説明

ラメ装飾物、及びその製造方法

【課題】 少数から製造できる意匠性のある装飾物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
有色インクによって画像32が彩色されている、表面が起毛しているTシャツ様の被記録媒体31が被記録媒体支持台12上に置かれている。この被記録媒体31に対しインクジェットヘッド13より被記録媒体31上の任意の箇所33に硬化型透明樹脂を付着させる。その後硬化させることで硬化型透明樹脂の粒子3を被記録媒体31上の任意の箇所33に造粒形成でき、その箇所33にはラメ意匠性を付与することができる。このような工程を経ることにより、文字、画像などが印刷された被記録媒体の一部、あるいは全体にラメ意匠性を持たせたラメ装飾物を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂を用いたラメ装飾物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、布帛上にインクで像を形成する方法として、インクジェット記録方式を用いるプリント方法が知られている(特許文献1参照)。このプリント方法では、まず、顔料及び樹脂エマルジョンを、インクジェット記録方式にて布帛上に吐出して所定の像を形成し、次に、熱処理することにより顔料を布帛に固着させる。
【0003】
この方式は、版をおこす必要がないため時間と費用が削減でき、スクリーン印刷と比較して、少ない枚数のTシャツの作成等に適している。
【0004】
また、布帛上に形成された像に対し、光沢感を与えるために透明インクを別途塗布する(特許文献2参照)ことや、布帛のように光沢のない被記録媒体上での印刷に対し光沢感を減少させることで像の違和感を低減することが行われてきた(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平8−286636号公報
【特許文献2】特開2007−152671号公報
【特許文献3】特開2007−290523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、昨今一般的に頒布されているTシャツ等の布帛商品に印刷されている画像には、単なる絵、文字、写真等に限らず、ラメ、金属光沢など多彩な意匠性が施されている場合が多い。
【0006】
しかしながら、従来知られているインクジェット記録方式によるプリント方式によっては、絵、文字、写真等の画像を印刷することは可能であり、また、その印刷物に対し光沢感を与えたり、逆に光沢感を減少させたりすることも可能であるが、その印刷画像にラメのごとき意匠性を持たせることはできなかった。
【0007】
本発明は上述の課題を解決するためになされたものであり、少数から製造できる意匠性のある装飾物及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載のラメ装飾物は、起毛した被記録媒体表面に硬化性透明樹脂を付着させた後に硬化させて粒状形状とする一連の造粒方法を、複数回繰り返すことで、前記被記録媒体表面に前記硬化性透明樹脂の粒子を造粒形成することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に記載のラメ装飾物は、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記被記録媒体表面に造粒形成された、前記硬化性透明樹脂の粒子の平均粒径が100〜300μmの範囲であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3に記載のラメ装飾物は、請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記硬化型透明樹脂は、紫外線を照射することで硬化する、UV硬化型樹脂であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項4に記載のラメ装飾物は、請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記硬化型透明樹脂は、熱を加えることで硬化する、熱硬化型樹脂であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項5に記載のラメ装飾物は、請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記硬化型透明樹脂は、各々単体では液状である2種類の物質が混合することで硬化する二液性樹脂であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項6に記載のラメ装飾物は、請求項1乃至5に記載の発明の構成に加え、前記被記録媒体表面が、浸透性のある有色インクによって彩色され、その上に前記硬化型透明樹脂の粒子が付着していることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項7に記載のラメ装飾物製造方法は、起毛した被記録媒体表面に対し硬化型透明樹脂を付着させる樹脂付着ステップと、付着させた前記硬化型透明樹脂を所定の方法により硬化させる樹脂硬化ステップとを持ち、前記樹脂付着ステップと前記樹脂硬化ステップとを所定回数繰り返すことで前記被記録媒体表面に前記硬化型透明樹脂の粒子を造粒形成したことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項8に記載のラメ装飾物製造方法は、請求項7に記載の発明の構成に加え、前記樹脂付着ステップと前記樹脂硬化ステップとを繰り返す所定回数は、前記被記録媒体表面に造粒形成された前記硬化型透明樹脂の粒子の平均粒径が100〜300μmとなる回数であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項9に記載のラメ装飾物製造方法は、請求項7又は8に記載の発明の構成に加え、前記樹脂硬化ステップは、前記樹脂付着ステップにおいて前記被記録媒体に付着させた硬化型透明樹脂に対し、UVを照射することで硬化させることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項10に記載のラメ装飾物製造方法は、請求項7又は8に記載の発明の構成に加え、前記樹脂硬化ステップは、前記樹脂付着ステップにおいて前記被記録媒体に付着させた硬化型透明樹脂に対し、熱を加えることで硬化させることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の請求項11に記載のラメ装飾物製造方法は、請求項7又は8に記載の発明の構成に加え、前記樹脂付着ステップは、二液性の前記硬化型透明樹脂のうち、一液目の物質を付着させる一液目物質付着ステップであり、前記樹脂硬化ステップは、二液性の前記硬化型透明樹脂のうち、二液目の物質を、すでに前記被記録媒体に付着している一液目の物質上に付着させて硬化させる二液目物質付着ステップである。
【0019】
また、本発明の請求項12に記載のラメ装飾物製造方法は、請求項7乃至11に記載の発明の構成に加え、浸透性のある有色インクを前記被記録媒体に印刷する有色インク印刷ステップを実施した後に、前記樹脂付着ステップと前記樹脂硬化ステップを所定回数繰り返すことを特徴とする。
【0020】
また、本発明の請求項13に記載のラメ装飾物製造方法は、請求項7乃至12に記載の発明の構成に加え、前記樹脂付着ステップは、インクジェット記録方式により、前記硬化型透明樹脂を前記被記録媒体に付着させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の請求項1に記載のラメ装飾物は、起毛した被記録媒体と、その被記録媒体表面に付着している硬化性透明樹脂の粒子とからなり、硬化性透明樹脂の粒子は、硬化性透明樹脂を被記録媒体表面に付着させた後に硬化させて粒状形状とする一連の造粒方法を、複数回繰り返すことにより造粒形成される。被記録媒体は起毛しているため、その厚み方向に対し、不規則な位置に硬化性透明樹脂の粒子が形成される。硬化性透明樹脂の粒子の配置の不規則性によって、被記録媒体の表面に入射した光が不規則に反射し、そのことによりラメ意匠性が付与される。従って、ラメ意匠性を持つラメ装飾物を提供することができる。
【0022】
本発明の請求項2に記載のラメ装飾物は、請求項1に記載の発明の効果に加え、被記録媒体表面に造粒形成された、硬化性透明樹脂の粒子の平均粒径が100μm以上であることにより、硬化性透明樹脂の粒子の表面積がより大きくなり、その結果硬化性透明樹脂の粒子と空気層との界面での乱反射が多くなって視認性が高まるので、ラメ意匠性がより高くなる。また、被記録媒体表面に造粒形成された、硬化性透明樹脂の粒子の平均粒径が300μm以下であることにより、硬化性透明樹脂の粒子が、何らかの接触を受けた場合において、被記録媒体表面からより剥がれにくくなる。従って、ラメ意匠性と耐接触性のより優れたラメ装飾物を提供することができる。
【0023】
本発明の請求項3に記載のラメ装飾物は、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、硬化性透明樹脂が紫外線を照射することで硬化する、UV硬化型樹脂である。UV硬化型樹脂は有効成分が多く、かつ硬化が速いため、付着した際の大きさと形状を保ったまま硬化できるので、効率よく、かつラメ意匠性の高いラメ装飾物を提供することができる。
【0024】
本発明の請求項4に記載のラメ装飾物は、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、硬化性透明樹脂が熱を加えることで硬化する、熱硬化型樹脂である。熱硬化型樹脂は有効成分が多いため、付着した際の形状を保ったまま硬化できるので、ラメ意匠性の高いラメ装飾物を提供することができる。
【0025】
本発明の請求項5に記載のラメ装飾物は、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、硬化性透明樹脂が、各々単体では液状である2種類の物質が混合することで硬化する二液性樹脂である。二液性樹脂は有効成分が多いため、付着した際の形状を保ったまま硬化できるので、ラメ意匠性の高いラメ装飾物を提供することができる。
【0026】
本発明の請求項6に記載のラメ装飾物は、請求項1乃至5に記載の発明の効果に加え、浸透性のある有色インクによって彩色され、その上に硬化型透明樹脂の粒子が付着している。そのため、ラメ意匠性を施された文字や画像の描かれている、ラメ装飾物を提供することができる。
【0027】
本発明の請求項7に記載のラメ装飾物製造方法は、起毛した被記録媒体表面に対し硬化性透明樹脂を付着させる樹脂付着ステップと、付着させた硬化性透明樹脂を硬化させる樹脂硬化ステップとからなり、これらのステップを所定回数繰り返す。この製造方法により、硬化性透明樹脂粒子が、起毛した被記録媒体の表面に不規則に付着する。この粒状物質の配置の不規則性によって、被記録媒体にラメ意匠性が付与される。従って、被記録媒体にラメ意匠性を持たせたラメ装飾物を製造することが可能となる。
【0028】
本発明の請求項8に記載のラメ装飾物製造方法は、請求項7に記載の発明の効果に加え、樹脂付着ステップと樹脂硬化ステップを繰り返す所定回数を、被記録媒体表面に造粒形成された硬化性透明樹脂の平均粒径が100〜300μmとなるような回数とする。このことにより、よりラメ意匠性と耐接触性の優れたラメ装飾物を製造することが可能となる。
【0029】
本発明の請求項9に記載のラメ装飾物製造方法は、請求項7又は8に記載の発明の効果に加え、樹脂硬化ステップにおいて、被記録媒体に付着させた硬化型透明樹脂に対しUVを照射し硬化させる。このことにより、硬化型透明樹脂としてUV硬化型の樹脂を使用することが可能となり、効率よく、かつラメ意匠性の高いラメ装飾物を製造することが可能となる。
【0030】
本発明の請求項10に記載のラメ装飾物製造方法は、請求項7又は8に記載の発明の効果に加え、樹脂硬化ステップにおいて、被記録媒体に付着させた硬化型透明樹脂に対し熱を加えることで硬化させる。このことにより、硬化型透明樹脂として熱硬化型の樹脂を使用することが可能となり、ラメ意匠性の高いラメ装飾物を製造することが可能となる。
【0031】
本発明の請求項11に記載のラメ装飾物製造方法は、請求項7又は8に記載の発明の効果に加え、樹脂付着ステップにおいて、二液性樹脂のうち、一液目を被記録媒体に付着させ、樹脂硬化ステップにおいて、二液性樹脂のうち、二液目を被記録媒体に付着している一液目の物質上に付着させて硬化させる。このことにより、硬化型透明樹脂として二液性樹脂を使用することが可能となり、常温環境にて、ラメ意匠性の高いラメ装飾物を製造することが可能となる。
【0032】
本発明の請求項12に記載のラメ装飾物製造方法は、請求項7乃至11に記載の発明の効果に加え、浸透性のある有色インクを被記録媒体に印刷する有色インク印刷ステップを実施した後に、樹脂付着ステップと樹脂硬化ステップを所定回数繰り返す。硬化性透明樹脂の粒子を付着させる前に有色インクにより文字、画像等を印刷するため、ラメ意匠性を持った文字、画像等の描かれたラメ装飾物を製造することが可能となる。
【0033】
本発明の請求項13に記載のラメ装飾物製造方法は、請求項7乃至12に記載の発明の効果に加え、インクジェット記録方法によって硬化型透明樹脂を被記録媒体に付着させるため、より安価でかつ簡便にラメ装飾物を製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明のラメ装飾物1について、図面を参照して説明する。図1はラメ装飾物1の表面状態の模式図であり、図2はラメ装飾物1の断面模式図である。また、図3はインクジェット記録装置の一例を示す図であり、図4は被記録媒体にUV光を照射するUV光照射装置の模式図である。図5は被記録媒体の一例であるTシャツ様の被記録媒体にラメ意匠性を与える作業の模式図であり、図6はラメ装飾物の一例であるTシャツを示す図であり、図7は図6で示すラメ装飾物の一例であるTシャツの断面模式図である。
【0035】
ラメ装飾物1は、図1及び図2に示す通り、その表面が起毛している被記録媒体2の表面に、硬化型透明樹脂の粒子3を付着させてなるものである。
【0036】
被記録媒体2はその表面が起毛している、略平面状の部材である。被記録媒体2の材質としては、表面が起毛しているものであればよく、例えば、綿、麻等の天然繊維、ナイロン等の化学繊維、紙などが挙げられる。
【0037】
硬化型透明樹脂の粒子3は、硬化型透明樹脂を被記録媒体2に付着させた後に硬化させ、その付着と硬化の工程を複数回繰り返すことにより硬化型透明樹脂を略粒状に造粒形成したものである。硬化型透明樹脂としては、UV硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、二液性樹脂等が挙げられる。
【0038】
UV硬化型樹脂には、光によりラジカルが発生して重合していくラジカル重合系化合物と、光によりカチオンが発生して重合していくカチオン重合系化合物とがあるが、どちらも用いることができる。また、同時に光重合開始剤を用いることが望ましい。
【0039】
ラジカル重合系化合物は、ラジカル重合性のあるモノマー、オリゴマー及びポリマーであれば、いずれの化学形態をもつものであっても使用できる。ラジカル重合系化合物は、単独で、もしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
ラジカル重合系化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エステル、ウレタン、アミドや無水物、アクリロニトリル、スチレン、さらに種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ポリウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。具体的には、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジ
アクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、ステアリルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エポキシアクリレート、脂肪族ウレタンアクリレート、芳香族ウレタンアクリレート等のアクリル酸誘導体、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等のメタクリル誘導体、その他、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体が挙げられる。
【0041】
ラジカル重合系化合物の光重合開始剤としては、ベンゾイン系、チオキサントン系、ベンゾフェノン系、ケタール系、アセトフェノン系の化合物が挙げられ、これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
カチオン重合系化合物の反応性モノマー及びオリゴマーとしては、例えば、脂環式ポリエポキシド類、多塩基酸のポリグリシジルエステル類、多価アルコールのポリグリシジルエーテル類、ポリオキシアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類の水素添加化合物類、ウレタンポリエポキシ化合物類及びエポキシ化ポリブタジエン類等のエポキシ化合物、スチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、β−メチルスチレン、p−メチル−β−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシ−β−メチルスチレン等のスチレン誘導体、2−ビニルナフタレン、α−メチル−2−ビニルナフタレン、β−メチル−2−ビニルナフタレン、4−メチル−2−ビニルナフタレン、4−メトキシ−2−ビニルナフタレン等のビニルナフタレン誘導体、イソブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、p−メチルフェニルビニルエーテル、p−メトキシフェニルビニルエーテル、α−メチルフェニルビニルエーテル、β−メチルイソブチルビニルエーテル、β−クロロイソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン、N−ビニルインドール、N−ビニルピロール、N−ビニルフェノチアジン、N−ビニルアセトアニリド、N−ビニルエチルアセトアミド、N−ビニルスクシンイミド、N−ビニルフタルイミド、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルイミダゾール等のN−ビニル化合物、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス{〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕メチル}ベンゼン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−{ [3−(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン、オキセタニルシルセスキオキサン等のオキセタン化合物が挙げられる。
これらの化合物は、単独で、もしくは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0043】
カチオン重合系化合物の光重合開始剤としては、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、鉄アレーン錯体及び有機ポリハロゲン化合物を好ましく使用することができる。
【0044】
熱硬化性樹脂は、UV硬化型樹脂と同様な重合性化合物を用いることができ、同時に熱重合開始剤を用いることが望ましい。ラジカル重合系化合物の熱重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル等を用いることができ、カチオン重合系化合物の熱重合開始剤としては、ポリアミンや酸無水物、フェノール化合物等を用いることができる。
【0045】
二液性樹脂は、二液を混合する前は室温付近では安定であるが、二液を混合することで硬化するものである。例えば、液状の樹脂に対し、硬化剤を混合することで硬化するものが挙げられる。
【0046】
使用される樹脂は、二液性樹脂に使用されることが公知である樹脂であれば特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0047】
この中でも、付着性の良さなどからエポキシ樹脂が最も好ましく使用される。エポキシ樹脂の代表的なものとしては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、直鎖状脂肪族エポキシ樹脂等の公知のエポキシ樹脂が挙げられる。
【0048】
また、上述したエポキシ樹脂に対して使用される硬化剤の代表的なものとしては、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、アミドポリアミン、ポリアミン、ルイス塩基等が挙げられる。
【0049】
被記録媒体2上に付着している硬化型透明樹脂の粒子3の平均粒径は100〜300μmであることが好ましく、130〜300μmであることがより好ましい。この平均粒径の測定は、以下の手順にて行われる。
1.ラメ装飾物1表面の任意の3箇所の、面積が6mm程度の略四角形の領域を決定する。
2.決定した略四角形領域を顕微鏡にて観察し、見出した略粒状形状の物質全てについて、その半径を測定する。
3.測定された全ての半径値の平均を算出する。
【0050】
硬化型透明樹脂の粒子3は、図2に示すように、被記録媒体2表面の起毛している繊維4に不規則に付着している。この不規則性によって、被記録媒体2の表面に入射した光が不規則に反射し、そのことが、硬化型透明樹脂の粒子3の付着している被記録媒体2に対し、ラメ意匠性を付与する要因となっている。
【0051】
被記録媒体2表面に硬化型透明樹脂を付着させる方法としては、極めて細かい液滴を、被記録媒体表面に吹き付けることができる方法であればよく、例えば、図3に示すようなインクジェット記録装置11による樹脂液の吐出などが挙げられる。この場合、被記録媒体支持台12上に置かれた被記録媒体2に向かって、インクジェットヘッド13から細かい液滴状に吹き付けられた硬化型透明樹脂は、被記録媒体との界面張力の影響で略粒状形状となって被記録媒体表面に付着する。そして、図示しないモーターユニットによって被記録媒体支持台12が図中に示した矢印15の方向に移動し、かつ図示しないモーターユニット等の動作によりインクジェットヘッド13がスライドレール14上を矢印16の方向に往復運動することにより、被記録媒体2表面上の任意の箇所に硬化型透明樹脂を付着させることが可能となる。
【0052】
被記録媒体2表面に付着した硬化型透明樹脂を硬化し、硬化性透明樹脂の粒子3とする方法は、付着させた硬化型透明樹脂を硬化させることができる方法であればよい。例えば、硬化型透明樹脂がUV硬化型樹脂であれば、被記録媒体2にUV光を照射する方法であればよく、例えば図4に示すような、UVランプ21による、被記録媒体2上のUV硬化型樹脂が付着された範囲22に対するUV光の照射などが挙げられる。また、硬化型透明樹脂が熱硬化型樹脂であれば、被記録媒体2に、使用した熱硬化型樹脂が硬化するために十分な熱量を付与できる熱照射方法であればよく、例えば、熱風を送風する機器の使用などが挙げられる。また、硬化型透明樹脂が二液性樹脂であれば、あらかじめ被記録媒体2に吹き付けられた二液性樹脂の1液目の液体に対し、2液目の液体を吹き付けることが可能である方法であればよく、例えば、インクジェット記録装置による2液目の液体の吐出などが挙げられる。
【0053】
被記録媒体2表面は、硬化型透明樹脂の粒子3を付着させる前に、浸透性のある有色インクによって彩色されていてもよい。例を図5に示す。既に有色インクによって画像32が彩色されている、Tシャツ様の表面が起毛している被記録媒体31が被記録媒体支持台12上に置かれている(図4(a))。この被記録媒体31に対しインクジェットヘッド13より被記録媒体31上の任意の箇所33に硬化型透明樹脂を付着させる(図4(b))。その後硬化させることで硬化型透明樹脂の粒子3を被記録媒体31上の任意の箇所33に造粒形成でき、その箇所33にはラメ意匠性を付与することができる。このような工程を経ることにより、図6のように、文字、画像などが印刷された被記録媒体の一部、あるいは全体にラメ意匠性を持たせたラメ装飾物を得ることが可能となる。この彩色に使用する有色インクは、浸透性のあるものであれば特に限定されることはなく、被記録媒体の種類に応じ、その組成、物性を選択することが可能である。また、彩色方法も特に限定されず、インクジェット方式など任意の方法を用いることができる。また、図6に示すラメ装飾物の断面は図7のようになっている。画像32の上部に硬化型透明樹脂の粒子3が付着することで、画像32にラメ意匠性を付与することができる。
【実施例】
【0054】
以下に、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
<実施例1>
(硬化型透明樹脂の作製)
以下に示す組成の硬化型透明樹脂を作製した。作製に際しては、以下に示した各物質を攪拌容器に採取した後、十分に攪拌し、ろ過により不純物を除去した。
デナコール EX−321(ナガセケムテックス社製) 67部
OXT−221(東亞合成社製) 30部
イルガキュア250(Ciba社製) 3部
【0056】
(硬化型透明樹脂の被記録媒体への付着)
被記録媒体としては、布帛(綿100%)を使用した。この布帛に対し、ピエゾ型インクジェットヘッドを使用したインクジェット記録装置によって、上述した手順にて作製した硬化型透明樹脂を付着させた。この際、図3に示すように、布帛表面の起毛している繊維に対し、インクジェットヘッドから吐出された硬化型透明樹脂の液滴は、不規則に付着した。インクジェット記録装置のインク供給系は、インクタンク、供給パイプ、ヘッド直前の前室インクタンク、フィルター付き配管、ピエゾヘッドからなる。また、このインク供給系には、インク粘度を調節するための加熱機構を備えており、上述した組成の硬化型透明樹脂の吐出を行う際には40℃に加熱した。
【0057】
(硬化型透明樹脂の硬化)
布帛に付着させた硬化型透明樹脂に対し、UVランプにより、UV光を照射して硬化させた。UV光の露光面照射強度は200mW/cm2、積算光量は400mJ/cm2とした。この照射強度等は、「UV METER UVPF−36」(アイグラフィックス社製)にて、中心波長365nmで測定した。
【0058】
(繰り返しの付着、硬化)
上述した、硬化型透明樹脂の布帛への付着と硬化は、複数回繰り返した。複数回付着と硬化を繰り返すことで、布帛表面の起毛した繊維に付着している略粒状形状の硬化した硬化型透明樹脂の大きさは、図8に示すように、次第に大きくなっていった。具体的には、実施回数を1〜16回まで変化させたサンプルを作成した。
【0059】
(評価)
以下の項目に関して評価を行った。
【0060】
ラメ意匠性:硬化型透明樹脂が付着、硬化した部分を、目視にて観察した。
・明らかにラメ意匠性が認められる・・・○
・若干のラメ意匠性が認められる・・・・△
・ラメ意匠性はほとんど認められない・・×
【0061】
耐接触性:一定荷重を負荷した引っ掻き試験にて評価した。
・耐接触性に問題はない・・・・・・・・・・・・・○
・接触を受けた場合、透明樹脂が剥離、損傷する・・×
【0062】
硬化性透明樹脂の平均粒径測定:平均粒径の測定は、以下の手順にて行われる。
1.ラメ装飾物1表面の任意の3箇所の、面積が6mm程度の略四角形の領域を決定する。
2.決定した略四角形領域を顕微鏡にて観察し、見出した略粒状形状の物質全てについて、その半径を測定する。
3.測定された全ての半径値の平均を算出する。
【0063】
以上の評価結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
表1で示した結果から明らかなように、硬化型透明樹脂の粒子3の平均粒径が100μm以上の場合は、ラメ意匠性が認められ、特に平均粒径130μm以上の場合は明らかにラメ意匠性が認められた。
【0066】
また、略粒状形状の硬化型透明樹脂の平均粒径が300μm以下の場合は、耐接触性が良好であることも明らかとなった。
【0067】
<実施例2>
実施例2においては、実施例1と比較して、硬化型透明樹脂の構成、及び硬化方法のみが異なるため、硬化型透明樹脂の作製、硬化型透明樹脂の硬化、及び評価結果についてのみ述べる。
【0068】
(硬化型透明樹脂の作製)
以下に示す組成の硬化型透明樹脂を作製した。作製に際しては、以下に示した各物質を攪拌容器に採取した後、十分に攪拌し、ろ過により不純物を除去した。
jER828(ジャパン・エポキシレジン社製) 45.5部
jER871(ジャパン・エポキシレジン社製) 45.5部
トリエチルテトラミン(熱重合開始剤) 9部
【0069】
(硬化型透明樹脂の硬化)
実施例1と同様の手順にて布帛に付着させた硬化型透明樹脂に対し、熱を加えることで硬化させた。加熱は、インクジェット記録装置にて硬化型透明樹脂が布帛に付着した直後にクリーンオーブン(PVC−230:タバイエスペック社製)にて行い、加熱条件は、環境温度180℃、加熱時間は30分とした。
【0070】
(評価)
実施例1と同様の評価を行ったところ、同じようにラメ意匠性および耐接触性のあるラメ装飾物を得ることができた。
【0071】
<実施例3>
実施例3においても、実施例1、2と比較して、硬化型透明樹脂の構成、及び硬化方法のみが異なるため、硬化型透明樹脂の作製、硬化型透明樹脂の硬化、及び評価結果についてのみ述べる。
【0072】
(硬化型透明樹脂の作製)
以下に示す組成の二液性樹脂を作製した。作製に際しては、以下に示した各物質を攪拌容器に採取した後、十分に攪拌し、ろ過により不純物を除去した。
・主剤
jER828(ジャパン・エポキシレジン社製) 50部
jER815(ジャパン・エポキシレジン社製) 50部
・硬化剤
jERキュアRX221PF(ジャパン・エポキシレジン社製) 100部
【0073】
(硬化型透明樹脂の硬化)
実施例1と同様の手順にて布帛に主剤を付着させた後、主剤と同じ場所に同様の手順にて硬化剤を、その滴下量が主剤:硬化剤=100:35となるように付着させることで硬化させた。
【0074】
(評価)
実施例1と同様の評価を行ったところ、同じようにラメ意匠性および耐接触性のあるラメ装飾物を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明のラメ装飾物の表面状態の模式図である
【図2】本発明のラメ装飾物の断面模式図である
【図3】本発明に用いられるインクジェット記録装置の模式図である
【図4】本発明に用いられるUV光照射装置の模式図である
【図5】本発明のラメ装飾物の製造方法の模式図である
【図6】本発明のラメ装飾物の一例である
【図7】本発明のラメ装飾物の断面状態の一例を示す模式図である
【図8】本発明のラメ装飾物製造方法により、被記録媒体表面に付着する硬化型透明樹脂の粒子が大きくなっていく様子を示す模式図である
【符号の説明】
【0076】
1 ラメ装飾物
2 被記録媒体
3 硬化性透明樹脂の粒子
4 被記録媒体表面の起毛している繊維
11 インクジェット記録装置
12 被記録媒体支持台
13 インクジェットヘッド
21 UVランプ
31 被記録媒体
32 画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
起毛した被記録媒体表面に硬化性透明樹脂を付着させた後に硬化させて粒状形状とする一連の造粒方法を、複数回繰り返すことで、前記被記録媒体表面に前記硬化性透明樹脂の粒子を造粒形成したことを特徴とするラメ装飾物。
【請求項2】
前記被記録媒体表面に造粒形成された、前記硬化性透明樹脂の粒子の平均粒径が100〜300μmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のラメ装飾物。
【請求項3】
前記硬化型透明樹脂は、紫外線を照射することで硬化する、UV硬化型樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載のラメ装飾物。
【請求項4】
前記硬化型透明樹脂は、熱を加えることで硬化する、熱硬化型樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載のラメ装飾物。
【請求項5】
前記硬化型透明樹脂は、各々単体では液状である2種類の物質が混合することで硬化する二液性樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載のラメ装飾物。
【請求項6】
前記被記録媒体表面が、浸透性のある有色インクによって彩色され、その上に前記硬化型透明樹脂の粒子が付着していることを特徴とする請求項1乃至5に記載のラメ装飾物。
【請求項7】
起毛した被記録媒体表面に対し硬化型透明樹脂を付着させる樹脂付着ステップと、
付着させた前記硬化型透明樹脂を硬化させる樹脂硬化ステップと、
を有し、
前記樹脂付着ステップと前記樹脂硬化ステップとを所定回数繰り返すことで前記被記録媒体表面に前記硬化型透明樹脂の粒子を造粒形成したことを特徴とするラメ装飾物製造方法。
【請求項8】
前記樹脂付着ステップと前記樹脂硬化ステップとを繰り返す所定回数は、前記被記録媒体表面に造粒形成された前記硬化型透明樹脂の粒子の平均粒径が100〜300μmとなる回数であることを特徴とする請求項7に記載のラメ装飾物製造方法。
【請求項9】
前記樹脂硬化ステップは、前記樹脂付着ステップにおいて前記被記録媒体に付着させた硬化型透明樹脂に対し、UVを照射することで硬化させることを特徴とする請求項7又は8に記載のラメ装飾物製造方法。
【請求項10】
前記樹脂硬化ステップは、前記樹脂付着ステップにおいて前記被記録媒体に付着させた硬化型透明樹脂に対し、熱を加えることで硬化させることを特徴とする請求項7又は8に記載のラメ装飾物製造方法。
【請求項11】
前記樹脂付着ステップは、二液性の前記硬化型透明樹脂のうち、一液目の物質を付着させる一液目物質付着ステップであり、
前記樹脂硬化ステップは、二液性の前記硬化型透明樹脂のうち、二液目の物質を、すでに前記被記録媒体に付着している一液目の物質上に付着させて硬化させる二液目物質付着ステップであることを特徴とする請求項7又は8に記載のラメ装飾物製造方法。
【請求項12】
浸透性のある有色インクを前記被記録媒体に印刷する有色インク印刷ステップを実施した後に、前記樹脂付着ステップと前記樹脂硬化ステップを所定回数繰り返すことを特徴とする請求項7乃至11に記載のラメ装飾物製造方法。
【請求項13】
前記樹脂付着ステップは、インクジェット記録方式により、前記硬化型透明樹脂を前記被記録媒体に付着させることを特徴とする、請求項7乃至12に記載のラメ装飾物製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−84249(P2010−84249A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252639(P2008−252639)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】