説明

リチウムイオン電池

【課題】リチウムイオン電池に用いられる電解液の難燃性を向上させるとともに、リチウムイオン電池の寿命特性を改善する。
【解決手段】正極,負極,非水電解液を備えたリチウムイオン電池において、非水電解液にエチレンカーボネートとジメチルカーボネートを特定の量で使用し、かつリン酸トリメチルを添加する。具体的には、非水電解液は60体積%以上の割合でエチレンカーボネート(EC)およびジメチルカーボネート(DMC)を有し、ECとDMCの和に対するDMCの体積比率が0.3〜0.6であり、非水電解液の総重量に対し3〜5重量%のリン酸トリメチル(TMP)を含有するものとする。このような非水電解液は、自己消火性を高める効果を有し、リチウムイオン電池の安全性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池と、それを利用した電源および機器システムに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池に異常な発熱が起こった場合にも、着火しにくいリチウムイオン電池が開発されている。特開平08−022839号公報(特許文献1),特開平08−088023号公報(特許文献2)には、電解液の難燃化を目的として、リン酸トリメチル(TMP;Trimethyl Phosphate)を添加し、電解液の自己消火作用の向上を図ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−022839号公報
【特許文献2】特開平08−088023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
添加物として電解液中に存在するリン酸トリメチル(TMP)は、負極で還元される場合があり、その結果、負極側でLiが酸化された状態となり容量が低下する。本発明は、電解液の難燃性を維持しながら容量の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する本発明の特徴は、TMPの添加量を少なくし、ジメチルカーボネート(DMC;Dimethyl Carbonate)の組成を多くした電解液を用いた電池である。具体的には、正極,負極,非水電解液を備えたリチウムイオン電池であって、非水電解液は60体積%以上の割合でエチレンカーボネート(EC)およびジメチルカーボネート(DMC)を有し、ECとDMCの和に対するDMCの体積比率が0.3〜0.6であり、電解質としてLiPF6を含み、かつ前記非水電解液の総重量に対し3〜5重量%のリン酸トリメチル(TMP)を含有する。
【発明の効果】
【0006】
上記の構成によれば、電解液の難燃性を維持し、高い安全性を備えたリチウムイオン電池において、容量の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】リチウムイオン電池の断面構造を示す。
【図2】電池システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
リチウムイオン電池は、高いエネルギー密度を有し、移動体用(電気自動車用など)や定置用(電力貯蔵用など)の電池システムに用いられる電池として注目されている。特に、電気自動車では、エンジンを搭載しないゼロエミッション電気自動車,エンジンと二次電池の両方を搭載したハイブリッド電気自動車、さらには系統電源から直接充電させるプラグインハイブリッド電気自動車がある。また、電力を貯蔵し、電力系統が遮断された非常時に電力を供給する定置式電力貯蔵システムとしての用途も期待されている。
【0009】
このような多様な用途に対し、リチウムイオン電池に大きな出力が要求されている。すなわち、移動体用電源では起動停止時に0.1時間率以上の出力性能、停電時の電力バックアップや負荷平準化を目的とした定置用途電源においても1時間率から0.2時間率の出力性能が要求されている。ここで、1時間率とはリチウムイオン電池の定格容量を1時間で使い切るときの充電または放電の速度を表す。0.2時間率では1時間率の電流の5倍、0.1時間率ではさらに10倍に相当する大電流にて充電または放電する速度である。
【0010】
リチウムイオン電池の長期間の使用により、電極の性能が低下し、充放電可能なリチウム量(すなわち電気量)が減少する。その状態で、大きな電流を流すと、電極単位面積当たりの電流密度が増加し、負極にリチウム・デンドライトが成長する場合がある。このような現象がさらに進行すると、電池の内部において短絡が起こり、局所的な発熱が起こる場合がある。また、リチウムイオン電池に外力が加わり、圧壊や破断などにより異常な発熱が起こったりする。そのような状態になると、電解液に着火する場合がある。また、電解液が電池から漏えいしたときに、付近に火気があると電解液に着火する可能性がある。
そのため、電解液が着火しにくく、消火作用を有するものが望ましい。上述の特許文献1,2のようにリン酸トリメチルを電解液に添加し、電解液の自己消火作用の向上を目指すほかにも、種々の電解液の燃焼抑制の手段が検討されている(特開2002−343426号公報,特開2005−353579号公報,特開2007−149619号公報,特開2007−220313号公報,特開2009−4357号公報,特開2010−27610号公報など)。
【0011】
本願発明者らは、エチレンカーボネートを用いた電解液の自己消火作用を高め、リチウムイオン電池の安全性を向上させるとともに、電池の容量を長期間維持するため鋭意検討した結果、リチウムイオン電池の難燃化と長寿命化の両方を成立させる手段を見出すに至った。
【0012】
本発明の対象とするリチウムイオン電池は、正極,負極,非水電解液からなる二次電池である。第一の手段は、電解液がエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)を溶媒として含有し、前記溶媒の総量が60体積%以上であり、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの和に対するジメチルカーボネートの体積比率(DMC/EC+DMC)が0.3〜0.6の間にあり、電解質としてLiPF6を含み、前記電解液の総重量に対し3〜5重量%のリン酸トリメチル(TMP)を添加した電解液を用いることである。上記の構成によれば、リン酸トリメチル(TMP)を難燃剤として用い、所定の電解液組成において自己消火性を発現させることが可能となる。特に、Mnを含む正極と黒鉛を含む負極を用いたリチウムイオン電池に上述の電解液を適用すると、安全性に優れ、かつ電池の長寿命化に有効であることを見出した。本発明は、リチウムイオン電池に限らず、非水電解液中を用い、電極へのイオンの吸蔵・放出により、電気エネルギーを貯蔵・利用可能とする電気化学デバイスに適用することが可能である。安全性に優れるため、大型の移動体または定置型の電池システムに好適である。
【0013】
以下、リチウムイオン電池を例として、図面を用いてさらに詳細を説明する。
【0014】
図1は、リチウムイオン電池101の内部構造を模式的に示している。図1のリチウムイオン電池101において、正極107,負極108、および両電極の間に挿入されたセパレータ109からなる電極群を、電池容器102に密閉状態にて収納されている。電池容器102の上部に蓋103があり、その蓋103に正極外部端子104,負極外部端子105,注液口106を有する。電池容器102に電極群を収納した後に、蓋103を電池容器102に被せ、蓋103の外周を溶接して電池容器102と一体にした。
電池容器102への蓋103の取り付けには、溶接の他に、かしめ,接着などの他の方法を採ることができる。
【0015】
電極群の構造は、図1に示した短冊状電極の積層したもの、あるいは円筒状,扁平状などの任意の形状に捲回したものなど、種々の形状にすることができる。電池容器の形状は、電極群の形状に合わせ、円筒型,扁平長円形状,角型などの形状を選択してもよい。
【0016】
電解液の注入方法は、蓋103を電池容器102から取り外して電極群に直接、添加する方法、あるいは蓋103に設置した注液口106から添加する方法がある(図1)。図1に示したリチウムイオン電池の注液口106は、電池容器102の上面に設置している。電極群を電池容器102に収納し密閉した後に、電解質と非水溶媒からなる電解液を注液口106より滴下し、所定量の電解液を充填した後に、注液口106を密封する。注入口106に安全機構を付与することも可能である。その安全機構として、電池容器内部の圧力を解放するための圧力弁を設けても良い。
【0017】
正極107は、正極活物質,導電剤,バインダ,集電体から構成される。その正極活物質は、Mnを含む複合酸化物であることが好ましい。MnはCoと比較してTMPとの反応性が低く、長寿命化に適しているからである。その正極活物質の代表はスピネル結晶構造を有するLiMn24が代表例である。他の正極活物質であっても電解液の自己消火性のメリットは得られ、他に、LiMnO3,LiMn23,LiMnO2,Li4Mn512,LiMn2-xx2(ただし、M=Co,Ni,Fe,Cr,Zn,Ta,x=0.01〜0.2),Li2Mn3MO8(ただし、M=Fe,Co,Ni,Cu,Zn),Li1-xAxMn24(ただし、A=Mg,B,Al,Fe,Co,Ni,Cr,Zn,Ca,x=0.01〜0.1),LiNi1-xMxO2(ただし、M=Co,Fe,Ga,x=0.01〜0.2),LiFeO2,Fe2(SO43,LiCo1-xx2(ただし、M=Ni,Fe,Mn,x=0.01〜0.2),LiNi1-xx2(ただし、M=Mn,Fe,Co,Al,Ga,Ca,Mg,x=0.01〜0.2),LiMnPO4などを列挙することができる。特に、スピネル結晶構造を有するMn酸化物とMnの一部をLiあるいは他の異種元素で置換した酸化物を用いると、難燃性と長寿命化の両立を図ることが可能となる。Mnを含む正極は、酸素との結合力が強く、高温時に酸素を放出しにくいので、TMPの自己消火作用とあいまって、リチウムイオン電池の安全性に貢献するためと考えられる。正極活物質の粒径は、合剤層の厚さ以下であることが好ましい。正極活物質粉末中に合剤層厚さ以上のサイズを有する粗粒がある場合、予めふるい分級,風流分級などにより粗粒を除去し、合剤層厚さ以下の粒子を作製する。
【0018】
また、正極活物質は酸化物系であり電気抵抗が高いので、それらの電気伝導性を補うための導電剤を混合することが好ましい。導電剤としては、例えば、導電性繊維を使用できる。導電性繊維を正極合剤に添加することで、電子ネットワークを形成し、正極のレート特性を向上させることができる。導電性繊維としては、気相成長炭素,カーボンナノチューブ、またはピッチ(石油,石炭,コールタールなどの副生成物)を原料に高温で炭化して製造した繊維,アクリル繊維(Polyacrylonitrile)から製造した炭素繊維などがある。また、正極活物質よりも電気抵抗の低い金属材料であって、正極の充放電電位(通常は2.5〜4.2Vである。)にて酸化溶解しない材料を使用してもよい。例えば、チタン,金等の耐食性金属,SiCやWCなどのカーバイド,Si34,BNなどの窒化物からなるものが挙げられる。これらの導電剤の製造方法としては、溶融法,化学気相成長法など既存の製法を利用することができる。導電性繊維の添加量は、正極活物質の量に対して必要最小限度の量とする。例えば、遷移金属酸化物は比重4〜5g/cm3であり、正極合剤中の重量組成85%に対して導電性炭素繊維は3〜10%であり、特に4〜8%が適している。また、必要に応じて、炭素繊維の補助的な導電剤として、高比表面積の炭素材料、例えばカーボンブラック,活性炭などを添加することができる。このようにすれば、導電性に補助的に作用し、導電性繊維のみのときよりも導電性がさらに向上する。少量の繊維の添加量にて、2つの正極活物質を導電性繊維で連絡させることができるので、少量の導電性繊維によって正極の抵抗を下げることができ、電池のエネルギー密度を下げることなく、大電流の充電または放電が可能となる。残りの成分はバインダとなる。
【0019】
Mnを含む正極活物質,カーボンブラックや炭素繊維などの導電剤,フッ素系バインダやゴム系バインダと、溶媒とを混合して、正極合剤スラリーを調製する。この正極合剤スラリーを、正極集電体に塗布し、乾燥することによって正極107を製造する。正極スラリーの塗布には、ドクターブレード法,ディッピング法,スプレー法などの既知の製法を採ることができ、手段に制限はない。正極スラリーを集電体へ付着させた後、有機溶媒を乾燥し、ロールプレスによって正極を加圧成形することにより、正極を作製することができる。イミド系バインダを用いるときには、窒素等を含む不活性ガス雰囲気中にて300℃以上の高温の熱処理を行い、電極中のバインダを硬化させる。塗布から乾燥までを複数回おこなうことにより、複数の合剤層を集電体に積層化させることも可能である。
【0020】
集電体としては、材質,形状,製造方法などに制限されることなく、任意の集電体を使用することができる。正極集電体には、厚さが10〜100μmの金属箔、厚さが10〜100μm、孔径0.1〜10mmの金属製穿孔箔,エキスパンドメタル,発泡金属板などが用いられる。材質は、アルミニウムが最適であり、ステンレス,チタンなども適用可能である。
【0021】
負極108は、負極活物質,バインダ,集電体からなる。負極活物質としては、リチウムイオンを電気化学的に吸蔵・放出可能な成分であり、黒鉛,易黒鉛化炭素,難黒鉛化炭素等の炭素材料、もしくはこれらの混合負極、または炭素材料に金属または前記合金の混合負極または複合負極が例示される。負極活物質として、黒鉛や非晶質炭素からなる炭素質材料、特にグラフェン構造を有する炭素材料を含むことが好ましい。本発明の電解液を用いると、黒鉛が負極活物質の主成分であっても、TMPの還元分解を効果的に抑制し、電池容量の低下を防止できる。炭素質材料としては、例えば、天然黒鉛,人造黒鉛,メソフェーズ炭素,膨張黒鉛,炭素繊維,気相成長法炭素繊維,ピッチ系炭素質材料,ニードルコークス,石油コークス,ポリアクリロニトリル系炭素繊維などがある。これらの黒鉛材料に、非晶質の炭素、あるいは構造の一部に黒鉛結晶構造を有していない(すなわち黒鉛構造の発達していない)炭素を混合しても良い。非晶質炭素材料としては、カーボンブラックなど、あるいは5員環または6員環の環式炭化水素または環式含酸素有機化合物を熱分解によって合成した非晶質炭素材料がある。他の負極活物質としては、リチウムと合金化するアルミニウム,シリコン,スズなどの金属がある。
【0022】
一般に、使用される負極活物質は粉末である。負極活物質の粒径は、合剤層の厚さ以下にすることが望ましい。負極活物質粉末中に合剤層厚さ以上のサイズを有する粗粒がある場合、予めふるい分級,風流分級などにより粗粒を除去し、合剤層厚さ以下の粒子を使用する。負極合剤では、負極活物質とバインダを混合して、粉末同士を結合させると同時に集電体上へ固定させている。集電体には、材質,形状,製造方法などに制限されることなく、任意の集電体を使用することができる。例えば厚さが10〜100μmの銅箔、厚さが10〜100μm、孔径0.1〜10mmの銅製穿孔箔,エキスパンドメタル,発泡金属板などが用いられ、材質も銅の他に、ステンレス,チタン,ニッケルなども適用可能である。
【0023】
高レート充放電が必要な場合、負極にも正極と同様に、カーボンブラック等の導電剤を添加しても良い。導電剤はリチウムイオンの吸蔵・放出に関与せず、電子の媒体として働くので、負極活物質におけるリチウムイオンの吸蔵・放出反応に影響を与えない。導電剤として上述のものの他、ポリアセン,ポリパラフェニレン,ポリアニリン,ポリアセチレンなどの導電性高分子材料を用いることが可能である。
【0024】
負極活物質,バインダ、および有機溶媒を混合した負極スラリーを、ドクターブレード法,ディッピング法,スプレー法などによって集電体へ付着させた後、有機溶媒を乾燥し、ロールプレスによって負極を加圧成形することにより、負極を作製することができる。
イミド系バインダを用いるときには、窒素等を含む不活性ガス雰囲気中にて300℃以上の高温の熱処理を行い、電極中のバインダを硬化させる。また、塗布から乾燥までを複数回おこなうことにより、多層合剤層を集電体に形成させることも可能である。
【0025】
正極107と負極108の間にセパレータ109を挿入し、正極107と負極108の短絡を防止する。セパレータ109は、電極(正極,負極の末端部)と電池容器102の間にも挿入され、正極107と負極108が電池容器102を通じて短絡しないようにしている。セパレータ109は、電池の充放電時にリチウムイオンを透過させる必要があるため、多孔体である必要がある。一般に細孔径が0.01〜10μm、気孔率が20〜90%であれば、リチウムイオン電池101に使用可能である。セパレータとしては、ポリエチレン,ポリプロピレンなどからなるポリオレフィン系高分子シート、あるいはポリオレフィン系高分子と4フッ化ポリエチレンを代表とするフッ素系高分子シートを溶着させた多層構造のセパレータなどを使用できる。電池温度が高くなったときにセパレータ109が収縮しないように、セパレータ109の表面にセラミックスとバインダの混合物を薄層状に形成しても良い。
【0026】
積層体は、リード線を介して外部端子に電気的に接続されている。正極107は正極リード線110を介して正極外部端子104に接続されている。負極108は負極リード線111を介して負極外部端子105に接続されている。なお、リード線110,111は、ワイヤ状,板状などの任意の形状を採ることができる。電流を流したときにオーム損失を小さくすることのできる構造であり、かつ電解液と反応しない材質であれば、リード線110,111の形状,材質は任意である。また、正極外部端子104または負極外部端子105と、電池容器102の間には絶縁性シール材料112を挿入し、両端子が短絡しないようにしている。絶縁性シール材料112にはフッ素樹脂,熱硬化性樹脂,ガラスハーメチックシールなどから選択することができ、電解液と反応せず、かつ気密性に優れた任意の材質を使用することができる。
【0027】
正極リード線110または負極リード線111の途中、あるいは正極リード線110と正極外部端子104の接続部、または負極リード線111と負極外部端子105の接続部に、正温度係数(PTC;Positive temperature coefficient)抵抗素子を利用した電流遮断機構を設けると、電池内部の温度が高くなったときに、リチウムイオン電池101の充放電を停止させ、電池を保護することが可能となる。なお、リード線110,111は箔状,板状など、任意の形状にすることができる。
【0028】
電池容器102の材質は、アルミニウム,ステンレス鋼,ニッケルメッキ鋼製など、非水電解液に対し耐食性のある材料から選択される。また、電池容器102を正極リード線110または負極リード線111に電気的に接続する場合は、非水電解液と接触している部分において、電池容器の腐食やリチウムイオンとの合金化による材料の変質が起こらないように、リード線の材料を選定する。その後、蓋103を電池容器102に密着させ、電池全体を密閉する。電池を密閉する方法には、溶接,かしめなど公知の技術がある。
【0029】
セパレータ109と各電極107,108の表面および細孔内部には、電解質と非水溶媒からなる電解液が保持されている。本発明の非水電解液は、60体積%以上の割合でエチレンカーボネート(EC)およびジメチルカーボネート(DMC)を有し、ECとDMCの和に対するDMCの体積比率が0.3〜0.6であり、電解質としてLiPF6を含み、かつ前記非水電解液の総重量に対し3〜5重量%のリン酸トリメチル(TMP)を含有する。
【0030】
本発明は、LiPF6を主電解質として、電解液の自己消火性を発現させている。
【0031】
LiPF6は、電解液が着火した際の熱によって分解し、フッ素ラジカルを放出する。
これが燃焼反応を促進する酸素ラジカルを捕捉し、燃焼反応を終了させる作用がある。ただし、LiPF6が主な電解質であれば、LiBF4を添加しても良い。LiBF4の添加量はLiPF6に対して2/8以下であれば、LiPF6のフッ素が燃焼反応を抑制させる作用があり、好適である。大電流を必要とするリチウムイオン電池の場合は、電解液の導電率が高い方が望ましいので、LiBF4の添加量をLiPF6に対して1.5/8.5〜0.5/9.5の範囲に設定することが好ましい。また、電解質には、電池に内蔵される正極あるいは負極上で分解しなければ、他の電解質を用いても良い。例えば、LiClO4,LiCF3SO3,LiCF3CO2,LiAsF6,LiSbF6、あるいはリチウムトリフルオロメタンスルホンイミドで代表されるリチウムのイミド塩などの多種類のリチウム塩がある。ただし、LiPF6の量は、全電解質量に対し80%以上であることが好ましい。
【0032】
エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とを所定の比率で混合することにより、電解液に自己消火性を発現させることができる。ただし、他の環状炭酸エステルを含んでいても良い。エチレンカーボネート(EC)は、誘電率が高く電解質を溶解させるために必須である。ジメチルカーボネート(DMC)はTMPとの熱的分解反応(後述)によって電解液の消火作用を発現させるために必要と、発明者らは考えている。その効果を得るために、溶媒中のDMC濃度を高める必要があり、溶媒中のEC,DMCの割合は合計で60%以上とする。また、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの和に対するジメチルカーボネートの体積比率(DMC/EC+DMC)を0.3から0.6にする。これらの2つの条件をエチレンカーボネートとジメチルカーボネートが満たすことにより、少量のTMPの添加によって十分な自己消火性が得られる。
【0033】
溶媒中のEC,DMCの割合が少なすぎる場合、ECとDMCの和に対するDMCの体積比率が0.3よりも小さすぎる場合には、DMCが相対的に足りなくなって、TMP濃度を低くした場合に自己消火性が得られなくなる。0.6よりも大きすぎると、ジメチルカーボネートが多すぎ、電池の容量が低下するとともに、過剰なDMCの燃焼熱がTMPから生成した水の蒸発熱を上回り、5%よりも多量のTMPが必要となり、電池の容量が低下する。
【0034】
DMCの引火点(17℃)は低い。従って、DMCの体積比率を増大させると、むしろ電解液の自己消火性は悪化すると考えるのが自然である。しかし、発明者らは、以下のような消火メカニズムにより、DMCがTMPと相互に作用し合い、電解液の自己消火性が向上したと考えている。このメカニズムは推定であるが、後述の実施例の結果を十分に説明することができる。
【0035】
DMCの沸点は90℃であり、電解液が着火したときの熱によって蒸発し、火炎中でDMCの蒸気濃度が高まる。火炎中でDMCからメトキシラジカル(CH3O・)が生成し、それがTMPと反応して酸素をTMPへ供給する。その結果、最終的にTMPはリン酸またはリン酸系の被膜になるまで酸化される。リン酸が生成する際には水が生成するので、その水の蒸発熱によって、火炎が消火される。また、リン酸系被膜が電解液の上面に形成されて、電解液の有機成分と酸素の接触を遮断することにより、燃焼反応を抑制する。一方、TMPと反応したメトキシラジカルは、リン原子に結合したメチルと結合してエタンガスを、あるいは、メチルから水素を奪ってメタンガスを生成する。このように考えると、DMCの体積比率の増加によって、電解液の自己消火性が向上することを説明することができる。
【0036】
なお、ECとDMCが上述の条件を満たしている範囲において、他の溶媒を補助的に追加して、低温特性や出力特性を向上させることは可能である。溶媒は、本発明の電池に内蔵される正極あるいは負極上で分解しなければ良く、その例として、プロピレンカーボネート,ブチレンカーボネート,ビニレンカーボネート、γ−ブチロラクトン,ジエチルカーボネート,メチルエチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン,ジメチルスルフォキシド、1,3−ジオキソラン,ホルムアミド,ジメチルホルムアミド,プロピオン酸メチル,プロピオン酸エチル,リン酸トリエステル,トリメトキシメタン,ジオキソラン,ジエチルエーテル,スルホラン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、テトラヒドロフラン、1,2−ジエトキシエタン,クロルエチレンカーボネート,クロルプロピレンカーボネートなどの非水溶媒がある。
【0037】
また、添加物としてビニレンカーボネートまたはスルトンの一方、あるいはその両方を0.1〜2%添加された電解液を用いることが好ましい。正極または負極に安定な被膜を形成し、高温貯蔵性が高まり、電解液の自己消火性に加えて高温に対する電池の機能が付加される。
【0038】
本発明では、電解質にLiPF6を主に用い、かつ所定濃度のTMPを添加し、かつ上述の条件を満足するECとDMCを含んでいる電解液を用いれば、本発明の趣旨を変更しない範囲で、本発明を適用可能である。電解質は、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイドなどのイオン伝導性高分子に含有させた状態で使用することも可能である。この場合は前記セパレータが不要となる。
【0039】
固体高分子電解質(ポリマー電解質)を用いる場合には、エチレンオキシド,アクリロニトリル,ポリフッ化ビニリデン,メタクリル酸メチル,ヘキサフルオロプロピレンのポリエチレンオキサイドなどのイオン導電性ポリマーを電解質に用いることができる。これらの固体高分子電解質を用いた場合、前記セパレータ109を省略することができる利点がある。
【0040】
上記のような構成によれば、自己消火機能が高く、電解液を湿らせた不織布を鉛直方向に設置し、不織布下部に着火させたときの消火時間を3秒以内とする電解液を提供できる。以下の実施例では、さらに本発明の詳細を説明する。なお、実施例については、適宜、具体的な構成材料,部品などを変更しても良い。また、本発明の構成に、公知の技術を追加することも可能である。
【実施例1】
【0041】
本実施例では、正極活物質としてLi1.03Mn1.974、人造黒鉛の負極を用いたリチウムイオン電池を説明する。図1に示した構造で、電解液組成のみ異なるリチウムイオン電池を製作した。なお、正極は上記酸化物87重量%に、黒鉛粉末とカーボンブラックを7重量%相当まで添加し、さらにPVDFを6重量%含んでいる。また、負極は天然黒鉛を92重量%、PVDFを8%含んでいる。
【0042】
電解液は、EC,DMC,EMCを種々の割合で混合した。電解液の溶媒組成は全体の容積に対する体積比(百分率)で、TMPの添加量は電解液の重量に対する重量比(百分率)で調整した。表1に作成した各種の電池(セル)の詳細を示す。表1より明らかな通り、電解質の種類と濃度、難燃剤の有無と添加量,EC組成,DMC組成,EMC組成を変化させている。充電条件は、開回路の状態から電池電圧が4.2Vになるまで1時間率相当の定電流(10A)にて充電し、電池電圧が4.2Vに達した後はその電圧を保持し30分間充電を継続した。その後、充電を停止させ、30分間の休止時間を設けた。次いで、10Aの定電流の放電を開始し、電池電圧が3.0Vに達するまで放電させた。このときの放電容量を電池の初期容量とした。いずれの電池においても10.0±0.1Ahであった。放電が終了した後、30分の休止を行い、続けて充電を再開し、1時間率相当の電流(10A)にて、10サイクルの充放電試験を行ったときの容量(サイクル試験後の放電容量)を測定した。その結果を、表1の右から2列目の欄に記載した。
【0043】
【表1】

【0044】
TMPを添加していないセル1(比較例)は、放電容量が大きく、寿命特性に優れていることがわかった。しかし、セル1の電解液を不織布に湿らせて、ライターで着火試験を行うと、消火までに10〜20秒の長い時間を要し、ほとんど自己消火性を有していないことがわかった。
【0045】
セル2も、寿命特性に優れるが、消火時間が5〜10秒であり、自己消火性が不十分であった。
【0046】
セル3,4(実施例)の寿命特性はセル1と同等であった。また、大電流の放電条件のとき(0.2時間率、電流50A)にセル1やセル2よりも若干、放電容量が高くなる傾向があった(セル1が8.4Ahに対し、セル3と4はそれぞれ8.5Ah,8.6Ah)。これは、TMPを電解液に添加することによって、電解液の粘度が下がり、導電率が約10%増加するためである。さらに、電解液の消火時間を調べた結果、いずれの場合も消火時間が3秒以下であり、十分な自己消火作用を示していた。
【0047】
セル5,6(比較例)は、TMPの添加量が7,10wt%と高いので、消火時間は非常に短く、0〜1秒であったが、放電容量の低下が顕著であった。これはTMPが、黒鉛負極またはMn正極で分解したためと推定される。10サイクルの充放電試験後にセル6の直流抵抗(DCR)を測定した結果、セル2〜4に対し、50〜70%も増大していた。
【0048】
セル7,8(実施例)は、DMCの組成を変更した場合の試験結果である。DMCの一部をEMCに変更すると、いずれのセルの場合も放電容量の低下は小さく、本発明のセル3,4と同等であった。消火時間も3秒以下であった。
【0049】
セル9(実施例)は、ECとDMCの組成を60%とし、残りをEMCとした電解液を用いた例である。この場合の消火時間は2〜4秒とやや長めになったが、平均値は3秒であり、セル3,4に用いた電解液に近い自己消火性を示すことがわかった。すなわち、EMCを用いることにより、若干、自己消火作用が低下したが、目標とする消火時間3秒を満足した。サイクル試験経過後の容量も9.8Ahと高く、寿命の点でもセル3,4と比べて有意差は認められなかった。
【0050】
セル10(比較例)は、ECとDMCを50%、残りをEMCとした例である。ECとDMCの量を50%まで下げてしまうと、消火時間が長くなる傾向が表れ、TMPを8重量%にしないと、消火時間3秒以下を達成することができなくなった。これは、電解液中のDMCの体積比が少なくなり、DMCによるTMP消火作用の促進ができなくなったためと思われる。TMP濃度が増加したため、放電容量が減少した。また、TMP添加量が増加したために、寿命特性が低下した。
【0051】
以上の結果から、ECとDMCの組成を60%以上として、難燃性と寿命の両立を図ることできた。
【0052】
セル9で用いたEMCをジエチルカーボネート(DEC)に変更しても、TMP添加量5%にて消火時間0〜3秒の自己消火作用を確認することができ、セル9と同等の容量を得た。
【実施例2】
【0053】
実施例1のセル9の電解液において、電解質をLiPF6からLiBF4に変更し、寿命特性と自己消火性を評価した。表1のセル9の電解液を用いた場合、電解液の導電率が低下するために、放電容量の低下が顕著であった(セル9−2)。これは導電率の低下により、電極の局部に電流集中が起こり、負極活物質または正極活物質の劣化が促進されたためと推定される。消火時間3秒以下を達成するために必要なTMP添加量を検討したところ、7%となり(セル11)、TMPの分解による容量低下も起こったと考えられる。したがって、LiBF4を高濃度で用いると、寿命と難燃性の観点で本発明のセルよりも悪化することがわかった。
【0054】
そこで、セル11のLiBF4濃度を0.2Mまで減少させ、残部をLiPF6とした電解液を用いたセル12を評価した。その結果、TMP添加量5%で消火時間0〜1秒を達成し、かつ、容量も9.9Ahの高い値を得た。
【0055】
【表2】

【実施例3】
【0056】
本実施例は、電解液に添加物を入れて検討した例である。
【0057】
セル4の電解液に0.5,1.0,1.5,2.0vol%のビニレンカーボネートを添加した4種類の電解液を調整した。これらの電解液の消火時間はいずれも0〜1秒であった。この結果より、本実施例で検討した範囲のビニレンカーボネートは、電解液の自己消火性に影響を与えないことがわかった。
【0058】
次に、セル4の電解液に0.5,1.0,1.5,2.0vol%のスルトンを添加した4種類の電解液を調整した。ここで用いたスルトンは1,3−プロパンスルトンであるが、他の分子構造のものに置き換えても良い。これらの電解液の消火時間はいずれも0〜1秒であった。この結果より、本実施例で検討した範囲のスルトンも、電解液の自己消火性に影響を与えないことがわかった。他の分子構造のスルトンを用いる場合には、正極と負極上での分解量が電池容量を顕著に低下させない程度になるように、スルトンの添加量を最適化する。
【0059】
次に、1vol%のビニレンカーボネートを添加したセル4の電解液を用いた角型リチウムイオン電池(図1)の充放電サイクル試験を行った。その結果、10サイクル経過時の放電容量は、9.5〜9.6Ahと高い値であった。同様に、スルトンを1wt%添加した場合も、100サイクル経過時の容量は9.4〜9.5Ahであった。スルトン添加量とともに放電容量が低下した理由は、負極上でスルトンの還元分解が起こり、不可逆容量が増加したためと考えられる。しかし、スルトンを添加することにより正極の高温保存特性が改善されるので、添加量1〜2%に設定することにより、本発明の効果を損なわずに高温保存特性を向上させることが可能である。充電状態にて60℃、30日間後の放電容量は、スルトンを2%添加することにより放電容量は無添加の場合に対し8.5〜8.7Ahの大きな容量が得られた。
【0060】
【表3】

【実施例4】
【0061】
実施例2のセル4と同一の仕様にて、図1に示す複数の角型リチウムイオン電池を製作した。電池の容量は1時間率放電条件にて10Ahであった。
【0062】
図2に、2個のリチウムイオン電池201a,201bを直列に接続した電池システム(S1)を示す。電池システムの直列数と並列数を変更することが可能であり、電池の直列本数は、要求される出力に応じている。
【0063】
リチウムイオン電池201a,201bの内部の構造は図1と同様である。各リチウムイオン電池201a,201bは、正極207,負極208,セパレータ209からなる同一仕様の電極群を有し、電池蓋203に正極外部端子204,負極外部端子205を設けている。各外部端子と電池容器202の間には絶縁シール部材212を挿入し、外部端子同士が短絡しないようにしている。電池蓋203には、電解液を注入し、かつ、電池内部の圧力が増大したときに開裂する機構を有する注液口206がある。なお、図2では図1の正極リード線110と負極リード線111に相当する部品が省略されている。
【0064】
リチウムイオン電池201aの負極外部端子205は、電力ケーブル213により充放電制御器216の負極入力ターミナルに接続されている。リチウムイオン電池201aの正極外部端子204は、電力ケーブル214を介して、リチウムイオン電池201bの負極外部端子205に連結されている。リチウムイオン電池201bの正極外部端子204は、電力ケーブル215により充放電制御器216の正極入力ターミナルに接続されている。このような配線構成によって、2個のリチウムイオン電池201a,201bを充電または放電させることができる。
【0065】
充放電制御器216は、電力ケーブル217,218を介して、外部に設置した機器(以下では外部機器と称する。)219との間で電力の授受を行う。外部機器219は、充放電制御器216に給電するための外部電源や回生モータ等の各種電気機器、ならびに本システムが電力を供給するインバータ,コンバータおよび負荷が含まれている。外部機器が対応する交流,直流の種類に応じて、インバータ等を設ければ良い。これらの機器類は、公知のものを任意に適用することができる。
【0066】
また、再生可能エネルギーを生み出す機器として風力発電機の動作条件を模擬した発電装置222を設置し、電力ケーブル220,221を介して充放電制御器216に接続した。発電装置222が発電するときには、充放電制御器216が充電モードに移行し、外部機器219に給電するとともに、余剰電力をリチウムイオン電池212aと212bに充電する。また、風力発電機を模擬した発電量が外部機器219の要求電力よりも少ないときには、リチウムイオン電池212aと212bを放電させるように充放電制御器216が動作する。なお、発電装置222は他の発電装置、すなわち太陽電池,地熱発電装置,燃料電池,ガスタービン発電機などの任意の装置に置換することができる。充放電制御器216は上述の動作をするように自動運転可能なプログラムを記憶させておく。
【0067】
(電池システムの運転方法について)
外部機器219は充電時に電力を供給し、放電時に電力を消費させた。リチウムイオン電池201a,201bを定格容量が得られる通常の充電を行う。例えば、1時間率の充電電流にて、4.1Vあるいは4.2Vの定電圧充電を0.5時間、実行することができる。充電条件は、リチウムイオン電池の材料の種類,使用量などの設計で決まるので、電池の仕様ごとに最適な条件とする。
【0068】
リチウムイオン電池201a,201bを充電した後には、充放電制御器216を放電モードに切り替えて、各電池を放電させる。通常は、一定の下限電圧に到達したときに放電を停止させる。本実施例では、5時間率放電まで実施し、1時間率放電時の容量に対して90%の高い容量を得た。また、風力発電機を模擬した発電装置222が発電中には、3時間率の充電を行うことができた。
【0069】
なお、上記の実施例について、各構成要素を公知の技術で置き換えることも可能である。例えば、発電装置は、太陽光,地熱,波動エネルギーなどの任意の再生可能なエネルギー発電システムに置き換えることができる。また、外部機器219は電気モータなどの駆動装置に置き換えると、電気自動車,ハイブリッド電気自動車,プラグインハイブリッド電気自動車,電動式建設機械,運搬機器,建設機械,介護機器,軽車両,電動工具,ゲーム機,映像機,テレビ,掃除機,ロボット,携帯端末情報機器,離島の電力貯蔵システム,宇宙ステーション用電源などに利用することも可能である。
【0070】
このような電池システムによれば、リチウムイオン電池の電解液に自己消火作用を発現させ、かつ、寿命を改善させることが可能となる。
【符号の説明】
【0071】
101,201b リチウムイオン電池
102,202 電池容器
103 蓋
104,204 正極外部端子
105,205 負極外部端子
106,206 注液口
107,207 正極
108,208 負極
109,209 セパレータ
110 正極リード線
111 負極リード線
112,212 絶縁性シール材料
203 電池蓋
213,214,215,217,218,220,221 電力ケーブル
216 充放電制御器
219 外部機器
222 再生可能なエネルギーの発電装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極,負極,非水電解液を備えたリチウムイオン電池において、
前記非水電解液は60体積%以上の割合でエチレンカーボネート(EC)およびジメチルカーボネート(DMC)を有し、
前記エチレンカーボネートと前記ジメチルカーボネートの和に対するジメチルカーボネートの体積比率が0.3〜0.6であり、
前記非水電解液は、電解質としてLiPF6を含み、
前記非水電解液の総重量に対し3〜5重量%のリン酸トリメチル(TMP)を含有することを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項2】
請求項1に記載されたリチウムイオン電池において、
前記非水電解液はエチルメチルカーボネートを含むことを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項3】
請求項1に記載されたリチウムイオン電池において、
前記非水電解液は、電解質としてLiPF6及びLiBF4を含み、前記LiBF4の含有量がLiPF6の2/8以下であることを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項4】
請求項1に記載されたリチウムイオン電池において、
前記非水電解液はビニレンカーボネートまたはスルトンの少なくともいずれかを含み、 前記ビニレンカーボネート及びスルトンの添加量が、非水電解液の重量に対し、0.1〜2重量%であることを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項5】
請求項1に記載されたリチウムイオン電池において、
電解液を湿らせた不織布を鉛直方向に設置し、不織布下部に着火させたときの消火時間が3秒以内であることを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載されたリチウムイオン電池を搭載した電池システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−79604(P2012−79604A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225314(P2010−225314)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000001203)新神戸電機株式会社 (518)
【Fターム(参考)】