説明

リターンフィルタ装置

【課題】簡易な構造でリリーフ機構を実現できると共に、フィルタを安定して取り付けておくことができる構成のフィルタ装置を提供する。
【解決手段】液体内の異物を除去するリターンフィルタ装置30において、円筒状に形成された本体58の内部にフィルタ62が内蔵され、本体58の軸線方向の一方側の端面は液体を内部へ導入させる導入口64が形成され、本体58の軸線方向の他方側の端面は閉塞され、本体の外周面にはフィルタ62を通して内部の液体を外部に排出させる複数の排出穴66が形成されたフィルタエレメント52と、フィルタエレメント52の導入口64を戻り管49に連通させて保持する保持機能と共に、フィルタエレメント52内が高圧になった場合に、フィルタエレメント52内の液体を排出穴66以外の部位から排出させるリリーフ機能を備えた保持リリーフ手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体が循環する循環システムに設けられたタンク内に配置され、タンクに液体を流入させる戻り管に接続されてタンク内に流入する液体内の異物を除去するリターンフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧回路やチラー水の循環回路では、循環する液体内の摩耗粉や異物を除去するためのフィルタ装置を設けることが良く知られている。
特に、ポンプによって循環回路中に設けたタンク内に配置されるリターンフィルタ装置は、ポンプの吸引側に設けたサクションストレーナ等と比較してキャビテーションの発生などを防止できると言う効果があり、従来より良く用いられている。
【0003】
このようなリターンフィルタ装置においては、フィルタが内蔵されている装置内部がフィルタの詰まりなどの原因で高圧となったときに、高圧となった液体を逃がすためのリリーフ機構が設けられている。
【0004】
リリーフ機構が設けられた従来のリターンフィルタ装置の一例を図11(a)、(b)に示す(例えば、特許文献1参照)。
このリターンフィルタ装置10では、本体11の中心を貫通するように芯棒12が配置されており、芯棒12には、本体11に対して開閉可能な弁体13が設けられている。芯棒12は弁体13を貫通し、芯棒12の先端部に設けた受座15と弁体13との間にばね14を配置させている。ばね14は、弁体13が本体11に当接するように弁体13を付勢している。
なお、本体11内部には常時圧縮している形状記憶合金製のばね16が配置されている。このばね16は低温状態から所定の温度まで上昇すると伸びた状態に復元され、弁体13を本体13から離間させる。
【0005】
上記のようなリターンフィルタ装置では、装置の中心にリリーフ機構のためのばね14,16が配置されており、フィルタを交換する際にリリーフ機構を外す必要があるので、フィルタ交換に手間がかかっていた。また、このとき本体11内部からばね16を抜き出す必要があることから、ばねの長さ分だけのスペースが必要であり、狭い場所においてのフィルタ交換が困難であった。
【0006】
そこで、上記の課題を解決すべく、図12に示すように、ばねを装置の中心に配置しないようにしたリターンフィルタ装置が従来より知られている(例えば、特許文献2参照)。
ここで示すリターンフィルタ装置17は、油圧回路用のものであり、建設機械等に用いられる。リターンフィルタ装置17は、内部にフィルタ18が収納されたフィルタケース20を有しており、フィルタケース20の上部には油を流入させる開口部21が形成され、フィルタ18を通った油は、側面からフィルタケース20内で下面に形成された流出孔から排出される。
【0007】
フィルタケース20の上部の側面には、フィルタケース20の内側と連通するリリーフポート22が設けられている。リリーフポート22には、常時開口部21の外側領域とリリーフポート22との間を閉塞しているバルブ24が設けられている。バルブ24はコイルスプリング25によって付勢されており、開口部21の外側領域における油圧が所定以上の圧力になった場合に、コイルスプリング25が圧縮される。
【0008】
コイルスプリング25が圧縮されることによって、リリーフポート22が開き、開口部21の外側領域とフィルタケース20の内側が連通する。このため、高圧となった油はフィルタ20を通らずに流出孔27から排出させることができ、フィルタ18の破損等を防止できる。
【0009】
【特許文献1】特開昭63−83471号公報
【特許文献2】特開2001−120921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した特許文献2に示すような構成のリターンフィルタ装置においては、リリーフ機能を発揮させる部分と、戻り管とフィルタケースとの接続部分とが別々に構成されており、構造が複雑であると共に、部品点数の増加に基づいてコストが上昇してしまうという課題がある。
【0011】
また、上述した特許文献2に示すようなリターンフィルタ装置は、フィルタの上面に配置されたフィルタプレートが油圧力によって下方に押圧され、フィルタをフィルタケースの下面に当接保持させる構成となっている。
しかし、このような構成ではフィルタがフィルタケース内で安定して取り付けられていないという課題があった。
【0012】
そこで、本発明は上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、簡易な構造でリリーフ機構を実現できると共に、フィルタを安定して取り付けておくことができる構成のフィルタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記目的を達成するため次の構成を備える。すなわち、本発明にかかるリターンフィルタ装置によれば、液体が循環する循環システムに設けられたタンク内に配置され、タンクに液体を流入させる戻り管に接続されてタンク内に流入する液体内の異物を除去するリターンフィルタ装置において、円筒状に形成された本体の内部にフィルタが内蔵され、本体の軸線方向の一方側の端面は液体を内部へ導入させる導入口が形成され、本体の軸線方向の他方側の端面は閉塞され、本体の外周面にはフィルタを通して内部の液体を外部に排出させる複数の排出穴が形成されたフィルタエレメントと、該フィルタエレメントの導入口を前記戻り管に連通させて保持する保持機能と共に、前記フィルタエレメント内が高圧になった場合に、フィルタエレメント内の液体を前記排出穴以外の部位から排出させるリリーフ機能を備えた保持リリーフ手段とを具備することを特徴としている。
この構成によれば、保持リリーフ手段がフィルタエレメントを保持すると共にリリーフもできるので、構成を簡素化し、部品点数を削減できる。なお、本発明においてはフィルタとフィルタエレメントとが一体化しており、フィルタが安定して取り付けられている。この場合、フィルタの交換はフィルタエレメントごと行うので交換も容易である。
【0014】
また、前記保持リリーフ手段は、前記フィルタエレメントの一方側の端面に当接し、前記戻り管と接続可能な接続部が形成され、該接続部を介して前記戻り管と前記導入口を連通させるとともに、外周縁部が前記フィルタエレメントの外周部よりも外方に突出している第1のプレートと、前記フィルタエレメントの他方側の端面に当接し、外周縁部が前記フィルタエレメントの外周部よりも外方に突出している第2のプレートと、前記フィルタエレメントの外周面よりも外方位置において、一端部が第1のプレートに形成された貫通穴を貫通して第1のプレートよりも一方側に突出し、他端部が第2のプレートと固定され、第1のプレートに対して摺動可能に設けられた複数本のシャフトと、各シャフトの一端部と第1のプレートの一方側の面との間に配置され、第1のプレートを第2のプレート方向に付勢する付勢手段とを有することを特徴としてもよい。
この構成によれば、複数本のシャフトと付勢手段によって第1のプレートと第2のプレートとの間でフィルタエレメントが挟み込まれて取り付けがなされるので、安定した取り付けがなされる。また、従来のフィルタ装置のリリーフ機構では、リリーフ用に専用のスプリングを設けているが、本発明の構成によれば、フィルタエレメントの取り付けとリリーフ機構における付勢手段とを共通して用いることができ、部品点数の削減に寄与する。また、フィルタエレメントの交換は、各シャフトを第1のプレートから緩めて第1のプレートと第2のプレートとの距離を広げるだけで行える。つまり、第1のプレートに戻り管を接続したままの状態でフィルタエレメントを交換できるので、交換が容易である。
【0015】
また、前記保持リリーフ手段は、前記フィルタエレメントの一方側の端面に当接し、前記戻り管と接続可能な接続部が形成され、該接続部を介して前記戻り管と前記導入口を連通させるとともに、外周縁部が前記フィルタエレメントの外周部よりも外方に突出している第1のプレートと、前記フィルタエレメントの他方側の端面に当接し、外周縁部が前記フィルタエレメントの外周部よりも外方に突出している第2のプレートと、前記フィルタエレメントの外周面よりも外方位置において、他端部が第2のプレートに形成された貫通穴を貫通して第2のプレートよりも他方側に突出し、一端部が第1のプレートと固定され、第2のプレートに対して摺動可能に設けられた複数本のシャフトと、各シャフトの他端部と第2のプレートの他方側の面との間に配置され、第2のプレートを第1のプレート方向に付勢する付勢手段とを有することを特徴としてもよい。
この構成によれば、複数本のシャフトと付勢手段によって第1のプレートと第2のプレートとの間でフィルタエレメントが挟み込まれて取り付けがなされるので、安定した取り付けがなされる。また、従来のフィルタ装置のリリーフ機構では、リリーフ用に専用のスプリングを設けているが、本発明の構成によれば、フィルタエレメントの取り付けとリリーフ機構における付勢手段とを共通して用いることができ、部品点数の削減に寄与する。また、フィルタエレメントの交換は、各シャフトを第2のプレートから緩めて第1のプレートと第2のプレートとの距離を広げるだけで行える。つまり、第1のプレートに戻り管を接続したままの状態でフィルタエレメントを交換できるので、交換が容易である。
【0016】
なお、前記シャフトは3本設けられ、各シャフトは互いに等しい間隔を開けて配置されていることを特徴としてもよい。
このため、第1及び第2のプレートによるフィルタエレメントの保持がバランス良く行え、レスポンスが良好となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のリターンフィルタ装置によれば、構成を簡素化し、部品点数を削減できることによって、コスト削減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下、本発明に係るリターンフィルタ装置の好適な実施の形態について説明する。
また、図1に示すように、ここで説明するリターンフィルタ装置30としては、冷却されたチラー水を外部機器32へ供給し、外部機器32から戻されたチラー水を再度冷却して外部機器32へ供給するような循環するサイクルを備える冷却水循環装置31に設けられるものとする。すなわち、本実施形態で循環させる液体は水であるものとする。
【0019】
まず、冷却水循環装置31の構成について説明する。冷却水循環装置31は、冷媒を冷凍サイクルによって冷却する冷凍回路34と、冷凍回路34によって一定温度にチラー水を冷却する冷却回路36とを備えている。
冷却回路36には、チラー水を貯留する水槽38と、水槽38から出たチラー水が冷凍回路34の冷媒との間で熱交換して冷却される内部熱交換器40と、内部熱交換器40によって冷却されたチラー水を外部機器32へ供給するための圧送ポンプ42とが設けられている。水槽38、内部熱交換器40、圧送ポンプ42はチラー水を流通させる流通管44に直列に接続されている。
【0020】
また、冷凍回路34には、内部熱交換器40と、内部熱交換器40でチラー水からの熱を奪った冷媒を圧縮させる圧縮機46と、圧縮機46によって温度上昇した冷媒を凝縮させて凝縮潜熱を放熱させる凝縮器48と、放熱した冷媒を減圧して温度低下させる膨張弁50とが、冷媒が流通する流通管51に直列に接続されている。
【0021】
上述した水槽38に、リターンフィルタ装置30が取り付けられる。リターンフィルタ装置30は、外部機器32から水槽38へ戻る戻り管49に接続されるとともに、リターンフィルタ装置30全体が水槽38内の水中に配置される。戻り管49は、水槽の上方から下方に向けて突出し、リターンフィルタ装置30は、その上面部で戻り管49に接続されている。
【0022】
続いて、図2〜図4に基づいて本発明にかかるリターンフィルタ装置について説明する。図2がリターンフィルタ装置の側面図、図3がリターンフィルタ装置の平面図、図4がフィルタエレメントの平面図と側面図である。
リターンフィルタ装置30は、内部にフィルタが内蔵されたフィルタエレメント52と、フィルタエレメント52の上面側に位置するトッププレート54と、フィルタエレメント52の底面側に位置するボトムプレート56とを備えている。特許請求の範囲の請求項2でいう第1のプレートがトッププレート、第2のプレートがボトムプレートに該当する。
【0023】
ここで、図4に基づいてフィルタエレメントについて説明する。
フィルタエレメント52は、円筒状に形成された本体58と、本体58の上面開口部に配置された上面板60と、本体58の下面開口部を閉塞する底面板61とを備えており、本体58内の外周側にPP不織布等から構成されるフィルタ62が内蔵される。上面板60と底面板61は本体58に固定されており、フィルタ62はフィルタエレメント52と一体化してフィルタエレメント52から取り出すことはできないので、フィルタ62の交換はフィルタエレメント52ごと行う必要がある。
フィルタエレメント52の材質としては、錆の防止のためステンレス、PP等を採用することができる。
【0024】
上面板60の中心部には、本体58内に水を導入するための導入口64が形成されている。導入口64の周囲は上方に突出する突出部60aとして形成されている。
【0025】
また、本体58の外周面には、フィルタ62を通ってフィルタエレメント52の外部へ水が排出されるための排出穴66が複数形成されている。図面では、排出穴66は、本体58の外周面の一部のみに形成されているように図示されているが、実際には本体58の外周面全体にわたって一様に形成されている。
【0026】
なお、図2及び図3に示すように、トッププレート54は、フィルタエレメント52の上面板60の上面に当接するように配置されている。
トッププレート54の中心部には、戻り管49に接続可能な形状を有するソケット部(特許請求の範囲でいう接続部)69が設けられている。
ソケット部69は、内壁にねじ溝が形成されており、戻り管49の外壁面に形成されたねじ溝と螺合することで戻り管49と接続される。
ソケット部69の内部には貫通穴67が形成されており、貫通穴67とフィルタエレメント52の導入口64とが連通する。また、これにより戻り管49は貫通穴67を介して導入口64と連通して、チラー水がフィルタエレメント52内に導入される。
【0027】
トッププレート54は、外周縁部54aがフィルタエレメント52の外周面よりも外方へ突出するように、フィルタエレメント52よりも大径に形成されている。
同様に、ボトムプレート56も外周縁部56aがフィルタエレメント52の外周面よりも外方へ突出するように、フィルタエレメント52よりも大径に形成されている。ボトムプレート56は平板状に形成されており、突起などは形成されていない。
【0028】
トッププレート54とボトムプレート56は、複数本のシャフト70によって互いに連結されている。シャフト70は、3本設けられており、それぞれフィルタエレメント52の外方において、互いに同一の間隔をあけて配置されている。
【0029】
各シャフト70の下端部は、ボトムプレート56に対して移動不能となるように、かしめ、ねじ止めまたは溶接等の方法で固定されている。
各シャフト70の上端部は、トッププレート54に形成された各貫通穴を貫通ししており、貫通したトッププレート54の上方においてナット71とワッシャ72が螺合されている。トッププレート54の貫通穴は、シャフト70が摺動可能な程度の径に形成されている。
【0030】
ワッシャ72とトッププレート54の上面との間において、ばね74が設けられる。ばね74は、その中心の中空部内にシャフト70が貫通して配置される。ばね74は、ワッシャ72とトッププレート54との間で両者が互いに離間する方向に付勢している。つまり、ばね74により、トッププレート54はフィルタエレメント52の上面板60へ押圧されている。
このようにして、フィルタエレメント52は、トッププレート54とボトムプレート56との間で保持される。
【0031】
リターンフィルタ装置30の保持リリーフ手段は、上述したようにトッププレート54と、ボトムプレート56と、シャフト70と、ばね74とを備えている。
すなわち、戻り管49に接続されたトッププレート54と、ボトムプレート56によってフィルタエレメント52が保持され、且つフィルタエレメント52内のフィルタが詰まったりして高圧になった場合には、ばね74が圧縮してトッププレート54とフィルタエレメント52との間で隙間があき、フィルタエレメント52内の高圧の液体をリリーフする。
【0032】
図5にリリーフ時の様子について示す。
フィルタ62が目詰まり等を起こして排出穴66から水が排出されなくなった場合、フィルタエレメント52内の圧力が高まり、リリーフ機能が作動する。
具体的には、フィルタエレメント52の内の液圧をpとすると、この液圧pはフィルタエレメント52内部全体にかかるが、径方向にかかる圧力は互いに打ち消しあうので、上下方向にかかる力の差によってリリーフ機能が作動する。
【0033】
つまり、フィルタエレメント52の底面にかかる力F1(液圧pに底面積S0を乗算した値)と、フィルタエレメント52の上面の開口部64以外の部分にかかる力F2との差が、フィルタエレメント52をトッププレート54に対して動作させる力となる。
すなわち、フィルタエレメント52を移動させるのは、フィルタエレメント52の上面の開口部64にかかる力に基づく。
一方で、本実施形態では開口部64の周囲はトッププレート54に接触する突出部60aが形成されており、またトッププレート54は、3本のばね74によって押圧されており、このばね74による力でトッププレート54は、フィルタエレメント52の上面板60の突出部60aに当接している。
【0034】
すなわち、3本のばね74による力Fsが突出部60aにかかる場合、突出部60aの表面積をSとすると突出部60aには、Fs/Sの圧力がかかる。この圧力に対して、フィルタエレメント52内の液圧pが大きくなると、フィルタエレメント52が下方に移動する力が働き、ばね74が圧縮してフィルタエレメント52全体が下降する。
【0035】
フィルタエレメント52全体が下降することによって、戻り管49に固定されているトッププレート54とフィルタエレメント52の上面板60との間に隙間があき、この隙間からフィルタエレメント52内の液体がリリーフされる。
【0036】
このように、フィルタエレメント52の内圧がどの程度になったらリリーフ機構が作動するかは、フィルタエレメント52の上面板60のトッププレート54側の表面積と、ばね74のばね定数によって決まる。
このため、ばね74をどの程度圧縮させて、ねじ71でばね位置を固定するかによってリリーフ機構の動作圧力が決定される。動作圧力としては、フィルタエレメント52の耐圧強度を考慮して設定するとよい。
ねじ71によるばね位置の固定方法としては、各シャフト70にはあらかじめばね74の位置までのねじ溝を形成しておく等の方法がある。
【0037】
(第2の実施形態)
次に、本発明のリターンフィルタ装置の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態の全体構成を図6に示す。
本実施形態では、水槽38内でのリターンフィルタ装置の上下方向の向きが第1の実施形態とは異なっている。すなわち本実施形態では、水槽38の底面から戻り管49が水槽38内に延出され、この戻り管49にリターンフィルタ装置80が接続されている。
なお、水槽38以外のその他の構造については、第1の実施形態と同様の構成であるとし、図示を省略する。
【0038】
本実施形態におけるリターンフィルタ装置について説明する。図7がリターンフィルタ装置の側面図、図8がリターンフィルタ装置の平面図である。
なお、本実施形態におけるフィルタエレメント52は第1の実施形態で説明したフィルタエレメント52と同一の構成であるとし、本実施形態ではフィルタエレメント52に関する説明を省略する
【0039】
リターンフィルタ装置80は、内部にフィルタが内蔵されたフィルタエレメント52と、フィルタエレメント52の上面側に位置するトッププレート82と、フィルタエレメント52の底面側に位置するボトムプレート84とを備えている。特許請求の範囲の請求項3でいう第1のプレートがトッププレート、第2のプレートがボトムプレートに該当する。
【0040】
フィルタエレメント52は、第1の実施形態で説明した状態とは上下方向が逆向きで配置される。
すなわち、導入口64が形成された上面板60は下方に、平板状の底面板61は上方に配置される。
トッププレート82は、フィルタエレメント52の底面板61の上面に当接するように配置されている。
ボトムプレート84の中心部には、戻り管49に接続可能な形状を有するソケット部(特許請求の範囲でいう接続部)86が設けられている。
ソケット部86は、内壁にねじ溝が形成されており、戻り管49の外壁面に形成されたねじ溝と螺合することで戻り管49と接続される。
ソケット部86の内部には貫通穴87が形成されており、貫通穴87とフィルタエレメント52の導入口64とが連通する。また、これにより戻り管49は貫通穴87を介して導入口64と連通して、チラー水がフィルタエレメント52内に導入される。
【0041】
さらに、トッププレート82は、外周縁部82aがフィルタエレメント52の外周面よりも外方へ突出するように、フィルタエレメント52よりも大径に形成されている。
同様に、ボトムプレート84も外周縁部84aがフィルタエレメント52の外周面よりも外方へ突出するように、フィルタエレメント52よりも大径に形成されている。
【0042】
トッププレート82とボトムプレート84は、複数本のシャフト88によって互いに連結されている。シャフト88は、3本設けられており、それぞれフィルタエレメント52の外方において、互いに同一の間隔をあけて配置されている。
【0043】
各シャフト88の下端部は、ボトムプレート84に対して移動不能となるように、かしめ、ねじ止めまたは溶接等の方法で固定されている。
各シャフト88の上端部は、トッププレート82に形成された各貫通穴を貫通ししており、貫通したトッププレート82の上方においてナット89とワッシャ90が螺合されている。トッププレート82の貫通穴は、シャフト88が摺動可能な程度の径に形成されている。
【0044】
ワッシャ90とトッププレート82の上面との間において、ばね92が設けられる。ばね92は、その中心の中空部内にシャフト88が貫通して配置される。ばね92は、ワッシャ90とトッププレート82との間で両者が互いに離間する方向に付勢している。つまり、ばね92により、トッププレート82はフィルタエレメント52の底面板61へ押圧されている。
このようにして、フィルタエレメント52は、トッププレート82とボトムプレート84との間で保持される。
【0045】
リターンフィルタ装置80の保持リリーフ手段は、上述したようにトッププレート82と、ボトムプレート84と、シャフト88と、ばね92とを備えている。
すなわち、戻り管49に接続されたボトムプレート84と、トッププレート82によってフィルタエレメント52が保持され、且つフィルタエレメント52内のフィルタが詰まったりして高圧になった場合には、ばね92が圧縮してボトムプレート84とフィルタエレメント52との間で隙間があき、フィルタエレメント52内の高圧の液体をリリーフする。
【0046】
図9にリリーフ時の様子について示す。
フィルタ62が目詰まり等を起こして排出穴66から水が排出されなくなった場合、フィルタエレメント52内の圧力が高まり、リリーフ機能が作動する。
具体的には、3本のばね74による力Fsが突出部60aにかかる場合、突出部60aの表面積をSとすると突出部60aには、Fs/Sの圧力がかかる。この圧力に対して、フィルタエレメント52内の液圧pが大きくなると、フィルタエレメント52が上方に移動する力が働き、ばね92が圧縮してフィルタエレメント52全体が上昇する。
【0047】
フィルタエレメント52全体が上昇することによって、戻り管49に固定されているボトムプレート84とフィルタエレメント52の上面板60との間に隙間があき、この隙間からフィルタエレメント52内の液体がリリーフされる。
【0048】
なお、フィルタエレメント52の内圧がどの程度になったらリリーフ機構が作動するかは、第1の実施形態と同様に設定することができる。
すなわち、リリーフ機構の動作圧力は、フィルタエレメント52の上面板60のボトムプレート84に接触している面積と、ばね92のばね定数によって決まる。すなわち、ばね92をどの程度圧縮させて、ねじ89でばね位置を固定するかによってリリーフ機構の動作圧力が決定される。動作圧力としては、フィルタエレメント52の耐圧強度を考慮して設定するとよい。
ねじ89によるばね位置の固定方法としては、各シャフト88にはあらかじめばね92の位置までのねじ溝を形成しておく等の方法がある。
【実施例】
【0049】
まず、第1の実施形態のリターンフィルタ装置30におけるリリーフ動作が実行されるフィルタエレメント52の内圧の理論値を算出する。
このリターンフィルタ装置30では、フィルタエレメント52の上面板60の突出部60aの、トッププレート54側の面積が26.4cmのものを用いる。
また、3個のばね74には、自由長25mm、ばね定数7.34N/mmのものを使用する。このばね74を7mm圧縮させて固定することにすると、3個のばね74によってトッププレート54にかかる力は、7.34(N/mm)×7(mm)×3(個)=154.14(N)となる。
この力を突出部60aの面積で割ると、154.14(N)/26.4(cm)≒57(kPa)である。つまり、フィルタエレメント52の内圧が57kPa以上になるとばね74による力との釣り合いがとれなくなり、リリーフ動作が実行されるものと予測される。
【0050】
図10に、上述の第1の実施形態を実際に試験し、フィルタエレメントの内圧を横軸にとり、リリーフされた流量を縦軸にとったグラフを、測定した結果の一例として示す。
実際には、内圧が理論値を超えた場合にリリーフ流量が一気に増加し、内圧がそれ以上増加しないことが好ましいが、この実施例によると、算出した理論値57kPaよりも若干低い内圧でもれ始め、理論値よりも若干高い内圧65kPa付近で内圧が増えずにリリーフ流量が一気に増大していることが確認できた。
このように、本発明のリターンフィルタ装置では、フィルタエレメント52の破損等を有効に防止でき、きわめて高性能のリターンフィルタ装置として用いることができることが確認できた。
【0051】
以上、本発明につき好適な実施形態を挙げて種々説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係るリターンフィルタ装置の第1の実施形態における設置状況を説明する説明図である。
【図2】リターンフィルタ装置の第1の実施形態の側面図である。
【図3】リターンフィルタ装置の第1の実施形態の平面図である。
【図4】(a)フィルタエレメントの平面図である。(b)フィルタエレメントの側面図である。
【図5】リターンフィルタ装置の第1の実施形態におけるリリーフ動作を示す側面図である。
【図6】本発明に係るリターンフィルタ装置の第2の実施形態における設置状況を説明する説明図である。
【図7】リターンフィルタ装置の第2の実施形態の側面図である。
【図8】リターンフィルタ装置の第2の実施形態の平面図である。
【図9】リターンフィルタ装置の第2の実施形態におけるリリーフ動作を示す側面図である。
【図10】フィルタエレメントの内圧とリリーフ流量との関係を示すグラフである。
【図11】センターにばねが配置された従来のリターンフィルタ装置の構成を説明する説明図である。
【図12】ばねの配置をセンターからずらした従来のリターンフィルタ装置の構成を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0053】
30 リターンフィルタ装置
31 冷却水循環装置
32 外部機器
34 冷凍回路
36 冷却回路
38 水槽
40 内部熱交換器
42 圧送ポンプ
44 流通管
46 圧縮機
48 凝縮器
49 戻り管
50 膨張弁
51 流通管
52 フィルタエレメント
54 トッププレート
56 ボトムプレート
58 本体
60 上面板
60a 突出部
61 底面板
62 フィルタ
64 導入口
66 排出穴
67 貫通穴
69 ソケット部
70 シャフト
71 ナット
72 ワッシャ
80 リターンフィルタ装置
82 トッププレート
84 ボトムプレート
86 ソケット部
87 貫通穴
88 シャフト
89 ナット
90 ワッシャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が循環する循環システムに設けられたタンク内に配置され、タンクに液体を流入させる戻り管に接続されてタンク内に流入する液体内の異物を除去するリターンフィルタ装置において、
円筒状に形成された本体の内部にフィルタが内蔵され、本体の軸線方向の一方側の端面は液体を内部へ導入させる導入口が形成され、本体の軸線方向の他方側の端面は閉塞され、本体の外周面にはフィルタを通して内部の液体を外部に排出させる複数の排出穴が形成されたフィルタエレメントと、
該フィルタエレメントの導入口を前記戻り管に連通させて保持する保持機能と共に、前記フィルタエレメント内が高圧になった場合に、フィルタエレメント内の液体を前記排出穴以外の部位から排出させるリリーフ機能を備えた保持リリーフ手段とを具備することを特徴とするリターンフィルタ装置。
【請求項2】
前記保持リリーフ手段は、
前記フィルタエレメントの一方側の端面に当接し、前記戻り管と接続可能な接続部が形成され、該接続部を介して前記戻り管と前記導入口を連通させるとともに、外周縁部が前記フィルタエレメントの外周部よりも外方に突出している第1のプレートと、
前記フィルタエレメントの他方側の端面に当接し、外周縁部が前記フィルタエレメントの外周部よりも外方に突出している第2のプレートと、
前記フィルタエレメントの外周面よりも外方位置において、一端部が第1のプレートに形成された貫通穴を貫通して第1のプレートよりも一方側に突出し、他端部が第2のプレートと固定され、第1のプレートに対して摺動可能に設けられた複数本のシャフトと、
各シャフトの一端部と第1のプレートの一方側の面との間に配置され、第1のプレートを第2のプレート方向に付勢する付勢手段とを有することを特徴とする請求項1記載のリターンフィルタ装置。
【請求項3】
前記保持リリーフ手段は、
前記フィルタエレメントの一方側の端面に当接し、前記戻り管と接続可能な接続部が形成され、該接続部を介して前記戻り管と前記導入口を連通させるとともに、外周縁部が前記フィルタエレメントの外周部よりも外方に突出している第1のプレートと、
前記フィルタエレメントの他方側の端面に当接し、外周縁部が前記フィルタエレメントの外周部よりも外方に突出している第2のプレートと、
前記フィルタエレメントの外周面よりも外方位置において、他端部が第2のプレートに形成された貫通穴を貫通して第2のプレートよりも他方側に突出し、一端部が第1のプレートと固定され、第2のプレートに対して摺動可能に設けられた複数本のシャフトと、
各シャフトの他端部と第2のプレートの他方側の面との間に配置され、第2のプレートを第1のプレート方向に付勢する付勢手段とを有することを特徴とする請求項1記載のリターンフィルタ装置。
【請求項4】
前記シャフトは3本設けられ、各シャフトは互いに等しい間隔を開けて配置されていることを特徴とする請求項2または請求項3記載のリターンフィルタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図5】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−6210(P2009−6210A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−167445(P2007−167445)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)
【Fターム(参考)】