説明

ラモトリジンおよびその中間体2,3−ジクロロベンゾイルクロリドの調製法

【課題】本発明は一般にラモトリジンとしても知られている3,5−ジアミノ−6−(2,3−ジクロロフェニル)−1,2,4−トリアジンを調製するための改善された方法に関する。本発明は、2,3−ジクロロベンゾトリクロリドの光塩素化とその後のその加水分解による合成を含む、中間体2,3−ジクロロベンゾイルクロリドの調製法にも関する。前記2,3−ジクロロベンゾイルクロリド中間体はラモトリジンの調製に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般にラモトリジンとしても知られている3,5−ジアミノ−6−(2,3−ジクロロフェニル)−1,2,4−トリアジンおよびその中間体2,3−ジクロロベンゾイルクロリドを調製するための改善された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許第21121号(特許文献1)には、精神疾患および神経疾患などの中枢神経系疾患において活性な3,5−ジアミノ−6−(置換フェニル)−1,2,4−トリアジンが記載されており、これは例えばてんかんの治療における抗けいれん薬としても開示されているている。本明細書では、3,5−ジアミノ−6−(2,3−ジクロロフェニル)−1,2,4−トリアジンが開示されている。
【0003】
ラモトリジンは、例えば欧州特許第21121号(特許文献1)、米国特許第4,602,017号(特許文献2)または米国特許第6,111,101号(特許文献3)に記載された手法により調製可能である。これらの手法では、2,3−ジクロロベンゾイルシアニドとアミノグアニジン塩との縮合反応は、硝酸または硫酸などの大過剰の水性鉱酸とジメチルスルホキシド(DMSO)またはアセトニトリルなどの水混和性有機溶媒との混合物中で行う。縮合反応により、本明細書ではシッフ塩基と称する2−(2,3−ジクロロフェニル)−2−(グアニジニルアミノ)アセトニトリルが生成される。シッフ塩基をさらに環化すると粗ラモトリジンが生じ、これを再結晶化によりさらに精製すると、医薬的に許容される品質のラモトリジンが生じる可能性がある。ラモトリジンのこれら調製において、2,3−ジクロロベンゾイルクロリドを出発物質として2,3−ジクロロベンゾイルシアニドを調製するが、その際、該2,3−ジクロロベンゾイルクロリドは例えばキシレンなどの有機溶媒の存在下でシアン化第一銅、場合によりヨウ化カリウムと反応する。2,3−ジクロロベンゾイルクロリドは不活性雰囲気中で2,3−ジクロロ安息香酸を塩化チオニルと反応させることで調製可能である。
【0004】
ラモトリジンはCNS疾患を治療する更に有望な抗てんかん薬および抗けいれん薬の1つであることが明らかになっていることから、その量産は非常に意義のあるものと考えられている。ラモトリジン合成のための公知の経路はいくつかあるものの、得られたラモトリジンの純度が不十分である場合があり、それにより、適当な薬学的処方で必要時に、患者にそれを投与すると、望ましくない副作用が生じる可能性がある。
【0005】
また、ラモトリジンの調製について記述された方法には環境面およびコスト面において不利益が存在する。より具体的には、2,3−ジクロロベンゾイルクロリドの調製は非常に煩雑で困難であり、非常にコストがかかり、大量かつ有害量の廃棄物が生じることも多いプロセス反応が伴う。さらに、得られた2,3−ジクロロベンゾイルクロリドの純度は適度である場合も不十分である場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第21121号明細書
【特許文献2】米国特許第4,602,017号明細書
【特許文献3】米国特許第6,111,101号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の観点では、より安全で、環境により優しく、効率的で、経済的であり、高純度のラモトリジンを産生するラモトリジン合成経路が依然として必要であることは明白である。
【0008】
したがって、本発明の目的は、副産物および毒性試薬を最大限にリサイクルすることで環境への影響を最小限にし、結果的に高純度のラモトリジンを調製する、ラモトリジン生成のための改善された方法を提供することである。
【0009】
別の目的は、2,3−ジクロロベンゾイルクロリド中間体調製のための改善された方法を開発し、それによりラモトリジンの生成プロセスの全体的な効率を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
概要
第1の態様では、本発明はラモトリジン[3,5−ジアミノ−6−(2,3−ジクロロフェニル)−1,2,4−トリアジン]の調製法に関する。
【0011】
本方法は以下の工程を含む:
a)2,3−ジクロロトルエンを提供する工程、
b)該2,3−ジクロロトルエンを光塩素化して2,3−ジクロロベンゾトリクロリドを生成し、該2,3−ジクロロベンゾトリクロリドを加水分解して2,3−ジクロロベンゾイルクロリドを生成することによる、2,3−ジクロロベンゾイルクロリドを調製する工程、
c)該2,3−ジクロロベンゾイルクロリドと金属シアン化物、好ましくはシアン化第一銅とを反応させ、2,3−ジクロロベンゾイルシアニドを生成する工程、
d)水性鉱酸中で該2,3−ジクロロベンゾイルシアニドとアミノグアニジン塩とを反応させ、シッフ塩基[2−(2,3−ジクロロフェニル)−2−(グアニジニルアミノ)アセトニトリル]を生成する工程、
e)水の存在下または非存在下で好適な溶媒中で該シッフ塩基を反応させ、ラモトリジンを生成する工程、および
f)該ラモトリジンをさらに結晶化し、乾燥する工程。
【0012】
別の態様では、本発明は2,3−ジクロロベンゾイルクロリドの調製法を目的とし、該方法は2,3−ジクロロトルエンを光塩素化して2,3−ジクロロベンゾトリクロリドを生成し、該2,3−ジクロロベンゾトリクロリドを加水分解して2,3−ジクロロベンゾイルクロリドを生成する工程を含む。
【0013】
医薬品および医薬組成物の調製では、該医薬品または組成物中に含まれている活性化合物は最高純度のもので、すなわち可能な限り不純物は含まないことが最も重要である;なぜなら活性化合物中の該不純物の存在は、組成物または医薬品を投与する患者に重篤な副作用をもたらす可能性があるからである。この観点では、活性化合物の調製プロセスは適切に制御され、最大限に可能な限り汚染されない方法で実施することも重要である。中間物質中の不純物がさらに調製プロセス全体にいきわたり、最終活性生成物中に最終的に残留するので、特に活性化合物の調製プロセス中の第1の反応工程は、よく制御され、可能な限り不純物量の少ない中間体を産生することも、それゆえに非常に重要である。
【0014】
本発明はラモトリジンの調製プロセスにおいて該問題に対する解決策を提供する。本発明は、2,3−ジクロロベンゾイルクロリドを出発物質として高純度3,5−ジアミノ−6−(2,3−ジクロロフェニル)−1,2,4−トリアジンを合成するための新規なプロセスを提供する。従来技術のプロセスと対照的に、本プロセスは2,3−ジクロロベンゾイルクロリドの調製のための出発物質として2,3−ジクロロトルエンの使用を含む。さらに、本発明にしたがった方法により生成される2,3−ジクロロベンゾイルクロリドは純度が非常に高いことが特徴であり、よって不純物量は少ない。このことは、異性体、例えば3,4−ジクロロベンゾイルクロリド異性体を0.1%未満、例えば0.08%;0.07%;0.06%未満、あるいはさらに0.05%未満含む本方法にしたがって2,3ジクロロベンゾイルクロリドが得られるという事実に反映されている。したがって、より純度の高い該2,3−ジクロロベンゾイルクロリドはラモトリジン調製に理想的な中間体である。
【0015】
さらに、本発明にしたがったラモトリジン調製法は、公知のプロセスと対照的に、いくつかの利点を有する。本方法の主要な利点は非常に純度の高い最終生成物を高収率で生成することである。本発明にしたがって、ラモトリジンは高純度で、すなわち低不純物量で得られる。このことは、ラモトリジンに含有された異性体の量が0.1%未満、例えば0.08%;0.07%;0.06%未満、さらに0.05%未満である、ラモトリジンが、本発明にしたがって得られるという事実に反映されている。
【0016】
この方法のさらなる利点には、反応物をより容易にリサイクルし、侵攻性の、および有害な試薬を排除する可能性、ならびに公知の手技と比較して短い反応時間が挙げられる。好ましい実施態様では、本プロセスにより、プロセスの工程c)で得られた第一銅塩が、プロセス中で使用可能なシアン化第一銅にリサイクルできるようになる。得られた第一銅塩は金属シアン化物、好ましくはシアン化ナトリウムでシアン化第一銅へとリサイクルできる。別の好ましい実施態様では、プロセス工程d)の副産物として形成される2,3−ジクロロ安息香酸は2,3−ジクロロベンゾイルクロリドへとリサイクルできる。後者はプロセス中で再使用できる。好ましくは、2,3−ジクロロ安息香酸は2,3−ジクロロベンゾトリクロリドを使用して2,3−ジクロロベンゾイルクロリドへとリサイクルする。
【0017】
また別の利点は、先行技術で開示された反応と対照的に、2,3−ジクロロベンゾイルシアニドが例えばKIまたはNaIなどの金属ヨウ化物が存在しない本プロセスにしたがって調製可能であることである。金属ヨウ化物なしで反応を行えば、分離が困難である無機塩の複合混合物が形成されることが回避可能となる。
【0018】
また、このプロセスの顕著な利点は高額な構造材料の複雑な工業設備を必要としないことである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は式(I)に表されたラモトリジン[3,5−ジアミノ−6−(2,3−ジクロロフェニル)−1,2,4−トリアジン]の調製法を目的とする。
【化1】

【0020】
2,3−ジクロロベンゾイルクロリド
本方法の第1工程では、2,3−ジクロロトルエンが提供され、さらに反応させ、式(IV)の2,3−ジクロロベンゾイルクロリドを生成する。
【化2】

【0021】
本発明にしたがって、該2,3−ジクロロトルエンを光塩素化し、2,3−ジクロロベンゾトリクロリドを生成し、その後2,3−ジクロロベンゾトリクロリドを加水分解して2,3−ジクロロベンゾイルクロリドを生成することにより、2,3−ジクロロベンゾイルクロリドを調製する。
【0022】
光塩素化反応はUV反応器中で行うことが好ましい。好ましい実施態様では、光塩素化反応は2〜40kWの電力の高圧水銀UVランプを使用し、60〜140℃、好ましくは80〜120℃、より好ましくは90〜110℃の温度範囲で行う。UVランプはCd、Tl、Ga、In、Fe、Pbまたはこれらの組み合わせでドープしてよい。好ましい実施態様では、UVランプはCdおよび/またはPbでドープする。UVランプをドープすると光塩素化反応の選択性および有効性が増加する。UVランプを使用すれば、(さらなる)触媒またはラジカル開始剤の使用を必要としない、もっと制御された方式でエネルギーが化合物へ移転するという利点がさらにもたらされる。2,3−ジクロロベンゾイルクロリドを作製する本方法では、例えばAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)などのラジカル開始剤を使用する必要性がなくなる。したがって好都合にも、該触媒の残余生成物はまた、分割する必要のある調製済み2,3−ジクロロベンゾイルクロリド中には残留しない。本プロセスにしたがって、他のタイプのUVランプ、例えばLEDランプを使用してもよい。
【0023】
別の好ましい実施態様では、光塩素化反応中に適用する塩素の流量は出発物質の変化と関連し、初期流量において100%から20%まで幅があり、この方式は副産物および不純物の形成を最小限にしている。
【0024】
好ましくは、光塩素化反応により、80%以上;および好ましくは85%以上、87%以上、90%以上、92%以上、およびさらに95%以上の収率で2,3−ジクロロベンゾトリクロリドが生成する。さらに好ましい実施態様では、加水分解反応は100〜180℃、好ましくは120〜160℃の範囲の温度で、金属酸化物または金属塩化物、例えば塩化亜鉛などの好適な触媒存在下で行う。好ましくは、加水分解反応により、50%以上;好ましくは75%以上、90%以上、およびさらに95%以上の収率で2,3−ジクロロベンゾイルクロリドが生成する。
【0025】
また、上記に示した方法にしたがって、2,3−ジクロロベンゾイルクロリドは非常に高純度で得られ、異性体、例えば3,4−ジクロロベンゾイルクロリドは好ましくは0.1%未満、より好ましくは0.08%;0.07%;0.06%未満、さらに0.05%未満である。したがって本発明はまた、上記に開示した方法を実施することで得られる2,3−ジクロロベンゾイルクロリドに関する。
【0026】
2,3−ジクロロベンゾイルシアニド
ラモトリジンの調製における以下の工程には、上記に開示した方法にしたがって得られた2,3−ジクロロベンゾイルクロリドと金属シアン化物とを反応させて式(III)の2,3−ジクロロベンゾイルシアニドを生成する工程が含まれる。
【化3】

【0027】
本反応は、新たに調製したか、あるいは下記のように回収したCuCNを使用して行ってよい。
【0028】
好ましい実施態様では、本反応は140〜180℃の範囲の温度で、好ましくは4〜10時間行う。
【0029】
先行技術で開示された反応と対照的に、本反応はリサイクルしたCuCNを使用し、たとえ溶媒の非存在下でも、また例えばKIまたはNaIなどのアルカリ金属ヨウ化物の非存在下で、好ましくはKIまたはNaIの非存在下でも行うことが可能である。本出願人は、リサイクルしたCuCNとの本反応を行うことは生産コストを低減するだけでなく、例えばCuClなどの毒性無機廃棄塩の形成を有利に防止することを示している。対照的に、アルカリ金属ヨウ化物の存在下では、分離が困難な無機塩の複合混合物が得られる。そのさらに重要な利点は、この反応工程に用いられた金属シアン化物、好ましくはCuCNを容易にリサイクルできるということである。より具体的には、好ましい実施態様では、この反応工程における副産物として形成される無機塩、例えば第一銅塩はNaCNで処理し、CuCNを生成する。したがってこのリサイクル工程は調製法の原価に関してだけでなく、毒性廃棄物の排除/削減および環境問題にも関する大幅な改善であると言える。
【0030】
さらに好ましい実施態様では、塩をろ過した後、本反応工程にはさらに、n−ヘキサン、n−ペンタン、n−ヘプタンまたは石油エーテルなどの溶媒から得た2,3−ジクロロベンゾイルシアニドの結晶化が含まれる。
【0031】
2−(2,3−ジクロロフェニル)−2−(グアニジルアミノ)アセトニトリル
さらにラモトリジンの調製における以下の工程は水性鉱酸中で2,3−ジクロロベンゾイルシアニドとアミノグアニジン塩とを反応させ、式(II)のシッフ塩基[2−(2,3−ジクロロフェニル)−2−(グアニジルアミノ)アセトニトリル]を生成する工程を含む。
【化4】

【0032】
本発明のプロセスにしたがって、シッフ塩基を生成する2,3−ジクロロベンゾイルシアニドとのアミノグアニジン塩の縮合反応は水性鉱酸中で、好ましくはいかなる有機溶媒も存在しない状態で行う。
【0033】
アミノグアニジン塩は好ましくは、アミノグアニジンの重炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩および塩酸塩を含む群から選択され、最も好ましくは重炭酸アミノグアニジンである。
【0034】
水性鉱酸は好ましくは、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸およびリン酸またはこれらの混合物を含む群から選択され、好ましくは硫酸である。鉱酸の濃度は好ましくは35%v/v〜80%v/vの範囲、より好ましくは60%v/v〜80%v/vの範囲である。
【0035】
本プロセスの好ましい実施態様では、2,3−ジクロロベンゾイルシアニドは1〜4モル当量、好ましくは1.5〜3モル当量のアミノグアニジン塩、好ましくは重炭酸アミノグアニジンと反応させる。
【0036】
別の好ましい実施態様では、2,3−ジクロロベンゾイルシアニドは20〜70℃の範囲の温度で、好ましくは結晶形態にて、水性鉱酸、好ましくは硫酸中でアミノグアニジン塩、好ましくは重炭酸アミノグアニジンの溶液に添加する。
【0037】
縮合反応は40〜80℃の範囲、好ましくは50〜70℃の温度範囲で行ってよい。反応は4〜24時間、好ましくは6〜10時間行ってよい。反応混合物は十分に撹拌することが好ましい。
【0038】
縮合反応によりシッフ塩基塩が沈殿し、沈殿したシッフ塩基塩はその後ろ過することが好ましい。本発明にしたがって、本方法では、必要量の水、好ましくはシッフ塩基塩のろ過を容易にする20〜40%の反応混合物に等しい容量の水、のろ過に先だって、反応混合物への添加が行われる。ろ液は酸の強度を次のバッチの望ましい濃度に調整するために使用可能である。この方式では、ろ液の一部はシッフ塩基の品質および収率に影響を及ぼさずにリサイクルできる。当然のことながら、水性の酸性ろ液をリサイクルする主要な目的はプロセスの環境への影響を最小限にすることである。
【0039】
シッフ塩基塩を含む沈殿物を、好ましくは水で洗浄し、その後アルカリ水溶液中に再懸濁し、最終pH約9〜10にする。ナトリウムもしくはカリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩または水酸化物の水溶液が使用可能であり、あるいは水酸化アンモニウムが使用されるが水酸化ナトリウムが好ましい。遊離した塩基はろ過し、例えば50〜70℃で乾燥し、乾燥遊離シッフ塩基が得られる。
【0040】
好ましくは、この反応工程で得られたシッフ塩基は70%以上、好ましくは80%以上の収率で単離する。
【0041】
アルカリ性ろ液は反応中の副産物として形成される2,3−ジクロロ安息香酸のナトリウム塩またはカリウム塩をさらに含む。このろ液を酸性化すると、ろ過により単離して下記のようなプロセスにリサイクルできる2,3−ジクロロ安息香酸が沈殿する。出願人は、―全プロセス中の回避不能な副産物である―2,3−ジクロロ安息香酸を出発物質として2,3−ジクロロベンゾイルクロリドがリサイクル可能であることを示している。したがって好ましい実施態様では、本発明は、乾燥2,3−ジクロロ安息香酸と2,3−ジクロロベンゾトリクロリドとを反応させることで2,3−ジクロロベンゾイルクロリドを本反応工程からリサイクルする方法に関する。この酸は、水の投入に先だって加水分解反応器中で2,3−ジクロロベンゾトリクロリドに添加することが可能である。この2,3−ジクロロ安息香酸のリサイクルは、得られた2,3−ジクロロベンゾイルクロリドの品質に影響を及ぼさないことが分かっている。したがってこのリサイクル工程は調製法の原価に関してだけでなく、有機廃棄物の排除/削減および環境問題にも関する大幅な改善である。
【0042】
ラモトリジン
ラモトリジン調製の次の工程では、水の存在下または非存在下で好適な溶媒中で上述のように得られたシッフ塩基を反応させ、ラモトリジンを生成する工程が含まれる。得られたラモトリジンはさらに結晶化し、乾燥してよい。好ましくは、シッフ塩基は水の存在下または非存在下で、有機溶媒中で環化し、医薬的に許容される品質のラモトリジンを得る。
【0043】
本発明にしたがった環化工程に使用された有機溶媒は水混和性または水溶性溶媒、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロパノール、n−ブタノール、第三ブタノールおよびジエチレングリコールから成る群から選択されるアルコール、またはアセトニトリルなどの溶媒、またはこれらの任意の混合物である。好ましくは、有機溶媒はアルコール、最も好ましくはn−プロパノールである。
【0044】
環化工程は、70〜110℃、好ましくは80〜90℃の温度範囲で行うことが好ましい。反応は好ましくは20分〜300分、より好ましくは30分〜180分の時間で行ってよい。反応混合物は十分に撹拌することが好ましい。反応の最後に透明な溶液が得られる。本発明にしたがって、その後活性化炭素を透明な溶液に添加し、溶液を撹拌し、加温された溶液をろ過する。ろ液を例えば40〜60℃までさらに冷却し、結晶性ラモトリジンを得る。
【0045】
好ましい実施態様では、上述のように得られた結晶性ラモトリジンは再結晶化し、その後さらに乾燥してよい。
【0046】
好ましくは、この反応工程で得られたラモトリジンは80%以上、好ましくは85%以上の収率で単離する。
【0047】
本方法にしたがって、ラモトリジンは非常に高純度で得られ、異性体の0.1%未満、より好ましくは0.08%;0.07%;0.06%未満、さらに0.05%未満含有することが好ましい。したがって本発明はまた、上記に開示した方法を実行することで得られるラモトリジンに関する。
【0048】
治療応用
さらに別の実施態様では、本発明は本方法により得られたラモトリジンおよびその治療上の使用に関する。
【0049】
本発明にしたがって得られたラモトリジンは任意の好適な形態で提供し得る。ある実施態様では、本発明は例えば、ジメチルアミン、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフランであってよい溶媒和化合物を含有するラモトリジンの溶媒和形態を提供し得る。
【0050】
1つの実施態様では、本発明は医薬的に許容される賦形剤および本発明にしたがったプロセスにより得られた治療量のラモトリジンを含む医薬組成物に関する。
【0051】
本明細書で使用する用語「治療有効量」は、研究者、獣医、医師または他の臨床医が究明している組織、系、動物またはヒト中で生物学的または医薬的応答を誘引する活性化合物または成分または医薬品の量を意味し、それは治療される疾患の症状の緩和にも有効な量である。
【0052】
該医薬組成物は当業者に自体公知の方式で調製可能である。この目的のため、ラモトリジンおよび1種以上の固体または液体医薬賦形剤は、その後にヒト投薬用の製薬として使用できる好適な投与法または用量にする。
【0053】
医薬組成物の特定の形態は例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、クリーム、錠剤、カプセル、鼻腔用スプレー、リポソームまたはマイクロリザーバー、特に経口摂取可能形態または無菌注射可能形態の組成物、例えば無菌注射水溶液または油性懸濁液または座薬であってよい。1つの実施態様では、検討された医薬組成物は乾燥固体形態であり、カプセル、顆粒、錠剤、丸薬、ボーラスおよび粉末が挙げられる。固体担体は1種以上の賦形剤、例えばラクトース、充填剤、崩壊剤、結合剤、例えばセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはデンプンまたは固着防止剤、例えばステアリン酸マグネシウムを含み、錠剤が打錠装置に付着することを防止してもよい。錠剤、丸薬およびボーラスは即時に崩壊するように、あるいは有効成分が徐放するように形成してもよい。
【0054】
別の実施態様では、本医薬組成物は、本プロセスにしたがって得られたラモトリジンの固体散剤および1種以上の好適な医薬賦形剤のみから成る治療有効量の粒子を含む医薬製剤として製剤化してよい。
【0055】
好ましい実施態様では、本発明は、本方法で得られたラモトリジン、ならびにラクトース、微結晶セルロース、ポビドン、ポビドンK30、デンプングリコール酸ナトリウム、黄色酸化鉄(E172)、ステアリン酸マグネシウム、炭酸カルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、サッカリンナトリウムおよび/またはクロフサスグリ香料を含む群から選択される好適な賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0056】
ラモトリジンの適当な用量は日常的な実験で当業者が容易に決定することができる。投与の量および回数は当然ながら、治療の適応症の性質および重症度、所望の応答、治療対象の個体の状態等の要因に依存するであろう。
【0057】
さらなる態様では、本発明は医薬品として本方法により得られたラモトリジンの使用に関する。
【0058】
別のさらなる態様では、本発明はてんかん治療用医薬品を調製するための本方法により得られたラモトリジンの使用に関する。
【0059】
別の態様では、本発明は双極性疾患治療用医薬品を調製するための本方法により得られたラモトリジンの使用に関する。「躁鬱病」または「躁鬱」としても知られている双極性障害は、軽躁および/または過敏から悲観および絶望感まで劇的に気分が揺れ、その後再度逆行し、時にはそれらの中間の正常な気分の時期もあることを特徴とする複合的気分障害である。精力および挙動における大幅な変化はこれらの気分変化に伴っている。本明細書で使用された用語「双極性障害」は双極性I型障害または双極性II型障害などの異なるタイプの双極性障害を包含する。双極性I型障害は1つ以上の躁病エピソードまたは混合エピソード(躁病および鬱病が少なくとも1週間の間ほぼ毎日発症する兆候)および1つ以上の際立った鬱病エピソードに特徴づけられる。双極性I型障害は極度の躁病エピソードが顕著である疾患の最も重篤な形態である。双極性II型障害は少なくとも1つの軽躁病エピソードが伴う1つ以上の鬱病エピソードに特徴づけられる。軽躁病エピソードは躁病エピソードと似通っているが重篤ではない症状を示すものであり、しかしながら人の非抑鬱感とは明らかに異なっている状態を指す。軽躁病エピソードが社会活動または労働において顕著な問題を引き起こすほどには重篤でない人も存在する。しかしそれらが困難になり得る人も存在する。
【0060】
別の実施態様では、本発明は、本方法で得られた治療有効量のラモトリジンまたは本発明の医薬組成物を、必要時に被検体に投与することを含むてんかん治療法に関する。さらに別の実施態様では、本発明は、本方法で得られた治療有効量のラモトリジンまたは本発明の医薬組成物を、必要時に被検体に投与することを含む双極性障害の治療法に関する。本発明の方法にしたがって、該医薬組成物は治療過程中に異なる時間に分割して、または分割形態もしくは単一の組み合わせ形態で同時に投与することが可能である。したがって本発明は同時投与または交互投与の該療法すべてを包含していると理解されているものとし、用語「投与する」はそれに応じて解釈されているものとする。しかし、当然のことながら、任意の特定の被検体のための具体的な服用レベルおよび服用回数には幅があり、使用した特定の類似体の活性、その化合物の代謝安定性および活性時間、年齢、体重、総体的健康状態、性別、食事、投与の方式および時間、排泄率、薬剤の組み合わせ、特定の状態における重症度、ならびに治療を受けている宿主などの多様な要因に依存する。
【実施例1】
【0061】
2,3−ジクロロベンゾトリクロリドの合成
UV光塩素化反応器に245gの2,3−ジクロロトルエン(1.52モル)および1225gのCClを入れた。反応器を75℃に加熱し、塩素を流量190g/hで導入した。反応の最後に、塩素の漏出を最小限にするため流量を減少させる。粗混合物を分析したところ、2,3−ジクロロベンザルクロリドの容量は<0.2%であった。溶媒CClを600〜800mbarで反応混合物から蒸留した。その後粗生成物を13mbar、128℃で蒸留に付し、GCアッセイによると98.2%になる334.2gの2,3−ジクロロベンゾトリクロリドを得た。収率は81.6%であった。
【実施例2】
【0062】
2,3−ジクロロベンゾイルクロリドの合成
反応器に168.9gの2,3−ジクロロベンゾトリクロリドを入れた(アッセイによると98.9%、0.63モル)。生成物を100℃に加熱し、触媒量のZnCl(0.2g)を添加した。さらに混合物を160℃に加熱した。温度を160℃に保ちながら反応器に12.0gの水を滴下により添加した。添加時間は7時間であった。その後粗生成物を蒸留に付し、GCアッセイによると99.7%になる120.5gの2,3−ジクロロベンゾイルクロリドを得た。収率は91.0%であった。
【実施例3】
【0063】
2,3−ジクロロベンゾトリクロリドの合成
UV光塩素化反応器に220.5gの2,3−ジクロロトルエン(1.37モル)および1584gのCClを入れた。反応器を75℃に加熱し、塩素を流量190g/hで導入した。反応の最後に、塩素の漏出を最小限にするため流量を減少させた。粗混合物を分析したところ、2,3−ジクロロベンザルクロリドの容量は<0.2%であった。溶媒を反応混合物(1808g)から蒸留し、1351gのCClを得た。粗2,3−ジクロロベンゾトリクロリド(366.5g)はGCアッセイによると96.0%であった。収率は97.1%であった。
【実施例4】
【0064】
2,3−ジクロロベンゾイルクロリドの合成
反応器に366.5gの2,3−ジクロロベンゾトリクロリド(アッセイによると96.0%、1.33モル)および1gのZnClを入れた。混合物を160〜165℃に加熱した。温度を160〜165℃に保ちながら反応器に24.0gの水を滴下により添加した。添加時間は1時間であった。その後粗生成物を蒸留に付し、GCアッセイによると98.9%になる247.9gの2,3−ジクロロベンゾイルクロリドを得た。残渣は23.0gであった。収率は88.0%であった。
【実施例5】
【0065】
2,3−ジクロロベンゾトリクロリドの合成
UV光塩素化反応器に1042gの2,3−ジクロロトルエン(6.47モル)を入れた。反応器を100℃に加熱し、塩素を流量370g/hで導入した。反応の最後に、塩素の漏出を最小限にするため流量を40g/hに減少させた。粗混合物を分析したところ、2,3−ジクロロベンザルクロリドの容量は0.3%であった。2,3−ジクロロベンゾトリクロリド(1675.5g)を得、GCアッセイによると97.2%であった。収率は95.2%であった。
【実施例6】
【0066】
2,3−ジクロロベンゾイルシアニドの合成
反応器に350.0gの2,3−ジクロロベンゾイルクロリド(1.67モル)および200.0gのシアン化第一銅を入れた。混合物を160〜165℃に加熱し、この温度で7時間撹拌した。混合物を85℃に冷却し、1200mlのトルエンを混合物に添加した。混合物を60℃で1時間撹拌し、15℃に冷却し、無機塩をろ過した。溶媒トルエンを減圧下、55℃でろ液から蒸留した。粗生成物を石油エーテルから結晶化し、アッセイによると97.4%になる323.3gの2,3−ジクロロベンゾイルシアニドを得た。収率は94.2%であった。
【実施例7】
【0067】
シアン化第一銅の回復
反応器に、300gの水および2,3−ジクロロベンゾイルシアニドの調製中にろ過した167.2gの粗CuClを入れた。混合物を100℃に加熱し、反応器に、水300g中63.5gのシアン化ナトリウム溶液(1.30モル)を滴下により添加した。混合物を100℃で1時間撹拌し、20℃に冷却し、20℃で1時間撹拌し、ろ過し、200mlのメタノールで洗浄した。ろ過したシアン化第一銅を減圧下80℃で乾燥させた。回収したシアン化第一銅の収率は94.2%である。
【実施例8】
【0068】
2−(2,3−ジクロロフェニル)−2−(グアニジニルアミノ)アセトニトリルの合成
3Lの反応器に982gの水を入れた。温度を90℃未満に保ちながら反応器に1808gのHSOを添加した。溶液を25℃まで冷却した。反応器にごく一部の重炭酸アミノグアニジンを272.1g(2.0モル)添加し、CO発生を制御した。混合物を30分間撹拌した。その後200.0gの2,3−ジクロロベンゾイルシアニド(1.0モル)をアミノグアニジン溶液に添加した。混合物を徐々に60℃まで加熱し、60℃で6時間撹拌した。混合物を20℃まで冷却し、温度を24℃未満に保ちながら982gの水を徐々に添加した。添加時間は30分間であった。沈殿物をろ過し、1回につき500gの水で3回洗浄した。
【0069】
3Lの反応器に840gの水および45gのNaOHを入れた。内容物を25℃で撹拌した。フラスコに湿った粗ろ過ケークを数回に分けて(portionwise)添加した。懸濁液を60℃に加熱し、60℃で1時間撹拌し、加温しながらろ過した。沈殿物を1回につき400gの水で3回洗浄した。湿ったケーク(496.0g)を70℃、P<50mbarで乾燥し、HPLCアッセイによると99.2%になる198.2gの2−(2,3−ジクロロフェニル)−2−(グアニジニルアミノ)アセトニトリルを得た。収率は76.8%であった。
【実施例9】
【0070】
2−(2,3−ジクロロフェニル)−2−(グアニジニルアミノ)アセトニトリルの合成
3Lの反応器に982gの水を入れた。温度を90℃未満に保ちながら反応器に1808gのHSOを添加した。溶液を25℃まで冷却した。反応器にごく一部の重炭酸アミノグアニジンを408.4g(3.0モル)添加し、CO発生を制御した。混合物を30分間撹拌した。その後200.0gの2,3−ジクロロベンゾイルシアニド(1.0モル)をアミノグアニジン溶液に添加した。混合物を徐々に60℃まで加熱し、60℃で6時間撹拌した。混合物を20℃まで冷却し、温度を24℃未満に保ちながら982gの水を徐々に添加した。添加時間は30分間であった。沈殿物をろ過し、1回につき500gの水で3回洗浄した。
【0071】
3Lの反応器に840gの水および40gのNaOHを入れた。内容物を25℃で撹拌した。フラスコに湿った粗ろ過ケークを数回に分けて添加した。懸濁液を60℃に加熱し、60℃で1時間撹拌し、加温しながらろ過した。沈殿物を1回につき400gの水で3回洗浄した。湿ったケークを70℃、P<50mbarで乾燥し、HPLCアッセイによると98.9%になる221.8gの2−(2,3−ジクロロフェニル)−2−(グアニジニルアミノ)アセトニトリルを得た。収率は85.6%であった。
【実施例10】
【0072】
回収した2,3−ジクロロ安息香酸での2,3−ジクロロベンゾイルクロリドの合成
実施例8のアルカリ性ろ液を混合し、懸濁液がpH1〜2になるまで濃HClで処理した。沈殿物をろ過し、水で洗浄し、減圧下60℃で乾燥し、22.9gの2,3−ジクロロ安息香酸を得た。反応器に352.3gの2,3−ジクロロベンゾトリクロリド(アッセイによると96.4%、1.28モル)および1gのZnClを入れた。混合物を160〜165℃に加熱した。反応器に22.9gの2,3−ジクロロ安息香酸を数回に分けて添加し、その後温度を160〜165℃に保ちながら21.0gの水を滴下により添加した。その後粗生成物を蒸留に付し、GCアッセイによると99.1%になる261.9gの2,3−ジクロロベンゾイルクロリドを得た。収率は88.5%であった。
【実施例11】
【0073】
ラモトリジンの合成
10Lの反応器に3521gのn−プロパノール、1200gの水および400.0gの2−(2,3−ジクロロフェニル)−2−(グアニジニルアミノ)アセトニトリル(1.56モル)を入れた。懸濁液を撹拌し、徐々に87℃まで加熱した。反応が完了するまで撹拌を87℃で2時間10分継続した。反応器に30gの木炭を添加し、撹拌を87℃でさらに40分間継続した。木炭をガラスフィルターに通して加温しながらろ過し、100gのn−プロパノールで洗浄した。加温されたろ液を十分に撹拌し、徐々に40℃まで冷却した。40℃になったら外部から冷却し、混合物を6時間かけて40℃から8℃へと徐々に冷却した。混合物を8℃で一晩撹拌した。沈殿物をろ過し、1回につき250gのn−プロパノールで3回洗浄した。湿った沈殿物を50℃、10mbarで1.5時間、その後100℃、7mbarで2時間乾燥し、352.9gのラモトリジン(HPLCアッセイによると99.9%)を得た。収率は88.2%であった。
【実施例12】
【0074】
ラモトリジンの再結晶化
10Lの反応器に1100gのn−プロパノール、377gの水および125.2gのラモトリジン原料(0.49モル)を入れた。懸濁液を撹拌し、徐々に85℃まで加熱した。反応器に14gの木炭を添加し、撹拌を85℃で30分間継続した。木炭をガラスフィターに通して加温しながらろ過し、100gのn−プロパノールで洗浄した。加温されたろ液を十分に撹拌し、徐々に40℃まで冷却した。40℃になったら外部から冷却し、混合物を6時間かけて40℃から11℃へと徐々に冷却した。混合物を11℃で一晩、その後6℃で2時間撹拌した。沈殿物をろ過し、1回につき80gのn−プロパノールで3回洗浄した。湿った沈殿物を40℃、10mbarで1時間、その後110℃、10mbarで2時間乾燥し、111.4gのラモトリジン(HPLCアッセイによると99.9%)を得た。収率は89.0%であった。
【実施例13】
【0075】
ラモトリジンの合成
10Lの反応器に6000gのn−プロパノールおよび400.0gの2−(2,3−ジクロロフェニル)−2−(グアニジニルアミノ)アセトニトリル(1.56モル)を入れた。懸濁液を撹拌し、徐々に90℃まで加熱した。反応が完了するまで撹拌を90℃で2時間45分継続した。反応器に30gの木炭を添加し、撹拌を87℃でさらに30分間継続した。木炭をガラスフィルターに通して加温しながらろ過し、100gのn−プロパノールで洗浄した。加温されたろ液を十分に撹拌し、徐々に40℃まで冷却した。40℃になったら外部から冷却し、混合物を6時間かけて40℃から8℃へと徐々に冷却した。混合物を8℃で一晩撹拌した。沈殿物をろ過し、1回につき185gのn−プロパノールで3回洗浄した。湿った沈殿物を40℃、40mbarで1時間、その後140℃、8mbarで16時間乾燥し、338.9gのラモトリジン(HPLCアッセイによると99.9%)を得た。収率は84.7%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラモトリジン[3,5−ジアミノ−6−(2,3−ジクロロフェニル)−1,2,4−トリアジン]の調製法であり、以下の工程を含む方法:
a)2,3−ジクロロトルエンを提供する工程、
b)前記2,3−ジクロロトルエンを光塩素化して2,3−ジクロロベンゾトリクロリドを生成し、前記2,3−ジクロロベンゾトリクロリドを加水分解して2,3−ジクロロベンゾイルクロリドを生成することによって、2,3−ジクロロベンゾイルクロリドを調製する工程、
c)前記2,3−ジクロロベンゾイルクロリドと金属シアン化物、好ましくはシアン化第一銅(CuCN)とを反応させ、2,3−ジクロロベンゾイルシアニドを生成する工程、
d)水性鉱酸中で前記2,3−ジクロロベンゾイルシアニドとアミノグアニジン塩とを反応させ、シッフ塩基[2−(2,3−ジクロロフェニル)−2−(グアニジニルアミノ)アセトニトリル]を生成する工程、
e)水の存在下または非存在下で好適な溶媒中で前記シッフ塩基を反応させ、ラモトリジンを生成する工程、および
f)前記ラモトリジンをさらに結晶化し、乾燥させる工程。
【請求項2】
工程b)の該光塩素化反応が2〜40kWの電力の高圧水銀UVランプを使用し、60〜140℃の温度範囲で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該光塩素化反応中に適用する塩素の流量が、出発物質の変化と関連しており、初期流量の100%〜20%で変化する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程c)の副産物として形成される無機塩と金属シアン化物、好ましくはNaCNとを反応させることにより、工程c)で適用された該金属シアン化物、好ましくはCuCNが得られる、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
2,3−ジクロロベンゾイルシアニドと1〜4モル当量、好ましくは1.5〜3モル当量のアミノグアニジン塩とを、工程d)で反応させる、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
該アミノグアニジン塩が重炭酸アミノグアニジンであり、水性鉱酸が硫酸である、請求項1〜5のいずれか記載の方法。
【請求項7】
工程d)の副産物として形成される2,3−ジクロロ安息香酸と2,3−ジクロロベンゾトリクロリドとを反応させることにより、2,3−ジクロロベンゾイルクロリドが工程d)から得られる、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかの方法により得られるラモトリジン。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかの方法で得られたラモトリジン、ならびにラクトース、微結晶セルロース、ポビドン、ポビドンK30、デンプングリコール酸ナトリウム、黄色酸化鉄(E172)、ステアリン酸マグネシウム、炭酸カルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、サッカリンナトリウムおよび/またはクロフサスグリ香料を含む群から選択される好適な賦形剤、を含む医薬組成物。
【請求項10】
医薬品としての請求項1〜7のいずれかの方法で得られるラモトリジンの使用。
【請求項11】
てんかんまたは双極性障害治療用医薬品を調製するための請求項1〜7のいずれかの方法で得られるラモトリジンの使用。
【請求項12】
2,3−ジクロロトルエンを光塩素化して2,3−ジクロロベンゾトリクロリドを生成し、および前記2,3−ジクロロベンゾトリクロリドを加水分解して2,3−ジクロロベンゾイルクロリドを生成する工程を含む2,3−ジクロロベンゾイルクロリドの調製法。
【請求項13】
該光塩素化反応を請求項2または3に記載の条件下で行う、請求項12記載の方法。

【公表番号】特表2009−538878(P2009−538878A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512586(P2009−512586)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【国際出願番号】PCT/EP2007/055251
【国際公開番号】WO2007/138075
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(508355183)
【Fターム(参考)】