説明

ランダムポリオキサジアゾールコポリマーの2工程調製方法及びそれから得られる物品

発煙硫酸と、硫酸ヒドラジンと、テレフタル酸と、イソフタル酸との混合物の反応によるランダムポリオキサジアゾールコポリマーの調製において、改善には2つ以上の工程での発煙硫酸の添加を要する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオキサジアゾールコポリマーの調製および得られる物品に関する。
【0002】
英国特許第1303409号明細書は、パラ−配向カルボン酸をヒドラジン塩とクロロスルホン酸中で50℃を超える温度で反応させることによるポリ−1,3,4−オキサジアゾールの調製について開示する。
【0003】
独国特許出願公開(DE)第3620022A1号明細書は、ポリフェニレン−1,3,4−オキサジアゾールポリマーの調製について開示し、これは、薄く着色しているかまたは無色であり、低含量のヒドラジン官能基を有している。
【0004】
独国特許発明(DD)第296277A5号明細書は、カルボン酸とヒドラジンまたはヒドラジン塩、カルボン酸とカルボン酸ヒドラジド、ジアシルヒドラジド、ジカルボン酸および/またはカルボン酸誘導体とヒドラジンおよび/またはヒドラジン塩とを硫酸中および縮合剤中で反応させることによる1,3,4−オキサジアゾールの調製について開示する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリオキサジアゾールコポリマーを調製する代替方法およびそれから得られる物品が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、発煙硫酸と、硫酸ヒドラジンと、テレフタル酸と、少なくも1種のさらなるパラ−配向芳香族二酸との混合物を、少なくとも2つの別々の工程で添加される発煙硫酸と反応させることによるランダムコポリオキサジアゾールポリマーの調製方法に関する。
【0007】
第1の反応工程において、硫酸ヒドラジンとテレフタル酸とさらなる酸と一緒に存在する発煙硫酸の量は、最終ランダムポリオキサジアゾールコポリマーを形成するのに十分でない。その後の工程においてのみ、反応進行を完了するための最終量の発煙硫酸が添加される。
【0008】
多段階の発煙硫酸添加で形成されるランダムポリオキサジアゾールコポリマーは、好ましくは、得られる物品への安定した押出しを与える粘度範囲のように高いポリマー濃度で低い溶液粘度を有する。粘度範囲の例は、8〜15重量パーセントのコポリマー濃度で750〜2000ポアズである。得られるコポリマーは、紡糸溶液中の固体のより高い濃度のために改善された紡糸特性を有すると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
初期の第1の工程において、ポリオキサジアゾールコポリマーの形成における残りの成分の硫酸ヒドラジン、テレフタル酸、および少なくも1種のさらなるパラ−配向芳香族二酸を基準として計算して、不十分な量の発煙硫酸、すなわち、三酸化硫黄(SO3)が反応混合物中に存在する。発煙硫酸由来の三酸化硫黄(SO3)の量は、ヒドラジンのモル数を基準として3モル当量以下の量で第1の反応工程に存在する。一般に、三酸化硫黄(SO3)の量は、ヒドラジンのモル数を基準として2モル当量から3モル当量の範囲で存在する。比較において、反応を完了するための三酸化硫黄の量は一般に、ヒドラジンのモルを基準として三酸化硫黄(SO3)5〜6モル当量の範囲にある。
【0010】
好適なさらなるパラ−配向芳香族二酸としては、限定されないが、4,4’−オキシビス(安息香酸)、4,4’−アゾベンゼンジカルボン酸、4,4’−スチルベンゼンジカルボン酸、1,4’−フェニレンジアクリル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、および4,4’−ビフェニルジカルボン酸が挙げられる。
【0011】
残りの成分の硫酸ヒドラジン、テレフタル酸、およびさらなるパラ−配向芳香族二酸が、反応溶液を形成するために混合される温度は、変化させることができ、それはさらに、最終コポリマーのランダム度を決定する。
【0012】
通常、ヒドラジンとして表される硫酸ヒドラジンは、テレフタル酸およびさらなるパラ−配向芳香族二酸のモルの総数に比べて95〜100モルパーセントの量で存在する。環境的理由のために、過剰のヒドラジンは望ましくなく、それはヒドラジンの反応性および環境毒性のためである。他の研究者らは、過剰のヒドラジンを用いて、高いインヘレント粘度を達成しており、例として、Acta Polymer、43、343〜347頁(1992年)図1がある。
【0013】
通常、テレフタル酸およびさらなるパラ−配向芳香族二酸の量は、この2つの酸のモルの総数を基準として、それぞれ、65〜90モルパーセントおよび35〜10モルパーセントの量で存在する。
【0014】
硫酸ヒドラジン、テレフタル酸、およびさらなるパラ−配向芳香族二酸の成分は通常、固体形態で合わされ、完全に混合されて、その後ヒドラジンのモルを基準として三酸化硫黄(SO3)の3モル当量以下の量で第1回の発煙硫酸の添加がなされる。
【0015】
全ての反応剤が溶解するまで発煙硫酸の温度を制御することが好ましい。温度は、好ましくは、50℃以下、より好ましくは35℃以下に維持されるべきである。添加および溶解の一例は、約10〜20分の経過にわたって約25℃である。この温度を維持することによって、改善された特性をもたらす最終ポリマー鎖において繰返し単位のよりランダムな分布が達成されると考えられる。
【0016】
全ての成分の溶解に続けて、溶液は通常、100〜150℃の範囲で加熱される。好ましくは、溶液は、110〜130℃の範囲で加熱される。溶液粘度が横ばいになるまで溶液は都合よく攪拌される。通常、粘度の最大は、加熱の約30〜75分後に生じる。この溶液に、ヒドラジンのモル数を基準として約2当量のSO3を含むさらなる発煙硫酸を添加する。この反応を完了させるために3当量のSO3が反応することが必要である。通常、反応にわたって、SO3の気相平衡のために約5当量が用いられる。通常、溶液は、第2の粘度横ばい域に到達するまで100〜150℃の範囲、好ましくは110〜140℃の範囲で攪拌および加熱される。通常、第2の粘度の最大は、加熱の80〜150分後に生じる。次いで、溶液を室温に冷却し、ポリマーを、過剰の水の添加などによって沈殿させる。このコポリマーを収集し、乾燥する。
【0017】
上記方法は、2つの工程で説明したが、1つまたは複数のさらなる工程を用いることは本発明の範囲内であることが理解される。具体的には、第2の工程においてコポリマー形成を完了させるための発煙硫酸の単回の添加ではなく、コポリマー形成を完了させるために数回の発煙硫酸添加を用いてもよい。
【0018】
本発明をさらに説明するために、以下の実施例が提供される。全てのパーセントは、特記されない限り重量基準である。実施例において、インヘレント粘度は、100mlの濃硫酸中0.5gのポリマーの溶液に関して25℃で測定して、相対粘度の自然対数対ポリマーの質量濃度の比として表される。相対粘度は、定温での溶液の流出時間を溶媒の流出時間で除したものとして表される溶液中のポリマー粘度対溶媒粘度の比である。
【実施例】
【0019】
ポリオキサジアゾールコポリマーを、固体硫酸ヒドラジンのヒドラジン86.885グラム(0.6677モル)、固体テレフタル酸105.12グラム(0.6327モル)、および固体アゾベンゼン−4,4’−ジカルボン酸9.000グラム(0.0333モル)を混合機中で30分間一緒に混合およびブレンドすることによって調製した。この固体のブレンド混合物に、30%発煙硫酸の第1の添加物[発煙硫酸534g(SO32.001モル)]を25℃で添加した。
【0020】
混合物を25℃で15分間機械的に攪拌し、固体を溶解し、溶液を形成した。次いで、混合機で定トルク(定粘度)が観察されるまで(60分間)溶液を、機械的攪拌をしながら120℃に加熱した。
【0021】
この溶液に、30%発煙硫酸[発煙硫酸611グラム(SO32.290モル)]の第2の添加物を130℃で添加した。溶液の粘度が横ばい域に達するまで、温度を130℃で2時間維持した。次いで、溶液を室温に冷却した。
【0022】
冷却した溶液から少量の試料を取り、0℃の水に添加してポリマーを沈殿させた。中性pHに達するまで、ポリマーを水で洗浄した。ポリマーを真空下で乾燥し、インヘレント粘度2.12が測定された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発煙硫酸、硫酸ヒドラジン、テレフタル酸、およびイソフタル酸を含む混合物からランダムコポリオキサジアゾールを調製する方法において、
(a)発煙硫酸、硫酸ヒドラジン、テレフタル酸、および少なくとも1種のさらなるパラ−配向芳香族二酸を混合する工程であって、発煙硫酸由来の三酸化硫黄が、ヒドラジンのモル数を基準として3モル当量以下の量で存在する工程と、
(b)発煙硫酸をさらに添加する工程と
を含む、2つ以上の工程での発煙硫酸添加を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
工程(a)において、発煙硫酸由来の三酸化硫黄の量が、ヒドラジンのモル数を基準として3モル当量以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記量が、2から3モル当量の範囲にある、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
三酸化硫黄の総量が、ヒドラジンのモルを基準として5〜6モル当量の範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ヒドラジンとして表される硫酸ヒドラジンが、テレフタル酸および少なくとも1種のさらなるパラ−配向芳香族二酸のモルの総数に比較して、95〜100モルパーセントの量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
テレフタル酸および少なくとも1種のパラ−配向芳香族二酸が、それぞれ、65〜90モルパーセントおよび35〜10モルパーセントの量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
溶解中に50℃以下の発煙硫酸温度を有する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
溶解後に100〜150℃の範囲の溶液温度を有する請求項7に記載の方法。
【請求項9】
発煙硫酸を3つ以上の工程で添加する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
さらなるパラ−配向芳香族二酸が、4,4’−オキシビス(安息香酸)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
さらなるパラ−配向芳香族二酸が、4,4’−アゾベンゼンジカルボン酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
さらなるパラ−配向芳香族二酸が、4,4’−スチルベンジカルボン酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
さらなるパラ−配向芳香族二酸が、1,4’−フェニレンジアクリル酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
さらなるパラ−配向芳香族二酸が、2,6−ナフタレンジカルボン酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
さらなるパラ−配向芳香族二酸が、4,4’−ビフェニルジカルボン酸を含む、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2009−535481(P2009−535481A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509609(P2009−509609)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/010028
【国際公開番号】WO2007/133408
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】