説明

ラモプラニン生合成用遺伝子クラスター

【課題】ラモプラニンの生合成に関与する遺伝子に関し、組換えDNA技術によってラモプラニンを作成するための組換え方法及び組換え物質を提供する。
【解決手段】微生物中の抗生物質ラモプラニンの生合成に関与するモプラニン遺伝子クラスターを形成するタンパク質をコードするORFを含んでなる特定の隣接DNA配列とそのタンパク質をコードする単離した遺伝子配列。かかる単離した生合成用遺伝子クラスターは、抗生物質構造体の生体工学用基質としての機能を果たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、米国特許法第119条に基づく、2000年10月13日に提出した米国特許出願番号第60/239,924号の仮出願及び2001年4月12日に提出した米国特許出願番号第60/283,296号の仮出願に関する利益、並びに米国特許法第120条に基づく、ここに参照として組み込んだ米国特許出願番号第90/910,813号に関する利益について、そのすべてをあらゆる目的で要求するものである。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、抗生物質分野に関し、より詳しくは、ラモプラニンの生合成に関与する遺伝子に関する。本発明は、組換えDNA技術によってラモプラニンを作製するための組換え方法及び組換え物質を提供するものである。
【背景技術】
【0003】
ラモプラニンは、自然に発生するグリコシル化リポデプシペプチド抗生物質であり、グラム陽性好気性及び嫌気性細菌に対する活性をもつ。細菌細胞壁の構築に必要な酵素の1つを抑制することにより、ラモプラニンはグラム陽性菌を死滅させる。米国特許番号第4,303,646号に記載されているように、当初、ラモプラニンは、Actinoplanes sp. ATCC33076の発酵により産生される抗生物質A/16686として記載されていた。その後、関連性の高い3つの成分が抗生物質A/16686から単離可能であることが判明し、それらの成分は、抗生物質A/16686因子A1、A2及びA3と命名された(Ciabatti et al., 1989, J. Antibiot (Tokyo), Vol. 42, No.2, pp. 254−267)。これらの物質については、その調製及び使用とともに米国特許番号第4,427,656号に記載されている。A’1、A’2、及びA’3と命名された3つの付加的な因子が発酵培地中に存在することがその後判明し、それらの因子はグリコシド基のマンノース単位が1つ欠如しており、元の複合体のそれぞれの親成分とは異なることがわかった(Gastaldo et al., 1992, J. Ind. Microbiol. Vol. 11, No. 1, pp. 13−18)。
【0004】
ラモプラニンは、ジマンノシルグリコシド基をもつ環状デプシペプチドコア構造を共有する3つの関連ポリペプチドの混合物で構成されている。ラモプラニンの3つの形態は、グリコシル化デプシペプチドコア構造を装飾する8−、9−又は10−炭素脂肪酸から誘導された各種アシルアミド部分の存在によって区別される。
【0005】
デプシペプチドは、環状又は分枝状のペプチドであり、そのカルボン酸基と末端ヒドロキシル基又は側鎖ヒドロキシル基との間に、エステル結合を含むものである。ラモプラニンのデプシペプチドコア構造には、17個のアミノ酸が含まれている。N−末端からC−末端まで、下記の順序でアミノ酸が並んでいる。アミノ酸1:アスパラギン(Asn);アミノ酸2:β−ヒドロキシアスパラギン(HAsn);アミノ酸3:4−ヒドロキシフェニルグリシン(HPG);アミノ酸4:オルニチン(Orn);アミノ酸5:トレオニン(Thr);アミノ酸6:HPG;アミノ酸7:HPG;アミノ酸8:Thr;アミノ酸9:フェニルアラニン(Phe);アミノ酸10:Orn;アミノ酸11:HPG;アミノ酸12:Thr;アミノ酸13:HPG;アミノ酸14:グリシン(Gly);アミノ酸15:ロイシン(Leu);アミノ酸16:アラニン(Ala);アミノ酸17:3−クロロ−4−ヒドロキシフェニルグリシン(CHPG)。かかるペプチドは、C−末端にあるCHPGのカルボン酸基とHAsnのヒドロキシル基との間にエステル結合が形成されることにより、環状化される。1位のAsnのN−末端は、3つの異なる脂肪酸によりアシル化され、3つの異なる成分A1−A3となる。ヘミアセタール結合により、2つのD−マンノース糖類を11位のHPGに付着させる。
【0006】
細菌が産生する多数の低分子量ペプチドは、ペプチド合成酵素と呼ばれる大型で多機能のタンパク質上で、リボソームとは無関係に合成される(Konz & Marahiel, 1999, Chem. Biol., Vol. 6, pp. R39−R48)。ペプチド合成酵素には繰り返し単位が含まれており、それぞれの繰返し単位は特定のアミノ酸を認識し、そのアミノ酸が段階的にペプチド鎖に入っていく際の触媒となる。ある特定の単位が認識するアミノ酸の同定は、その特異性がすでに判明している他の単位との比較により行われる。Mycobacterium tuberculosisのゲノムに由来するミコバクチン生合成遺伝子クラスターの同定によって示されているように、多くのペプチド合成酵素には、ペプチド合成酵素中の繰返し単位の順序とそれぞれのアミノ酸がペプチド産物中に出現する順序との間に厳密な相互作用が存在し、既知の構造を有するペプチドとその合成をコードする推定遺伝子との相互作用を可能にしている(Quadri et al., 1998, Chem. Biol. Vol. 5, pp. 631−645)。
【0007】
ペプチド合成酵素の繰返し単位は、ペプチド産物を形成するための認識、活性化、修飾、及びアミノ酸前駆体の結合においてそれぞれが特定の役割を果たしている、さらに小さな単位又は「ドメイン」で構成されている。ドメインの1つのタイプとしてアデニル化(A)ドメインがあり、ペプチド合成酵素のある特定の単位によって組み込まれるアミノ酸を選択的に認識し活性化することに関与している。かかる活性化アミノ酸は、通常はAドメインに隣接した位置を占めるチオール化(T)ドメインという他のタイプのドメインを通じてペプチド合成酵素と結合する。ペプチド合成酵素の連続単位に結合したアミノ酸は、その後、他のタイプのドメインである縮合(C)ドメインが触媒となるアミド結合の形成によって、相互に結合する。
【0008】
ラモプラニンの構造は確認されたが、新しい活性やより増強された特性を有する新規構造を得る必要性は、依然として残っている。ラモプラニンの産生状況を改善する必要もある。よって、ラモプラニンの生合成に関する遺伝子情報が必要とされるのである。
【発明の開示】
【0009】
本発明は、微生物におけるラモプラニン生合成経路のポリペプチドをコードする、単離精製を行ったポリヌクレオチド分子を提供するものである。本発明のある態様においては、ラモプラニン生合成経路の遺伝子座を全長にわたって示し、ラモプラニン遺伝子クラスターを形成するタンパク質をコードする34のORFを含んでいる隣接DNA配列(配列番号1)から、ポリヌクレオチド分子が選択される。かかるタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号2〜34に示されている。32個のORFについて、機能的及び構造的特徴づけを行っている。
【0010】
したがって、1つの態様においては、本発明は、(a)ラモプラニンORF1〜33(配列番号2〜34)のいずれかをコードする核酸、(b)ラモプラニンORF1〜33(配列番号2〜34)のいずれかによりコードされるポリペプチドをコードする核酸、及び(c)ラモプラニンORF4、5、9〜19、22〜26、29、30及び31(配列番号5、6、10〜20、23〜27、30、31及び32)のポリペプチドに対して、アミノ酸配列の相同性が少なくとも75%、好ましくは80%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上であるポリペプチドをコードする核酸からなる群から選択される核酸配列を含む、単離した核酸を提供するものである。
【0011】
本発明のある実施例は、ORF1〜32のうち、1つ以上のORFを特異的に除外している。最も顕著なのはORF1、2、3、6、7、8、20、21、27、28、31、及び32(配列番号2、3、4、7、8、9、21、22、28、29、32及び33)であるが、他のORFも、本発明の範囲を逸脱することなく除外することができる。よって、本発明の別の実施例は、(a)ラモプラニンORF4、5、9〜19、22〜26、29、30及び31(配列番号5、6、10〜20、23〜27、30、31及び32)のいずれかをコードする核酸、(b)ラモプラニンORF4、5、9〜19、22〜26、29、30及び31(配列番号5、6、10〜20、23〜27、30、31及び32)のいずれかによりコードされるポリペプチドをコードする核酸、及び(c)ラモプラニンORF4、5、9〜19、22〜26、29、30及び31(配列番号5、6、10〜20、23〜27、30、31及び32)のポリペプチドに対して、アミノ酸配列の相同性が少なくとも75%、好ましくは80%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上であるポリペプチドをコードする核酸からなる群から選択される核酸配列を含む、単離した核酸を提供するものである。
【0012】
1つの実施形態においては、核酸は、ラモプラニン遺伝子座のORF1〜32(配列番号2〜33)から選択されるORFのうち、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは3つ、さらに好ましくは4つ、最も好ましくはそれ以上のORFをコードしている。1つの実施形態においては、少なくともラモプラニンのデプシペプチドコア構造を形成するようなポリペプチドをコードするORFの組み合わせをORF1〜32(配列番号2〜33)から選択して提供する。別の実施形態においては、少なくともラモプラニンのデプシペプチドコア構造の脂肪酸側鎖を形成するようなポリペプチドをコードするORFの組み合わせをORF1〜32(配列番号2〜33)から選択して提供する。別の実施形態においては、ラモプラニンの4−ヒドロキシフェニルグリシン(HPG)の合成に関与するポリペプチドをコードするORFの組み合わせをORF1〜32(配列番号2〜33)から選択して提供する。別の実施形態においては、少なくともβ−ヒドロキシアスパラギン残基を形成するポリペプチドをコードするORFの組み合わせをORF1〜32(配列番号2〜33)から選択して提供する。別の実施形態においては、ラモプラニンの生合成の制御に関与するORFの組み合わせをORF1〜32(配列番号2〜33)から選択して提供する。別の実施形態においては、ラモプラニン生合成機構の耐性及び細胞成分の局在に関与するポリペプチドをコードするORFの組み合わせをORF1〜32(配列番号2〜33)から選択して提供する。ORF1〜32(配列番号2〜33)から単一のORF又はORFの組み合わせを選択して提供し、ORF1〜32(配列番号2〜33)から選択したORFの発現レベルを変化させることによりラモプラニンの生成を増強する。別の実施形態においては、ORF1〜32(配列番号2〜33)から選択したORFの発現レベルを変化させて、ある特定の形態のラモプラニンの収量を増加させる場合がある。
【0013】
ラモプラニン生合成経路のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を提供する本発明が、かかるペプチドに由来する断片をコードするポリヌクレオチドをも提供することは、当業者であればすぐにわかることである。また、本発明は、ここに記載するように、かかるポリペプチドの自然発生変異体若しくは誘導体及びそれらに由来する断片、例えば、非必須アミノ酸の付加、欠失、若しくは置換、又は必須アミノ酸の同類置換(conservative substitution)に起因する変異体又は誘導体を提供するものであると理解される。Actinoplanesの全遺伝子座のポリヌクレオチド配列を提供する本発明が、他の微生物、特にActinomycetes科の微生物に由来するラモプラニン生合成遺伝子座の遺伝子の自然発生変異体又は相同体をも提供することは、当業者であればすぐにわかることである。
【0014】
全遺伝子座のポリヌクレオチド配列及びコード配列を提供する本発明が、かかる生合成経路のポリペプチドの発現を制御するポリヌクレオチドをも提供することも、理解されている。そうした制御ポリヌクレオチドとしては、プロモーター及びエンハンサー配列、並びに前記配列のいずれかに対するアンチセンス配列が挙げられるが、これらに限定されるものではない。アンチセンス分子は、それが由来する遺伝子の発現を抑制するために使用されるという点で、遺伝子発現を制御するものであるといえる。ここに記載のポリヌクレオチドを含む発現カセット及びベクター、並びにそうしたカセットやベクターで形質転換又はトランスフェクションを行った細胞も、本発明の範囲に含まれる。
【0015】
1つの態様においては、本発明は、ラモプラニンのインビボ又はインビトロでの合成に使用するための、ORF9、11〜15、17、26及び27(配列番号10、12〜16、18、27及び28)から選択されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又はかかるポリペプチドの自然発生変異体若しくは誘導体及びそれらに由来する断片、例えば、ORF9、11〜15、17、26及び27のいずれかにおける、非必須アミノ酸の付加、欠失、若しくは置換、又は必須アミノ酸の同類置換に起因する変異体又は誘導体を提供する。そうしたポリヌクレオチド及びポリペプチドもラモプラニン誘導体の作製に用いてもよい。1つの実施形態においては、ラモプラニンコア構造が変化するように、単一のORF内部でモジュールが生じる順序を変化させる場合がある。別の実施形態においては、ラモプラニンコアの大きさが変化するように、1つ以上のORFの1つ以上のモジュールの削除又は挿入を行う場合がある。ORF9、11〜15、17、26及び27に関連するポリヌクレオチド及びポリペプチドを用いて、かかるペプチドクラスの他の抗生物質の変異体を作製しても、又は作製を改善してもよい。1つの実施形態においては、ORF9、11〜15、17、26及び27のいずれか1つ以上のORFに含まれるモジュールを使用して、別のペプチド抗生物質の合成に関与してペプチド抗生物質誘導体を作製するペプチド合成酵素中の既存のモジュールを置換してもよい。別の実施形態においては、別のペプチド抗生物質の合成に関与するペプチド合成酵素をコードする配列に、ORF9、11〜15、17、26及び27のいずれか1つ以上のORFに含まれるモジュールを挿入し、より長いペプチドを備えたペプチド抗生物質誘導体を作製してもよい。別の実施形態においては、ORF9、11〜15、17、26及び27のいずれか1つ以上のORFに含まれるモジュールを本発明の配列と組み合わせて、又は他のペプチド合成酵素をコードする他の配列と組み合わせて用いて、ペプチド抗生物質を特別に設計してもよい。
【0016】
別の態様においては、本発明は、他のペプチド合成酵素モジュールとともにアデニル化ドメインとして使用し、ペプチド抗生物質前駆体へのThrの取りこみを可能にするための、ORF17(配列番号18)をコードするポリヌクレオチド、又はORF17の自然発生変異体若しくは誘導体及びそれらに由来する断片、例えば、ORF17の非必須アミノ酸の付加、欠失、若しくは置換、又は必須アミノ酸の同類置換に起因する変異体又は誘導体を提供する。
【0017】
別の態様においては、本発明は、ペプチド抗生物質前駆体のコア構造に脂肪酸を組み込むための、ORF11、12又は26(配列番号12、13及び27)をコードするポリヌクレオチド、又はORF11、12又は26の自然発生変異体若しくは誘導体及びそれらに由来する断片、例えば、ORF11、12又は26の非必須アミノ酸の付加、欠失、若しくは置換、又は必須アミノ酸の同類置換に起因する変異体若しくは誘導体を提供する。1つの実施形態においては、脂肪酸構造を修飾するため、及び/又はペプチド抗生物質構造への脂肪酸の取りこみを増強するために、ORF16、24若しくは25、又はその変異体若しくは誘導体をORF11、12又は26とともに用いる。別の実施形態においては、ペプチド抗生物質構造への脂肪酸の組み込みをさらに増強するために、ORF1、3、19又は29、又はその変異体若しくは誘導体をORF11、12又は26とともに用いる。
【0018】
別の態様においては、本発明は、ペプチド抗生物質前駆体のコア構造へDアミノ酸を組み込むための、ORF13(配列番号14)のモジュール1、2、3及び5、並びにORF14(配列番号15)のモジュール1、3及び7から選択されるモジュールのアデニル化及び/又は縮合ドメインをコードするポリヌクレオチド、かかるポリペプチドの自然発生変異体若しくは誘導体及びそれらに由来する断片、例えば、ORF13(配列番号14)のモジュール1、2、3及び5、並びにORF14(配列番号15)のモジュール1、3及び7から選択されるモジュールのアデニル化ドメインの非必須アミノ酸の付加、欠失、若しくは置換、又は必須アミノ酸の同類置換に起因する変異体又は誘導体を提供する。
【0019】
別の態様においては、本発明は、ヒドロキシフェニルグリシン(HPG)の合成のための、ORF4、6、7、28及び30(配列番号5、7、8、29及び31)のいずれかをコードするポリヌクレオチド、又はORF4、6、7、28及び30の自然発生変異体若しくは誘導体及びそれらに由来する断片、例えば、ORF4、6、7、28及び30の非必須アミノ酸の付加、欠失、若しくは置換、又は必須アミノ酸の同類置換に起因する変異体又は誘導体を提供する。1つの実施形態においては、ORF4、6、7、28及び30のいずれか、又はそれらの変異体若しくは誘導体を用いて、HPG−含有ペプチド抗生物質の産生を増強する。かかる抗生物質としては、ノカルジシンA、バンコマイシン、アリジシン、クロロエレモマイシン、テイコプラニン及び関連するグリコペプチド抗生物質、及びStreptomyces coelicolorのカルシウム依存性抗生物質(CDA)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0020】
別の態様においては、本発明は、ラモプラニン又はその変異体及び誘導体の分泌を増強するため、又はラモプラニン生合成用前駆体の取りこみを増強するための、ORF2、3、8、19、23、29及び31(配列番号3、4、9、20、24、30及び32)のいずれかをコードするポリヌクレオチド、又はORF2、3、8、19、23、29及び31の自然発生変異体若しくは誘導体及びそれらに由来する断片、例えば、ORF2、3、8、19、23、29及び31の非必須アミノ酸の付加、欠失、若しくは置換、又は必須アミノ酸の同類置換に起因する変異体又は誘導体を提供する。1つの実施形態においては、ORF2、8、23及び31のいずれかを用いてラモプラニン又はその変異体及び誘導体に耐性を付与しても、又は生産レベルを向上させてもよい。
【0021】
別の態様においては、本発明は、ラモプラニン又はその変異体及び誘導体の生合成を調節するための、ORF5、21及び22(配列番号6、22及び23)のいずれかをコードするポリヌクレオチド、又はORF5、21及び22の自然発生変異体若しくは誘導体及びそれらに由来する断片、例えば、ORF5、21及び22の非必須アミノ酸の付加、欠失、若しくは置換、又は必須アミノ酸の同類置換に起因する変異体又は誘導体を提供する。1つの実施形態においては、ORF5、21及び22のいずれかを用いてラモプラニン又はその変異体及び誘導体の産生を増強してもよい。別の実施形態においては、ORF5、21及び22のいずれかを用いて、ラモプラニン又はその変異体及び誘導体の発現を環境シグナル又は細胞シグナルと連携させてもよい。
【0022】
別の態様においては、本発明は、ペプチド抗生物質前駆体の芳香基のハロゲン化のための、ORF20(配列番号21)のいずれかをコードするポリヌクレオチド、又はORF20の自然発生変異体若しくは誘導体及びそれらに由来する断片、例えば、ORF20の非必須アミノ酸の付加、欠失、若しくは置換、又は必須アミノ酸の同類置換に起因する変異体又は誘導体を提供する。1つの実施形態においては、ORF20又はその変異体若しくは誘導体を用いて、ペプチド抗生物質前駆体のHPGの塩素処理を行ってもよい。
(発明の詳細な説明)
【0023】
ラモプラニンは、微生物のActinoplanes sp. ATCC33076による天然の産物である。ラモプラニン産生株のActinoplanes sp. ATCC33076(米国、ヴァーモント州、マナサス、American Type Culture Collectionより入手)から単離したゲノムDNAから、米国特許出願番号第09/910,813号に記載の手順で、ラモプラニン産生のための生合成経路をコードする遺伝子座を単離し、クローン化した。この新しく発見された遺伝子座は、この生物によるラモプラニン生合成に関与する32個の個別タンパク質をコードしている。32個のタンパク質は、DNAが88421個の塩基対(配列番号1)である隣接した配列に含まれるORFによってコードされている。
【0024】
それぞれがラモプラニンの部分的生合成遺伝子座のコスミドクローンをもつ3つの寄託微生物、すなわち、大腸菌DH10B(008CH)株、大腸菌DH10B(008CK)株、及び大腸菌DH10B(008CO)株は、カナダ国、R3E 3R2、マニトバ州、ウィニペグ、アーリントンストリート 1015のカナダ国保険省微生物局、カナダ国際寄託局に、2001年9月19日に寄託された。配列番号1の塩基対5006から42974までの008CHクローンのアクセッション番号はIDAC190901−3である。配列番号1の塩基対34296から70934までの008CKクローンのアクセッション番号はIDAC190901−1である。配列番号1の塩基対52163から88333までの008COクローンのアクセッション番号はIDAC190901−2である。コスミドを含む大腸菌株として寄託したコスミドを、これより「寄託コスミド」と称する。
【0025】
図1に示したように、寄託コスミドはラモプラニン生合成遺伝子座を含んでいる。本書類中の配列に関する記載との間で齟齬が生じた場合は、寄託コスミドに含まれるポリヌクレオチド配列及びそれらにコードされるあらゆるポリペプチドのアミノ酸配列が優先される(controlling)。
【0026】
かかるコスミドの寄託は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約に基づいて行われた。特許証が発行されると、寄託コスミドは最終的なものとして、無制限又は無条件で公開される。寄託コスミドは当業者の便宜のためだけに提供されるものであり、米国特許法第112条で要求されている実施可能要件を満たすために寄託が必要というわけではない。寄託コスミド及びそれに由来する化合物の作製、使用又は販売には許諾が必要となる場合があり、かかる許諾が寄託により与えられることはない。
【0027】
本発明の各種試薬は、寄託株より単離可能である。本発明の各種サブクローンについてDNA配列分析を行い、それにより、ラモプラニン生合成遺伝子座の32の個別タンパク質をコードするORFをはじめとする各種ラモプラニンORFの局在を確認するのが容易になった。
【0028】
ラモプラニン生合成遺伝子座は、約88,500塩基対に及び、32個のORFを含んでいる。配列番号1(88421塩基対)の隣接ヌクレオチド配列には、配列番号2〜34に挙げられた33個の推定タンパク質が含まれている。ORF1(配列番号2)は、配列番号1の残基2077〜3078(センス鎖)から推定した333個のアミノ酸である。ORF2(配列番号3)は、配列番号1の残基3118〜4032(センス鎖)から推定した304個のアミノ酸である。ORF3(配列番号4)は、配列番号1の残基4038〜5048(センス鎖)から推定した336個のアミノ酸である。ORF4(配列番号5)は、配列番号1の残基6665〜5814(アンチセンス鎖)から推定した283個のアミノ酸である。ORF5(配列番号6)は、配列番号1の残基7703〜6693(アンチセンス鎖)から推定した336個のアミノ酸である。ORF6(配列番号7)は、配列番号1の残基9464〜8130(アンチセンス鎖)から推定した444個のアミノ酸である。ORF7(配列番号8)は、配列番号1の残基9691〜10761(センス鎖)から推定した356個のアミノ酸である。ORF8(配列番号9)は、配列番号1の残基12751〜10829(アンチセンス鎖)から推定した640個のアミノ酸である。ORF9(配列番号10)は、配列番号1の残基13617〜12802(アンチセンス鎖)から推定した271個のアミノ酸である。ORF10(配列番号11)は、配列番号1の残基15203〜13614(アンチセンス鎖)から推定した529個のアミノ酸である。ORF11(配列番号12)は、配列番号1の残基15591〜15863(センス鎖)から推定した90個のアミノ酸である。ORF12(配列番号13)は、配列番号1の残基15880〜19035(センス鎖)から推定した1051個のアミノ酸である。ORF13(配列番号14)は、配列番号1の残基19032〜39713(センス鎖)から推定した6893個のアミノ酸である。ORF14(配列番号15)は、配列番号1の残基39713〜65800(センス鎖)から推定した8695個のアミノ酸である。ORF15(配列番号16)は、配列番号1の残基65826〜66530(センス鎖)から推定した234個のアミノ酸である。ORF16(配列番号17)は、配列番号1の残基66546〜67370(センス鎖)から推定した274個のアミノ酸である。ORF17(配列番号18)は、配列番号1の残基67384〜70059(センス鎖)から推定した891個のアミノ酸である。ORF18(配列番号19)は、配列番号1の残基70099〜70662(センス鎖)から推定した187個のアミノ酸である。ORF19(配列番号20)は、配列番号1の残基70659〜71906(センス鎖)から推定した415個のアミノ酸である。ORF20(配列番号21)は、配列番号1の残基73439〜71964(アンチセンス鎖)から推定した491個のアミノ酸である。ORF21(配列番号22)は、配列番号1の残基74216〜73563(アンチセンス鎖)から推定した217個のアミノ酸である。ORF22(配列番号23)は、配列番号1の残基75424〜74213(アンチセンス鎖)から推定した403個のアミノ酸である。ORF23(配列番号24)は、配列番号1の残基75535〜76464(センス鎖)から推定した309個のアミノ酸である。ORF24(配列番号25)は、配列番号1の残基78110〜76449(アンチセンス鎖)から推定した553個のアミノ酸である。ORF25(配列番号26)は、配列番号1の残基79864〜78107(アンチセンス鎖)から推定した585個のアミノ酸である。ORF26(配列番号27)は、配列番号1の残基81624〜79861(アンチセンス鎖)から推定した587個のアミノ酸である。ORF27(配列番号28)は、配列番号1の残基81909〜81682(アンチセンス鎖)から推定した75個のアミノ酸である。ORF28(配列番号29)は、配列番号1の残基82346〜82062(アンチセンス鎖)から推定した94個のアミノ酸である。ORF29(配列番号30)は、配列番号1の残基82587〜84446(センス鎖)から推定した619個のアミノ酸である。ORF30(配列番号31)は、配列番号1の残基84481〜85548(センス鎖)から推定した355個のアミノ酸である。ORF31(配列番号32)は、配列番号1の残基85556〜86845(センス鎖)から推定した429個のアミノ酸である。ORF32(配列番号33)は、配列番号1の残基87372〜86803(アンチセンス鎖)から推定した189個のアミノ酸である。ORF33(配列番号34)は不完全であり、配列番号1の残基87494〜88420(センス鎖)から推定した309個のアミノ酸(N−末端のみ)である。
【0029】
いくつかのORF、すなわちORF4、7、8、9、12、16、17、19、20、27、28、29、30、32、及び33(配列番号5、8、9、10、13、17、18、20、21、25、28、29、30、31、33及び34)は、標準的な開始コドンであるATG(メチオニン)よりもむしろ非標準的な開始コドンであるGTG(バリン)で開始する。ORFにおける最初のコドンの特異性を示すため、すべてのORFをアミノ酸末端位置のアミノ酸であるメチオニン又はバリンとともに列挙しておく。しかし、あらゆる場合において生合成されたタンパク質がメチオニン残基、より詳しくはホルミルメチオニン残基をアミノ末端位置に含むことが予想されており、このことは、コードする遺伝子が非標準的開始コドンを指定した場合でも、細菌中でのタンパク質の合成はメチオニン(ホルミルメチオニン)によって始まるという広く受け入れられている原則と一致している(例えば、Stryer, Biochemistry 3rd edition, 1998, W. H. Freeman and Co., New York, pp. 752−754を参照のこと)。
【0030】
セクション1:定義
ドメインとは、分子のある部分、例えば、タンパク質や核酸など、構造的及び/又は機能的にかかる分子の他の部分とは異なる部分を示す。
分子の誘導体又は類似体とは、かかる分子に由来する部分、又はかかる分子を修飾したものを示す。
【0031】
本発明において単離した核酸分子とは、一本(コード又は非コード鎖)又は二本鎖であってもよい、ゲノムDNAや相補DNA(cDNA)などのデオキシリボ核酸分子(DNA)であってもよく、合成した一本鎖ポリヌクレオチドなどの合成DNAであってもよい。本発明の単離した核酸分子は、リボ核酸分子(RNA)であってもよい。特定の実施形態においては、かかる核酸にはかかる遺伝子クラスターの全配列、ORFのいずれか1つの配列、ORF及び関連するプロモーターをコードする配列、又はここに開示したActinoplanes sp.ゲノムの断片中でコードされるペプチド、ポリペプチド、又は完全長タンパク質を発現させるのに有用な短い配列が含まれる。特定の実施形態においては、かかる核酸は天然、非天然若しくは修飾ヌクレオチド、又はヌクレオチド間結合、又はそれらの組み合わせを有している場合がある。
【0032】
ポリヌクレオチドとは、ここに開示したORFの完全長または部分長配列を示す。本発明のポリヌクレオチドは、RNA、DNA(cDNA、ゲノムDNA又は合成DNA)、又はそれらの修飾体、変異体、相同体若しくは断片でもよい。一本鎖の場合、そのポリヌクレオチドはコード鎖、「センス」鎖若しくは陽性鎖、又は相補鎖、「アンチセンス」鎖若しくは陰性鎖でもよい。アンチセンス鎖はタンパク質をコードするRNAと相互作用するため、該タンパク質の調整物質として有益である。アンチセンス鎖は、特有の配列又は該タンパク質をコードするRNAに対する特異性が高い配列を有する完全長鎖よりも短いものが好ましい。配列表に示す本発明のポリヌクレオチド配列は、(a)コード配列、(b)(a)の転写に由来するリボヌクレオチド配列、(c)遺伝子コードの冗長性又は変質を利用してかかるポリヌクレオチドをコードするコード配列、(d)制御配列のいずれかとなっている。
【0033】
ポリペプチド又はタンパク質とは、アミノ酸の鎖のことであり、長さや翻訳後修飾(例えば、タンパク質分解処理又はリン酸化)は考慮に入れない。本出願においては、この2つの語は交換可能である。当業者であれば、本発明のポリペプチドが天然の供給源、すなわちActinoplanes sp.から精製される場合があること、又は組換え技術を用いて作製される場合があることが、即座にわかるであろう。
【0034】
ORF、ラモプラニンオープンリーディングフレーム、及びラモプラニンORFとは、Actinoplanes sp.より単離したラモプラニン生合成遺伝子クラスター中のオープンリーディングフレームを指す。この語は、ラモプラニンを合成する他の生物(例えば、Actinoplanes、Streptomyces、Actinomycetesの他の株及び/又は種など)に存在する同一のORFも含むものとする。この語は、対立遺伝子変異体及び単一ヌクレオチド多型(SNP)も含むものとする。ある例では、ラモプラニンORFという語は、ラモプラニンORFがコードするポリペプチドの同意語として使用され、かかるポリペプチド中の同類置換という意味も含む場合がある。特定の語法については、文脈から明らかになるであろう。
【0035】
「相同的なアミノ酸配列」とは、臨界融解温度(Tm)から25〜35℃低い温度で配列表のコード領域核酸配列の部分とハイブリダイズする核酸配列により、全部又は一部をコードされるポリペプチドである。相同的アミノ酸配列とは、1つ以上のアミノ酸同類置換が、配列表のアミノ酸配列と異なっている配列を指す。そうした配列には、対立遺伝子変異体(後で定義する)及び欠失や挿入を含みながらもポリペプチドの機能的特性を保っている配列も含まれる。そうした配列は、少なくとも75%、好ましくは80%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、さらにまた好ましくは95%、最も好ましくは98%の相同性を、配列表のアミノ酸配列に対して有している。
【0036】
相同的アミノ酸配列には、配列表のアミノ酸配列と同一、又は本質的に同一の配列が含まれる。「本質的に同一のアミノ酸配列」とは、参照先のアミノ酸配列との相同性が少なくとも90%、好ましくは95%、より好ましくは97%、最も好ましくは99%のものであって、アミノ酸の同類置換の大半が、参照先のアミノ酸配列と異なっているものが好ましい。配列表のアミノ酸配列のいずれかと配列相同性をもつポリペプチドには、配列表のポリペプチドに固有の特性を保っている、自然発生対立遺伝子変異体、突然変異体、又はその他の非自然発生変異体が含まれており、本発明のこの態様と一致している。
【0037】
WI53705、マディソン、ユニヴァーシティーアヴェニュー1710のウィスコンシン大学バイオテクノロジーセンターのSequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Groupなどの配列分析ソフトウェアを用いて、相同性を測定している。同一性が最大となるようにアミノ酸配列を並べている。最適アラインメントを得るため、間隔を人為的に配列に挿入する場合がある。最適アラインメントの設定後は、両方の配列で同じアミノ酸が存在する位置をすべて記録し、それをすべての位置の数と相対させて、相同性の程度を確認する。
【0038】
相同的なポリヌクレオチド配列の定義も同様である。相同的配列は、配列表のコード配列のいずれかに対して、少なくとも45%、好ましくは60%、さらに好ましくは75%、最も好ましくは85%の同一性をもっているのが好ましい。
【0039】
「同類置換」という語は、タンパク質又はペプチドに関して使用され、分子の活性(特異性又は結合親和性)を本質的に変化させないアミノ酸置換のことを示す。典型的なアミノ酸同類置換には、あるアミノ酸と、同様の化学特性(例えば、電荷又は疎水性)を有する他のアミノ酸との置換が伴う。次に示す6つの群は、お互いに対して典型的な同類置換となっているアミノ酸をそれぞれ含んでいる。1)アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T);2)アスパル酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リシン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0040】
「単離した」「精製した」「生物学的に純粋な」との語は、通常未加工の状態で付随している成分が本質的に又は基本的に存在しない物質を示す。核酸及び/又はポリペプチドに関しては、この語は、自然状態では通常隣接している配列に隣接していない核酸及び/又はポリペプチドを示す。そのような単離した核酸及び/又はポリヌクレオチドは、ベクター又は組成物の一部となる場合があるが、やはり単離したものとして定義される。これは、該ベクター又は組成物が該ポリヌクレオチドの自然環境の一部ではないためである。
【0041】
「非相同(の)」という語は、コード配列及びコントロール配列などの核酸配列に関するものであり、通常は組換えコンストラクト領域と会合しない配列、及び/又は通常は特定の細胞と会合しない配列を示す。したがって、核酸コンストラクトの「非相同」領域とは、自然状態では他の分子と会合しない別の核酸分子内部の核酸又は該核酸分子に付着している核酸の同定可能なセグメントである。例えば、コンストラクトの非相同領域には、自然状態ではコード配列と会合しない配列が隣接しているコード配列が含まれることもある。非相同コード配列の別の例としては、コード配列そのものが自然状態では見られないコンストラクト(例えば、未変性遺伝子とは異なるコドンを有する合成配列)がある。同様に、通常は宿主細胞中に存在しないコンストラクトで形質転換を行った宿主細胞は、本発明の目的に鑑みて、非相同であると考えられる。
【0042】
対立遺伝子変異体とは、1つ以上のアミノ酸に、ポリペプチドの生物学的機能を変化させない置換、欠失、又は付加が生じていることを特徴とする別形態のポリペプチドを指す。
【0043】
「生物学的機能」とは、細胞中のポリペプチドの機能であって、自然に生じるものを指す。1つのポリペプチドが2つ以上の生物学的機能を有する場合もある。
【0044】
セクション2:ラモプラニン核酸の単離、調製及び発現
ラモプラニン遺伝子クラスター由来の核酸を単離し、場合に応じて修飾し、宿主細胞に挿入して、代謝(生合成)経路を創り出すこと及び/又は修飾することは可能であり、これにより、かかる宿主細胞による各種代謝産物の合成及び/又は修飾が可能になる。他に、宿主細胞中で、また、化学試薬として、例えば、各種代謝産物の生体外合成及び/又は化学修飾に使用するために回収された、コードされたラモプラニンポリペプチド中で、ラモプラニン遺伝子クラスター核酸を発現させることができる。どちらの形で応用する場合も、適切な宿主細胞中の単離及び/又は修飾を行った1つ以上のラモプラニンORFをコードする1つ以上の核酸の挿入を伴うのが普通である。かかる核酸は、ラモプラニンポリペプチドの発現をもたらすのに適切な制御要素を含むコンストラクトである、発現ベクター中に通常は存在する。宿主細胞中に発現したラモプラニンポリペプチドは、その後代謝/生合成経路の構成要素として作用する(その場合、かかる経路の合成産物は回収されるのが普通である)か、又はラモプラニンポリペプチドそれ自体が回収される。ここに提供されている配列情報を利用すると、よく知られた通常の手段で、ラモプラニン核酸をクローン化し、発現させることができる。
【0045】
A.ラモプラニン核酸
ラモプラニン遺伝子クラスターを含む核酸を表2において同定し、ここに提供した配列表に列挙しておく。特に、表2はラモプラニン生合成遺伝子クラスターにおけるORFの遺伝子及び機能を同定するものである。ここに提供した配列情報を利用すると、当業者には周知の標準的な方法(例えば、Innis (1990) PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Academic Press Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ、などに記載の方法を使用;Vector NTI SuiteTM, InforMax、米国、メリーランド州ゲーサーズバーグ、などのコンピュータソフトを使用)により1つ以上のORFを増幅/単離するのに適切なプライマーを決定できる。
【0046】
1つ以上のORFを増幅/単離するのに適切なプライマーは、配列表中で提供したヌクレオチド配列情報にしたがって、設計されている。その手順は下記のとおりである。10〜40個、好ましくは15〜25個のヌクレオチドからなるプライマーを選択する。効率的なハイブリダイゼーションを確実に起こすのに充分な割合、すなわち全ヌクレオチド量に対して少なくとも40%、好ましくは50%の割合で、C及びGヌクレオチドを含むプライマーを選択すると有利である。通常、そうした増幅では、必要な遺伝子を含む生物(例えばActinoplanes sp.)のDNA又はRNAをテンプレートとして利用する。標準的なPCR反応は、100μLにつき0.5〜5単位のTaqDNAポリメラーゼ、好ましくは同じ濃度の、それぞれ20〜200μMのデオキシヌクレオチド、デオキシヌクレオチド全体濃度に対して0.5〜2.5mMのマグネシウム、10〜10の標的分子、及び約20pmolの各プライマーを含んでいるのが普通である。プライマーの本来のTmよりも15℃〜5℃低いアニーリング温度で、約25〜50サイクルのPCRを行う。アニーリング温度をさらに厳密なものにすると、不正確なアニーリングが行われたプライマーとの判別が容易になり、不正確なヌクレオチドがプライマーの3’末端へ組み込まれることは少なくなる。変性温度は、通常は95℃〜97℃であるが、G+Cを多く含有する標的の変性には、より高い温度も適切とされる場合がある。Actinoplanes sp.由来のもののように、G+Cを多く含有するテンプレートのPCR増幅には、DMSOを最終濃度が5〜10%となるように添加すると効果的である。行うサイクルの数は標的分子の初期濃度によって決まるが、非特異的なバックグラウンド産物が蓄積しやすいため、通常40サイクル以上は行わないように推奨される。
【0047】
相同的ポリペプチド又は対立遺伝子変異体をコードするポリヌクレオチドを回収する別の方法は、DNA又はRNAライブラリーのハイブリダイゼーションスクリーニングである。ハイブリダイゼーションの手順は、当該分野では周知であり、Ausubel et al.,(Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Inc., 1994)、Silhavy et al.(Silhavy et al. Experiments with Gene Fusions, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1984)、及びDavis et al.(Davis et al. A Manual for Genetic Engineering: Advanced Bacterial Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1980)に記載されている。ハイブリダイゼーション条件を最適化する重要なパラメーターは、この温度を越えると2つの相補DNA鎖がお互いに分離し始める温度である、臨界融解温度を得るために使用する式に示されている(Casey & Davidson, Nucl. Acid Res. (1977) 4:1539)。約600個及びそれ以上のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドについてのこうした式は以下のとおりである。Tm=81.5+0.5×(%G+C)+1.6log(陽イオン濃度)−0.6×(%ホルムアミド)。ストリンジェンシーが適切な条件下では、ハイブリダイゼーション温度(Th)は、計算したTmよりも約20〜40℃、20〜25℃、又は好ましくは30〜40℃低くなっている。当業者であれば、最適温度及び塩条件はすぐに決められることがわかるであろう。
【0048】
本発明のポリヌクレオチドに対しては、(i)50%のホルムアミドを含む6×SSC中で、42℃で4〜16時間以内、又は(ii)6×SSC水溶液(1MのNaCl、0.1Mのクエン酸ナトリウム(pH7.0))中で、65℃で4〜16時間以内のプレハイブリダイジング及びハイブリダイジングインキュベーションの両方の場合についてストリンジェントな条件を整えた。
【0049】
1つの実施形態においては、本発明は、ラモプラニンの組換え発現(例えば、ラモプラニン又はその類似体)用の核酸を提供する。かかる核酸としては、ラモプラニンの合成を誘導するには充分なポリペプチドをコードするORFを含む、単離した遺伝子クラスターが挙げられる。本発明の他の実施形態においては、ORFが変化しない場合があるが、制御要素(例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、ターミネーター、エンハンサーなど)は修飾される場合がある。さらに他の実施形態においては、核酸が選択した構成要素(例えば、1つ以上のORF又は修飾されたORF)をコードする場合があり、及び/又は場合に応じて他の非相同生合成要素を含む場合がある。かかる要素には非リボソームポリペプチド合成酵素(NRPS)モジュール又は酵素ドメインが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
かかる変異は、例えばラモプラニンの1つの置換基を他のものと置換するなど、ある特定の方法で既知の分子を修飾するために、故意に導入されることがある。それにより予測された構造を有するラモプラニン誘導体分子が作製される。その他に、例えば、生合成経路中の1つ以上のORFを体系的に又は場当たり的に置換して既知のラモプラニンの分子変異体ライブラリーを作製することにより、変異体をランダムに作製できる。
【0051】
自然には発生しない有益な相同体及びその断片の設計には、アミノ酸配列の変化及び/又は欠損に耐性をもつとされるポリペプチドの領域を同定する既知の方法を用いる。一例として、異なる種に由来する相同的ポリペプチドを比較し、保存された配列を同定することが挙げられる。相違点の多い配列は、配列の変化に対する耐性を有する可能性が高い。配列間の相同性は、Altschul et a., Nucleic Acids Res. 25:3389−3402 (1997)のBLAST相同性検索アルゴリズムを用いて分析してもよい。
【0052】
その他に、配列番号2〜34のアミノ酸配列を有する参照用ポリペプチドに対して作製された抗体との交差反応性をスクリーニングすることにより、ラモプラニン生合成経路において活性を有する本発明のポリヌクレオチドにコードされる相同的ポリペプチド又はポリペプチド誘導体を同定する場合がある。手順は次のとおりである。精製した参照用ポリペプチド、融合ポリペプチド(例えば、MBP、GST、又はHisタグ系の発現産物)、又は該参照用ポリペプチド由来の合成ペプチドに対する抗体を作製する。融合ポリペプチドに対する抗体を作製する場合は、異なる2つの融合系を用いる。下記のとおり、ウェスタンブロット(Towbin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1979) 76:4350)、ドットブロット及びELISAなど多数の方法によって、特異的抗原性を測定できる。
【0053】
ウェスタンブロット分析では、スクリーニングの対象となる産物は、精製した調製物又は全大腸菌抽出物のいずれかとして、Laemmli(Nature (1970) 227:680)記載のSDS−PAGE電気泳動にかけられる。ニトロセルロース膜に移した後、約1:5から約1:5000、好ましくは約1:100から1:500の稀釈範囲で稀釈した抗体を用いて、かかる物質をさらにインキュベーションする。かかる産物に対応するバンドが上記稀釈範囲内の稀釈物のいずれかに反応性を示した時点で、特異的抗原性が判明する。
【0054】
ELISA分析法では、スクリーニングの対象となる産物をコーティング抗原として使用するのが好ましい。精製した調製物が好ましいが、全細胞抽出物も使用可能である。すなわち、1mlあたり約10μgのタンパク質を含む100μlの調製物を96ウェルのポリカーボネート製ELISAプレートに分注する。かかるプレートを37℃で2時間インキュベーションし、その後4℃で一晩インキュベーションする。0.05%のツイーン20を含むリン酸緩衝食塩水(PBS)(PBS/ツイーン緩衝液)で、かかるプレートを洗浄する。1%のウシ血清アルブミン(BSA)を含む250μlのPBSでウェルを満たし、非特異的な抗体結合を防止する。37℃で1時間のインキュベーションを行った後、PBS/ツイーン緩衝液でかかるプレートを洗浄する。0.5%のBSAを含むPBS/ツイーン緩衝液で抗体を連続的に稀釈する。1ウェルあたり100μlの稀釈物を添加する。かかるプレートを37℃で90分間インキュベーションし、洗浄し、標準的な手順にしたがって評価する。例えば、ウサギの内部で特異抗体が作製された場合は、ヤギ抗ウサギ抗体とペルオキシダーゼとの共役物をウェルに添加する。37℃で90分間のインキュベーションを行い、かかるプレートを洗浄する。適切な基質で反応を展開させ、反応を比色分析(分光光度法による吸光度の測定)で測定する。上記実験条件下では、陽性反応は、非免疫性コントロール血清よりも高いOD値で示されている。
【0055】
ドットブロット分析では、精製した調製物が好ましいが、全細胞抽出物も使用可能である。すなわち、かかる産物の溶液100μg/mlを、50mMのTris−HCl(pH7.5)で連続して2倍に稀釈する。それぞれ100μlの稀釈液を、96ウェルのドットブロット用装置(Biorad社製)にセットした0.45μmのニトロセルロース膜に塗布する。かかる系を真空状態にして、緩衝液を除去する。50mMのTris−HCl(pH7.5)を添加してウェルを洗浄し、かかる膜を空気乾燥させる。かかる膜にブロッキング緩衝液(50mMのTris−HCl(pH7.5)、0.15MのNaCl、10g/Lのスキムミルク)をたっぷりと含ませ、約1:50から約1:5000の範囲で、好ましくは約1:500で稀釈した抗体で、かかる膜をインキュベーションする。標準的な手順により、反応を明らかにする。例えば、ウサギ抗体を使用する際に、ヤギ抗ウサギペルオキシダーゼ共役物をウェルに添加する。37℃で90分のインキュベーションを行い、かかるブロットを洗浄する。適切な基質を用いて反応を展開させ、停止させる。着色したスポットの外観によって、例えば比色分析によって、反応を視覚的に測定する。上記の実験条件下では、着色したスポットと、少なくとも約1:5、好ましくは少なくとも約1:500での稀釈処理との間に関連性があれば、陽性反応だとわかる。
【0056】
ここに提供した情報を利用すれば、当業者であれば容易に目的の配列をクローニングする他の方法を思いつくであろう。例えば、目的のラモプラニン遺伝子及び/又は場合に応じてNRPSモジュール又は酵素的ドメインは、該遺伝子を発現する細胞に由来するcDNA又はゲノムライブラリーのスクリーニング、又は該遺伝子を含むことが知られているベクターからの該遺伝子の抽出などの組換え方法により、それらを発現する生物より入手可能である。その後、標準的技術を用いて、該遺伝子を単離して他の目的とする生合成要素と結合させることができる。問題の遺伝子がすでに適切な発現ベクター中に存在する場合は、要望に応じて例えば他のドメイン又はサブユニットとin situで結合させることができる。目的の遺伝子は、クローニングよりもむしろ合成によって作製できる。目的とする特定のアミノ酸配列用の適切なコドンを用いて、ヌクレオチド配列を設計することができる。かかる配列が発現する宿主に好適なコドンを選択するのが一般的である。標準的方法によって調製された重複するオリゴヌクレオチドから完全な配列を集めて、完全なコード配列へと組み立てることができる(Edge (1981) Nature 292:756; Nambair et al. (1984) Science 233:1299; Jay et al. (1984) J. Biol. Chem. 259:6311を参照のこと)。さらに、特注による遺伝子の合成が商業的に利用可能である(例えば、カリフォルニア州アラメダのOperon Technologies社を参照のこと)ことも記されている。
【0057】
Berger and Kimmel (1989) Guide to Molecular Cloning Technique, Methods in Enzymology 152 カリフォルニア州サンディエゴのAcademic Press, Inc., (Berger);Sambrook et al., (1989) Molecular Cloning−A Laboratory Manual (2nd ed.) Vol. 1−3, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Press, N.Y.;Ausubel (1994) Current Protocols in Molecular Biology, Current Protocols, Greene Publishing Associates, Inc.とJohn Wiley & Sons, Inc.との共同事業、米国特許第5,017,478号;及び欧州特許第0246864号には、そうした技術及び指示について、当業者の指針となるのに充分な例が、多数のクローニング実習によって示されている。
【0058】
B.ラモプラニンORFの発現
原核生物の宿主から組換え発現系を選択するのが好ましい。細菌細胞は、当業者用の市販業者、例えばAmerican Type Culture Collection(ATCC;メリーランド州ロックヴィル)をはじめとする多数の異なる供給源から入手可能である。組換えタンパク質の発現に使用する細胞の市販業者は、かかる細胞の使用説明書も提供している。
【0059】
発現したポリペプチドにとってどういった特徴が望ましいのかによって、どの発現系を選択するかが決まる。例えば、本発明のポリペプチドをある特定の脂質化(lipidated)形態又は他の形態で作製するのが有用な場合がある。形質導入が可能なクローニングベクターであれば、本発明の核酸コンストラクト用のクローニングベクターとして使用できる。しかし、大型のクラスターを発現させる場合は、ファージミド、コスミド、P1、YAC、BAC、PAC、HAC又は同様のクローニングベクターを用いてヌクレオチド配列を宿主細胞内にクローニングするのが好ましい。例えば、ファージミド、コスミド、及びBACは、それぞれM13ファージ及びλファージよりも大型のDNAを挿入して安定的に増殖させる能力により、有利なベクターとされている。この方法に使用されるファージミドには、一般に、プラスミドと繊維性ファージクローニングビヒクルとの混成物が含まれる。この方法に使用されるコスミドには、一般に、cos部位が挿入されたλファージを基礎とするベクターが含まれる。レシピエントプールクローニングベクターは、適切なプラスミドであればよい。突然変異体のプールが挿入されたクローニングベクターは、同一であってもよく、又は、異なる遺伝子マーカーを有し、発現するような構成であってもよい(例えば、上記Sambrook et al.を参照のこと)。こうした異なるマーカー遺伝子を有するベクターを用いるという効用を利用して、形質導入の首尾を容易に確認する場合もある。
【0060】
本発明の好ましい実施形態においては、ベクターを使用して、ラモプラニン生合成遺伝子又は遺伝子クラスターを宿主(例えば、Streptomyces)細胞に挿入する。しかし、下記のガイドラインによれば、不当な実験をすることも、本発明の範囲から逸脱することもなく、ベクター、発現コントロール配列及び宿主を選択することができる。当業者であれば、特定の宿主細胞に使用する多数のベクターについて充分な知識を有している。例えば、Malpartida and Hopwood, (1984) Nature, 309:462−464; Kao et al., (1994), Science, 265:509−512; Hopwood et al., (1987) Methods Enzymol., 153:116−166は、すべて多様なStreptomycesの宿主に使用するベクターについて記載している。ベクターの選択にあたっては、宿主内部での存続とできれば複製も可能なベクターと共存できるような、適切な宿主を選択しなくてはならない。ベクターのコピー数、抗生物質耐性など、他のタンパク質のコピー数及び発現をコントロールする能力について、考慮が重ねられている。1つの好ましい実施形態においては、Streptomycesベクターを使用しており、その内部には、かかるStreptomycesベクターの大腸菌内への導入及び大腸菌内での存続が可能となるような配列が含まれている。このようなStreptomyces/大腸菌シャトルベクターは文献(例えば、Vara et al., (1989) J. Bacteriol, 171:5872−5881; Guilfoile & Hutchinson (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:8553−8557)に記載されている。
【0061】
当業者に周知の方法によって、本発明の野生型及び/又は修飾されたORFを、1つ以上の発現ベクターに挿入することができる。発現ベクター(例えばプラスミド)は当業者に広く知られており、当業者であればすぐに利用できる。細菌ベクターについては、本発明のポリヌクレオチドを細菌のゲノムに挿入するか、又は、プラスミドの一部として遊離状態のままにしておく。発現ベクターで宿主細胞の形質転換を行う方法は、当該分野ではよく知られている。かかる発現ベクターには、操作可能な状態で目的のORFと結合したコントロール配列が含まれている。発現コントロール配列の選択にあたっては、多数の可変的特徴(variable)が考慮される。なかでも重要な可変的特徴は、配列の相対強度(例えば、各種条件下で発現を起こす能力)、配列の機能、及び発現するポリヌクレオチドとコントロール配列との適合性をコントロールする能力である(例えば、効率的な転写を妨害する場合があるヘアピン構造を回避するために、二次構造が考慮の対象となっている)。
【0062】
本発明に使用する適切な発現系には、宿主である真核及び/又は原核細胞で機能する系が含まれる。しかし、上記の説明のとおり原核細胞系が好ましく、特に、Streptomyces sp.と適合する系が特別な興味を集めている。
【0063】
どの発現カセットを選択するかは、発現したポリペプチド又は天然産物に望ましい特徴、及び選択した宿主系によって決まる。発現カセットとしては、選択した宿主系で機能できるプロモーターで、かつ構造プロモーター又は誘導プロモーターとなりうるもの、リボソーム結合部位、必要であれば開始コドン(ATG)、場合によってはリーダーペプチドをコードする領域、本発明のDNA分子、終止コドン、及び場合によっては3’末端領域(翻訳及び/又は転写ターミネーター)が一般的に挙げられる。応用可能な場合、すなわち、分泌又は膜タンパク質である場合は、リーダーペプチドコード領域が本発明のポリヌクレオチドに近接しており、適切なリーディングフレームに配置されている。リーダーペプチドコード領域が存在する場合、その領域は、成熟したポリペプチドをコードするDNA分子と相同又は非相同であり、発現に使用した宿主の分泌機構と適合する。本発明のDNA分子で構成されるORFは、単独で又はリーダーペプチドとともに、宿主系で転写と翻訳が生じるようにプロモーターの管理下で配置される。プロモーター及びリーダーペプチドコード領域は、当業者に広く知られており、当業者であれば利用できる。特に有用なプロモーターとしては、ラモプラニン及び/又はNRPS遺伝子クラスターに由来するコントロール配列が挙げられる。他の細菌性プロモーター、例えば、ガラクトース、ラクトース(lac)及びマルトースなどの糖代謝酵素に由来するものが本件のコンストラクトに使用されている。他の例としては、トリプトファン(trp)、β−ラクタマーゼ(bla)プロモーター系、バクテリオファージλPL、及びT5などの生合成酵素由来のプロモーター配列が挙げられる。さらに、自然状態では発生しない合成プロモーター(米国特許第4,551,433号)も、宿主細菌細胞中で機能する。Streptomycesにおいては、ErmE及びTcmG(Shen and Hutchinson, (1994) J. Biol. Chem. 269:30726−30733)などの構造プロモーター、及びactI及びactIII(Pleper et al., (1995) Nature, vol. 378:263−266; Pieper et al., (1995) J. Am. Chem. Soc., 117:11373−11374; Wiesmann et al., (1995) Chem. & Biol. 2:583−589)などの制御可能なプロモーターを含めた、多数のプロモーターが記載されている。
【0064】
他の制御配列についても、宿主細胞の成長に応じてORFの発現を制御できるものが望ましい。制御配列は当業者には知られており、その例としては、制御化合物の存在をはじめとする化学的又は物理的刺激によってスイッチのオン又はオフが生じる遺伝子の発現を引き起こすものがある。他のタイプの制御要素、例えばエンハンサー配列なども、ベクター中に存在する場合がある。
【0065】
選択マーカーも組換え発現ベクターに含めることができる。形質転換した細胞株を選択するのに有用な多様なマーカーが知られているが、一般に、発現した場合に、適切な選択培地で成長し形質転換した細胞に選択可能な表現型を与えるような遺伝子で、そうしたマーカーは構成されている。該マーカーには、例えば、抗生物質に対する耐性又は感受性をプラスミドに与える遺伝子が含まれている。
【0066】
別々のコントロール要素を用いて、又は、例えば単一のプロモーターのコントロール下で、目的とする各種ラモプラニンORF、及び/又はNRPSクラスター若しくはサブユニットを、個別カセットとしての1つ以上の組換えベクターにクローンすることができる。かかるORFは、他のオープンリーディングフレームで欠失や挿入が発生しやすくなるように隣接制限部位を含んでいてもよく、それにより、混成合成経路の形成が可能になる。そのような独特の制限部位の設計は当業者には知られており、特定部位の突然変異誘発やPCRなどの上述の技術により、そうした設計を行うことができる。
【0067】
NRPSコード遺伝子クラスターをはじめとする遺伝子クラスターなどの大型の核酸の、Streptomycesをはじめとする細胞中でのクローニング方法及び発現方法は、当業者にはよく知られている(例えば、Stutzman−Engwall and Hutchinson (1989) Proc. Ntl. Acad. Sci. USA, 86:3135−3139: Motamedi and Hutchinson (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84:4445−4449; Grim et al. (1994) Gene, 151:1−10; Kao et al. (1994) Science, 265:509−512; Hopwood et al. (1987) Meth. Enzymol., 153:116−166を参照のこと)。ベクターを中心とする方法を用いて、原核細胞などの細胞に100kbを優に越える核酸を導入した例もいくつかある(例えば、Osoegawa et al., (1998) Genomics, 52:1−8; Woon et al., (1996) Nucl. Acids, Res., 24:4202−4209を参照のこと)。
【0068】
C.宿主細胞
ラモプラニン及び/又はラモプラニンシャント代謝物、及び/又はその後の単離用に修飾された他の代謝物、及び/又は1つ以上の望ましい生体分子(例えば、ラモプラニン及び/又はラモプラニン類似体など)の生合成用に修飾された他の代謝物の各種タンパク質成分を発現させるために、上記ベクターを用いることができる。ラモプラニン生合成遺伝子クラスターの1つ以上のタンパク質が、その後の単離及び/又は特徴決定で発現する(例えば、過剰発現する)場合は、タンパク質の発現に適したいかなる真核細胞又は原核細胞中でもかかるタンパク質が発現する。宿主の選択にあたっては、選択したベクターと適合し、発現産物が有しているかもしれないいかなる毒性作用にも耐性を示し、望ましい場合には発現産物を効率的に分泌でき、望ましいコンフォメーションでかかる産物を発現させることができ、計測が容易な単細胞宿主を選択する。その際には、最終産物の精製の容易さを考慮する。かかる最終産物は、発現したポリペプチド又はかかる発現したポリペプチドがその一部となっている生合成経路の産物である抗生物質などの天然産物であってもよい。1つの好ましい実施形態においては、かかるタンパク質は大腸菌中で発現する。
【0069】
ラモプラニン、ラモプラニン代謝物、シャント代謝物などを組換えによって作製する際の宿主細胞は、組換えラモプラニン遺伝子クラスター及び/又はそのサブセットを保有できるのであれば、どの生物に由来していてもよい。したがって、本発明の宿主細胞は、真核生物又は原核生物のいずれに由来していてもよい。宿主細胞としては、自然状態でラモプラニンを発現する種又は株(例えば細菌株)の細胞が好ましい。適切な宿主細胞としては、Actinomycetes、Actinoplanetes及びStreptomycetes、Actinomadura、Micromonospraなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に好ましい宿主細胞としては、Streptomyces globisporus、Streptomyces lividans、Streptomyces coelicolor、Microsmonospora echinospora spp. Calichenisis、Actionamadura verrucosopora、Micromonospora chersina、及びStreptomyces carzinostaticusが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
D.発現産物の回収
発現産物(例えば、ラモプラニン、ラモプラニン類似体、ラモプラニン生合成経路ポリペプチドなど)の回収は、当業者に周知の方法で行われる。例えば、ラモプラニン生合成遺伝子クラスタータンパク質を発現させ、単離する場合、単離(例えばHis)タグの作用を助長するのに便利なタグを用いて、かかるタンパク質を発現させることができる。他の標準的なタンパク質精製方法にも適切なものがあり、それらの方法は当業者によく知られている(例えば、(Quadri et al. 1998)Biochemistry 37:1585−1595, Nakano et al. (1992) Mol. Gen. Genet. 232:313−321などを参照のこと)。
【0071】
本発明のポリペプチド又はポリペプチド誘導体の精製は、ラモプラニン、又はかかるポリペプチドに結合する他のリポデプシペプチドに関連する抗体又は化合物のいずれかをリガンドとして用いて、アフィニティークロマトグラフィーで行ってもよい。かかる抗体は、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体のいずれかである。標準的方法によって、抗血清から精製IgGを調製する(例えば、Coligan et al., Current Protocols in Immunology (1994) John Wiley & Sons, Inc. New York, NYを参照のこと)。従来のクロマトグラフィーの裏付けについては、例えば、Antibodies: A Laboratory Manual, D. Lane, E. Harlow, Eds. (1988)に記載されている。
【0072】
配列番号2〜34のアミノ酸配列の部分配列であり、配列番号2〜34のアミノ酸配列に相同的なポリペプチド配列の部分配列であり、内部欠損によって完全長ポリペプチドから由来したポリペプチドであり、融合タンパク質であるポリペプチド誘導体が提供されるが、これは、本発明のこの態様と一致している。
【0073】
ポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチド及び大型の内部欠損を有しているポリペプチドを、標準的方法を用いて構築する(Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Inc., 1994)。かかる方法としては、標準的PCR、インバースPCR、クローン化したDNA分子の制限酵素処理、又はKunkel et al.の方法(Kunkel et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1985) 82:448)が挙げられる。これらの方法の構成要素及びその使用にあたっての説明書は、Stratagene社などさまざまな市販業者から即座に入手できる。欠損突然変異体の構築後は、そうした変異体について、ここに記載のラモプラニン産生を向上させる能力又はリポデプシペプチドクラスの抗菌性産物若しくは天然産物の新規類似体を作製する能力のテストを行う。
【0074】
融合ポリペプチドとは、N−末端又はC−末端で他のポリペプチドと融合している本発明のポリペプチド又はポリペプチド誘導体(以下、ペプチドテールと称する)を含むもののことである。そうした融合ポリペプチドを得る簡単な方法に、ポリヌクレオチド配列のインフレーム融合、つまり混成遺伝子の翻訳がある。宿主細胞の形質転換又はトランスフェクションに使用する発現ベクターに、融合ポリペプチドをコードする混成遺伝子を挿入する。他の方法としては、ペプチドテールをコードするポリヌクレオチドがすでにその内部に存在している発現ベクターに、ポリペプチド又はポリペプチド誘導体をコードするポリヌクレオチド配列を挿入する。そうしたベクター及びその使用にあたっての説明書は、例えば、ペプチドテールがマルトース結合タンパク質であるNew England Biolabs社のpMal−c2又はpMal−p2系、Pharmacia社のグルタチオン−S−トランスフェラーゼ系、又はNovagen社から入手可能なHis−Tag系など、市販により入手可能である。これら及びその他の発現系により、本発明のポリペプチド及び誘導体をさらに精製する便利な手段が提供される。
【0075】
配列番号2〜34のヌクレオチド配列に相同的な配列の部分配列をコードする、30〜600個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドを、概述したパラメーターを使用し、増幅する断片の5’及び3’末端の上流及び下流の配列と一致するプライマーを使用して、PCR増幅により回収する。そうした増幅用のテンプレートとなるポリヌクレオチドは、配列番号2〜34のポリヌクレオチド配列に相同的な完全長ポリヌクレオチド又はDNA若しくはRNAライブラリーなどポリヌクレオチド混合物に含まれるポリヌクレオチドのいずれかである。かかる部分配列を回収する別の方法として、Tm計算式を用いて上記条件下でスクリーニングハイブリダイゼーションを行う。30〜600個のヌクレオチドからなる断片を回収する場合は、減算(ポリヌクレオチドあたり塩基対にして600個の大きさ)により計算したTmを訂正し、ハイブリダイゼーション温度をTmより5〜10℃低い温度として、ストリンジェンシーの条件を定義する。20〜30個未満の塩基からなるオリゴヌクレオチドを得る場合には、Tm計算式は次のとおりである。Tm=4×(G+C)+2×(A+T)。例えば、50%のG+Cの18個のヌクレオチドからなる断片のTmは、約54℃である。配列番号2〜34のポリペプチド配列又はその相同配列の断片である短ペプチドは、化学合成によって直接入手可能である(E. Gross and H. J. Meinhofer, 4 The Peptides: Analysis, Synthesis, Biology; Modern Techniques of Peptide Synthesis, John Wiley & Sons (1981), M. Bodanzki, Principles of Peptide Synthesis, Springer−Verlag (1984))。
【0076】
構成要素(例えば、ラモプラニンORF)を使用して各種生体分子(例えば、ラモプラニン、ラモプラニン類似体、シャント代謝物、又はラモプラニンとは無関連の化合物、すなわち生体触媒)の合成及び/又は修飾を行う場合は、当業者に周知の標準的方法にしたがって望ましい産物及び/又はシャント代謝物を単離する(例えば、Carreras and Khosla (1998) Biochemistry 37:2084−2088, Deutscher (1990) Methods in Ensymology Volume 182: Guide to Protein Purification, M. Deutscher, ed.を参照のこと)。
【0077】
E.プローブ
本出願中で提供されている配列情報により、推定リポデプシペプチド産生微生物の同定及び単離に用いる特異的ヌクレオチドプローブ及びプライマーの設計が可能となる。したがって、本発明のある態様は、配列表に示した配列中で見られる配列又は配列表に示した配列から遺伝子コードの変質によって取り出した配列を有するヌクレオチドプローブ又はプライマーを提供するものである。
【0078】
本出願で使用する「プローブ」という語は、上記定義のとおりストリンジェントな条件下で、配列番号1〜34の核酸分子、配列番号1〜34の配列と相同な配列、又はそれらの相補配列若しくはアンチセンス配列とハイブリダイズするDNA(好ましくは一本鎖)又はRNA分子(若しくは修飾体又はその組み合わせ)を指す。一般的に、プローブは完全長配列と比べてかなり短いものである。そうしたプローブには約5〜100個、好ましくは約10〜80個のヌクレオチドが含まれている。特に、プローブは、配列番号1〜34に開示した配列のある部分に対して、少なくとも75%、好ましくは85%、より好ましくは95%の相同性を有している配列、又はそうした配列に相補的な配列を有している。プローブには、イノシン、メチル−5−デオキシシチジン、デオキシウリジン、ジメチルアミノ−5−デオキシウリジン、又はジアミノ−2,6−プリンなどの修飾された塩基が含まれていてもよい。糖及びリン酸残基は、修飾又は置換が行われていてもよい。例えば、デオキシリボース残基がポリアミドに置換されていてもよく(Nielsen et al., Science (1991) 254:1497)、リン酸残基が2リン酸エステル、アルキルエステル、アリールホスホン酸エステル、及びホスホロチオエートエステルなどのエステル基に置換されていてもよい。さらに、そうした基をアルキル基として含有させることにより、リボヌクレオチド上の2’−ヒドロキシル基を修飾してもよい。
【0079】
本発明のプローブは、捕獲又は検出プローブとして、リポデプシペプチドを産生するとされる微生物の同定及び単離に用いられる。従来よりかかる捕獲プローブは、共有結合手段又は受動吸着によって、固体支持体上で直接的又は間接的に不動化されている。検出プローブは、放射性同位元素、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなどの酵素、発色性、蛍光発光性又は発光性の基質を加水分解できる酵素、発色性、蛍光発光性又は発光性の化合物、ヌクレオチド塩基類似体、及びビオチンから選択される検出マーカーで標識されている。
【0080】
本発明のプローブは、ドットブロット(Maniatis et al., Morecular Cloning: A Laboratory Manual (1982) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York)、サザンブロット(Southern, J. Mol. Biol. (1975) 98:503)、ノーザンブロット(RNAが標的として使用される以外はサザンブロットと全く同一)、サンドウィッチ法(Dunn et al., Cell (1977) 12:23)など従来のハイブリダイゼーション法で使用される。後者の方法では、特異的な捕獲プローブ及び/又は特異的な検出プローブを、少なくとも部分的に異なるヌクレオチド配列とともに用いている。
【0081】
プライマーは通常、約10〜40個のヌクレオチドであり、増幅工程(例えば、PCR)において、伸長工程において、又は逆転写法において、酵素によるDNAの重合を開始させるのに使用する。PCRを伴う診断法で使用されるプライマーの標識は、当業者に周知の方法で行われる。プライマーをプローブとして使用することもできる。
【0082】
ここに記載したように、本発明は、(i)リポデプシペプチドを産生するとされる微生物の検出及び/又は単離用の本発明のプローブを含む試薬、(ii)リポデプシペプチドを産生するとされる微生物の検出及び/又は単離方法であって、DNA又はRNAをかかる微生物から抽出して変性させ、ハイブリダイゼーションが検出されるようにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、例えば、捕獲プローブ、検出プローブ又はその両方などの本発明のプローブに曝露させる方法、(iii)リポデプシペプチドを産生するとされる微生物の検出及び/又は単離方法であって、(a)サンプルを回収する又は微生物から取り出す、(b)それらからDNAを抽出する、(c)抽出したDNAを少なくとも1つ、好ましくは2つの本発明のプライマーで初回刺激し、ポリメラーゼ連鎖反応で増幅させ、(d)増幅したDNA断片を作製することを特徴とする方法を含むものである。
[実施例]
【0083】
実施例:下記の実施例は例示のためのものであり、クレーム記載の本発明を限定するものではない。
実施例1:Actinoplanes sp.ATCC33076における、ラモプラニン生合成遺伝子座の同定。
Actinoplanes sp.ATCC33076が、生物学的に活性を有するリポデプシペプチドの1群であるラモプラニンを自然に産生することは、以前からわかっていた(米国特許第4,303,646号)。この化合物の産生に関与する遺伝子座については、以前はわかっていなかった。ヴァーモント州マナサスのAmerican Tissue Culture Collection(ATCC)よりActinoplanes sp.ATCC33076を入手し、標準的な微生物学的技法にしたがって培養した(Kieser et al. Practical Streptomyces Genetics, John Innes Centre, Norwich Research Part, Colney, Norwich NR4 7UH, England, 2000)。オートミール寒天プレートの周密した菌糸を用いて、文献(上記Kieser et al.)記載のとおりゲノムDNAを抽出し、電界反転法(electrical field inversion technique)で得られたDNAの大きさの範囲を、アガロースゲル上で製造者(FIGE、BioRad)による記載のとおりに査定した。かかるDNAは、大型の断片クラスター同定ライブラリー、すなわち大型挿入物ライブラリーだけではなく、小型の断片ゲノムサンプリングライブラリー、すなわち小型挿入物ライブラリーの調製にも役に立つ。どちらのライブラリーもゲノムDNAからランダムに作製されたDNA断片を含有しているため、それらはActinoplanes sp.の全ゲノムを表しているといえる。
【0084】
小型挿入物ライブラリーを構築するために、超音波処理によってゲノムDNAをランダムに切断した。標準的な分子生物学的技法を用いて、1.5〜3kbの大きさを有するDNA断片をアガロースゲル上で分画し、単離した(Sambrook et al., Molecular Cloning, 2nd Ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)。供給者の記載のとおりにT4DNAポリメラーゼ(Roche社製)を用いて、得られたDNA断片の末端を修復した。この酵素は、その後のクローニングにより適切なベクターへの導入が可能な、平滑末端を有するDNA断片を作製する。修復したDNA断片を、クローン化したDNAの転写を不可能にするpBlurscriptSK+ベクター(Stratagene社製)の誘導体にサブクローンする。T3、T7、SK及びKS(Stratagene社製)などの一般的なシーケンシングプライマーに相当する配列に囲まれた便利なポリリンカー領域を含んでいるため、このベクターが選択された。平滑末端DNA断片の挿入が可能になることから、かかるポリリンカー領域中で見られる独特のEcoRV制限部位を使用した。かかる挿入物の結合、宿主である大腸菌DH10Bの形質転換を目的とした結合産物の使用、組換えクローンの選択、及びActinoplanes sp.のゲノムDNA断片を有するプラスミドの単離は、周知の方法で行われた(上記Sambrook et al.)。アガロースゲル上での電気泳動により、挿入物の大きさが1.5〜3kbであることを確認した。この手順を用いて、小型ランダムゲノムDNA断片のライブラリーを構築した。かかるライブラリーは、研究した微生物の全ゲノムを表すものである。作製可能な個々のクローンの数は無限であるが、かかる微生物のゲノムのサンプルを抽出するためにさらに分析するクローンの数は、ほんの少数である。
【0085】
大型挿入物ライブラリーを構築するため、高頻度切断(frequent cutting)制限酵素のSau3A(G|ATC)で、高分子量のゲノムDNAを部分的に分解した。この酵素は、初期の未分解時の大きさのDNAから、その長さがゲノム中の酵素DNA認識部位の頻度及びDNA分解範囲の広さによって決まる短い断片にいたるまで、DNAのランダムな断片を作製する。平均で40kbまでの長さをもつDNA断片を作製する際の条件を選択した(上記Sambrook et al.)。Sau3Aで制限したDNAを、SuperCos−1コスミドクローニングベクター(Strategene社製)のBamHI部位に結合させ、供給業者の指定どおりにファージ粒子(Gigapack III XL, Stratagene社製)に組み込んだ。大腸菌DH10B株を宿主として用いて、コスミドを有する864個の組換えクローンを選択して増殖させ、大型挿入物ライブラリーを構築した。actinomycetesのゲノムの大きさが平均で8Mbであり、大型挿入物ライブラリーにおけるコスミドあたりのゲノム挿入物の大きさが平均で35kbであることを考えると、864個のクローンからなるライブラリーは、かかる微生物の全ゲノムの3.78倍の範囲をカバーしていることになる。その後、Actinoplanes sp.大型挿入物ライブラリーを製造業者の指定どおりに膜フィルター(Schleicher & Schnell社製)上に移した。
【0086】
クローン化ゲノムDNA挿入物の配列決定によって、小型挿入物ライブラリーを分析した。フォワード(F)プライマーと称する一般的なプライマーのKS又はT7を使用して標識DNAの重合を開始した。TF、BDTv2.0シーケンシングキットを供給業者(Applied Biosystems)の指定どおりに使用すると、通常は、プライミング部位から少なくとも700bpの伸長が可能である。3700ABIキャピラリー電気泳動法DNAシーケンサー(Applied Biosystems社製)を用いて、作製された断片(ゲノム配列タグ、GST)の配列分析を行った。かかるDNA配列の平均長は〜700bpであった。各種タンパク質配列データベースとの配列相同性を比較して、得られたGSTをさらに分析した。得られたGSTのDNA配列をアミノ酸配列に翻訳し、文献(上記Altschul et al.)記載のアルゴリズムを用いて、National Center for Biotechnology Information(NCBI)の非冗長タンパク質データベース及び占有的なエコピア天然産物生合成遺伝子データベースであるDecipherTMと比較した。データベースに存在する機能が明らかな既知のタンパク質との配列類似性により、翻訳されたGSTにコードされる部分タンパク質の機能を予測することが可能となる。
【0087】
合計で882個のActinoplanes sp.GSTを、配列比較によって分析した。配列のアラインメントが少なくともe−5というE値を示すと、その配列は有意な相同性を有していると見なされ、さらに評価を加えるために保存された。かかるE値は、観察されたアラインメントスコアと少なくとも同等のアラインメントスコアをもつチャンスアラインメントの予想数を表すものである。E値が0.00であれば、完全な相同体であることを示す。E値の計算は、Altschul et al. J. Mol. Biol., October 5; 215 (3) 403−10に記載のとおりに行う。かかるE値は、相同だと推測するのが正当とされるほど充分な類似性を、2つの配列が示しているかどうかを確認する際に役に立つ。
【0088】
目的の遺伝子との類似性を示すGSTをこの時点で選択して、目的の遺伝子を含むゲノムDNAのより大型のセグメントの同定に用いることができる。Actinoplanes sp.が産生するラモプラニンは、非リボソームポリペプチド抗生物質ファミリーに属する。非リボソームポリペプチドは、アミノ酸の一連の縮合及び修飾を行う非リボソームペプチド合成酵素(NRPS)により合成される。この酵素クラスのメンバーの多くがタンパク質データベースで見つかっており、これによって、配列の類似性から未知のNRPSを同定することが可能になっている。Actinoplanes sp.GSTの分析により、MCBI非冗長タンパク質データベース内の既知のNRPSタンパク質との類似性を有する3つのGSTの存在が明らかになった(表1)。これらのGSTがNRPS配列を部分的にコードすることが、得られたE値によって確認された。オリゴヌクレオチドプローブを作製するためにかかる3つのNRPSのGSTを選択し、次いで特異的なNRPS遺伝子を大型挿入物ライブラリーに有する遺伝子クラスターの同定に該プローブを使用した。
【0089】
【表1】

【0090】
選択したGSTのヌクレオチド配列からオリゴヌクレオチドプローブを設計し、放射能標識を行い、標準的な分子生物学的技法(上記Sambrook et al., Schleicher & Schnell)を用いて大型挿入物ライブラリーとハイブリダイズさせた。陽性クローンを同定し、コスミドDNAを抽出し(上記Sambrook et al.)、ショットガンシーケンシング法(Fleischmann et al., Science, 269:496−512)を使用して全体のシーケンシングを行った。オリゴヌクレオチドプローブを作製するのに使用した元のGSTを、得られたコスミドのDNA配列内部で同定することにより、これらのコスミドが実際に目的の遺伝子クラスターを有していることを確認した。
【0091】
Phred−Phrapアルゴリズム(米国、シアトル、ワシントン大学)を用いて、作製した配列を組み立てて、コスミド挿入物の全DNA配列を再作製した。元のコスミドの末端に由来するプローブを用いて大型挿入物ライブラリーのハイブリダイゼーションを繰り返すと、元のコスミド配列の両端にある配列情報を無限に拡張することができ、最終的には、目的の遺伝子クラスターを完全な形で得ることができる。この方法をActinoplanes sp.に応用し、上記NRPSのGSTプローブを用いると、6個のコスミドが得られた。得られた遺伝子クラスターが実際にラモプラニンの産生に関与していることが、これらのコスミドの完全な配列及びこれらがコードするタンパク質の分析によって、はっきりと示された。その後、約88.5キロの塩基対からなるラモプラニン生合成クラスター配列を調べたところ、小型挿入物ライブラリーのGSTがさらに3つ存在していることが判明し、ラモプラニン遺伝子座のGSTの数は全部で6となった。
【0092】
実施例2:ラモプラニンの生合成に関与する遺伝子及びタンパク質
BLASTPアルゴリズム(Altschul et al., 1997, Nucleic Acids Res. Vol. 25, pp.3389−3402)を用いて、各タンパク質をタンパク質配列のGenBankデータベース(米国、メリーランド州、バテシバ、National Center for Biotechnology Information, National Library of Medicine)に存在するタンパク質とコンピュータで比較して、32個のラモプラニン生合成タンパク質の生物学的機能を評価した。各タンパク質について、ラモプラニン遺伝子座におけるアミノ酸配列の相同性が有意であると判明したものを表2に示す。
【0093】
【表2】







【0094】
Mycobacterium tuberculosisのゲノムからのミコバクチン生合成遺伝子クラスターの同定によって実証されたように、大半のペプチド合成酵素における繰り返し単位の順序と、それぞれのアミノ酸がかかるペプチド産物に出現する順序との間の相関関係により、既知の構造を有するペプチドとその合成をコードする推定遺伝子とを相関させることができる(Quadri et al., 1998, Chem. Biol. Vol. 5, pp. 631−645)。ここではこの原則を利用して、図2A、2B及び2Cに図示したように、本発明に記載されているラモプラニンペプチド合成酵素の各繰り返し単位に、生合成における役割を割り当ててきた。アミノ酸レベルにおける各ORFの繰り返し単位(モジュール)のドメインのおおよその境界線を、表3にまとめておく。表中、Cは縮合ドメインを、Aはアデニル化ドメインを、Tはチオール化ドメインを、Teはチオエステラーゼドメインを表す。
【0095】
【表3】

【0096】
A.リポデプシペプチドコア構造の形成
ORF9、11、12、13、14、15、17、26及び27(配列番号10、12、13、14、15、16、18、27及び28)にコードされる9個のタンパク質は、ラモプラニンのリポデプシペプチドコア構造の形成に関与しているようである。ORF11、12、13、14及び17(配列番号12、13、14、15及び18)は、ペプチド合成酵素又はペプチド合成酵素ドメインに対して有意な類似性を示している。これらのORFで見られるアデニル化ドメインの分析により、各単位により組み込まれたアミノ酸の同定が可能になる(図3A及び3Bを参照のこと)。以下のアミノ酸の特異性は、これらを比較した結果と一致している。ORF12:アスパラギン(Asn);ORF13、モジュール1:4−ヒドロキシフェニルグリシン(HPG);ORF13、モジュール2:オルニチン(Orn);ORF13、モジュール3:トレオニン(Thr);ORF13、モジュール4:HPG;ORF13、モジュール5:HPG;ORF13、モジュール6はアデニル化ドメインを含まない;ORF13、モジュール7:フェニルアラニン(Phe);ORF14、モジュール1:Orn;ORF14、モジュール2:HPG;ORF14、モジュール3:Thr;ORF14、モジュール4:HPG;ORF14、モジュール5:グリシン(Gly);ORF14、モジュール6:ロイシン(Leu);ORF14、モジュール7:未特定;ORF14、モジュール8:HPG;ORF17、トレオニン(Thr)。かかるペプチド合成酵素繰り返し単位の数及び予想されたアミノ酸基質の特異性は、ラモプラニンペプチドコア構造と正確に一致しており、ここに記載した遺伝子座がラモプラニン生合成に関与している決定的な証拠となっている。
【0097】
アデニル化ドメインのアミノ酸特異性は、突然変異誘発(Stachelhaus et al., 1999, Chem. Biol. Vol. 6, pp. 493−505; Challis et al., Chem. Biol., 2000, Vol. 7, pp. 211−224)又はペプチド合成酵素間でのドメイン交換(Stachelhaus et al., 1995, Science Vol. 269, pp. 482−485; Schneider et al., 1998, Mol. Gen. Genet. Vol. 257, pp. 308−318; de Ferra et al., 1998, J. Biol. Chem. Vol. 272, pp. 25304−25309)によって変化する場合があり、これによって天然ペプチド産物の誘導体が生じる。
【0098】
ラモプラニンペプチド合成酵素中の繰り返し単位の特異性と順序を、ラモプラニン中のアミノ酸置換基の順序と比較することにより、ラモプラニンペプチドコア構造の生合成モデルを構築することができる(図2A及び2Cに図示)。ORF12(配列番号13)が含んでいるのはAsnを特定するアデニル化ドメインのみであり、それゆえに、最初の2つ(Asn)のアミノ酸残基をペプチド鎖に組み込む際の触媒となる場合がある。その後のアミノ酸は、隣接しているORF13及び14(配列番号14及び15)中で各単位が生じる正確な順序にしたがって組み込まれていく。ペプチド合成酵素単位と、アミノ酸がラモプラニンに組み込まれる順序との間に共直線性が失われるのは、ORF13(配列番号14)のモジュール6だけである。このモジュールは、縮合ドメインとチオール化ドメインを含んでいるが、アデニル化ドメインを欠いている。ラモプラニンの構造から、Thrはペプチド鎖のこの位置に組み込まれなくてはならないことがわかる。ORF17(配列番号18)は、Thrに特異的なアデニル化ドメインを有する、例外的なペプチド合成酵素単位をコードするが、従来の縮合ドメインを欠いている。図2Aに示したモデルによると、ORF17(配列番号18)タンパク質はORF13(配列番号14)のモジュール6と相互作用し、このモジュールに欠けているアデニル化ドメインを置換する。このようにして、成長中のラモプラニンペプチド前駆体の適切な位置にThrを組み込む際の触媒となるのである。ペプチド合成酵素単位間のかかるtrans相互作用は、リポデプシペプチド抗生物質シリンゴマイシンの生合成に前例が見られる。シリンゴマイシン系においては、縮合ドメインを欠いているSyrB1タンパク質のアデニル化ドメインが、縮合ドメインは含んでいるがアデニル化ドメインを欠いているSyrE1ペプチド合成酵素単位の活性と相互作用し、かつかかる活性を補っているとされている(Guenzi et al., 1998, J. Biol. Chem. Vol. 273, pp. 32857−32863)。
【0099】
ORF12(配列番号13)にコードされるペプチド合成酵素は、タンパク質のN−末端に縮合ドメインを有しており、出発単位としては例外的といえる。これまで記載されたペプチド合成酵素出発単位の大半は、ペプチド産物に組み込まれる第一アミノ酸(「出発」アミノ酸)の活性化に関与するアデニル化ドメインをN−末端に含んでいる。これに対して、ORF12(配列番号13)にてコードされているラモプラニン出発単位は、タンパク質のN−末端に縮合ドメインを含んでおり、これは、ペプチド合成が例外的な方法で開始される可能性があることを示している。ラモプラニンペプチドのN−末端は、3つの候補脂肪酸基のうちの1つにより修飾されるが、このことは、ラモプラニンペプチドの構築が、アミノ酸よりもむしろ脂肪酸から始まることを示している。脂肪酸を出発基とする鎖開始機構の予想図を、図2Bに示す。このモデルによると、ORF12(配列番号13)のN−末端の縮合ドメインは、モジュール1に結合しているアミノ酸1(Asn)と、ORF11(配列番号12)にコードされるアシル運搬体タンパク質に結合している脂肪酸とがアミド結合の生成によって結合する際に触媒作用を及ぼし、これによって、鎖をさらに伸長させるための「アシル−Nが付いた」アミノ酸中間産物が生じる。
【0100】
ORF11及び26(配列番号12及び27)は、脂肪酸前駆体の活性化及びORF12(配列番号13)ペプチド合成酵素への輸送に関して、協調して作用するとされている。ORF26(配列番号27)は、活性化したアデニル酸中間産物を介して脂肪酸の活性化に触媒作用を及ぼす酵素のアデニル酸形成スーパーファミリーのタンパク質である、アシル−CoAリガーゼに対する類似性を示している。ORF11(配列番号12)は、活性化アデニル酸中間産物を受け取るペプチド合成酵素チオール化ドメイン及びアシル運搬体タンパク質に類似性を示している。図2Bに示したように、これら2つのORFの活性により、ラモプラニンリポペプチドコア構造合成用の開始基として作用する活性化脂肪酸チオエステルが生じる場合がある。他の脂肪酸を有するラモプラニン誘導体を作製するため、ORF26(配列番号27)を単独で、又はORF12(配列番号13)の縮合ドメインとともに、置換したり、突然変異させたりする場合がある。
【0101】
大半のペプチド合成酵素中の最終単位は、産物の放出に関与するとされる、特別なC−末端チオエステラーゼドメインを含んでいる。完全なペプチド産物をペプチド合成酵素から放出するには、一般にペプチド合成酵素のC−末端で見られるチオエステラーゼの機能が必要となる。ORF14(配列番号15)はC−末端のチオエステラーゼドメインを含んでおり、C−末端HPGのカルボン酸基とHAsnのヒドロキシル基との間にエステル結合が形成される際に触媒となることで、ペプチド放出及び環化に関与することがあり、その結果、遊離環状デプシペプチド構造が生じる。ORF15(配列番号16)も、ペプチド放出及び/又は環化に関与することがある。チオエステラーゼは、ペプチド合成酵素と頻繁に会合することがわかっており、ペプチド産物又は中間産物の放出に関与するとされており、かつ、ラモプラニンペプチドの放出及び/又は環化に関与することもあるが、ORF15(配列番号16)は、そうしたチオエステラーゼに対して強い類似性を示す。ORF9(配列番号10)はα/β加水分解酵素折り畳みファミリーのエステラーゼと類似しており、ペプチド放出に関与する場合もある。
【0102】
ORF27(配列番号28)は、ペプチド合成酵素遺伝子と頻繁に会合することがわかっているためペプチド生合成においてある役割を果たしていると思われている遺伝子によってコードされる、いくつかの小型保存タンパク質に対して強い類似性を示している。
【0103】
B.Lアミノ酸の、対応するDアミノ酸へのエピマー化
ラモプラニンペプチド合成酵素の予想外の特徴は、繰り返し単位中にエピマー化ドメインが存在しないことである。エピマー化ドメインは、Lアミノ酸を対応するDアミノ酸に変換する際の触媒となる。ラモプラニンには、Dアミノ酸単位が7つある。Dアミノ酸を組み込む細菌性ペプチド合成酵素の多くは、まず対応するLアミノ酸を認識して組み込み、次いで、エピマー化ドメインの活性を通じてその立体配置をDアミノ酸の形に変えることにより、Dアミノ酸の組み込みを行っている。最終的な天然産物中にDアミノ酸が存在しているにもかかわらず、ラモプラニンペプチド合成酵素にエピマー化ドメインが欠如しているのは、ORF13(配列番号14)のモジュール1、2、3及び5、並びにORF14(配列番号15)のモジュール1、3及び7で見られるアデニル化ドメインが、Dアミノ酸を特異的に認識するためかもしれない。ペプチド合成酵素によるDアミノ酸の直接的な認識及び組み込みが想定されているのは、真核シクロスポリン及びHCトキシンペプチド合成酵素である(Weber et al., 1994, Curr. Genet Vol. 26, pp. 120−125; Scott−Craig et al., 1992, J. Biol. Chem. Vol. 267, pp. 26044−26049)。
【0104】
他に、細胞アミノ酸エピメラーゼ/一次又は二次代謝物のエピメラーゼがエピマー化の触媒となる場合があるが、このことは、グラミシジン及びチロシジン系へのDバリンの組み込みでも提起されている(Pfeifer et al., 1995, Biochem. Vol. 34, pp. 7450−7459; Stein et al., 1995, Biochem. Vol. 34, pp. 4633−4642)。
【0105】
また、その他に、NRPS中の特定のドメインが2つの機能を働かせる能力を進化させたとも考えられる。そのような2の機能をもつ候補として傑出している1つのドメインは、縮合ドメインである。通常は、Dアミノ酸をペプチド産物内に導入する典型的なNRPSモジュール内にあり、チオール化(T)ドメインの後にエピマー化(E)ドメインが続いている。NRPS酵素上で線状ドメインを構成する場合には、縮合(C)ドメインとエピマー化(E)ドメインが同等の位置を占めると考えられる。すなわち、多数のモジュールを有し、Eドメインを欠いているNRPSにおいては、どのモジュールのCドメインもその上流モジュールのチオール化(T)ドメインのすぐ隣に存在する。また、CドメインとEドメインは、配列の相同性がかなり高い。よく保存されたコアモチーフのいくつかは、CドメインとEドメインの間で共有されている。CドメインとEドメインに共通する特に重要な1つのモチーフはヒスチジンモチーフHHXXXDGであり、これは、活性化部位の一部を形成するための突然変異誘発によって示される(Stachelhaus et al.; Journal of Biological Chemistry 1998; 273:22773−22781)。したがって、ORF13(配列番号14)のモジュール2、3、4及び6並びにORF14(配列番号15)のモジュール2、4及び8のCドメインは、アミド結合生成のみならずアミノ酸エピマー化も可能であり、ラモプラニンで見られる7−Dアミノ酸残基に関与しているのかもしれない。
【0106】
C.脂肪酸側鎖の形成
ラモプラニンデプシペプチドコア構造は、1位のAsnのN−末端に付着する3つの異なる中鎖脂肪酸の1つを有する場合があり、その結果、3つの異なるラモプラニン構成要素A1〜A3が生じる。オクタ−2,4−ジエン酸(C8脂肪酸)、並びにその類似体である7−メチルオクタ−2,4−ジエン酸(C9)及び8−メチルオクタ−2,4−ジエン酸(C10)という3つの不飽和脂肪酸前駆体が、何を起源として生合成されるのかについては、ほとんどわかっていない。これらの中鎖脂肪酸は、より長い鎖の脂肪酸からβ酸化的分解反応により生じるのかもしれない。オクタ−2,4−ジエン酸部分を有する構成要素A2の産生は、産生する生物の発酵培地にアミノ酸ロイシンを添加することによって増量可能であることがわかっており、このことは、分岐鎖アミノ酸も、ラモプラニンの脂肪酸側鎖に対する生合成前駆体として役に立つ場合があることを示している(欧州特許第259780号)。ラモプラニン遺伝子座にコードされる3つのタンパク質、すなわちORF16、24及び25(配列番号17、25及び26)は、脂肪酸代謝に関連する酵素に対して類似性を示しており、そのため、ラモプラニンのデプシペプチドコア構造に付着させるための脂肪酸側鎖の作製に関与している場合がある。ORF24及び25(配列番号25及び26)は、お互いに対して、また、脂肪酸の分解及びロイシンの脂肪酸中間産物への分解に関与する酵素である、フラビン依存性アシル−CoAデヒドロゲナーゼに対して、類似性が高い。これらのORFは、分岐鎖アミノ酸及び脂肪酸中間産物をラモプラニン生合成経路へ運ぶチャネルとなる場合がある。さらに、ORF24及び25(配列番号25及び26)のデヒドロゲナーゼ活性は、ラモプラニンの不飽和脂肪酸基で見られる2つの二重結合の形成に関与している場合がある。ORF16(配列番号17)もまた、同じく脂肪酸の分解に関与している一次代謝物のNAD依存性酵素である3−オキソアシル−アシル運搬体タンパク質レダクターゼに対して、強い類似性を示していることから、ラモプラニンの脂肪酸基の形成に関与しているのではないかと思われる。
【0107】
D.アミノ酸4−ヒドロキシフェニルグリシン(HPG)合成
ラモプロニン遺伝子座がコードする5つのタンパク質、すなわち、ORF4、ORF6、ORF7、ORF28及びORF30(配列番号5、7、8、29及び31)は、ラモプラニンのリポデプシペプチドコア構造への組み込みに関して基質として働く例外的なアミノ酸である4−ヒドロキシフェニルグリシン(HPG)の合成に関与していると考えられる。二次代謝物においてHPGが自然発生することは比較的少なく、最も著名な例としては、ノカルジシンA、バンコマイシン、アリジシン、クロロエレモマイシン、テイコプラニン及び関連するグリコペプチド抗生物質である、Streptomyces coelicolorのカルシウム依存性抗生物質(CDA)、及びラモプラニンがある。生化学的研究により、抗生物質であるバンコマイシン、アリジシン、及びノカルジシンのHPG残基は、共通のアミノ酸であるチロシンに由来することがわかっており、チロシンからHPGを合成する経路の存在が提起されている(Nicas et al., Biotechnology of Antibiotics, Marcel Dekker, Inc., 1997, pp. 363−392及び文中の参考文献; Chung et al., 1986, J. Antibiotics Vol. 1986, pp. 642−651; Hosoda et al., 1977, Agric. Biol. Chem. Vol. 41, pp. 1007−1012; Hammond et al., 1982, J. Chem. Soc. (Chem. Comm.), Vol. 1982, pp. 344−346)。しかし、図4に示すように、ラモプラニン生合成遺伝子座がコードするORFを分析したところ、別の経路の存在が実証されている。ORF4、ORF6、ORF7、ORF28及びORF30(配列番号5、7、29、及び31)の活性を組み合わせると、チロシン代謝中間産物を例外的なアミノ酸であるHPGに変換することができる。ORF4、ORF6、ORF7及びORF30(配列番号5、7、8及び31)に対して類似性を示すタンパク質は、同じくHPG置換基を有する2つの天然産物であるCDA及びクロロエレモマイシンをコードする生合成遺伝子座で見られるが、それぞれの天然産物の生合成に関するこれらのタンパク質の役割については提案されていない(GenBankアクセッション番号AL035640、AL035707及びAL035654;van Wageningen et al., 1997, Chem. Biol. Vol. 5, pp. 155−162)。
【0108】
E.耐性及び/又は局在タンパク質
ラモプラニン遺伝子座がコードする8つのタンパク質(ORF1、ORF2、ORF3、ORF8、ORF19、ORF23、ORF29及びORF31)は、ラモプラニン生合成機構の耐性及び/又は細胞内局在に関与する膜関連タンパク質であると思われる。ORF2、8及び23(配列番号3、9及び24)は、標的特異的分泌に関与するATP結合カセットトランスポートタンパク質のスーパーファミリーに対して類似性を示しており、ラモプラニン又は生合成前駆体の、細胞膜を越えてのトランスポートに関与していると考えられる。このことから、抗生物質の毒性作用に対する耐性又はラモプラニン産生量の増加に関する機構の存在が示唆される。ORF31(配列番号32)は、各種ナトリウム/プロトン及び薬剤/プロトン交互輸送機構に対して類似性を示し、また、細胞膜を越えてラモプラニンをトランスポートする手段を提供する場合がある。ORF1、3、19及び29(配列番号2、4及び20)は、未知の機能を有する各種膜貫通タンパク質に対して類似性を示しており、脂質及び脂肪酸前駆体への進入路を提供するためにラモプラニン生合成機構を細胞膜に局在させることに関与している場合がある。
【0109】
F.ラモプラニン生合成制御に関与するタンパク質
ラモプラニン遺伝子座がコードする3つのタンパク質、すなわちORF5、ORF21、ORF22は、ラモプラニン生合成の制御に関与すると思われる。ORF5(配列番号6)は、抗生物質の生合成における多数の転写制御因子に対して類似性を示している。このタンパク質は、ラモプラニン遺伝子座の1つ以上の遺伝子の転写を制御しているようである。ORF21及びORF22(配列番号22及び23)は、Streptomyces coelicolorの抗生物質合成の全面的制御に関与しているAbsA1/A2系などの2成分シグナル伝達系に対して、相同性を示している。これらのORFは協調して作用し、環境シグナル又は細胞シグナルに応答したラモプラニン生合成遺伝子の発現やラモプラニンの生産を制御しているのかもしれない。
【0110】
G.末端HPG残基の塩素化
ORF20(配列番号21)は、ピロルニトリン生合成の芳香族前駆体の塩素化に関与するPseudomonas fluorescensのPrnCハロゲナーゼをはじめとする、二次代謝物の塩素化に関与するハロゲナーゼ、及びクロロエレモマイシン中のチロシン残基の塩素化に関与するとされるハロゲナーゼに対して、類似性を示す。このタンパク質は、ラモプラニンペプチドコアに組み込まれた末端HPG残基の塩素化の触媒となると考えられ、それにより3−クロロ−HPGという形態が生じる。
【0111】
H.β−ヒドロキシアスパラギン残基の形成
米国特許出願番号第60/283,296号に開示されているように、ORF10(配列番号11)は、金属補助因子ヒドロキシラーゼ酵素の新しいファミリーの一員である。β−ヒドロキシアスパラギンの作製に必要なβ−ヒドロキシル化反応にはシトクロムP450酵素が関わっていると予想されていたため、これは驚くべき発見であった。
【0112】
アミノ酸残基をβ−ヒドロキシル化する新しい機構がラモプラニンの生合成で作動しているという可能性は、BLASTP分析の結果、ラモプラニン生合成遺伝子座にコードされるORFで、既知のシトクロムP450モノオキシゲナーゼに対して有意なアミノ酸配列の相同性を示すものが皆無であったという事実によって最初に示唆された。当初は、ORF10、ORF18及びORF32(配列番号11、19及び33)に対してラモプラニン生合成における推定的な役割を割り当てることができず、それらはアスパラギンβ−ヒドロキシラーゼの候補と考えられていた。ORF10(配列番号11)は、Streptomyces verticillusのブレオマイシン生合成遺伝子座における未知の機能を有するタンパク質及びStreptomyces venezuelaeの推定クロラムフェニコール生合成遺伝子座で見られる未知の機能を有する部分タンパク質に対して相同性を示している。ブレオマイシンとクロラムフェニコールもβ−ヒドロキシル化アミノ酸残基を含んでいることに注目すべきである。ORF18(配列番号19)が、GenBankデータベース中のタンパク質に対して全く類似性を示していないのに対し、ORF32(配列番号33)は、Streptomyces coelicolor中の未知の機能を有する仮想細菌性タンパク質に類似性を示している。ヒドロキシル化反応の触媒となる酵素は、金属補助酵素を利用する場合が多いため、ORF10、18及び32(配列番号11、19及び33)をさらに分析して金属補助酵素の結合に関連するアミノ酸モチーフの有無を調べた。
【0113】
図5は、ORF11(配列番号12)と各種金属リガンドモチーフとの配列相同性を示すクラスタルアラインメントを図示している。各クラスタルアラインメントにおいて、(i)アラインメントの上の線は、保存性の高い位置を示すのに使用されている、(ii)アスタリスク「*」は、単一の完全に保存された残基を有する位置を示している、(iii)コロン「:」は、STA、NEQK、NHQK、NDEQ、QHRK、MILV、MILF、HY及びFYWという強い基のうちの1つが完全に保存されていることを示している、(iv)ピリオド「.」は、CSA,ATV、SAG、STNK、STPA、SGND、SNDEQK、NDEQHK、NEQHRK、FVLIM及びHFYという弱い基のうちの1つが完全に保存されていることを示している。
【0114】
ORF10(配列番号11)は、金属補助因子を使用する酵素でよく見られる2つのアミノ酸配列モチーフを含んでいる。ORF10(配列番号11)のN−末端領域は、いくつかの亜鉛結合性β−ラクタマーゼで見られる保存されたヒスチジンモチーフに対して有意な局所的配列相同性を示すヒスチジン残基のクラスター(Hisモチーフ)を含んでいる。図5Aは、ORF10(配列番号11)と、β−ラクタマーゼスーパーファミリーにおける2つの亜鉛分子の協調に関与している重要なモチーフとの間の局所的アミノ酸配列相同性を示している。かかるアラインメントは、ORF10(配列番号11)のアミノ酸263〜318、β−ラクタマーゼスーパーファミリーのメンバーのアミノ酸42〜99、結晶構造を確認したStenotrophomonas maltophilia由来のL1メタロ−β−ラクタマーゼ(1SML)(Ullah et al., 1998)、及びpfam00753のコンセンサス配列のアミノ酸12〜67、すなわちβ−ラクタマーゼスーパーファミリーモチーフについて示している(Bateman et al., 2000)。黒で強調したのは、亜鉛と協調することがL1メタロ−β−ラクタマーゼで示された残基及び他の2つの配列におけるその対応物である。X線による結晶構造分析で、この保存されたモチーフ中のヒスチジン残基が、亜鉛金属補助因子の結合に関与していることが示された(Ullah et al., 1998)。ORF10(配列番号11)のHisモチーフにおけるアミノ酸残基の正確なアラインメント及び保存された間隔を亜鉛結合β−ラクタマーゼと比較したところ、ORF10(配列番号11)は金属補助因子を結合すると思われる。
【0115】
図5Bは、ORF10(配列番号11)と、シトクロムP450モノオキシゲナーゼにおいて鉄分子の協調に関与している重要なモチーフとの間の局所的アミノ酸配列相同性を示している。かかるアラインメントは、ORF10(配列番号11)のアミノ酸405〜452、及び及びpfam00067のコンセンサス配列のアミノ酸370〜421、すなわちシトクロムP450モチーフについて示している(Bateman et al., 2000)。強調してあるORF10(配列番号11)の領域は、鉄の結合に必要なPrositeモチーフPS00086(Hofmann et al., 1999)と比較的よく一致している:[FW]−[SGNH]−x−[GD]−x−[RHPT]−x−C−[LIVMFAP]−[GAD]、式中、xはどのアミノ酸でもよく、括弧内のアミノ酸は、所定の位置における可変性を示す。特に、このモチーフにおいて最も可変性の少ない位置は、ORF10(配列番号11)、すなわち、Phe残基423、Gly残基425、Cys残基428、及びGly残基430にある。ORF10(配列番号11)のC−末端領域には、シトクロムP450モノオキシゲナーゼでよく見られるモチーフ(Cysモチーフ)に対して有意な局所的配列相同性を示しているアミノ酸残基のクラスターが含まれている。このモチーフは、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ中によく保存され、かつ、触媒作用に必要な鉄金属補助因子の結合に関与していることがX線結晶構造分析によってわかっているシステイン残基を含んでいる。ORF10(配列番号11)のCysモチーフは、金属補助因子の結合に寄与していると思われる。周知の特徴を有する金属結合酵素で見られる2つのアミノ酸配列モチーフの存在は、ORF10(配列番号11)が金属結合酵素である可能性を示唆している。したがって、ORF10(配列番号11)は、ラモプラニン合成過程におけるβ−ヒドロキシアスパラギンの形成に関与していると考えられる。
【0116】
実施例3:発現分析
A−アシル出発単位鎖開始
ラモプラニンNRPS系の鎖開始に対するアシル出発単位鎖の関与について調べるため、ORF11、ORF12、及びORF26(配列番号12〜14)を個別にPCRで増殖した。その際には、10個の連続的ヒスチジンタグをN−末端に導入したのに加えて便利な制限酵素部位を各ORFの両端に導入したオリゴヌクレオチドプライマー対を使用した。これらの組換えN−末端HIS10標識ORFを、大腸菌発現ベクターにサブクローンし、結果として得られたプラスミドを大腸菌に導入し、その後、組換えORFが高レベルで発現するような条件下で増殖させた。細胞をペレット状にして分離させ、組換えORF11、ORF12、及びORF26(配列番号12、13及び27)タンパク質をニッケルアフィニティークロマトグラフィーで精製した。ORF11及びORF26(配列番号12及び27)タンパク質は、可溶性タンパク質調製物として即座に得られるが、サイズが大きいためか、ORF26(配列番号27)の可溶性は低い。
【0117】
配列の相同性に基づいて、ORF11(配列番号12)はアシル又はアミノアシル運搬体タンパク質であると予測されている。MALDI−MSでの測定で、補助酵素Aの4’−ホスホパンテテイン部分の添加分に相当する質量の増加が認められたことからわかるように、Bacillus subtilis由来の精製Sfp及び補助酵素Aを利用して、精製組換えORF11(配列番号12)タンパク質を初回刺激してインビトロでホロ型とすることができる。組換えORF11には不活性のアポ型から活性ホロ型へと変換するこのような翻訳後修飾が生じやすいという事実は、これが実際にアシル又はアミノアシル運搬体タンパク質であることを確認するものである。
【0118】
可溶性組換えORF26と可溶性ホロ型ORF11(上記)とを併用できれば、短鎖脂肪酸をホロ型ORF11に移す際のORF26の役割を確認する手段が得られる。基質として14C放射能標識長鎖脂肪酸パルミチン酸(palmetic acid)を使用する実験では、結論が出なかった。こうした知見は、16個の炭素原子を有するパルミチン酸などの長鎖飽和脂肪酸よりも、ラモプラニンで見られる8〜10個の炭素原子を有する3つの不飽和脂肪酸などの短鎖脂肪酸に対して、ORF26が特異的であるという仮説と一致している。ラモプラニンペプチドのアミノ末端に自然に結合しているのが認められる脂肪アシル基を合成して、基質特異性をさらに調べている。
【0119】
B−β−ヒドロキシアスパラギン
β−ヒドロキシラーゼとしてのORF10(配列番号11)の特徴及びβ位置でのアスパラギンのヒドロキシル化におけるORF10(配列番号11)の役割を確認するため、ORF11、12、及び26(配列番号12、13及び27)用に組換えN−末端His10標識ORF10大腸菌発現系を上記のとおり設計した。ニッケルアフィニティークロマトグラフィーにより、可溶性の精製組換えORF10(配列番号11)タンパク質を得た。精製組換えタンパク質がヘム含有酵素に特徴的な吸収スペクトルを示さないという事実は、ORF10(配列番号11)がP450酵素ではないことを示している。したがって、上述したORF10(配列番号11)金属結合モチーフは、非ヘム鉄又は鉄以外の金属と協調している。
【0120】
未変性ORF10(配列番号11)の別の供給源として、Streptomyces発現系を使用した。2つの特異的なオリゴヌクレオチド、すなわち、プライマー配列(5’〜3’)N−オリゴ:CACACAGAATTCACCAGCGCCACTCGCGCTT、及びC−オリゴ:CACACATCGATGGGCAACGCCGATCAGCCGを使用して、ORF10(配列番号11)を高性能PCRで増幅した。このプライマー対は、ORF10遺伝子の両端に便利な制限酵素部位を導入するが、外来性のアミノ酸は導入しない。その後、ClaI及びEcoRI制限酵素を用いて、かかる増幅した遺伝子を、Streptomyces/大腸菌発現シャトルベクターであるpECO1202にサブクローンした。クローニングを行った配列を確認したところ、Streptomyces lividansTK24がこのコンストラクトで形質転換されていた。個別の形質転換体を5つ選択し、さらに分析した。5mlのTryptic Soy Broth(TSB、Difco社製)を入れた容量25mlの三角フラスコを用いて、旋回する30℃のインキュベーター中で、培養物を48時間増殖させた。RNeasy kit(Qiagen社製)を使用して、細胞ペレットから全RNAを抽出した。RNAの完全性及び濃度をアガロースゲル電気泳動でモニターした。その後、ベクター中でストップコドンのすぐ下流に位置するアンチセンスプライマー配列で初回刺激を行った全RNA1ugを用いて、逆転写を行った。続いて、各サンプル及び適切なコントロールの逆転写のため、本来のORF特異的オリゴヌクレオチド、N−オリゴ及びC−オリゴを使用して、20サイクルのPCRを行った。RT−PCR分析によると、5つの組換えS. lividansクローンは比較的高いレベルのORF10特異的mRNAを発現しており、RT−PCR産物の大きさは予想どおりであった。図6は、ラモプラニンORF10を発現している組換えS. lividansクローンのRT−PCR分析であり、図中、レーン1は1kbのDNAラダー;レーン2は形質転換を行っていないS. lividans;レーン3は空の発現ベクターで形質転換を行ったS. lividans;レーン4〜8は、ラモプラニンORFを発現している5つの異なるS. lividans組換えクローン;レーン9は関連性のない遺伝子を発現しているS. lividans組換えクローン;レーン10は、RNAを用いずに処理を行ったネガティブコントロール;レーン11は、RTを用いずに処理を行ったネガティブコントロール;レーン12はプラスミドDNAを用いたPCRのポジティブコントロールである。
【0121】
これらの組換え株が実際に予想されるORF10を生成しているのかを確認するため、タンパク質溶解液をSDS−PAGEで分析した。すなわち、上記培養物の細胞ペレットを冷却抽出緩衝液(0.1MのTris−HCl、pH7.6、10mMのMgCl、1mMのPMSF)に再懸濁し、氷上で20秒間の超音波処理を1分間隔で4回行った。20,000×gで10分間の遠心分離を行って、可溶性タンパク質を回収し、ブラッドフォード試薬(Biorad社製)で全タンパク質濃度を測定した。等量の全可溶性タンパク質を10%SDS−PAGE分析にかけた。タンパク質をクーマシーブリリアントブルーで染色して視覚化した。
【0122】
図7に示したように、検査した4つの組換え株は、見たところ、移動度が約60キロダルトンのタンパク質を大量に含んでおり、これは、ORF10タンパク質の予想分子量である58916.80キロダルトンとも一致する。図7は、ラモプラニンORF10(配列番号11)を発現している組換えS. lividansクローンのSDS−PAGE分析である。タンパク質溶解液の可溶性画分を10%SDS−PAGE分析にかけ、クーマシーブルーで染色した。レーン1は分子量標準物で、大きさは左側にキロダルトンで示してある;レーン2は形質転換を行っていないS. lividans;レーン3は空の発現ベクターで形質転換を行ったS. lividans;レーン4〜7は、ラモプラニンORF(配列番号11)を発現している4つの異なるS. lividans組換えクローンである。レーン4〜7では、右側に矢頭で記したとおり、約60kDaのORF10遺伝子産物がはっきりと認められる。
【0123】
ここに記載した実施形態は例示のみを目的とするものであること、及び、これらの実施形態を踏まえた各種修正や変更は、当業者であれば思いつくことであって、本出願の範囲及び後述のクレームの範囲に含まれるべきであることを理解すべきである。あらゆる刊行物、特許、特許出願、並びにGenBank及びここで触れたその他のデータベースより引用した配列は、あらゆる目的に使用できるように完全な形でここに参照として組み込んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
本発明の多様な実施形態を、添付の図面を参照して説明する。
【図1】図1はラモプラニン生合成遺伝子座の図式であり、kbを単位とするスケール、32個のORFの相対的位置及び配置、及び寄託したコスミドがカバーする範囲を示している。
【図2A】図2Aは、ラモプラニン生合成モデルである。ラモプラニンペプチド合成酵素の連続モジュールの共同活性を通じて、ラモプラニン鎖が段階的に組み立てられている。各モジュールのドメインは、図のように、円形及び楕円形の印で示されている。Rは、ラモプラニンペプチドに組み込まれた最初のアミノ酸(Asn)のN−末端を覆う脂肪アシル基を示す(図2B参照)。ORF12がAsnを認識し、ラモプラニンペプチドにあるAsn残基を両方とも組み込むとされていることに注意すべきである。2つ目のAsn残基のヒドロキシル基化は、かかるアミノ酸の認識及び活性化の前後に生じるのかもしれない。太い点線の矢印は、ORF17タンパク質がORF13産物のモジュール6と相互作用し、適切な位置へThrを組み込む際の触媒となることを示している。細い点線は、β−ヒドロキシアスパラギン残基の側鎖ヒドロキシル基が、ラモプラニン産物とORF14のモジュール8とを連結するチオエステル結合に求核攻撃を受け、その結果、かかるペプチド産物が環状化し、放出されることを示している。略語:HAsn、β−ヒドロキシアスパラギン。その他の略語は文中に示したとおりである。
【図2B】図2Bは、脂肪酸開始基(starter group)を用いたラモプラニンペプチド合成の開始モデルである。ORF11及びORF12は、開始単位として協調して作用を及ぼすとされており、脂肪酸基を用いて、ペプチド鎖組み立て部分を初回刺激する。印は図2Aと同様である。
【図2C】図2Cは、ラモプラニンの構造を図示するものである。アミノ酸置換基の位置、及びアシルアミド部分が8炭素脂肪酸(R)に由来している実施形態が示されている。別の脂肪アシル鎖もこの位置に組み込まれている場合がある。
【図3A】図3Aは、ラモプラニン生合成酵素のアデニル化ドメインのクラスタル分析(clustal analysis)である。グラミシジンS合成酵素GrsAのアデニル化ドメインに相対的な、ラモプラニン遺伝子座で見られるあらゆるアデニル化ドメインのアミノ酸配列(1文字コード)のアラインメントを示している。マルチモジュール非リボソーム型ペプチド合成酵素であるORF13及びORF14のアデニル化ドメインは、それぞれ、対応するモジュールのM1−M7及びM1−M8に基づいて標識されている。ORF13がモジュール6中にアデニル化ドメインを含んでいないことに注目すべきである。アデニル化ドメインのよく保存されたコアモチーフA1−A10(Konz et al., 1999, Chem. Biol. Vol. 6, pp. R39−48)を、ボックスで囲って強調している。各アデニル化ドメインの基質特異性を予想するうえで重要な残基を黒で強調している(図3Bを参照のこと)。
【図3B】図3Bは、アデニル化ドメインの特異性を予想したものである。各アデニル化ドメインのアミノ酸特異性を指図すると予想される重要な残基を抽出するのに、Challis et al.のモデル(Chem. Biol. 2000, Vol. 7, pp. 211−224)を使用した(図3A中で黒で強調されている)。GrsAアミノ酸235、236、239、278、299、301、322及び330と並んでいる、対応する8つの残基は、既知の特異性をもつアデニル化ドメインということでグループ分けされている(データ提供:Jacques Ravel氏)。アクセッション番号、タンパク質名、モジュール番号及び既知のアミノ酸特異性については、後で述べる。略語:Cda、Streptomyces coelicolorのCDAペプチド合成酵素;Cep、Amycolatopsis orientalisのクロロエレモマイシンペプチド合成酵素;Acm、Streptomyces chrysomallusのアクチノマイシン合成酵素;Fen、Bacillus subtilisのフェンギシン(fengycin)ペプチド合成酵素;Bac、Bacillus licheniformisのバシトラシンペプチド合成酵素;Fxb、Mycobacterium smegmatisのエキソケリン(exochelin)ペプチド合成酵素;Tyc、Brevibacillus brevisのチロシジンペプチド合成酵素;GrsA、Bacillus brevisのグラミシジンペプチド合成酵素;DhbF、Bacillus subtilisのシデロフォー2,3−ジヒドロキシベンゾエート合成酵素;Nos、Nostoc sp.のノストペプトライドペプチド合成酵素;Css、Tolypocladium inflatumのシクロスポリンペプチド合成酵素;HPG、4−ヒドロキシフェニルグリシン;5hOrn、5−ヒドロキシオルニチン;Pch、Pseudomonas aeruginosaのピオケリン。
【図3C】図3CはORF26とアシル−CoAリガーゼとの類似性を示している。ORF26と、Mb、Mycobacterium bovis;Mt、Mycobacterium tuberculosis;Sv、Streptomyces verticillus;Mx、Myxococcus xanthus;Bs、Bacillus subtilisなどさまざまな種のアシル補助酵素Aリガーゼとのクラスタル分析を示す。ボックスで囲って強調した部分は、Du et al., 2000に記載された、アシル−CoAリガーゼの保存性の高いコアモチーフAL1〜AL8である。
【図4】図4は、例外的なアミノ酸4−ヒドロキシフェニルグリシン(HPG)の生合成経路を推定した図である。コスミン酸(1)、プレフェン酸(2)及び4−ヒドロキシフェニルピルビン酸(3)は、アミノ酸チロシン(4)の生合成の中間産物である。ORF28は、一次代謝のコスミン酸ムターゼとの類似性を示しており、それゆえ、(1)を(2)へと変換する際の触媒となる場合がある。ORF4は、一次代謝のプレフェン酸デヒドロゲナーゼとアミノ酸類似性を示し、それゆえ、(2)を(3)へと変換する際の触媒となる場合がある。ORF30は、(3)をチロシン代謝の重要な中間産物であるホモゲンチシン酸(5)へと変換する4−ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼに対してアミノ酸類似性を示している。したがって、ORF30は、似たような酸化的脱炭酸反応の触媒となり、4−ヒドロキシマンデル酸(6)を作製する場合がある。ORF7は、グリコール酸をグリオキサル酸へと変換する際の触媒となるグリコール酸オキシダーゼに対してアミノ酸類似性を示している。したがってORF7は、(6)に見られるグリコール酸構造を対応するグリオキサル酸構造へと変換して4−ヒドロキシフェニルグリオキサル酸(7)を作製する場合がある。ORF6は、多くのアミノトランスフェラーゼに対してアミノ酸類似性を示しており、(7)をHPG(8)へと変換する際の触媒となる場合がある。放射能標識をしたアミノ酸の生化学的研究により、抗生物質バンコマイシンのHPG残基がチロシン由来であることが確認され、構造6、7及び8はHPG生合成の候補中間産物とされた(Nicas et al., Biotechnology of Antibiotics, Marcel Dekker, Inc., 1997. pp. 363−392, 及びその中に記載された参考文献)。
【図5】図5は、2つのクラスタル配置を示している。図5Aは、ORF10(配列番号11)と、β−ラクタマーゼスーパーファミリーの2つの亜鉛分子との協調に関与するpfam00753で見られるある重要なモチーフとの局所的なアミノ酸配列の相同性を示している(pfamファミリーデータベースに関する情報は、Bate et al., Nucleic Acids Research, 2000, Vol. 28, No1を参照のこと)。1SMLは、亜鉛分子と強調した残基との間の密接な相互作用を示す結晶構造を利用できる、このスーパーファミリーの一員である(Ullah et al., J. Mol Biol., 1998 Nov 20; 284 (1): 125−36)。図5Bは、ORF10(配列番号11)と、シトクロムP450モノオキシゲナーゼの鉄分子との協調に関与するpfam00067に存在するある重要なモチーフとの間の局所的なアミノ酸配列の相同性を示している。
【図6】図6は、ラモプラニンORF10(配列番号11)を発現している組換えS. lividansクローンのRT−PCR分析を示す。
【図7】図7は、ラモプラニンORF10(配列番号11)を発現している組換えS. lividansクローンのSDS−PAGE分析を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ラモプラニンORF1〜33(配列番号2〜34)のいずれかをコードする核酸、(b)ラモプラニンORF1〜33(配列番号2〜34)のいずれかにコードされるポリペプチドをコードする核酸、(c)ラモプラニンORF1〜33(配列番号2〜34)のいずれかを増幅するプライマー対を用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅される核酸からなる群より選択される核酸配列を含む単離した核酸。
【請求項2】
(a)ラモプラニンORF4、5、9〜19、22〜26、29、30及び31(配列番号5、6、10〜20、23〜27、30、31及び32)のいずれかをコードする核酸、(b)ラモプラニンORF4、5、9〜19、22〜26、29、30及び31(配列番号5、6、10〜20、23〜27、30、31及び32)のいずれかにコードされるポリペプチドをコードする核酸、(c)ラモプラニンORF4、5、9〜19、22〜26、29、30及び31(配列番号5、6、10〜20、23〜27、30、31及び32)のポリペプチドに対して、少なくとも75%のアミノ酸配列相同性を有するポリペプチドをコードする核酸からなる群より選択される核酸配列を含む単離した核酸。
【請求項3】
核酸が、ORF4〜32(配列番号2〜33)からなる群より選択される少なくとも2つのORFをコードすることを特徴とする請求項1又は2記載の単離した核酸。
【請求項4】
核酸が、ORF1〜32(配列番号2〜33)からなる群より選択される少なくとも3つのORFをコードすることを特徴とする請求項1、2又は3記載の単離した核酸。
【請求項5】
ラモプラニン生合成遺伝子クラスターのORF1〜32(配列番号2〜33)のいずれかとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、かつ、ラモプラニンの合成を誘導するための特異的なハイブリダイゼーションの対象であるORFを置換できる核酸を含む単離した核酸。
【請求項6】
ラモプラニン生合成遺伝子クラスターのORF4、5、9〜19、22〜26、29、30及び31(配列番号5、6、10〜20、23〜27、30、31及び32)のいずれかとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、かつ、ラモプラニンの合成を誘導するための特異的なハイブリダイゼーションの対象であるORFを置換できる核酸を含む単離した核酸。
【請求項7】
単離した核酸が、ORF1、ORF2、ORF3、ORF4、ORF5、ORF6、ORF7、ORF8、ORF9、ORF10、ORF11、ORF12、ORF13、ORF14及びORF15(配列番号2〜16)からなる群より選択されるポリペプチドをコードする核酸とストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズすることを特徴とする請求項5又は6記載の単離した核酸。
【請求項8】
核酸が、ORF16、ORF17、ORF18、ORF19、ORF20、ORF21、ORF22、ORF23、ORF24、ORF25、ORF26、ORF27、ORF28、ORF29、ORF30及びORF31(配列番号17〜32)からなる群より選択されるポリペプチドをコードする核酸とストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズすることを特徴とする請求項5又は6記載の単離した核酸。
【請求項9】
単離した核酸が、ORF1、ORF2、ORF3、ORF4、ORF5、ORF6、ORF7、ORF8、ORF9、ORF10、ORF11、ORF12、ORF13、ORF14及びORF15(配列番号2〜16)からなる群より選択されるポリペプチドをコードすることを特徴とする請求項5、6又は7記載の単離した核酸。
【請求項10】
単離した核酸が、ORF16、ORF17、ORF18、ORF19、ORF20、ORF21、ORF22、ORF23、ORF24、ORF25、ORF26、ORF27、ORF28、ORF29、ORF30及びORF31(配列番号17〜32)からなる群より選択されるポリペプチドをコードすることを特徴とする請求項5、6又は8記載の単離した核酸。
【請求項11】
ラモプラニン又はラモプラニン類似体の合成を誘導するのに充分なポリペプチドをコードするORFを含む単離した遺伝子クラスター。
【請求項12】
遺伝子クラスターが細菌中に存在することを特徴とする請求項12記載の単離した遺伝子クラスター。
【請求項13】
遺伝子クラスターが、アクセッション番号IDAC190901−1、190901−2及び190901−3の大腸菌DH10B株中に存在することを特徴とする請求項11又は12記載の単離した遺伝子クラスター。
【請求項14】
(a)ORF1〜32(配列番号2〜33)のいずれかのポリペプチド、及び(b)ORF1〜32(配列番号2〜33)のいずれかのポリペプチドに対して、少なくとも75%のアミノ酸配列相同性を有するポリペプチドから選択されるポリペプチド配列を含む単離したポリペプチド。
【請求項15】
ポリペプチド配列が、(a)ORF4、5、9〜19、22〜26、29、30及び31(配列番号5、6、10〜20、23〜27、30、31及び32)のいずれかのポリペプチド、及び(b)ORF4、5、9〜19、22〜26、29、30及び31(配列番号5、6、10〜20、23〜27、30、31及び32)のいずれかに対して、少なくとも75%のアミノ酸配列相同性を有するポリペプチドから選択されることを特徴とする請求項14記載の単離したポリペプチド。
【請求項16】
ポリペプチドが、ORF1〜32(配列番号2〜33)より選択される少なくとも2つのORFを含むことを特徴とする請求項14又は15記載のポリペプチド。
【請求項17】
ポリペプチドが、ORF1〜32(配列番号2〜33)より選択される少なくとも3つのORFを含むことを特徴とする請求項14、15又は16記載のポリペプチド。
【請求項18】
ポリペプチドが、ORF1〜32(配列番号2〜33)より選択される少なくとも5つ以上のORFを含むことを特徴とする請求項14〜17のいずれか記載のポリペプチド。
【請求項19】
請求項1記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項20】
請求項19記載の発現ベクターで形質転換を行った宿主細胞。
【請求項21】
細胞が、ラモプラニン又はラモプラニン類似体の組み立てを誘導するのに充分なポリペプチドをコードする遺伝子クラスターを含む外来性核酸で形質転換を行った細胞であることを特徴とする請求項20記載の宿主細胞。
【請求項22】
ラモプラニン生合成用遺伝子クラスターにコードされるポリペプチドの基質である生体分子の化学修飾方法であって、生体分子を請求項14〜17のいずれか記載のポリペプチドと接触させ、それにより該ポリペプチドが該生体分子を化学修飾することを特徴とする方法。
【請求項23】
方法が、生体分子を、ラモプラニンORF1〜31(配列番号2〜32)にコードされる少なくとも2つの異なるポリペプチドと接触させることを特徴とする請求項22記載の方法。
【請求項24】
方法が、生体分子を、ORF4、5、9〜19、22〜26、29、30及び31(配列番号5、6、10〜20、23〜27、30、31及び32)にコードされる少なくとも2つの異なるポリペプチドと接触させることを特徴とする請求項22又は23記載の方法。

【図1】
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【図2A−1】
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【図2A−2】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A−1】
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【図3A−2】
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【図3A−3】
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【図3A−4】
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【図3B】
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【図3C−1】
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【図3C−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−180882(P2006−180882A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−16985(P2006−16985)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【分割の表示】特願2002−534522(P2002−534522)の分割
【原出願日】平成13年10月15日(2001.10.15)
【出願人】(503139005)エコピア バイオサイエンス インク (1)
【Fターム(参考)】