説明

ランマ

【課題】潤滑油を効率よくクランクケースまで到達させることができ、特に始動時に迅速にクランクケースまで到達させることができるランマを提供する。
【解決手段】エンジン2からの入力を直線往復運動の出力に変換する出力変換機構が収容されたクランクケース3と、該クランクケース3から下方に向けて延びる外筒17と、該外筒17内を摺動可能な内筒16と、前記内筒16内に延び、前記出力を受けて直線往復運動するピストンロッド8と、前記内筒16の下端に連結され、前記ピストンロッド8の前記直線往復運動が伝達されて上下に振動する整地板5と、前記内筒16の下端部内に貯留され、前記整地板5の振動に伴い一部が前記内筒16内を上方に向けて撥ね上げられる潤滑油溜まり26とを備え、前記ピストンロッド8は中空であり、前記内筒16内で開口した下端及び前記クランクケース3に向けて開口した上端を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクケース内まで潤滑油を効率よく供給することができるランマに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ランマの内部には、潤滑油が貯留されている。ランマの運転とともに、この潤滑油は撥ね上げられてランマ内部の各部位を潤滑している。一般的なランマでは、内筒内がピストンを介して下側室と上側室に隔てられている。下側室にある潤滑油は、ピストンに設けられた孔を通って上側室に移動する。そして、上側室から接続部材に設けられた隙間を通ってクランクケース内に移動する。そして、クランクケース内のクランクギア等を潤滑する。このような構造のランマは特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−257018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のランマをはじめとする一般的なランマは、上述したようなルートを通って潤滑油が下側室からクランクケースまで到達するため、途中でピストンや接続部材に設けられた狭小の孔や隙間等を通る必要がある。このため、潤滑油がクランクケースまで到達するまでに時間がかかり、特に長期間使用していないランマを始動した時のクランクギアのかじりが問題となっている。また、寒冷地で使用する際も、同様の問題が懸念されている。
【0005】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであって、潤滑油を効率よくクランクケースまで到達させることができ、特に始動時に迅速にクランクケースまで到達させることができるランマを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、請求項1の発明では、エンジンからの入力を直線往復運動の出力に変換する出力変換機構が収容されたクランクケースと、該クランクケースから下方に向けて延びる外筒と、該外筒内を摺動可能な内筒と、前記内筒内に延び、前記出力を受けて直線往復運動するピストンロッドと、前記ピストンロッドの下端部外周に配設され、前記内筒内を摺動する環状のピストンと、該ピストンの摺動方向両側に配設され、前記内筒内でそれぞれ上端及び下端が位置決めされた上側ばね、下側ばねと、前記内筒の下端に連結され、前記ピストンロッドの前記直線往復運動が前記ピストン及び前記上側及び下側ばねを介して伝達されて上下に振動する整地板と、前記内筒の下端部内に貯留され、前記整地板の振動に伴い一部が前記内筒内を上方に向けて撥ね上げられる潤滑油溜まりとを備え、前記ピストンロッドは中空であり、前記内筒内で開口した下端及び前記クランクケースに向けて開口した上端を有することを特徴とするランマを提供する。
【0007】
また、請求項2の発明では、前記外筒内を摺動し、前記ピストンロッドと前記出力変換機構とを接続する接続部材と、前記接続部材の外周面の一部を切欠いて前記接続部材の外周面と前記外筒の内面との間に形成され、前記潤滑油が流通可能な隙間と、前記クランクケースと前記整地板とを接続し、前記外筒及び前記内筒を囲繞して密閉空間を形成する伸縮可能な保護管とをさらに備えたことを特徴としている。
また、請求項3の発明では、前記ピストンを上下方向に貫通し、前記潤滑油が流通可能な貫通孔とをさらに備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、ピストンロッドが筒状に形成されていて、その下端が内筒内で開口し、その上端がクランクケースに向けて開口している。このため、内筒内に貯留された潤滑油はピストンロッド内を通って直接クランクケースに到達する。すなわち、振動によりミスト化された潤滑油が撥ね上がり、直接クランクケース内に迅速に到達できる経路が形成されている。したがって、例えば長期間使用されずに潤滑油が下側に溜まった状態のランマであっても、始動時に迅速に潤滑油をクランクケース内に供給でき、クランクケース内の出力変換機構の潤滑油として機能させることができる。また、寒冷地で使用する場合においても、潤滑油をクランクケース内に到達できやすくすることができるので、出力変換機構を確実かつ効率よく潤滑させることができる。
【0009】
請求項2の発明によれば、潤滑油が接続部材の外周面と外筒の内面との間に形成された隙間を通って上側にあるクランクケースに移動するので、クランクケース内の出力変換機構の潤滑をさらに確実に行うことができる。また、クランクケースからの潤滑油の戻り経路としても利用することができる。また、接続部材と外筒との摺動面も潤滑させることができる。
請求項3の発明によれば、潤滑油がピストンに設けた貫通孔を通って内筒の上端に移動するので、クランクケース内の出力変換機構への潤滑効率を高めるとともに、内筒と外筒との摺動面を潤滑させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るランマの概略断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】接続部材近傍の概略断面図である。
【図4】ピストン近傍の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1及び図2に示すように、本発明に係るランマ1は、動力源たるエンジン2と、クランクケース3と、保護管4と、整地板5とを有している。エンジン2は、燃料タンク6から燃料を供給され、出力軸7を回転駆動させるものである。クランクケース3は、エンジン2からの入力を直線往復運動の出力に変換する出力変換機構が収容されている。出力軸の回転運動は、クランクケース3内の出力変換機構にてピストンロッド8の振動運動に変換される。すなわち、ピストンロッド8は、出力変換機構(具体的には後述するコンロッド11)と接続され、後述する内筒16内に延び、エンジン2の駆動に伴い直線往復運動する。そして、ピストンロッド8が直線往復運動することにより、整地板5が上下に振動される。これにより、整地板5で地面をたたいて締め固めていくことができる。
【0012】
上記動作をさらに詳しくいえば、図2に示すように、エンジン2からの動力はクランクケース3内の出力軸7に伝達され、出力軸7を回転駆動させる。この出力軸7に設けられたピニオンギア(不図示)とクランクギア9が噛み合っていて、出力軸の回転に伴いクランクギア9も回転する。クランクギア9からは、その回転中心から偏心した位置にクランク軸10が突出している。クランク軸10は、コンロッド11の上端に回転自在に連結されている。コンロッド11の下端は接続ピン12を介して接続部材13と連結されている。接続部材13はピストンロッド8の上端にピン21を介して固定されている。したがって、出力軸7の回転運動は、ピニオンギアやクランクギア9、クランク軸10、さらにはコンロッド11からなる出力変換機構により往復直線運動に変換され、ピストンロッド8を上下動させる。
【0013】
ピストンロッド8の下端部外周には環状のピストン14が備わっている。ピストン14の上下(内筒16に対する摺動方向両側)には、ばね15a、15bが配設されている。ばね15a、15b及びピストン14は、内筒16内に収容されている。これらのピストン14とばね15a、15bがピストンロッド8の振動を内筒16に伝える振動伝達機構である。内筒16は、クランクケース3に固定された外筒17内を摺動可能である。すなわち、外筒17及び内筒16は入れ子式である。内筒16及び外筒17は、クランクケース3と整地板5とを接続する保護管4に囲繞されている。保護管4は、上部保護部材18と、下部保護部材19と、これらを連結する伸縮自在なベローズ20とからなる。ベローズ20は、下部保護部材19が回転しないように保持するためのものである。外筒17の上部は、上部保護部材18に固定されている。内筒16の下部は、下部保護部材19に固定されている。すなわち、外筒17及び内筒16は、保護管4の上下端にそれぞれ結合されている。上部保護部材18は、クランクケース3に例えばボルト(不図示)を介して固定されている。下部保護部材19は、例えばボルト22を介して整地板5に固定されている。すなわち、整地板5は下部保護部材19を介して内筒16に連結されている。
【0014】
したがって、コンロッド11が上下動すると、接続部材13が外筒17内を摺動し、これが伝達されてピストンロッド8が上下動する。そして、ピストン14が内筒16内を摺動し、この往復(振動)運動がばね15a、15bに伝達され、クランクケース3を上下動させる。これに追従し、保護管4が撥ね上がる。保護管4はピストンロッド8の往復運動に追従して、これに伴い内筒16に固定された下部保護部材19も上下動する。そして、整地板5が振動する。したがって、ピストンロッド8の振動運動は、内筒16を介して整地板5に伝達される。下部保護部材19の上下動は、ベローズ20が伸縮することでこれを吸収する。これにより、保護管4は伸縮しながら内筒16及び外筒17を保護している。
【0015】
図2から明らかなように、内筒16の下部は整地板5にて閉塞されている。また、内筒16の上部は蓋板24で一部が覆われている。蓋板24が一部開口している部分は、ピストンロッド8が貫通可能な大きさに設定されている。これら整地板5及び蓋板24にて、振動伝達機構であるピストン14及びばね15a、15bは内筒16内に保持されている。また、上側ばね15aは蓋板24にてその上端が位置決めされ、下側ばね15bは整地板5にてその下端が位置決めされている。
【0016】
一方で、内筒16内には、潤滑油が貯留されて潤滑油溜まり26が形成されている。なお、図では内筒16内の潤滑油溜まりは省略している。潤滑油溜まり26中の潤滑油は、整地板5の振動に伴い内筒16内を上方に向けて撥ね上げられ、ランマ1内部の各機構を潤滑させる。ここで、図1及び図2を参照すれば明らかなように、ピストンロッド8は中空に形成されている。具体的には、ピストンロッド8は中空円筒状に形成されている。ピストンロッド8下端の開口端は、内筒16内で開口している。ピストンロッド8上端の開口端は、接続部材13内に配設され、クランクケース3に向けて開口している。このため、潤滑油は、ピストンロッド8内を通って直接クランクケース3に到達できる。すなわち、整地板5の振動により潤滑油はミスト化され、内筒16内を撥ね上がるための経路が形成されている。潤滑油は、ピストンロッド8下端の開口端から流入してピストンロッド8内を撥ね上がり、ピストンロッド8上端の開口端から接続部材13内を通って直接クランクケース3内に到達する。これにより、内筒16からクランクケース3まで直接連通する経路を利用して、潤滑油を迅速にクランクケース3に供給することができる。
【0017】
したがって、例えば長期間使用されずに潤滑油が内筒16の下側に溜まった状態のランマであっても、始動時に迅速に潤滑油をクランクケース3内に供給でき、クランクケース3内の出力変換機構9,10,11あるいは出力軸7の潤滑油として機能させることができる。また、寒冷地で使用する場合においても、潤滑油をクランクケース3内に到達できやすくすることができるので、出力変換機構を確実かつ効率よく潤滑させることができる。
【0018】
また、図3を参照すれば明らかなように、接続部材13の外周面の一部は切欠かれている。この切欠きにより、接続部材13の外周面と外筒17の内面との間に隙間27が形成される。この隙間27は、潤滑油が流通可能である。クランクケース3内を潤滑した潤滑油は、ピストンロッド8内を再び戻ったり、この隙間27を通って内筒16内に戻ったりする。この隙間27を通る際、接続部材13と外筒17との摺動面も潤滑することができる。また、隙間27を通った潤滑油26は、さらに内筒16と外筒17との摺動面をも潤滑することができる。内筒16と外筒17との摺動面を潤滑した潤滑油は、保護管4が形成する密閉空間25内に溜まる。密閉空間25内の潤滑油は、整地板5の振動に伴って再び内筒16と外筒17との摺動面とを潤滑し、内筒16内に戻る。
【0019】
また、図4を参照すれば明らかなように、ピストン14には、貫通孔28が形成されている。貫通孔28は、ピストン14を上下方向に貫通している。この貫通孔28は、潤滑油が流通可能である。内筒16内に貯留された潤滑油は、この貫通孔28を通って内筒16の上側に移動することもできる。このとき、内筒16の上端を塞ぐ蓋板24にも同様の貫通孔を設けてもよいし、蓋板24とピストンロッド8との摺動面を潤滑させながら上昇させてもよい。このように、隙間27と貫通孔28を設けることにより、ピストンロッド8を中空円筒状にしたことと相俟って、ランマ1内の潤滑効率をさらに高めることができる。
【符号の説明】
【0020】
1 ランマ
2 エンジン
3 クランクケース
4 保護管
5 整地板
6 燃料タンク
7 出力軸
8 ピストンロッド
9 クランクギア(出力変換機構)
10 クランク軸(出力変換機構)
11 コンロッド(出力変換機構)
12 接続ピン
13 接続部材
14 ピストン(振動伝達機構)
15a 上側ばね(振動伝達機構)
15b 下側ばね(振動伝達機構)
16 内筒
17 外筒
18 上部保護部材
19 下部保護部材
20 ベローズ
21 ピン
22 ボルト
24 蓋板
25 密閉空間
26 潤滑油溜まり
27 隙間
28 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの入力を直線往復運動の出力に変換する出力変換機構が収容されたクランクケースと、
該クランクケースから下方に向けて延びる外筒と、
該外筒内を摺動可能な内筒と、
前記内筒内に延び、前記出力を受けて直線往復運動するピストンロッドと、
前記ピストンロッドの下端部外周に配設され、前記内筒内を摺動する環状のピストンと、
該ピストンの摺動方向両側に配設され、前記内筒内でそれぞれ上端及び下端が位置決めされた上側ばね、下側ばねと、
前記内筒の下端に連結され、前記ピストンロッドの前記直線往復運動が前記ピストン及び前記上側及び下側ばねを介して伝達されて上下に振動する整地板と、
前記内筒の下端部内に貯留され、前記整地板の振動に伴い一部が前記内筒内を上方に向けて撥ね上げられる潤滑油溜まりと
を備え、
前記ピストンロッドは中空であり、前記内筒内で開口した下端及び前記クランクケースに向けて開口した上端を有することを特徴とするランマ。
【請求項2】
前記外筒内を摺動し、前記ピストンロッドと前記出力変換機構とを接続する接続部材と、
前記接続部材の外周面の一部を切欠いて前記接続部材の外周面と前記外筒の内面との間に形成され、前記潤滑油が流通可能な隙間と、
前記クランクケースと前記整地板とを接続し、前記外筒及び前記内筒を囲繞して密閉空間を形成する伸縮可能な保護管と
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のランマ。
【請求項3】
前記ピストンを上下方向に貫通し、前記潤滑油が流通可能な貫通孔とをさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のランマ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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