ランダムRNAiライブラリ、その生成方法、及びそれを使用したスクリーニング方法
【課題】リボ核酸(RNA)分子のセット若しくはライブラリを発現する組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを提供する。
【解決手段】本発明に係る、リボ核酸(RNA)分子のセット若しくはライブラリを発現する組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリの前記各RNA分子は、(a)(i)実質的にランダム配列であるか、或いは(ii)実質的にランダム配列の第1のサブ領域と前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリに共通する第2のサブ領域とから成るかのいずれかの第1の領域、(b)非自己相補的な第2の領域、及び(c)前記第1の領域に実質的に相補的な第3の領域を有し、前記非自己相補的な第2の領域は、前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリに共通する。
【解決手段】本発明に係る、リボ核酸(RNA)分子のセット若しくはライブラリを発現する組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリの前記各RNA分子は、(a)(i)実質的にランダム配列であるか、或いは(ii)実質的にランダム配列の第1のサブ領域と前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリに共通する第2のサブ領域とから成るかのいずれかの第1の領域、(b)非自己相補的な第2の領域、及び(c)前記第1の領域に実質的に相補的な第3の領域を有し、前記非自己相補的な第2の領域は、前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリに共通する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランダム配列の二本鎖領域を有するリボ核酸(RNA)分子の発現ベクター、そのセット及びライブラリ、その生成方法、並びに、生物学的パラメータに影響を及ぼす能力を有するRNA薬剤若しくはRNA分子を同定するための、目的とする疾患又は障害を標的にする薬剤を同定するための、及び目的とする生物学的パラメータに影響を及ぼす改変された能力を有するRNA分子変異体を同定するための各方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
当該技術分野では、長年に渡り、ランダム配列の阻害性ヘアピンRNAライブラリが求められていた。そのようなライブラリは、生物活性を有する治療用RNA分子及び生物活性を有するRNA分子の同定において重要な役割を果たすが、RNAライブラリのランダム化及び生成のための従来の方法には限界があるため、合成するのは非常に困難であった。このような限界のため、ランダムds(二本鎖)RNA配列を含有するライブラリは完全にパリンドロームであり、そのためにRNAi用途に使用するのには適さない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、ランダム配列の二本鎖領域を有するリボ核酸(RNA)分子の発現ベクター、そのセット若しくはライブラリ、その生成方法、並びに、生物学的パラメータに影響を及ぼす能力を有するRNA薬剤若しくはRNA分子を同定するための、目的とする疾患又は障害を標的にする薬剤を同定するための、及び目的とする生物学的パラメータに影響を及ぼす改変された能力を有するRNA分子変異体を同定するための各方法を提供する。
【0004】
ある実施形態では、本発明は、リボ核酸(RNA)分子のセット若しくはライブラリを発現する組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを提供する。前記RNA分子のセット若しくはライブラリの個々のRNA分子は、(a)実質的にランダム配列の第1の領域、(b)非自己相補的な第2の領域、及び(c)前記第1の領域に実質的に相補的な第3の領域を有する。他の実施形態では、前記個々のRNA分子は、部分的に二本鎖の二次構造を持っている。他の実施形態では、前記非自己相補的な第2の領域は、前記ランダム配列の二本鎖領域における二本鎖の間に位置している。他の実施形態では、前記二本鎖領域(本明細書中では「ds領域」とも称する)は、前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリによって異なる。他の実施形態では、前記非自己相補的な領域は、前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリに共通する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0005】
他の実施形態では、本発明は、リボ核酸(RNA)分子のセット若しくはライブラリを発現する組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを作成する方法を提供する。
当該方法は、
a.一本鎖核酸中間体Iから核酸中間体IIを得るステップであって、
前記一本鎖核酸中間体Iが、(i)第1の定常領域、(ii)ランダム配列領域、及び(iii)第2の定常領域を有し、
前記核酸中間体IIが、(i)前記一本鎖核酸中間体I、(ii)介在領域、及び(iii)前記一本鎖核酸中間体Iとハイブリダイズする領域を有する該ステップと、
b.前記核酸中間体IIから、前記核酸中間体II及び前記核酸中間体IIとハイブリダイズする核酸分子を含む二本鎖中間体IIIを得るステップであって、
前記二本鎖中間体IIIが、
(i)前記第1の定常領域又はその断片の第1の二本鎖コピー、
(ii)前記ランダム配列領域の第1の二本鎖コピー、
(iii)前記第2の定常領域の第1の二本鎖コピー、
(iv)前記介在領域の二本鎖コピー、
(v)前記第2の定常領域の第2の逆位二本鎖コピー、
(vi)前記ランダム配列領域の第2の逆位二本鎖コピー、及び
(vii)前記第1の定常領域又はその断片の第2の逆位二本鎖コピーを有し、
前記第2の定常領域の前記第1の二本鎖コピーと前記第2の定常領域の前記第2の逆位二本鎖コピーとが、
(i)前記第2の定常領域の前記第1の二本鎖コピーは第1の制限酵素の基質となるが、前記第2の定常領域の前記第2の逆位二本鎖コピーは前記第1の制限酵素の基質とならないような、或いは
(ii)前記第2の定常領域の前記第2の逆位二本鎖コピーは第2の制限酵素の基質となるが、前記第2の定常領域の前記第1の二本鎖コピーは前記第2の制限酵素の基質とならないような、制限酵素部位の非対称性を有する該ステップとを含み、
それによって、リボ核酸(RNA)分子のセット若しくはライブラリを発現する組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを作成する。他の実施形態では、前記一本鎖核酸中間体Iの前記3つの構成要素は、記載した順に、一本鎖核酸中間体Iの5´末端から3´末端へ配列される。他の実施形態では、前記核酸中間体IIの前記3つの構成要素は、記載した順に、核酸中間体IIの5´末端から3´末端へ配列される。他の実施形態では、前記二本鎖中間体IIIの前記7つの構成要素は、記載した順に、二本鎖中間体IIIの5´末端から3´末端へ配列される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0006】
他の実施形態では、本発明は、RNA分子のセット若しくはライブラリを発現することができる組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを作成する方法を提供する。当該方法は、
(a)ヌクレオチド中間体Iを合成するステップであって、
前記ヌクレオチド中間体Iが、
(i)(1)実質的にランダム配列であるか、或いは(2)実質的にランダム配列の第1のサブ領域と前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリに共通する第2のサブ領域とから成るかのいずれかの、長さが6〜30ヌクレオチドの可変領域、
(ii)長さが3〜20ヌクレオチドの非パリンドロームの定常領域、及び
(iii)前記可変領域とハイブリダイズすることができる相補領域を有する該ステップと、
(b)前記ヌクレオチド中間体Iとハイブリダイズすることができる第2のヌクレオチド分子を合成するステップと、
(c)前記ヌクレオチド中間体Iを前記第2のヌクレオチド分子にアニールすることによって、前記可変領域、前記非パリンドロームの定常領域及び前記相補領域の各二本鎖コピーを有する二本鎖産物を生成するステップとを含み、
それによって、リボ核酸(RNA)分子のセット若しくはライブラリを発現することができる組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを作成する。
【0007】
他の実施形態では、本発明は、二本鎖の二次構造を持つランダム配列領域を有するRNA分子を生成する組換え型ウイルスのセット若しくはライブラリであって、本発明に係る方法によって作成された組換え型ウイルスのセット若しくはライブラリを提供する。
【0008】
他の実施形態では、本発明は、ランダム配列の二本鎖領域を有するリボ核酸(RNA)分子の発現ベクターであって、本発明に係る方法によって同定された発現ベクターを提供する。
【0009】
他の実施形態では、本発明は、ウイルス感染に対する耐性を細胞に付与する方法であって、前記細胞に、本発明に係る発現ベクター又はRNA分子を接触させるステップを含む方法を提供する。
【0010】
他の実施形態では、本発明は、ウイルスの対象内での複製能力を抑制又は阻害する方法であって、前記対象に、本発明に係る発現ベクター又はRNA分子を接触させるステップを含む方法を提供する。
【0011】
他の実施形態では、本発明は、細胞の目的とする細胞型への分化を誘導する方法であって、前記細胞に、本発明に係る発現ベクター又はRNA分子を接触させるステップを含む方法を提供する。
【0012】
他の実施形態では、本発明は、細胞の長期増殖を誘導する又は細胞の多分化能を維持する方法であって、前記細胞に、本発明に係る発現ベクター又はRNA分子を接触させるステップを含む方法を提供する。
【0013】
他の実施形態では、本発明は、本発明に係る方法によって生成された発現ベクターのセット若しくはライブラリであって、ランダム配列の二本鎖領域を有するRNA分子を生成する発現ベクターのセット若しくはライブラリを提供する。
【0014】
他の実施形態では、本発明は、ランダム配列の二本鎖領域を有するRNA分子の発現ベクターであって、本発明に係る方法によって同定された発現ベクターを提供する。
【0015】
他の実施形態では、本発明は、本発明に係る発現ベクターによってエンコードされたRNA分子を提供する。
【0016】
他の実施形態では、本発明は、ランダム配列の二本鎖領域を有するRNA分子であって、本発明に係る方法によって同定されたRNA分子を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、ランダム配列の二本鎖領域を有するリボ核酸(RNA)分子の発現ベクター、そのセット若しくはライブラリ、その生成方法、並びに、生物学的パラメータに影響を及ぼす能力を有するRNA薬剤若しくはRNA分子を同定するための、目的とする疾患又は障害を標的にする薬剤を同定するための、及び目的とする生物学的パラメータに影響を及ぼす改変された能力を有するRNA分子変異体を同定するための各方法を提供する。
【0018】
ある実施形態では、本明細書中の実施例5に例示するように、本発明は、リボ核酸(RNA)分子のセット若しくはライブラリを発現する組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを提供する。前記RNA分子のセット若しくはライブラリの個々のRNA分子はそれぞれ、(a)第1の可変領域、(b)非自己相補的な第2の領域、及び(c)前記第1の領域に実質的に相補的な第3の領域を有する。他の実施形態では、前記非自己相補的な第2の領域は、前記二本鎖可変領域における二本鎖の間に位置している。他の実施形態では、前記二本鎖領域は、前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリによって異なる。他の実施形態では、前記非自己相補的な領域は、前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリに共通する。他の実施形態では、前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリの個々の組換え型発現ベクターはそれぞれ、1種類のRNA分子を発現する。他の実施形態では、前記RNA分子のセット若しくはライブラリの各RNA分子は、上記に列挙した前記3つの領域を有する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0019】
他の実施形態では、前記組換え型RNA分子内のランダム配列又は可変領域は、ヌクレオチド混合物をオリゴヌクレオチド合成装置に添加することによって生成される(実施例3〜5)。他の実施形態では、前記配列は、コンピューターを使用して生成される(実施例19)。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0020】
他の実施形態では、前記RNA分子の可変領域は、その全長に渡って実質的にランダムな配列を示す。他の実施形態では、前記可変領域は、実質的にランダム配列の第1のサブ領域と、前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリに共通する第2のサブ領域とを有する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0021】
他の実施形態では、実質的にランダム配列の前記サブ領域の長さは、27ヌクレオチド(nt)である。他の実施形態では、前記長さは、19ntである。他の実施形態では、前記長さは、6ntである。他の実施形態では、前記長さは、7ntである。他の実施形態では、前記長さは、8ntである。他の実施形態では、前記長さは、9ntである。他の実施形態では、前記長さは、10ntである。他の実施形態では、前記長さは、11ntである。他の実施形態では、前記長さは、12ntである。他の実施形態では、前記長さは、13ntである。他の実施形態では、前記長さは、14ntである。他の実施形態では、前記長さは、15ntである。他の実施形態では、前記長さは、16ntである。他の実施形態では、前記長さは、17ntである。他の実施形態では、前記長さは、18ntである。他の実施形態では、前記長さは、20ntである。他の実施形態では、前記長さは、21ntである。他の実施形態では、前記長さは、22ntである。他の実施形態では、前記長さは、23ntである。他の実施形態では、前記長さは、24ntである。他の実施形態では、前記長さは、25ntである。他の実施形態では、前記長さは、26ntである。他の実施形態では、前記長さは、28ntである。他の実施形態では、前記長さは、29ntである。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0022】
他の実施形態では、前記サブ領域の長さは、6〜29ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、7〜29ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、8〜29ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、9〜29ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、10〜29ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、11〜29ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、12〜29ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、13〜29ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、14〜29ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、15〜29ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、7〜25ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、8〜25ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、9〜25ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、10〜25ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、11〜25ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、12〜25ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、13〜25ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、14〜25ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、15〜25ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、7〜21ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、8〜21ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、9〜21ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、10〜21ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、11〜21ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、12〜21ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、13〜21ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、14〜21ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、15〜21ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、7〜19ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、8〜19ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、9〜19ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、10〜19ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、11〜19ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、12〜19ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、13〜19ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、14〜19ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、15〜19ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、7〜17ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、8〜17ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、9〜17ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、10〜17ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、11〜17ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、12〜17ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、13〜17ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、14〜17ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、7〜15ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、8〜15ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、9〜15ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、10〜15ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、11〜15ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、7〜13ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、8〜13ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、9〜13ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、10〜13ヌクレオチドである。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0023】
「実質的にランダム」なる語は、他の実施形態では、例えばオリゴヌクレオチド合成装置における混合ntのプールの使用などのランダムプロセスによって作成された配列を指す。他の実施形態では、この語は、検出可能な配列バイアスの欠失を指す。他の実施形態では、この語は、最小配列バイアスを含む。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0024】
「非自己相補的」なる語は、他の実施形態では、パリンドロームでない配列を指す。他の実施形態では、この語は、部分的に自己相補的である配列を包含し、非自己相補的な領域も含む。他の実施形態では、この語は、部分的に自己相補的である配列を包含し、(非自己相補的な)ループ形成領域も含む。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0025】
「実質的に相補的」なる語は、他の実施形態では、本発明に係る方法において用いられる条件下で別の配列とハイブリダイズする配列を指す。他の実施形態では、この語は、オーバーハング以外は別の配列と相補的である配列を含む。他の実施形態では、前記配列は、1〜2のミスマッチを除いて他の配列と相補的である。他の実施形態では、前記配列は、1つのミスマッチを除いて相補的である。他の実施形態では、前記配列は、2つのミスマッチを除いて相補的である。他の実施形態では、前記配列は、3つのミスマッチを除いて相補的である。他の実施形態では、前記配列は、4つ以上のミスマッチを除いて相補的である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0026】
他の実施形態では、前記組換え型発現ベクターは、RNAポリメラーゼのプロモータをさらに含む。他の実施形態では、前記各組換え型発現ベクターは、各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0027】
他の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物の前記組換え型発現ベクターは、RNA分子のセット若しくはライブラリを発現させることができる。他の実施形態では、前記組換え型発現ベクターは、細胞集団に接触させた又は導入した場合に、前記RNA分子のセット若しくはライブラリを発現させることができる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0028】
他の実施形態では、前記組換え型発現ベクターは、既知の機能の阻害性RNA(inhibitory RNA:RNAi)分子をエンコードする遺伝子をさらに含む。他の実施形態では、前記組換え型発現ベクターのそれぞれが、既知の機能のRNAi分子をエンコードする遺伝子をさらに含む。他の実施形態では、前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリの大部分が、既知の機能のRNAi分子をエンコードする遺伝子をさらに含む。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0029】
他の実施形態では、前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリによって生成された前記RNA分子は、前記ランダム配列の二本鎖領域の二本鎖を連結するループ形成領域を有する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0030】
「パリンドローム(palindromic)」は、ある実施形態では、その逆相補鎖と同一の配列を有する一本鎖核酸分子を指す。AAGGCCTT配列は、パリンドロームの一例である。
【0031】
他の実施形態では、本明細書中の実施例5に例示するように、本発明は、リボ核酸(RNA)分子のセット若しくはライブラリを発現する組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを作成する方法を提供する。
当該方法は、
a.一本鎖核酸中間体Iから核酸中間体IIを得るステップであって、
前記一本鎖核酸中間体Iが、(i)第1の定常領域、(ii)可変領域、及び(iii)第2の定常領域を有し、
前記核酸中間体IIが、(i)前記一本鎖核酸中間体I、(ii)介在領域、及び(iii)前記一本鎖核酸中間体Iとハイブリダイズする領域を有する該ステップと、
b.前記核酸中間体IIから、前記核酸中間体II及び前記核酸中間体IIとハイブリダイズする核酸分子を含む二本鎖中間体IIIを得るステップであって、
前記二本鎖中間体IIIが、
(i)前記第1の定常領域又はその断片の第1の二本鎖コピー、
(ii)前記可変領域の第1の二本鎖コピー、
(iii)前記第2の定常領域の第1の二本鎖コピー、
(iv)前記介在領域の二本鎖コピー、
(v)前記第2の定常領域の第2の逆位二本鎖コピー、
(vi)前記可変領域の第2の逆位二本鎖コピー、及び
(vii)前記第1の定常領域又はその断片の第2の逆位二本鎖コピーを含有し、
【0032】
前記第2の定常領域の前記第1の二本鎖コピーと前記第2の定常領域の前記第2の逆位二本鎖コピーとが、
(i)前記第2の定常領域の前記第1のコピーは第1の制限酵素の基質となるが、前記第2の定常領域の前記第2の逆位コピーは前記第1の制限酵素の基質とならないような、或いは
(ii)前記第2の定常領域の前記第2の逆位コピーは第2の制限酵素の基質となるが、前記第2の定常領域の前記第1のコピーは前記第2の制限酵素の基質とならないような、制限酵素部位の非対称性を有する該ステップとを含み、
それによって、リボ核酸(RNA)分子のセット若しくはライブラリを発現する組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを作成する。他の実施形態では、前記一本鎖核酸中間体Iの前記3つの構成要素は、記載した順に、一本鎖核酸中間体Iの5´末端から3´末端へ配列される。他の実施形態では、前記核酸中間体IIの前記3つの構成要素は、記載した順に、核酸中間体IIの5´末端から3´末端へ配列される。他の実施形態では、前記二本鎖中間体IIIの前記7つの構成要素は、記載した順に、二本鎖中間体IIIの5´末端から3´末端へ配列される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0033】
他の実施形態では、本明細書中の実施例5に例示するように、本発明は、RNA分子のセット若しくはライブラリを発現することができる組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを作成する方法を提供する。
当該方法は、
(a)ヌクレオチド中間体Iを合成するステップであって、
前記ヌクレオチド中間体Iが、
(i)(1)実質的にランダム配列であるか、或いは(2)実質的にランダム配列の第1のサブ領域と前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリに共通する第2のサブ領域とから成るかのいずれかの、長さが6〜30ヌクレオチドの可変領域、
(ii)長さが3〜20ヌクレオチドの非パリンドロームの定常領域、及び
(iii)前記可変領域とハイブリダイズすることができる相補領域を有する該ステップと、
(b)前記ヌクレオチド中間体Iとハイブリダイズすることができる第2のヌクレオチド分子を合成するステップと、
(c)前記ヌクレオチド中間体Iを前記第2のヌクレオチド分子にアニールすることによって、前記可変領域、前記非パリンドロームの定常領域及び前記相補領域の各二本鎖コピーを含む二本鎖産物を生成するステップとを含み、
それによって、リボ核酸(RNA)分子のセット若しくはライブラリを発現することができる組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを作成する。他の実施形態では、前記ヌクレオチド中間体I及び前記ヌクレオチド分子の配列は、コンピューターを使用して生成される。他の実施形態では、前記配列は、当該技術分野で周知の他の任意の方法を用いて生成される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0034】
他の実施形態では、前記二本鎖産物の各末端は、制限酵素認識部位及び付着末端から、互いに独立して選択される機構(feature)をさらに含む。他の実施形態では、前記機構は、前記可変領域、前記非パリンドロームの定常領域、及び前記相補領域の前記各二本鎖コピーに隣接している。他の実施形態では、末端は、終端から約10ヌクレオチド以内の位置を指す。他の実施形態では、末端は、終端の位置を指す。他の実施形態では、末端は、前記可変領域、前記非パリンドロームの定常領域、及び前記相補領域の前記各二本鎖コピーに隣接する任意の位置を含む。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0035】
他の実施形態では、本発明に係るRNA分子の可変領域は、その全長に渡って実質的にランダムな配列を示す。他の実施形態では、前記可変領域は、実質的にランダム配列の第1のサブ領域と、前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリに共通する第2のサブ領域とを有する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0036】
本発明に係る方法及び組成物の核酸中間体IIは、他の実施形態では、一本鎖である。他の実施形態では、前記核酸中間体IIは、部分的に二本鎖の構造を有する。他の実施形態では、前記核酸中間体IIは、ヘアピン構造を有する。他の実施形態では、本発明に係る方法は、その後のステップを容易にするために、核酸中間体IIの部分的な二本鎖構造を開くステップを含む。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0037】
実施例5で説明する方法における第1及び第2の制限酵素の一例は、それぞれPmeI及びAarIである。様々な制限酵素がこの方法に適することは、当業者であれば理解できるであろう。
【0038】
他の実施形態では、本発明は、RNA分子のセット若しくはライブラリを発現する組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを作成する方法を提供する。
当該方法は、
(a)一本鎖核酸中間体Iから核酸中間体IIを得るステップであって、
前記一本鎖核酸中間体Iが、(i)第1の定常領域、(ii)ランダム配列領域、及び(iii)第2の定常領域を有し、
前記核酸中間体IIが、(i)前記一本鎖核酸中間体I、(ii)介在領域、及び(iii)前記一本鎖核酸中間体Iとハイブリダイズする領域を有する該ステップと、
(b)前記核酸中間体IIから、前記核酸中間体II及び前記核酸中間体IIとハイブリダイズする核酸分子を含む二本鎖中間体IIIを得るステップであって、
前記二本鎖中間体IIIが、
(i)前記第1の定常領域又はその断片の第1の二本鎖コピー、
(ii)前記ランダム配列領域の第1の二本鎖コピー、
(iii)前記第2の定常領域の第1の二本鎖コピー、
(iv)前記介在領域の二本鎖コピー、
(v)前記第2の定常領域の第2の逆位二本鎖コピー、
(vi)前記ランダム配列領域の第2の逆位二本鎖コピー、及び
(vii)前記第1の定常領域又はその断片の第2の逆位二本鎖コピーを有し、
【0039】
前記第2の定常領域の前記第1の二本鎖コピーと前記第2の定常領域の前記第2の逆位二本鎖コピーとが、
(i)前記第2の定常領域の前記第1の二本鎖コピーは第1の制限酵素の基質となるが、前記第2の定常領域の前記第2の逆位二本鎖コピーは前記第1の制限酵素の基質とならないような、或いは
(ii)前記第2の定常領域の前記第2の逆位二本鎖コピーは第2の制限酵素の基質となるが、前記第2の定常領域の前記第1の二本鎖コピーは前記第2の制限酵素の基質とならないような、制限酵素部位の非対称性を有する該ステップと、
(c)組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを遺伝子操作して、二本鎖中間体III又はその断片を含有させるステップとを含み、
それによって、RNA分子のセット若しくはライブラリを発現する組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを作成する。他の実施形態では、前記一本鎖核酸中間体Iの前記3つの構成要素は、記載した順に、一本鎖核酸中間体Iの5´末端から3´末端へ配列される。他の実施形態では、前記核酸中間体IIの前記3つの構成要素は、記載した順に、核酸中間体IIの5´末端から3´末端へ配列される。他の実施形態では、前記二本鎖中間体IIIの前記7つの構成要素は、記載した順に、二本鎖中間体IIIの5´末端から3´末端へ配列される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0040】
他の実施形態では、前記RNA分子のセット若しくはライブラリの各RNA分子は、ランダム配列の二本鎖領域を有する。
【0041】
他の実施形態では、上記の方法の1つは、図6〜8に示したようにして実施される。他の実施形態では、図6〜8に示したステップの全てが、本発明に係る方法では実施されるとは限らない。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0042】
「一本鎖」なる語は、他の実施形態では、全てのヌクレオチド塩基が共有結合によって互いに結合されている核酸分子を指す。この語は、他の実施形態では、部分的な二本鎖特性を有する核酸分子を含む。他の実施形態では、この語は、その大部分が二本鎖である核酸分子を含む。他の実施形態では、この語は、二本鎖領域を含む核酸分子を含む。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0043】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、「第1のコピー」、「第2のコピー」なる語は、領域やヌクレオチド分子などの同一のコピーを指す。他の実施形態では、「コピー」なる語は、ほぼ正確なコピーを指す。他の実施形態では、配列の第2のコピーは、配列の第1のコピーに対するミスマッチを含む。他の実施形態では、第2のコピーは、第1のコピーに対する2つのミスマッチを含む。他の実施形態では、第2のコピーは、第1のコピーに対する2つ以上のミスマッチを含む。他の実施形態では、第2のコピーは、第1のコピーに対する3つ以上のミスマッチを含む。他の実施形態では、第1及び第2のコピーは、互いに少なくとも60%相同である。他の実施形態では、両コピーは、互いに少なくとも70%相同である。他の実施形態では、両コピーは、互いに少なくとも80%相同である。他の実施形態では、両コピーは、互いに少なくとも90%相同である。他の実施形態では、両コピーは、互いに100%相同である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0044】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、第2の定常領域の第2の逆位二本鎖コピーは、第2の定常領域の第1のコピーの正確なコピーである。他の実施形態では、第2の逆位二本鎖コピーは、第1のコピーのほぼ正確なコピーである。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0045】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、ランダム配列領域の第2の逆位二本鎖コピーは、ランダム配列領域の第1のコピーの正確なコピーである。他の実施形態では、第2の逆位二本鎖コピーは、第1のコピーのほぼ正確なコピーである。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0046】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、第1の定常領域の第2の逆位二本鎖コピー又はその断片は、第1の定常領域の第1のコピー又はその断片の正確なコピーである。他の実施形態では、第2の逆位二本鎖コピーは、第1のコピーのほぼ正確なコピーである。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0047】
他の実施形態では、本明細書中の実施例5に例示するように、核酸中間体IIを得る前記ステップは、
a.前記一本鎖核酸中間体Iから、前記一本鎖核酸中間体I及び前記一本鎖核酸中間体Iとハイブリダイズするさらなる一本鎖核酸分子を有する二本鎖中間体IBを得るステップと、
b.前記二本鎖中間体IBから前記核酸中間体IIを得るステップとを含む。
【0048】
他の実施形態では、前記核酸中間体IIは、二本鎖中間体IBを使用せずに得られる(例えば、ヘアピン状の第2の定常領域を使用して得られる)。
【0049】
他の実施形態では、前記核酸中間体IIは、当該技術分野で周知の技術を用いて、一本鎖核酸中間体Iから得られる。前記を核酸中間体II得るための各方法は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0050】
他の実施形態では、前記二本鎖中間体IBを得る前記ステップは、
(a)前記一本鎖核酸中間体Iの前記第2の定常領域にプライマーをアニールするステップと、
(b)前記プライマーを伸長させるステップとを含む。他の実施形態では、前記プライマーは、前記第2の定常領域に対する1つ以上のミスマッチの残基を含む。他の実施形態では、前記プライマーの5´末端は、厳密には、前記一本鎖核酸中間体Iの3´末端と対合しない。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0051】
他の実施形態では、前記二本鎖中間体IBから前記二本鎖中間体IBを得るステップは、リンカー核酸分子を、前記一本鎖核酸中間体Iの3´末端、及び前記さらなる一本鎖核酸分子の5´末端に連結させることを含む。他の実施形態では、前記リンカー核酸分子は、ヘアピン状である。他の実施形態では、前記リンカー核酸分子は、ヘアピン状ではない。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0052】
本発明に係る方法の他の実施形態では、二本鎖中間体IB及びリンカー核酸分子は各々、異なる制限酵素の半分の部位を含み、平滑末端又は適合する付着末端を有する異なるコンセンサス配列を有するので、適切に連結させた産物は、前記酵素のいずれの基質ではない。一方、前記伸長されたプライマー又は前記ヘアピンループリンカーのいずれかのホモ二量体が切断され、その後、適切に連結させた産物を精製するためにサイズ分離法が用いられる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。付着末端は、便宜上、実施例3〜5で用いられるが、本発明に係る方法に必須ではない。
【0053】
本発明に係る方法及び組成物の核酸中間体は、他の実施形態では、ヘアピン構造を有する。他の実施形態では、前記核酸中間体IIは、二本鎖構造を有する。他の実施形態では、前記核酸中間体IIは、一本鎖構造を有する。他の実施形態では、前記核酸中間体IIは、一本鎖であるが、二本鎖の二次構造を有する(実施例5)。他の実施形態では、前記核酸中間体IIは、初期は二本鎖構造を有するが、本発明に係る方法における或る過程で一本鎖構造に開かれる(実施例3及び4)。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0054】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、前記二本鎖(double-stranded:ds)中間体IIIから環状中間体IVが得られる。前記環状中間体IVは、発現ベクターのバックボーンと、挿入部位としての、(a)前記ds中間体III、或いは(b)前記ds中間体IIIの断片であって前記ランダム配列領域の前記第1のdsコピー及び前記ランダム領域の前記第2の逆位dsコピーを含有する該断片とを有している。他の実施形態では、前記ds中間体IIIの断片は、前記ランダム配列領域の前記第1及び第2のdsコピーの間のds中間体IIIの全ての配列を含む。他の実施形態では、前記環状中間体IVは、(a)前記ランダム配列領域の前記第1のdsコピー、(b)前記前記ランダム配列領域の前記第2の逆位dsコピー、及び(c)それらの間のds中間体IIIの配列の断片を含む。他の実施形態では、前記環状中間体IVは、連結とによって、ds中間体IIIから得られる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0055】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、前記ds中間体IIIから環状産物が得られる。前記環状産物は、発現ベクターのバックボーンと、挿入部位としての、(a)前記ds中間体III、或いは(b)前記ds中間体IIIの断片であって、前記ランダム配列領域の前記第1のdsコピー、及び前記ランダム配列領域の前記第2の逆位dsコピーを有する該断片とを有している。他の実施形態では、前記ds中間体IIIの断片は、前記ランダム配列領域の前記第1及び第2のdsコピーの間のds中間体IIIの全ての配列を含む。他の実施形態では、前記環状産物は、(a)前記ランダム配列領域の前記第1のdsコピー、(b)前記ランダム配列領域の前記第2の逆位dsコピー、及び(c)それらの間のds中間体IIIの配列の断片を含む。他の実施形態では、前記環状産物は、連結によって、ds中間体IIIから得られる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0056】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、前記環状中間体IVを、上記した前記第1及び第2の制限酵素で消化することによって、線状中間体Vを形成する。
【0057】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、前記線状中間体Vを分子内で連結することによって、環状産物VIを形成する。他の実施形態では、本明細書中の実施例5に例示するように、前記分子内の結合によって、(i)一本鎖核酸中間体Iのランダム配列領域、(ii)非パリンドロームの介在領域、及び(iii)前記ランダム配列領域とハイブリダイズする領域を有する転写物を発現する発現ベクターが形成される。他の実施形態では、前記非パリンドロームの介在領域は、核酸中間体IIの介在領域の断片である。他の実施形態では、前記非パリンドロームの介在領域は、ループを形成することができる。他の実施形態では、前記線状中間体Vの前記3つの構成要素は、記載した順に、前記転写物の5´末端から3´末端へ配列される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0058】
各可能なさらなるステップは、本発明の別の実施形態に相当する。
【0059】
他の実施形態では、本明細書中の実施例5に例示するように、本発明は、RNA分子のセット若しくはライブラリを発現する組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを作成する方法を提供する。
前記方法は、
(a)一本鎖核酸中間体Iから二本鎖中間体IBを得るステップであって、
前記一本鎖核酸中間体Iが、5´末端から3´末端への順に、(i)第1の定常領域、
(ii)ランダム配列領域、及び(iii)第2の定常領域を有し、
前記二本鎖中間体IBが、一本鎖核酸中間体I及び前記一本鎖核酸中間体Iとハイブリダイズするさらなる一本鎖核酸分子を有する該ステップと、
(b)前記二本鎖中間体IBから、(i)一本鎖核酸中間体I、(ii)介在領域、及び(iii)前記さらなる一本鎖核酸分子を有する核酸中間体IIを得るステップと、
(c)前記核酸中間体IIから、核酸中間体II、及び前記核酸中間体IIとハイブリダイズするさらなる第3の一本鎖核酸分子を有する二本鎖中間体IIIを得るステップであって、
前記二本鎖中間体IIIが、
(i)前記第1の定常領域又はその断片の第1の二本鎖コピー、
(ii)前記ランダム配列領域の第1の二本鎖コピー、
(iii)前記第2の定常領域の第1の二本鎖コピー、
(iv)前記介在領域の二本鎖コピー、
(v)前記第2の定常領域の第2の逆位二本鎖コピー、
(vi)前記ランダム配列領域の第2の逆位二本鎖コピー、及び
(vii)前記第1の定常領域又はその断片の第2の逆位二本鎖コピーを有し、
前記第2の定常領域の前記第1の二本鎖コピーと前記第2の定常領域の前記第2の逆位二本鎖コピーとが、
(i)前記第2の定常領域の前記第1の二本鎖コピーは第1の制限酵素の基質となるが、前記第2の定常領域の前記第2の逆位二本鎖コピーは前記第1の制限酵素の基質とならないような、或いは
(ii)前記第2の定常領域の前記第2の逆位二本鎖コピーは第2の制限酵素の基質となるが、前記第2の定常領域の前記第1の二本鎖コピーは前記第2の制限酵素の基質とならないような、制限酵素部位の非対称性を有する該ステップと、
(d)前記二本鎖中間体IIIから、発現ベクターのバックボーン、及び挿入部位としての前記二本鎖中間体III若しくはその断片を有する環状中間体IVを得るステップと、
(e)前記第1及び第2の制限酵素によって前記環状中間体IVを消化することによって線状中間体Vを生成するステップと、
(f)前記線状中間体Vを分子内で連結することによって、5´末端から3´末端への順に、(i)前記第2の定常領域の前記第1の二本鎖コピー、(ii)ループ形成領域、及び(iii)前記第2の定常領域の前記第2の逆位二本鎖コピーを含む転写物を発現する発現ベクターを生成するステップとを含み、
それによって、RNA分子のセット若しくはライブラリを発現する組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを作成する。他の実施形態では、前記一本鎖(single-stranded:ss)核酸中間体Iの前記3つの構成要素は、記載した順に、一本鎖核酸中間体Iの5´末端から3´末端へ配列される。他の実施形態では、前記核酸中間体IIの前記3つの構成要素は、記載した順に、核酸中間体IIの5´末端から3´末端へ配列される。他の実施形態では、前記二本鎖中間体IIIの前記7つの構成要素は、記載した順に、二本鎖中間体IIIの5´末端から3´末端へ配列される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0060】
他の実施形態では、前記RNA分子のセット若しくはライブラリによってエンコードされる個々のRNA分子は、ランダム配列領域の二本鎖、及びランダム配列領域の2本の相補鎖の間にループ形成領域を有する。他の実施形態では、前記RNA分子のセット若しくはライブラリの各RNA分子は、ランダム配列領域の二本鎖、及びランダム配列領域の2本の相補鎖の間にループ形成領域を有する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0061】
他の実施形態では、上記の方法は、図6〜8に示したようにして実施される。他の実施形態では、図6〜8に示したステップの全ては、本発明に係る方法では実施されない。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する
【0062】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、前記一本鎖核酸中間体Iは、ヌクレオチド合成装置をプログラムすることによって生成され、(1)前記第1の定常領域の配列、(2)各位置でヌクレオチド混合物を使用して、ランダム領域、及び(3)第2の定常領域の配列を合成する。他の実施形態では、ss核酸中間体Iが、当該技術分野で周知の他の方法によって作成される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0063】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、本明細書中の実施例3〜5に例示するように、本発明に係る方法で使用される前記核酸分子及び中間体の各々は、DNA、又はその長さに沿って部分的に若しくは完全にバックボーン若しくは塩基組成(他の実施形態では、ホスホロチオエート結合)を改変したDNAから構成される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0064】
「定常」なる語は、他の実施形態では、核酸分子のライブラリ又はセット内で改変されていない又は不変の領域を指す。他の実施形態では、「定常」なる語は、核酸分子のライブラリのサブセット内で改変されていない又は不変の領域を指す。例えば、図1〜図8に示した方法における開始ヌクレオチド分子は各々、ランダム領域の5´及びランダム領域の3´において2つの定常領域を有する。他の実施形態では、この語は、ライブラリ内の異なる分子の定常領域間で生じる僅かな変化を含む。他の実施形態では、本発明のヌクレオチド分子の第1の定常領域及び第2の定常領域は互いに異なる定常配列を有する。他の実施形態では、第1の定常領域及び/又は第2の定常領域は、ライブラリ内で実質的に定常である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0065】
他の実施形態では、本発明は、ランダム配列の二本鎖領域を有するRNA分子の発現ベクターを生成する方法であって、上記の方法と同様であるが、発現ベクターのバックボーンに挿入する前に、二本鎖中間体IIIを消化する、或いは前記ランダム配列領域の2つのコピー間の前記介在配列の大部分を除去するために処理する方法を提供する。上記に列挙した全ての実施形態に対して、この方法を適用することができる。
【0066】
上述した方法の他の実施形態では、環状中間体IVを生成するのに使用されるds中間体IIIの断片は、前記ランダム配列領域の前記第1のdsコピー、及び前記ランダム配列領域の前記第2の逆位dsコピーを有する。他の実施形態では、前記断片は、ds中間体IIIの5つの中間部分を有する。前記5つの中間部分は、例えば、(i)前記ランダム配列領域の第1のdsコピー、(ii)前記第2の定常領域の第1のdsコピー、(iii)前記介在領域のdsコピー、(iv)前記第2の定常領域の第2の逆位dsコピー、及び(v)前記ランダム配列領域の第2の逆位dsコピーである。他の実施形態では、前記断片は、ds中間体IIIの7つの中間部分全てを有する。前記7つの中間部分は、例えば、(i)前記第1の定常領域の第1のdsコピー、(ii)前記ランダム配列領域の第1のdsコピー、(iii)前記第2の定常領域の第1のdsコピー、(iv)前記介在領域のdsコピー、(v)前記第2の定常領域の第2の逆位dsコピー、(vi)前記ランダム配列領域の第2の逆位dsコピー、及び(vii)前記第1の定常領域の第2の逆位dsコピーの断片である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0067】
「ハイブリダイズ」なる語は、本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、本発明に係る方法が実行される条件下で標的分子とハイブリダイズする分子を指す。例えば、本明細書の実施例3〜5に例示するように、使用される二本鎖中間体の各々は、前の中間体とハイブリダイズする新たな鎖を含む。他の実施形態では、この語は、厳密な条件下でのハイブリダイゼーションを指す。他の実施形態では、この語は、緩やかな条件下でのハイブリダイゼーションを指す。他の実施形態では、「厳密な条件下でのハイブリダイズ」なる語は、ハイブリダイゼーション及び洗浄のための条件であって、その条件下で、長さが18残基でかつ60%自己相補的である二本鎖ヌクレオチド分子が典型的にはハイブリダイズされたままであるような条件を指す。他の実施形態では、長さが18残基でかつ70%自己相補的である二本鎖ヌクレオチド分子が使用される。他の実施形態では、長さが18残基でかつ80%自己相補的である二本鎖ヌクレオチド分子が使用される。他の実施形態では、この語は、当該技術分野で周知の任意の他の定義に従って定義される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0068】
他の実施形態では、上記した方法の第1の定常領域又は本発明の類似方法の対応する定常領域は、二本鎖の形であるとき、ニッキングエンドヌクレアーゼの基質である。他の実施形態では、前記ニッキングエンドヌクレアーゼは、DNAニッキングエンドヌクレアーゼである。他の実施形態では、前記ニッキングエンドヌクレアーゼは、Nb.BbvC Iである。他の実施形態では、本明細書の実施例5に例示するように、前記二本鎖中間体IIIを得る前記ステップは、核酸中間体IIにニッキングエンドヌクレアーゼを接触させ、それによって、プライマーとしての使用に適した3´末端を生成し、前記プライマーを伸長させるステップを含む。他の実施形態では、前記核酸中間体IIは、前記ニッキングエンドヌクレアーゼによって消化される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0069】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、本明細書の実施例5に例示するように、伸長させる前記ステップは、鎖置換活性を有するポリメラーゼによって実行される。他の実施形態では、前記ポリメラーゼは、高い鎖置換活性を有する。他の実施形態では、鎖置換活性を有する前記ポリメラーゼは、DNAポリメラーゼである。他の実施形態では、前記ポリメラーゼはphi29である。他の実施形態では、前記ポリメラーゼはBstである。他の実施形態では、ポリメラーゼはVentである。他の実施形態では、前記Ventはexo−Ventである。他の実施形態では、前記ポリメラーゼは9oNmである。他の実施形態では、前記ポリメラーゼは、鎖置換活性を有する当該技術分野で周知の任意の他のポリメラーゼである。他の実施形態では、前記ポリメラーゼは、高度に前進型のポリメラーゼである。他の実施形態では、鎖置換因子の存在下で鎖置換複製を行うことができるDNAポリメラーゼは、鎖置換因子の非存在下ではDNAポリメラーゼが鎖置換複製を行わないとしても、本発明に係る方法において使用するのに適している。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0070】
「鎖置換活性」なる語は、他の実施形態では、合成中に遭遇する下流DNAを置換する能力を指す。
【0071】
「高度に前進型」なる語は、他の実施形態では、使用される条件下で、長いストレッチのDNAを連続合成することができるポリメラーゼを指す。他の実施形態では、前記ポリメラーゼは、1キロベースを超えるDNAを連続合成することができる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0072】
他の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物で使用されるニッキングエンドヌクレアーゼは、Nb.Bsm Iである。他の実施形態では、ニッキングエンドヌクレアーゼは、Nt.Alw Iである。他の実施形態では、ニッキングエンドヌクレアーゼは、Nt.BbvC Iである。他の実施形態では、ニッキングエンドヌクレアーゼは、Nt.BstNB Iである。他の実施形態では、ニッキングエンドヌクレアーゼは、Nb.BsrDIである。他の実施形態では、ニッキングエンドヌクレアーゼは、Nb.BtsIである。他の実施形態では、ニッキングエンドヌクレアーゼは、当該技術分野で周知の任意のエンドヌクレアーゼである。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0073】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、前記二本鎖中間体IBを得る前記ステップは、(a)前記一本鎖核酸中間体Iの前記第2の定常領域にプライマーをアニールするステップと、(b)前記プライマーを伸長させるステップとを含む。他の実施形態では、前記プライマーは、前記第2の定常領域に対する1つ以上のミスマッチを含む。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0074】
他の実施形態では、本明細書中の実施例3〜5に例示するように、本発明に係る方法及び組成物で使用されるプライマーの5´末端は、厳密には、標的核酸分子の3´末端と対合しない。他の実施形態では、この意図的な不対合は、サブクローンに使用される「付着末端」を有する二本鎖(ds)核酸分子を生成する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。「付着末端」は、ある実施形態では、オーバーハングを有する末端を指す。「平滑末端」は、ある実施形態では、オーバーハングを有さない末端を指す。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0075】
他の実施形態では、本明細書の実施例3〜5に例示するように、上記した方法の核酸中間体II又は本発明の類似方法の対応する中間体を得るステップは、リンカー核酸分子を、一本鎖核酸中間体Iの3´末端及びさらなる一本鎖核酸分子の5´末端に連結させるステップを含む。他の実施形態では、リンカー核酸分子はヘアピン状である。他の実施形態では、リンカー核酸分子は一本鎖である。他の実施形態では、リンカー核酸分子は、一本鎖核酸中間体I及びさらなる一本鎖核酸分子と共に、ヘアピン状構造を形成する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0076】
他の実施形態では、ヘアピンループリンカーのホモ二量体が分子間でアニールし、伸長するのならば、この発生は、前記ホモ二量体を融解温度まで予熱し、前記ホモ二量体を冷却し、その後、前記ホモ二量体を連結反応温度まで昇温させることによって、最小にされる。
【0077】
他の実施形態では、本明細書の実施例3に例示するように、上記方法のds中間体III又は本発明の類似方法の対応する中間体を得るステップは、核酸中間体IIにプライマーをアニールし、前記プライマーを伸長させ、それによって第3の一本鎖核酸分子を合成するステップを含む。他の実施形態では、伸長させる前記ステップは、鎖置換ポリメラーゼを用いて行われる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0078】
他の実施形態では、プライマーは、核酸中間体IIに対して1若しくは複数のミスマッチを含む。他の実施形態では、前記ミスマッチは、核酸中間体IIと第3のss核酸分子との間に、制限酵素部位の非対称性を形成する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0079】
本明細書の実施例5に例示するように、制限部位の非対称性の例としての環状中間体IVは制限部位の非対称性を有し、第2の定常領域の第1のコピーはAarIの基質となり(しかし、Pme Iの基質とはならない)、第2の定常領域の第2のコピーはPmeIの基質となる(しかし、Aar Iの基質とはならない)。この場合、非対称性は、ss I Bを生成するために使用されるミスマッチなプライマーによって形成される。様々な制限酵素がこの方法に適することは、当業者であれば理解できるであろう。
【0080】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、制限酵素部位の非対称性は、制限酵素の認識部位又は切断部位に対応する領域において、ミスマッチな残基を、本発明に係る方法及び組成物に使用される2つの別の相補的ヌクレオチド分子の間に組み入れることによって形成される。したがって、各鎖を後からコピーしてできた産物は、非対称配列を有することとなる。例えば、他の実施形態では、上記の方法において、ミスマッチな残基は、ss核酸中間体Iとその相補鎖の間に組み入れられる。その結果、ds中間体IIIでは、第2の定常領域の第1の二本鎖コピーは、第2の定常領域の第2の逆位二本鎖コピーとは異なる配列を有することとなる。
【0081】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、制限酵素部位の非対称性は、制限酵素の認識部位又は切断部位に対応する領域において、改変されたバックボーン又は塩基組成を有する残基を本発明のヌクレオチド分子に組み入れることによって形成される。本明細書の実施例5に例示するように、改変されたバックボーンの例は、一本鎖核酸中間体Iのホスホロチオエート結合である。様々な種類の改変されたバックボーンがこの方法に適することは、当業者であれば理解できるであろう。
【0082】
他の実施形態では、改変されたバックボーン又は塩基組成を有する残基が、ss核酸中間体Iに組み入れられる。他の実施形態では、改変されたバックボーン又は塩基組成を有する残基が、ss核酸中間体Iの相補体に組み入れられる。その結果として、ds中間体IIIでは、(i)第2の定常領域の第1の二本鎖コピー又は(ii)第2の定常領域の第2の逆位二本鎖コピーのいずれかが、改変されたバックボーン又は塩基組成を有する残基を含むこととなる。他の実施形態では、バックボーンの1つの結合が改変される。他の実施形態では、バックボーンの2つの結合が改変される。他の実施形態では、バックボーンの3つ以上の結合が改変される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0083】
本発明に係る方法及び組成物で使用される前記改変されたバックボーンは、ある実施形態では、ホスホロチオエート・バックボーンである。他の実施形態では、前記改変されたバックボーンは、メチルホスホネート結合である。他の実施形態では、前記改変されたバックボーンは、当制限酵素の切断を阻害する該技術分野で周知の任意の他の種類の改変されたバックボーンである。前記改変された塩基は、他の実施形態では、任意の種類の修飾ヌクレオシド、ヌクレオシド類似体、又は制限酵素の切断を阻害する当該技術分野で周知の修飾核酸である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0084】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、制限酵素部位の非対称性は、本発明のヌクレオチド分子への、ミスマッチな残基の組み入れと、改変されたバックボーン又は塩基組成を有する残基の組み入れとの組合せによって形成される。いずれか一方又は両方の方法を本発明に係る方法に使用することができることは、当業者には明らかであろう。
【0085】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、制限酵素部位の非対称性は、制限酵素部位の非対称性を形成する当該技術分野で周知の任意の他の方法によって形成される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0086】
他の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物で使用される中間体は、第1の定常領域の第1及び第2の両dsコピー間において、さらなる制限酵素部位の非対称性を有する。他の実施形態では、ds中間体IIIの場合、第1の定常領域又はその断片の第1のdsコピーは第3の制限酵素の基質であるが、第1の定常領域又はその断片の第2の逆位dsコピーは第3の制限酵素の基質ではない。他の実施形態では、前記さらなる制限酵素部位の非対称性は、第1の定常領域又はその断片の第2の二本鎖コピーに、第3の制限酵素の基質であるds中間体IIIを生じさせるが、第1の定常領域又はその断片の第2の二本鎖コピーには第3の制限酵素の基質であるds中間体IIIを生じさせない。
【0087】
例えば、本明細書の実施例5に例示するように、二本鎖中間体III(ds III)は、第1の定常領域の第1のコピーがBtgZ Iの基質になり、(初期は、Not Iの基質でもある)、第1の定常領域の第2のコピーがNot Iの基質になる(しかし、BtgZ Iの基質ではない)ような、制限部位の非対称性を有する。この場合、BtgZ I非対称性は、ss核酸中間体Iに、ホスホロチオネート化残基の組み入れることによって形成された。BtgZ IによるdsIIIの非対称な消化に続き(ds IIIBを生成する)、第1の定常領域の第1のコピーからNot I部位を除去し、それによって、Not Iによるds IIIBの非対称な消化が可能になった(図7)。実施例4で説明する方法のdsIIIは、この場合はプライマーB(図4)におけるミスマッチによって生成された、さらなる制限酵素部位の非対称性を有する。
【0088】
他の実施形態では、本発明に係る方法は、上述した方法の二本鎖中間体III又は本発明の類似方法の対応する中間体を、上述した第3の制限酵素に接触させるステップをさらに含む。他の実施形態では、前記接触させるステップは、環状中間体IV又は類似方法の対応する中間体を得るステップの前に行われる。他の実施形態では、前記二本鎖中間体IIIは、第3の制限酵素によって消化される。他の実施形態では、前記接触又は接触させるステップは、発現ベクターによって開始される正確な転写に好ましくない二本鎖中間体IIIの断片若しくは残基を、二本鎖中間体IIIから除去する。他の実施形態では、前記好ましくない断片は、1つ以上連続するプリン(例えばアデニン)残基のストレッチである。他の実施形態では、前記ストレッチは、2つの連続するアデニンを有する。他の実施形態では、前記ストレッチは、3つの連続するアデニンを有する。他の実施形態では、前記ストレッチは、4つの連続するアデニンを有する。他の実施形態では、前記ストレッチは、5つの連続するアデニンを有する。他の実施形態では、前記ストレッチは、6つの連続するアデニンを有する。他の実施形態では、前記好ましくない断片は、アデニンが豊富な領域である。本発明に係る方法の他の実施形態では、ベクターバックボーン上の前記プロモータは、前記アデニン又は5つの連続するアデニンを元は含んでいた前記ストランドからの転写のためのプロモータである。他の実施形態では、前記ベクター内の前記プロモータは、前記第1の一本鎖DNA分子に対応する前記ストランドからの転写を開始する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0089】
他の実施形態では、本明細書の実施例5に例示するように、5つのチミジンのストレッチ(例えば、第1のssDNA分子に5つのアデニンをコピーすることによって作成される)は、本発明のRNA分子をエンコードする遺伝子におけるランダム配列領域の逆相補鎖に続き、当該ストレッチの直後に転写終結することを可能にする。他の実施形態では、チミジンの前記ストレッチは、ランダム配列領域の逆相補鎖の直後に続く。DNAのコーディング鎖中のチミジン残基は転写されたRNA中のウリジン残基に対応し、それゆえ、この実施形態では、RNAはウリジン残基のストレッチを含む。他の実施形態では、ウリジンストレッチの第2のウリジンの後の転写終結は、RNA分子上に2ntのオーバーハングをもたらす。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0090】
他の実施形態では、さらなる制限酵素部位の非対称性は、改変されたバックボーン又は塩基組成を有する残基を、一本鎖核酸中間体I又はさらなる一本鎖核酸分子に組み入れることによって形成され、それによって、二本鎖中間体IIIにおいて、(i)第1の定常領域の第1の二本鎖コピー若しくはその断片、又は(ii)第1の定常領域の第2の逆位二本鎖コピー若しくはその断片が、改変されたバックボーン又は塩基組成を有する残基を含むこととなる。他の実施形態では、さらなる制限酵素部位の非対称性は、本発明のヌクレオチド分子への、ミスマッチな残基の組み入れと、改変されたバックボーン又は塩基組成を有する残基の組み入れとの組合せによって形成される。他の実施形態では、さらなる制限酵素部位の非対称性は、当該技術分野で周知の任意の他の適切な方法によって形成される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0091】
他の実施形態では、本明細書の実施例5に例示するように、本発明に係る方法及び組成物の発現ベクターは、RNAポリメラーゼのプロモータをさらに含む。他の実施形態では、発現ベクター又はそのセット若しくはライブラリは、RNAポリメラーゼと接触させられ、それによってRNA分子又はそのセット若しくはライブラリを生成する。
【0092】
他の実施形態では、前記発現ベクター又はそのセット若しくはライブラリは、細胞集団に導入され、内因性RNAポリメラーゼによって転写される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0093】
他の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物の発現ベクターは、既知の機能のRNAi分子をエンコードする遺伝子をさらに含む。
【0094】
他の実施形態では、発現ベクターのセット若しくはライブラリは、組換え型ウイルスのセット若しくはライブラリである。他の実施形態では、発現ベクターのセットは、組換え型ウイルスとしてパッケージされる。他の実施形態では、発現ベクターの各セット若しくはライブラリのコピーは、組換え型ウイルスのセット若しくはライブラリとしてパッケージされる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0095】
発現ベクターの各種類は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0096】
他の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物によって得られるRNA分子を消化することによって、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)分子が生成される。他の実施形態では、前記消化は標的細胞の内部で行われる。他の実施形態では、前記消化はエンドヌクレアーゼによって行われる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0097】
他の実施形態では、本明細書中の実施例6〜7及び10〜16に例示するように、本発明は、目的とする生物学的パラメータに影響を及ぼすことができるRNA分子を同定する方法を提供する。当該方法は、(a)細胞集団に本発明に係る前記発現ベクターのセット若しくはライブラリを接触させることによって、前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリ又はその一部が前記細胞集団の個々の細胞に取り込まれるようにするステップと、(b)前記細胞集団における前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測するステップとを含み、前記細胞集団の特定細胞が前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値について変化を示す場合は、前記特定の細胞が、前記目的とする生物学的パラメータに影響を及ぼす特定のRNA分子をエンコードする特定の組換え型発現ベクターを含有すると判断する。
【0098】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、前記RNA分子は、既知の又は十分理解された作用機序によって機能する。他の実施形態では、前記RNA分子は、前記RNA分子の発見後にのみ十分理解された機序によって機能する。他の実施形態では、前記RNA分子は、未知の機序によって機能する。他の実施形態では、本発明のスクリーニング方法は、前記RNA分子の機序の知識又は理解を必要としない。したがって、完全に機能に基づいたスクリーニング、或いはスクリーニングされた配列からバイアスを実質的に除去又は減少させることができる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0099】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、生物活性を有することが認められた特定の発現ベクター若しくはその断片が単離又は増幅され、その後、ベクター若しくはその断片が配列決定される。他の実施形態では、前記断片は、特定のRNA分子に対するコード配列を含む。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0100】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、本明細書の実施例8に例示するように、さらなる細胞に特定の発現ベクターを接触させ、その後、前記さらなる細胞において目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測する。
【0101】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、生物活性を有することが認められた特定のRNA分子のコピーが生成され、さらなる細胞に特定のRNA分子のコピーを接触させ、その後、前記さらなる細胞において目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測する。
【0102】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、本明細書の実施例8に例示するように、生物活性を有することが認められた特定のRNA分子又はその断片をエンコードする配列が第2の発現ベクターバックボーンに挿入又はサブクローンし、それによって、(i)特定のRNA分子、或いは(ii)特定のRNA分子の改変型のいずれかをエンコードする第2の発現ベクターを生成する。他の実施形態では、さらなる細胞に第2の発現ベクターを接触させ、その後、前記さらなる細胞において目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測する。
【0103】
他の実施形態では、特定のRNA分子の改変型は、特定のRNA分子のランダム配列領域と相同性を共有する領域を含む。他の実施形態では、特定のRNA分子の改変型の前記相同性共有領域は二本鎖である。他の実施形態では、前記相同性共有領域は一本鎖である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0104】
他の実施形態では、特定のRNA分子のds配列及び前記特定のRNA分子の改変型のds配列は、少なくとも70%の相同性を共有する。他の実施形態では、この2つの配列は少なくとも75%の相同性を共有する。他の実施形態では、この2つの配列は少なくとも80%の相同性を共有する。他の実施形態では、この2つの配列は少なくとも85%の相同性を共有する。他の実施形態では、この2つの配列は少なくとも90%の相同性を共有する。他の実施形態では、この2つの配列は少なくとも95%の相同性を共有する。他の実施形態では、この2つの配列は少なくとも97%の相同性を共有する。他の実施形態では、特定のRNA分子の改変型は、特定のRNA分子のds領域と同じds領域を含む。他の実施形態では、第2の発現ベクターバックボーンは、1回目のスクリーニングで使用された発現ベクターバックボーンとは異なる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0105】
他の実施形態では、本明細書中の実施例17に例示するように、本発明に係る方法は、a.生物活性を有することが認められた特定の発現ベクター、その挿入部位、又はその断片を単離又は増幅させるステップと(1回目の選択)、b.前記発現ベクターに含まれるランダム配列の二本鎖領域をエンコードする領域を有する前記特定の発現ベクターの断片を突然変異させ、そのことによって、前記ランダム配列領域の変異型を含むヌクレオチド分子のサブライブラリを作成するステップと、c.前記サブライブラリを発現ベクター内へ挿入又はサブクローンし、そのことによって、発現ベクターのサブライブラリを作成するステップと、d.第2の細胞集団に、前記発現ベクターのサブライブラリを接触させ(2回目の選択)、そのことによって、前記発現ベクターのサブライブラリ又はその一部が前記第2の細胞集団に取り込まれるようにするステップと、e.前記第2の細胞集団における前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測するステップとを含む。この実施形態では、前記第2の細胞集団の特定の細胞における前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値がさらに変化した場合は、前記特定の細胞が改良された発現ベクターを含有すると判断する。この方法の他の実施形態では、前記サブライブラリにおけるRNA分子のいくつかは、ランダム配列領域の2つの相補鎖の間に1つ以上のミスマッチを含む。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0106】
他の実施形態では、前記突然変異を発生させる前記ステップは、前記特定の発現ベクターの断片を低忠実度な方法によってコピーするステップを含む。他の実施形態では、前記 突然変異した配列は、コンピューターを使用して生成される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0107】
他の実施形態では、前記突然変異生成は、コンピューター的方法を用いて実施される。他の実施形態では、前記コンピューター的方法は、同定されたRNAi分子の各可能な単一突然変異の生成を含む。他の実施形態では、二重突然変異もまた生成される。他の実施形態では、三重突然変異もまた生成される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0108】
他の実施形態では、RNAiのds部分において突然変異を残基に導入する場合は、対応する突然変異を相補残基に導入することにより、塩基対合が維持される。他の実施形態では、対応する突然変異は導入されない。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0109】
他の実施形態では、RNA分子をエンコードする全配列は、突然変異させられる。他の実施形態では、二本鎖領域の両方の鎖が突然変異させられる。他の実施形態では、二本鎖領域の一本鎖(「ハーフブック(half-book)」)が突然変異させられる。他の実施形態では、二本鎖領域の一本鎖の一部が突然変異させられる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0110】
他の実施形態では、本発明に係る方法は、生物活性を有するRNAi分子の1つ以上の推定標的mRNAを同定するステップと、前記標的とより強力に結合することが予測される配列のサブライブラリを作成するステップとをさらに含む。他の実施形態では、前記サブライブラリは、前記予測標的の1つとより強力に結合することが予想される配列を有する。他の実施形態では、前記サブライブラリは、前記予測標的の一部とより強力に結合することが予想される配列を有する。他の実施形態では、前記サブライブラリは、前記予測標的の大部分と強力に結合することが予想される配列を有する。他の実施形態では、前記サブライブラリは、前記予測標的の1つ又は一部と、前記予測標的の他の部分と比較してより優れた選択的な結合を示すと予想される配列を有する。他の実施形態では、前記サブライブラリ内での、RNAi分子の標的への結合は、当該技術分野で周知の方法を用いて、インビトロRNAi分析によって直接的に試験される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0111】
RNAi分子の推定上の標的mRNAのための方法は、当該技術分野で公知であり、他の実施形態では、コンピュータプログラムを含む。他の実施形態では、前記プログラムは、「miRanda (Enright AJ, John B, Gaul U, Tuschl T, Sander C, Marks DS. MicroRNA targets in Drosophila.Genome Biol 2003;5(l):Rl)」である。他の実施形態では、前記プログラムは、「miRGen (M. Megraw, P.Sethupathy, B. Corda, and A.G. Hatzigeorgiou (2006). Nucleic Acids Res, 35: Dl 49-Dl 55)」である。他の実施形態では、前記プログラムは、「TargetScan (Lewis BP, Burge CB, Bartel DP. Cell, 120:15-16 (2005))」である。他の実施形態では、前記プログラムは、「MiRscan (Lim, LP, Lau, NC, Weinstein, E, Abdelhakim, A, Yekta, S, Rhoades, MW, Burge, CB and Bartel, DP (2003). The microRNAs of Caenorhabditis elegans. Genes & Dev. 17, 991)」である。他の実施形態では、前記プログラムは、「PicTar (Krek et al, Nature Genetics 37:495-500 (2005))」である。他の実施形態では、前記プログラムは、「Microlnspector (Rusinov V,Baev V, Minkov IN, Tabler M. Nucleic Acids Res 2005;33: W696-700)」である。他の実施形態では、前記プログラムは、当該技術分野で公知の任意の他の適切なコンピュータプログラムである。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0112】
他の実施形態では、本発明に係る方法は、上記の方法において、さらなる細胞又は細胞集団に、生物活性を有することが認められた特定の発現ベクターを接触させるステップと、前記さらなる細胞における前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測するステップとを含み、前記さらなる細胞における前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値がさらに変化した場合は、前記発現ベクターによってエンコードされたRNA分子の効果が確認される。他の実施形態では、前記挿入配列は、前記細胞集団から単離される。他の実施形態では、前記1回目の選択において生物活性を示すことが認められた前記RNA分子用のコード配列を含む断片は、前記発現ベクターから切除又は増殖、或いは、配列決定後にデノボ合成され、同一又は別の発現ベクター内にサブクローンされ、その後、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測するさらなる細胞への接触に使用される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0113】
各種のベクターにおいて(1)二本鎖領域を含むRNA分子を修飾し、(2)二本鎖領域を含むRNA分子を発現する方法は、当該技術分野で公知であり、例えば、「Palliser D et al (An siRNA-based microbicide protects mice from lethal herpes simplex virus 2 infection. Nature.2006 Jan 5;439(7072): 89-94)」に記載されている。各方法は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0114】
他の実施形態では、2回目の後に、1回以上のさらなる増菌が行われる。他の実施形態では、2回以上の増菌の使用により、真陽性クローンの割合を増加させる。他の実施形態では、増菌の複数回の使用により、真陽性クローンの割合を増加させる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0115】
他の実施形態では、1回目の選択で用いられる発現ベクターは、統合ベクターである。他の実施形態では、前記統合ベクターは、その効果の不可逆性から、真陽性の同定を容易にする。
【0116】
他の実施形態では、2回目又はそれ以降の回の選択において使用される異なる発現ベクターは、1回目の選択において同定されたものとは異なる形態のRNA分子(他の実施形態では、RNAi、siRNA、ミクロRNA、又はshRNA)を産出する。その後、前記RNA分子自体の異なる形態(他の実施形態では、siRNA)をさらなる細胞に接触させ、目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測する。他の実施形態では、前記さらなる細胞にRNA分子自体を接触させることにより、標的細胞の大多数(他の実施形態では、高いパーセンテージ)においてRNA分子によって付与される表現型の観察が容易となる。他の実施形態では、前記表現型は、2回目又はそれ以降の回の増菌を行った際に、前記細胞の60%以上で観察される。他の実施形態では、前記表現型は、前記細胞の70%以上で観察される。他の実施形態では、前記表現型は、前記細胞の80%以上で観察される。他の実施形態では、前記表現型は、前記細胞の90%以上で観察される。他の実施形態では、前記表現型は、前記細胞の95%以上で観察される。他の実施形態では、前記表現型は、前記細胞の97%以上で観察される。他の実施形態では、前記表現型は、前記細胞の99%以上で観察される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0117】
他の実施形態では、2回目又はそれ以降の回の選択において使用されるRNA分子の異なる形態は、可逆的な方法でその効果を発揮する。他の実施形態では、本発明に係る方法における阻害性RNAの可逆的形態の使用は、RNA分子の効果のさらなる実験的な研究(他の実施形態では、RNA分子の効果の時間的な研究)、又はRNA分子の除去によるその効果の逆転又は停止の観察を可能にする。他の実施形態では、誘導性又は抑制性プロモータを有する発現ベクターが、RNAiの可逆的形態に代わるものとして用いられる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0118】
他の実施形態では、本明細書の実施例17に例示するように、ランダム配列の二本鎖領域をエンコードする領域の第1の半分のみ(すなわち、ランダム配列の二本鎖領域の一方の鎖をエンコードする領域、すなわち「ハーフブック」)が、オリジナルの一本鎖DNA鋳型に使用される第1及び第2の定常領域の間に置かれ、低忠実度な方法によってコピーされ、それによって、上記方法のうちの1つによってshRNA発現サブライブラリを作成するために使用されるハーフブックのサブライブラリを作成する。その後、前記サブライブラリは、本発明に係る方法によって生物学的パラメータを検査する。
【0119】
他の実施形態では、上記した突然変異生成方法及び/又は低忠実度でコピーする方法のうちの1つが、上記ライブラリを生成する方法のうちの1つに記載されている先行ステップなしに実行される。この実施形態では、上記方法は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0120】
他の実施形態では、改良された発現ベクターは、目的とする生物学的パラメータに対して、初めに同定された特定のRNA分子よりも影響を及ぼす改良されたRNA分子をエンコードする。他の実施形態では、前記改良された発現ベクターは、当初同定されたRNA分子よりも高い組織特異性を示す。他の実施形態では、前記改良された発現ベクター又はそれによってエンコードされる対応するRNA分子の必要とされる供与量は、当初同定されたRNA分子よりも少ない。他の実施形態では、前記改良された発現ベクターは、当初同定されたRNA分子と比べて、当該技術分野で既知の任意の他の改良された性質を示す。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0121】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、上記方法によって同定された改良された発現ベクター、その挿入部位又はその断片は単離又は増幅される。他の実施形態では、前記改良された発現ベクター又はその断片が配列決定される。前記断片は、前記改良されたRNA分子のためのコード配列を含む。他の実施形態では、さらなる細胞に、改良された発現ベクター、そのエンコードされたRNA、又は、別種のRNA分子であって同一又は相同の二本鎖領域を有するものに接触させ、さらなる細胞において目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0122】
本発明に係る方法において用いられる低忠実度でコピーする方法は、他の実施形態では、PCR(例えば、変異性PCR)によるランダムな突然変異生成である。他の実施形態では、当該方法は、縮重オリゴヌクレオチドを用いた突然変異生成である。他の実施形態では、当該方法は、リンカースキャン(linker-scanning)による突然変異生成である。他の実施形態では、当該方法は、当該技術分野で既知の任意の他の突然変異生成方法である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0123】
他の実施形態では、本明細書中の実施例18に例示するように、本発明は、目的とする疾患又は障害を標的にする同定する方法であって、(a)前記目的とする疾患又は障害により変化する前記目的とする生物学的パラメータに影響を及ぼすRNA分子を本発明に係る方法によって同定するステップと、(b)その発現が前記RNA分子によって変化する細胞RNA分子を同定するステップとを含み、それによって、前記細胞RNA分子を、前記目的とする病又は疾患のための薬剤標的として同定するようにした方法を提供する。
【0124】
他の実施形態では、本明細書中の実施例17に例示するように、本発明は、前記目的とする生物学的パラメータに影響を及ぼす改変された能力を有するRNA分子変異体を同定する方法を提供する。
当該方法は、
a.前記RNA分子をエンコードする核酸分子を低忠実度な方法により複製し、それによって、前記RNA分子の変異体を含むヌクレオチド分子のサブライブラリを作成するステップと、
b.前記サブライブラリを発現ベクターのバックボーンにサブクローンし、それによって、発現ベクターのサブライブラリを作成するステップと、
c.細胞集団に、前記発現ベクターのサブライブラリを接触させ、それによって、前記発現ベクターのサブライブラリ又はその断片が前記細胞集団に取り込まれるようにするステップと、
d.前記細胞集団における前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測するステップとを含む。
他の実施形態では、この方法により、前記細胞集団の特定の細胞が、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値について変化を示す場合は、前記特定の細胞が、前記目的とする生物学的パラメータに影響を及ぼす改変された能力を有する特定のRNA分子をエンコードする特定の発現ベクターを含有すると判断する。他の実施形態では、前記変異体の二本鎖領域の2つのストランドは、互いに相補的である。他の実施形態では、前記2つのストランドは、互いに1つ以上のミスマッチを含む。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0125】
他の実施形態では、本発明は、目的とする生物学的パラメータに影響を及ぼす能力を有する改変されたRNA分子であって、本発明に係る方法によって同定された改変されたRNA分子を提供する。
【0126】
本発明に係る方法の他の実施形態では、目的とする生物学的パラメータに影響を及ぼす前記改変された能力は、オリジナルのRNA分子に対して改変される。
【0127】
「改変された」なる語は、ある実施形態では効力が増大したことを指す。他の実施形態では、この語は、効力が減少したことを指す。他の実施形態では、この語は、組織特異性が増大したことを指す。他の実施形態では、前記変異体は、生物学的半減期の増大を示す。他の実施形態では、前記変異体は、生物学的半減期の減少を示す。他の実施形態では、前記変異体は、生体利用効率が増大したことを示す。他の実施形態では、前記変異体は、任意の他の生物学的又は目的とする治療パラメータにおいて、初期のRNA分子に対して改変される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0128】
他の実施形態では、発現ベクターのバックボーンに挿入されない、ランダム配列の二本鎖領域を有するRNA分子のライブラリが、本発明に係る方法によって生成される。他の実施形態では、本明細書中に列挙した、組換え型発現ベクターのセットを生成する全ての実施形態に対して、必要に応じて、この方法を適用することができる。他の実施形態では、前記ライブラリはその後、RNA分子をスクリーニングするために使用される。他の実施形態では、本発明は、この方法によって生成されたRNA分子のライブラリを提供する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0129】
他の実施形態では、本発明は、ランダム配列の二本鎖領域を含むRNA分子の発現ベクターであって、本発明に係る方法によって生成された発現ベクターを提供する。
【0130】
他の実施形態では、本発明は、ランダム配列の二本鎖領域を含むRNA分子の発現ベクターであって、本発明に係る方法によって同定された発現ベクターを提供する。
【0131】
他の実施形態では、本発明は、本発明に係る発現ベクターによってエンコードされたRNA分子を提供する。
【0132】
他の実施形態では、本発明は、本発明に係る発現ベクターによって生成されたRNA分子を提供する。
【0133】
他の実施形態では、本発明は、ランダム配列の二本鎖領域を含むRNA分子であって、本発明に係る方法によって同定されたRNA分子を提供する。
【0134】
他の実施形態では、本発明は、ウイルス感染に対する耐性を細胞に付与する方法であって、本発明に係る発現ベクター又はRNA分子を前記細胞に接触させるステップを含み、そのことによって、ウイルス感染に対する耐性を細胞に付与するようにした方法を提供する。
【0135】
他の実施形態では、本発明は、ウイルスの対象内での複製能力を抑制又は阻害する方法であって、本発明に係る発現ベクター又はRNA分子を前記対象に接触させるステップを含み、そのことによって、ウイルスの対象内での複製能力を抑制又は阻害するようにした方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、ウイルスの細胞内への侵入を抑制又は阻害する方法であって、本発明に係る発現ベクター又はRNA分子を前記対象に接触させるステップを含む方法を提供する。他の実施形態では、前記発現ベクター又はRNA分子は、前記細胞内でウイルス受容体を下方制御する。他の実施形態では、前記発現ベクター又はRNA分子は、ウイルス複製に必要なタンパク質を下方制御する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0136】
他の実施形態では、本発明は、細胞の目的とする細胞型への分化を誘導する方法であって、本発明に係る発現ベクター又はRNA分子を前記細胞に接触させるステップを含み、それによって、細胞の目的とする細胞型への分化を誘導するようにした方法を提供する。
【0137】
「目的とする細胞型への細胞の分化」なる語は、他の実施形態では、完全な分化を指す。他の実施形態では、この語は部分的な分化を指す。「目的とする細胞型」なる語は、他の実施形態では、治療又は研究用途に必要とされる細胞型を指す。他の実施形態では、この語は、治療又は研究用途に必要とされる細胞型の前駆体である中間体、又は部分的に異なる細胞型を指す。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0138】
他の実施形態では、本発明は、細胞の長期増殖を誘導する方法であって、本発明に係る発現ベクター又はRNA分子を前記細胞に接触させるステップを含み、それによって、細胞の目的とする細胞型への分化を誘導するようにした方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、細胞の多分化能を維持する方法であって、本発明に係る発現ベクター又はRNA分子を前記細胞に接触させるステップを含み、それによって、細胞の多分化能を維持するようにした方法を提供する。
【0139】
各治療又は予防方法は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0140】
他の実施形態では、本発明に係る方法は、特定の組換え型発現ベクター又はそれによってエンコードされたRNA分子であって、本発明に係る方法によって選択された特定の組換え型発現ベクター又はそれによってエンコードされたRNA分子を使用する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0141】
他の実施形態では、本発明は、ランダム配列の二本鎖領域を有するRNA分子を生成する発現ベクターのセット若しくはライブラリであって、本発明に係る方法によって生成された発現ベクターのセット若しくはライブラリを提供する。
【0142】
他の実施形態では、本発明は、ランダム配列の二本鎖領域を有するRNA分子を生成する組換え型ウイルスのセット若しくはライブラリであって、本発明に係る方法によって生成された組換え型ウイルスのセット若しくはライブラリを提供する。
【0143】
他の実施形態では、本発明は、ランダム配列の二本鎖領域を有し、目的とする生物学的パラメータに影響を及ぼす能力を有するRNA分子の発現ベクターであって、本発明に係る方法によって同定されたRNA分子の発現ベクターを提供する。
【0144】
他の実施形態では、本発明に係る方法は、本明細書に記載されているように、低忠実度な改良方法によってベクターの挿入部位又は前記挿入部位の断片のコピーを生成した後に、2回目のスクリーニングによって同定された改良されたベクターを使用する。
【0145】
本明細書中の実施例で使用される特定の制限酵素、制限部位、ベクターなどは、本発明の単なる実施形態にすぎない。本明細書中に開示した方法に従って、任意の適切な制限酵素、制限部位、ベクターなどを使用することができる。各酵素、制限部位、ベクターなどは、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0146】
本発明に係る方法の他の実施形態では、上記した第2及び/又は第3の認識部位は、第1の一本鎖DNA分子からの配列に完全に由来するのではなく、むしろ、ヘアピン状のDNA分子からその配列の全て又は一部を得る。
【0147】
他の実施形態では、本発明は、ランダム配列の二本鎖領域を有するRNA分子を生成する方法を提供する。
当該方法は、
a.第1の一本鎖DNA分子を得るステップであって、
前記第1の一本鎖DNA分子が、5´末端から3´末端への順に、
(i)二本鎖形態の場合に第1の制限酵素の基質となる第1の認識部位を有し、1つ以上のアデニンで終端される第1の定常領域、
(ii)ランダム配列領域、及び
(iii)二本鎖形態の場合に第2の制限酵素の基質となる第2の認識部位を有する第2の定常領域を有する該ステップと、
b.前記第2の定常領域に第1のプライマーをアニールするステップであって、
(i)前記第1のプライマーが、前記第2の定常領域に対するミスマッチを含む、
(ii)前記第1のプライマーが、二本鎖形態の場合に、第2の制限酵素の基質とならない、
(iii)前記第1のプライマーが、二本鎖形態の場合に、第3の制限酵素の基質となる、及び
(iv)前記第2の定常領域が、二本鎖形態の場合に、第3の制限酵素の基質とならない、該ステップと、
c.前記第1のプライマーを伸長させ、それによって、前記第1の一本鎖DNA分子、並びに前記ランダム配列領域及び前記第1の定常領域の逆相補鎖を有する第2の一本鎖DNA分子を含む二本鎖中間体IBを生成するステップと、
d.ヘアピン状のDNA分子を前記第1の一本鎖DNA分子の3´末端及び前記第2の一本鎖DNA分子の5´末端に連結し、それによって、前記二本鎖中間体IBをヘアピン状の中間体IIに変換するステップと、
e.第2のプライマーを前記第1の定常領域の前記逆相補鎖にアニールするステップであって、
(i)前記第2のプライマーが、前記第1の定常領域の前記逆相補鎖に対するミスマッチを含む、及び
(ii)前記第2のプライマーが、二本鎖形態の場合に、第1の制限酵素の基質とならない、該ステップと、
f.前記第2のプライマーを伸長させ、それによって、ヘアピン状の中間体II及び第3の一本鎖DNA分子を含む二本鎖中間体IIIを生成するステップと、
g.前記前記二本鎖中間体IIIを前記第1の制限酵素で消化し、それによって、前記第1の一本鎖DNA分子に対応するストランド上に1つ以上のアデニンを有さない二本鎖中間体IVを生成するステップと、
h.前記二本鎖中間体IVを、RNAポリメラーゼプロモータを有する線状ベクターバックボーンに連結し、それによって、環状中間体Vを生成するステップと、
i.前記環状中間体Vを前記第2及び第3の制限酵素で消化し、それによって、線状中間体VIを生成するステップと
j.前記線状中間体VIを分子内で連結し、それによって、ランダム配列の二本鎖領域を有するRNA分子の発現ベクターを生成するステップを含む。
【0148】
他の実施形態では、上記の方法は、図3〜5に示したようにして実施される。
【0149】
他の実施形態では、本発明のベクターによって発現されるRNA分子は、その長さの一部に沿って自己相補的である。他の実施形態では、前記RNA分子は、その全長に沿って自己相補的である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0150】
「その長さの一部に沿って自己相補的」なる語は、他の実施形態では、その分子の別の領域とハイブリダイズする領域を有するRNA分子を指す。
他の実施形態では、前記領域は、前記分子の他の領域に完全に相補的である。他の実施形態では、第1の領域は、他の領域に対してミスマッチを有する。他の実施形態では、前記第1の領域は、他の領域に対して2つ以上のミスマッチを有する。他の実施形態では、第1の領域は、他の領域に対して欠失を有する。他の実施形態では、前記欠失は、細胞酵素によって認識される内部ループをもたらす。他の実施形態では、前記第1の領域は、他の領域に対するオーバーハング又は付着末端を有する。他の実施形態では、前記第1の領域及び他の(相補的な)領域は、非相補的リンカー又は介在領域によって分離されている。他の実施形態では、前記非相補リンカー領域は、ループ構造を形成する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0151】
「その全長に沿って自己相補的」なる語は、他の実施形態では、オーバーハング又はリンカー/介在領域を欠失している二本鎖RNA分子を指す。他の実施形態では、前記二本鎖RNA分子は、完全に自己相補的である。他の実施形態では、前記二本鎖RNA分子は、ミスマッチを有する。他の実施形態では、前記二本鎖RNA分子は、2つ以上のミスマッチを有する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0152】
本発明の部分的に自己相補的なRNA分子は、他の実施形態では、図1の下部に示されているような、介在性ループ形成領域(「ループ」)を有する自己相補領域(「ステム」)を含む。
【0153】
他の実施形態では、本発明の部分的に自己相補的なRNA分子の介在配列は、ランダム配列及び相補配列が互いにアニールシタ場合、ループ構造を形成する。本発明に係る方法の他の実施形態では、前記ループ形成領域はパリンドロームではない。他の実施形態では、前記ループ形成領域は自己相補的ではない。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0154】
他の実施形態では、本発明のベクターによって発現されるRNA分子は、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)である。他の実施形態では、RNA分子は小型阻害性RNA(siRNA)である。他の実施形態では、RNA分子は阻害性RNA(RNAi)である。他の実施形態では、RNA分子はagRNA(抗原RNA)である。「agRNA」は、他の実施形態では、mRNAとの相互作用及び遺伝子転写のサイレンシングをすることができる二本鎖RNAを指す。他の実施形態では、RNA分子はミクロRNA(miRNA)である。他の実施形態では、RNA分子はアンチセンスLNA(locked-nucleic acid)オリゴヌクレオチドである。他の実施形態では、RNA分子は、「Banan M et al (The ins and outs of RNAi in mammalian cells. Curr Pharm Biotechnol. 2004 Oct;5(5):441-50)」に列挙又は記載された任意の種類の阻害性RNAである。他の実施形態では、RNA分子は、当該技術分野で公知の任意の種類のRNAiである。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0155】
他の実施形態では、ss中間体Iの第2の定常領域の第1の残基は、本発明の組換え型発現ベクターによって産生されるds RNAにおいてループ配列に隣接する相補的なヌクレオチド対の同一性を判定する。他の実施形態では、本発明に係る方法は、第1の一本鎖DNA分子の4セットについて繰り返されるが、ここで、第2の定常領域は4つのグループにおいて4つの異なるヌクレオチドから始まる。他の実施形態では、前記4つのプールを組み合わせて、「ステム」の残基が全てランダム化されたライブラリを作成する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0156】
本発明に係る方法の他の実施形態では、プライマーにおけるミスマッチな残基(あるいは、2つ以上であれば、3´末端に最も近いミスマッチ)は、プライマーの3´末端から1ヌクレオチド(nt)離れている。他の実施形態では、前記距離は2nt又はそれ以下である。他の実施形態では、前記距離は3nt又はそれ以下である。他の実施形態では、前記距離は4nt又はそれ以下である。他の実施形態では、前記距離を最小にすることにより、プライマーに由来する(それゆえに一定である)RNA分子のステムにおける配列の量を減少させる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0157】
「発現ベクター」なる語は、他の実施形態では、本発明のRNA分子を発現する手段を指す。他の実施形態では、前記発現ベクターはプラスミドである。他の実施形態では、前記ベクターは組換え型ウイルスベクターである。他の実施形態では、前記ベクターは組換え型細菌ベクターである。他の実施形態では、前記ベクターは裸のDNAベクターである。他の実施形態では、前記ベクターは、自己複製核分子又はそれを含むウイルスであって、本発明のRNA分子を発現することができるものである。他の実施形態では、前記ベクターは、当該技術分野で既知の任意の他のベクターである。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0158】
組換え型ベクターを作成及び使用する方法は、当該技術分野で公知であり、例えば、「Sambrook et al. (2001, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York), 及び Brent et al. (2003, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York) 」に記載されている。
【0159】
本発明に係る方法の他の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物の発現ベクターは組換え型ウイルスである。本発明に係る方法の他の実施形態では、前記発現ベクター又はそのコピーは、組換え型ウイルスとしてパッケージすることができる。他の実施形態では、本発明の組換え型RNA分子は、組換え型ウイルスとしてパッケージすることができる。他の実施形態では、前記パッケージングはパッケージング細胞株を使用する。他の実施形態では、多くのランダム配列の領域を含むRNA分子をエンコードする、前記発現ベクターのライブラリが、本発明に係る又は本発明に係る方法を包含する方法によって生成される。他の実施形態では、前記ライブラリは、レトロウイルス形態(例えば、ベクターのDNA形態を生成するように形質導入時に逆転写されるRNAの形態)である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0160】
本発明に係る方法の他の実施形態では、前記発現ベクターは、ベクターを試験及び/又は同定するために使用される細胞集団内の細胞のゲノムに組み込まれる。他の実施形態では、前記発現ベクターは、前記標的細胞のゲノムに組み込まれる(例えば治療用に使用するために)。他の実施形態では、前記発現ベクターは、細胞集団内の細胞にエピソーム的に組み込まれる。他の実施形態では、前記発現ベクターは、染色体外ベクターとして細胞集団内の細胞に組み込まれる。他の実施形態では、前記発現ベクターを保持する細胞を選択するために、薬剤耐性遺伝子が用いられる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0161】
本発明に係る方法の他の実施形態では、本明細書の実施例1〜2に例示するように、本発明に係る方法に使用される発現ベクターは、マーカータンパク質(例えば、強化緑色蛍光タンパク質(eGFP))、又は強化ファルネシル化緑色蛍光タンパク質(eGFPf)をエンコードする遺伝子をさらに含む。他の実施形態では、その後のステップ(例えばライブラリスクリーニング又は選択方法)において、形質移入又は形質導入された細胞の検出にマーカータンパク質が使用される。
【0162】
他の実施形態では、前記発現ベクターは、目的とする表現型を与えるタンパク質をエンコードする遺伝子をさらに含む。他の実施形態では、前記遺伝子は、疾患表現型を与える。他の実施形態では、前記発現ベクターは、疾患又は疾患表現型を改善、軽減又は治療する治療RNA分子を同定するために使用される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0163】
本発明に係る方法の他の実施形態では、前記発現ベクターは、阻害性RNA分子(他の実施形態では、既知の機能の短鎖干渉性(siRNA)分子)をエンコードする遺伝子をさらに含む。他の実施形態では、既知の機能の阻害性RNA分子は、ライブラリによりスクリーニングされる細胞上で表現型(他の実施形態では、目的とする疾患の表現型)を与えるために使用される。他の実施形態では、外因的に加えられるsiRNA分子が、表現型を与えるために使用される。他の実施形態では、前記ライブラリが、既知の機能の阻害性RNA分子によって与えられる目的とする表現型又は疾患を治療するRNA分子を同定するために使用される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0164】
他の実施形態では、2つのRNAi分子(既知の機能のRNAi、及びランダム配列の二本鎖領域を含むRNA分子)が、2つのH1プロモータカセットによってエンコードされる。他の実施形態では、前記2つのH1プロモータカセットは、互いに独立的にベクターにサブクローニングすることができる。他の実施形態では、前記2つのH1プロモータカセットの一方が、ランダム配列の二本鎖領域を含む。他の実施形態では、前記ランダム配列の二本鎖領域を含むカセットが、上記した方法のうちの1つを用いて生成される。他の実施形態では、前記2つのRNAi分子が、当該技術分野で既知の任意の他の方法を用いて発現される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0165】
発現ベクターの各種類は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0166】
本発明に係る方法の他の実施形態では、環状中間体の非対称消化は、それによって生成された線状中間体の2つの端部において第2の定常領域の第1及び第2のコピーの不等部分をもたらす。他の実施形態では、前記不等部分は、前記ループ配列が非自己相補的となることを可能にする。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0167】
本発明に係る方法の他の実施形態では、線状化されたベクターバックボーンに存在するRNAポリメラーゼのプロモータは、RNAポリメラーゼIIIプロモータである。他の実施形態では、前記プロモータは、HIプロモータである。他の実施形態では、前記プロモータは、U6プロモータである。他の実施形態では、前記プロモータは、shRNA発現に適したプロモータである。他の実施形態では、前記プロモータは、当該技術分野で周知の任意の他のRNAポリメラーゼのためのプロモータである。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0168】
本発明に係る方法の他の実施形態では、前記発現ベクター内の前記プロモータは、発現プラスミドにおけるランダム配列領域の開始位置の25nt上流である。他の実施形態では、1つ以上の連続したピリミジン(例えば4つ)は、前記発現プラスミドにおける転写開始部位の直前にある。他の実施形態では、ストリングは2つのピリミジンからなる。他の実施形態では、ストリングは3つのピリミジンからなる。他の実施形態では、ストリングは4つのピリミジンからなる。他の実施形態では、ストリングは5つのピリミジンからなる。他の実施形態では、ストリングは異なる数のピリミジンからなる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0169】
他の実施形態では、本発明に係る方法は、前記発現ベクター又は発現ベクターのセット若しくはライブラリをRNAポリメラーゼに接触させるステップを含み、それによって、前記RNA分子又はそのライブラリを作成するようにする。他の実施形態では、前記接触させるステップは、リボヌクレオチド前駆体の存在下で行われる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0170】
他の実施形態では、本発明に係る方法は、ランダム配列のセットと共に、本発明のRNA分子の発現ベクターを生成する方法を複数回行い、それによって、発現ベクターのセット若しくはライブラリを作成するステップをさらに含む。他の実施形態では、本発明に係る方法は、組換え型ウイルスのセット若しくはライブラリとして、前記発現ベクターのセット若しくはライブラリをパッケージするステップをさらに含む。他の実施形態では、前記発現ベクターのセット若しくはライブラリは、組換え型ウイルスのセット若しくはライブラリである。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0171】
他の実施形態では、発現ベクターのセット若しくはライブラリをパッケージするために用いられる組換え型ウイルスは、組換え型レトロウイルスである。他の実施形態では、組換え型ウイルスは組換え型レンチウイルスである。他の実施形態では、組換え型ウイルスは組換え型アデノウイルスである。他の実施形態では、組換え型ウイルスは、「Wadhwa R他、Vectors for RNA interference. Curr Opin MoI Ther. 2004 Aug;6(4):367-72」の文献に列挙又は記載されたベクター由来である。他の実施形態では、組換え型ウイルスは、実施形態では、組換え型ウイルスは、真核細胞を感染又は形質導入する能力を有する当該技術分野で周知の任意の他の種類のウイルスに由来する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0172】
他の実施形態では、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値は、幹細胞からの、再増殖力を有する細胞型の誘導である。他の実施形態では、前記幹細胞から誘導される前記細胞型は、造血幹細胞である。他の実施形態では、前記細胞から誘導される前記細胞型は、長期間の再増殖能力を有する。他の実施形態では、誘導された前記細胞型は、当該技術分野で周知の他の再増殖力を有する細胞型である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0173】
他の実施形態では、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値は、定義された悪条件下での細胞(分析に使用される前記細胞、或いは生体関連標的細胞)の生存能力である。他の実施形態では、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値は、定義された悪条件下での細胞の増殖維持能力である。他の実施形態では、前記条件は、野生型細胞にとっては致死にならないが、疾患モデルの細胞(例えば、突然変異を含む細胞、又は、タンパク質若しくは酵素の発現が例えば阻害性RNAによって阻害された細胞)にとっては致死になるような条件である。
【0174】
他の実施形態では、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値は、病原体、毒、毒発作に対する細胞(分析に使用される前記細胞、或いは生体関連標的細胞)の感受性である。他の実施形態では、前記毒又は毒発作は、酸化である。他の実施形態では、前記毒又は毒発作は、ストレスである。他の実施形態では、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値は、病原体の存在にかかわらず前記細胞が生存することである。他の実施形態では、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値は、細胞内での病原体の複製能力である。他の実施形態では、前記病原体は、細胞内病原体である。他の実施形態では、前記細胞内病原体は、ウイルスである。他の実施形態では、前記細胞内病原体は、細胞内細菌である。他の実施形態では、前記細胞内病原体は、当該技術分野で周知の任意の他の種類の細胞内病原体である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0175】
他の実施形態では、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値は、癌細胞(分析に使用される前記細胞、或いは生体関連標的細胞)を殺滅する能力である。前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値は、アポトーシス又はネクローシス誘導刺激に対して前記癌細胞を敏感にする能力である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0176】
他の実施形態では、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値は、目的とするタンパク質の発現又は発現レベルである。他の実施形態では、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値は、目的とするmRNAの発現又は発現レベルである。
【0177】
他の実施形態では、病原体に対する感受性又は前記病原体の複製に対して影響を与える前記RNA分子は、前記病原体に特異的な核酸とハイブリダイズする。他の実施形態では、前記RNA分子は、前記病原体に使用される細胞核酸とハイブリダイズする。他の実施形態では、前記RNA分子は、細胞防御機構を上方調節する。他の実施形態では、前記RNA分子は、他の機構を介して機能する。他の実施形態では、前記RNA分子は、未知の機構を介して機能する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0178】
他の実施形態では、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値は、前記細胞の目的とする細胞型への分化である。他の実施形態では、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値は、前記細胞又は細胞型の未分化状態の維持である。他の実施形態では、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値は、細胞の長期増殖を誘導する能力又は多分化能を維持する能力である。他の実施形態では、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値は、幹細胞の未分化状態の維持である。
【0179】
前記目的とする細胞型は、他の実施形態では、心筋細胞、ニューロン、骨格筋細胞
肝細胞、皮膚細胞、尿細管上皮細胞、膵島細胞、糸球体細胞、内皮細胞、骨細胞、軟骨細胞、B又はTリンパ球、好中球、好塩基球、好酸球、単球、赤血球、樹枝状細胞、赤血球、甲状腺細胞、副腎細胞、巨核球である。他の実施形態では、前記目的とする細胞型は、疾患又は障害によって損傷を受けた任意の他の細胞である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0180】
他の実施形態では、「生物学的パラメータ」は、任意の測定可能な又は観察可能な細胞の遺伝子表現型を指す。前記表現型としては、例えば、形態学的特徴、分化状態、細胞サイクル特性、生化学的性質、又は他の表現型などがある。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0181】
他の実施形態では、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値は、当該技術分野で周知の生物学的パラメータである。各生物学的パラメータ、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0182】
本発明に係る方法の標的となる前記細胞は、ある実施形態では、幹細胞である。他の実施形態では、前記細胞は、胚幹細胞である。他の実施形態では、前記細胞は、当該技術分野で周知の任意の他の種類の幹細胞である。他の実施形態では、前記細胞は、部分的に分化した細胞型である。他の実施形態では、前記細胞は、目的とする細胞型の前駆体である。他の実施形態では、前記細胞は、疾患表現型のモデルである。他の実施形態では、前記細胞は、大人の幹細胞である。他の実施形態では、前記細胞は、組織特異性の幹細胞である。他の実施形態では、前記細胞は、ウイルスに感染しやすい細胞型である。他の実施形態では、前記細胞は、当該技術分野で周知の任意の他の細胞である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0183】
他の実施形態では、本発明に係るRNA分子は、ある細胞型を他の細胞型に変換するのに使用される。
【0184】
目的とするタンパク質の発現を測定する方法は、当該技術分野では公知であり、例えば、ウェスタンブロット法や蛍光活性化細胞分類法(FACS)などがある。目的とするmRNAの発現を測定する方法は、当該技術分野では公知であり、例えば、ノーザンブロット法などがある。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0185】
「読取値」なる語は、他の実施形態では、生物学的表現型を測定、評価、計測又は観察するための当該技術分野では既知の任意の手段を指す。他の実施形態では、この語は、生化学的分析、形態学的観察、細胞染色、細胞分取などを含む。他の実施形態では、読取値は、規定されたある条件下での生存である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0186】
他の実施形態では、サブセット又は複数の細胞が、測定される目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値における変化を示す。他の実施形態では、複数の細胞が、測定される目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値における変化を示す。他の実施形態では、前記細胞は、2つ以上の特定の発現ベクターを含む。他の実施形態では、前記細胞に含まれる前記特定の発現ベクター、その生物活性部位、その挿入部位又はその断片の各々を単離及び/又は配列決定し、それにより、目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値に影響を及ぼす2つ以上のRNA分子を同定する。
【0187】
他の実施形態では、本発明に係る方法は、目的とする生物学的パラメータの変化を仲介する特定の発現ベクターを単離又は増幅するステップをさらに含む。他の実施形態では、前記特定の発現ベクターの挿入部位を、単離又は増幅する。他の実施形態では、前記特定の発現ベクターの断片を、単離又は増幅する。他の実施形態では、発現ベクター、挿入部位又は断片は、PCRによって増幅される。他の実施形態では、本発明に係る方法は、単離又は増幅される前記特定の発現ベクター、その挿入部位又はその断片を配列決定するステップをさらに含む。他の実施形態では、前記断片は、生物活性を有すると同定されたRNA分子(例えば、目的とする生物学的パラメータに影響を及ぼすRNA分子)のコード配列を含む。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0188】
他の実施形態では、配列決定する前記ステップは、PCRによって生物活性を有するRNA分子のコード配列を増幅するステップ含む。他の実施形態では、PCRは、配列からのプライマーを、本発明のRNA分子のコード配列に隣接するベクターにおいて使用する。他の実施形態では、PCRは、組込型又は非組込型ベクターのいずれかにおいて実施することができる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0189】
本発明に係る方法の他の実施形態では、PCR産物の配列決定後に、前記産物のアリコートの端部がPCRチューブ内で消化され、親ベクターにサブクローンして戻され、shRNA構築物、又は同一又は相同の二本鎖領域を有する対応するRNAi分子、又は対応するRNAi分子をエンコードする構築物(及び対照shRNA)が試験細胞に再び加えられる。この確認試験では、少数の個々の生存細胞ではなくて、細胞集団が比較される。この方法は、他の実施形態では、本発明のスクリーニング又は選択方法において、好ましくない偽陽性の発生を減少させる。
【0190】
他の実施形態では、本発明に係る方法で使用される制限酵素は、その認識配列の外側でその基質を切断する。他の実施形態では、前記切断は、前記認識配列の端部からの距離は、少なくとも1ntである。他の実施形態では、前記距離は少なくとも2ntである。他の実施形態では、前記距離は少なくとも3ntである。他の実施形態では、前記距離は少なくとも4ntである。他の実施形態では、前記距離は少なくとも5ntである。他の実施形態では、前記距離は少なくとも6ntである。他の実施形態では、前記距離は少なくとも7ntである。他の実施形態では、前記距離は少なくとも8ntである。他の実施形態では、前記距離は少なくとも9ntである。他の実施形態では、前記距離は少なくとも10ntである。他の実施形態では、前記切断は互い違いの切断であり、その閉鎖切断(closer cut)が上記の距離(前記認識部位の前記端部からの距離)の少なくとも1つである。他の実施形態では、前記距離は10/14nt(すなわち、一方の鎖では10nt、他方の鎖では14nt)である。他の実施形態では、前記距離は25/27ntである。他の実施形態では、前記距離は、制限酵素で用いられる任意の他の距離である。他の実施形態では、その認識配列の外側を切断する制限酵素の使用により、第1の定常配列の3´末端上の5つ以上の連続したアデニンを除去することができる(DNA分子の片方でのみ除去する)。他の実施形態では、そのような酵素の使用により、前記5つ以上の連続したアデニンの一部を除去することができる(DNA分子の片方でのみ除去する)。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0191】
他の実施形態では、本発明に係る方法は、2つ以上の遺伝子を標的にする治療用RNA分子の同定を可能にする。他の実施形態では、前記治療用RNA分子は、既知のcDNA配列と実質的に相同ではない(他の実施形態では、多くて10%、20%、30%、40%、50%、60%又は70%相同である)。他の実施形態では、本発明に係る方法によって作成されるライブラリは、作成されたRNA分子のステム領域又は自己相補領域がランダムであるので、他の方法によって作成されるライブラリより利点を有する。他の実施形態では、前記利点は、任意の他の配列又は期待されるバイアスなしに、機能によって生成されるRNA分子をスクリーニングする能力である。他の実施形態では、前記利点は、ループ領域における自己相補性の欠如である。他の実施形態では、利点は、ステム領域の長さである。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0192】
他の実施形態では、生成されるランダム配列の数及び/又はスクリーニングされる細胞の数は、RNA又はその断片のds領域の全ての可能な配列をカバーするようにデザインされる。例えば、全ての可能なシード配列(大体、前記ds領域の残基1〜8)をカバーするために、65,500配列を生成する必要がある。他の実施形態では、シード配列は、突然変異生成後に得られた前のRNA分子に基づいて定常に保持されるが、ds領域の残りは定常には変異が導入される。他の実験では、シード配列の残基2〜8が定常に維持され、残基1及び9前方が改変させられる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0193】
他の実施形態では、本発明に係る方法は、ライブラリ作成中に、アガロースゲルからのDNA断片のゲル精製のための市販キットにおいて見られるような、高塩溶液の使用を回避する。他の実施形態では、径サイズがDNAより小さいの透析膜バッグ内にDNAを溶出させるために、ゲル切片に電流が流される。他の実施形態では、当該方法は、DNAのエタノール沈殿をさらに含む。他の実施形態では、ライブラリ精製における全てのステップ(酵素消化を除く)は、0〜4℃で実施される。他の実施形態では、ライブラリ作成の間はずっとpH緩衝液が存在する。他の実施形態では、ライブラリ作成中に、ブロモフェノールブルーの使用が避けられる。他の実施形態では、上記の予防措置のうちの1つが、ライブラリ作成中に分子内ヘアピンが形成される可能性を低下させる。他の実施形態では、本発明に係る方法中に導入されたように、ステムループカセットの両側上のフランキング配列が、後のステップにおける分子内ヘアピンの形成を防ぐ。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0194】
他の実施形態では、本発明に係るRNA分子のステム又は自己相補領域の長さは、27ntである。他の実施形態では、前記長さは、19ntである。他の実施形態では、前記長さは、6ntである。他の実施形態では、前記長さは、7ntである。他の実施形態では、前記長さは、8ntである。他の実施形態では、前記長さは、9ntである。他の実施形態では、前記長さは、10ntである。他の実施形態では、前記長さは、11ntである。他の実施形態では、前記長さは、12ntである。他の実施形態では、前記長さは、13ntである。他の実施形態では、前記長さは、14ntである。他の実施形態では、前記長さは、15ntである。他の実施形態では、前記長さは、16ntである。他の実施形態では、前記長さは、17ntである。他の実施形態では、前記長さは、18ntである。他の実施形態では、前記長さは、19ntである。他の実施形態では、前記長さは、20ntである。他の実施形態では、前記長さは、21ntである。他の実施形態では、前記長さは、22ntである。他の実施形態では、前記長さは、23ntである。他の実施形態では、前記長さは、24ntである。他の実施形態では、前記長さは、25ntである。他の実施形態では、前記長さは、26ntである。他の実施形態では、前記長さは、28ntである。他の実施形態では、前記長さは、29ntである。他の実施形態では、前記長さは、30ntである。他の実施形態では、前記長さは、30nt以上である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。他の実施形態では、本発明に係るRNA分子は、3´にオーバーハングを持つ29ntの長さのステム又は自己自己相補領域を有する。他の実施形態では、前記オーバーハングの長さは、2ntである。他の実施形態では、本発明に係るRNA分子は、3´にオーバーハングを持つ27ntの長さのステム又は自己自己相補領域を有する。他の実施形態では、前記オーバーハングの長さは、2ntである。他の実施形態では、本発明に係るRNA分子は、3´にオーバーハングを持つ19ntの長さのステム又は自己自己相補領域を有する。他の実施形態では、前記オーバーハングの長さは、2ntである。他の実施形態では、前記RNA分子は、上記に列挙したもの以外の長さを有し、3´にオーバーハングを持つ(他の実施形態では、3´に2ntの長さのオーバーハングを持つ)。
【0195】
他の実施形態では、本発明に係るRNA分子は、15〜25nt(他の実施形態では19nt)の長さのループ介在配列を持つ、21〜23nt(他の実施形態では22nt)の長さのステム又は自己相補領域を有する。他の実施形態では、前記ループ介在配列の長さは、1〜30ntである。他の実施形態では、前記RNA分子は、自己相補領域において1つ以上の塩基対のミスマッチを有する。他の実施形態では、前記RNA分子は、自己相補領域のある一本鎖において欠失を有する。他の実施形態では、前記欠失は、細胞性酵素によって認識される内部ループを引き起こす。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0196】
他の実施形態では、本発明に係るRNA分子のループ領域の長さは、3〜20ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、4〜20ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、5〜20ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、6〜20ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、7〜20ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、8〜20ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、9〜20ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、10〜20ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、3〜15ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、4〜15ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、5〜15ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、6〜15ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、7〜15ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、8〜15ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、10〜15ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、3〜12ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、4〜12ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、5〜12ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、6〜12ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、7〜12ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、8〜12ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、10〜12ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、3〜10ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、4〜10ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、5〜10ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、6〜10ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、7〜10ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、8〜10ヌクレオチドである。
【0197】
他の実施形態では、前記記長さは、約7ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約19ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約6ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約8ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約9ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約10ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約11ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約12ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約13ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約14ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約15ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約16ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約17ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約18ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約20ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約21ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約22ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約23ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約24ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約25ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約26ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約28ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約29ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約30ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約30nt以上である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0198】
本発明のRNAi分子のループ領域は、他の実施形態では、既知又は天然のRNAi分子から得られる。他の実施形態では、前記ループ配列は、既知又は天然に存在するRNAi分子に由来するものではない。当業者には、いまだに認識されていないループ配列を含む様々なループ配列が本発明に係る方法に適することは、当業者であれば理解できるであろう。
【0199】
天然に存在するRNAi分子は、当該技術分野で公知であり、例えば、「Griffiths- Jones S, Grocock RJ, van Dongen S, Bateman A, Enright AJ. Nucl Acids Res, 2006, 34: D140-D144」及び「Griffiths- Jones S (Nucl Acids Res, 2004, 32: D109-D111)」に記載されている。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0200】
他の実施形態では、本発明のRNA分子は、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)の基質である。他の実施形態では、本発明に係る方法は、本発明のRNA分子を消化して短鎖干渉性(short-interfering:si)RNA分子を得るステップをさらに含む。他の実施形態では、前記RNA分子は、RNアーゼIIIファミリー酵素の基質である。他の実施形態では、前記酵素は、クラスI RNアーゼIIIファミリー酵素である。他の実施形態では、前記酵素はクラスII RNアーゼIIIファミリー酵素である。他の実施形態では、前記酵素はクラスIII RNアーゼIIIファミリー酵素である。他の実施形態では、前記酵素はダイサー(Dicer)である。他の実施形態では、前記酵素はドローシャ(Drosha)である。他の実施形態では、前記酵素は、二本鎖RNAに対する特異性を有する任意の他の酵素である。他の実施形態では、RISC又はRNアーゼHIファミリー酵素による処理は、前記RNA分子を、生物活性を有する形態に変換する。RISC及びRNアーゼIIIファミリー酵素の基質は、当該技術分野では公知であり、例えば、「Jaronczyk K et al (Exploring the functions of RNA interference pathway proteins: some functions are more RISCy than others. Biochem J.2005 May 1 ;387(Pt 3):561 -71)」及び「Banan M et al (The ins and outs of RNAi in mammalian cells. Curr Pharm Biotechnol. 2004 Oct;5(5):441-50)」に記載されている。他の実施形態では、本発明のRNA分子は、上記酵素のいずれか1つ又は複合体によって切断され、20nt及び3´オーバーハング(他の実施形態では、2ntの3´オーバーハング)のステム又は自己相補領域を有する二本鎖RNAが得られる。基質の各種類は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0201】
他の実施形態では、前記消化は標的細胞内で生じる。他の実施形態では、RNA分子は、当該技術分野で周知の任意の他の種類のRNAi(阻害性RNA)分子を生成するために使用される。RNA分子の各種類は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0202】
他の実施形態では、本発明のRNA分子は、RNアーゼIIIファミリー酵素の産物を模倣する。他の実施形態では、RNA分子は、20ヌクレオチドのds領域、及び2ヌクレオチドの3´オーバーハングを有する。他の実施形態では、RNA分子は、当該技術分野で公知のRNアーゼIEファミリー酵素の産物の任意の他の構造を有する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0203】
他の実施形態では、本発明の生物学的に活性なRNA分子は、幾つかの遺伝子に共有される配列と結合する。他の実施形態では、前記共有される配列は、標的mRNAの3´非翻訳領域(UTR)において見られる。他の実施形態では、共有される配列は、標的mRNAの5´UTRにおいて見られる。他の実施形態では、共有される配列は、標的mRNAのコード部分において見られる。他の実施形態では、共有される配列はイントロンにおいて見られる。他の実施形態では、共有される配列は、上記領域の組合せにおいて見られる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0204】
他の実施形態では、本発明に係るRNA分子の標的は、mRNA分子である。他の実施形態では、前記標的は、他の種類のRNAである。他の実施形態では、前記標的は、リボソームのRNA(rRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、核内低分子RNA(snRNA)、核小体低分子RNA(snoRNA)、ミクロRNA(miRNA)、又はXIST RNAである。他の実施形態では、前記標的は、デオキシリボヌクレオチド分子である。他の実施形態では、前記標的は、他の種類のヌクレオチド分子である。他の実施形態では、前記標的は、タンパク質分子である。他の実施形態では、前記標的は、補助因子である。他の実施形態では、前記標的は、脂質である。他の実施形態では、前記標的は、他の種類の細胞非ヌクレオチド分子である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0205】
他の実施形態では、本発明に係るRNA分子と、その標的配列との間の前記相補領域の長さは、5ntである。他の実施形態では、前記長さは、5ntである。他の実施形態では、前記長さは、6ntである。他の実施形態では、前記長さは、7ntである。他の実施形態では、前記長さは、8ntである。他の実施形態では、前記長さは、9ntである。他の実施形態では、前記長さは、10ntである。他の実施形態では、前記長さは、11ntである。他の実施形態では、前記長さは、12ntである。他の実施形態では、前記長さは、13ntである。他の実施形態では、前記長さは、14ntである。他の実施形態では、前記長さは、15ntである。他の実施形態では、前記長さは、16ntである。他の実施形態では、前記長さは、17ntである。他の実施形態では、前記長さは、18ntである。他の実施形態では、前記長さは、19ntである。他の実施形態では、前記長さは、20ntである。他の実施形態では、前記長さは、21ntである。他の実施形態では、前記長さは、22ntである。他の実施形態では、前記長さは、23ntである。他の実施形態では、前記長さは、24ntである。他の実施形態では、前記長さは、25ntである。他の実施形態では、前記長さは、26ntである。他の実施形態では、前記長さは、27ntである。他の実施形態では、前記長さは、28ntである。他の実施形態では、前記長さは、29ntである。他の実施形態では、前記長さは、30ntである。他の実施形態では、前記長さは、30nt以上である。他の実施形態では、本発明に係るRNA分子は、異なる遺伝子の異なる標的配列を結合する。他の実施形態では、前記異なる標的配列は、全て同じ長さではない。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0206】
他の実施形態では、本発明のベクターによって発現されるRNA分子は、その標的配列に完全に相補的である。他の実施形態では、前記RNA分子は、その標的配列に部分的に相補的である。他の実施形態では、前記RNA分子は、非相補オーバーハング領域を有するRNA分子の長さの大部分に沿って、その標的配列に相補的である。他の実施形態では、本発明のベクターによって発現されるRNA分子は、その標的配列に対して1つ以上のミスマッチな残基を有する。他の実施形態では、RNA分子は、生理学的条件下でその標的配列にハイブリダイズする。他の実施形態では、RNAは、厳密な条件下でその標的配列にハイブリダイズする。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0207】
他の実施形態では、細胞内での本発明のRNA分子の発現は、標的RNA分子の翻訳抑制を引き起こす。他の実施形態では、RNA分子の発現は、標的RNA分子の切断又は分解を引き起こす。他の実施形態では、翻訳抑制、切断又は分解が引き起こされるか否かは、本発明のRNA分子と標的RNA分子との間の相補性のレベル、及び相補領域の長さに左右される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0208】
他の実施形態では、本発明に係る方法は、細胞生存、細胞の健康、細胞死、細胞分化又は任意の他の分析可能な表現型の変化に影響を及ぼす配列を同定するために用いられる。他の実施形態では、本発明に係るライブラリを使用して、医学的に目的の細胞型への幹細胞分化に影響を及ぼす配列が同定される。他の実施形態では、同定されたRNA分子は、幹細胞治療のためのsiRNAとしての効用を有する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【実施例】
【0209】
≪実施例1:レトロウイルスベクターによる二重RNAi発現≫
【0210】
レトロウイルスベクターを、同時に2つのshRNAを発現するように設計した。感染した細胞又はトランスフェクトされた細胞の直接的なフローソーティングを可能にする強化ファルネシル化緑色蛍光タンパク質(eGFPf:enhanced, farnesylated green-fluorescent protein)と、感染した細胞又はトランスフェクトされた細胞の選択を容易にするG418耐性遺伝子とを含んでいた。レトロウイルスベクターpQCXIX(登録商標)(Clontech)のeGFPをeGFPfで置換し、PolIII依存H1プロモータカセット(pSuper−Retro由来)の2つのコピーを、pQCXIXの不活性化長末端反復配列にクローンしてベクターpQe2を作成した。pQe2の各H1プロモータ・カセットには、shRNA構築物のクローニングを可能にするために、2つの固有の制限酵素部位を導入した。pQe2は、スピンドル・チェックポイントで重要なタンパク質の発現をノックダウンするために使用した(shRNAによるノックダウン(ウエスタン及び他の解析法を用いて)及びeGFPの発現の両方を確認した)。図12は、pQeに感染した、中程度に感染可能な結腸癌細胞株DLD1のフローサイトメトリ分析を示す。図13は、pQe2によるeGFPの有効なshRNAノックダウンを示す。したがって、RNA分子で、標的遺伝子の発現をノックダウンすることができる。また、正常な細胞で目的の特定の遺伝子(例えば、frataxin)の発現を抑制して、所定の表現型(又は、他の実施形態では、疾病表現型)を誘導することができる。さらに、1つ以上のランダムな標的を抑制して、表現型を改変又は逆転させることができる。
【0211】
≪実施例2:ベクターの改変≫
【0212】
レトロウイルスとしてパッケージングすることができ、強化緑色蛍光タンパク質(eGFP)をエンコードする遺伝子及びG418耐性遺伝子を含むpSuper−Retro(Oligoengine社, Seattle, WA)を、下記のクローニング手法に使用した。スペーサ配列のBg1II−MluI断片を、Bg1II−BbsI−MluI断片で置換した。次に、BbsIで切断し、Klenowで補充し、NotIで切断することで、図5に示されている線状のベクターを作成した。pSuper−Retroは、PmeI(スペーサ配列を作成する際に除去した)以外に関しては、図6〜8に示されている工程に必要な制限酵素部位全てを欠いていた。したがって、本工程に適切である。
【0213】
代替ベクターの作成では、pSuper−RetroのBglIIクローニング部位、並びにBglII及びHindIIIの間のスペーサ配列を、XcmI及びSfiIで置換し、固有のPmeI部位を除去した(XcmI、SfiI、及びHindIIIの認識配列を含むテール付プライマーを使用して、Bg1IIの直前から固有のBlpI部位までの領域をPCR増幅した。ベクターのBlpI−HindIII断片を、BlpI及びHindIIIで切断したPCR産物で置換した。)。XcmI及びSfiIの認識配列を含むテール付プライマーを使用してオリジナルのスペーサ配列をPmeI部位までに(しかし、PmeI部位を含むことなく)増幅してできたスペーサ配列を、XcmI及びSfiIの間に付加した。スペーサ配列を再び付加する理由は、この実験でシングルカットのベクターの除去を容易にし、ライブラリの連結の効率を最大にするためである。PmeI認識部位(上記に記載したように除去した)以外に関しては、pSuper−Retroは、図3、4、及び5に示されている工程に必要な制限酵素部位全てを欠いていた。
【0214】
本実施例及び本明細書に記載の他の実施例における方法には、他の多くのベクターを使用することができ、また、他の多くの制限酵素の組み合わせが適している。例えば、非相補ループ配列の作成に使用できる制限酵素の組み合わせとして、EcoNI/AarI(CCTCCCGC)、SmaI/AarI(CCCC)、StuI/ApaI(AGGC)、Bsu36I/AarI(CCTCAC)、BbvCI/AarI(CCTCAC)、EarI/AarI(TCTTCCGC)などがある。
【0215】
≪実施例3:部分的に自己相補的RNA分子のライブラリの作成≫
【0216】
5´から3´の順に、第1の定常領域(「N21」)と、それに続くランダムな配列の領域(この実施例では、21ヌクレオチド(nt)のランダムな配列)と、それに続く、第1の制限酵素(この場合、EcoNI)の部位の一本鎖(ss)を含む第2の定常領域とを含む一本鎖のDNA分子を得た。このセットの代表的な一本鎖分子は、図1にて「ss1」として図示されている(本明細書では、「一本鎖核酸中間体I」ともいう)。図1に示されているように、2つの部位でミスマッチなプライマー(図1の「プライマーA」)をオリゴヌクレオチドにアニールした(図1に示されているように、相補鎖が、二重鎖を形成する際に、第2の制限酵素(この場合、AarI)の基質となるが、第1の制限酵素の基質とならないように)。1回伸長させたところ、ssIの大部分に対して相補的な鎖(図1のssIBの下部の鎖)が形成された。この1回の伸長の後に、ヘアピンループリンカー(図1の「リンカーB」)を、伸長させたオリゴヌクレオチドの相補付着末端に連結させて、核酸中間体II(図1の「n.a.II」)を形成した。核酸中間体IIは、5´から3´の順に、(a)第1の定常領域の第1コピーと、(b)N21の第1コピーと、(c)第2の定常領域の第1コピーと、(d)ヘアピンループのリンカーと、(e)第2の定常領域の逆相補鎖(「N21c」)と、(f)ランダムな配列の領域の逆相補鎖と、(g)第1の定常領域の逆相補鎖とを含む(図3の下部に図示されている)。
【0217】
他の実施形態では、図2に示されているように、図1の下部に示されている一本鎖産物は、PCRによる増幅に適しており、PCRによって二重鎖中間体III(図2の「dsIII」)を形成する。dsIIIは、上部の鎖の5´から3´の順に、(a)第1の定常領域の第1の二本鎖コピーと、(b)N21の第1の二本鎖コピーと、(c)第2の定常領域の第1の二本鎖コピーと、(d)ヘアピンループリンカーの二本鎖コピーと、(e)第2の定常領域の第2の逆位二本鎖コピーと、(f)N21cの第2の逆位二本鎖コピーと、(g)第1の定常領域の第2の逆位二本鎖コピーとを含む。
【0218】
PCRの後、第1の定常領域の制限酵素部位を利用して末端を制限酵素で消化し、得られた産物を、所定のベクターのポリメラーゼIII−H1−RNAプロモータの下流に連結し(図2の第1の連結ステップ)、環状中間体IVを作成した(「circ中間体IV」)。次に、出来上がったプラスミドを、EcoNI及びAarIで制限処理した。オリジナルのミスマッチプライマーにより、2つの制限酵素部位のうち1つのみがプラスミドのインサートの各側に存在する。2つ酵素により、付着末端が残る。平滑末端を形成するために付着末端の一本鎖部分を補充した後は、平滑末端連結で、プラスミドを環状になるように同一分子内で連結し(図2の第2の連結ステップ)、環状産物VI(「circ産物VI」)を作成した。出来上がったプラスミドは、ランダムな配列の領域と、それに続く非保存ループ配列と、それに続く前記ランダムな配列の逆相補配列とを、全て同じDNAコード鎖に含む。このプラスミドは、したがって、ランダムな21塩基対領域及びそれに続くTA対を含む22塩基対のステムと、非相補的な8ntのループとを含むshRNAのライブラリを発現した。
【0219】
この実施形態では、ループの両端には互いに相補的なT−Aが存在する(図2の下部)。これは、図1の上部に示されているオリジナルのミスマッチ延長部分の先頭の塩基対を対合させるために必要である。さらに別の実験では、それぞれがこの部分で異なる塩基を有する4つのライブラリを作成し、それらを混合することで、可能な全てのランダムな22塩基対のステムが作成される。これらの構築物は、したがって、ランダムな22塩基対のステムと、非相補的な8ntのループとを含むshRNAを発現する。
【0220】
≪実施例4:部分的に自己相補的なRNA分子のライブラリの作成のための別のアプローチ≫
【0221】
図3、4、及び5は、RNAiの発現ベクターのライブラリを作成するための別のアプローチを図示している。図3の上部のDNAオリゴマ(「オリゴ」)ssIは、図1のssIに類似する。「N28」は、28のランダムなヌクレオチドを意味する。ssIは、第2の定常領域のN28配列の下流にPmeI部位の一本鎖を含む。プライマー(2つのミスマッチを含む(図3のプライマーA))で単純な延長反応を行ったところ、ssIの第1の定常領域、ランダムな配列の領域(「n28」)、及び第2の定常領域の大部分に対して逆相補鎖が形成され、二本鎖中間体IB(「dsIB」)が得られた。ヘアピンループリンカーを、延長させたオリゴヌクレオチドの1末端に連結させたところ、N28及びn28配列を含むdsIBの二本鎖が互いに共有的に結合した核酸中間体II(「n.a.II」)が形成された。(互いに相補的な、伸長したオリゴヌクレオチドの末端及びヘアピンループリンカーの末端は、それぞれSalI及びXhoI部位に由来する。SalI及びXhoIによる消化では、それぞれ延長したオリゴヌクレオチド又はヘアピンループリンカーのホモダイマーは切断されたが、目的のヘテロダイマー産物は切断されなかった。したがって、サイズによるゲル分離が可能となった。)n.a.IIは、5´〜3´の順に、(a)第1の定常領域の第1コピーと、(b)ランダムな配列の領域の第1コピー「N28」と、(c)第2の定常領域の第1コピーと、(d)ヘアピンループリンカーと、(e)第2の定常領域の逆相補鎖と、(f)前記ランダムな配列の領域の逆相補配鎖「n28」と、(g)第1の定常領域の逆補鎖とを含む。
【0222】
ミスマッチなプライマーを使用したことにより、第2の定常領域の逆相補鎖の一本鎖のみに(n28の直上流)AarI認識配列が形成された。このAarI認識配列は、第2の定常領域の第1のコピーには存在していなかった。また、ミスマッチなプライマーにより、第2の定常領域の逆相補鎖から、PmeI認識配列が除去された。これにより、ベクターに挿入した後にN28及びn28の間に非相補的なループを形成するのに必要な非対称性が形成された(下記及び図5を参照)。
【0223】
<ランダムなステム配列の逆相補鎖の作成及びその2つの共有的連結>
【0224】
他の実施形態では、図4に示されているように、n.a.IIは、ミスマッチなプライマーBからの単純な伸長反応に適している(図4の上部)。このプライマーからの伸長反応を行うと、二本鎖中間体III(「dsIII」)が形成される。このプライマーにより、dsIIIにおいて5´付着末端(AGA)が形成される(下記参照)。プライマーにおけるミスマッチにより、dsIIIの一端からBtgZI部位が除去される。dsIIIは、上部の鎖の5´〜3´の順に、(a)第1の定常領域の第1の二本鎖コピーと、(b)N28の第1の二本鎖コピーと、(c)第2の定常領域の第1の二本鎖コピーと、(d)ヘアピンループリンカーの二本鎖コピーと、(e)第2の定常領域の第2の逆位二本鎖コピーと、(f)n28の第2の逆位二本鎖コピーと、(g)第1の定常領域の第2の逆位二本鎖コピーとを含む。
【0225】
上記で記載したように、dsIIIは、SfiIで消化された発現ベクターバックボーン(図4)の5´付着末端と相補する5´付着末端(AGA)を含み、分子の他端にBtgZIを含む。dsIIIをBtgZI(認識部位から10及び14ntを切り離す)で処理すると、オリジナルのN28の第1のランダムなntの直前でDNAを切断し、反対側の鎖では、さらに4nt多く切り離し、陥凹3´末端を残す(dsIIIB)。Taqポリメラーゼでこの末端を補充すると、オリジナルのN28の反対側の鎖において4ntが回復する。また、3´にて余分なアデニンが付加される(dsIIIC)。これは、XcmIで処理された発現ベクターのバックボーンにおける余分な3´チミジン末端と相補的である。次に、dsIIICを発現ベクターのバックボーンと連結し(図4の最初の連結ステップ)、環状中間体IV(「cicIMIV」)を作成する。このステップでは、様々な発現ベクターのバックボーンが適している(例えば、実施例2の改変型pSuper−Retro)
【0226】
<ベクターのインサートの作成及びベクターへの挿入>
【0227】
BtgzIによる処理及び補充は、オリジナルのn28配列の直下流にpolIII転写終結シグナルとして働く5個のチミジンを保持させ、且つオリジナルのN28配列の上流のアデニンを除去し、ピリミジン(ベクターからの)で置換することである。標準的な開始部位の直上流にプリンが存在する場合にpolIIIは転写を早く開始するので、直上流にピリミジンが存在すると、標準的な開始部位(H1プロモータのTATAボックスの25ヌクレオチド下流)での転写開始が促進される。したがって、circIMIVでは、標準的な開始部位は、オリジナルのN28配列の最初のヌクレオチドである(図4の下部で「+25」と記されている(下記参照))。
【0228】
<非自己相補的ループ配列の作成>
【0229】
図5の上部には、N28及びn28配列の間のcircIMIVのベクターインサート配列が示されている。インサートの配列は、n.a.IIに存在する制限部位非対称性(上記に記載)により、PmeI/AarI制限部位非対称性を含む。circIMIVをPmeIで処理すると、センス鎖においてGGTTTが後に続く平滑末端が形成される。DNAをAarIで処理すると、DNAは、オリジナルのn28の最初のランダムなヌクレオチドから3ヌクレオチド離れた部分で切断され、反対側の鎖では4ヌクレオチド多く切断され、陥凹3´末端が形成される。Klenowで補充すると、センス鎖においてAGCが後に続く平滑末端が形成される(図5の「線状中間体V」)。線状IMVの平滑末端を同一分子内で互いに連結する(図5の第2の連結ステップ)と、配列がGTTTAGである非自己相補ループ領域をN28及びn28の間に含む環状産物VI(「circ産物VI」)が形成される。
【0230】
図3の上部に示されているオリジナルのプライマー伸長の先頭部位において相補的な塩基対を使用したことにより、図5に示されているように、相補的なG−Cが非自己的なループの両端に位置するようになる。他の実施形態では、図3、4、及び5に示されている工程を繰り返し、且つ毎回最初のプライマー伸長の先頭部位で異なる塩基を使用すると、4つのサブライブラリが作成される。これらのサブライブラリを混合すると、ランダムな29塩基対ステムとGTTTAGの非自己相補的なループとを有するshRNAライブラリが構成される。ライブラリの各shRNA構築物の前方には、4つのピリミジンで終了するpolIIIプロモータ(H1)が存在する。また、転写開始部位は最初のランダムなヌクレオチドである。後半29塩基対ステムの直下流に存在する5つのチミジンは、転写終結シグナルとして働く。
【0231】
≪実施例5:部分的に相補的なRNA分子のライブラリ作成の第3のアプローチ≫
【0232】
図6〜8は、RNAiの発現ベクターのライブラリを作成するのに使用した第3のアプローチが図示する。
【0233】
<ランダムなステム配列の逆相補鎖の作成、その2つの共有的な連結、及び第2の伸長>
【0234】
前回の方法と同様に、2つの定常領域に挟まれたランダムな配列の領域(ランダムな配列の領域の5´及び3´にそれぞれ「第1の定常領域」及び「第2の定常領域」が連結している)を有する一本鎖DNA分子「一本鎖核酸中間体I」を合成した(図6において、「ssI」として示されている)。第2の定常領域は、NsNsN26配列の直下流に、PmeI認識部位の一本鎖を含む。ssIでは、「NsNsN26」は28個のランダムなヌクレオチドを意味する。このランダムなヌクレオチドにおける最初の2つのヌクレオチドの後には、ホスホロチオエート結合が存在する(下記及び図7に示すように、第2の伸長の後にBtgZIによる非対称的な切断を形成するため)。ssIは、NotI及びBtgZI認識配列の一本鎖をも含んでいた(図6のdsIbに示されている)。
【0235】
2つのミスマッチ残基を有する陥凹プライマー(recessed primer)からの単純な伸長反応を行うと、(a)第1の定常領域の断片、(b)NsNsN26配列、及び(c)第2の定常領域のそれぞれの逆相補鎖を含むdsIBが形成された。
【0236】
ミスマッチなプライマーを使用したところ、第2の定常領域の逆相補鎖におけるn26nnの配列の直上流にAarI認識配列が形成された。また、ミスマッチなプライマーにより、第2の定常領域の逆相補鎖は、PmeI認識配列を有さない。これにより、ベクター挿入後に、NsNsN26及びn26nnの間に非相補的なループを形成するのに利用される非対称性が形成された(下記及び図8を参照)。
【0237】
ヘアピンループリンカー(「リンカーB」)をdsIbの陥凹プライマー末端に連結すると、NsNsN26及びn26nn配列を含むdsIbの2つの鎖が互いに共有的に連結し、第1の定常領域の逆相補鎖が完結し、核酸中間体II(「n.a.II」)が形成された。(dsIb及びリンカーBの相補的な付着末端は、それぞれSalI及びXhoI部位に由来する。SalI及びXhoIによる消化では、それぞれdsIb又はリンカーBのホモダイマーは切断されたが、目的のヘテロダイマー産物は切断されなかった。したがって、サイズによるゲル分離が容易となった。)n.a.IIは、5´〜3´の順に、(a)第1の定常領域の第1コピーと、(b)ランダムな配列の領域の第1コピー(「NsNsN26」)と、(c)第2の定常領域の第1コピーと、(d)ヘアピンループリンカーと、(e)第2の定常領域の逆相補鎖と、(f)ランダムな配列の領域の逆相補鎖(「n26nn」)と、(g)第1の定常領域の逆相補鎖とを含む。
【0238】
第2の伸長反応(図6の下部〜図7の上部)を容易にするために、DNAの一本鎖のみを切断する切断酵素N.BbvCでニック部位を形成した(図6の矢印で示された部分)。次に、出来上がった5´断片を、鎖置換DNAポリメラーゼBst(図6の下部及び図7の上部に図示されている)で伸長させ、n.a.IIの逆相補鎖を形成した。その結果、二本鎖中間体III(dsIII)が形成された。dsIIIは、上部の鎖の5´〜3´の順に、(a)第1の定常領域の第2の逆位コピーと、(b)ランダム領域の第2の逆位コピー(n28)と、(c)第2の定常領域の第2の逆位コピーと、(d)ヘアピンループリンカーのコピーと、(e)第2の定常領域の第1コピーと、(f)ランダム領域の第1コピー(N28)と、(g)第1の定常領域の第1コピーとを含む。本実施例のdsIIIでは、それぞれの領域が前の実施例とは逆の順で合成されており、したがって、前の実施例とは逆の順に図示されている。
【0239】
ssI(図6の上部)に本来存在するホスホロチオエート結合により、dsIIIにおいて、BtgZIがdsIIIの一端のみを切断する制限部位非対称性が形成された。dsIIIをBtgZIで消化すると、DNAは、新しく合成されたN28の最初のランダムなヌクレオチドの直前で切断され、反対側の鎖においてはさらに4ヌクレオチド多く切断され、陥凹3´末端が形成される(図7のdsIIIB)。Klenowで補充すると、新しく合成されたN28の反対側の鎖において、前記4つのヌクレオチドが再生され、平滑末端が形成された。上記の実施例で記載したように、非対称的なBtgZIの切断により、最後のランダムなヌクレオチドの後にTTTTT終結配列を維持すると同時に、H1転写開始部位の直上流、最初のランダムなヌクレオチドに接する相補的なAAAAAを5つのピリミジンに変えることができた。
【0240】
<第2の伸長の終了によるベクターインサートの形成、及びベクターへの挿入>
【0241】
非対称的なBtgZI消化により、2つのNotI部位のうちの1つもまた、除去された。NotIで処理したところ、ライブラリインサート(dsIIIC)が形成された。このインサートを、ベクターのバックボーンに連結し(図7の第1の連結ステップ)、環状中間体IVを作成した。図8の上部には、N28及びn28の間のベクターインサートの配列が示されている。プライマーAのミスマッチにより(図6)、インサートの一端に1つのAarI部位が存在し、反対側に1つのPmeI部位が存在していた。PmeIで消化すると、センス鎖において、AAACCCが後に続く平滑末端が形成された。AarIで消化すると、DNAは、オリジナルのn28の最初のランダムなヌクレオチドから3ヌクレオチド前で切断され、反対側の鎖においてはさらに4ヌクレオチド多くで切断され、陥凹3´末端が形成される。Klenowで補充したところ、転写鎖においてN28の直後にGCTを有する平滑末端が形成された(「線状中間体V」)。線状中間体Vの平滑末端を互いに同一分子内で連結させる(図8の第2の連結ステップ)と、N28及びn28の間に非相補的なCTAAACループ配列を含む環状産物VI形成された。
【0242】
インサートの転写鎖は、転写開始部位の上流に5つのピリミジン(+1部位(polIIIにはプリンが所望される)における転写開始の効率を増大させるため)と、それに続く28ヌクレオチドを含む29ヌクレオチドのステムと、それに続く非相補的なループ配列と、それに続く前記29ヌクレオチドのランダムな配列の逆相補配列と、それに続く5つのチミジン(polIII転写を終了させるため(第2のチミジンで終了する))とを含む。したがって、ベクターは、29ヌクレオチドのステムとそれから突出した2つのヌクレオチドとを含むshRNAをエンコードする。
【0243】
この方法の有効性を確認するために、大腸菌を環状IMIVでトランスフェクトし、300,000コロニーを得た。これらのコロニーのうちの15コロニーからプラスミドDNAを単離し、それらのインサートの塩基配列を決定した。15個のインサート全ての配列は、予想通り、AarI−PmeI断片で分離したランダムな配列とその逆相補鎖(図8の上部に示されている)とを含んでいた。また、中間体のプールの塩基配列を決定した。図9に示されているように、配列データによって、予想される定常領域の存在、及びランダム領域におけるバイアスの非存在が確認された。これは、本方法の有効性を示すものである。ランダムな配列に使用された塩基対の割合は、A/Tが50.9%、G/Cが49.1%であった。これは、ランダム領域が、ランダム性を有することを示す。
【0244】
残りのコロニー(約300,000個)からDNAを調製し、連続的にAarI及びPmeIで消化し、再連結した。連結した産物で大腸菌をトランスフェクトし、1,000,000コロニーを得た。これらのコロニーのうちの5個のコロニーからプラスミドDNAを単離した。5つのDNA全てが、正しい大きさを有していた。
【0245】
本方法の終了後、14クローンのランダムの領域(n29)を配列決定した。図10に示されているように、配列にはスキューイング(skewing)が検出されなかった。これは、本方法が有効であり、最終産物が目的の産物と一致したことを示す。
【0246】
また、完成したライブラリからの個々の「クローン」からのインサート全体の塩基配列決定を行った。図11では、代表的なクローンからの配列が示されている。このクローンは、N28のランダムな配列と、それに続くG残基(オリジナルのssDNA分子の3´定常領域由来)と、それに続くループ配列と、それに続く「C」残基と、それに続くN28の逆相補配列(「n28」として示されている)とを含んでいた。この配列は、図8の下部の鎖に対応する。したがって、最終産物は、目的の産物と完全に一致していることになる。これは、本方法の有効性を再確認するものである。
【0247】
≪実施例6:shRNAライブラリをスクリーニングするための、アポトーシス阻害アッセイの確立≫
【0248】
293T細胞(ヒトの胚腎臓細胞株)を、2、4、6、及び8μMの合成トリテルペノイドであるCDDOで一晩処理した。CDDOを含まない培地と交換した後、4、6、又は8μMのCDDOで処理したプレートには、付着細胞が存在していなかったのに対して、2μMのCDDOで処理したプレートには、付着細胞が幾つか見られた。この実験を4μMのCDDOで繰り返したところ、CDDO欠失培地で5日間処理した後も、付着コロニーが確認されなかった。
【0249】
他の実験では、293T細胞の培地を、50%、20%、10%、5%、2%、及び0%の血清欠失培地を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)と交換して24時間処理した。その後、細胞を標準培地で5日間培養した。5%、2%、又は0%の血清欠失培地で処理したプレートには、細胞は残存していなかった。一方、50%及び20%の血清欠失培地を含むPBSで処理したプレートでは、細胞はほとんど生存していた。10%の血清欠失培地を含むPBSで処理した約750,000細胞のうち、2つのコロニーがプレート上で見られた。したがって、5〜10%の血清欠失培地を含むPBSで24時間処理すると、293T細胞の約100%が死滅することになる。
【0250】
別の実験では、100%の細胞が死滅する最低条件を確立し、shRNAライブラリによる救済をさらに容易にするために、293T細胞を、3μMのCDDO及び/又は6%、7%、8%、又は9%の血清欠失培地を含むPBSで処理した。
【0251】
他の実験では、グルコース/グルコース酸化酵素(G/GO)技術を使用して、293T細胞にアポトーシスを誘発した。グルコース酸化酵素は、実質的に持続的な速度で過酸化水素の生成を触媒する。グルコース酸化酵素の最適な濃度及びインキュベーション時間を決定するために、様々なグルコース酸化酵素の濃度(2〜128mU/ml)、並びに様々なインキュベーション時間で実験し、その後、細胞を顕微鏡観察した。細胞を洗浄し、標準培地を再び加え、コロニー形成を観察したところ、100%の細胞が死滅する最低条件を確認することができた。
【0252】
≪実施例7:アポトーシスを阻害できるRNA分子を特定するための、shRNAの使用≫
【0253】
<材料及び実験方法>
【0254】
細胞:
【0255】
Craig Thompson博士からFL5.12細胞を調達した。
【0256】
高力価のレトロウイルスの生成:
【0257】
Effectene(登録商標)トランスフェクションキット(Qiagen)を使用して、293T細胞を、レトロウイルス及びpCL−Eco(エコトロピックなエンベロープ及びgag−polタンパク質をエンコードする)で共トランスフェクトすることで、高力価のレトロウイルスが生成された。トランスフェクションの24〜72時間後毎日、培養液の上清を採取し、FL5.12細胞に感染させるか、或いは、後の使用のために−80℃で冷凍した。24ウエル付のプレートの各ウエルに100〜200万細胞を播種し、ウイルス上清、5μg/mlのポリブレン、及び0.3ng/mlのインターロイキン−3(IL−3)と共に2500×g、1時間遠心分離した。次に、細胞をインキュベータ内で2時間保存した。ウイルスの上清を、新鮮なものと交換し、回転/インキュベーションの工程をさらに2回繰り返した。24〜48時間後、GFP発現のフローサイトメトリ分析で感染効率を求めた。
【0258】
<結果>
【0259】
マウスの前B細胞株であるFL5.12はIL−3依存である。IL−3を3日間除去すると、100%の細胞がアポトーシスによって死滅し、>90%の細胞がBcl−xL59の発現によって救われる。細胞をアポトーシスから救ったRNA分子を特定するプロトコールを画定するために、FL5.12細胞をIL−3含有の培地で培養し、その後、IL−3を欠く培地に切り替え、12、24、48、又は72時間培養した。その後、細胞をIL−3含有の培地に戻した。トリパンブルー排除法、及びIL−3含有の培地に切り替えた後の数日間の培養によって、100%の死滅率を確実にするのに上記の48又は72時間の培養が十分であることが示された。
【0260】
陽性対照としてpSiren、pCL−Ecoを2:1(モル比)を使用して、高力価のレトロウイルスの感染を30%GFP陽性FL5.12細胞になるように調製(calibrate)した。つまり、約30%の細胞が、RNAを発現するレトロウイルスのベクターで形質導入されたことになる。
【0261】
30%のGFP陽性細胞から、RISC複合体を過剰に含むものを避けるように選択した。各細胞に無限のRISC複合体が存在するため、同時に存在する2つ又は3つ以上のRNAi構築物の効果は、RNAi配列が強力でない限り、より低くなり得る。例え効果が低くても、有効なshRNA配列を特定できる可能性を最大限にするために、細胞ごとに1つのランダムなshRNAについて調べた。ポアゾン分布から、0.3及び0.4の感染多重度は、それぞれ約26%及び33%のGFP陽性細胞に相当する。それぞれの感染多重度における感染細胞のうち、たった1つのshRNAエンコード構築物に感染している細胞は、それぞれ約85%及び80%である。
【0262】
100万個のFL5.12細胞を、30%がGFP陽性になるように感染させ、実施例8に記載の300,000のコロニーライブラリーが得られた。発現後のGFP発現は、図14に示されている。生存を高めるshRNAを選択するために、IL−3を除去した。細胞を、IL−3陰性培地で3日間培養した後、0.3ng/mlのIL−3含有の標準生育培地に移し、3日間培養した。真陽性細胞を濃縮するために、IL−3の除去及び標準培地への戻しのプロセスを繰り返した。IL−3の除去及び標準培地の戻し(Rec)のプロセスを4回行った後、ライブラリ感染細胞のウエル(対照感染細胞のウエルではなく)におけるGFP陽性細胞の比率は60%に上昇した。これは、比較的な生存効果を付与したRNA分子が存在することを示す(図15)。
【0263】
PCRで10のshRNAエンコード配列(「ブック」)を調べ、pSirenに再クローンし、配列決定を行った。10の配列のうち、2つの配列が同じであった(ブック1及び7)。これは選択的濃縮(selective enrichment)を示す。3つの推定shRNA分子(ブック1、3、及び8)を個別にFL5.12細胞に感染させた。なお、各種類shRNA分子に関しては、個別に6回感染させて分析した。細胞には、IL−3の除去及び戻しのプロセスを1回行い、その後、再びIL−3を除去した。15時間後細胞をフローサイトメトリで分析し、感染細胞をGFP蛍光で同定し、死細胞をヨウ化プロピジウム(PI)染色で特定した。実験の開始(1回目のIL−3除去の直前)に対する相対的なGFP陽性(感染)、PI陰性(生)細胞の画分が図16に示されている。ブック1及び3に感染した細胞の生存率は、ランダムなブック(対照53)又はベクターのみ(pSiren)に感染した細胞のものよりも統計的に有意な改善を示した(各ケースのスチューデントt−検定において、p<0.0001であった)。ブック1及び3における生存率の改善は、カスパーゼ3酵素活性の低下と一致した。IL−3の除去のサイクリングは、回復部分を含んでいたので、ブック1及び3を、増殖率に対する効果について調べたが、そのような効果は見られなかった。ブック1及び3のステム配列は、下記の通りである。
【0264】
ブック1:5´−GGGTAGCTACATTTGCATATGTGGATATG−3´(配列認識番号1)
【0265】
ブック3:5´−GTGGATCAGTGTGTTATAGCTCGGGCAGG−3´(配列認識番号2)
【0266】
したがって、本発明に係る方法は、治療活性を有する組換え型RNA分子の特定に有効である。
【0267】
他の実験では、上記の方法と類似する方法を使用して、アポトーシスから保護するRNA分子を特定するために、G1E、293T、又はFRDA細胞を使用した。
【0268】
≪実施例8:本発明に係るRNA分子の機能の確認≫
【0269】
他の実験では、上記の実施例又は他の実施例で記載されているRNAiライブラリ・スクリーニングの後、目的の効果が発生した細胞又は細胞群を単離し、効果のあるベクターを単離し、他の細胞集団に加えた。他の実施例では、有効なRNAi配列をPCRで調べ(例えば、上記の方法では、レトロウイルスベクターのshRNAインサート部位の両端に存在するMfeI及びBlpIを挟むプライマーを使用することで)、同じランダム配列を含む同じ又は他の形態の阻害RNA(他の実施形態では、shRNA、microRNA、又はsiRNA)を別の細胞集団に加えた。別の細胞集団に同じ表現形が再発生すれば、阻害RNA分子が目的の表現形を引き起こすことができることを意味する。他の実施形態では、新しい形態のRNAiはRNAiの可逆的な形態である(他の実施形態ではインビトロで合成されたsiRNA、他の実験では、培地から取り出すことによって効果が反転する形態のもの)。また、新しい形態のRNAiは、目的の表現形を可逆的に付与することが示されている。他の実験では、陽性shRNA候補を、それらが特定されたモデルシステム以外のモデルシステムで試験する。
【0270】
≪実施例9:真陽性のものを濃縮するための反復プーリング及び再試験≫
【0271】
他の実験では、上記のアポトーシス・アッセイの1つにおける対照培養では、100%の死滅率が観察されない。この場合、ライブラリ感染培養における生存細胞をプールし、推定の有効shRNA配列をPCRで調べ、親ベクターに再クローンし、サブライブラリとして反復プーリング及び再試験で再試験した。プーリング及び試験を繰り返すことで、真陽性のものを濃縮することができる。
【0272】
例えば、偽陽性の比率が1%のスクリーニング検定(つまり、99%の死滅率が達成される)を使用して、本発明に係るRNAiライブラリをスクリーニングした。ライブラリの100,000配列の1つが真陽性(例えば、アポトーシスに対して有意な耐性をもたらす)である。200,000細胞を感染させると、平均して2つの真陽性及び2000の偽陽性が発生する。ライブラリ感染培養における生存細胞をプールし、推定上有効なshRNAをPCRで調べ、親ベクターに再クローンし、サブライブラリとして反復プーリング及び再試験で再試験する(例えば、上記の方法で、BglII及びNotI部位を導入するプライマーを使用して)と、200の真陽性(2/2000×200,000)及び2000の偽陽性が確認される。2回目のプーリング及び再試験の後、20,000の真陽性(200/2000×200,000)及び2000の偽陽性が得られる。したがって、2回のプーリング及び再試験の後、真陽性の比率(全陽性に対して)約1%から90%以上増加する。ライブラリに感染した細胞、及び対照の感染細胞に対する生存クローンの数が同程度である上記の如何なる選択アッセイにおいて、プールした陽性のものの再導入の後に生存クローンの数が増加した場合は、真の陽性が存在することを意味する。
【0273】
したがって、本発明のスクリーニング方法は、偽陽性率が著しく高いアッセイにおいても使用できる。
【0274】
≪実施例10:アポトーシスを阻害することができるRNA分子を特定するための別のアポトーシス・アッセイの使用≫
【0275】
他の実験では、shRNAライブラリをマウスの前B細胞株であるFL.5.12と共に使用してアポトーシスを阻害するRNA分子を特定する。100%のF.L5.12の細胞が死滅し、且つBcl−xLによって>90%の細胞が救われる条件を画定した(IL−3除去)。他の実施形態では、本技術をわずかに改変することで他の様々な種類の細胞を使用することができる。
【0276】
他の実験では、293T細胞にアポトーシスを誘発するためにスタウロスポリン又は他の酸化剤を使用する。他の実験では、FL5.12細胞の代わりに異なるIL−3依存細胞株(例えば、32D又はBa/F3)を使用する。他の実験では、32D細胞の、感染率の高いサブ細胞株(Warren Pear博士から調達可能)を使用する。他の実験では、VSV−G発現プラスミドpVSV−GをpHIT123の代わりに使用する。フローソーティングによる生存細胞の選別法の代わりに、表面マーカ又は選別可能なレポータを使用する。他の実験では、tet存在下で、ライブラリをtet−誘導GFP保有細胞株に感染又はトランスフェクトさせ、tetを除去した後のGFPを選択し、クローンする。他の実験では、G1E細胞(マウスの前赤芽球細胞株)に、幹細胞因子(stem-cell factor:SCF)を除去することでアポトーシスを引き起こす。
【0277】
他の実験では、通常の致死条件下を生存できる細胞の選択を可能にするモデルシステムでRNAi選択を使用する。例えば、幾つかの疾患では、それらの疾患を引き起こす変異は、正常な細胞が耐える条件下で細胞死を引き起こす。変異細胞にランダムなshRNAライブラリを導入し、細胞を選択条件下で培養し、生存する細胞を選択することによって、細胞を救うRNAi配列を特定することができる。
【0278】
≪実施例11:生存能力の高いフリードライヒ失調症(FRDA)細胞の選択のためのインビトロ・モデルシステムの画定≫
【0279】
初代FRDA線維芽細胞は、正常な対照線維芽細胞よりも酸化的ストレスに対しての感受性がより高い。Jauslinら(Hum Molec Gen 11 : 3055, 2002)は、グルタチオン合成における律速酵素を阻害するためにL−ブチオニン(S,R)−スルホキシミン(BSO)を使用したところ、全ての初代FRDA線維芽細胞が実質的に死滅し、正常な対照線維芽細胞が生存を維持する濃度(0.05mM)を発見した。
【0280】
他の実験では、BSOの処理時間を16〜48時間、BSOの濃度を0.001、0.05、及び0.1mMに設定して試験を行った。0.3mg/mlの完全飽和ヒトトランスフェリン(これらの細胞がミトコンドリア鉄を蓄積する傾向を悪化させる)を添加した1mMのBSO含有の培地にこれらの細胞を培養することでグルタチオンを欠失させると、48時間後、6ウエルのプレート上の全ての細胞は死滅した。一方、齢及び継代が一致する対照細胞は生存していた。細胞を洗浄し、標準培地を再び加え、コロニーの形成をみることで、100%の細胞が死滅する最低条件を確認した。
【0281】
≪実施例12:FRDA線維芽細胞の死を阻害することができるRNA分子を特定するための、shRNAの使用≫
【0282】
本発明に係るランダムなRNAのライブラリをレトロウイルスベクターとしてパッケージングした。ヒト細胞への感染のための高力価のレトロウイルスを生成するために、293T細胞を、レトロウイルスベクターのライブラリ、pHIT456(ヒト細胞に対して両指向性)、及びpCPG(gag−polを発現するプラスミド)で共トランスフェクトし、36時間後に培養液の上清を採取した。ライブラリを初代FRDA線維芽細胞に加え、FRDA細胞に対して致死的であるが、正常な対照細胞に対して致死的でない濃度の酸化剤の存在下で生存する線維芽クローンを選択した(293T細胞に関する上記の実施例で記載したように、付着細胞を選択)。有効な配列をPCRで調べ、実施例7〜9に記載したように、陽性ベクターを初代FRDA線維芽細胞に再接触させることで確認した。
【0283】
≪実施例13:幹細胞の長期の増殖を誘発することができるRNA分子を特定するshRNAライブラリの使用≫
【0284】
細胞表面マーカであるCD34は、造血幹細胞が分化するときにその細胞から消失することが知られている。他の実験では、shRNAのライブラリを、これらの細胞に感染又はトランスフェクトさせ、細胞を培養し、対照培養液における細胞がCD34の発現を完全に失う後もCD34を保持する細胞を選択する。このように、造血幹細胞を分化させずに培養することを可能にするRNAiを決定することができる。他の実験では、確認試験のために、実施例8に記載したように、特定したRNAi配列を含む可逆的な形態の阻害RNA(例えば、インビトロで合成したsiRNA)を作成する。この新しい形態のRNAを造血幹細胞に加えると、CD34の発現が可逆的に維持されることが示される。
【0285】
≪実施例14:幹細胞の多分化能を維持させることができるRNA分子を特定するための、shRNAライブラリの使用≫
【0286】
他の実験では、幹細胞の多分化能を維持させることができるRNA配列を特定するために、本発明に係るランダムなRNAライブラリを使用する。ランダムなshRNAライブラリを、幹細胞株(例えば、LRK1細胞)に感染又はトランスフェクトさせ、細胞が分化する条件下(LRK1細胞の場合、IL−6の非存在下)で培養し、幹細胞のコロニーを確認する。幹細胞コロニーが保有するベクターを回収し、幹細胞の多分化能を維持させることができるRNAを特定するために、配列決定を行う。他の実験では、確認試験のために、実施例8に記載したように、特定したRNAi配列を含む可逆的な形態の阻害RNAを作成する。この新しい形態のRNAをLRK1細胞に加えると、自己複製及び/又は未分化状態が可逆的に維持されることが示される。
【0287】
他の実験では、多分化能を維持する配列を特定するために、Chambersらが記載した方法(Functional expression cloning of Nanog, a pluripotency sustaining factor in embryonic stem (ES) cells. Cell 113, 643-55 (2003))において、LRK1細胞を使用する。本発明に係るRNAiライブラリを、LRK1細胞にトランスフェクト/感染させ、サイトカイン非存在下の自己複製細胞を選択し、プールする。次に、shRNA配列をPCRで調べ、親ベクターに再連結する。次に、単一の未分化コロニーからプラスミドを調製する前に真陽性細胞が十分に濃縮するようにするために、これらのベクターを1回以上LRK1細胞に再導入する。他の実験では、活性配列を含むクローンは、サイトカイン非存在下の幹細胞コロニー(形態的に、且つアルカリンホスファターゼ染色によって特定可能)の形成で確認する。
【0288】
≪実施例15:前駆細胞が目的の細胞型に分化するのを誘導することができるRNA分子を特定するための、shRNAの使用≫
【0289】
他の実験では、前駆細胞が目的の細胞型に分化するのを誘導することができるRNA配列を特定するために、本発明に係るランダムなRNAライブラリを使用する。例えば、前骨髄細胞であるHL60細胞の分化(例えば、好中球への)、白血病細胞株であるU937細胞の分化(例えば、単球への)、又は赤血球細胞株であるG1Eの分化(例えば、赤血球系細胞への)を確認する。分化は、マーカタンパク質(例えば、Ter−119又はCD11b)の発現又は形態的基準(例えば、プラスチックへの付着性)で特定することができる。
【0290】
他の実験では、細胞を未分化培地で培養し、GFP及びCD11b(HL60及びU937細胞)、又はGFP及びTer−119(G1E細胞)に関してフローサイトメトリを行う。GFP(ベクターの存在の指標である)、及び最も高いレベルの適切な分化マーカを発現する対照細胞よりも高いレベルの分化マーカを発現する細胞をゲートオン(gate on)(選択)する。フローソーティングしたHL60及びU937細胞の分化は、細胞のプラスチックへの付着でさらに確認することができる。分化の他のマーカとして、CD14発現、及びWright-Giemsa染色による細胞形態がある。C1E細胞は、小さなヘモグロビン化コロニーを形成し、ベンジジン及びバンド3陽性になり、前赤芽球形態にシフトする。
【0291】
他の実験では、ランダムなRNAライブラリを、胚幹(ES)細胞(他の実施形態では、ヒトES細胞又はマウスES細胞)の分化を誘導するRNA配列を特定するために使用する。他の実施形態では、トランスフェクトされたES細胞をマウスに導入し、数週間後にマウスを屠殺し、様々な組織からGFP陽性細胞を単離し、細胞が有する配列を調べる。これらの配列は、細胞が特定の種類の細胞に分化する際に重要な役割を果たす。
【0292】
他の実施形態では、血管内皮細胞、横紋筋細胞、心筋細胞、骨細胞、早期胚中葉細胞、内胚葉由来細胞、原始内胚葉細胞(例えば、内胚葉)、卵黄嚢内臓内胚葉(yolk sac visceral endoderm)、外胚葉由来細胞、神経様細胞、又は他の公知の細胞へのES細胞の分化を検出する。他の実験では、目的の細胞型へ分化した細胞を選択するために、細胞分類法を使用する。ランダムなshRNAライブラリを前駆細胞に感染又はトランスフェクトさせ、完全に又は部分的に分化した細胞を単離する。分化した細胞が保有するベクターを回収し、その配列を決定することで、目的の細胞型への前駆細胞の分化を誘導するRNA配列を特定する。他の実験では、確証試験を行うため、特定したRNAi配列を含む阻害RNAの可逆的な他の形態のものを、実施例8に記載したように作成する。この新しい形態のRNAiを前駆細胞に加え、分化を誘導するのを確認する。
【0293】
≪実施例16:ウイルスの複製を防止する、又はウイルス感染若しくは細胞変性から細胞を保護することができるRNA分子を特定するための、shRNAライブラリの使用≫
【0294】
他の実験では、ウイルスの複製を防止する、又はウイルス感染若しくは細胞変性から細胞を保護することができるRNA分子を特定するために、本発明に係るRNAライブラリを使用する。本発明に係るRNAiライブラリを初代細胞又は細胞株に感染又はトランスフェクトさせ、その後に細胞変性ウイルス(他の実施形態では、ヒトリンパ球及びHIV−1ウイルス、又はカモ胚線維芽細胞(DEF)及びAHV−1を使用する)を前記細胞又は細胞株に感染させ、生存細胞を特定する。他の実験では、確証試験を行うため、特定したRNAi配列を含む阻害RNAの可逆的な他の形態のものを、実施例8に記載したように作成する。この新しい形態のRNAiを細胞に加え、可逆的に、ウイルス複製が防止される、又は細胞がウイルス感染若しくは細胞変性から保護されることを確認する。
【0295】
≪実施例17:本発明に係るRNA分子のさらなる改善≫
【0296】
上記の実施例の1つに記載したようにRNAiライブラリをスクリーニングした後に特定した配列を改善するために、ランダム変異導入法を使用する。他の実施形態では、変異性複製法(error-prone copying)を使用する。他の実施形態では、変異性PCRを使用する。変異性PCRによるランダム変異導入法は、Mn2+、高濃度のMg2+、及び濃度が互いに異なるdNTPの存在下にあるTaqポリメラーゼの低忠実度性を利用する。この方法、当該技術分野で公知である。ランダムに変異導入されたRNAi配列は、ある条件下では、shRNAのためのマッチした逆相補鎖を必要とするので、反復選択には、上記の実施例に記載されているライブラリ合成プロトコールの繰り返しが必要である。目的の効果が生じた細胞又は細胞群を単離し、変異性PCR法を使用して、図3又は図6に上部に示されているオリゴヌクレオチドの配列と一致する配列を増幅する。前記増幅は、例えば、(最終shRNAステムの29番目のヌクレオチドにも変異が導入できるように)N28配列の端から下流側へ1ヌクレオチド延びる完全にマッチしたプライマーを使用して、オリゴヌクレオチド配列の末端まで行われる。その結果、「ハーフブック」のライブラリが形成される。
【0297】
ランダムな変異導入の後に、上記の実施例の1つに記載したようにライブラリ構築を行った。第1のミスマッチ伸長プライマーは、他の実施形態では、異なるヌクレオチド(N28の直下流のランダムなヌクレオチドに相補的)で終端する4つのプライマーの等モル混合物であり、(最初のライブラリ作成で行ったような、4つのサブライブラリの混合が必要ではない)、それぞれの「29番目」のヌクレオチドは異なる。図4の上部に示されているオリゴヌクレオチドの同等物に相補的なDNA鎖が1回の伸長反応で存在するが、第1の陥凹伸長プライマーの1回の伸長産物のみがヘアピンループリンカーにアニールする。
【0298】
所定の配列のサブライブラリを、上記の実施例の1つの記載にしたがって(オリジナルの配列が対照に含まれる点を除いて)、標的細胞に導入する。幾つかの実験では、shRNA構築産物の効果の増大は、(1)選択に使用された元の条件下でより多くの細胞が生存している、(2)選択に使用された元の条件下で生存期間がより長い、又は(3)より悪い条件下で生存すると定義される。対照shRNAに対してわずかな改善を示す(選択に使用した元の条件下での生存期間がよりわずかであるなど)、最初に特定されたRNA分子に関しては、より有効な配列を選択するのに第2の基準が最も重要なものとなるであろう。最初の確認分析でより長期間に細胞を救うRNA分子に関しては、より有効な配列を選択するのに第2の基準が最も重要なものとなるであろう。このような配列に関しては、100%の死滅率ための新たな最低条件を確立するために、より悪い条件で試験する必要がある。
【0299】
他の実験では、本発明に係るRNAi分子をエンコードする全遺伝子(即ち、二本鎖領域を形成する両方の部分及び介在領域、又は「ブック全体」(whole book))を低忠実度的な方法で複製、ブック全体のサブライブラリ発現ベクターなどに挿入又はサブクローンし、得られたサブライブラリを、上記の方法にしたがって、標的細胞に導入する。
【0300】
他の実験では、HL60、U937、及びG1E細胞に関して、shRNA構築物の効果の増大は、分化マーカの発現がより高い、分化マーカを発現する細胞がより多い、又は発現されている分化マーカの範囲がより広いと定義される。LRK1細胞に関しては、shRNA構築物の効果の増大は、未分化コロニーの数がより多い、又はより多くの経路にわたる未分化の維持を意味する。
【0301】
他の実験では、RNA分子をエンコードするベクターを感染又はトランスフェクトさせた細胞を追跡し、その配列のサブライブラリで感染又はトランスフェクトさせた細胞と比較する。他の実施形態では、特定した配列をPCRで調べる。他の実施形態では、配列が正しいか否か及びその活性は、実施例8に記載したように確認する。
【0302】
他の実施形態では、2次配列の効果が1次配列のものよりも著しく向上している場合は、2次配列に対して反復選択をもう1回行う。他の実施形態では、他の方法(例えば、テトラゾリウム染色還元アッセイを使用して)で改善配列を試験する。FRDAに関して記載した選択アッセイは酸化的ストレスに基づくが、抗酸化保護自体に関連しないFRDA細胞の特徴を改善するRNA分子を得るのにこのアッセイを使用することができる。その理由は、選択アッセイが、正常な対照線維芽細胞が生存できる酸化的ストレス条件下で行われるためである。したがって、FRDA細胞を正常な細胞に近づける干渉は、他の実施形態では、アッセイでの生存性を改善する。一部のshRNAは、フラタキシン(frataxin)発現を阻害するトリヌクレオチド反復伸長(tri-nucleotide repeat expansion)又はトリヌクレオチド反復伸長によって形成されるトリプレックスDNAに影響を及ぼすことが知られている。これは、ノーザン又はウエスタンブロットを使用してフラタキシン発現の増加を測定することで確認できる。他の実施形態では、上記のプロセスにより、改善した配列を特定することができる。
【0303】
≪実施例18:疾患の薬剤標的の特定及び幹細胞への応用のための、本発明に係るRNA分子の使用≫
【0304】
他の実施形態では、改善した配列は、薬剤標的の可能性を有する個々の遺伝子に関与する。候補遺伝子は、ヒトゲノムのデータベースをホモロジー検索することで特定する(とりわけ、改善した配列の最初の22ヌクレオチドで)。候補遺伝子は、同じ遺伝子からの異なるmRNA配列を標的にする個々のshRNAを使用することで確認する。ウエスタン分析、ノーザン分析、及び/又は量的RT−PCRを行って対照shRNAと比較し、非特異的な効果を除外することでさらに確証することができる。所望に応じて、shRNAの効果を無効にするが、エンコードされたアミノ酸を改変しない変異で標的遺伝子を再発現させて表現形(例えば、酸化的ストレスからの救済)を反転させることで最終確認を行う。
【0305】
他の実験では、改善した配列は、複数の標的遺伝子に関与する。これは、マイクロアレイ解析によって確認することができる。
【0306】
他の実施形態では、RNAi分子の作用機構を決定し、薬剤標的を特定するための追加実験を行う。前記RNAi分子の作用機構として、例えば、FRDA細胞の場合、ミトコンドリア鉄の排出の増加及びミトコンドリア鉄の取り込みの減少、鉄硫黄クラスターの安定化又はフラタキシン安定性及び機能の増大、抗酸化保護の増大、代謝効果を介してミトコンドリアに対する要求性の回避、FRDA遺伝子の最初のイントロンでトリヌクレオチド反復伸長によって形成されたトリプレックスDNAへの作用によるフラタキシン発現の増大がある。
【0307】
≪実施例19:治療RNA配列を特定するための、コンピュータで作成されたshRNAの使用≫
【0308】
コンピュータ及びオリゴヌクレオチド合成器を使用して、下記のように、65,500個のランダムなshRNA分子を含むshRNAライブラリを作成した。
【0309】
サブクローニングのための適切なフランキング配列と、RNA分子をエンコードする遺伝子を含む内部分とを含む65,500個の配列のセットを作成した。尚、エンコードされた前記RNA分子の(a)1〜22番目の残基はランダムであり、(b)その次の3〜20残基は定常及び非パリンドロームであり、(c)次の22残基は最初の22残基に対して相補的である。或いは、エンコードされた前記RNA分子の(a)1〜8番目の残基はランダムであり、(b)9〜22番目の残基は定常であり、(c)その次の5〜20残基は定常及び非パリンドロームであり、(d)その次の22残基は最初の22残基に対して相補的である。或いは、二本鎖領域の1及び9〜22番目の残基は定常であり、一方、他の部分はランダムである。或いは、二本鎖部分の他の任意の部分が定常であり、残りの部分がランダムである。幾つかの実験では、公知及び/又は天然型RNAi分子由来のループ配列を使用する。しかしながら、当業者ならば、非公知のループ配列などの様々な配列がこの方法に適切であることを理解できるであろう。また、二本鎖領域のRNA分子が22ヌクレオチドである必要がなく、6〜30ヌクレオチドの間(6及び30ヌクレオチドを含めて)なら如何なる長さであってもよいことを理解できるであろう。他の実験では、29ヌクレオチドの二本鎖領域が使用されている場合、全29ヌクレオチド領域に変異が導入されている。
【0310】
コンピュータ作成の配列でオリゴヌクレオチド合成器をプログラム化する。65,500個のshRNAをエンコードする配列のそれぞれをその相補配列とアニールさせ、プールとして、適切な発現ベクターに連結する。これによって、18兆個の可能な22mershRNAコード配列のランダムなサンプリングを代表する65,500のランダムなshRNAコード配列のライブラリが作成される。
【0311】
他の実験では、実施例7〜16に記載したように、このライブラリを目的の疾患又は表現形の細胞モデルで試験する。有効な配列をPCRで調べ、実施例7〜13に記載したように、陽性ベクターを細胞に再接触させることでその有効性を再確認する。
【0312】
≪実施例20:RNA分子のさらなる改善≫
【0313】
上記の実施例に記載したようにRNAiライブラリをスクリーニングした後に特定した配列を改善するために、配列に突然変異を導入する。他の実施形態では、変異性複製法(error-prone copying)を使用する。他の実験では、変異性PCRを使用する。変異性PCRによるランダム変異導入法は、Mn2+、高濃度のMg2+、及び濃度が互いに異なるdNTPの存在下にあるTaqポリメラーゼの低忠実度性を利用する。この方法、当該技術分野で公知である。ランダムに変異導入されたRNAi配列は、ある条件下では、shRNAのための逆相補鎖を必要とするので、反復選択には、上記の実施例に記載されているライブラリ合成プロトコールの繰り返しが必要である。目的の効果が生じた細胞又は細胞群を単離し、図3又は図6の上部に示されているオリゴヌクレオチドの配列と一致する配列を増幅する。前記増幅は例えば、(最終shRNAステムの29番目のヌクレオチドにも変異が導入できるように)N28配列の端から下流側へ1ヌクレオチド延びる完全にマッチしたプライマーを使用して、オリゴヌクレオチド配列の末端まで行われる。その結果、「ハーフブック」のライブラリが形成される。
【0314】
ランダムな変異導入の後に、上記の実施例の1つに記載したようにライブラリ構築を行った。第1のミスマッチ伸長プライマーは、他の実施形態では、異なるヌクレオチド(N28の直下流のランダムなヌクレオチドに相補的)で終了する4つのプライマーの等モル混合物であり、(最初のライブラリ作成で行ったような、4つのサブライブラリの混合が必要ではない)、それぞれの「29番目」のヌクレオチドは異なる。図4の上部に示されているオリゴヌクレオチドの同等物に相補的なDNA鎖が1回の伸長反応で存在するが、第1の陥凹伸長プライマーの1回の伸長産物のみがヘアピンループリンカーにアニールする。
【0315】
他の実験では、上記の実施例で特定された配列の変異体は、下記のようにコンピュータ及びオリゴヌクレオチド合成器を使用して作成した。
【0316】
サブクローニングのための適切なフランキング配列と、RNA分子をエンコードする遺伝子を含む内部分とを含む配列のセットを作成した。エンコードされた前記RNA分子の(a)1〜22番目の残基の一部は定常である(上記の実施例で特定されたRNA配列に基づいて)のに対して、残りの部分はランダムであり、(b)その次の3〜20残基は定常及び非パリンドロームであり、(c)その次の22残基は最初の22残基に対して相補的である。他の実験では、シード配列(二本鎖領域の約1〜8番目の残基)は定常であるのに対して、二本鎖領域の残りの部分は多様である。他の実験では、シード配列は多様であるのに対して、二本鎖領域の他の部分は定常である。他の実験では、シード配列の2〜8番目の残基は定常である。
【0317】
コンピュータ作成の配列でオリゴヌクレオチド合成器をプログラム化する。65,500個のshRNAをエンコードする配列のそれぞれをその相補配列とアニールさせ、プールとして、適切な発現ベクターに連結する。これによって、18兆個の可能な22mershRNAコード配列のランダムなサンプリングを代表する65,500のランダムなshRNAコード配列のライブラリが作成される。
【0318】
変異導入又はコンピュータのランダム化によるshRNAのランダム化の後、上記の実施例の1つに記載したように(オリジナルの配列が対照内に含まれる点を除いて)、所定の配列に関するサブライブラリを標的細胞に導入する。幾つかの実験では、shRNA構築産物の効果の増大は、(1)選択に使用された元の条件下でより多くの細胞が生存している、(2)選択に使用された元の条件下で生存期間がより長い、又は(3)より悪い条件下で生存すると定義される。対照shRNAに対してわずかな改善を示す(選択に使用した元の条件下での生存期間がよりわずかであるなど)、最初に特定されたRNA分子に関しては、より有効な配列を選択するのに第2の基準が最も重要なものとなるであろう。最初の確認分析でより長期間に細胞を救うRNA分子に関しては、より有効な配列を選択する上で、第3の基準が最も重要なものとなるであろう。このような配列に関しては、100%の死滅率のための新たな最低条件を確立するために、より悪い条件下で試験する必要がある。
【0319】
他の実験では、改善した配列を特定するために、実施例17に記載されたプロトコールの1つを使用してサブライブラリを試験する。
【図面の簡単な説明】
【0320】
【図1】部分的に自己相補的なRNA分子のための発現ベクターライブラリの作成方法(パートI)を示す図である。実施例3に記載。10以上のヌクレオチドを有する配列は、配列番号3〜6に示されている。
【図2】部分的に自己相補的なRNA分子のための発現ベクターライブラリの作成方法(パートII)を示す図である。実施例3に記載。上記以外の10以上のヌクレオチドを有する配列は、配列番号7〜12に示されている。
【図3】部分的に自己相補的なRNA分子のための発現ベクターライブラリの別の作成方法(パートI)を示す図である。実施例4に記載。上記以外の10以上のヌクレオチドを有する配列は、配列番号13〜17に示されている。
【図4】部分的に自己相補的なRNA分子のライブラリの別の作成方法(パートII)を示す図である。実施例4に記載。上記以外の10以上のヌクレオチドを有する配列は、配列番号18〜27に示されている。
【図5】部分的に自己相補的なRNA分子のライブラリの別の作成方法(パートII、非相補的なループ配列の作成)を示す図である。実施例4に記載。上記以外の10以上のヌクレオチドを有する配列は、配列番号28〜33に示されている。
【図6】部分的に自己相補的なRNA分子のライブラリの第3の作成方法(パートI)を示す図である。実施例5に記載。上記以外の10以上のヌクレオチドを有する配列は、配列番号34〜37に示されている。
【図7】部分的に自己相補的なRNA分子のライブラリの第3の作成方法(パートII)を示す図である。実施例5に記載。上記以外の10以上のヌクレオチドを有する配列は、配列番号38〜51に示されている。
【図8】部分的に自己相補的なRNA分子のライブラリの第3の作成方法(パートIII)を示す図である。実施例5に記載。上記以外の10以上のヌクレオチドを有する配列は、配列番号52〜53に示されている。
【図9】実施例5に記載の方法(のAarI/PmeI消化(図7の下部)の前の段階)にしたがって作成されたライブラリの中間体の配列データを示す図である。全クローンの配列が重なっているので、ランダム領域の各残基には、4種類の塩基が存在することが示されている。これは、これらの領域のランダム製を示すものである。この配列データは、予想通りの定常領域が存在し、ランダム領域においてバイアスが存在しないことを確認するものである。
【図10】完全なライブラリからの14クローンのランダムな(n29)領域の配列を示すデータである。配列にスキューイングが見られなかったことにより、方法が正確に行われ、最終産物が目的の産物に完全に一致したことがわかる。
【図11】最終ライブラリからの単一「クローン」の配列を示す図である。ここに、示されているのは、N28のランダム配列、それに続く「G」残基(オリジナルの一本鎖(ss)DNA分子の第2の定常領域の5´末端由来)、それに続くループ配列、「C」残基、及びN28の逆相補鎖(n28)である。この配列は、図8の下部の下の鎖(上下を逆にした場合)と一致する。これは、最終産物が目的の産物に完全に一致することを示すものである。
【図12】48時間前にpQe2に感染させられたDLD1細胞のフローサイトメトリ解析を示す図である。A:生細胞をゲートするための前方散乱対側方散乱である。非凝集細胞を濃縮するために、第2のゲーティング(前方散乱対側方散乱幅)を行った。B:eGFP発現に関する感染細胞のフローサイトメトリ解析である。パネルAからゲートされた細胞の約30%がeGFPを発現する。C:eGFP発現に関する感染細胞のフローサイトメトリ解析である。ゲートされた細胞の約50%がeGFPを発現した。
【図13】抗GFPshRNAを使用したpQe2試験を示す図である。左のパネル:pQe2のみでトランスフェクトされた293T細胞。右のパネル:GFPを標的にしたshRNA構築物を含むpQe2でトランスフェクトされた293T細胞。トランスフェクションの有効性は、細胞におけるGFPの低レベルの発現によって確認された。
【図14】約30%のFL5.12細胞のレトロウイルス感染を示す図である。
【図15】複数回のIL−3除去及び再添加の後の、300Kライブラリで感染したGFP陽性細胞の濃縮を示す図である。
【図16】IL−3除去の15時間後の、選択されたshRNA配列(「ブック」)に感染させられたFL5.12細胞の生存率(y軸)を示す図である。2日後にも同様の2:1の生存比が確認された(レベルはより低かった)。尚、対照53はランダムなブックであり、pSirenはベクターである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランダム配列の二本鎖領域を有するリボ核酸(RNA)分子の発現ベクター、そのセット及びライブラリ、その生成方法、並びに、生物学的パラメータに影響を及ぼす能力を有するRNA薬剤若しくはRNA分子を同定するための、目的とする疾患又は障害を標的にする薬剤を同定するための、及び目的とする生物学的パラメータに影響を及ぼす改変された能力を有するRNA分子変異体を同定するための各方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
当該技術分野では、長年に渡り、ランダム配列の阻害性ヘアピンRNAライブラリが求められていた。そのようなライブラリは、生物活性を有する治療用RNA分子及び生物活性を有するRNA分子の同定において重要な役割を果たすが、RNAライブラリのランダム化及び生成のための従来の方法には限界があるため、合成するのは非常に困難であった。このような限界のため、ランダムds(二本鎖)RNA配列を含有するライブラリは完全にパリンドロームであり、そのためにRNAi用途に使用するのには適さない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、ランダム配列の二本鎖領域を有するリボ核酸(RNA)分子の発現ベクター、そのセット若しくはライブラリ、その生成方法、並びに、生物学的パラメータに影響を及ぼす能力を有するRNA薬剤若しくはRNA分子を同定するための、目的とする疾患又は障害を標的にする薬剤を同定するための、及び目的とする生物学的パラメータに影響を及ぼす改変された能力を有するRNA分子変異体を同定するための各方法を提供する。
【0004】
ある実施形態では、本発明は、リボ核酸(RNA)分子のセット若しくはライブラリを発現する組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを提供する。前記RNA分子のセット若しくはライブラリの個々のRNA分子は、(a)実質的にランダム配列の第1の領域、(b)非自己相補的な第2の領域、及び(c)前記第1の領域に実質的に相補的な第3の領域を有する。他の実施形態では、前記個々のRNA分子は、部分的に二本鎖の二次構造を持っている。他の実施形態では、前記非自己相補的な第2の領域は、前記ランダム配列の二本鎖領域における二本鎖の間に位置している。他の実施形態では、前記二本鎖領域(本明細書中では「ds領域」とも称する)は、前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリによって異なる。他の実施形態では、前記非自己相補的な領域は、前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリに共通する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0005】
他の実施形態では、本発明は、リボ核酸(RNA)分子のセット若しくはライブラリを発現する組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを作成する方法を提供する。
当該方法は、
a.一本鎖核酸中間体Iから核酸中間体IIを得るステップであって、
前記一本鎖核酸中間体Iが、(i)第1の定常領域、(ii)ランダム配列領域、及び(iii)第2の定常領域を有し、
前記核酸中間体IIが、(i)前記一本鎖核酸中間体I、(ii)介在領域、及び(iii)前記一本鎖核酸中間体Iとハイブリダイズする領域を有する該ステップと、
b.前記核酸中間体IIから、前記核酸中間体II及び前記核酸中間体IIとハイブリダイズする核酸分子を含む二本鎖中間体IIIを得るステップであって、
前記二本鎖中間体IIIが、
(i)前記第1の定常領域又はその断片の第1の二本鎖コピー、
(ii)前記ランダム配列領域の第1の二本鎖コピー、
(iii)前記第2の定常領域の第1の二本鎖コピー、
(iv)前記介在領域の二本鎖コピー、
(v)前記第2の定常領域の第2の逆位二本鎖コピー、
(vi)前記ランダム配列領域の第2の逆位二本鎖コピー、及び
(vii)前記第1の定常領域又はその断片の第2の逆位二本鎖コピーを有し、
前記第2の定常領域の前記第1の二本鎖コピーと前記第2の定常領域の前記第2の逆位二本鎖コピーとが、
(i)前記第2の定常領域の前記第1の二本鎖コピーは第1の制限酵素の基質となるが、前記第2の定常領域の前記第2の逆位二本鎖コピーは前記第1の制限酵素の基質とならないような、或いは
(ii)前記第2の定常領域の前記第2の逆位二本鎖コピーは第2の制限酵素の基質となるが、前記第2の定常領域の前記第1の二本鎖コピーは前記第2の制限酵素の基質とならないような、制限酵素部位の非対称性を有する該ステップとを含み、
それによって、リボ核酸(RNA)分子のセット若しくはライブラリを発現する組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを作成する。他の実施形態では、前記一本鎖核酸中間体Iの前記3つの構成要素は、記載した順に、一本鎖核酸中間体Iの5´末端から3´末端へ配列される。他の実施形態では、前記核酸中間体IIの前記3つの構成要素は、記載した順に、核酸中間体IIの5´末端から3´末端へ配列される。他の実施形態では、前記二本鎖中間体IIIの前記7つの構成要素は、記載した順に、二本鎖中間体IIIの5´末端から3´末端へ配列される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0006】
他の実施形態では、本発明は、RNA分子のセット若しくはライブラリを発現することができる組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを作成する方法を提供する。当該方法は、
(a)ヌクレオチド中間体Iを合成するステップであって、
前記ヌクレオチド中間体Iが、
(i)(1)実質的にランダム配列であるか、或いは(2)実質的にランダム配列の第1のサブ領域と前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリに共通する第2のサブ領域とから成るかのいずれかの、長さが6〜30ヌクレオチドの可変領域、
(ii)長さが3〜20ヌクレオチドの非パリンドロームの定常領域、及び
(iii)前記可変領域とハイブリダイズすることができる相補領域を有する該ステップと、
(b)前記ヌクレオチド中間体Iとハイブリダイズすることができる第2のヌクレオチド分子を合成するステップと、
(c)前記ヌクレオチド中間体Iを前記第2のヌクレオチド分子にアニールすることによって、前記可変領域、前記非パリンドロームの定常領域及び前記相補領域の各二本鎖コピーを有する二本鎖産物を生成するステップとを含み、
それによって、リボ核酸(RNA)分子のセット若しくはライブラリを発現することができる組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを作成する。
【0007】
他の実施形態では、本発明は、二本鎖の二次構造を持つランダム配列領域を有するRNA分子を生成する組換え型ウイルスのセット若しくはライブラリであって、本発明に係る方法によって作成された組換え型ウイルスのセット若しくはライブラリを提供する。
【0008】
他の実施形態では、本発明は、ランダム配列の二本鎖領域を有するリボ核酸(RNA)分子の発現ベクターであって、本発明に係る方法によって同定された発現ベクターを提供する。
【0009】
他の実施形態では、本発明は、ウイルス感染に対する耐性を細胞に付与する方法であって、前記細胞に、本発明に係る発現ベクター又はRNA分子を接触させるステップを含む方法を提供する。
【0010】
他の実施形態では、本発明は、ウイルスの対象内での複製能力を抑制又は阻害する方法であって、前記対象に、本発明に係る発現ベクター又はRNA分子を接触させるステップを含む方法を提供する。
【0011】
他の実施形態では、本発明は、細胞の目的とする細胞型への分化を誘導する方法であって、前記細胞に、本発明に係る発現ベクター又はRNA分子を接触させるステップを含む方法を提供する。
【0012】
他の実施形態では、本発明は、細胞の長期増殖を誘導する又は細胞の多分化能を維持する方法であって、前記細胞に、本発明に係る発現ベクター又はRNA分子を接触させるステップを含む方法を提供する。
【0013】
他の実施形態では、本発明は、本発明に係る方法によって生成された発現ベクターのセット若しくはライブラリであって、ランダム配列の二本鎖領域を有するRNA分子を生成する発現ベクターのセット若しくはライブラリを提供する。
【0014】
他の実施形態では、本発明は、ランダム配列の二本鎖領域を有するRNA分子の発現ベクターであって、本発明に係る方法によって同定された発現ベクターを提供する。
【0015】
他の実施形態では、本発明は、本発明に係る発現ベクターによってエンコードされたRNA分子を提供する。
【0016】
他の実施形態では、本発明は、ランダム配列の二本鎖領域を有するRNA分子であって、本発明に係る方法によって同定されたRNA分子を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、ランダム配列の二本鎖領域を有するリボ核酸(RNA)分子の発現ベクター、そのセット若しくはライブラリ、その生成方法、並びに、生物学的パラメータに影響を及ぼす能力を有するRNA薬剤若しくはRNA分子を同定するための、目的とする疾患又は障害を標的にする薬剤を同定するための、及び目的とする生物学的パラメータに影響を及ぼす改変された能力を有するRNA分子変異体を同定するための各方法を提供する。
【0018】
ある実施形態では、本明細書中の実施例5に例示するように、本発明は、リボ核酸(RNA)分子のセット若しくはライブラリを発現する組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを提供する。前記RNA分子のセット若しくはライブラリの個々のRNA分子はそれぞれ、(a)第1の可変領域、(b)非自己相補的な第2の領域、及び(c)前記第1の領域に実質的に相補的な第3の領域を有する。他の実施形態では、前記非自己相補的な第2の領域は、前記二本鎖可変領域における二本鎖の間に位置している。他の実施形態では、前記二本鎖領域は、前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリによって異なる。他の実施形態では、前記非自己相補的な領域は、前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリに共通する。他の実施形態では、前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリの個々の組換え型発現ベクターはそれぞれ、1種類のRNA分子を発現する。他の実施形態では、前記RNA分子のセット若しくはライブラリの各RNA分子は、上記に列挙した前記3つの領域を有する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0019】
他の実施形態では、前記組換え型RNA分子内のランダム配列又は可変領域は、ヌクレオチド混合物をオリゴヌクレオチド合成装置に添加することによって生成される(実施例3〜5)。他の実施形態では、前記配列は、コンピューターを使用して生成される(実施例19)。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0020】
他の実施形態では、前記RNA分子の可変領域は、その全長に渡って実質的にランダムな配列を示す。他の実施形態では、前記可変領域は、実質的にランダム配列の第1のサブ領域と、前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリに共通する第2のサブ領域とを有する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0021】
他の実施形態では、実質的にランダム配列の前記サブ領域の長さは、27ヌクレオチド(nt)である。他の実施形態では、前記長さは、19ntである。他の実施形態では、前記長さは、6ntである。他の実施形態では、前記長さは、7ntである。他の実施形態では、前記長さは、8ntである。他の実施形態では、前記長さは、9ntである。他の実施形態では、前記長さは、10ntである。他の実施形態では、前記長さは、11ntである。他の実施形態では、前記長さは、12ntである。他の実施形態では、前記長さは、13ntである。他の実施形態では、前記長さは、14ntである。他の実施形態では、前記長さは、15ntである。他の実施形態では、前記長さは、16ntである。他の実施形態では、前記長さは、17ntである。他の実施形態では、前記長さは、18ntである。他の実施形態では、前記長さは、20ntである。他の実施形態では、前記長さは、21ntである。他の実施形態では、前記長さは、22ntである。他の実施形態では、前記長さは、23ntである。他の実施形態では、前記長さは、24ntである。他の実施形態では、前記長さは、25ntである。他の実施形態では、前記長さは、26ntである。他の実施形態では、前記長さは、28ntである。他の実施形態では、前記長さは、29ntである。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0022】
他の実施形態では、前記サブ領域の長さは、6〜29ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、7〜29ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、8〜29ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、9〜29ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、10〜29ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、11〜29ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、12〜29ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、13〜29ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、14〜29ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、15〜29ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、7〜25ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、8〜25ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、9〜25ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、10〜25ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、11〜25ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、12〜25ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、13〜25ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、14〜25ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、15〜25ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、7〜21ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、8〜21ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、9〜21ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、10〜21ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、11〜21ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、12〜21ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、13〜21ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、14〜21ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、15〜21ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、7〜19ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、8〜19ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、9〜19ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、10〜19ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、11〜19ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、12〜19ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、13〜19ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、14〜19ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、15〜19ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、7〜17ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、8〜17ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、9〜17ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、10〜17ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、11〜17ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、12〜17ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、13〜17ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、14〜17ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、7〜15ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、8〜15ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、9〜15ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、10〜15ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、11〜15ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、7〜13ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、8〜13ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、9〜13ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、10〜13ヌクレオチドである。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0023】
「実質的にランダム」なる語は、他の実施形態では、例えばオリゴヌクレオチド合成装置における混合ntのプールの使用などのランダムプロセスによって作成された配列を指す。他の実施形態では、この語は、検出可能な配列バイアスの欠失を指す。他の実施形態では、この語は、最小配列バイアスを含む。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0024】
「非自己相補的」なる語は、他の実施形態では、パリンドロームでない配列を指す。他の実施形態では、この語は、部分的に自己相補的である配列を包含し、非自己相補的な領域も含む。他の実施形態では、この語は、部分的に自己相補的である配列を包含し、(非自己相補的な)ループ形成領域も含む。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0025】
「実質的に相補的」なる語は、他の実施形態では、本発明に係る方法において用いられる条件下で別の配列とハイブリダイズする配列を指す。他の実施形態では、この語は、オーバーハング以外は別の配列と相補的である配列を含む。他の実施形態では、前記配列は、1〜2のミスマッチを除いて他の配列と相補的である。他の実施形態では、前記配列は、1つのミスマッチを除いて相補的である。他の実施形態では、前記配列は、2つのミスマッチを除いて相補的である。他の実施形態では、前記配列は、3つのミスマッチを除いて相補的である。他の実施形態では、前記配列は、4つ以上のミスマッチを除いて相補的である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0026】
他の実施形態では、前記組換え型発現ベクターは、RNAポリメラーゼのプロモータをさらに含む。他の実施形態では、前記各組換え型発現ベクターは、各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0027】
他の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物の前記組換え型発現ベクターは、RNA分子のセット若しくはライブラリを発現させることができる。他の実施形態では、前記組換え型発現ベクターは、細胞集団に接触させた又は導入した場合に、前記RNA分子のセット若しくはライブラリを発現させることができる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0028】
他の実施形態では、前記組換え型発現ベクターは、既知の機能の阻害性RNA(inhibitory RNA:RNAi)分子をエンコードする遺伝子をさらに含む。他の実施形態では、前記組換え型発現ベクターのそれぞれが、既知の機能のRNAi分子をエンコードする遺伝子をさらに含む。他の実施形態では、前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリの大部分が、既知の機能のRNAi分子をエンコードする遺伝子をさらに含む。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0029】
他の実施形態では、前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリによって生成された前記RNA分子は、前記ランダム配列の二本鎖領域の二本鎖を連結するループ形成領域を有する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0030】
「パリンドローム(palindromic)」は、ある実施形態では、その逆相補鎖と同一の配列を有する一本鎖核酸分子を指す。AAGGCCTT配列は、パリンドロームの一例である。
【0031】
他の実施形態では、本明細書中の実施例5に例示するように、本発明は、リボ核酸(RNA)分子のセット若しくはライブラリを発現する組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを作成する方法を提供する。
当該方法は、
a.一本鎖核酸中間体Iから核酸中間体IIを得るステップであって、
前記一本鎖核酸中間体Iが、(i)第1の定常領域、(ii)可変領域、及び(iii)第2の定常領域を有し、
前記核酸中間体IIが、(i)前記一本鎖核酸中間体I、(ii)介在領域、及び(iii)前記一本鎖核酸中間体Iとハイブリダイズする領域を有する該ステップと、
b.前記核酸中間体IIから、前記核酸中間体II及び前記核酸中間体IIとハイブリダイズする核酸分子を含む二本鎖中間体IIIを得るステップであって、
前記二本鎖中間体IIIが、
(i)前記第1の定常領域又はその断片の第1の二本鎖コピー、
(ii)前記可変領域の第1の二本鎖コピー、
(iii)前記第2の定常領域の第1の二本鎖コピー、
(iv)前記介在領域の二本鎖コピー、
(v)前記第2の定常領域の第2の逆位二本鎖コピー、
(vi)前記可変領域の第2の逆位二本鎖コピー、及び
(vii)前記第1の定常領域又はその断片の第2の逆位二本鎖コピーを含有し、
【0032】
前記第2の定常領域の前記第1の二本鎖コピーと前記第2の定常領域の前記第2の逆位二本鎖コピーとが、
(i)前記第2の定常領域の前記第1のコピーは第1の制限酵素の基質となるが、前記第2の定常領域の前記第2の逆位コピーは前記第1の制限酵素の基質とならないような、或いは
(ii)前記第2の定常領域の前記第2の逆位コピーは第2の制限酵素の基質となるが、前記第2の定常領域の前記第1のコピーは前記第2の制限酵素の基質とならないような、制限酵素部位の非対称性を有する該ステップとを含み、
それによって、リボ核酸(RNA)分子のセット若しくはライブラリを発現する組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを作成する。他の実施形態では、前記一本鎖核酸中間体Iの前記3つの構成要素は、記載した順に、一本鎖核酸中間体Iの5´末端から3´末端へ配列される。他の実施形態では、前記核酸中間体IIの前記3つの構成要素は、記載した順に、核酸中間体IIの5´末端から3´末端へ配列される。他の実施形態では、前記二本鎖中間体IIIの前記7つの構成要素は、記載した順に、二本鎖中間体IIIの5´末端から3´末端へ配列される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0033】
他の実施形態では、本明細書中の実施例5に例示するように、本発明は、RNA分子のセット若しくはライブラリを発現することができる組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを作成する方法を提供する。
当該方法は、
(a)ヌクレオチド中間体Iを合成するステップであって、
前記ヌクレオチド中間体Iが、
(i)(1)実質的にランダム配列であるか、或いは(2)実質的にランダム配列の第1のサブ領域と前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリに共通する第2のサブ領域とから成るかのいずれかの、長さが6〜30ヌクレオチドの可変領域、
(ii)長さが3〜20ヌクレオチドの非パリンドロームの定常領域、及び
(iii)前記可変領域とハイブリダイズすることができる相補領域を有する該ステップと、
(b)前記ヌクレオチド中間体Iとハイブリダイズすることができる第2のヌクレオチド分子を合成するステップと、
(c)前記ヌクレオチド中間体Iを前記第2のヌクレオチド分子にアニールすることによって、前記可変領域、前記非パリンドロームの定常領域及び前記相補領域の各二本鎖コピーを含む二本鎖産物を生成するステップとを含み、
それによって、リボ核酸(RNA)分子のセット若しくはライブラリを発現することができる組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを作成する。他の実施形態では、前記ヌクレオチド中間体I及び前記ヌクレオチド分子の配列は、コンピューターを使用して生成される。他の実施形態では、前記配列は、当該技術分野で周知の他の任意の方法を用いて生成される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0034】
他の実施形態では、前記二本鎖産物の各末端は、制限酵素認識部位及び付着末端から、互いに独立して選択される機構(feature)をさらに含む。他の実施形態では、前記機構は、前記可変領域、前記非パリンドロームの定常領域、及び前記相補領域の前記各二本鎖コピーに隣接している。他の実施形態では、末端は、終端から約10ヌクレオチド以内の位置を指す。他の実施形態では、末端は、終端の位置を指す。他の実施形態では、末端は、前記可変領域、前記非パリンドロームの定常領域、及び前記相補領域の前記各二本鎖コピーに隣接する任意の位置を含む。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0035】
他の実施形態では、本発明に係るRNA分子の可変領域は、その全長に渡って実質的にランダムな配列を示す。他の実施形態では、前記可変領域は、実質的にランダム配列の第1のサブ領域と、前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリに共通する第2のサブ領域とを有する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0036】
本発明に係る方法及び組成物の核酸中間体IIは、他の実施形態では、一本鎖である。他の実施形態では、前記核酸中間体IIは、部分的に二本鎖の構造を有する。他の実施形態では、前記核酸中間体IIは、ヘアピン構造を有する。他の実施形態では、本発明に係る方法は、その後のステップを容易にするために、核酸中間体IIの部分的な二本鎖構造を開くステップを含む。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0037】
実施例5で説明する方法における第1及び第2の制限酵素の一例は、それぞれPmeI及びAarIである。様々な制限酵素がこの方法に適することは、当業者であれば理解できるであろう。
【0038】
他の実施形態では、本発明は、RNA分子のセット若しくはライブラリを発現する組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを作成する方法を提供する。
当該方法は、
(a)一本鎖核酸中間体Iから核酸中間体IIを得るステップであって、
前記一本鎖核酸中間体Iが、(i)第1の定常領域、(ii)ランダム配列領域、及び(iii)第2の定常領域を有し、
前記核酸中間体IIが、(i)前記一本鎖核酸中間体I、(ii)介在領域、及び(iii)前記一本鎖核酸中間体Iとハイブリダイズする領域を有する該ステップと、
(b)前記核酸中間体IIから、前記核酸中間体II及び前記核酸中間体IIとハイブリダイズする核酸分子を含む二本鎖中間体IIIを得るステップであって、
前記二本鎖中間体IIIが、
(i)前記第1の定常領域又はその断片の第1の二本鎖コピー、
(ii)前記ランダム配列領域の第1の二本鎖コピー、
(iii)前記第2の定常領域の第1の二本鎖コピー、
(iv)前記介在領域の二本鎖コピー、
(v)前記第2の定常領域の第2の逆位二本鎖コピー、
(vi)前記ランダム配列領域の第2の逆位二本鎖コピー、及び
(vii)前記第1の定常領域又はその断片の第2の逆位二本鎖コピーを有し、
【0039】
前記第2の定常領域の前記第1の二本鎖コピーと前記第2の定常領域の前記第2の逆位二本鎖コピーとが、
(i)前記第2の定常領域の前記第1の二本鎖コピーは第1の制限酵素の基質となるが、前記第2の定常領域の前記第2の逆位二本鎖コピーは前記第1の制限酵素の基質とならないような、或いは
(ii)前記第2の定常領域の前記第2の逆位二本鎖コピーは第2の制限酵素の基質となるが、前記第2の定常領域の前記第1の二本鎖コピーは前記第2の制限酵素の基質とならないような、制限酵素部位の非対称性を有する該ステップと、
(c)組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを遺伝子操作して、二本鎖中間体III又はその断片を含有させるステップとを含み、
それによって、RNA分子のセット若しくはライブラリを発現する組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを作成する。他の実施形態では、前記一本鎖核酸中間体Iの前記3つの構成要素は、記載した順に、一本鎖核酸中間体Iの5´末端から3´末端へ配列される。他の実施形態では、前記核酸中間体IIの前記3つの構成要素は、記載した順に、核酸中間体IIの5´末端から3´末端へ配列される。他の実施形態では、前記二本鎖中間体IIIの前記7つの構成要素は、記載した順に、二本鎖中間体IIIの5´末端から3´末端へ配列される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0040】
他の実施形態では、前記RNA分子のセット若しくはライブラリの各RNA分子は、ランダム配列の二本鎖領域を有する。
【0041】
他の実施形態では、上記の方法の1つは、図6〜8に示したようにして実施される。他の実施形態では、図6〜8に示したステップの全てが、本発明に係る方法では実施されるとは限らない。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0042】
「一本鎖」なる語は、他の実施形態では、全てのヌクレオチド塩基が共有結合によって互いに結合されている核酸分子を指す。この語は、他の実施形態では、部分的な二本鎖特性を有する核酸分子を含む。他の実施形態では、この語は、その大部分が二本鎖である核酸分子を含む。他の実施形態では、この語は、二本鎖領域を含む核酸分子を含む。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0043】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、「第1のコピー」、「第2のコピー」なる語は、領域やヌクレオチド分子などの同一のコピーを指す。他の実施形態では、「コピー」なる語は、ほぼ正確なコピーを指す。他の実施形態では、配列の第2のコピーは、配列の第1のコピーに対するミスマッチを含む。他の実施形態では、第2のコピーは、第1のコピーに対する2つのミスマッチを含む。他の実施形態では、第2のコピーは、第1のコピーに対する2つ以上のミスマッチを含む。他の実施形態では、第2のコピーは、第1のコピーに対する3つ以上のミスマッチを含む。他の実施形態では、第1及び第2のコピーは、互いに少なくとも60%相同である。他の実施形態では、両コピーは、互いに少なくとも70%相同である。他の実施形態では、両コピーは、互いに少なくとも80%相同である。他の実施形態では、両コピーは、互いに少なくとも90%相同である。他の実施形態では、両コピーは、互いに100%相同である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0044】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、第2の定常領域の第2の逆位二本鎖コピーは、第2の定常領域の第1のコピーの正確なコピーである。他の実施形態では、第2の逆位二本鎖コピーは、第1のコピーのほぼ正確なコピーである。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0045】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、ランダム配列領域の第2の逆位二本鎖コピーは、ランダム配列領域の第1のコピーの正確なコピーである。他の実施形態では、第2の逆位二本鎖コピーは、第1のコピーのほぼ正確なコピーである。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0046】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、第1の定常領域の第2の逆位二本鎖コピー又はその断片は、第1の定常領域の第1のコピー又はその断片の正確なコピーである。他の実施形態では、第2の逆位二本鎖コピーは、第1のコピーのほぼ正確なコピーである。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0047】
他の実施形態では、本明細書中の実施例5に例示するように、核酸中間体IIを得る前記ステップは、
a.前記一本鎖核酸中間体Iから、前記一本鎖核酸中間体I及び前記一本鎖核酸中間体Iとハイブリダイズするさらなる一本鎖核酸分子を有する二本鎖中間体IBを得るステップと、
b.前記二本鎖中間体IBから前記核酸中間体IIを得るステップとを含む。
【0048】
他の実施形態では、前記核酸中間体IIは、二本鎖中間体IBを使用せずに得られる(例えば、ヘアピン状の第2の定常領域を使用して得られる)。
【0049】
他の実施形態では、前記核酸中間体IIは、当該技術分野で周知の技術を用いて、一本鎖核酸中間体Iから得られる。前記を核酸中間体II得るための各方法は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0050】
他の実施形態では、前記二本鎖中間体IBを得る前記ステップは、
(a)前記一本鎖核酸中間体Iの前記第2の定常領域にプライマーをアニールするステップと、
(b)前記プライマーを伸長させるステップとを含む。他の実施形態では、前記プライマーは、前記第2の定常領域に対する1つ以上のミスマッチの残基を含む。他の実施形態では、前記プライマーの5´末端は、厳密には、前記一本鎖核酸中間体Iの3´末端と対合しない。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0051】
他の実施形態では、前記二本鎖中間体IBから前記二本鎖中間体IBを得るステップは、リンカー核酸分子を、前記一本鎖核酸中間体Iの3´末端、及び前記さらなる一本鎖核酸分子の5´末端に連結させることを含む。他の実施形態では、前記リンカー核酸分子は、ヘアピン状である。他の実施形態では、前記リンカー核酸分子は、ヘアピン状ではない。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0052】
本発明に係る方法の他の実施形態では、二本鎖中間体IB及びリンカー核酸分子は各々、異なる制限酵素の半分の部位を含み、平滑末端又は適合する付着末端を有する異なるコンセンサス配列を有するので、適切に連結させた産物は、前記酵素のいずれの基質ではない。一方、前記伸長されたプライマー又は前記ヘアピンループリンカーのいずれかのホモ二量体が切断され、その後、適切に連結させた産物を精製するためにサイズ分離法が用いられる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。付着末端は、便宜上、実施例3〜5で用いられるが、本発明に係る方法に必須ではない。
【0053】
本発明に係る方法及び組成物の核酸中間体は、他の実施形態では、ヘアピン構造を有する。他の実施形態では、前記核酸中間体IIは、二本鎖構造を有する。他の実施形態では、前記核酸中間体IIは、一本鎖構造を有する。他の実施形態では、前記核酸中間体IIは、一本鎖であるが、二本鎖の二次構造を有する(実施例5)。他の実施形態では、前記核酸中間体IIは、初期は二本鎖構造を有するが、本発明に係る方法における或る過程で一本鎖構造に開かれる(実施例3及び4)。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0054】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、前記二本鎖(double-stranded:ds)中間体IIIから環状中間体IVが得られる。前記環状中間体IVは、発現ベクターのバックボーンと、挿入部位としての、(a)前記ds中間体III、或いは(b)前記ds中間体IIIの断片であって前記ランダム配列領域の前記第1のdsコピー及び前記ランダム領域の前記第2の逆位dsコピーを含有する該断片とを有している。他の実施形態では、前記ds中間体IIIの断片は、前記ランダム配列領域の前記第1及び第2のdsコピーの間のds中間体IIIの全ての配列を含む。他の実施形態では、前記環状中間体IVは、(a)前記ランダム配列領域の前記第1のdsコピー、(b)前記前記ランダム配列領域の前記第2の逆位dsコピー、及び(c)それらの間のds中間体IIIの配列の断片を含む。他の実施形態では、前記環状中間体IVは、連結とによって、ds中間体IIIから得られる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0055】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、前記ds中間体IIIから環状産物が得られる。前記環状産物は、発現ベクターのバックボーンと、挿入部位としての、(a)前記ds中間体III、或いは(b)前記ds中間体IIIの断片であって、前記ランダム配列領域の前記第1のdsコピー、及び前記ランダム配列領域の前記第2の逆位dsコピーを有する該断片とを有している。他の実施形態では、前記ds中間体IIIの断片は、前記ランダム配列領域の前記第1及び第2のdsコピーの間のds中間体IIIの全ての配列を含む。他の実施形態では、前記環状産物は、(a)前記ランダム配列領域の前記第1のdsコピー、(b)前記ランダム配列領域の前記第2の逆位dsコピー、及び(c)それらの間のds中間体IIIの配列の断片を含む。他の実施形態では、前記環状産物は、連結によって、ds中間体IIIから得られる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0056】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、前記環状中間体IVを、上記した前記第1及び第2の制限酵素で消化することによって、線状中間体Vを形成する。
【0057】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、前記線状中間体Vを分子内で連結することによって、環状産物VIを形成する。他の実施形態では、本明細書中の実施例5に例示するように、前記分子内の結合によって、(i)一本鎖核酸中間体Iのランダム配列領域、(ii)非パリンドロームの介在領域、及び(iii)前記ランダム配列領域とハイブリダイズする領域を有する転写物を発現する発現ベクターが形成される。他の実施形態では、前記非パリンドロームの介在領域は、核酸中間体IIの介在領域の断片である。他の実施形態では、前記非パリンドロームの介在領域は、ループを形成することができる。他の実施形態では、前記線状中間体Vの前記3つの構成要素は、記載した順に、前記転写物の5´末端から3´末端へ配列される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0058】
各可能なさらなるステップは、本発明の別の実施形態に相当する。
【0059】
他の実施形態では、本明細書中の実施例5に例示するように、本発明は、RNA分子のセット若しくはライブラリを発現する組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを作成する方法を提供する。
前記方法は、
(a)一本鎖核酸中間体Iから二本鎖中間体IBを得るステップであって、
前記一本鎖核酸中間体Iが、5´末端から3´末端への順に、(i)第1の定常領域、
(ii)ランダム配列領域、及び(iii)第2の定常領域を有し、
前記二本鎖中間体IBが、一本鎖核酸中間体I及び前記一本鎖核酸中間体Iとハイブリダイズするさらなる一本鎖核酸分子を有する該ステップと、
(b)前記二本鎖中間体IBから、(i)一本鎖核酸中間体I、(ii)介在領域、及び(iii)前記さらなる一本鎖核酸分子を有する核酸中間体IIを得るステップと、
(c)前記核酸中間体IIから、核酸中間体II、及び前記核酸中間体IIとハイブリダイズするさらなる第3の一本鎖核酸分子を有する二本鎖中間体IIIを得るステップであって、
前記二本鎖中間体IIIが、
(i)前記第1の定常領域又はその断片の第1の二本鎖コピー、
(ii)前記ランダム配列領域の第1の二本鎖コピー、
(iii)前記第2の定常領域の第1の二本鎖コピー、
(iv)前記介在領域の二本鎖コピー、
(v)前記第2の定常領域の第2の逆位二本鎖コピー、
(vi)前記ランダム配列領域の第2の逆位二本鎖コピー、及び
(vii)前記第1の定常領域又はその断片の第2の逆位二本鎖コピーを有し、
前記第2の定常領域の前記第1の二本鎖コピーと前記第2の定常領域の前記第2の逆位二本鎖コピーとが、
(i)前記第2の定常領域の前記第1の二本鎖コピーは第1の制限酵素の基質となるが、前記第2の定常領域の前記第2の逆位二本鎖コピーは前記第1の制限酵素の基質とならないような、或いは
(ii)前記第2の定常領域の前記第2の逆位二本鎖コピーは第2の制限酵素の基質となるが、前記第2の定常領域の前記第1の二本鎖コピーは前記第2の制限酵素の基質とならないような、制限酵素部位の非対称性を有する該ステップと、
(d)前記二本鎖中間体IIIから、発現ベクターのバックボーン、及び挿入部位としての前記二本鎖中間体III若しくはその断片を有する環状中間体IVを得るステップと、
(e)前記第1及び第2の制限酵素によって前記環状中間体IVを消化することによって線状中間体Vを生成するステップと、
(f)前記線状中間体Vを分子内で連結することによって、5´末端から3´末端への順に、(i)前記第2の定常領域の前記第1の二本鎖コピー、(ii)ループ形成領域、及び(iii)前記第2の定常領域の前記第2の逆位二本鎖コピーを含む転写物を発現する発現ベクターを生成するステップとを含み、
それによって、RNA分子のセット若しくはライブラリを発現する組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを作成する。他の実施形態では、前記一本鎖(single-stranded:ss)核酸中間体Iの前記3つの構成要素は、記載した順に、一本鎖核酸中間体Iの5´末端から3´末端へ配列される。他の実施形態では、前記核酸中間体IIの前記3つの構成要素は、記載した順に、核酸中間体IIの5´末端から3´末端へ配列される。他の実施形態では、前記二本鎖中間体IIIの前記7つの構成要素は、記載した順に、二本鎖中間体IIIの5´末端から3´末端へ配列される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0060】
他の実施形態では、前記RNA分子のセット若しくはライブラリによってエンコードされる個々のRNA分子は、ランダム配列領域の二本鎖、及びランダム配列領域の2本の相補鎖の間にループ形成領域を有する。他の実施形態では、前記RNA分子のセット若しくはライブラリの各RNA分子は、ランダム配列領域の二本鎖、及びランダム配列領域の2本の相補鎖の間にループ形成領域を有する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0061】
他の実施形態では、上記の方法は、図6〜8に示したようにして実施される。他の実施形態では、図6〜8に示したステップの全ては、本発明に係る方法では実施されない。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する
【0062】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、前記一本鎖核酸中間体Iは、ヌクレオチド合成装置をプログラムすることによって生成され、(1)前記第1の定常領域の配列、(2)各位置でヌクレオチド混合物を使用して、ランダム領域、及び(3)第2の定常領域の配列を合成する。他の実施形態では、ss核酸中間体Iが、当該技術分野で周知の他の方法によって作成される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0063】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、本明細書中の実施例3〜5に例示するように、本発明に係る方法で使用される前記核酸分子及び中間体の各々は、DNA、又はその長さに沿って部分的に若しくは完全にバックボーン若しくは塩基組成(他の実施形態では、ホスホロチオエート結合)を改変したDNAから構成される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0064】
「定常」なる語は、他の実施形態では、核酸分子のライブラリ又はセット内で改変されていない又は不変の領域を指す。他の実施形態では、「定常」なる語は、核酸分子のライブラリのサブセット内で改変されていない又は不変の領域を指す。例えば、図1〜図8に示した方法における開始ヌクレオチド分子は各々、ランダム領域の5´及びランダム領域の3´において2つの定常領域を有する。他の実施形態では、この語は、ライブラリ内の異なる分子の定常領域間で生じる僅かな変化を含む。他の実施形態では、本発明のヌクレオチド分子の第1の定常領域及び第2の定常領域は互いに異なる定常配列を有する。他の実施形態では、第1の定常領域及び/又は第2の定常領域は、ライブラリ内で実質的に定常である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0065】
他の実施形態では、本発明は、ランダム配列の二本鎖領域を有するRNA分子の発現ベクターを生成する方法であって、上記の方法と同様であるが、発現ベクターのバックボーンに挿入する前に、二本鎖中間体IIIを消化する、或いは前記ランダム配列領域の2つのコピー間の前記介在配列の大部分を除去するために処理する方法を提供する。上記に列挙した全ての実施形態に対して、この方法を適用することができる。
【0066】
上述した方法の他の実施形態では、環状中間体IVを生成するのに使用されるds中間体IIIの断片は、前記ランダム配列領域の前記第1のdsコピー、及び前記ランダム配列領域の前記第2の逆位dsコピーを有する。他の実施形態では、前記断片は、ds中間体IIIの5つの中間部分を有する。前記5つの中間部分は、例えば、(i)前記ランダム配列領域の第1のdsコピー、(ii)前記第2の定常領域の第1のdsコピー、(iii)前記介在領域のdsコピー、(iv)前記第2の定常領域の第2の逆位dsコピー、及び(v)前記ランダム配列領域の第2の逆位dsコピーである。他の実施形態では、前記断片は、ds中間体IIIの7つの中間部分全てを有する。前記7つの中間部分は、例えば、(i)前記第1の定常領域の第1のdsコピー、(ii)前記ランダム配列領域の第1のdsコピー、(iii)前記第2の定常領域の第1のdsコピー、(iv)前記介在領域のdsコピー、(v)前記第2の定常領域の第2の逆位dsコピー、(vi)前記ランダム配列領域の第2の逆位dsコピー、及び(vii)前記第1の定常領域の第2の逆位dsコピーの断片である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0067】
「ハイブリダイズ」なる語は、本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、本発明に係る方法が実行される条件下で標的分子とハイブリダイズする分子を指す。例えば、本明細書の実施例3〜5に例示するように、使用される二本鎖中間体の各々は、前の中間体とハイブリダイズする新たな鎖を含む。他の実施形態では、この語は、厳密な条件下でのハイブリダイゼーションを指す。他の実施形態では、この語は、緩やかな条件下でのハイブリダイゼーションを指す。他の実施形態では、「厳密な条件下でのハイブリダイズ」なる語は、ハイブリダイゼーション及び洗浄のための条件であって、その条件下で、長さが18残基でかつ60%自己相補的である二本鎖ヌクレオチド分子が典型的にはハイブリダイズされたままであるような条件を指す。他の実施形態では、長さが18残基でかつ70%自己相補的である二本鎖ヌクレオチド分子が使用される。他の実施形態では、長さが18残基でかつ80%自己相補的である二本鎖ヌクレオチド分子が使用される。他の実施形態では、この語は、当該技術分野で周知の任意の他の定義に従って定義される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0068】
他の実施形態では、上記した方法の第1の定常領域又は本発明の類似方法の対応する定常領域は、二本鎖の形であるとき、ニッキングエンドヌクレアーゼの基質である。他の実施形態では、前記ニッキングエンドヌクレアーゼは、DNAニッキングエンドヌクレアーゼである。他の実施形態では、前記ニッキングエンドヌクレアーゼは、Nb.BbvC Iである。他の実施形態では、本明細書の実施例5に例示するように、前記二本鎖中間体IIIを得る前記ステップは、核酸中間体IIにニッキングエンドヌクレアーゼを接触させ、それによって、プライマーとしての使用に適した3´末端を生成し、前記プライマーを伸長させるステップを含む。他の実施形態では、前記核酸中間体IIは、前記ニッキングエンドヌクレアーゼによって消化される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0069】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、本明細書の実施例5に例示するように、伸長させる前記ステップは、鎖置換活性を有するポリメラーゼによって実行される。他の実施形態では、前記ポリメラーゼは、高い鎖置換活性を有する。他の実施形態では、鎖置換活性を有する前記ポリメラーゼは、DNAポリメラーゼである。他の実施形態では、前記ポリメラーゼはphi29である。他の実施形態では、前記ポリメラーゼはBstである。他の実施形態では、ポリメラーゼはVentである。他の実施形態では、前記Ventはexo−Ventである。他の実施形態では、前記ポリメラーゼは9oNmである。他の実施形態では、前記ポリメラーゼは、鎖置換活性を有する当該技術分野で周知の任意の他のポリメラーゼである。他の実施形態では、前記ポリメラーゼは、高度に前進型のポリメラーゼである。他の実施形態では、鎖置換因子の存在下で鎖置換複製を行うことができるDNAポリメラーゼは、鎖置換因子の非存在下ではDNAポリメラーゼが鎖置換複製を行わないとしても、本発明に係る方法において使用するのに適している。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0070】
「鎖置換活性」なる語は、他の実施形態では、合成中に遭遇する下流DNAを置換する能力を指す。
【0071】
「高度に前進型」なる語は、他の実施形態では、使用される条件下で、長いストレッチのDNAを連続合成することができるポリメラーゼを指す。他の実施形態では、前記ポリメラーゼは、1キロベースを超えるDNAを連続合成することができる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0072】
他の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物で使用されるニッキングエンドヌクレアーゼは、Nb.Bsm Iである。他の実施形態では、ニッキングエンドヌクレアーゼは、Nt.Alw Iである。他の実施形態では、ニッキングエンドヌクレアーゼは、Nt.BbvC Iである。他の実施形態では、ニッキングエンドヌクレアーゼは、Nt.BstNB Iである。他の実施形態では、ニッキングエンドヌクレアーゼは、Nb.BsrDIである。他の実施形態では、ニッキングエンドヌクレアーゼは、Nb.BtsIである。他の実施形態では、ニッキングエンドヌクレアーゼは、当該技術分野で周知の任意のエンドヌクレアーゼである。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0073】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、前記二本鎖中間体IBを得る前記ステップは、(a)前記一本鎖核酸中間体Iの前記第2の定常領域にプライマーをアニールするステップと、(b)前記プライマーを伸長させるステップとを含む。他の実施形態では、前記プライマーは、前記第2の定常領域に対する1つ以上のミスマッチを含む。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0074】
他の実施形態では、本明細書中の実施例3〜5に例示するように、本発明に係る方法及び組成物で使用されるプライマーの5´末端は、厳密には、標的核酸分子の3´末端と対合しない。他の実施形態では、この意図的な不対合は、サブクローンに使用される「付着末端」を有する二本鎖(ds)核酸分子を生成する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。「付着末端」は、ある実施形態では、オーバーハングを有する末端を指す。「平滑末端」は、ある実施形態では、オーバーハングを有さない末端を指す。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0075】
他の実施形態では、本明細書の実施例3〜5に例示するように、上記した方法の核酸中間体II又は本発明の類似方法の対応する中間体を得るステップは、リンカー核酸分子を、一本鎖核酸中間体Iの3´末端及びさらなる一本鎖核酸分子の5´末端に連結させるステップを含む。他の実施形態では、リンカー核酸分子はヘアピン状である。他の実施形態では、リンカー核酸分子は一本鎖である。他の実施形態では、リンカー核酸分子は、一本鎖核酸中間体I及びさらなる一本鎖核酸分子と共に、ヘアピン状構造を形成する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0076】
他の実施形態では、ヘアピンループリンカーのホモ二量体が分子間でアニールし、伸長するのならば、この発生は、前記ホモ二量体を融解温度まで予熱し、前記ホモ二量体を冷却し、その後、前記ホモ二量体を連結反応温度まで昇温させることによって、最小にされる。
【0077】
他の実施形態では、本明細書の実施例3に例示するように、上記方法のds中間体III又は本発明の類似方法の対応する中間体を得るステップは、核酸中間体IIにプライマーをアニールし、前記プライマーを伸長させ、それによって第3の一本鎖核酸分子を合成するステップを含む。他の実施形態では、伸長させる前記ステップは、鎖置換ポリメラーゼを用いて行われる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0078】
他の実施形態では、プライマーは、核酸中間体IIに対して1若しくは複数のミスマッチを含む。他の実施形態では、前記ミスマッチは、核酸中間体IIと第3のss核酸分子との間に、制限酵素部位の非対称性を形成する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0079】
本明細書の実施例5に例示するように、制限部位の非対称性の例としての環状中間体IVは制限部位の非対称性を有し、第2の定常領域の第1のコピーはAarIの基質となり(しかし、Pme Iの基質とはならない)、第2の定常領域の第2のコピーはPmeIの基質となる(しかし、Aar Iの基質とはならない)。この場合、非対称性は、ss I Bを生成するために使用されるミスマッチなプライマーによって形成される。様々な制限酵素がこの方法に適することは、当業者であれば理解できるであろう。
【0080】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、制限酵素部位の非対称性は、制限酵素の認識部位又は切断部位に対応する領域において、ミスマッチな残基を、本発明に係る方法及び組成物に使用される2つの別の相補的ヌクレオチド分子の間に組み入れることによって形成される。したがって、各鎖を後からコピーしてできた産物は、非対称配列を有することとなる。例えば、他の実施形態では、上記の方法において、ミスマッチな残基は、ss核酸中間体Iとその相補鎖の間に組み入れられる。その結果、ds中間体IIIでは、第2の定常領域の第1の二本鎖コピーは、第2の定常領域の第2の逆位二本鎖コピーとは異なる配列を有することとなる。
【0081】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、制限酵素部位の非対称性は、制限酵素の認識部位又は切断部位に対応する領域において、改変されたバックボーン又は塩基組成を有する残基を本発明のヌクレオチド分子に組み入れることによって形成される。本明細書の実施例5に例示するように、改変されたバックボーンの例は、一本鎖核酸中間体Iのホスホロチオエート結合である。様々な種類の改変されたバックボーンがこの方法に適することは、当業者であれば理解できるであろう。
【0082】
他の実施形態では、改変されたバックボーン又は塩基組成を有する残基が、ss核酸中間体Iに組み入れられる。他の実施形態では、改変されたバックボーン又は塩基組成を有する残基が、ss核酸中間体Iの相補体に組み入れられる。その結果として、ds中間体IIIでは、(i)第2の定常領域の第1の二本鎖コピー又は(ii)第2の定常領域の第2の逆位二本鎖コピーのいずれかが、改変されたバックボーン又は塩基組成を有する残基を含むこととなる。他の実施形態では、バックボーンの1つの結合が改変される。他の実施形態では、バックボーンの2つの結合が改変される。他の実施形態では、バックボーンの3つ以上の結合が改変される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0083】
本発明に係る方法及び組成物で使用される前記改変されたバックボーンは、ある実施形態では、ホスホロチオエート・バックボーンである。他の実施形態では、前記改変されたバックボーンは、メチルホスホネート結合である。他の実施形態では、前記改変されたバックボーンは、当制限酵素の切断を阻害する該技術分野で周知の任意の他の種類の改変されたバックボーンである。前記改変された塩基は、他の実施形態では、任意の種類の修飾ヌクレオシド、ヌクレオシド類似体、又は制限酵素の切断を阻害する当該技術分野で周知の修飾核酸である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0084】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、制限酵素部位の非対称性は、本発明のヌクレオチド分子への、ミスマッチな残基の組み入れと、改変されたバックボーン又は塩基組成を有する残基の組み入れとの組合せによって形成される。いずれか一方又は両方の方法を本発明に係る方法に使用することができることは、当業者には明らかであろう。
【0085】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、制限酵素部位の非対称性は、制限酵素部位の非対称性を形成する当該技術分野で周知の任意の他の方法によって形成される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0086】
他の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物で使用される中間体は、第1の定常領域の第1及び第2の両dsコピー間において、さらなる制限酵素部位の非対称性を有する。他の実施形態では、ds中間体IIIの場合、第1の定常領域又はその断片の第1のdsコピーは第3の制限酵素の基質であるが、第1の定常領域又はその断片の第2の逆位dsコピーは第3の制限酵素の基質ではない。他の実施形態では、前記さらなる制限酵素部位の非対称性は、第1の定常領域又はその断片の第2の二本鎖コピーに、第3の制限酵素の基質であるds中間体IIIを生じさせるが、第1の定常領域又はその断片の第2の二本鎖コピーには第3の制限酵素の基質であるds中間体IIIを生じさせない。
【0087】
例えば、本明細書の実施例5に例示するように、二本鎖中間体III(ds III)は、第1の定常領域の第1のコピーがBtgZ Iの基質になり、(初期は、Not Iの基質でもある)、第1の定常領域の第2のコピーがNot Iの基質になる(しかし、BtgZ Iの基質ではない)ような、制限部位の非対称性を有する。この場合、BtgZ I非対称性は、ss核酸中間体Iに、ホスホロチオネート化残基の組み入れることによって形成された。BtgZ IによるdsIIIの非対称な消化に続き(ds IIIBを生成する)、第1の定常領域の第1のコピーからNot I部位を除去し、それによって、Not Iによるds IIIBの非対称な消化が可能になった(図7)。実施例4で説明する方法のdsIIIは、この場合はプライマーB(図4)におけるミスマッチによって生成された、さらなる制限酵素部位の非対称性を有する。
【0088】
他の実施形態では、本発明に係る方法は、上述した方法の二本鎖中間体III又は本発明の類似方法の対応する中間体を、上述した第3の制限酵素に接触させるステップをさらに含む。他の実施形態では、前記接触させるステップは、環状中間体IV又は類似方法の対応する中間体を得るステップの前に行われる。他の実施形態では、前記二本鎖中間体IIIは、第3の制限酵素によって消化される。他の実施形態では、前記接触又は接触させるステップは、発現ベクターによって開始される正確な転写に好ましくない二本鎖中間体IIIの断片若しくは残基を、二本鎖中間体IIIから除去する。他の実施形態では、前記好ましくない断片は、1つ以上連続するプリン(例えばアデニン)残基のストレッチである。他の実施形態では、前記ストレッチは、2つの連続するアデニンを有する。他の実施形態では、前記ストレッチは、3つの連続するアデニンを有する。他の実施形態では、前記ストレッチは、4つの連続するアデニンを有する。他の実施形態では、前記ストレッチは、5つの連続するアデニンを有する。他の実施形態では、前記ストレッチは、6つの連続するアデニンを有する。他の実施形態では、前記好ましくない断片は、アデニンが豊富な領域である。本発明に係る方法の他の実施形態では、ベクターバックボーン上の前記プロモータは、前記アデニン又は5つの連続するアデニンを元は含んでいた前記ストランドからの転写のためのプロモータである。他の実施形態では、前記ベクター内の前記プロモータは、前記第1の一本鎖DNA分子に対応する前記ストランドからの転写を開始する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0089】
他の実施形態では、本明細書の実施例5に例示するように、5つのチミジンのストレッチ(例えば、第1のssDNA分子に5つのアデニンをコピーすることによって作成される)は、本発明のRNA分子をエンコードする遺伝子におけるランダム配列領域の逆相補鎖に続き、当該ストレッチの直後に転写終結することを可能にする。他の実施形態では、チミジンの前記ストレッチは、ランダム配列領域の逆相補鎖の直後に続く。DNAのコーディング鎖中のチミジン残基は転写されたRNA中のウリジン残基に対応し、それゆえ、この実施形態では、RNAはウリジン残基のストレッチを含む。他の実施形態では、ウリジンストレッチの第2のウリジンの後の転写終結は、RNA分子上に2ntのオーバーハングをもたらす。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0090】
他の実施形態では、さらなる制限酵素部位の非対称性は、改変されたバックボーン又は塩基組成を有する残基を、一本鎖核酸中間体I又はさらなる一本鎖核酸分子に組み入れることによって形成され、それによって、二本鎖中間体IIIにおいて、(i)第1の定常領域の第1の二本鎖コピー若しくはその断片、又は(ii)第1の定常領域の第2の逆位二本鎖コピー若しくはその断片が、改変されたバックボーン又は塩基組成を有する残基を含むこととなる。他の実施形態では、さらなる制限酵素部位の非対称性は、本発明のヌクレオチド分子への、ミスマッチな残基の組み入れと、改変されたバックボーン又は塩基組成を有する残基の組み入れとの組合せによって形成される。他の実施形態では、さらなる制限酵素部位の非対称性は、当該技術分野で周知の任意の他の適切な方法によって形成される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0091】
他の実施形態では、本明細書の実施例5に例示するように、本発明に係る方法及び組成物の発現ベクターは、RNAポリメラーゼのプロモータをさらに含む。他の実施形態では、発現ベクター又はそのセット若しくはライブラリは、RNAポリメラーゼと接触させられ、それによってRNA分子又はそのセット若しくはライブラリを生成する。
【0092】
他の実施形態では、前記発現ベクター又はそのセット若しくはライブラリは、細胞集団に導入され、内因性RNAポリメラーゼによって転写される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0093】
他の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物の発現ベクターは、既知の機能のRNAi分子をエンコードする遺伝子をさらに含む。
【0094】
他の実施形態では、発現ベクターのセット若しくはライブラリは、組換え型ウイルスのセット若しくはライブラリである。他の実施形態では、発現ベクターのセットは、組換え型ウイルスとしてパッケージされる。他の実施形態では、発現ベクターの各セット若しくはライブラリのコピーは、組換え型ウイルスのセット若しくはライブラリとしてパッケージされる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0095】
発現ベクターの各種類は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0096】
他の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物によって得られるRNA分子を消化することによって、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)分子が生成される。他の実施形態では、前記消化は標的細胞の内部で行われる。他の実施形態では、前記消化はエンドヌクレアーゼによって行われる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0097】
他の実施形態では、本明細書中の実施例6〜7及び10〜16に例示するように、本発明は、目的とする生物学的パラメータに影響を及ぼすことができるRNA分子を同定する方法を提供する。当該方法は、(a)細胞集団に本発明に係る前記発現ベクターのセット若しくはライブラリを接触させることによって、前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリ又はその一部が前記細胞集団の個々の細胞に取り込まれるようにするステップと、(b)前記細胞集団における前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測するステップとを含み、前記細胞集団の特定細胞が前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値について変化を示す場合は、前記特定の細胞が、前記目的とする生物学的パラメータに影響を及ぼす特定のRNA分子をエンコードする特定の組換え型発現ベクターを含有すると判断する。
【0098】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、前記RNA分子は、既知の又は十分理解された作用機序によって機能する。他の実施形態では、前記RNA分子は、前記RNA分子の発見後にのみ十分理解された機序によって機能する。他の実施形態では、前記RNA分子は、未知の機序によって機能する。他の実施形態では、本発明のスクリーニング方法は、前記RNA分子の機序の知識又は理解を必要としない。したがって、完全に機能に基づいたスクリーニング、或いはスクリーニングされた配列からバイアスを実質的に除去又は減少させることができる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0099】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、生物活性を有することが認められた特定の発現ベクター若しくはその断片が単離又は増幅され、その後、ベクター若しくはその断片が配列決定される。他の実施形態では、前記断片は、特定のRNA分子に対するコード配列を含む。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0100】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、本明細書の実施例8に例示するように、さらなる細胞に特定の発現ベクターを接触させ、その後、前記さらなる細胞において目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測する。
【0101】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、生物活性を有することが認められた特定のRNA分子のコピーが生成され、さらなる細胞に特定のRNA分子のコピーを接触させ、その後、前記さらなる細胞において目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測する。
【0102】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、本明細書の実施例8に例示するように、生物活性を有することが認められた特定のRNA分子又はその断片をエンコードする配列が第2の発現ベクターバックボーンに挿入又はサブクローンし、それによって、(i)特定のRNA分子、或いは(ii)特定のRNA分子の改変型のいずれかをエンコードする第2の発現ベクターを生成する。他の実施形態では、さらなる細胞に第2の発現ベクターを接触させ、その後、前記さらなる細胞において目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測する。
【0103】
他の実施形態では、特定のRNA分子の改変型は、特定のRNA分子のランダム配列領域と相同性を共有する領域を含む。他の実施形態では、特定のRNA分子の改変型の前記相同性共有領域は二本鎖である。他の実施形態では、前記相同性共有領域は一本鎖である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0104】
他の実施形態では、特定のRNA分子のds配列及び前記特定のRNA分子の改変型のds配列は、少なくとも70%の相同性を共有する。他の実施形態では、この2つの配列は少なくとも75%の相同性を共有する。他の実施形態では、この2つの配列は少なくとも80%の相同性を共有する。他の実施形態では、この2つの配列は少なくとも85%の相同性を共有する。他の実施形態では、この2つの配列は少なくとも90%の相同性を共有する。他の実施形態では、この2つの配列は少なくとも95%の相同性を共有する。他の実施形態では、この2つの配列は少なくとも97%の相同性を共有する。他の実施形態では、特定のRNA分子の改変型は、特定のRNA分子のds領域と同じds領域を含む。他の実施形態では、第2の発現ベクターバックボーンは、1回目のスクリーニングで使用された発現ベクターバックボーンとは異なる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0105】
他の実施形態では、本明細書中の実施例17に例示するように、本発明に係る方法は、a.生物活性を有することが認められた特定の発現ベクター、その挿入部位、又はその断片を単離又は増幅させるステップと(1回目の選択)、b.前記発現ベクターに含まれるランダム配列の二本鎖領域をエンコードする領域を有する前記特定の発現ベクターの断片を突然変異させ、そのことによって、前記ランダム配列領域の変異型を含むヌクレオチド分子のサブライブラリを作成するステップと、c.前記サブライブラリを発現ベクター内へ挿入又はサブクローンし、そのことによって、発現ベクターのサブライブラリを作成するステップと、d.第2の細胞集団に、前記発現ベクターのサブライブラリを接触させ(2回目の選択)、そのことによって、前記発現ベクターのサブライブラリ又はその一部が前記第2の細胞集団に取り込まれるようにするステップと、e.前記第2の細胞集団における前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測するステップとを含む。この実施形態では、前記第2の細胞集団の特定の細胞における前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値がさらに変化した場合は、前記特定の細胞が改良された発現ベクターを含有すると判断する。この方法の他の実施形態では、前記サブライブラリにおけるRNA分子のいくつかは、ランダム配列領域の2つの相補鎖の間に1つ以上のミスマッチを含む。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0106】
他の実施形態では、前記突然変異を発生させる前記ステップは、前記特定の発現ベクターの断片を低忠実度な方法によってコピーするステップを含む。他の実施形態では、前記 突然変異した配列は、コンピューターを使用して生成される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0107】
他の実施形態では、前記突然変異生成は、コンピューター的方法を用いて実施される。他の実施形態では、前記コンピューター的方法は、同定されたRNAi分子の各可能な単一突然変異の生成を含む。他の実施形態では、二重突然変異もまた生成される。他の実施形態では、三重突然変異もまた生成される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0108】
他の実施形態では、RNAiのds部分において突然変異を残基に導入する場合は、対応する突然変異を相補残基に導入することにより、塩基対合が維持される。他の実施形態では、対応する突然変異は導入されない。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0109】
他の実施形態では、RNA分子をエンコードする全配列は、突然変異させられる。他の実施形態では、二本鎖領域の両方の鎖が突然変異させられる。他の実施形態では、二本鎖領域の一本鎖(「ハーフブック(half-book)」)が突然変異させられる。他の実施形態では、二本鎖領域の一本鎖の一部が突然変異させられる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0110】
他の実施形態では、本発明に係る方法は、生物活性を有するRNAi分子の1つ以上の推定標的mRNAを同定するステップと、前記標的とより強力に結合することが予測される配列のサブライブラリを作成するステップとをさらに含む。他の実施形態では、前記サブライブラリは、前記予測標的の1つとより強力に結合することが予想される配列を有する。他の実施形態では、前記サブライブラリは、前記予測標的の一部とより強力に結合することが予想される配列を有する。他の実施形態では、前記サブライブラリは、前記予測標的の大部分と強力に結合することが予想される配列を有する。他の実施形態では、前記サブライブラリは、前記予測標的の1つ又は一部と、前記予測標的の他の部分と比較してより優れた選択的な結合を示すと予想される配列を有する。他の実施形態では、前記サブライブラリ内での、RNAi分子の標的への結合は、当該技術分野で周知の方法を用いて、インビトロRNAi分析によって直接的に試験される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0111】
RNAi分子の推定上の標的mRNAのための方法は、当該技術分野で公知であり、他の実施形態では、コンピュータプログラムを含む。他の実施形態では、前記プログラムは、「miRanda (Enright AJ, John B, Gaul U, Tuschl T, Sander C, Marks DS. MicroRNA targets in Drosophila.Genome Biol 2003;5(l):Rl)」である。他の実施形態では、前記プログラムは、「miRGen (M. Megraw, P.Sethupathy, B. Corda, and A.G. Hatzigeorgiou (2006). Nucleic Acids Res, 35: Dl 49-Dl 55)」である。他の実施形態では、前記プログラムは、「TargetScan (Lewis BP, Burge CB, Bartel DP. Cell, 120:15-16 (2005))」である。他の実施形態では、前記プログラムは、「MiRscan (Lim, LP, Lau, NC, Weinstein, E, Abdelhakim, A, Yekta, S, Rhoades, MW, Burge, CB and Bartel, DP (2003). The microRNAs of Caenorhabditis elegans. Genes & Dev. 17, 991)」である。他の実施形態では、前記プログラムは、「PicTar (Krek et al, Nature Genetics 37:495-500 (2005))」である。他の実施形態では、前記プログラムは、「Microlnspector (Rusinov V,Baev V, Minkov IN, Tabler M. Nucleic Acids Res 2005;33: W696-700)」である。他の実施形態では、前記プログラムは、当該技術分野で公知の任意の他の適切なコンピュータプログラムである。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0112】
他の実施形態では、本発明に係る方法は、上記の方法において、さらなる細胞又は細胞集団に、生物活性を有することが認められた特定の発現ベクターを接触させるステップと、前記さらなる細胞における前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測するステップとを含み、前記さらなる細胞における前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値がさらに変化した場合は、前記発現ベクターによってエンコードされたRNA分子の効果が確認される。他の実施形態では、前記挿入配列は、前記細胞集団から単離される。他の実施形態では、前記1回目の選択において生物活性を示すことが認められた前記RNA分子用のコード配列を含む断片は、前記発現ベクターから切除又は増殖、或いは、配列決定後にデノボ合成され、同一又は別の発現ベクター内にサブクローンされ、その後、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測するさらなる細胞への接触に使用される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0113】
各種のベクターにおいて(1)二本鎖領域を含むRNA分子を修飾し、(2)二本鎖領域を含むRNA分子を発現する方法は、当該技術分野で公知であり、例えば、「Palliser D et al (An siRNA-based microbicide protects mice from lethal herpes simplex virus 2 infection. Nature.2006 Jan 5;439(7072): 89-94)」に記載されている。各方法は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0114】
他の実施形態では、2回目の後に、1回以上のさらなる増菌が行われる。他の実施形態では、2回以上の増菌の使用により、真陽性クローンの割合を増加させる。他の実施形態では、増菌の複数回の使用により、真陽性クローンの割合を増加させる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0115】
他の実施形態では、1回目の選択で用いられる発現ベクターは、統合ベクターである。他の実施形態では、前記統合ベクターは、その効果の不可逆性から、真陽性の同定を容易にする。
【0116】
他の実施形態では、2回目又はそれ以降の回の選択において使用される異なる発現ベクターは、1回目の選択において同定されたものとは異なる形態のRNA分子(他の実施形態では、RNAi、siRNA、ミクロRNA、又はshRNA)を産出する。その後、前記RNA分子自体の異なる形態(他の実施形態では、siRNA)をさらなる細胞に接触させ、目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測する。他の実施形態では、前記さらなる細胞にRNA分子自体を接触させることにより、標的細胞の大多数(他の実施形態では、高いパーセンテージ)においてRNA分子によって付与される表現型の観察が容易となる。他の実施形態では、前記表現型は、2回目又はそれ以降の回の増菌を行った際に、前記細胞の60%以上で観察される。他の実施形態では、前記表現型は、前記細胞の70%以上で観察される。他の実施形態では、前記表現型は、前記細胞の80%以上で観察される。他の実施形態では、前記表現型は、前記細胞の90%以上で観察される。他の実施形態では、前記表現型は、前記細胞の95%以上で観察される。他の実施形態では、前記表現型は、前記細胞の97%以上で観察される。他の実施形態では、前記表現型は、前記細胞の99%以上で観察される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0117】
他の実施形態では、2回目又はそれ以降の回の選択において使用されるRNA分子の異なる形態は、可逆的な方法でその効果を発揮する。他の実施形態では、本発明に係る方法における阻害性RNAの可逆的形態の使用は、RNA分子の効果のさらなる実験的な研究(他の実施形態では、RNA分子の効果の時間的な研究)、又はRNA分子の除去によるその効果の逆転又は停止の観察を可能にする。他の実施形態では、誘導性又は抑制性プロモータを有する発現ベクターが、RNAiの可逆的形態に代わるものとして用いられる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0118】
他の実施形態では、本明細書の実施例17に例示するように、ランダム配列の二本鎖領域をエンコードする領域の第1の半分のみ(すなわち、ランダム配列の二本鎖領域の一方の鎖をエンコードする領域、すなわち「ハーフブック」)が、オリジナルの一本鎖DNA鋳型に使用される第1及び第2の定常領域の間に置かれ、低忠実度な方法によってコピーされ、それによって、上記方法のうちの1つによってshRNA発現サブライブラリを作成するために使用されるハーフブックのサブライブラリを作成する。その後、前記サブライブラリは、本発明に係る方法によって生物学的パラメータを検査する。
【0119】
他の実施形態では、上記した突然変異生成方法及び/又は低忠実度でコピーする方法のうちの1つが、上記ライブラリを生成する方法のうちの1つに記載されている先行ステップなしに実行される。この実施形態では、上記方法は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0120】
他の実施形態では、改良された発現ベクターは、目的とする生物学的パラメータに対して、初めに同定された特定のRNA分子よりも影響を及ぼす改良されたRNA分子をエンコードする。他の実施形態では、前記改良された発現ベクターは、当初同定されたRNA分子よりも高い組織特異性を示す。他の実施形態では、前記改良された発現ベクター又はそれによってエンコードされる対応するRNA分子の必要とされる供与量は、当初同定されたRNA分子よりも少ない。他の実施形態では、前記改良された発現ベクターは、当初同定されたRNA分子と比べて、当該技術分野で既知の任意の他の改良された性質を示す。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0121】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、上記方法によって同定された改良された発現ベクター、その挿入部位又はその断片は単離又は増幅される。他の実施形態では、前記改良された発現ベクター又はその断片が配列決定される。前記断片は、前記改良されたRNA分子のためのコード配列を含む。他の実施形態では、さらなる細胞に、改良された発現ベクター、そのエンコードされたRNA、又は、別種のRNA分子であって同一又は相同の二本鎖領域を有するものに接触させ、さらなる細胞において目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0122】
本発明に係る方法において用いられる低忠実度でコピーする方法は、他の実施形態では、PCR(例えば、変異性PCR)によるランダムな突然変異生成である。他の実施形態では、当該方法は、縮重オリゴヌクレオチドを用いた突然変異生成である。他の実施形態では、当該方法は、リンカースキャン(linker-scanning)による突然変異生成である。他の実施形態では、当該方法は、当該技術分野で既知の任意の他の突然変異生成方法である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0123】
他の実施形態では、本明細書中の実施例18に例示するように、本発明は、目的とする疾患又は障害を標的にする同定する方法であって、(a)前記目的とする疾患又は障害により変化する前記目的とする生物学的パラメータに影響を及ぼすRNA分子を本発明に係る方法によって同定するステップと、(b)その発現が前記RNA分子によって変化する細胞RNA分子を同定するステップとを含み、それによって、前記細胞RNA分子を、前記目的とする病又は疾患のための薬剤標的として同定するようにした方法を提供する。
【0124】
他の実施形態では、本明細書中の実施例17に例示するように、本発明は、前記目的とする生物学的パラメータに影響を及ぼす改変された能力を有するRNA分子変異体を同定する方法を提供する。
当該方法は、
a.前記RNA分子をエンコードする核酸分子を低忠実度な方法により複製し、それによって、前記RNA分子の変異体を含むヌクレオチド分子のサブライブラリを作成するステップと、
b.前記サブライブラリを発現ベクターのバックボーンにサブクローンし、それによって、発現ベクターのサブライブラリを作成するステップと、
c.細胞集団に、前記発現ベクターのサブライブラリを接触させ、それによって、前記発現ベクターのサブライブラリ又はその断片が前記細胞集団に取り込まれるようにするステップと、
d.前記細胞集団における前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測するステップとを含む。
他の実施形態では、この方法により、前記細胞集団の特定の細胞が、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値について変化を示す場合は、前記特定の細胞が、前記目的とする生物学的パラメータに影響を及ぼす改変された能力を有する特定のRNA分子をエンコードする特定の発現ベクターを含有すると判断する。他の実施形態では、前記変異体の二本鎖領域の2つのストランドは、互いに相補的である。他の実施形態では、前記2つのストランドは、互いに1つ以上のミスマッチを含む。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0125】
他の実施形態では、本発明は、目的とする生物学的パラメータに影響を及ぼす能力を有する改変されたRNA分子であって、本発明に係る方法によって同定された改変されたRNA分子を提供する。
【0126】
本発明に係る方法の他の実施形態では、目的とする生物学的パラメータに影響を及ぼす前記改変された能力は、オリジナルのRNA分子に対して改変される。
【0127】
「改変された」なる語は、ある実施形態では効力が増大したことを指す。他の実施形態では、この語は、効力が減少したことを指す。他の実施形態では、この語は、組織特異性が増大したことを指す。他の実施形態では、前記変異体は、生物学的半減期の増大を示す。他の実施形態では、前記変異体は、生物学的半減期の減少を示す。他の実施形態では、前記変異体は、生体利用効率が増大したことを示す。他の実施形態では、前記変異体は、任意の他の生物学的又は目的とする治療パラメータにおいて、初期のRNA分子に対して改変される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0128】
他の実施形態では、発現ベクターのバックボーンに挿入されない、ランダム配列の二本鎖領域を有するRNA分子のライブラリが、本発明に係る方法によって生成される。他の実施形態では、本明細書中に列挙した、組換え型発現ベクターのセットを生成する全ての実施形態に対して、必要に応じて、この方法を適用することができる。他の実施形態では、前記ライブラリはその後、RNA分子をスクリーニングするために使用される。他の実施形態では、本発明は、この方法によって生成されたRNA分子のライブラリを提供する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0129】
他の実施形態では、本発明は、ランダム配列の二本鎖領域を含むRNA分子の発現ベクターであって、本発明に係る方法によって生成された発現ベクターを提供する。
【0130】
他の実施形態では、本発明は、ランダム配列の二本鎖領域を含むRNA分子の発現ベクターであって、本発明に係る方法によって同定された発現ベクターを提供する。
【0131】
他の実施形態では、本発明は、本発明に係る発現ベクターによってエンコードされたRNA分子を提供する。
【0132】
他の実施形態では、本発明は、本発明に係る発現ベクターによって生成されたRNA分子を提供する。
【0133】
他の実施形態では、本発明は、ランダム配列の二本鎖領域を含むRNA分子であって、本発明に係る方法によって同定されたRNA分子を提供する。
【0134】
他の実施形態では、本発明は、ウイルス感染に対する耐性を細胞に付与する方法であって、本発明に係る発現ベクター又はRNA分子を前記細胞に接触させるステップを含み、そのことによって、ウイルス感染に対する耐性を細胞に付与するようにした方法を提供する。
【0135】
他の実施形態では、本発明は、ウイルスの対象内での複製能力を抑制又は阻害する方法であって、本発明に係る発現ベクター又はRNA分子を前記対象に接触させるステップを含み、そのことによって、ウイルスの対象内での複製能力を抑制又は阻害するようにした方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、ウイルスの細胞内への侵入を抑制又は阻害する方法であって、本発明に係る発現ベクター又はRNA分子を前記対象に接触させるステップを含む方法を提供する。他の実施形態では、前記発現ベクター又はRNA分子は、前記細胞内でウイルス受容体を下方制御する。他の実施形態では、前記発現ベクター又はRNA分子は、ウイルス複製に必要なタンパク質を下方制御する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0136】
他の実施形態では、本発明は、細胞の目的とする細胞型への分化を誘導する方法であって、本発明に係る発現ベクター又はRNA分子を前記細胞に接触させるステップを含み、それによって、細胞の目的とする細胞型への分化を誘導するようにした方法を提供する。
【0137】
「目的とする細胞型への細胞の分化」なる語は、他の実施形態では、完全な分化を指す。他の実施形態では、この語は部分的な分化を指す。「目的とする細胞型」なる語は、他の実施形態では、治療又は研究用途に必要とされる細胞型を指す。他の実施形態では、この語は、治療又は研究用途に必要とされる細胞型の前駆体である中間体、又は部分的に異なる細胞型を指す。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0138】
他の実施形態では、本発明は、細胞の長期増殖を誘導する方法であって、本発明に係る発現ベクター又はRNA分子を前記細胞に接触させるステップを含み、それによって、細胞の目的とする細胞型への分化を誘導するようにした方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、細胞の多分化能を維持する方法であって、本発明に係る発現ベクター又はRNA分子を前記細胞に接触させるステップを含み、それによって、細胞の多分化能を維持するようにした方法を提供する。
【0139】
各治療又は予防方法は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0140】
他の実施形態では、本発明に係る方法は、特定の組換え型発現ベクター又はそれによってエンコードされたRNA分子であって、本発明に係る方法によって選択された特定の組換え型発現ベクター又はそれによってエンコードされたRNA分子を使用する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0141】
他の実施形態では、本発明は、ランダム配列の二本鎖領域を有するRNA分子を生成する発現ベクターのセット若しくはライブラリであって、本発明に係る方法によって生成された発現ベクターのセット若しくはライブラリを提供する。
【0142】
他の実施形態では、本発明は、ランダム配列の二本鎖領域を有するRNA分子を生成する組換え型ウイルスのセット若しくはライブラリであって、本発明に係る方法によって生成された組換え型ウイルスのセット若しくはライブラリを提供する。
【0143】
他の実施形態では、本発明は、ランダム配列の二本鎖領域を有し、目的とする生物学的パラメータに影響を及ぼす能力を有するRNA分子の発現ベクターであって、本発明に係る方法によって同定されたRNA分子の発現ベクターを提供する。
【0144】
他の実施形態では、本発明に係る方法は、本明細書に記載されているように、低忠実度な改良方法によってベクターの挿入部位又は前記挿入部位の断片のコピーを生成した後に、2回目のスクリーニングによって同定された改良されたベクターを使用する。
【0145】
本明細書中の実施例で使用される特定の制限酵素、制限部位、ベクターなどは、本発明の単なる実施形態にすぎない。本明細書中に開示した方法に従って、任意の適切な制限酵素、制限部位、ベクターなどを使用することができる。各酵素、制限部位、ベクターなどは、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0146】
本発明に係る方法の他の実施形態では、上記した第2及び/又は第3の認識部位は、第1の一本鎖DNA分子からの配列に完全に由来するのではなく、むしろ、ヘアピン状のDNA分子からその配列の全て又は一部を得る。
【0147】
他の実施形態では、本発明は、ランダム配列の二本鎖領域を有するRNA分子を生成する方法を提供する。
当該方法は、
a.第1の一本鎖DNA分子を得るステップであって、
前記第1の一本鎖DNA分子が、5´末端から3´末端への順に、
(i)二本鎖形態の場合に第1の制限酵素の基質となる第1の認識部位を有し、1つ以上のアデニンで終端される第1の定常領域、
(ii)ランダム配列領域、及び
(iii)二本鎖形態の場合に第2の制限酵素の基質となる第2の認識部位を有する第2の定常領域を有する該ステップと、
b.前記第2の定常領域に第1のプライマーをアニールするステップであって、
(i)前記第1のプライマーが、前記第2の定常領域に対するミスマッチを含む、
(ii)前記第1のプライマーが、二本鎖形態の場合に、第2の制限酵素の基質とならない、
(iii)前記第1のプライマーが、二本鎖形態の場合に、第3の制限酵素の基質となる、及び
(iv)前記第2の定常領域が、二本鎖形態の場合に、第3の制限酵素の基質とならない、該ステップと、
c.前記第1のプライマーを伸長させ、それによって、前記第1の一本鎖DNA分子、並びに前記ランダム配列領域及び前記第1の定常領域の逆相補鎖を有する第2の一本鎖DNA分子を含む二本鎖中間体IBを生成するステップと、
d.ヘアピン状のDNA分子を前記第1の一本鎖DNA分子の3´末端及び前記第2の一本鎖DNA分子の5´末端に連結し、それによって、前記二本鎖中間体IBをヘアピン状の中間体IIに変換するステップと、
e.第2のプライマーを前記第1の定常領域の前記逆相補鎖にアニールするステップであって、
(i)前記第2のプライマーが、前記第1の定常領域の前記逆相補鎖に対するミスマッチを含む、及び
(ii)前記第2のプライマーが、二本鎖形態の場合に、第1の制限酵素の基質とならない、該ステップと、
f.前記第2のプライマーを伸長させ、それによって、ヘアピン状の中間体II及び第3の一本鎖DNA分子を含む二本鎖中間体IIIを生成するステップと、
g.前記前記二本鎖中間体IIIを前記第1の制限酵素で消化し、それによって、前記第1の一本鎖DNA分子に対応するストランド上に1つ以上のアデニンを有さない二本鎖中間体IVを生成するステップと、
h.前記二本鎖中間体IVを、RNAポリメラーゼプロモータを有する線状ベクターバックボーンに連結し、それによって、環状中間体Vを生成するステップと、
i.前記環状中間体Vを前記第2及び第3の制限酵素で消化し、それによって、線状中間体VIを生成するステップと
j.前記線状中間体VIを分子内で連結し、それによって、ランダム配列の二本鎖領域を有するRNA分子の発現ベクターを生成するステップを含む。
【0148】
他の実施形態では、上記の方法は、図3〜5に示したようにして実施される。
【0149】
他の実施形態では、本発明のベクターによって発現されるRNA分子は、その長さの一部に沿って自己相補的である。他の実施形態では、前記RNA分子は、その全長に沿って自己相補的である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0150】
「その長さの一部に沿って自己相補的」なる語は、他の実施形態では、その分子の別の領域とハイブリダイズする領域を有するRNA分子を指す。
他の実施形態では、前記領域は、前記分子の他の領域に完全に相補的である。他の実施形態では、第1の領域は、他の領域に対してミスマッチを有する。他の実施形態では、前記第1の領域は、他の領域に対して2つ以上のミスマッチを有する。他の実施形態では、第1の領域は、他の領域に対して欠失を有する。他の実施形態では、前記欠失は、細胞酵素によって認識される内部ループをもたらす。他の実施形態では、前記第1の領域は、他の領域に対するオーバーハング又は付着末端を有する。他の実施形態では、前記第1の領域及び他の(相補的な)領域は、非相補的リンカー又は介在領域によって分離されている。他の実施形態では、前記非相補リンカー領域は、ループ構造を形成する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0151】
「その全長に沿って自己相補的」なる語は、他の実施形態では、オーバーハング又はリンカー/介在領域を欠失している二本鎖RNA分子を指す。他の実施形態では、前記二本鎖RNA分子は、完全に自己相補的である。他の実施形態では、前記二本鎖RNA分子は、ミスマッチを有する。他の実施形態では、前記二本鎖RNA分子は、2つ以上のミスマッチを有する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0152】
本発明の部分的に自己相補的なRNA分子は、他の実施形態では、図1の下部に示されているような、介在性ループ形成領域(「ループ」)を有する自己相補領域(「ステム」)を含む。
【0153】
他の実施形態では、本発明の部分的に自己相補的なRNA分子の介在配列は、ランダム配列及び相補配列が互いにアニールシタ場合、ループ構造を形成する。本発明に係る方法の他の実施形態では、前記ループ形成領域はパリンドロームではない。他の実施形態では、前記ループ形成領域は自己相補的ではない。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0154】
他の実施形態では、本発明のベクターによって発現されるRNA分子は、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)である。他の実施形態では、RNA分子は小型阻害性RNA(siRNA)である。他の実施形態では、RNA分子は阻害性RNA(RNAi)である。他の実施形態では、RNA分子はagRNA(抗原RNA)である。「agRNA」は、他の実施形態では、mRNAとの相互作用及び遺伝子転写のサイレンシングをすることができる二本鎖RNAを指す。他の実施形態では、RNA分子はミクロRNA(miRNA)である。他の実施形態では、RNA分子はアンチセンスLNA(locked-nucleic acid)オリゴヌクレオチドである。他の実施形態では、RNA分子は、「Banan M et al (The ins and outs of RNAi in mammalian cells. Curr Pharm Biotechnol. 2004 Oct;5(5):441-50)」に列挙又は記載された任意の種類の阻害性RNAである。他の実施形態では、RNA分子は、当該技術分野で公知の任意の種類のRNAiである。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0155】
他の実施形態では、ss中間体Iの第2の定常領域の第1の残基は、本発明の組換え型発現ベクターによって産生されるds RNAにおいてループ配列に隣接する相補的なヌクレオチド対の同一性を判定する。他の実施形態では、本発明に係る方法は、第1の一本鎖DNA分子の4セットについて繰り返されるが、ここで、第2の定常領域は4つのグループにおいて4つの異なるヌクレオチドから始まる。他の実施形態では、前記4つのプールを組み合わせて、「ステム」の残基が全てランダム化されたライブラリを作成する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0156】
本発明に係る方法の他の実施形態では、プライマーにおけるミスマッチな残基(あるいは、2つ以上であれば、3´末端に最も近いミスマッチ)は、プライマーの3´末端から1ヌクレオチド(nt)離れている。他の実施形態では、前記距離は2nt又はそれ以下である。他の実施形態では、前記距離は3nt又はそれ以下である。他の実施形態では、前記距離は4nt又はそれ以下である。他の実施形態では、前記距離を最小にすることにより、プライマーに由来する(それゆえに一定である)RNA分子のステムにおける配列の量を減少させる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0157】
「発現ベクター」なる語は、他の実施形態では、本発明のRNA分子を発現する手段を指す。他の実施形態では、前記発現ベクターはプラスミドである。他の実施形態では、前記ベクターは組換え型ウイルスベクターである。他の実施形態では、前記ベクターは組換え型細菌ベクターである。他の実施形態では、前記ベクターは裸のDNAベクターである。他の実施形態では、前記ベクターは、自己複製核分子又はそれを含むウイルスであって、本発明のRNA分子を発現することができるものである。他の実施形態では、前記ベクターは、当該技術分野で既知の任意の他のベクターである。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0158】
組換え型ベクターを作成及び使用する方法は、当該技術分野で公知であり、例えば、「Sambrook et al. (2001, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York), 及び Brent et al. (2003, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York) 」に記載されている。
【0159】
本発明に係る方法の他の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物の発現ベクターは組換え型ウイルスである。本発明に係る方法の他の実施形態では、前記発現ベクター又はそのコピーは、組換え型ウイルスとしてパッケージすることができる。他の実施形態では、本発明の組換え型RNA分子は、組換え型ウイルスとしてパッケージすることができる。他の実施形態では、前記パッケージングはパッケージング細胞株を使用する。他の実施形態では、多くのランダム配列の領域を含むRNA分子をエンコードする、前記発現ベクターのライブラリが、本発明に係る又は本発明に係る方法を包含する方法によって生成される。他の実施形態では、前記ライブラリは、レトロウイルス形態(例えば、ベクターのDNA形態を生成するように形質導入時に逆転写されるRNAの形態)である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0160】
本発明に係る方法の他の実施形態では、前記発現ベクターは、ベクターを試験及び/又は同定するために使用される細胞集団内の細胞のゲノムに組み込まれる。他の実施形態では、前記発現ベクターは、前記標的細胞のゲノムに組み込まれる(例えば治療用に使用するために)。他の実施形態では、前記発現ベクターは、細胞集団内の細胞にエピソーム的に組み込まれる。他の実施形態では、前記発現ベクターは、染色体外ベクターとして細胞集団内の細胞に組み込まれる。他の実施形態では、前記発現ベクターを保持する細胞を選択するために、薬剤耐性遺伝子が用いられる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0161】
本発明に係る方法の他の実施形態では、本明細書の実施例1〜2に例示するように、本発明に係る方法に使用される発現ベクターは、マーカータンパク質(例えば、強化緑色蛍光タンパク質(eGFP))、又は強化ファルネシル化緑色蛍光タンパク質(eGFPf)をエンコードする遺伝子をさらに含む。他の実施形態では、その後のステップ(例えばライブラリスクリーニング又は選択方法)において、形質移入又は形質導入された細胞の検出にマーカータンパク質が使用される。
【0162】
他の実施形態では、前記発現ベクターは、目的とする表現型を与えるタンパク質をエンコードする遺伝子をさらに含む。他の実施形態では、前記遺伝子は、疾患表現型を与える。他の実施形態では、前記発現ベクターは、疾患又は疾患表現型を改善、軽減又は治療する治療RNA分子を同定するために使用される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0163】
本発明に係る方法の他の実施形態では、前記発現ベクターは、阻害性RNA分子(他の実施形態では、既知の機能の短鎖干渉性(siRNA)分子)をエンコードする遺伝子をさらに含む。他の実施形態では、既知の機能の阻害性RNA分子は、ライブラリによりスクリーニングされる細胞上で表現型(他の実施形態では、目的とする疾患の表現型)を与えるために使用される。他の実施形態では、外因的に加えられるsiRNA分子が、表現型を与えるために使用される。他の実施形態では、前記ライブラリが、既知の機能の阻害性RNA分子によって与えられる目的とする表現型又は疾患を治療するRNA分子を同定するために使用される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0164】
他の実施形態では、2つのRNAi分子(既知の機能のRNAi、及びランダム配列の二本鎖領域を含むRNA分子)が、2つのH1プロモータカセットによってエンコードされる。他の実施形態では、前記2つのH1プロモータカセットは、互いに独立的にベクターにサブクローニングすることができる。他の実施形態では、前記2つのH1プロモータカセットの一方が、ランダム配列の二本鎖領域を含む。他の実施形態では、前記ランダム配列の二本鎖領域を含むカセットが、上記した方法のうちの1つを用いて生成される。他の実施形態では、前記2つのRNAi分子が、当該技術分野で既知の任意の他の方法を用いて発現される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0165】
発現ベクターの各種類は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0166】
本発明に係る方法の他の実施形態では、環状中間体の非対称消化は、それによって生成された線状中間体の2つの端部において第2の定常領域の第1及び第2のコピーの不等部分をもたらす。他の実施形態では、前記不等部分は、前記ループ配列が非自己相補的となることを可能にする。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0167】
本発明に係る方法の他の実施形態では、線状化されたベクターバックボーンに存在するRNAポリメラーゼのプロモータは、RNAポリメラーゼIIIプロモータである。他の実施形態では、前記プロモータは、HIプロモータである。他の実施形態では、前記プロモータは、U6プロモータである。他の実施形態では、前記プロモータは、shRNA発現に適したプロモータである。他の実施形態では、前記プロモータは、当該技術分野で周知の任意の他のRNAポリメラーゼのためのプロモータである。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0168】
本発明に係る方法の他の実施形態では、前記発現ベクター内の前記プロモータは、発現プラスミドにおけるランダム配列領域の開始位置の25nt上流である。他の実施形態では、1つ以上の連続したピリミジン(例えば4つ)は、前記発現プラスミドにおける転写開始部位の直前にある。他の実施形態では、ストリングは2つのピリミジンからなる。他の実施形態では、ストリングは3つのピリミジンからなる。他の実施形態では、ストリングは4つのピリミジンからなる。他の実施形態では、ストリングは5つのピリミジンからなる。他の実施形態では、ストリングは異なる数のピリミジンからなる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0169】
他の実施形態では、本発明に係る方法は、前記発現ベクター又は発現ベクターのセット若しくはライブラリをRNAポリメラーゼに接触させるステップを含み、それによって、前記RNA分子又はそのライブラリを作成するようにする。他の実施形態では、前記接触させるステップは、リボヌクレオチド前駆体の存在下で行われる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0170】
他の実施形態では、本発明に係る方法は、ランダム配列のセットと共に、本発明のRNA分子の発現ベクターを生成する方法を複数回行い、それによって、発現ベクターのセット若しくはライブラリを作成するステップをさらに含む。他の実施形態では、本発明に係る方法は、組換え型ウイルスのセット若しくはライブラリとして、前記発現ベクターのセット若しくはライブラリをパッケージするステップをさらに含む。他の実施形態では、前記発現ベクターのセット若しくはライブラリは、組換え型ウイルスのセット若しくはライブラリである。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0171】
他の実施形態では、発現ベクターのセット若しくはライブラリをパッケージするために用いられる組換え型ウイルスは、組換え型レトロウイルスである。他の実施形態では、組換え型ウイルスは組換え型レンチウイルスである。他の実施形態では、組換え型ウイルスは組換え型アデノウイルスである。他の実施形態では、組換え型ウイルスは、「Wadhwa R他、Vectors for RNA interference. Curr Opin MoI Ther. 2004 Aug;6(4):367-72」の文献に列挙又は記載されたベクター由来である。他の実施形態では、組換え型ウイルスは、実施形態では、組換え型ウイルスは、真核細胞を感染又は形質導入する能力を有する当該技術分野で周知の任意の他の種類のウイルスに由来する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0172】
他の実施形態では、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値は、幹細胞からの、再増殖力を有する細胞型の誘導である。他の実施形態では、前記幹細胞から誘導される前記細胞型は、造血幹細胞である。他の実施形態では、前記細胞から誘導される前記細胞型は、長期間の再増殖能力を有する。他の実施形態では、誘導された前記細胞型は、当該技術分野で周知の他の再増殖力を有する細胞型である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0173】
他の実施形態では、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値は、定義された悪条件下での細胞(分析に使用される前記細胞、或いは生体関連標的細胞)の生存能力である。他の実施形態では、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値は、定義された悪条件下での細胞の増殖維持能力である。他の実施形態では、前記条件は、野生型細胞にとっては致死にならないが、疾患モデルの細胞(例えば、突然変異を含む細胞、又は、タンパク質若しくは酵素の発現が例えば阻害性RNAによって阻害された細胞)にとっては致死になるような条件である。
【0174】
他の実施形態では、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値は、病原体、毒、毒発作に対する細胞(分析に使用される前記細胞、或いは生体関連標的細胞)の感受性である。他の実施形態では、前記毒又は毒発作は、酸化である。他の実施形態では、前記毒又は毒発作は、ストレスである。他の実施形態では、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値は、病原体の存在にかかわらず前記細胞が生存することである。他の実施形態では、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値は、細胞内での病原体の複製能力である。他の実施形態では、前記病原体は、細胞内病原体である。他の実施形態では、前記細胞内病原体は、ウイルスである。他の実施形態では、前記細胞内病原体は、細胞内細菌である。他の実施形態では、前記細胞内病原体は、当該技術分野で周知の任意の他の種類の細胞内病原体である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0175】
他の実施形態では、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値は、癌細胞(分析に使用される前記細胞、或いは生体関連標的細胞)を殺滅する能力である。前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値は、アポトーシス又はネクローシス誘導刺激に対して前記癌細胞を敏感にする能力である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0176】
他の実施形態では、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値は、目的とするタンパク質の発現又は発現レベルである。他の実施形態では、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値は、目的とするmRNAの発現又は発現レベルである。
【0177】
他の実施形態では、病原体に対する感受性又は前記病原体の複製に対して影響を与える前記RNA分子は、前記病原体に特異的な核酸とハイブリダイズする。他の実施形態では、前記RNA分子は、前記病原体に使用される細胞核酸とハイブリダイズする。他の実施形態では、前記RNA分子は、細胞防御機構を上方調節する。他の実施形態では、前記RNA分子は、他の機構を介して機能する。他の実施形態では、前記RNA分子は、未知の機構を介して機能する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0178】
他の実施形態では、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値は、前記細胞の目的とする細胞型への分化である。他の実施形態では、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値は、前記細胞又は細胞型の未分化状態の維持である。他の実施形態では、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値は、細胞の長期増殖を誘導する能力又は多分化能を維持する能力である。他の実施形態では、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値は、幹細胞の未分化状態の維持である。
【0179】
前記目的とする細胞型は、他の実施形態では、心筋細胞、ニューロン、骨格筋細胞
肝細胞、皮膚細胞、尿細管上皮細胞、膵島細胞、糸球体細胞、内皮細胞、骨細胞、軟骨細胞、B又はTリンパ球、好中球、好塩基球、好酸球、単球、赤血球、樹枝状細胞、赤血球、甲状腺細胞、副腎細胞、巨核球である。他の実施形態では、前記目的とする細胞型は、疾患又は障害によって損傷を受けた任意の他の細胞である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0180】
他の実施形態では、「生物学的パラメータ」は、任意の測定可能な又は観察可能な細胞の遺伝子表現型を指す。前記表現型としては、例えば、形態学的特徴、分化状態、細胞サイクル特性、生化学的性質、又は他の表現型などがある。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0181】
他の実施形態では、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値は、当該技術分野で周知の生物学的パラメータである。各生物学的パラメータ、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0182】
本発明に係る方法の標的となる前記細胞は、ある実施形態では、幹細胞である。他の実施形態では、前記細胞は、胚幹細胞である。他の実施形態では、前記細胞は、当該技術分野で周知の任意の他の種類の幹細胞である。他の実施形態では、前記細胞は、部分的に分化した細胞型である。他の実施形態では、前記細胞は、目的とする細胞型の前駆体である。他の実施形態では、前記細胞は、疾患表現型のモデルである。他の実施形態では、前記細胞は、大人の幹細胞である。他の実施形態では、前記細胞は、組織特異性の幹細胞である。他の実施形態では、前記細胞は、ウイルスに感染しやすい細胞型である。他の実施形態では、前記細胞は、当該技術分野で周知の任意の他の細胞である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0183】
他の実施形態では、本発明に係るRNA分子は、ある細胞型を他の細胞型に変換するのに使用される。
【0184】
目的とするタンパク質の発現を測定する方法は、当該技術分野では公知であり、例えば、ウェスタンブロット法や蛍光活性化細胞分類法(FACS)などがある。目的とするmRNAの発現を測定する方法は、当該技術分野では公知であり、例えば、ノーザンブロット法などがある。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0185】
「読取値」なる語は、他の実施形態では、生物学的表現型を測定、評価、計測又は観察するための当該技術分野では既知の任意の手段を指す。他の実施形態では、この語は、生化学的分析、形態学的観察、細胞染色、細胞分取などを含む。他の実施形態では、読取値は、規定されたある条件下での生存である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0186】
他の実施形態では、サブセット又は複数の細胞が、測定される目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値における変化を示す。他の実施形態では、複数の細胞が、測定される目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値における変化を示す。他の実施形態では、前記細胞は、2つ以上の特定の発現ベクターを含む。他の実施形態では、前記細胞に含まれる前記特定の発現ベクター、その生物活性部位、その挿入部位又はその断片の各々を単離及び/又は配列決定し、それにより、目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値に影響を及ぼす2つ以上のRNA分子を同定する。
【0187】
他の実施形態では、本発明に係る方法は、目的とする生物学的パラメータの変化を仲介する特定の発現ベクターを単離又は増幅するステップをさらに含む。他の実施形態では、前記特定の発現ベクターの挿入部位を、単離又は増幅する。他の実施形態では、前記特定の発現ベクターの断片を、単離又は増幅する。他の実施形態では、発現ベクター、挿入部位又は断片は、PCRによって増幅される。他の実施形態では、本発明に係る方法は、単離又は増幅される前記特定の発現ベクター、その挿入部位又はその断片を配列決定するステップをさらに含む。他の実施形態では、前記断片は、生物活性を有すると同定されたRNA分子(例えば、目的とする生物学的パラメータに影響を及ぼすRNA分子)のコード配列を含む。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0188】
他の実施形態では、配列決定する前記ステップは、PCRによって生物活性を有するRNA分子のコード配列を増幅するステップ含む。他の実施形態では、PCRは、配列からのプライマーを、本発明のRNA分子のコード配列に隣接するベクターにおいて使用する。他の実施形態では、PCRは、組込型又は非組込型ベクターのいずれかにおいて実施することができる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0189】
本発明に係る方法の他の実施形態では、PCR産物の配列決定後に、前記産物のアリコートの端部がPCRチューブ内で消化され、親ベクターにサブクローンして戻され、shRNA構築物、又は同一又は相同の二本鎖領域を有する対応するRNAi分子、又は対応するRNAi分子をエンコードする構築物(及び対照shRNA)が試験細胞に再び加えられる。この確認試験では、少数の個々の生存細胞ではなくて、細胞集団が比較される。この方法は、他の実施形態では、本発明のスクリーニング又は選択方法において、好ましくない偽陽性の発生を減少させる。
【0190】
他の実施形態では、本発明に係る方法で使用される制限酵素は、その認識配列の外側でその基質を切断する。他の実施形態では、前記切断は、前記認識配列の端部からの距離は、少なくとも1ntである。他の実施形態では、前記距離は少なくとも2ntである。他の実施形態では、前記距離は少なくとも3ntである。他の実施形態では、前記距離は少なくとも4ntである。他の実施形態では、前記距離は少なくとも5ntである。他の実施形態では、前記距離は少なくとも6ntである。他の実施形態では、前記距離は少なくとも7ntである。他の実施形態では、前記距離は少なくとも8ntである。他の実施形態では、前記距離は少なくとも9ntである。他の実施形態では、前記距離は少なくとも10ntである。他の実施形態では、前記切断は互い違いの切断であり、その閉鎖切断(closer cut)が上記の距離(前記認識部位の前記端部からの距離)の少なくとも1つである。他の実施形態では、前記距離は10/14nt(すなわち、一方の鎖では10nt、他方の鎖では14nt)である。他の実施形態では、前記距離は25/27ntである。他の実施形態では、前記距離は、制限酵素で用いられる任意の他の距離である。他の実施形態では、その認識配列の外側を切断する制限酵素の使用により、第1の定常配列の3´末端上の5つ以上の連続したアデニンを除去することができる(DNA分子の片方でのみ除去する)。他の実施形態では、そのような酵素の使用により、前記5つ以上の連続したアデニンの一部を除去することができる(DNA分子の片方でのみ除去する)。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0191】
他の実施形態では、本発明に係る方法は、2つ以上の遺伝子を標的にする治療用RNA分子の同定を可能にする。他の実施形態では、前記治療用RNA分子は、既知のcDNA配列と実質的に相同ではない(他の実施形態では、多くて10%、20%、30%、40%、50%、60%又は70%相同である)。他の実施形態では、本発明に係る方法によって作成されるライブラリは、作成されたRNA分子のステム領域又は自己相補領域がランダムであるので、他の方法によって作成されるライブラリより利点を有する。他の実施形態では、前記利点は、任意の他の配列又は期待されるバイアスなしに、機能によって生成されるRNA分子をスクリーニングする能力である。他の実施形態では、前記利点は、ループ領域における自己相補性の欠如である。他の実施形態では、利点は、ステム領域の長さである。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0192】
他の実施形態では、生成されるランダム配列の数及び/又はスクリーニングされる細胞の数は、RNA又はその断片のds領域の全ての可能な配列をカバーするようにデザインされる。例えば、全ての可能なシード配列(大体、前記ds領域の残基1〜8)をカバーするために、65,500配列を生成する必要がある。他の実施形態では、シード配列は、突然変異生成後に得られた前のRNA分子に基づいて定常に保持されるが、ds領域の残りは定常には変異が導入される。他の実験では、シード配列の残基2〜8が定常に維持され、残基1及び9前方が改変させられる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0193】
他の実施形態では、本発明に係る方法は、ライブラリ作成中に、アガロースゲルからのDNA断片のゲル精製のための市販キットにおいて見られるような、高塩溶液の使用を回避する。他の実施形態では、径サイズがDNAより小さいの透析膜バッグ内にDNAを溶出させるために、ゲル切片に電流が流される。他の実施形態では、当該方法は、DNAのエタノール沈殿をさらに含む。他の実施形態では、ライブラリ精製における全てのステップ(酵素消化を除く)は、0〜4℃で実施される。他の実施形態では、ライブラリ作成の間はずっとpH緩衝液が存在する。他の実施形態では、ライブラリ作成中に、ブロモフェノールブルーの使用が避けられる。他の実施形態では、上記の予防措置のうちの1つが、ライブラリ作成中に分子内ヘアピンが形成される可能性を低下させる。他の実施形態では、本発明に係る方法中に導入されたように、ステムループカセットの両側上のフランキング配列が、後のステップにおける分子内ヘアピンの形成を防ぐ。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0194】
他の実施形態では、本発明に係るRNA分子のステム又は自己相補領域の長さは、27ntである。他の実施形態では、前記長さは、19ntである。他の実施形態では、前記長さは、6ntである。他の実施形態では、前記長さは、7ntである。他の実施形態では、前記長さは、8ntである。他の実施形態では、前記長さは、9ntである。他の実施形態では、前記長さは、10ntである。他の実施形態では、前記長さは、11ntである。他の実施形態では、前記長さは、12ntである。他の実施形態では、前記長さは、13ntである。他の実施形態では、前記長さは、14ntである。他の実施形態では、前記長さは、15ntである。他の実施形態では、前記長さは、16ntである。他の実施形態では、前記長さは、17ntである。他の実施形態では、前記長さは、18ntである。他の実施形態では、前記長さは、19ntである。他の実施形態では、前記長さは、20ntである。他の実施形態では、前記長さは、21ntである。他の実施形態では、前記長さは、22ntである。他の実施形態では、前記長さは、23ntである。他の実施形態では、前記長さは、24ntである。他の実施形態では、前記長さは、25ntである。他の実施形態では、前記長さは、26ntである。他の実施形態では、前記長さは、28ntである。他の実施形態では、前記長さは、29ntである。他の実施形態では、前記長さは、30ntである。他の実施形態では、前記長さは、30nt以上である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。他の実施形態では、本発明に係るRNA分子は、3´にオーバーハングを持つ29ntの長さのステム又は自己自己相補領域を有する。他の実施形態では、前記オーバーハングの長さは、2ntである。他の実施形態では、本発明に係るRNA分子は、3´にオーバーハングを持つ27ntの長さのステム又は自己自己相補領域を有する。他の実施形態では、前記オーバーハングの長さは、2ntである。他の実施形態では、本発明に係るRNA分子は、3´にオーバーハングを持つ19ntの長さのステム又は自己自己相補領域を有する。他の実施形態では、前記オーバーハングの長さは、2ntである。他の実施形態では、前記RNA分子は、上記に列挙したもの以外の長さを有し、3´にオーバーハングを持つ(他の実施形態では、3´に2ntの長さのオーバーハングを持つ)。
【0195】
他の実施形態では、本発明に係るRNA分子は、15〜25nt(他の実施形態では19nt)の長さのループ介在配列を持つ、21〜23nt(他の実施形態では22nt)の長さのステム又は自己相補領域を有する。他の実施形態では、前記ループ介在配列の長さは、1〜30ntである。他の実施形態では、前記RNA分子は、自己相補領域において1つ以上の塩基対のミスマッチを有する。他の実施形態では、前記RNA分子は、自己相補領域のある一本鎖において欠失を有する。他の実施形態では、前記欠失は、細胞性酵素によって認識される内部ループを引き起こす。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0196】
他の実施形態では、本発明に係るRNA分子のループ領域の長さは、3〜20ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、4〜20ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、5〜20ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、6〜20ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、7〜20ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、8〜20ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、9〜20ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、10〜20ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、3〜15ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、4〜15ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、5〜15ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、6〜15ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、7〜15ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、8〜15ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、10〜15ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、3〜12ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、4〜12ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、5〜12ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、6〜12ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、7〜12ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、8〜12ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、10〜12ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、3〜10ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、4〜10ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、5〜10ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、6〜10ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、7〜10ヌクレオチドである。他の実施形態では、前記長さは、8〜10ヌクレオチドである。
【0197】
他の実施形態では、前記記長さは、約7ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約19ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約6ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約8ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約9ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約10ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約11ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約12ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約13ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約14ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約15ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約16ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約17ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約18ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約20ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約21ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約22ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約23ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約24ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約25ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約26ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約28ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約29ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約30ntである。他の実施形態では、前記記長さは、約30nt以上である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0198】
本発明のRNAi分子のループ領域は、他の実施形態では、既知又は天然のRNAi分子から得られる。他の実施形態では、前記ループ配列は、既知又は天然に存在するRNAi分子に由来するものではない。当業者には、いまだに認識されていないループ配列を含む様々なループ配列が本発明に係る方法に適することは、当業者であれば理解できるであろう。
【0199】
天然に存在するRNAi分子は、当該技術分野で公知であり、例えば、「Griffiths- Jones S, Grocock RJ, van Dongen S, Bateman A, Enright AJ. Nucl Acids Res, 2006, 34: D140-D144」及び「Griffiths- Jones S (Nucl Acids Res, 2004, 32: D109-D111)」に記載されている。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0200】
他の実施形態では、本発明のRNA分子は、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)の基質である。他の実施形態では、本発明に係る方法は、本発明のRNA分子を消化して短鎖干渉性(short-interfering:si)RNA分子を得るステップをさらに含む。他の実施形態では、前記RNA分子は、RNアーゼIIIファミリー酵素の基質である。他の実施形態では、前記酵素は、クラスI RNアーゼIIIファミリー酵素である。他の実施形態では、前記酵素はクラスII RNアーゼIIIファミリー酵素である。他の実施形態では、前記酵素はクラスIII RNアーゼIIIファミリー酵素である。他の実施形態では、前記酵素はダイサー(Dicer)である。他の実施形態では、前記酵素はドローシャ(Drosha)である。他の実施形態では、前記酵素は、二本鎖RNAに対する特異性を有する任意の他の酵素である。他の実施形態では、RISC又はRNアーゼHIファミリー酵素による処理は、前記RNA分子を、生物活性を有する形態に変換する。RISC及びRNアーゼIIIファミリー酵素の基質は、当該技術分野では公知であり、例えば、「Jaronczyk K et al (Exploring the functions of RNA interference pathway proteins: some functions are more RISCy than others. Biochem J.2005 May 1 ;387(Pt 3):561 -71)」及び「Banan M et al (The ins and outs of RNAi in mammalian cells. Curr Pharm Biotechnol. 2004 Oct;5(5):441-50)」に記載されている。他の実施形態では、本発明のRNA分子は、上記酵素のいずれか1つ又は複合体によって切断され、20nt及び3´オーバーハング(他の実施形態では、2ntの3´オーバーハング)のステム又は自己相補領域を有する二本鎖RNAが得られる。基質の各種類は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0201】
他の実施形態では、前記消化は標的細胞内で生じる。他の実施形態では、RNA分子は、当該技術分野で周知の任意の他の種類のRNAi(阻害性RNA)分子を生成するために使用される。RNA分子の各種類は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0202】
他の実施形態では、本発明のRNA分子は、RNアーゼIIIファミリー酵素の産物を模倣する。他の実施形態では、RNA分子は、20ヌクレオチドのds領域、及び2ヌクレオチドの3´オーバーハングを有する。他の実施形態では、RNA分子は、当該技術分野で公知のRNアーゼIEファミリー酵素の産物の任意の他の構造を有する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0203】
他の実施形態では、本発明の生物学的に活性なRNA分子は、幾つかの遺伝子に共有される配列と結合する。他の実施形態では、前記共有される配列は、標的mRNAの3´非翻訳領域(UTR)において見られる。他の実施形態では、共有される配列は、標的mRNAの5´UTRにおいて見られる。他の実施形態では、共有される配列は、標的mRNAのコード部分において見られる。他の実施形態では、共有される配列はイントロンにおいて見られる。他の実施形態では、共有される配列は、上記領域の組合せにおいて見られる。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0204】
他の実施形態では、本発明に係るRNA分子の標的は、mRNA分子である。他の実施形態では、前記標的は、他の種類のRNAである。他の実施形態では、前記標的は、リボソームのRNA(rRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、核内低分子RNA(snRNA)、核小体低分子RNA(snoRNA)、ミクロRNA(miRNA)、又はXIST RNAである。他の実施形態では、前記標的は、デオキシリボヌクレオチド分子である。他の実施形態では、前記標的は、他の種類のヌクレオチド分子である。他の実施形態では、前記標的は、タンパク質分子である。他の実施形態では、前記標的は、補助因子である。他の実施形態では、前記標的は、脂質である。他の実施形態では、前記標的は、他の種類の細胞非ヌクレオチド分子である。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0205】
他の実施形態では、本発明に係るRNA分子と、その標的配列との間の前記相補領域の長さは、5ntである。他の実施形態では、前記長さは、5ntである。他の実施形態では、前記長さは、6ntである。他の実施形態では、前記長さは、7ntである。他の実施形態では、前記長さは、8ntである。他の実施形態では、前記長さは、9ntである。他の実施形態では、前記長さは、10ntである。他の実施形態では、前記長さは、11ntである。他の実施形態では、前記長さは、12ntである。他の実施形態では、前記長さは、13ntである。他の実施形態では、前記長さは、14ntである。他の実施形態では、前記長さは、15ntである。他の実施形態では、前記長さは、16ntである。他の実施形態では、前記長さは、17ntである。他の実施形態では、前記長さは、18ntである。他の実施形態では、前記長さは、19ntである。他の実施形態では、前記長さは、20ntである。他の実施形態では、前記長さは、21ntである。他の実施形態では、前記長さは、22ntである。他の実施形態では、前記長さは、23ntである。他の実施形態では、前記長さは、24ntである。他の実施形態では、前記長さは、25ntである。他の実施形態では、前記長さは、26ntである。他の実施形態では、前記長さは、27ntである。他の実施形態では、前記長さは、28ntである。他の実施形態では、前記長さは、29ntである。他の実施形態では、前記長さは、30ntである。他の実施形態では、前記長さは、30nt以上である。他の実施形態では、本発明に係るRNA分子は、異なる遺伝子の異なる標的配列を結合する。他の実施形態では、前記異なる標的配列は、全て同じ長さではない。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0206】
他の実施形態では、本発明のベクターによって発現されるRNA分子は、その標的配列に完全に相補的である。他の実施形態では、前記RNA分子は、その標的配列に部分的に相補的である。他の実施形態では、前記RNA分子は、非相補オーバーハング領域を有するRNA分子の長さの大部分に沿って、その標的配列に相補的である。他の実施形態では、本発明のベクターによって発現されるRNA分子は、その標的配列に対して1つ以上のミスマッチな残基を有する。他の実施形態では、RNA分子は、生理学的条件下でその標的配列にハイブリダイズする。他の実施形態では、RNAは、厳密な条件下でその標的配列にハイブリダイズする。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0207】
他の実施形態では、細胞内での本発明のRNA分子の発現は、標的RNA分子の翻訳抑制を引き起こす。他の実施形態では、RNA分子の発現は、標的RNA分子の切断又は分解を引き起こす。他の実施形態では、翻訳抑制、切断又は分解が引き起こされるか否かは、本発明のRNA分子と標的RNA分子との間の相補性のレベル、及び相補領域の長さに左右される。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0208】
他の実施形態では、本発明に係る方法は、細胞生存、細胞の健康、細胞死、細胞分化又は任意の他の分析可能な表現型の変化に影響を及ぼす配列を同定するために用いられる。他の実施形態では、本発明に係るライブラリを使用して、医学的に目的の細胞型への幹細胞分化に影響を及ぼす配列が同定される。他の実施形態では、同定されたRNA分子は、幹細胞治療のためのsiRNAとしての効用を有する。各可能な形態は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【実施例】
【0209】
≪実施例1:レトロウイルスベクターによる二重RNAi発現≫
【0210】
レトロウイルスベクターを、同時に2つのshRNAを発現するように設計した。感染した細胞又はトランスフェクトされた細胞の直接的なフローソーティングを可能にする強化ファルネシル化緑色蛍光タンパク質(eGFPf:enhanced, farnesylated green-fluorescent protein)と、感染した細胞又はトランスフェクトされた細胞の選択を容易にするG418耐性遺伝子とを含んでいた。レトロウイルスベクターpQCXIX(登録商標)(Clontech)のeGFPをeGFPfで置換し、PolIII依存H1プロモータカセット(pSuper−Retro由来)の2つのコピーを、pQCXIXの不活性化長末端反復配列にクローンしてベクターpQe2を作成した。pQe2の各H1プロモータ・カセットには、shRNA構築物のクローニングを可能にするために、2つの固有の制限酵素部位を導入した。pQe2は、スピンドル・チェックポイントで重要なタンパク質の発現をノックダウンするために使用した(shRNAによるノックダウン(ウエスタン及び他の解析法を用いて)及びeGFPの発現の両方を確認した)。図12は、pQeに感染した、中程度に感染可能な結腸癌細胞株DLD1のフローサイトメトリ分析を示す。図13は、pQe2によるeGFPの有効なshRNAノックダウンを示す。したがって、RNA分子で、標的遺伝子の発現をノックダウンすることができる。また、正常な細胞で目的の特定の遺伝子(例えば、frataxin)の発現を抑制して、所定の表現型(又は、他の実施形態では、疾病表現型)を誘導することができる。さらに、1つ以上のランダムな標的を抑制して、表現型を改変又は逆転させることができる。
【0211】
≪実施例2:ベクターの改変≫
【0212】
レトロウイルスとしてパッケージングすることができ、強化緑色蛍光タンパク質(eGFP)をエンコードする遺伝子及びG418耐性遺伝子を含むpSuper−Retro(Oligoengine社, Seattle, WA)を、下記のクローニング手法に使用した。スペーサ配列のBg1II−MluI断片を、Bg1II−BbsI−MluI断片で置換した。次に、BbsIで切断し、Klenowで補充し、NotIで切断することで、図5に示されている線状のベクターを作成した。pSuper−Retroは、PmeI(スペーサ配列を作成する際に除去した)以外に関しては、図6〜8に示されている工程に必要な制限酵素部位全てを欠いていた。したがって、本工程に適切である。
【0213】
代替ベクターの作成では、pSuper−RetroのBglIIクローニング部位、並びにBglII及びHindIIIの間のスペーサ配列を、XcmI及びSfiIで置換し、固有のPmeI部位を除去した(XcmI、SfiI、及びHindIIIの認識配列を含むテール付プライマーを使用して、Bg1IIの直前から固有のBlpI部位までの領域をPCR増幅した。ベクターのBlpI−HindIII断片を、BlpI及びHindIIIで切断したPCR産物で置換した。)。XcmI及びSfiIの認識配列を含むテール付プライマーを使用してオリジナルのスペーサ配列をPmeI部位までに(しかし、PmeI部位を含むことなく)増幅してできたスペーサ配列を、XcmI及びSfiIの間に付加した。スペーサ配列を再び付加する理由は、この実験でシングルカットのベクターの除去を容易にし、ライブラリの連結の効率を最大にするためである。PmeI認識部位(上記に記載したように除去した)以外に関しては、pSuper−Retroは、図3、4、及び5に示されている工程に必要な制限酵素部位全てを欠いていた。
【0214】
本実施例及び本明細書に記載の他の実施例における方法には、他の多くのベクターを使用することができ、また、他の多くの制限酵素の組み合わせが適している。例えば、非相補ループ配列の作成に使用できる制限酵素の組み合わせとして、EcoNI/AarI(CCTCCCGC)、SmaI/AarI(CCCC)、StuI/ApaI(AGGC)、Bsu36I/AarI(CCTCAC)、BbvCI/AarI(CCTCAC)、EarI/AarI(TCTTCCGC)などがある。
【0215】
≪実施例3:部分的に自己相補的RNA分子のライブラリの作成≫
【0216】
5´から3´の順に、第1の定常領域(「N21」)と、それに続くランダムな配列の領域(この実施例では、21ヌクレオチド(nt)のランダムな配列)と、それに続く、第1の制限酵素(この場合、EcoNI)の部位の一本鎖(ss)を含む第2の定常領域とを含む一本鎖のDNA分子を得た。このセットの代表的な一本鎖分子は、図1にて「ss1」として図示されている(本明細書では、「一本鎖核酸中間体I」ともいう)。図1に示されているように、2つの部位でミスマッチなプライマー(図1の「プライマーA」)をオリゴヌクレオチドにアニールした(図1に示されているように、相補鎖が、二重鎖を形成する際に、第2の制限酵素(この場合、AarI)の基質となるが、第1の制限酵素の基質とならないように)。1回伸長させたところ、ssIの大部分に対して相補的な鎖(図1のssIBの下部の鎖)が形成された。この1回の伸長の後に、ヘアピンループリンカー(図1の「リンカーB」)を、伸長させたオリゴヌクレオチドの相補付着末端に連結させて、核酸中間体II(図1の「n.a.II」)を形成した。核酸中間体IIは、5´から3´の順に、(a)第1の定常領域の第1コピーと、(b)N21の第1コピーと、(c)第2の定常領域の第1コピーと、(d)ヘアピンループのリンカーと、(e)第2の定常領域の逆相補鎖(「N21c」)と、(f)ランダムな配列の領域の逆相補鎖と、(g)第1の定常領域の逆相補鎖とを含む(図3の下部に図示されている)。
【0217】
他の実施形態では、図2に示されているように、図1の下部に示されている一本鎖産物は、PCRによる増幅に適しており、PCRによって二重鎖中間体III(図2の「dsIII」)を形成する。dsIIIは、上部の鎖の5´から3´の順に、(a)第1の定常領域の第1の二本鎖コピーと、(b)N21の第1の二本鎖コピーと、(c)第2の定常領域の第1の二本鎖コピーと、(d)ヘアピンループリンカーの二本鎖コピーと、(e)第2の定常領域の第2の逆位二本鎖コピーと、(f)N21cの第2の逆位二本鎖コピーと、(g)第1の定常領域の第2の逆位二本鎖コピーとを含む。
【0218】
PCRの後、第1の定常領域の制限酵素部位を利用して末端を制限酵素で消化し、得られた産物を、所定のベクターのポリメラーゼIII−H1−RNAプロモータの下流に連結し(図2の第1の連結ステップ)、環状中間体IVを作成した(「circ中間体IV」)。次に、出来上がったプラスミドを、EcoNI及びAarIで制限処理した。オリジナルのミスマッチプライマーにより、2つの制限酵素部位のうち1つのみがプラスミドのインサートの各側に存在する。2つ酵素により、付着末端が残る。平滑末端を形成するために付着末端の一本鎖部分を補充した後は、平滑末端連結で、プラスミドを環状になるように同一分子内で連結し(図2の第2の連結ステップ)、環状産物VI(「circ産物VI」)を作成した。出来上がったプラスミドは、ランダムな配列の領域と、それに続く非保存ループ配列と、それに続く前記ランダムな配列の逆相補配列とを、全て同じDNAコード鎖に含む。このプラスミドは、したがって、ランダムな21塩基対領域及びそれに続くTA対を含む22塩基対のステムと、非相補的な8ntのループとを含むshRNAのライブラリを発現した。
【0219】
この実施形態では、ループの両端には互いに相補的なT−Aが存在する(図2の下部)。これは、図1の上部に示されているオリジナルのミスマッチ延長部分の先頭の塩基対を対合させるために必要である。さらに別の実験では、それぞれがこの部分で異なる塩基を有する4つのライブラリを作成し、それらを混合することで、可能な全てのランダムな22塩基対のステムが作成される。これらの構築物は、したがって、ランダムな22塩基対のステムと、非相補的な8ntのループとを含むshRNAを発現する。
【0220】
≪実施例4:部分的に自己相補的なRNA分子のライブラリの作成のための別のアプローチ≫
【0221】
図3、4、及び5は、RNAiの発現ベクターのライブラリを作成するための別のアプローチを図示している。図3の上部のDNAオリゴマ(「オリゴ」)ssIは、図1のssIに類似する。「N28」は、28のランダムなヌクレオチドを意味する。ssIは、第2の定常領域のN28配列の下流にPmeI部位の一本鎖を含む。プライマー(2つのミスマッチを含む(図3のプライマーA))で単純な延長反応を行ったところ、ssIの第1の定常領域、ランダムな配列の領域(「n28」)、及び第2の定常領域の大部分に対して逆相補鎖が形成され、二本鎖中間体IB(「dsIB」)が得られた。ヘアピンループリンカーを、延長させたオリゴヌクレオチドの1末端に連結させたところ、N28及びn28配列を含むdsIBの二本鎖が互いに共有的に結合した核酸中間体II(「n.a.II」)が形成された。(互いに相補的な、伸長したオリゴヌクレオチドの末端及びヘアピンループリンカーの末端は、それぞれSalI及びXhoI部位に由来する。SalI及びXhoIによる消化では、それぞれ延長したオリゴヌクレオチド又はヘアピンループリンカーのホモダイマーは切断されたが、目的のヘテロダイマー産物は切断されなかった。したがって、サイズによるゲル分離が可能となった。)n.a.IIは、5´〜3´の順に、(a)第1の定常領域の第1コピーと、(b)ランダムな配列の領域の第1コピー「N28」と、(c)第2の定常領域の第1コピーと、(d)ヘアピンループリンカーと、(e)第2の定常領域の逆相補鎖と、(f)前記ランダムな配列の領域の逆相補配鎖「n28」と、(g)第1の定常領域の逆補鎖とを含む。
【0222】
ミスマッチなプライマーを使用したことにより、第2の定常領域の逆相補鎖の一本鎖のみに(n28の直上流)AarI認識配列が形成された。このAarI認識配列は、第2の定常領域の第1のコピーには存在していなかった。また、ミスマッチなプライマーにより、第2の定常領域の逆相補鎖から、PmeI認識配列が除去された。これにより、ベクターに挿入した後にN28及びn28の間に非相補的なループを形成するのに必要な非対称性が形成された(下記及び図5を参照)。
【0223】
<ランダムなステム配列の逆相補鎖の作成及びその2つの共有的連結>
【0224】
他の実施形態では、図4に示されているように、n.a.IIは、ミスマッチなプライマーBからの単純な伸長反応に適している(図4の上部)。このプライマーからの伸長反応を行うと、二本鎖中間体III(「dsIII」)が形成される。このプライマーにより、dsIIIにおいて5´付着末端(AGA)が形成される(下記参照)。プライマーにおけるミスマッチにより、dsIIIの一端からBtgZI部位が除去される。dsIIIは、上部の鎖の5´〜3´の順に、(a)第1の定常領域の第1の二本鎖コピーと、(b)N28の第1の二本鎖コピーと、(c)第2の定常領域の第1の二本鎖コピーと、(d)ヘアピンループリンカーの二本鎖コピーと、(e)第2の定常領域の第2の逆位二本鎖コピーと、(f)n28の第2の逆位二本鎖コピーと、(g)第1の定常領域の第2の逆位二本鎖コピーとを含む。
【0225】
上記で記載したように、dsIIIは、SfiIで消化された発現ベクターバックボーン(図4)の5´付着末端と相補する5´付着末端(AGA)を含み、分子の他端にBtgZIを含む。dsIIIをBtgZI(認識部位から10及び14ntを切り離す)で処理すると、オリジナルのN28の第1のランダムなntの直前でDNAを切断し、反対側の鎖では、さらに4nt多く切り離し、陥凹3´末端を残す(dsIIIB)。Taqポリメラーゼでこの末端を補充すると、オリジナルのN28の反対側の鎖において4ntが回復する。また、3´にて余分なアデニンが付加される(dsIIIC)。これは、XcmIで処理された発現ベクターのバックボーンにおける余分な3´チミジン末端と相補的である。次に、dsIIICを発現ベクターのバックボーンと連結し(図4の最初の連結ステップ)、環状中間体IV(「cicIMIV」)を作成する。このステップでは、様々な発現ベクターのバックボーンが適している(例えば、実施例2の改変型pSuper−Retro)
【0226】
<ベクターのインサートの作成及びベクターへの挿入>
【0227】
BtgzIによる処理及び補充は、オリジナルのn28配列の直下流にpolIII転写終結シグナルとして働く5個のチミジンを保持させ、且つオリジナルのN28配列の上流のアデニンを除去し、ピリミジン(ベクターからの)で置換することである。標準的な開始部位の直上流にプリンが存在する場合にpolIIIは転写を早く開始するので、直上流にピリミジンが存在すると、標準的な開始部位(H1プロモータのTATAボックスの25ヌクレオチド下流)での転写開始が促進される。したがって、circIMIVでは、標準的な開始部位は、オリジナルのN28配列の最初のヌクレオチドである(図4の下部で「+25」と記されている(下記参照))。
【0228】
<非自己相補的ループ配列の作成>
【0229】
図5の上部には、N28及びn28配列の間のcircIMIVのベクターインサート配列が示されている。インサートの配列は、n.a.IIに存在する制限部位非対称性(上記に記載)により、PmeI/AarI制限部位非対称性を含む。circIMIVをPmeIで処理すると、センス鎖においてGGTTTが後に続く平滑末端が形成される。DNAをAarIで処理すると、DNAは、オリジナルのn28の最初のランダムなヌクレオチドから3ヌクレオチド離れた部分で切断され、反対側の鎖では4ヌクレオチド多く切断され、陥凹3´末端が形成される。Klenowで補充すると、センス鎖においてAGCが後に続く平滑末端が形成される(図5の「線状中間体V」)。線状IMVの平滑末端を同一分子内で互いに連結する(図5の第2の連結ステップ)と、配列がGTTTAGである非自己相補ループ領域をN28及びn28の間に含む環状産物VI(「circ産物VI」)が形成される。
【0230】
図3の上部に示されているオリジナルのプライマー伸長の先頭部位において相補的な塩基対を使用したことにより、図5に示されているように、相補的なG−Cが非自己的なループの両端に位置するようになる。他の実施形態では、図3、4、及び5に示されている工程を繰り返し、且つ毎回最初のプライマー伸長の先頭部位で異なる塩基を使用すると、4つのサブライブラリが作成される。これらのサブライブラリを混合すると、ランダムな29塩基対ステムとGTTTAGの非自己相補的なループとを有するshRNAライブラリが構成される。ライブラリの各shRNA構築物の前方には、4つのピリミジンで終了するpolIIIプロモータ(H1)が存在する。また、転写開始部位は最初のランダムなヌクレオチドである。後半29塩基対ステムの直下流に存在する5つのチミジンは、転写終結シグナルとして働く。
【0231】
≪実施例5:部分的に相補的なRNA分子のライブラリ作成の第3のアプローチ≫
【0232】
図6〜8は、RNAiの発現ベクターのライブラリを作成するのに使用した第3のアプローチが図示する。
【0233】
<ランダムなステム配列の逆相補鎖の作成、その2つの共有的な連結、及び第2の伸長>
【0234】
前回の方法と同様に、2つの定常領域に挟まれたランダムな配列の領域(ランダムな配列の領域の5´及び3´にそれぞれ「第1の定常領域」及び「第2の定常領域」が連結している)を有する一本鎖DNA分子「一本鎖核酸中間体I」を合成した(図6において、「ssI」として示されている)。第2の定常領域は、NsNsN26配列の直下流に、PmeI認識部位の一本鎖を含む。ssIでは、「NsNsN26」は28個のランダムなヌクレオチドを意味する。このランダムなヌクレオチドにおける最初の2つのヌクレオチドの後には、ホスホロチオエート結合が存在する(下記及び図7に示すように、第2の伸長の後にBtgZIによる非対称的な切断を形成するため)。ssIは、NotI及びBtgZI認識配列の一本鎖をも含んでいた(図6のdsIbに示されている)。
【0235】
2つのミスマッチ残基を有する陥凹プライマー(recessed primer)からの単純な伸長反応を行うと、(a)第1の定常領域の断片、(b)NsNsN26配列、及び(c)第2の定常領域のそれぞれの逆相補鎖を含むdsIBが形成された。
【0236】
ミスマッチなプライマーを使用したところ、第2の定常領域の逆相補鎖におけるn26nnの配列の直上流にAarI認識配列が形成された。また、ミスマッチなプライマーにより、第2の定常領域の逆相補鎖は、PmeI認識配列を有さない。これにより、ベクター挿入後に、NsNsN26及びn26nnの間に非相補的なループを形成するのに利用される非対称性が形成された(下記及び図8を参照)。
【0237】
ヘアピンループリンカー(「リンカーB」)をdsIbの陥凹プライマー末端に連結すると、NsNsN26及びn26nn配列を含むdsIbの2つの鎖が互いに共有的に連結し、第1の定常領域の逆相補鎖が完結し、核酸中間体II(「n.a.II」)が形成された。(dsIb及びリンカーBの相補的な付着末端は、それぞれSalI及びXhoI部位に由来する。SalI及びXhoIによる消化では、それぞれdsIb又はリンカーBのホモダイマーは切断されたが、目的のヘテロダイマー産物は切断されなかった。したがって、サイズによるゲル分離が容易となった。)n.a.IIは、5´〜3´の順に、(a)第1の定常領域の第1コピーと、(b)ランダムな配列の領域の第1コピー(「NsNsN26」)と、(c)第2の定常領域の第1コピーと、(d)ヘアピンループリンカーと、(e)第2の定常領域の逆相補鎖と、(f)ランダムな配列の領域の逆相補鎖(「n26nn」)と、(g)第1の定常領域の逆相補鎖とを含む。
【0238】
第2の伸長反応(図6の下部〜図7の上部)を容易にするために、DNAの一本鎖のみを切断する切断酵素N.BbvCでニック部位を形成した(図6の矢印で示された部分)。次に、出来上がった5´断片を、鎖置換DNAポリメラーゼBst(図6の下部及び図7の上部に図示されている)で伸長させ、n.a.IIの逆相補鎖を形成した。その結果、二本鎖中間体III(dsIII)が形成された。dsIIIは、上部の鎖の5´〜3´の順に、(a)第1の定常領域の第2の逆位コピーと、(b)ランダム領域の第2の逆位コピー(n28)と、(c)第2の定常領域の第2の逆位コピーと、(d)ヘアピンループリンカーのコピーと、(e)第2の定常領域の第1コピーと、(f)ランダム領域の第1コピー(N28)と、(g)第1の定常領域の第1コピーとを含む。本実施例のdsIIIでは、それぞれの領域が前の実施例とは逆の順で合成されており、したがって、前の実施例とは逆の順に図示されている。
【0239】
ssI(図6の上部)に本来存在するホスホロチオエート結合により、dsIIIにおいて、BtgZIがdsIIIの一端のみを切断する制限部位非対称性が形成された。dsIIIをBtgZIで消化すると、DNAは、新しく合成されたN28の最初のランダムなヌクレオチドの直前で切断され、反対側の鎖においてはさらに4ヌクレオチド多く切断され、陥凹3´末端が形成される(図7のdsIIIB)。Klenowで補充すると、新しく合成されたN28の反対側の鎖において、前記4つのヌクレオチドが再生され、平滑末端が形成された。上記の実施例で記載したように、非対称的なBtgZIの切断により、最後のランダムなヌクレオチドの後にTTTTT終結配列を維持すると同時に、H1転写開始部位の直上流、最初のランダムなヌクレオチドに接する相補的なAAAAAを5つのピリミジンに変えることができた。
【0240】
<第2の伸長の終了によるベクターインサートの形成、及びベクターへの挿入>
【0241】
非対称的なBtgZI消化により、2つのNotI部位のうちの1つもまた、除去された。NotIで処理したところ、ライブラリインサート(dsIIIC)が形成された。このインサートを、ベクターのバックボーンに連結し(図7の第1の連結ステップ)、環状中間体IVを作成した。図8の上部には、N28及びn28の間のベクターインサートの配列が示されている。プライマーAのミスマッチにより(図6)、インサートの一端に1つのAarI部位が存在し、反対側に1つのPmeI部位が存在していた。PmeIで消化すると、センス鎖において、AAACCCが後に続く平滑末端が形成された。AarIで消化すると、DNAは、オリジナルのn28の最初のランダムなヌクレオチドから3ヌクレオチド前で切断され、反対側の鎖においてはさらに4ヌクレオチド多くで切断され、陥凹3´末端が形成される。Klenowで補充したところ、転写鎖においてN28の直後にGCTを有する平滑末端が形成された(「線状中間体V」)。線状中間体Vの平滑末端を互いに同一分子内で連結させる(図8の第2の連結ステップ)と、N28及びn28の間に非相補的なCTAAACループ配列を含む環状産物VI形成された。
【0242】
インサートの転写鎖は、転写開始部位の上流に5つのピリミジン(+1部位(polIIIにはプリンが所望される)における転写開始の効率を増大させるため)と、それに続く28ヌクレオチドを含む29ヌクレオチドのステムと、それに続く非相補的なループ配列と、それに続く前記29ヌクレオチドのランダムな配列の逆相補配列と、それに続く5つのチミジン(polIII転写を終了させるため(第2のチミジンで終了する))とを含む。したがって、ベクターは、29ヌクレオチドのステムとそれから突出した2つのヌクレオチドとを含むshRNAをエンコードする。
【0243】
この方法の有効性を確認するために、大腸菌を環状IMIVでトランスフェクトし、300,000コロニーを得た。これらのコロニーのうちの15コロニーからプラスミドDNAを単離し、それらのインサートの塩基配列を決定した。15個のインサート全ての配列は、予想通り、AarI−PmeI断片で分離したランダムな配列とその逆相補鎖(図8の上部に示されている)とを含んでいた。また、中間体のプールの塩基配列を決定した。図9に示されているように、配列データによって、予想される定常領域の存在、及びランダム領域におけるバイアスの非存在が確認された。これは、本方法の有効性を示すものである。ランダムな配列に使用された塩基対の割合は、A/Tが50.9%、G/Cが49.1%であった。これは、ランダム領域が、ランダム性を有することを示す。
【0244】
残りのコロニー(約300,000個)からDNAを調製し、連続的にAarI及びPmeIで消化し、再連結した。連結した産物で大腸菌をトランスフェクトし、1,000,000コロニーを得た。これらのコロニーのうちの5個のコロニーからプラスミドDNAを単離した。5つのDNA全てが、正しい大きさを有していた。
【0245】
本方法の終了後、14クローンのランダムの領域(n29)を配列決定した。図10に示されているように、配列にはスキューイング(skewing)が検出されなかった。これは、本方法が有効であり、最終産物が目的の産物と一致したことを示す。
【0246】
また、完成したライブラリからの個々の「クローン」からのインサート全体の塩基配列決定を行った。図11では、代表的なクローンからの配列が示されている。このクローンは、N28のランダムな配列と、それに続くG残基(オリジナルのssDNA分子の3´定常領域由来)と、それに続くループ配列と、それに続く「C」残基と、それに続くN28の逆相補配列(「n28」として示されている)とを含んでいた。この配列は、図8の下部の鎖に対応する。したがって、最終産物は、目的の産物と完全に一致していることになる。これは、本方法の有効性を再確認するものである。
【0247】
≪実施例6:shRNAライブラリをスクリーニングするための、アポトーシス阻害アッセイの確立≫
【0248】
293T細胞(ヒトの胚腎臓細胞株)を、2、4、6、及び8μMの合成トリテルペノイドであるCDDOで一晩処理した。CDDOを含まない培地と交換した後、4、6、又は8μMのCDDOで処理したプレートには、付着細胞が存在していなかったのに対して、2μMのCDDOで処理したプレートには、付着細胞が幾つか見られた。この実験を4μMのCDDOで繰り返したところ、CDDO欠失培地で5日間処理した後も、付着コロニーが確認されなかった。
【0249】
他の実験では、293T細胞の培地を、50%、20%、10%、5%、2%、及び0%の血清欠失培地を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)と交換して24時間処理した。その後、細胞を標準培地で5日間培養した。5%、2%、又は0%の血清欠失培地で処理したプレートには、細胞は残存していなかった。一方、50%及び20%の血清欠失培地を含むPBSで処理したプレートでは、細胞はほとんど生存していた。10%の血清欠失培地を含むPBSで処理した約750,000細胞のうち、2つのコロニーがプレート上で見られた。したがって、5〜10%の血清欠失培地を含むPBSで24時間処理すると、293T細胞の約100%が死滅することになる。
【0250】
別の実験では、100%の細胞が死滅する最低条件を確立し、shRNAライブラリによる救済をさらに容易にするために、293T細胞を、3μMのCDDO及び/又は6%、7%、8%、又は9%の血清欠失培地を含むPBSで処理した。
【0251】
他の実験では、グルコース/グルコース酸化酵素(G/GO)技術を使用して、293T細胞にアポトーシスを誘発した。グルコース酸化酵素は、実質的に持続的な速度で過酸化水素の生成を触媒する。グルコース酸化酵素の最適な濃度及びインキュベーション時間を決定するために、様々なグルコース酸化酵素の濃度(2〜128mU/ml)、並びに様々なインキュベーション時間で実験し、その後、細胞を顕微鏡観察した。細胞を洗浄し、標準培地を再び加え、コロニー形成を観察したところ、100%の細胞が死滅する最低条件を確認することができた。
【0252】
≪実施例7:アポトーシスを阻害できるRNA分子を特定するための、shRNAの使用≫
【0253】
<材料及び実験方法>
【0254】
細胞:
【0255】
Craig Thompson博士からFL5.12細胞を調達した。
【0256】
高力価のレトロウイルスの生成:
【0257】
Effectene(登録商標)トランスフェクションキット(Qiagen)を使用して、293T細胞を、レトロウイルス及びpCL−Eco(エコトロピックなエンベロープ及びgag−polタンパク質をエンコードする)で共トランスフェクトすることで、高力価のレトロウイルスが生成された。トランスフェクションの24〜72時間後毎日、培養液の上清を採取し、FL5.12細胞に感染させるか、或いは、後の使用のために−80℃で冷凍した。24ウエル付のプレートの各ウエルに100〜200万細胞を播種し、ウイルス上清、5μg/mlのポリブレン、及び0.3ng/mlのインターロイキン−3(IL−3)と共に2500×g、1時間遠心分離した。次に、細胞をインキュベータ内で2時間保存した。ウイルスの上清を、新鮮なものと交換し、回転/インキュベーションの工程をさらに2回繰り返した。24〜48時間後、GFP発現のフローサイトメトリ分析で感染効率を求めた。
【0258】
<結果>
【0259】
マウスの前B細胞株であるFL5.12はIL−3依存である。IL−3を3日間除去すると、100%の細胞がアポトーシスによって死滅し、>90%の細胞がBcl−xL59の発現によって救われる。細胞をアポトーシスから救ったRNA分子を特定するプロトコールを画定するために、FL5.12細胞をIL−3含有の培地で培養し、その後、IL−3を欠く培地に切り替え、12、24、48、又は72時間培養した。その後、細胞をIL−3含有の培地に戻した。トリパンブルー排除法、及びIL−3含有の培地に切り替えた後の数日間の培養によって、100%の死滅率を確実にするのに上記の48又は72時間の培養が十分であることが示された。
【0260】
陽性対照としてpSiren、pCL−Ecoを2:1(モル比)を使用して、高力価のレトロウイルスの感染を30%GFP陽性FL5.12細胞になるように調製(calibrate)した。つまり、約30%の細胞が、RNAを発現するレトロウイルスのベクターで形質導入されたことになる。
【0261】
30%のGFP陽性細胞から、RISC複合体を過剰に含むものを避けるように選択した。各細胞に無限のRISC複合体が存在するため、同時に存在する2つ又は3つ以上のRNAi構築物の効果は、RNAi配列が強力でない限り、より低くなり得る。例え効果が低くても、有効なshRNA配列を特定できる可能性を最大限にするために、細胞ごとに1つのランダムなshRNAについて調べた。ポアゾン分布から、0.3及び0.4の感染多重度は、それぞれ約26%及び33%のGFP陽性細胞に相当する。それぞれの感染多重度における感染細胞のうち、たった1つのshRNAエンコード構築物に感染している細胞は、それぞれ約85%及び80%である。
【0262】
100万個のFL5.12細胞を、30%がGFP陽性になるように感染させ、実施例8に記載の300,000のコロニーライブラリーが得られた。発現後のGFP発現は、図14に示されている。生存を高めるshRNAを選択するために、IL−3を除去した。細胞を、IL−3陰性培地で3日間培養した後、0.3ng/mlのIL−3含有の標準生育培地に移し、3日間培養した。真陽性細胞を濃縮するために、IL−3の除去及び標準培地への戻しのプロセスを繰り返した。IL−3の除去及び標準培地の戻し(Rec)のプロセスを4回行った後、ライブラリ感染細胞のウエル(対照感染細胞のウエルではなく)におけるGFP陽性細胞の比率は60%に上昇した。これは、比較的な生存効果を付与したRNA分子が存在することを示す(図15)。
【0263】
PCRで10のshRNAエンコード配列(「ブック」)を調べ、pSirenに再クローンし、配列決定を行った。10の配列のうち、2つの配列が同じであった(ブック1及び7)。これは選択的濃縮(selective enrichment)を示す。3つの推定shRNA分子(ブック1、3、及び8)を個別にFL5.12細胞に感染させた。なお、各種類shRNA分子に関しては、個別に6回感染させて分析した。細胞には、IL−3の除去及び戻しのプロセスを1回行い、その後、再びIL−3を除去した。15時間後細胞をフローサイトメトリで分析し、感染細胞をGFP蛍光で同定し、死細胞をヨウ化プロピジウム(PI)染色で特定した。実験の開始(1回目のIL−3除去の直前)に対する相対的なGFP陽性(感染)、PI陰性(生)細胞の画分が図16に示されている。ブック1及び3に感染した細胞の生存率は、ランダムなブック(対照53)又はベクターのみ(pSiren)に感染した細胞のものよりも統計的に有意な改善を示した(各ケースのスチューデントt−検定において、p<0.0001であった)。ブック1及び3における生存率の改善は、カスパーゼ3酵素活性の低下と一致した。IL−3の除去のサイクリングは、回復部分を含んでいたので、ブック1及び3を、増殖率に対する効果について調べたが、そのような効果は見られなかった。ブック1及び3のステム配列は、下記の通りである。
【0264】
ブック1:5´−GGGTAGCTACATTTGCATATGTGGATATG−3´(配列認識番号1)
【0265】
ブック3:5´−GTGGATCAGTGTGTTATAGCTCGGGCAGG−3´(配列認識番号2)
【0266】
したがって、本発明に係る方法は、治療活性を有する組換え型RNA分子の特定に有効である。
【0267】
他の実験では、上記の方法と類似する方法を使用して、アポトーシスから保護するRNA分子を特定するために、G1E、293T、又はFRDA細胞を使用した。
【0268】
≪実施例8:本発明に係るRNA分子の機能の確認≫
【0269】
他の実験では、上記の実施例又は他の実施例で記載されているRNAiライブラリ・スクリーニングの後、目的の効果が発生した細胞又は細胞群を単離し、効果のあるベクターを単離し、他の細胞集団に加えた。他の実施例では、有効なRNAi配列をPCRで調べ(例えば、上記の方法では、レトロウイルスベクターのshRNAインサート部位の両端に存在するMfeI及びBlpIを挟むプライマーを使用することで)、同じランダム配列を含む同じ又は他の形態の阻害RNA(他の実施形態では、shRNA、microRNA、又はsiRNA)を別の細胞集団に加えた。別の細胞集団に同じ表現形が再発生すれば、阻害RNA分子が目的の表現形を引き起こすことができることを意味する。他の実施形態では、新しい形態のRNAiはRNAiの可逆的な形態である(他の実施形態ではインビトロで合成されたsiRNA、他の実験では、培地から取り出すことによって効果が反転する形態のもの)。また、新しい形態のRNAiは、目的の表現形を可逆的に付与することが示されている。他の実験では、陽性shRNA候補を、それらが特定されたモデルシステム以外のモデルシステムで試験する。
【0270】
≪実施例9:真陽性のものを濃縮するための反復プーリング及び再試験≫
【0271】
他の実験では、上記のアポトーシス・アッセイの1つにおける対照培養では、100%の死滅率が観察されない。この場合、ライブラリ感染培養における生存細胞をプールし、推定の有効shRNA配列をPCRで調べ、親ベクターに再クローンし、サブライブラリとして反復プーリング及び再試験で再試験した。プーリング及び試験を繰り返すことで、真陽性のものを濃縮することができる。
【0272】
例えば、偽陽性の比率が1%のスクリーニング検定(つまり、99%の死滅率が達成される)を使用して、本発明に係るRNAiライブラリをスクリーニングした。ライブラリの100,000配列の1つが真陽性(例えば、アポトーシスに対して有意な耐性をもたらす)である。200,000細胞を感染させると、平均して2つの真陽性及び2000の偽陽性が発生する。ライブラリ感染培養における生存細胞をプールし、推定上有効なshRNAをPCRで調べ、親ベクターに再クローンし、サブライブラリとして反復プーリング及び再試験で再試験する(例えば、上記の方法で、BglII及びNotI部位を導入するプライマーを使用して)と、200の真陽性(2/2000×200,000)及び2000の偽陽性が確認される。2回目のプーリング及び再試験の後、20,000の真陽性(200/2000×200,000)及び2000の偽陽性が得られる。したがって、2回のプーリング及び再試験の後、真陽性の比率(全陽性に対して)約1%から90%以上増加する。ライブラリに感染した細胞、及び対照の感染細胞に対する生存クローンの数が同程度である上記の如何なる選択アッセイにおいて、プールした陽性のものの再導入の後に生存クローンの数が増加した場合は、真の陽性が存在することを意味する。
【0273】
したがって、本発明のスクリーニング方法は、偽陽性率が著しく高いアッセイにおいても使用できる。
【0274】
≪実施例10:アポトーシスを阻害することができるRNA分子を特定するための別のアポトーシス・アッセイの使用≫
【0275】
他の実験では、shRNAライブラリをマウスの前B細胞株であるFL.5.12と共に使用してアポトーシスを阻害するRNA分子を特定する。100%のF.L5.12の細胞が死滅し、且つBcl−xLによって>90%の細胞が救われる条件を画定した(IL−3除去)。他の実施形態では、本技術をわずかに改変することで他の様々な種類の細胞を使用することができる。
【0276】
他の実験では、293T細胞にアポトーシスを誘発するためにスタウロスポリン又は他の酸化剤を使用する。他の実験では、FL5.12細胞の代わりに異なるIL−3依存細胞株(例えば、32D又はBa/F3)を使用する。他の実験では、32D細胞の、感染率の高いサブ細胞株(Warren Pear博士から調達可能)を使用する。他の実験では、VSV−G発現プラスミドpVSV−GをpHIT123の代わりに使用する。フローソーティングによる生存細胞の選別法の代わりに、表面マーカ又は選別可能なレポータを使用する。他の実験では、tet存在下で、ライブラリをtet−誘導GFP保有細胞株に感染又はトランスフェクトさせ、tetを除去した後のGFPを選択し、クローンする。他の実験では、G1E細胞(マウスの前赤芽球細胞株)に、幹細胞因子(stem-cell factor:SCF)を除去することでアポトーシスを引き起こす。
【0277】
他の実験では、通常の致死条件下を生存できる細胞の選択を可能にするモデルシステムでRNAi選択を使用する。例えば、幾つかの疾患では、それらの疾患を引き起こす変異は、正常な細胞が耐える条件下で細胞死を引き起こす。変異細胞にランダムなshRNAライブラリを導入し、細胞を選択条件下で培養し、生存する細胞を選択することによって、細胞を救うRNAi配列を特定することができる。
【0278】
≪実施例11:生存能力の高いフリードライヒ失調症(FRDA)細胞の選択のためのインビトロ・モデルシステムの画定≫
【0279】
初代FRDA線維芽細胞は、正常な対照線維芽細胞よりも酸化的ストレスに対しての感受性がより高い。Jauslinら(Hum Molec Gen 11 : 3055, 2002)は、グルタチオン合成における律速酵素を阻害するためにL−ブチオニン(S,R)−スルホキシミン(BSO)を使用したところ、全ての初代FRDA線維芽細胞が実質的に死滅し、正常な対照線維芽細胞が生存を維持する濃度(0.05mM)を発見した。
【0280】
他の実験では、BSOの処理時間を16〜48時間、BSOの濃度を0.001、0.05、及び0.1mMに設定して試験を行った。0.3mg/mlの完全飽和ヒトトランスフェリン(これらの細胞がミトコンドリア鉄を蓄積する傾向を悪化させる)を添加した1mMのBSO含有の培地にこれらの細胞を培養することでグルタチオンを欠失させると、48時間後、6ウエルのプレート上の全ての細胞は死滅した。一方、齢及び継代が一致する対照細胞は生存していた。細胞を洗浄し、標準培地を再び加え、コロニーの形成をみることで、100%の細胞が死滅する最低条件を確認した。
【0281】
≪実施例12:FRDA線維芽細胞の死を阻害することができるRNA分子を特定するための、shRNAの使用≫
【0282】
本発明に係るランダムなRNAのライブラリをレトロウイルスベクターとしてパッケージングした。ヒト細胞への感染のための高力価のレトロウイルスを生成するために、293T細胞を、レトロウイルスベクターのライブラリ、pHIT456(ヒト細胞に対して両指向性)、及びpCPG(gag−polを発現するプラスミド)で共トランスフェクトし、36時間後に培養液の上清を採取した。ライブラリを初代FRDA線維芽細胞に加え、FRDA細胞に対して致死的であるが、正常な対照細胞に対して致死的でない濃度の酸化剤の存在下で生存する線維芽クローンを選択した(293T細胞に関する上記の実施例で記載したように、付着細胞を選択)。有効な配列をPCRで調べ、実施例7〜9に記載したように、陽性ベクターを初代FRDA線維芽細胞に再接触させることで確認した。
【0283】
≪実施例13:幹細胞の長期の増殖を誘発することができるRNA分子を特定するshRNAライブラリの使用≫
【0284】
細胞表面マーカであるCD34は、造血幹細胞が分化するときにその細胞から消失することが知られている。他の実験では、shRNAのライブラリを、これらの細胞に感染又はトランスフェクトさせ、細胞を培養し、対照培養液における細胞がCD34の発現を完全に失う後もCD34を保持する細胞を選択する。このように、造血幹細胞を分化させずに培養することを可能にするRNAiを決定することができる。他の実験では、確認試験のために、実施例8に記載したように、特定したRNAi配列を含む可逆的な形態の阻害RNA(例えば、インビトロで合成したsiRNA)を作成する。この新しい形態のRNAを造血幹細胞に加えると、CD34の発現が可逆的に維持されることが示される。
【0285】
≪実施例14:幹細胞の多分化能を維持させることができるRNA分子を特定するための、shRNAライブラリの使用≫
【0286】
他の実験では、幹細胞の多分化能を維持させることができるRNA配列を特定するために、本発明に係るランダムなRNAライブラリを使用する。ランダムなshRNAライブラリを、幹細胞株(例えば、LRK1細胞)に感染又はトランスフェクトさせ、細胞が分化する条件下(LRK1細胞の場合、IL−6の非存在下)で培養し、幹細胞のコロニーを確認する。幹細胞コロニーが保有するベクターを回収し、幹細胞の多分化能を維持させることができるRNAを特定するために、配列決定を行う。他の実験では、確認試験のために、実施例8に記載したように、特定したRNAi配列を含む可逆的な形態の阻害RNAを作成する。この新しい形態のRNAをLRK1細胞に加えると、自己複製及び/又は未分化状態が可逆的に維持されることが示される。
【0287】
他の実験では、多分化能を維持する配列を特定するために、Chambersらが記載した方法(Functional expression cloning of Nanog, a pluripotency sustaining factor in embryonic stem (ES) cells. Cell 113, 643-55 (2003))において、LRK1細胞を使用する。本発明に係るRNAiライブラリを、LRK1細胞にトランスフェクト/感染させ、サイトカイン非存在下の自己複製細胞を選択し、プールする。次に、shRNA配列をPCRで調べ、親ベクターに再連結する。次に、単一の未分化コロニーからプラスミドを調製する前に真陽性細胞が十分に濃縮するようにするために、これらのベクターを1回以上LRK1細胞に再導入する。他の実験では、活性配列を含むクローンは、サイトカイン非存在下の幹細胞コロニー(形態的に、且つアルカリンホスファターゼ染色によって特定可能)の形成で確認する。
【0288】
≪実施例15:前駆細胞が目的の細胞型に分化するのを誘導することができるRNA分子を特定するための、shRNAの使用≫
【0289】
他の実験では、前駆細胞が目的の細胞型に分化するのを誘導することができるRNA配列を特定するために、本発明に係るランダムなRNAライブラリを使用する。例えば、前骨髄細胞であるHL60細胞の分化(例えば、好中球への)、白血病細胞株であるU937細胞の分化(例えば、単球への)、又は赤血球細胞株であるG1Eの分化(例えば、赤血球系細胞への)を確認する。分化は、マーカタンパク質(例えば、Ter−119又はCD11b)の発現又は形態的基準(例えば、プラスチックへの付着性)で特定することができる。
【0290】
他の実験では、細胞を未分化培地で培養し、GFP及びCD11b(HL60及びU937細胞)、又はGFP及びTer−119(G1E細胞)に関してフローサイトメトリを行う。GFP(ベクターの存在の指標である)、及び最も高いレベルの適切な分化マーカを発現する対照細胞よりも高いレベルの分化マーカを発現する細胞をゲートオン(gate on)(選択)する。フローソーティングしたHL60及びU937細胞の分化は、細胞のプラスチックへの付着でさらに確認することができる。分化の他のマーカとして、CD14発現、及びWright-Giemsa染色による細胞形態がある。C1E細胞は、小さなヘモグロビン化コロニーを形成し、ベンジジン及びバンド3陽性になり、前赤芽球形態にシフトする。
【0291】
他の実験では、ランダムなRNAライブラリを、胚幹(ES)細胞(他の実施形態では、ヒトES細胞又はマウスES細胞)の分化を誘導するRNA配列を特定するために使用する。他の実施形態では、トランスフェクトされたES細胞をマウスに導入し、数週間後にマウスを屠殺し、様々な組織からGFP陽性細胞を単離し、細胞が有する配列を調べる。これらの配列は、細胞が特定の種類の細胞に分化する際に重要な役割を果たす。
【0292】
他の実施形態では、血管内皮細胞、横紋筋細胞、心筋細胞、骨細胞、早期胚中葉細胞、内胚葉由来細胞、原始内胚葉細胞(例えば、内胚葉)、卵黄嚢内臓内胚葉(yolk sac visceral endoderm)、外胚葉由来細胞、神経様細胞、又は他の公知の細胞へのES細胞の分化を検出する。他の実験では、目的の細胞型へ分化した細胞を選択するために、細胞分類法を使用する。ランダムなshRNAライブラリを前駆細胞に感染又はトランスフェクトさせ、完全に又は部分的に分化した細胞を単離する。分化した細胞が保有するベクターを回収し、その配列を決定することで、目的の細胞型への前駆細胞の分化を誘導するRNA配列を特定する。他の実験では、確証試験を行うため、特定したRNAi配列を含む阻害RNAの可逆的な他の形態のものを、実施例8に記載したように作成する。この新しい形態のRNAiを前駆細胞に加え、分化を誘導するのを確認する。
【0293】
≪実施例16:ウイルスの複製を防止する、又はウイルス感染若しくは細胞変性から細胞を保護することができるRNA分子を特定するための、shRNAライブラリの使用≫
【0294】
他の実験では、ウイルスの複製を防止する、又はウイルス感染若しくは細胞変性から細胞を保護することができるRNA分子を特定するために、本発明に係るRNAライブラリを使用する。本発明に係るRNAiライブラリを初代細胞又は細胞株に感染又はトランスフェクトさせ、その後に細胞変性ウイルス(他の実施形態では、ヒトリンパ球及びHIV−1ウイルス、又はカモ胚線維芽細胞(DEF)及びAHV−1を使用する)を前記細胞又は細胞株に感染させ、生存細胞を特定する。他の実験では、確証試験を行うため、特定したRNAi配列を含む阻害RNAの可逆的な他の形態のものを、実施例8に記載したように作成する。この新しい形態のRNAiを細胞に加え、可逆的に、ウイルス複製が防止される、又は細胞がウイルス感染若しくは細胞変性から保護されることを確認する。
【0295】
≪実施例17:本発明に係るRNA分子のさらなる改善≫
【0296】
上記の実施例の1つに記載したようにRNAiライブラリをスクリーニングした後に特定した配列を改善するために、ランダム変異導入法を使用する。他の実施形態では、変異性複製法(error-prone copying)を使用する。他の実施形態では、変異性PCRを使用する。変異性PCRによるランダム変異導入法は、Mn2+、高濃度のMg2+、及び濃度が互いに異なるdNTPの存在下にあるTaqポリメラーゼの低忠実度性を利用する。この方法、当該技術分野で公知である。ランダムに変異導入されたRNAi配列は、ある条件下では、shRNAのためのマッチした逆相補鎖を必要とするので、反復選択には、上記の実施例に記載されているライブラリ合成プロトコールの繰り返しが必要である。目的の効果が生じた細胞又は細胞群を単離し、変異性PCR法を使用して、図3又は図6に上部に示されているオリゴヌクレオチドの配列と一致する配列を増幅する。前記増幅は、例えば、(最終shRNAステムの29番目のヌクレオチドにも変異が導入できるように)N28配列の端から下流側へ1ヌクレオチド延びる完全にマッチしたプライマーを使用して、オリゴヌクレオチド配列の末端まで行われる。その結果、「ハーフブック」のライブラリが形成される。
【0297】
ランダムな変異導入の後に、上記の実施例の1つに記載したようにライブラリ構築を行った。第1のミスマッチ伸長プライマーは、他の実施形態では、異なるヌクレオチド(N28の直下流のランダムなヌクレオチドに相補的)で終端する4つのプライマーの等モル混合物であり、(最初のライブラリ作成で行ったような、4つのサブライブラリの混合が必要ではない)、それぞれの「29番目」のヌクレオチドは異なる。図4の上部に示されているオリゴヌクレオチドの同等物に相補的なDNA鎖が1回の伸長反応で存在するが、第1の陥凹伸長プライマーの1回の伸長産物のみがヘアピンループリンカーにアニールする。
【0298】
所定の配列のサブライブラリを、上記の実施例の1つの記載にしたがって(オリジナルの配列が対照に含まれる点を除いて)、標的細胞に導入する。幾つかの実験では、shRNA構築産物の効果の増大は、(1)選択に使用された元の条件下でより多くの細胞が生存している、(2)選択に使用された元の条件下で生存期間がより長い、又は(3)より悪い条件下で生存すると定義される。対照shRNAに対してわずかな改善を示す(選択に使用した元の条件下での生存期間がよりわずかであるなど)、最初に特定されたRNA分子に関しては、より有効な配列を選択するのに第2の基準が最も重要なものとなるであろう。最初の確認分析でより長期間に細胞を救うRNA分子に関しては、より有効な配列を選択するのに第2の基準が最も重要なものとなるであろう。このような配列に関しては、100%の死滅率ための新たな最低条件を確立するために、より悪い条件で試験する必要がある。
【0299】
他の実験では、本発明に係るRNAi分子をエンコードする全遺伝子(即ち、二本鎖領域を形成する両方の部分及び介在領域、又は「ブック全体」(whole book))を低忠実度的な方法で複製、ブック全体のサブライブラリ発現ベクターなどに挿入又はサブクローンし、得られたサブライブラリを、上記の方法にしたがって、標的細胞に導入する。
【0300】
他の実験では、HL60、U937、及びG1E細胞に関して、shRNA構築物の効果の増大は、分化マーカの発現がより高い、分化マーカを発現する細胞がより多い、又は発現されている分化マーカの範囲がより広いと定義される。LRK1細胞に関しては、shRNA構築物の効果の増大は、未分化コロニーの数がより多い、又はより多くの経路にわたる未分化の維持を意味する。
【0301】
他の実験では、RNA分子をエンコードするベクターを感染又はトランスフェクトさせた細胞を追跡し、その配列のサブライブラリで感染又はトランスフェクトさせた細胞と比較する。他の実施形態では、特定した配列をPCRで調べる。他の実施形態では、配列が正しいか否か及びその活性は、実施例8に記載したように確認する。
【0302】
他の実施形態では、2次配列の効果が1次配列のものよりも著しく向上している場合は、2次配列に対して反復選択をもう1回行う。他の実施形態では、他の方法(例えば、テトラゾリウム染色還元アッセイを使用して)で改善配列を試験する。FRDAに関して記載した選択アッセイは酸化的ストレスに基づくが、抗酸化保護自体に関連しないFRDA細胞の特徴を改善するRNA分子を得るのにこのアッセイを使用することができる。その理由は、選択アッセイが、正常な対照線維芽細胞が生存できる酸化的ストレス条件下で行われるためである。したがって、FRDA細胞を正常な細胞に近づける干渉は、他の実施形態では、アッセイでの生存性を改善する。一部のshRNAは、フラタキシン(frataxin)発現を阻害するトリヌクレオチド反復伸長(tri-nucleotide repeat expansion)又はトリヌクレオチド反復伸長によって形成されるトリプレックスDNAに影響を及ぼすことが知られている。これは、ノーザン又はウエスタンブロットを使用してフラタキシン発現の増加を測定することで確認できる。他の実施形態では、上記のプロセスにより、改善した配列を特定することができる。
【0303】
≪実施例18:疾患の薬剤標的の特定及び幹細胞への応用のための、本発明に係るRNA分子の使用≫
【0304】
他の実施形態では、改善した配列は、薬剤標的の可能性を有する個々の遺伝子に関与する。候補遺伝子は、ヒトゲノムのデータベースをホモロジー検索することで特定する(とりわけ、改善した配列の最初の22ヌクレオチドで)。候補遺伝子は、同じ遺伝子からの異なるmRNA配列を標的にする個々のshRNAを使用することで確認する。ウエスタン分析、ノーザン分析、及び/又は量的RT−PCRを行って対照shRNAと比較し、非特異的な効果を除外することでさらに確証することができる。所望に応じて、shRNAの効果を無効にするが、エンコードされたアミノ酸を改変しない変異で標的遺伝子を再発現させて表現形(例えば、酸化的ストレスからの救済)を反転させることで最終確認を行う。
【0305】
他の実験では、改善した配列は、複数の標的遺伝子に関与する。これは、マイクロアレイ解析によって確認することができる。
【0306】
他の実施形態では、RNAi分子の作用機構を決定し、薬剤標的を特定するための追加実験を行う。前記RNAi分子の作用機構として、例えば、FRDA細胞の場合、ミトコンドリア鉄の排出の増加及びミトコンドリア鉄の取り込みの減少、鉄硫黄クラスターの安定化又はフラタキシン安定性及び機能の増大、抗酸化保護の増大、代謝効果を介してミトコンドリアに対する要求性の回避、FRDA遺伝子の最初のイントロンでトリヌクレオチド反復伸長によって形成されたトリプレックスDNAへの作用によるフラタキシン発現の増大がある。
【0307】
≪実施例19:治療RNA配列を特定するための、コンピュータで作成されたshRNAの使用≫
【0308】
コンピュータ及びオリゴヌクレオチド合成器を使用して、下記のように、65,500個のランダムなshRNA分子を含むshRNAライブラリを作成した。
【0309】
サブクローニングのための適切なフランキング配列と、RNA分子をエンコードする遺伝子を含む内部分とを含む65,500個の配列のセットを作成した。尚、エンコードされた前記RNA分子の(a)1〜22番目の残基はランダムであり、(b)その次の3〜20残基は定常及び非パリンドロームであり、(c)次の22残基は最初の22残基に対して相補的である。或いは、エンコードされた前記RNA分子の(a)1〜8番目の残基はランダムであり、(b)9〜22番目の残基は定常であり、(c)その次の5〜20残基は定常及び非パリンドロームであり、(d)その次の22残基は最初の22残基に対して相補的である。或いは、二本鎖領域の1及び9〜22番目の残基は定常であり、一方、他の部分はランダムである。或いは、二本鎖部分の他の任意の部分が定常であり、残りの部分がランダムである。幾つかの実験では、公知及び/又は天然型RNAi分子由来のループ配列を使用する。しかしながら、当業者ならば、非公知のループ配列などの様々な配列がこの方法に適切であることを理解できるであろう。また、二本鎖領域のRNA分子が22ヌクレオチドである必要がなく、6〜30ヌクレオチドの間(6及び30ヌクレオチドを含めて)なら如何なる長さであってもよいことを理解できるであろう。他の実験では、29ヌクレオチドの二本鎖領域が使用されている場合、全29ヌクレオチド領域に変異が導入されている。
【0310】
コンピュータ作成の配列でオリゴヌクレオチド合成器をプログラム化する。65,500個のshRNAをエンコードする配列のそれぞれをその相補配列とアニールさせ、プールとして、適切な発現ベクターに連結する。これによって、18兆個の可能な22mershRNAコード配列のランダムなサンプリングを代表する65,500のランダムなshRNAコード配列のライブラリが作成される。
【0311】
他の実験では、実施例7〜16に記載したように、このライブラリを目的の疾患又は表現形の細胞モデルで試験する。有効な配列をPCRで調べ、実施例7〜13に記載したように、陽性ベクターを細胞に再接触させることでその有効性を再確認する。
【0312】
≪実施例20:RNA分子のさらなる改善≫
【0313】
上記の実施例に記載したようにRNAiライブラリをスクリーニングした後に特定した配列を改善するために、配列に突然変異を導入する。他の実施形態では、変異性複製法(error-prone copying)を使用する。他の実験では、変異性PCRを使用する。変異性PCRによるランダム変異導入法は、Mn2+、高濃度のMg2+、及び濃度が互いに異なるdNTPの存在下にあるTaqポリメラーゼの低忠実度性を利用する。この方法、当該技術分野で公知である。ランダムに変異導入されたRNAi配列は、ある条件下では、shRNAのための逆相補鎖を必要とするので、反復選択には、上記の実施例に記載されているライブラリ合成プロトコールの繰り返しが必要である。目的の効果が生じた細胞又は細胞群を単離し、図3又は図6の上部に示されているオリゴヌクレオチドの配列と一致する配列を増幅する。前記増幅は例えば、(最終shRNAステムの29番目のヌクレオチドにも変異が導入できるように)N28配列の端から下流側へ1ヌクレオチド延びる完全にマッチしたプライマーを使用して、オリゴヌクレオチド配列の末端まで行われる。その結果、「ハーフブック」のライブラリが形成される。
【0314】
ランダムな変異導入の後に、上記の実施例の1つに記載したようにライブラリ構築を行った。第1のミスマッチ伸長プライマーは、他の実施形態では、異なるヌクレオチド(N28の直下流のランダムなヌクレオチドに相補的)で終了する4つのプライマーの等モル混合物であり、(最初のライブラリ作成で行ったような、4つのサブライブラリの混合が必要ではない)、それぞれの「29番目」のヌクレオチドは異なる。図4の上部に示されているオリゴヌクレオチドの同等物に相補的なDNA鎖が1回の伸長反応で存在するが、第1の陥凹伸長プライマーの1回の伸長産物のみがヘアピンループリンカーにアニールする。
【0315】
他の実験では、上記の実施例で特定された配列の変異体は、下記のようにコンピュータ及びオリゴヌクレオチド合成器を使用して作成した。
【0316】
サブクローニングのための適切なフランキング配列と、RNA分子をエンコードする遺伝子を含む内部分とを含む配列のセットを作成した。エンコードされた前記RNA分子の(a)1〜22番目の残基の一部は定常である(上記の実施例で特定されたRNA配列に基づいて)のに対して、残りの部分はランダムであり、(b)その次の3〜20残基は定常及び非パリンドロームであり、(c)その次の22残基は最初の22残基に対して相補的である。他の実験では、シード配列(二本鎖領域の約1〜8番目の残基)は定常であるのに対して、二本鎖領域の残りの部分は多様である。他の実験では、シード配列は多様であるのに対して、二本鎖領域の他の部分は定常である。他の実験では、シード配列の2〜8番目の残基は定常である。
【0317】
コンピュータ作成の配列でオリゴヌクレオチド合成器をプログラム化する。65,500個のshRNAをエンコードする配列のそれぞれをその相補配列とアニールさせ、プールとして、適切な発現ベクターに連結する。これによって、18兆個の可能な22mershRNAコード配列のランダムなサンプリングを代表する65,500のランダムなshRNAコード配列のライブラリが作成される。
【0318】
変異導入又はコンピュータのランダム化によるshRNAのランダム化の後、上記の実施例の1つに記載したように(オリジナルの配列が対照内に含まれる点を除いて)、所定の配列に関するサブライブラリを標的細胞に導入する。幾つかの実験では、shRNA構築産物の効果の増大は、(1)選択に使用された元の条件下でより多くの細胞が生存している、(2)選択に使用された元の条件下で生存期間がより長い、又は(3)より悪い条件下で生存すると定義される。対照shRNAに対してわずかな改善を示す(選択に使用した元の条件下での生存期間がよりわずかであるなど)、最初に特定されたRNA分子に関しては、より有効な配列を選択するのに第2の基準が最も重要なものとなるであろう。最初の確認分析でより長期間に細胞を救うRNA分子に関しては、より有効な配列を選択する上で、第3の基準が最も重要なものとなるであろう。このような配列に関しては、100%の死滅率のための新たな最低条件を確立するために、より悪い条件下で試験する必要がある。
【0319】
他の実験では、改善した配列を特定するために、実施例17に記載されたプロトコールの1つを使用してサブライブラリを試験する。
【図面の簡単な説明】
【0320】
【図1】部分的に自己相補的なRNA分子のための発現ベクターライブラリの作成方法(パートI)を示す図である。実施例3に記載。10以上のヌクレオチドを有する配列は、配列番号3〜6に示されている。
【図2】部分的に自己相補的なRNA分子のための発現ベクターライブラリの作成方法(パートII)を示す図である。実施例3に記載。上記以外の10以上のヌクレオチドを有する配列は、配列番号7〜12に示されている。
【図3】部分的に自己相補的なRNA分子のための発現ベクターライブラリの別の作成方法(パートI)を示す図である。実施例4に記載。上記以外の10以上のヌクレオチドを有する配列は、配列番号13〜17に示されている。
【図4】部分的に自己相補的なRNA分子のライブラリの別の作成方法(パートII)を示す図である。実施例4に記載。上記以外の10以上のヌクレオチドを有する配列は、配列番号18〜27に示されている。
【図5】部分的に自己相補的なRNA分子のライブラリの別の作成方法(パートII、非相補的なループ配列の作成)を示す図である。実施例4に記載。上記以外の10以上のヌクレオチドを有する配列は、配列番号28〜33に示されている。
【図6】部分的に自己相補的なRNA分子のライブラリの第3の作成方法(パートI)を示す図である。実施例5に記載。上記以外の10以上のヌクレオチドを有する配列は、配列番号34〜37に示されている。
【図7】部分的に自己相補的なRNA分子のライブラリの第3の作成方法(パートII)を示す図である。実施例5に記載。上記以外の10以上のヌクレオチドを有する配列は、配列番号38〜51に示されている。
【図8】部分的に自己相補的なRNA分子のライブラリの第3の作成方法(パートIII)を示す図である。実施例5に記載。上記以外の10以上のヌクレオチドを有する配列は、配列番号52〜53に示されている。
【図9】実施例5に記載の方法(のAarI/PmeI消化(図7の下部)の前の段階)にしたがって作成されたライブラリの中間体の配列データを示す図である。全クローンの配列が重なっているので、ランダム領域の各残基には、4種類の塩基が存在することが示されている。これは、これらの領域のランダム製を示すものである。この配列データは、予想通りの定常領域が存在し、ランダム領域においてバイアスが存在しないことを確認するものである。
【図10】完全なライブラリからの14クローンのランダムな(n29)領域の配列を示すデータである。配列にスキューイングが見られなかったことにより、方法が正確に行われ、最終産物が目的の産物に完全に一致したことがわかる。
【図11】最終ライブラリからの単一「クローン」の配列を示す図である。ここに、示されているのは、N28のランダム配列、それに続く「G」残基(オリジナルの一本鎖(ss)DNA分子の第2の定常領域の5´末端由来)、それに続くループ配列、「C」残基、及びN28の逆相補鎖(n28)である。この配列は、図8の下部の下の鎖(上下を逆にした場合)と一致する。これは、最終産物が目的の産物に完全に一致することを示すものである。
【図12】48時間前にpQe2に感染させられたDLD1細胞のフローサイトメトリ解析を示す図である。A:生細胞をゲートするための前方散乱対側方散乱である。非凝集細胞を濃縮するために、第2のゲーティング(前方散乱対側方散乱幅)を行った。B:eGFP発現に関する感染細胞のフローサイトメトリ解析である。パネルAからゲートされた細胞の約30%がeGFPを発現する。C:eGFP発現に関する感染細胞のフローサイトメトリ解析である。ゲートされた細胞の約50%がeGFPを発現した。
【図13】抗GFPshRNAを使用したpQe2試験を示す図である。左のパネル:pQe2のみでトランスフェクトされた293T細胞。右のパネル:GFPを標的にしたshRNA構築物を含むpQe2でトランスフェクトされた293T細胞。トランスフェクションの有効性は、細胞におけるGFPの低レベルの発現によって確認された。
【図14】約30%のFL5.12細胞のレトロウイルス感染を示す図である。
【図15】複数回のIL−3除去及び再添加の後の、300Kライブラリで感染したGFP陽性細胞の濃縮を示す図である。
【図16】IL−3除去の15時間後の、選択されたshRNA配列(「ブック」)に感染させられたFL5.12細胞の生存率(y軸)を示す図である。2日後にも同様の2:1の生存比が確認された(レベルはより低かった)。尚、対照53はランダムなブックであり、pSirenはベクターである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リボ核酸(RNA)分子のセット若しくはライブラリを発現する組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリであって、
前記各RNA分子が、
(a)(i)実質的にランダム配列であるか、或いは(ii)実質的にランダム配列の第1のサブ領域と前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリに共通する第2のサブ領域とから成るかのいずれかの第1の領域、
(b)非自己相補的な第2の領域、及び
(c)前記第1の領域に実質的に相補的な第3の領域を有し、
前記非自己相補的な第2の領域が、前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリに共通することを特徴とする組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリ。
【請求項2】
請求項1に記載の組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリであって、
前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリの個々の組換え型発現ベクターが、RNAポリメラーゼのプロモータをそれぞれさらに含有することを特徴とする組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリ。
【請求項3】
請求項1に記載の組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリであって、
前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリの個々の組換え型発現ベクターが、既知の機能のRNA阻害性(RNAi)分子をエンコードする遺伝子をそれぞれさらに含有することを特徴とする組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリ。
【請求項4】
請求項1に記載の組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリであって、
前記非自己相補的な第2の領域が、前記組換え型RNA分子の分子内でループを形成することができることを特徴とする組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリ。
【請求項5】
請求項1に記載の組換え型ベクターのセット若しくはライブラリであって、
前記第1の領域の長さが8〜30ヌクレオチドであることを特徴とする組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリ。
【請求項6】
請求項1に記載の組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリであって、
前記サブ領域の長さが8〜29ヌクレオチドであることを特徴とする組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリ。
【請求項7】
目的とする生物学的パラメータに作用することができるRNA分子を同定する方法であって、
a.細胞集団に、請求項1に記載の組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを接触させ、それによって、前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリ又はその断片が前記細胞集団の個々の細胞に取り込まれるようにするステップと、
b.前記細胞集団の前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測するステップとを含み、
前記細胞集団における特定細胞が、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値について変化を示す場合は、前記特定細胞が、前記目的とする生物学的パラメータに作用することができる特定のRNA分子をエンコードする特定の組換え型発現ベクターを含有すると判断するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、
前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値が、目的とするタンパク質の発現であることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法であって、
前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値が、悪条件下における細胞の生存又は増殖維持能力であることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項7に記載の方法であって、
前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値が、細胞内病原体に対する細胞の感受性、又は細胞内での病原体の複製能力であることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
前記細胞内病原体がウイルスであることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項7に記載の方法であって、
前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値が、目的とする細胞型への細胞の分化であることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項7に記載の方法であって、
前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値が、細胞の長期増殖を誘導する能力又は細胞の多分化能を維持する能力であることを特徴とする方法。
【請求項14】
ウイルス感染に対する耐性を細胞に付与する方法であって、
前記細胞に、請求項11の方法によって同定された特定の組換え型発現ベクター若しくはそれにエンコードされたRNA分子を接触させるステップを含み、
それによって、ウイルス感染に対する耐性を細胞に付与するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項15】
対象内でのウイルスの複製能力を抑制又は阻害する方法であって、
前記対象に、請求項11の方法によって同定された特定の組換え型発現ベクター若しくはそれにエンコードされたRNA分子を接触させるステップを含み、
それによって、対象内でのウイルスの複製能力を抑制又は阻害するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項16】
目的とする細胞型への標的細胞の分化を誘導する方法であって、
前記標的細胞に、請求項12の方法によって同定された特定の組換え型発現ベクター若しくはそれにエンコードされたRNA分子を接触させるステップを含み、
それによって、目的とする細胞型への標的細胞の分化を誘導するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項17】
細胞の長期増殖を誘導する又は細胞の多分化能を維持する方法であって、
前記細胞に、請求項13の方法によって同定された特定の組換え型発現ベクター若しくはそれにエンコードされたRNA分子を接触させるステップを含み、
それによって、細胞の長期増殖を誘導する又は細胞の細胞の多分化能を維持するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項7に記載の方法であって、
前記特定の発現ベクター、その挿入部位又はその断片を、単離又は増幅し、
(a)前記特定の発現ベクター、或いは(b)前記特定の発現ベクターの断片であって前記特定のRNA分子のためのコード配列を含有する該断片を配列決定するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項7に記載の方法であって、
さらなる細胞に、前記特定の発現ベクターを接触させるステップと、
前記さらなる細胞の前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測するステップとをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項7に記載の方法であって、
前記特定のRNA分子のコピーを作成するステップと、
さらなる細胞に、前記特定のRNA分子の前記コピーを接触させるステップと、
前記さらなる細胞の前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測するステップとをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項7に記載の方法であって、
a.第2の発現ベクターのバックボーンに、(a)前記特定のRNA分子、又は(b)前記特定のRNA分子の断片をエンコードする配列を挿入し、それによって、
(i)前記特定のRNA分子、或いは
(ii)前記特定のRNA分子の改変型であって前記特定のRNA分子の二本鎖領域と相同性を持つ領域を有する改変型のいずれかをエンコードする第2の組換え型発現ベクターを生成するステップと、
b.さらなる細胞に、前記第2の発現ベクターを接触させるステップと、
c.前記さらなる細胞の前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測するステップとをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項7に記載の方法であって、
a.第2の発現ベクターのバックボーンに、前記特定のRNA分子、又は前記特定のRNA分子の断片をエンコードする配列を挿入し、それによって、前記特定のRNA分子の二本鎖領域と相同性を持つ領域を有する前記特定のRNA分子の改変型をエンコードする第2の発現ベクターを生成するステップと、
b.前記特定のRNA分子の前記改変型のコピーを作成するステップと、
c.さらなる細胞に、前記特定のRNA分子の前記改変型の前記コピーを接触させるステップと、
d.前記さらなる細胞の前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測するステップとをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項7に記載の方法であって、
a.(i)前記特定の発現ベクター、(ii)前記特定の発現ベクターの挿入部位、或いは(iii)前記特定の発現ベクターの断片であって前記特定のRNA分子をエンコードする領域を有する該断片を単離又は増幅するステップと、
b.前記特定の発現ベクターの断片を突然変異させ、それによって、前記特定の発現ベクターの前記断片の変異体を含むヌクレオチド分子のサブライブラリを作成するステップと、
c.前記ヌクレオチド分子のサブライブラリを含む組換え型発現ベクターのサブライブラリを作成するステップと、
d.第2の細胞集団に、前記組換え型発現ベクターのサブライブラリを接触させ、それによって、前記組換え型発現ベクターのサブライブラリ又はその一部が前記第2の細胞集団の個々の細胞に取り込まれるようにするステップと、
e.前記第2の細胞集団の前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測するステップとを含み、
前記第2の細胞集団における特定の細胞の前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値がさらに変化した場合は、前記特定の細胞が、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値に対して請求項7に記載の特定のRNA分子よりも作用する改良されたRNA分子をエンコードする改良された発現ベクターを含有すると判断するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、
前記突然変異させる前記ステップは、
前記特定の発現ベクターの断片を低忠実度な方法によってコピーするステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、
前記低忠実度な方法が、変異性ポリメラーゼ連鎖反応であることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項23に記載の方法であって、
前記改良された発現ベクター若しくはその断片であって前記改良されたRNA分子のコード配列を含有する該断片を単離又は増幅するステップと、
(a)前記改良された発現ベクター、或いは(b)前記改良された発現ベクターの前記断片を配列決定するステップとをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項23に記載の方法であって、
さらなる細胞に、前記改良された発現ベクターを接触させるステップと、
前記さらなる細胞の前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測するステップとをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項28】
目的とする疾患又は障害の薬剤標的を同定する方法であって、
a.前記目的とする疾患又は障害により変化する目的とする生物学的パラメータに作用するRNA分子を、請求項7に記載の方法によって同定するステップと、
b.その発現が前記RNA分子によって変化する細胞RNA分子を同定するステップとを含み、
それによって、前記細胞RNA分子を、前記目的とする疾患又は障害の薬剤標的として同定するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項29】
リボ核酸(RNA)分子のセット若しくはライブラリを発現することができる組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを作成する方法であって、
a.一本鎖核酸中間体Iから核酸中間体IIを得るステップであって、
前記一本鎖核酸中間体Iが、
(i)第1の定常領域、
(ii)(i)実質的にランダム配列であるか、或いは(ii)実質的にランダム配列の第1のサブ領域と前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリに共通する第2のサブ領域とから成るかのいずれかの可変領域、及び
(iii)第2の定常領域を有し、
前記核酸中間体IIが、
(i)前記一本鎖核酸中間体I、
(ii)介在領域、及び
(iii)前記一本鎖核酸中間体Iとハイブリダイズする領域を有する該ステップと、
b.前記核酸中間体IIから、前記核酸中間体II及び前記核酸中間体IIとハイブリダイズするさらなる核酸分子を含有する二本鎖中間体IIIを得るステップであって、
前記二本鎖中間体IIIが、
(i)前記第1の定常領域又はその断片の第1の二本鎖コピー、
(ii)前記可変領域の第1の二本鎖コピー、
(iii)前記第2の定常領域の第1の二本鎖コピー、
(iv)前記介在領域の二本鎖コピー、
(v)前記第2の定常領域の第2の逆位二本鎖コピー、
(vi)前記可変領域の第2の逆位二本鎖コピー、及び
(vii)前記第1の定常領域又はその断片の第2の逆位二本鎖コピーを有し、
前記第2の定常領域の前記第1の二本鎖コピーと前記第2の定常領域の前記第2の逆位二本鎖コピーとが、
(i)前記第2の定常領域の前記第1の二本鎖コピーは第1の制限酵素の基質となるが、前記第2の定常領域の前記第2の逆位二本鎖コピーは前記第1の制限酵素の基質とならないような、かつ
(ii)前記第2の定常領域の前記第2の逆位二本鎖コピーは第2の制限酵素の基質となるが、前記第2の定常領域の前記第1の二本鎖コピーは前記第2の制限酵素の基質とならないような、制限酵素部位の非対称性を有する該ステップとを含み、
それによって、RNA分子のセット若しくはライブラリを発現することができる組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを作成するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項29の方法であって、
前記可変領域の長さが8〜29ヌクレオチドであることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項29の方法であって、
前記サブ領域の長さが8〜29ヌクレオチドであることを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項29に記載の方法であって、
前記第1の定常領域が、二本鎖形態の場合に、切断エンドヌクレアーゼの基質となることを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項29に記載の方法であって、
前記二本鎖中間体IIIを得る前記ステップは、
前記核酸中間体IIに、前記切断エンドヌクレアーゼを接触させるステップを含み、それによって、プライマーとしての使用に適する3´末端を生成するステップと、
前記核酸中間体IIの未切断鎖を、前記3´末端をプライマーとして使用するDNAポリメラーゼによってコピーするステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法であって、
前記DNAポリメラーゼが鎖置換型DNAポリメラーゼであることを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項29に記載の方法であって、
前記二本鎖中間体IIIを得る前記ステップは、
(a)プライマーを前記核酸中間体IIにアニールするステップと、
(b)前記プライマーを伸長させるステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項35に記載の方法であって、
前記プライマーが、前記核酸中間体IIに対してミスマッチな残基を含むことを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項36に記載の方法であって、
前記ミスマッチな残基が、
(a)前記第1の定常領域又はその断片の前記第1の二本鎖コピー、及び(b)前記第1の定常領域又はその断片の前記第2の逆位二本鎖コピーのいずれか一方を制限酵素が消化するようなさらなる制限酵素部位の非対称性を、
前記二本鎖中間体IIIに形成することを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項35に記載の方法であって、
前記伸長させるステップは、鎖置換型ポリメラーゼを用いて行われることを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項29に記載の方法であって、
前記制限酵素部位の非対称性が、
(a)前記一本鎖核酸中間体Iと、前記一本核酸中間体Iとハイブリダイズする前記領域との間にミスマッチな残基を組み込み、それによって、前記二本鎖中間体IIIにおいて前記第2の定常領域の前記第1の二本鎖コピーが前記第2の定常領域の前記第2の逆位二本鎖コピーと異なる配列を有するようにするステップ、
(b)改変されたバックボーン又は塩基組成を有する残基を、前記一本鎖核酸中間体I又は前記一本鎖核酸中間体Iとハイブリダイズする前記領域に組み込むステップ、或いは
(c)前記(a)及び(b)を組み合わせたステップのいずれかによって形成されることを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項29に記載の方法であって、
前記二本鎖中間体IIIが、
(a)前記第1の定常領域の前記第1の二本鎖コピー又はその断片は第3の制限酵素の基質となるが、前記第1の定常領域の前記第2の逆位二本鎖コピーは前記第3の制限酵素の基質とならないような、或いは、
(b)前記第1の定常領域又はその断片の前記第2の逆位二本鎖コピーは第3の制限酵素の基質となるが、前記第1の定常領域又はその断片の前記第1の二本鎖コピーは前記第3の制限酵素の基質とならないような、制限酵素部位の非対称性を有し、
当該方法が、前記二本鎖中間体IIIに前記第3の制限酵素を接触させるステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項41】
請求項40に記載の方法であって、
前記さらなる制限酵素部位の非対称性が、
(a)前記一本鎖核酸中間体Iと、前記一本核酸中間体Iとハイブリダイズする前記領域との間にミスマッチな残基を組み込み、それによって、前記二本鎖中間体IIIにおいて前記第1の定常領域又はその断片の前記第1の二本鎖コピーが前記第1の定常領域又はその断片の前記第2の逆位二本鎖コピーと異なる配列を有するようにするステップ、
(b)改変されたバックボーン又は塩基組成を有する残基を、前記一本鎖核酸中間体I又は前記一本鎖核酸中間体Iとハイブリダイズする前記領域に組み込むステップ、或いは
(c)前記(a)及び(b)を組み合わせたステップのいずれかによって形成されることを特徴とする方法。
【請求項42】
請求項29に記載の方法であって、
前記核酸中間体IIを得る前記ステップは、
a.前記一本鎖核酸中間体Iから、前記一本鎖核酸中間体I及び前記一本鎖核酸中間体Iとハイブリダイズするさらなる一本鎖核酸分子を有する二本鎖中間体IBを得るステップと、
b.前記二本鎖中間体IBから前記核酸中間体IIを得るステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項43】
請求項42に記載の方法であって、
前記二本鎖中間体IBを得る前記ステップは、
(a)前記一本鎖核酸中間体Iの前記第2の定常領域にプライマーをアニールするステップと、
(b)前記プライマーを伸長させるステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項44】
請求項43に記載の方法であって、
前記プライマーが、前記第2の定常領域に対してミスマッチな残基を含むことを特徴とする方法。
【請求項45】
請求項42に記載の方法であって、
前記二本鎖中間体IBから前記核酸中間体IIを得る前記ステップは、
リンカー核酸分子を、前記一本鎖核酸中間体Iの3´末端、及び前記さらなる一本鎖核酸分子の5´末端に連結させるステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項46】
請求項45に記載の方法であって、
前記リンカー核酸分子がヘアピン状であることを特徴とする方法。
【請求項47】
請求項29に記載の方法であって、
前記二本鎖中間体IIIから環状中間体IVを得るステップをさらに含み、
前記環状中間体IVが、
発現ベクターのバックボーン、及び
挿入部位としての、(a)前記二本鎖中間体III、或いは(b)前記二本鎖中間体IIIの断片であって前記可変領域の第1の二本鎖コピー及び前記可変領域の第2の逆位二本鎖コピーを有する該断片を有することを特徴とする方法。
【請求項48】
請求項47に記載の方法であって、
前記環状中間体IVを請求項29に記載の前記第1及び第2の制限酵素によって消化し、それによって、線状中間体Vを生成するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項49】
請求項48に記載の方法であって、
前記線状中間体Vを分子内で連結し、それによって、環状の産物VIを生成するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項50】
請求項29に記載の方法であって、
前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリの個々の組換え型発現ベクターが、前記RNA分子をエンコードする及び転写終結部位を有する遺伝子を含有することを特徴とする方法。
【請求項51】
請求項29に記載の方法であって、
前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリの個々の組換え型発現ベクターが、RNAポリメラーゼのプロモータを含有することを特徴とする方法。
【請求項52】
請求項29に記載の方法であって、
前記組換え型発現ベクターの前記セット若しくはライブラリが、組換え型ウイルスのセット若しくはライブラリであることを特徴とする方法。
【請求項53】
請求項29に記載の方法であって、
前記発現ベクターのセット若しくはライブラリにRNAポリメラーゼを接触させるステップを含み、それによって、前記RNA分子のセット若しくはライブラリを作成するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項54】
請求項29に記載の方法によって作成された組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリ。
【請求項55】
請求項54に記載の組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリであって、
組換え型ウイルスのセット若しくはライブラリであることを特徴とする組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリ。
【請求項56】
リボ核酸(RNA)分子のセット若しくはライブラリを発現することができる組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを作成する方法であって、
a.ヌクレオチド中間体Iを合成するステップであって、
前記ヌクレオチド中間体Iが、
i.(1)実質的にランダム配列であるか、或いは(2)実質的にランダム配列の第1のサブ領域と前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリに共通する第2のサブ領域とから成るかのいずれかの、長さが6〜30ヌクレオチドの可変領域、
ii.長さが3〜20ヌクレオチドの非パリンドロームの定常領域、及び
iii.前記可変領域とハイブリダイズすることができる相補領域を有する該ステップと、
b.前記ヌクレオチド中間体Iとハイブリダイズすることができる第2のヌクレオチド分子を合成するステップと、
c.前記ヌクレオチド中間体Iを前記第2のヌクレオチド分子にアニールすることによって、前記可変領域、前記非パリンドロームの定常領域及び前記相補領域の二本鎖コピーを有する二本鎖産物を生成するステップとを含み、
それによって、RNA分子のセット若しくはライブラリを発現することができる組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを作成するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項57】
請求項56に記載の方法であって、
前記可変領域の長さが8〜29ヌクレオチドであることを特徴とする方法。
【請求項58】
請求項56に記載の方法であって、
前記サブ領域の長さが8〜29ヌクレオチドであることを特徴とする方法。
【請求項59】
請求項56に記載の方法であって、
前記二本鎖産物の各末端が、制限酵素認識部位及び付着末端から互いに独立して選択される機構をさらに有し、
前記機構は、前記可変領域、前記非パリンドロームの定常領域及び前記相補領域の前記各二本鎖コピーに隣接していることを特徴とする方法。
【請求項60】
請求項56に記載の方法であって、
前記二本鎖産物から環状産物を得るステップをさらに含み、
前記環状産物が、
発現ベクターのバックボーン、及び
挿入部位としての、(a)前記二本鎖産物、或いは(b)前記二本鎖産物の断片であって前記可変領域、前記非パリンドロームの定常領域及び前記相補領域の前記二本鎖コピーを有する該断片を有することを特徴とする方法。
【請求項61】
請求項56に記載の方法であって、
前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリの個々の組換え型発現ベクターが、前記RNA分子をエンコードする及び転写終結部位を有する遺伝子を含有することを特徴とする方法。
【請求項62】
請求項56に記載の方法であって、
前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリの個々の組換え型発現ベクターが、RNAポリメラーゼのプロモータを含有することを特徴とする方法。
【請求項63】
請求項56に記載の方法であって、
前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリが、組換え型ウイルスのセット若しくはライブラリであることを特徴とする方法。
【請求項64】
請求項56に記載の方法であって、
前記発現ベクターの前記セット若しくはライブラリにRNAポリメラーゼを接触させるステップを含み、それによって、前記RNA分子のセット若しくはライブラリを作成するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項65】
請求項56に記載の方法によって生成された組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリ。
【請求項66】
請求項65に記載の組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリであって、
組換え型ウイルスのセット若しくはライブラリであることを特徴とする組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリ。
【請求項67】
前記目的とする生物学的パラメータに作用することができるるRNA分子変異体を同定する方法であって、
a.前記RNA分子をエンコードする核酸分子を変異性ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅し、それによって、前記RNA分子の変異体を含むヌクレオチド分子のサブライブラリを作成するステップと、
b.前記サブライブラリを発現ベクターのバックボーンにサブクローンし、それによって、発現ベクターのサブライブラリを作成するステップと、
c.細胞集団に、前記発現ベクターのサブライブラリを接触させ、それによって、前記発現ベクターのサブライブラリ又はその断片が前記細胞集団の個々の細胞に取り込まれるようにするステップと、
d.前記細胞集団の前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測するステップとを含み、
前記細胞集団における特定の細胞が、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値について変化を示す場合は、前記特定の細胞が、前記目的とする生物学的パラメータに作用する改変された能力を有する特定のRNA分子をエンコードする特定の発現ベクターを含有すると判断するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項68】
目的とする生物学的パラメータに作用する改変された能力を有するRNA分子変異体を同定する方法であって、
a.ヌクレオチド中間体Iを合成するステップであって、
前記ヌクレオチド中間体Iが、
i.実質的にランダム配列の第1のサブ領域と目的とする生物学的パラメータに作用する前記RNA分子の対応する領域と同一の第2のサブ領域とを有する長さが8〜30ヌクレオチドの可変領域、
ii.長さが3〜20ヌクレオチドの非パリンドロームの定常領域、及び
iii.前記可変領域とハイブリダイズすることができる相補領域を有する該ステップと、
b.前記ヌクレオチド中間体Iとハイブリダイズすることができる第2のヌクレオチド分子を合成するステップと、
c.前記ヌクレオチド中間体Iを前記第2のヌクレオチド分子にアニールすることによって、前記可変領域、前記非パリンドロームの定常領域及び前記相補領域の二本鎖コピーを有する二本鎖産物を生成するステップとを含み、
それによって、前記目的とする生物学的パラメータに作用する改変された能力を有するRNA分子の変異体を同定するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項1】
リボ核酸(RNA)分子のセット若しくはライブラリを発現する組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリであって、
前記各RNA分子が、
(a)(i)実質的にランダム配列であるか、或いは(ii)実質的にランダム配列の第1のサブ領域と前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリに共通する第2のサブ領域とから成るかのいずれかの第1の領域、
(b)非自己相補的な第2の領域、及び
(c)前記第1の領域に実質的に相補的な第3の領域を有し、
前記非自己相補的な第2の領域が、前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリに共通することを特徴とする組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリ。
【請求項2】
請求項1に記載の組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリであって、
前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリの個々の組換え型発現ベクターが、RNAポリメラーゼのプロモータをそれぞれさらに含有することを特徴とする組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリ。
【請求項3】
請求項1に記載の組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリであって、
前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリの個々の組換え型発現ベクターが、既知の機能のRNA阻害性(RNAi)分子をエンコードする遺伝子をそれぞれさらに含有することを特徴とする組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリ。
【請求項4】
請求項1に記載の組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリであって、
前記非自己相補的な第2の領域が、前記組換え型RNA分子の分子内でループを形成することができることを特徴とする組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリ。
【請求項5】
請求項1に記載の組換え型ベクターのセット若しくはライブラリであって、
前記第1の領域の長さが8〜30ヌクレオチドであることを特徴とする組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリ。
【請求項6】
請求項1に記載の組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリであって、
前記サブ領域の長さが8〜29ヌクレオチドであることを特徴とする組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリ。
【請求項7】
目的とする生物学的パラメータに作用することができるRNA分子を同定する方法であって、
a.細胞集団に、請求項1に記載の組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを接触させ、それによって、前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリ又はその断片が前記細胞集団の個々の細胞に取り込まれるようにするステップと、
b.前記細胞集団の前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測するステップとを含み、
前記細胞集団における特定細胞が、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値について変化を示す場合は、前記特定細胞が、前記目的とする生物学的パラメータに作用することができる特定のRNA分子をエンコードする特定の組換え型発現ベクターを含有すると判断するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、
前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値が、目的とするタンパク質の発現であることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法であって、
前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値が、悪条件下における細胞の生存又は増殖維持能力であることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項7に記載の方法であって、
前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値が、細胞内病原体に対する細胞の感受性、又は細胞内での病原体の複製能力であることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
前記細胞内病原体がウイルスであることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項7に記載の方法であって、
前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値が、目的とする細胞型への細胞の分化であることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項7に記載の方法であって、
前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値が、細胞の長期増殖を誘導する能力又は細胞の多分化能を維持する能力であることを特徴とする方法。
【請求項14】
ウイルス感染に対する耐性を細胞に付与する方法であって、
前記細胞に、請求項11の方法によって同定された特定の組換え型発現ベクター若しくはそれにエンコードされたRNA分子を接触させるステップを含み、
それによって、ウイルス感染に対する耐性を細胞に付与するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項15】
対象内でのウイルスの複製能力を抑制又は阻害する方法であって、
前記対象に、請求項11の方法によって同定された特定の組換え型発現ベクター若しくはそれにエンコードされたRNA分子を接触させるステップを含み、
それによって、対象内でのウイルスの複製能力を抑制又は阻害するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項16】
目的とする細胞型への標的細胞の分化を誘導する方法であって、
前記標的細胞に、請求項12の方法によって同定された特定の組換え型発現ベクター若しくはそれにエンコードされたRNA分子を接触させるステップを含み、
それによって、目的とする細胞型への標的細胞の分化を誘導するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項17】
細胞の長期増殖を誘導する又は細胞の多分化能を維持する方法であって、
前記細胞に、請求項13の方法によって同定された特定の組換え型発現ベクター若しくはそれにエンコードされたRNA分子を接触させるステップを含み、
それによって、細胞の長期増殖を誘導する又は細胞の細胞の多分化能を維持するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項7に記載の方法であって、
前記特定の発現ベクター、その挿入部位又はその断片を、単離又は増幅し、
(a)前記特定の発現ベクター、或いは(b)前記特定の発現ベクターの断片であって前記特定のRNA分子のためのコード配列を含有する該断片を配列決定するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項7に記載の方法であって、
さらなる細胞に、前記特定の発現ベクターを接触させるステップと、
前記さらなる細胞の前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測するステップとをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項7に記載の方法であって、
前記特定のRNA分子のコピーを作成するステップと、
さらなる細胞に、前記特定のRNA分子の前記コピーを接触させるステップと、
前記さらなる細胞の前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測するステップとをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項7に記載の方法であって、
a.第2の発現ベクターのバックボーンに、(a)前記特定のRNA分子、又は(b)前記特定のRNA分子の断片をエンコードする配列を挿入し、それによって、
(i)前記特定のRNA分子、或いは
(ii)前記特定のRNA分子の改変型であって前記特定のRNA分子の二本鎖領域と相同性を持つ領域を有する改変型のいずれかをエンコードする第2の組換え型発現ベクターを生成するステップと、
b.さらなる細胞に、前記第2の発現ベクターを接触させるステップと、
c.前記さらなる細胞の前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測するステップとをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項7に記載の方法であって、
a.第2の発現ベクターのバックボーンに、前記特定のRNA分子、又は前記特定のRNA分子の断片をエンコードする配列を挿入し、それによって、前記特定のRNA分子の二本鎖領域と相同性を持つ領域を有する前記特定のRNA分子の改変型をエンコードする第2の発現ベクターを生成するステップと、
b.前記特定のRNA分子の前記改変型のコピーを作成するステップと、
c.さらなる細胞に、前記特定のRNA分子の前記改変型の前記コピーを接触させるステップと、
d.前記さらなる細胞の前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測するステップとをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項7に記載の方法であって、
a.(i)前記特定の発現ベクター、(ii)前記特定の発現ベクターの挿入部位、或いは(iii)前記特定の発現ベクターの断片であって前記特定のRNA分子をエンコードする領域を有する該断片を単離又は増幅するステップと、
b.前記特定の発現ベクターの断片を突然変異させ、それによって、前記特定の発現ベクターの前記断片の変異体を含むヌクレオチド分子のサブライブラリを作成するステップと、
c.前記ヌクレオチド分子のサブライブラリを含む組換え型発現ベクターのサブライブラリを作成するステップと、
d.第2の細胞集団に、前記組換え型発現ベクターのサブライブラリを接触させ、それによって、前記組換え型発現ベクターのサブライブラリ又はその一部が前記第2の細胞集団の個々の細胞に取り込まれるようにするステップと、
e.前記第2の細胞集団の前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測するステップとを含み、
前記第2の細胞集団における特定の細胞の前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値がさらに変化した場合は、前記特定の細胞が、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値に対して請求項7に記載の特定のRNA分子よりも作用する改良されたRNA分子をエンコードする改良された発現ベクターを含有すると判断するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、
前記突然変異させる前記ステップは、
前記特定の発現ベクターの断片を低忠実度な方法によってコピーするステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、
前記低忠実度な方法が、変異性ポリメラーゼ連鎖反応であることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項23に記載の方法であって、
前記改良された発現ベクター若しくはその断片であって前記改良されたRNA分子のコード配列を含有する該断片を単離又は増幅するステップと、
(a)前記改良された発現ベクター、或いは(b)前記改良された発現ベクターの前記断片を配列決定するステップとをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項23に記載の方法であって、
さらなる細胞に、前記改良された発現ベクターを接触させるステップと、
前記さらなる細胞の前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測するステップとをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項28】
目的とする疾患又は障害の薬剤標的を同定する方法であって、
a.前記目的とする疾患又は障害により変化する目的とする生物学的パラメータに作用するRNA分子を、請求項7に記載の方法によって同定するステップと、
b.その発現が前記RNA分子によって変化する細胞RNA分子を同定するステップとを含み、
それによって、前記細胞RNA分子を、前記目的とする疾患又は障害の薬剤標的として同定するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項29】
リボ核酸(RNA)分子のセット若しくはライブラリを発現することができる組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを作成する方法であって、
a.一本鎖核酸中間体Iから核酸中間体IIを得るステップであって、
前記一本鎖核酸中間体Iが、
(i)第1の定常領域、
(ii)(i)実質的にランダム配列であるか、或いは(ii)実質的にランダム配列の第1のサブ領域と前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリに共通する第2のサブ領域とから成るかのいずれかの可変領域、及び
(iii)第2の定常領域を有し、
前記核酸中間体IIが、
(i)前記一本鎖核酸中間体I、
(ii)介在領域、及び
(iii)前記一本鎖核酸中間体Iとハイブリダイズする領域を有する該ステップと、
b.前記核酸中間体IIから、前記核酸中間体II及び前記核酸中間体IIとハイブリダイズするさらなる核酸分子を含有する二本鎖中間体IIIを得るステップであって、
前記二本鎖中間体IIIが、
(i)前記第1の定常領域又はその断片の第1の二本鎖コピー、
(ii)前記可変領域の第1の二本鎖コピー、
(iii)前記第2の定常領域の第1の二本鎖コピー、
(iv)前記介在領域の二本鎖コピー、
(v)前記第2の定常領域の第2の逆位二本鎖コピー、
(vi)前記可変領域の第2の逆位二本鎖コピー、及び
(vii)前記第1の定常領域又はその断片の第2の逆位二本鎖コピーを有し、
前記第2の定常領域の前記第1の二本鎖コピーと前記第2の定常領域の前記第2の逆位二本鎖コピーとが、
(i)前記第2の定常領域の前記第1の二本鎖コピーは第1の制限酵素の基質となるが、前記第2の定常領域の前記第2の逆位二本鎖コピーは前記第1の制限酵素の基質とならないような、かつ
(ii)前記第2の定常領域の前記第2の逆位二本鎖コピーは第2の制限酵素の基質となるが、前記第2の定常領域の前記第1の二本鎖コピーは前記第2の制限酵素の基質とならないような、制限酵素部位の非対称性を有する該ステップとを含み、
それによって、RNA分子のセット若しくはライブラリを発現することができる組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを作成するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項29の方法であって、
前記可変領域の長さが8〜29ヌクレオチドであることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項29の方法であって、
前記サブ領域の長さが8〜29ヌクレオチドであることを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項29に記載の方法であって、
前記第1の定常領域が、二本鎖形態の場合に、切断エンドヌクレアーゼの基質となることを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項29に記載の方法であって、
前記二本鎖中間体IIIを得る前記ステップは、
前記核酸中間体IIに、前記切断エンドヌクレアーゼを接触させるステップを含み、それによって、プライマーとしての使用に適する3´末端を生成するステップと、
前記核酸中間体IIの未切断鎖を、前記3´末端をプライマーとして使用するDNAポリメラーゼによってコピーするステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法であって、
前記DNAポリメラーゼが鎖置換型DNAポリメラーゼであることを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項29に記載の方法であって、
前記二本鎖中間体IIIを得る前記ステップは、
(a)プライマーを前記核酸中間体IIにアニールするステップと、
(b)前記プライマーを伸長させるステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項35に記載の方法であって、
前記プライマーが、前記核酸中間体IIに対してミスマッチな残基を含むことを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項36に記載の方法であって、
前記ミスマッチな残基が、
(a)前記第1の定常領域又はその断片の前記第1の二本鎖コピー、及び(b)前記第1の定常領域又はその断片の前記第2の逆位二本鎖コピーのいずれか一方を制限酵素が消化するようなさらなる制限酵素部位の非対称性を、
前記二本鎖中間体IIIに形成することを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項35に記載の方法であって、
前記伸長させるステップは、鎖置換型ポリメラーゼを用いて行われることを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項29に記載の方法であって、
前記制限酵素部位の非対称性が、
(a)前記一本鎖核酸中間体Iと、前記一本核酸中間体Iとハイブリダイズする前記領域との間にミスマッチな残基を組み込み、それによって、前記二本鎖中間体IIIにおいて前記第2の定常領域の前記第1の二本鎖コピーが前記第2の定常領域の前記第2の逆位二本鎖コピーと異なる配列を有するようにするステップ、
(b)改変されたバックボーン又は塩基組成を有する残基を、前記一本鎖核酸中間体I又は前記一本鎖核酸中間体Iとハイブリダイズする前記領域に組み込むステップ、或いは
(c)前記(a)及び(b)を組み合わせたステップのいずれかによって形成されることを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項29に記載の方法であって、
前記二本鎖中間体IIIが、
(a)前記第1の定常領域の前記第1の二本鎖コピー又はその断片は第3の制限酵素の基質となるが、前記第1の定常領域の前記第2の逆位二本鎖コピーは前記第3の制限酵素の基質とならないような、或いは、
(b)前記第1の定常領域又はその断片の前記第2の逆位二本鎖コピーは第3の制限酵素の基質となるが、前記第1の定常領域又はその断片の前記第1の二本鎖コピーは前記第3の制限酵素の基質とならないような、制限酵素部位の非対称性を有し、
当該方法が、前記二本鎖中間体IIIに前記第3の制限酵素を接触させるステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項41】
請求項40に記載の方法であって、
前記さらなる制限酵素部位の非対称性が、
(a)前記一本鎖核酸中間体Iと、前記一本核酸中間体Iとハイブリダイズする前記領域との間にミスマッチな残基を組み込み、それによって、前記二本鎖中間体IIIにおいて前記第1の定常領域又はその断片の前記第1の二本鎖コピーが前記第1の定常領域又はその断片の前記第2の逆位二本鎖コピーと異なる配列を有するようにするステップ、
(b)改変されたバックボーン又は塩基組成を有する残基を、前記一本鎖核酸中間体I又は前記一本鎖核酸中間体Iとハイブリダイズする前記領域に組み込むステップ、或いは
(c)前記(a)及び(b)を組み合わせたステップのいずれかによって形成されることを特徴とする方法。
【請求項42】
請求項29に記載の方法であって、
前記核酸中間体IIを得る前記ステップは、
a.前記一本鎖核酸中間体Iから、前記一本鎖核酸中間体I及び前記一本鎖核酸中間体Iとハイブリダイズするさらなる一本鎖核酸分子を有する二本鎖中間体IBを得るステップと、
b.前記二本鎖中間体IBから前記核酸中間体IIを得るステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項43】
請求項42に記載の方法であって、
前記二本鎖中間体IBを得る前記ステップは、
(a)前記一本鎖核酸中間体Iの前記第2の定常領域にプライマーをアニールするステップと、
(b)前記プライマーを伸長させるステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項44】
請求項43に記載の方法であって、
前記プライマーが、前記第2の定常領域に対してミスマッチな残基を含むことを特徴とする方法。
【請求項45】
請求項42に記載の方法であって、
前記二本鎖中間体IBから前記核酸中間体IIを得る前記ステップは、
リンカー核酸分子を、前記一本鎖核酸中間体Iの3´末端、及び前記さらなる一本鎖核酸分子の5´末端に連結させるステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項46】
請求項45に記載の方法であって、
前記リンカー核酸分子がヘアピン状であることを特徴とする方法。
【請求項47】
請求項29に記載の方法であって、
前記二本鎖中間体IIIから環状中間体IVを得るステップをさらに含み、
前記環状中間体IVが、
発現ベクターのバックボーン、及び
挿入部位としての、(a)前記二本鎖中間体III、或いは(b)前記二本鎖中間体IIIの断片であって前記可変領域の第1の二本鎖コピー及び前記可変領域の第2の逆位二本鎖コピーを有する該断片を有することを特徴とする方法。
【請求項48】
請求項47に記載の方法であって、
前記環状中間体IVを請求項29に記載の前記第1及び第2の制限酵素によって消化し、それによって、線状中間体Vを生成するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項49】
請求項48に記載の方法であって、
前記線状中間体Vを分子内で連結し、それによって、環状の産物VIを生成するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項50】
請求項29に記載の方法であって、
前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリの個々の組換え型発現ベクターが、前記RNA分子をエンコードする及び転写終結部位を有する遺伝子を含有することを特徴とする方法。
【請求項51】
請求項29に記載の方法であって、
前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリの個々の組換え型発現ベクターが、RNAポリメラーゼのプロモータを含有することを特徴とする方法。
【請求項52】
請求項29に記載の方法であって、
前記組換え型発現ベクターの前記セット若しくはライブラリが、組換え型ウイルスのセット若しくはライブラリであることを特徴とする方法。
【請求項53】
請求項29に記載の方法であって、
前記発現ベクターのセット若しくはライブラリにRNAポリメラーゼを接触させるステップを含み、それによって、前記RNA分子のセット若しくはライブラリを作成するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項54】
請求項29に記載の方法によって作成された組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリ。
【請求項55】
請求項54に記載の組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリであって、
組換え型ウイルスのセット若しくはライブラリであることを特徴とする組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリ。
【請求項56】
リボ核酸(RNA)分子のセット若しくはライブラリを発現することができる組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを作成する方法であって、
a.ヌクレオチド中間体Iを合成するステップであって、
前記ヌクレオチド中間体Iが、
i.(1)実質的にランダム配列であるか、或いは(2)実質的にランダム配列の第1のサブ領域と前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリに共通する第2のサブ領域とから成るかのいずれかの、長さが6〜30ヌクレオチドの可変領域、
ii.長さが3〜20ヌクレオチドの非パリンドロームの定常領域、及び
iii.前記可変領域とハイブリダイズすることができる相補領域を有する該ステップと、
b.前記ヌクレオチド中間体Iとハイブリダイズすることができる第2のヌクレオチド分子を合成するステップと、
c.前記ヌクレオチド中間体Iを前記第2のヌクレオチド分子にアニールすることによって、前記可変領域、前記非パリンドロームの定常領域及び前記相補領域の二本鎖コピーを有する二本鎖産物を生成するステップとを含み、
それによって、RNA分子のセット若しくはライブラリを発現することができる組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリを作成するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項57】
請求項56に記載の方法であって、
前記可変領域の長さが8〜29ヌクレオチドであることを特徴とする方法。
【請求項58】
請求項56に記載の方法であって、
前記サブ領域の長さが8〜29ヌクレオチドであることを特徴とする方法。
【請求項59】
請求項56に記載の方法であって、
前記二本鎖産物の各末端が、制限酵素認識部位及び付着末端から互いに独立して選択される機構をさらに有し、
前記機構は、前記可変領域、前記非パリンドロームの定常領域及び前記相補領域の前記各二本鎖コピーに隣接していることを特徴とする方法。
【請求項60】
請求項56に記載の方法であって、
前記二本鎖産物から環状産物を得るステップをさらに含み、
前記環状産物が、
発現ベクターのバックボーン、及び
挿入部位としての、(a)前記二本鎖産物、或いは(b)前記二本鎖産物の断片であって前記可変領域、前記非パリンドロームの定常領域及び前記相補領域の前記二本鎖コピーを有する該断片を有することを特徴とする方法。
【請求項61】
請求項56に記載の方法であって、
前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリの個々の組換え型発現ベクターが、前記RNA分子をエンコードする及び転写終結部位を有する遺伝子を含有することを特徴とする方法。
【請求項62】
請求項56に記載の方法であって、
前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリの個々の組換え型発現ベクターが、RNAポリメラーゼのプロモータを含有することを特徴とする方法。
【請求項63】
請求項56に記載の方法であって、
前記組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリが、組換え型ウイルスのセット若しくはライブラリであることを特徴とする方法。
【請求項64】
請求項56に記載の方法であって、
前記発現ベクターの前記セット若しくはライブラリにRNAポリメラーゼを接触させるステップを含み、それによって、前記RNA分子のセット若しくはライブラリを作成するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項65】
請求項56に記載の方法によって生成された組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリ。
【請求項66】
請求項65に記載の組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリであって、
組換え型ウイルスのセット若しくはライブラリであることを特徴とする組換え型発現ベクターのセット若しくはライブラリ。
【請求項67】
前記目的とする生物学的パラメータに作用することができるるRNA分子変異体を同定する方法であって、
a.前記RNA分子をエンコードする核酸分子を変異性ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅し、それによって、前記RNA分子の変異体を含むヌクレオチド分子のサブライブラリを作成するステップと、
b.前記サブライブラリを発現ベクターのバックボーンにサブクローンし、それによって、発現ベクターのサブライブラリを作成するステップと、
c.細胞集団に、前記発現ベクターのサブライブラリを接触させ、それによって、前記発現ベクターのサブライブラリ又はその断片が前記細胞集団の個々の細胞に取り込まれるようにするステップと、
d.前記細胞集団の前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値を測定又は計測するステップとを含み、
前記細胞集団における特定の細胞が、前記目的とする生物学的パラメータ若しくはその読取値について変化を示す場合は、前記特定の細胞が、前記目的とする生物学的パラメータに作用する改変された能力を有する特定のRNA分子をエンコードする特定の発現ベクターを含有すると判断するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項68】
目的とする生物学的パラメータに作用する改変された能力を有するRNA分子変異体を同定する方法であって、
a.ヌクレオチド中間体Iを合成するステップであって、
前記ヌクレオチド中間体Iが、
i.実質的にランダム配列の第1のサブ領域と目的とする生物学的パラメータに作用する前記RNA分子の対応する領域と同一の第2のサブ領域とを有する長さが8〜30ヌクレオチドの可変領域、
ii.長さが3〜20ヌクレオチドの非パリンドロームの定常領域、及び
iii.前記可変領域とハイブリダイズすることができる相補領域を有する該ステップと、
b.前記ヌクレオチド中間体Iとハイブリダイズすることができる第2のヌクレオチド分子を合成するステップと、
c.前記ヌクレオチド中間体Iを前記第2のヌクレオチド分子にアニールすることによって、前記可変領域、前記非パリンドロームの定常領域及び前記相補領域の二本鎖コピーを有する二本鎖産物を生成するステップとを含み、
それによって、前記目的とする生物学的パラメータに作用する改変された能力を有するRNA分子の変異体を同定するようにしたことを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2009−528840(P2009−528840A)
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558352(P2008−558352)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/005682
【国際公開番号】WO2007/103365
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(500429103)ザ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ペンシルバニア (102)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/005682
【国際公開番号】WO2007/103365
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(500429103)ザ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ペンシルバニア (102)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]