説明

ラミネート缶蓋およびその製造方法

【課題】金属板の少なくとも片面に樹脂フィルム層が形成されたラミネート板を素材とした缶蓋を製造する過程やハンドリングする過程でフィルムヘアーが生じることを防止する。
【解決手段】金属板2の少なくとも片面に樹脂フィルム層3,4が積層されたラミネート板から切り抜かれて成形されるラミネート缶蓋において、ラミネート缶蓋の周縁部の切断端部に、金属板2の切断端のうち、樹脂フィルム層3,4が積層された側に樹脂フィルム層3,4の切断端よりも外方に突出する突出部9が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板の少なくとも片面に樹脂フィルム層を積層したラミネート缶蓋およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属板の両面にエポキシ系や塩化ビニル系の塗料が塗装された素材を成形することによって得られる塗装缶蓋に替えて、ラミネート缶蓋が使用されるようになってきている。これは、缶蓋から塗料成分が溶出することによる味覚やフレーバー性などが損なわれることを回避するためであり、金属板の両面にポリエステル系フィルムなどの樹脂フィルムを積層したラミネート板を素材とするものである。その一例が特許文献1に記載されている。
【0003】
また従来、上記のようなラミネート板を切断する方法が特許文献2に記載されている。その特許文献2に記載された方法は、樹脂被覆層が形成された金属帯を剪断する方法であって、樹脂被覆層用剪断刃と金属帯用剪断刃とを使用し、樹脂被覆層用剪断刃が樹脂被覆層の切断を終了した直後に金属帯用剪断刃が金属帯の剪断を開始する方法であり、樹脂被覆層の切断端部に樹脂がひも状に切れ残って剥離していわゆるフィルムヘアーを発生しにくくすることを目的とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−193256号公報
【特許文献2】特開2005−88092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているいわゆるラミネート缶蓋は、ラミネート板からなるブランクの周辺部にカール成形などの種々の成形を施し、最終的には、缶胴の開口端に巻き締められる。そのような加工工程で、樹脂フィルム(樹脂層)の切断端が成形加工のための金型やブランク(もしくはワーク)のハンドリングのためのツールなどと接触し、これが要因となってフィルムヘアーが発生することがある。このようなフィルムヘアーは、缶蓋を缶胴の開口端に巻き締める際に巻き締め部に巻き込まれ、その結果、巻き締め部に隙間が生じて内容物が漏洩する原因となったり、缶容器の外観を損ねる原因となったりする。
【0006】
一方、特許文献2に記載された方法では、ラミネート板を切断する際にフィルムヘアーが発生することを防止もしくは抑制することを目的とした方法であり、金属板の切断に先行して樹脂被覆層を切断することにより、樹脂被覆層が引きちぎられてフィルムヘアーが生じないようにしている。しかしながら、ラミネート板を切断する際にフィルムヘアーが生じないとしても、切断した後のブランクをハンドリングする過程でブランクの周辺部にフィルムヘアーが発生することを考慮した方法ではないので、ラミネート缶蓋としてのフィルムヘアーを防止するためには未だ改善の余地がある。また、特許文献2に記載された方法で、樹脂被覆層用剪断刃と金属帯用剪断刃とを別々に設け、それぞれを独立して動かす必要があるため、その方法を実施するための設備が複雑になり製造コストが高くなるという問題がある。
【0007】
本発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、巻き締めの障害となるいわゆるフィルムヘアーが、成形などの製造の過程で生じることのないラミネート缶蓋およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、金属板の少なくとも片面に樹脂フィルム層が積層されたラミネート板から切り抜かれたラミネート素材を成形したラミネート缶蓋において、ラミネート板から切り抜かれた際に前記ラミネート素材の周縁部に生じる切断端部に、前記金属板の切断端のうち、少なくとも、前記樹脂フィルム層が積層された側の一部に前記樹脂フィルム層の切断端よりも外方に突出した突出部が形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明の構成に加えて、前記突出部が、缶蓋の外面側に積層された樹脂フィルム層側に形成されていることを特徴とするラミネート缶蓋である。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載のラミネート缶蓋の製造方法であって、前記ラミネート板の樹脂フィルム層が積層された側で、かつ切断後に製品となる側に配置される一方のカッターの刃先を曲率半径5μm以下のシャープエッジとし、該一方のカッターと対向して配置される他方のカッターの刃先を曲率半径0.05〜0.3mmの範囲のラウンドエッジとし、これら一対のカッターによって前記ラミネート板を切り抜いて前記ラミネート素材を得ることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3の発明の構成に加えて、一方のカッターの刃先側を向く他方のカッターの側壁面に、算術平均粗さRaが0.1〜3μmの範囲の粗面部が形成されていることを特徴とするラミネート缶蓋の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、ラミネート缶蓋の周縁部の切断端部に、金属板の切断端のうち、少なくとも樹脂フィルム層が積層された側に、樹脂フィルム層の切断端よりも外方に突出する突出部が形成されていることにより、樹脂フィルム層の切断端が缶蓋の端部において内方に引っ込んだ形となっている。そのため、樹脂フィルム層の切断端が成形金型や搬送具等と接触してフィルムヘアーとして剥離することを防止できる。
【0013】
請求項2の発明によれば、突出部が、缶蓋の外面側に積層された樹脂フィルム層の側に形成されていることにより、缶蓋と缶胴との巻締固着時に、缶蓋の外面側に積層された樹脂フィルム層の端部がフィルムヘアーとして剥離することを防止できる。そのため、フィルムヘアーが巻締部に巻き込まれて、内容物の漏洩を惹き起こしたり、缶容器の美観を損ねたりすることを防止できる。
【0014】
請求項3の発明によれば、ラミネート素材の樹脂フィルム層が積層された側で、かつ切断後に製品となる側に配置される一方のカッターの刃先が曲率半径5μm以下のシャープエッジであり、他方のカッターの刃先が曲率半径0.05〜0.3mmの範囲のラウンドエッジであることにより、他方のカッターによる切断面は鋭利に切断されず、凹凸のあるバリが生じた状態となるため、ラミネート板の切断面で樹脂フィルム層の近傍に外方に突出する突出部が形成されることになる。その結果、その突出部が樹脂フィルム層に対する壁となり、樹脂フィルム層の切断端が他方のカッターと接触してフィルムヘアーを発生させることを防止することができ、また缶蓋に成形する過程においてもフィルムヘアーが発生することを防止できる。
【0015】
請求項4の発明によれば、一方のカッターの刃先側を向く他方のカッターの側壁面に、算術平均粗さRaが0.1〜3.0μmの範囲の粗面部が形成されていることにより、切断面に生じたバリを摩擦により押しずらし易くするとともに、バリをより大きくすることができるため、切断面に形成される突出部の突出量を十分に確保できるので、フィルムヘアーの発生を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るラミネート缶蓋におけるフランジカール部の一部を示す断面図である。
【図2】そのラミネート缶蓋の製造するための金型の動作過程を示す部分断面図である。
【図3】そのダイカッターの刃先およびパンチカッターの刃先の形状を示すための部分断面図である。
【図4】本発明の方法でラミネート板を剪断した際に生じるバリもしくは突出部を示す部分断面図である。
【図5】ラミネート板の構成およびそのラミネート板からブランクを切り抜く過程を示す模式図である。
【図6】本発明に係るラミネート缶蓋の形状を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係るラミネート缶蓋は、エアゾール缶や飲料缶等の缶胴に巻き締め固着される金属製の缶蓋であり、金属板の少なくとも片面に樹脂フィルム層が形成されたラミネート板を素材として形成されたものである。そのラミネート板1は、図5に示すように、缶蓋基材となる金属板2と、その金属板2の缶蓋外面側となる面に積層された熱可塑性樹脂製の外面樹脂フィルム層3と、缶蓋内面側となる面とに積層された熱可塑性樹脂製の内面樹脂フィルム層4を有している。
【0018】
缶蓋基材となる金属板2としては、通常の製缶材料として使用される金属板であれば特に限定されるものではないが、例えば、純アルミニウムやアルミニウム合金等のアルミニウム板材や、電解クロム酸処理鋼板、極薄スズメッキ鋼板、スズメッキ鋼板、ニッケルメッキ鋼板、亜鉛メッキ鋼板、クロムメッキ鋼板、アルミニウムメッキ鋼板、リン酸処理鋼板等の鋼板材が使用できる。また、金属板2の板厚は、0.1〜0.4mmのものが好適に使用できる。
【0019】
このような金属板2には、耐食性および熱可塑性樹脂フィルムとの密着性の観点から表面処理が施されていることが望ましく、例えば、アルミニウム板材には、リン酸クロメート処理、有機無機複合処理、シランカップリング剤処理、アルマイト処理等を施すことが好ましく、鋼板材には、クロメート処理、リン酸処理、有機無機複合処理等を施すことが好ましい。
【0020】
また、金属板2に積層される内外面の樹脂フィルム層3,4としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、エチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等で代表される共重合ポリエステル樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂等の熱可塑性樹脂の1種又は2種以上から構成される樹脂フィルムが好適に使用できる。また、樹脂フィルム層3,4の厚さは、10〜40μmのものが好適に使用できる。
【0021】
本発明のラミネート缶蓋5は、図5および図6に示すように、上記のような金属板2と樹脂フィルム3,4とを熱圧着や接着剤を介した接着等により積層したラミネート板1を周知のプレス成形により、円板状に打ち抜いてブランク(ラミネート素材)6とするとともに、そのブランク6を、缶胴に巻き締めた際に容器内方に向かって突出する縦断面が円弧状をなすドーム部7と、缶胴に巻き締め固着するための環状のフランジカール部8とを有する所定の形状に成形されて得られる。
【0022】
特に本発明に係るラミネート缶蓋5は、図1に示すように、その周縁部となるフランジカール部8の先端部(切断端部)の形状に特徴がある。すなわち、金属板2の切断端のうち、外面樹脂フィルム層3が積層された面側に、外面樹脂フィルム層3の切断端よりも外方(先端部の延長線方向)に突出した突出部9が形成されている。なお、突出部9の先端は、外面樹脂フィルム層3の切断端から、その先端部の延長線方向に向かって10〜100μmの範囲で突出するように設定されていることが好ましい。また、金属板2の切断端のうち、内面樹脂フィルム層4が積層された面側の部分は、フランジカール部8の先端部の延長線方向に対して、内面樹脂フィルム層4の切断端とほぼ同一位置に位置するように構成されている。
【0023】
したがって、本発明に係るラミネート缶蓋5においては、いわゆる外側を向く面に形成されている樹脂フィルム層3の切断端(外周端部)が、その樹脂フィルム層3の下地である金属板2の切断端(外周端部)から内側に後退している。言い換えれば、外面樹脂フィルム層3の外周端部が金属板2に完全に乗っていていわゆる下支えされている。そのため、ラミネート缶蓋5を成形加工する過程あるいは成形後の取り扱いの過程で、外面樹脂フィルム層3が金属板2の切断端を越えてダレたり、また摩擦などによって糸状にほぐれてフィルムヘアーとなったりすることが防止もしくは回避される。
【0024】
上述した突出部9は、ラミネート缶蓋5を製造する過程で生じさせておくことが好ましく、より具体的には前述したブランク6を切り抜く(打ち抜く)際に形成する。そのための装置について説明すると、その装置は、図2に示すように、周知のプレス成形機において、下金型10と、ラム(図示せず)に取り付けられて上下動させられる上金型11とを有し、上金型11の一回の上下方向への往復動でラミネート板1から缶蓋成形用ブランク6を切り抜き(打ち抜き)、所定の缶蓋形状に成形するように構成されている。
【0025】
下金型10は、外周部にラミネート板1を切断する環状のダイカッター12を有するとともに、その内側にダイカッター12と同心円状に、ドローリング13とその内周側のダイコアリング14と更にその内周側のダイコア15とを有している。これに対して、上金型11は、外周部に配置された環状のパンチストリッパー16を有するとともに、その内側にパンチストリッパー16と同心円状に、前記ラミネート板1を切断するパンチカッター17と、更にその内周側に順に配置されたノックアウトリング18とパンチコア19とを有している。ダイカッター12とパンチストリッパー16、ドローリング13とパンチカッター17、ダイコアリング14とノックアウトリング18、ダイコア15とパンチコア19とは、それぞれ上下方向に対向するように同心円状に配置されている。
【0026】
図3に示すように、ダイカッター12の上面の内周端縁とパンチカッター17の下面の外周端縁とにはラミネート板1を切断する刃先12E,17Eが形成されている。そのダイカッター12の刃先12Eとパンチカッター17の刃先17Eとは、上金型11と下金型10との半径方向に対して僅かなクリアランスを設けた状態で対向するように配置されている。
【0027】
これらの刃先12E,17Eは、ラミネート板1を切断する際に前述した突出部9が生じるように構成されている。具体的には、パンチカッター17の刃先17Eは曲率半径5μm以下のシャープェッジに形成されており、ダイカッター12の刃先12Eは曲率半径0.05〜0.3mmの範囲のラウンドエッジに形成されている。また、ダイカッター12の刃先12Eの下方で、パンチカッター17の刃先17E側を向くダイカッター12の側壁面に、算術平均粗さRaが0.1〜3μmの範囲の粗面部12Fが形成されている。
【0028】
本発明に係る製造方法は、ラミネート缶蓋5の素材である前記ブランク6をラミネート板1から切り抜き、これを所定の形状にプレス成形する方法であり、その特徴とするところは、ラミネート素材であるブランク6の切り抜き方にある。ブランク6の切り抜きは、上述した図2および図3に示す装置を使用して行うことができ、その順を具体的に説明すると、上述した金属板2の両面に樹脂フィルム層3,4を積層したラミネート板1を、外面側樹脂フィルム層3が上側(パンチカッター17側)となるように上金型11と下金型10との間に配置し、上金型11に設けられたパンチカッター17と、下金型10に設けられたダイカッター12とにより剪断することで、ラミネート板1から缶蓋成形用ブランク6を切り抜く。
【0029】
特に、この方法では、パンチカッター17の刃先17Eが曲率半径5μm以下のシャープェッジに形成されており、ダイカッター12の刃先12Eが曲率半径0.05〜0.3mmの範囲のラウンドエッジに形成されている。また、ダイカッター12の刃先12Eの下方で、パンチカッター17の刃先17E側を向くダイカッター12の側壁面に、算術平均粗さRaが0.1〜3μmの範囲の粗面部12Fが形成されている。すなわち、シャープエッジの刃先17Eを有するパンチカッター17は、金型の上下方向においてラミネート板1のフィルムヘアーの発生を防止したい側(本実施例では缶蓋外面側)で、かつ、金型の半径方向において切断後に製品となる缶蓋成形用ブランク6側に配置されている。
【0030】
本発明のラミネート缶蓋5の製造工程を詳細に説明すると、上金型11と下金型10との間にラミネート板1を配置し、上金型11を下降させると、パンチストリッパー16が下降し、パンチストリッパー16の下面とダイカッター12の上面とでラミネート板1が挟持される。次いで、下降されてきたパンチカッター17の刃先17Eとダイカッター12の刃先12Eとでラミネート板1が剪断されて円板状の缶蓋成形用ブランク6が切り出される。その後、パンチカッター17が更に下降させられ、パンチカッター17とドローリング13とでブランク6の外周部を挟持しつつ、パンチカッター17に押し下げられるようにパンチカッター17とドローリング13とが下降するとともに、ドーム状の成形下面を有するパンチコア19によりブランク6の中央部を押し下げ、パンチコア19とダイコア15とでブランク6を挟持しつつ、パンチコア19に押し下げられるようにパンチコア19とダイコア15とが下降させられ、その結果、ブランク6の中央部がドーム状に成形される。このようにブランク6の中央部がドーム状に成形されるのに伴って、ブランク6の周辺部はパンチカッター17の内側の側壁面とダイコアリング14の外側の側壁面との間を通過して、ノックアウトリング18とダイコアリング14との間で挟持され、ダイコアリング14の上面側の形状に沿うように変形させられて、フランジカール部8が成形される。
【0031】
上記の製造工程のうちラミネート板1からブランク6を切り抜く切断過程を詳細に説明すると、外面樹脂フィルム層3が上側となるように配置されたラミネート板1に対して、シャープエッジの刃先17Eを有するパンチカッター17が押し下げられ、外面樹脂フィルム層3を切断しつつ金属板2を下方に押し切っていくと、ラミネート板1の下面側はダイカッター12の刃先12Eにより切断されることとなる。その場合、ダイカッター12の刃先12Eはラウンドエッジとなっているため、ダイカッター12による切断面は鋭利に切断されず、凹凸のあるバリが生じた状態となる。パンチカッター17が更に押し下げられると、ダイカッター12により切断されたブランク6の切断面は、パンチカッター17の刃先17E側を向くダイカッター12の側壁面に摺接させられるので、切断面に生じたバリが上方(外面樹脂フィルム層3側)に押しずらされて、切断面のうち、外面樹脂フィルム層3の近傍にバリが一箇所に集められたような突出部9が形成されることになる。その状態を図4に示してある。
【0032】
その結果、外面樹脂フィルム層3はシャープエッジとなっているパンチカッター17の刃先17Eにより、パンチカッター17の刃先17Eの位置で切断されるのに対し、ラウンドエッジであるダイカッター12の刃先12Eにより形成される突出部9は、パンチカッター17の刃先17Eよりも外側方向に突出するように形成されるため、最終的に製造されたラミネート缶蓋5において、ラミネート缶蓋5の周縁部の切断端部に、金属板2の切断端のうち、外面樹脂フィルム層3が積層された側に外面樹脂フィルム層3の切断端よりも外方に突出する突出部9が形成されることとなる。
【0033】
また、本実施例では、ダイカッター12の刃先12Eの下方で、パンチカッター17の刃先17E側を向くダイカッター12の側壁面に、算術平均粗さRaが0.1〜3μmの範囲の粗面部12Fが形成されている。したがって、パンチカッター17が更に押し下げられると、ダイカッター12により切断されたブランク6の切断面が、パンチカッター17の刃先17E側を向くダイカッター12の側壁面に摺接した際に、その側壁面が上記の粗面部12Fとなっていることにより、ブランク6の切断面に生じたバリが摺接する際の摩擦抵抗が大きくなり、バリを粗面部12Fによって上方向に押しずらし易くなるとともに、バリをより大きくすることができる。
【0034】
このようなラミネート缶蓋5によれば、その周縁部の切断端部に、金属板2の切断端のうち、外面樹脂フィルム層3が積層された側に外面樹脂フィルム層3の切断端よりも外方に突出する突出部9が形成されていることにより、外面樹脂フィルム層3の切断端が缶蓋の端部において内方に引っ込んだ形となっているため、外面樹脂フィルム層3の切断端が成形金型や搬送具等と接触してフィルムヘアーとして剥離することを防止できる。
【0035】
また、金属板2の切断端面に形成されている突出部9が、缶蓋の外面側に積層された外面樹脂フィルム層3の側に形成されていることにより、缶蓋と缶胴との巻締固着時に、缶蓋の外面側に積層された外面樹脂フィルム層3の切断端がフィルムヘアーとして剥離することを防止できるため、フィルムヘアーが巻締部に巻き込まれて、内容物の漏洩を惹き起こしたり、缶容器の美観を損ねたりすることを防止できる。
【0036】
本実施例では、突出部9の先端は、外面樹脂フィルム層3の切断端から先端部の延長線方向に向かって10〜100μmの範囲で突出していることが好ましい。こうすることにより、フィルムヘアーの発生をより確実に防止しつつ、突出部9による缶胴等の傷付きも確実に防止できる。すなわち、突出部9の外面樹脂フィルム3の切断端からの突出長さが10μmより短いと、外面樹脂フィルム層3の切断端が成形金型や搬送具等と接触しやすい傾向となり、一方、100μmよりも長いと、缶胴との巻締時に、缶胴に傷が付きやすくなる虞がある。
【0037】
さらに、ラミネート板1を切断する場合、ラミネート板1の樹脂フィルム層3,4が積層された側で、かつ、切断後に製品となる側に配置されるパンチカッター17の刃先17Eが曲率半径5μm以下のシャープエッジであり、ダイカッター12の刃先12Eが曲率半径0.05〜0.3mmの範囲のラウンドエッジであることにより、ダイカッター12による切断面は鋭利に切断されず、凹凸のあるバリが生じた状態となるため、金属板2の切断面で樹脂フィルム層3,4の近傍にバリが一箇所に集められたような外方に突出する突出部9が形成されることになる。その結果、突出部9が壁となって、樹脂フィルム層3,4の切断端がダイカッター12と接触してフィルムヘアーを発生させることを防止することができる。
【0038】
すなわち、ダイカッター12の刃先12Eの曲率半径が、0.05mmよりも小さいと、ラミネート板1の切断時にバリが生じにくくなり、突出部9の突出量を十分に確保できない虞があり、一方、0.3mmよりも大きいと、バリが生じすぎて、突出部9の突出量が大きくなりすぎる虞がある。
【0039】
さらにまた、パンチカッター17の刃先17E側を向くダイカッター12の側壁面に、算術平均粗さRaが0.1〜3μmの範囲の粗面部12Fが形成されていることにより、切断面に生じたバリを押しずらし易くするとともに、バリをより大きくすることができるため、切断面に形成される突出部9の突出量を十分に確保でき、それに伴いフィルムヘアーの発生を確実に防止することができる。
【0040】
すなわち、粗面部の算術平均粗さRaが0.1μmよりも小さいと、粗面部12Fによるバリを押しずらしたり、バリを大きくしたりする効果が十分に得られない虞があり、一方、3μmよりも大きいと、突出部9の突出量が大きくなりすぎる虞がある。
【0041】
なお、上述した具体例では、ドーム部7を有する缶蓋を例に採って説明したが、本発明に係る缶蓋は開口部や開口用タブなどを有するいわゆるイージーオープン缶蓋であってもよい。また、本発明におけるラミネート板もしくはラミネート素材は、缶蓋としていわゆる外面となる面側に樹脂フィルム層が形成されていればよく、内外両面側に樹脂フィルム層が形成されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1…ラミネート板、 2…金属板、 3…外面樹脂フィルム層、 4…内面樹脂フィルム層、 5…ラミネート缶蓋、 6…ブランク(ラミネート素材)、 7…ドーム部、 8…フランジカール部、 9…突出部、 10…下金型、 11…上金型、 12…ダイカッター、 13…ドローリング、 14…ダイコアリング、 15…ダイコア、 16…パンチストリッパー、 17…パンチカッター、 18…ノックアウトリング、 19…パンチコア、 12E,17E…刃先、 12F…粗面部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板の少なくとも片面に樹脂フィルム層が積層されたラミネート板から切り抜かれて成形されるラミネート缶蓋において、
ラミネート缶蓋の周縁部の切断端部に、金属板の切断端のうち、樹脂フィルム層が積層された側に樹脂フィルム層の切断端よりも外方に突出する突出部が形成されていることを特徴とするラミネート缶蓋。
【請求項2】
突出部が、缶蓋の外面側に積層された樹脂フィルム層の側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のラミネート缶蓋。
【請求項3】
前記ラミネート板の樹脂フィルム層が積層された側で、かつ切断後に製品となる側に配置される一方のカッターの刃先を曲率半径5μm以下のシャープエッジとし、該一方のカッターと対向して配置される他方のカッターの刃先を曲率半径0.05〜0.3mmの範囲のラウンドエッジとし、これら一対のカッターによって前記ラミネート板を切り抜いて前記ラミネート素材を得ることを特徴とする請求項1または2に記載のラミネート缶蓋の製造方法。
【請求項4】
一方のカッターの刃先側を向く他方のカッターの側壁面に、算術平均粗さRaが0.1〜3μmの範囲の粗面部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のラミネート缶蓋の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−105345(P2011−105345A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262728(P2009−262728)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000208455)大和製罐株式会社 (309)
【Fターム(参考)】