説明

リクライニング装置

【課題】円周方向に沿った内歯が形成された第1部材と、該第1部材と円周方向に相対回転可能に設けられた第2部材と、該第2部材に回転可能に設けられ、内歯と噛合可能な外歯を有したポールとを有するリクライニング装置に関し、ロック不良が発生しないリクライニング装置を提供することにある。
【解決手段】
ポール33にベースプレート(第2部材)25に向けて突出した突部35を設け、ベースプレート25に突部35が回転可能に嵌合する穴(凹部)37を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円周方向に沿った内歯が形成された第1部材と、該第1部材と前記円周方向に相対回転可能に設けられた第2部材と、該第2部材に回転可能に設けられ、前記内歯と噛合可能な外歯を有したポールと、前記外歯が前記内歯に噛合したロック位置、前記外歯と前記内歯との噛合が解除されたアンロック位置に前記ポールを移動させる操作手段と、前記ロック位置方向に前記ポールを付勢する付勢手段とを有したリクライニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図7、図8を用いて説明する。図7は従来のリクライニング装置のロック状態を説明する図、図8は図7のリクライニング装置のアンロック状態を説明する図である。
【0003】
これらの図において、シートバック側に接続されるアッパアーム(第1部材)1には、円周方向に沿った内歯3が形成されている。
【0004】
シートクッション側に接続されるロアアーム(第2部材)5は、円周方向に沿って設けられた内歯3の中心軸Oを中心にアッパアーム1と相対回転可能に設けられている。
【0005】
内歯3の内側には、上側と下側とにポール9が配置されている。また、ロアアーム5には、ポール9の回転中心軸となる断面形状が半月状の突部11が形成されている。
【0006】
そして、内歯3と対向するポール9の面には、突部11が嵌合する半月状の切欠穴13が形成されている。よって、ポール9は、ロアアーム5の突部11を中心に回転可能となっている。更に、ロアアーム5には、ポール9を回転可能に案内するガイド14が形成されている。
【0007】
ポール9の内歯3と対向する面には、切欠穴13を挟んで一方の側に内歯3と噛合可能な外歯7が、他方の側に内歯3に当接可能なストッパ部15がそれぞれ形成されている。更に、ポール9の背面(内歯3と対向する面と反対側の面)には、外歯7と対向するロック部17と、ストッパ部15と対向するアンロック部19とが形成されている。
【0008】
ポール9の背面側には、内歯の中心軸Oを中心として回転可能なカム(操作手段)20が配置されている。このカム20が回転し、ポール9のロック部17を押せば、ポール9は外歯7が内歯3に噛合したロック位置(図7参照)へ回転移動し、カム20がポール9のアンロック部19を押せば、ポール9は外歯7と内歯3との噛合が解除されたアンロック位置(図8参照)へ回転移動する。
【0009】
更に、このカム20は図示しない付勢手段より、ポール9がロック位置方向に回転移動する方向に付勢されている。
【0010】
次に、上記構成のリクライニング装置の作動を説明する。図7にある状態は、図示しない付勢手段の付勢力により、カム20はロアアーム5側のポール9のロック部17を押している。よって、ポール9は、外歯7がアッパアーム1の内歯3に噛合するロック位置にあり、リクライニング装置は、ロアアーム5とアッパアーム1との相対回転が禁止されたロック状態にある。
【0011】
ここで、図示しない付勢手段の付勢力に抗して、カム20を回転させ、ポール9のアンロック部19を押せば、ポール9は図8に示す外歯7と内歯3との噛合が解除されたアンロック位置へ回転移動し、リクライニング装置は、ロアアーム5とアッパアーム1との相対回転が可能なアンロック状態となる。
【0012】
そして、所望のリクライニング角度を得たならば、カム20への操作力を解除すると、ポール9は、図7に示す外歯7がアッパアーム1の内歯3に噛合するロック位置に回転移動し、リクライニング装置は、ロアアーム5とアッパアーム1との相対回転が禁止されたロック状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許第0024976号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、図7、8に示すリクライニング装置において、上側のポール9がロック位置からアンロック位置へ移動する際、また、アンロック位置からロック位置へ移動する際、ポール9が自重により回転中心軸である突部11から外れ、ポール9の回転中心軸に対する位置ズレが発生する場合がある。
【0015】
よって、内歯と外歯との噛み合いが不十分となるロック不良が発生する問題点がある。
【0016】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、その課題は、ロック不良が発生しないリクライニング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1に係る発明は、円周方向に沿った内歯が形成された第1部材と、該第1部材と円周方向に相対回転可能に設けられた第2部材と、該第2部材に回転可能に設けられ、内歯と噛合可能な外歯を有したポールと、外歯が内歯に噛合したロック位置、外歯と内歯との噛合が解除されたアンロック位置にポールを移動させる操作手段と、ロック位置方向にポールを付勢する付勢手段と、を有したリクライニング装置において、前記ポールに前記第2部材に向けて突出した突部を設け、前記第2部材に前記突部が回転可能に嵌合する凹部を設けたことを特徴とするリクライニング装置である。
【0018】
請求項2に係る発明は、前記ポールの突部が前記ポールの前記内歯側の端部にあることを特徴とする請求項1記載のリクライニング装置である。
【0019】
請求項3に係る発明は、少なくともポールの突部は、焼き入れによる焼き入れ硬化部となっていることを特徴とする請求項1または2記載のリクライニング機構である。
【発明の効果】
【0020】
請求項1〜請求項3に係る発明によれば、前記ポールに前記第2部材に向けて突出した突部を設け、前記第2部材に前記突部が回転可能に嵌合する凹部を設けたことにより、ポールは第2部材に対し、回転以外の移動が禁止され、回転中心軸に対して位置ズレがなくなる。よって、内歯と外歯との噛み合いが不十分となるロック不良が発生しない。
【0021】
請求項2に係る発明によれば、前記ポールの突部が前記ポールの前記内歯側の端部にあることにより、ポールの外歯の移動軌跡が、内歯と外歯とが噛み合う際の外歯の理想的な移動軌跡に近くなるので、噛み合いがスムーズとなる。
【0022】
請求項3に係る発明によれば、少なくともポールの突部は、焼き入れによる焼き入れ硬化部となっていることにより、突部の強度が高くなっている。よって、ロック状態のリクライニング装置に、第1部材と第2部材とを相対回転させる大きな力が作用した場合でも、ポールの突部が変形せず、ポールの外歯と第1部材の内歯との噛合が解除されない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施の形態のリクライニング装置の分解斜視図である。
【図2】図1のA方向矢視図である。
【図3】図2の切断線B−Bでの断面図である。
【図4】図1のベースプレートのC方向矢視図である。
【図5】本実施形態のロック装置のロック状態を説明する図である。
【図6】本実施形態のロック装置のアンロック状態を説明する図である。
【図7】従来のリクライニング装置のロック状態を説明する図である。
【図8】図7のリクライニング装置のアンロック状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0025】
図1−図6を用いて、本実施の形態のリクライニング装置を説明する。図1は本実施の形態のリクライニング装置の分解斜視図、図2は図1のA方向矢視図、図3は図2の切断線B−Bでの断面図、図4は図1のベースプレートのC方向矢視図、図5は本実施形態のロック装置のロック状態を説明する図、図6は本実施形態のロック装置のアンロック状態を説明する図である。
【0026】
図1において、シートバック側に設けられるラチェット(第1部材)21は、円板状の板材をプレスにより半抜加工し、円形凹部21aが形成されている。この円形凹部21aの内周面には、内歯23が円周方向全域に形成されている。また、円形凹部21aの中心には、貫通した穴21bが形成されている。
【0027】
シートクッション側に設けられるベースプレート(第2部材)25も、円板状の板材をプレスにより半抜加工し、円形凹部25aが形成されている。この円形凹部25aの径は、ラチェット21の外径より若干大きく設定されている。そして、円形凹部25aに、ラチェット21が嵌め込まれ、ベースプレート25とラチェット21とは円周方向に沿って設けられた内歯23の中心軸Oを中心に相対回転可能となっている。また、ラチェット21の中心には、貫通した穴25bが形成されている。
【0028】
そして、図3に示すように、ラチェット21の外周部と、ベースプレート25の外周部とは、リング状の外周リング27により挟持され、ラチェット21とベースプレート25とは、相対回転の軸(円周方向に沿って形成された内歯23の中心:図1において軸O)方向に分離されることなく、相対回転可能に保持されている。
【0029】
図1に戻って、ラチェット21の円形凹部21aとベースプレート25の円形凹部25aとが形成する空間には、カム31が配置される。カム31の中心には、非円形の穴31aが形成されている。そして、ラチェット21の穴21b、ベースプレート25の穴25bに回転可能に支持される操作シャフト(図示せず)が、非円形(略小判状)の穴31aに嵌合し、操作シャフトによって、カム31は回転駆動されるようになっている。
【0030】
カム31の周囲には、ポール33が3つ配置されている。
【0031】
そして、ポール33のベースプレート25との対向面上で、ポール33の内歯23側の端部には、半抜き加工によりベースプレート25に向けて突出した突部35が形成されている。本実施の形態では、ポール33の突部35の軸と直交する方向の断面形状は、図1に示すように、内歯23側の第1円弧部39と、第1円弧部39の径より小さな径の第2円弧部41とからなる略半月形である。
【0032】
一方、ベースプレート25には、ポール33の突部35が回転可能に係合し、ベースプレート25を貫通した穴(凹部)37が形成されている。穴37の断面形状は、図1、図4に示すように、内歯23側の第3円弧43と、第3円弧43の径より小さな径で、ポール33の突部35の第2円弧部41と同じ径で、円弧長が第2円弧部41より長い第4円弧45とからなる略半月形である。
【0033】
よって、ポール33の回転中心軸は、突部35の第2円弧部41、穴37の第4円弧45の接点を通り、内歯の中心軸Oと平行な軸となる。そして本実施例では、図5,6に示すように、ポール33の回転中心軸(O’)を内歯32の近傍となるようにした。尚、穴37は貫通穴であってもよいし、有底穴であってもよい。
【0034】
ポール33の内歯23と対向する面には、突部35を挟んで一方の側に内歯23と噛合可能な外歯57が、他方の側に内歯23に当接可能な内歯対向部55がそれぞれ形成されている。更に、ポール33の背面(内歯23と対向する面と反対側の面)には、外歯57と対向するロック部59と、内歯対向部55と対向するアンロック部61とが形成されている。更に、本実施形態のポール33全体は、焼き入れ加工がなされている。
【0035】
カム31には、半径方向に延出し、各ポール33のロック部59とアンロック部61とに押接可能なカム部63が形成されている。
【0036】
ベースプレート25のラチェット21との対向面上には、ラチェット21方向に突出し、ポール33を回転可能に案内するガイド51が、半抜き加工により形成されている。
【0037】
ガイド51は、図5、6に示すように、ポール33の外歯57側の側面を案内する第1ガイド部51aと、ポール33の内歯対向部55側の側面を案内する第2ガイド部51bと、第2ガイド部51bに連設され、ポール33のアンロック部61が当接可能なストッパ部51cとを有している。
【0038】
図1、図2に示すように、ラチェット21の外部に露出した面(ラチェット21のベースプレート25と対向する面と反対側の面)上には、リクライニング装置をシートバック側のフレームへの取り付け用の突部65が半抜き加工により形成されている。ベースプレート25の外部に露出した面(ベースプレート25のラチェット21と対向する面と反対側の面)上には、リクライニング装置をシートクッション側のフレームへの取り付け用の突部67が半抜き加工により形成されている。
【0039】
そして、一端部がカム31に係止され、他端部がベースプレート25に係止されたスプリング(付勢部材:図示せず)により、カム31を介して、ポール33はロック位置方向に付勢されている。
【0040】
ここで、図5、図6を用いて、本実施形態のリクライニング装置の作動を説明する。
【0041】
図5に示すように、カム33に操作力を加えていない場合は、付勢部材の付勢力により、カム33のカム部63が各ポール33のロック部59を押している。よって、各ポール33は、外歯57がラチェット21の内歯23に噛合したロック位置にあり、ラチェット21とベースプレート25との相対回転は禁止され、シートバックはシートクッションに対して回転ができない状態(ロック状態)にある。尚、この時、ポール33の内歯対向部55は、内歯23から離れた位置にある。
【0042】
付勢部材の付勢力に抗して、図示しない操作シャフトを操作して、カム33を回転させると、カム部63は各ポール33のアンロック部61を押す。すると、図6に示すように、各ポール33は、外歯57とラチェット21の内歯23との噛合が解除されたアンロック位置に移動し、ラチェット21とベースプレート25との相対回転が可能となり、シートバックはシートクッションに対して回転可能となる。尚、図示しない操作シャフトの操作は、ポール33のアンロック部61がガイド51のストッパ部51cに当接するまで可能である。
【0043】
操作シャフトへの操作力を解除すると、図5に示すように、付勢部材の付勢力により、ポール33は、外歯57がラチェット21の内歯23に噛合したロック位置に復帰し、ラチェット21とベースプレート25との相対回転は禁止され、再びロック状態となる。
【0044】
このような構成のリクライニング装置によれば、以下のような効果が得られる。
【0045】
(1) ポール33に回転中心軸となる突部35を設け、ベースプレート25に突部35が回転可能に嵌合する穴37を設けたことにより、ポール33はベースプレート25に対して、回転以外の移動が禁止される。よって、ポール33の回転中心軸O’に対する位置ズレが発生せず、内歯23と外歯57との噛み合いが不十分となるロック不良が発生しない。
【0046】
(2) ポール33の突部35は、ポール33の内歯23側の端部にあることにより、ポール33の外歯57の移動軌跡が、内歯23と外歯57とが噛み合う際の理想的な移動軌跡に近くなるので、噛み合いがスムーズとなる。
【0047】
(3) ポール33の突部35には、焼き入れによる焼き入れ硬化部となっていることにより、突部35の強度が高くなっている。よって、ロック状態のリクライニング装置に、ラチェット21とベースプレート25とを相対回転させる大きな力が作用した場合でも、ポール33の突部35が変形せず、ポール33の外歯57とラチェット21の内歯23との噛合が解除されない。
【0048】
尚、本発明は上記実施の形態に限定するものではない。上記実施の形態では、シートバック側にラチェット21を設け、シートクッション側にベースプレート25を設けたが、逆に、シートバック側にベースプレート25を設け、シートクッション側にラチェット21を設けてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、ポール33は3つ設けたが、1つでもよいし、2又は4以上あってもよい。
【0050】
更に、ポール33への焼き入れは、少なくとも突部35だけでもよい。
【符号の説明】
【0051】
21 ラチェット(第1部材)
25 ベースプレート(第2部材)
31 カム
33 ポール
35 突部
43 穴(凹部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円周方向に沿った内歯が形成された第1部材と、
該第1部材と円周方向に相対回転可能に設けられた第2部材と、
該第2部材に回転可能に設けられ、内歯と噛合可能な外歯を有したポールと、
外歯が内歯に噛合したロック位置、外歯と内歯との噛合が解除されたアンロック位置にポールを移動させる操作手段と、
ロック位置方向にポールを付勢する付勢手段と、
を有したリクライニング装置において、
前記ポールに前記第2部材に向けて突出した突部を設け、
前記第2部材に前記突部が回転可能に嵌合する凹部を設けたことを特徴とするリクライニング装置。
【請求項2】
前記ポールの突部が前記ポールの前記内歯側の端部にあることを特徴とする請求項1記載のリクライニング装置。
【請求項3】
少なくともポールの突部は、焼き入れによる焼き入れ硬化部となっていることを特徴とする請求項1または2記載のリクライニング機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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