説明

リソソーム標的化ペプチドおよびその使用

本発明は、GILT技術に基づいた効率的なリソソーム標的化のための、さらに改善された組成物および方法を提供する。とりわけ、本発明は、フューリン抵抗性リソソーム標的化ペプチドを用いてリソソーム酵素をリソソームに標的化するための方法および組成物を提供する。本発明はまた、インスリンレセプターに対して小さいかまたは低い結合親和性を有するリソソーム標的化ペプチドを用いてリソソーム酵素をリソソームに標的化するための方法および組成物も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する参照
本願は、2008年5月7日に出願された米国仮特許出願第61/051,336号および2009年1月12日に出願された米国仮特許出願第61/144,106号の利益を主張し、上記特許出願のそれぞれの内容全体が本明細書において参照により援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
通常、哺乳動物のリソソーム酵素は、サイトゾルにおいて合成され、ERを横断し、そのERにおいてN結合型で高マンノース型の炭水化物によってグリコシル化される。ゴルジでは、これらのタンパク質をリソソームに標的化するマンノース−6−リン酸(M6P)を付加することによって、リソソームタンパク質上に高マンノース炭水化物が修飾される。M6Pで修飾されたタンパク質は、2つのM6Pレセプターのいずれかとの相互作用を介してリソソームに送達される。修飾の最も好ましい形態は、2つのM6Pが高マンノース炭水化物に付加されているときである。
【0003】
40を超えるリソソーム蓄積症(LSD)は、リソソーム内に1つ以上のリソソーム酵素が存在しないことによって、直接または間接的に引き起こされる。LSDsに対する酵素補充療法が活発に追跡されている。治療は、一般に、M6P依存的様式でLSDタンパク質が取り込まれ、種々の細胞型のリソソームに送達されることを必要とする。1つの可能性のあるアプローチは、LSDタンパク質を精製し、それを、M6Pを有する炭水化物部分を組み込むように修飾することを含む。この修飾された材料は、細胞表面上のM6Pレセプターとの相互作用に起因して、未修飾のLSDタンパク質よりも効率的に細胞によって取り込まれ得る。
【0004】
本願の発明者らは、以前に、治療用酵素をリソソームにより効率的に送達することを可能にするペプチドベースの標的化技術を開発した。この独占権下技術は、リソソームを標的化する部分としてペプチドタグがM6Pに取って代わるので、グリコシル化非依存性リソソーム標的化(Glycosylation Independent Lysosomal Targeting)(GILT)と呼ばれる。GILT技術の詳細は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9および特許文献10(これらのすべての開示が本明細書によって参考として援用される)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0082176号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0006008号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0072761号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0281805号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0244400号明細書
【特許文献6】国際公開第03/032913号
【特許文献7】国際公開第03/032727号
【特許文献8】国際公開第02/087510号
【特許文献9】国際公開第03/102583号
【特許文献10】国際公開第2005/078077号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要旨
本発明は、GILT技術に基づいた効率的なリソソーム標的化のための、さらに改善された組成物および方法を提供する。とりわけ、本発明は、フューリン(furin)抵抗性リソソーム標的化ペプチドを用いてリソソーム酵素をリソソームに標的化するための方法および組成物を提供する。本発明はまた、インスリンレセプターに対する結合親和性が小さいかまたは低いリソソーム標的化ペプチドを用いてリソソーム酵素をリソソームに標的化するための方法および組成物も提供する。本発明は、本発明に記載のフューリン抵抗性リソソーム標的化ペプチドがインスリンレセプターに対して低い結合親和性を有するという予想外の発見を含む。
【0007】
いくつかの実施形態において、本発明は、フューリン抵抗性IGF−IIムテインを提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、成熟ヒトIGF−II(配列番号1)と少なくとも70%同一のアミノ酸配列および少なくとも1つのフューリンプロテアーゼ切断部位を無効にする変異を有するフューリン抵抗性IGF−IIムテインを提供する。
【0008】
いくつかの実施形態において、本発明は、成熟ヒトIGF−II(配列番号1)と少なくとも70%同一のアミノ酸配列、および野生型ヒトIGF−IIと比較するときインスリンレセプターに対して結合親和性を減少させるかまたは低下させる変異を含むIGF−IIムテインを提供する。
【0009】
いくつかの実施形態において、フューリン抵抗性IGF−IIムテインは、IGF−Iレセプターに対する天然に存在するヒトIGF−IIの親和性と比べて、IGF−Iレセプターに対して低い結合親和性を有する。
【0010】
いくつかの実施形態において、本発明は、リソソーム酵素;および成熟ヒトIGF−II(配列番号1)と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有するIGF−IIムテインを含む標的化された治療用融合タンパク質を提供し、ここで、そのIGF−IIムテインは、フューリンの切断に対して抵抗性であり、マンノース−6−リン酸非依存的様式でヒトカチオン非依存性マンノース−6−リン酸レセプターに結合する。
【0011】
いくつかの実施形態において、本発明は、リソソーム酵素;および成熟ヒトIGF−II(配列番号1)と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有し、かつインスリンレセプターに対する天然に存在するヒトIGF−IIの親和性と比べてインスリンレセプターに対して低い結合親和性を有するIGF−IIムテインを含む標的化された治療用融合タンパク質を提供し;ここで、そのIGF−IIムテインは、マンノース−6−リン酸非依存的様式でヒトカチオン非依存性マンノース−6−リン酸レセプターに結合する。
【0012】
いくつかの実施形態において、本発明は、リソソーム酵素;および成熟ヒトIGF−II(配列番号1)と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有し、かつインスリンレセプターに対する天然に存在するヒトIGF−IIの親和性と比べてインスリンレセプターに対して低い結合親和性を有するIGF−IIムテインを含む標的化された治療用融合タンパク質を提供し;ここで、IGF−IIムテインは、フューリンの切断に対して抵抗性であり、マンノース−6−リン酸非依存的様式でヒトカチオン非依存性マンノース−6−リン酸レセプターに結合する。
【0013】
いくつかの実施形態において、本発明に適したIGF−IIムテインは、配列番号1のアミノ酸30〜40に対応する領域内に変異を含む。いくつかの実施形態において、本発明に適したIGF−IIムテインは、変異が少なくとも1つのフューリンプロテアーゼ切断部位を無効にするように、配列番号1のアミノ酸34〜40に対応する領域内に変異を含む。いくつかの実施形態において、適当な変異は、アミノ酸の置換、欠失および/または挿入である。いくつかの実施形態において、変異は、配列番号1のArg37またはArg40に対応する位置におけるアミノ酸の置換である。いくつかの実施形態において、アミノ酸の置換は、LysまたはAlaへの置換である。
【0014】
いくつかの実施形態において、適当な変異は、配列番号1の31〜40、32〜40、33〜40、34〜40、30〜39、31〜39、32〜39、34〜37、32〜39、33〜39、34〜39、35〜39、36〜39、37〜40、34〜40およびそれらの組み合わせからなる群から選択される位置に対応するアミノ酸残基の欠失または置き換えである。
【0015】
いくつかの実施形態において、本発明に記載のIGF−IIムテインは、配列番号1の2〜7位に対応するアミノ酸の欠失または置き換えをさらに含む。いくつかの実施形態において、本発明に記載のIGF−IIムテインは、配列番号1の1〜7位に対応するアミノ酸の欠失または置き換えをさらに含む。いくつかの実施形態において、本発明に記載のIGF−IIムテインは、配列番号1の62〜67位に対応するアミノ酸の欠失または置き換えをさらに含む。いくつかの実施形態において、本発明に記載のIGF−IIムテインは、配列番号1のTyr27、Leu43またはSer26に対応する位置におけるアミノ酸の置換をさらに含む。いくつかの実施形態において、本発明に記載のIGF−IIムテインは、Tyr27Leu、Leu43Val、Ser26Pheおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸の置換を含む。いくつかの実施形態において、本発明に記載のIGF−IIムテインは、配列番号1の48〜55位に対応するアミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、本発明に記載のIGF−IIムテインは、配列番号1の8、48、49、50、54および55位に対応するアミノ酸からなる群から選択される少なくとも3つのアミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、本発明のIGF−IIムテインは、配列番号1の54および55位に対応する位置において、各々がpH7.4において無電荷であるかまたは負に帯電しているアミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、IGF−IIムテインは、IGF−Iレセプターに対する天然に存在するヒトIGF−IIの親和性と比べて、IGF−Iレセプターに対して低い結合親和性を有する。
【0016】
いくつかの実施形態において、本発明に適したリソソーム酵素は、ヒト酸性アルファ−グルコシダーゼ(GAA)またはその機能的バリアントである。いくつかの実施形態において、本発明に適したリソソーム酵素は、ヒトGAAのアミノ酸70〜952を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、本発明の標的化された治療用融合タンパク質は、リソソーム酵素とフューリン抵抗性IGF−IIムテインとの間にスペーサーをさらに含む。いくつかの実施形態において、スペーサーは、アミノ酸配列Gly−Ala−Proを含む。
【0018】
本発明はまた、上の様々な実施形態において記載されたようなIGF−IIムテインまたは標的化された治療用融合タンパク質をコードする核酸も提供する。本発明は、本発明の核酸を含む様々な細胞をさらに提供する。
【0019】
本発明は、治療有効量の本発明の標的化された治療用融合タンパク質を含む、リソソーム蓄積症の処置に適した薬学的組成物を提供する。本発明は、リソソーム蓄積症を処置する方法をさらに提供し、その方法は、処置の必要な被験体に、本発明に記載の標的化された治療用融合タンパク質を投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、リソソーム蓄積症は、ポンペ病である。いくつかの実施形態において、リソソーム蓄積症は、ファブリー病である。いくつかの実施形態において、リソソーム蓄積症は、ゴーシェ病である。
【0020】
別の局面において、本発明は、標的化された治療用融合タンパク質を生成する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で哺乳動物細胞を培養する工程を包含し、ここで、その哺乳動物細胞は、本発明の核酸、特に、本明細書中の様々な実施形態に記載されるような核酸を保有し;そして、培養は、標的化された治療用融合タンパク質の発現を可能にする条件下で行われる。
【0021】
なおも別の局面において、本発明は、標的化された治療用融合タンパク質を生成する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中でフューリン欠損細胞(例えば、フューリン欠損哺乳動物細胞)を培養する工程を包含し、ここで、そのフューリン欠損細胞は、リソソーム酵素および成熟ヒトIGF−II(配列番号1)と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有するIGF−IIムテインを含む融合タンパク質をコードする核酸を保有し、ここで、そのIGF−IIムテインは、マンノース−6−リン酸非依存的様式でヒトカチオン非依存性マンノース−6−リン酸レセプターに結合し;そして培養は、標的化された治療用融合タンパク質の発現を可能にする条件下で行われる。
【0022】
本発明の他の特徴、目的および利点は、以下の詳細な説明において明らかになる。しかしながら、詳細な説明は、本発明の実施形態を示すが、単に例示の目的で与えられるものであり、限定を目的としないことが理解されるべきである。本発明の範囲内での様々な変更および改変は、詳細な説明から当業者に明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図面は、例示目的のみであって、限定のためではない。
【図1】図1は、ZC−701のN末端のマップを示している。四角で囲まれた2つのアミノ酸残基が、切断事象の部位である。1つ目は、シグナルペプチド切断の部位であり、2つ目は、フューリンの切断の部位である。
【図2】図2は、PNGase Fで処理した後のZC−701の例示的なSDS−PAGE解析を示している。右側のレーンは、フューリンで追加的に処理されている。
【図3】図3の左:フューリン切断部位が改変されている例示的なZC−701変異体の略図。中央:細胞培養の3〜7日後にPNGase処理された変異体の例示的なSDS−PAGE解析。右:フューリンで処理されたPNGase処理変異体の例示的なSDS−PAGE解析。
【図4】図4は、例示的な競合的IGF−IIレセプター結合の結果を示している。
【図5】図5は、追加の例示的な競合的IGF−IIレセプター結合の結果を示している。
【図6】図6は、例示的なインスリンレセプター競合アッセイの結果を示している。
【図7】図7は、例示的なIGF−Iレセプター競合アッセイの結果を示している。
【図8】図8は、ある特定のインスリンレセプター結合アッセイの例示的な結果を示している。
【図9】図9は、ある特定のインスリンレセプター結合アッセイの例示的な結果を示している。
【図10】図10は、一過性トランスフェクションからの部分的に精製されたGILTタグ化GAAの例示的な解析を示している。HEK293細胞を、構築物1479、1487またはZC−701でトランスフェクトした。回収後、培養上清を疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC)によって部分的に精製した。すべてのサンプルをPNGaseで処理した後、電気泳動した。左パネル:部分的に精製されたタンパク質のSDS−PAGE。精製されたZC−701 B12をコントロールとして示す。右パネル:部分的に精製されたタンパク質の免疫ブロット解析。記載の1次抗体を使用した。下のパネルは、外来性フューリンでさらに処理した。構築物1487によってコードされるタンパク質は、構築物1461(R37A)によってコードされるタンパク質と配列が同一である。構築物1479によってコードされるタンパク質は、構築物1459(R37K)によってコードされるタンパク質と同一である。
【図11】図11は、例示的なフューリン抵抗性GILTタグ化GAAのラットL6筋芽細胞への例示的な取り込みの結果を示している。タンパク質1479、1487、ZC−701および精製ZC−701に対するK取り込みは、それぞれ、4.5nM、4.4nM、5.0nMおよび2.6nMである。構築物1487によってコードされるタンパク質は、図3における構築物1461(R37A)によってコードされるタンパク質と配列が同一である。構築物1479によってコードされるタンパク質は、図3における構築物1459(R37K)によってコードされるタンパク質と同一である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
定義
回復:本明細書中で使用されるとき、用語「回復」は、状態の予防、減少もしくは寛解、または被験体の状態の改善を意味する。回復は、疾患状態の完全な快復または完全な予防を含むが、そうである必要はない。いくつかの実施形態において、回復は、関連性のある疾患組織のリソソーム内に蓄積された材料の減少を含む。
【0025】
フューリン抵抗性IGF−IIムテイン:本明細書中で使用されるとき、用語「フューリン抵抗性IGF−IIムテイン」とは、野生型ヒトIGF−IIペプチドと比較するとき、フューリンの切断が、妨げられるか、阻害されるか、減少されるか、または減速するように、少なくとも1つの天然のフューリンプロテアーゼ切断部位を無効にするか、または天然のフューリンプロテアーゼ切断部位に近接もしくは隣接した配列を変化させる、変更されたアミノ酸配列を含むIGF−IIベースのペプチドのことを指す。本明細書中で使用されるとき、フューリン抵抗性IGF−IIムテインは、フューリンに対して抵抗性であるIGF−IIムテインとも称される。
【0026】
フューリンプロテアーゼ切断部位:本明細書中で使用されるとき、用語「フューリンプロテアーゼ切断部位」(「フューリン切断部位」または「フューリン切断配列」とも称される)とは、フューリンまたはフューリン様プロテアーゼの酵素的プロテアーゼ切断に対する認識配列として働くペプチドまたはタンパク質のアミノ酸配列のことを指す。代表的には、フューリンプロテアーゼ切断部位は、コンセンサス配列Arg−X−X−Arg(配列番号2)を有し、Xは、任意のアミノ酸である。切断部位は、その配列内のカルボキシ末端のアルギニン(Arg)残基の後に位置する。いくつかの実施形態において、フューリン切断部位は、コンセンサス配列Lys/Arg−X−X−X−Lys/Arg−Arg(配列番号3)を有してもよく、Xは、任意のアミノ酸である。切断部位は、その配列内のカルボキシ末端のアルギニン(Arg)残基の後に位置する。
【0027】
フューリン:本明細書中で使用されるとき、用語「フューリン」とは、本明細書中に定義されるようなフューリンプロテアーゼ切断部位を認識し得、そして切断し得る、フューリンまたはフューリン様プロテアーゼをはじめとした任意のプロテアーゼのことを指す。フューリンは、対形成(paired)塩基性アミノ酸切断酵素(PACE)としても知られる。フューリンは、スブチリシン様プロタンパク質コンバターゼファミリーに属する。フューリンをコードする遺伝子は、FUR(FES上流領域)として知られていた。
【0028】
フューリン欠損細胞:本明細書中で使用されるとき、用語「フューリン欠損細胞」とは、フューリンプロテアーゼ活性が阻害されているか、低下しているか、または無くなっている任意の細胞のことを指す。フューリン欠損細胞は、フューリンを産生しないか、または少量のフューリンもしくは不完全なフューリンプロテアーゼを産生する、哺乳動物細胞と非哺乳動物細胞との両方を含む。
【0029】
グリコシル化非依存性リソソーム標的化:本明細書中で使用されるとき、用語「グリコシル化非依存性リソソーム標的化」(「GILT」とも称される)とは、マンノース−6−リン酸に非依存的なリソソーム標的化のことを指す。
【0030】
ヒト酸性アルファ−グルコシダーゼ:本明細書中で使用されるとき、用語「ヒト酸性アルファ−グルコシダーゼ」(「GAA」とも称される)とは、哺乳動物のリソソームにおいてグリコーゲンレベルを低下させることができるか、または1つ以上のポンペ病の症状を救出し得るかもしくは回復させ得る、ヒトGAAの野生型前駆体または機能的バリアントのことを指す。
【0031】
改善する、増加する、または減少する:本明細書中で使用されるとき、用語「改善する」、「増加する」もしくは「減少する」または文法上の等価物は、ベースライン測定値(例えば、本明細書中に記載される処置を開始する前の同じ個体における測定値、または本明細書中に記載される処置を行っていないコントロール個体(もしくは複数のコントロール個体)における測定値)に対する値のことを示す。「コントロール個体」は、処置される個体とほぼ同じ齢の、処置される個体と同じ形態のリソソーム蓄積症(例えば、ポンペ病)に苦しんでいる個体である(処置される個体およびコントロール個体における疾患の段階が同等であることを確かにするために)。
【0032】
個体、被験体、患者:本明細書中で使用されるとき、用語「被験体」、「個体」または「患者」とは、ヒトまたは非ヒト哺乳動物被験体のことを指す。処置される個体(「患者」または「被験体」とも称される)は、リソソーム蓄積症、例えば、ポンペ病(すなわち、乳児期(infantile)発症型、若年発症型または成人発症型のポンペ病)に罹患しているか、またはリソソーム蓄積症(例えば、ポンペ病)を発症する可能性を有する個体(胎児、乳児、小児、青年または成体のヒト)である。
【0033】
リソソーム蓄積症:本明細書中で使用されるとき、「リソソーム蓄積症」とは、リソソーム内において高分子をペプチド、アミノ酸、単糖類、核酸および脂肪酸に分解するために必要とされる酵素(例えば、酸性加水分解酵素)の少なくとも1つの欠損に起因する遺伝性障害の群のことを指す。結果として、リソソーム蓄積症に罹患している個体は、リソソーム内に蓄積された材料を有する。例示的なリソソーム蓄積症を表1に列挙する。
【0034】
リソソーム酵素:本明細書中で使用されるとき、用語「リソソーム酵素」とは、哺乳動物のリソソーム内における蓄積された材料を減少させることができるか、または1つ以上のリソソーム蓄積症の症状を救出し得るかもしくは回復させ得る、任意の酵素のことを指す。本発明に適したリソソーム酵素は、野生型のリソソーム酵素と改変されたリソソーム酵素の両方を含み、組換え方法および合成方法を用いて生成され得るか、または天然の起源から精製され得る。例示的なリソソーム酵素を表1に列挙する。
【0035】
スペーサー:本明細書中で使用されるとき、用語「スペーサー」(「リンカー」とも称される)とは、融合タンパク質における2つのタンパク質部分の間のペプチド配列のことを指す。スペーサーは、通常、可撓性であるように、または2つのタンパク質部分の間にアルファ−ヘリックスなどの構造を挿入するように、設計される。スペーサーは、比較的短いこともあるし(例えば、配列Gly−Ala−Pro(配列番号4)またはGly−Gly−Gly−Gly−Gly−Pro(配列番号5))、またはそれよりも長い(例えば、10〜25アミノ酸長)こともある。
【0036】
治療有効量:本明細書中で使用されるとき、用語「治療有効量」とは、いずれの医学的処置にも適用可能な合理的な利点/リスク比において、処置される被験体に対して治療効果を付与する、標的化された治療用融合タンパク質の量のことを指す。その治療効果は、客観的(すなわち、いくつかの試験またはマーカーによって測定可能)であってもよいし、主観的(すなわち、被験体が、効果の徴候を示すか、または効果を感じる)であってもよい。特に、「治療有効量」とは、所望の疾患または状態を処置するか、回復させるか、もしくは予防するのに有効であるか、または検出可能な治療的効果もしくは予防的効果を示すのに有効である(例えば、その疾患に関連する症状を回復させること、その疾患の発症を予防するか、もしくは遅延させること、および/またはその疾患の症状の重症度もしくは頻度を低下させることによって)、治療用の融合タンパク質または組成物の量のことを指す。治療有効量は、通常、複数の単位用量を含んでもよい投薬レジメンにおいて投与される。任意の特定の治療用の融合タンパク質について、治療有効量(および/または有効な投薬レジメン内において適切な単位用量)は、例えば、投与経路、他の医薬品との併用に応じて、変動してもよい。また、任意の特定の患者に対する特定の治療有効量(および/または単位用量)は、処置される障害およびその障害の重症度;使用される特定の医薬品の活性;使用される特定の組成物;患者の齢、体重、全般的な健康状態、性別および食餌;投与時間、投与経路および/または使用される特定の融合タンパク質の排出速度もしくは代謝速度;処置の期間;ならびに医学分野において周知であるような類似の因子をはじめとした種々の因子に依存してもよい。
【0037】
処置:本明細書中で使用されるとき、用語「処置」(また、「処置する(treat)」または「処置する(treating)」)とは、特定の疾患、障害および/または状態の1つ以上の症状または特徴を、部分的または完全に、緩和する、回復させる、軽減する、阻害する、その発症を遅延する、その重症度を低下させる、および/またはその発生頻度を低下させる、治療用融合タンパク質の任意の投与のことを指す。そのような処置は、関連性のある疾患、障害および/もしくは状態の徴候を示さない被験体、ならびに/またはその疾患、障害および/もしくは状態の初期の徴候だけを示す被験体に対するものであってもよい。あるいはまたはさらに、そのような処置は、関連性のある疾患、障害および/または状態の1つ以上の立証された徴候を示す被験体に対するものであってもよい。例えば、処置とは、心臓の状態の改善(例えば、拡張末期および/もしくは収縮末期の容積の増加、またはポンペ病に典型的に見られる進行性の心筋症の低減、回復もしくは予防)または肺機能の改善(例えば、ベースラインの能力を超える啼泣時肺活量の増加、および/または啼泣中の酸素脱飽和の正常化);神経発生および/または運動技能の改善(例えば、AIMSスコアの上昇);疾患に冒されている個体の組織におけるグリコーゲンレベルの低下;またはこれらの効果の任意の組み合わせのことを指し得る。いくつかの実施形態において、処置は、グリコーゲンクリアランスの改善、特に、ポンペ病関連の心筋症の低減または予防を含む。
【0038】
本願において使用されるとき、用語「約」および「およそ」は、等価物として使用される。約/およそを伴うかまたは伴わない、本願において使用される任意の数詞は、関連性のある分野の当業者によって認識される通常の任意の変動を包含すると意味される。
【0039】
発明の詳細な説明
本発明は、グリコシル化非依存性リソソーム標的化(GILT)技術に基づいてリソソーム酵素を標的化するための改善された方法および組成物を提供する。とりわけ、本発明は、フューリンに対して抵抗性であり、かつ/またはインスリンレセプターに対する結合親和性が小さいかもしくは低いIGF−IIムテイン、および本発明のIGF−IIムテインを含む標的化された治療用融合タンパク質を提供する。本発明はまた、それを生成する方法および使用する方法を提供する。
【0040】
本発明の様々な局面は、以下の項で詳細に記載される。その項の効果は、本発明を限定すると意味されない。各項は、本発明の任意の局面に適用され得る。本願において、「または」の使用は、別段述べられない限り、「および/または」を意味する。
【0041】
リソソーム酵素
本発明に適したリソソーム酵素は、哺乳動物のリソソーム内において、蓄積された材料を減少させることができるか、または1つ以上のリソソーム蓄積症の症状を救出し得るか、もしくは回復させ得る、任意の酵素を含む。適当なリソソーム酵素は、野生型のリソソーム酵素または改変されたリソソーム酵素の両方を含み、組換え方法もしくは合成方法を用いて生成され得るか、または天然の起源から精製され得る。例示的なリソソーム酵素を表1に列挙する。
【0042】
【表1−1】

【0043】
【表1−2】

【0044】
【表1−3】

【0045】
【表1−4】

いくつかの実施形態において、本発明に適したリソソーム酵素は、哺乳動物のリソソームにおいて蓄積される材料を減少させることができるか、または1つ以上のリソソーム蓄積症の症状を救出し得るか、もしくは回復させ得る、タンパク質をなおもコードしつつ、表1に示されているヒト酵素の天然に存在するポリヌクレオチド配列に対して50、55、60、65、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99および100%を含む50〜100%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含む。
【0046】
リソソーム酵素配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列をアラインメントし、必要であれば、最大のパーセント配列同一性を達成するようにギャップを導入した後の、配列同一性の部分としていかなる保存的置換も考慮しない、天然に存在するヒト酵素配列におけるアミノ酸残基と同一である、候補配列におけるアミノ酸残基のパーセンテージと定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、例えば、公的に入手可能なコンピュータソフトウェア(例えば、BLAST、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェア)を用いて、当該分野の技術の範囲内である様々な方法で達成され得る。当業者は、比較される配列の完全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムをはじめとした、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。好ましくは、WU−BLAST−2ソフトウェアが、アミノ酸配列同一性を決定するために使用される(Altschulら、Methods in Enzymology 266,460−480(1996);http://blast.wustl/edu/blast/README.html)。WU−BLAST−2は、いくつかの検索パラメータを使用し、そのほとんどが、デフォルトの値に設定される。調整可能なパラメータは、以下の値に設定される:オーバーラップスパン(overlap span)=1、オーバーラップフラクション(overlap fraction)=0.125、ワード(world)閾値(T)=11。HSPスコア(S)およびHSP S2パラメータは、動的な値であり、特定の配列の組成に応じてそのプログラム自体によって確定されるが、しかしながら、最小値は、調整されてもよく、上に示したように設定される。
【0047】
ポンペ病
1つの例示的なリソソーム蓄積症は、ポンペ病である。ポンペ病は、エネルギーのために使用される貯蔵型の糖であるグリコーゲンの分解に必要な酵素の酸性アルファ−グルコシダーゼ(GAA)の欠損によって引き起こされる珍しい遺伝的障害である。ポンペ病は、糖原病II型、GSD II、II型糖原病、糖原貯蔵症II型、酸性マルターゼ欠損、アルファ−1,4−グルコシダーゼ欠損、びまん性糖原性心肥大(cardiomegalia glycogenic diffusa)および全身型糖原病の心臓型としても知られる。グリコーゲンの増大は、全身にわたる進行性の筋力低下(筋障害)を引き起こし、様々な体組織、特に、心臓、骨格筋、肝臓、呼吸器系および神経系に影響を及ぼす。
【0048】
ポンペ病の臨床上の主症状は、疾患発症の齢および残留GAA活性に応じて広く変動し得る。残留GAA活性は、グリコーゲン蓄積の量および組織分布の両方、ならびに疾患の重症度と相関する。乳児期発症型ポンペ病(1%未満の正常なGAA活性)は、最も重篤な形態であり、緊張低下、全身性の筋力低下および肥大型心筋症、ならびに心臓および他の筋組織におけるかなりのグリコーゲン蓄積を特徴とする。通常、心肺不全に起因して生後1年以内に死に至る。Scriverらeds.,The Metabolic and Molecular Basis of Inherited Disease,8th Ed.,New York:McGraw−Hill,3389−3420における、Hirschhornら(2001)“Glycogen Storage Disease Type II:Acid Alpha−glucosidase(Acid Maltase)Deficiency”。若年発症型(1〜10%の正常GAA活性)および成人発症型(10〜40%の正常GAA活性)のポンペ病は、より臨床上不均一であり、発症齢、臨床像および疾患進行が大きくばらつく。若年発症型および成人発症型のポンペ病は、一般に、重篤な心臓の合併症がないこと、発症齢がより高いこと、および疾患進行がより遅いことを特徴とするが、最終的な呼吸器の合併症または肢の筋肉の合併症によって、著しい病的状態および死亡率がもたらされる。平均余命は、異なり得るが、一般に、呼吸不全に起因して死に至る。Scriverらeds.,The Metabolic and Molecular Basis of Inherited Disease,8th Ed.,New York:McGraw−Hill,3389−3420における、Hirschhornら(2001)“Glycogen Storage Disease Type II:Acid Alpha−glucosidase(Acid Maltase)Deficiency”。
【0049】
ポンペ病を処置するのに適したGAA酵素は、直鎖状オリゴ糖におけるα1−4結合を切断する能力を保持する、野生型ヒトGAAまたはそのフラグメントもしくは配列バリアントを含む。
【0050】
酵素補充療法
酵素補充療法(ERT)は、欠損している酵素を血流中に注入することによって酵素欠損を是正する治療ストラテジーである。その血液が患者組織を灌流すると、酵素は、細胞によって取り込まれてリソソームに運搬され、そこでその酵素は、酵素欠損に起因してリソソーム内に蓄積された材料を除去するように作用する。リソソーム酵素補充療法が有効であるためには、貯蔵の欠陥が明らかな組織において適切な細胞内のリソソームに治療用酵素が送達されなければならない。従来のリソソーム酵素置き換え療法は、標的細胞の表面上の特異的レセプターと会合する、タンパク質に天然に結合している炭水化物を用いて送達される。カチオン非依存性M6Pレセプター(CI−MPR)は、ほとんどの細胞型の表面上に存在するので、1つのレセプターであるCI−MPRが、置き換えリソソーム酵素を標的化するために特に有用である。
【0051】
用語「カチオン非依存性マンノース−6−リン酸レセプター(CI−MPR)」、「M6P/IGF−IIレセプター」、「CI−MPR/IGF−IIレセプター」、「IGF−IIレセプター」もしくは「IGF2レセプター」またはそれらの省略形は、本明細書中で交換可能に使用され、それらは、M6PとIGF−IIとの両方に結合する細胞レセプターのことを指す。
【0052】
グリコシル化非依存性リソソーム標的化
本発明者らは、治療用酵素をリソソームに標的化するグリコシル化非依存性リソソーム標的化(GILT)技術を開発した。詳細には、GILT技術は、リソソーム標的化のために、M6Pの代わりに、CI−MPRと会合するペプチドタグを用いる。代表的には、GILTタグは、マンノース−6−リン酸非依存的様式でCI−MPRに結合する、タンパク質、ペプチドまたは他の部分である。都合の良いことに、この技術は、リソソーム酵素の取り込みに対する正常な生物学的機構を模倣するが、マンノース−6−リン酸に非依存的な様式で模倣するものである。
【0053】
好ましいGILTタグは、ヒトインスリン様成長因子II(IGF−II)に由来する。ヒトIGF−IIは、IGF−IIレセプターとも称されるCI−MPRに対する高親和性リガンドである。GILTタグ化された治療用酵素がM6P/IGF−IIレセプターに結合することにより、そのタンパク質がエンドサイトーシス経路を介してリソソームに標的化される。このタンパク質はいったん単離されると、さらに修飾を行う必要がないので、この方法は、グリコシル化を含む方法よりも、容易さおよび費用効果の高さをはじめとした数多くの利点を有する。
【0054】
GILT技術およびGILTタグの詳細な説明は、米国公開番号20030082176、20040006008、20040005309および20050281805(これらのすべての教示は、その全体が本明細書によって参考として援用される)に見られ得る。
【0055】
フューリン抵抗性GILTタグ
リソソーム蓄積症を処置するためのGILTタグ化リソソーム酵素の開発の際、IGF−II由来GILTタグが、哺乳動物細胞内での生成中にフューリンによるタンパク分解性切断に供されてもよいことが明らかになってきた(実施例の項を参照のこと)。フューリンプロテアーゼは、代表的には、コンセンサス配列Arg−X−X−Arg(配列番号2)(Xは、任意のアミノ酸である)を有する切断部位を認識し、切断する。切断部位は、その配列内のカルボキシ末端のアルギニン(Arg)残基の後に位置する。いくつかの実施形態において、フューリン切断部位は、コンセンサス配列Lys/Arg−X−X−X−Lys/Arg−Arg(配列番号3)(Xは、任意のアミノ酸である)を有する。切断部位は、その配列内のカルボキシ末端のアルギニン(Arg)残基の後に位置する。本明細書中で使用されるとき、用語「フューリン」とは、本明細書中に定義されるようなフューリンプロテアーゼ切断部位を認識し得、切断し得る、フューリンまたはフューリン様プロテアーゼをはじめとした任意のプロテアーゼのことを指す。フューリンは、対形成塩基性アミノ酸切断酵素(PACE)としても知られる。フューリンは、膵島細胞においてプロインスリンの成熟に関与するプロテアーゼであるPC3を含むスブチリシン様プロタンパク質コンバターゼファミリーに属する。フューリンをコードする遺伝子は、FUR(FES上流領域)として知られていた。
【0056】
成熟ヒトIGF−IIペプチド配列を以下に示す。
【0057】
【化1】

見られるように、成熟ヒトIGF−IIは、残基34〜40(太字の下線部分)の間に2つの重複している潜在的なフューリン切断部位を含む。矢印が2つの潜在的なフューリン切断位置を指摘している。
【0058】
本発明者らは、フューリンによる切断に対して抵抗性であり、かつマンノース−6−リン酸非依存的様式でCI−MPRに結合する能力をなおも保持する、改変GILTタグを開発した。詳細には、フューリン抵抗性GILTタグは、変異が少なくとも1つのフューリン切断部位を無効にするように1つ以上のフューリン切断部位においてアミノ酸配列を変異させることによって設計され得る。したがって、いくつかの実施形態において、フューリン抵抗性GILTタグは、野生型IGF−IIペプチド(例えば、野生型ヒト成熟IGF−II)と比較するとき、フューリン切断が、妨げられるか、阻害されるか、減少するか、または減速するように、少なくとも1つのフューリンプロテアーゼ切断部位を無効にするか、またはフューリンプロテアーゼ切断部位に隣接した配列が変更された、変異を含むフューリン抵抗性IGF−IIムテインである。代表的には、適当な変異は、フューリン抵抗性GILTタグがヒトカチオン非依存性マンノース−6−リン酸レセプターに結合する能力に影響しない。特に、本発明に適したフューリン抵抗性IGF−IIムテインは、pH7.4において10−7M以下の解離定数(例えば、10−8、10−9、10−10、10−11またはそれ未満)で、マンノース−6−リン酸非依存的様式においてヒトカチオン非依存性マンノース−6−リン酸レセプターに結合する。いくつかの実施形態において、フューリン抵抗性IGF−IIムテインは、配列番号1のアミノ酸30〜40(例えば、31〜40、32〜40、33〜40、34〜40、30〜39、31〜39、32〜39、34〜37、32〜39、33〜39、34〜39、35〜39、36〜39、37〜40、34〜40)に対応する領域内に変異を含む。いくつかの実施形態において、適当な変異は、少なくとも1つのフューリンプロテアーゼ切断部位を無効にする。変異は、アミノ酸の置換、欠失、挿入であり得る。例えば、配列番号1の残基30〜40(例えば、31〜40、32〜40、33〜40、34〜40、30〜39、31〜39、32〜39、34〜37、32〜39、33〜39、34〜39、35〜39、36〜39、37〜40、34〜40)に対応する領域内のいずれか1つのアミノ酸が、他の任意のアミノ酸で置換され得るか、または欠失され得る。例えば、34位における置換は、第1の切断部位のフューリン認識に影響を及ぼしてもよい。各認識部位内における1つ以上の追加アミノ酸の挿入は、一方または両方のフューリン切断部位を無効にしてもよい。縮重位置における残基の1つ以上の欠失もまた、両方のフューリン切断部位を無効にしてもよい。
【0059】
いくつかの実施形態において、フューリン抵抗性IGF−IIムテインは、配列番号1のArg37またはArg40に対応する位置におけるアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、フューリン抵抗性IGF−IIムテインは、Arg37またはArg40位におけるLysまたはAlaへの置換を含む。37位と40位との両方におけるLysおよび/もしくはAlaへの変異の組み合わせ、またはLysもしくはAla以外のアミノ酸の置換を含む、他の置換も可能である。
【0060】
いくつかの実施形態において、本発明に適したフューリン抵抗性IGF−IIムテインは、追加の変異を含み得る。例えば、最大30%またはそれ以上の配列番号1の残基が、変更され得る(例えば、最大1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%またはそれ以上の残基が変更されてもよい)。したがって、本発明に適したフューリン抵抗性IGF−IIムテインは、配列番号1と少なくとも70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%を含む、少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有してもよい。
【0061】
いくつかの実施形態において、本発明に適したフューリン抵抗性IGF−IIムテインは、詳細には、CI−MPRに標的化される。IGF−IIに結合すると知られている他のレセプターに、天然のIGF−IIと比べて低い親和性で結合しつつ、高親和性(例えば、pH7.4において10−7M以下の解離定数)でCI−MPRに結合するタンパク質をもたらすIGF−IIポリペプチドにおける変異が、特に有用である。例えば、本発明に適したフューリン抵抗性IGF−IIムテインは、IGF−Iレセプターに対する天然に存在するヒトIGF−IIの親和性と比べて、IGF−Iレセプターに対して低い結合親和性を有するように改変され得る。例えば、IGF−II残基Tyr27のLeuによる置換、ValによるLeu43の置換またはPheによるSer26の置換は、IGF−Iレセプターに対するIGF−IIの親和性をそれぞれ94倍、56倍および4倍低下させる(Torresら(1995)J.Mol.Biol.248(2):385−401)。ヒトIGF−IIの残基1〜7の欠失は、ヒトIGF−Iレセプターに対する親和性を30倍低下させ、同時に、ラットIGF−IIレセプターに対する親和性を12倍増加させた(Hashimotoら(1995)J.Biol.Chem.270(30):18013−8)。IGF−IIのNMR構造は、Thr7が、残基48Pheおよび50Serの近く、ならびに9Cys−47Cysジスルフィド架橋の近くに位置することを示している。Thr7とこれらの残基との相互作用が、IGF−Iレセプター結合に必要とされる可撓性のN末端のヘキサペプチドを安定化させ得ると考えられる(Terasawaら(1994)EMBO J.13(23)5590−7)。同時に、この相互作用は、IGF−IIレセプターへの結合を調節し得る。IGF−IIのC末端の切断(残基62〜67)もまた、IGF−Iレセプターに対するIGF−IIの親和性を5倍低下させると見られる(Rothら(1991)Biochem.Biophys.Res.Commun.181(2):907−14)。
【0062】
IGF−Iレセプターおよびカチオン非依存性M6Pレセプターに対する結合表面は、IGF−IIの別個の面に存在する。構造的および変異的データに基づいて、ヒトIGF−IIよりも実質的に小さい機能的カチオン非依存性M6P結合ドメインが構築され得る。例えば、アミノ末端のアミノ酸(例えば、1〜7または2〜7)および/またはカルボキシ末端の残基62〜67が、欠失され得るか、または置き換えられ得る。さらに、アミノ酸29〜40が、そのポリペプチドの残りの部分のフォールディングまたはカチオン非依存性M6Pレセプターへの結合を変更させることなく、おそらく除去され得るか、または置き換えられ得る。このようにして、アミノ酸8〜28および41〜61を含む標的化部分が、構築され得る。これらの一続きのアミノ酸は、おそらく、直接結合され得るか、またはリンカーによって分断され得る。あるいは、アミノ酸8〜28および41〜61は、別個のポリペプチド鎖上に提供され得る。IGF−IIに相同であり、かつIGF−IIの構造と密接な関係がある三次構造を有する、インスリンの類似のドメインは、別個のポリペプチド鎖に存在するときでさえも、適切な三次構造への適切な再フォールディングを可能にするのに十分な構造的情報を有する(Wangら(1991)Trends Biochem.Sci.279−281)。したがって、例えば、アミノ酸8〜28またはその保存的置換バリアントが、リソソーム酵素に融合され得;得られる融合タンパク質が、アミノ酸41〜61またはその保存的置換バリアントと混合されて、患者に投与され得る。
【0063】
IGF−IIを、血清IGF結合タンパク質への結合を最小にするように改変する(Baxter(2000)Am.J.Physiol Endocrinol Metab.278(6):967−76)ことにより、IGF−II/GILT構築物の隔離が回避され得る。多くの研究が、IGF結合タンパク質への結合に必要な残基をIGF−IIに局在化させている。これらの残基に変異を有する構築物は、M6P/IGF−IIレセプターに対する高親和性の結合性の保持およびIGF結合タンパク質に対する低い親和性についてスクリーニングされ得る。例えば、IGF−IIのPhe26をSerで置き換えることは、M6P/IGF−IIレセプターへの結合に対して影響せずに、IGFBP−1および−6に対するIGF−IIの親和性を低下させると報告されている(Bachら(1993)J.Biol.Chem.268(13):9246−54)。Glu9の代わりにLysを用いるなどの他の置換もまた、有益であり得る。IGF−IIと高度に保存されたIGF−Iの領域における、別個または組み合わせでの類似の変異が、IGF−BPの結合を大きく減少させる(Mageeら(1999)Biochemistry 38(48):15863−70)。
【0064】
代わりのアプローチは、M6P/IGF−IIレセプターに高親和性で結合し得るIGF−IIの最小領域を同定することである。M6P/IGF−IIレセプターへのIGF−IIの結合に関係する残基は、たいてい、IGF−IIの1つの面の上に密集する(Terasawaら(1994)EMBO J.13(23):5590−7)。IGF−II三次構造は、通常、3つの分子内ジスルフィド結合によって維持されるが、適切に折り畳まれ、かつ結合活性を有するように、IGF−IIのM6P/IGF−IIレセプター結合表面上にアミノ酸配列を組み込むペプチドを設計することができる。そのような最小の結合ペプチドは、高度に好ましいリソソーム標的化ドメインである。例えば、好ましいリソソーム標的化ドメインは、ヒトIGF−IIのアミノ酸8〜67である。M6P/IGF−IIレセプターに結合する、アミノ酸48〜55付近の領域に基づいて設計されたペプチドもまた、望ましいリソソーム標的化ドメインである。あるいは、酵母ツーハイブリッドアッセイまたはファージディスプレイ型アッセイのいずれかを介して、M6P/IGF−IIレセプターに結合する能力についてペプチドのランダムライブラリーをスクリーニングすることができる。
【0065】
インスリンレセプターに対する結合親和性
本願の発明者らは、本明細書中に記載される多くのフューリン抵抗性IGF−IIムテインが、インスリンレセプターに対して小さいかまたは低い結合親和性を有することを予想外にも発見した。したがって、いくつかの実施形態において、本発明に適したペプチドタグは、インスリンレセプターに対する天然に存在するヒトIGF−IIの親和性と比べて、インスリンレセプターに対して小さいかまたは低い結合親和性を有する。いくつかの実施形態において、本発明に適したインスリンレセプターに対して小さいかまたは低い結合親和性を有するペプチドタグは、野生型成熟ヒトIGF−IIのインスリンレセプターに対する結合親和性よりも1.5倍超、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、12倍、14倍、16倍、18倍、20倍、50倍、100倍低い結合親和性を有するペプチドタグを含む。インスリンレセプターに対する結合親和性は、当該分野で公知の様々なインビトロアッセイおよびインビボアッセイを用いて測定され得る。例示的な結合アッセイは、実施例の項に記載される。
【0066】
突然変異誘発
IGF−IIムテインは、適切なヌクレオチドの変更をIGF−II DNAに導入することによって、または所望のIGF−IIポリペプチドを合成することによって、調製され得る。IGF−II配列におけるバリエーションは、例えば、米国特許第5,364,934号に示されている、例えば、保存的変異および非保存的変異のための任意の手法およびガイドラインを用いて作製され得る。バリエーションは、成熟ヒトIGF−IIの天然に存在する配列と比較するとき、IGF−IIのアミノ酸配列の変更をもたらす、IGF−IIをコードする1つ以上のコドンの置換、欠失または挿入であってもよい。アミノ酸置換は、1つのアミノ酸を、類似の構造的および/または化学的特性を有する別のアミノ酸で置き換えた結果(例えば、セリンによるロイシンの置き換え、すなわち、保存的なアミノ酸の置き換え)であり得る。アミノ酸置換は、1つのアミノ酸を、似ていない構造的特性および/または化学的特性を有する別のアミノ酸で置き換えた結果、すなわち、非保存的なアミノ酸の置き換えでもあり得る。挿入または欠失は、必要に応じて、1〜5個のアミノ酸の範囲であってもよい。許容されるバリエーションは、その配列におけるアミノ酸の挿入、欠失または置換を体系的に作製し、そして得られたバリアントを、当該分野で公知のインビボアッセイまたはインビトロアッセイ(例えば、CI−MPRに対する結合アッセイまたはフューリン切断アッセイ)において活性について試験することによって、判定されてもよい。
【0067】
スキャニングアミノ酸解析もまた、連続した配列において1つ以上のアミノ酸を同定するために使用され得る。比較的小さく中性のアミノ酸が、好ましいスキャニングアミノ酸である。そのようなアミノ酸としては、アラニン、グリシン、セリンおよびシステインが挙げられる。アラニンは、ベータ炭素からとび出た側鎖を持たず、かつバリアントの主鎖の立体配座を変更させる可能性が低いので、この群の中でもアラニンが代表的に好ましいスキャニングアミノ酸である。また、アラニンは、最も一般的なアミノ酸であるので、代表的に好ましい。さらに、アラニンは、しばしば埋没した位置と露出した位置との両方に見られる[Creighton,The Proteins,(W.H.Freeman & Co.,N.Y.);Chothia,J.Mol.Biol.,150:1(1976)]。アラニン置換が、適切な量のバリアントをもたらさない場合、等配電子の(isoteric)アミノ酸が使用され得る。
【0068】
それらのバリエーションは、当該分野で公知の方法(例えば、オリゴヌクレオチド媒介性(部位特異的)突然変異誘発、アラニンスキャニングおよびPCR突然変異誘発)を用いて作製され得る。部位特異的突然変異誘発[Carterら、Nucl.Acids Res.,13:4331(1986);Zollerら、Nucl.Acids Res.,10:6487(1987)]、カセット突然変異誘発 [Wellsら、Gene,34:315(1985)]、制限部位選択突然変異誘発(restriction selection mutagenesis)[Wellsら、Philos.Trans.R.Soc.London SerA,317:415(1986)]または他の公知の手法を、クローニングされたDNAに対して行うことにより、IGF−IIムテインが生成され得る。
【0069】
スペーサー
フューリン抵抗性GILTタグは、リソソーム酵素をコードするポリペプチドのN末端またはC末端に融合され得る。このGILTタグは、リソソーム酵素ポリペプチドに直接融合され得るか、またはリンカーもしくはスペーサーによってリソソーム酵素ポリペプチドと分断され得る。アミノ酸のリンカーまたはスペーサーは、通常、可撓性であるように、または2つのタンパク質部分の間にアルファ−ヘリックスなどの構造を挿入するように、設計される。リンカーまたはスペーサーは、比較的短いこともあるし(例えば、配列Gly−Ala−Pro(配列番号4)またはGly−Gly−Gly−Gly−Gly−Pro(配列番号5))、それよりも長い(例えば、10〜25アミノ酸長)こともある。融合連結の部位は、両方の融合パートナーの適切なフォールディングおよび活性を促すように、そしてGAAポリペプチドからのペプチドタグの早期の分断を防ぐように、注意して選択されるべきである。好ましい実施形態において、リンカー配列は、Gly−Ala−Pro(配列番号4)である。
【0070】
本発明の方法および組成物において使用され得るGILTタグ化GAAタンパク質の追加の構築物は、米国公開番号20050244400(その開示全体が本明細書中で参考として援用される)に詳細に記載された。
【0071】
細胞
細胞培養およびポリペプチドの発現を行いやすい任意の哺乳動物の細胞または細胞型(例えば、ヒト胎児腎(HEK)293、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、サル腎臓(COS)、HT1080、C10、HeLa、ベビーハムスター腎臓(BHK)、3T3、C127、CV−1、HaK、NS/OおよびL−929細胞)が、本発明に従って利用され得る。本発明に従って使用され得る哺乳動物細胞の非限定的な例としては、BALB/cマウスミエローマ株(NSO/l、ECACC No:85110503);ヒト網膜芽細胞(PER.C6(CruCell,Leiden,The Netherlands));SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS−7,ATCC CRL1651);ヒト胎児腎株(293細胞、または懸濁培養において生育するためにサブクローン化された293細胞,Grahamら、J.Gen Virol.,36:59(1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK,ATCC CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞+/−DHFR(CHO,Urlaub and Chasin,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216(1980));マウスセルトリ細胞(TM4,Mather,Biol.Reprod.,23:243−251(1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76,ATCC CRL−1 587);ヒト子宮頸癌細胞(HeLa,ATCC CCL2);イヌ腎臓細胞(MDCK,ATCC CCL34);バッファローラット(buffalo rat)肝臓細胞(BRL3A,ATCC CRL1442);ヒト肺細胞(W138,ATCC CCL75);ヒト肝臓細胞(Hep G2,HB8065);マウス乳腺腫瘍(MMT060562,ATCC CCL51);TRI細胞(Matherら、Annals N.Y.Acad.Sci.,383:44−68(1982));MRC5細胞;FS4細胞;およびヒトヘパトーム株(Hep G2)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本発明の融合タンパク質は、CHO細胞株から産生される。
【0072】
本発明の融合タンパク質は、種々の非哺乳動物宿主細胞(例えば、昆虫(例えば、Sf−9、Sf−21、Hi5)、植物(例えば、Leguminosa、穀類またはタバコ)、酵母(例えば、S.cerivisae、P.pastoris)、原核生物(例えば、E.Coli、B.subtilisおよび他のBacillus spp.、Pseudomonas spp.、Streptomyces spp)または真菌類)においても発現され得る。
【0073】
いくつかの実施形態において、フューリン抵抗性GILTタグを有するかまたは有しない融合タンパク質が、フューリン欠損細胞において産生され得る。本明細書中で使用されるとき、用語「フューリン欠損細胞」とは、フューリンプロテアーゼ活性が阻害されているか、低下しているか、または無くなっている、任意の細胞のことを指す。フューリン欠損細胞は、フューリンを産生しないか、または少量のフューリンプロテアーゼもしくは不完全なフューリンプロテアーゼを産生する、哺乳動物細胞と非哺乳動物細胞との両方を含む。FD11細胞(Gordonら(1997)Infection and Immunity 65(8):3370 3375)およびMoebring and Moehring(1983)Infection and Immunity 41(3):998 1009に記載されているそれらの変異細胞を含むがこれらに限定されない例示的なフューリン欠損細胞が、当業者に公知であり、かつ利用可能である。あるいは、フューリン欠損細胞は、上に記載した哺乳動物細胞および非哺乳動物細胞を突然変異誘発処理、例えば、照射、エチジウムブロマイド、臭素化(bromidated)ウリジン(BrdU)など、好ましくは、化学的突然変異誘発さらにより好ましくはエチルメタンスルホネート突然変異誘発に曝露し、その処理を生き延びる細胞を回収し、そしてPseudomonas外毒素Aの毒性に対して抵抗性であることが見出される細胞について選択することによって得られてもよい(Moehring and Moehrin(1983)Infection and Immunity 41(3):998 1009を参照のこと)。
【0074】
低グリコシル化(Underglycosylation)
本発明の標的化された治療用タンパク質は、低グリコシル化され(underglycosylated)得る、すなわち、通常、天然に存在するヒトタンパク質上に存在するだろう1つ以上の炭水化物構造が、好ましくは、取り除かれるか、除去されるか、改変されるか、または遮蔽される。いかなる理論にも拘束されるつもりはないが、低グリコシル化されたタンパク質は、哺乳動物におけるそのタンパク質の半減期を延長し得ると企図される。低グリコシル化は、多くの方法で達成され得る。いくつかの実施形態において、本発明の標的化された融合タンパク質は、融合タンパク質の分泌を促進する分泌シグナルペプチドを用いて作製され得る。例えば、その融合タンパク質は、IGF−IIシグナルペプチドを用いて作製され得る。一般に、IGF−IIシグナルペプチドを用いて作製された融合タンパク質は、野生型酵素と比較して、そのタンパク質の表面上において低いマンノース−6−リン酸(M6P)レベルを有する。いくつかの実施形態において、タンパク質は、完全に低グリコシル化されてもよく(E.coliにおいて合成されるときのように)、部分的に低グリコシル化されてもよく(部位特異的突然変異誘発によって1つ以上のグリコシル化部位を破壊した後に哺乳動物系において合成されるときのように)、または非哺乳動物のグリコシル化パターンを有してもよい。例えば、低グリコシル化された融合タンパク質は、部位特異的突然変異誘発によって、1つ以上のグリコシル化部位を改変するか、置換するか、または無くすことによって、生成されてもよい。例えば、野生型GAAは、代表的には、N結合型グリコシル化のための基準の認識配列Asn−Xaa−Thr/Ser(配列番号7)(Xaaは、Pro以外の任意の残基であり得る)とマッチする7つの部位、すなわち、Asn−140、−233、−390、−470、−652、−882および−925を有する(Hoefslootら、1988;Martiniukら、1990b)。上に記載した位置における1つ以上のAsnが、変更されるか、または排除されることにより、低グリコシル化されたGAAが生成されてもよい。いくつかの実施形態において、Asnは、Glnに変更されてもよい。
【0075】
いくつかの実施形態において、治療用融合タンパク質は、合成後に脱グリコシル化され得る。例えば、脱グリコシル化は、化学的または酵素的な処理によるものであり得、完全な脱グリコシル化をもたらしてもよく、または炭水化物構造の一部だけが除去される場合は、部分的な脱グリコシル化をもたらしてもよい。
【0076】
いくつかの実施形態において、リソソーム酵素のグリコシル化が、例えば、酸化および還元によって改変されることにより、血液からの治療用タンパク質のクリアランスが減少する。例えば、リソソーム酵素は、ペリオデート処理によって脱グリコシル化され得る。特に、ペリオデートおよび水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤による処理が、ほとんどの糖タンパク質の炭水化物構造を改変するのに効果的である。ペリオデート処理は、近接するジオールを酸化し、炭素−炭素結合を切断し、そしてヒドロキシル基をアルデヒド基で置き換え;水素化ホウ素は、アルデヒドをヒドロキシルに還元する。例えば、1mMの濃度において、ペリオデートは、もっぱらシアル酸基を酸化し、10mM以上において、利用可能なすべての近接するジオールが、アルデヒドに変換される(Hermanson,G.T.1996,Bioconjugate techniques.Academic press)。アルデヒド基は、いったん形成されると、高度に反応性であり、そのタンパク質内の第1級アミノ基とシッフ塩基結合を形成し得、結果として分子内結合をもたらし得る。ゆえに、形成されるアルデヒド基は、アルコール基に還元されるのが妥当である。一般に使用される還元剤は、NaBHであり、その反応は、アルカリ性条件下において最もよく進む。ゆえに、近接するジオールを含む多くの糖残基が、この処理によって切断される。それにもかかわらず、この処理は、環状炭水化物を直鎖状炭水化物に変換するが、炭水化物を完全に除去しないことから、潜在的にプロテアーゼ感受性または抗原性であるポリペプチド部位を露出するリスクが最小になる。
【0077】
Grubb,J.H.ら(Grubbら、2008,PNAS 105:2616)は、ヒトβ−グルクロニダーゼをメタ過ヨウ素酸ナトリウムで処理した後の水素化ホウ素ナトリウム還元を報告している。改変されたベータ−グルクロニダーゼは、90%の活性を保持したが、マンノースとマンノース−6−リン酸との両方に依存するレセプター取り込み活性を喪失した。Grubbらによって説明されたような水素化ホウ素ナトリウム試薬に起因する、還元において使用されたアルカリ性pH条件は、すべてのリソソーム酵素に対して適するものではなく、それらの酵素の多くが、アルカリ性条件下において不安定である。
【0078】
ゆえに、いくつかの実施形態において、シアノ水素化ホウ素ナトリウムが、還元剤として使用される。シアノ水素化ホウ素によるアルデヒドの還元速度は、中性pH以上において無視できるが、その反応速度は、酸性pHにおいて速くなる(Borchら、1971,JACS 93:2897)。例えば、pH3.5〜4においてメタ過ヨウ素酸ナトリウムおよびシアノ水素化ホウ素ナトリウムを用いるレジメンが、使用され得る。
【0079】
例えば、ポンペ病およびファブリー病において欠損している酵素である、GAAまたはアルファガラクトシダーゼAを、pH5.6においてそれぞれペリオデートおよびシアノ水素化ホウ素で処理することにより、良好な酵素活性が回復した。0.1M酢酸Na,pH5.6中に20mMメタ過ヨウ素酸ナトリウムおよび40mMシアノ水素化ホウ素ナトリウムを含む等体積の混合物と酵素とを、60分間、氷上でインキュベートした。未反応のペリオデートを、15分間、氷上においてグリセロール(最終濃度10%)でクエンチした。最後にそのタンパク質を、Amicon遠心濾過デバイスを用いるダイアフィルトレーションによってリン酸緩衝食塩水,pH6.2に交換した。他の還元試薬、例えば、ジメチルアミンボランもまた、酸性条件下におけるGAAなどの糖タンパク質のメタ過ヨウ素酸ナトリウムの酸化によって生成されるアルデヒドを還元するのに有用であり得る。
【0080】
したがって、いくつかの実施形態において、メタ過ヨウ素酸ナトリウムで処理されたGAAの還元は、pH3.0〜pH6の酸性pHにおけるシアノ水素化ホウ素ナトリウムの使用を含む。化学修飾のための至適条件は、2つのアッセイ:ConAセファロースへの結合の低下、およびJ774Eマクロファージへの少ない取り込みによって容易に決定され得る。
【0081】
例えば、ペリオデート/水素化ホウ素で改変されたβ−グルクロニダーゼがConA−セファロースに結合する能力を、無処理のβ−グルクロニダーゼの能力と比較した。それらの酵素を、20mM Tris−HCl,pH6.8、0.5M NaCl中の50μlのConAビーズとともに室温において15分間インキュベートした。15秒間、最高速度でビーズを遠心した。上清(フロースルー)を慎重に廃棄し、GUS活性についてアッセイし、SDS/PAGEによって解析した。本発明者らが、Grubbらにおいて報告されたようにGUSを厳密に処理したとき、60%のConA結合活性が失われ、未結合のGUSは、ペリオデート処理されたサンプルおよびその後の水素化ホウ素ナトリウムで還元されたサンプルのフロースルー中にだけ存在した。
【0082】
治療用タンパク質の投与
本発明によれば、本発明の治療用タンパク質は、代表的には、単独で、または本明細書中に記載されるような、その治療用タンパク質を含む組成物もしくは薬物として(例えば、疾患を処置するための薬物の製造において)、個体に投与される。その組成物は、薬学的組成物を調製する生理的に許容可能なキャリアまたは賦形剤とともに製剤化され得る。そのキャリアおよび組成物は、滅菌され得る。製剤化は、投与様式に適するものであるべきである。
【0083】
適当な薬学的に許容可能なキャリアとしては、水、塩溶液(例えば、NaCl)、食塩水、緩衝食塩水、アルコール、グリセロール、エタノール、アラビアゴム、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、炭水化物(例えば、ラクトース、アミロースまたはデンプン)、糖(例えば、マンニトール、スクロースまたはその他)、デキストロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘稠性パラフィン、香油、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなど、ならびにそれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。薬学的調製物は、所望であれば、活性化合物と有害に反応しないかまたはその活性を干渉しない、補助剤(例えば、潤滑剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響するための塩、緩衝液、着色剤、香味料および/または芳香物質など)と混合され得る。好ましい実施形態において、静脈内投与に適した水溶性キャリアが使用される。
【0084】
本組成物または薬物は、所望であれば、微量の湿潤剤もしくは乳化剤またはpH緩衝剤も含み得る。本組成物は、液体の溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、丸剤、カプセル、徐放製剤または粉末であり得る。本組成物は、従来の結合剤およびトリグリセリドなどのキャリアを用いて、坐剤としても製剤化され得る。経口製剤は、標準的なキャリア(例えば、製薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrollidone)、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなど)を含み得る。
【0085】
本組成物または薬物は、ヒトへの投与に適合された薬学的組成物として通例の手順に従って製剤化され得る。例えば、好ましい実施形態において、静脈内投与用の組成物は、代表的には、滅菌された等張性水性緩衝液における溶液である。必要であれば、その組成物は、可溶化剤、および注射部位における疼痛を和らげる局所麻酔剤も含んでもよい。一般に、それらの成分は、活性な薬剤の量が示されているアンプルまたはサシェ(sachette)などの空気を通さないように密閉された容器内において、別々に、または単位剤形に共に混合された状態で、例えば、凍結乾燥された乾燥粉末または水を含まない濃縮物として、供給される。本組成物は、注入によって投与される場合、滅菌された製薬グレードの水、食塩水またはデキストロース/水が入った注入ボトルを用いて調剤され得る。本組成物は、注射によって投与される場合、投与前にそれらの成分が混合されてもよいように、注射用の滅菌水または食塩水のアンプルが、提供され得る。
【0086】
治療用タンパク質は、中性または塩の形態として製剤化され得る。薬学的に許容可能な塩としては、遊離アミノ基を用いて形成される塩(例えば、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などから得られる塩)および遊離カルボキシル基を用いて形成される塩(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどから得られる塩)が挙げられる。
【0087】
治療用タンパク質(または治療用タンパク質を含む組成物もしくは薬物)は、任意の適切な経路によって投与される。好ましい実施形態において、治療用タンパク質は、静脈内に投与される。他の実施形態において、治療用タンパク質は、標的組織(例えば、心臓もしくは筋肉(例えば、筋肉内)または神経系(例えば、脳への直接注射;脳室内;髄腔内))への直接投与によって投与される。あるいは、治療用タンパク質(または治療用タンパク質を含む組成物もしくは薬物)は、非経口的、経皮的または経粘膜的に(例えば、経口的または経鼻的に)投与され得る。所望であれば、2つ以上の経路が同時に使用され得る。
【0088】
治療用タンパク質(または治療用タンパク質を含む組成物もしくは薬物)は、単独で、あるいは他の薬剤(例えば、抗ヒスタミン剤(例えば、ジフェンヒドラミン)もしくは免疫抑制剤、または抗GILTタグ化リソソーム酵素抗体を打ち消す他の免疫治療薬)とともに、投与され得る。用語「とともに」は、その薬剤が、治療用タンパク質(または治療用タンパク質を含む組成物もしくは薬物)の前、それとほぼ同時、またはその後に、投与されることを示す。例えば、その薬剤は、治療用タンパク質を含む組成物中に混合され得、それにより、治療用タンパク質と同時に投与されるか;あるいは、その薬剤は、混合せずに(例えば、治療用タンパク質も投与される静脈ライン上におけるその薬剤またはその逆の「ピギーバック」送達によって)、同時に投与され得る。別の例では、その薬剤は、別々に(例えば、混合されずに)、しかし、治療用タンパク質を投与した後の短い期間内(例えば、24時間以内)に、投与され得る。
【0089】
治療用タンパク質(または治療用タンパク質を含む組成物もしくは薬物)は、治療有効量(すなわち、一定間隔で投与されるときに、疾患を処置する(例えば、疾患に関連する症状を回復させること、疾患の発症を予防するかもしくは遅延させること、および/または上に記載されたような疾患の症状の重症度もしくは頻度を低下させることによって)のに十分な投薬量)で投与される。その疾患の処置に治療的に有効であろう用量は、その疾患の影響の性質および程度に依存し、標準的な臨床上の手法によって決定され得る。さらに、当該分野で公知の方法を用いて最適な投与量の範囲を特定するのを助けるために、インビトロアッセイまたはインビボアッセイが必要に応じて使用されてもよい。使用される正確な用量もまた、投与経路および疾患の重症度に依存し、開業医の判断および各患者の事情に従って決定されるべきである。有効量は、インビトロ試験系または動物モデル試験系から得られた用量反応曲線から推定されてもよい。治療的に有効な投薬量は、例えば、約0.1〜1mg/kg、約1〜5mg/kg、約5〜20mg/kg、約20〜50mg/kgまたは20〜100mg/kgであり得る。特定の個体のための有効量は、その個体の要求に応じて、時間をかけて変更することができる(例えば、増加または減少)。例えば、身体的な疾病もしくはストレスのとき、または疾患症状が悪化している場合、投薬量は、増加され得る。
【0090】
治療用タンパク質(または治療用タンパク質を含む組成物もしくは薬物)の治療有効量は、疾患の影響の性質および程度に応じて、一定間隔で継続的に投与される。ある「間隔」における投与は、本明細書中で使用されるとき、治療有効量が、周期的に投与されることを示す(1回の用量と区別されるとき)。その間隔は、標準的な臨床上の手法によって決定され得る。いくつかの実施形態において、治療用タンパク質は、隔月、毎月、1ヶ月に2回、3週間ごと、隔週、毎週、1週間に2回、1週間に3回または毎日、投与される。単一の個体のための投与間隔は、固定された間隔である必要はないが、個体の要求に応じて、時間をかけて変更することができる。例えば、身体的な疾病もしくはストレスのとき、または疾患症状が悪化している場合、投与の間隔は、短縮され得る。
【0091】
本明細書中で使用されるとき、用語「隔月」は、2ヶ月あたり1回(すなわち、2ヶ月ごとに1回)の投与を意味し;用語「毎月」は、1ヶ月あたり1回の投与を意味し;用語「3週間ごと」は、3週間あたり1回(すなわち、3週間ごとに1回)の投与を意味し;用語「隔週」は、2週間あたり1回(すなわち、2週間ごとに1回)の投与を意味し;用語「毎週」は、1週間あたり1回の投与を意味し;そして用語「毎日」は、1日あたり1回の投与を意味する。
【0092】
本発明はさらに、本明細書中に記載されている方法などによってポンペ病を処置するために組成物を投与するための指示を含むラベルを有する容器(例えば、バイアル、ボトル、静脈内投与用のバッグ、注射器など)内の、本明細書中に記載されるような治療用タンパク質を含む薬学的組成物に関する。
【0093】
本発明は、さらにおよびより詳細に、以下の実施例によって説明される。しかしながら、実施例は、限定ではなく例示の目的で含められる。
【実施例】
【0094】
実施例1:フューリンはIGF−IIベースGILTタグを切断する
ZC−701は、ポンペ病の処置のために開発されてきた。ZC−701は、3アミノ酸スペーサーを介してヒト酸性α−グルコシダーゼ(hGAA)の残基70〜952に融合されたN末端のIGF−IIベースGILTタグを含むキメラタンパク質である。詳細には、ZC−701は、ヒトIGF−IIのアミノ酸1および8〜67(すなわち、成熟ヒトIGF−IIのΔ2−7)、スペーサー配列Gly−Ala−Pro、ならびにヒトGAAのアミノ酸70〜952を含む。その完全長アミノ酸配列を以下に示す。スペーサー配列は、太字にされている。スペーサー配列に対してN末端の配列は、ヒトIGF−IIのアミノ酸1および8〜67が反映されており、スペーサー配列に対してC末端の配列は、ヒトGAAのアミノ酸70〜952が反映されている。IGF−IIタグ配列内の2つの重複する潜在的なフューリン切断部位は、太字にされており、下線が付されている。矢印は、2つの潜在的なフューリン切断位置を指摘している。
【0095】
【化2】

ZC−701開発の過程において、ZC−701分子の一部におけるIGF−II由来GILTタグが、CHO細胞において産生される間に、フューリンによるタンパク分解性切断に供されることが明らかになってきた。ZC−701バッチ10−2−F45−54のn末端の解析から、2つのn末端配列の存在が明らかになった。一方は、ZC−701の予測されるn末端に適合したことから、予測されるZC−701タンパク質の存在が示唆される。他方のn末端配列は、ZC−701のタグ部分内の配列と整合したことから、ZC−701のアミノ酸残基34における内部タンパク分解性の(endoproteolytic)切断と一致するZC−701の誘導体の存在が示唆される。この2つのn末端の推定モル比に基づいて、このバッチのZC−701は、約1:1の比のインタクト種と切断種を有することが見出された。
【0096】
この結果を受けて、ZC−701の他のバッチの各々を、n末端配列決定に供した。そのすべてのバッチが、同じ2つのn末端を示し、切断種は、全化合物の20〜50%に及んだ。以前に低い取り込み活性を有すると示された1つのバッチは、追加のタンパク質分解を示唆するn末端のセットを示した。本発明者らは、本発明者らのZC−701のすべてのバッチにおける第2の種に関与するタンパク分解性事象が、フューリンまたはフューリン様プロテアーゼによって行われたと結論づけた。
【0097】
図1は、ZC−701のアミノ末端のマップを示している。2つの四角で囲まれたアミノ酸残基は、すべてのZC−701バッチにおいてマッピングされたn末端の部位である。第1のN末端は、シグナルペプチド切断の部位であり、ZC−701の予測されるn末端をもたらす。四角で囲まれた第2の残基は、望まれないタンパク分解性切断事象の部位である。その切断部位に近位のアミノ酸配列は、Arg−Arg−Ser−Arg(配列番号9)である。これは、Arg−X−X−Arg(配列番号10)の後ろを切断する、フューリンと呼ばれるCHO細胞に存在するプロテアーゼの基準の切断部位とマッチする。フューリンは、膵島細胞におけるプロインスリンの成熟に関与するプロテアーゼであるPC3をはじめとしたプロホルモンコンバターゼのファミリーのメンバーである。実際に、プロインスリンにおけるPC3切断部位は、保存されており、フューリンがIGF−IIタグを切断する部位と同一である。
【0098】
フューリンによって切断されたZC−701は、インタクトなZC−701と分子量が約3000ダルトン異なり、これは、3%未満の分子量の差異である。タンパク質におけるオリゴ糖の不均一性に起因して、切断されたZC−701の存在は、SDS−PAGEによって予め検出されなかった。しかしながら、ZC−701を、まず、ペプチドN−グリコシダーゼF(PNGase F)で処理することによって脱グリコシル化する場合は、切断されたタンパク質は、SDS−PAGEによってインタクトなZC−701から分割され得る。
【0099】
図2に示されるように、SDS−PAGEゲルのレーン1は、脱グリコシル化された精製ZC−701の電気泳動パターンを示している。2つのバンドが明らかである。上のバンドは、インタクトなZC−701であると考えられ、下のバンドは、フューリンによって切断されたZC−701であると考えられる。下のバンドが、本当にフューリンによって切断されたZC−701であることを証明するために、レーン1に充填された同じタンパク質を、まず、フューリンで処理し、次いで、レーン2に充填した。図2に示されるように、レーン2におけるタンパク質のすべてが、レーン1における下のバンドと共に移動していることから、下のバンドが、実際にフューリンによって切断されたZC−701であることが示唆される。
【0100】
本発明者らは、SDS−PAGEにおけるバンド強度の定量化およびN末端配列決定実験において明らかになったアミノ酸の定量化によって、ZC−701のいくつかのバッチにおいてフューリンによって切断されたZC−701の割合を推定した。上で述べたように、切断されたZC−701の断片は、様々なバッチにおいて20%〜50%に及んだ。
【0101】
実施例2.フューリン抵抗性IGF−IIベースGILTタグを含む標的化された融合タンパク質
本発明者らは、アミノ酸の変更が少なくとも1つのフューリン切断部位を無効にするようにIGF−IIのアミノ酸配列を変更することによって、フューリン切断の問題を回避するように設計することができる。ZC−701の一連の変異体バージョンを作製し、フューリンによる切断に対する抵抗性についてアッセイした。ZC−701の例示的な変異体バージョンを以下に記載されるように作製した。
【0102】
ZC−701
下記のGILTΔ2−7−GAA70−952カセットを、そのカセットおよびベクターpCEP4のAsp718およびNotI部位を用いてクローニングすることにより、pCEP−GILTΔ2−7−GAA70−952(プラスミドp701)を作製した。クローニングのための制限酵素認識部位は、太字の小文字で表されている。スペーサーアミノ酸配列Gly、Ala、Pro(下線の配列)は、GAA遺伝子とGILTΔ2−7タグ(大文字の配列)とを分断している。そのスペーサーおよびタグは、GAA残基Ala70の上流に配置されている。
【0103】
【化3−1】

【0104】
【化3−2】

構築物1459
下記のGILTΔ2−7/K37−GAA70−952カセットを、そのカセットおよびベクターpCEP4のAsp718およびNotI部位を用いてクローニングすることにより、pCEP−GILTΔ2−7/K37−GAA70−952(プラスミドp1459)を作製した。クローニングのための制限酵素認識部位は、太字の小文字で表されている。スペーサーアミノ酸配列Gly、Ala、Pro(下線の配列)は、GAA遺伝子とGILTΔ2−7/K37タグ(大文字の配列)とを分断している。そのスペーサーおよびタグは、GAA残基Ala70の上流に配置されている。GILTΔ2−7/K37カセットは、ヒトIGF−II配列のアミノ酸37におけるArgからLysへの置換(太字の大文字)を含む。
【0105】
【化4−1】

【0106】
【化4−2】

構築物1460
下記のGILTΔ2−7/K40−GAA70−952カセットを、そのカセットおよびベクターpCEP4のAsp718およびNotI部位を用いてクローニングすることにより、pCEP−GILTΔ2−7/K40−GAA70−952(プラスミドp1460)を作製した。クローニングのための制限酵素認識部位は、太字の小文字で表されている。スペーサーアミノ酸配列Gly、Ala、Pro(下線の配列)は、GAA遺伝子とGILTΔ2−7/K40タグ(大文字の配列)とを分断している。そのスペーサーおよびタグは、GAA残基Ala70の上流に配置されている。GILTΔ2−7/K40カセットは、ヒトIGF−II配列のアミノ酸40におけるArgからLysへの置換(太字の大文字)を含む。
【0107】
【化5−1】

【0108】
【化5−2】

構築物1461
下記のGILTΔ2−7/A37−GAA70−952カセットを、そのカセットおよびベクターpCEP4のAsp718およびNotI部位を用いてクローニングすることにより、pCEP−GILTΔ2−7/A37−GAA70−952(プラスミドp1461)を作製した。クローニングのための制限酵素認識部位は、太字の小文字で表されている。スペーサーアミノ酸配列Gly、Ala、Pro(下線の配列)は、GAA遺伝子とGILTΔ2−7/A37タグ(大文字の配列)とを分断している。そのスペーサーおよびタグは、GAA残基Ala70の上流に配置されている。GILTΔ2−7/A37カセットは、ヒトIGF−II配列のアミノ酸37におけるArgからAlaへの置換(太字の大文字)を含む。
【0109】
【化6−1】

【0110】
【化6−2】

構築物1463
下記のGILTΔ2−7/A40−GAA70−952カセットを、そのカセットおよびベクターpCEP4のAsp718およびNotI部位を用いてクローニングすることにより、pCEP−GILTΔ2−7/A40−GAA70−952(プラスミドp1463)を作製した。クローニングのための制限酵素認識部位は、太字の小文字で表されている。スペーサーアミノ酸配列Gly、Ala、Pro(下線の配列)は、GAA遺伝子とGILTΔ2−7/A40タグ(大文字の配列)とを分断している。そのスペーサーおよびタグは、GAA残基Ala70の上流に配置されている。GILTΔ2−7/A40カセットは、ヒトIGF2配列のアミノ酸40におけるArgからAlaへの置換(太字の大文字)を含む。
【0111】
【化7−1】

【0112】
【化7−2】

構築物1479
下記のGILTΔ2−7M1/K37−GAA70−952カセットを、そのカセットおよびベクターpCEP4のAsp718およびNotI部位を用いてクローニングすることにより、pCEP−GILTΔ2−7M1/K37−GAA70−952(プラスミドp1479)を作製した。クローニングのための制限酵素認識部位は、太字の小文字で表されている。スペーサーアミノ酸配列Gly、Ala、Pro(下線の配列)は、GAA遺伝子とGILTΔ2−7M1/K37タグ(大文字の配列)とを分断している。そのスペーサーおよびタグは、GAA残基Ala70の上流に配置されている。GILTΔ2−7M1/K37カセットは、ヒトIGF−II配列のアミノ酸37におけるArgからLysへの置換(太字の大文字)を含む。
【0113】
【化8−1】

【0114】
【化8−2】

構築物1487
下記のGILTΔ2−7M1/A37−GAA70−952カセットを、そのカセットおよびベクターpCEP4のAsp718およびNotI部位を用いてクローニングすることにより、pCEP−GILTΔ2−7M1/A37−GAA70−952(プラスミドp1487)を作製した。クローニングのための制限酵素認識部位は、太字の小文字で表されている。スペーサーアミノ酸配列Gly、Ala、Pro(下線の配列)は、GAA遺伝子とGILTΔ2−7M1/A37タグ(大文字の配列)とを分断している。そのスペーサーおよびタグは、GAA残基Ala70の上流に配置されている。GILTΔ2−7M1/A37カセットは、ヒトIGF−II配列のアミノ酸37におけるArgからAlaへの置換(太字の大文字)を含む。
【0115】
【化9−1】

【0116】
【化9−2】

図3に示されるように、3つの例示的な変異体(すなわち、構築物1459、1460および1461)(ここで、アラニンまたはリシンが基準のアルギニン残基の1つの代わりに用いられている)は、フューリンによる検出可能な切断なしに発現された。また、図3(右パネル)に示されるように、R37A置換を含む構築物1461は、外来性フューリンの添加に対してさらに抵抗性である。
【0117】
構築物1726
下記のGILTΔ2−7Δ30−39−GAA70−952カセットを、そのカセットおよびベクターpCEP4のAsp718およびNotI部位を用いてクローニングすることにより、pCEP−GILTΔ2−7Δ30−39−GAA70−952(プラスミド1726)を作製した。クローニングのための制限酵素認識部位は、太字の小文字で表されている。スペーサーアミノ酸配列Gly、Ala、Pro(下線の配列)は、GAA遺伝子とGILTΔ2−7Δ30−39タグ(大文字の配列)とを分断している。そのスペーサーおよびタグは、GAA残基Ala70の上流に配置されている。GILTΔ2−7Δ30−39カセットは、ヒトIGF−II配列由来のアミノ酸残基30〜39(Arg−Pro−Ala−Ser−Arg−Val−Ser−Arg−Arg−Ser)の欠失を含む。
【0118】
【化10】

構築物1749
下記のGILTΔ2−7Δ31−39−GAA70−952カセットを、そのカセットおよびベクターpCEP4のAsp718およびNotI部位を用いてクローニングすることにより、pCEP−GILTΔ2−7Δ31−39−GAA70−952(プラスミド1749)を作製した。クローニングのための制限酵素認識部位は、太字の小文字で表されている。スペーサーアミノ酸配列Gly、Ala、Pro(下線の配列)は、GAA遺伝子とGILTΔ2−7Δ31−39タグ(大文字の配列)とを分断している。そのスペーサーおよびタグは、GAA残基Ala70の上流に配置されている。GILTΔ2−7Δ31−39カセットは、ヒトIGF−II配列由来のアミノ酸残基31〜39(Pro−Ala−Ser−Arg−Val−Ser−Arg−Arg−Ser)の欠失を含む。
【0119】
【化11】

構築物1746
下記のGILTΔ2−7Δ32−39−GAA70−952カセットを、そのカセットおよびベクターpCEP4のAsp718およびNotI部位を用いてクローニングすることにより、pCEP−GILTΔ2−7Δ32−39−GAA70−952(プラスミド1746)を作製した。クローニングのための制限酵素認識部位は、太字の小文字で表されている。スペーサーアミノ酸配列Gly、Ala、Pro(下線の配列)は、GAA遺伝子とGILTΔ2−7Δ32−39タグ(大文字の配列)とを分断している。そのスペーサーおよびタグは、GAA残基Ala70の上流に配置されている。GILTΔ2−7Δ32−39カセットは、ヒトIGF−II配列由来のアミノ酸残基32〜39(Ala−Ser−Arg−Val−Ser−Arg−Arg−Ser)の欠失を含む。
【0120】
【化12−1】

【0121】
【化12−2】

構築物1747
下記のGILTΔ2−7Δ33−39−GAA70−952カセットを、そのカセットおよびベクターpCEP4のAsp718およびNotI部位を用いてクローニングすることにより、pCEP−GILTΔ2−7Δ33−39−GAA70−952(プラスミド1747)を作製した。クローニングのための制限酵素認識部位は、太字の小文字で表されている。スペーサーアミノ酸配列Gly、Ala、Pro(下線の配列)は、GAA遺伝子とGILTΔ2−7Δ33−39タグ(大文字の配列)とを分断している。そのスペーサーおよびタグは、GAA残基Ala70の上流に配置されている。GILTΔ2−7Δ33−39カセットは、ヒトIGF−II配列由来のアミノ酸残基33〜39(Ser−Arg−Val−Ser−Arg−Arg−Ser)の欠失を含む。
【0122】
【化13−1】

【0123】
【化13−2】

構築物1758
下記のGILTΔ2−7Δ34−39−GAA70−952カセットを、そのカセットおよびベクターpCEP4のAsp718およびNotI部位を用いてクローニングすることにより、pCEP−GILTΔ2−7Δ34−39−GAA70−952(プラスミド1758)を作製した。クローニングのための制限酵素認識部位は、太字の小文字で表されている。スペーサーアミノ酸配列Gly、Ala、Pro(下線の配列)は、GAA遺伝子とGILTΔ2−7Δ34−39タグ(大文字の配列)とを分断している。そのスペーサーおよびタグは、GAA残基Ala70の上流に配置されている。GILTΔ2−7Δ34−39カセットは、ヒトIGF−II配列由来のアミノ酸残基34〜39(Arg−Val−Ser−Arg−Arg−Ser)の欠失を含む。
【0124】
【化14−1】

【0125】
【化14−2】

構築物1750
下記のGILTΔ2−7Δ35−39−GAA70−952カセットを、そのカセットおよびベクターpCEP4のAsp718およびNotI部位を用いてクローニングすることにより、pCEP−GILTΔ2−7Δ35−39−GAA70−952(プラスミド1750)を作製した。クローニングのための制限酵素認識部位は、太字の小文字で表されている。スペーサーアミノ酸配列Gly、Ala、Pro(下線の配列)は、GAA遺伝子とGILTΔ2−7Δ35−39タグ(大文字の配列)とを分断している。そのスペーサーおよびタグは、GAA残基Ala70の上流に配置されている。GILTΔ2−7Δ35−39カセットは、ヒトIGF−II配列由来のアミノ酸残基35〜39(Val−Ser−Arg−Arg−Ser)の欠失を含む。
【0126】
【化15−1】

【0127】
【化15−2】

構築物1748
下記のGILTΔ2−7Δ36−39−GAA70−952カセットを、そのカセットおよびベクターpCEP4のAsp718およびNotI部位を用いてクローニングすることにより、pCEP−GILTΔ2−7Δ36−39−GAA70−952(プラスミド1748)を作製した。クローニングのための制限酵素認識部位は、太字の小文字で表されている。スペーサーアミノ酸配列Gly、Ala、Pro(下線の配列)は、GAA遺伝子とGILTΔ2−7Δ36−39タグ(大文字の配列)とを分断している。そのスペーサーおよびタグは、GAA残基Ala70の上流に配置されている。GILTΔ2−7Δ36−39カセットは、ヒトIGF−II配列由来のアミノ酸残基36〜39(Ser−Arg−Arg−Ser)の欠失を含む。
【0128】
【化16−1】

【0129】
【化16−2】

構築物1751
下記のGILTΔ2−7Δ29−40−GAA70−952カセットを、そのカセットおよびベクターpCEP4のAsp718およびNotI部位を用いてクローニングすることにより、pCEP−GILTΔ2−7Δ29−40−GAA70−952(プラスミド1751)を作製した。クローニングのための制限酵素認識部位は、太字の小文字で表されている。スペーサーアミノ酸配列Gly、Ala、Pro(下線の配列)は、GAA遺伝子とGILTΔ2−7Δ29−40タグ(大文字の配列)とを分断している。そのスペーサーおよびタグは、GAA残基Ala70の上流に配置されている。GILTΔ2−7Δ29−40カセットは、ヒトIGF−II配列由来のアミノ酸残基29〜40(Ser−Arg−Pro−Ala−Ser−Arg−Val−Ser−Arg−Arg−Ser−Arg)の欠失を含む。
【0130】
【化17−1】

【0131】
【化17−2】

構築物1752
下記のGILTΔ2−7Δ30−40−GAA70−952カセットを、そのカセットおよびベクターpCEP4のAsp718およびNotI部位を用いてクローニングすることにより、pCEP−GILTΔ2−7Δ30−40−GAA70−952(プラスミド1752)を作製した。クローニングのための制限酵素認識部位は、太字の小文字で表されている。スペーサーアミノ酸配列Gly、Ala、Pro(下線の配列)は、GAA遺伝子とGILTΔ2−7Δ30−40タグ(大文字の配列)とを分断している。そのスペーサーおよびタグは、GAA残基Ala70の上流に配置されている。GILTΔ2−7Δ30−40カセットは、ヒトIGF−II配列由来のアミノ酸残基30〜40(Arg−Pro−Ala−Ser−Arg−Val−Ser−Arg−Arg−Ser−Arg)の欠失を含む。
【0132】
【化18−1】

【0133】
【化18−2】

構築物1753
下記のGILTΔ2−7Δ31−40−GAA70−952カセットを、そのカセットおよびベクターpCEP4のAsp718およびNotI部位を用いてクローニングすることにより、pCEP−GILTΔ2−7Δ31−40−GAA70−952(プラスミド1753)を作製した。クローニングのための制限酵素認識部位は、太字の小文字で表されている。スペーサーアミノ酸配列Gly、Ala、Pro(下線の配列)は、GAA遺伝子とGILTΔ2−7Δ31−40タグ(大文字の配列)とを分断している。そのスペーサーおよびタグは、GAA残基Ala70の上流に配置されている。GILTΔ2−7Δ31−40カセットは、ヒトIGF−II配列由来のアミノ酸残基31〜40(Pro−Ala−Ser−Arg−Val−Ser−Arg−Arg−Ser−Arg)の欠失を含む。
【0134】
【化19】

構築物1754
下記のGILTΔ2−7Δ32−40−GAA70−952カセットを、そのカセットおよびベクターpCEP4のAsp718およびNotI部位を用いてクローニングすることにより、pCEP−GILTΔ2−7Δ32−40−GAA70−952(プラスミド1754)を作製した。クローニングのための制限酵素認識部位は、太字の小文字で表されている。スペーサーアミノ酸配列Gly、Ala、Pro(下線の配列)は、GAA遺伝子とGILTΔ2−7Δ32−40タグ(大文字の配列)とを分断している。そのスペーサーおよびタグは、GAA残基Ala70の上流に配置されている。GILTΔ2−7Δ32−40カセットは、ヒトIGF−II配列由来のアミノ酸残基32〜40(Ala−Ser−Arg−Val−Ser−Arg−Arg−Ser−Arg)の欠失を含む。
【0135】
【化20】

構築物1755
下記のGILTΔ2−7Δ33−40−GAA70−952カセットを、そのカセットおよびベクターpCEP4のAsp718およびNotI部位を用いてクローニングすることにより、pCEP−GILTΔ2−7Δ33−40−GAA70−952(プラスミド1755)を作製した。クローニングのための制限酵素認識部位は、太字の小文字で表されている。スペーサーアミノ酸配列Gly、Ala、Pro(下線の配列)は、GAA遺伝子とGILTΔ2−7Δ33−40タグ(大文字の配列)とを分断している。そのスペーサーおよびタグは、GAA残基Ala70の上流に配置されている。GILTΔ2−7Δ33−40カセットは、ヒトIGF−II配列由来のアミノ酸残基33〜40(Ser−Arg−Val−Ser−Arg−Arg−Ser−Arg)の欠失を含む。
【0136】
【化21−1】

【0137】
【化21−2】

構築物1756
下記のGILTΔ2−7Δ34−40−GAA70−952カセットを、そのカセットおよびベクターpCEP4のAsp718およびNotI部位を用いてクローニングすることにより、pCEP−GILTΔ2−7Δ34−40−GAA70−952(プラスミド1756)を作製した。クローニングのための制限酵素認識部位は、太字の小文字で表されている。スペーサーアミノ酸配列Gly、Ala、Pro(下線の配列)は、GAA遺伝子とGILTΔ2−7Δ34−40タグ(大文字の配列)とを分断している。そのスペーサーおよびタグは、GAA残基Ala70の上流に配置されている。GILTΔ2−7Δ34−40カセットは、ヒトIGF−II配列由来のアミノ酸残基34〜40(Arg−Val−Ser−Arg−Arg−Ser−Arg)の欠失を含む。
【0138】
【化22−1】

【0139】
【化22−2】

構築物1763
下記のGILTΔ2−7M1/L27A37−GAA70−952カセットを、そのカセットおよびベクターpCEP4のAsp718およびNotI部位を用いてクローニングすることにより、pCEP−GILTΔ2−7M1/L27A37−GAA70−952(プラスミド1763)を作製した。クローニングのための制限酵素認識部位は、太字の小文字で表されている。スペーサーアミノ酸配列Gly、Ala、Pro(下線の配列)は、GAA遺伝子とGILTΔ2−7M1/L27A37タグ(大文字の配列)とを分断している。そのスペーサーおよびタグは、GAA残基Ala70の上流に配置されている。GILTΔ2−7M1/L27A37カセットは、ヒトIGFII配列においてY27LおよびR37A置換を含む。このGILTカセットのDNA配列は、6つ目のコドンごとにヒトDNA配列と異なる。
【0140】
【化23−1】

【0141】
【化23−2】

実施例3:GILTタグ化されたGAA酵素の発現および精製
組織培養
GILTタグ化GAAプラスミドを各々、製造者(Invitrogen)によって説明されているように懸濁FreeStyle293−F細胞にトランスフェクトした。簡潔には、37℃および8%COにおけるオービタルシェーカー上のポリカーボネート振盪フラスコにおけるOpti−MEM I培地(Invitrogen)中で細胞を生育した。細胞を1×10細胞/mlの濃度に調整し、次いで、1:1:1の比のml細胞:μgDNA:μl293フェクチン(fectin)でトランスフェクトした。培養物のアリコートをトランスフェクションの5〜7日後に回収し、5,000×gで5分間遠心した。上清を−80℃において凍結保存した。
【0142】
タンパク質の精製および濃縮
出発物質は、−80℃における保存から解凍された、上に記載されたような哺乳動物細胞の培養上清であった。クエン酸を加えることによりpH6.0に達し、次いで、硫酸アンモニウムを加えることにより最終濃度1Mに達した。その材料を0.2μm Supor−Machフィルター(Nalgene)に通した。
【0143】
濾過された材料を、HIC Load Buffer(50mMクエン酸塩pH6.0,1M AmSO)を用いて調製されたPhenyl−SepharoseTM6 Low−Sub Fast−Flow(GE Healthcare)カラム上に充填した。そのカラムを10カラム体積のHIC Wash Buffer(50mMクエン酸塩pH6.0、0.8M AmSO)で洗浄し、5カラム体積のHIC Elution Buffer(50mMクエン酸塩pH6.0)で溶出した。溶出ピークからのサンプルをプールし、centriconスピンコンセントレータ(Amicon)およびBio−Spin−6脱塩カラム(Bio−Rad)を用いて、緩衝液をリン酸緩衝食塩水(145.15mM NaCl、2.33mM KCl、10mM NaHPO、2mM KHPO,pH6.2)に交換した。
【0144】
酵素活性
パラ−ニトロフェノール(PNP)酵素アッセイによってGAAの発現を測定した。GAA酵素を、100mM酢酸ナトリウムpH4.2および10mMパラ−ニトロフェノール(PNP)α−グルコシド基質(Sigma N1377)を含む50μlの反応混合物中でインキュベートした。反応物を37℃で20分間インキュベートし、300μlの100mM炭酸ナトリウムを用いて停止した。405nmにおける吸光度を96ウェルマイクロタイタープレートにおいて測定し、p−ニトロフェノール(Sigma N7660)から得られた検量線と比較した。1GAA PNP単位は、1ナノモルの加水分解型PNP/時と定義される。
【0145】
実施例4:競合的レセプター結合アッセイ
IGF2レセプター(IGF2R)、IGF1レセプター(IGF1R)およびインスリンレセプター(IR)に対するGILTタグ化タンパク質の親和性を、96ウェルプレートの形式で行われる競合的結合実験において調べた。0.5μg/ウェル(IGF2R)または1μg/ウェル(IGF1R、IR)の濃度において、Coating Buffer(0.05M炭酸塩緩衝液,pH9.6)中のReacti結合白色プレート(Pierce,Cat#437111)上にレセプターを室温で一晩コーティングした。プレートを洗浄緩衝液(リン酸緩衝食塩水+0.05%Tween−20)で洗浄し、次いで、Super Blocking Buffer(Pierce,Cat#37516)中で1時間ブロッキングした。別のプレートを洗浄した後、ビオチン化リガンド(Cell Sciences)をウェルに加え;IGF2Rウェルには8nM IGF2−ビオチンを加え、IGF1Rウェルには30nM IGF1−ビオチンを加え、IRウェルには、20nMインスリン−ビオチンを加えた。ウェルには、ビオチン化リガンドとともに、GILTタグ化GAAタンパク質サンプルの段階希釈物、またはビオチン化リガンドに対する結合インヒビターとして作用するビオチン化されていないコントロールリガンドも含まれていた。穏やかに振盪させながら2時間インキュベートした後、プレートを洗浄し、ストレプトアビジン−HRPとインキュベート(R&D,Cat#890803,ブロッキング緩衝液中1:200希釈,30分間)した後、Super Elisa Pico Chemiluminescent Substrateとインキュベートする(Pierce,Cat#37070,5分間)ことによって、結合したビオチン化リガンドを検出した。化学発光シグナルを425nmにおいて測定した。
【0146】
結合したビオチン化リガンドのパーセントを、IGF2R結合競合アッセイにおいて各競合物濃度について算出し、IC50値を決定した(図4)。IGF2残基30〜40の欠失を有するタンパク質1752は、GILTタグ化されたZC−701と同様のIC50値を示したことから(図4)、IGF2ループ領域におけるこれらの残基の欠失が、IGF2R結合に影響しないと見られることが示唆される。IGF2残基29〜40の欠失を有するタンパク質1751は、より高いIC50値を示したことから(図4)、それが、同様にIGF2Rに対する結合について競合しないことが示唆される。
【0147】
別個のIGF2Rアッセイプレート上において、ZC−701とタンパク質1763とを比較することにより、35%異なるIC50値が得られた(図5を参照のこと)。
【0148】
プレートに結合されたインスリンへのビオチン化インスリンの結合の競合を測定するアッセイにおいて、1751および1752タンパク質は、701またはIGF−IIと比べて、インヒビビターほど有効ではなかった(図6を参照のこと)。これは、GILTタグのアミノ酸30〜40に対応するループ領域において欠失を有する1751および1752タンパク質が、701におけるインタクトなGILTタグまたはIGF−IIと比較して、インスリンレセプターに対して低い親和性を有したことを示唆する。
【0149】
プレートに結合されたIGF1Rへのビオチン化IGF−Iの結合の競合を測定するアッセイにおいて、1763タンパク質は、701、IGF−IIまたはIGF−Iと比較して、インヒビターほど有効ではなかった(図7を参照のこと)。これは、GILTタグにおいてΔ2−7、Y27LおよびR37A変異を有する1763タンパク質が、ZC−701またはIGF−IIと比較して、IGF1レセプターに対して低い親和性を有したことを示唆する。
【0150】
実施例4.追加のインスリンレセプター結合アッセイ
インスリンレセプターに対する結合親和性についてタンパク質ZC−1487を試験した。タンパク質ZC−1487は、ヒトIGF2配列のアミノ酸37におけるArgからAlaへの置換を有するGILTD2−7M1/A37カセットを含み、フューリンによるタンパク質分解に対して抵抗性である。CHO細胞から精製されたこのタンパク質の2つの異なるバッチZC−1487−B26およびZC−1487−B28を、プレートに結合したインスリンに対するビオチン化インスリンの結合の競合を測定するアッセイにおいて解析した。
【0151】
インスリン、IGF−II、ZC710B20およびZC1487B26またはZC−1487−B28を、インスリンレセプター(インスリン−R)へのビオチン化インスリンの結合と競合させることによって、インスリンレセプター結合アッセイを行った。
【0152】
詳細には、白色Reacti−BindTMプレートを、1μg/ウェル/100μl(38.4nM)という濃度のインスリン−Rでコーティングした。コーティングされたプレートを、室温において一晩インキュベートし、次いで、洗浄緩衝液で3回洗浄した(300μl/ウェル)。次いで、そのプレートをブロッキング緩衝液で(300μl/ウェル)1時間ブロッキングした。洗浄工程を繰り返し、プレート内のすべての微量の溶液を取り出した。
【0153】
ビオチン化されたインスリンを、段階希釈による様々な濃度のインスリン、IGF−II、ZC701B20、B26およびB28と20nMにおいて混合した(最終濃度を表2に示す)。20nMインスリン−ビオチン中の100μlの希釈されたインスリン、IGF−II、ZC710B20、ZC1487B26およびZC1487B28を、コーティングされたプレートに加え、そのプレートを室温において2時間インキュベートした。次いで、そのプレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した。100μlのストレプトアビジン(strepavidin)−HRP使用溶液(working solution)(10mlのブロッキング緩衝液中、50μlのストレプトアビジン−HRP)をそのプレートに加え、そのプレートを室温において30分間インキュベートした。Elisa−Pico化学発光基質を含む100μlのElisa−Pico使用溶液を加え、425nmにおいて化学発光を測定した。例示的な結果を表2、図8および図9に示す。ZC−1487との両方のバッチが、ZC−701またはインスリンコントロールと比較して、インヒビターほど有効ではなかった。表2および図8に見られるように、フューリン抵抗性ペプチドZC−1487B26は、ZC−701よりも10倍超、および野生型IGF−IIよりも20倍超、弱く(less avidly)インスリンレセプターに結合する。
【0154】
このことは、1487タンパク質が、ZC−701におけるGILTタグと比較して、インスリンレセプターに対して低い親和性を有したことを示唆している。
【0155】
【表2】

実施例5.取り込みアッセイ
いくつかの変異体を取り込み活性の保持について試験した。HEK293細胞を構築物1479(R37K)、1487(R37A)またはZC−701でトランスフェクトした。培養上清を回収した後、HICクロマトグラフィによって部分的に精製した。すべてのサンプルをPNGaseで処理した後、電気泳動を行った。
【0156】
図10は、SDS−PAGEおよび免疫ブロット法によって解析された、フューリン抵抗性IGF−IIムテインタグを含む標的化された融合タンパク質の部分的に精製された調製物を示している。示されるように、R37A変異を含む構築物1487によってコードされる融合タンパク質は、外来性フューリンに対して抵抗性である。
【0157】
図11は、ラットL6筋芽細胞への、フューリン抵抗性GILTタグ化GAAの例示的な取り込みの結果を示している。図11に示されるように、タンパク質1479、1487、ZC−701および精製ZC−701に対する例示的なK取り込みは、それぞれ4.5nM、4.4nM、5.0nMおよび2.6nMであり、このことから、構築物1487(R37A)および1479(R37K)によってコードされるタンパク質は、ラットL6筋芽細胞への効率的な取り込みに対する能力を保持していることが示唆される。フューリン抵抗性GILTタグを含む融合タンパク質の効率的な取り込みは、フューリン抵抗性タグが、CI−MPRに対する高親和性を保持することも示唆する。
【0158】
等価物
当業者は、本明細書中に記載された本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するだろうし、単なる通例の実験を用いて確かめることができるだろう。本発明の範囲は、上記の説明に限定されると意図されず、むしろ、添付の請求項に示されるとおりである。冠詞「a」、「an」および「the」は、明細書および請求項において本明細書中で使用されるとき、明らかに逆のことが示されない限り、複数の指示対象を含むと理解されるべきである。ある群の1つ以上のメンバーの間に「または」を含む請求項または説明は、逆のことが示されていないか、または文脈から別段明らかでない限り、1つ、1つより多い、またはすべての、その群のメンバーが、所与の生成物もしくはプロセスに存在するか、それにおいて使用されるか、またはそれと別途関連性があることを満たすと考えられる。本発明は、その群の厳密に1つのメンバーが、所与の生成物もしくはプロセスに存在するか、それにおいて使用されるか、またはそれと別途関連性がある実施形態を含む。本発明はまた、1つより多いまたはすべてのその群のメンバーが、所与の生成物もしくはプロセスに存在するか、それにおいて使用されるか、またはそれと別途関連性がある実施形態も含む。さらに、別段示されないか、または矛盾もしくは不一致が生じ得ることが当業者に明らかでない限り、本発明は、1つ以上の請求項からの1つ以上の限定、エレメント、節、説明的な用語などが、同じ基本請求項に従属する(または関連性のある他の任意の請求項として)別の請求項に導入されている、バリエーション、組み合わせおよび順列を包含すると理解されるべきである。エレメントが、例えば、マーカッシュグループまたは類似の形式で、リストとして提示されている場合、それらのエレメントの各サブグループもまた開示されること、および任意のエレメントがそのグループから除去され得ることが、理解されるべきである。一般に、本発明または本発明の局面が、特定のエレメント、特徴などを含むと言及されている場合、本発明のある特定の実施形態または本発明の局面は、そのようなエレメント、特徴などからなるか、またはそれらから本質的になることが理解されるべきである。単純化の目的で、それらの実施形態は、すべての場合において本明細書中で詳細に示されるとは限らない。また、本発明の任意の実施形態、例えば、従来技術内に見られる任意の実施形態は、特定の排除が本明細書において述べられているか否かに関係なく、請求項から明確に排除され得ることが理解されるべきである。
【0159】
明らかに逆のことが示されていない限り、1つより多い行為を含む本明細書中において特許請求されている任意の方法において、その方法の行為の順序は、その方法の行為が述べられている順序に必ずしも限定されないが、本発明は、その順序がそのように限定された実施形態を含むことも理解されるべきである。さらに、請求項が組成物を述べている場合、本発明は、その組成物を使用する方法およびその組成物を作製する方法を包含する。請求項が、組成物を述べている場合、本発明は、その組成物を使用する方法およびその組成物を作製する方法を包含すると理解されるべきである。
【0160】
参考文献の援用
本願において引用されたすべての刊行物および特許文書は、その個別の刊行物または特許文書の各々の内容が本明細書中で援用されたかのように、同程度にその全体が参考として援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソソーム酵素;および
成熟ヒトIGF−II(配列番号1)と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有するIGF−IIムテインであって、ここで、該IGF−IIムテインは、フューリンの切断に対して抵抗性であり、かつ、マンノース−6−リン酸非依存的様式でヒトカチオン非依存性マンノース−6−リン酸レセプターに結合する、IGF−IIムテイン
を含む、標的化された治療用融合タンパク質。
【請求項2】
リソソーム酵素;および
成熟ヒトIGF−II(配列番号1)と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有し、かつ、インスリンレセプターに対する天然に存在するヒトIGF−IIの親和性と比べて該インスリンレセプターに対して低い結合親和性を有する、IGF−IIムテイン;
を含む、標的化された治療用融合タンパク質であって、
ここで、該IGF−IIムテインは、マンノース−6−リン酸非依存的様式でヒトカチオン非依存性マンノース−6−リン酸レセプターに結合する、標的化された治療用融合タンパク質。
【請求項3】
リソソーム酵素;および
成熟ヒトIGF−II(配列番号1)と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有し、かつ、インスリンレセプターに対する天然に存在するヒトIGF−IIの親和性と比べて該インスリンレセプターに対して低い結合親和性を有する、IGF−IIムテイン;
を含む、標的化された治療用融合タンパク質であって、
ここで、該IGF−IIムテインは、フューリンの切断に対して抵抗性であり、かつ、マンノース−6−リン酸非依存的様式でヒトカチオン非依存性マンノース−6−リン酸レセプターに結合する、標的化された治療用融合タンパク質。
【請求項4】
前記IGF−IIムテインが、配列番号1のアミノ酸30〜40に対応する領域内に変異を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の標的化された治療用融合タンパク質。
【請求項5】
変異が少なくとも1つのフューリンプロテアーゼ切断部位を無効にするように、前記IGF−IIムテインが、配列番号1のアミノ酸34〜40に対応する領域内に該変異を含む、前述の請求項のいずれか1項に記載の標的化された治療用融合タンパク質。
【請求項6】
前記変異が、アミノ酸の置換、欠失および/または挿入である、請求項4または5に記載の標的化された治療用融合タンパク質。
【請求項7】
前記変異が、配列番号1のArg37またはArg40に対応する位置におけるアミノ酸の置換である、請求項6に記載の標的化された治療用融合タンパク質。
【請求項8】
前記アミノ酸の置換が、LysまたはAlaへの置換である、請求項7に記載の標的化された治療用融合タンパク質。
【請求項9】
前記変異が、配列番号1の31〜40、32〜40、33〜40、34〜40、30〜39、31〜39、32〜39、34〜37、32〜39、33〜39、34〜39、35〜39、36〜39、37〜40、34〜40およびそれらの組み合わせからなる群から選択される位置に対応するアミノ酸残基の欠失または置き換えである、請求項6に記載の標的化された治療用融合タンパク質。
【請求項10】
前記IGF−IIムテインが、配列番号1の2〜7位に対応するアミノ酸の欠失または置き換えをさらに含む、前述の請求項のいずれか1項に記載の標的化された治療用融合タンパク質。
【請求項11】
前記IGF−IIムテインが、配列番号1の1〜7位に対応するアミノ酸の欠失または置き換えをさらに含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の標的化された治療用融合タンパク質。
【請求項12】
前記IGF−IIムテインが、配列番号1の62〜67位に対応するアミノ酸の欠失または置き換えをさらに含む、前述の請求項のいずれか1項に記載の標的化された治療用融合タンパク質。
【請求項13】
前記IGF−IIムテインが、配列番号1のTyr27、Leu43またはSer26に対応する位置におけるアミノ酸の置換をさらに含む、前述の請求項のいずれか1項に記載の標的化された治療用融合タンパク質。
【請求項14】
前記IGF−IIムテインが、Tyr27Leu、Leu43Val、Ser26Pheおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸の置換を含む、請求項13に記載の標的化された治療用融合タンパク質。
【請求項15】
前記IGF−IIムテインが、配列番号1の48〜55位に対応するアミノ酸を含む、前述の請求項のいずれか1項に記載の標的化された治療用融合タンパク質。
【請求項16】
前記IGF−IIムテインが、配列番号1の8、48、49、50、54および55位に対応するアミノ酸からなる群から選択される少なくとも3つのアミノ酸を含む、前述の請求項のいずれか1項に記載の標的化された治療用融合タンパク質。
【請求項17】
前記IGF−IIムテインが、配列番号1の54および55位に対応する位置において、各々がpH7.4において無電荷であるかまたは負に帯電しているアミノ酸を含む、前述の請求項のいずれか1項に記載の標的化された治療用融合タンパク質。
【請求項18】
前記IGF−IIムテインが、IGF−Iレセプターに対する天然に存在するヒトIGF−IIの親和性と比べて該IGF−Iレセプターに対して低い結合親和性を有する、前述の請求項のいずれか1項に記載の標的化された治療用融合タンパク質。
【請求項19】
前記リソソーム酵素が、ヒト酸性アルファ−グルコシダーゼ(GAA)またはその機能的バリアントである、前述の請求項のいずれか1項に記載の標的化された治療用融合タンパク質。
【請求項20】
前記リソソーム酵素が、ヒトGAAのアミノ酸70〜952を含む、請求項18に記載の標的化された治療用融合タンパク質。
【請求項21】
前記標的化された治療用融合タンパク質が、前記リソソーム酵素と前記IGF−IIムテインとの間にスペーサーをさらに含む、前述の請求項のいずれか1項に記載の標的化された治療用融合タンパク質。
【請求項22】
前記スペーサーが、アミノ酸配列Gly−Ala−Proを含む、請求項21に記載の標的化された治療用融合タンパク質。
【請求項23】
前述の請求項のいずれか1項に記載の標的化された治療用融合タンパク質をコードする核酸。
【請求項24】
請求項23に記載の核酸を含む細胞。
【請求項25】
前述の請求項のいずれか1項に記載の標的化された治療用融合タンパク質を含む、リソソーム蓄積症の処置に適した薬学的組成物。
【請求項26】
リソソーム蓄積症を処置する方法であって、処置の必要のある被験体に、前述の請求項のいずれか1項に記載の標的化された治療用融合タンパク質を投与することを包含する、方法。
【請求項27】
前記リソソーム蓄積症が、ポンペ病である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記リソソーム蓄積症が、ファブリー病である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記リソソーム蓄積症が、ゴーシェ病である、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
標的化された治療用融合タンパク質を生成する方法であって:
細胞培養培地中で哺乳動物細胞を培養する工程
を包含する方法であって、ここで、
該哺乳動物細胞は、請求項23に記載の核酸を保有し;そして
該培養する工程は、該標的化された治療用融合タンパク質の発現を可能にする条件下で行われる、方法。
【請求項31】
標的化された治療用融合タンパク質を生成する方法であって:
細胞培養培地中でフューリン欠損細胞を培養する工程
を包含し、ここで、
該フューリン欠損細胞は、リソソーム酵素、および成熟ヒトIGF−II(配列番号1)と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有するIGF−IIムテインを含む融合タンパク質をコードする核酸を保有し、ここで、該IGF−IIムテインは、マンノース−6−リン酸非依存的様式でヒトカチオン非依存性マンノース−6−リン酸レセプターに結合し;そして
ここで、該培養する工程は、該標的化された治療用融合タンパク質の発現を可能にする条件下で行われる、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2011−521627(P2011−521627A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508686(P2011−508686)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/043207
【国際公開番号】WO2009/137721
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(506136483)バイオマリン ファーマシューティカル インコーポレイテッド (18)
【Fターム(参考)】