説明

ラミネート用バリア性コーティング組成物及びラミネート用バリア性複合フィルム

【課題】熱水処理しても、バリア性が良好で、且つラミネート強度の低下が少ないラミネート用バリア性コーティング組成物及びその組成物から得られるバリア層を有するラミネート用バリア性複合フィルムを提供する。
【解決手段】(A)エチレン−酢酸ビニル系共重合体をケン化し、更に過酸化物で処理したエチレン−ビニルアルコール系共重合体、(B)無機層状化合物、及び、(C)溶媒を含有するラミネート用バリア性コーティング組成物において、更に、(D)水溶性ジルコニウム化合物を含有し、W/W=10/90〜35/65、{W/(W+W+W)}×100=0.1〜10以下(Wは(A)成分の含有量、Wは(B)成分の含有量、Wは(D)成分の含有量(質量)を表す。)を満足するラミネート用バリア性コーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れたガスバリア性及びラミネート適性を有するラミネート用バリア性コーティング組成物、及び、その組成物から得られるバリア層を中間層として含むラミネート用バリア性複合フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品包装用途で利用される包装袋は、印刷による内容物表示や装飾の機能が求められ、更に、高い食品衛生性を得るという目的から、印刷層が食品や人の指等に直接触れる事がないよう、印刷層を覆うヒートシール層が積層された複合ラミネートフィルムが利用されている。また、このような複合ラミネートフィルムに熱水処理ができる機能を持たせて、袋ごと内容物の調理も簡単にできる包装袋が製造される場合が多くなっている。
【0003】
熱水処理は、殺菌効果が高く、包装袋が完全密封されている事から、内容物の腐敗を起こしにくいという点で、長期保存に有効な手段である。しかし、ガスバリア性が充分でないと、保存の間に酸素が包装袋の中に入り込み、内容物の変質・劣化が起こる。従って、熱水処理用包装袋において、いかに酸素等の透過を抑えられるかが、包装袋の価値を決める大きな要因となる。
【0004】
従来、食品、医療等の包装用途に使用される包装袋では、酸素や水蒸気等のガスを遮断するために、種々のガスバリア層を設ける方法が考えられている。とりわけ、高いガスバリア性を有する材料として利用されてきたのは、印刷基材フィルム等に蒸着方式により積層される金属(例えば、特許文献1参照)や金属酸化物(例えば、特許文献2参照)である。そして、上記の熱水処理用包装袋においても、長期保存用には、アルミニウム蒸着フィルムやアルミ自体の箔をラミネートした熱水処理用包装袋が主流になっている。しかしながら、これらの材料を利用した複合ラミネートフィルムは総じて高価である。また、透明性が要求される分野で利用できないという問題を有している。
【0005】
そこで、最近開発されている、例えば、ベースフィルム層とヒートシール材層の間に高水素結合樹脂(好ましいものとしては、ポリビニルアルコール)、無機層状化合物(好ましくは粘土鉱物)、水素結合性基用架橋剤(好ましくは、ジルコニア化合物)を含むガスバリア層を設けたレトルト用包装袋(例えば、特許文献3参照)の利用が検討されている。しかし、このようなガスバリア層を有するレトルト用包装袋は、乾燥状態において極めて優れたバリア性を有するが、吸湿性が高いため、高湿度下では結晶性が崩れてバリア性が低下するので、熱水処理時においてもバリア性が低下し、熱水処理後の適性が低下する問題を有している。
【0006】
また、例えば、ベースフィルム層、高水素結合樹脂(好ましいものとしては、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体等)、無機層状化合物(好ましくは粘土鉱物)、水素結合性基用架橋剤(好ましくは、有機チタン化合物)を含むガスバリア層、延伸フィルム層、ヒートシール材層がこの順に積層したレトルト用包装用フィルム積層体(例えば、特許文献4参照)の利用が検討されている。しかし、このようなガスバリア層を有するレトルト用袋は、熱水処理後のラミネート強度が低下する問題を有している。
【特許文献1】特開平08−318591号公報
【特許文献2】特開昭62−179935号公報
【特許文献3】特開平07−251874号公報
【特許文献4】特開平11−314677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の課題は、熱水処理しても、バリア性が良好で、且つラミネート強度の低下が少ないラミネート用バリア性コーティング組成物及びその組成物から得られるバリア層を有するラミネート用バリア性複合フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、研究を重ねた結果、少なくともベースフィルム層、バリア層、ヒートシール材層をこの順に設けたラミネート用バリア性複合フィルムにおいて、バリア層を、無機層状化合物とエチレン−ビニルアルコール系共重合体(エチレン−酢酸ビニル系共重合体をケン化して得られるエチレン−ビニルアルコール系共重合体を過酸化物で処理した水酸基及び/又はカルボキシル基を有するもの)とを特定質量比率となるように含有させ、且つ架橋剤として水溶性ジルコニウム化合物を特定量含有させたラミネート用バリア性コーティング組成物により設けることにより上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0009】
即ち、本発明は、(1)(A)エチレン−酢酸ビニル系共重合体をケン化し、更に過酸化物で処理したエチレン−ビニルアルコール系共重合体、(B)無機層状化合物、及び、(C)溶媒を含有するラミネート用バリア性コーティング組成物において、更に、(D)水溶性ジルコニウム化合物を含有し、以下の式1及び式2を満足するラミネート用バリア性コーティング組成物に関する。
(式1) W/W=10/90〜35/65
(式1中、Wはラミネート用バリア性コーティング組成物中の(A)成分の含有量(質量)、Wはラミネート用バリア性コーティング組成物中の(B)成分の含有量(質量)を表す。)
(式2) {W/(W+W+W)}×100=0.1〜10
(式2中、W、Wは上記と同じ定義、Wはラミネート用バリア性コーティング組成物中の(D)成分の含有量(質量)を表す。)
また、本発明は、(2)上記ラミネート用バリア性コーティング組成物において、上記式1による(A)成分と(B)成分との質量比率(W/W)が15/85〜30/70である上記(1)項に記載のラミネート用バリア性コーティング組成物に関する。
また、本発明は、(3)上記(B)成分の無機層状化合物が、モンモリロナイトである上記(1)項又は(2)項記載のラミネート用バリア性コーティング組成物に関する。
また、本発明は、(4)上記(D)成分の水溶性ジルコニウム化合物が、塩酸化ジルコニウムである上記(1)〜(3)項のいずれかに記載のラミネート用バリア性コーティング組成物に関する。
また、本発明は、(5)少なくともベースフィルム層、バリア層、ヒートシール材層から構成され、更に上記各層をこの順に設けたラミネート用バリア性複合フィルムにおいて、該バリア層が、上記(1)〜(4)項のいずれかに記載のラミネート用バリア性コーティング組成物から得られるものであるラミネート用バリア性複合フィルムに関する。
また、本発明は、(6)更に、上記ベースフィルム層と上記ヒートシール材層との間に印刷層が積層された上記(5)項記載のラミネート用バリア性複合フィルムに関する。
【0010】
以下、本発明のラミネート用バリア性コーティング組成物及びその組成物から得られるバリア層を有するラミネート用バリア性複合フィルムについて詳細に説明する。
【0011】
〔ラミネート用バリア性コーティング組成物〕
先ず、本発明のラミネート用バリア性コーティング組成物について説明する。
本発明のラミネート用バリア性コーティング組成物を構成する(A)成分であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体としては、エチレン−酢酸ビニル系共重合体をケン化し、更に過酸化物で処理して得られるものが使用できる。
【0012】
上記エチレン−酢酸ビニル系共重合体をケン化し、更に過酸化物で処理して得られるエチレン−ビニルアルコール系共重合体の具体例としては、エチレン及び酢酸ビニルを共重合して得られるエチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化し、更に過酸化物で処理して得られるもの、並びに、エチレン及び酢酸ビニルとともに、その他の単量体を共重合して得られるエチレン−酢酸ビニル系共重合体をケン化し、更に過酸化物で処理して得られるものが挙げられる。
【0013】
バリア層を設けるための材料としては、エチレン−酢酸ビニル系共重合体の共重合前の単量体におけるエチレン比率が20〜60モル%であることが好ましい。エチレン比率が20モル%未満であると、高湿度下におけるバリア性が低下し、一方、エチレン比率が60モル%を超えると、全般に渡ってのバリア性が低下する傾向がある。
上記エチレン−酢酸ビニル系共重合体は、酢酸ビニル成分のケン化度が95モル%以上のものが好ましく、95モル%未満ではバリア性や耐油性が不充分になる傾向がある。
【0014】
上記過酸化物としては、以下の(1)〜(7)ようなものが挙げられる。
(1)H
(2)M型(M:Na、K、NH、Rb、Cs、Ag、Li等)
(3)M’O型(M’:Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cs、Hg等)
(4)R−O−O−R型(Rはアルキル基を表す。以下同様:過酸化ジエチル等の過酸化ジアルキル類
(5)R−CO−O−O−CO−R型:過酸化ジアセチル、過酸化ジアミル、過酸化時ベンゾイル等の過酸化アシル等
(6)過酸化酸型
a)−O−O−結合を持つ酸:過硫酸(HSO)、過リン酸(HPO)等
b)R−CO−O−OH:過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過フタル酸等
(7)過酸化水素包含物:(NaOOH)/H、(KOOH)/3H
このなかでも特に過酸化水素は、後から還元剤、還元性酵素や触媒を用いて、容易に分解処理することが可能であるために好適である。
【0015】
上記エチレン−酢酸ビニル系共重合体をケン化して得られた重合体を過酸化物で処理する方法としては特に限定されず、公知の処理方法を用いることができ、具体的には以下の方法を挙げることができる。
(1)上記溶媒に、ケン化して得られた重合体を溶解した溶液に、上記過酸化物、分子鎖切断を行うための触媒、例えば硫酸鉄等を添加し、攪拌下で40〜90℃で加熱する方法
【0016】
また、処理後において、残存過酸化物が残存していると、バリア性が低下する傾向にあるので、本発明の効果を阻害しない限り従来公知の除去方法で残存過酸化物を除去する方が望ましい。好ましい、具体例としては、カタラーゼ等の酵素を添加して残存過酸化物を分解除去する方法を挙げることができる。
【0017】
また、本発明のラミネート用バリア性コーティング組成物を構成する(C)成分である溶媒(溶剤)としては、(A)成分のエチレン−ビニルアルコール系共重合体を溶解し得る、水性及び非水性のどちらの溶剤でも使用できる。
【0018】
本発明におけるエチレン−ビニルアルコール系共重合体では、過酸化物等で処理することにより低分子量化したエチレン−ビニルアルコール系共重合体と、水と低級アルコールとの混合溶剤を利用して、ラミネート用バリア性コーティング組成物を構成することが好ましい。具体的には、水と、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数2〜4の低級アルコールの少なくとも1種を15〜70質量%含む混合溶剤を使用すると、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の溶解性が良好となり、適度な固形分を維持するためにも好適である。混合溶剤中の低級アルコールの含有量が70質量%を超えると、後述する無機層状化合物を分散した場合、へき開が不充分になる。一方、混合溶剤中の低級アルコールが15質量%未満であると、ラミネート用バリア性コーティング組成物の塗布適性が低下する傾向がある。
【0019】
また、本発明のラミネート用バリア性コーティング組成物を構成する(B)成分である無機層状化合物としては、分散媒に膨潤・へき開する無機層状化合物が好ましく用いられ、フィロケイ酸塩の1:1構造をもつカオリナイト族、ジャモン石群に属するアンチゴライト族、層間カチオンの数によってスメクタイト族、含水ケイ酸塩鉱物であるバーミキュライト族、マイカ族等を挙げることができる。
【0020】
上記無機層状化合物としては、具体的には、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト、加水ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、白雲母、マーガライト、タルク、バーミキュライト、金雲母、ザンソフィライト、緑泥石等を挙げることができる。また鱗片状シリカ等も使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの無機層状化合物でも、無機層状化合物中に酸化還元性を有する金属イオン、特に鉄イオンが存在するものが有効である。
更に、これらの中でも、ラミネート用バリア性コーティング組成物に使用した場合の基材に対するブリード性、印刷適性からモンモリロナイトの使用が好ましい。
【0021】
上記モンモリロナイトとしては、従来からガスバリヤ剤に使用されている公知のものが使用できる。
例えば、一般式:(X,Y)2〜310(OH)・mHO・(Wω)(式中、Xは、Al、FeIII、CrIIIを表す。Yは、Mg、FeII、MnII、Ni、Zn、Liを表す。Zは、Si、Alを表す。Wは、K、Na、Caを表す。HOは、層間水を表す。)で示されるモンモリロン石群鉱物を使用することができる。これらのなかでも、WはNaであるものが水性媒体中でへき開する点から好ましい。
【0022】
本発明のラミネート用バリア性コーティング組成物において、(A)成分:エチレン−ビニルアルコール系共重合体と、(B)成分:無機層状化合物との質量比率は、(式1)を満足する範囲で、好ましくは(式1−1)を満足する範囲で使用される。
(式1) W/W=10/90〜35/65
(式1−1) W/W=15/85〜30/70
(式1、式1−1中、Wはラミネート用バリア性コーティング組成物中の(A)成分の含有量(質量)、Wはラミネート用バリア性コーティング組成物中の(B)成分の含有量(質量)を表す。)
上記(B)成分:無機層状化合物の質量比率が少なくなると、接着性は高くなるがバリア性が低下し、一方、多くなりすぎるとバリア性は高くなるがラミネート強度が低下し熱水処理適性が低下する傾向にある。
【0023】
上記ラミネート用バリア性コーティング組成物において、エチレン−ビニルアルコール系樹脂(W)と無機層状化合物(W)との合計の含有量(W+W)は、ラミネート用バリア性コーティング組成物100質量%中に1〜30質量%含有されていることが好ましい。上記含有量が1質量%より少なくなると、適度の膜厚を有するバリア層を形成するために複数回の塗工が必要になる等の不利が生じることがあり、一方、30質量%より多くなると、流動性が低下して、塗工が困難になる等の不利が生じる。
【0024】
また、本発明のラミネート用バリア性コーティング組成物を構成する(D)成分である水溶性ジルコニウム化合物は、水溶性を有するジルコニウム含有化合物である。本発明において水溶性ジルコニウム化合物は架橋剤として機能するものであり、上記エチレン−ビニルアルコール系共重合体及び無機層状化合物とともに使用することにより、熱水処理をしても、良好なバリア性を有し、ラミネート強度の低下が少ないラミネート用バリア性複合フィルムを得ることができる。
【0025】
上記水溶性ジルコニウム化合物としては、塩酸化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、塩基性硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、硫酸ジルコニウムナトリウム、クエン酸ジルコニウムナトリウム、乳酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、オキシ硫酸ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、炭酸ジルコニウムカリウム、塩化ジルコニウム、塩化ジルコニウム八水和物、オキシ塩化ジルコニウム等が例示でき、塗布凝集力の向上による熱水処理後の熱水処理適性及びラミネート用バリア性コーティング組成物の安定性の点から、塩酸化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウムが好ましく、特に塩酸化ジルコニウムが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
本発明のラミネート用バリア性コーティング組成物において、(D)成分:水溶性ジルコニウム化合物の合計使用量(固形中の含有量)は、(式2)を満足する範囲で使用される。
(式2) {W/(W+W+W)}×100=0.1〜10(質量%)
(式2中、W、Wは上記と同じ定義、Wはラミネート用バリア性コーティング組成物中の(D)成分の含有量(質量)を表す。)
上記水溶性ジルコニウム化合物の使用量が0.1質量%より少なくなると、熱水処理後のラミネート強度低下等の熱水処理適性が低下し、一方使用量が10質量%より多くなると、バリア性が低下する問題を有する。
上記ラミネート用バリア性コーティング組成物は、更に他の成分として、必要に応じて、紫外線吸収剤、帯電防止剤、レベリング剤、消泡剤等を1種又は2種以上加えることができる。
【0027】
〔ラミネート用バリア性コーティング組成物の製造方法〕
上記構成材料を使用してラミネート用バリア性コーティング組成物を製造する方法としては、例えば、(1)溶媒にエチレン−ビニルアルコール系樹脂を溶解した溶液に、過酸化物を添加して加温・反応させ分子鎖切断を行い、その後、残存過酸化物を除去しエチレン−ビニルアルコール系樹脂の樹脂溶液を得る。次いで、無機層状化合物(水等の分散媒に予め膨潤・へき開させておいてもよい)、水溶性ジルコニウム化合物を添加混合し、攪拌装置や分散装置を利用して無機層状化合物を分散させる方法、(2)無機層状化合物を、水等の分散媒に膨潤・へき開させた後、攪拌装置や分散装置を利用し、更に、無機層状化合物をへき開、分散した分散液(分散溶液)に、予め溶媒にエチレン−ビニルアルコール系樹脂を溶解させた溶液に過酸化物を添加して加温・反応させ分子鎖切断を行い、その後、残存過酸化物を除去したエチレン−ビニルアルコール系樹脂の樹脂溶液、水溶性ジルコニウム化合物を添加混合する方法等を挙げることができる。
【0028】
上記攪拌装置や分散装置としては、通常の撹拌装置や分散装置であれば特に限定されず、これらを用いて分散液中で無機層状化合物を均一に分散することができるが、透明で安定なラミネート用バリア性コーティング組成物が得られる点から、高圧分散機、超音波分散機等を使用することが好ましい。高圧分散機としては、例えば、ナノマイザー(商品名、ナノマイザー社製)、マイクロフルイタイザー(商品名、マイクロフライデックス社製)、アルチマイザー(商品名、スギノマシン社製)、DeBee(商品名、Bee社製)、ニロ・ソアビホモジナイザー(商品名、ニロ・ソアビ社)等が挙げられ、これら高圧分散機の圧力条件として100MPa以下で分散処理を行うことが好ましい。圧力条件が100MPaを超えると、無機層状化合物の破砕が起こり易くなり、目的であるバリア性が低下する場合がある。
【0029】
〔ラミネート用バリア性複合フィルム〕
次に、ラミネート用バリア性コーティング組成物及びその組成物から得られるバリア層を有するラミネート用バリア性複合フィルムについて説明する。
本発明のラミネート用バリア性複合フィルムは、少なくともベースフィルム層、バリア層、ヒートシール材層をこの順に設けたものである。
【0030】
本発明のラミネート用バリア性複合フィルムを構成するベースフィルム層としては、例えば、従来から軟包装で使用されているポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、ポリスチレン等からなる各種プラスチックフィルム、及びこれらの2種以上からなる複合フィルムを挙げることができ、これらのフィルムは、コロナ放電処理又は表面コート処理されていることが好ましい。また、ガスバリア性の面からはポリオレフィン系フィルムが好ましい。
【0031】
本発明のラミネート用バリア性複合フィルムを構成するバリア層としては、上記に記載したラミネート用バリア性コーティング組成物を、各種塗工手段を用いて形成することができる。上述した成分を含むラミネート用バリア性コーティング組成物を使用することにより、熱水処理をしても、良好なバリア性を有し、ラミネート強度の低下が少ないフィルムを得ることができる。
【0032】
本発明のラミネート用バリア性複合フィルムを構成するヒートシール材層としては、従来から軟包装で使用されている熱融着性のシート材料であり、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が挙げられる。上記ヒートシール材層は、また、低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレンポリマー等の熱溶融ポリマーを溶融状態で積層して、冷却によりフィルム状に成形したものであってもよい。この場合、ヒートシール材層に接着層を先に設けることができないため、バリア層側に接着層を設けた後、接着層に溶融状態で上記熱溶融ポリマーを積層する方法が用いられる。
【0033】
更に、ラミネート用バリア性複合フィルムには、ベースフィルム層とバリア層の間に接着層を、バリア層とヒートシール材層の間に接着層を、ベースフィルム層とヒートシール材層との間に印刷層を設けることもできる。
【0034】
ベースフィルム層とバリア層との間に設ける接着層、バリア層とヒートシール材層の間の接着層としては、従来から包装用複合ラミネートフィルムの製造に用いられているラミネート用接着剤組成物を適宜選択し、各種塗工手段を用いて形成することができる。ラミネート用接着剤組成物としては、例えばウレタン系、ポリエステル系、アクリル系等の各種ラミネート用接着剤、チタン系、イソシアネート系、イミン系、ポリブタジエン系等の各種ラミネート用アンカーコート剤等を挙げることができる。
【0035】
また、ラミネート用接着剤組成物としては、アミノ基、水酸基及びカルボキシル基の少なくとも1つの官能基を有するポリウレタン樹脂を主成分とする主剤とエポキシ系硬化剤及びイソシアネート系硬化剤とからなる硬化剤とを用い、これらの材料を溶媒中に含有させた接着剤組成物も使用できる。
【0036】
上記ポリウレタン樹脂としては、例えば、高分子ポリオールと有機ジイソシアネートとを反応させて得られる、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを、更に鎖伸長剤で鎖伸長した後、必要に応じて反応停止剤を用いて反応させる方法を用いて得られる、分子内に水酸基、アミノ基及びカルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1つの官能基を有するポリウレタン樹脂を挙げることができる。
【0037】
上記有機ジイソシアネート化合物、高分子ポリオール化合物、鎖伸長剤、反応停止剤等としては、従来公知のものを用いることができ、例えば、特開平06−136313号公報、特開平06−248051号公報、特開平07−258357号公報及び特開平07−324179号公報等に記載された各化合物を使用することができる。
【0038】
上記イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤としては、包装用複合ラミネートフィルムの製造に用いられている、従来公知の二液接着剤の成分であるポリイソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤を使用することができる。
【0039】
上記主剤及び硬化剤の材料を溶解又は分散させる溶媒(溶剤)としては、例えば、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤;メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール誘導体等が挙げられる。
【0040】
上記印刷層(内容物表示や装飾機能のための印刷層)としては、従来から軟包装で使用されている有機溶剤型印刷インキ組成物、水性印刷インキ組成物等を、通常、グラビア印刷方式やフレキソ印刷方式にて印刷することにより形成することができる。
【0041】
上記有機溶剤型印刷インキ組成物としては、例えば、顔料とポリウレタン樹脂とを含む芳香族・非芳香族混合系有機溶剤性印刷インキ組成物の他、特開平01−261476号公報(顔料、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレンを含む芳香族・非芳香族混合系有機溶剤性印刷インキ組成物)、特公平07−113098号公報(顔料、ポリウレタン樹脂を含む非芳香族系有機溶剤性印刷インキ組成物)、特開平07−324179号公報(顔料、ポリウレタン樹脂、非芳香族系・非ケトン系有機溶剤性印刷インキ組成物)等で開示された有機溶剤性印刷インキ組成物等が挙げられる。
【0042】
また、上記水性印刷インキ組成物としては、例えば、特開平06−155694号公報(顔料、アクリル系バインダー樹脂、ヒドラジン系架橋剤を含む水性印刷インキ組成物)、特開平06−206972号公報(顔料、水、ポリウレタン系バインダー樹脂を含む水性印刷インキ組成物)等で開示された水性印刷インキ組成物等が挙げられる。
【0043】
尚、最近では、環境対応インキとして、水性タイプの印刷インキ組成物や、有機溶剤系印刷インキ組成物であっても芳香族及びケトン系有機溶剤を極力使用しないタイプのものが使用されており、本発明でも、これらを好適に用いることができる。
更に、本発明のラミネート用バリア性複合フィルムにおいては、他の機能層、例えば、紫外線遮蔽層、抗菌層、バリア層以外の層同士を接着するための接着層等を有していてもよい。
【0044】
〔ラミネート用バリア性複合フィルムの製造方法〕
本発明のラミネート用バリア性複合フィルムを製造する方法としては、結果的に高いバリア性、熱水処理性、ラミネート適性、及び必要に応じて印刷により付加される装飾や表示機能を有するものであれば、どの方法であっても良いが、好ましくは、例えば以下の(A)〜(D)の方法等が挙げられる。
最も基本的な構成として、
(A)ベースフィルム(ベースフィルムには複合フィルムも含まれる)に、上記ラミネート用バリア性コーティング組成物、接着剤組成物を順次塗工した後、ヒートシール材層を積層することによりラミネート用バリア性複合フィルムを得る方法、
(B)ベースフィルム(ベースフィルムには複合フィルムも含まれる)に、上記接着剤組成物、ラミネート用バリア性コーティング組成物、接着剤組成物を順次塗工した後、ヒートシール材層を積層することによりラミネート用バリア性複合フィルムを得る方法、
(C)ベースフィルム(ベースフィルムには複合フィルムも含まれる)に、先にインキ組成物を印刷して印刷層を形成した後、上記接着剤組成物、ラミネート用バリア性コーティング組成物、接着剤組成物を順次塗工した後、ヒートシール材層を積層することによりラミネート用バリア性複合フィルムを得る方法、
(D)ベースフィルム(ベースフィルムには複合フィルムも含まれる)に、上記接着剤組成物、ラミネート用バリア性コーティング組成物、接着剤組成物を順次塗工した後、インキ組成物を印刷して印刷層を形成し、更にヒートシール材層を積層することによりラミネート用バリア性複合フィルムを得る方法、等である。
【0045】
尚、上記接着剤組成物及びラミネート用バリア性コーティング組成物の塗工方法については、通常のグラビアシリンダー等を用いたロールコーティング法、ドクターナイフ法やエアーナイフ・ノズルコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、ディップコーティング法及びこれらの方法を組合わせたコーティング法等を用いることができる。
また、印刷層を形成するには、通常、グラビア印刷方式やフレキソ印刷方式が使用できる。
【0046】
以上の方法から得られるラミネート用バリア性複合フィルムにおいて、接着層の膜厚(乾燥後)は、好ましくは2〜3μm、また、バリア層の膜厚(乾燥後)は、好ましくは0.1〜5μmである。
【0047】
接着層の膜厚が2μmより薄くなると、バリア層と他層との接着性が低下するおそれがあり、一方、3μmより厚くなると、膜厚の増加に見合った接着性の増加が見られず、また、ラミネート用バリア性複合フィルムを包装袋として用いたときに、良好な取扱い性を得ることができないおそれがある。また、バリア層が0.1μmより薄くなると、高いバリア性を得ることが困難となり、一方、5μmを超えても顕著なバリア性の向上がみられす、バリア層中の無機層状化合物が多い場合に透明な塗膜を得ることが困難となる。
尚、1回の塗工により上記範囲内の膜厚を有する塗膜が得られない場合は、多数回の塗工を行うことも可能である。
【0048】
他の機能層を設ける場合も、それぞれの機能層を設けるための良好な手段と、上記(A)〜(D)の方法を組み合わせて、目的にあったラミネート用バリア性複合フィルムを製造することができる。
【0049】
以上の製造方法から得られたラミネート用バリア性複合フィルムは、ヒートシーラー等を用いて、中折りして2辺を溶封するか又は2枚のラミネート用バリア性複合フィルムを重ねて三辺を溶封して先に袋状とした後、内容物を詰め、残りの一辺を溶封して、密封された包装袋として利用することができる。そして、得られた包装袋は、食品や医療品の包装袋として利用できる。
【発明の効果】
【0050】
本発明のラミネート用バリア性コーティング組成物は、上述した構成からなるので、熱水処理しても、バリア性が良好で、且つラミネート強度の低下が少ないラミネート用バリア性複合フィルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下に実施例をあげて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
【0052】
(バリア層を形成するためのラミネート用バリア性コーティング組成物)
<エチレン−ビニルアルコール系共重合体溶液の調製>
精製水29.496質量部とn−プロピルアルコール(NPA)42.5質量部の混合溶媒に、エチレン−ビニルアルコール共重合体(商品名:SG−525、日本合成化学社製、エチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化して得られた重合体、エチレン比率26モル%、酢酸ビニル成分のケン化度約100%、以下、EVOHと略記することがある。)15質量部を加え、更に濃度が30%の過酸化水素水13質量部とFeSOの0.004質量部を添加して攪拌下で80℃に加温し、約2時間反応させた。その後冷却して カタラーゼを3000ppmになるように添加し、残存過酸化水素を除去し、これにより固形分15%のほぼ透明なエチレン−ビニルアルコール共重合体溶液(EVOH溶液)を得た。
【0053】
<ポリビニルアルコール樹脂溶液の調製>
精製水50%、n−プロピルアルコール(NPA)50%を含む混合溶剤70質量部に、完全けん化ポリビニルアルコール樹脂(商品名:ゴーセノールNL−05、日本合成化学社製、けん化度99.5%以上)30質量部を加え、溶解させ、これにより固形分30%の透明なポリビニルアルコール溶液を得た。
【0054】
<無機層状化合物分散液の調製>
無機層状化合物であるモンモリロナイト(商品名:クニピアF、クニミネ工業社製)4質量部を精製水96質量部中に攪拌しながら添加し、高圧分散装置にて圧力50MPaの設定にて充分に分散した。その後、40℃にて1日間保温し固形分4%の無機層状化合物分散液を得た。
【0055】
<塩酸化ジルコニウム>
商品名:Zc−20、第一稀元素化学社製、固形分20%)
<他の架橋剤>
カルボジイミド化合物(商品名:V−02、日清紡社製、固形分40%)
シランカップリング剤(商品名:KBE−403、信越化学社製、固形分100%)
【0056】
<実施例1のラミネート用バリア性コーティング組成物>
無機層状化合物/EVOH=25/75(固形分質量比)、塩酸化ジルコニウム3質量%)
精製水44.2%、NPA55.8%の混合溶剤43.7質量部に、EVOH溶液を25質量部添加し、充分に攪拌混合した。更にこの溶液に、高速攪拌を行いながら無機層状化合物分散液31.3質量部を添加した。この混合溶液100部に対して、3部の陽イオン交換樹脂を添加しイオン交換樹脂の破砕が起きない程度の攪拌速度で1時間攪拌して、陽イオンの除去を行った後、陽イオン交換樹脂のみをストレーナで濾別した。
以上の操作から得られた混合溶液を、更に高圧分散装置にて圧力50MPaの設定で分散処理した後、分散処理した混合液97質量部に対して塩酸化ジルコニウム(商品名:Zc−20)の0.75質量部、精製水44.2%、NPA55.8%の混合溶剤2.25質量部とを添加し混合攪拌を行い、それを255メッシュのフィルターにて濾過し固形分5%の実施例1のラミネート用バリア性コーティング組成物を得た。
【0057】
<実施例2のラミネート用バリア性コーティング組成物>
無機層状化合物/EVOH=25/75(固形分質量比)、塩酸化ジルコニウム0.5質量%
精製水44.2%、NPA55.8%の混合溶剤43.7質量部に、EVOH溶液を25質量部添加し、充分に攪拌混合した。更にこの溶液に、高速攪拌を行いながら無機層状化合物分散液31.3質量部を添加した。この混合溶液100部に対して、3部の陽イオン交換樹脂を添加しイオン交換樹脂の破砕が起きない程度の攪拌速度で1時間攪拌して、陽イオンの除去を行った後、陽イオン交換樹脂のみをストレーナで濾別した。
以上の操作から得られた混合溶液を、更に高圧分散装置にて圧力50MPaの設定で分散処理した後、分散処理した混合液99.5質量部に対して塩酸化ジルコニウム(商品名:Zc−20)の0.125質量部、精製水44.2%、NPA55.8%の混合溶剤0.375質量部とを添加し混合攪拌を行い、それを255メッシュのフィルターにて濾過し固形分5%の実施例2のラミネート用バリア性コーティング組成物を得た。
【0058】
<実施例3のラミネート用バリア性コーティング組成物>
無機層状化合物/EVOH=25/75(固形分質量比)、塩酸化ジルコニウム5質量%
精製水44.2%、NPA55.8%の混合溶剤43.7質量部に、EVOH溶液を25質量部添加し、充分に攪拌混合した。更にこの溶液に、高速攪拌を行いながら無機層状化合物分散液31.3質量部を添加した。この混合溶液100部に対して、3部の陽イオン交換樹脂を添加しイオン交換樹脂の破砕が起きない程度の攪拌速度で1時間攪拌して、陽イオンの除去を行った後、陽イオン交換樹脂のみをストレーナで濾別した。
以上の操作から得られた混合溶液を、更に高圧分散装置にて圧力50MPaの設定で分散処理した後、分散処理した混合液95質量部に対して塩酸化ジルコニウム(商品名:Zc−20)の1.25質量部、精製水44.2%、NPA55.8%の混合溶剤3.75質量部とを添加し混合攪拌を行い、それを255メッシュのフィルターにて濾過し固形分5%の実施例3のラミネート用バリア性コーティング組成物を得た。
【0059】
<実施例4のラミネート用バリア性コーティング組成物>
無機層状化合物/EVOH=15/85(固形分質量比)、塩酸化ジルコニウム3質量%
精製水44.2%、NPA55.8%の混合溶剤52.9質量部に、EVOH溶液を28.3質量部添加し、充分に攪拌混合した。更にこの溶液に、高速攪拌を行いながら無機層状化合物分散液18.8質量部を添加した。この混合溶液100部に対して、3部の陽イオン交換樹脂を添加しイオン交換樹脂の破砕が起きない程度の攪拌速度で1時間攪拌して、陽イオンの除去を行った後、陽イオン交換樹脂のみをストレーナで濾別した。
以上の操作から得られた混合溶液を、更に高圧分散装置にて圧力50MPaの設定で分散処理した後、分散処理した混合液97質量部に対して塩酸化ジルコニウム(商品名:Zc−20)の0.75質量部、精製水44.2%、NPA55.8%の混合溶剤2.25質量部とを添加し混合攪拌を行い、それを255メッシュのフィルターにて濾過し固形分5%の実施例4のラミネート用バリア性コーティング組成物を得た。
【0060】
<実施例5のラミネート用バリア性コーティング組成物>
無機層状化合物/EVOH=30/70(固形分質量比)、塩酸化ジルコニウム3質量%
精製水44.2%、NPA55.8%の混合溶剤39.2質量部に、EVOH溶液を23.3質量部添加し、充分に攪拌混合した。更にこの溶液に、高速攪拌を行いながら無機層状化合物分散液37.5質量部を添加した。この混合溶液100部に対して、3部の陽イオン交換樹脂を添加しイオン交換樹脂の破砕が起きない程度の攪拌速度で1時間攪拌して、陽イオンの除去を行った後、陽イオン交換樹脂のみをストレーナで濾別した。
以上の操作から得られた混合溶液を、更に高圧分散装置にて圧力50MPaの設定で分散処理した後、分散処理した混合液97質量部に対して塩酸化ジルコニウム(商品名:Zc−20)の0.75質量部、精製水44.2%、NPA55.8%の混合溶剤2.25質量部とを添加し混合攪拌を行い、それを255メッシュのフィルターにて濾過し固形分5%の実施例5のラミネート用バリア性コーティング組成物を得た。
【0061】
<比較例1のラミネート用バリア性コーティング組成物>
無機層状化合物/EVOH=25/75(固形分質量比)、塩酸化ジルコニウム0.05質量%)
精製水44.2%、NPA55.8%の混合溶剤43.7質量部に、EVOH溶液を25質量部添加し、充分に攪拌混合した。更にこの溶液に、高速攪拌を行いながら無機層状化合物分散液31.3質量部を添加した。この混合溶液100部に対して、3部の陽イオン交換樹脂を添加しイオン交換樹脂の破砕が起きない程度の攪拌速度で1時間攪拌して、陽イオンの除去を行った後、陽イオン交換樹脂のみをストレーナで濾別した。
以上の操作から得られた混合溶液を、更に高圧分散装置にて圧力50MPaの設定で分散処理した後、分散処理した混合液99.95質量部に対して塩酸化ジルコニウム(商品名:Zc−20)の0.013質量部、精製水44.2%、NPA55.8%の混合溶剤0.037質量部とを添加し混合攪拌を行い、それを255メッシュのフィルターにて濾過し固形分5%の比較例1のラミネート用バリア性コーティング組成物を得た。
【0062】
<比較例2のラミネート用バリア性コーティング組成物>
無機層状化合物/EVOH=25/75(固形分質量比)、塩酸化ジルコニウム11質量%)
精製水44.2%、NPA55.8%の混合溶剤43.7質量部に、EVOH溶液を25質量部添加し、充分に攪拌混合した。更にこの溶液に、高速攪拌を行いながら無機層状化合物分散液31.3質量部を添加した。この混合溶液100部に対して、3部の陽イオン交換樹脂を添加しイオン交換樹脂の破砕が起きない程度の攪拌速度で1時間攪拌して、陽イオンの除去を行った後、陽イオン交換樹脂のみをストレーナで濾別した。
以上の操作から得られた混合溶液を、更に高圧分散装置にて圧力50MPaの設定で分散処理した後、分散処理した混合液89質量部に対して塩酸化ジルコニウム(商品名:Zc−20)の2.75質量部、精製水44.2%、NPA55.8%の混合溶剤8.25質量部とを添加し混合攪拌を行い、それを255メッシュのフィルターにて濾過し固形分5%の比較例2のラミネート用バリア性コーティング組成物を得た。
【0063】
<比較例3のラミネート用バリア性コーティング組成物>
無機層状化合物/EVOH=25/75(固形分質量比)、シランカップリング剤3質量%)
精製水44.2%、NPA55.8%の混合溶剤43.7質量部に、EVOH溶液を25質量部添加し、充分に攪拌混合した。更にこの溶液に、高速攪拌を行いながら無機層状化合物分散液31.3質量部を添加した。この混合溶液100部に対して、3部の陽イオン交換樹脂を添加しイオン交換樹脂の破砕が起きない程度の攪拌速度で1時間攪拌して、陽イオンの除去を行った後、陽イオン交換樹脂のみをストレーナで濾別した。
以上の操作から得られた混合溶液を、更に高圧分散装置にて圧力50MPaの設定で分散処理した後、分散処理した混合液97質量部に対してシランカップリング剤(商品名:KBE−403)の0.15質量部、精製水44.2%、NPA55.8%の混合溶剤2.85質量部とを添加し混合攪拌を行い、それを255メッシュのフィルターにて濾過し固形分5%の比較例3のラミネート用バリア性コーティング組成物を得た。
【0064】
<比較例4のラミネート用バリア性コーティング組成物>
無機層状化合物/EVOH=5/95(固形分質量比)、塩酸化ジルコニウム3質量%)
精製水44.2%、NPA55.8%の混合溶剤62.08質量部に、EVOH溶液を31.67質量部添加し、充分に攪拌混合した。更にこの溶液に、高速攪拌を行いながら無機層状化合物分散液6.25質量部を添加した。この混合溶液100部に対して、3部の陽イオン交換樹脂を添加しイオン交換樹脂の破砕が起きない程度の攪拌速度で1時間攪拌して、陽イオンの除去を行った後、陽イオン交換樹脂のみをストレーナで濾別した。
以上の操作から得られた混合溶液を、更に高圧分散装置にて圧力50MPaの設定で分散処理した後、分散処理した混合液97質量部に対して塩酸化ジルコニウム(商品名:Zc−20)の0.75質量部、精製水44.2%、NPA55.8%の混合溶剤2.25質量部とを添加し混合攪拌を行い、それを255メッシュのフィルターにて濾過し固形分5%の比較例4のラミネート用バリア性コーティング組成物を得た。
【0065】
<比較例5のラミネート用バリア性コーティング組成物>
無機層状化合物/EVOH=50/50(固形分質量比)、塩酸化ジルコニウム3質量%)
精製水44.2%、NPA55.8%の混合溶剤20.8質量部に、EVOH溶液を16.7質量部添加し、充分に攪拌混合した。更にこの溶液に、高速攪拌を行いながら無機層状化合物分散液62.5質量部を添加した。この混合溶液100部に対して、3部の陽イオン交換樹脂を添加しイオン交換樹脂の破砕が起きない程度の攪拌速度で1時間攪拌して、陽イオンの除去を行った後、陽イオン交換樹脂のみをストレーナで濾別した。
以上の操作から得られた混合溶液を、更に高圧分散装置にて圧力50MPaの設定で分散処理した後、分散処理した混合液97質量部に対して塩酸化ジルコニウム(商品名:Zc−20)の0.75質量部、精製水44.2%、NPA55.8%の混合溶剤2.25質量部とを添加し混合攪拌を行い、それを255メッシュのフィルターにて濾過し固形分5%の比較例5のラミネート用バリア性コーティング組成物を得た。
【0066】
<比較例6のラミネート用バリア性コーティング組成物>
無機層状化合物/ポリビニルアルコール樹脂=25/75(固形分質量比)、塩酸化ジルコニウム3質量%)
精製水44.2%、NPA55.8%の混合溶剤56.25質量部に、ポリビニルアルコール樹脂溶液を12.5質量部添加し、充分に攪拌混合した。更にこの溶液に、高速攪拌を行いながら無機層状化合物分散液31.25質量部を添加した。この混合溶液100部に対して、3部の陽イオン交換樹脂を添加しイオン交換樹脂の破砕が起きない程度の攪拌速度で1時間攪拌して、陽イオンの除去を行った後、陽イオン交換樹脂のみをストレーナで濾別した。
以上の操作から得られた混合溶液を、更に高圧分散装置にて圧力50MPaの設定で分散処理した後、分散処理した混合液97質量部に対して塩酸化ジルコニウム(商品名:Zc−20)の0.75質量部、精製水44.2%、NPA55.8%の混合溶剤2.25質量部とを添加し混合攪拌を行い、それを255メッシュのフィルターにて濾過し固形分5%の比較例6のラミネート用バリア性コーティング組成物を得た。
【0067】
<実施例1〜5及び比較例1〜6のラミネート用バリア性複合フィルム−加湿用>
ポリエステルフィルムにラミネート用接着剤組成物(押出しアンカーコート剤、A3210/3070、三井化学ポリウレタン社製)に塗布し、乾燥後、実施例1〜5及び比較例1〜6のラミネート用バリア性コーティング組成物を塗工し、乾燥させた。得られたバリア層の上に、ポリエーテル系接着剤組成物(A−969、三井化学ポリウレタン社製)を用いてドライラミネート機にて無延伸ポリプロピレンフィルムを積層し、40℃にて3日間エージングして実施例1〜5及び比較例1〜6のラミネート用バリア性複合フィルムを得た。
なお、バリヤ層の膜厚は0.5μm(乾燥皮膜)、接着層の膜厚は3μm(乾燥皮膜)であった。
【0068】
〔評価〕
(酸素透過度)
実施例1〜5及び比較例1〜6のラミネート用バリア性複合フィルムを23℃、90%RHの雰囲気下に2日間放置後、JIS K7126 B法に準じて、酸素透過率測定装置(Mocon社製;OX−TRAN100、商品名)を用いて酸素透過度(OTR値)を測定した。尚、測定は、23℃において、90%RHの雰囲気下で行った。結果を表1に示す。
【0069】
(加湿前と加湿後のラミネート強度)
(1)加湿前
実施例1〜5及び比較例1〜6の各ラミネート用バリア性複合フィルムを15mm幅に切断し、T型剥離強度を剥離試験機(安田精機社製)を用いて、剥離速度300mm/minにてラミネート強度を測定した。結果を表1に示す。
(2)加湿後
実施例1〜5及び比較例1〜6の各ラミネート用バリア性複合フィルムを15mm幅に切断した各試料片を23℃、90%RHの雰囲気下に2日間放置後、T型剥離強度を剥離試験機(安田精機社製)を用いて、剥離速度300mm/minにて測定した。結果を表1に示す。
【0070】
(ボイル適性)
実施例1〜5及び比較例1〜6のラミネート用バリア性複合フィルムのそれぞれについて、20cm×20cmの大きさのものを2枚用いて、同容積となるように製袋し、水を詰めた後に溶封した。溶封した各製袋を95℃の熱水中に30分間浸漬し、ラミ浮きの有無からボイル適性を評価した。結果を表1に示す。
評価基準
A:ラミ浮きのないもの
B:ラミ浮きがあるもの
【0071】
【表1】

【0072】
実施例のラミネート用バリア性複合フィルムは、高湿度下で放置した後でもバリア性が優れていると同時に、加湿によるラミネート強度の低下も抑制できた。また、ボイル適性にも優れていた。一方、比較例では、これらすべての性能に優れたものは得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のラミネート用バリア性コーティング組成物及びそれを用いたラミネート用バリア性複合フィルムは、食品包装用途で利用される包装袋(特に熱水処理用包装袋)に好適に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エチレン−酢酸ビニル系共重合体をケン化し、更に過酸化物で処理したエチレン−ビニルアルコール系共重合体、(B)無機層状化合物、及び、(C)溶媒を含有するラミネート用バリア性コーティング組成物において、
更に、(D)水溶性ジルコニウム化合物を含有し、
以下の式1及び式2を満足する
ことを特徴とするラミネート用バリア性コーティング組成物。
(式1) W/W=10/90〜35/65
(式1中、Wはラミネート用バリア性コーティング組成物中の(A)成分の含有量(質量)、Wはラミネート用バリア性コーティング組成物中の(B)成分の含有量(質量)を表す。)
(式2) {W/(W+W+W)}×100=0.1〜10
(式2中、W、Wは前記と同じ定義、Wはラミネート用バリア性コーティング組成物中の(D)成分の含有量(質量)を表す。)
【請求項2】
前記ラミネート用バリア性コーティング組成物において、前記式1による(A)成分と(B)成分との質量比率(W/W)が15/85〜30/70である請求項1記載のラミネート用バリア性コーティング組成物。
【請求項3】
前記(B)成分の無機層状化合物が、モンモリロナイトである請求項1又は2記載のラミネート用バリア性コーティング組成物。
【請求項4】
前記(D)成分の水溶性ジルコニウム化合物が、塩酸化ジルコニウムである請求項1、2又は3記載のラミネート用バリア性コーティング組成物。
【請求項5】
少なくともベースフィルム層、バリア層、ヒートシール材層から構成され、更に前記各層をこの順に設けたラミネート用バリア性複合フィルムにおいて、
該バリア層が、請求項1、2、3又は4記載のラミネート用バリア性コーティング組成物から得られるものである
ことを特徴とするラミネート用バリア性複合フィルム。
【請求項6】
更に、前記ベースフィルム層と前記ヒートシール材層との間に印刷層が積層された請求項5記載のラミネート用バリア性複合フィルム。

【公開番号】特開2008−297527(P2008−297527A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148412(P2007−148412)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(000105947)サカタインクス株式会社 (123)
【Fターム(参考)】