説明

リチウム二次電池用正極材料、その製造方法及び二次電池

【課題】 従来の3V級の二次電池用に利用されている二酸化マンガンを主成分とする正極材料の充填性及び充放電特性を改善する。
【解決手段】 リチウム二次電池用正極材料を、リチウムマンガン化合物3.5〜10部(質量比、以下同様)と電解二酸化マンガン90〜96.5部との混合焼成生成物であって、該混合焼成生成物におけるマンガンの平均価数が3.90〜4.00であり、BET比表面積が9〜12m/g、かつ、そのタップ密度が2.3g/cm以上であるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用正極材料、その製造方法及びそれを用いたリチウム二次電池に係り、特に、携帯電子機器のメモリバックアップ用に用いられる3V級二次電池用のリチウム二次電池用正極材料、その製造方法及びそれを用いたリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、ニッケル水素電池に比べて起電力が約3倍高く、エネルギー密度が大きく、軽量化できるので携帯電話等の携帯用電子機器のメモリバックアップ電源として多く用いられている。このようなリチウム二次電池の正極材料(活物質)として、二酸化マンガン(MnO)が資源的に豊富でありかつ、安価であるという理由で注目されている。
【0003】
しかしながら、二酸化マンガンは活物質として用いたとき、充放電サイクルによる充放電容量の減少が著しく、寿命が短いという問題がある。その問題の解決のため、例えば、特許文献1には、特定のX線回折パターンを有する二酸化マンガンをリチウム電池用正極活物質として用いることが記載されており、特許文献2には、LiMnOの分布が、二酸化マンガンの粒子内部よりも粒子表面の方で高密度であるLiMnOを含有する二酸化マンガンを3V級の二次電池の正極活物質として用いることが記載されている。また、特許文献3には、粒径5μm以下の粒子から成るLiMnO含有二酸化マンガンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−134851号公報
【特許文献2】特許第2692932号公報
【特許文献3】特開平6−29019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の手段は、高温環境下における電池性能の低下を防止することを目的とするものであるが、特にリチウム二次電池に二酸化マンガンを活物質として用いたときの本質的な問題である充放電サイクルによる充放電容量の減少が著しく、寿命が短いという問題を解決することが達成されているとはいえない。また、特許文献2に記載の手段では、化学合成された二酸化マンガンを使用することに起因して、得られた正極活物質のタップ密度が十分でないという問題がある。一方、特許文献3に記載の手段は、出発原料であるγ型二酸化マンガン(電解二酸化マンガン、EMD)の比表面積を特定し、さらに酸処理するなど多くの工程を要し、コスト高になるおそれがある。また、生成された正極材料の単位質量当たりの充放電容量について記すところがない。
【0006】
本発明は、従来の3V級の二次電池用に利用されている二酸化マンガンを主成分とする正極材料の充填性及び充放電特性を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電解二酸化マンガンを主たる構成物質とし、これをMnの価数が二酸化マンガンと同じくほぼ4のリチウムマンガン化合物によって改質して上記目的を達成するものである。
【0008】
具体的には、本発明のリチウム二次電池用正極材料は、リチウムマンガン化合物3.5〜10部(質量比、以下同様)と電解二酸化マンガン90〜96.5部との混合焼成生成物であって、該混合焼成生成物におけるマンガンの平均価数が3.90〜4.00、BET比表面積が9〜12m/g、かつ、そのタップ密度が2.3g/cm以上であるものである。
【0009】
上記発明において、リチウムマンガン化合物は、LiMnO及びLiMn12のから選んだ1又は2種であることとするのが好適である。
【0010】
上記のリチウム二次電池用正極材料は、Mnの価数が3.85〜4.05のリチウムマンガン化合物3.5〜10部と電解二酸化マンガン90〜96.5部とを混合し、得られた混合物を大気雰囲気中、425〜470℃で焼成することによって製造される。ここにおいて、リチウムマンガン化合物が、LiMnO及びLiMn12から選んだ1又は2種であることが好ましい。
【0011】
本発明のリチウム二次電池用正極材料を利用して製造したリチウム二次電池は、携帯電子機器のメモリバックアップ用に用いられる3V級二次電池用のリチウム二次電池として好適に用いられる。
【発明の効果】
【0012】
本願発明により、二酸化マンガンを主成分とする正極材料の充填性及び充放電特性を改善することができる。また、本発明の正極材料を利用して従来の3V級の二次電池を、スピネル型LiMn12を正極材料に使用したものに比べて大容量のものとすることが可能になる。さらに、本発明によって得られるリチウム二次電池は、その初期放電容量が2回目以降の放電容量に比して高いので、これを利用して事前の充電を行うことなくメモリバックアップ電源として実装し、主電源が入れられるまでのバックアップ電源をして用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】リチウムマンガン化合物/電解二酸化マンガンの混合比が正極材料の放電容量に及ぼす影響を示すグラフである。
【図2】実施例3により得られた焼成温度と充放電特性、比表面積及びタップ密度との関係を示すグラフである。
【図3】実施例3において焼成温度が450℃及び480℃である場合の正極材料のX線回折パターンを示す。
【図4】実施例2で得られた正極材料の充放電サイクル特性図である。
【図5】コイン型リチウム電池による放電特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るリチウム二次電池用正極材料は、電解二酸化マンガン(EMD)とMnの価数が3.85〜4.05のリチウムマンガン化合物とを混合し、得られた混合物を大気雰囲気中、425〜470℃で焼成することによって得られる。
【0015】
本発明では、マンガン源として電解二酸化マンガンを出発材料として用いる。電解二酸化マンガンは化学合成二酸化マンガンに比べて密度が高く、製品である正極材料のタップ密度を2.2〜2.5g/cmとすることが可能になる。なお、電解二酸化マンガンの製造方法は、従来から知られているように、硫酸マンガン及び硫酸溶液からなる電解液を電解して得られるMnO(X=1.93〜2)程度の組成をもつものを利用することができ、その平均粒度が10〜30μm、タップ密度が2.3〜2.5g/cmのものを利用することが好ましい。
【0016】
上記電解二酸化マンガンは、リチウムマンガン化合物と混合焼成することによって改質される。リチウムマンガン化合物としては、LiMnO又はLiMn12などを利用することができる。これらの化合物は二酸化マンガンと同様に、Mnの価数が基本的に4であり、後に行う焼成過程において、電解二酸化マンガンの結晶構造を破壊することなくその表面に付着してリチウムイオンの挿入・離脱に対して、電解二酸化マンガンの結晶構造が破壊されないようにし、サイクル特性を改善することに寄与すると考えられる。
【0017】
本発明では、改質に利用するリチウムマンガン化合物としてMn価数が3.85〜4.05のものを用いるとともに、その電解二酸化マンガンに対する混合比を、リチウムマンガン化合物3.5〜10部(質量比、以下同様)と電解二酸化マンガン90〜96.5部とする。上記組成になるように調整された電解二酸化マンガンとリチウムマンガン化合物の混合組成物は425〜470℃で焼成処理に付される。雰囲気は大気中で十分である。また、焼成時間は、6〜10時間程度とし、電解二酸化マンガンの粒子上にリチウムマンガン化合物が付着するようにする。
【0018】
なお、リチウムマンガン化合物は、LiMnO及びLiMn12から選んだ1又は2種であることが好ましい。また、リチウムマンガン化合物は、理論的なMnの価数が4である化学式としての表記がLiMnO又はLiMn12であるものを用いることができるが、Mnの価数を4より低くとり得ることからも分かるように、純物質である必要はなく、上記Mnの価数を満足する限り、異相としてスピネル型Li1+XMn2−Xを含有していても支障はない。
【0019】
その製造方法としては、特に制限されるものではないが、典型的には、スピネル型リチウムマンガン酸化物、例えば、LiMnと炭酸リチウムとを上記Mnの価数が得られるように精密に混合し、熱処理する一般的な化学合成法に採用することができる。なお、得られたリチウムマンガン化合物は、平均粒度:5〜10μmに調整しておくのが二酸化マンガンの改質を円滑に進める上で好ましい。
【実施例】
【0020】
以下、実施例に基づき、本発明を具体的に説明する。
【0021】
(実施例1)
(正極材料の調整)
スピネル型リチウムマンガン酸化物(組成式Li1.1Mn1.9)を、ジェットミルを用いて平均粒径2.6μmに粉砕し、炭酸リチウム(LiCO)をLi/Mn比が原子比で0.63、0.68、0.71、0.80、1.10、2.0となるように精密混合機を用いて混合し、次いで620℃で8時間保持してMn価数の異なるリチウムマンガン化合物を得た。得られたリチウムマンガン化合物を平均粒径20μmの電解二酸化マンガンとをリチウムマンガン化合物/電解二酸化マンガンの比が8/92となるように精密混合機を用いて混合し、次いで450℃で8時間の焼成処理を行ってリチウム二次電池用正極材料を得た。
【0022】
(正極材料の特性の測定)
得られたリチウム二次電池用正極材料を用い、3極式の開放型試験セルを組み立てて電気化学的測定を行った。測定は、対極及び参照極として金属Liを用い、電流密度10mA/g、電位範囲2.3〜3.5Vの条件で、放電よりスタートさせ、その後、充電と放電を繰返すことによって行った。得られた正極材料のMn価数及び放電容量を実験条件とともに表1に記す。なお、Mn価数とは、例えば正極材料の平均分析値から求めた推定分子式をLiMnとしたときの(2Z−X)/Yをいう。また、電解二酸化マンガン等の平均粒径は、日機装(株)社製のマイクロトラック粒度分析装置(型式:HRA9330-X100)を用い、レーザー回折散乱法により得た累積50%を示す粒子径をいう。また、BET比表面積の測定は、ユアサアイオニクス社製の4−SORBを用い、窒素ガス吸着式によるBET一点法によった。
【0023】
【表1】

【0024】
表1から理解できるように、Mnの価数が3.85未満であるときには、放電容量が劣化するのでリチウムマンガン化合物のMn価数は3.85以上としなければならない。一方、リチウムマンガン化合物のMnの価数は理論的には4を超えるものではないが、分析値のばらつき等を考慮すると4.05まで許容される。
【0025】
(実施例2)
(正極材料の調整)
スピネル型リチウムマンガン酸化物(組成式Li1.1Mn1.9)を、ジェットミルを用いて平均粒径2.6μmに粉砕した。これと炭酸リチウム(LiCO)とをLi/Mn比が原子比で2.0となるように、精密混合機を用いて混合し、次いで620℃で8時間保持して、平均粒径7.6μm、Mn価数が4.03であるリチウムマンガン酸化物としてLiMnOを得た。得られたLiMnOと平均粒径20μmの電解二酸化マンガンとを表2に示す質量比となるように精密混合機を用いて混合し、次いで450℃で8時間の焼成処理を行って正極材料を得た。
【0026】
(正極材料の特性の測定)
得られた正極材料を用い、前記実験1と同様に3極式の開放型試験セルを組み立てて電気化学的測定を行った。表2に正極活物質のMn価数及び充放電試験の10サイクル目の放電容量を示す。
【0027】
【表2】

【0028】
図1は上記実験によって得られたリチウムマンガン化合物/電解二酸化マンガンの混合比が正極材料の放電容量に及ぼす影響を示すグラフである。図1から明らかなように、リチウムマンガン化合物/電解二酸化マンガンの質量比が3.5/96.5未満及び10/90超では、充放電試験における10サイクル目の放電容量が低くなっており(比較例1,2)、また、表1から分かるように、上記混合比が低いときには(比較例1)、得られた製品のMn価数が低い。かかる実験を繰返して、本発明では、電解二酸化マンガンに対するリチウムマンガン化合物の混合比を質量比で90〜96.5部:3.5〜10部とした。
【0029】
表3には、実施例2で得られた正極材料の初期放電容量及び2回目の放電容量が示されており、図4には、2回目以降の充放電サイクル特性図が示されている。表3からわかるように、本発明にかかる正極材料は、初期放電容量がきわめて大きくかつ、その2回目以降の放電容量も125mAh/g以上と高いという特徴がある。したがって、本発明にかかる正極材料として組み込んだ二次電池は、電子機器の基板に実装された後、主電源が投入されるまでの相当の期間、例えば、半年ないし1年に亘って作動させるメモリバックアップ電源として極めて好適である。なお、図4に示すように、第2サイクル目の放電容量が127、132、130mAh/gであり、第15サイクル目でもいずれも110mAh/g以上と十分高く、メモリバックアップ電池の正極材料としても十分使用できることはもちろんである。これに対して、比較例1、2の場合は、第2サイクル目の放電容量がそれぞれ120、122mAh/gであり、また、第15サイクル目の放電容量もそれぞれ103、104mAh/gであり、発明例1〜3の場合に比べて低い。
【0030】
【表3】

【0031】
(実施例3)
(正極活物質の調整)
スピネル型リチウムマンガン酸化物(組成式Li1.1Mn1.9)を、ジェットミルを用いて平均粒径2.6μmに粉砕し、炭酸リチウム(LiCO)をLi/Mn比が原子比で2.0となるように精密混合機を用いて混合し、次いで焼成温度を620℃で8時間保持してリチウムマンガン化合物(LiMnO)を得た。得られたリチウムマンガン化合物を平均粒径20μmの電解二酸化マンガンとをリチウムマンガン化合物/電解二酸化マンガンの比が5/95となるように精密混合機を用いて混合し、次いで330〜500℃の間で焼成温度を変化させて8時間保持してリチウム二次電池用正極材料を得た。
【0032】
(正極材料の特性の測定)
得られた正極材料を用い、前記実施例1、2と同様に3極式の開放型試験セルを組み立てて電気化学的測定等の測定を行った。図2は、得られた正極材料の焼成温度と充放電特性、BET比表面積及びタップ密度との関係を示すグラフである。
【0033】
図2から分かるように、焼成温度が400℃を超えると10サイクル目での放電容量が110mAh/gを超え,同時に比表面積が減少し、また、タップ密度が増大する。その原因は明確ではないが、焼成温度を高くするに従い、電解二酸化マンガンに含まれる結晶水が抜けるため、タップ密度が高めになったと考えられる。構成成分である電解二酸化マンガンの粒子表面に4価のリチウムマンガン化合物粒子が焼結し、充放電に際して電解二酸化マンガンの結晶構造を破壊することなくその表面に付着してリチウムイオンの挿入・離脱に対して、電解二酸化マンガンの結晶構造が破壊されないようにし、サイクル特性を改善することに寄与すると考えられる。また、表面に付着した4価マンガンのリチウムマンガン化合物が酸化反応に対する活性度を低くして充電時の電解液の分解が押えられるためであろうと推定される。焼成温度400℃以下では比表面積の低下が不十分であり、二酸化マンガンを改質させるためには比表面積が12m/g以下となる焼成温度425℃以上が好ましい。一方、焼成温度が470℃を超えると、放電容量が低下し始める。これは、図3に示すように、焼成温度が480℃を超えると電解二酸化マンガンがMnに相変化し始めるからであると推定される。
【0034】
上記実施例1〜3から明らかなように、本発明では、上記のように原料を調整し、所定の割合で混じて所定の温度で焼成することにより、電解二酸化マンガンの改質を行うことにより、その特性値がおおよそ初期放電容量:210〜230mAh/gを有し、マンガンの平均価数:3.90〜4.00、BET比表面積:9〜12m/g、かつ、そのタップ密度:2.3g/cm以上であるリチウム二次電池用正極材料を得ることができ、かかるリチウム二次電池用正極材料は3V級のリチウム二次電池、特に、充電を行うことなくメモリバックアップ電源として実装されるボタン型のリチウム二次電池用の正極材料として特に好適である。
【0035】
なお、上記各実施例では、リチウムマンガン化合物として、二酸化電解マンガンに対してLiMnOの化学式を有するものを添加・焼成したが、リチウムマンガン化合物はLiMn12に置き換えることも可能である。その1例を示すと、スピネル型リチウムマンガン酸化物(組成式Li1.1Mn1.9)を、ジェットミルを用いて平均粒径2.6μmに粉砕し、これと炭酸リチウムとをLi/Mn比が原子比で0.8となるように、精密混合機を用いて混合し、次いで620℃で8時間保持して、平均粒系7.6μm、Mn価数が3.88であるリチウムマンガン酸化物LiMn12を得、得られLiMn12と平均粒径20μmの電解二酸化マンガンとを質量比で8:92となるように精密混合機を用いて混合し、次いで450℃で8時間の焼成を行い、製品とする。
【0036】
(実施例4)
(電池特性)
前記実施例2における発明例2によって得たリチウムマンガン酸化物を活物質、導電材としてアセチレンブラック、結着材としてポリテトラフルオロエチレンを、活物質:導電材:結着材の比を90:6:4(質量比)で混練し、正極合材とした。この合材60mgを圧力300MPaで加圧成形し、200℃で8時間の減圧乾燥を行い、直径10.6mm、厚さ0.3mmの円盤状の正極板を作成した。次に、この正極板を直径15mmのAlメッシュで挟み、その周りをスポット溶接して正極とした。負極には厚さ0.21mmの金属リチウムを約15mm四方に切り抜いたものを使用し、電解液にはエチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比3:7の混合溶媒1Lに溶質LiPFを1モルの割合で溶解して調製したものを使用し、セパレータには多孔質ポリプロピレン膜を使用し、直径20mm、高さ3.2mmのCR2032タイプ(宝泉株式会社製の部品キャップ、ケース、ガスケット、スペーサ、及びウェーブワッシャーを使用)のコイン型リチウム二次電池を作製した。
【0037】
従来例として、従来の3V級リチウムマンガン酸化物としてスピネル型リチウムマンガン酸化物LiMn12を活物質、導電材としてアセチレンブラック、結着材としてポリテトラフルオロエチレンを、活物質:導電材:結着材の比を90:6:4の割合で混練して正極合材とした。この合材50mgを500MPaの圧力により加圧成形し、200℃で8時間の減圧乾燥を行い、実施例5と同様の円盤状の正極板及び正極を作成し、CR2032タイプのコイン型リチウム二次電池を作製した。
【0038】
発明例及び従来例で作製したコイン型リチウム二次電池を、25℃の恒温槽内にて、初回は充電せずに100μAの定電流で2.3Vまで放電させ、次いで、100μAの定電流で電位範囲2.3V〜3.5Vで充電と放電を繰返し行った。放電容量を測定した結果を図5に示す。
【0039】
図5から明らかなように、本発明にしたがうリチウムマンガン酸化物を正極に用いることにより、従来技術であるスピネル型リチウムマンガン酸化物LiMn12を正極に用いた場合よりも、リチウム二次電池の容量を大きくすることが可能であることが確認できた。また、1回目の放電容量、つまり充電せずに使用可能な容量が2回目に以降の容量に比べ格段に大きく、かつ2回目以降の容量も従来技術に比べ十分大きいという特徴を有していた。このことから、本発明によるリチウムマンガン酸化物を正極に用いることにより、メモリバックアップ期間の長い二次電池が実現可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムマンガン化合物3.5〜10部(質量比、以下同様)と電解二酸化マンガン90〜96.5部との混合焼成生成物であって、該混合焼成生成物におけるマンガンの平均価数が3.90〜4.00、BET比表面積が9〜12m/g、かつ、そのタップ密度が2.3g/cm以上であることを特徴とするリチウム二次電池用正極材料。
【請求項2】
リチウムマンガン化合物が、LiMnO及びLiMn12から選んだ1又は2種であることを特徴とする請求項1記載のリチウム二次電池用正極材料。
【請求項3】
Mnの価数が3.85〜4.05のリチウムマンガン化合物3.5〜10部と電解二酸化マンガン90〜96.5部とを混合し、得られた混合物を大気雰囲気中、425〜470℃で焼成することを特徴とするマンガンの平均価数が3.90〜4.00であり、BET比表面積が9〜12m/g、かつ、そのタップ密度が2.3g/cm以上のリチウム二次電池用正極材料の製造方法。
【請求項4】
リチウムマンガン化合物が、LiMnO及びLiMn12から選んだ1又は2種であることを特徴とする請求項3記載のリチウム二次電池用正極材料の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のリチウム二次電池用正極材料を正極活物質とするリチウム二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−212078(P2010−212078A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56724(P2009−56724)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(391021765)日本電工株式会社 (21)
【Fターム(参考)】