説明

リグノセルロース分解性酵素の活性を促進するための方法

本発明により、リグノセルロースを加水分解するための方法が提供される。これはリグノセルロースを一つ以上の化学処理に接触させる手順から成る。また、リグノセルロース質原料を前処理するための方法も提供され、これは一つ以上の化学薬剤を原料に接触させる手順から成る。また、植物材料から酵素あるいは医薬品、機能性食品等の物質を遊離させるための方法も提供される。これらの方法は従来の方法と比べて効率性が高く、より経済的で毒性が少ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
植物物質由来の遊離糖類及び遊離オリゴ糖の生成を向上させる方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
植物バイオマスは糖類から構成され、地球上で最大の再生可能炭水化物源となっている。しかしながらその糖類は複合高分子に組み込まれているため、この莫大な資源は十分活用されていない。この複合高分子はしばしば集合的にリグノセルロースと呼ばれる。植物バイオマスを分解して生成される糖類は、発酵して化学品、樹脂、並びに石油の代替品としてのエタノールを含む燃料となる、豊富で経済的競争力のある発酵原料を提供することができると考えられる。
【0003】
米国におけるエタノールの商業生産は現在乾式製粉工場で行われており、トウモロコシ粒をエタノールに転換している。しかしトウモロコシ粒は高価で家畜餌等他の高価値な用途があり、また果糖を豊富に含むコーンシロップが含まれている(Wyman,ed. (1999) Handbook on Bioehtanol: Production,and Utilization. Taylor & Francis,Washington,D.C.,p.1)。少ない費用で商業的大規模生産が可能な、エタノール生産のための別の供給源が望まれていれる。
【0004】
廉価且つ豊富であり競合的市場のないトウモロコシ葉茎等、リグノセルロース質物質はエタノールの生産のために穀類よりも望ましいものであると考えられる。制限となる要因は糖重合体の複雑な組成にある。トウモロコシ粒の澱粉は高度に分枝した酵素で分解されやすい水溶性の重合体である。反対に、トウモロコシ葉茎等のリグノセルロース質物質を構成する炭水化物はこれよりも分解されにくい。これらの炭水化物は一般的に、植物細胞壁並びに木質組織の構造成分を形成するセルロース、ヘミセルロース及びグルカンを包含する複合高分子として存在する。澱粉並びにセルロースは共にグルコースの重合体である。
【0005】
リグノセルロース中の糖類を遊離させる従来の手法には多くの手順が含まれる。その手順の中で鍵となるは激しい条件での前処理である。現在の産業的前処理の目的は、真菌Trichoderma reesei の発酵に由来するセルラーゼ混合物等のセルロース加水分解酵素とセルロースとの接触性を向上させることにある。現在の前処理方法には、高温高圧下且つ強酸あるいは強塩基中で、トウモロコシ葉茎等のリグノセルロース質物質を部分加水分解する手順が含まれる。当該化学的前処理によってヘミセルロースあるいはリグノセルロースのリグニン成分、あるいはその両方が分解されてセルロースが露出するが、酢酸並びにフルフラール、ヒドロキシメチルフルフラール等の不要な副産物も生じる。続いて行う、酵素を用いた、あるいは同時糖化発酵(SSF)と呼ばれる共発酵処理によるセルロース分解を可能にするために、さらに手順を加えてこれらの副産物を除去しなければならない。
【0006】
化学的前処理に必要とされる激しい条件には高価な反応容器が必要であり、エネルギーを集約的に使用する。化学処理は既知のセルロース酵素に適合しない温度とpH(例えば12気圧160℃及び0.2%硫酸)で行われ、発酵の前に除去しなければならない化合物が生じることから、この手順はセルロース分解とは別の反応容器で行わねばならず、またセルロース分解の前に行わなくてはならない。つまり、よりセルロース分解工程に適合し、有害廃棄物を出さず、またより少ないエネルギーしか必要としない新しい方法が望まれていると思われる。さらに、酵素反応がセルロース分解に用いられる条件と同様の条件で行われることで、同時処理方法の開発がもたらされると考えられる。この同時処理方法においては、ヘミセルロース及びセルロースの分解を同じ反応容器で行う、もしくは現在の前処理工程をセルロース分解とその後の工程と分離しなければならない方法論に従って分離することをしない。加えて、毒性物質を生じることなくリグノセルロース中の糖類を遊離させる手順は、リグノセルロース質物質中に存在するタンパク質、アミノ酸、脂質等の栄養素へ利用可能性が増加するため、さらなる利益を提供することができる可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の理由からリグノセルロースを糖類に変換して発酵原料とするための、効率的な方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の概要
激しい前処理の必要がなく、効率性が向上するリグノセルロースを加水分解するための方法が提供される。これらの方法には、軽度あるいは中程度の条件でリグノセルロースを化学処理して処理済リグノセルロースを生成し、この処理済リグノセルロースを、リグノセルロースの一成分を加水分解することのできる一つ以上の酵素と接触させる手順が含まれる。この化学処理には、酵素処理と併用して糖類を遊離させる作用を持つ一つ以上の化学薬剤とリグノセルロースを接触させる手順を含む。
【0009】
また、リグノセルロース質物質を前処理する方法も提供され、これには軽度あるいは中程度の条件でリグノセルロース質物質を一つ以上の化学薬剤と接触させて処理済リグノセルロースを生成する手順から成る。一部の実施例においては、この処理済リグノセルロースをさらにリグノセルロースを加水分解できる一つ以上の酵素で処理することができる。
【0010】
また、リグノセルロース質物質から物質を遊離させる手法も含まれる。これらの手法は、軽度あるいは中程度の条件でリグノセルロース質物質を化学処理する手順から成る。一部の実施例では、化学処理に続いてリグノセルロースを加水分解することのできる一つ以上の酵素を加えることができる。本発明の方法によってリグノセルロース質物質を処理することによって、酵素並びに医薬品、機能性食品を分離することができる。一部の実施例では、リグノセルロース質物質は、遊離する物質を含有するよう工学処理されている。
【0011】
上記の手法で使用する化学薬剤には酸化剤、変性剤、界面活性剤、有機溶媒、塩基あるいはこれらから成るあらゆる組み合わせが含まれる。
【0012】
また、リグノセルロースを加水分解する手法で、リグノセルロースを酸化剤と接触させて処理済リグノセルロースを生成し、この処理済リグノセルロースを、リグノセルロースを加水分解することのできる一つ以上の酵素と接触させる手順から成るものが提供される。
【0013】
さらにリグノセルロースを加水分解する手法で、リグノセルロースを約9.0から約14.0のpHで塩基と接触させて処理済リグノセルロースを生成し、この処理済リグノセルロースを、リグノセルロースを加水分解することのできる一つ以上の酵素と接触させる手順から成るものも提供される。
【0014】
本発明の方法で使用される酵素はリグノセルロースのあらゆる成分と反応することが可能であり、これらにはセルラーゼ並びにキシラナーゼ、リグニナーゼ、アミラーゼ、グルクロニダーゼ、リパーゼ、プロテアーゼが含まれるがこれらに限定されない。酵素は化学処理前あるいは化学処理後、もしくは化学処理と同時に加えることができる。さら、酵素反応の前もしくは酵素反応と協調して行われる二つ以上の化学処理を含む手法と、これに加えて二つ以上の酵素処理を含む手法も提供される。複数回の化学処理並びに酵素添加が含まれ、任意の順序の任意の回数の処理から成る。あらゆる処理の前あるいは処理中もしくは処理後に、リグノセルロースに一つ以上の物理的処理を行うことができる、あるいは金属イオンもしくはオゾン、紫外線を接触させることができる。
【0015】
さらに本発明の方法は、一つ以上の発酵生物体を添加する手順を含むことができ、その結果一つ以上の発酵産物が生成される。当該産物には乳酸並びに燃料、有機酸、産業用酵素、医薬品、アミノ酸が含まれるがこれらに限定されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
詳細
本発明は、リグノセルロースの加水分解及びリグノセルロースからの糖類生成のための数種類の方法に向けられており、これらの方法は従来記述されている処理法あるいは前処理法と比べて、より経済性に優れより効率的で且つ毒性が低い。一手法では、軽度あるいは中程度の処理温度あるいは圧力、pH、もしくはこれらの組み合わせでリグノセルロースを化学処理して処理済リグノセルロースを生成し、この処理済リグノセルロースを、リグノセルロースを加水分解することのできる一つ以上の酵素と接触させる手順を含む。
【0017】
また、軽度あるいは中程度の条件下で一つ以上の化学薬剤と接触させる手順から成る、リグノセルロース質物質の前処理方法も提供される。この処理済リグノセルロース質物質はさらに、リグノセルロースを加水分解することのできる一つ以上の酵素による処理を受けることができる。
【0018】
さらに、リグノセルロース質物質中の物質を遊離させるための方法も提供され、これは軽度あるいは中程度の条件下でリグノセルロース質物質を一つ以上の化学薬剤と接触させて処理済リグノセルロース物質を生成する手順から成る。この処理済リグノセルロース物質はさらにリグノセルロースを加水分解することのできる一つ以上の酵素と接触させることができる。
【0019】
一部の実施例において植物材料は、リグノセルロースを加水分解できる一つ以上の酵素を発現するよう遺伝子工学的に加工された植物から成る。別の実施例では、植物材料を化学処理の前に、酵素の発現が可能な条件下で培養することができる。酵素の発現によって、化学処理の前にリグノセルロースを加水分解することもできる。さらに、これに引き続いて一つ以上の酵素処理を行うこともできる。植物材料から遊離することのでる物質には、酵素並びに医薬品、機能性食品が含まれるがこれらに限定されない。さらに植物材料は、これらの物質が発現するよう遺伝子工学的に加工されることも、加工されない場合もある。
【0020】
上記のいずれの手法においても、化学薬剤は酸化剤あるいは変性剤、界面活性剤、有機溶媒、塩基、もしくはこれらの組み合わせであることができる。
【0021】
加えて、あらゆる処理条件の下で一つ以上の酸化剤を接触させて処理済リグノセルロースを生成し、この処理済リグノセルロースを、リグノセルロースを加水分解することのできる一つ以上の酵素と接触させる手順を含む、リグノセルロースを加水分解するための方法が提供される。酸化剤は次亜塩素酸塩、次亜塩素酸、塩素、硝酸、過酸化水素、ペルオキシ酢酸、過硫酸塩、過炭酸塩、過マンガン塩、オスミウム酸、クロム酸、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、あるいは酸素ラジカルを生じさせることのできる化合物であることができる。
【0022】
さらに、リグノセルロースを約9.0から約14.0のpHで塩基と接触させて処理済リグノセルロースを生成し、この処理済リグノセルロースを、リグノセルロースを加水分解することのできる一つ以上の酵素と接触させる手順を含む、リグノセルロースを加水分解するための方法が提供される。この方法にはあらゆる範囲の温度あるいは圧力から成る処理条件が含まれる。本手法に加えて酸化剤を使用する手法には、軽度あるいは中程度の処理条件を取り入れることができると認知されている。
【0023】
酵素あるいは酵素群は、化学溶液の添加と同時に、あるいは添加前もしくは添加後に加えることができると認知されている。同時に添加する場合、化学薬剤あるいは化学薬剤の組み合わせは、この処理法で使用するために選択された酵素の作用を阻害しないものとなる。化学溶液で処理した後に酵素を加える場合、酵素を加える前に条件(温度並びにpH等)を変えることができる。一実施例では、酵素を加える前に、その酵素あるいは酵素群に最適となるようpHを調整する。別の実施例では、酵素を加える前に、その酵素あるいは酵素群に最適となるよう温度を調整する。引き続いてあるいは同時に酵素を添加する手順と併用して、あるいは併用せずに、複数回の化学処理を行うことが可能である。加えて、複数回酵素を添加することも含まれる。
【0024】
「処理済リグノセルロース」あるいは「処理済リグノセルロース質物質」あるいは「処理済材料」は「処理工程」あるいは「処理」の間に、ある種の化学処理あるいは物理的処理によって、少なくともその一部分が加水分解されたリグノセルロースと定義される。典型的には、一つ以上のポリマー成分が処理の間に加水分解され、そのために他の成分がその先の処理をより受けやすくなる。別の方法として、処理後により加水分解されやすくなるよう、処理工程によって加水分解することなくリグノセルロースの構造を改変することができる。糖類の一部あるいは全部を遊離させるよう、リグノセルロースを前もって処理しておくこともできる。
【0025】
「軽度の処理」あるいは「軽度の条件」によって、約20℃から約80℃の温度で2気圧未満、pHは約5.0から約8.0の間であることが意味される。「中程度の処理」あるいは「中程度の条件」によって、以下の条件の内の少なくとも一つが意味される。:約10℃から約90℃の温度、約2気圧以下、約4.0から約10.0の間のpH。処理が中程度の条件下で行われる場合、この3つのパラメーターのうち2つは中程度として揚げられた範囲を外れることが有りうる。例えば、温度が約10℃から約90℃である場合、pH並びに圧力は制限されない場合もある。pHが約4.0から約10.0の間である場合、温度及び圧力は制限されない場合もある。圧力が約2気圧である場合、pH並びに温度は制限されない場合もある。
【0026】
「化学薬剤」あるいは「化学溶液」によって、酸化剤、変性剤、界面活性剤、有機溶媒、塩基あるいはこれらから成るあらゆる組み合わせが意味される。「酸化剤」によって、分子の酸化レベルを上昇させることのできる物質が意味される。酸化剤は他の分子から電子を受け取り、その過程で還元されることによって作用する。酸化剤には過酸化水素並びに尿素過酸化水素塩、過酸化ベンゾイル、超酸化物類、超酸化カリウム、次亜塩素酸塩、次亜塩素酸、塩素、硝酸、ペルオキシ酸、ペルオキシ酢酸、過硫酸塩、過炭酸塩、過マグネシウム塩、オスミウム酸、クロム酸、ドデシルベンゼンスルホン酸塩が含まれるがこれらに限定されない。酸化剤には含過酸化物構造体に加え、酸素ラジカルを生成することのできる化合物が含まれる。「含過酸化物構造体」によって二価イオン−O−O−を含有する化合物が意味される。
【0027】
「変性剤」によって、タンパク質あるいは炭水化物、核酸の構造を崩壊させる化合物が意味される。変性剤には水素結合崩壊剤が含まれる。「水素結合崩壊剤(hydrogen bond−disrupting agents)」もしくは「水素結合解離剤(hydrogen bond disruptor)」によって、水素結合を解離させる、あるいは(且つ)水素結合の形成を抑制する、あるいは(且つ)解離後の再形成を抑制すると知られている薬剤あるいは薬剤群が意味される。水素結合崩壊剤には尿素、グアニジニウム、塩素等のカオトロピック剤並びに、N−メチルモルホリン‐N−オキシド等のアミン酸化物が含まれるがこれらに限定されない。
【0028】
「界面活性剤(detergent)」によって、ミセラを形成して油分を可溶化することのできる化合物が意味される。界面活性剤にはアニオン、カチオン、中性界面活性剤が含まれ、これにはノニデット(N)P40並びにドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、スルホベタイン、n−オクチルグルコシド、デオキシコール酸塩、トリトンX−100、ツイン20が含まれるがこれらに限定されない。「表面活性剤(surfactant)」はこの定義に含まれる。「表面活性剤」によって水の表面張力を低下させることのできる化合物が意味される。
【0029】
「有機溶媒」によって、含炭素化合物がその最大部分を構成する溶液が意味される。有機溶媒にはジメチルホルムアミド並びにジメチルスルホキシド、メタノールが含まれるがこれらに限定されない。
【0030】
「塩基」によって、電子もしくは水素イオンを供与する、あるいは陽子を受容する化学種が意味される。塩基には炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ナトリウム、水酸化アルミニウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、水酸化ルビジウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム、水酸化第二スズ、並びに水酸化物イオンが含まれるがこれらに限定されない。
【0031】
酵素添加あるいはさらなる化学処理の前に、処理済リグノセルロース中の化学薬剤及び化学薬剤群を除去するあるいは稀釈することもできる。この操作によって、酵素の活性もしくは引き続いて行う微生物の増殖に最適な状態とすることを助ける。別の方法として、より多量の一つ以上の酵素と接触させる前に、少量の一つ以上の酵素を処理済リグノセルロースに加えてインキュベートすることもできる。化学薬剤は、より多量の一つ以上の酵素を添加する前に除去するあるいは稀釈することができる。こうした除去あるいは稀釈は、当分野にて周知されているあらゆる方法によって行うことができ、これには洗浄並びに重力流動、圧力、濾過が含まれるがこれらに限定されない。処理済リグノセルロースから除去される化学薬剤あるいは化学薬剤群は引き続いて行う一つ以上のインキュベーションで再使用することもできる(この明細において「リサイクル薬剤」と定義される。)。
【0032】
さらに本手法は、全体をあるいは一部分を、一回あるいは複数回行うことができる。即ち、化学溶液もしくは個々の化学薬剤を用いて一回あるいは複数回の反応を遂行させ、次いで一つ以上の酵素処理反応を行うことができる。化学薬剤あるいは化学溶液は一回にまとめて加える、あるいは少量ずつ連続的に加えることができる。さらに、必要に応じて全手順を一回以上繰り返すこともできる。即ち、化学薬剤もしくは酵素を用いた処理を一回以上追加することが含まれる。
【0033】
この手法によって、加水分解された糖類等(加水分解物)の可溶性物質と不溶性物質とが生成される。その過程で、もしくは当該処理に続いて、例えばバッチ法あるいは連続法、フィードバッチ法によって、可溶性物質を含む液体を分離することができる。この可溶性物質から糖類を分離することができ、さらに濃縮あるいは精製することもできる。加えて、可溶性物質と残余固形物とを包含する処理済リグノセルロースを使用前に加工することができる。この可溶性物質もしくは不溶性物質を、例えば水あるいは発酵培養液を用いて分離するあるいは稀釈することが可能であり、あるいはその物質のpHを改変することができる。この分離もしくは稀釈は、当分野で周知されているあらゆる方法によって行うことができ、これには洗浄並びに重力流動、圧力、濾過が含まれるがこれらに限定されない。この物質は、例えばろ過によって、滅菌することもできる。
【0034】
また、本発明の方法と併用して、研磨並びに煮沸、凍結、製粉、真空浸透、その他の物理的処理を用いることができる。製粉等の物理的処理によって、バッチ反応器にてより高濃度のリグノセルロースを使用することができる。「より高濃度」によって、最大約20%もしくは最大約25%、最大約30%、最大約35%、最大約40%、最大約45%、最大約50%のリグノセルロースが意味される。化学処理及び(もしくは)物理処理は、本発明の処理方法に関して同時にあるいは順次行うことができる。リグノセルロースはまた、金属イオン並びに紫外線、オゾン、その他に接触させることができる。物質によっては、これらの処理によって水酸基の形成が誘導されて化学処理の効果が上昇する場合がある。本発明の方法はあらゆる適切な容器内で遂行することができ、これにはバットあるいは市販の容器、バイオリアクター、バッチ反応器、発酵タンク・容器が含まれる。本発明の処理過程において、反応混合物を撹拌混合することもできる。
【0035】
本発明の方法によって、バイオマスの単糖類並びにオリゴサッカライドへの変換効率が向上する。バイオマスが効率的に変換されることによって、後に有用な発酵ベース生成物に転換することができる糖類生成の費用が減少することとなる。「発酵ベース生成物」によって、化学変換あるいは発酵によって産生された生成物が意味される。当該生成物には特殊化学薬品並びに化学原料、樹脂、溶剤、燃料が含まれるがこれらに限定されない。本発明の方法によって作ることのできる生成品の詳細には、生物燃料(エタノールを含む。)、乳酸、樹脂、特殊化学品、クエン酸並びにコハク酸、マレイン酸を含む有機酸、溶剤、動物飼料補助剤、医薬品、ビタミン、リジン並びにメチオニン、トリプトファン、スレオニン、アスパラギン酸等のアミノ酸、プロテアーゼ並びにセルラーゼ、アミラーゼ、グルカナーゼ、ラクターゼ、リパーゼ、リアーゼ、酸化還元酵素、転移酵素等の産業用酵素、化学原料が含まれるがこれらに限定されない。また本発明の方法は、微生物発酵による発酵のための原料を生成するのに有用である。一実施例では、本手法はさらに一回以上の発酵微生物を添加する手順から成る。「発酵微生物」によって、酵母を含め、細菌並びに真菌等発酵能力のある生物体が意味される。当該原料は栄養価が付加され、遊離糖類が提供する栄養価を上回る。
【0036】
また本発明の方法は、リグノセルロース質物質を加工するための手法の開発あるいは改良に有用である。本方法は粘度等含リグノセルロース物質の取り扱い特性の改変あるいは改良に加えて、原料の容積並びに粒子サイズを減少させるのに有用であり、これは糖類を遊離する、あるいは原料として利用する、もしくはさらに別の方法で使用するためのリグノセルロースを調製するのに役立つ。さらに本発明の方法は、廃棄物の容積を減らす目的で使用することができ、リグノセルロース性廃棄物が発生する産業工程から生じる廃棄物の性状を改良する目的で使用することができる。特に本方法は水分含量を減らす、且つ(あるいは)乾燥度あるいは栄養価、組成を改良するのに有用となる。
【0037】
一実施例では、化学処理によってリグノセルロース質原料に存在する生物性汚染物の数が減少する。これは原料を滅菌した結果である可能性がある(実験の項の例9を参照。)。
【0038】
処理条件
酵素は、バイオリアクターを用いてバイオマスを変換させるために一般に利用されている極端な高温あるいは酸処理を含まない、軽度あるいは中程度の条件下で基質と反応させる。例えば酵素は低度から中程度のイオン強度且つpHが中性である緩衝液中で、約20℃から約80℃でインキュベートされ、望ましくは約30℃から約65℃、より望ましくは約37℃から約45℃、さらに望ましくは約37℃、約38℃、約39℃、約40℃、約41℃、約42℃、約43℃、約44℃、約45℃、約46℃、約47℃、約48℃、約49℃、約50℃、約51℃、約52℃、約53℃、約54℃、約55℃、約56℃、約57℃、約58℃、約59℃、約60℃、約61℃、約62℃、約63℃、約64℃、約65℃でインキュベートすることができる。驚くべきことに、この化学処理によって十分な量の糖類を遊離あるいは解離させることができる。「十分な」量によって、利用可能な糖類が少なくとも約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、及びそれ以上であることが意味される。
【0039】
化学処理の温度は、約10℃から約100℃もしくはそれ以上、あるいは約10℃から約90℃、約20℃から約80℃、約30℃から約70℃、約40℃から約60℃、約37℃から約50℃、望ましくは約37℃から約100℃、より望ましくは約50℃から約90℃、最も望ましいのは約90℃未満あるいは約80℃未満、あるいは約80℃の範囲であることができる。本発明の方法は多様な温度で実施することができるが、使用する酵素に最適な温度、あるいは使用する酵素に最適と予測される温度で処理を行うことが望ましい。最適温度に関するデータが不足している場合は、最初50℃で処理を行い、次により高い温度もしくはより低い温度で処理を行うこともできる。この試験の分析結果の結果を比較することで、試験された酵素に最適となるよう方法を改良することが可能となる。処理混合物のpHは約2.0から約14.0までの範囲となることができるが、薬剤が酸化剤あるいは変性剤、界面活性剤、有機溶媒で有る場合、望ましいpHは約3.0から約7.0であり、より望ましくは約3.0から約6.0であり、さらに望ましくは約3.0あるいは約5.0、約3.5、約3.0、約4.0、約4.5、約5.0である。薬剤が塩基である場合、望ましいpHは約9.0から約14.0であり、より望ましくは約pH10.0から約pH13.0、さらに望ましくは約pH11.0から約pH12.5、最も望ましいのは約pH12.0である。ここでもpHは酵素活性が最大となるように調整し、酵素あるいは酵素混合物を添加する際に、あるいは酵素を添加する前にpHを調整することができる。
【0040】
薬剤の最終濃度は約0.1%から約10%の範囲となることができ、望ましくは約0.3%から約8%、より望ましくは約0.3%から約5.0%、あるいは約0.4%から約3.0%であり、さらに望ましくは約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1.0%である。リグノセルロースの濃度は約1%から約60%となることができ、望ましくは約10%から約40%、より望ましくは約20%、約25%、約30%、約35%である。少なくとも約8時間から少なくとも約48時間等、処理反応は数分から数時間となることが有り得、より望ましくは少なくとも約12時間から少なくとも約36時間、少なくとも約16時間から少なくとも約24時間、少なくとも約20時間、より望ましくは少なくとも約10時間、最も望ましいのは少なくとも約10分、少なくとも約20分、少なくとも約30分、少なくとも約1時間、少なくとも約1.5時間、少なくとも約2.0時間、少なくとも約3時間である。反応は約0気圧から約2気圧で起こることが有り得る。最適な反応条件(化学薬剤の最適量並びに基質量、インキュベーションの最適時間、最適温度、最適温度・pH・緩衝液・圧力)を決定するために、分析要素を付加する前後の様々な時点で混合物の一定分割量を取り出し、参考のためこの明細に添付してあるU.S. Application No. 60/432,750に記載されている変法DNS分析法によって、糖類の遊離を測定することができる。
【0041】
一実施例において本発明の方法には、約0℃から約100℃の温度且つ約2気圧未満、約2.0から約14.0のpHでリグノセルロースを化学処理する手順が含まれる。別の実施例では、これらの条件の内少なくとも一つはリグノセルロースを加水分解するのに十分な条件である。さらに他の実施例においては、これらの条件の内少なくとも二つはリグノセルロースを加水分解するのに十分な条件である。
【0042】
本発明の一側面においては、リグノセルロース質物質あるいは植物バイオマスは、エタノールもしくは他の有用な製品を生産するために、分解されて単糖類並びにオリゴサッカライドに変換される。バイオマスから遊離された糖類は転換されて有用な発酵産物となることができる。有用な発酵産物にはアミノ酸あるいはビタミン、医薬品、動物飼料補助剤、特殊化学品、化学原料、樹脂もしくは他の有機ポリマー、乳酸、燃料エタノールを含むエタノール等が含まれるがこれらに限定されない。
【0043】
従来の方法とは異なり、炭水化物重合体とリグニンとの複合混合物、あるいはリグノセルロースそのものを、バイオマス変換酵素が加水分解する基質として使用することができる。これらの複合体基質中の糖類及びオリゴサッカライドの遊離状態を測定するための、特別な分析法が開発されている。このアッセイでは、トウモロコシ葉茎並びにおが屑、木片屑その他を含む、あらゆるリグノセルロース物質複合体を用いることができる。本アッセイでは、トウモロコシ茎葉等のリグノセルロース質物質を、様々な回数、酵素と共にインキュベートし、遊離された還元糖を、U.S. Provisional Application No. 60/432,750に記載されているジニトロサリシリック酸アッセイ法を用いて測定する。還元糖を検出することのできるもの等、様々なアッセイ法をさらに用いて、化学処理の結果可溶化された単糖類あるいはオリゴサッカライドを定量するが可能である。例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法によって、単糖類及びオリゴ糖類を定性的且つ定量的に分析することができる。
【0044】
本発明の方法はまた、発酵用の原料を生成するのに有用である。当該原料はタンパク質並びにアミノ酸、リグニン(炭素源)、脂質、ミネラル(鉄を含む)が可溶化されているため、遊離糖類によって提供される栄養価を超える栄養価を有する。リグノセルロース質物質から原料を生成するための他の方法と比較して、本手法は発酵前に可溶性成分の除去をほとんどあるいは全く必要としない。本方法で生成された原料を、酵母を含め、細菌並びに真菌等の微生物の発酵に使用することもできる。
【0045】
また、本発明の方法はリグノセルロース物質を加工するための方法を開発するあるいは改良するのに有用である。即ち、これらの方法によって構成成分が改変されたリグノセルロースストリーム並びに粘度の低いリグノセルロースストリーム、容積の小さいリグノセルロースストリーム、さらに水分量もしくは保水量の少ないリグノセルロースストリームを作ることができる。さらに本手法は、農業廃棄物など加水分解されにくいリグノセルロースストリーム中の糖類の回収に適している。この回収によって糖類は原料供給ストリームに再統合され、廃棄物ストリームはさらに減少すると考えられる。加えて、本手法によって農業廃棄物ストリームの還元糖含量が減少すると考えられ、反芻動物の食事に取り入れる繊維状成分としてより適切なものとなると思われる。
【0046】
酸化剤
酸化剤の相対的強度(例えばhttp://hyperphysics.phy−astr.gsu.edu/hbase/chemical/c1を参照する。)は、標準電極電位から推定することができる(例えばhttp://hyperphysics.phy−astr.gsu.edu/hbase/chenical/c1を参照する。)最も強い酸化剤が標準電極表に示されている(例えばhttp://hyperphysics.phy−astr.gsu.edu/hbase/tables/c1を参照する。)。酸化剤の表の一部には、臭素酸塩並びに塩酸、亜塩素酸、塩素化イソシアヌール酸塩、クロム酸塩、二クロム酸塩、フッ素・塩素・臭素を含むハロゲン、次亜塩素酸塩、次亜塩素酸、硝酸、硝酸塩、亜硝酸塩、酸素、過ホウ酸塩、過塩酸塩、過塩酸、過ヨウ素酸塩、過マンガン酸塩、過酸化水素・ヒドロペルオキシド・ケトン過酸化物・有機過酸化物・無機過酸化物を含む過酸化物、ペルオキソ酸、過硫酸塩が含まれる。
【0047】
製紙工業で使用される酸化・漂白剤には、塩素・塩素化化合物、塩素、塩化ナトリウム、次亜塩素酸塩、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、その他の次亜塩素酸塩、クロロイドシアヌレート、様々な塩素化合物、1,3‐ジクロロ‐5,5‐ジメチルヒダントイン(DCDMH)、酸素・酸化化合物、過酸化水素、オゾン、過ホウ酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、有機過酸化物、過酸化ベンゼン、他の有機過酸化物、無機過酸化物、過酸化ナトリウム、過酸化カルシウム、過酸化マグネシウム、過炭酸ナトリウム、その他の酸化化物、過酢酸及び過酸化1硫酸、金属酸素酸、硝酸及び亜硝酸が含まれる。
【0048】
過酸化水素
過酸化水素(H)は、過酸化イオン(O2−)のプロトン付加形態である。これは酸化工程によって合成され、最大70%の濃度の水稀釈物として市販の物を購入することができる。さらに、過酸化水素は酸素の1電子減少形態(O)から自然発生的に、あるいは酵素スーパーオキシドジスムターゼを使用して合成することができる。
【0049】
過酸化水素は強力な酸化剤である。適切な刺激物がある状態でHが還元されて水酸基(HO)となることができることは当分野において周知のことである。こうした刺激物には金属陽イオン(Fe2+等)並びに紫外線、オゾンが含まれる。水酸基は非常に強力な酸化剤である。
【0050】
リグノセルロースを加水分解することのできる酵素のサイズは大きく、植物の細胞壁を通過することができない。一方過酸化水素は通過できるほど小さい。自然環境で過酸化水素(並びに水酸基)は、過酸化水素処理後に観察される植物バイオマスの分解に寄与している可能性もある(例えばXu and Goodell (2001) J. Biotech. 87:43−57; Green and Highley (1997) Int. Bioceterioration Biodegredation 39: 113−124を参照する。)。過酸化水素が関係する他のリグノセルロース処理はアルカリ性あるいは高温あるいはその両方の条件下で行われている(例えばKim et al. (1996) Appl. Biochem. Biotech. 57/58:147−156; Kim et al. (2001) Appl. Biochem. Biotech. 91−93:81−94; Doner et al. (2001); Leathers et al. (1996) Appl. Biochem. Biotech. 59:334−347を参照する。)
過酸化水素に加えて、様々な化学現象を通じて他の化合物が水酸基を生じさせることができることは一般に周知されている。一例は次亜塩素酸(HOCl)であり、これはスーパーオキシド基(O)あるいは鉄(II)イオン(Fe2+)等の電子供与体と反応することによって水酸基を作ることができる。
【0051】
水酸基は酸化力特性を持つ酸素ラジカル化合物の一例である。酸素ラジカルを持ち同様の特性を有する他の化合物は当分野において周知されている。これらの化合物にはこのスーパーオキシド基(O)、一重項酸素()、一酸化窒素(NO)、ペルオキシル基類(ROO)、アルコキシル基類(LO)が含まれる。これらの化合物の内一つ以上は、本発明の工程に利用できると考えられる。
【0052】
酵素命名と適用
IUBMB(国際生化学・分子生物学連合)が推奨する命名法が、増補1(1993)、増補2(1994)増補3(1995)、増補4(1997)、増補5(各々Eur. J. Biochem. (1994) 223:1−5並びにEur. J. Biochem. (1995) 232:1−6; Eur. J. Biochem. (1996) 237:1−5; Eur. J. Biochem. (1997) 250:1−6; Eur. J. Biochem. (1999) 264:610−650)と供に、Enzyme Nomenclature 1992[Academic Press,San Diego,California,ISBN 0−12−227164−5(ハードカバー)、0−12−227165−3(ペーパーバック)]にて公開されている。IUBMBが推奨する分類法は、当分野において認知され追随されている。一般的には、当分野において酵素はIUBMB酵素分類法あるいはECナンバーで照会される。グループごとに掲載されている酵素は頻繁に更新され、IUBMBはこれを書籍並びにインターネットで公開している。
【0053】
IUBMB分類法に基づく酵素命名に関する別の資料はENZYMEデータベースにおいて見ることができる。ENZYMEは酵素の命名に関係する情報の集積場となっている。基本的に国際生化学・分子生物学連合(IUBMB)の命名委員会による推奨に基づいており、分類された各種酵素にEC(酵素委員会; Enzyme Commission)ナンバーが付けられ、記載されている(Bairoch (2000) Nucleic Acids Res 28:304−305)。ENZYMEデータベースには以下の入力項目について記載されている。:ECナンバー、推奨名称、別名(存在する場合)、触媒活性、補酵素(存在する場合)、その酵素に対応するSWISS−PROTタンパク質シーケンスへのポインター(存在する場合)、その酵素の欠損に関係するヒト疾患についてのポインター(存在する場合)。
【0054】
「セルラーゼ」には、セルロースあるいはセルロース分解物からできる生成物を基質として認識して加水分解することのできる内部加水分解酵素と末端加水分解酵素の双方が含まれる。セルラーゼにはエンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、グルコシダーゼから成る混合物、あるいはこれらの酵素の内の任意の一つを含み、他の活性を合わせ持つ場合もある。セルロース加水分解活性を示す微生物は異なる基質特異性を持つ酵素類を大量に産生するものが多い。このため、実際には数種類の酵素がその活性に寄与している場合でも、セルロースを分解すると同定された株はセルラーゼを持つと記載されることがある。例えば、市販されている製剤である「セルラーゼ」は、エンドグルカナーゼ並びにエキソグルカナーゼ、グルコシダーゼ活性等いくつかの酵素の混合物であることが多い。
【0055】
このように、「セルラーゼ」には当該酵素の混合物が含まれ、さらにセルロースを加水分解することのできる市販製剤に加え、セルロース加水分解活性を呈するもしくはセロトリオース、セロバイオース等のセルロース分解物に作用する培養液上清あるいは細胞抽出液が含むまれる。
【0056】
「エンドグルカナーゼ」あるいは「1,4−β−D−グルカン4−グルカノヒドロラーゼ」、「β−1,4エンドセルラーゼ」、「エンドセルラーゼ」、「セルラーゼ」EC3.2.1.4.には、β−1,4結合によって結合したグルコース重合体を切断する酵素が含まれる。これらの酵素が作用する基質にはセルロース並びに、カルボキシメチルセルロース、RBBセルロース等の修飾セルロースが含まれる。
【0057】
「セロビオヒドロラーゼ」あるいは「1,4−β−D−グルカンセロビオヒドロラーゼ」、「セルロース1,4−β−セロビオシダーゼ」、「セロビオシダーゼ」には、セルロース並びにセロテトラオースの1,4−β−D−グルコシド結合を加水分解し、高分子鎖の非還元末端からセロビオースを遊離させる酵素が含まれる。グループEC3.2.1.91の酵素にこれらの酵素が含まれる。
【0058】
「β−グルコシダーゼ」あるいは「グルコシダーゼ」、「β−D−グルコシドグルコヒドロラーゼ」「セロビアーゼ」EC3.2.1.21には、触媒作用による産生物としてグルコース分子を遊離させる酵素が含まれる。これらの酵素は、セロビオース(β−1.4結合グルコース二量体)あるいはセロトリオース(β−1.4結合グルコース三量体)等のグルコース重合体を基質として認識する。典型的には、これらは非還元β−D−グルコース末端を加水分解し、β−D−グルコースを遊離させる。
【0059】
表1 セルラーゼには以下の種類の酵素が含まれるが、これらに限定されない。
【0060】
【表1】

「キシラナーゼ」には、キシランあるいはキシラン分解生成物を基質として認識することのできる、末端加水分解酵素と内部加水分解酵素の双方が含まれる。ヘテロキシランがヘミセルロースの主要成分となっている単子葉植物では、エンド−1,4−ベータ−キシラナーゼ(EC3.2.1.8)とベータ−D−キシロシダーゼ(EC3.2.1.37)を組み合わせて使用してキシランをキシロースに分解する場合がある。また別の脱分枝酵素は、キシラン構造体中の分枝部分に存在する他の糖成分(アラビノース、ガラクトース、マンノース)を加水分解することができる。また別の酵素はヘミセルロース性糖類(特にアラビノース)とリグニンとの間に形成される結合を加水分解することができる。
【0061】
「エンドキシラナーゼ」あるいは「1,4−β−エンドキシラナーゼ」、「1,4−β−D−キシランキシラノヒドロラーゼ」(EC3.2.1.8)には、β−1,4−結合によって結合されたキシロース重合体を加水分解する酵素が含まれる。エンドキシラナーゼを使用してリグノセルロースのヘミセルロース成分に加えて精製キシラン物質も加水分解することができる。
【0062】
「エキソキシラナーゼ」あるいは「β−キシロシダーゼ」、「キシラン1,4−β−キシロシダーゼ」、「1,4−β−D−キシランキシロヒドロラーゼ」、「キシロビアーゼ」「エキソ−1,4−β−キシロシダーゼ」(EC3.2.1.37)には、キシラン重合体の非還元末端から連続的にD−キシロース基を加水分解する酵素が含まれる。
【0063】
「アラビノキシラナーゼ」あるいは「グルクロノアラビノキシランエンド1,4−β−キシラナーゼ」、「フェラクサンエンドキシラナーゼ」には、一部のキシラン物質中のβ−1,4キシロシル結合を加水分解する酵素が含まれる。
【0064】
表2 キシラナーゼには以下の種類の酵素が含まれるが、これらに限定されない。
【0065】
【表2】

「リグニナーゼ」には、リグニン重合体構造を加水分解する、あるいは分解することができる酵素が含まれる。リグニンを分解することのできる酵素には、リグニンペルオキシダーゼ並びにマンガンペルオキシダーゼ、ラッカーゼ、フェルロイルエステラーゼ、及び当分野において、リグニン重合体を脱重合する、もしくは分解することが判明したと記載されているその他酵素が含まれる。また、ヘミセルロース性糖類(特にアラビノース)とリグニンとの間の結合を加水分解することのできる酵素も含まれる。
【0066】
表3 リグニナーゼには以下の種類の酵素が含まれるが、これらに限定されない。
【0067】
【表3】

「アミラーゼ」あるいは「アルファグルコシダーゼ」には、オリゴサッカライド並びにポリサッカライド中の1,4−アルファ‐グルコシド結合を加水分解する酵素が含まれる。以下のECリストに基づき多数のアミラーゼについてその特性が記載されている。
【0068】
表4 アミラーゼには以下の分類の酵素が含まれるが、これらに限定されない。
【0069】
【表4】

「プロテアーゼ」にはペプチド結合を加水分解する酵素(ペプチダーゼ)が含まれ、さらにペプチドと糖類等(グリコペプチダーゼ)他の部分との間の結合を加水分解する酵素が含まれる。多数のプロテアーゼの特性がEC3.4に従って記載されており、参考のためこれを添付する。プロテアーゼの具体的な種類には ペプシン、パパイン等のシステインプロテアーゼ、キモトリプシンを含むセリンプロテアーゼ、カルボキシペプチダーゼ、金属末端ペプチダーゼが含まれる。SWISS−PROTタンパク質情報データベース(スイス・ジュネーブのSwiss Institute of Bioinformatics (SIB)及び英国HinxtonのEuropean Bioinformatics Institute (EBI)によって運営されている。)はプロテアーゼあるいはペプチダーゼを以下の種類に分類している。
セリンタイプペプチダーゼ
族 代表的な酵素
S1 キモトリプシン、トリプシン
S2 アルファ−リチックエンドペプチダーゼ
S2 グルタミルエンドペプチダーゼ(V8)(Staphylococcus)
S2 プロテアーゼDo(htrA)(Escherichia)
S3 トガビリン
S5 リシルエンドペプチダーゼ
S6 IgA特異的セリンエンドペプチダーゼ
S7 フラビビリン
S29 C型肝炎ウイルスNS3エンドペプチダーゼ
S30 タバコエッチウイルス35kDaエンドペプチダーゼ
S31 ウシ下痢ウイルスp80エンドペプチダーゼ
S32 ウマ動脈炎ウイルス推定エンドペプチダーゼ
S35 リンゴ幹溝形成ウイルスセリンエンドペプチダーゼ
S43 ポリンD2
S45 ペニシリンアミドヒドロラーゼ
S8 サブチラーゼ
S8 サブチリシン
S8 ケクスシン
S8 トリペプチジルペプチダーゼII
S53 スードモナペプシン
S9 プロリルオリゴペプチダーゼ
S9 ジペプチジルペプチダーゼIV
S9 アシルアミノアシルペプチダーゼ
S10 カルボキシペプチダーゼC
S15 ラクトコッカスX−Proジペプチジルペプチダーゼ
S28 リソゾーマルプロXカルボキシペプチダーゼ
S33 プロリルアミノペプチダーゼ
S11 D−Ala−D−Alaペプチダーゼ族1(E.coli dacA)
S12 D−Ala−D−Alaペプチダーゼ族2(Strept.R61)
S13 D−Ala−D−Alaペプチダーゼ族3(E.coli dacB)
S24 LexAリプレッサー
S26 細菌性リーダーペプチダーゼI
S27 真核生物シグナルペプチダーゼ
S21 アセンブリン(ヘルペスウイルスペプチダーゼ)
S14 ClpPエンドペプチダーゼ(Clp)
S49 エンドペプチダーゼIV(sppA)(E.coli)
S41 Tail特異的プロテアーゼ(prc)(E.coli)
S51 ジペプチダーゼE(E.coli)
S16 エンドペプチダーゼLa(Lon)
S19 Coccidiodesエンドペプチダーゼ
S54 ロンボイド(Romboid)

スレオニンタイプペプチダーゼ
T1 多触媒性エンドペプチダーゼ(プロテオソーム)

システインタイプペプチダーゼ
族 代表的な酵素
C1 パパイン
C2 カルパイン
C10 ストレプトパイン
C3 ピコルナイン
C4 ポチウイルスNI−a(49 kDa)エンドペプチダーゼ
C5 アデノウイルスエンドペプチダーゼ
C18 C型肝炎ウイルスエンドペプチダーゼ2
C24 RHDV/FCプロテアーゼP3C
C6 ポチウイルスヘルパーコンポーネント(HC)プロテアーゼ
C7 クリ胴枯れ病ウイルスp29エンドペプチダーゼ
C8 クリ胴枯れ病ウイルスp48エンドペプチダーゼ
C9 トガウイルスnsP2エンドペプチダーゼ
C11 クロストリプシン
C12 ユビキチンC末端ヒドロラーゼ族1
C13 ヘモグロビナーゼ
C14 カスパーゼ(ICE)
C15 ピログルタミルペプチダーゼI
C16 マウス肝炎ウイルスエンドペプチダーゼ
C19 ユビキチンC末端ヒドロラーゼ族2
C21 カブ黄斑モザイクウイルスエンドペプチダーゼ
C25 ギンギパインR
C26 ガンマグルタミルヒドロラーゼ
C37 サウサンプトンウイルスペプチダーゼ
C40 ジペプチジルペプチダーゼVI(Bacillus)
C48 SUMOプロテアーゼ
C52 CAAXプレニルプロテアーゼ2

アスパラギン酸タイプペプチダーゼ
族 代表的な酵素
A1 ペプシン
A2 レトロペプシン
A3 カリフラワーモザイクウイルスペプチダーゼ
A9 スプマレトロウイルスエンドペプチダーゼ
A11 Drosophilaトランスポゾンコピアエンドペプチダーゼ
A6 ノダウイルスエンドペプチダーゼ
A8 細菌性リーダーペプチダーゼII
A24 タイプIVプレピリンリーダーペプチダーゼ
A26 オンプチン(Omptin)
A4 サイタリドペプシン(Scytalidopepsin)
A5 サーモプシン

金属ペプチダーゼ
族 代表的な酵素
M1 膜アラニンアミノペプチダーゼ
M2 ペプチジルジペプチダーゼA
M3 チメットオリゴペプチダーゼ
M4 サーモリシン
M5 マイコリシン
M6 免疫阻害因子A(Bacillus)
M7 Streptomyces小型中性プロテアーゼ
M8 リーシュマノリシン(Leishmanolysin)
M9 細菌性コラゲナーゼ
M10 マトリキシン
M10 セラリシン
M10 フラジリシン(Fragilysin)
M11 オートリシン(Chlamydomonas)
M12 アスタシン
M12 レプロリシン
M13 ネプリリシン
M26 IgA特異的金属エンドペプチダーゼ
M27 テントキシシリン(Tentoxilysin)
M30 Staphylococcus中性プロテアーゼ
M32 カルボキシペプチダーゼTaq
M34 炭素菌致死因子
M35 デューテロリシン
M36 Aspergillusエラスチン溶解金属エンドペプチダーゼ
M37 リソスタフィン
M41 細胞分裂タンパク質ftsH(E.coli)
M46 妊娠関連プラズマタンパク質A
M48 CAAXプレニルプロテアーゼ
M49 ジペプチジルペプチダーゼIII

その他モチーフHEXXHを持たないもの
M14 カルボキシペプチダーゼA
M14 カルボキシペプチダーゼH
M15 亜鉛D−Ala−D−Alaカルボキシペプチダーゼ
M45 Enterococcus D−Ala−D−Alaジペプチダーゼ
M16 ピトリリシン
M16 ミトコンドリアプロセッシングペプチダーゼ
M44 ワクシニアウイルス型金属エンドペプチダーゼ
M17 ロイシンアミノペプチダーゼ
M24 1型メチオニルアミノペプチダーゼ
M24 X−Proジペプチダーゼ
M24 2型メチオニルアミノペプチダーゼ
M18 酵母アミノペプチダーゼI
M20 グルタミン酸カルボキシペプチダーゼ
M20 Gly−Xカルボキシペプチダーゼ
M25 X−Hisジペプチダーゼ
M28 Vibroロイシンアミノペプチダーゼ
M28 アミノペプチダーゼY
M28 アミノペプチダーゼiap(E.coli)
M40 サルホロバスカルボキシペプチダーゼ
M42 グルタミルアミノペプチダーゼ(Lactococcus)
M38 E.coliベータアスパルチルペプチダーゼ
M22 O−シアログリコプロテインエンドペプチダーゼ
M52 加水分解酵素突然変異ペプチド
M50 SREBPサイト2プロテアーゼ
M50 胞子形成因子IVB(B.subtilis)
M19 膜ジペプチダーゼ
M23 ベータ溶解エンドペプチダーゼ
M29 好熱性細菌アミノペプチダーゼ

触媒機構が不明のペプチダーゼ
U3 胞子エンドペプチダーゼgpr(Bacillus)
U4 胞子形成シグマE因子プロセッシングペプチダーゼ(Bacillus)
U6 ムレインエンドペプチダーゼ(mepA)(E.coli)
U8 バクテリオファージムレインエンドペプチダーゼ
U9 プロヘッドエンドペプチダーゼ(T4ファージ)
U22 Drosophilaトランスポゾン297エンドペプチダーゼ
U24 トウモロコシトランスポゾンbs1エンドペプチダーゼ
U26 Enterococcus D−Ala−D−Alaカルボキシペプチダーゼ
U29 脳脊髄炎ウイルスエンドペプチダーゼ2A
U30 ツユクサ黄斑ウイルスプロテイナーゼ
U31 ヒトコロナウイルスプロテアーゼ
U32 ポルフィロモナスコラゲナーゼ
U33 イネtungro桿状ウイルスエンドペプチダーゼ
U34 ラクトコッカスジペプチダーゼA
「リパーゼ」には、ホスホグリセリド(phospoglyceride)、リポタンパク質、ジアシルグリセロール、その他を含む、脂質並びに脂肪酸、アシルグリセライドを加水分解する酵素が含まれる。植物では、脂質は水分減少及び病原菌感染を制限するための構造的成分として利用されている。こうした脂質には、脂肪酸から派生したワックスに加えクチン並びにスベリンが含まれる。ECリストに従って、多数のリパーゼの特性が記載されている。
【0070】
表5 リパーゼには以下の種類の酵素が含まれるが、これらに限定されない。
【0071】
【表5】


「グルクロニダーゼ」にはベータグルクロニシドを加水分解してアルコールを生成する反応を触媒する酵素が含まれる。以下のECリストに従って多数のグルクロニダーの特性が記載されている。
【0072】
表6 グルクロニダーゼには以下の種類の酵素が含まれるが、これらに限定されない。
【0073】
【表6】

酵素組成
「リグノセルロースを加水分解することのできる一つ以上の酵素」あるいは「一つ以上の酵素」とは、「処理反応」後にバイオマス中の糖類の遊離を増進するあるいは上昇させるあらゆる酵素もしくは酵素混合物と定義される。これには、反応の際にバイオマスに接触させると次の酵素の活性を上昇させる酵素を含むことができる。「酵素」を用いた処理を「酵素処理」と呼ぶ。関係する活性を持つ酵素には、セルラーゼ並びにキシラナーゼ、リグニナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、グルクロニダーゼが含まれるがこれらに限定されない。これらの酵素の内多数のものはEC3.2.1族の典型的酵素であり、即ち、この族内の他の酵素は本発明に利用できる可能性がある。2つ以上の酵素を組み合わせて「酵素混合物」を作り、処理の過程においてリグノセルロースを加水分解することもできる。酵素混合物は以下から入手した酵素から構成することができる。(1)商業的供給者、(2)酵素を発現するクローニングした遺伝子、(3)原材料自体を含むブロスに加え、半固相あるいは固相培地由来のブロスを含めた、ブロス複合物(例えば培地中で微生物株が増殖してできたもので、その株は倍地中にタンパク質並びに酵素を分泌している。)。(4)(3)と同様に増殖した微生物株の細胞溶解物、(5)リグノセルロースを加水分解することのできる酵素を発現する植物材料。
【0074】
あらゆる組み合わせの酵素を使用することができると認知されている。酵素は単独であるいは、少なくともセルラーゼ、少なくともキシラナーゼ、少なくともリグニナーゼ、少なくともアミラーゼ、少なくともプロテアーゼ、少なくてもリパーゼ、少なくともグルクロニダーゼ、少なくともセルラーゼ及びキシラナーゼ、少なくともセルラーゼ及びリグニナーゼ、少なくともセルラーゼ及びアミラーゼ、少なくともセルラーゼ及びプロテアーゼ、少なくともセルラーゼ及びリパーゼ、少なくともセルラーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともキシラナーゼ及びリグニナーゼ、少なくともキシラナーゼ及びアミラーゼ、少なくともキシラナーゼ及びプロテアーゼ、少なくともキシラナーゼ及びリパーゼ、少なくともキシラナーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともリグニナーゼ及びアミラーゼ、少なくともリグニナーゼ及びプロテアーゼ、少なくともリグニナーゼ及びリパーゼ、少なくともリグニナーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともアミラーゼ及びプロテアーゼ、少なくともアミラーゼ及びリパーゼ、少なくともアミラーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともプロテアーゼ及びリパーゼ、少なくともプロテアーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともリパーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともセルラーゼ及びキシラーゼ及びリグニナーゼ、少なくともキシラナーゼ及びリグニナーゼ及びアミラーゼ、少なくともリグニナーゼ及びアミラーゼ及びプロテアーゼ、少なくともアミラーゼ及びプロテアーゼ及びリパーゼ、少なくともプロテアーゼ及びリパーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともセルラーゼ及びキシラナーゼ及びアミラーゼ、少なくともセルラーゼ及びキシラナーゼ及びプロテアーゼ、少なくともセルラーゼ及びキシラナーゼ及びリパーゼ、少なくともセルラーゼ及びキシラナーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともセルラーゼ及びリグニナーゼ及びアミラーゼ、少なくともセルラーゼ及びリグニナーゼ及びプロテアーゼ、少なくともセルラーゼ及びリグニナーゼ及びリパーゼ、少なくともセルラーゼ及びリグニナーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともセルラーゼ及びアミラーゼ及びプロテアーゼ、少なくともセルラーゼ及びアミラーゼ及びリパーゼ、少なくともセルラーゼ及びアミラーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともセルラーゼ及びプロテアーゼ及びリパーゼ、少なくともセルラーゼ及びプロテアーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともセルラーゼ及びリパーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともセルラーゼ及びキシラナーゼ及びリグニナーゼ及びアミラーゼ、少なくともキシラナーゼ及びリグニナーゼ及びアミラーゼ及びプロテアーゼ、少なくともリグニナーゼ及びアミラーゼ及びプロテアーゼ及びリパーゼ、少なくともアミラーゼ及びプロテアーゼ及びリパーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともセルラーゼ及びキシラナーゼ及びリグニナーゼ及びプロテアーゼ、少なくともセルラーゼ及びキシラナーゼ及びリグニナーゼ及びリパーゼ、少なくともセルラーゼ及びキリラナーゼ及びリグニナーゼ及びグルクロニナーゼ、少なくともセルラーゼ及びキシラナーゼ及びアミラーゼ及びプロテアーゼ、少なくともセルラーゼ及びキシラナーゼ及びアミラーゼ及びリパーゼ、少なくともセルラーゼ及びキシラナーゼ及びアミラーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともセルラーゼ及びキシラナーゼ及びプロテアーゼ及びリパーゼ、少なくともセルラーゼ及びキシラナーゼ及びプロテアーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともセルラーゼ及びキシラナーゼ及びリパーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともセルラーゼ及びリグニナーゼ及びアミラーゼ及びプロテアーゼ、少なくともセルラーゼ及びリグニナーゼ及びアミラーゼ及びリパーゼ、少なくともセルラーゼ及びリグニナーゼ及びアミラーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともセルラーゼ及びリグニナーゼ及びプロテアーゼ及びリパーゼ、少なくともセルラーゼ及びリグニナーゼ及びプロテアーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともセルラーゼ及びリグニナーゼ及びリパーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともセルラーゼ及びアミラーゼ及びプロテアーゼ及びリパーゼ、少なくともセルラーゼ及びアミラーゼ及びプロテアーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともセルラーゼ及びプロテアーゼ及びリパーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともセルラーゼ及びキシラーゼ及びリグニナーゼ及びアミラーゼ及びプロテアーゼ、少なくともセルラーゼ及びキシラナーゼ及びリグニナーゼ及びアミラーゼ及びリパーゼ、少なくともセルラーゼ及びキシラナーゼ及びリグニナーゼ及びアミラーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともセルラーゼ及びキシラナーゼ及びリグニナーゼ及びプロテアーゼ、少なくともセルラーゼ及びキシラナーゼ及びリグニナーゼ及びプロテアーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともセルラーゼ及びキシラナーゼ及びリグニナーゼ及びリパーゼ及グルクロニダーゼ、少なくともセルラーゼ及びキシラナーゼ及びアミラーゼ及びプロテアーゼ及びリパーゼ、少なくともセルラーゼ及びキシラナーゼ及びアミラーゼ及びプロテアーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともセルラーゼ及びキシラナーゼ及びアミラーゼ及びリパーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともセルラーゼ及びキシラナーゼ及びプロテアーゼ及びリパーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともセルラーゼ及びリグニナーゼ及びアミラーゼ及びプロテアーゼ及びリパーゼ、少なくともセルラーゼ及びリグニナーゼ及びアミラーゼ及びプロテアーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともセルラーゼ及びリグニナーゼ及びアミラーゼ及びリパーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともセルラーゼ及びリグニナーゼ及びプロテアーゼ及びリパーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともセルラーゼ及びアミラーゼ及びプロテアーゼ及びリパーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともキシラナーゼ及びリグニナーゼ及びアミラーゼ及びプロテアーゼ及びリパーゼ、少なくともキシラナーゼ及びリグニナーゼ及びアミラーゼ及びプロテアーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともキシラナーゼ及びリグニナーゼ及びアミラーゼ及びリパーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともキシラナーゼ及びリグニナーゼ及びプロテアーゼ及びリパーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともキシラーゼ及びアミラーゼ及びプロテアーゼ及びリパーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともリグニナーゼ及びアミラーゼ及びプロテアーゼ及びリパーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともセルラーゼ及びキシラナーゼ及びリグニナーゼ及びアミラーゼ及びプロテアーゼ及びリパーゼ、少なくともセルラーゼ及びキシラナーゼ及びリグニナーゼ及びアミラーゼ及びプロテアーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともセルラーゼ及びキシラナーゼ及びリグニナーゼ及びアミラーゼ及びリパーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともセルラーゼ及びキシラナーゼ及びリグニナーゼ及びプロテアーゼ及びリパーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともセルラーゼ及びキシラナーゼ及びアミラーゼ及びプロテアーゼ及びリパーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともセルラーゼ及びリグニナーゼ及びアミラーゼ及びプロテアーゼ及びリパーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともキシラナーゼ及びリグニナーゼ及びアミラーゼ及びプロテアーゼ及びリパーゼ及びグルクロニダーゼ、少なくともセルラーゼ及びキシラナーゼ及びリグニナーゼ及びアミラーゼ及びプロテアーゼ及びリパーゼ及びグルクロニダーゼその他の混合物として使用することができる。上記の通り、補助混合物はこれらの酵素族の各々、あるいは一酵素族の内の数種類(2つ以上のキシラナーゼ等)、あるいはこれらの酵素族内の酵素のあらゆる組み合わせ(プロテアーゼとエキソセルラーゼとエンドキシラナーゼ、あるいはリグニナーゼとエンドキシラナーゼとリパーゼ等)から成ることができると理解されている。
【0075】
酵素は化学処理と同時に、あるいは化学処理の後で、基質あるいはバイオマスと反応させることもできる。同様に複数の酵素を使用する場合、酵素は同時にあるいは順次加えることができる。酵素は、粗製酵素混合物あるいは準精製酵素混合物、精製酵素混合物として加えることができる。酵素基質混合物の温度およびpHは、酵素結合体の活性が上昇するように変えることができる。ここでは酵素を混合物として議論してきたが、温度、pH及びあその他条件を酵素活性が上昇するように変更して、酵素を順次加えることもできる。別の方法として、酵素混合物に合う最適pH及び最適温度を決定することもできる。
【0076】
酵素は軽度の条件下で基質と反応させる。「軽度の条件」によって、現在バイオリアクターを用いたバイオマス変換のために利用されている極端な温度、あるいは極端な酸処理を含まない条件が意味される。例えば酵素は約35℃から約65℃にて、pHが中性の低イオン強度から中イオン強度の緩衝液中でインキュベートすることができる。「中イオン強度」によって、緩衝液のイオン濃度がどの一イオン成分についても約200ミリモル(mM)以下であることが意味される。このような条件下で酵素混合物をインキュベーションすることによって、リグノセルロース中の糖が十分量遊離させる。十分量あるいは有意パーセンテージによって、利用可能な糖の少なくとも約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、約95%並びにそれ以上が意味される。
【0077】
酵素の適用
本発明を実践する際に使用する酵素あるいは酵素群は、微生物もしくは酵母、真菌、細菌、植物によって体外産生させ、単離してリグノセルロース質原料に加えることができる。別の方法として、酵素を産生する生物体を原料に加えることもできる。本手法では、酵素を産生する植物をリグノセルロース質原料として使用して、リグノセルロース質原料に加えることができる。また、同時糖化発酵によって発酵生成物を産生する発酵生物内で酵素を作り出すこともできる。
【0078】
セルロース並びにヘミセルロースを分解する酵素は自然界に広く存在し、これによってセルロース並びにヘミセルロースを産生する生物は、毎年産生される400億トン以上のセルロースバイオマスを分解することができる。セルロース分解の工程は化学過程であり、三種類もの異なる活性をこれに含むことができる。:1)エンドグルカナーゼ(EC3.2.1.4)、内部からセルロース重合体を切断する。2)セロビオヒドロラーゼ(EC3.2.1.91)、重合体の非還元末端にてセルロース重合体を攻撃する。3)ベータ−グルコシダーゼ(EC3.2.1.21)、二量体であるセロビオースを切断してグルコース単量体とする。また他の小分子セロデキストリンを切断してグルコース単量体とする。こうした活性を伴ってセルロースはグルコースに変換される。
【0079】
同様に、ヘミセルロースを酵素によって単糖類並びにオリゴサッカライドに変換することができる。単子葉植物では、ヘテロシキランがヘミセルロースの主要成分となっており、エンド−1,4−ベータ−キシラーゼ(EC3.2.1.8)とベータ−D−キシロシダーゼを組み合わせて使用し、ヘミセルロースを分解してキシロースとすることができる。ベータグルカン混合物はベータ(1,3),(1,4)グルカナーゼ(EC3.2.1.73)で加水分解される。
【0080】
バイオマス変換に影響する酵素は、広範囲の生物にて自然界で産生される。一般的な供給源は、セルロース並びにキシラーゼに対応するTrichoderma属並びにAspergillus属、及びリグニナーゼに対応する白腐れ真菌を含む微生物である。セルラーゼ並びにセロビオヒドロラーゼ、グルコシダーゼ、キシラナーゼ、キシロシダーゼ、リグニナーゼを産生する生物は多数あると記載されている。しかしながら、これらの酵素のうち大部分のものは植物バイオマス、特にトウモロコシ茎葉を分解する能力については試験されていない。即ち、本発明の方法は、トウモロコシ茎葉並びにその他のリグノセルロース質物質を加水分解する際の、酵素使用法の試験に使用することができる。
【0081】
前に記載したように、酵素あるいは酵素組み合わせを、細菌もしくは酵母、真菌、植物内で発現させることができる。酵素発現のための方法は当分野にて周知されている。例えばSambrook et al. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Plainview,New York); Ausubel et al.,eds. (1995) Current Protocols in Molecular Biology (Greene Publishing and Wiley−Interscience,New York); U.S. Patent Nos: 5,563,055; 4,945,050; 5,886,244; 5,736,369; 5,981,835並びに当分野において周知されている他のものを参照する。参考のためこれら全てをこの明細に添付する。
【0082】
本発明の一側面では、酵素は形質転換植物にて産生される。即ち、リグノセルロースから成る植物材料は、リグノセルロースを加水分解できる一つ以上の酵素を前もって包含することができる。化学薬剤を添加する前に、酵素がリグノセルロースを加水分解できるような条件下でそのリグノセルロースをインキュベートすることもできる。さらにリグノセルロースは、化学薬剤を添加する前あるいはあらゆる酵素処理の前に、pHの改変あるいは洗浄等の処理を受けることもできる。本手法では、植物はバイオマスを単糖類あるいはオリゴサッカライドに変換するのに必要な、あるいはこれに寄与する酵素を発現する。植物が生長する間、当該酵素あるいは酵素組み合わせは植物の加水分解を防ぐために封鎖あるいは不活性化されている。複数の酵素が共同的活性を呈する場合には、リグノセルロース質原料となる植物内で一つあるいは複数の酵素が産生され、別の酵素が細菌もしくは酵母、真菌、別の植物内で産生され、次にこの異なる酵素源同士が原料と共に混合されて最終的な酵素協働混合物となる場合もある。
【0083】
バイオマス基質定義
「基質」あるいは「リグノセルロース」、「バイオマス」によって、セルロース及びヘミセルロース、リグニン、タンパク質、灰、澱粉並びに糖類等の炭水化物を含有する物質が意味される。構成成分の単糖類には、グルコース並びにキシロース、アラビノース、マンノース、ガラクトースが含まれる。「バイオマス」にはバージンバイオマス且つ(あるいは)農業バイオマス並びに産業有機物、建築解体残骸、自治体固形ゴミ、紙ゴミ、庭ゴミ等の廃棄物系バイオマスが含まれる。バイオマスの一般的な形態には木、並びに低木及び草、小麦、麦わら、サトウキビバガス、トウモロコシ、トウモロコシ皮、粒から伸びる繊維を含めたトウモロコシ粒、トウモロコシ等を製粉することによって生成される製品及びその副産物(湿式製粉並びに乾式製粉を含む。)、加えて自治体固形ゴミ、紙ゴミ、庭ゴミが含まれる。「混合バイオマス」はバージンバイオマスと使用済みバイオマスとのあらゆる混合物あるいは配合物であり、望ましくは重量にして5〜95%の使用済みバイオマスを有する。「農業バイオマス」には枝並びに潅木、籐類、トウモロコシ及びトウモロコシ皮、エネルギー作物、森林、果実、花、穀類、草、草本作物、葉、樹皮、針状葉、丸太、根、苗、短期輪作木質作物、低木、スイッチグラス、木、野菜、ブドウ木、硬質・軟質木材(有害物質を有する木材を含まない。)が含まれる。さらに、農業バイオマスには耕作並びに森林作業を含む農業作業によって生じる有機性廃棄物が含まれ、特に森林木性廃棄物が含まれる。農業バイオマスは任意の前記単独物あるいはあらゆる組み合わせのこれらの混合物であることができる。
【0084】
トウモロコシ並びに穀類、果実、野菜等、澱粉もしくは糖、タンパク質に富むバイオマスは、通常食物として消費される。反対に、セルロース並びにヘミセルロース、リグニンに富むバイオマスは消化されにくく、主に木製品並びに紙製品、燃料として利用され、典型的には廃棄される。一般に、基質となるのはリグノセルロース含量が高いものであり、トウモロコシ茎葉並びにトウモロコシ繊維、ディスティラーの乾燥粒、稲わら、灰、サトウキビバガス、小麦、オート麦、大麦麦芽並びにその他農業バイオマス、スイッチグラス、森林廃棄物、ポプラ木材片、マツ木材片、おが屑、庭ゴミ、その他が含まれる。また、基質のあらゆる組み合わせが含まれる。
【0085】
バイオマスは農地から集められたものとして使用される場合も、例えば製粉、粉挽き、細断等、加工される場合もありうる。さらにバイオマスを使用前に、例えば加熱あるいは乾燥、冷凍、サイロへの貯蔵(高湿度状態である期間貯蔵すること。)等、化学的もしくは物理的手段によって処理することもできる。当該処理には俵・覆いのない窪地での貯蔵に加え、微生物数あるいは微生物量、pH、水分量等の性状を改変するために作製された反応器での貯蔵が含まれる。
【0086】
表7 一般にバイオマスと呼ばれる物質の例
【0087】
【表7】

「遊離する」あるいは「加水分解」によって、リグノセルロース質基質複合体あるいはバイオマスの、単糖類あるいはオリゴサッカライドへの転換が意味される。
【0088】
「転換」には、バイオマスあるいは配合バイオマス、あるいはその両方からエタノールもしくはエタノールと副産物とを産生する、あらゆる生物学的、あるいは(且つ)化学的、あるいは(且つ)生化学的活性が含まれる。当該転換には、当該バイオマスあるいは配合バイオマス、あるいはその両方の、加水分解並びに発酵、同時糖化発酵(SSF)が含まれる。望ましくは転換にはこの明細で定義される発酵原料及び加水分解材料の使用が含まれる。
【0089】
「トウモロコシ茎葉」にはトウモロコシ植物体の収穫によって生じる農業残余物が含まれる。茎葉はトウモロコシ耕地からトウモロコシ粒を収穫することによって生じ、典型的にはコンバイン収穫機によって生じる。トウモロコシ茎葉には、トウモロコシの茎並びに殻、根、トウモロコシ粒、土等のその他物質が多様な割合で含まれる。
【0090】
「トウモロコシ繊維」はトウモロコシ粒の一部分であり、典型的には湿式製粉あるいは他のトウモロコシ粒加工によって生じる。トウモロコシ繊維部分は収穫された粒の繊維部分であり、澱粉及び油が抽出された後に残るものである。トウモロコシ繊維は典型的にはヘミセルロース及びセルロース、残余澱粉、タンパク質、リグニンが含まれる。
【0091】
「エタノール」にはエチルアルコールあるいはエチルアルコールと水との混合物が含まれる。
【0092】
「発酵産物」にはエタノール並びに乳酸、クエン酸、ブタノール、イソプロパノール、加えてこれらの誘導体が含まれる。
【0093】
「ディスティラーの乾燥粒」はトウモロコシの澱粉分画がエタノール発酵のために分離された後の乾燥残余物である。この物質は典型的には繊維及び残余澱粉、タンパク質、油が含まれる。
【0094】
「サトウキビバガス」は、サトウキビ加工によるリグノセルロース性生成物である。バガスは典型的には約65%の炭水化物をセルロースあるいはヘミセルロースの形で含有する。
【0095】
「麦芽」リグノセルロースは、醸造業が糖源として用いる大麦麦芽を意味する。生成される使用済み「麦芽」は、セルロース及び繊維、タンパク質を豊富に含む。
【実施例】
【0096】
以下の実施例は説明のために提供するものであり、制限のためのものではない。
【0097】
実験
実施例1 グルコース及びキシロース標準曲線
グルコース及びキシロース、アラビノース、ガラクトース、マンノースの標準品を、0%〜0.12%の範囲の濃度で調製した。変法ジニトロサリシリック酸法(DNS)によって540 nmで検出される吸光変化を得た。各糖標準物に対する線状曲線一致分析によって、各糖単量体に対するDNS定量法が正確な検出法であることが証明される(デーダは示していない。)。
【0098】
実施例2 過酸化水素処理後にセルロース処理を行うと単糖類が遊離する。
【0099】
10 mLの水中で(pH 5.0に調整)、過酸化水素(200 mM)を2.0 gの茎葉と反応させた。コントロール茎葉は処理を行わなかった。80℃で24時間インキュベーションした後、各試料の還元糖含量をDNS分析によって測定した(例1)。次にT. longibrachiatum(25 mg)由来のセルラーゼを双方の試料に加え、65℃で24時間インキュベーションを行った。DNS分析によって還元糖を測定した。結果を表8に示す。過酸化水素処理によって酵素単独での処理よりも多くの糖が酵素処理後に遊離された。
【0100】
表8 トウモロコシ茎葉から可溶化された還元糖
【0101】
【表8】

高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による次の分析のために部分試料を分離し、1:250に水で稀釈して0.45μmのフィルターを使用して濾過した。次に、陰イオン交換HPLCカラムを使用して可溶化した糖を塩基性pHで分離した。検出には電気化学検出器を使用し、パルス電流測定モードで実行した。外来の糖標準物(グルコース、キシロース)を使用してグルコース及びキシロースのピークを同定した。Hとセルラーゼによる処理後に茎葉から可溶化された糖類のクロマトグラムを図1に示す。
【0102】
実施例3 過酸化水素処理によってトウモロコシ茎葉の酵素加水分解が増進する。
【0103】
過酸化水素(最終濃度0〜60 mM)を酢酸ナトリウム緩衝液(125 mM,pH 5.0)中で0.2 gの茎葉と反応させ、撹拌しながら50℃でインキュベートした。24時間後、還元糖含量をDNS分析によって測定した。次にTrighoderma reesei由来のセルラーゼ10ユニットとTrighoderma viride由来のキシラナーゼ10ユニットを加え、50℃で24時間インキュベーションを続けた。各試料からさらに部分試料を分離し、還元糖を定量した。過酸化水素及び酵素処理後の還元糖含量を図2に示す。過酸化水素濃度を上昇させると遊離する還元糖量が増加した。
【0104】
実施例4 処理後24時間以内に過酸化水素は分解する。
【0105】
過酸化水素(0.13%)を酢酸ナトリウム緩衝液(125 mM,pH 5.0)中で、50℃で撹拌しながら0.2 gの茎葉と反応させた。過酸化水素は以下のように検出した(Kotterman (1986) App. Env. Microbiol. 62:880−885)。各試料からの複数の部分試料(100μL)を96ウェルマイクロタイタープレートに移し、49μLの0.06%フェノールレッド及び1μLの1.5 mg/mLホースラディッシュペルオキシダーゼと混合して5分間インキュベートした。次に試料を75μLの4N NaOHと混合して610 nmで定量し、過酸化水素標準物と比較した。0から24時間の時点における過酸化水素と還元糖(DNS分析)を測定した。これらのデータを図3に示している。茎葉を加えないコントロール試料ではDNS分析及び過酸化物分析シグナル各々に変化はなかった(データは示していない。)24時間までに、過酸化水素濃度は0となった(図3)。これらの結果は処理の後に残る化学残留物が最小であることを示している。
【0106】
実施例5 多数のリグノセルロース物質から糖を遊離する。
【0107】
トウモロコシ茎葉もしくはトウモロコシ繊維、ディスティラーの乾燥粒、大麦麦芽、サトウキビバガスから構成される1グラムのリグノセルロース物質を10 mLの水中で過酸化水素(100 mM)と混合し、80℃で24時間インキュベートした。未処理反応物には過酸化水素を加えていない。インキュベーションの最後に、100 mMのNaOAc緩衝液(pH 5.0)を加えてpHを調整し、25 mgのTrichoderma reeseiセルラーゼを加えてその溶液を65℃で24時間インキュベートした。未処理反応物にはセルラーゼを加えていない。加水分解物の還元糖含量をDNS分析によって測定した。これらの実験の結果を表9に示す。これらの結果は、この処理によって多数のリグノセルロース質物質から糖類を遊離することができることを示している。
【0108】
表9 リグノセルロース物質からの糖遊離
【0109】
【表9】

実施例6 トウモロコシ茎葉から発酵原料を生成する。
【0110】
トウモロコシ茎葉(2.0 g)を10 mLの水中で過酸化水素(0.1%)と混合した。80℃で24時間インキュベートした後、pHを5.0に調整してTrichoderma reesei由来のセルラーゼを50 mg加え、65℃で24時間インキュベートした。次に加水分解物の還元糖含量をDNS分析によって測定した。次に、加水分解物をpH 7.0に調整し、濾過滅菌して最終濃度5%の糖を産生するよう、炭素を含まない最小増殖培地(M63)(Current Protocols in Molecular Biology,2001)に加えた。コントロール増殖培地は糖を含まない培地に5%の糖を加えて調製した。細菌細胞(Escherichia coli)を各培地に加えて振盪しながら37℃でインキュベートし、各培地の600 nmの吸光度を測定することによって48時間、細菌の増殖をモニターした。48時間時点でのこれらのデータを表10に示す。本方法で得られた加水分解物によってE. coliは高濃度に増殖した。結果は、この方法から生成された加水分解物によって、グルコースの場合よりもより多量の細菌増殖が可能となること示している。加水分解物は稀釈しない状態であってもE. coliに有害なものではなかった。
【0111】
表10 トウモロコシ茎葉加水分解物による発酵増殖
【0112】
【表10】

実施例7 加水分解物は細菌の増殖を促す発酵原料である。
【0113】
過酸化水素とセルラーゼとの処理(例6に記載)によって生成された加水分解物を、最終糖濃度0.0%から1.0%の糖類を産生するよう、炭素を含まない最小増殖培地(M63)に稀釈した。コントロール培地は同じ最終糖濃度のグルコース及びキシロース(割合は63:37)を加えて調製した。細菌細胞(Eshericia coli XL1 MRF’)を各培地に加えて振盪しながら37℃で培養し、48時間時点での増殖を600 nmの吸光度によって定量した。細菌の増殖性はグルコース及びキシロースを加えて調製したコントロール培地よりも、加水分解物培地の方が高かった(図4を参照)。
【0114】
実施例8 界面活性剤処理によって、過酸化水素処理後にセルラーゼを処理するトウモロコシ茎葉の加水分解が増進する。
【0115】
トウモロコシ茎葉(2.0 g)を10 mLの水中で過酸化水素(1%)と混合した。80℃で24時間インキュベートした後、pHを5.0に調整した。これにTrichoderma reesei由来のセルラーゼ50 mgをトリトンX−100(2% v/v)と供に加えた。別に、トウモロコシ茎葉(2.0 g)を10 mLの水中で過酸化水素(1%)と混合して80℃で24時間インキュベートした後、pHを5.0に調整した。これにTrichoderma reesei由来のセルラーゼ50 mgをツイン20(3% v/v)と供に加えた。界面活性剤を加えないコントロール(セルラーゼのみ)を双方の実験ともインキュベートした。反応物は40℃で96時間インキュベートした。DNS分析を用いて還元糖含量を測定した。この分析の結果は、ツイン20とトリトンX−100の双方ともトウモロコシ茎葉からの糖の遊離を促進することを示している。データを表11にまとめた。
【0116】
表11 茎葉加水分解に対する界面活性剤の影響
【0117】
【表11】

実施例9 酸化剤がリグノセルロース質物質を滅菌する。
【0118】
トウモロコシ茎葉(1 g)を10 mLの滅菌水に懸濁して一方をオートクレーブ処理し、もう一方はオートクレーブ処理をしなかった。予期したとおり、オートクレーブによって実質的に全ての微生物が死に、1 ml当たり100コロニー形成ユニット以下となった。反対に、オートクレーブ処理しなかった試料には1 mL当たり〜20、000コロニー形成ユニットが含まれていた。オートクレーブ処理しなかった試料は0.1%の過酸化水素を50℃で24時間処理した。当分野で周知されているように連続稀釈を行い、栄養ブロスプレートに接種した。プレートを30℃で24時間培養し、その後コロニー形成ユニットを計数した。未処理のコントロールと比較して、過酸化水素処理によって実質的に微生物含量が減ることが認められた(表12)。
【0119】
表12 トウモロコシ茎葉の微生物含量に対する過酸化水素の影響
【0120】
【表12】

実施例10 バイオマスを次亜塩素酸ナトリウムで処理することによって、トウモロコシ茎葉の加水分解が増進する。
【0121】
トウモロコシ茎葉(0.2 g)を9 mLの滅菌水(pH 5.2)と1 mLの次亜塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素10〜13%、Sigma)とに懸濁した。この前処理は80℃で300 rpmの振盪培養器内で24時間行った。前処理の後pHを5.2〜5.4に調整し、試料にスペザイムCP(Spezyme CP;0.3 mL)(Genencor)を加え40℃、300 rpmで24時間インキュベートした。24時間後に上清部分試料を回収し、還元糖含量をDNS分析によって測定した(λmax=540 nm)。全ての試料を二通りにして操作した。次亜塩素酸ナトリウム処理によって、トウモロコシ茎葉の有意な量の加水分解物が産生した(表13)。10%次亜塩素酸ナトリウムとスペザイムとの処理によっては、スペザイム単独での処理よりも多量の茎葉加水分解物が生じた。
【0122】
表13 茎葉加水分解に対する次亜塩素酸ナトリウムの影響
【0123】
【表13】

HPLCによって糖類のさらに詳細な定量を行った。処理済物質のHPLCクロマトグラム分析によって10%NaOCl(24時間)を用いた前処理、次いで0.3 mLのスペザイム(24時間)を使用した後に生成された糖類を同定する。注入前に試料を1:50に稀釈した。グルコース及びアラビノース、ガラクトース、マンノースを含むピーク(6.3分)はキシロースを含むピーク(6.8分)と分かれていた。可溶化された有効糖類のパーセンテージを、各ピーク面積を統合することによって算出した(表14)。このように、次亜塩素酸ナトリウムで処理することによって、糖類がリグノセルロースから高い割合で遊離した。
【0124】
表14 次亜塩素酸ナトリウム及びスペザイムでの処理後に生成された糖
【0125】
【表14】

実施例11 非常に低い濃度のセルラーゼで、有意な量のトウモロコシ茎葉加水分解物が得られる。
【0126】
NaOClで前処理した茎葉試料の一方を0.3 mLのスペザイム、もう一方を0.03 mLスペザイムと反応させた。0.3 mLスペザイムを加えた試料では全糖類の84%が加水分解され、0.03 mLスペザイムを加えた試料では79%が加水分解された。NaOClを加えずに0.3 mLのスペザイムを加えたコントロール試料では42%が加水分解された(表15を参照。)。
【0127】
本実験はNaOCl保存液の10%溶液で前処理し、その後セルラーゼ(本件ではスペザイム)処理することによって、リグノセルロースが有意な量加水分解されて糖となることを示している。
【0128】
表15 次亜塩素酸ナトリウム前処理後、低量の酵素が加水分解に与える影響。
【0129】
【表15】

実施例12 次亜塩素酸カルシウム処理によってトウモロコシ茎葉の加水分解が増進する。
【0130】
リグノセルロース(トウモロコシ茎葉、10 mLの最終反応物中に0.2 g)を次亜塩素酸カルシウム(有効塩素1%)に、80℃で24時間接触させた。pHを調製してpH5.2とし、0.3 mLのスペザイムCP(Genencor)を加えて反応物を40℃で24時間インキュベートした。糖の遊離をDNS分析によって測定した。次亜塩素酸カルシウム処理は、スペザイム単独での処理よりも糖の遊離を増進することが認められた(表16)。
【0131】
表16 茎葉加水分解に対する次亜塩素酸カルシウムの影響
【0132】
【表16】

実施例13 尿素過酸化水素塩はトウモロコシ茎葉の加水分解を増進する。
【0133】
リグノセルロース(トウモロコシ茎葉、10 mLの最終反応物中に0.2 g)を5%尿素過酸化水素塩(CAS#124−43−6)に、80℃で24時間接触させた。この茎葉を洗浄して化学薬剤を稀釈し、pHを調整してpH5.2とした。さらに0.3 mLのスペザイムCP(Genencor)を加え、反応物を40℃で48時間インキュベートした。遊離した糖をDNS分析によって測定した。尿素過酸化水素塩処理はスペザイム単独での処理よりも糖の遊離を増進することが認められた(表17)。
【0134】
表17 茎葉加水分解に対する尿素過酸化水素塩の影響
【0135】
【表17】

実施例14 N−メチルモルホリン−N−オキシドはトウモロコシ茎葉の加水分解を増進する。
【0136】
リグノセルロース(トウモロコシ茎葉、10 mLの最終反応物中に0.2 g)を75%のN−メチルモルホリン−N−オキシド(NMMO)(CAS#7529−22−8)に、80℃で24時間接触させた。次にこのNMMOを稀釈し、0.3 mLのスペザイムCP(Genencor)を加えて反応物を40℃で48時間インキュベートした。遊離した糖をDNS分析によって測定した。NMMO処理はスペザイム単独での処理によって遊離される量を超えて糖を遊離させることが認められた(表18)。
【0137】
表18 茎葉加水分解に対するN−メチルモルホリン−N−オキシドの影響
【0138】
【表18】

実施例15 過炭酸ナトリウムはトウモロコシ茎葉の加水分解を増進する。
【0139】
リグノセルロース(トウモロコシ茎葉、10 mLの最終反応物中に0.2 g)を2.5%の過炭酸ナトリウム(CAS#15630−89−4)に、80℃で24時間接触させた。pHを調整してpH5.2とし、0.3 mLのスペザイムCP(Genencor)を加えて反応物を40℃で24時間インキュベートした。遊離した糖をDNS分析によって測定した。過炭酸ナトリウム処理はスペザイム単独での処理よりも糖の遊離を増進することが認められた(表19)。
【0140】
表19 茎葉加水分解に対する過炭酸ナトリウムの影響
【0141】
【表19】

実施例16 過硫酸カリウムはトウモロコシ茎葉の加水分解を増進する。
【0142】
リグノセルロース(トウモロコシ茎葉、10 mLの最終反応物中に0.2 g)を1%の過硫酸カリウム(CAS#7727−21−1)に、80℃で24時間接触させた。pHを調整してpH5.2とし、0.3 mLのスペザイムCP(Genencor)を加えて反応物を40℃で24時間インキュベートした。遊離した糖をDNS分析によって測定した。過硫酸カリウム処理はスペザイム単独での処理よりも糖の遊離を増進することが認められた(表20)。
【0143】
表20 茎葉加水分解に対する過硫酸カリウムの影響
【0144】
【表20】

実施例17 ペルオキシ酢酸処理によってトウモロコシ茎葉の加水分解が増進する。
【0145】
リグノセルロース(トウモロコシ茎葉、10 mLの最終反応物中に0.2 g)をペルオキシ酢酸(最終濃度1%)に、80℃で24時間接触させた。pHを調整してpH5.2とし、0.3 mLのスペザイムCP(Genencor)を加えて反応物を40℃で96時間インキュベートした。遊離した糖をDNS分析及びHPLCによって測定した。ペルオキシ酢酸処理はスペザイム単独での処理よりも糖の遊離を増進することが認められた(表21)。
【0146】
表21 茎葉加水分解に対するペルオキシ酢酸の影響
【0147】
【表21】

実施例18 超酸化カリウム処理によってトウモロコシ茎葉の加水分解が増進する。
【0148】
リグノセルロース(トウモロコシ茎葉、10 mLの最終反応物中に0.2 g)を超酸化カリウム(最終濃度0.5%)に、80℃で24時間接触させた。pHを調整してpH5.2とし、0.3 mLのスペザイムCP(Genencor)を加えて反応物を40℃で96時間インキュベートした。遊離した糖をDNS分析及びHPLCによって測定した。超酸化カリウム処理はスペザイム単独での処理よりも糖の遊離を増進することが認められた(表22)。
【0149】
表22 茎葉加水分解に対する超酸化カリウムの影響
【0150】
【表22】

実施例19 炭酸ナトリウム処理によってトウモロコシ茎葉の加水分解が増進する。
【0151】
リグノセルロース(トウモロコシ茎葉、10 mLの最終反応物中に0.2 g)を炭酸ナトリウム(最終濃度0.67%)に接触させてpH10.0の混合物を作り、これを80℃で24時間インキュベートした。pHを調整してpH5.2とし、0.3 mLのスペザイムCP(Genencor)を加えて反応物を40℃で96時間インキュベートした。遊離した糖をDNS分析及びHPLCによって測定した。炭酸ナトリウム処理はスペザイム単独での処理よりも糖の遊離を増進することが認められた(表23)。
【0152】
表23 茎葉加水分解に対する炭酸ナトリウムの影響
【0153】
【表23】

実施例20 水酸化カリウム処理によってトウモロコシ茎葉の加水分解が増進する。
【0154】
リグノセルロース(トウモロコシ茎葉、10 mLの最終反応物中に0.2 g)を水酸化カリウム(最終濃度75 mM)に接触させてpH12.3の混合物を作り、80℃で24時間インキュベートした。pHを調整してpH5.2とし、0.3 mLのスペザイムCP(Genencor)を加えて反応物を40℃で96時間インキュベートした。遊離した糖をDNS分析及びHPLCによって測定した。水酸化カリウム処理はスペザイム単独での処理よりも糖の遊離を増進することが認められた(表24)。
【0155】
表24 茎葉加水分解に対する水酸化カリウムの影響
【0156】
【表24】

実施例21 過炭酸ナトリウム処理によってトウモロコシ繊維及びディスティラーの乾燥粒、サトウキビバガス、使用済み大麦麦芽の加水分解が増進する。
【0157】
トウモロコシ繊維及びディスティラーの乾燥粒、サトウキビバガス、使用済み大麦麦芽(10 mLの最終反応物中に0.2 g)を、それぞれ過炭酸ナトリウム(最終濃度1.0%)に80℃で24時間接触させた。pHを調整してpH5.2とし、0.3 mLのスペザイムCP(Genencor)を加えて反応物を40℃で96時間インキュベートした。遊離した糖をDNS分析及びHPLCによって測定した。過炭酸ナトリウム処理はスペザイム単独での処理よりも糖の遊離を増進することが認められた(表25)。
【0158】
表25 様々なバイオマス原料に対する過炭酸ナトリウム処理の影響
【0159】
【表25】

実施例22 リサイクル過炭酸ナトリウムはトウモロコシ茎葉の加水分解を増進する。
【0160】
トウモロコシ茎葉(200 mLの最終反応物中に20g)を過炭酸ナトリウム(最終濃度5.0%)に80℃で24時間接触させた。上清を除去し、糖類の有無をDNS分析によって測定した。糖濃度は1%未満であった。この上清(10 mL)に新たなトウモロコシ茎葉(10 mLの最終反応物中に0.2 g)を80℃で24時間接触させた。別の反応として、新たに準備した過炭酸ナトリウム(最終濃度5.0%)に新たなトウモロコシ茎葉(10 mLの最終反応物中に0.2 g)を80℃で24時間接触させた。各試料のpHを調整してpH5.2とし、0.3 mLのスペザイムCP(Genencor)を加えて反応物を40℃で96時間インキュベートした。遊離した糖をDNS分析によって測定した。リサイクル過炭酸ナトリウム溶液処理はスペザイム単独での処理よりも糖の遊離を増進することが認められた(表26)。
【0161】
表26 リサイクル過炭酸ナトリウムはトウモロコシ茎葉の加水分解を増進する。
【0162】
【表26】

実施例23 複合処理によって、リグノセルロースからさらに糖が遊離する。
【0163】
リグノセルロース(トウモロコシ茎葉、10 mLの最終反応物中に0.2 g)を0.2%の過酸化水素に80℃で24時間接触させた。pHを調整してpH5.2とし、0.3 mLのスペザイムCP(Genencor)を加えて反応物を40℃で72時間インキュベートした。遊離した糖をDNS分析によって測定し、各試料を洗浄して可溶性糖類を除去した。次に、過酸化水素(0.2%)もしくは尿素過酸化水素塩(5%)、次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素1%)、次亜塩素酸カルシウム(有効塩素1%)、NMMO(75%)を各試料に加え、80℃で24時間インキュベートした。化学薬剤を加えないコントロールも調製した。化学薬剤の稀釈(NMMO)もしくはpH5.2となるようpHの調整のみ(過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、尿素過酸化水素塩、薬剤無し)を行った後、0.3 mLのスペザイムを加えて反応物を40℃で72時間インキュベートした。二次スペザイム処理は、これに先立って二次化学処理を行う場合に、糖の遊離を増進することが認められた(表27)。
【0164】
表27 茎葉の加水分解に対する複合処理の効果
【0165】
【表27】

実施例24 過酸化水素処理によって乳酸産生を支持するリグノセルロース及び加水分解物が生じる。
【0166】
リグノセルロース(トウモロコシ茎葉)を0.2%の過酸化水素に80℃で24時間接触させた。pHを調整してpH5.2とし、0.3 mLのスペザイムCP(Genencor)を加えて反応物を40℃で72時間インキュベートした。加水分解物から残余固形物を分離し、洗浄して水中に懸濁し、乳酸産生細菌を含むと周知されている市販のサイレージ用接種物(Biotal Silage II Inoculant,Biotal Inc.)を0.01 g加えた。37℃で24時間発酵を行い、細菌の増殖を顕微鏡的に確認した。同様に、その後の各処理で生じた加水分解物を調整してpH 7.0とし、濾過滅菌して炭素を含まない最小塩培地(強化最小培地(EMM))に混合した。EMMにはA溶液(900 ml中:2 g NaNO,1.0 ml 0.8 M MgSO,1.0 ml 0.1 M CaCl,1.0 ml 微量元素溶液(1000倍容液100 ml中:0.1 g FeSO・7HO,0.5 mg CuSO・5HO,1.0 mg HBO, 1.0 mg MnSO・5HO,7.0 mg Zn SO・7HO,1.0 mg MoO3,4.0 g KCl))とB溶液 (100 ml中:0.21 g NaHPO,0.09 g NaHPO,pH 7.0)とが含まれ、A600=0.5までMRSブロスにて増殖させたBiotal社の接種物を2回洗浄して1:1000に稀釈し、接種した。培養後、乳酸を酵素的に変換させてピルビン酸を産生させてから(Diffchamb社)ブロス発酵物(茎葉残余物及び茎葉加水分解物)の発酵物液体中のNADH(340 nm)産生を測定した(表28)。この結果から、トウモロコシ茎葉と生成された加水分解物の両方とも乳酸菌の増殖を支持することができ、乳酸産生を支持することができる。
【0167】
表28 トウモロコシ茎葉を過酸化水素処理した後の乳酸産生
【0168】
【表28】

実施例25 トウモロコシ繊維を過酸化水素処理すると、乳酸産生を支持する加水分解物と残余固形物が生じる。
【0169】
リグノセルロース(トウモロコシ繊維)を0.2%過酸化水素に80℃で24時間接触させた。pHを調整してpH5.2とし、0.3 mLのスペザイムCP(Genencor)を加えて反応物を40℃で48時間インキュベートした。残余固形物(0.2 g)を加水分解物から分離して洗浄し、水に懸濁して乳酸産生細菌が含まれることが周知されている市販のサイレージ用接種物(Biotal Silage II Inoculant,Biotal Inc.)を0.01 加えた。37℃で24時間発酵させ、細菌の増殖を顕微鏡的に確認した。処理後に生成された加水分解物をpH7.0に調整し、濾過滅菌して炭素を含まない最小塩培地(EMM)と混合した。さらにこれにA600=0.5までMRSブロスにて増殖させたBiotal社の接種菌培養物を洗浄して1:1000に稀釈し、接種した。この発酵は37℃で64時間行った。培養後、乳酸を酵素変換してピルビン酸を産生させてから双方の発酵物(茎葉残余固形物及び茎葉加水分解物)の発酵物液体中のNADH(340 nm)産生を分析した(Diffchamb)(表29)。これにより、トウモロコシ繊維残余固形物及び生成された加水分解物の双方とも乳酸菌の増殖を支持することができ、乳酸産生を支持することができる。
【0170】
表29 トウモロコシ繊維を過酸化水素処理した後の乳酸産生
【0171】
【表29】

実施例26 酸化剤処理によって乳酸産生を支持する加水分解物が生じる。
【0172】
トウモロコシ茎葉を80℃で24時間、過酸化水素(0.2%)で処理し、pH 5.2に調製してさらに0.3 mLのスペザイムを40℃で144時間処理した。次にこの茎葉をすすぎ、滅菌して1グラムを尿素過酸化水素塩(5%)に80℃で24時間接触させた。pHを調整してpH 5.2とした後、40℃で48時間、0.3 mLのスペザイムを添加した。同様に、1.5 gの新鮮トウモロコシ茎葉を次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素1%)に80℃で24時間接触させ、pH 5.2に調製してさらに0℃で48時間、0.3 mLのスペザイム CPを添加した。次に双方の加水分解物をpH 7.0に調製し、濾過滅菌して全糖類濃度0.2%で炭素を含まない最小塩培地(EMM)と混合した。混合乳酸接種菌調製物(Biotal Silage Inoculant II,Biotal Inc.)を含むMRSブロス(Difco)中の種培養物をA600=0.5まで増殖させ、2回洗浄して1:1000に稀釈しし、各培地に加えて37℃で64時間培養した。培養後、乳酸を酵素変換してピルビン酸を産生させてから双方の発酵物(尿素過酸化水素塩処理及び次亜塩素酸ナトリウム処理)の発酵物液体中のNADH(340 nm)産生を分析した(Diffchamb)(表30)。これにより、リグノセルロース質物質を酸化剤で処理して出来る加水分解物を乳酸産生細菌は利用することができ、これを乳酸産生に利用することができる。
【0173】
表30 酸化剤処理後の乳酸産生
【0174】
【表30】

実施例27 化学処理によってできる加水分解物は微生物の増殖を支持する。
【0175】
数種類のトウモロコシ茎葉を化学処理を用いて調製し、10 mLの反応物とした。
スペザイムのみ:1.5 gのトウモロコシ茎葉に0.3 mL スペザイム CP(Genencor)をpH 5.2、40℃で48時間処理した。
【0176】
過酸化水素:1.5 gのトウモロコシ茎葉に0.2%過酸化水素を処理し(80℃で24時間)、pH 5.2に調整して次に0.3 mL スペザイム CPを処理した(40℃で48時間)。
【0177】
次亜塩素酸ナトリウム:1.5 gのトウモロコシ茎葉に次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素1%)を処理し(80℃で24時間)、pH 5.2に調整して次に0.3 mL スペザイム CPで処理した(40℃で48時間)。
【0178】
次亜塩素酸ナトリウム且つ稀釈:1.5 gのトウモロコシ茎葉に次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素1%)を処理し(80℃で24時間)、洗浄して化学薬剤を稀釈し、pH 5.2に調整して次に0.3 mL スペザイム CPを処理した(40℃で48時間)。
【0179】
尿素過酸化水素塩:1.5 gのトウモロコシ茎葉に0.2%過酸化水素を処理し(80℃で24時間)、pH 5.2に調整して次に0.3 mL スペザイム CPを処理した(40℃で48時間)。次にこれを10%尿素過酸化水素塩で処理し(80℃で24時間)、pH 5.2に調整して次に0.3 mL スペザイム CPを処理した(40℃で48時間)。
【0180】
過炭酸ナトリウム:0.2 gのトウモロコシ茎葉に2.5%の過炭酸ナトリウムを処理し(80℃で24時間)、pH 5.2に調整して次に0.3 mL スペザイム CPを処理した(40℃で48時間)。
【0181】
過硫酸カリウム:0.2 gのトウモロコシ茎葉に1.0%の過硫酸カリウムを処理し(80℃で24時間)、pH 5.2に調整して次に0.3 mL スペザイム CPを処理した(40℃で48時間)。
【0182】
硝酸:0.2 gのトウモロコシ茎葉に1.0%の硝酸を処理し(80℃で24時間)、pH 5.2に調整して次に0.3 mL スペザイム CPを処理した(40℃で48時間)。
【0183】
加えて、過酸化水素を使用してトウモロコシ繊維加水分解物を調製した。:2 gのトウモロコシ繊維に0.2%の過酸化水素を処理し(80℃で24時間)、pH 5.2に調整して次に0.3 mL スペザイム CPを処理した(40℃で48時間)。
【0184】
スペザイム処理後、各加水分解物を調整してpH 7.0とし、濾過滅菌して次に最終糖類濃度0.2%の炭素を含まない最小塩培地(EMM)に加えた。糖類を含まない陰性コントロールも調製した。各加水分解物に代表的細菌株(ATX3661)を接種し、37℃で14時間(糖類無し、次亜塩素酸ナトリウム且つ稀釈、尿素過酸化水素塩、過炭酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過酸化水素)あるいは40時間(過酸化水素)あるいは48時間(スペザイムのみ、次亜塩素酸ナトリウム)培養した。各培養物の増殖を600 nmの吸光度によって測定した(表31)。各実験における糖類を含まないコントロールの吸光度(600 nm)は0.005未満であった。
【0185】
これにより、様々な化学薬剤でリグノセルロース質物質を処理してできる加水分解物は細菌の増殖を支持する。
【0186】
表31 軽度の化学処理後の細菌増殖
【0187】
【表31】

実施例28 トウモロコシ茎葉加水分解物は細菌増殖のための成分を提供する。
【0188】
ATX3661は、最小培地(EMM)でグルコースあるいはグルコース・キシロース混合物を添加しても増殖することのないBacillus株である。即ち、ARX3661はこの培地中で増殖するためにグルコースとキシロース以外の別の栄養素を必要とする。
【0189】
リグノセルロース(トウモロコシ茎葉)を過酸化水素(0.2%)もしくは次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素1%)と接触させ、80℃で24時間インキュベートした。pHを調製してpH 5.2として0.3 mlのスペザイムPC(Genencor)を加え、反応物を40℃で144時間(次亜塩素酸ナトリウム)もしくは48時間(過酸化水素)インキュベートした。化学処理を行わないトウモロコシ茎葉試料を実験に含め、スペザイムを40℃で24時間処理した。スペザイム処理後に生成した加水分解物を調整してpH 7.0とし、濾過滅菌して全糖類濃度0.20%(過酸化水素)もしくは0.15%(次亜塩素酸ナトリウム、スペザイムのみ)の炭素を含まない最小塩培地と混合した。加水分解物の代わりにグルコース(0.095%)及びキシロース(0.055%)を加えたコントロール培地(「グルコース・キシロース」)と加水分解物を加えないコントロール培地(「糖類無し」)とを準備した。次に、各培地に代表的な細菌株(ATX3661)を接種し、37℃で48時間(次亜塩素酸ナトリウム、スペザイムのみ、糖類無し、グルコース・キシロース)もしくは40時間(過酸化水素)培養した。各培養物の増殖を600 nmの吸光度によって検出した(表32)。予期した通り、ATX3661はグルコースとキシロースを添加したEMMでは増殖しなかった。驚くべきことに、ATX3661は加水分解物を添加した場合に増殖を示した。このことから、加水分解物は純粋な糖が支持しない細菌株の増殖を支持する。
【0190】
表32 細菌増殖に対する加水分解物の影響
【0191】
【表32】

実施例29 過酸化水素処理並びに過炭酸ナトリウム処理は紙の加水分解を増進する。
【0192】
多用途コピー用紙(0.2 g Quill,#7−20222)と細断し(平均粒子サイズ=5 mm)、容量10 mLの過酸化水素(最終濃度0.3%)あるいは過炭酸ナトリウム(最終濃度1.0%)に80℃で24時間接触させた。pHを調製してpH 5.2として0.3 mlのスペザイムPC(Genencor)を加え、反応物と40℃で96時間インキュベートした。糖類の遊離をDNS分析によって測定した。過酸化水素処理はスペザイム単独での処理よりも糖類の遊離を増進することが認められた(表33)。
【0193】
表33 紙加水分解に対する過酸化水素並びに過炭酸ナトリウムの影響
【0194】
【表33】

実施例30 前処理の過程で過炭酸ナトリウム並びに超酸化カリウムはトウモロコシ茎葉のタンパク質を可溶化する。
【0195】
リグノセルロース(トウモロコシ茎葉、最終反応物10 mL中に0.2 g)を過炭酸ナトリウム(最終濃度1.0%)もしくは超酸化カリウム(最終濃度0.5%)に80℃で24時間接触させた。pHを調製してpH 5.2とし、上清を可溶化タンパク質の有無について試験した(バイオ・ラッドタンパク質分析)。ウシ血清アルブミン(BSA)を使用して定量のための標準曲線を作成した。過炭酸ナトリウムもしくは超酸化カリウム処理はトウモロコシ茎葉中のタンパク質を可溶化することが認められた(表34)。
【0196】
表34 過炭酸ナトリウムもしくは超酸化カリウムの前処理後に可溶化タンパク質が産生する。
【0197】
【表34】

実施例31 pH 5での次亜塩素酸ナトリウイム処理によってトウモロコシ茎葉の加水分解が増進する。
【0198】
リグノセルロース(トウモロコシ茎葉、最終反応物10 mL中に0.2 g)に次亜塩素酸ナトリウイム(有効塩素1%、最終濃度)を80℃で24時間接触させた。200 mMの酢酸ナトリウム緩衝液で緩衝して一定のpH、pH 5に保った。緩衝液のみの陰性コントロールも処理した。0.03 mLのスペザイムCP(Genencor)を加え、反応物を40℃で96時間インキュベートした。糖の遊離をDNS分析によって測定した。pH 5での次亜塩素酸ナトリウイム処理はスペザイム単独での処理よりも糖の遊離を増進すると認められた(表35)。
【0199】
表35 pH 5.0に緩衝された次亜塩素酸ナトリウイムはトウモロコシ茎葉の加水分解を増進する。
【0200】
【表35】

実施例32 酢酸及び硫酸存在下で、ペルオキシ酢酸処理はトウモロコシ茎葉の加水分解を増進する。
【0201】
リグノセルロース(トウモロコシ茎葉、最終反応物10 mL中に0.2 g)にペルオキシ酢酸(Sigma Chemical、最終濃度2.0%)を接触させた。この化学薬剤は酢酸及び硫酸も含有していることから、酢酸(最終濃度2.6%)及び硫酸(最終濃度0.06%)の混合物をコントロールとして使用した。反応物は80℃で24時間インキュベートした。次に両反応物に0.03 mLのスペザイムCP(Genencor)を加え40℃で24時間インキュベートした。糖の遊離をDNS分析によって測定した。ペルオキシ酢酸は茎葉から糖を遊離させることが認められた(表36)。
【0202】
表36 ペルオキシ酢酸の前処理はトウモロコシ茎葉の加水分解を増進する。
【0203】
【表36】

実施例33 過炭酸ナトリウム並びに次亜塩素酸ナトリウム、ペルオキシ酢酸による前処理によって、低濃度の酵素での加水分解が可能となる。
【0204】
リグノセルロース(トウモロコシ茎葉、最終反応物10 mL中に0.2 g)に、過炭酸ナトリウム(最終濃度1.0%)もしくは次亜塩素酸ナトリウム(遊離塩素1.0%、最終濃度)、ペルオキシ酢酸(最終濃度2.0%)を80℃で24時間接触させた。0.03 mLもしくは0.012 mL、0006 mLのスペザイムCP(Genencor)を加え、反応物を40℃で120時間インキュベートした。糖類の遊離をDNS分析によって測定した。過炭酸ナトリウム並びに次亜塩素酸ナトリウム、ペルオキシ酢酸での前処理によって、使用する酵素が低濃度であっても加水分解が可能となった(表37)。
【0205】
表37 過炭酸ナトリウム並びに次亜塩素酸ナトリウム、ペルオキシ酢酸による前処理によって、低濃度の酵素での加水分解が可能となる。
【0206】
【表37】

結論
上記に示した結果は、本発明の方法がリグノセルロース分解に有用な多数の利点を提供することを立証している。これらの利点には以下が含まれる:(1)簡単な手順で反応物を使用することができる、(2)当該工程で使用する酵素の量を減らすことができる、(3)高い濃度の糖溶液を生成して利用することができる、(4)毒性生成物が生じないため、処理した生成物はさらに加工する必要がなく、発酵に直接使用することができる。また、これらの利点から経済的利益が導かれる。
【0207】
この明細書で記載されている全ての出版物及び特許出願は、本発明が属する分野の技術者の標準的技術を示している。全ての出版物及び特許出願は、個々の出版物あるいは特許出願が具体的且つ個別に参考のため添付されていると示してあるものと同範囲に、参考のためこの明細に添付する。
【0208】
前記発明は、明確な理解という目的のための説明及び例示のためにいくらか詳細に記載されているが、一定の変更並びに改変を附属する請求項の範囲内で実施することが可能なことは明白であるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0209】
【図1】図1は、H及びセルラーゼ処理をして、トウモロコシ葉茎から可溶化した糖類(ブドウ糖とキシロース)のクロマトグラムを示す。
【図2】図2は、様々な濃度の過酸化水素のみによる処理あるいは酵素を併用した処理の後に、トウモロコシ葉茎から遊離された還元糖の量(DNS法によって測定。)を示す。
【図3】図3は、処理後24時間目の、残留する過酸化水素のパーセンテージと合わせて同時点での還元糖の量を示す。
【図4】図4は、600 nmにおける吸光度から測定された微生物の増殖量を、培地中の糖(トウモロコシ葉茎の糖類もしくはブドウ糖とキシロース)のパーセンテージと比較して示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグノセルロースを加水分解するための方法であって、中程度条件下で該リグノセルロースと少なくとも1つの化学物質とを接触させて、処理したリグノセルロースを産生する工程、および該処理したリグノセルロースと、リグノセルロースを加水分解し得る少なくとも1つの酵素とを接触させる工程を包含し、ここで、該化学物質が、酸化剤、変性剤、界面活性剤、有機溶媒、塩基、およびこれらの組合わせからなる群より選択される、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、ここで、前記中程度条件が、以下:
a)約10℃〜約90℃の温度;
b)約2atm未満の圧力;および
c)約pH 4.0と約pH 10.0との間のpH、
からなる群より選択される少なくとも2つの条件を含む、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、ここで、前記中程度条件が、以下:
a)約10℃〜約90℃の温度;
b)約2atm未満の圧力;および
c)約pH 4.0と約pH 10.0との間のpH、
を含む、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、ここで、前記化学物質が、過酸化水素、尿素過酸化水素、過酸化ベンゾイル、スーパーオキシド、スーパーオキシドカリウム、次亜塩素酸塩、次亜塩素酸、塩素、硝酸、過酸化物、ペルオキシ酢酸、過硫酸塩、過炭酸塩、過マンガン酸塩、四酸化オスミウム、酸化クロム、およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムからなる群より選択される酸化剤を含む、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、ここで、前記化学物質が、有機溶媒を含む、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、ここで、前記化学物質が、変性剤を含む、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、ここで、前記化学物質が、界面活性剤を含む、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、ここで、前記化学物質が、塩基を含む、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記リグノセルロースを、粉砕、ミリング、煮沸、凍結、および減圧濾過からなる群より選択される少なくとも1つの物理的処理に供する工程をさらに包含する、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、ここで、前記中程度条件が、約80℃の温度を含む、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、ここで、前記中程度条件が、約pH 5.0のpHを含む、方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、ここで、前記接触が、約24時間にわたって生じる、方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法であって、ここで、前記酵素が、セルラーゼ、キシラナーゼ、リグニナーゼ、アミラーゼ、グルクロニダーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、およびグルクロニダーゼからなる群より選択される少なくとも1つの酵素を含む、方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、ここで、酵素の添加前に、前記温度が、該酵素にとって最適であるように調整される、方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法であって、ここで、酵素の添加前に、前記pHが、該酵素にとって最適であるように調整される、方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法であって、ここで、前記酵素の添加前に、前記化学物質が、除去される、方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、リサイクル化学物質を得るためのさらなる処理前に、前記処理したリグノセルロースから前記化学物質を除去する工程をさらに包含する、方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法であって、ここで、前記リグノセルロースと、少なくとも1つの化学物質とを接触させる工程が、該リグノセルロースと、リグノセルロースを加水分解し得る少なくとも1つの酵素とを接触させる工程と同時に生じる、方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法であって、少なくとも1つの発酵生物の添加工程をさらに包含し、ここで、該方法が、少なくとも1つの発酵ベースの生成物の生産をもたらす、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、ここで、前記生成物が、乳酸、燃料、有機酸、産業的酵素、医薬品、およびアミノ酸からなる群より選択される、方法。
【請求項21】
リグノセルロース材料を前処理するための方法であって、中程度条件下で該材料と少なくとも1つの化学物質とを接触させて、処理したリグノセルロースを産生する工程を包含し、ここで、該化学物質が、酸化剤、変性剤、界面活性剤、有機溶媒、塩基、およびこれらの組合わせからなる群より選択される、方法。
【請求項22】
植物材料から物質を遊離するための方法であって、以下:
a)約10℃〜約90℃の温度;
b)約2atm未満の圧力;および
c)約pH 4.0と約pH 10.0との間のpH、
からなる群より選択される少なくとも1つの条件下で該植物材料と少なくとも1つの化学物質とを接触させて、処理した植物材料を産生する工程を包含し、ここで、該化学物質が、酸化剤、変性剤、界面活性剤、有機溶媒、塩基、およびこれらの組合わせからなる群より選択される、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、前記処理した植物材料と、リグノセルロースを加水分解し得る少なくとも1つの酵素とを接触させる工程をさらに包含する、方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、ここで、前記植物材料が、リグノセルロースを加水分解し得る少なくとも1つの酵素を含む、方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、ここで、前記植物材料が、リグノセルロースを加水分解し得る少なくとも1つの酵素を発現するように遺伝学的に操作されている少なくとも1つの植物を含む、方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法であって、前記植物材料と前記化学物質とを接触させる前に、リグノセルロースを加水分解し得る前記酵素を発現可能な条件下で該植物材料をインキュベートする工程を包含する、方法。
【請求項27】
請求項22に記載の方法であって、ここで、前記物質が、酵素、医薬品、および機能性食品からなる群より選択される、方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、ここで、前記植物材料が、前記物質を発現するように遺伝学的に操作されている少なくとも1つの植物を含む、方法。
【請求項29】
リグノセルロースを加水分解するための方法であって、該リグノセルロースと少なくとも1つの化学物質とを接触させて、処理したリグノセルロースを産生する工程、および該処理したリグノセルロースと、リグノセルロースを加水分解し得る少なくとも1つの酵素とを接触させる工程を包含し、ここで、該化学物質が、次亜塩素酸塩、次亜塩素酸、塩素、硝酸、過酸化物、ペルオキシ酢酸、過硫酸塩、過炭酸塩、過マンガン酸塩、四酸化オスミウム、酸化クロム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、および酸素ラジカルを産生し得る化合物からなる群より選択される酸化剤である、方法。
【請求項30】
リグノセルロースを加水分解するための方法であって、約9.0〜約14.0のpHで該リグノセルロースと塩基とを接触させて、処理したリグノセルロースを産生する工程、および該処理したリグノセルロースと、リグノセルロースを加水分解し得る少なくとも1つの酵素とを接触させる工程を包含する、方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法であって、ここで、前記塩基が、炭酸ナトリウムまたは水酸化カリウムである、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグノセルロースを加水分解するための方法であって、中程度条件下で該リグノセルロースと少なくとも1つの化学物質とを接触させて、処理したリグノセルロースを産生する工程、および該処理したリグノセルロースと、リグノセルロースを加水分解し得る少なくとも1つの酵素とを接触させる工程を包含し、ここで、該化学物質が、変性剤、界面活性剤、有機溶媒、およびこれらの組合わせからなる群より選択され、該中程度条件が、以下:
a)約10℃〜約90℃の温度;
b)約2atm未満の圧力;および
c)約pH 4.0と約pH 10.0との間のpH、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、ここで、前記化学物質が、有機溶媒を含む、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、ここで、前記化学物質が、変性剤を含む、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、ここで、前記化学物質が、界面活性剤を含む、方法。
【請求項5】
リグノセルロース材料を前処理するための方法であって、中程度条件下で該材料と少なくとも1つの化学物質とを接触させて、処理したリグノセルロースを産生する工程を包含し、ここで、該化学物質が、変性剤、界面活性剤、有機溶媒、およびこれらの組合わせからなる群より選択され、該中程度条件が、以下:
a)約10℃〜約90℃の温度;
b)約2atm未満の圧力;および
c)約pH 4.0と約pH 10.0との間のpH、
を含む、方法。
【請求項6】
リグノセルロースを加水分解するための方法であって、該リグノセルロースと少なくとも1つの化学物質とを接触させて、処理したリグノセルロースを産生する工程、および該処理したリグノセルロースと、リグノセルロースを加水分解し得る少なくとも1つの酵素とを接触させる工程を包含し、ここで、該化学物質が、次亜塩素酸塩、次亜塩素酸、塩素、硝酸、過硫酸塩、過炭酸塩、過マンガン酸塩、四酸化オスミウム、酸化クロム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、尿素過酸化水素、過酸化ベンゾイル、スーパーオキシド、およびスーパーオキシドカリウムからなる群より選択される酸化剤である、方法。
【請求項7】
リグノセルロースを加水分解するための方法であって、約9.0〜約14.0のpHで該リグノセルロースと塩基とを接触させて、処理したリグノセルロースを産生する工程、および該処理したリグノセルロースと、リグノセルロースを加水分解し得る少なくとも1つの酵素とを接触させる工程を包含し、ここで、該塩基が、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、水酸化ルビジウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム、水酸化スズ(II)、および水酸化鉄からなる群より選択される、方法。
【請求項8】
リグノセルロースを加水分解するための方法であって、中程度条件下で該リグノセルロースと酸化剤とを接触させて、処理したリグノセルロースを産生する工程、および該処理したリグノセルロースと、リグノセルロースを加水分解し得る少なくとも1つの酵素とを接触させる工程を包含し、ここで、該中程度条件が、以下:
a)約10℃〜約90℃の温度;
b)約2atm未満の圧力;および
c)約pH 4.0と約pH 6.0との間のpH;
を含み、該方法が、強酸処理を包含しない、方法。
【請求項9】
リグノセルロースを加水分解するための方法であって、中程度条件下で該リグノセルロースと酸化剤とを接触させて、処理したリグノセルロースを産生する工程、および該処理したリグノセルロースと、リグノセルロースを加水分解し得る少なくとも1つの酵素とを接触させる工程を包含し、ここで、該中程度条件が、以下:
a)約80℃の温度;
b)約2atm未満の圧力;および
c)約pH 4.0と約pH 10.0との間のpH;
を含み、該方法が、強酸処理を包含しない、方法。
【請求項10】
リグノセルロース材料を前処理するための方法であって、中程度条件下で該材料と酸化剤とを接触させて、処理したリグノセルロースを産生する工程を包含し、ここで、該中程度条件が、以下:
a)約10℃〜約90℃の温度;
b)約2atm未満の圧力;および
c)約pH 4.0と約pH 6.0との間のpH;
を含み、該方法が、強酸処理を包含しない、方法。
【請求項11】
リグノセルロース材料を前処理するための方法であって、中程度条件下で該材料と酸化剤とを接触させて、処理したリグノセルロースを産生する工程を包含し、ここで、該中程度条件が、以下:
a)約80℃の温度;
b)約2atm未満の圧力;および
c)約pH 4.0と約pH 10.0との間のpH;
を含み、該方法が、強酸処理を包含しない、方法。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、前記酸化剤が、過酸化水素、尿素過酸化水素、過酸化ベンゾイル、スーパーオキシド、スーパーオキシドカリウム、次亜塩素酸塩、次亜塩素酸、塩素、硝酸、過酸化物、ペルオキシ酢酸、過硫酸塩、過炭酸塩、過マンガン酸塩、四酸化オスミウム、酸化クロム、およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムからなる群より選択される、方法。
【請求項13】
リグノセルロースを加水分解するための方法であって、該リグノセルロースと、約pH 4.0と約pH 6.0との間のpHで酸素ラジカルを産生し得る化合物とを接触させて、処理したリグノセルロースを産生する工程、および該処理したリグノセルロースと、リグノセルロースを加水分解し得る少なくとも1つの酵素とを接触させる工程を包含し、ここで該方法が、強酸処理を包含しない、方法。
【請求項14】
リグノセルロースを加水分解するための方法であって、該リグノセルロースと、約80℃の温度で酸素ラジカルを産生し得る化合物とを接触させて、処理したリグノセルロースを産生する工程、および該処理したリグノセルロースと、リグノセルロースを加水分解し得る少なくとも1つの酵素とを接触させる工程を包含し、ここで該方法が、強酸処理を包含しない、方法。
【請求項15】
リグノセルロースを加水分解するための方法であって、該リグノセルロースと、約4.0〜約10.0のpHでペルオキシ酸とを接触させて、処理したリグノセルロースを産生する工程、および該処理したリグノセルロースと、リグノセルロースを加水分解し得る少なくとも1つの酵素とを接触させる工程を包含する、方法。
【請求項16】
リグノセルロースを加水分解するための方法であって、中程度条件下で該リグノセルロースと少なくとも1つの塩基とを接触させて、処理したリグノセルロースを産生する工程、および該処理したリグノセルロースと、リグノセルロースを加水分解し得る少なくとも1つの酵素とを接触させる工程を包含し、ここで、該中程度条件が、以下:
a)約10℃〜約90℃の温度;
b)約2atm未満の圧力;および
c)約pH 4.0と約pH 8.0との間のpH;
を含み、該方法が、強酸処理を包含しない、方法。
【請求項17】
請求項1〜11または13〜16のいずれか1項に記載の方法であって、前記リグノセルロースを、粉砕、ミリング、煮沸、凍結、および減圧濾過からなる群より選択される少なくとも1つの物理的処理に供する工程をさらに包含する、方法。
【請求項18】
請求項1〜8、10、13、15、または16のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、前記中程度条件が、約80℃の温度を含む、方法。
【請求項19】
請求項1〜6、8〜11または13〜16のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、前記中程度条件が、約pH 5.0のpHを含む、方法。
【請求項20】
請求項1〜11または13〜16のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、前記接触が、約24時間にわたって生じる、方法。
【請求項21】
請求項1〜11または13〜16のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、前記酵素が、セルラーゼ、キシラナーゼ、リグニナーゼ、アミラーゼ、グルクロニダーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、およびグルクロニダーゼからなる群より選択される少なくとも1つの酵素を含む、方法。
【請求項22】
請求項1〜11または13〜16のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、酵素の添加前に、前記温度が、該酵素にとって最適であるように調整される、方法。
【請求項23】
請求項1〜11または13〜16のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、前記酵素の添加前に、前記pHが、該酵素にとって最適であるように調整される、方法。
【請求項24】
請求項1〜11または13〜16のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、前記酵素の添加前に、前記化学物質が、除去される、方法。
【請求項25】
請求項1〜11または13〜16のいずれか1項に記載の方法であって、リサイクル化学物質を得るためのさらなる処理前に、前記処理したリグノセルロースから前記化学物質を除去する工程をさらに包含する、方法。
【請求項26】
請求項1〜11または13〜16のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、前記リグノセルロースと、少なくとも1つの化学物質とを接触させる工程が、該リグノセルロースと、リグノセルロースを加水分解し得る少なくとも1つの酵素とを接触させる工程と同時に生じる、方法。
【請求項27】
請求項1〜11または13〜16のいずれか1項に記載の方法であって、少なくとも1つの発酵生物の添加工程をさらに包含し、ここで、該方法が、少なくとも1つの発酵ベースの生成物の生産をもたらす、方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、ここで、前記生成物が、乳酸、燃料、有機酸、産業的酵素、医薬品、およびアミノ酸からなる群より選択される、方法。
【請求項29】
トランスジェニック植物材料から物質を遊離するための方法であって、以下:
a)約10℃〜約90℃の温度;
b)約2atm未満の圧力;および
c)約pH 4.0と約pH 10.0との間のpH、
の条件下で該植物材料と少なくとも1つの化学物質とを接触させて、処理した植物材料を産生する工程を包含し、ここで、該化学物質が、酸化剤、変性剤、界面活性剤、有機溶媒、塩基、およびこれらの組合わせからなる群より選択される、方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法であって、前記処理した植物材料と、リグノセルロースを加水分解し得る少なくとも1つの酵素とを接触させる工程をさらに包含する、方法。
【請求項31】
請求項29に記載の方法であって、ここで、前記トランスジェニック植物材料が、リグノセルロースを加水分解し得る少なくとも1つの酵素を発現するように遺伝学的に操作されている少なくとも1つの植物を含む、方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法であって、前記植物材料と前記化学物質とを接触させる前に、リグノセルロースを加水分解し得る前記酵素の発現が可能な条件下で該植物材料をインキュベートする工程を包含する、方法。
【請求項33】
請求項29に記載の方法であって、ここで、前記物質が、酵素、医薬品、および機能性食品からなる群より選択される、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−519606(P2006−519606A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506962(P2006−506962)
【出願日】平成16年3月8日(2004.3.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/007086
【国際公開番号】WO2004/081185
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(504405534)アセニクス コーポレイション (3)
【Fターム(参考)】