説明

ランプ

【課題】絶縁耐圧試験に対する性能向上を図りつつ、小型化、長寿命化および製造コスト低減を図ることができるランプを提供する。
【解決手段】ランプは、基板110と基板110の主面に電極部120aの少なくとも一部が露出する形で実装された発光部120とを有する発光モジュール100と、発光部120に電力を供給する点灯回路ユニット30と、導電性材料により筒状に形成され、内部に点灯回路ユニット30を収納する筐体10と、筐体10に電気的に接続され且つ基板110における主面側に配置されてなるワッシャ28とを備える。そして、発光部120とワッシャ28との間の最短距離が0.2mm以上且つ1.8mm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED(発光ダイオード)等を有する発光部を備えたランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LED等を有する発光部を備えた電球型のランプが提案されている(特許文献1参照)。
この種の電球形のランプは、発光部および当該発光部が実装された基板から構成される発光モジュールと、外部電源から口金を介して供給される電力を発光モジュールに供給する点灯回路ユニットと、口金、筐体およびグローブを含み、発光モジュールおよび点灯回路ユニットを収納する外囲器とを備えている。そして、この電球形ランプには、安全性確保のため、発光モジュール、点灯回路ユニットおよび口金を含む回路と、筐体との間の絶縁耐圧が求められる。
【0003】
前述のランプの一例を図8(a)に示す。図8(a)は、グローブを取り外した状態のランプの平面図を示している。また、図8(b)に、図8(a)におけるA−A’で破断した断面図を示す。
【0004】
図8に示すランプでは、発光モジュール100が、金属製のホルダ20に4つの金属製の螺子27により取着されている。ここで、発光モジュールは、セラミックスにより平面視矩形状に形成され且つ主面側にLED素子を有する発光部120が複数個実装された基板110からなる。なお、この基板110としては、他に表面に絶縁層が形成されてなるアルミニウム製の板材により構成されたものもある。また、ホルダ20は、筐体10に接触しており、筐体10と螺子27とが電気的に接続された状態となっている。そして、複数の発光部120のうち最も螺子27に近い距離にある発光部120(図8では、最上段に並ぶ発光部120のうち右端に位置する発光部120)の電極部120aと螺子27の頭部27aとの間の最短距離が、2mmとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−244165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8に示すランプについて、図9に示すように、口金50と筐体10との間に交流電圧を印加し、リミット電流値を超える電流が流れるか否かを調査した。これは、ランプの絶縁耐圧試験で一般的に用いられている方法である。ここにおいて、口金50のシェル51とアイレット52とは短絡した状態となっている。また、印加する交流電圧の大きさを、0.5kVから4.0kVまで0.5kV刻みで変化させたときに、口金50と筐体10との間に流れる電流値が、所定のリミット電流値(0.5mA、1mA、2mA、5mA、10mA、100mA)を超えるか否かを調査した。
【0007】
発光モジュール100、点灯回路ユニットおよび口金50を含む回路のうち、筐体10に電気的に接続された螺子27の頭部27aに最も近接しているのは、発光部120の電極部120aである。従って、絶縁耐圧試験を行った場合、この螺子27の頭部27aと電極部120aとの間で、真っ先に絶縁破壊が生じることになる。
【0008】
図8に示すランプについて、絶縁耐圧試験を行った結果を図10に示す。図10において、「○」はリミット電流値を超えなかったことを意味し、「×」はリミット電流値を超えたことを意味する。図8に示すランプでは、図10に示すように、口金50と筐体10との間に3.5kVの交流電圧を印加したときに流れる放電電流値が100mA未満であり、4kV以上の交流電圧を印加すると100mA以上の電流が流れてしまう。
【0009】
ところで、海外では、ランプを定格電圧220V乃至250Vで使用することがあるため、口金50と筐体10との間の絶縁耐圧試験に対する性能の向上が求められる。求められる性能の目安は、EN60968 7条の規格を参考にした業界基準によれば、図9に示す方法による絶縁耐圧試験において、口金50と筐体10との間に4kVの交流電圧を印加したときの絶縁耐圧性能を確保することである。また、そのときのリミット電流は記載されていないが、本実験では、EN61347を参考に100mAと設定した。
【0010】
これに対して、従来から、発光モジュール100を含む回路と筐体10との間の絶縁耐圧(特に、発光部120の電極部120aと、筐体10に電気的に接続している螺子28との間の絶縁耐圧)を向上させることにより、絶縁耐圧試験に対する性能向上を図ることが考えられている。ここでは、基板110を大きくして発光部120の電極部120aと螺子28との間の最短距離を大きくするか、或いは、発光部120の配置を基板110の中央部に寄せるように変更して発光部120の電極部120aと螺子27との間の最短距離を大きくすることが考えられている。
【0011】
しかしながら、基板110を大きくすると、基板110を収納するための筐体10も大きくせざるを得ず、ランプ自体が大型化してしまう。一方、発光部120の配置を基板110の中央部に寄せるように変更すると、発光部120の放熱性が低下し、発光部120の劣化が早まり、ランプ寿命の低下を招くおそれがある。
【0012】
更に、海外と国内とで発光モジュール100の基板110を兼用することを考慮した場合、海外向けのランプに搭載される発光モジュール100と国内向けのランプに搭載される発光モジュール100とで、仕様を共通化することにより、ランプの製造コストの低減を図ることが求められている。
【0013】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、絶縁耐圧試験に対する性能向上を図りつつ、小型化、長寿命化および製造コスト低減を図ることができるランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明に係るランプは、回路基板と当該回路基板の主面に電極部の少なくとも一部が露出する形で実装された発光部とを有する発光モジュールと、発光部に電力を供給する電力供給ユニットと、導電性材料により筒状に形成され、内部に前記電力供給ユニットを収納する筐体と、筐体に電気的に接続され且つ回路基板における主面側に少なくとも一部が配置されてなる導電部材とを備え、発光部と導電部材の一部との間の最短距離が0.2mm以上且つ1.8mm以下である。発光部と導電部材の一部との間の最短距離が0.2mm以上且つ1.8mm以下にすれば、性能が向上する理由については、実施の形態で詳細に説明する。
【発明の効果】
【0015】
本構成によれば、発光部と筐体と電気的に接続された部位との間の最短距離を広げる工夫をすることなく、絶縁耐圧試験に対する性能を向上させることができるので、絶縁耐圧試験に対する性能向上を図りつつ、小型化および長寿命化を図ることができる。
【0016】
また、本構成によれば、外部電源から電力供給ユニットへ電力を供給するための口金を備えるものについて、定格電圧100V乃至120Vの国内向けのランプと同様な構成を有しながらも、定格電圧220V乃至250Vの海外向けランプについて絶縁耐圧試験で求められる性能、即ち、口金と筐体との間に4kVの交流電圧を印加したときの電流値が100mA以下であることを満足することができるので、国内向けのランプと海外向けのランプとで部品仕様の共通化ができるから、製造コストの低減を図ることができる。
【0017】
また、本発明に係るランプは、最短距離が、1.0mm以上且つ1.8mm以下であってもよい。
本構成によれば、口金と筐体との間に500Vの交流電圧を印加しても、絶縁が保たれるので、定格電圧220V乃至250Vの通常使用時における安全性を確保することができる。
【0018】
また、本発明に係るランプは、導電性材料により板状に形成され、筐体の片側開口部の一部を塞ぐ形で筐体に取着されるとともに、電力供給ユニットに対向する面側とは反対側の面側に発光モジュールが取着されてなる基台を備え、導電部材が、金属により形成され且つ軸の一端部が基台に螺着されるとともに、軸の他端部に設けられた頭部が回路基板における主面側に配置されてなる螺子からなるものであってもよい。
【0019】
本構成によれば、螺子を基台に螺着した状態で、螺子の頭部と電極部との間の最短距離が0.2mm以上且つ1.8mm以下となるような螺子を選択することにより、絶縁耐圧試験に対する性能を向上させることができるので、従来構成に絶縁耐圧試験に対する性能を向上させるための新たな部品を追加する必要がないので、部品点数増加によるコスト上昇を抑制することができる。
【0020】
また、本発明に係るランプは、導電部材が、金属により形成され且つ軸の一端部が基台に螺着されるとともに、軸の他端部に設けられた頭部が回路基板における主面側に配置されてなる螺子と、螺子の頭部と回路基板における主面側との間に介在するワッシャとからなるものであってもよい。
【0021】
本構成によれば、螺子にワッシャを嵌めるという簡易な方法で、絶縁耐圧試験に対する性能を向上させることができるので、組み立て作業負荷の増加を抑制することができる。
また、本発明に係るランプは、導電部材が、回路基板における発光部が設けられた面側に配設され、且つ、基台および筐体の少なくとも一方と電気的に接続されてなる金属パターンからなるものであってもよい。
【0022】
本構成によれば、周知のパターンニング技術を適用することにより、発光部の電極部と金属パターンとの間の最短距離を精度よく設定することができる。
また、本発明に係るランプは、前記回路基板は、セラミックスにより形成され且つ前記発光部が実装される面に配線パターンが形成された基板と、絶縁性材料により形成され且つ前記配線パターンのうち前記発光部が実装されるパッド部を除く部位を覆う保護膜とからなるものであってもよい。
【0023】
本構成によれば、配線パターンと導電部材との間で絶縁破壊が生じることによる、絶縁耐圧試験に対する性能の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施の形態に係るランプを示す断面図である。
【図2】実施の形態に係るランプであって、(a)グローブを取り外し状態における平面図であり、(b)は(a)におけるA−A’で示した部分の部分断面図である。
【図3】実施の形態に係るランプについて行った絶縁耐圧試験の結果を示す図である。
【図4】変形例に係るランプであって、(a)グローブを取り外し状態における平面図であり、(b)は(a)におけるA−A’で示した部分の部分断面図である。
【図5】変形例に係るランプであって、グローブを取り外し状態における平面図である。
【図6】変形例に係るランプであって、(a)グローブを取り外し状態における平面図であり、(b)は(a)におけるA−A’で示した部分の部分断面図である。
【図7】変形例に係るランプであって、(a)グローブを取り外し状態における平面図であり、(b)は(a)におけるA−A’で示した部分の部分断面図である。
【図8】従来例に係るランプであって、(a)グローブを取り外し状態における平面図であり、(b)は(a)におけるA−A’で示した部分の部分断面図である。
【図9】絶縁耐圧試験の方法を説明するための図である。
【図10】従来例について行った絶縁耐圧試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一態様に係るランプを図面を参照しながら説明する。
<実施の形態>
<1>構成
<1−1>全体構成
本実施の形態に係るランプを示す断面図を図1に示し、グローブを外した状態における平面図を図2(a)に示す。
【0026】
ランプは、筐体10と、ホルダ(基台)20と、点灯回路ユニット30と、回路ケース40と、口金50と、グローブ60と、発光モジュール100とを備える。
<1−2>筐体
筐体10は、導電性材料である金属(例えば、アルミニウム)により円筒状に形成され、一方の開口側に発光モジュール100が配置され、他方の開口側に口金50が配置されている。また、筐体10は、発光モジュール100からの熱を放散させる放熱部材(ヒートシンク)として機能する。
【0027】
<1−3>ホルダ
ホルダ20は、図1および図2に示すように、導電性材料である金属により略円板状に形成され、発光モジュール100を筐体10に取着するための部材である。ホルダ20は、円筒状の筐体10の片側開口部の一部を塞ぐ形で筐体10に取着される。このホルダ20における発光モジュール100が取着される側の主面の略中央には、基板110の形状に合わせた平面視矩形状の凹部23が形成されている。この凹部23には、図1に示すように、基板110が嵌め込まれている。また、凹部23の4隅それぞれには、基板110をホルダ20に固定するための螺子27が螺合する螺子孔が穿設されている。そして、基板110は、その裏面が凹部23の底面に密着した状態で螺子孔に後述の螺子27が螺合することにより、基板110がホルダ20に取着される。これにより、ホルダ20における点灯回路ユニット30に対向する面側とは反対側の面側に発光モジュール100が取着されることになる。
【0028】
また、ホルダ20は、筐体10に接触した状態で配置されるので、発光モジュール100で発生した熱を筐体10へ伝導する機能を有することになる。
<1−4>点灯回路ユニット
点灯回路ユニット30は、電源回路基板31と、電源回路基板31に実装された複数個の電子部品(例えば、絶縁トランス)32とからなり、電源回路基板31が回路保持部22に固定された状態で筐体10内に収納されている。点灯回路ユニット30からは、点灯回路ユニット30における電源線に接続されたリード線34と、点灯回路ユニット30の接地線に接続されたリード線33とが導出している。更に、点灯回路ユニット30からは、点灯回路ユニット30から発光モジュール100に電力を供給するためのリード線35が導出している。
【0029】
<1−5>回路ケース
回路ケース40は、略円筒状に形成されたカバー41と、円盤状に形成され且つカバー41における片側開口部を覆う形で配置され、点灯回路ユニット30を保持する回路保持部36とから構成される。
【0030】
カバー41は、回路保持部22が取り付けられる側の開口端に、回路保持部36に設けられた爪片38が係合する孔43が設けられている。そして、カバー41は、爪片38を孔43に係合させた形で回路保持部22と結合する。また、カバー41における回路保持部36が取り付けられる側とは反対側には、カバー41に口金50を取り付けるための溝42aが形成された口金取付部42が設けられている。
【0031】
回路保持部36は、外周部にカバー41に取り付けるため爪片38が設けられている。
なお、カバー41および回路保持部36は、軽量化のため比重の小さい材料、例えば合成樹脂で形成するのが好ましい。本例では、ポリブチレンテレフタレート(PBT)が用いられている。
【0032】
<1−6>口金
口金50は、IEC(国際規格)やJIS(日本工業規格)に規定する、例えば、E型口金の規格に適合するものであり、一般白熱電球用のソケットに装着して使用される。
【0033】
口金50は、筒状のシェル51と円形皿状をしたアイレット52とを有する。このシェル51とアイレット52とは、ガラス材料からなる絶縁体部53を介して一体となっている。口金50は、シェル51を口金取付部42に外嵌させた状態で回路ケース40に取り付けられる。カバー41における口金取付部42には、点灯回路ユニット30から導出する給電線33を挿通するための挿通孔44が貫設されている。給電線33は、挿通孔44から外部に導出され、被覆が剥がされた先端部33aが半田54によりシェル51に固着されている。これにより、給電線33とシェル51とが電気的に接続される。また、アイレット52の中央部には、点灯回路ユニット30から導出する給電線34を挿通するための挿通孔55が貫設されている。給電線34は、挿通孔55から外部に導出され、被覆が剥がされた先端部34aが半田56によりアイレット52に固着されている。これにより、給電線34とアイレット52とが電気的に接続される。
【0034】
<1−7>グローブ
グローブ60は、略ドーム状に形成され、発光モジュール100を覆うようにして、その開口端部61が接着剤62により筐体10およびホルダ20に固定されている。
【0035】
<1−8>発光モジュール
発光モジュール100は、基板110、複数の発光部120、給電用コネクタ130、および、基板110上の一部を覆う保護膜131とを備える。
【0036】
基板110は、セラミックにより略矩形板状に形成されており、発光部120が設けられる側の表面には、各発光部120に対応する位置に形成された電極パッド(パッド部)110a(図2(b)参照)を含む配線パターンが金属により形成されている。ここにおいて、基板110および配線パターンとから回路基板が構成される。また、基板110の4隅には、基板110をホルダ20に取着するための螺子27が挿通される孔110b(図2(b)参照)が貫設されている。なお、基板110は、表面に絶縁層が形成されてなるアルミニウム製の板材により構成されるものであってもよい。
【0037】
発光部120は、図2(a)に示すように、合成樹脂等により外形が直方体状に形成されたハウジング120bと、ハウジング120bの内部に設けられたLEDとを備える。そして、発光部120は、ハウジング120bにおける基板110に固着される側とは反対側の面から光を発する。また、発光部120の長手方向における両端側面には、端子が形成されており、この端子は、基板110上に形成された電極パッド110aに半田により固着され、半田とともに電極部120aを構成している。そして、各発光部120は、この電極パッド110aを含む配線パターンを介して、基板110上に設けられた給電用コネクタ130に電気的に接続される。
【0038】
給電用コネクタ130は、リード線35に電気的に接続されており、点灯回路ユニット30からリード線35を介して供給される電力を配線パターンに供給する。
保護膜131は、基板110上に形成された配線パターンのうち、発光部120が実装される電極パッド110aを除く部位を覆う形で設けられている。また、保護膜131は、基板110上における配線パターンが形成されていない部位のうち、螺子27が挿通される孔110bの外周部を除く部分全体をも覆っている。
【0039】
<1−9>螺子およびワッシャ(導電部材)
螺子27は、炭素鋼(S45C)等の導電性材料により形成され、基板110の4隅近傍に設けられた孔110b(図2参照)に挿通された状態でホルダ20に穿設された螺子孔に螺合することで、基板110をホルダ20に固定する。
【0040】
ワッシャ28は、炭素鋼(S45C)等の導電性材料により形成され、4つの螺子27のうちの1つの螺子27(図2(a)における基板110の右上端部に位置する螺子27)の頭部27aと基板110との間に、螺子27の軸27bに嵌められた形で介在している。そして、ワッシャ28の周部と、ワッシャ28に最も近接した位置に配置された発光部120(図2(a)における最上段の列の右端に位置する発光部120)の電極部120aとの最短距離Lが、1.0mmとなるように設定されている。
【0041】
ここで、ホルダ20は、筐体10に接触した状態で配置されるので、螺子27およびワッシャ28と筐体10とは電気的に接続されることになる。この螺子27およびワッシャ28が、筐体10に電気的に接続された導電部材を構成する。
<2>絶縁耐圧試験の結果
EN60968 7条の規格を参考にした業界基準によれば、絶縁耐圧試験(口金50のシェル51とアイレット52とを短絡した状態で、口金50と筐体10との間に、交流電圧を印加したときに流れる電流値を測定する試験、図9参照)において、4kVの交流電圧を印加したときの絶縁耐圧性能を確保することが求められる。そして、今回、この絶縁耐圧試験において、EN61347を参考に、4kVの交流電圧を印加したときに流れる電流値が100mA以下であれば、定格電圧220V乃至250Vのランプとしての安全性が確保されているものとみなすこととした。以下、この絶縁耐圧試験の結果について説明する。
【0042】
絶縁耐圧実験は、図9に示す方法で、口金50と筐体10との間に印加する交流電圧を0.5kVから4.5kVまでの間で0.5kV刻みで変化させたときに、電流値が0.5mA、1.0mA、2.0mA、5mA、10mA、100mAを超えるか否かを調査した。また、ワッシャ28と発光部120の電極部120aとの間の最短距離(図2のL)を0.2mm、0.4mm、1.0mm、1.6mm、1.8mmと変化させた。
【0043】
図3(a)乃至(d)に実験結果を示す。図3(a)乃至(d)において、「○」はリミット電流値を超えなかったことを意味し、「×」はリミット電流値を超えたことを意味する。ここで、ワッシャ28と電極部120aとの間の最短距離Lが0.2mmおよび0.4mmの場合、図3(a)および(b)に示すように、印加電圧0.5kV乃至4.0kVで少なくとも0.5mAの電流が流れており、絶縁破壊が生じていると言える。また、最短距離Lが1.0mmの場合、図3(c)に示すように、印加電圧0.5kVでは、ワッシャ28と電極部120aとの間で絶縁破壊が生じていないが、印加電圧が1.0kV以上になるとワッシャ28と電極部120aとの間で絶縁破壊が生じ、放電が発生していると言える。そして、最短距離Lが1.6mmおよび1.8mmの場合、図3(d)に示すように、印加電圧0.5kV乃至1.5kVでは、ワッシャ28と電極部120aとの間で絶縁破壊が生じていないが、印加電圧2.0kV以上では、ワッシャ28と電極部120aとの間で絶縁破壊が生じ、放電が発生していると言える。
【0044】
但し、いずれの場合も、印加電圧が0.5kV乃至4.0kVのときの電流値(ワッシャ28と電極部120aとの間での放電電流値)が少なくとも100mAを超えない。特に、どの図においても印加電圧が4.0kVのときでも電流値は2mA以下に抑えられていることは注目すべきである。また、図10のデータと比べて図3各図のデータは、4.0kV印加時における電流値が小さいことにも注目すべきである。
【0045】
以下に、図8に示した螺子27と電極部120aとの間隔が、2.0mmの場合に比べて図3各図に示すワッシャ28と電極部120aとの間隔が短いと電流値が少なくなったと考える理由(1)と、図3各図に見られるように電極部120aとワッシャ28との間の最短距離が0.2mm乃至1.8mmのいずれの場合も電流値が一定していると考えられる理由(2)について分説する。
【0046】
理由(1)
電極部120aとワッシャ28(又は螺子27)との間で放電が開始した後においては、電極部120aとワッシャ28(又は螺子27)との間の最短距離、即ち、放電距離が長いほど、放電空間に存在する電子が加速される時間が長くなり、電極部120aまたはワッシャ28(又は螺子27)によりエネルギーの大きい電子が非弾性衝突することになる。そして、電極部120aまたはワッシャ28に衝突する電子のエネルギーが大きいほど、電極部120aまたはワッシャ28で発生する熱電子量は大きくなる。ところで、電極部120aとワッシャ28との間には、前述のように、交流電圧が印加されるので、例えば、当該交流電圧の半周期内に電極部120aで発生した熱電子が、次の半周期でワッシャ28へ到達することで、熱電子が電流(放電電流)に寄与する。逆に、交流電圧の半周期でワッシャ28で発生した熱電子は、次の半周期で電極部120aに到達することにより、熱電子が放電電流に寄与する。従って、前述のように放電距離が長いほど、ワッシャ28および電極部120aに衝突する電子の持つエネルギーが大きくなり、ワッシャ28および電極部120aで発生する熱電子量は大きくなるので、電極部120aとワッシャ28との間の最短距離が長いほど、放電電流の大きさを示す値(電流値)が大きくなると考えられる。
【0047】
理由(2)
理由(1)のところで述べたように、電極部120aとワッシャ28との間で放電が生じている状態では、電極部120aとワッシャ28との間の最短距離が小さくなるほど熱電子量が小さくなる。
【0048】
一方、電極部120aとワッシャ28との間の最短距離が小さくなると、放電開始時における電極部120aとワッシャ28との間の静電容量が大きくなる。そして、放電開始時に電極部120aとワッシャ28との間に印加される電圧が両者の間隔に依らずに一定であれば、電極部120aとワッシャ28との間の最短距離が小さいほど電極部120aおよびワッシャ28の帯電量が大きくなる。
【0049】
そして、電極部120aとワッシャ28との間の最短距離が小さくなることによる熱電子量の減少分が、当該最短距離が小さくなることによる放電開始時の帯電量の増加分により相殺されることで、放電時の電流値が当該最短距離に依らずに一定になるものと考えられる。
【0050】
以上が理由(2)の説明である。
結局、本実施の形態は、電極部120aとワッシャ28との間の最短距離が小さくなると、放電開始電圧が下がり絶縁耐圧が低下する(絶縁破壊が生じやすくなる)ことになるが、放電開始後における電流値(放電電流値)が低減されるという特性を用いたものである。
【0051】
本実施の形態に係るランプでは、図9に示す絶縁耐圧試験において、口金50と筐体10との間に4kVの交流電圧を印加した場合、電極部120aとワッシャ28との間に放電が発生している状態を許容しながらも、電流値を100mA以下に抑制することにより、絶縁耐圧試験に対する性能を向上させている。
【0052】
ところで、本実施の形態に係るランプは、定格電圧220V乃至250Vの海外向けに使用される。そうすると、通常の使用状態においては、口金50と筐体10との間には、少なくとも250V程度の電圧が印加される可能性はある。従って、発光部120の電極部120aと筐体10に電気的に接続されたワッシャ28との間に、少なくとも250V程度の電圧が印加されても絶縁破壊は生じないようにしておくのが望ましい。
【0053】
図3(a)乃至(d)に示す試験結果は、電極部120aとワッシャ28との間の最短距離Lが1.0mm乃至1.8mmの場合には、印加電圧が0.5kV(500V)でも電流が全く流れない、即ち、電極部120aと螺子27との間で絶縁破壊が生じないことを表している(図3(a)乃至(d)のハッチ部分)。従って、電極部120aとワッシャ28との間の最短距離Lを1.0mm乃至1.8mmに設定すれば、口金50と筐体10との間に250Vの電圧が印加されても絶縁破壊は生じることがなく、更に、絶縁耐圧試験において、口金50と筐体10との間に4kVの電圧が印加したときに流れる電流値も100mA以下に抑えることができ、業界基準を満足できる。
【0054】
また、本実施の形態では、ワッシャ28を用いて絶縁耐圧試験を行った結果を示しているが、ワッシャ28の代わりに、金属等の導電性材料により形成され且つ一端部が螺子27に固定された線状部材を用いて、線状部材の他端部と、発光部120の電極部120aとの間の距離を0.4mm乃至1.8mmの間で変化させた場合にも図3(a)乃至図3(d)に示す結果と同じ結果が得られた。従って、電極部120aに対する異極部(本実施の形態では、ワッシャ28)の形状が電流値に与える影響に比べて、電極部120aと異極部との間の距離の違いによる影響のほうが支配的であると考えられる。
【0055】
<変形例>
(1)変形例に係るLEDランプについてグローブ60を取り外した状態の平面図を図4(a)に示し、図4(a)におけるA−A’で破断した断面図を図4(b)に示す。
【0056】
本変形例では、基板110上に金属等の導電性材料によりランド部(金属パターン)110cが形成されている。そして、定格電圧が100V乃至120Vの日本向けのランプに使用する場合には、そのままにしておき、定格電圧が220V乃至250Vの海外向けのランプに使用する場合には、ランド部110cと螺子27とを半田110dで接続するようにしてもよい。
【0057】
ランド部110cと螺子27とが半田110dにより接続していない場合、ランド部110cと筐体10とが電気的に接続されていないので、電極部120aと螺子27との間の最短距離により、絶縁耐圧試験に対する性能が定まる。
【0058】
一方、ランド部110cと螺子27とが半田110dにより接続されている場合、ランド部110cと筐体10とが電気的に接続されているので、電極部120aとランド部110cとの間の最短距離により、絶縁耐圧試験に対する性能が定まる。つまり、電極部120aとランド部110cとの間の最短距離Lを0.2mm乃至1.8mmに設定すれば、絶縁耐圧試験における業界基準(口金50と筐体10との間の4kVの交流電圧を印加したときに流れる電流値が100mA以下であること)を満足することができる。
【0059】
(2)他の変形例に係るLEDランプについてグローブ60を取り外した状態の平面図を図5に示す。
本変形例では、前述(1)で説明した変形例と同様に、基板110上に金属等の導電性材料によりランド部(金属パターン)110cが形成されており、ランド部110cと筐体10とが配線228で接続されている。これにより、ランド部110cと筐体10とが電気的に接続されているので、電極部120aとランド部110cとの間の最短距離により、絶縁耐圧試験に対する性能が定まる。つまり、電極部120aとランド部110cとの間の最短距離Lを0.2mm乃至1.8mmに設定すれば、絶縁耐圧試験における業界基準(口金50と筐体10との間の4kVの交流電圧を印加したときに流れる電流値が100mA以下であること)を満足することができる。
【0060】
(3)他の変形例に係るLEDランプについてグローブ60を取り外した状態を図6(a)に示し、図6(a)におけるA−A’で破断した断面図を図6(b)に示す。
本変形例では、基板110の主面側に、孔110bの外周部に連続するランド部(金属パターン)328が形成されている。そして、螺子27をホルダ20に設けられた螺子孔に螺合させ、螺子27の頭部27aがランド部328に当接すると、ランド部328と筐体10とが電気的に接続される。これにより、ランド部328と筐体10とが電気的に接続されているので、電極部120aとランド部328との間の最短距離により、絶縁耐圧試験に対する性能が定まる。つまり、電極部120aとランド部328との間の最短距離Lを0.2mm乃至1.8mmに設定すれば、絶縁耐圧試験における業界基準(口金50と筐体10との間の4kVの交流電圧を印加したときに流れる電流値が100mA以下であること)を満足することができる。また、本変形例によれば、実施の形態や前述(2)で説明した変形例にように、ワッシャ28や配線228等が不要になるので、部品点数の削減を図ることができる。更に、前述(1)で説明した変形例のように、ランプの製造工程において、ランド部110cと螺子27とを半田110dにより接続するための半田付け作業を行う必要がないので、ランプの製造工程の簡素化を図ることができる。
【0061】
(4)他の変形例に係るLEDランプについてグローブ60を取り外した状態を図7(a)に示し、図7(a)におけるA−A’で破断した断面図を図7(b)に示す。
本変形例では、発光部120の電極部120aが発光部120の短手方向の両端側に設けられている。そして、発光部120の短手方向の両端側に設けられた電極部120aとワッシャ28との間の最短距離Lが0.2mm乃至1.8mmである。
【0062】
(5)また、前述の実施の形態では、螺子27にワッシャ28を嵌める例について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ワッシャ28を用いずに、螺子27をホルダ20に螺着した状態で、螺子27の頭部27aと発光部120の電極部120aとの間の最短距離Lが0.2mm以上且つ1.8mm以下となるような螺子27を選択して使用してもよい。
【0063】
(6)前述の実施の形態では、発光部120がLEDを有する例について説明したが、これに限定されるものではなく、他の発光素子を有するものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係るランプは、照明用途全般に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
10 筐体
20 ホルダ(基台)
27 螺子
27a 頭部
27b 軸
28 ワッシャ
30 点灯回路ユニット(電力供給ユニット)
33,34,35 リード線
36 回路保持部
40 回路ケース
41 カバー
42 口金取付部
50 口金
51 シェル
52 アイレット
60 グローブ
100 発光モジュール
110 基板
120 発光部
120a 電極部
120b ハウジング
130 給電用コネクタ
131 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板と当該回路基板の主面に電極部の少なくとも一部が主面側に露出する形で実装された発光部とを有する発光モジュールと、前記発光部に電力を供給する電力供給ユニットと、導電性材料により筒状に形成され、内部に前記電力供給ユニットを収納する筐体と、前記筐体に電気的に接続され且つ前記回路基板における前記主面側に少なくとも一部が配置されてなる導電部材とを備え、前記発光部の前記電極部と前記導電部材の前記一部との間の最短距離が0.2mm以上且つ1.8mm以下であることを特徴とするランプ。
【請求項2】
前記最短距離は、1.0mm以上且つ1.8mm以下であることを特徴とする請求項1記載のランプ。
【請求項3】
導電性材料により板状に形成され、前記筐体の片側開口部の一部を塞ぐ形で前記筐体に取着されるとともに、前記電力供給ユニットに対向する面側とは反対側の面側に前記発光モジュールが取着されてなる基台を備え、前記導電部材は、金属により形成され且つ軸の一端部が前記基台に螺着されるとともに、前記軸の他端部に設けられた頭部が前記回路基板における前記主面側に配置されてなる螺子からなることを特徴とする請求項1または請求項2記載のランプ。
【請求項4】
前記導電部材は、金属により形成され且つ軸の一端部が前記基台に螺着されるとともに、前記軸の他端部に設けられた頭部が前記回路基板における前記主面側に配置されてなる螺子と、前記螺子の前記頭部と前記回路基板における前記主面側との間に介在するワッシャとからなることを特徴とする請求項1または請求項2記載のランプ。
【請求項5】
前記導電部材は、前記回路基板における前記主面側に設けられ、且つ、前記基台および前記筐体の少なくとも一方と電気的に接続されてなる金属パターンからなることを特徴とする請求項1または請求項2記載のランプ。
【請求項6】
前記回路基板は、セラミックスにより形成され且つ前記発光部が実装される面に配線パターンが形成された基板と、絶縁性材料により形成され且つ前記配線パターンのうち前記発光部が実装されるパッド部を除く部位を覆う保護膜とからなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−204180(P2012−204180A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68546(P2011−68546)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】