
【化3】

【0030】
【化4】

【0031】
ポリエーテルジオールは、ポリエステルジオールと比較して、脂肪族アルコール溶媒中でより大きな溶解度を示すポリウレタン樹脂を生成する観点で望ましい。しかしながら、ポリエステルジオールは、該樹脂により大きな引張強度をもたらす。したがって、本発明により得られるポリウレタン樹脂は、高分子量ジオールの選択に依存して、高い溶解度および比較的低い引張強度を有する該樹脂、すなわち、完全にポリエーテルジオールより形成される該樹脂から、比較的低い溶解度と比較的高い引張強度を有する該樹脂、すなわち完全にポリエステルジオールより形成される該樹脂へと改質させることができ、また、これらの溶解度特性と引張強度特性の間におけるあらゆる組み合わせは、ポリエーテルジオールとポリエステルジオールの混合物を使用する場合においてもたらされる。溶解度と強度の最適な組み合わせは、常套の試験を通じて得ることが出来る。
【0032】
ポリアルコールとジイソシアネートは、当業者に周知の条件下で反応させる。好ましくは、反応は溶媒の存在下において行われ、該溶媒は、一般的には該樹脂を使用して配合される組成物において用いられる溶媒、例えば、インキ配合用溶媒系などの溶媒である。
ジイソシアネートとポリアルコールとの反応に使用される、適当な溶媒の例には、1〜5個の炭素原子を有するアルキル基を含むアルキルアセテート、例えば、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテートおよびペンチルアセテート等が含まれるが(ただし、これらに限定されない)、ブチルアセテートが特に好ましい。
【0033】
ポリアルコールに対するジイソシアネートの割合は、ウレタンセグメントとウレアセグメントの所望の割合と共に、所望の分子量が得られるように選択される。プレポリマーがイソシアネートを末端基として有することを確実にするために、過剰のジイソシアネートが使用される。ジオールに対するジイソシアネートの当量比は、一般に1.2〜5.0対1の範囲であり、好ましくは2.0対1の割合である。
【0034】
イソシアネートを末端基とするプレポリマーの調製に使用される溶媒の全量は、一般に全溶液の0〜95重量パーセントの範囲であり、好ましくは全溶液の10〜80重量パーセントの範囲であり、より好ましくは全溶液の20〜40重量パーセントの範囲である。
【0035】
イソシアネートを末端基とするプレポリマーの形成は、一般に0〜130℃の温度域で行われ、好ましくは50〜90℃の温度域で行われる。反応時間は、一般に1〜12時間の範囲であり、好ましくは2〜4時間の範囲である。
【0036】
次いで、イソシアネートを末端基とするプレポリマーを、ジアミンで連鎖延長することによって、ポリウレタン樹脂が形成される。ジアミンは、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミンまたは複素環ジアミンのいずれであってもよく、これらのジアミンにおいて、各アミン基は少なくとも1つの不安定な水素原子を有する。多数の適当なジアミンの中で、以下のものが挙げられる:エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、ヒドラジン、ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼン、2−(アミノメチル)−3,3,5−トリメチルシクロペンチルアミン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)−メタン、ビス−(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)−メタン、1−アミノ−1−メチル−3(4)−アミノメチル−シクロヘキサン、ビス−(4−アミノ−3,5−ジエチルシクロヘキシル)−メタン、ビス−アミノ−メチル−ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダン、2,3−、2,4−または2,6−ジアミノ−1−メチル−シクロヘキサン、二量体ジアミン(二量体化された脂肪酸からのジアミン)、ノルボルナンジアミン、2,2,4−または2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、デュポン社製の銘柄ダイテック(登録商標)Aおよびダイテック(登録商標)EB、フンツマン社製の銘柄ジェファミン(登録商標)[即ち、ビス(プロピルアミノ)ポリプロピレンオキシドジアミン]、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、ピペラジン、1,3−ジ−ピペリジルプロパンおよびアミノエチルピペラジン。イソホロンジアミンが好ましい。
【0037】
ジアミンがプレポリマーと反応する条件は臨界的ではなく、当業者の有する技術的範囲内の事項である。好ましくは、反応は溶媒中で行われるか、前述のインキ用樹脂を用いて配合される最終組成において最後に使用される溶媒系の成分中で行われる。
連鎖延長反応において使用される溶媒の量は、一般に0〜90重量パーセントの範囲であり、好ましくは35〜60重量%である。ジアミン由来のアミンに対するプレポリマーのイソシアネート末端基の割合は、ウレア基の割合と当該樹脂の最終的なポリマー分子量を決定する。ジアミンに対するジイソシアネートのモル比は、一般に6:1〜1:5であり、好ましくは4:1〜1:4である。一般的には、プレポリマーを化学量論的過剰量のジアミンと反応させる場合、未反応イソシアネート基はプレポリマー中に残存しない。したがって、連鎖延長されたプレポリマー中の未反応イソシアネート基を末端キャップ(endcap)するためにおこなわれる、鎖延長されたプレポリマーとアミン停止剤またはアルコール停止剤の反応は必要ない。あるいは、化学量論的過剰量に満たない量のジアミンを使用する場合、以下に記載するように末端キャップをすることが可能な、未反応イソシアネート基が存在してもよい。ジアミンとの連鎖延長反応は、一般に0〜90℃の温度範囲、好ましくは25〜75℃の範囲でおこなわれる。
【0038】
ジアミンとの連鎖延長反応に続いて、未反応イソシアネート基が存在する場合、好ましくは、一部または全ての残存するイソシアネート基を、アミンまたはアルコールで末端キャップすることによって、前述のポリ(ウレタン−ウレア)樹脂の生成反応を停止させる。適当なアミンの例はモノアミンおよびジアミンであり、以下のアミンが含まれる(ただしこれらに限定されない):ブチルアミン、ジブチルアミン、アミノプロピルモルホリン、アミノエチルピペラジン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジ(イソプロパノール)アミン、アミノエトキシエタノール、アミノウンデカン酸、エタノールアミン、ジメタノールアミン、4−アミノフェノール、イソホロンジアミン、二量体ジアミン、オレイルアミン、ヒドラジンおよびジェファミン銘柄[即ち、モノまたはビス(アミノプロピル)ポリプロピレンオキシド]。適当なアルコールの例には、以下のものが含まれる(ただし、これらに限定されない):1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、エタノール、オレイルアルコール、12−ヒドロキシステアリン酸、N−(ヒドロキシエチル)ステアルアミド(stearamide)、エトキシ化ノニルフェノール、プロポキシ化ノニルフェノール、グリコール酸および6−ヒドロキシカプロン酸。
【0039】
残存する遊離イソシアネート基の末端キャップ化反応は、当業者において周知である条件下で行われる。好ましくは、該反応は溶媒の存在下において行われるか、前述のインキ用樹脂を用いて配合される最終組成物において最後に使用される溶媒系の成分中で行われる。遊離イソシアネート基を末端キャップするために使用される溶媒の総量は、一般に0〜90重量パーセントの範囲であり、好ましくは25〜75重量パーセントの範囲である。
【0040】
末端キャップ化反応温度は、一般に0〜100℃の範囲であり、好ましくは25〜75℃の範囲である。末端キャップ化反応時間は、一般に0.1〜6時間の範囲であり、好ましくは0.25〜1時間である。アミンまたはアルコールに対する連鎖延長樹脂のNCO基の当量比は、一般に5:1〜1:5の範囲であり、好ましくは1:2〜2:1の範囲である。
【0041】
本発明によるポリウレタン樹脂は、該ポリウレタン樹脂を含有するインキ組成物で印刷された積層品が滅菌処理に付される前後において、少なくとも高い積層接着強度を有効に維持する。
【0042】
該ポリウレタン樹脂が、レトルト滅菌処理の前後で少なくとも高い積層接着強度を維持することにより、バインダーとして該ポリウレタン樹脂を含有するインキ組成物で印刷された積層品は、該積層品の印刷画像および構造的一体性を有効に保持する(すなわち、該積層品は、層間剥離に関連する欠陥を実質的に含まない)。
【0043】
「高い積層接着強度」という用語は、300mm/分の速度で剥離される場合に該ポリウレタン樹脂が発揮する0.5N/15mmより大きい積層接着強度を意味する。好ましい実施態様においては、積層接着強度は、300mm/分の速度で剥離される場合、少なくとも1.2N/15mmである。
【0044】
本発明によるラミネートインキ組成物は、本発明によるポリウレタン樹脂と、着色剤と、有機溶媒を含有する。本発明によるインキ組成物は、フレキソ印刷またはグラビア印刷において使用してもよい。特に、本発明によるインキは、インキの重量に基づいて、10wt%〜50wt%のポリウレタン樹脂と、6wt%〜50wt%の着色剤と、10wt%〜80wt%の有機溶媒を含有する。この場合、成分濃度は、フレキソ印刷またはグラビア印刷における使用に応じて調整してもよい。好ましくは、グラビア印刷インキは、8wt%〜60wt%のポリウレタン樹脂と、3wt%〜30wt%の着色剤と、10wt%〜80wt%の有機溶媒、例えばアルキルエステル溶媒などを含有する。フレキソ印刷インキは、8wt%〜60wt%のポリウレタン樹脂と、3wt%〜50wt%の着色剤と、10wt%〜80wt%の有機溶媒、例えばアルコール溶媒などを含有する。ふさわしくは、該インキの適切な粘度は、ザーン流出カップNO.2で測定される場合、15秒〜30秒である。流出カップ測定は、インキの粘度を測定する標準的な方法であり、較正されたオリフィスを通過する検量されたインキの流量を計測することを伴う。比較的低い粘度のインキは一般的にグラビア印刷において使用され、また、比較的高い粘度のインキは一般的にフレキソ印刷において使用される。したがって、インキがザーン流出カップNo.2での測定において28秒の粘度を有する場合、該インキはフレキソ印刷に適しており、また、インキがザーン流出カップNo.2での測定において18秒の粘度を有する場合、該インキはグラビア印刷へ適用することに適している。
【0045】
本発明の別の対象は、高分子支持体の表面上へ上記のラミネートインキを画像方式で
印刷して該支持体の表面上に乾燥したインキ画像を形成させる方法に関する。該画像は、周囲温度において加圧下で同種または異種の支持体の第2表面に接触させたときに、指触乾燥状態を示すと共に該支持体表面に強固に接着し、ブロック化されない。任意の高分子支持体をこの方法で印刷してもよい、好ましい高分子支持体には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)で被覆されたポリエチレンテレフタレート、PVDCで被覆されたポリプロピレン、金属化ポリエチレンテレフタレートおよび金属化ポリプロピレンが含まれる。積層に用いられる特に好ましいフィルム支持体は、PETフィルム、PPフィルム、PAフィルム、二酸化ケイ素で被覆されたPETフィルム、PAフィルムおよびPPフィルムならびに酸化アルミニウムで被覆されたPETフィルム、PAフィルムおよびPPフィルムである。
【0046】
第二の支持体またはさらに多くの支持体は、常套の方法によって、第一の支持体上の乾燥したインキ画像上に積層させることにより、印刷積層品を形成させてもよい。したがって、第二の支持体は、乾燥した画像上に押出溶融液として塗布することによって形成させてもよい。あるいは、予め形成された第二の支持体または組み合わせフィルムを、接着性表面を介して、乾燥したインキ画像に積層されてもよい。第二の支持体または組み合わせフィルムは、第一の支持体と同じ材料から構成されていてもよく、または、印刷積層品の最終用途の種類に応じて、異なる材料から構成されていてもよい。
【0047】
一般に、支持体のうちの少なくとも1つは、可視光線に対して半透明であってもよく、より一般的には、透明であってもよい。このような支持体の透明性または半透明性に起因して着色剤は、支持体を介して色相および/または解像可能な画像を発現する。
【0048】
本発明の別の実施態様は、さらに、滅菌された積層品を形成するために、印刷積層品を滅菌条件にさらすことを含む。この場合、該滅菌された積層品においては、インキ画像が実質的に不変であり、また、該滅菌された積層品は層間剥離による欠陥を有さない。この実施態様においては、印刷積層品は、滅菌により高温の現場で処理される内容物(例えば、食品、薬剤など)のための包装材料であってもよい。食品包装業界において一般に使用される典型的な滅菌工程には、121℃/30分/1.03bar(飽和水蒸気圧)の条件下での、水蒸気の使用が含まれる。
【0049】
上記の滅菌された積層品は、印刷画像を形成するために使用される印刷用インキ組成物中に、本発明によるポリウレタン樹脂が存在することに起因して、滅菌処理にさらされた後においても上記の特性を有効に維持する。
【0050】
以下の実施例は、本発明を例示的に説明するものであって、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0051】
1.試験方法
US単位およびSI単位
US単位およびSI単位は、以下のように相互換算できる:
250゜F=121.1℃
175゜F=79.4℃
1g/インチ=0.005791N/15mm
1psi=0.0689475728bar
1lb/ream=1.631g/m
【0052】
印刷
パマルコ社製A165P手動式校正機(hand proofer)を、フィルム上へインキを印刷する際に使用した。
【0053】
粘着テープ法
3M社製「スコッチ(登録商標)610」のテープを、印刷物(print)を乾燥させた後すぐに貼り合わせた:
0%=支持体から100%のインキが剥がれる、乏しいインキ接着性。
100%=支持体から0%のインキが剥がれる、優れたインキ接着性。
【0054】
耐ブロック性
印刷物を、インキ塗布面/裏面およびインキ塗布面/インキ塗布面が接触するように折重ねた。
折重ねた印刷物を、オーブン内で52℃/2.8bar/24時間(125F/40psi/24時間に相当する)の条件にさらした。
1=印刷面から100%のインキ転写を伴う、乏しい耐ブロック性。
10=印刷面から0%のインキ転写を伴う、優れた耐ブロック性。
【0055】
接着剤貼合せ
積層構造(実施例):フィルム/インキ/接着剤/フィルム
乾燥接着剤皮膜の厚さ:3.3〜4.9g/m(2−3 lb/reamに相当する)
貼合せ条件:ジャックソン−ハーシュラミネーティング社製の「カード/ガード」(登録商標)貼合せ機を使用して、79℃/1.438bar/1秒(175F/20psi/1秒に相当)の条件下でおこなった。
接着剤を印刷フィルム上に塗布した。塗布量および硬化条件は接着剤製造メーカの推奨に従った。溶剤型接着剤「アドコート(登録商標)812」/「アドコート(登録商標)811B」の場合、乾燥状態で3.3〜4.9g/m(2〜3 lb/reamに相当)になる塗布量で塗布し、積層品を52℃で3日間硬化させた。溶剤型接着剤の「リオホル(登録商標)UR3644」/「ハードナーUR6055」の場合、乾燥状態で3.3〜4.9g/m(2〜3 lb/reamに相当する)になる塗布量で塗布し、積層品を室温で3日間硬化させた。
【0056】
滅菌条件
積層品を硬化させた後、該積層品を、オールアメリカン・エレクトリック社製の加圧蒸気滅菌器内において、121℃/30分/1.03barの飽和水蒸気圧(250F/15psi/30分に相当する)の条件下での水蒸気滅菌にさらした。積層品の接着強度を、滅菌前および滅菌直後に測定した。
【0057】
接着強度試験
トゥイングアルバート社製の摩擦/剥離試験装置モデル225−1を用いて、印刷物をテープで裏付けし、300mm/分の速度にて180度で剥離した。接着強度(N/15mm)は3回の測定値を平均化した値である。
破壊:フィルムが剥離中に完全に裂ける。
FT:フィルムが剥離中に部分的に裂ける。
転写:100%=剥離の間、全てのインキが印刷フィルムから転写される。
0%=剥離の間、印刷フィルムから転写されるインキはない。
【0058】
2.原料
デスモジュールW(登録商標)、バイエル社製
プルリオールP2000(登録商標)、BASF社製
ポリTHF2000(登録商標)、BASF社製
ビーキャット8(登録商標)、シェファード・ケミカル社製
プルラコール2010(登録商標)、BASF社製
ビーキャット−8(登録商標)、シェファード・ケミカル社製
バーサミドPUR1120(登録商標)、コグニス社製
モンジュールML(登録商標)、バイエル社製
【0059】
ブルー15:4=リオノールブルーFG7400G顔料、トーヨー社製
TR52=二酸化チタン顔料、フンツマン社製
RDE2=二酸化チタン顔料、ケミラ社製
【0060】
T523−3=コロナ前処理された15μmの二軸延伸PPフィルム、AETフィルム社製
マイラー(登録商標)813=コロナ前処理された12μmのPET、デュポン社製
テクバリア(登録商標)NR=SiOで被覆された15μmの配向性PAフィルム(未コロナ処理)、三菱プラスチック社製
テクバリア(登録商標)TZ=SiOで被覆された12μmのPETフィルム(未コロナ処理)、三菱プラスチック社製
エンブレム(登録商標)1500=コロナ前処理された15μmの二軸延伸PAフィルム、ハニーウェル社製
トレデガー(登録商標)CPP=コロナ前処理された76μmの白色で不透明な無延伸PPフィルム、トレデガー社製
コロナ前処理された50μmの白色で不透明なPEフィルム、サザン・コンバーター社製
26μmのアルミ箔、レイノルズ社製
【0061】
アドコート(登録商標)812/アドコート(登録商標)811B=2成分系ポリウレタン接着剤、ローム・アンド・ハース社製
リオホル(登録商標)UR3644/ハードナーUR6055=2成分系ポリウレタン接着剤、ヘンケル社製
【0062】
PVBブルーインキ=SFPブルー、ジークヴェルク社製
PVBホワイトインキ=HP930白、ジークヴェルク社製
【0063】
ポリウレタンに関する実施例
樹脂例1:
6.65%のデスモジュール(登録商標)Wと、12.64%のプルリオール(登録商標)P2000と、12.64%のポリTHF(登録商標)2000とを、窒素気流中80〜85℃で2時間にわたり、2.60%のNCO含有量が得られるまで反応させた。この場合、触媒として0.02%のビーキャット(登録商標)8を使用し、溶媒として8.75%のブチルアセテートを使用した。得られた、イソシアネートを末端基とするプレポリマーは、78.50%の固形物を含有し、25℃で2220cpsの粘度を示した。
【0064】
最終的なポリウレタン樹脂溶液は、45.51%の1−プロパノールおよび11.06%のブチルアセテートを含有する溶剤中に2.72%の割合でイソホロンジアミンを含有する溶液中へ上記プレポリマー溶液を添加することによって調製した。
【0065】
最終的なポリウレタン溶液は、25℃で580cpsの粘度を示し、36.5%の固形物を含有し、2未満のガードナーカラーを示した。
【0066】
樹脂例2:
6.76%のデスモジュール(登録商標)Wと、25.90%のポリTHF(登録商標)2000とを、窒素気流中、80〜85℃で2時間にわたり、2.60%のNCO含有量が得られるまで反応させた。この場合、触媒として0.02%のビーキャット(登録商標)8を使用し、溶媒として8.95%のブチルアセテートを使用した。得られたイソシアネートを末端基とするプレポリマーは、81.8%の固形物を含有し、25℃で14000cpsの粘度を示した。
【0067】
最終的なポリウレタン樹脂溶液は、45.91%の1−プロパノールおよび9.72%のブチルアセテートを含有する溶剤中に2.75%の割合でイソホロンジアミンを含有する溶液中に上記プレポリマー溶液を添加することによって調製した。
【0068】
最終的なポリウレタン溶液は、25℃で6060cpsの粘度を示し、35.80%の固形物を含有し、および2未満のガードナーカラーを示した。
【0069】
樹脂例3:
6.47%のモンジュール(登録商標)MLと、13.10%のプルラコール(登録商標)2010および13.10%のポリTHF(登録商標)2000とを、窒素気流中、80〜85℃で2時間にわたり、2.60%のNCO含有量が得られるまで反応させた。この場合、触媒として0.02%のビーキャット(登録商標)8を使用し、溶媒として8.95%のブチルアセテートを使用した。得られたイソシアネートを末端基とするプレポリマーは、80.50%の固形物を含有し、25℃で3670cpsの粘度を示した。
【0070】
最終的なポリウレタン樹脂溶液は、45.93%の1−プロパノールおよび9.73%のブチルアセテートを含有する溶剤中に2.71%の割合でイソホロンジアミンを含有する溶液中へ上記プレポリマー溶液を添加することによって調製した。
【0071】
最終的なポリウレタン溶液は、25℃で3990cpsの粘度を示し、35.3%の固形物を含有し、および2未満のガードナーカラーを示した。
【0072】
樹脂例4:
6.48%のモンジュール(登録商標)MLと、26.20%のプルラコール(登録商標)2010とを、窒素気流中、80〜85℃で2時間にわたり、2.60%のNCO含有量が得られるまで反応させた。この場合、触媒として0.02%のビーキャット(登録商標)8を使用し、溶媒として8.95%のブチルアセテートを使用した。得られたイソシアネートを末端基とするプレポリマーは、79.70%の固形物を含有し、25℃で926cpsの粘度を示した。
【0073】
最終的なポリウレタン樹脂溶液は、45.94%の1−プロパノールおよび9.73%のブチルアセテートを含有する溶剤中に2.67%の割合でイソホロンジアミンを含有する溶液中へ、上記プレポリマー溶液を添加することによって調製した。
【0074】
最終的なポリウレタン溶液は、25℃で696cpsの粘度を示し、32.7%の固形物を含有し、また、該溶液は不透明であった。
【0075】
樹脂例5:
6.76%のデスモジュール(登録商標)Wと、25.88%のプルラコール(登録商標)2010とを、窒素気流中、80〜85℃で2時間にわたり、2.60%のNCO含有量が得られるまで反応させた。この場合、触媒として0.02%のビーキャット(登録商標)8を使用し、溶媒として8.94%のブチルアセテートを使用した。得られたイソシアネートを末端基とするプレポリマーは、81.70%の固形物を含有し、25℃で828cpsの粘度を示した。
【0076】
最終的なポリウレタン樹脂溶液は、45.89%の1−プロパノールおよび9.72%のブチルアセテートを含有する溶剤中に2.78%の割合でイソホロンジアミンを含有する溶液中へ上記プレポリマー溶液を添加することによって調製した。
【0077】
最終的なポリウレタン溶液は、25℃で367cpsの粘度を示し、40.0%の固形物含有し、2未満のガードナーカラーを示した。
【0078】
【表1】


【0079】
性能例
【0080】
【表2】


【0081】
【表3】


【0082】
【表4】

【0083】
【表5】


【0084】
【表6】


【0085】
【表7】


【0086】
【表8】

【0087】
【表9】


【0088】
本発明による6種類の積層構造の性能例に関する上記接着強度のデータより判るように、滅菌前後におけるポリウレタンの積層接着強度は少なくとも0.5N/15mm以上に維持され、この結果、層間剥離による欠陥が実質的になく、かつ、印刷画像との一体性が保持された積層品が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層包装用途のためのラミネートインキ用バインダーとしてのポリウレタン樹脂の使用であって、
該樹脂が、イソシアネートを末端基とするプレポリマーを形成するジイソシアネートおよびポリアルコールの反応生成物を含有し、
該プレポリマーをジアミンで連鎖延長することによってポリウレタン樹脂が形成され、
該ポリウレタン樹脂が、121℃/30分/1.03bar(飽和水蒸気圧)の条件下で行われる滅菌の前後において、少なくとも同等の積層接着強度を示し、
厚みが1〜5マイクロメータの範囲である乾燥インキ皮膜を用いて計測される滅菌の前後における該ポリウレタン樹脂の積層接着強度が、300mm/分の速度で剥離されるときに、少なくとも0.5N/15mmである該使用。
【請求項2】
数平均分子量が10000〜100000ダルトンである請求項1に記載の使用。
【請求項3】
樹脂の数平均分子量が20000〜60000ダルトンである請求項2に記載の使用。
【請求項4】
ジイソシアネートが以下の群から選択される請求項1に記載の使用:
1,4−ジイソシアナトブタン、1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,5−ジイソシアナト−2,2−ジメチルペンタン、2,2,4−または2,4,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,10−ジイソシアナトデカン、1,3−および1,4−ジイソ−シアナトシクロヘキサン、1−イソシアナト−5−イソシアナトメチル−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,3−、2,4−および2,6−ジイソシアナト−1−メチルシクロヘキサン、4,4’−および2,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、1−イソシアナト−3(4)−イソシアナトメチル−1−メチル−シクロヘキサン、2,4−,2,5−および2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−および1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−および2,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,3−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン、ジイソシアネート二量体およびこれらの混合物。
【請求項5】
ジイソシアネートが、2,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンジシクロヘキシルメタンジイソシアネートである請求項4に記載の使用。
【請求項6】
ポリアルコールが、1種または複数種のポリエーテルジオール、1種または複数種のポリエステルジオールおよびこれらの混合物から選択される請求項1に記載の使用。
【請求項7】
ポリエーテルジオールが下記式で表される請求項6に記載の使用:
【化1】


(式中、Rは直鎖状または枝分かれ状のC〜Cの炭化水素基を示す。)
【請求項8】
RがC〜Cのアルキレン基を示す請求項7に記載の使用。
【請求項9】
ポリエーテルジオールが、ポリテトラメチレングリコールとポリプロピレングリコールの混合物である請求項7に記載の使用。
【請求項10】
ポリエステルジオールが下記式で表される請求項6に記載の使用:
【化2】


[式中、Rは式HOROHで表されるジオールの残基を示し、
Yは−OCRCOORO(式中、Rは上記と同意義であり、Rはジカルボン酸HOOCRCOOHまたはこれらの無水物の残基を示す)または、−OCRO−(式中、Rはラクトンの残基またはα,ω−ヒドロキシカルボン酸HORCOOHの残基を示す。)で表される基を示し、pおよびqは独立して0〜600の数を示し、p+qは1〜1200である。]
ポリエステルジオールが以下の群から選択される請求項11に記載の使用:ポリ(カプロラクトン)ジオール、ポリ(ジエチレングリコール−コ−オルト−フタル酸)、ポリ(1,6ヘキサンジオール−コ−オルト−フタル酸)、ポリ(ネオペンチルグリコール−コ−アジピン(adipatic)酸)、ポリ(エチレングリコール−コ−アジピン酸)およびこれらの混合物。
【請求項11】
ジイソシアネートとポリオールを1.2〜5対1の比率で反応させる、請求項1に記載の使用。
【請求項12】
ジアミンが以下の群から選択される請求項1に記載の使用:
エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、ヒドラジン、ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3ビス(アミノメチル)ベンゼン、2−(アミノメチル)−3,3,5−トリメチルシクロペンチルアミン、ビス−(4−アミノシクロ−ヘキシル)−メタン、ビス−(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)−メタン、1−アミノ−1−メチル−3(4)−アミノメチル−シクロヘキサン、ビス−(4−アミノ−3,5−ジエチルシクロヘキシル)−メタン、ビス−アミノ−メチル−ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダン、2,3−,2,4−および2,6−ジアミノ−1−メチル−シクロヘキサン、二量体ジアミン、ノルボルナンジアミン、2,2,4−および2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、ビス(プロピルアミノ)ポリプロピレンオキシドジアミン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、ピペラジン、1,3−ジ−ピペリジルプロパン、アミノエチルピペラジンおよびこれらの混合物。
【請求項13】
ジアミンがイソホロンジアミンである請求項12に記載の使用。
【請求項14】
イソシアネートを末端基とするプレポリマーとジアミンを、6:1〜1:5のモル比で反応させる請求項1に記載の使用。
【請求項15】
以下の成分(a)〜(c)を含有する積層包装用途のためのラミネートインキ組成物:
(a)請求項1に記載のポリウレタン樹脂、
(b)着色剤、および
(c)有機溶媒。
【請求項16】
組成物の重量に基づいて、ポリウレタン樹脂が10重量%〜50重量%の量で存在し、着色剤が6重量%〜50重量%の量で存在し、溶媒が10重量%〜80重量%で存在する請求項15に記載のインキ組成物。
【請求項17】
包装用途において使用するための積層品であって、請求項15に記載のインキ組成物で印刷された高分子支持体を含有し、該支持体上に印刷画像が形成され、滅菌の前後において、該印刷画像が実質的に無傷のままであり、該積層品が実質的に同等の積層接着強度を有する該積層品。
【請求項18】
滅菌の前後における積層接着強度が、300mm/分で剥離されるときに、少なくとも0.5N/15mmである請求項17に記載の積層品。
【請求項19】
高分子支持体が以下の群から選択される請求項17に記載の積層品:
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、セルロース誘導体、ポリカーボネート、ポリアミドおよびポリ乳酸。
【請求項20】
支持体がコロナ前処理される請求項19に記載の積層品。
【請求項21】
支持体が化学的に前処理される請求項19に記載の積層品。
【請求項22】
支持体が金属化される請求項19に記載の積層品。
【請求項23】
支持体が二酸化ケイ素で被覆される請求項19に記載の積層品。
【請求項24】
支持体が酸化アルミニウムで被覆される請求項19に記載の積層品。

【公表番号】特表2011−502185(P2011−502185A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530310(P2010−530310)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【国際出願番号】PCT/EP2008/008672
【国際公開番号】WO2009/052973
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(505066718)コグニス・アイピー・マネージメント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (191)
【氏名又は名称原語表記】Cognis IP Management GmbH
【Fターム(参考)】