説明

リサイクル原料を使用したポリエステルマルチフィラメント

【課題】防寒衣料およびスポーツ衣料および資材用製品に応用可能な軽量で低通気性を有する平織物を構成できるリサイクル原料を使った毛羽が少ないマルチフィラメントを提供する。
【解決手段】下記A〜Eを満足するポリエステルマルチフィラメントとする。
A.芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体として、ポリアルキレンテレフタレートを解重合して得られたリサイクルされたテレフタル酸ジメチルを用い、該テレフタル酸ジメチルが全芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体の80モル%以上を占めるポリエステルからなること。
B.ポリエステルの固有粘度が0.60〜1.00dL/gであること。
C.繊度が10〜24dtexで構成する単糸繊度が0.10〜0.70dtexであること。
D. 原糸の最大点強度が4.0〜6.0cN/dtex、最大点伸度20〜40%
E.採取した原糸の毛羽レベルが、0.5ケ以下/100万mであること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防寒衣料およびスポーツ衣料および資材用製品に応用可能な軽量で低通気性を有する平織物を構成できるリサイクル原料を用いたポリエステルマルチフィラメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、防寒衣料、スポーツ衣料(ダウンジャケット、ウインドブレーカー)や資材用製品(カイト、セールクロス、テント、寝袋など)では、薄さや軽量性が必要とされ開発が行われている。ウインドブレーカー、カイトやセールクロスなどでは低通気性(=高密度性)が必要とされ、またダウンジャケット、寝袋などでは内部の綿が抜けてこないように高密度性が必要とされている。例えば特開2007−162169号公報には特定の単糸繊度からなる特定値のカバーファクターを有する織物、特開2006−70397号公報には扁平繊維からなるスポーツ衣料が提案され満足するものが得られている。
【0003】
しかしながら、近年商品のもつ地球環境に対する影響度に関心が高まり、例えばリサイクルポリマーを使用した繊維が望まれてきた。
しかし、一般的にいわれるリサイクルポリマーは回収されたPETボトルやポリエステルフィルム製品、更にはこれら製品の製造工程において発生する屑ポリマーなどを粉砕して再溶融するマテリアルリサイクルが知られているが、リサイクル後の繊維で高強度、細繊度で毛羽のない風合い良好なものを得ることは困難であり又薄くて軽量で高強度の上記用途衣料は困難であった。特に異型化された繊維を紡糸する際には糸切れが多発し、著しく生産性が低下することで商業生産が困難であった。
【0004】
【特許文献1】特開2007−162169号公報
【特許文献2】特開2006−70397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、防寒衣料およびスポーツ衣料および資材用製品に応用可能な軽量で低通気性を有する布帛好ましくは平織物を構成できるリサイクル原料を使った毛羽が少ないマルチフィラメントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
下記A〜Eを満足するポリエステルマルチフィラメントとする。
A.芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体として、ポリアルキレンテレフタレートを解重合して得られたリサイクルされたテレフタル酸ジメチルを用い、該テレフタル酸ジメチルが全芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体の80モル%以上を占めるポリエステルからなること。
B.ポリエステルの固有粘度が0.60〜1.00dL/gであること。
C.繊度が10〜24dtexで構成する単糸繊度が0.10〜0.70dtexであること。
D. 原糸の最大点強度が4.0〜6.0cN/dtex、最大点伸度20〜40%
E.採取した原糸の毛羽レベルが、0.5ケ以下/100万mであること。
更に好ましい態様として、単糸断面が長軸方向に丸断面単糸の3〜6個が直線状に接合したような形状を有し、偏平断面繊維の最大径の長さA(長軸)と該長軸に直行する最大径の長さB(短軸)の比、偏平度A/Bが3〜6であることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明のリサイクルされたテレフタル酸ジメチルをエステル交換反応に使用したポリエチレンテレフタレートにて製品の製造段階における環境への負荷を低減させ、且つバージンPETを用いた場合と同様の高強度の平織物用原糸が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
一般的にポリエステル製品をリサイクルする方法として、ポリエステル製品を溶融しチップ化した後バージンポリエステルポリマーと混合する、あるいはそのまま成形して製品とする、いわゆるマテリアルリサイクル法とポリエステル製品を一旦構成成分まで解重合して原料成分までもどして再度ポリエステル重合を行い製品化する、ケミカルリサイクル法が行われている。
【0009】
本発明はケミカルリサイクル法による単糸が極細繊度で強度伸度の良好なポリエステルマルチフィラメントに関するものである。
本発明のポリエステルマルチフィラメントに使用されるポリエステルは芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体としてポリアルキレンテレフタレートを解重合することによって得られたテレフタル酸ジメチルを、ポリエステルを構成する全酸成分を基準として80重量%以上使用する必要がある。
【0010】
ここで、該ポリアルキレンテレフタレートとしてはポリエチレンテレフタレートが好ましく、特に回収されたボトル、回収されたポリエステル繊維製品、回収されたポリエステルフィルム製品、更にはこれら製品の製造工程において発生する屑ポリマーなど回収されたポリエステルが好ましく用いられる。
【0011】
ポリアルキレンテレフタレートを解重合することによって得られたテレフタル酸ジメチルが80重量%未満の場合、最終的に得られるポリエステル、あるいはポリエステル繊維中に含まれる成分の内、回収されたテレフタル酸ジメチルに由来する成分の比率が50%を下回ってしまう為、環境にやさしい製品としての効果が少なくなり好ましくない。ポリアルキレンテレフタレートを解重合することによって得られたテレフタル酸ジメチルは好ましくは85重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。
【0012】
ポリアルキレンテレフタレートを解重合することによって得られたテレフタル酸ジメチルの製造方法については特に限定はないが、例えば、ポリエチレンテレフタレートをエチレングリコールで解重合した後、メタノールでエステル交換反応し、得られたテレフタル酸ジメチルを再結晶や蒸留で精製する方法が挙げられる。
【0013】
本発明に用いる、ポリアルキレンテレフタレートを解重合することによって得られたテレフタル酸ジメチル中の不純物ついては、2−ヒドロキシテレフタル酸の含有量が2ppm以下であることが好ましい。
【0014】
ポリアルキレンテレフタレートを解重合することによって得られたテレフタル酸ジメチルを構成する全酸成分を基準として80重量%以上使用するポリエステルの製造方法としては、芳香族ジカルボン酸のエステル形成誘導体として上記のテレフタル酸ジメチルをエステル交換反応触媒の存在下、アルキレングリコールとしてエチレングリコールとエステル交換反応せしめることによって製造することが好ましい。
【0015】
本発明におけるポリエステルの固有粘度は、0.60〜1.00dL/gの範囲にあることが必要で、さらに0.60〜0.95好ましく、特に0.65〜0.80の範囲が好ましい。固有粘度が0.60未満であると、繊維の強度が不足するため好ましくない。他方、固有粘度が1.0を越えると、原料ポリマーの固有粘度を過剰に引き上げる必要があり不経済である。 ポリエステルの固有粘度は反応時間、温度、触媒量等の公知の方法により調整することが出来、用途により使い分けることが好ましい。
【0016】
本発明のポリエステルの製造方法においては、必要に応じて少量の添加剤、例えば滑剤、顔料、染料、酸化防止剤、固相重合促進剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、遮光剤、艶消剤等を添加してもよく、特に艶消剤として酸化チタンなどは好ましく添加される。
【0017】
本発明のポリエステルマルチフィラメントの製造方法としては特に限定はなく、従来公知のポリエステルを溶融紡糸する方法を用いることができるが、例えばポリエステルを270℃〜300℃の範囲で溶融紡糸して製造することが好ましく、溶融紡糸の速度は400〜5000m/分で紡糸することが好ましい。紡糸速度がこの範囲にあると、得られる繊維の強度も十分なものであると共に、安定して巻き取りを行うこともできる。また延伸はポリエステル繊維を巻き取ってから、あるいは一旦巻き取ることなく連続的に延伸処理することによって、延伸糸を得ることができる。さらに本発明のポリエステル繊維には風合いを高める為に、アルカリ減量処理も好ましく実施される。
【0018】
本発明のポリエステルマルチフィラメントは、総繊度10〜24dtexで単糸繊度が0.7〜1.1dtexであることが必要である。総繊度が10dtex未満であれば平織りにした場合に織物の経または緯の引裂強度が小さくなるため好ましくなく、24dtexを超える場合は織物の目付が重くなり、目的としている軽量化にそぐわないため好ましくない。
【0019】
又単糸繊度が1.1dtexを超える場合は単繊維での曲げ剛性が強すぎて布帛での風合いにおいてソフト感が不十分なものとなり、又防寒、防風性も低下する。一方0.7dtex未満の場合は紡糸工程での断糸による工程通過性が著しく低下するので好ましくない。
【0020】
次に、本発明のマルチフィラメント原糸は最大点強度が4.0〜6.0cN/dtex、最大点伸度が20〜40%であることが必要である。最大点強度が4.0cN/dtex未満であれば、経または緯の引裂強力が小さくなりため、好ましくなく、6.0cN/dtexを超える場合、フィラメントのヤング率が高くなるため布帛風合いが硬くなってしまい、好ましくない。
さらに最大点伸度が20%未満であれば、強度が低下したものとなり好ましくなく、40%を超える場合は硬く風合いの悪いものとなり好ましくない。
【0021】
本発明のマルチフィラメント原糸は毛羽レベルが、0.5ケ以下/100万mであることが好ましい。0.5ケ/100万mを超える場合は毛羽によって製織性が低下するため好ましくない。
【0022】
更に、単糸の長さ方向に直交する断面形状は丸断面でも異型断面でも好ましく用いることができるが、特に偏平断面で、その偏平形状が、長軸方向に丸断面単糸の3〜6個が直線状に接合したような形状を有し(図1)、偏平断面繊維の最大径の長さA(長軸)と該長軸に直行する最大径の長さB(短軸)の比、偏平度A/Bが3〜6であることが好ましい。
【0023】
ここで偏平度A/Bが3未満であれば丸断面繊維を布帛にした場合に近いソフト感しか得られず、防透性、低通気性、吸水率も悪くなるため好ましくなく、一方、偏平度が6を超えると、製糸性が悪くなり、毛羽も悪化するため好ましくない。好ましくは偏平度が3〜4であることが好ましい。上記のように丸断面形状の数は3〜6個である。丸断面形状の数が2個の場合には、単に丸断面繊維を布帛にした場合に近いソフト性しか得られず、防透性、低通気性、吸水性も悪くなる。一方、丸断面形状の数が7個を超えると、繊維が割れ易くなり、耐磨耗性が低下する。
【0024】
上記の力学的特性と断面形状を有する本発明のポリエステルマルチフィラメントは糸応力の低さと偏平断面糸の持つ曲げ剛性の低さが融合された繊維集合体となり布帛にしたとき防寒、防風性、軽量性を有し且つ独特なソフト感をもたらすことができる。
【0025】
本発明の偏平断面繊維の断面形状を図1により説明する。図1(a)〜(e)は偏平断面繊維の断面形状を模式的に示したものであり、(a)は3個、(b)は4個、(c)は5個の丸断面単糸が接合したような形状を示している。すなわち、本発明の偏平断面繊維の断面形状は、長手方向(長軸方向)に丸断面単糸が接合したような形状であり、長軸を軸として凸部と凸部(山と山)、凹部と凹部(谷と谷)が対称に互いに重なり合う形をしており、上記のように丸断面単糸の数は3〜6個である。丸断面単糸の数が2個の場合には、単に丸断面繊維を布帛にした場合に近いソフト性しか得られず、一方、丸断面単糸の数が6個を超えると、繊維が割れ易くなり、耐磨耗性が低下する。
【0026】
偏平ポリエステルマルチフィラメントを得る方法としては、上記の要件を満たす断面形状を有する偏平繊維が得られるような口金装置を用いて公知の方法で紡糸延伸することにより製造することができる。
【0027】
又本発明のポリエステルマルチフィラメントを用いて得られる布帛は単糸繊度が極細繊度で且つ強度伸度が高いマルチフィラメントを用いているのでソフトで高強度、又防風性の良い布帛とすることができ、布帛としては下記式により算出されるカバーファクター(CF)が1500〜2800の範囲の織物が防風、防寒性、軽量性の点で好ましく良好である。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
ただし、DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。
【0028】
カバーファクターが1500未満の場合通気性が高くなり防風、防寒の点で好ましくなく、一方2500を超える場合は重くなり好ましくない。本発明の範囲にあるとき防寒、防風、低通気性の点で良好な布帛となる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例
に限られるものではない。実施例における各項目は、次の方法で測定した。
(1) 固有粘度
ポリエステル樹脂を100℃、60分間でオルトクロロフェノールに溶解した希薄溶液を、35℃でウベローデ粘度計を用いて測定した値から求めた。単位は、dL/gである。
(2)強度、伸度、繊度
JIS L1013記載の方法に準拠して測定を行った。
(3)製糸性
指定した固有粘度にてケミカルリサイクルされたポリエチレンテレフタレートペレットを作成し、図1 ( a ) に示す単糸断面形状となる吐出孔を4 個有した紡糸口金から、紡糸温度290℃で紡出し、油剤を付与し、紡糸速度700m/分で引き取った後、一旦巻き取ることなく、予熱温度100℃、熱セット温度130℃ 、延伸倍率4.5の条件で延伸し、3350m/分の速度でドラム状に巻き取り、3日間製糸を実施し、断糸回数0回は○、断糸回数1〜5回は△、断糸回数5回以上を×とした。
(4) 軽量性
本発明のポリエステルマルチフィラメントを平織物の経糸および緯糸に用いて、指定のカバーファクターになるように、経密度と緯密度を合わせて平織の生機を得た。軽量性の判断基準として、目付が60g/m2未満のものを○、それ以上を×とした。
(5)通気性
通気性;JIS L−1096−79−6.27 通気性A法に準拠し、フラジール型通気量測定器を用いて測定した。1.0cm/cm・s以下を合格とする。
(6) 毛羽
整経機に該当原糸を100本かけ、それぞれ50万m運転した際の毛羽個数を100万mに換算し、個数を示した。
【0030】
[参考例]
回収テレフタル酸ジメチルの製造:エチレングリコール200部を500mlセパラブルフラスコに投入し、更に炭酸ソーダ1.5部、粉砕されたPETボトル等からなるポリエチレンテレフタレート屑50部を投入し、撹拌しながら昇温して、185℃とした。この状態を4時間保持したところ、ポリエチレンテレフタレート屑は溶解し解重合反応が完結した。得られた解重合物を減圧蒸留で濃縮し、留分としてエチレングリコール150部回収した。
この濃縮液にエステル交換反応触媒として炭酸ソーダ0.5部とMeOH100部を投入し、常圧で液温を75℃、1時間撹拌し、エステル交換反応を実施した。
得られた混合物を40℃まで冷却し、ガラス製フィルターで濾過した。フィルター上に回収できた粗テレフタル酸ジメチルを100部のMeOH中に投入し、40℃に加温・撹拌洗浄し、再度ガラス製のフィルターで濾過した。この洗浄は2回繰り返した。
【0031】
フィルター上に捕捉できた粗テレフタル酸ジメチルを蒸留装置に仕込み、圧力6.65kPa還流比0.5の条件で減圧蒸留を実施し、留分としてテレフタル酸ジメチルを得た。留分は47部回収できた。釜残を測定しテレフタル酸ジメチル量を測定すると2部であり、投入したポリエステルを基準にするとテレフタル酸ジメチルの反応率は93重量%であった。
蒸留により精製された回収テレフタル酸ジメチル中には、2−ヒドロキシテレフタル酸ジメチルが0.5重量ppm検出された。精製された回収テレフタル酸ジメチルの品質は、純度99.9重量%以上であった。
【0032】
[実施例1]
参考例で得られたテレフタル酸ジメチルを用いてエチレングリコールとエステル交換反応による公知の方法で固有粘度が0.90のケミカルリサイクルされたポリエチレンテレフタレートペレットを作成し、図1( a )に示す単糸断面形状となる吐出孔を4個有した紡糸口金から、紡糸温度290℃で紡出し、油剤を付与し、紡糸速度700m/分で引き取った後、一旦巻き取ることなく、予熱温度100℃、熱セット温度130℃ 、延伸倍率4.5の条件で延伸し、3350m/分の速度でドラム状に巻き取り、総繊度22dtexの本発明の偏平断面形状からなるマルチフィラメントを得た。得られたマルチフィラメントを、カバーファクターが2300となるように平織を作成した。上記方法で評価した結果を表1 に示す。
【0033】
[比較例1]
固有粘度が0.90のマテリアルリサイクルされたポリエチレンテレフタレートペレットを、図1( a )に示す単糸断面形状となる吐出孔を4個有した紡糸口金から、紡糸温度290℃で紡出し、油剤を付与し、紡糸速度700m/分で引き取った後、一旦巻き取ることなく、予熱温度100℃、熱セット温度130℃ 、延伸倍率4.5の条件で延伸し、3350m/分の速度でドラム状に巻き取り、総繊度22dtexの本発明の偏平断面形状からなるマルチフィラメントを得ようとしたが、毛羽にて品位が悪い上、製糸性もよくなかった。
【0034】
[実施例2]
参考例で得られたテレフタル酸ジメチルを用いてエチレングリコールとエステル交換反応による公知の方法で固有粘度が0.75のケミカルリサイクルされたポリエチレンテレフタレートペレットを、図1 ( a ) に示す単糸断面形状となる吐出孔を4 個有した紡糸口金から、紡糸温度290℃で紡出し、油剤を付与し、紡糸速度700m/分で引き取った後、一旦巻き取ることなく、予熱温度100℃、熱セット温度130℃ 、延伸倍率4.5の条件で延伸し、3350m/分の速度でドラム状に巻き取り、総繊度22dtex本発明の偏平断面形状からなるマルチフィラメントを得た。得られたマルチフィラメントを、カバーファクターが2100となるように平織を作成し、上記方法で評価した結果を表1 に示す。
【0035】
[比較例2]
参考例で得られたテレフタル酸ジメチルを用いてエチレングリコールとエステル交換反応による公知の方法で固有粘度が0.55としたケミカルリサイクルされたポリエチレンテレフタレートペレットを、図1 ( a ) に示す単糸断面形状となる吐出孔を4 個有した紡糸口金から、紡糸温度290℃で紡出し、油剤を付与し、紡糸速度700m/分で引き取った後、一旦巻き取ることなく、予熱温度100℃、熱セット温度130℃ 、延伸倍率4.5の条件で延伸し、3350m/分の速度でドラム状に巻き取り、総繊度22dtexの本発明の偏平断面形状からなるマルチフィラメントを得ようとしたが、狙いの強度・伸度が出ず、狙いの強伸度を出すため、紡糸条件変更したが、断糸が発生し、糸を巻き取ることができなかった。
【0036】
[実施例3]
参考例で得られたテレフタル酸ジメチルを用いてエチレングリコールとエステル交換反応による公知の方法で固有粘度が0.85のケミカルリサイクルされたポリエチレンテレフタレートペレットを、図1 ( a ) に示す単糸断面形状となる吐出孔を4 個有した紡糸口金から、紡糸温度290℃で紡出し、油剤を付与し、紡糸速度700m/分で引き取った後、一旦巻き取ることなく、予熱温度100℃、熱セット温度130℃ 、延伸倍率4.5の条件で延伸し、3350m/分の速度でドラム状に巻き取り、総繊度22dtexの本発明の偏平断面形状からなるマルチフィラメントを得た。得られたマルチフィラメントを、カバーファクターが2320となるように平織を作成し、上記方法で評価した結果を表1 に示す。
【0037】
[比較例3]
参考例で得られたテレフタル酸ジメチルを用いてエチレングリコールとエステル交換反応による公知の方法で固有粘度が0.85のケミカルリサイクルされたポリエチレンテレフタレートペレットを、図1 ( a ) に示す単糸断面形状となる吐出孔を4 個有した紡糸口金から、紡糸温度290℃で紡出し、油剤を付与し、紡糸速度700m/分で引き取った後、一旦巻き取ることなく、予熱温度100℃、熱セット温度130℃ 、延伸倍率4.5の条件で延伸し、3350m/分の速度でドラム状に巻き取り、総繊度84dtexにて偏平断面形状からなるマルチフィラメントを得た。強伸度・毛羽に関しては、問題なかったが、カバーファクターが2330になるように平織したものは軽量性が悪いものであった。
【0038】
[実施例4]
参考例で得られたテレフタル酸ジメチルを用いてエチレングリコールとエステル交換反応による公知の方法で固有粘度が0.90のケミカルリサイクルされたポリエチレンテレフタレートペレットを、公知の丸断面形状の紡糸口金から、紡糸温度290℃で紡出し、油剤を付与し、紡糸速度700m/分で引き取った後、一旦巻き取ることなく、予熱温度100℃、熱セット温度130℃ 、延伸倍率4.5の条件で延伸し、3350m/分の速度でドラム状に巻き取り、総繊度22dtexの本発明の丸断面形状からなるマルチフィラメントを得た。得られたマルチフィラメントを、カバーファクターが2210となるように平織を作成し、上記方法で評価した結果を表1 に示す。
【0039】
[実施例5]
固有粘度が0.75のケミカルリサイクルされたポリエチレンテレフタレートペレットを、公知の丸断面形状の紡糸口金から、紡糸温度290℃で紡出し、油剤を付与し、紡糸速度700m/分で引き取った後、一旦巻き取ることなく、予熱温度100℃、熱セット温度130℃ 、延伸倍率4.5の条件で延伸し、3350m/分の速度でドラム状に巻き取り、総繊度22dtexの本発明の丸断面形状からなるマルチフィラメントを得た。得られたマルチフィラメントを、カバーファクターが2000となるように平織を作成し、上記方法で評価した結果を表1 に示す。
【0040】
[比較例4]
固有粘度が0.90のマテリアルリサイクルされたポリエチレンテレフタレートペレットを、公知の丸断面形状の紡糸口金から、紡糸温度290℃で紡出し、油剤を付与し、紡糸速度700m/分で引き取った後、一旦巻き取ることなく、予熱温度100℃、熱セット温度130℃ 、延伸倍率4.5の条件で延伸し、3350m/分の速度でドラム状に巻き取り、総繊度22dtexのマルチフィラメントを得ようとしたが、毛羽が多発し、製品品位もよくなかった。
【0041】
[比較例5]
比較例2において、紡糸口金として公知の丸断面形状の紡糸口金を用いた以外は同様に行って得たマルチフィラメントをカバーファクターを1000となるように平織を作成し、上記方法で評価した結果を表1に示す。強度が低い上通気性が高く防風性も悪かった。
【0042】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0043】
リサイクルポリマーを用いても通常のポリマーと同等の強度伸度で、低通気性を有する平織物を構成できるポリエステルマルチフィラメントが得られるので、防寒衣料およびスポーツ衣料および資材用製品に応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明のポリエステル偏平断面繊維の単糸断面の模式図を示すものである。
【図2】本発明のポリエステル偏平断面繊維の単糸断面図の模式図を示すものであり、各寸法を説明するものである。
【符号の説明】
【0045】
(a)本発明のポリエステル偏平断面繊維を構成する単糸の断面図
(b)本発明のポリエステル偏平断面繊維を構成する単糸の断面図
(c)本発明のポリエステル偏平断面繊維を構成する単糸の断面図
(d)2つの山を有する偏平糸の断面図
(e)7つの山を有する偏平糸の断面図
(f)本発明外の偏平断面糸の断面図
A 長軸
B 短軸の最大径
C 短軸の最小径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記A〜Eを満足することを特徴とするポリエステルマルチフィラメント。
A.芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体として、ポリアルキレンテレフタレートを解重合して得られたリサイクルされたテレフタル酸ジメチルを用い、該テレフタル酸ジメチルが全芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体の80モル%以上を占めるポリエステルからなること。
B.ポリエステルの固有粘度が0.60〜1.00dL/gであること。
C.総繊度が10〜24dtexで構成する単糸繊度が0.10〜0.70dtexであること。
D. 原糸の最大点強度が4.0〜6.0cN/dtex、最大点伸度20〜40%であること。
E.採取した原糸の毛羽レベルが、0.5ケ以下/100万mであること。
【請求項2】
単糸断面形状が、長軸方向に丸断面単糸の3〜6個が直線状に接合したような形状を有し、偏平断面糸の最大径の長さA(長軸)と該長軸に直行する最大径の長さB(短軸)の比、偏平度A/Bが3〜6である請求項1記載のポリエステルマルチフィラメント。
【請求項3】
請求項1〜2いずれか一項記載のポリエステルマルチフィラメントを含む布帛。
【請求項4】
布帛が下記式で表されるカバーファクター(CF)が1500〜2800の織物である請求項3記載の布帛。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
ただし、DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−150011(P2009−150011A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328611(P2007−328611)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】