説明

リグノフェノール−ポリ乳酸複合体

【課題】植物由来のリグノフェノールやポリ乳酸の新たな用途を開発すること。
【解決手段】本発明は、分子中にポリ乳酸からなる分岐鎖を少なくとも3個有する、リグノフェノール−ポリ乳酸複合体を提供する。このリグノフェノール−ポリ乳酸複合体は、分子中に少なくとも3個の水酸基を有するリグノフェノールを開始剤として用いて、ラクチドを開環重合させる工程によって得られる。この複合体は、ポリ乳酸に添加することにより、ポリ乳酸の結晶化度を低下させることが可能である。また、ポリ乳酸の可塑化効果も有し、さらに、ポリ乳酸と他のポリマーとの相溶化剤としても用いられ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リグノフェノール−ポリ乳酸複合体に関する。より詳細には、木材の一構成成分であるリグニンをフェノール誘導体化して得られるリグノフェノールとポリ乳酸との複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
植物原料をはじめとする再生可能な資源を用いた材料の開発は、循環型社会構築の観点から緊急に着手すべき社会性の高い研究テーマである。石油を主原料とするプラスチックを再生可能な原料から製造されたバイオベースポリマーに置き換えることができれば、ライフサイクルの中では大気中の二酸化炭素を増加させない「カーボンニュートラル」が実現し、地球温暖化の防止に貢献できる。
【0003】
森林資源であるリグノセルロース系材料は、セルロースやヘミセルロースなどの親水性炭水化物と疎水性のリグニン(ポリフェノール)とから構成され、これらは細胞壁中で相互侵入高分子網目(IPN)構造をとり、複雑に絡みあって複合体を形成した状態となっている。リグノセルロース系材料には、このような複合体の構造に応じて各種素材としての有用性が付与されている。しかし、リグニンは、構造の複雑さおよび化学的安定性の高さから、工業的利用は困難であった。そこで、リグニンの複合体構成材料としての機能に着目して、リグノセルロース系材料からリグノフェノール誘導体の形態で抽出する技術が開発されている(特許文献1および2ならびに非特許文献1および2)。
【0004】
リグノフェノール誘導体は、一般的に分子量が数千程度であって、単独では成形性が悪く、その形状を維持することができないという欠点があるため、用途が限定されていた。リグノフェノール誘導体とシランカップリング剤とを混合することによって、フィルム形状を維持することが可能なリグノフェノールハイブリッド材料が得られることが報告されているにすぎない(特許文献3)。
【0005】
一方、ラクチドまたは乳酸の重合によって得られるポリ乳酸は、再生可能資源で構成されたポリエステルである。ポリ乳酸は、ポリエチレン(PE)と同等の引張強度、ならびにポリエチレンテレフタレート(PET)と同等の透明性を有する結晶性熱可塑性高分子である。また、ポリ乳酸を燃焼した場合の燃焼カロリーは、PE、ポリプロピレン(PP)などの約1/3と小さく、焼却炉を痛めることが少なく、有害なガスの発生もない。さらに、ポリ乳酸の原料は植物由来の再生可能資源であるため、焼却処理したときの二酸化炭素の増加が環境への負荷となりにくい。そのため、地球環境にも優しい。特に、トウモロコシから製造されるポリ乳酸に対する関心が高い。
【0006】
上述のような利点のため、近年、ポリ乳酸の製造方法や応用用途などの研究開発が盛んになり、用途の多角化とそれに伴う生産量の増加が期待されている。例えば、医薬用資材(縫合糸など)、農業用資材(シート、フィルムなど)、食品包装用資材(食品包装フィルム、シート、袋など)、その他の包装用資材(衣料、日用雑貨包装用シート、フィルム、袋など)などへの利用が期待されている。しかし、熱可塑性であるポリ乳酸は、結晶性が高く、融点も高いために、樹脂原料や塗料などの各種の用途に使用する際の作業性が悪いという欠点がある。
【特許文献1】国際公開第99/14223号パンフレット
【特許文献2】特開2003−268116号公報
【特許文献3】特開2006−342270号公報
【非特許文献1】M. Funaoka、Polymer International,47巻,277頁,1998年
【非特許文献2】Y. NagamatsuおよびM. Funaoka、Green Chemistry,5巻,595頁,2003年
【非特許文献3】A. S. Karikariら、Biomacromolecules,6巻,2866頁,2005年
【非特許文献4】Y. Ikadaら、Macromolecules,20巻,904頁,1987年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、植物由来の資源であるリグノフェノールやポリ乳酸の新たな用途を開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
乳酸の環状二量体であるラクチドが、スズ触媒を用いることにより、一級水酸基からポリ乳酸鎖をグラフトできることが知られている(非特許文献3)。本発明は、リグノフェノールの一級水酸基に着目し、ここからラクチドの開環重合を開始させることによって、リグノフェノールとポリ乳酸との複合体(リグノフェノール−ポリ乳酸複合体)が得られることを見い出したことに基づく。
【0009】
本発明は、分子中にポリ乳酸からなる分岐鎖を少なくとも3個有する、リグノフェノール−ポリ乳酸複合体を提供する。
【0010】
1つの実施態様では、上記リグノフェノール−ポリ乳酸複合体は、分子中に少なくとも3個の水酸基を有するリグノフェノールを開始剤として用いて、ラクチドを開環重合させる工程によって得られる。
【0011】
ある実施態様では、上記ラクチドはL体である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、植物由来材料であるリグノフェノールとポリ乳酸との複合体(すなわち、リグノフェノール−ポリ乳酸複合体)が提供される。この複合体は、ポリ乳酸の改質剤として用いられ、ポリ乳酸の結晶化度を低下させ、靭性を向上させることが可能である。また、ポリ乳酸の可塑化効果も有する。さらに、この複合体は、ポリ乳酸と他のポリマーとの相溶化剤としても用いられ得る。また、この複合体の原料は、いずれも植物由来であるため、二酸化炭素の増加が環境への負荷となりにくく、地球環境にも優しい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(リグノフェノール)
本明細書において、リグノフェノールとは、リグニンにフェノールまたはフェノール誘導体が付加された化合物をいう。
【0014】
以下に、本発明に使用可能なリグノフェノールの一例の部分構造式を示す。
【0015】
【化1】

【0016】
リグノフェノールの分子量は、特に限定されない。物性などの点から、分子量500以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましい。また、取り扱い易さなどから、分子量10万以下であることが好ましく、1万以下であることがより好ましい。
【0017】
(リグノフェノールの製造方法)
リグノフェノールは、リグニンにフェノール誘導体を付加させることによって得ることができる。
【0018】
リグノフェノールの製造に用いられるリグニンは、特に限定されない。精製されたリグニンを用いてもよいが、より簡便には、任意のリグノセルロース系材料中に存在するリグニンが使用可能である。リグノセルロース系材料としては、例えば、植物の木質化した部分(例えば、木材)またはその加工製品(例えば、紙)が挙げられる。
【0019】
木材を用いる場合、その樹木の種類は特に限定されない。針葉樹であってもよく、広葉樹であってもよい。また、イネ、トウモロコシ、サトウキビなどの各種草本植物をリグノセルロース系材料の原料として用いることもできる。
【0020】
また、リグノセルロース系材料は、リグノセルロース系材料の廃材または端材であってもよく、リグノセルロース系材料からなる飼料や農産廃棄物なども用いることができる。リグノセルロース系材料は、粉状、チップ状などの形態を問わずに用いることができる。粉状のものが、リグノセルロース材料からリグノフェノールを効率的に製造するのに都合がよい。
【0021】
フェノール誘導体とは、1価フェノール誘導体、2価フェノール誘導体、または3価フェノール誘導体をいう。
【0022】
1価フェノール誘導体とは、フェノールまたはフェノールのベンゼン環に置換基を有する化合物をいう。具体的には、フェノール、クレゾールなどが挙げられる。
【0023】
2価フェノール誘導体とは、2価フェノールまたはそのベンゼン環に置換基を有する化合物をいう。具体的には、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノンなどが挙げられる。
【0024】
3価フェノール誘導体とは、3価フェノールまたはそのベンゼン環に置換基を有する化合物をいう。具体的には、フロログルシノール、ヒドロキシヒドロキノン、ピロガロールなどが挙げられる。
【0025】
1価、2価、および3価フェノール誘導体の中では、1価フェノール誘導体が好ましい。クレゾールがより好ましい。
【0026】
クレゾールは、o−クレゾールであってもよく、m−クレゾールであってもよく、p−クレゾールであってもよい。p−クレゾールが最も好ましい。
【0027】
フェノール誘導体におけるベンゼン環上の置換基の数は、任意に選択できる。1〜3が好ましく、1〜2がより好ましく、さらに好ましくは1である。
【0028】
フェノール誘導体におけるベンゼン環上の置換基としては、任意のものが使用可能である。好ましくは、アルキル基である。このアルキル基は直鎖であってもよく分岐鎖であってもよい。このアルキル基の炭素数は好ましくは1〜5であり、より好ましくは1〜3であり、さらに好ましくは1である。
【0029】
リグノセルロース系材料にフェノール誘導体を反応させると、リグノセルロース系材料中のリグニンがフェノール誘導体でグラフト化されて、リグニンの基本骨格であるフェニルプロパン単位の専ら側鎖α位(ベンジル位)にフェノール誘導体が導入されたリグノフェノールが得られる。
【0030】
リグノセルロース系材料は、一般に、リグニン以外の成分を多量に含むので、リグノセルロース系材料をフェノール誘導体で処理した場合の生成物は、通常、リグノフェノール以外の化合物を多量に含む。このため、これらの不純物を除去することにより、純度の高いリグノフェノールが得られる。
【0031】
リグノフェノールの具体的な製造方法としては、従来公知の各種の方法を使用することが可能である。その公知の方法で製造されたリグノフェノールが本発明に使用可能である。
【0032】
例えば、第1の具体的方法として、リグノセルロース系材料をフェノール誘導体で処理し、濃酸を添加して2相の生成物を得、上相(すなわち、有機相)のフェノール誘導体相からリグノフェノールを回収する方法がある(特許文献1を参照のこと)。この場合、必要に応じて、特許文献1の図4に記載されているように、濃酸を添加して得られた2相のうちの上相(有機相)に過剰のエチルエーテルを加えて溶解物と不溶物とに分離し、得られる不溶物にアセトンを加えて溶解物と不溶物とに分離し、その溶解物に過剰のエチルエーテルを加えて溶解物と不溶物とに分離し、不溶物を回収することにより、精製されたリグノフェノールを得ることができる。
【0033】
より具体的には、木粉などのリグノセルロース系材料に液体状のフェノール誘導体(クレゾールなど)を浸透させ、リグニンをフェノール誘導体により溶媒和させた後、リグノセルロース系材料に濃酸(一例として72%硫酸)を添加して混合し、セルロース成分を溶解する。この方法によると、リグニンを溶媒和したフェノール誘導体と、セルロース成分を溶解した濃酸とが2相分離系を形成する。フェノール誘導体により溶媒和されたリグニンは、フェノール誘導体相が濃酸相と接触する界面においてのみ、酸と接触する。そのため、酸との接触により生じたリグニン基本構成単位の高反応サイトである側鎖α位(ベンジル位)のカチオンが、同時にフェノール誘導体により攻撃されることになる。この結果、ベンジル位にフェノール誘導体がC−C結合で導入され、そしてベンジルアリールエーテル結合が開裂することにより低分子化される。このように、リグニンが低分子化され、かつ、その基本構成単位のベンジル位にフェノール誘導体が導入されたリグノフェノールがフェノール誘導体相中に生成される。次いで、このフェノール誘導体相からリグノフェノールを抽出することにより、リグノフェノールが、リグニン中のベンジルアリールエーテル結合が開裂して低分子化されたリグニンの低分子化体の集合体の一部として得られる。なお、ベンジル位へのフェノール誘導体の導入形態は、そのフェノール性水酸基を介して導入されているものもあることが知られている。
【0034】
フェノール誘導体相からのリグノフェノールの抽出は、例えば、次の方法で行うことができる。まず、フェノール誘導体相を大過剰のエチルエーテルに加えて得た沈殿物(不溶物)を集めて、アセトンに溶解する。アセトン不溶物を遠心分離により除去し、アセトン可溶部を濃縮する。このアセトン可溶部を、大過剰のエチルエーテルに滴下し、沈殿物を集める。この沈殿物から溶媒を留去した後、五酸化リン入りデシケータ中で乾燥し、リグノフェノールを得る。なお、粗リグノフェノールは、フェノール誘導体相を単に減圧蒸留により除去することによって得ることもできる。また、アセトン可溶部を、そのままリグノフェノール溶液として、二次誘導体化処理に用いることもできる。
【0035】
第2の具体的方法は、特許文献1の図5に示されるとおりである。具体的には、まず、リグノセルロース系材料に、固体状あるいは液体状のフェノール誘導体を溶解した溶媒(例えば、エタノール、アセトン)を浸透させた後、溶媒を留去する(フェノール誘導体の吸着工程)。次に、このリグノセルロース系材料に濃酸を添加してセルロース成分を溶解する。この結果、第1の方法と同様に、フェノール誘導体により溶媒和された状態のリグニンは、濃酸と接触して生じたリグニンの高反応サイト(側鎖α位)のカチオンがフェノール誘導体により攻撃され、フェノール誘導体が導入される。また、ベンジルアリールエーテル結合が開裂してリグニンが低分子化される。得られるリグノフェノールの特性は、第1の方法で得られるものと同様である。次いで、リグノフェノールを液体状のフェノール誘導体にて抽出する。フェノール誘導体相からのリグノフェノールの抽出も、第1の方法と同様にして行うことができる。あるいは、濃酸処理後の全反応液を過剰の水中に投入し、不溶物を遠心分離にて集め、透析し、乾燥する。得られた乾燥物にアセトンあるいはアルコールを加えてリグノフェノールを抽出する。さらに、この可溶部を第1の方法と同様に、過剰のエチルエーテルなどに滴下して、リグノフェノールを沈殿物として得る。
【0036】
この方法においても、同様に、アセトン可溶部をリグノフェノール溶液として、2次誘導体化処理に用いることもできる。
【0037】
これらの2種類の方法においては、第2の方法が、なかでも特に後者、すなわち、リグノフェノールをアセトンまたはアルコールにて抽出分離する方法が、フェノール誘導体の使用量が少なくてすむため、経済的である。また、この方法は、少量のフェノール誘導体で、多くのリグノセルロース系材料を処理できるため、リグノフェノールの大量合成に適している。
【0038】
第3の具体的方法は、リグニンにフェノール誘導体を添加し、酸を添加し、過剰の水を加えて可溶部と不溶物とに分離し、不溶物を乾燥し、酸化防止剤およびアルカリ水溶液を添加し、その後固液分離(例えば、遠心分離)を行ってリグノフェノールを得る方法である(特許文献2)。
【0039】
上述したいずれの方法で得られたリグノフェノールも、通常は分子中に少なくとも3個の水酸基を有するので、本発明に使用可能である。
【0040】
(ラクチド)
本発明のリグノフェノール−ポリ乳酸複合体の1つの特徴である星型分岐鎖における分岐鎖を構成するポリ乳酸は、例えば、リグノフェノールを開始剤としてラクチドを開環重合することによって合成される。
【0041】
本発明において、ラクチドとは、2分子の乳酸の脱水縮合によって得られる環状ジエステルをいう。したがって、再生可能資源である。本発明においては、市販のラクチドを用いることができる。
【0042】
ラクチドには光学異性体が存在する。ラクチドを構成する乳酸は、例えば、乳酸発酵により得られる。乳酸菌の発酵によって、多くの場合はL体のみが得られる。しかし、いくつかの微生物(例えば、Lactobacillus lactis、Lactobacillus bulgaricus、Leuconostoc cremoris)はD体を生成する。このような微生物を含む数種類の微生物を混合して発酵に供することによって、DL体(ラセミ体)の乳酸を得ることができ、脱水縮合によりDL体のラクチドを得ることができる。また、乳酸ラセマーゼを生産する微生物により、L−乳酸をラセミ化させて、DL体の乳酸を生成し、さらに脱水縮合させてDL体のラクチドを得ることもできる。
【0043】
(リグノフェノール−ポリ乳酸複合体)
本発明のリグノフェノール−ポリ乳酸複合体は、乳酸を構成単位とする分岐鎖(すなわち、ポリ乳酸鎖または乳酸オリゴマー鎖)を分子中に少なくとも3個有する星型分岐状ポリマーである。具体的には、以下に構造を模式的に示すように、分子中に少なくとも3個の水酸基を有するリグノフェノールの各水酸基に、ポリ乳酸のカルボキシ末端がそれぞれエステル結合されている。
【0044】
【化2】

【0045】
本発明のリグノフェノール−ポリ乳酸複合体は、リグノフェノールとポリ乳酸鎖との割合によって物理的および化学的性質が変化する。一般的には、ポリ乳酸鎖の割合が多いほど、すなわち、ポリ乳酸鎖が長いほど、分子量が大きくなる。リグノフェノールはクロロホルムに不溶であるが、リグノフェノール−ポリ乳酸複合体はクロロホルムに可溶である。ただし、分子量が大きくなると、リグノフェノールが可溶であるアセトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、およびテトラヒドロフラン(THF)に難溶になる。また、リグノフェノール−ポリ乳酸複合体の分子量が大きくなるほど、ガラス転移温度(Tg)が低下する。
【0046】
このようなリグノフェノール−ポリ乳酸複合体は、ポリ乳酸の改質剤として有用である。例えば、ポリ乳酸の結晶化度、靭性などを低下させることができる。
【0047】
(リグノフェノール−ポリ乳酸複合体の合成方法)
本発明のリグノフェノール−ポリ乳酸複合体の合成方法は、特に限定されない。好適には、本発明のリグノフェノール−ポリ乳酸複合体は、分子中に少なくとも3個の水酸基を有するリグノフェノールを開始剤として用いて、ラクチドを開環重合させる工程によって得られる。具体的には、リグノフェノールおよびラクチドを十分に乾燥した容器に入れ、触媒を投入して、不活性ガス下で加熱攪拌することによって、リグノフェノールを起点としてラクチドが開環重合したポリ乳酸鎖を有するリグノフェノール−ポリ乳酸複合体を合成することができる。
【0048】
リグノフェノールとラクチドとの仕込み比は、質量比(リグノフェノール(LP)/ラクチド(LA))で、好ましくは1/0.5〜1/50、さらに好ましくは1/1〜1/10である。ラクチド(LA)の比率が50よりも大きくなると、分岐鎖であるポリ乳酸鎖が長くなると共に、ポリ乳酸としての特性が現れやすくなる。すなわち、結晶性が増大し、融点の上昇を招き、そのためポリ乳酸の改質剤として機能しにくくなる。得られるリグノフェノール−ポリ乳酸複合体のポリ乳酸の改質剤としての物性の点で、リグノフェノールとラクチドとの仕込み比は1/1〜1/3がより好ましい。
【0049】
合成に用いられるラクチドは、L体、DL体、およびD体のいずれであってもよい。得られるリグノフェノール−ポリ乳酸複合体をポリ乳酸に添加した場合に、ポリ乳酸の結晶化度を大きく低下させることができる点で、L体が好ましい。
【0050】
ラクチドを開環重合する際の触媒としては、当業者が通常用いるものが挙げられる。具体的には、ポルフィリンアルミニウム錯体、(n−CO)AlZn、複合金属シアン化錯体、二塩化スズ(SnCl)、2−エチルヘキサン酸スズ、オクチル酸スズ(SnOct)、ジエチル亜鉛−水またはジエチルカドミウム、アルミニウムトリイソプロポキシド、チタニウムテトラブトキシド、ジルコニウムテトラプロポキシド、トリブチルスズメトキシド、テトラフェニルスズ、酸化鉛、ステアリン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸ビスマス、カリウムアルコラート、フッ化アンチモン触媒、工業的にはスタナスオクタノエート触媒が挙げられる。収率の点から、二塩化スズ(SnCl)、2−エチルヘキサン酸スズ、およびオクチル酸スズ(SnOct)が特に好ましい。触媒の使用量は特に限定されないが、リグノフェノールとラクチドとの合計100質量部に対して、約0.0001〜5質量部が適切であり、約0.05〜1質量部が好ましい。
【0051】
不活性ガスとしては、特に限定されないが、例えば、窒素ガスおよびアルゴンガスが挙げられる。
【0052】
上記重合反応は、常温下でも行い得るが、必要に応じて加熱する。好ましくは100℃〜180℃の範囲に、さらに好ましくは120℃〜160℃に加熱する。100℃未満では、反応速度が小さくなるため好ましくない。一方、180℃より高い温度では、分解速度が大きくなることおよび低分子量体が気化してしまうことなどの欠点がある。
【0053】
(リグノフェノール−ポリ乳酸複合体によるポリ乳酸の改質)
本発明のリグノフェノール−ポリ乳酸複合体は、改質剤としてポリ乳酸に添加することにより、ポリ乳酸の結晶化度を低下させ、靭性を向上させることができる。
【0054】
本発明のリグノフェノール−ポリ乳酸複合体をポリ乳酸に添加する場合、例えば、これらをクロロホルムなどの溶媒に溶解して混合した後、型に入れて乾燥させて成形し、ポリ乳酸成形品を得る。
【0055】
リグノフェノール−ポリ乳酸複合体のポリ乳酸への添加量は、複合体の性質に応じて変動する。例えば、リグノフェノール(LP)/ポリ乳酸(LA)=1/2の仕込み質量比の複合体を添加する場合、複合体の添加量は、ポリ乳酸と複合体との合計質量に対して1〜20質量%、好ましくは5〜15質量%である。リグノフェノール−ポリ乳酸複合体の添加量が20質量%より多いと、ポリ乳酸と複合体とが相分離し、ポリ乳酸の物性が悪化する。リグノフェノール−ポリ乳酸複合体の添加量が1質量%より少ないと、改質剤としての効果が発揮されにくい。また、リグノフェノール−ポリ乳酸複合体の仕込み質量比において、リグノフェノールの割合が高い複合体は、その分子量がリグノフェノールの分子量に近いため、リグノフェノール単独を添加したときと類似の効果を示し、一方、ラクチドの割合が高い複合体は、ポリ乳酸の性質に近いため、ポリ乳酸の改質剤としての効果を示しにくい。
【実施例】
【0056】
(実施例1:リグノフェノール−ポリ乳酸複合体の合成)
リグノフェノール(三重大学生物資源学部舩岡正光教授より提供)とL−ラクチド(東京化成工業株式会社)とを任意の質量比(リグノフェノール(LP)/L−ラクチド(LA))で混合し、オクチル酸スズ(和光純薬工業株式会社)を全体量に対して1質量%用いて、アルゴン雰囲気下130℃にて24時間加熱して、リグノフェノール−ポリ乳酸複合体を得た。
【0057】
【化3】

【0058】
リグノフェノール単独および得られたリグノフェノール−ポリ乳酸複合体について、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を行った。
【0059】
なお、SECの測定条件は、以下のとおりである:
カラム:TSK−gel(α−3000,α−M)(東ソー社製)
デガッサ:SD−8022(東ソー社製)
ポンプ:DP−8020(東ソー社製)
検出器:UV−8020(東ソー社製)・RI−8020(東ソー社製)
カラムオーブン:CO−8020(東ソー社製)
オートサンプラ:AS−8020(東ソー社製)
標準物質:ポリスチレン
溶離液:ジメチルホルムアミド(DMF)(なお、LP/LA=1/20についてはDMFに溶けなかったため、クロロホルムを溶離液に用いた)
流速:1.0mL/分
温度:60℃
【0060】
結果を図1および表1に示す。図中の数字は、リグノフェノール(LP)/L−ラクチド(LA)の仕込み質量比(以下、仕込み比という場合がある)を表す。リグノフェノール単独に比べ、得られた複合体の分子量が増加していることから、リグノフェノールにポリ乳酸がコンジュゲートされていると考えられる。また、ラクチドの仕込み比を増加させることによって、SECでの溶出時間が早くなっており、分子量が増加することが分かった。なお、以下で述べるようにホモポリマーの生成が少なかった1/1、1/2、および1/3の仕込み比の複合体については、精製収率を算出した。ポリ乳酸鎖が増すにつれて、精製収率が低下する傾向が見られた。
【0061】
【表1】

【0062】
さらに、LP/LAの仕込み比が1/2のリグノフェノール−ポリ乳酸複合体について、再沈殿による精製を検討した。良溶媒・貧溶媒について検討した結果、良溶媒としてアセトンを用いそして貧溶媒としてトルエンを用いて再沈殿を行った場合に、17〜19分付近および20分付近のホモポリマーおよびラクチドと思われるピークが消失し、図2に示すように、ほぼ単一のピークとなった。図2においては、再沈殿前後のRIのピークおよびUV検出器310nmにおけるピークを示す。ピーク面積比を測定したところ、ホモポリマーおよびラクチドのピーク面積は、目的のリグノフェノール−ポリ乳酸複合体の1%以下になった。
【0063】
(実施例2:リグノフェノール−ポリ乳酸複合体の物性確認)
(1)耐溶媒性
リグノフェノール−ポリ乳酸複合体の耐溶媒性を確認するために、有機溶媒への溶解性を検討した。用いた溶媒は、クロロホルム、アセトン、DMF、およびテトラヒドロフラン(THF)である。結果を表2に示す。
【0064】
【表2】

【0065】
リグノフェノール単独では、クロロホルムに溶解しなかったが、リグノフェノール−ポリ乳酸複合体はいずれもクロロホルムに溶解した。また、リグノフェノール単独ではアセトン、DMF、およびTHFに溶解したが、1/10および1/20の仕込み比の複合体のように高分子量化すると、これらの溶媒に不溶化することもわかった。
【0066】
(2)示差走査熱量測定(DSC)
次に、リグノフェノール−ポリ乳酸複合体の熱的特性を測定するために、EXSTAR6000(Seiko Instruments社製)を用いて示差走査熱量測定(DSC)を行った。測定は、1〜5mgのサンプルを用いて窒素雰囲気下で行った。なお、1回目の測定では熱履歴が反映されるので、一旦200℃まで昇温してサンプルを融解させ、10分間保持することにより、熱履歴を消去した。その後10℃/分で−50℃まで冷却して10分間保持した後、10℃/分で昇温した時のピークを測定した。測定結果を表3に示す。
【0067】
【表3】

【0068】
リグノフェノール−ポリ乳酸複合体の分子量が増大するにつれて、ガラス転移温度(Tg)の低下が見られた。また、明確な融解ピークは確認できなかったため、結晶性が消失し、非晶性の複合体が得られたと考えられる。
【0069】
(3)示差熱熱重量測定(TG/DTA)
さらに、リグノフェノール−ポリ乳酸複合体について、SSC/5200(Seiko Instruments社製)を用いて示差熱熱重量測定(TG/DTA)を行った。測定は、1〜5mgのサンプルを用いて窒素雰囲気下、昇温速度5.0℃/分で行った。結果を図3および表4に示す。熱分解点は、最初の重量と比べて重量が3質量%減少した温度と定義した。
【0070】
【表4】

【0071】
リグノフェノール−ポリ乳酸複合体の形成により、リグノフェノール単独に比べて熱分解温度が向上した。
【0072】
(実施例3:リグノフェノール−ポリ乳酸複合体によるポリ乳酸の改質−1)
(1)リグノフェノール−ポリ乳酸複合体を含むポリ乳酸シートの製造
種々のLP/LA仕込み比で調製したリグノフェノール−ポリ乳酸複合体およびポリ乳酸を、それぞれ以下の表5に示す割合で混合し、その1gをクロロホルム6mLに溶解した。この溶液を、ガラスプレート上に流しこみ、厚さ200μmのアプリケーターで均一の厚さにした。室温で12時間乾燥させた後、ガラスプレートから取り出し、その後、減圧下でさらに1日間乾燥させた。最後にポリ乳酸のガラス転移温度(Tg)以上の70℃で2時間加熱乾燥させてシートを得た。得られたシートは、50〜100μmの厚さとなった。
【0073】
(2)結晶化度
ポリ乳酸が硬くかつ脆いという問題点は、ポリ乳酸の高い結晶化度によるものと考えられる。そこで、リグノフェノール−ポリ乳酸複合体を含むポリ乳酸シートの結晶化度を、DSCにより測定した融解時の融解エンタルピーから求めた。ポリ乳酸が完全結晶化した時の融解エンタルピーは93.6J/gであり、これと比較して各シートの融解エンタルピーを求めた。結果を表5に示す。
【0074】
【表5】

【0075】
リグノフェノール−ポリ乳酸複合体をポリ乳酸に添加することにより、ポリ乳酸に比べて結晶化度の低下が確認された。なかでも、LP/LA仕込み比が1/2のリグノフェノール−ポリ乳酸複合体を添加することにより、ポリ乳酸の結晶化度が最も大きく低下することが分かった。これは、仕込み比1/1のリグノフェノール−ポリ乳酸複合体の分子量が、リグノフェノールの分子量に近いため、リグノフェノール単独を添加した場合と同様に結晶化度がほとんど低下しないことによると考えられる。また、仕込み比1/3のリグノフェノール−ポリ乳酸複合体は、ポリ乳酸の性質により近いため、ポリ乳酸単独と同様に結晶化度の低下がほとんど見られないと考えられる。
【0076】
ガラス転移温度(Tg)および融点(Tm)については、ポリ乳酸単独のシートに比べて、リグノフェノール−ポリ乳酸複合体を含むポリ乳酸シートにおいてもほとんど低下が見られず、ポリ乳酸と同様の耐熱性を保持していることがわかった。
【0077】
(3)透明性
最も結晶化度が低下したLP/LA仕込み比が1/2のリグノフェノール−ポリ乳酸複合体を5質量%添加して製造したポリ乳酸シートについて、透明性を検討した。ポリ乳酸単独で製造したシートは透明である。一方、リグノフェノール自体が薄いピンク色に着色しているため、リグノフェノール−ポリ乳酸複合体を含むポリ乳酸シートは、薄い茶色に着色した。机上に配置したマークをこのシートで覆ったところ、目視により明確に確認可能であり、透明性が保持されていることがわかった。
【0078】
(実施例4:リグノフェノール−ポリ乳酸複合体によるポリ乳酸の改質−2)
最も結晶化度が低下したLP/LA仕込み比が1/2のリグノフェノール−ポリ乳酸複合体を含むポリ乳酸について、一軸伸張試験を行った。一軸伸張試験は、H40mm×W5mm×D50〜100mmの寸法の試験片について、EZ Graph(島津製作所製)を用いて、クロスヘッド速度を5mm/分とし、そしてつかみ具間距離を10mmとして行った。結果を図4および表6に示す。
【0079】
【表6】

【0080】
リグノフェノール−ポリ乳酸複合体をポリ乳酸と複合体との合計質量に対して5質量%添加することにより、最もポリ乳酸の靭性が向上した。しかし、5質量%よりも多く加えると靭性が低下することもわかった。これは、一般的に、結晶性の樹脂の場合には可塑剤の添加量が多くなると表面ににじみ出るブリードを生じやすくなることから、リグノフェノール−ポリ乳酸複合体についても、添加量が多くなると靭性が低下する傾向になったと考えられる。
【0081】
次に、リグノフェノール単独、結晶化度があまり低下しなかった仕込み比が1/1または1/3のリグノフェノール−ポリ乳酸複合体を、ポリ乳酸に対してそれぞれ5質量%添加して製造したポリ乳酸シートについて、一軸伸張試験を行った。結果を図5および6に示す。
【0082】
図5に示すように、リグノフェノール単独をポリ乳酸に添加した場合には、リグノフェノールがポリ乳酸とうまく混合せず、応力および靭性ともに低下した。これに対して、図6に示すように、リグノフェノール−ポリ乳酸複合体を添加した場合は、LP/LAが1/1〜1/3のいずれの仕込み比の複合体であっても、靭性の向上が見られた。
【0083】
(実施例5:D−またはDL−ラクチドを用いたリグノフェノール−ポリ乳酸複合体の合成)
リグノフェノール/ラクチド(LP/LA)の仕込み比が1/2のリグノフェノール−ポリ乳酸複合体を、D−またはDL−ラクチド(東京化成工業株式会社)を用いて合成した。合成条件は、上記実施例1と同様であった。得られた各リグノフェノール−ポリ乳酸複合体について、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)および示差走査熱量測定(DSC)を行った。SECおよびDSCの測定条件は、それぞれ上記実施例1および2と同様である。結果を表7に示す。比較のために、L−ラクチドを用いたリグノフェノール−ポリ乳酸複合体の結果も示す。
【0084】
【表7】

【0085】
表7からわかるように、DL体およびD体のラクチドを用いた場合も、L体を用いた場合とほぼ同じ分子量を有するリグノフェノール−ポリ乳酸複合体が得られた。D体のラクチドを用いたリグノフェノール−ポリ乳酸複合体のガラス転移温度(Tg)はわずかに低下していた。また、どのリグノフェノール−ポリ乳酸複合体も融解ピークが見られず、結晶性がないリグノフェノール−ポリ乳酸複合体が得られた。
【0086】
(実施例6:リグノフェノール−ポリ乳酸複合体によるポリ乳酸の改質−3)
L−、D−またはDL−ラクチドを1/2の仕込み比で用いて合成したリグノフェノール−ポリ乳酸複合体を、ポリ乳酸と複合体との合計質量に対して5質量%添加したポリ乳酸シートを、上記実施例3の(1)と同様にして製造した。これらのポリ乳酸シートについて、結晶化度をDSCにより測定した。結果を表8に示す。
【0087】
【表8】

【0088】
L−ラクチドを用いて合成したリグノフェノール−ポリ乳酸複合体をポリ乳酸に添加した場合に、最も結晶化度が低下することがわかった。光学活性なポリ−L乳酸とポリ−D乳酸との高分子鎖は互いに対称ならせん構造を形成し、これらを1:1で混合するとステレオコンプレックスが形成される(非特許文献4)。そのため、DL−ラクチドを用いてリグノフェノール−ポリ乳酸複合体を合成した場合、ステレオコンプレックスが形成されれば結晶化度が低下すると考えられるが、逆に結晶化度が上昇していた。これは、リグノフェノールから分岐したポリ乳酸鎖が短いためステレオコンプレックスが形成されなかったことによると考えられる。さらに、ステレオコンプレックスが形成されれば融点の上昇も期待される。しかし、ポリ乳酸単独の融点(T=169℃)とほぼ同様であることからも、ステレオコンプレックスが形成されていないと考えられる。
【0089】
(実施例7:リグノフェノール−ポリ乳酸複合体によるポリ乳酸の改質−4)
L−、D−またはDL−ラクチドをLP/LA=1/2の仕込み比で用いて合成したリグノフェノール−ポリ乳酸複合体を、ポリ乳酸と複合体との合計質量に対して5質量%添加して製造したポリ乳酸シートについて、上記実施例4と同様にして一軸伸張試験を行った。結果を図7に示す。
【0090】
最も結晶化度が低いL−ラクチドを用いて合成したリグノフェノール−ポリ乳酸複合体を含むポリ乳酸では、最も靭性が向上することがわかった。DL体またはD体のラクチドを用いた場合は、わずかに改質効果が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明によれば、植物由来材料であるリグノフェノールとポリ乳酸との複合体(リグノフェノール−ポリ乳酸複合体)が提供される。この複合体は、ポリ乳酸の改質剤として用いられ、ポリ乳酸の結晶化度を低下させ、靭性を向上させることが可能である。また、ポリ乳酸の可塑化効果も有する。さらに、この複合体は、ポリ乳酸と他のポリマーとの相溶化剤としても用いられ得る。このように、結晶性が高く、融点も高いために、樹脂原料や塗料などの各種の用途に使用する際の作業性が悪いというポリ乳酸の欠点を改質することができる。したがって、農業用資材(シート、フィルムなど)、食品包装用資材(食品包装フィルム、シート、袋など)、医療材料、その他の包装用資材(衣料、日用雑貨包装用シート、フィルム、袋など)などへのポリ乳酸の応用範囲を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】リグノフェノール単独および種々のリグノフェノール−ポリ乳酸複合体についてのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の結果を示すクロマトグラムである。
【図2】LP/LAの仕込み質量比が1/2のリグノフェノール−ポリ乳酸複合体についての再沈殿前後のRI検出およびUV検出によるSECのクロマトグラムである。
【図3】リグノフェノール−ポリ乳酸複合体についての示差熱熱重量測定(TG/DTA)による温度と残存重量との関係を示すグラフである。
【図4】仕込み質量比がLP/LA=1/2のリグノフェノール−ポリ乳酸複合体を含むポリ乳酸の一軸伸張試験における引張応力−ひずみ曲線である。
【図5】仕込み質量比がLP/LA=1/2のリグノフェノール−ポリ乳酸複合体を含むポリ乳酸およびポリ乳酸単独の一軸伸張試験における引張応力−ひずみ曲線である。
【図6】種々の仕込み質量比のリグノフェノール−ポリ乳酸複合体を含むポリ乳酸の一軸伸張試験における引張応力−ひずみ曲線である。
【図7】L−、D−またはDL−ラクチドを用いて合成したリグノフェノール−ポリ乳酸複合体を含むポリ乳酸の一軸伸張試験における引張応力−ひずみ曲線である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中にポリ乳酸からなる分岐鎖を少なくとも3個有する、リグノフェノール−ポリ乳酸複合体。
【請求項2】
分子中に少なくとも3個の水酸基を有するリグノフェノールを開始剤として用いて、ラクチドを開環重合させる工程によって得られる、請求項1に記載のリグノフェノール−ポリ乳酸複合体。
【請求項3】
前記ラクチドがL体である、請求項2に記載のリグノフェノール−ポリ乳酸複合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−274068(P2008−274068A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118329(P2007−118329)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】