説明

リチウムイオン二次電池、車両及び電池搭載機器

【課題】 使用に伴う電池容量の低下を抑制した負極活物質層を有する負電極板を備えるリチウムイオン二次電池、このリチウムイオン二次電池を搭載した車両及び電池搭載機器を提供する。
【解決手段】 リチウムイオン二次電池1は、帯状の負電極板20と、帯状の正電極板30と、負電極板20と正電極板30との間に介在させた帯状のセパレータ50とを捲回し、このセパレータ50に電解液60を含浸させた発電要素10を備え、負極活物質層は、幅方向DWの両端部にそれぞれ位置する帯状の端縁部21Eと、幅方向DWの中央に位置する帯状の中央部21Cと、からなり、中央部は、端縁部よりも低抵抗の層特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負極活物質層を有する負電極板を備えるリチウムイオン二次電池、このリチウムイオン二次電池を搭載した車両及び電池搭載機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド自動車やノート型パソコン、ビデオカムコーダなどのポータブル電子機器の駆動用電源に、リチウムイオン二次電池が利用されている。
このようなリチウムイオン二次電池には、いずれも帯状の、負電極板と正電極板と、これらの間に介在してなるセパレータとを捲回してなり、セパレータに電解液を含浸した発電要素を備えるリチウムイオン二次電池(以下、単に電池という)が挙げられる。
【0003】
このような電池において、特許文献1では、さらに負極(負極活物質層)の幅方向両端部側領域(端縁部)の電極密度を、負極の幅方向中央部領域(中央部)の電極密度より高く構成することにより、電池の充放電サイクル寿命を向上させた非水電解質二次電池(リチウムイオン二次電池)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−209411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、発明者らの研究によれば、電池を繰り返し充放電した場合、負極活物質層の幅方向の両端部に位置する端縁部付近の電解液と、幅方向の中央に位置する中央部付近の電解液とのリチウムイオンの濃度を比べると、端縁部の方が中央部よりもリチウムイオンの濃度が高くなることが判ってきた。その理由としては、中央部よりも外部に近い端縁部では、充放電の際に生じる活物質層及びこれによる発電要素の膨張・収縮に伴って、電解液の溶媒が電池ケース内の外部に向けて移動しやすいためであると考えられる。
ところで、リチウムイオンの濃度が低い部位では、濃度の高い部位よりも移動できるリチウムイオンが少なく、電解液と負極活物質層とを併せた総合の電気抵抗が高く見える。従って、図1(a)に示すように、負極活物質層に生じる電気抵抗が中央部及び端縁部に限らず一様であったとしても、電解液と負極活物質層とを併せた総合の電気抵抗は、図1(b)に示すように、中央部が端縁部に比して高く見える。
このように電解液と負極活物質層とを併せた総合の電気抵抗に高低が生じている電池をほぼ満充電まで充電して(充電末期)、負極活物質層の平均の電位(対リチウム金属電位(Vvs.Li/Li+))が0Vに近い値(例えば、0.1V)になった場合について考える。
このような状態では、負極活物質層の電位分布は、図1(c)に示すようになり、最も低い中央部では0V以下の電位になることがある。このため、中央部の表面に金属リチウムが析出してしまう虞がある。一旦析出した金属リチウムは、その後の充放電に関与しなくなるので、充放電を繰り返す等の使用に伴って、この電池の電池容量が低下してしまう。
【0006】
これに対して、特許文献1のリチウムイオン二次電池を用いることが考えられるが、この特許文献1のリチウムイオン二次電池では、その負極活物質層の、端縁部と中央部との間で電極密度(固形分密度)を異ならせているので、充放電の際に負極活物質層に生じる膨張・収縮の程度についても、端縁部と中央部との間で異なる。つまり、電極密度が高い端縁部の方が、中央部よりも大きく膨張・収縮する。このため、例えば、端縁部と中央部との境界部分で亀裂や剥離等の不具合が生じて、電池性能が低下してしまう虞がある。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、使用に伴う電池容量の低下を抑制した負極活物質層を有する負電極板を備えるリチウムイオン二次電池、このリチウムイオン二次電池を搭載した車両及び電池搭載機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、導電性を有する帯状の負極集電板、及び、この負極集電板上に配置されて、負極活物質粒子を含み、この負極集電板の長手方向に延びる帯状の負極活物質層を有する帯状の負電極板と、上記負電極板と対向してなる帯状の正電極板と、上記負電極板と上記正電極板との間に介在してなるセパレータと、を捲回してなり、上記セパレータにリチウムイオンを含む電解液を含浸させた発電要素を備えるリチウムイオン二次電池であって、上記負極活物質層は、上記長手方向に直交する幅方向の両端部にそれぞれ位置する帯状の端縁部と、上記幅方向の中央に位置して、上記端縁部にそれぞれ隣接する帯状の中央部と、からなり、上記中央部は、上記端縁部よりも低抵抗の層特性を有するリチウムイオン二次電池である。
【0009】
上述の電池の負極活物質層は、中央部が、端縁部よりも低抵抗の層特性を有する。つまり、図2(a)に示すように、電解液を加味しない、負極活物質層のみに生じる電気抵抗について見ると、中央部が端縁部よりも低くされている。
そこで、この電池について充放電を繰り返し、従来と同様に、電解液のうち、幅方向の中央部付近におけるリチウムイオンの濃度が、端縁部付近よりも低くなった場合を考える。すると、電解液と負極活物質層とを併せた総合の電気抵抗は、図2(b)に示したようになる。即ち、負極活物質層のうち中央部の電気抵抗を端縁部よりも低くした分、電解液と負極活物質層とを併せた総合の電気抵抗について、中央部と端縁部との間の差を小さく抑え、中央部で極端に高くなることが防止できる。
これにより、この電池に充電して、例えば、負極活物質層の平均電位が前述と同様に0.1Vになった場合でも、図2(c)に示すように、負極活物質層の中央部の電位が0V以下になるのを防止できる。つまり、充電時に、負極活物質層に金属リチウムが析出するのを防止できる。かくして、使用に伴う電池容量の低下を抑制した電池とすることができる。
【0010】
なお、各部の層特性の測定方法としては、例えば、負電極板のうち、負極活物質層の端縁部が存在する部位と中央部が存在する部位とをそれぞれ所定形状に打ち抜いて、これらを負極とする電池をそれぞれ構成し、これら負極の抵抗を交流インピーダンス法で測定する手法が挙げられる。
また、負極活物質粒子としては、例えば、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛等の天然黒鉛や人造黒鉛の黒鉛(グラファイト)、非晶質炭素が挙げられる。
【0011】
さらに、上述のリチウムイオン二次電池であって、前記端縁部と前記中央部とは、固形分密度が互いに等しいリチウムイオン二次電池とすると良い。
【0012】
上述の電池では、端縁部及び中央部の固形分密度が互いに等しい。このため、端縁部と中央部との間で、充放電に伴う膨張・収縮の程度を同じにすることができる。従って、両者の境界部分で亀裂や剥離等の不具合の発生を防止できる。
【0013】
なお、固形分密度とは、端縁部(或いは中央部)における単位体積当たりの端縁部(或いは中央部)の重量をいう。なお、固形分密度は、(固形分密度)=(端縁部(中央部)の重量)/((端縁部(中央部)の面積)×(端縁部(中央部)の層厚))で与えられる。
【0014】
さらに、上述のリチウムイオン二次電池であって、前記端縁部と前記中央部とは、厚みが互いに等しく、前記負極活物質粒子のうち、上記中央部に含まれる第1活物質粒子は、その第1平均粒径が、上記端縁部に含まれる第2活物質粒子の第2平均粒径に比して小さいリチウムイオン二次電池とすると良い。
【0015】
上述の電池では、中央部に含まれる第1活物質粒子の第1平均粒径が、端縁部に含まれる第2活物質粒子の第2平均粒径に比して小さい。ところで、粒径が小さい負極活物質粒子は、リチウムイオン或いは電子がその活物質粒子の奥(中心)にまで到達し易いので、平均粒径が小さいほど、その負極活物質粒子自身の抵抗は低くなる。従って、第1活物質粒子の方が第2活物質粒子よりも低抵抗である。その上、端縁部と中央部との固形分密度を互いに等しく、しかも端縁部と中央部とで厚みを互いに等しくした。これにより、低抵抗の第1活物質粒子を含む中央部全体の層特性も、端縁部に比べて、低抵抗とすることができる。従って、充電時に、負極活物質層に金属リチウムが析出するのを防止できる。かくして、使用に伴う電池容量の低下を確実に抑制できる電池とすることができる。
また、端縁部と中央部との固形分密度を互いに等しく、かつ、端縁部と中央部とで厚みを互いに等しくしながら、中央部における負極活物質粒子の平均粒径を端縁部に比して小さく異ならせることで、容易に中央部を端縁部よりも低抵抗の層特性にすることができる。
【0016】
さらに、上述のいずれかのリチウムイオン二次電池であって、前記端縁部と前記中央部とは、厚みが互いに等しく、前記負極活物質粒子は黒鉛であり、上記負極活物質粒子のうち、上記中央部に含まれている第1活物質粒子は、その第1黒鉛純度が、前記端縁部に含まれている第2活物質粒子の第2黒鉛純度に比して高いリチウムイオン二次電池とすると良い。
【0017】
上述の電池では、負極活物質粒子に用いる黒鉛について、中央部における第1活物質粒子の第1黒鉛純度が、端縁部における第2活物質粒子の第2黒鉛純度に比して高い。ところで、黒鉛純度が高いと、黒鉛以外の不純物の割合が小さいので、黒鉛純度が高くなるに連れて、負極活物質粒子の抵抗が低くなる。従って、第1活物質粒子の方が第2活物質粒子よりも低抵抗である。その上、端縁部と中央部との固形分密度を互いに等しく、しかも端縁部と中央部とで厚みを互いに等しくした。これにより、低抵抗の第1活物質粒子を含む中央部全体の層特性も、端縁部に比べて、低抵抗とすることができる。従って、充電時に、負極活物質層に金属リチウムが析出するのを防止できる。かくして、使用に伴う電池容量の低下を確実に抑制できる電池とすることができる。
また、端縁部と中央部との固形分密度を互いに等しく、かつ、端縁部と中央部とで厚みを互いに等しくしながら、中央部における負極活物質粒子の黒鉛純度を端縁部に比して高く異ならせることで、容易に中央部を端縁部よりも低抵抗の層特性にすることができる。
【0018】
なお、黒鉛純度とは、負極活物質粒子における黒鉛の占める割合をいい、例えば、灰分試験(600℃で燃焼した際の灰分の成分を分析)やX線回折(回折面(101)と(100)との強度比を測定)により測定することができる。
【0019】
或いは、本発明の他の態様は、前述のいずれかのリチウムイオン二次電池を搭載し、このリチウムイオン二次電池に蓄える電気エネルギを動力源の全部又は一部に使用する車両である。
【0020】
上記の車両は、使用に伴う電池容量の低下を抑制できる電池を搭載しているので、安定した性能を有する車両とすることができる。
【0021】
なお、車両としては、電池による電気エネルギを動力源の全部又は一部に使用する車両であれば良く、例えば、電気自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド鉄道車両、フォークリフト、電気車いす、電動アシスト自転車、電動スクータが挙げられる。
【0022】
或いは、本発明の他の態様は、前述のいずれかのリチウムイオン二次電池を搭載し、このリチウムイオン二次電池に蓄える電気エネルギをエネルギ源の全部又は一部に使用する電池搭載機器である。
【0023】
上記の電池搭載機器は、使用に伴う電池容量の低下を抑制できる電池を搭載しているので、安定した性能を有する電池搭載機器とすることができる。
【0024】
なお、電池搭載機器としては、電池を搭載し、これをエネルギ源の全部又は一部に使用する機器であれば良く、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯電話、電池駆動の電動工具、無停電電源装置など、電池で駆動される各種の家電製品、オフィス機器、産業機器が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来の電池の説明図であり、(a)は負極活物質層の各部位における電気抵抗の大きさを示すグラフ、(b)は電解液と負極活物質層とを併せた総合の電気抵抗の各部位における大きさを示すグラフ、(c)は充電末期における負極活物質層の電位を示すグラフである。
【図2】実施形態1,変形形態1にかかる電池の説明図であり、(a)は負極活物質層の各部位における電気抵抗の大きさを示すグラフ、(b)は電解液と負極活物質層とを併せた総合の電気抵抗の各部位における大きさを示すグラフ、(c)は充電末期における負極活物質層の電位を示すグラフである。
【図3】実施形態1,変形形態1にかかる電池の斜視図である。
【図4】実施形態1,変形形態1の正電極板の斜視図である。
【図5】実施形態1,変形形態1の負電極板の斜視図である。
【図6】実施形態1,変形形態1の負電極板の製造工程の説明図である。
【図7】実施形態2にかかる車両の説明図である。
【図8】実施形態3にかかる電池搭載機器の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施形態1)
次に、本発明の実施形態1について、図面を参照しつつ説明する。
まず、本実施形態1にかかる電池1について、図3を参照して説明する。
この電池1は、帯状の負電極板20と、帯状の正電極板30と、負電極板20と正電極板30との間に介在させた帯状のセパレータ50とを捲回し、このセパレータ50に電解液60を含浸させた発電要素10を備えるリチウムイオン二次電池である(図3参照)。この電池1は、発電要素10を電池ケース80に収容してなる。
【0027】
この電池ケース80は、共にアルミニウム製の電池ケース本体81及び封口蓋82を有する。このうち電池ケース本体81は有底矩形箱形であり、この電池ケース80と発電要素10との間には、樹脂からなり、箱状に折り曲げた絶縁フィルム(図示しない)が介在させてある。また、封口蓋82は矩形板状であり、電池ケース本体81の開口を閉塞して、この電池ケース本体81に溶接されている。この封口蓋82には、発電要素10と接続している正極集電部材91及び負極集電部材92のうち、それぞれ先端に位置する正極端子部91A及び負極端子部92Aが貫通しており、図3中、上方に向く蓋表面82aから突出している。これら正極端子部91A及び負極端子部92Aと封口蓋82との間には、それぞれ絶縁性の樹脂からなる絶縁部材95が介在し、互いを絶縁している。さらに、この封口蓋82には矩形板状の安全弁97も封着されている。
【0028】
また、電解液60は、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを、体積比でEC:EMC=3:7に調整した混合有機溶媒に、溶質としてLiPF6を添加し、リチウムイオンを1mol/lの濃度とした非水電解液である。
【0029】
また、発電要素10は、帯状の負電極板20及び正電極板30が、帯状のセパレータ50を介して扁平形状に捲回されてなる捲回型の形態である(図3参照)。なお、この発電要素10の負電極板20及び正電極板30はそれぞれ、クランク状に屈曲した板状の負極集電部材92又は正極集電部材91と接合している(図3参照)。このうち、多孔性のポリプロピレンからなる帯状のセパレータ50は、正電極板30と負電極板20との間に介在して、これらを離間させている。このセパレータ50には、全体に上述した電解液60が含浸させてある。
【0030】
また、正電極板30は、図4に示すように、長手方向DLに延びる帯状で、導電性のアルミニウムからなるアルミ箔38と、このアルミ箔38の主面上にそれぞれ帯状に形成された2つの正極活物質層31,31とを有している。
この正極活物質層31は、LiCoO2からなる正極活物質粒子34、カーボンブラックからなる導電材35、及び、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる結着材36を含む(図4参照)。なお、正極活物質層31内における、これらの重量比を、正極活物質粒子34:導電材35:結着材36=85:5:10とした。また、この正極活物質層31の層厚T31を26μmとした。
【0031】
また、負電極板20は、図5に示すように、長手方向DLに延びる帯状で、導電性の銅からなる銅箔28と、この銅箔28の主面上にそれぞれ帯状に形成された2つの負極活物質層21,21とを有している。
このうち負極活物質層21は、黒鉛からなる負極活物質粒子(次述する第1活物質粒子24C,第2活物質粒子24E)、及び、PVDFからなる結着材(図示しない)を含む。
【0032】
なお、負極活物質層21は、図5に示すように、長手方向DLに直交する幅方向DW(図5中、左上から右下方向)の両端部にそれぞれ位置し、長手方向DLに延びる帯状の2つの端縁部21E,21Eと、幅方向DWの中央に位置して、端縁部21E,21Eにそれぞれ隣接する帯状の中央部21Cとからなる。
このうち端縁部21Eは、第2平均粒径REが17.2μmの黒鉛からなる第2活物質粒子24Eを含む。また、この端縁部21Eの第2層厚TEは32μm、端縁部21Eの固形分密度は1.4g/cm3である。
一方、中央部21Cは、第1平均粒径RCが、第2平均粒径REに比して小さな3.2μmの黒鉛からなる第1活物質粒子24Cを含む。また、この中央部21Cの第1層厚TCは32μmであり、端縁部21Eの第2層厚TEと等しい。また、この中央部21Cの固形分密度は1.4g/cm3であり、端縁部21Eの固形分密度と等しい。
【0033】
ところで、本発明者らは、上述した電池1の電池特性(容量維持率)を評価すべく、電池1と同様の正極活物質層、負極活物質層、セパレータ及び電解液60を用いた円筒形状の試料電池1を用意し、評価を行った。
具体的には、LiCoO2からなる正極活物質粒子34、カーボンブラックからなる導電材35、及び、PVDFからなる結着材36を、重量比で正極活物質粒子34:導電材35:結着材36=85:5:10となるように混合した。この混合物の中に、分散材としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を適量添加し、ペースト状の正極ペーストを作製した。この正極ペーストをアルミ箔の両主面に塗布し、乾燥させた後、ロールプレスで高密度化して、正極活物質層を作製した。
作製した正極活物質層は、アルミ箔と共に、52mm×720mmの形状に切断し(このうち、正極活物質層を担持した部位の寸法は52mm×680mm)、正電極板とした。
【0034】
また一方で、第1平均粒径RC(=3.2μm)の第1活物質粒子24C、及び、PVDFからなる結着材(図示しない)を、重量比で第1活物質粒子24C:結着材=90:10となるように混合した。この混合物の中に、分散材のNMPを適量添加し、ペースト状の第1負極ペースト21CPを作製した。同様にして、第2平均粒径RE(=17.2μm)の第2活物質粒子24E、及び、PVDFからなる結着材(図示しない)を、重量比で第2活物質粒子24E:結着材=90:10となるように混合し、第2負極ペースト21EPを作製した。
【0035】
これら第1負極ペースト21CP及び第2負極ペースト21EPを銅箔CFに塗布した。具体的には、図6に示すダイコータDCを用いて、第1負極ペースト21CP及び第2負極ペースト21EPを、長手方向DLに延びる帯状の銅箔CFの両主面に塗布した。
【0036】
このダイコータDCは、各ペースト21CP,21EPを内部に貯留するペースト貯留部DCTと、このペースト貯留部DCTの各ペースト21CP,21EPを銅箔CFに向けて連続的に吐出する吐出口DCSとを有する。
このうち、ペースト貯留部DCTは、内部の2箇所で板状の仕切り板PT,PTに仕切られ、銅箔CFの幅方向DWの一方の端側に位置する第1貯留部DCT1、他方の端側に位置する第3貯留部DCT3、及び、幅方向の中央に位置する第2貯留部DCT2の3つに分かれている。第2貯留部DCT2には、第1負極ペースト21CPが、第1貯留部DCT1及び第3貯留部DCT3には、第2負極ペースト21EPが、それぞれ貯留されている。
また、吐出口DCSは、スリット状で幅方向DWに平行に開口している。この吐出口DCSもまた、ペースト貯留部DCTと同様、2つの仕切り板PT,PTに仕切られており、第1貯留部DCT1に対応した第1吐出口DCS1、第2貯留部DCT2に対応した第2吐出口DCS2、及び、第3貯留部DCT3に対応した第3吐出口DCS3の3つに分かれている。
【0037】
このようなダイコータDCを用いて、幅方向DWに、第2負極ペースト21EP、第1負極ペースト21CP及び第2負極ペースト21EPの順序に並ぶよう、吐出口DCSを通じて各ペーストを銅箔CFに向けて塗布した。
【0038】
銅箔CF上に塗布した第1負極ペースト21CP及び第2負極ペースト21EPを乾燥させた後、ロールプレスで高密度化して、幅方向DWの両端部にそれぞれ位置する帯状の2つの端縁部と、幅方向DWの中央に位置して、端縁部にそれぞれ隣接する帯状の中央部とからなる負極活物質層を作製した。なお、この負極活物質層の層厚は、中央部、端縁部にかかわらず、32μmで一定である。
作製した負極活物質層は、銅箔と共に、55mm×740mmの形状に切断し(このうち、正極活物質層を担持した部位の寸法は55mm×720mm)、負電極板とした。なお、幅方向DWの、中央部の寸法は25mm、端縁部(1つ分)の寸法は15mmである。また、中央部及び端縁部の固形分密度は互いに等しい。
【0039】
なお、上述した負電極板における中央部及び端縁部の抵抗値を別途測定した。
具体的には、作製した負電極板の、中央部及び端縁部をそれぞれ円形に打ち抜き、対極に用いる金属リチウムと共にコイン型セルを作製し、このセルの交流インピーダンスを測定した。その測定結果から得られたナイキストプロットの円弧の径を比較して、各部位における抵抗値とした。
以上より、中央部の抵抗値は7.5Ω、端縁部の抵抗値は14.0Ωであり、中央部が端縁部に比べて低抵抗の層特性を有していることが判る。
【0040】
上述の正電極板と負電極板との間に、ポリプロピレン製のセパレータを介在させて積層し、これら正電極板、負電極板及びセパレータを捲回して、捲回型の発電要素を作製した。この発電要素を18650型円筒ケースに挿入し、電解液60をその中に注入した後、封止して試料電池1を製造した。
【0041】
まず、上述の試料電池1のうち、製造して間もない新品(初期)のものの電池容量について測定した。具体的には、まず、25℃の温度環境下で、試料電池1について、3.0〜4.1Vの電圧範囲で定電流充電及び定電流放電(共に0.10A)を、1組の充放電を1サイクルとして3サイクル繰り返した(コンディショニング)。続いて、1.0Aの電流値で、4.1Vまで充電し、その後、25℃の温度環境下で、その電圧を保ちつつ電流値を徐々に低下させ、90分間保持した(定電流−定電圧充電)。さらに、25℃の温度環境下で、0.33Aの電流値で3.0Vとなるまで定電流放電を行い、放電した電池容量を測定した。なお、このときの電池容量を初期容量(1C)とした。
【0042】
上述の測定を行った試料電池1について、60℃の温度環境下で、3.0〜4.1Vの電圧範囲で定電流による充放電(電流値は2C)を繰り返すサイクル試験を実施した。具体的には、1組の充放電を1サイクルとして、500サイクルを連続して繰り返した。
その後、試料電池1の電池容量を、上述と同様にして測定した。そして、サイクル試験後における試料電池1の容量維持率を算出した。この容量維持率は、サイクル試験後の電池容量の値を、サイクル試験前の、初期の初期容量で割ったものである。
【0043】
この試料電池1と同様にして、比較例である比較電池C1,C2も製作し、これらの電池特性についての電池特性(容量維持率)を、試料電池1と同様に行った。
なお、比較電池C1は、負極活物質層が第1平均粒径RCの第1活物質粒子24Cのみを含む、即ち、中央部及び端縁部が共に第1活物質粒子24Cのみを含む点で試料電池1と異なる。また、比較電池C2は、負極活物質層が第2平均粒径REの第2活物質粒子24Eのみを含む、即ち、中央部及び端縁部が共に第2活物質粒子24Eのみを含む点で試料電池1と異なる。
これら試料電池1及び比較電池C1,C2の各負極活物質層の構成、及び、容量維持率を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
表1によれば、中央部が第1活物質粒子24Cを、端縁部が第2活物質粒子24Eをそれぞれ含む試料電池1の容量維持率は、負極活物質層が第1活物質粒子24Cのみ、或いは、第2活物質粒子24Eのみを含む各比較電池C1,C2よりも高い。このことから、負極活物質層全体に1種類の負極活物質粒子(第1活物質粒子24C,第2活物質粒子24E)を含む電池よりも、負極活物質層の端縁部に第2活物質粒子24Eを、中央部に第2活物質粒子24Eよりも平均粒径の小さな第1活物質粒子24Cを含む電池の方が、その電池の容量維持率を高くできることが判る。
【0046】
このようになる理由は以下であると考えられる。即ち、粒径が小さい負極活物質粒子は、リチウムイオン或いは電子がその活物質粒子の奥(中心)にまで到達し易いので、平均粒径が小さいほど、その負極活物質粒子自身の抵抗は低くなる。従って、第2平均粒径RE(=17.2μm)よりも小さな第1平均粒径RC(=3.2μm)の第1活物質粒子24Cの方が第2活物質粒子24Eよりも低抵抗である。その上、端縁部と中央部との固形分密度を互いに等しく、しかも端縁部と中央部とで厚みを互いに等しくした。これにより、低抵抗の第1活物質粒子24Cを含む中央部全体の層特性も、端縁部に比べて、低抵抗とすることができる。
【0047】
上述の試料電池1、及び、これと同様の正極活物質層31、負極活物質層21、セパレータ50及び電解液60を用いた電池1について、充放電を繰り返すと、従来と同様、電解液60のうち、中央部21C付近でのリチウムイオンの濃度が、端縁部21E付近の濃度よりも低くなる。ところで、本実施形態1では、図2(a)に示すように、負極活物質層21のうち、中央部21Cが、端縁部21Eよりも低抵抗の層特性を有する。このため、この試料電池1,電池1では、電解液と負極活物質層とを併せた総合の電気抵抗が、図2(b)のようになる。即ち、中央部21Cの電気抵抗を端縁部21Eよりも低くした分、電解液と負極活物質層とを併せた総合の電気抵抗について、中央部21Cと端縁部21Eとの間の差を小さく抑え、中央部21Cで極端に高くなることが防止できる。
これにより、この試料電池1,電池1に充電して、例えば、負極活物質層21の平均電位が0.1Vになった場合でも、図2(c)に示すように、負極活物質層21の中央部21Cの電位が0V(vs.Li/Li+)以下になるのを防止できる。つまり、充電時に、負極活物質層21に金属リチウムが析出するのを防止できる。かくして、使用に伴う電池容量の低下を抑制した試料電池1,電池1とすることができる。
【0048】
また、試料電池1及び電池1では、端縁部21E及び中央部21Cの固形分密度が互いに等しい。
前述した特許文献1の電池のように、端縁部21Eと中央部21Cとの間で固形分密度が異なる電池では、充放電の際に負極活物質層に生じる膨張・収縮の程度が、端縁部と中央部との間で異なってしまう。これに対し、上述の試料電池1及び電池1では、端縁部21Eと中央部21Cとの間で、充放電に伴う膨張・収縮の程度を同じにすることができる。従って、両者の境界部分で亀裂や剥離等の不具合の発生を防止できる。
【0049】
また、試料電池1及び電池1では、中央部21Cの第1活物質粒子24Cの第1平均粒径RCが、端縁部21Eに含まれる第2活物質粒子24Eの第2平均粒径REに比して小さい。これにより、低抵抗の第1活物質粒子24Cを含む中央部21C全体の層特性を、端縁部21Eに比べて、低抵抗とすることができる。従って、使用に伴う電池容量の低下を確実に抑制できる電池とすることができる。
また、端縁部21Eと中央部21Cとの固形分密度を互いに等しく、かつ、端縁部21Eと中央部21Cとで厚みTE,TCを互いに等しくしながら、中央部21Cにおける負極活物質粒子(第1活物質粒子24C)の平均粒径RCを、端縁部21Eに比して小さく異ならせることで、容易に中央部21Cを端縁部21Eよりも低抵抗の層特性にすることができる。
【0050】
次に、本実施形態1にかかる電池1の製造方法について説明する。
まず、試料電池1とほぼ同様にして、発電要素10を作製する。具体的には、前述した正極活物質粒子34、導電材35及び結着材36を、重量比で正極活物質粒子34:導電材35:結着材36=85:5:10となるように混合した。この混合物の中に、分散材を適量添加し、ペースト状の正極ペーストを作製した。この正極ペーストを公知の手法で、帯状のアルミ箔の両主面に塗布し、乾燥させた後、ロールプレスで高密度化して、正極活物質層を作製し、帯状の正電極板30ができあがる(図4参照)。
【0051】
また一方で、前述した第1負極ペースト21CP及び第2負極ペースト21EPを作製した。これら第1負極ペースト21CP,第2負極ペースト21EPを、前述したダイコータDCを用いて(図6参照)、帯状の銅箔28の両主面に塗布し、乾燥させた後、ロールプレスで高密度化して、負極活物質層21を作製し、負電極板20ができあがる(図5参照)。
上述のように作製した正電極板30と負電極板20との間に、セパレータ50を介在させて捲回し、発電要素10とする。
【0052】
その後は、正電極板30(アルミ箔38)及び負電極板20(銅箔28)にそれぞれ正極集電部材91及び負極集電部材92を溶接し、電池ケース本体81に挿入し、前述した電解液60を注入後、封口蓋82で電池ケース本体81を溶接で封口する。かくして、電池1が完成する(図3参照)。
【0053】
(変形形態1)
次に、本発明の変形形態1にかかる電池101について、図3〜6を参照しつつ説明する。
本変形形態1は、負極活物質層のうち、中央部に含まれる第1活物質粒子、及び、端縁部に含まれる第2活物質粒子が、前述の実施形態1と異なり、それ以外は同様である。
そこで、実施形態1と異なる点を中心に説明し、同様の部分の説明は省略または簡略化する。なお、同様の部分については同様の作用効果を生じる。また、同内容のものには同番号を付して説明する。
【0054】
本変形形態1にかかる電池101は、帯状の負電極板120と、実施形態1の電池1と同様の正電極板30及びセパレータ50とを捲回してなり、このセパレータ50に電解液60を含浸した発電要素110を備えるリチウムイオン二次電池である(図3参照)。
【0055】
このうち、負電極板120は、図5に示すように、前述の銅箔28と、この銅箔28の主面上にそれぞれ形成された2つの負極活物質層121,121とを有している。
このうち負極活物質層121は、黒鉛からなる負極活物質粒子(次述する第1活物質粒子124C,第2活物質粒子124E)、及び、PVDFからなる結着材(図示しない)を含む。
【0056】
なお、負極活物質層121は、実施形態1と同様に、帯状の2つの端縁部121E,121Eと、幅方向DWの中央に位置して、端縁部121E,121Eにそれぞれ隣接する帯状の中央部121Cとからなる(図5参照)。
このうち端縁部121Eは、天然黒鉛からなる第2活物質粒子124Eを含む。なお、この端縁部121Eの第2層厚TEは32μm、固形分密度は1.4g/cm3である。
また、中央部121Cは、人造黒鉛からなる第1活物質粒子124Cを含む。また、この中央部121Cの第1層厚TCは32μmであり、端縁部121Eの第2層厚TEと等しい。また、この中央部121Cの固形分密度は1.4g/cm3であり、端縁部121Eの固形分密度と等しい。
なお、人造黒鉛からなる第1活物質粒子124Cの黒鉛純度(第1黒鉛純度KC)が、天然黒鉛からなる第2活物質粒子124Eの黒鉛純度(第2黒鉛純度KE)に比して高くしてある。
【0057】
ところで、本発明者らは、実施形態1と同様にして、電池101の電池特性(容量維持率)を評価すべく、電池1と同様の正極活物質層、負極活物質層、セパレータ及び電解液60を用いた円筒形状の試料電池101を用意し、評価を行った。
具体的には、第1黒鉛純度KCの第1活物質粒子124C、及び、PVDFからなる結着材(図示しない)を、重量比で第1活物質粒子124C:結着材=90:10となるように混合した。この混合物の中に、分散材のNMPを適量添加し、ペースト状の第1負極ペースト121CPを作製した。同様にして、第2黒鉛純度KEの第2活物質粒子124E、及び、PVDFからなる結着材(図示しない)を、重量比で第2活物質粒子124E:結着材=90:10となるように混合し、第2負極ペースト121EPを作製した。
【0058】
これら第1負極ペースト121CP及び第2負極ペースト121EPを、実施形態1と同様の、図6に示すダイコータDCを用いて、長手方向DLに延びる帯状の銅箔CFの両主面に塗布した。
【0059】
銅箔CF上に塗布した第1負極ペースト121CP及び第2負極ペースト121EPを乾燥させた後、ロールプレスで高密度化して、幅方向DWの両端部にそれぞれ位置する帯状の2つの端縁部と、幅方向DWの中央に位置して、端縁部にそれぞれ隣接する帯状の中央部とからなる負極活物質層を作製した。なお、この負極活物質層の層厚は、中央部、端縁部にかかわらず、32μmで一定である。
作製した負極活物質層は、銅箔と共に、55mm×740mmの形状に切断し(このうち、正極活物質層を担持した部位の寸法は55mm×720mm)、負電極板とした。なお、幅方向DWの、中央部の寸法は25mm、端縁部(1つ分)の寸法は15mmである。また、中央部及び端縁部の固形分密度は互いに等しい。
【0060】
なお、上述した負電極板における中央部及び端縁部の抵抗値を、実施形態1と同様に測定したところ、中央部の抵抗値は8.0Ω、端縁部の抵抗値は14.2Ωであり、中央部が端縁部に比べて低抵抗の層特性を有していることが判った。
【0061】
上述の負電極板と、実施形態1の試料電池1と同様の正電極板との間に、試料電池1と同様のセパレータを介在させて積層し、これら正電極板、負電極板及びセパレータを捲回して、捲回型の発電要素を作製し、その後も試料電池1と同様にして試料電池101を製造した。
【0062】
上述の試料電池101について、実施形態1の試料電池1と同様、初期のものの電池容量について測定した。その後、実施形態1の試料電池1と同様のサイクル試験を実施した。
さらに、サイクル試験後における試料電池101の電池容量を、再度測定した。そして、サイクル試験後における試料電池101の容量維持率を算出した。
【0063】
この試料電池101と同様にして、比較例である比較電池C3,C4も製作し、これらの電池特性についての電池特性(容量維持率)を、試料電池101と同様に行った。
なお、比較電池C3は、負極活物質層が第1黒鉛純度KCの第1活物質粒子124Cのみを含む、即ち、中央部及び端縁部が共に第1活物質粒子124Cのみを含む点で試料電池101と異なる。また、比較電池C4は、負極活物質層が第2黒鉛純度KEの第2活物質粒子124Eのみを含む、即ち、中央部及び端縁部が共に第2活物質粒子124Eのみを含む点で試料電池101と異なる。
これら試料電池101及び比較電池C3,C4の各負極活物質層の構成、及び、容量維持率を表2に示す。
【0064】
【表2】

【0065】
表2によれば、中央部が第1活物質粒子124Cを、端縁部が第2活物質粒子124Eをそれぞれ含む試料電池101の容量維持率は、負極活物質層が第1活物質粒子124Cのみ、或いは、第2活物質粒子124Eのみを含む各比較電池C3,C4よりも高い。このことから、負極活物質層全体に1種類の負極活物質粒子(第1活物質粒子124C,第2活物質粒子124E)を含む電池よりも、負極活物質層の端縁部に第2活物質粒子124Eを、中央部に第2活物質粒子124Eよりも黒鉛純度の高い第1活物質粒子124Cを含む電池の方が、その電池の容量維持率を高くできることが判る。
【0066】
このようになる理由は以下であると考えられる。即ち、黒鉛純度が高い負極活物質粒子では、黒鉛以外の不純物の割合が小さいので、黒鉛純度が高くなるに連れて、負極活物質粒子の抵抗は低くなる。従って、黒鉛純度の高い第1活物質粒子124Cの方が第2活物質粒子124Eよりも低抵抗である。その上、端縁部と中央部との固形分密度を互いに等しく、しかも端縁部と中央部とで厚みを互いに等しくした。これにより、低抵抗の第1活物質粒子124Cを含む中央部全体の層特性も、端縁部に比べて、低抵抗とすることができる。
【0067】
以上より、試料電池101、及び、これと同様の正極活物質層31、負極活物質層121、セパレータ50及び電解液60を用いた電池101では、負極活物質粒子124C,124Eに用いる黒鉛について、中央部121Cにおける第1活物質粒子124Cの第1黒鉛純度KCが、端縁部121Eにおける第2活物質粒子124Eの第2黒鉛純度KEに比して高い。これにより、低抵抗の第1活物質粒子124Cを含む中央部121C全体の層特性も、端縁部121Eに比べて、低抵抗とすることができる。従って、実施形態1と同様、充電時に、負極活物質層に金属リチウムが析出するのを防止できる。かくして、使用に伴う電池容量の低下を確実に抑制できる電池とすることができる。
また、端縁部121Eと中央部121Cとの固形分密度を互いに等しく、かつ、端縁部121Eと中央部121Cとで厚みTE,TCを互いに等しくしながら、中央部121Cにおける負極活物質粒子(第1活物質粒子124C)の第1黒鉛純度KCを端縁部121Eに比して高く異ならせることで、容易に中央部121Cを端縁部121Eよりも低抵抗の層特性にすることができる。
【0068】
なお、電池101の製造方法は、実施形態1の電池1とほぼ同じであるので説明を省略する。
【0069】
(実施形態2)
本実施形態2にかかる車両200は、前述した電池1,101を複数含むバッテリパック210を搭載したものである。具体的には、図7に示すように、車両200は、エンジン240、フロントモータ220及びリアモータ230を併用して駆動するハイブリッド自動車である。この車両200は、車体290、エンジン240、これに取り付けられたフロントモータ220、リアモータ230、ケーブル250、インバータ260、及び、矩形箱形状のバッテリパック210を有している。このうちバッテリパック210は、前述した電池1,101を複数収容してなる。
【0070】
本実施形態2にかかる車両200は、使用に伴う電池容量の低下を抑制できる電池1,101を搭載しているので、安定した性能を有する車両200とすることができる。
【0071】
(実施形態3)
また、本実施形態3のハンマードリル300は、前述した電池1,101を含むバッテリパック310を搭載したものであり、図8に示すように、バッテリパック310、本体320を有する電池搭載機器である。なお、バッテリパック310はハンマードリル300の本体320のうち底部321に可能に収容されている。
【0072】
本実施形態3にかかるハンマードリル300は、使用に伴う電池容量の低下を抑制できる電池1,101を搭載しているので、安定した性能を有する電池搭載機器とすることができる。
【0073】
以上において、本発明を実施形態1〜3及び変形形態1に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、実施形態1では粒径の異なる黒鉛を、変形形態1では黒鉛純度の異なる黒鉛を負極活物質粒子に用いたが、例えば、アスペクト比の異なる黒鉛を負極活物質粒子に用いても良い。
【0074】
このような場合として、具体的には、黒鉛のうち、ほぼ球状の塊状黒鉛(アスペクト比が1.0〜1.3)と、この塊状黒鉛よりもアスペクト比が大きな鱗片状の鱗片状黒鉛(アスペクト比が2.0以上)が挙げられる。
黒鉛は六角板状結晶であるので、アスペクト比が大きな負極活物質粒子ほど、リチウムイオン或いは電子がその奥(中心)にまで到達し難い。このため、アスペクト比が大きいほど、その負極活物質粒子自身の抵抗は高くなり、逆にアスペクト比が小さいほど、その負極活物質粒子自身の抵抗は低くなる。従って、塊状黒鉛の方が鱗片状黒鉛よりも低抵抗である。
かくして、負極活物質層の中央部に含む第1活物質粒子に塊状黒鉛を、端縁部に含む第2活物質粒子に鱗片状黒鉛をそれぞれ用いた電池でも、充電時に、負極活物質層に金属リチウムが析出するのを防止できて、使用に伴う電池容量の低下を抑制できる。
【符号の説明】
【0075】
1,101 電池(リチウムイオン二次電池)
10,110 発電要素
20,120 負電極板
21,121 負極活物質層
21C,121C 中央部
21E,121E 端縁部
24C,124C 第1活物質粒子(負極活物質粒子)
24E,124E 第2活物質粒子(負極活物質粒子)
28 銅箔(負極集電板)
30 正電極板
50 セパレータ
60 電解液
200 車両
300 ハンマードリル(電池搭載機器)
DL 長手方向
DW 幅方向
KC 第1黒鉛純度
KE 第2黒鉛純度
RC 第1平均粒径
RE 第2平均粒径
TC 第1層厚(中央部の厚み)
TE 第2層厚(端縁部の厚み)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する帯状の負極集電板、及び、この負極集電板上に配置されて、負極活物質粒子を含み、この負極集電板の長手方向に延びる帯状の負極活物質層を有する帯状の負電極板と、
上記負電極板と対向してなる帯状の正電極板と、
上記負電極板と上記正電極板との間に介在してなるセパレータと、を捲回してなり、
上記セパレータにリチウムイオンを含む電解液を含浸させた発電要素を備える
リチウムイオン二次電池であって、
上記負極活物質層は、
上記長手方向に直交する幅方向の両端部にそれぞれ位置する帯状の端縁部と、上記幅方向の中央に位置して、上記端縁部にそれぞれ隣接する帯状の中央部と、からなり、
上記中央部は、
上記端縁部よりも低抵抗の層特性を有する
リチウムイオン二次電池。
【請求項2】
請求項1に記載のリチウムイオン二次電池であって、
前記端縁部と前記中央部とは、固形分密度が互いに等しい
リチウムイオン二次電池。
【請求項3】
請求項2に記載のリチウムイオン二次電池であって、
前記端縁部と前記中央部とは、厚みが互いに等しく、
前記負極活物質粒子のうち、上記中央部に含まれる第1活物質粒子は、
その第1平均粒径が、上記端縁部に含まれる第2活物質粒子の第2平均粒径に比して小さい
リチウムイオン二次電池。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のリチウムイオン二次電池であって、
前記端縁部と前記中央部とは、厚みが互いに等しく、
前記負極活物質粒子は黒鉛であり、
上記負極活物質粒子のうち、上記中央部に含まれている第1活物質粒子は、
その第1黒鉛純度が、前記端縁部に含まれている第2活物質粒子の第2黒鉛純度に比して高い
リチウムイオン二次電池。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池を搭載し、このリチウムイオン二次電池に蓄えた電気エネルギを動力源の全部又は一部に使用する車両。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池を搭載し、このリチウムイオン二次電池に蓄えた電気エネルギをエネルギ源の全部又は一部に使用する電池搭載機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−70976(P2011−70976A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−221771(P2009−221771)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】