説明

ランプシステム及びランプユニット

【課題】車両のランプが故障した場合に、故障したランプ以外の他のランプの機能を制限することなく、故障したランプが担っていた機能を容易に回復できるようにする。
【解決手段】ターンランプ制御ユニット10(MPU11)はターンランプ20の故障を検出した場合に、ウィンカースイッチ32やハザードスイッチ33のオン時に、LF無線通信制御ユニット40に、故障ランプ20の点灯の開始を通知する開始通知信号を送信する。LF無線通信制御ユニット40は、開始通知信号を受信した場合には、アンテナ50から故障ランプ20の周辺エリアに点灯指示信号を無線送信する。ランプシステムは持ち運び可能なランプユニットを備える。ターンランプ20の故障時にそのランプ20の周辺エリアにランプユニットを固定することで、ランプユニットは、アンテナ50からの点灯指示信号をトリガとして点灯する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のランプの故障時に非常用として機能するランプシステム及びそのシステムに使用されるランプユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の外側に設けられた所定のランプ(方向指示器のターンランプ等)が故障して使用できなくなった場合でも、そのランプが担っていた機能を回復する技術(運転者の意思を周囲に伝えることができる技術)が提案されている(例えば特許文献1参照)。例えば、特許文献1の技術では、車両のターンランプのランプ切れを検出する手段を有する。そして、その手段によってランプ切れを検出した場合には、ターンランプを作動させるスイッチのスイッチ出力でターンランプ以外の他のランプ(ストップランプ、ヘッドライト、車幅灯)をターンランプの代わりに点滅させている(請求項1、請求項2)。
【0003】
また、断線によるランプ故障が発生した場合に、ターンランプと並列に接続された運転席のインジケータランプのフラッシュ間隔が変化することによってターンランプの故障が通知されるものもある(特許文献1の段落0005参照)。この場合、運転者や整備者は、ランプの故障内容(例えばランプのフィラメント断線など)に応じて、ランプ交換等の処置を行うことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−86274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、ターンランプ等の所定のランプが故障すると他のランプが代わりに点灯することになるので、他のランプの本来の機能が制限されてしまう。また、単にランプ故障を通知するだけでは、運転者がランプ故障を認識してランプ交換をしようとしても、車両の意匠やスペース等の要因によって、そのランプ交換が容易にできない場合がある。また、ディーラーや修理工場で修理する場合にそれらの場所に移動するまでは、故障したランプが担っていた機能(ターンランプの場合には車両の進行方向を周囲に伝達する機能)が停止されてしまう。状況によっては、積載車で車両を修理工場等に移動させる場合もあるが、この場合には、修理工場等でランプが修理されるまで車両が使えなくなってしまうので、旅行時等における出先で不都合が生じてしまう。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、車両のランプが故障した場合に、故障したランプ以外の他のランプの機能を制限することなく、故障したランプが担っていた機能を容易に回復できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、車両に設けられた車両側装置と持ち運び可能に構成されたランプユニットとを備えたランプシステムであって、
前記車両側装置は、
前記車両の外側に設けられた所定のランプの故障を検出する故障検出手段と、
前記ランプの点灯時期を決定する点灯時期決定手段と、
前記故障検出手段が前記ランプの故障を検出した場合、前記点灯時期決定手段が決定した前記点灯時期に所定の無線信号を前記ランプの周辺エリアに送信する無線送信手段と、を備え、
前記ランプユニットは、
前記ランプに対応する点灯を行う点灯手段と、
前記周辺エリアに位置しているときに前記無線信号を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した前記無線信号に基づいて前記点灯時期に連動して前記点灯手段を点灯させる点灯制御手段と、を備え、
前記ランプユニットは前記周辺エリアにて前記車両に固定可能とされたことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、車両の外側に設けられた所定のランプが故障した場合には、ランプの周辺エリアにランプユニットを固定することで、故障したランプの点灯時期に連動してランプユニットの点灯手段を点灯できる。ランプユニット(点灯制御手段)は、車両側装置(無線送信手段)からの無線信号に基づいて点灯手段を点灯させるので、故障したランプの脱着やランプの配線等、複雑な作業をする必要がない。つまり、故障したランプが担っていた機能を容易に回復できる。また、車両のランプとは別のランプユニットの点灯手段が点灯されるので、車両に設けられた他のランプの機能が制限されない。
【0009】
また、本発明における前記ランプは方向指示器のターンランプであることを特徴とする。これによって、ターンランプが故障した場合であっても、ランプユニットを車両に固定することで、ターンランプが担っていた機能、すなわち車両の進行方向を周囲に伝達するという機能を容易に回復できる。
【0010】
また、本発明において、前記ターンランプは、左ターン時に点灯される左ターンランプと右ターン時に点灯される右ターンランプとを含み、
前記無線送信手段は、前記左ターンランプと前記右ターンランプのうち故障が検出された方の前記点灯時期に前記無線信号を送信する一方で、故障が検出されなかった方の前記点灯時期には前記無線信号を送信しないことを特徴とする。
【0011】
これによれば、左ターンランプと右ターンランプのうち、故障が検出されなかった方の点灯時期には無線信号が送信されないので、故障が検出されなかった方の点灯時期に誤ってランプユニットが点灯してしまうのを防止できる。
【0012】
本発明は、持ち運び可能に構成されたランプユニットであって、
車両の外側に設けられた所定のランプに対応する点灯を行う点灯手段と、
前記ランプが故障した場合に前記ランプの点灯時期に前記ランプの周辺エリアに送信される所定の無線信号を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した前記無線信号に基づいて前記点灯時期に連動して前記点灯手段を点灯させる点灯制御手段と、を備え、
前記周辺エリアにて前記車両に固定可能とされたことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、上記無線信号を送信する機能を有した車両のランプ故障時に、本発明のランプユニットをランプの周辺エリアに固定することで、上記ランプシステムと同じ効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】車両側装置1の構成を示した図である。
【図2】ターンランプ21〜24やアンテナ51〜55の設置位置を説明する図である。
【図3】ランプユニット6の電気的構成を示した図である。
【図4】ランプユニット6の側面断面図である。
【図5】ターンランプ制御ユニット10が実行する処理のフローチャートである。
【図6】LF無線通信制御ユニット40が実行する処理のフローチャートである。
【図7】ランプユニット6が実行する処理のフローチャートである。
【図8】ランプユニット6の車両100における固定位置を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るランプシステム及びランプユニットの実施形態を説明する。図1は、ランプシステムの車両側装置1の構成を示している。車両側装置1は車両100(図2参照)に設けられている。図1に示すように、車両側装置1は、ターンランプ制御ユニット10、ターンランプ20、CANバス31、ウィンカースイッチ32、ハザードスイッチ33、LF無線通信制御ユニット40及びアンテナ50を備えている。
【0016】
ターンランプ20は、図2に示すように、車両100の外側の右前部に設けられた右フロントランプ21、車両100の外側の左前部に設けられた左フロントランプ22、車両100の外側の右後部に設けられた右リアランプ23及び車両100の外側の左後部に設けられた左リアランプ24を含む。フロントランプ21、22は、車両100の前方に向けて点灯し(厳密には一定周期(毎分60回〜120回程度)で点滅し)、車両100前方(対向車等)に対して車両100の進行方向等を伝えるランプとされる。リアランプ23、24は、車両100の後方に向けて点灯し、車両100の後方(後続車等)に対して車両100の進行方向等を伝えるランプとされる。また、右ランプ21、23は、右ターン(右折、右車線への進路変更等)を伝えるランプとされる。左ランプ22、24は、左ターン(左折、左車線への進行変更等)を伝えるランプとされる。ターンランプ20は、白色系の光を発光する電球やLEDとされる。また、ターンランプ20は、透光性を有する橙色のレンズカバー(図示外)で覆われている。そのため、ターンランプ20からはレンズカバーを介して橙色の光が発光される。なお、本明細書では、「点灯」の下位概念に「点滅」が含まれるとして説明している。
【0017】
ターンランプ制御ユニット10は、ターンランプ20に接続されており、そのターンランプ20の点灯を制御する。そのターンランプ制御ユニット10は、MPU11、ターンランプ駆動回路12及びCANトランシーバ13を備えている。MPU11は、車両100の進行方向を右か左かを指示するウィンカースイッチ32及び全てのランプ21〜24の点灯を指示するハザードスイッチ33が接続されており、それらスイッチ32、33のスイッチ出力に基づいてターンランプ駆動回路12を制御する。詳細には、MPU11は、ウィンカースイッチ32から進行方向「右」を指示するスイッチ出力があった場合には、右ランプ21、23のターンランプ駆動回路12に点灯指示信号を出力する。同様に、MPU11は、ウィンカースイッチ32から進行方向「左」を指示するスイッチ出力があった場合には、左ランプ22、24のターンランプ駆動回路12に点灯指示信号を出力する。また、MPU11は、ハザードスイッチ33からのスイッチ出力があった場合には、全てのランプ21〜24のターンランプ駆動回路12に点灯指示信号を出力する。MPU11は、ターンランプ駆動回路12に点灯指示信号を出力した後、スイッチ32、33からのスイッチ出力が無くなった場合には、ターンランプ駆動回路12への点灯指示信号の出力を停止する。
【0018】
また、MPU11は、各ランプ21〜24の故障(断線、ランプ切れ等)を検出する機能を有している。詳細には、MPU11は、各ランプ21〜24のターンランプ駆動回路12内のランプ駆動ラインの電流値や電圧値をモニターしている。そして、MPU11は、それら電流値や電圧値に基づいて、各ランプ21〜24の故障の有無を判断する。例えば、ランプ切れした場合には、ターンランプ駆動回路12内のランプ駆動ラインには電流が流れなくなるので、MPU11は、ランプ駆動ラインの電流値が閾値未満の場合にランプ故障が発生したと判断する。MPU11は、ランプ故障を検出した場合には、故障したランプ21〜24が担っていた機能を回復するための処理を実行する。その処理の詳細は後述する。
【0019】
ターンランプ駆動回路12は、各ランプ21〜24ごとに設けられ、MPU11から点灯指示信号の入力があったときに、自身が担当するランプ21〜24を点灯させ、その後、点灯指示信号の入力が停止されたときに消灯させる。詳細には、ターンランプ駆動回路12は、ウィンカーリレー等から構成され、点灯指示信号の入力に基づいてそのウィンカーリレーのオンオフが制御されることで、一定周期で点滅するようにランプ21〜24を通電する。その後、点灯指示信号の入力が停止されたときには、ランプ21〜24への通電を停止する。
【0020】
CANトランシーバ13は、CAN(Controller Area Network)の規格にしたがってデータ転送を行う。そのCANトランシーバ13は、MPU11及び車載LANを構成するCANバス31に接続されており、MPU11からの信号をCAN規格にしたがってCANバス31に送出するとともに、CANバス31からのMPU11宛の信号を受信してその信号をMPU11に送信する。このように、ターンランプ制御ユニット10(MPU11)は、CANバス31を介して、後述するLF無線通信制御ユニット40等の他のユニットと通信可能とされている。
【0021】
ウィンカースイッチ32は、例えばステアリングコラムの側面から側方に突出した、公知のスティック状のレバースイッチとされる。この場合、ウィンカースイッチ32は、例えば中立位置から上下2方向に可動するようになっている。そして、ウィンカースイッチ32は、中立位置から上方向に動かされた場合には、進行方向「左」を指示するスイッチ出力をし、中立位置から下方向に動かされた場合には、進行方向「右」を指示するスイッチ出力をする。その後、ウィンカースイッチ32が中立位置に戻った場合には、ウィンカースイッチ32はスイッチ出力を停止する。
【0022】
ハザードスイッチ33は、例えばインストルメントパネルに設けられたプッシュスイッチとされ、そのプッシュスイッチがプッシュ操作された場合には、全てのランプ21〜24の点灯を指示するスイッチ出力をする。
【0023】
LF無線通信制御ユニット40は、車両100の周辺エリアに所定の無線信号を送信するユニットであり、具体的には、ランプ故障時に、後述するランプユニット6(図3参照)の点灯を制御する無線信号を送信する。また、本実施形態では、ユーザが所持する電子キー(図示外)と車両100との間で無線通信を行い、その通信結果に基づいて車両100のドアのロックやアンロックを行ったり、エンジン始動を許可したりするスマートエントリーシステムが車両100に適用されている。LF無線通信制御ユニット40は、そのスマートエントリーシステムに関する処理を行うユニットでもある。
【0024】
そのLF無線通信制御ユニット40は、MPU41、LFアンテナ駆動回路42及びCANトランシーバ43を備えている。MPU41は、ランプ故障時における処理及びスマートエントリーシステムに関する処理を実行する。詳細には、MPU41は、スマートエントリーシステムに関する処理として、照合ECU(図示外)からの指示に基づいて、LFアンテナ駆動回路を制御して、車両100に設けられた車室外アンテナ50や車室内アンテナ(図示外)から車両100の周辺エリアや車室内にリクエスト信号を送信する。そのリクエスト信号は、例えば、電子キーに所定処理の実行を指示するコマンド、電子キーのID、乱数で構成されたチャレンジコード等から構成されている。車両100にはチューナ(図示外)が設けられ、そのチューナが、リクエスト信号に応答して電子キーから送信されたレスポンス信号を受信した場合には、そのレスポンス信号が照合ECUに送られる。照合ECUは、そのレスポンス信号と正規のレスポンス信号とを照合して、照合可の場合には、ドアのロックやアンロックを行ったり、エンジン始動を許可したりする。
【0025】
なお、車室外アンテナ50は、図2に示すように、運転席ドアに設けられ運転席ドアの周辺エリア511に無線信号を送信する第1アンテナ51と、助手席ドアに設けられ助手席ドアの周辺エリア521に無線信号を送信する第2アンテナ52とを含んでいる。さらに、アンテナ50は、リア右側ドアに設けられリア右側ドアの周辺エリア531に無線信号を送信する第3アンテナ53と、リア左側ドアに設けられリア左側ドアの周辺エリア541に無線信号を送信する第4アンテナ54と、荷室ドア付近に設けられ荷室ドアの周辺エリア551に無線信号を送信する第5アンテナ55とを含んでいる。なお、各エリア511、521、531、541、551の大きさは、各アンテナ51〜55から約1mの大きさとされている。
【0026】
また、MPU41は、ランプ故障時には、上記のスマートエントリーシステムに関する処理と並列して、故障したランプ21〜24が担っていた機能を回復するための処理を実行する。その処理の詳細は後述する。
【0027】
LFアンテナ駆動回路42は、各アンテナ51〜55ごとに設けられ、各アンテナ51〜55に駆動電圧を与えるレギュレータ、MPU41から送られてきた信号を所定の変調方式(例えばASK変調)に変調してアンテナ51〜55からLF帯の電波として送信させる変調回路等から構成されている。
【0028】
CANトランシーバ43は、CANの規格にしたがってデータ転送を行う。そのCANトランシーバ43は、MPU41及びCANバス31に接続されており、MPU41からの信号をCAN規格にしたがってCANバス31に送出するとともに、CANバス31からのMPU41宛の信号を受信してその信号をMPU41に送信する。
【0029】
次に、本実施形態のランプユニットを説明する。図3は、ランプユニット6の電気的構成を示している。また、図4は、ランプユニット6の側面断面図を示している。ランプユニット6は、持ち運び可能(ポータブル)に構成されており、図3に示すように、電気的構成として、点灯部61、LF受信回路62、ターンランプ駆動回路63及びバッテリ64を備えている。点灯部61は、LEDで構成されており、車両100のターンランプ20と同等の輝度の白色系の光を発光する。なお、点灯部61は電球で構成されたとしても良い。LF受信回路62は、アンテナ50からの無線信号を受信するアンテナ(図示外)と、そのアンテナで受信した無線信号を復調する復調回路(図示外)と、ターンランプ駆動回路63の制御等の処理を実行する処理部621(プロセッサ)とを備えている。なお、処理部621が実行する処理の詳細は後述する。ターンランプ駆動回路63は、トランジスタ等の半導体スイッチ等から構成され、その半導体スイッチのオンオフが制御されることで、一定周期で点滅するように点灯部61を通電する(点灯部61を駆動する)回路である。なお、点灯部61の点滅周期は、一般的な方向指示器の点滅周期(毎分60回〜120回程度)に設定されている。バッテリ64は、LF受信回路62及びターンランプ駆動回路63に接続されており、それら回路62、63に電力を供給する。また、点灯部61は、ターンランプ駆動回路63を介して、バッテリ64からの電力によって点灯される。
【0030】
また、ランプユニット6は、機械的構成として、図4に示すように、点灯部61やLF受信回路62、ターンランプ駆動回路63が実装された回路基板65と、その回路基板65やバッテリ64を収容した収容ケース67と、回路基板65の表面651(その表面651に実装された点灯部61)を覆うレンズカバー66とを備えている。レンズカバー66は、車両100のターンランプ20のレンズカバーと同様に、透光性を有する橙色とされている。そのため、点灯部61で発光された光は、レンズカバー66を透過することで橙色に発光することになる。ランプユニット6の大きさは、ターンランプ20の大きさと同等となっている。なお、点灯部61として輝度の大きいLEDを使用した場合には、ランプユニット6の大きさを、ターンランプ20よりも小さくできる。
【0031】
そのランプユニット6は、ターンランプ20が正常の時には例えば車両100の助手席前方に設けられたグローブボックスやトランク(荷室)に収容され、ターンランプ20の故障時には、そのランプ20の周辺エリアで車両100に固定される形で使用される。図8は、車両100を後ろから見た図であり、例えば右リアランプ23が故障した場合には、図8に示すように、ランプユニット6は、例えば右リアランプ23に重なる位置で、適当な固定手段によって固定される。この場合、例えばランプユニット6の裏面671(図4参照)と右リアランプ23の表面とを両面テープによって固定する。また、ランプユニット6の裏面671にマグネットを設け、そのマグネットによってランプユニット6を車両100に固定しても良い。また、ランプユニット6の収容ケース67自体をマグネットで構成しても良い。なお、ランプユニット6を車両100に固定する固定手段(両面テープやマグネット等)は、ランプユニット6の構成部品として予め用意されていても良いし、ランプ故障が発生した時にユーザがホームセンター等で買ってくるようにしても良い。また、ランプユニット6は、周囲から見える位置であれば、故障ランプ20の周辺エリアのどこに固定されたとしても良い。例えば図8の場合では、右リアランプ23の周辺エリア231であればどこにランプユニット6を固定しても良く、具体的には例えば、トランクドア101の上面102やリアバンパー103やルーフ104にランプユニット6を固定しても良い。
【0032】
ただし、左右のランプ20のどちらの点灯に対応しているかを区別するために、ランプユニット6は、右ランプ21、23が故障した場合には車両100の幅方向中心より右側に固定され、左ランプ21、23が故障した場合には車両100の幅方向中心より左側に固定されるのが望ましい。また、ランプユニット6は、フロントランプ21、22が故障した場合には車両100前方に向けて点灯するように固定され、リアランプ23、24が故障した場合には車両100の後方に向けて点灯するように固定される。
【0033】
以上説明した図1の車両側装置1及び図3、図4のランプユニット6で、本発明のランプシステムが構成されている。次に、ランプシステムが実行する処理の詳細を説明する。先ず、ターンランプ制御ユニット10のMPU11が実行する処理を説明する。図5は、その処理のフローチャートを示している。図5の処理は、MPU11の起動時(例えば車両100のエンジン始動時)に開始され、以降、一定間隔で繰り返し実行される。先ず、ウィンカースイッチ32又はハザードスイッチ33がオンされたか否かを判断する(S11)。オンされていない場合は(S11:No)、オンされるまで待機する。スイッチがオンされた場合には(S11:Yes)、点灯すべきランプ20の故障の有無を判断する(S12)。例えば、ウィンカースイッチ32のスイッチ出力が進行方向「右」を指示する出力である場合には、S12では、右ランプ21、23の故障の有無を判断する。故障の有無の判断は、上述したように、ターンランプ駆動回路12の電流値や電圧値に基づいて行う。故障を検出しなかった場合には(S12:No)、処理をS13に進める。
【0034】
S13では、ターンランプ駆動回路12に点灯指示信号を出力することで、スイッチ32、33のスイッチ出力で指示されたターンランプ20を点灯させる(S13)。これによって、周囲に、どの方向に進路変更するか、緊急停止するか(ハザードスイッチ33オンの場合)等を伝達できる。次いで、S11でオンされたスイッチ32、33がオフされたか否かを判断する(S14)。オンのままの場合には(S14:No)、S13に戻ってターンランプ20の点灯を継続する。スイッチ32、33がオフになった場合には(S14:Yes)、ターンランプ駆動回路12への点灯指示信号の入力を停止して、ターンランプ20を消灯する(S15)。その後、図5のフローチャートの処理を終了する。
【0035】
S12において、点灯すべきランプ20の故障を検出した場合には(S12:Yes)、故障したランプ20の点灯の開始を通知する開始通知信号を、CANバス31を介してLF無線通信制御ユニット40に送信する(S16)。例えば、点灯すべきランプ20が右ランプ21、23の場合に、右リアランプ23の故障を検出したときには、S16では、右リアランプ23の点灯の開始を通知する開始通知信号を送信する。故障していない右フロントランプ21については、上述のS12:No→S13〜S15の処理が実行されて、通常通りに点灯される。また、例えば、右リアランプ23の故障を検出したとしても、点灯すべきランプ20が左ランプ22、24の場合には、上述のS12:No→S13〜S15の処理が実行されて、通常通りに左ランプ22、24が点灯される。つまりこの場合には、S16〜S18の処理が実行されないので、後述の図6のS21以下の処理が実行されないことになる。
【0036】
次いで、S11でオンされたスイッチ32、33がオフされたか否かを判断する(S17)。オフされていない場合には(S17:No)、オフされるまで待機する。スイッチ32、33がオフされた場合には(S17:Yes)、故障したランプ20の点灯の終了を通知する終了通知信号を、CANバス31を介してLF無線通信制御ユニット40に送信する(S18)。その後、図5のフローチャートの処理を終了する。
【0037】
次に、LF無線通信制御ユニット40のMPU41が実行する処理を説明する。図6はその処理のフローチャートを示している。図6の処理は、MPU41の起動時(例えば車両100のエンジン始動時)に開始され、以降、一定間隔で繰り返し実行される。先ず、ターンランプ制御ユニット10からの開始通知信号の有無に基づいて、故障したランプ20の点灯開始か否かを判断する(S21)。点灯開始ではない場合(開始通知信号を受信していない場合)には(S21:No)、図6のフローチャートの処理を終了する。点灯開始の場合(開始通知信号を受信した場合)には(S21:Yes)、その開始通知信号で通知されたランプ20の周辺エリアに、ランプユニット6(点灯部61)の点灯を指示する点灯指示信号をアンテナ50から無線送信する(S22)。この際、例えば、故障したランプ20の最寄りのアンテナ50から点灯指示信号を送信する。具体的には、右フロントランプ21が故障した場合には、第1アンテナ51(図2参照)から点灯指示信号を送信する。左フロントランプ22が故障した場合には、第2アンテナ52(図2参照)から点灯指示信号を送信する。右リアランプ23、左リアランプ24が故障した場合には、第5アンテナ55(図2参照)から点灯指示信号を送信する。なお、右リアランプ23が故障した場合には、第3アンテナ53(図2参照)から点灯指示信号を送信しても良い。同様に、左リアランプ24が故障した場合には、第4アンテナ54(図2参照)から点灯指示信号を送信しても良い。
【0038】
なお、各アンテナ51〜55の送信エリア511、521、531、541、551(図2参照)が、ランプ21〜24の周辺エリアを包含している場合には、アンテナ51〜55から送信された点灯指示信号はランプ21〜24の周辺エリアに届くので問題は無い。例えば、図8では、第5アンテナ55の送信エリア551が、右リアランプ23の周辺エリア231を包含しているので、第5アンテナ55からの点灯指示信号は周辺エリア231に届く。これに対して、各アンテナ51〜55の送信エリア511、521、531、541、551が、ランプ21〜24の周辺エリアを包含していない場合には、包含するように、送信エリアの大きさをスマートエントリーシステムにおけるそれから変更すれば良い。具体的には、MPU41はLFアンテナ駆動回路42のレギュレータを制御して、アンテナ51〜55に供給される駆動電圧を、スマートエントリーシステムにおける駆動電圧よりも大きくする。
【0039】
次いで、ターンランプ制御ユニット10からの終了通知信号の有無に基づいて、故障したランプ20の点灯終了か否かを判断する(S23)。まだ点灯終了しない場合(終了通知信号を受信していない場合)には(S23:No)、終了通知信号を受信するまで待機する。点灯終了する場合(終了通知信号を受信した場合)には(S23:Yes)、S22で点灯指示信号を送信したアンテナ50から、ランプユニット6(点灯部61)の消灯を指示する消灯指示信号を無線送信する(S24)。その後、図6のフローチャートの処理を終了する。なお、S22やS24で送信される信号と、スマートエントリーシステムで送信されるリクエスト信号とは、当然異なっている。そのため、電子キーがS22やS24で送信される信号を受信したとしても反応しないし、ランプユニット6がリクエスト信号を受信したとしも反応しない。
【0040】
次に、ランプユニット6の処理部621が実行する処理を説明する。図7は、その処理のフローチャートを示している。図7の処理は、処理部621の起動時(バッテリ64からの電力供給開始時)に開始され、以降、一定間隔で繰り返し実行される。先ず、LF無線通信制御ユニット40からの点灯指示信号を受信したか否かを判断する(S31)。受信していない場合には(S31:No)、図7のフローチャートの処理を終了する。この場合には、ランプ20が故障していないか、ランプ20が故障したとしてもランプユニット6が故障ランプ20の周辺エリアに固定されていないことになる。
【0041】
S31において、点灯指示信号を受信した場合には(S31:Yes)、ターンランプ駆動回路63を制御して点灯部61を点灯させる(S32)。これによって、故障したランプ20の代わりに、周囲に、どの方向に進路変更するか、緊急停止するか(ハザードスイッチ33オンの場合)等を伝達できる。次いで、LF無線通信制御ユニット40からの消灯指示信号を受信したか否かを判断する(S33)。受信していない場合は(S33:No)、S32の処理に戻って点灯部61の点灯を継続する。消灯指示信号を受信した場合には(S33:Yes)、ターンランプ駆動回路63を制御して点灯部61を消灯する(S34)。その後、図7のフローチャートの処理を終了する。
【0042】
以上説明したように、本実施形態では、ターンランプ20が故障した場合には、ランプユニット6を故障したランプ20の周辺エリアに固定することで、そのランプ20の点灯時期に連動してランプユニット6(点灯部61)を点灯させることができる。よって、故障したランプ20が担っていた機能を簡易に回復できる。
【0043】
また、本実施形態では、ターンランプ20の点灯を制御する既存のターンランプ制御ユニット10とスマートエントリーシステムに使用される既存のLF無線通信制御ユニット40及びアンテナ50とを使用しているので、車両100全体の構成を簡素にできる。
【0044】
また、本実施形態では、故障したランプ20の最寄りのアンテナ50から点灯指示信号や消灯指示信号が送信され、他のアンテナ50からは送信されないので、消費電力を抑制できる。
【0045】
なお、本発明に係るランプシステム及びランプユニットは上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限度で種々変形できる。例えば、上記実施形態では、故障したランプ20の点灯時期の開始及び終了のタイミングで送信される信号(点灯指示信号、消灯指示信号)をトリガとして、ランプユニット6の点灯を、故障したランプ20の点灯時期に連動させていた。しかし、それに限定されず、LF無線通信制御ユニット40は、故障したランプ20の点灯時期の間継続して点灯指示信号を送信するようする。そして、ランプユニット6は、点灯指示信号の受信が継続しているときに点灯部61を点灯し、点灯指示信号の受信が停止されたときに消灯するようにしても良い。この場合、LF無線通信制御ユニット40は、ランプ20の点灯時期の終了タイミングで、点灯指示信号の送信を停止する。これによっても、ランプユニット6の点灯を、故障したランプ20の点灯時期に連動させることができる。
【0046】
また、車両にスマートエントリーシステムが備えられていない場合など、LF無線通信制御ユニット40に対応する既存のユニットが無い場合には、ターンランプ制御ユニット10及びLF無線通信制御ユニット40を一つのユニットで実現しても良い。これによれば、ユニット間の通信を省略できるので、処理を簡素にできる。また、スマートエントリーシステムが使用する既存のアンテナ50以外に、ランプ20の近くに別のアンテナを設け、その別のアンテナからランプユニット6に信号を送信するようにしても良い。これによって、より正確にかつ低電力で、ランプユニット6に信号を送信できる。
【0047】
また、ターンランプ以外の他のランプ(車幅灯、ストップランプ等)を対象として本発明を適用しても良い。例えば、ストップランプを対象として本発明を適用した場合、ウィンカースイッチ32、ハザードスイッチ33に対応するスイッチはブレーキペダルとなる。また、ランプユニット6のレンズカバー66は、ストップランプの色に対応させて、透光性を有する赤色とされる。
【0048】
なお、上記実施形態において、MPU11が本発明の「故障検出手段」及び「点灯時期決定手段」に相当する。LF無線通信制御ユニット40及びアンテナ50が本発明の「無線送信手段」に相当する。点灯部61が本発明の「点灯手段」に相当する。LF受信回路62が本発明の「受信手段」に相当する。処理部621、ターンランプ駆動回路63及びバッテリ64が本発明の「点灯制御手段」に相当する。右フロントランプ21及び右リアランプ23が本発明の「右ターンランプ」に相当する。左フロントランプ22及び左リアランプ24が本発明の「左ターンランプ」に相当する。図6のS22及びS24で送信される信号が本発明の「所定の無線信号」に相当する。
【符号の説明】
【0049】
1 車両側装置
6 ランプユニット
10 ターンランプ制御ユニット
20、21〜24 ターンランプ
40 LF無線通信制御ユニット
50、51〜55 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた車両側装置と持ち運び可能に構成されたランプユニットとを備えたランプシステムであって、
前記車両側装置は、
前記車両の外側に設けられた所定のランプの故障を検出する故障検出手段と、
前記ランプの点灯時期を決定する点灯時期決定手段と、
前記故障検出手段が前記ランプの故障を検出した場合、前記点灯時期決定手段が決定した前記点灯時期に所定の無線信号を前記ランプの周辺エリアに送信する無線送信手段と、を備え、
前記ランプユニットは、
前記ランプに対応する点灯を行う点灯手段と、
前記周辺エリアに位置しているときに前記無線信号を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した前記無線信号に基づいて前記点灯時期に連動して前記点灯手段を点灯させる点灯制御手段と、を備え、
前記ランプユニットは前記周辺エリアにて前記車両に固定可能とされたことを特徴とするランプシステム。
【請求項2】
前記ランプは方向指示器のターンランプであることを特徴とする請求項1に記載のランプシステム。
【請求項3】
前記ターンランプは、左ターン時に点灯される左ターンランプと右ターン時に点灯される右ターンランプとを含み、
前記無線送信手段は、前記左ターンランプと前記右ターンランプのうち故障が検出された方の前記点灯時期に前記無線信号を送信する一方で、故障が検出されなかった方の前記点灯時期には前記無線信号を送信しないことを特徴とする請求項2に記載のランプシステム。
【請求項4】
持ち運び可能に構成されたランプユニットであって、
車両の外側に設けられた所定のランプに対応する点灯を行う点灯手段と、
前記ランプが故障した場合に前記ランプの点灯時期に前記ランプの周辺エリアに送信される所定の無線信号を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した前記無線信号に基づいて前記点灯時期に連動して前記点灯手段を点灯させる点灯制御手段と、を備え、
前記周辺エリアにて前記車両に固定可能とされたことを特徴とするランプユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−82335(P2013−82335A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223890(P2011−223890)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】