説明

リチウムイオン二次電池のリサイクル方法

【課題】 リチウムイオン二次電池を簡単な方法により破砕することにより、各種の素材ごとに分離して回収するリチウムイオン二次電池のリサイクル方法を提案する。
【解決手段】 ステンレス製の容器3内に、活物質5aが塗布されたアルミニウム箔5bからなる正極5と活物質6aが塗布された銅箔6bからなる負極6とが、プラスチック箔からなるセパレータ4を介して複数積層されるとともに、非水系電解液を注入して密閉されたリチウムイオン二次電池1のリサイクル方法であって、リチウムイオン二次電池1を、回転軸2cとこの回転軸2cに一端部が固定された可撓性を有する線材2aとが筒体2b内を回転軸2c回りに回転する破砕機2の筒体2bに投入して、回転する線材2aにより破砕し、破砕物を分離手段により少なくとも上記プラスチック、上記ステンレス、上記アルミニウム、上記銅、上記活物質に各々分離し回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池を構成する各種の素材を個別に回収するためのリチウムイオン二次電池のリサイクル方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やノートパソコンなどの小型電子機器の普及に伴い、小型・軽量で起電力の高いリチウムイオン二次電池の需要も増加してきている。また、省エネルギーやエコロジーの観点から、ハイブリッド車や電気自動車などの次世代環境対応車が持て囃され、需要の増加が著しく、これらハイブリッド車や電気自動車においても、小型・軽量で起電力が高く、エネルギー密度の大きなリチウムイオン二次電池の利用が増えてきている。
【0003】
ところで、リチウムイオン二次電池は、携帯電話やノートパソコンの本格的普及に先立ち、二次電池の小型・軽量化の要望が高い中、水系電解液を用いた従来のニッケル・カドミウム電池やニッケル水素電池などの水系電解液二次電池に変わって開発された二次電池であり、今日の社会的ニーズに応えるものに進化してきている。
【0004】
このリチウムイオン二次電池は、負極の集電体の活物質にカーボンが用いられているとともに、正極の集電体に使用されている活物質の種類によって、例えば、Co系リチウムイオン二次電池、Co−Ni−Mn系リチウムイオン二次電池、Ni−Co系リチウムイオン二次電池などに分類されている。これらリチウムイオン二次電池の正極に使用されている活物質は、コバルトやニッケル、マンガンなどの貴重なレアメタルであり、今日の需要の増大に伴って、その価格が上昇傾向にあるとともに、資源保護の観点から再資源化が求められている。
【0005】
そこで、携帯電話やノートパソコンなどの小型電子機器に用いられているリチウムイオン二次電池を回収し、貴重なレアメタルをはじめ、各種素材を取り出してリサイクルする方法が提案されている。これら小型電子機器用のリチウムイオン二次電池をリサイクル処理する際には、電解液およびフッ素の除去、安定化、無害化が必要であり、従来においては、これら電解液およびフッ素の除去、安定化、無害化を熱処理や焼却処理により実施し、その後素材ごとに分離して回収していた。
【0006】
この小型電子機器に用いられているリチウムイオン二次電池は、殆どがプラスチック製の容器により覆われているため、そのまま熱処理や焼却処理することにより、プラスチック製の容器が燃焼されて、電解液およびフッ素の除去、安定化、無害化が可能であるとともに、内部に配設された電極なども容易に取り出すことができる。
【0007】
しかし、車載用のリチウムイオン二次電池は、容器にステンレスなどの金属素材が使用されていることが多く、そのまま熱処理や焼却処理を行っても、プラスチック製の容器のように燃焼することがなく、ステンレス製の容器は、そのまま残ってしまい、内部に配設された電極などを取り出すことが難しく、その後の工程において、ステンレス製の容器を切断または破砕することが必要となり、処理工程が増えるとともに、設備が大型化してしまうという問題がある。
【0008】
そこで、下記特許文献1において、リチウムイオン二次電池を解体する解体工程と、電池解体物をアルコール又は水で洗浄し、電解液及び電解質を除去する洗浄工程と、洗浄した電池解体物を硫酸水溶液に浸漬して、正極基板から正極活物質を剥離する正極活物質剥離工程と、剥離した正極活物質を固定炭素含有物の存在下に酸性溶液で侵出する侵出工程と、得られた侵出液から中和によりアルミニウム、銅を分離除去する中和工程と、中和工程後の侵出液からニッケル、コバルトを分離回収するニッケル・コバルト回収工程と、残った水溶液中のリチウムを溶媒抽出と逆抽出により濃縮した後、リチウムを炭酸リチウムの固体として分離回収するリチウム回収工程とを備えるリチウムイオン二次電池から有価金属を回収する方法が提案されている。
【0009】
この従来の方法では、解体工程においてリチウムイオン二次電池を解体した後に、活物質、アルミニウム、銅などを分離して回収するため、ステンレス製の容器に覆われている車載用のリチウムイオン二次電池もリサイクルすることが可能である。
【0010】
しかしながら、上記従来の方法では、リチウムイオン二次電池を解体し、電解液および電解質をアルコール又は水で洗浄した後に行われる処理工程が複雑であるとともに、危険を伴う溶液を使用するため、設備が複雑になるとともに、使用した溶液の処理が必要になり、設備コストやメンテナンスコストが嵩むという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−122885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、リチウムイオン二次電池を簡単な方法により破砕することにより、各種の素材ごとに分離して回収するリチウムイオン二次電池のリサイクル方法を提案することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ステンレス製の容器内に、活物質が塗布されたアルミニウム箔からなる正極と活物質が塗布された銅箔からなる負極とが、プラスチック箔からなるセパレータを介して複数積層されるとともに、非水系電解液を注入して密閉されたリチウムイオン二次電池のリサイクル方法であって、上記リチウムイオン二次電池を、回転軸とこの回転軸に一端部が固定された可撓性を有する線材とが筒体内を上記回転軸回りに回転する破砕機の上記筒体に投入して、回転する上記線材により破砕し、破砕物を分離手段により少なくとも上記プラスチック、上記ステンレス、上記アルミニウム、上記銅、上記活物質に各々分離し回収することを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記リチウムイオン二次電池は、防爆弁を有する封口板により密閉されているとともに、上記リチウムイオン二次電池を破砕する前に、上記リチウムイオン二次電池を放電させ、次いで放電された上記リチウムイオン二次電池の上記封口板の上記防爆弁を開口して、上記非水系電解液を真空乾燥により蒸発させた後に、上記非水系電解液が蒸発した上記リチウムイオン二次電池を洗浄することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1〜2に記載の本発明によれば、リチウムイオン二次電池を、筒体内に可撓性を有する線材が回転軸回りに回転する破砕機に投入し、当該線材の打撃による衝撃力によって破砕するため、この破砕物に含まれるプラスチック、ステンレス、アルミニウム箔、銅箔および活物質を、各々異なる形状寸法に破砕することができる。これにより、各々の素材の特性を利用し、風力選別機や篩いなどの分離手段を用いて、素材ごとに単体分離させて回収することができ、再資源化を容易に図ることができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、上記リチウムイオン二次電池を破砕する前処理として、封口板の防爆弁を開口した後に、非水系電解液を真空乾燥により蒸発させ、次いで上記非水系電解液が蒸発した上記リチウムイオン二次電池を洗浄するため、電解液およびフッ素の除去、安定化、無害化を熱処理や焼却処理を必要とせずに行うことができる。この結果、大掛かりな設備が必要でないとともに、処理工程を少なくすることができ、上記リチウムイオン二次電池の前処理を安全、かつ容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のリチウムイオン二次電池のリサイクル方法の一実施形態による一連の工程のフロー図である。
【図2】本発明のリチウムイオン二次電池のリサイクル方法に用いられるリチウムイオン二次電池を示し、(a)は概略断面図、(b)は積層体の概略断面図の一部分である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すように、本発明のリチウムイオン二次電池のリサイクル方法の一実施形態は、使用済みの車載用のリチウムイオン二次電池1を放電し、放電されたリチウムイオン二次電池1の防爆弁8を穴開けにより開口し、開口されたリチウムイオン二次電池1内に注入されている非水系電解液を真空乾燥により蒸発させ、当該非水系電解液を蒸発させた後に、リチウムイオン二次電池1内を水により洗浄して前処理が行われ、洗浄を終えたリチウムイオン二次電池1をチェーン式破砕機(破砕機)2に投入して破砕し、破砕したリチウムイオン二次電池1の各々の素材の特性を利用し、分離手段により各種の素材ごとに風力選別および二段式の篩いにより選別して回収するように概略構成されている。
【0019】
ここで、リチウムイオン二次電池1は、Co−Ni−Mn系リチウムイオン二次電池であり、図2(a)および(b)に示すように、ステンレス製の容器3内に、アルミニウム箔5bに活物質5aが塗布された正極5と、銅箔6bに活物質6aが塗布された負極6とを、プラスチック箔からなるセパレータ4を介して複数積層された積層体11が巻回されて配設され、かつ非水系電解液が注入されて、封口板7により密閉されている。
【0020】
また、正極5は、アルミニウム箔5bが正極集電体をなすとともに、活物質5aがアルミニウム箔5bの両面に塗布されている。この活物質5aは、LiNi1/3Mn1/3Co1/32であり、ペースト状に成形されている。そして、負極6は、銅箔6bが負極集電体をなすとともに、活物質6aが銅箔6bの両面に塗布されている。この活物質6aは、カーボン(C)であり、ペースト状に成形されている。
【0021】
そして、ステンレス製の容器3を密閉している封口板7は、中心部に防爆弁8が設けられている。この防爆弁8は、貫通穴にアルミニウムシート8aが設けられて封止されている。また、封口板7には、正極5に接続された正極端子9と、負極6に接続された負極端子10が、外方に突出して設けられている。
【0022】
他方、チェーン式破砕機2は、図1に示すように、有底筒状の筒体2bと、この筒体2bの底部の中心部に立設するとともに、モータ2dの駆動により回転する円柱状の回転軸2cと、この回転軸2cの外周面に一端部が接続され、他端部が自由端となっているとともに、回転軸2cの円周方向の180℃離反した位置に、もう一方の一端部が接続され、他端部が自由端となっているチェーン(線材)2aを備えている。また、チェーン2aは、回転軸2cの外周面の一方側に、2本接続されている。
【0023】
また、分離手段である二段式の篩いは、1段目において、形状寸法が20mm以上の破砕物を篩い上に残し、形状寸法が20mm未満の破砕物を2段目の篩いに落下させる網目状の篩いである。そして、2段目において、形状寸法が20mm未満、1mm以上の破砕物を篩い上に残し、形状寸法が1mm未満の破砕物を下方に落下させる網目状の篩いである。
【0024】
以上の構成からなるリチウムイオン二次電池1、チェーン式破砕機2および二段式篩いを用いることにより、車載用のリチウムイオン二次電池1を構成する各種の素材を分離して回収するには、まず、図1に示すように、使用済みの車載用のリチウムイオン二次電池1を一般に利用されている放電器を用いて、放電されずに残った電気を放電させる。
【0025】
次いで、封口板7に設けられた防爆弁8の上記貫通穴に、この貫通穴より、若干直径が小さい丸棒を押し当てて、防爆弁8の上記貫通穴を封止しているアルミニウムシート8aを突き破り、穴開けをする。そして、リチウムイオン二次電池1を真空乾燥機に投入して、内部に注入されている電解液を蒸発させる。この際に、真空乾燥機の真空圧力を0.1MPa以下、望ましくは0.01MPa以下、乾燥温度を80〜120℃に設定し、6〜8時間乾燥させる。
【0026】
そして、乾燥させたリチウムイオン二次電池1の封口板7に設けられた防爆弁8の上記貫通穴から、内部に水を注入して洗浄する。この際に、水を用いて、内部を数回に分けて洗浄する。
【0027】
次に、乾燥させたリチウムイオン二次電池1をチェーン式破砕機2に投入する。このとき、チェーン式破砕機2は、モータ2dの駆動により、回転軸2cが回転するとともに、この回転軸2cに接続されたチェーン2aが筒体2b内を回転する。
【0028】
そして、このチェーン式破砕機2に投入したリチウムイオン二次電池1が、筒体2b内を回転するチェーン2aによって、1〜2分程度打撃させることにより、ステンレス製の容器3が破砕され、この容器3の内部に配設されている正極5を形成するアルミニウム箔5bおよび負極6を形成する銅箔6bが破砕されるとともに、このアルミニウム箔5bに塗布されていた活物質5aおよび銅箔6bに塗布されていた活物質6aが破砕される。さらに、プラスチック箔により形成されたセパレータ4が破砕される。なお、チェーン式破砕機2による破砕の際、発火防止措置のため、図示しない不活性ガス導入管により、不活性ガスを導入し、筒体2b内を不活性ガス雰囲気としながら破砕することとしてもよい。
【0029】
この際、可撓性を有するチェーン2aの打撃の衝撃により、プラスチック箔は概ね変形することなく大片に裁断され、ステンレスは中片に破砕され、アルミニウム箔、銅箔および活物質5a,6aは細かく破砕されて、各々が絡み合わない。これは、各素材が有する弾塑性の違いによるもので、可撓性を有するチェーン2aの打撃の衝撃によって、柔らかく薄いプラスチック箔は、破砕されることなく大片に裁断され、硬いステンレスは大きく変形し中片に破砕され、アルミニウム箔、銅箔およびこれらに塗布された活物質5a,6aは細かく破砕され、素材ごとに破砕形状に差が生じる。
【0030】
そして、チェーン式破砕機2によって破砕されたリチウムイオン二次電池1の破砕物から、分離手段である風力選別機を用いて、最も軽い重量のセパレータ4を形成していたプラスチック箔を選別して回収する。
【0031】
次いで、風力選別によりプラスチック箔を分離した上記破砕物を、他の分離手段である二段式の篩いにより、20mm以上の形状寸法の素材と、20mm未満、1mm以上の形状寸法の素材と、1mm未満の形状寸法の素材とに分離して回収する。この二段式の篩いの1段目により分離した各々の素材は、破砕された形状寸法が20mm以上のものであり、容器3の素材であるステンレスである。
【0032】
また、破砕された形状寸法が20mm未満、1mm以上のものが正極5の集電体および負極6の集電体の素材であるアルミニウム箔5bおよび銅箔6bである。
【0033】
そして、破砕された形状寸法が1mm未満のものが、正極5の活物質5aに含まれるリチウム、コバルト、ニッケル、マンガンなど、および負極6の活物質6aに含まれるカーボンなどである。
また、破砕された形状寸法が20mm未満、1mm以上のアルミニウム箔5bおよび銅箔6bは、風力選別機により、アルミニウム箔5bと銅箔6bとに分離されて個別に回収される。
【0034】
(実施例)
次に、チェーン式破砕機2によって破砕されたリチウムイオン二次電池1の上記破砕物の篩いによる分離について、形状寸法ごとの割合を分析した結果に基づき説明する。
なお、チェーン式破砕機2および破砕時間は、上記実施の形態と同じ条件であり、分析方法は、フッ素(F)が燃焼−イオンクロマト法、カーボン(C)が燃焼−赤外線吸収法、それ以外の元素がICP発光分光分析法である。
なお、破砕処理後に、大片のプラスチック箔と中片のステンレスは、予め除去した後に、篩い分離を実施し、回収物を分析した。
【0035】
この分析により、各素材の破砕された形状寸法が2mm以上の割合、1〜2mmの割合および1mm以下の割合を表1にまとめた。また、各形状寸法の回収重量割合を表2にまとめた。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
上記分析結果から、2mm以上の形状寸法に破砕された素材の回収重量割合は、回収した素材全体を100wt%とした場合、32.7wt%である。そして、この2mm以上の形状寸法に破砕された素材を100wt%とした場合、含まれる素材は、Alが18.0wt%、Cuが37.8wt%である。また、1〜2mmの形状寸法に破砕された素材の回収重量割合は、回収した素材全体を100wt%とした場合、4.3wt%である。そして、この1〜2mmの形状寸法に破砕された素材を100wt%とした場合、含まれる素材は、Alが7.05wt%、Cuが20.8wt%である。これにより、1mm以上の形状寸法の素材を篩い上に残すことが可能な篩いを用いることにより、正極5の集電体の素材であるアルミニウム箔5bおよび負極6の集電体の素材である銅箔6bを、上記破砕物から分離して回収することが可能である。
【0039】
そして、1mm以下の形状寸法に破砕された素材の回収重量割合は、回収した素材全体を100wt%とした場合、63.0wt%である。そして、この1mm以下の形状寸法に破砕された素材を100wt%として場合、含まれる素材は、Liが3.06wt%、Coが3.57wt%、Mnが26.7wt%、Niが3.63wt%、Cが28.2wt%である。これにより、1mm未満の形状寸法の素材を篩い落とすことが可能な篩いを用いることにより、正極5のアルミニウム箔5bに塗布された活物質5aに含まれるリチウム、コバルト、ニッケル、マンガンを、上記破砕物から分離して回収するとともに、負極6の銅箔6bに塗布されている活物質6aに含まれるカーボンを、上記破砕物から分離して回収することが可能である。
【0040】
上述の実施の形態によるリチウムイオン二次電池1のリサイクル方法によれば、リチウムイオン二次電池1を、筒体2b内に可撓性を有するチェーン2aが回転軸2c回りに回転するチェーン式破砕機2に投入し、チェーン2aの打撃による衝撃力によって破砕するため、この破砕物に含まれるプラスチック、ステンレス、アルミニウム箔5b、銅箔6b、活物質5a,6aを、各々異なる形状寸法に破砕することができる。これにより、各々の素材の特性を利用し、風力選別機や篩いなどの分離手段を用いて、素材ごとに単体分離させて回収することができ、再資源化を容易に図ることができる。
【0041】
また、リチウムイオン二次電池1を破砕する前処理として、封口板7の防爆弁8を穴開けをした後に、非水系電解液を真空乾燥により蒸発させ、次いで上記非水系電解液が蒸発したリチウムイオン二次電池1を洗浄するため、電解液およびフッ素の除去、安定化、無害化を熱処理や焼却処理を必要とせずに行うことができる。この結果、大掛かりな設備が必要でないとともに、処理工程を少なくすることができ、上記リチウムイオン二次電池の前処理を安全、かつ容易に行うことができる。
【0042】
なお、上記実施の形態において、破砕機をチェーン式破砕機2を用いる場合のみ説明したが、これに限定されるものでなく、例えば、チェーンに変えて、可撓性を有するワイヤを用いたワイヤ式破砕機でも対応可能である。
また、分離手段を風力選別機および篩いを用いる場合のみ説明したが、これに限定されているものでなく、例えば、磁力選別機や比重選別機などを用いても対応可能である。
そして、リチウムイオン二次電池をCo−Ni−Mn系リチウムイオン二次電池を用いる場合のみ説明したが、これに限定されるものでなく、例えば、Co系リチウムイオン二次電池やNi−Co系リチウムイオン二次電池などのリチウムイオン二次電池を用いても対応可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
リチウムイオン二次電池のリサイクルに利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 リチウムイオン二次電池
2 チェーン式破砕機
2a チェーン
2b 筒体
2c 回転軸
3 容器
4 セパレータ
5 正極
5a 活物質
5b アルミニウム箔
6 負極
6a 活物質
6b 銅箔
7 封口板
8 防爆弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレス製の容器内に、活物質が塗布されたアルミニウム箔からなる正極と活物質が塗布された銅箔からなる負極とが、プラスチック箔からなるセパレータを介して複数積層されるとともに、非水系電解液を注入して密閉されたリチウムイオン二次電池のリサイクル方法であって、
上記リチウムイオン二次電池を、回転軸とこの回転軸に一端部が固定された可撓性を有する線材とが筒体内を上記回転軸回りに回転する破砕機の上記筒体に投入して、回転する上記線材により破砕し、破砕物を分離手段により少なくとも上記プラスチック、上記ステンレス、上記アルミニウム、上記銅、上記活物質に各々分離し回収することを特徴とするリチウムイオン二次電池のリサイクル方法。
【請求項2】
上記リチウムイオン二次電池は、防爆弁を有する封口板により密閉されているとともに、
上記リチウムイオン二次電池を破砕する前に、上記リチウムイオン二次電池を放電させ、次いで放電された上記リチウムイオン二次電池の上記封口板の上記防爆弁を開口して、上記非水系電解液を真空乾燥により蒸発させた後に、上記非水系電解液が蒸発した上記リチウムイオン二次電池を洗浄することを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二 次電池のリサイクル方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−4299(P2013−4299A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134077(P2011−134077)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】