説明

リチウムイオン二次電池用正極活物質およびリチウムイオン二次電池

【課題】特定の化合物を組み合わせて用いることで正極活物質の不可逆容量を低減させたリチウムイオン二次電池用正極活物質を提供する。
【解決手段】本発明は、リチウムを吸蔵および放出することが可能なリチウムイオン二次電池用正極活物質であって、
不可逆容量を有する第一化合物と、初回の充電時に放出されたリチウムの量よりも多くのリチウムを吸蔵可能な第二化合物と、を少なくとも含み、
活物質全体として不可逆容量が減少していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池の正極材料として使用される正極活物質およびその正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やノート型パソコンなどのポータブル電子機器の発達や、電気自動車の実用化などに伴い、小型軽量でかつ高容量の二次電池が必要とされている。現在、この要求に応える高容量二次電池としては、正極材料としてコバルト酸リチウム(LiCoO)、負極材料として炭素系材料、を用いた非水二次電池が商品化されている。このような非水二次電池はエネルギー密度が高く、小型化および軽量化が図れることから、幅広い分野で電源としての使用が注目されている。しかしながら、LiCoOは希少金属であるCoを原料として製造されるため、今後、資源不足が深刻化すると予想される。さらに、Coは高価であり、価格変動も大きいため、安価で供給の安定している正極材料の開発が望まれている。
【0003】
そこで、構成元素の価格が安価で、供給が安定しているマンガン(Mn)を基本組成に含むリチウムマンガン酸化物系の複合酸化物の使用が有望視されている。その中でも、4価のマンガンイオンからなり、充放電の際にマンガン溶出の原因となる3価のマンガンイオンを含まないLiMnOという物質が注目されている。LiMnOは、今まで充放電不可能と考えられてきたが、最近の研究では4.8Vまで充電することにより充放電可能なことが見出されてきている。しかしながらLiMnOは、充放電特性に関してさらなる改善が必要である。
【0004】
充放電特性の改善のため、LiMnOとLiMO(Mは遷移金属元素)との固溶体であるxLiMnO・(1−x)LiMO(0<x≦1)の開発が盛んである。ところが、正極活物質としてLiMnOを含む二次電池を使用する際には、初回の充電時に正極活物質を活性化させる必要がある。活性化は大きな不可逆容量を伴うため、対極に移動したイオンが戻らず、正極と負極との充放電のバランスが崩れるという問題がある。この活性化のメカニズムおよび活性化によって得られる容量については、はっきりと解明されていないのが現状である(非特許文献1参照)。
【0005】
一例として、LiMnOを含む正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池が、特許文献1および特許文献2に記載されている。特許文献1には、0.6LiMnO・0.4LiMnを正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池が記載されている。また、特許文献2には、LiMnOとLiMn0.5Ni0.5の固溶体またはLiMnOとLiMn0.33Ni0.33Co0.33の固溶体を正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2008−511960号公報
【特許文献2】特開2009− 9753号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】駒場ら,「Li2MnO3−安定化LiMO2(M=Mn,Ni,Co)リチウムイオン二次電池用電極 (Li2MnO3-stabilized LiMO2(M=Mn,Ni,Co)electrodes for lithium-ion batteries)」,Journal of Materials Chemistry 17 (2007) 3112-3125
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の図6には、正極活物質として0.6LiMnO・0.4LiMnを用いたチウムイオン二次電池の初期充電/放電電位プロファイルが示されている。このリチウムイオン二次電池は、金属リチウムからなる対極(負極)を用いている。そのため、放電により正極活物質に吸蔵されるリチウムが、直前の充電により正極から放出されたリチウムであるのか対極にあったリチウムであるのかが、不明である。つまり、引用文献1の記載からは、初回の充電でLiMnOから放出された不可逆容量に相当するリチウムの放電後の行き先は不明である。
【0009】
特許文献2では、正極活物質としてLiMnOとともにLiMn0.5Ni0.5またはLiMn0.33Ni0.33Co0.33を含む固溶体を使用している。この正極活物質は、さらに二酸化マンガンを含む。正極活物質として放電状態の固溶体および充電状態の二酸化マンガンを組み合わせて用いることで、初期充放電効率を向上させている。しかしながら、LiMn0.5Ni0.5およびLiMn0.33Ni0.33Co0.33の役割は不明である。
【0010】
つまり、特許文献1および2ではLiMnOが有する不可逆容量を低減させるという考えはなく、不可逆容量を低減させる具体的な手法が望まれている。そこで本発明は、特定の化合物を組み合わせて用いることで正極活物質の不可逆容量を低減させたリチウムイオン二次電池用正極活物質およびリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
電池活物質の中には、充電開始時の電圧よりもさらに低い電圧まで放電することで、初回の充電により放出したリチウムの量よりもその後の放電により吸蔵するリチウムの量が多くなる化合物がある。本発明者等は、そのような化合物を、不可逆容量を有するLiMnO等の正極活物質とともに用いることで、正極全体として不可逆容量を低減させられることを新たに見出した。そして本発明者は、この成果を発展させることで、以降に述べる種々の発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、リチウムを吸蔵および放出することが可能なリチウムイオン二次電池用正極活物質であって、
不可逆容量を有する第一化合物と、初回の充電時に放出されたリチウムの量よりも多くのリチウムを吸蔵可能な第二化合物と、を少なくとも含み、
活物質全体として不可逆容量が減少していることを特徴とする。
【0013】
既に説明したように、LiMnO等を単独で正極活物質として正極に用いると、初回の充電の際に対極に移動したLiの一部が正極に戻らずに不可逆容量となる。リチウムイオン二次電池では、不可逆容量により、その後の充放電における正極と負極との充放電バランスが悪くなることが知られている。したがって、初回の充電にて放出したリチウムを次回の放電にて再び正極に吸蔵することができれば、不可逆容量は緩和され、正極と負極との充放電バランスもバランスよく保たれる。
【0014】
そこで、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質では、不可逆容量を有する化合物(第一化合物)とともに、初回の充電時に放出されたリチウムの量よりも多くのリチウムを吸蔵可能、すなわち、初期状態(初回に充電する前)の組成よりもさらに多くのリチウムを含むことができる化合物(第二化合物)を用いる。その結果、第一化合物の不可逆容量に変化はなくとも、第二化合物の存在により正極活物質全体としての不可逆容量が緩和される。この機構を図8を用いて説明する。
【0015】
図8に、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の一例を模式的に示す。図8において、●および○はリチウムサイトを示し、●はリチウムイオンが存在する状態、○はリチウムイオンが存在しない状態、をそれぞれ示す。充電により、初期状態の正極からリチウムが負極へ移動する。次に放電を行うと、第一化合物は不可逆容量を有するため、全てのサイトにリチウムを吸蔵することはできない。しかし、第二化合物は、初期状態よりもさらにリチウムを吸蔵することが可能であるため、第一化合物に戻れなかったリチウムをも吸蔵する。そのため、活物質全体としての不可逆容量は低減されたことになる。図8に示すように、不可逆容量に対して、第二化合物にリチウムを吸蔵させる余裕が十分にあれば、一旦負極に移動したリチウムのほぼ全量を正極に吸蔵させることも理論上可能となる。
【0016】
なお、対極に金属リチウムを用いると、放電により正極に戻ったリチウムが、初回の充電で正極から放出したリチウムであるのか対極にもともと存在したリチウムであるのかを判別することは困難である。そこで、本発明者等は、たとえば炭素系材料のようにLiを含まない対極を用いて本発明を検証することで、放電後には対極にLiがほとんど存在せず、第一化合物の不可逆容量が第二化合物により全体として緩和されることを確かめた。つまり、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、初回の充電時に放出されたリチウムのうち前記第一化合物の不可逆容量に相当するリチウムの少なくとも一部をその後の放電時に吸蔵するのが好ましい。ただし、実際には、必ずしも、第一化合物から放出されたリチウムが第一化合物へ、第二化合物から放出されたリチウムが第二化合物へ、と戻るわけではないので、「第一化合物の不可逆容量に相当するリチウム」とは、正極活物質から放出されたリチウムであっても第一化合物から放出されたリチウムのみを指しているわけではない。
【0017】
ちなみに、特許文献2に記載のLiMn0.5Ni0.5およびLiMn0.33Ni0.33Co0.33も初期状態以上にリチウムを吸蔵することが可能である。しかしこれらの化合物が初期状態以上にリチウムを吸蔵するには、通常よりも低電位まで放電する必要がある。しかし、特許文献2においては、図7からも明らかであるように、放電はリチウム金属電位に対して2Vまでであるため、本願の図8に示すように不可逆容量は緩和されない。さらに、特許文献2は、電池を構成する段階で充電状態の正極活物質にLiMnOの不可逆容量を吸収させようという趣旨の発明であるため、本発明とは根本的な内容が異なる。
【発明の効果】
【0018】
不可逆容量を有する化合物であっても、特定の化合物と組み合わせて正極活物質として用いることにより、その不可逆容量を正極活物質全体で低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】不可逆容量を有するLiNiTiOを正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池の充放電特性を示すグラフである。
【図2】不可逆容量を有するLiMnOを正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池の充放電特性を示すグラフである。
【図3】さらにLiを吸蔵可能なLiMnを正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池の充放電特性を示すグラフである。
【図4】さらにLiを吸蔵可能なLiMn0.33Ni0.33Co0.33を正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池の充放電特性を示すグラフである。
【図5】LiNiTiOおよびLiMnを含む正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池の充放電特性を示すグラフである。
【図6】LiMnOおよびLiMn0.33Ni0.33Co0.33を含む正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池の充放電特性を示すグラフである。
【図7】LiMnOおよびLiMnを含む正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池の充放電特性を示すグラフである。
【図8】本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質およびリチウムイオン二次電池を実施するための最良の形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「a〜b」は、下限aおよび上限bをその範囲に含む。また、その数値範囲内において、本明細書に記載した数値を任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。
【0021】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、不可逆容量を有する第一化合物と、初回の充電時に放出されたリチウムの量よりも多くのリチウムを吸蔵可能な第二化合物と、を少なくとも含む。
【0022】
第一化合物は、従来からリチウムイオン二次電池の正極活物質として用いられている化合物のうち不可逆容量を有する化合物であれば、特に限定はない。たとえば、岩塩構造をもつ組成式:Li(MはMg、Mn、Fe、Co、Ni、CuおよびZnのうちの一種以上、MはTi、ZrおよびHfのうちの一種以上)で表される複合酸化物、層状岩塩構造をもつ組成式:Li(MはMnを必須とする一種以上の金属元素)で表される複合酸化物、などが挙げられる。これらのうちの一種あるいは二種以上を用いるとよい。これらの第一化合物は、その組成および構造上、不可逆容量を有する。Mは、Mnを必須とし、Mnを置換する元素として、Co、Ni、Ti、Zr等の金属元素が挙げられる。Liの具体例としては、LiNiTiO、LiCoTiO、LiFeTiO、LiMnTiO、LiNiZrO、LiNiHfO等が挙げられる。Liの具体例としては、LiMnO、LiMn0.7Ti0.3、LiMn0.95Zr0.05等が挙げられる。なお、MおよびMを合わせた平均酸化数は+3であり、Mの平均酸化数は+4である。
【0023】
第二化合物は、従来からリチウムイオン二次電池の正極活物質として用いられている化合物のうち初回の充電時に放出されたリチウムの量よりも多くのリチウムを吸蔵可能な化合物であれば、特に限定はない。たとえば、スピネル構造をもつ組成式:LiN(NはMnを必須とする一種以上の金属元素)で表される複合酸化物、層状構造をもつ組成式:LiN(NはNiおよび/またはCoを必須とする一種以上の金属元素)で表される複合酸化物、などが挙げられる。これらのうちの一種あるいは二種以上を用いるとよい。これらの第二化合物は、初期状態で一分子に対してLiを1つ含有するが、その組成および構造上、Liを1つ以上吸蔵可能である。Nは、Mnを必須とし、Mnを置換する元素として、Li、Al、Mg、Co、Ni、Ca、Fe等の金属元素が挙げられる。LiNの具体例としては、LiMn、LiMn1.5Ni0.5、LiMn1.9Al0.1、Li1.1Mn0.9、LiMn1.5Fe0.25Ni0.25等が挙げられる。LiNの具体例としては、LiMn0.33Ni0.33Co0.33、LiNiO、LiCoO、LiNi0.9Mn0.1等が挙げられる。なお、Nの平均酸化数は+3.5であり、Nの平均酸化数は+3である。
【0024】
なお、第一化合物および第二化合物は、上記の組成式で示される化合物を基本組成とするものであればよく、化学量論組成のものに限定されるわけではない。たとえば、製造上不可避的に生じるLi、M、M、M、N、NまたはOが欠損した非化学量論組成のもの等をも含む。Liは、原子比で60%以下さらには45%以下がHに置換されていてもよい。また、LiおよびLiNにおいてはMnが必須であるが、Mnは、55%未満さらには30%未満が他の金属元素で置換されていてもよい。なお、M、M、M、NおよびNは、金属元素の中でも、遷移金属元素であるのが好ましい。
【0025】
本発明の正極活物質は、第一化合物および第二化合物を含む混合物であればよい。たとえば、第一化合物と第二化合物とを別々に合成した後に、それらを粉末の状態で混合した混合粉末として調製してもよい。また、組み合わせによっては、第一化合物と第二化合物との固溶体を合成することも可能である。このとき、第一化合物と第二化合物との含有割合は、モル比で1:2〜2:1であるのが好ましい。第一化合物が過剰であると不可逆容量の低減効果が小さくなるので好ましくない。一方、第二化合物が過剰であると、第二化合物が吸蔵可能な容量を効率よく使用することができず、無駄な容量が生じるため好ましくない。
【0026】
第一化合物および第二化合物は、互いに同程度の電位範囲で使用可能であると好適である。リチウムイオン二次電池における望ましい電位範囲については、後述する。
【0027】
<リチウムイオン二次電池>
以下に、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池を説明する。リチウムイオン二次電池は、主として、正極、負極および非水電解質を備える。また、一般のリチウムイオン二次電池と同様に、正極と負極の間に挟装されるセパレータを備える。
【0028】
正極は、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質と、この正極活物質を結着する結着剤と、を含む。さらに、導電助材を含んでもよい。正極活物質としては、上記の第一化合物および第二化合物のみを実質的に使用するのが好ましいが、第一化合物および第二化合物とともに不可逆容量が少ない電極活物質、たとえばオリビン構造化合物のLiFePOなどのうちから選ばれる一種以上を含んでもよい。
【0029】
また、結着剤および導電助材にも特に限定はなく、一般のリチウムイオン二次電池で使用可能なものであればよい。導電助材は、電極の電気伝導性を確保するためのものであり、たとえば、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛などの炭素物質粉状体の1種または2種以上を混合したものを用いることができる。結着剤は、正極活物質および導電助材を繋ぎ止める役割を果たすもので、たとえば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂などを用いることができる。
【0030】
正極に対向させる負極は、負極活物質である金属リチウムをシート状にして、あるいはシート状にしたものをニッケル、ステンレス等の集電体網に圧着して形成することができる。金属リチウムのかわりに、リチウム合金またはリチウム化合物をも用いることができる。また、正極同様、リチウムイオンを吸蔵・脱離できる負極活物質と結着剤とからなる負極を使用してもよい。負極活物質としては、たとえば、天然黒鉛、人造黒鉛、フェノール樹脂等の有機化合物焼成体、コークス等の炭素物質の粉状体を用いることができる。結着剤としては、正極同様、含フッ素樹脂、熱可塑性樹脂などを用いることができる。
【0031】
一般に、不可逆容量を有する正極とLiを含まない負極とを使用する場合には、正極活物質の不可逆容量に起因する正極と負極とのアンバランスが顕著となる。Liを含む負極を使用すればよいが、金属Li電極はLi金属がデンドライト析出する可能性が高い。本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、負極活物質としてLiを含まない材料、たとえば黒鉛やグラファイト等の炭素系材料やSiやSnなどの金属およびその酸化物などを使用する場合であっても、正極と負極とのバランスを良好に保つことができる。
【0032】
正極および負極は、少なくとも正極活物質または負極活物質が結着剤で結着されてなる活物質層が、集電体に付着してなるのが一般的である。そのため、正極および負極は、活物質および結着剤、必要に応じて導電助材を含む電極合材層形成用組成物を調製し、さらに適当な溶剤を加えてペースト状にしてから集電体の表面に塗布後、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成することができる。
【0033】
集電体は、金属製のメッシュや金属箔を用いることができる。集電体としては、ステンレス鋼、チタン、ニッケル、アルミニウム、銅などの金属材料または導電性樹脂からなる多孔性または無孔の導電性基板が挙げられる。多孔性導電性基板としては、たとえば、メッシュ体、ネット体、パンチングシート、ラス体、多孔質体、発泡体、不織布などの繊維群成形体、などが挙げられる。無孔の導電性基板としては、たとえば、箔、シート、フィルムなどが挙げられる。電極合材層形成用組成物の塗布方法としては、ドクターブレード、バーコーターなどの従来から公知の方法を用いればよい。
【0034】
粘度調整のための溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、メタノール、メチルイソブチルケトン(MIBK)などが使用可能である。
【0035】
電解質としては、有機溶媒に電解質を溶解させた有機溶媒系の電解液や、電解液をポリマー中に保持させたポリマー電解質などを用いることができる。その電解液あるいはポリマー電解質に含まれる有機溶媒は特に限定されるものではないが、負荷特性の点からは鎖状エステルを含んでいることが好ましい。そのような鎖状エステルとしては、たとえば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートに代表される鎖状のカーボネートや、酢酸エチル、プロピロン酸メチルなどの有機溶媒が挙げられる。これらの鎖状エステルは、単独でもあるいは2種以上を混合して用いてもよく、特に、低温特性の改善のためには、上記鎖状エステルが全有機溶媒中の50体積%以上を占めることが好ましく、特に鎖状エステルが全有機溶媒中の65体積%以上を占めることが好ましい。
【0036】
ただし、有機溶媒としては、上記鎖状エステルのみで構成するよりも、放電容量の向上をはかるために、上記鎖状エステルに誘導率の高い(誘導率:30以上)エステルを混合して用いることが好ましい。このようなエステルの具体例としては、たとえば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートに代表される環状のカーボネートや、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールサルファイトなどが挙げられ、特にエチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの環状構造のエステルが好ましい。そのような誘電率の高いエステルは、放電容量の点から、全有機溶媒中10体積%以上、特に20体積%以上含有されることが好ましい。また、負荷特性の点からは、40体積%以下が好ましく、30体積%以下がより好ましい。
【0037】
有機溶媒に溶解させる電解質としては、たとえば、LiClO、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF、LiCFSO、LiCSO、LiCFCO、Li(SO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiCnF2n+1SO(n≧2)などが単独でまたは2種以上混合して用いられる。中でも、良好な充放電特性が得られるLiPFやLiCSOなどが好ましく用いられる。
【0038】
電解液中における電解質の濃度は、特に限定されるものではないが、0.3〜1.7mol/dm、特に0.4〜1.5mol/dm程度が好ましい。
【0039】
また、電池の安全性や貯蔵特性を向上させるために、非水電解液に芳香族化合物を含有させてもよい。芳香族化合物としては、シクロヘキシルベンゼンやt−ブチルベンゼンなどのアルキル基を有するベンゼン類、ビフェニル、あるいはフルオロベンゼン類が好ましく用いられる。
【0040】
セパレータとしては、強度が充分でしかも電解液を多く保持できるものがよく、そのような観点から、5〜50μmの厚さで、ポリプロピレン製、ポリエチレン製、プロピレンとエチレンとの共重合体などポリオレフィン製の微孔性フィルムや不織布などが好ましく用いられる。
【0041】
以上の構成要素によって構成されるリチウムイオン二次電池の形状は円筒型、積層型、コイン型等、種々のものとすることができる。いずれの形状を採る場合であっても、正極と負極との間にセパレータを挟装させ電極体とする。そして正極集電体および負極集電体から外部に通ずる正極端子および負極端子までの間を集電用リードなどで接続し、この電極体に上記電解液を含浸させ電池ケースに密閉し、リチウムイオン二次電池が完成する。
【0042】
リチウムイオン二次電池を使用する場合には、はじめに充電を行い、正極活物質を活性化させる。ただし、上記の複合酸化物を正極活物質として用いる場合には、初回の充電時にリチウムイオンが放出されるとともに酸素が発生する。そのため、電池ケースを密閉する前に充電を行うのが望ましい。
【0043】
以上説明したリチウムイオン二次電池は、リチウム金属に対する電位で1.3Vから5Vまでのいずれかの範囲において充放電可能であり、好ましくは、4V以上さらには4.5V以上までの充電および2V未満さらには1.4V以下までの放電を行うことで不可逆容量を減少させられる。4V以上までの充電および2V未満までの放電を行うことで、正極と負極との充放電のバランスに優れた高容量の二次電池となる。不可逆容量を生じる前述の第一化合物は、その多くがLiを出し入れしにくい化合物であるため、高い電位まで充電することでLiを強制的に放出させるとよい。一方、第二化合物は、初期状態以上にLiを取り込むためには金属元素の平均価数がかなり低くなくてはならないため、低い電位まで放電するのがよい。
【0044】
本発明のリチウムイオン二次電池は、携帯電話、パソコン等の通信機器、情報関連機器の分野の他、自動車の分野においても好適に利用できる。たとえば、このリチウムイオン二次電池を車両に搭載すれば、リチウムイオン二次電池を電気自動車用の電源として使用できる。
【0045】
以上、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質およびリチウムイオン二次電池の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
【実施例】
【0046】
以下に、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質およびリチウムイオン二次電池の実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
【0047】
[正極活物質の合成]
(1−1)LiNiTiOの合成
0.02molの炭酸リチウム(LiCO:1.48g)、0.02molのシュウ酸ニッケル(NiC・2HO:3.65g)、および0.02molの酸化チタン(TiO:1.60g)を秤量し、これを乳鉢と乳棒を用いてよく粉砕しながら混合した。得られた混合物をアルミナボートに入れ、大気中600℃の電気炉内で12時間加熱した。これを室温まで冷却後、再び乳鉢と乳棒を用いて軽く混合してからアルミナボートに入れ、大気中900℃の電気炉内で12時間加熱処理して、LiNiTiO粉末を得た。なお、X線回折測定より、得られたLiNiTiOは、岩塩構造であった。
【0048】
(1−2)LiMnOの合成
0.04molの水酸化リチウム一水和物(LiOH・HO:1.68g)および0.01molの二酸化マンガン(MnO:0.87g)を秤量し、これを乳鉢と乳棒を用いてよく粉砕しながら混合した。得られた混合物をアルミナボートに入れ、大気中500℃の電気炉内で5時間加熱した。これを室温まで冷却後、再び軽く混合してからアルミナボートに入れ、大気中800℃の電気炉内で10時間加熱処理してLiMnO粉末を得た。なお、得られたLiMnOは、層状岩塩構造であった。
【0049】
(2−1)LiMnの合成
0.005molの炭酸リチウム(LiCO:0.37g)および0.02molの炭酸マンガン(MnCO:2.29g)を秤量し、これを乳鉢と乳棒を用いてよく粉砕しながら混合した。得られた混合物をアルミナボートに入れ、大気中850℃の電気炉で24時間加熱処理してLiMn粉末を得た。なお、X線回折測定より、得られたLiMnは、スピネル構造であった。
【0050】
(2−2)LiMn0.33Ni0.33Co0.33の合成
0.04molの水酸化リチウム一水和物(LiOH・HO:1.68g)、0.01molの水酸化ニッケル(Ni(OH):0.927g)、0.01molの二酸化マンガン(MnO:0.869g)および0.01molの水酸化コバルト(Co(OH):0.930g)を秤量し、これを乳鉢と乳棒を用いてよく粉砕しながら混合した。得られた混合物をアルミナボートに入れ、大気中500℃の電気炉で5時間加熱した。これを室温まで冷却後、再度かるく混合してからアルミナボートに入れ、大気中850℃の電気炉で24時間加熱処理してLiMn0.33Ni0.33Co0.33粉末を得た。なお、X線回折測定より、得られたLiMn0.33Ni0.33Co0.33は、層状岩塩構造であった。
【0051】
(3)LiMnO・LiMn0.33Ni0.33Co0.33固溶体の合成
0.3molの水酸化リチウム一水和物LiOH・HO(12.6g)と0.10molの硝酸リチウムLiNO(6.9g)とを混合した。ここにさらに前駆体(1.0g)を加えてLiMnOとLiCo1/3Ni1/3Mn1/3の混合相の原料混合物を調製した。以下に、前駆体の合成手順を説明する。
【0052】
0.67molのMn(NO・6HO(192.3g)と0.16molのCo(NO・6HO(46.6g)と0.16molのNi(NO・6HO(46.5g)とを500mLの蒸留水に溶解させて金属塩含有水溶液を作製した。この水溶液を氷浴中でスターラーを用いて撹拌しながら、50g(1.2mol)のLiOH・HOを300mLの蒸留水に溶解させたものを2時間かけて、水溶液に滴下した。こうして水溶液をアルカリ性とし、金属水酸化物の沈殿を析出させた。この沈殿溶液を5℃に保持したまま酸素雰囲気下で1日熟成を行った。得られた沈殿物を濾過、蒸留水を用いて洗浄することによりMn:Co:Ni=0.67:0.16:0.16の前駆体を得た。
【0053】
原料混合物をムライト製坩堝にいれて、真空乾燥器内において120℃で12時間真空乾燥した。その後、乾燥器を大気圧に戻し、原料混合物の入った坩堝を取り出し、直ちに450℃に熱せられた電気炉に移し、酸素雰囲気中350℃で4時間加熱した。このとき原料混合物は融解して溶融塩となり、黒色の生成物が沈殿していた。
【0054】
次に、溶融塩の入った坩堝を電気炉から取り出し、室温にて冷却した。溶融塩が十分に冷却されて固体化した後、坩堝ごと200mLのイオン交換水に浸し、攪拌することで、固体化した溶融塩を水に溶解した。黒色の生成物は水に不溶性であるため、水は黒色の懸濁液となった。黒色の懸濁液を濾過すると、透明な濾液と、濾紙上に黒色固体の濾物と、が得られた。得られた濾物をさらにイオン交換水を用いて十分に洗浄しながら濾過した。洗浄後の黒色固体を120℃で6時間、真空乾燥した後、乳鉢と乳棒を用いて粉砕して黒色粉末を得た。
【0055】
得られた黒色粉末についてCuKα線を用いたXRD測定を行った。X線回折測定によれば、得られた化合物は層状岩塩構造であることがわかった。また、ICP分析によれば、組成は0.5(LiMnO)・0.5(LiMn0.33Ni0.33Co0.33)であると確認された。
【0056】
(4)LiMnO・LiMn固溶体の合成
0.15molの水酸化リチウム一水和物(LiOH・HO:6.3g)および0.10molの硝酸リチウム(LiNO:6.9g)を秤量して混合した。ここに0.01molの二酸化マンガン(MnO:0.87g)を加えてさらに混合した。得られた混合物をムライト製るつぼに入れ、真空乾燥器内で120℃の加熱真空下で6時間乾燥した。その後、乾燥器を大気圧に戻し、混合物の入ったるつぼを取り出し、直ちに350℃に熱せられた電気炉に移し、350℃の電気炉内で1時間加熱した。このとき塩は融解して溶融塩となり、黒色の生成物が沈殿していた。るつぼを電気炉から取り出して室温にて塩が十分に冷却され固体化した後、るつぼごと約200mLのイオン交換水に浸し、攪拌することで、塩を水に溶解した。ここで生成物は水に不溶性であるため、水は黒色の懸濁液となった。黒色の懸濁液をろ過すると、濾紙上に黒色固体(濾物)と透明な濾液とが得られた。得られた濾物をさらにアセトンを用いて十分に洗浄しながら濾過して得られた濾物(黒色固体)を120℃で6時間程度、真空乾燥し、乳鉢と乳棒を用いて粉砕した。乾燥後の粉末を大気中400℃で一時間焼成することにより、xLiMnO・(1−x)LiMn固溶体からなる粉末を得た。
【0057】
[リチウムイオン二次電池]
上記の手順で合成した複合酸化物を正極活物質としてそれぞれ用い、種々のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0058】
表1に記載のいずれかの正極活物質(複合酸化物)を50質量部、導電助剤として20質量部のカーボンブラック(KB)、結着剤(バインダー)として30質量部の導電性バインダー(アセチレンブラックおよびポリテトラフルオロエチレンの混合物)、を混合し、N−メチル−2−ピロリドンを溶剤として分散させ、スラリーを調製した。次いで、このスラリーを集電体であるアルミニウム箔上に塗布して乾燥させた。その後、厚さ60μmに圧延し、直径11mmφのサイズで打ち抜き、正極を得た。また、正極に対向させる負極は、金属リチウム(φ14mm、厚さ200μm)とした。
【0059】
正極および負極の間にセパレータとして厚さ20μmの微孔性ポリエチレンフィルムを挟装して電極体電池とした。この電極体電池を電池ケース(宝泉株式会社製CR2032コインセル)に収容した。また、電池ケースには、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを1:1(体積比)で混合した混合溶媒にLiPFを1.0mol/Lの濃度で溶解した非水電解質を注入して、リチウムイオン二次電池を得た。
【0060】
【表1】

【0061】
なお、実施例1の正極活物質は、上記の(1−1)および(2−1)で合成した粉末状の化合物の混合物粉末である。実施例2の正極活物質は(3)、実施例3の正極活物質は(4)、でそれぞれ合成した粉末状の固溶体である。
【0062】
<充放電試験>
上記のリチウムイオン二次電池について、室温にて充放電試験を行った。充放電試験は、0.2Cで所定の電圧までCCCV充電(定電流定電圧充電)を行い、0.2Cで所定の電圧までCC放電を行い、この充放電を繰り返し行った。充放電試験の結果を、図1〜図7に示した。
【0063】
図1より、LiNiTiOは、3.5〜4.6Vの充電の際に200mAh/g程度までLiが引き抜かれたが、4.6〜2Vの放電の際には100mAh/g程度しか放電できなかった。つまり、対極である負極に100mAh/gに相当するLiが実質的に残存して不可逆容量となった。また、図2より、LiMnOは、3〜4.6Vの充電の際に300mAh/g程度までLiが引き抜かれたが、4.6〜2Vの放電の際には200mAh/g程度しか放電できなかった。つまり、比較例1および2では、対極である負極に100mAh/gに相当するLiが残存して不可逆容量となった。
【0064】
図3より、LiMnは、1回目の充電時には3〜4.5Vの充電で100mAh/g程度の容量しかなかったが、3.0V以下まで(つまり4.5〜2V)放電させることで200mAh/gを超えるまでの放電が可能であった。すなわち、充電によりLiMnから放出したLi以上の量のLiが放電により挿入されることがわかった。そして、LiMnは、Li1+nMn(nは1程度)までLiを吸蔵可能であることがわかった。
【0065】
また、図4より、LiMn0.33Ni0.33Co0.33は、1回目の充電時には3〜4.5Vの充電で200mAh/g程度の容量しかなかったが、1.5V以下まで(つまり4.5〜1.4V)放電させることで250mAh/gを超えるまでの放電が可能であった。すなわち、充電によりLiMn0.33Ni0.33Co0.33から放出したLi以上の量のLiが放電により挿入されることがわかった。
【0066】
実施例1の正極活物質は、不可逆容量を有するLiNiTiOと、LiMnと、を組み合わせて用いた。既に説明したように、LiNiTiO単独(比較例1)では、対極に移動したLiが戻らずに正極と負極とのバランスが悪かった。しかし、実施例1では、図5に示すように、初回の3〜4.6Vの充電で発生するLiNiTiOの不可逆容量分のLiをLiMnが吸蔵するため、直後の4.6〜1.4Vの放電容量が充電容量とほぼ同等となった。こうして、正極と負極とのバランスは向上したと言える。すなわち、充電により引き抜かれたLiは、LiNiTiOには吸蔵されなくともLiMnに吸蔵されることで、ほぼ全量が戻ったと推測される。
【0067】
実施例2の正極活物質は、不可逆容量を有するLiMnOと、LiMn0.33Ni0.33Co0.33と、を組み合わせて用いた。既に説明したように、LiMnO単独(比較例2)では、対極に移動したLiが戻らずに正極と負極との充放電バランスが悪かった。しかし、実施例2では、比較例2では100mAh/g程度あった不可逆容量に起因する充電容量と放電容量との差は、3〜4.6Vの充電後に4.6〜1.4Vまで放電させることで図6に示すように完全に解消された。すなわち、充電により引き抜かれたLiは、LiMnOには吸蔵されなくともLiMn0.33Ni0.33Co0.33に吸蔵されることで、ほぼ全量が戻ったと推測される。ここで、初回の放電容量が充電容量よりも大きくなっている原因はLiMnOの不可逆容量よりもLiMn0.33Ni0.33Co0.33の吸蔵可能なLi量が大きくなったためである。なお、混合するLiMnOとLiMn0.33Ni0.33Co0.33との割合を最適値にすることで解消される。
【0068】
実施例3の正極活物質は、不可逆容量を有するLiMnOと、LiMnと、を組み合わせて用いた。既に説明したように、LiMnO単独(比較例2)では、対極に移動したLiが戻らずに正極と負極との充放電バランスが悪かった。しかし、実施例3では、図7に示すように、2.0V〜4.6Vの範囲の充放電において充電容量と放電容量とは同程度となった。すなわち、充電により引き抜かれたLiは、LiMnOには吸蔵されなくともLiMnに吸蔵されることで、ほぼ全量が戻ったと推測される。
【0069】
以上のことから、充電により放出されたLiの一部を吸蔵しない不可逆容量を有する第一化合物は、初回の充電時に放出されたリチウムの量よりも多くのLiを吸蔵可能な第二化合物と組み合わせて正極活物質として使用することで、第一化合物の不可逆容量が相殺される効果があることがわかった。
【0070】
なお、LiMnおよびLiMn0.33Ni0.33Co0.33は、いずれも、不可逆容量を有する化合物に対して不可逆容量を低減する効果を発揮する。このような効果は、LiNiTiOおよびLiMnOに対してのみ発揮されるのではなく、LiMnおよびLiMn0.33Ni0.33Co0.33と同程度の電圧範囲で用いられる不可逆容量をもつ化合物に対しても同様に発揮される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムを吸蔵および放出することが可能なリチウムイオン二次電池用正極活物質であって、
不可逆容量を有する第一化合物と、初回の充電時に放出されたリチウムの量よりも多くのリチウムを吸蔵可能な第二化合物と、を少なくとも含み、
活物質全体として不可逆容量が減少していることを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極活物質。
【請求項2】
前記第二化合物は、スピネル構造をもち組成式:LiN(NはMnを必須とする一種以上の金属元素)で表される複合酸化物および層状構造をもち組成式:LiN(NはNiおよび/またはCoを必須とする一種以上の金属元素)で表される複合酸化物からなる群から選ばれる一種以上である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
【請求項3】
前記第一化合物は、岩塩構造をもち組成式:Li(MはMg、Mn、Fe、Co、Ni、CuおよびZnのうちの一種以上、MはTi、ZrおよびHfのうちの一種以上)で表される複合酸化物である請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
【請求項4】
前記第一化合物はLiNiTiO、前記第二化合物はスピネル構造をもつLiMnである請求項1〜3のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
【請求項5】
前記第一化合物は、岩塩構造をもち組成式:Li(MはMg、Mn、Fe、Co、Ni、CuおよびZnのうちの一種以上、MはTi、ZrおよびHfのうちの一種以上)で表される複合酸化物および層状岩塩構造をもち組成式:Li(MはMnを必須とする一種以上の金属元素)で表される複合酸化物から選ばれる一種以上であり、
前記第二化合物は、層状構造をもち組成式:LiN(NはNiおよび/またはCoを必須とする一種以上の金属元素)で表される複合酸化物からなる群から選ばれる一種以上である請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
【請求項6】
前記第一化合物はLiMnO、前記第二化合物はLiMn1/3Ni1/3Co1/3である請求項5に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
【請求項7】
初回の充電時に放出されたリチウムのうち前記第一化合物の不可逆容量に相当するリチウムの少なくとも一部をその後の放電時に吸蔵する請求項1〜6のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
【請求項8】
リチウム金属に対する電位で1.3Vから5Vまでのいずれかの範囲において充放電可能であり、4V以上までの充電および2V未満までの放電を行う充放電条件のもとで使用される請求項1〜7のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
【請求項9】
前記第一化合物および前記第二化合物の含有割合は、モル比で1:2〜2:1である請求項1〜8のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
【請求項10】
前記第一化合物および前記第二化合物は、固溶体を形成している請求項1〜9のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質を含む正極と、負極と、非水電解質と、を備えることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
【請求項12】
前記リチウムイオン二次電池用正極活物質は、リチウム金属に対する電位で1.3Vから5Vまでのいずれかの範囲において充放電可能であり、4V以上までの充電および2V未満までの放電を行う請求項11記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項13】
前記負極は、炭素系材料からなる負極活物質を含む請求項11または12記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池を搭載したことを特徴とする車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−233234(P2011−233234A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99577(P2010−99577)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】