リチウムイオン電池の充放電方式
【課題】リチウムイオン電池を充放電させるに当たり、直列接続された各電池を個別または群単位で充放電可能とし、電池の監視・管理を容易にしばらつきの是正等ができるようにする。
【解決手段】直列接続電池B1〜B10と、その電力供給源となる発電機14およびチョッパ23との間にスイッチSWPS,SWNSを設け、図示されない制御装置から各電池を個別または複数同時に選択できるようにすることで、電池の充放電動作を可能とし電池状態の監視・管理などを容易にする。
【解決手段】直列接続電池B1〜B10と、その電力供給源となる発電機14およびチョッパ23との間にスイッチSWPS,SWNSを設け、図示されない制御装置から各電池を個別または複数同時に選択できるようにすることで、電池の充放電動作を可能とし電池状態の監視・管理などを容易にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のリチウムイオン電池(以下、単に電池ともいう)を直列接続して構成されるリチウムイオン電池の充放電方式、特にその監視・管理を容易にするための充放電方式に関する。
【背景技術】
【0002】
電池を主電源とする大電力システムでは、多数の単電池を直並列接続して容量の増大を図るのが一般的である。
ところで、直並列接続された多数の電池からなる電池電源を一括して充電すると、各電池の特性ばらつきにより充電量にばらつきが発生し、総充電量が低下するという問題がある。また、この場合、充電量が低下した電池の充電量を増加させるために充電を継続すると、既に満充電になっている電池が過充電になるという問題もある。
【0003】
図8に、10個の電池B1〜B10を直列接続した場合の充放電動作例を示す。同図(a)は放電初期状態、同(b)は放電終止状態、同(c)は充電動作1の状態、同(d)は充電動作2の状態をそれぞれ示している。
ここで、放電初期状態は新品時または満充電時を想定している。放電動作は次式のように表わすことができる
VBd=eB−IB×RB…(1)
ここに、VBd:放電時電池端子電圧、eB:電池起電圧、−IB:放電電流、RB:内部抵抗をそれぞれ示す。
【0004】
いま、放電電流−IBが流れると、B1電池電圧VB1は、起電圧eB1=レベル−1、電池内部抵抗による電圧降下IB×RB1=レベル−1、よって電池電圧VB1=レベル−2となる。また、B2電池電圧VB2は、起電圧eB2=レベル−2、電池内部抵抗による電圧降下IB×RB2=レベル−2、よって電池電圧VB2=レベル−4となり、同様にB3電池電圧VB3は、起電圧eB3=レベル−3、電池内部抵抗による電圧降下IB×RB3=レベル−3、よって電池電圧VB3=レベル−6となる。
他の電池B4〜B10も同様で、個別電池の内部抵抗ばらつきによって、電池内部電圧降下値が黒枠で示すように相違する結果、個別電池電圧VB1〜VB10に差が生じることになる。なお、直列電池の両端電圧VBdは、
VBd=VB1+VB2+VB3+VB4+VB5+VB6+VB7+VB8+VB9VB10
である。
【0005】
図9に電池の内部抵抗変化と充電容量(残存量)との関係を示す。
図示のように、残存量多(満充電)では内部抵抗RBは小さく、残存量少(放電終止)では内部抵抗RBは大きくなる傾向にあることが分る。また、内部抵抗RBはサイクル寿命,カレンダー寿命によっても増加する。
図8(b)に示す放電終止状態は、複数回の充放電動作により、各電池の内部抵抗ばらつきが拡大した様子を示している。すなわち、B1電池の電圧降下=レベル−1⇒レベル−4に増加、B2電池の電圧降下=レベル−2⇒レベル−8に増加、B3電池の電圧降下=レベル−3⇒レベル−12に増加しており、特に電池B3,B6,B9の特性ばらつきの多いことが分る。
【0006】
この状態から、10個直列接続電池群を一括充電したときの充電動作1を、図8(c)に示す。
充電動作は次式で示される。
VBc=eB+IB×RB…(2)
ここに、VBc:充電時電池端子電圧、eB:電池起電圧、+IB:充電電流、RB:内部抵抗を示す。
充電電流+IBにより、B1電池の印加電圧VB1=レベル+1、電池内部抵抗による電圧降下IB×RB1=レベル+1⇒レベル−1(黒枠)、よって起電圧eB1=レベル−1となる。また、B2電池の印加電圧VB2=レベル0、電池内部抵抗による電圧降下IB×RB2=レベル0⇒レベル−3(黒枠)、よって起電圧eB2=レベル−3となり、同様にB3電池の印加電圧VB3=レベル−1、電池内部抵抗による電圧降下IB×RB3=レベル−1⇒レベル−5(黒枠)、よって起電圧eB3=レベル−5となる。
【0007】
このように、電池内部抵抗ばらつきの相違により電池内部電圧降下値(黒枠)に差が発生して、各電池の端子電圧VBおよび起電圧eBに差が生じる。つまり、B1電池起電圧=eB1、B2電池起電圧=eB2、B3電池起電圧=eB3…のように、起電圧にばらつきが生じる。なお、このときの直列電池の両端電圧VBcは、
VBc=VB1+VB2+VB3+VB4+VB5+VB6+VB7+VB8+VB9VB10
である。
【0008】
起電圧値は充電量を示すから、B1電池は充電量が多く、B2電池の充電量は中で、B3電池の充電量は少のように、各電池の充電ばらつきが生じ、B1〜B10電池の合計起電圧=合計充電量が低下することになる。
ここで、充電量が少ないB3電池の充電量を増加させるために、充電電圧VBcを上昇させて充電すると、B3電池起電圧eB3レベル−5⇒レベル−1へ4段階電圧が上昇(点線枠表示)するが、B1電池起電圧eB1レベル−1⇒レベル+3、B2電池起電圧eB2レベル−3⇒レベル+1へ上昇するから、B1,B2電池は過充電動作状態になる。このように、直列接続リチウムイオン電池を一括充電すると、個別電池特性ばらつきによって合計容量が低下し、容量低下した電池を追加充電すると、容量低下していない他の電池は過充電となる。
【0009】
ところで、充電ばらつきを是正するための補充電方法として、例えば特許文献1(特許第4148468号公報)に記載のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4148468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1に記載のものは電池が複数個並列接続されるものに対してなされたものであり、電池が複数個直列接続されるものに対してではない。
従って、この発明は複数の個別電池を直列接続した電池電源において、個別電池の特性ばらつきによって生じる充電量の低下を補充電により是正するとともに、個別電池に過充電が発生しないようにすることにある。また、各電池の内部抵抗,起電圧を監視・管理できるようにし、異常が発生したときは充放電動作を停止させるとともに、警報を発せられるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような課題を解決するため、請求項1の発明では、リチウムイオン電池を充放電させるリチウムイオン電池の充放電方式において、
複数のリチウムイオン電池を直列接続した1群のリチウムイオン電池のそれぞれにスイッチング手段を設けるとともに、このスイッチング手段をそれぞれオン・オフさせる制御手段を設け、各リチウムイオン電池を個別に選択して充電または放電動作を可能にしたこと特徴とする。
この請求項1の発明においては、前記群を構成する1つのリチウムイオン電池の充電が完了したら次の未充電のリチウムイオン電池へと順次切り換えて行き、群単位の電池の充電を完了させることができる(請求項2の発明)。
【0013】
上記請求項1または2の発明においては、前記各リチウムイオン電池の直列接続部のそれぞれに別のスイッチング手段を設け、この別のスイッチング手段により各電池の直列接続部を互いに切り離して各電池を並列に接続し、並列に接続された電池を同時に充電可能とし、充電が完了した個別電池から順次切り離して、充電を完了させることができ(請求項3の発明)、請求項1〜3のいずれかの発明においては、充電時と放電時とで同じ電流を流したときの電池電圧から電池内部抵抗,電池起電圧を求め、リチウムイオン電池を個別接続状態または直列接続状態のいずれにおいても、各電池の特性状態の監視・管理を可能にすることができる(請求項4の発明)。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、複数個の個別電池を直列接続した電池電源において、補充電を個別にできる構成とすることで、ばらつきの個別修正を可能とし、直列接続電池の総充電量の低下を抑制する。また、充電と放電とで同値の電流を通電した際の個別電池または直列接続電池群の端子電圧から、電池の内部抵抗,起電圧を算出し、個別接続または直列接続状態のいずれでも電池状態の監視・管理ができるようにする。
さらに、並列接続電池のばらつき修正のための充電方式については、上記特許文献1に示すものがあるので、これとこの発明方式とを併用することで直並列電池の特性ばらつきのための補充電ができ、全電池の総充電量の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】この発明の第1の実施の形態を示す部分構成図
【図1B】図1Aの変形例を示す部分構成図
【図2】図1Aのより具体的な構成図
【図3】この発明の第2の実施の形態を示す部分構成図
【図4A】図1A,1Bや図2の場合の充電動作説明図
【図4B】図3の場合の充電動作説明図
【図5】直列接続電池の充放電動作を示す回路構成図
【図6】図5の充放電動作説明図
【図7A】図1A,1B,2に対応の応用例を示す詳細構成図
【図7B】図1Bに対応の応用例を示す詳細構成図
【図8】電池の充放電動作を説明するための説明図
【図9】電池の内部抵抗変化例を説明する説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1Aはこの発明の第1の実施の形態を示す構成図である。
同図において、B1〜B10は電池、12(SWL),17(SWG),SWP,SWN,SWPS,SWNSはスイッチ、13(L)は負荷、14(G)は発電機、23(CH)はチョッパを示す。
これは、各電池B1〜B10をチョッパ23を介して充電する例で、この場合は発電機14の出力電圧Gをチョッパ23により(1/直列電池接続数n)にし、接続点PS/NSを各電池に接続して充電を行なう。スイッチSWPS,SWNSとしては機械式接点スイッチでも良く、図1(b)に示す半導体スイッチ、または同(c)示す双方向半導体スイッチを用いても良い。なお、図1Bは図1Aからチョッパを省略しただけのものなので、以下では実質的に同じものとして扱うこととする。
【0017】
各電池の充放電動作状態の監視・管理は、図示されない電圧検出器で検出した電池電圧VB1〜VB10を、図示されない電池充放電&状態監視制御装置により取り込み、これを基に電池内部抵抗や起電圧を求め、これを規定値と比較するなどして行なわれる。その結果、例えば図8で、電池B3,B6,B9が規定値を超えたばらつき電池と判定したときは、これらの電池を選択し、発電機14またはチョッパ23の出力電圧を、スイッチSWPS−PS,SWNS−NSを介してB3電池へ印加して充電を行ない、B3電池の充電が完了したらB6電池へ切り換えて充電を行ない、その充電が完了したらB9電池へと切り換え、その充電が完了したら充電(補充電)を完了するようにして、ばらつきを是正することができる。
【0018】
図2は図1Aで双方向半導体スイッチを用いた例である。この双方向半導体スイッチは、
例えば特許第4333659号公報に示されている。
この回路で、例えば電池B1を充電する場合、双方向半導体スイッチSWB1のP側Q1,N側Q1をオンすると、電源PからダイオードD13⇒P側Q1⇒ダイオードD12⇒電池B1⇒ダイオードD1⇒N側Q1⇒ダイオードD14⇒電源Nへと充電電流が流れる。この回路では、同時には1個のみの充電を行なうものとする。これは、電池2個の双方向半導体スイッチを同時ONすると、2電池間で短絡が生じるからである。
【0019】
したがって、ここでの補充電は1個のみとし、その補充電が完了したら次の電池の補充電を完了させる、という具合に順次切り換えて補充電を行なう。この場合の、充電動作を図4Aに示す。
同図(a),(b)は定電圧充電動作を示し、発電機出力電圧VGをチョッパで調整してVBとした後、各電池に印加して充電する。図4Aの時刻t1でSWB3をオンしてB3電池の定電圧充電を開始し、充電電流IB3が予め設定したIBEに至ればSWB3をオフし、次にSWB6をオンしてB6電池の定電圧充電を開始し、充電電流IB6が予め設定したIBEに至ればSWB6をオフし、その後SWB9をオンしてB9電池の定電圧充電を開始し、充電電流IB9が予め設定したIBEに至ればSWB9をオフして、1群の電池の個別充電を完了する。
【0020】
図4A(c),(d)は定電流充電動作を示し、発電機出力電流IGをチョッパで調整した後各電池に印加して充電する。時刻t1でSWB3をオンしてB3電池の定電流充電を開始し、電池電圧VB3が予め設定したVBEに至ればSWB3をオフし、次にSWB6をオンしてB6電池の定電流充電を開始し、電池電圧VB6が予め設定したVBEに至ればSWB6をオフし、その後SWB9をオンしてB6電池の定電流充電を開始し、電池電圧VB9が予め設定したVBEに至ればSWB9をオフして全電池の個別充電を完了する。
このような補充電により、図8でばらつきが大きい電池B3,B6,B9の起電圧レベル−4⇒レベル−2になるようにする例を、充電動作2として図8(d)に示している。
【0021】
次に、各電池の特性状態の監視・管理方法について説明する。ここでは、充電時と放電時で同じ値の電流を流して各電池の端子電圧を検出する。
放電時には、スイッチSWGをオフして発電機14を切り離し、チョッパ23を停止させる一方、スイッチSWLをオンし、選択すべき電池のスイッチSWBをオンにし、充電電流と同値の放電電流(負荷13で調整)を流し、電池の端子電圧を計測する。充放電時の電池端子電圧は、先の(1),(2)式のように表わされる。
放電時:VBd=eB−IB×RB…(1)
充電時:VBc=eB+IB×RB…(2)
【0022】
上記(1),(2)式より、充電時の起電圧eBは端子電圧VBcより電圧降下分だけ低い電圧であり、放電時の起電圧eBは端子電圧VBdより電圧降下分だけ高い電圧になる。従って、充電時と放電時でほぼ同値の電流を流したときの端子電圧VBc,VBdから、
電圧差ΔVB=VBd−VBc=2×(IB×RB)…(3)
内部抵抗値RB=(ΔVB÷IB)÷2 …(4)
起電圧eB=VB−IB×RB …(5)
以上より、充放電動作における各電池の端子電圧から内部抵抗および起電圧が算出できるから、これを用いて各電池の特性を監視・管理することが可能となる。
【0023】
図3に、図1A,1Bや図2とは異なる例を示す。これは、図2に示すものに対し、各電池間にスイッチDS1〜DS10を挿入して、充電を行なうものである。この回路では短絡回路が形成されないから、選択した複数個の電池を並列状態にして、同時に補充電を行なうことができる。例えば、スイッチSWB3,SWB6,SWB9を同時にオンして補充電が可能となる。
【0024】
図3の場合の充電動作を図4Bに示す。図4B(a),(b)は定電圧充電動作を示し、チョッパを定電圧制御してその出力電圧VBCHで各電池を充電する。
図4Bのt1時点において、スイッチSWB3,SWB6,SWB9を同時にオンして定電圧充電を開始する。そして、各電池の充電電流が予め設定したIBEに達したら、対応する電池のスイッチをオフして充電を完了させる。例えば、B3電池がIBEに至ればSWB3をオフし、次にB6電池がIBEに至ればSWB6をオフし、その後B9電池がIBEに至ればSWB9をオフして充電を完了する。
図4B(c),(d)は定電流充電動作を示し、チョッパを定電流制御して各電池を充電する。ここで、3個の電池B3,B6,B9を並列接続した状態で定電流充電を行なうが、この場合はパルス充電方式とするのが好ましい。なぜなら、並列接続される電池の端子電圧は同電位であり、個別電池の充電状態の監視ができないので、先の特許文献1等によりよく知られているパルス充電方式を用いた充電方式が最適である。
【0025】
定電流制御されたチョッパの出力電流を、並列接続の電池B3,B6,B9に供給するとき、t1時点からB3⇒B6⇒B9のように時系列的に各電池を切り換えて定電流制御を行なう。t2時点でB3の電池電圧が予め設定したVBEに至れば、B3のスイッチSWB3をオフして充電を完了させ、t2時点からはB6⇒B9の時系列順に切り換えて定電流充電を行ない、t3時点でB6の電池電圧が予め設定したVBEに至れば、B6のスイッチSWB6をオフして充電を完了させ、t3時点からはB9のみの充電を行ない、t4時点でB9の電池電圧が予め設定したVBEに至れば充電を完了する。
なお、この充電動作におけるチョッパの出力電流値は、個別電池数により変更することとする。また、連続して定電流充電をする場合は、個別電池の充電状態は充電電流によって判定するものとする。
なお、放電動作は図1A,1Bや図2と変わらないので、説明は省略する。
【0026】
図5は、直列接続電池の充放電動作を示す回路図である。これは、図2に示すものに対し、スイッチ3(SWP2)4(SWQ),22(SWT)、電圧検出器7(VD1),8、電流検出器10(SHB)および上述の電池充放電&状態監視制御装置50などを付加した点で相違し、他は同様である。
図5において個別に補充電を行なう場合は、スイッチSWP1とSWN1やSWQはオフ、スイッチSWP2とSWN2はオンとし、スイッチSWTをチョッパ(CH)23側に切り換える。これにより、チョッパ(CH)23の出力電圧VBCHがスイッチ22(SWT)を介して各電池に印加される。
電池充放電&状態監視制御装置50は、充電電流や充電電圧を指示するための制御信号66をチョッパ(CH)23に与え、選択信号をスイッチ5に与えることで、チョッパ出力電圧VBCHを各電池に印加し、各電池の充電を行なう。なお、通常の充放電はスイッチ22(SWT)を通常側とし、スイッチSWP2とSWN2はオフ、スイッチSWP1とSWN1はオンで、スイッチSWQをオン・オフさせて行なう。
【0027】
図5の充放電動作の例を図6に示す。図6(a)は充電動作、同(b)は放電動作を示す。
電池充放電&状態監視制御装置50は、図5の電圧検出器7(VD1)で検出した電圧信号VB1と、電圧検出器検出した電圧信号VBinを受信し、これらの値が予め設定されているVBme(基準値),VBmx(許容最高値),VBmn(許容最低値),VBo(許容超過高),VBu(許容超過低)と比較し、図6(a)で電圧がVBmx〜VBmnの範囲の電池a,b,cは正常、この範囲外の電池d,eおよびfは異常と判定する。ここで、
充電時の動作式は先の(2)式のように、
VBc=eB+IB×RB…(2)
で示され、図6(a)では電池dは起電圧eBが許容値を超過しているとして、過充電状態と判定する。また、電池eは内部抵抗が大きく、起電圧eBが低い電池と判断し、電池fは起電圧eBが異常低下しており、異常電池と判断する。
【0028】
このように、充電動作中に個別電池電圧が許容範囲を超えたとき、例えばdのような電池が検出されたら充電電流または充電電圧を低下させて過充電を抑制する。しかし、過充電状態が改善されないときは、警報を発するとともにスイッチSWP1,SWN1またはSWQをオフさせて充電動作を停止させる。また、eのような電池が検出されたときは、充電電流または充電電圧を増加させる。しかし、電圧状態が改善されないときは、スイッチSWP1,SWN1またはSWQをオフさせて充電動作を停止させる。さらに、fのような電池が検出されたときは異常であるから、警報を発するとともにスイッチSWP1,SWN1またはSWQをオフさせて充電動作を停止させる。
【0029】
次に、図5の放電動作について、図6(b)を参照して説明する。その動作式は、次式のようになる。
VBd=eB−IB×RB…(1)
電池電圧の管理レベルは上記充電の場合と同じく、VBmx〜VBmnの範囲の電池a,b,cは正常、この範囲外の電池d,e,fおよびgは異常レベルとする。この場合、電池dは起電圧eBが許容値を超過して、過負荷放電状態であると判定する。また、電池eは内部抵抗が大きく起電圧eBが低いので、過放電状態であると判定する。fは起電圧eBが異常に低下して電池と判定し、さらにgは起電圧が0状態のため、放電電流による逆充電異常低下電池と判定する。
このように、直列接続電池の放電動作中に個別電池の電圧が許容範囲を超えたときは、放電電流を低下させるか、または警報を発するとともにスイッチSWP1,SWN1またはSWQをオフさせて放電動作を停止させる。
【0030】
電池状態の監視・管理は、直列接続電池の充放電動作においてもこれまでの場合と同様に可能なのは勿論である。
すなわち、充電時と放電時でほぼ同値の電流を流したときの直列接続端子電圧VBc,VBdから、先の(3)〜(5)式と同じく、次式のように表わされる。
電圧差ΔVB=VBd−VBc=2×(IB×ΣRB)…(6)
内部抵抗値RB=(ΔVB÷IB)÷Σ …(7)
起電圧ΣeB=VB−IB×ΣRB …(8)
(Σ:直列接続電池の合計値)
以上より、電池直列接続状態の端子電圧から内部抵抗および起電圧が算出できるから、これを用いて直列接続状態で各電池の特性を監視・管理することが可能となる。
【0031】
図7Aは先の図1A,2および5に対応する応用例図、7Bは図1Bに対応する応用例図で、図7Bはチョッパを持たないほかは図7Aと同じなので、ここでは図7Aを参照して説明する。
図7Aは、モ−タを用いて電気自動車や電気推進船舶などを駆動するシステムへの応用例を想定したもので、モ−タ20(M)の他に、発電機制御装置63などを備えた点が特徴である。また、同図の符号6(SHB1,SHBN),18(SHG)は電流検出器、9(VBD),19(VDG)は電圧検出器、11(SWB),21(SWM)、51(SWC),52(SWS),54(SWP),55(SWS1),64(SWGE)はスイッチ、15は発電機界磁(Gf)、53(SCB)は電池選択器、56(VRV)は電圧設定器、57(VRI)は電流設定器をそれぞれ示す。
【0032】
いま、図7Aでモータ20(M)の動作を停止させると、個別電池の充放電や直列接続電池の充放電は、上述の通りである。ここでは、直列接続した全電池の充放電動作について説明する。
全電池を補充電する場合、個別の充電と同様、スイッチ(SWC)51により「定電圧」,「定電流」または「定出力(定電力)」のいずれかに設定する。そして、スイッチ2(SWP1)オフ、スイッチ(SWN1)オン、スイッチ3(SWP2,SWN2)オフ、スイッチ4(SWQ)オン,オフ状態にし、スイッチ22(SWT)は発電機14(G)側に切り換える。発電機14(G)は、所定の出力電圧(定電圧充電時),出力電流(定電流充電時)または出力電力(定電力充電時)に応じて、正極(P)⇒スイッチ4(SWQ)オン⇒電池1(B11〜B10)⇒スイッチSWN1⇒負極(N)なる経路を介して全電池の充電を行なう。その後、電圧検出器7(VD1)で検出した電池電圧VB1〜VBN、または電流検出器6(SHB1)で検出電流IB1〜IBNが所定値に達したことを、電池充放電&状態監視制御装置50が判定すると、信号60によりスイッチ4(SWQ)をオフして充電を完了する。
【0033】
放電動作については、スイッチ22(SWT)をチョッパ側に切り換えてチョッパ23(CH)を停止し、スイッチ4(SWQ)をオンにして電池電圧を負荷13(L)に放電させ、充電と放電で同値の電流を流したときの電池電圧から電池状態の監視・管理をする点は上記と同様である。
なお、全電池充放電の場合の電圧は電圧検出器8によって検出されるから、全電池および個別電池の動作状態の監視・管理も可能なのは勿論である。
【符号の説明】
【0034】
1(B1〜B10)…電池、2,3,4,5,17,11,12,21,22…スイッチ(SW)、6,10,18…電流検出器(SH)、7,8,9,19…電圧検出器(VD)、13…負荷(L)、14…発電機(G)、15…発電機界磁(Gf)、16…整流器、20(M)…電動機、23…チョッパ(CH)、50…電池充放電&状態監視制御装置、51…充電切替スイッチ(SWC)、52…個別充電スイッチ(SWS)、53…電池選択器(SCB)、54…パルス充電スイッチ(SWP)、55…個別放電スイッチ(SWS1)、56…電圧設定器(VRV)、57…電流設定器(VRI)、58…電池状態表示器、63…発電機制御装置、64…運転スイッチ(SWG)。
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のリチウムイオン電池(以下、単に電池ともいう)を直列接続して構成されるリチウムイオン電池の充放電方式、特にその監視・管理を容易にするための充放電方式に関する。
【背景技術】
【0002】
電池を主電源とする大電力システムでは、多数の単電池を直並列接続して容量の増大を図るのが一般的である。
ところで、直並列接続された多数の電池からなる電池電源を一括して充電すると、各電池の特性ばらつきにより充電量にばらつきが発生し、総充電量が低下するという問題がある。また、この場合、充電量が低下した電池の充電量を増加させるために充電を継続すると、既に満充電になっている電池が過充電になるという問題もある。
【0003】
図8に、10個の電池B1〜B10を直列接続した場合の充放電動作例を示す。同図(a)は放電初期状態、同(b)は放電終止状態、同(c)は充電動作1の状態、同(d)は充電動作2の状態をそれぞれ示している。
ここで、放電初期状態は新品時または満充電時を想定している。放電動作は次式のように表わすことができる
VBd=eB−IB×RB…(1)
ここに、VBd:放電時電池端子電圧、eB:電池起電圧、−IB:放電電流、RB:内部抵抗をそれぞれ示す。
【0004】
いま、放電電流−IBが流れると、B1電池電圧VB1は、起電圧eB1=レベル−1、電池内部抵抗による電圧降下IB×RB1=レベル−1、よって電池電圧VB1=レベル−2となる。また、B2電池電圧VB2は、起電圧eB2=レベル−2、電池内部抵抗による電圧降下IB×RB2=レベル−2、よって電池電圧VB2=レベル−4となり、同様にB3電池電圧VB3は、起電圧eB3=レベル−3、電池内部抵抗による電圧降下IB×RB3=レベル−3、よって電池電圧VB3=レベル−6となる。
他の電池B4〜B10も同様で、個別電池の内部抵抗ばらつきによって、電池内部電圧降下値が黒枠で示すように相違する結果、個別電池電圧VB1〜VB10に差が生じることになる。なお、直列電池の両端電圧VBdは、
VBd=VB1+VB2+VB3+VB4+VB5+VB6+VB7+VB8+VB9VB10
である。
【0005】
図9に電池の内部抵抗変化と充電容量(残存量)との関係を示す。
図示のように、残存量多(満充電)では内部抵抗RBは小さく、残存量少(放電終止)では内部抵抗RBは大きくなる傾向にあることが分る。また、内部抵抗RBはサイクル寿命,カレンダー寿命によっても増加する。
図8(b)に示す放電終止状態は、複数回の充放電動作により、各電池の内部抵抗ばらつきが拡大した様子を示している。すなわち、B1電池の電圧降下=レベル−1⇒レベル−4に増加、B2電池の電圧降下=レベル−2⇒レベル−8に増加、B3電池の電圧降下=レベル−3⇒レベル−12に増加しており、特に電池B3,B6,B9の特性ばらつきの多いことが分る。
【0006】
この状態から、10個直列接続電池群を一括充電したときの充電動作1を、図8(c)に示す。
充電動作は次式で示される。
VBc=eB+IB×RB…(2)
ここに、VBc:充電時電池端子電圧、eB:電池起電圧、+IB:充電電流、RB:内部抵抗を示す。
充電電流+IBにより、B1電池の印加電圧VB1=レベル+1、電池内部抵抗による電圧降下IB×RB1=レベル+1⇒レベル−1(黒枠)、よって起電圧eB1=レベル−1となる。また、B2電池の印加電圧VB2=レベル0、電池内部抵抗による電圧降下IB×RB2=レベル0⇒レベル−3(黒枠)、よって起電圧eB2=レベル−3となり、同様にB3電池の印加電圧VB3=レベル−1、電池内部抵抗による電圧降下IB×RB3=レベル−1⇒レベル−5(黒枠)、よって起電圧eB3=レベル−5となる。
【0007】
このように、電池内部抵抗ばらつきの相違により電池内部電圧降下値(黒枠)に差が発生して、各電池の端子電圧VBおよび起電圧eBに差が生じる。つまり、B1電池起電圧=eB1、B2電池起電圧=eB2、B3電池起電圧=eB3…のように、起電圧にばらつきが生じる。なお、このときの直列電池の両端電圧VBcは、
VBc=VB1+VB2+VB3+VB4+VB5+VB6+VB7+VB8+VB9VB10
である。
【0008】
起電圧値は充電量を示すから、B1電池は充電量が多く、B2電池の充電量は中で、B3電池の充電量は少のように、各電池の充電ばらつきが生じ、B1〜B10電池の合計起電圧=合計充電量が低下することになる。
ここで、充電量が少ないB3電池の充電量を増加させるために、充電電圧VBcを上昇させて充電すると、B3電池起電圧eB3レベル−5⇒レベル−1へ4段階電圧が上昇(点線枠表示)するが、B1電池起電圧eB1レベル−1⇒レベル+3、B2電池起電圧eB2レベル−3⇒レベル+1へ上昇するから、B1,B2電池は過充電動作状態になる。このように、直列接続リチウムイオン電池を一括充電すると、個別電池特性ばらつきによって合計容量が低下し、容量低下した電池を追加充電すると、容量低下していない他の電池は過充電となる。
【0009】
ところで、充電ばらつきを是正するための補充電方法として、例えば特許文献1(特許第4148468号公報)に記載のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4148468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1に記載のものは電池が複数個並列接続されるものに対してなされたものであり、電池が複数個直列接続されるものに対してではない。
従って、この発明は複数の個別電池を直列接続した電池電源において、個別電池の特性ばらつきによって生じる充電量の低下を補充電により是正するとともに、個別電池に過充電が発生しないようにすることにある。また、各電池の内部抵抗,起電圧を監視・管理できるようにし、異常が発生したときは充放電動作を停止させるとともに、警報を発せられるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような課題を解決するため、請求項1の発明では、リチウムイオン電池を充放電させるリチウムイオン電池の充放電方式において、
複数のリチウムイオン電池を直列接続した1群のリチウムイオン電池のそれぞれにスイッチング手段を設けるとともに、このスイッチング手段をそれぞれオン・オフさせる制御手段を設け、各リチウムイオン電池を個別に選択して充電または放電動作を可能にしたこと特徴とする。
この請求項1の発明においては、前記群を構成する1つのリチウムイオン電池の充電が完了したら次の未充電のリチウムイオン電池へと順次切り換えて行き、群単位の電池の充電を完了させることができる(請求項2の発明)。
【0013】
上記請求項1または2の発明においては、前記各リチウムイオン電池の直列接続部のそれぞれに別のスイッチング手段を設け、この別のスイッチング手段により各電池の直列接続部を互いに切り離して各電池を並列に接続し、並列に接続された電池を同時に充電可能とし、充電が完了した個別電池から順次切り離して、充電を完了させることができ(請求項3の発明)、請求項1〜3のいずれかの発明においては、充電時と放電時とで同じ電流を流したときの電池電圧から電池内部抵抗,電池起電圧を求め、リチウムイオン電池を個別接続状態または直列接続状態のいずれにおいても、各電池の特性状態の監視・管理を可能にすることができる(請求項4の発明)。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、複数個の個別電池を直列接続した電池電源において、補充電を個別にできる構成とすることで、ばらつきの個別修正を可能とし、直列接続電池の総充電量の低下を抑制する。また、充電と放電とで同値の電流を通電した際の個別電池または直列接続電池群の端子電圧から、電池の内部抵抗,起電圧を算出し、個別接続または直列接続状態のいずれでも電池状態の監視・管理ができるようにする。
さらに、並列接続電池のばらつき修正のための充電方式については、上記特許文献1に示すものがあるので、これとこの発明方式とを併用することで直並列電池の特性ばらつきのための補充電ができ、全電池の総充電量の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】この発明の第1の実施の形態を示す部分構成図
【図1B】図1Aの変形例を示す部分構成図
【図2】図1Aのより具体的な構成図
【図3】この発明の第2の実施の形態を示す部分構成図
【図4A】図1A,1Bや図2の場合の充電動作説明図
【図4B】図3の場合の充電動作説明図
【図5】直列接続電池の充放電動作を示す回路構成図
【図6】図5の充放電動作説明図
【図7A】図1A,1B,2に対応の応用例を示す詳細構成図
【図7B】図1Bに対応の応用例を示す詳細構成図
【図8】電池の充放電動作を説明するための説明図
【図9】電池の内部抵抗変化例を説明する説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1Aはこの発明の第1の実施の形態を示す構成図である。
同図において、B1〜B10は電池、12(SWL),17(SWG),SWP,SWN,SWPS,SWNSはスイッチ、13(L)は負荷、14(G)は発電機、23(CH)はチョッパを示す。
これは、各電池B1〜B10をチョッパ23を介して充電する例で、この場合は発電機14の出力電圧Gをチョッパ23により(1/直列電池接続数n)にし、接続点PS/NSを各電池に接続して充電を行なう。スイッチSWPS,SWNSとしては機械式接点スイッチでも良く、図1(b)に示す半導体スイッチ、または同(c)示す双方向半導体スイッチを用いても良い。なお、図1Bは図1Aからチョッパを省略しただけのものなので、以下では実質的に同じものとして扱うこととする。
【0017】
各電池の充放電動作状態の監視・管理は、図示されない電圧検出器で検出した電池電圧VB1〜VB10を、図示されない電池充放電&状態監視制御装置により取り込み、これを基に電池内部抵抗や起電圧を求め、これを規定値と比較するなどして行なわれる。その結果、例えば図8で、電池B3,B6,B9が規定値を超えたばらつき電池と判定したときは、これらの電池を選択し、発電機14またはチョッパ23の出力電圧を、スイッチSWPS−PS,SWNS−NSを介してB3電池へ印加して充電を行ない、B3電池の充電が完了したらB6電池へ切り換えて充電を行ない、その充電が完了したらB9電池へと切り換え、その充電が完了したら充電(補充電)を完了するようにして、ばらつきを是正することができる。
【0018】
図2は図1Aで双方向半導体スイッチを用いた例である。この双方向半導体スイッチは、
例えば特許第4333659号公報に示されている。
この回路で、例えば電池B1を充電する場合、双方向半導体スイッチSWB1のP側Q1,N側Q1をオンすると、電源PからダイオードD13⇒P側Q1⇒ダイオードD12⇒電池B1⇒ダイオードD1⇒N側Q1⇒ダイオードD14⇒電源Nへと充電電流が流れる。この回路では、同時には1個のみの充電を行なうものとする。これは、電池2個の双方向半導体スイッチを同時ONすると、2電池間で短絡が生じるからである。
【0019】
したがって、ここでの補充電は1個のみとし、その補充電が完了したら次の電池の補充電を完了させる、という具合に順次切り換えて補充電を行なう。この場合の、充電動作を図4Aに示す。
同図(a),(b)は定電圧充電動作を示し、発電機出力電圧VGをチョッパで調整してVBとした後、各電池に印加して充電する。図4Aの時刻t1でSWB3をオンしてB3電池の定電圧充電を開始し、充電電流IB3が予め設定したIBEに至ればSWB3をオフし、次にSWB6をオンしてB6電池の定電圧充電を開始し、充電電流IB6が予め設定したIBEに至ればSWB6をオフし、その後SWB9をオンしてB9電池の定電圧充電を開始し、充電電流IB9が予め設定したIBEに至ればSWB9をオフして、1群の電池の個別充電を完了する。
【0020】
図4A(c),(d)は定電流充電動作を示し、発電機出力電流IGをチョッパで調整した後各電池に印加して充電する。時刻t1でSWB3をオンしてB3電池の定電流充電を開始し、電池電圧VB3が予め設定したVBEに至ればSWB3をオフし、次にSWB6をオンしてB6電池の定電流充電を開始し、電池電圧VB6が予め設定したVBEに至ればSWB6をオフし、その後SWB9をオンしてB6電池の定電流充電を開始し、電池電圧VB9が予め設定したVBEに至ればSWB9をオフして全電池の個別充電を完了する。
このような補充電により、図8でばらつきが大きい電池B3,B6,B9の起電圧レベル−4⇒レベル−2になるようにする例を、充電動作2として図8(d)に示している。
【0021】
次に、各電池の特性状態の監視・管理方法について説明する。ここでは、充電時と放電時で同じ値の電流を流して各電池の端子電圧を検出する。
放電時には、スイッチSWGをオフして発電機14を切り離し、チョッパ23を停止させる一方、スイッチSWLをオンし、選択すべき電池のスイッチSWBをオンにし、充電電流と同値の放電電流(負荷13で調整)を流し、電池の端子電圧を計測する。充放電時の電池端子電圧は、先の(1),(2)式のように表わされる。
放電時:VBd=eB−IB×RB…(1)
充電時:VBc=eB+IB×RB…(2)
【0022】
上記(1),(2)式より、充電時の起電圧eBは端子電圧VBcより電圧降下分だけ低い電圧であり、放電時の起電圧eBは端子電圧VBdより電圧降下分だけ高い電圧になる。従って、充電時と放電時でほぼ同値の電流を流したときの端子電圧VBc,VBdから、
電圧差ΔVB=VBd−VBc=2×(IB×RB)…(3)
内部抵抗値RB=(ΔVB÷IB)÷2 …(4)
起電圧eB=VB−IB×RB …(5)
以上より、充放電動作における各電池の端子電圧から内部抵抗および起電圧が算出できるから、これを用いて各電池の特性を監視・管理することが可能となる。
【0023】
図3に、図1A,1Bや図2とは異なる例を示す。これは、図2に示すものに対し、各電池間にスイッチDS1〜DS10を挿入して、充電を行なうものである。この回路では短絡回路が形成されないから、選択した複数個の電池を並列状態にして、同時に補充電を行なうことができる。例えば、スイッチSWB3,SWB6,SWB9を同時にオンして補充電が可能となる。
【0024】
図3の場合の充電動作を図4Bに示す。図4B(a),(b)は定電圧充電動作を示し、チョッパを定電圧制御してその出力電圧VBCHで各電池を充電する。
図4Bのt1時点において、スイッチSWB3,SWB6,SWB9を同時にオンして定電圧充電を開始する。そして、各電池の充電電流が予め設定したIBEに達したら、対応する電池のスイッチをオフして充電を完了させる。例えば、B3電池がIBEに至ればSWB3をオフし、次にB6電池がIBEに至ればSWB6をオフし、その後B9電池がIBEに至ればSWB9をオフして充電を完了する。
図4B(c),(d)は定電流充電動作を示し、チョッパを定電流制御して各電池を充電する。ここで、3個の電池B3,B6,B9を並列接続した状態で定電流充電を行なうが、この場合はパルス充電方式とするのが好ましい。なぜなら、並列接続される電池の端子電圧は同電位であり、個別電池の充電状態の監視ができないので、先の特許文献1等によりよく知られているパルス充電方式を用いた充電方式が最適である。
【0025】
定電流制御されたチョッパの出力電流を、並列接続の電池B3,B6,B9に供給するとき、t1時点からB3⇒B6⇒B9のように時系列的に各電池を切り換えて定電流制御を行なう。t2時点でB3の電池電圧が予め設定したVBEに至れば、B3のスイッチSWB3をオフして充電を完了させ、t2時点からはB6⇒B9の時系列順に切り換えて定電流充電を行ない、t3時点でB6の電池電圧が予め設定したVBEに至れば、B6のスイッチSWB6をオフして充電を完了させ、t3時点からはB9のみの充電を行ない、t4時点でB9の電池電圧が予め設定したVBEに至れば充電を完了する。
なお、この充電動作におけるチョッパの出力電流値は、個別電池数により変更することとする。また、連続して定電流充電をする場合は、個別電池の充電状態は充電電流によって判定するものとする。
なお、放電動作は図1A,1Bや図2と変わらないので、説明は省略する。
【0026】
図5は、直列接続電池の充放電動作を示す回路図である。これは、図2に示すものに対し、スイッチ3(SWP2)4(SWQ),22(SWT)、電圧検出器7(VD1),8、電流検出器10(SHB)および上述の電池充放電&状態監視制御装置50などを付加した点で相違し、他は同様である。
図5において個別に補充電を行なう場合は、スイッチSWP1とSWN1やSWQはオフ、スイッチSWP2とSWN2はオンとし、スイッチSWTをチョッパ(CH)23側に切り換える。これにより、チョッパ(CH)23の出力電圧VBCHがスイッチ22(SWT)を介して各電池に印加される。
電池充放電&状態監視制御装置50は、充電電流や充電電圧を指示するための制御信号66をチョッパ(CH)23に与え、選択信号をスイッチ5に与えることで、チョッパ出力電圧VBCHを各電池に印加し、各電池の充電を行なう。なお、通常の充放電はスイッチ22(SWT)を通常側とし、スイッチSWP2とSWN2はオフ、スイッチSWP1とSWN1はオンで、スイッチSWQをオン・オフさせて行なう。
【0027】
図5の充放電動作の例を図6に示す。図6(a)は充電動作、同(b)は放電動作を示す。
電池充放電&状態監視制御装置50は、図5の電圧検出器7(VD1)で検出した電圧信号VB1と、電圧検出器検出した電圧信号VBinを受信し、これらの値が予め設定されているVBme(基準値),VBmx(許容最高値),VBmn(許容最低値),VBo(許容超過高),VBu(許容超過低)と比較し、図6(a)で電圧がVBmx〜VBmnの範囲の電池a,b,cは正常、この範囲外の電池d,eおよびfは異常と判定する。ここで、
充電時の動作式は先の(2)式のように、
VBc=eB+IB×RB…(2)
で示され、図6(a)では電池dは起電圧eBが許容値を超過しているとして、過充電状態と判定する。また、電池eは内部抵抗が大きく、起電圧eBが低い電池と判断し、電池fは起電圧eBが異常低下しており、異常電池と判断する。
【0028】
このように、充電動作中に個別電池電圧が許容範囲を超えたとき、例えばdのような電池が検出されたら充電電流または充電電圧を低下させて過充電を抑制する。しかし、過充電状態が改善されないときは、警報を発するとともにスイッチSWP1,SWN1またはSWQをオフさせて充電動作を停止させる。また、eのような電池が検出されたときは、充電電流または充電電圧を増加させる。しかし、電圧状態が改善されないときは、スイッチSWP1,SWN1またはSWQをオフさせて充電動作を停止させる。さらに、fのような電池が検出されたときは異常であるから、警報を発するとともにスイッチSWP1,SWN1またはSWQをオフさせて充電動作を停止させる。
【0029】
次に、図5の放電動作について、図6(b)を参照して説明する。その動作式は、次式のようになる。
VBd=eB−IB×RB…(1)
電池電圧の管理レベルは上記充電の場合と同じく、VBmx〜VBmnの範囲の電池a,b,cは正常、この範囲外の電池d,e,fおよびgは異常レベルとする。この場合、電池dは起電圧eBが許容値を超過して、過負荷放電状態であると判定する。また、電池eは内部抵抗が大きく起電圧eBが低いので、過放電状態であると判定する。fは起電圧eBが異常に低下して電池と判定し、さらにgは起電圧が0状態のため、放電電流による逆充電異常低下電池と判定する。
このように、直列接続電池の放電動作中に個別電池の電圧が許容範囲を超えたときは、放電電流を低下させるか、または警報を発するとともにスイッチSWP1,SWN1またはSWQをオフさせて放電動作を停止させる。
【0030】
電池状態の監視・管理は、直列接続電池の充放電動作においてもこれまでの場合と同様に可能なのは勿論である。
すなわち、充電時と放電時でほぼ同値の電流を流したときの直列接続端子電圧VBc,VBdから、先の(3)〜(5)式と同じく、次式のように表わされる。
電圧差ΔVB=VBd−VBc=2×(IB×ΣRB)…(6)
内部抵抗値RB=(ΔVB÷IB)÷Σ …(7)
起電圧ΣeB=VB−IB×ΣRB …(8)
(Σ:直列接続電池の合計値)
以上より、電池直列接続状態の端子電圧から内部抵抗および起電圧が算出できるから、これを用いて直列接続状態で各電池の特性を監視・管理することが可能となる。
【0031】
図7Aは先の図1A,2および5に対応する応用例図、7Bは図1Bに対応する応用例図で、図7Bはチョッパを持たないほかは図7Aと同じなので、ここでは図7Aを参照して説明する。
図7Aは、モ−タを用いて電気自動車や電気推進船舶などを駆動するシステムへの応用例を想定したもので、モ−タ20(M)の他に、発電機制御装置63などを備えた点が特徴である。また、同図の符号6(SHB1,SHBN),18(SHG)は電流検出器、9(VBD),19(VDG)は電圧検出器、11(SWB),21(SWM)、51(SWC),52(SWS),54(SWP),55(SWS1),64(SWGE)はスイッチ、15は発電機界磁(Gf)、53(SCB)は電池選択器、56(VRV)は電圧設定器、57(VRI)は電流設定器をそれぞれ示す。
【0032】
いま、図7Aでモータ20(M)の動作を停止させると、個別電池の充放電や直列接続電池の充放電は、上述の通りである。ここでは、直列接続した全電池の充放電動作について説明する。
全電池を補充電する場合、個別の充電と同様、スイッチ(SWC)51により「定電圧」,「定電流」または「定出力(定電力)」のいずれかに設定する。そして、スイッチ2(SWP1)オフ、スイッチ(SWN1)オン、スイッチ3(SWP2,SWN2)オフ、スイッチ4(SWQ)オン,オフ状態にし、スイッチ22(SWT)は発電機14(G)側に切り換える。発電機14(G)は、所定の出力電圧(定電圧充電時),出力電流(定電流充電時)または出力電力(定電力充電時)に応じて、正極(P)⇒スイッチ4(SWQ)オン⇒電池1(B11〜B10)⇒スイッチSWN1⇒負極(N)なる経路を介して全電池の充電を行なう。その後、電圧検出器7(VD1)で検出した電池電圧VB1〜VBN、または電流検出器6(SHB1)で検出電流IB1〜IBNが所定値に達したことを、電池充放電&状態監視制御装置50が判定すると、信号60によりスイッチ4(SWQ)をオフして充電を完了する。
【0033】
放電動作については、スイッチ22(SWT)をチョッパ側に切り換えてチョッパ23(CH)を停止し、スイッチ4(SWQ)をオンにして電池電圧を負荷13(L)に放電させ、充電と放電で同値の電流を流したときの電池電圧から電池状態の監視・管理をする点は上記と同様である。
なお、全電池充放電の場合の電圧は電圧検出器8によって検出されるから、全電池および個別電池の動作状態の監視・管理も可能なのは勿論である。
【符号の説明】
【0034】
1(B1〜B10)…電池、2,3,4,5,17,11,12,21,22…スイッチ(SW)、6,10,18…電流検出器(SH)、7,8,9,19…電圧検出器(VD)、13…負荷(L)、14…発電機(G)、15…発電機界磁(Gf)、16…整流器、20(M)…電動機、23…チョッパ(CH)、50…電池充放電&状態監視制御装置、51…充電切替スイッチ(SWC)、52…個別充電スイッチ(SWS)、53…電池選択器(SCB)、54…パルス充電スイッチ(SWP)、55…個別放電スイッチ(SWS1)、56…電圧設定器(VRV)、57…電流設定器(VRI)、58…電池状態表示器、63…発電機制御装置、64…運転スイッチ(SWG)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池を充放電させるリチウムイオン電池の充放電方式において、
複数のリチウムイオン電池を直列接続した1群のリチウムイオン電池のそれぞれにスイッチング手段を設けるとともに、このスイッチング手段をそれぞれオン・オフさせる制御手段を設け、各リチウムイオン電池を個別に選択して充電または放電動作を可能にしたこと特徴とするリチウムイオン電池の充放電方式。
【請求項2】
前記群を構成する1つのリチウムイオン電池の充電が完了したら次の未充電のリチウムイオン電池へと順次切り換えて行き、群単位の電池の充電を完了させることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池の充放電方式。
【請求項3】
前記各リチウムイオン電池の直列接続部のそれぞれに別のスイッチング手段を設け、この別のスイッチング手段により各電池の直列接続部を互いに切り離して各電池を並列に接続し、並列に接続された電池を同時に充電可能とし、充電が完了した個別電池から順次切り離して、充電を完了させることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオン電池の充放電方式。
【請求項4】
充電時と放電時とで同じ電流を流したときの電池電圧から電池内部抵抗,電池起電圧を求め、リチウムイオン電池を個別接続状態または直列接続状態のいずれにおいても、各電池の特性状態の監視・管理を可能にしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のリチウムイオン電池の充放電方式。
【請求項1】
リチウムイオン電池を充放電させるリチウムイオン電池の充放電方式において、
複数のリチウムイオン電池を直列接続した1群のリチウムイオン電池のそれぞれにスイッチング手段を設けるとともに、このスイッチング手段をそれぞれオン・オフさせる制御手段を設け、各リチウムイオン電池を個別に選択して充電または放電動作を可能にしたこと特徴とするリチウムイオン電池の充放電方式。
【請求項2】
前記群を構成する1つのリチウムイオン電池の充電が完了したら次の未充電のリチウムイオン電池へと順次切り換えて行き、群単位の電池の充電を完了させることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池の充放電方式。
【請求項3】
前記各リチウムイオン電池の直列接続部のそれぞれに別のスイッチング手段を設け、この別のスイッチング手段により各電池の直列接続部を互いに切り離して各電池を並列に接続し、並列に接続された電池を同時に充電可能とし、充電が完了した個別電池から順次切り離して、充電を完了させることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオン電池の充放電方式。
【請求項4】
充電時と放電時とで同じ電流を流したときの電池電圧から電池内部抵抗,電池起電圧を求め、リチウムイオン電池を個別接続状態または直列接続状態のいずれにおいても、各電池の特性状態の監視・管理を可能にしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のリチウムイオン電池の充放電方式。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2013−106466(P2013−106466A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249803(P2011−249803)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
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