説明

リチウム二次電池用負極の製造方法

【課題】初期放電容量、サイクル特性に優れたリチウム二次電池用負極を提供する。
【解決手段】平均一次粒子径が1μm未満の活物質粒子と平均一次粒子径が1μm未満の導電性粒子とを、バインダーが溶解された溶媒中に含有する溶液を準備する。準備した溶液中にバインダーに対する貧溶媒を加え、この貧溶媒を含む溶液を乳化分散処理する。乳化分散処理工程を経た溶液中に、少なくとも一方が導電性基材となる正負一対の電極22を配置し、正負一対の電極間に電位差を与え、活物質粒子、導電性粒子および貧溶媒によって析出したバインダーの複合物を、電気泳動により導電性基材の表面に堆積させる。導電性基材の表面に堆積させた複合物を熱処理する。以上によりリチウム二次電池用負極を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用負極の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車の動力源等として、高エネルギー密度で充放電できるリチウム二次電池が注目を集めている。従来知られるリチウム二次電池としては、負極活物質として黒鉛等の炭素材料を用いたものが広く知られている。リチウム二次電池では、電池充電時に負極活物質中にリチウムイオンが吸蔵され、電池放電時に負極活物質からリチウムイオンが放出される。
【0003】
この種のリチウム二次電池用負極の製造方法としては、例えば、特許文献1に、Si粒子(平均粒子径d50=0.2μm)と炭素質物質とを含む負極材料粉末(平均粒子径d50=14.1μm)に、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンを負極材料重量の10重量%、溶媒としてN−メチルピロリドンを負極材料重量の30重量%加えて混練して調製したスラリーを、銅箔表面に塗布、乾燥して負極を製造する方法が開示されている。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、分散めっき法を用い、圧延銅箔の表面に、炭素を付着させた表面改質シリコン(平均粒子径5μm)を電着して第1の活物質層を形成し、第1の活物質層の表面に、炭素を付着させた上記表面改質シリコン100重量部、バインダーとしてのスチレン−ブタジエン共重合体2重量部、増粘剤1重量部を混合して調製したスラリーを塗布、乾燥、圧延して負極を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−277231号公報
【特許文献2】特開2006−172860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術は以下の点で問題があった。すなわち、Si系の負極活物質を用いたリチウム二次電池は、充放電反応によるリチウムイオンの吸蔵・放出が繰り返されると、負極活物質の体積が大きく膨張・収縮する。そのため、負極活物質が微粉化して集電体としての導電性基材から脱落・剥離し、サイクル特性が悪くなるといった問題がある。
【0007】
この問題に対し、当初から微細な負極活物質を用いることにより、充放電反応による負極活物質のさらなる微粉化を抑制することが考えられる。しかしながら、負極活物質の一次粒子径が1μm以下になると、負極活物質層の抵抗が上昇し、粒子表面の酸化膜の影響で放出しない不可逆容量が増加する。さらに、急激に凝集力が強くなるため、通常のペースト法では、スラリー中に負極活物質を均一に分散させることが難しくなる。それ故、Si系では通常のペースト法を用いて、初期放電容量、サイクル特性に優れた負極を製造することは困難であった。
【0008】
また、導電性基材から負極活物質が脱落・剥離するのを抑制するため、バインダー量を増量することも考えられる。しかしながら、ペースト法では、バインダーを増量すると粘度が高くなり過ぎてペースト化できなくなり、負極の製造自体が困難になり、体積容量密度が低下する。一方、バインダー量を少なくすれば、ペースト化はしやすくなるものの、導電性基材に対する負極活物質の結着力が弱くなり(界面剥離が生じる等)、やはりサイクル特性に優れた負極を得ることは難しい。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、本発明が解決しようとする課題は、初期放電容量、サイクル特性に優れたリチウム二次電池用負極を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係るリチウム二次電池用負極の製造方法は、平均一次粒子径が1μm未満の活物質粒子と平均一次粒子径が1μm未満の導電性粒子とを、バインダーが溶解された溶媒中に含有する溶液を準備する溶液準備工程と、上記準備した溶液中に上記バインダーに対する貧溶媒を加え、この貧溶媒を含む溶液を乳化分散処理する乳化分散処理工程と、上記乳化分散処理工程を経た溶液中に、少なくとも一方が導電性基材となる正負一対の電極を配置し、上記正負一対の電極間に電位差を与え、上記活物質粒子、上記導電性粒子および上記貧溶媒によって析出したバインダーの複合物を、電気泳動により上記導電性基材の表面に堆積させる堆積工程と、上記導電性基材の表面に堆積させた複合物を熱処理する熱処理工程とを有することを要旨とする。
【0011】
ここで、上記溶液準備工程において、上記活物質粒子、上記導電性粒子および上記バインダーに対する上記バインダーの割合が、20〜80質量%の範囲内となるように溶液の配合を行うことが好ましい。上記活物質粒子は、Si系粒子であることが好ましい。上記導電性粒子は、多数の空隙を有することが好ましい。上記導電性基材の表面粗さRaは、1μm以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るリチウム二次電池用負極の製造方法では、平均一次粒子径が1μm未満の活物質粒子と平均一次粒子径が1μm未満の導電性粒子とを、バインダーが溶解された溶媒中に含有する溶液を準備する。次いで、準備した溶液中にバインダーに対する貧溶媒を加え、この貧溶媒を含む溶液を乳化分散処理する。次いで、乳化分散処理工程を経た溶液中に、少なくとも一方が導電性基材となる正負一対の電極を配置し、正負一対の電極間に電位差を与え、活物質粒子、導電性粒子および前記貧溶媒によって析出したバインダーの複合物を、電気泳動により導電性基材の表面に堆積させる。次いで、導電性基材の表面に堆積させた複合物を熱処理する。そのため、ペースト法を用いてリチウム二次電池用負極を製造する場合に比較して、初期放電容量、サイクル特性に優れたリチウム二次電池用負極が得られる。
【0013】
これは、(1)当初から平均一次粒子径が1μm未満と細かな粒径を有する活物質粉末を用いているので、得られるリチウム二次電池用負極は、充放電反応による活物質粒子の微粉化が抑制され、導電性基材から活物質粒子が脱落し難くなること、(2)ペースト法では、塗工性の観点からバインダー量を増量することが難しかったが、電気泳動法を採用したことにより、多くのバインダーを導電性基材へ堆積させることが可能となり、得られるリチウム二次電池用負極は、導電性基材と活物質粒子との密着性が高まって、導電性基材から活物質粒子が脱落し難くなること、(3)活物質粒子や導電性粒子を均一に分散させた状態で、導電性基材表面に堆積させることができること、などの理由によるものと考えられる。
【0014】
ここで、溶液準備工程において、活物質粒子、導電性粒子およびバインダーに対するバインダーの割合が、20〜80質量%の範囲内となるように溶液の配合を行った場合には、初期放電容量、サイクル特性のバランスに優れたリチウム二次電池用負極が得られる。
【0015】
また、上記活物質粒子がSi系粒子である場合には、黒鉛を用いた場合に比較してリチウムイオンを多く吸蔵できる。そのため、得られるリチウム二次電池用負極の高容量化に寄与することができる。
【0016】
また、上記導電助剤が多数の空隙を有する場合には、空隙内にも電解液を保持することが可能となる。そのため、得られるリチウム二次電池用負極のイオン経路増大に寄与することができるものと考えられる。
【0017】
また、上記導電性基材の表面粗さRaが1μm以上である場合には、導電性基材表面にバインダーを堆積させやすくなるとともに、導電性基材に対する密着性向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】溶液準備工程で準備される溶液を模式的に示した図である。
【図2】乳化分散処理工程を模式的に示した図である。
【図3】堆積工程を模式的に示した図である。
【図4】リチウム二次電池用負極の断面を模式的に示した図である。
【図5】実施例1にて作製したSi粉の透過型電子顕微鏡写真(倍率25万倍)である。
【図6】実施例1にて作製したSi粉の透過型電子顕微鏡写真(倍率80万倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池用負極の製造方法(以下、「本製造方法」ということがある。)について詳細に説明する。
【0020】
本製造方法は、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池等のリチウム二次電池における負極を製造する方法であって、溶液準備工程と、乳化分散処理工程と、堆積工程と、熱処理工程とを有している。以下、各工程について詳細に説明する。
【0021】
(1)溶液準備工程
図1は、溶液準備工程で準備される溶液を模式的に示した図である。図1に示すように、溶液準備工程は、バインダーが溶解された溶媒10中に、活物質粒子12と導電性粒子14とを少なくとも含有する溶液16を準備する工程である。
【0022】
活物質粒子は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであって、本製造方法では、金属粒子を好適に用いることができる。金属粒子としては、具体的には、例えば、Si粒子、Si合金粒子等のSi系粒子、Sn粒子、Sn合金粒子等のSn系粒子などを好適なものとして例示することができる。これらは1または2以上併用しても良い。上記Si合金は、Siを主成分とする合金(Sn合金は、Snを主成分とする合金)であって、副成分として1または2以上の元素を含有する。上記副成分元素としては、例えば、B、P、Ga、Al、In、As、S、Mg、Fe、Cr、Co、Ni、Cu、Sn、Ge、Mn等を挙げることができる。本製造方法では、負極の高容量化などの観点から、上記の1または2以上の副成分元素を、好ましくは、1.0質量%以下、より好ましくは、0.5質量%以下含有するSi合金を好適に用いることができる。
【0023】
Si系粒子等の金属粒子は、例えば、噴霧法(ガス、水、遠心等)、超急冷法などの手法を用いて製造することができる。また、これら手法で得られた粒子は、粒子径の調整等のため、ビーズミル、アトライタ、ボールミル等の各種の粉砕装置を用いて、さらに粉砕し、小径化しても良い。
【0024】
導電性粒子は、導電助材として添加されるものである。導電性粒子としては、C元素を含む粒子を好適に用いることができる。具体的には、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、フラーレンなどを例示することができる。これらは1または2以上併用しても良い。これらのうち、好ましくは、電子伝導性を確保しやすいなどの観点から、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどを好適に用いることができる。導電性粒子は、空隙内に電解液を保持しやすくする等の観点から、多数の空隙を有していることが好ましい。
【0025】
ここで、本製造方法において、上述の活物質粒子、導電性粒子は、ともに平均一次粒子径が1μm未満である。
【0026】
活物質粒子、導電性粒子は、平均一次粒子径が1μm未満になると、凝集力が強くなり、一次粒子が凝集した凝集粒子(二次粒子)の形態をとりやすくなる。特に一次粒子が200nm以下になると、凝集した一次粒子を分散させることが難しくなる。そのため、この場合には、凝集粒子のBET値(比表面積)を測定し、測定したBET値から以下の要領で平均一次粒子径を算出する。
【0027】
具体的には、JIS Z8830「気体吸着法による粉体(固体)の比表面積測定方法」により凝集粒子のBET値を測定する。凝集粒子を球形であると仮定し、d:一次粒子径(μm)、ρ:密度(g/cm)、S:BET値(m/g)とすると、d=6/(ρ×S)より一次粒子径を計算することができる。詳細には、同じ試料を用いてS値を3回測定し(n=3)、その平均値Saveより平均一次粒子径dave(=6/(ρ×Save))を算出することができる。
【0028】
活物質粒子の平均一次粒子径の上限は、微粉化抑制効果によるサイクル特性向上等の観点から、好ましくは、250nm以下、より好ましくは、200nm以下、さらに好ましくは、100nm以下であると良い。一方、活物質粒子の平均一次粒子径の下限は、溶液中での均一分散性の向上、後述する電気泳動による粒子移動速度の向上等の観点から、好ましくは、5nm以上、より好ましくは、10nm以上、さらに好ましくは、15nm以上であると良い。
【0029】
導電性粒子の平均一次粒子径の上限は、活物質粒子との接触性向上等の観点から、好ましくは、250nm以下、より好ましくは、200nm以下、さらに好ましくは、100nm以下であると良い。一方、導電性粒子の平均一次粒子径の下限は、溶液中での均一分散性の向上等の観点から、好ましくは、5nm以上、より好ましくは、10nm以上、さらに好ましくは、15nm以上であると良い。
【0030】
バインダーは、活物質粒子や導電性粒子との接着性を有している。具体的には、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、スチレンブタジエンゴム(SBR)などを好適に用いることができる。これらは1種または2種以上併用することができる。これらのうち、好ましくは、電気化学反応における安定性、溶剤への溶解性などの観点から、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)樹脂であると良い。なお、バインダーを溶解させる溶剤は、バインダーの種類に応じて適宜選択すれば良い。例えば、バインダーがポリフッ化ビニリデン(PVdF)樹脂、ポリイミド樹脂等であれば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等を好適に用いることができる。溶剤は、1種または2種以上併用することもできる。
【0031】
準備するバインダーの配合量は、活物質粒子、導電性粒子およびバインダーに対するバインダーの割合((バインダーの質量)/(活物質粒子の質量+導電性粒子の質量+バインダーの質量)×100)が、好ましくは、20〜80質量%、より好ましくは、30〜70質量%、さらに好ましくは、40〜60質量%であると良い。初期放電容量、サイクル特性のバランスに優れたリチウム二次電池用負極が得られるからである。
【0032】
また、活物質粒子、導電性粒子およびバインダーに対する両粒子の割合((活物質粒子の質量+導電性粒子の質量)/(活物質粒子の質量+導電性粒子の質量+バインダーの質量)×100)は、好ましくは、20〜80質量%、より好ましくは、30〜70質量%、さらに好ましくは、40〜60質量%であると良い。初期放電容量、サイクル特性のバランスに優れたリチウム二次電池用負極が得られるからである。
【0033】
この場合、活物質粒子および導電性粒子の質量比は、好ましくは、活物質粒子:導電性粒子=1:4〜4:1、より好ましくは、1:3〜3:1、さらに好ましくは、1:2〜2:1であると良い。導電性粒子が多い方が活物質粒子との導通性を十分に確保しやすくなるからである。
【0034】
なお、溶液準備工程で準備する溶液は、活物質粒子、導電性粒子以外にも、分散剤、界面活性剤、電解質化合物、支持電解質化合物等の各種の添加剤が1種または2種以上添加されていても良い。
【0035】
上述した溶液は、適当な溶剤にバインダーを溶解した溶媒を調製し、この溶媒に、活物質粒子と導電性粒子との混合粉を加えて分散させたり、上記溶媒に、活物質粒子、導電性粒子を別々に添加して分散させたりするなどして調製することができる。好ましくは、前者を採用すると良い。活物質粒子の周囲に導電性粒子を存在させやすくなるので、得られるリチウム二次電池用負極の電子伝導性の発現に有利だからである。なお、混合粉は、湿式、乾式いずれの混合法によって混合しても良い。
【0036】
(乳化分散処理工程)
乳化分散処理工程は、準備した溶液中にバインダーに対する貧溶媒を加え、この貧溶媒を含む溶液を乳化分散処理する工程である。
【0037】
上記貧溶媒は、バインダーの種類に応じて選択される。例えば、バインダーが、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)樹脂、ポリイミド樹脂などである場合には、エタノール、メタノール等のアルコール類、アセトン、MEK(メチルエチルケトン)等のケトン類などを好適に用いることができる。なお、上記貧溶媒は、1種または2種以上併用することができる。
【0038】
加える貧溶媒の量は、溶剤中に溶解しているバインダーを全て析出させる等の観点から、好ましくは、溶剤量を100質量%とすると、50〜500質量%、より好ましくは、200〜400質量%の範囲が好適である。
【0039】
本工程では、準備した溶媒に貧溶媒を加えてから貧溶媒を含む溶液を乳化分散処理しても良いし、準備した溶媒に貧溶媒を加えながら、貧溶媒を含む溶液を乳化分散処理しても良い。前者の場合には、貧溶媒を加えている間もしくは加えた後に必要に応じて撹拌等を行っても良い。好ましくは、析出バインダーの濃度を安定させることができるなどの観点から、前者であると良い。より好ましくは、バインダーを析出させた直後に、溶液を乳化分散処理すると良い。上記乳化分散処理には、市販の乳化分散処理装置を用いることができる。乳化分散処理時の条件としては、具体的には、回転数5,000〜10,000rpm、処理時間10〜30分、処理温度25〜70℃等を例示することができる。
【0040】
図2は、乳化分散処理工程を模式的に示した図である。なお、図2は、準備した溶媒に貧溶媒を加えてから貧溶媒を含む溶液を乳化分散処理する場合を模式的に示したものである。図2(a)に示すように、バインダーが溶解された溶媒10中にバインダーに対する貧溶媒(不図示)を加えると、バインダーの溶解度が下がるため、溶解していたバインダーの析出が生じる。この際、析出バインダー18は、溶媒10中に分散していた活物質粒子12および導電性粒子14を取り込みながら析出すると考えられる。そして、この溶液を乳化分散処理すると、図2(b)に示すように、活物質粒子12、導電性粒子14および析出バインダー18が微小な単位(大きさ)で複合されてなる複合物20が乳化分散されると考えられる。なぜならば、(1)析出バインダー18が、活物質粒子12、導電性粒子14を取り込まずに析出することは困難であること、(2)後述する実施例に裏付けられているように、作製した負極は、導電性基材に析出バインダー18が密着しており、かつ、負極として機能する(つまり、活物質粒子12と導電性粒子14が存在する)からである。
【0041】
(3)堆積工程
堆積工程は、乳化分散処理工程を経た溶液中に、少なくとも一方が導電性基材となる正負一対の電極を配置し、正負一対の電極間に電位差を与え、活物質粒子、導電性粒子および貧溶媒によって析出したバインダーの複合物を、電気泳動により導電性基材の表面に堆積させる工程である。
【0042】
導電性基材は、製造される負極の集電体として機能させるものである。具体的な導電性基材の材質としては、例えば、Cu、Cu合金、Al、Al合金、Ni、Ni合金、Fe、Fe基合金などを例示することができる。好ましくは、Cu、Cu合金であると良い。また、具体的な導電性基材の形態としては、箔状、板状等を例示することができる。好ましくは、箔状であると良い。なお、本工程では、電極として機能できれば、他方の基材の材質は特に限定されるものではない。上記と同じ導電性基材を用いても良いし、異なる導電性基材を用いても良い。
【0043】
上記導電性基材の表面は、JIS B0601(2001)に準拠して測定される表面粗さRaが、好ましくは、1μm以上であると良い。導電性基材表面にバインダーを堆積させやすくなるとともに、導電性基材に対する密着性向上に寄与することができるからである。
【0044】
正負一対の電極間の距離は、好ましくは、5〜50mm、より好ましくは、10〜20mmの範囲内となるように配置すると良い。上記範囲内にあれば、電気泳動に有利だからである。
【0045】
配置した正負一対の電極間に電位差を与える際の電流は、好ましくは、1〜100mA、より好ましくは、1〜30mAの範囲内に設定すると良い。印加電圧を数十V〜数百Vの間で変化させることができ、複合物を均一に電極上に堆積させることができるからである。
【0046】
図3は、堆積工程を模式的に示した図である。図3に示すように、配置した正負一対の電極(正極22a、負極22b)間に負荷24を接続し、電位差を与えると、電気泳動により複合物20が正極に移動する。そして、導電性基材22aの表面に多数の複合物20を堆積(電着)させることができる。
【0047】
なお、上記電気泳動は、1回または2回上繰返し行っても良い。形成する複合膜の膜厚等を考慮して決定することができる。
【0048】
(4)熱処理工程
熱処理工程は、導電性基材の表面に堆積させた複合物を熱処理する工程である。熱処理方法としては、具体的には、例えば、真空乾燥機、不活性ガス雰囲気乾燥機などを用いることができる。熱処理温度は、バインダーの種類によるが、概ね、150〜250℃程度である。熱処理時間も、バインダーの種類によるが、概ね、10〜60分程度である。熱処理雰囲気は、活物質の劣化防止、密着力向上等の観点から、好ましくは、真空中であると良い。
【0049】
以上の工程を経ることにより、ペースト法を用いて負極を製造する場合に比較して、初期放電容量、サイクル特性に優れたリチウム二次電池用負極を得ることができる。
【0050】
図4は、リチウム二次電池用負極の断面を模式的に示した図である。リチウム二次電池用負極50は、導電性基材52と、導電性基材52の表面に積層された複合膜54とを有している。複合膜54は、活物質粒子56と導電性粒子58とバインダー60との複合物62が多数堆積されて形成されている。リチウム二次電池用負極50は、例えば、上述の本製造方法を用いて好適に製造することができる。なお、導電性基材52、活物質粒子56、導電性粒子58の材質、粒子径などは、上述した本製造方法に記載のものと同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0051】
上記リチウム二次電池用負極は、スラリー中に活物質粒子と導電性粒子とを分散させて膜状に形成したものと異なり、活物質粒子と導電性粒子とバインダーとの複合物が導電性基材の表面に多数堆積されて形成されている。具体的には、平均一次粒子径が1μm未満の活物質粒子と、平均一次粒子径が1μm未満の導電性粒子と、バインダーとの複合物が、導電性基材の表面に多数堆積されてなる。そのため、リチウム二次電池の初期放電容量、サイクル特性に優れる。
【0052】
ここで、上記リチウム二次電池用負極において、複合膜中に占めるバインダーの割合は、好ましくは、10〜70質量%、より好ましくは、20〜60質量%、さらに好ましくは、30〜50質量%であると良い。初期放電容量、サイクル特性のバランスに優れるからである。
【0053】
また、複合膜中に占める両粒子(活物質粒子、導電性粒子)の割合は、好ましくは、30〜90質量%、より好ましくは、40〜80質量%、さらに好ましくは、50〜70質量%であると良い。初期放電容量、サイクル特性のバランスに優れるからである。
【0054】
この場合、活物質粒子および導電性粒子の質量比は、好ましくは、活物質粒子:導電性粒子=1:4〜4:1、より好ましくは、1:3〜3:1、さらに好ましくは、1:2〜2:1であると良い。導電性粒子が多い方が活物質粒子との導通性を十分に確保しやすくなるからである。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例を用いてより具体的に説明する。
【0056】
1.リチウム二次電池用負極の作製
(実施例1)
<溶液の準備>
先ず、ガス噴霧法によりSi粗粉を作製した。粒度分布測定装置(日機装(株)製「マイクロトラックMT3000」)を用いて、得られたSi粗粉の平均一次粒子径d50を測定したところ、50μmであった。次いで、得られたSi粗粉をビーズミル(アシザワ・ファインテック製、「LMZ−06」)に入れ、ジルコニアビーズを用いてMEK中にて約1時間湿式粉砕した。次いで、得られたMEKを含むSi粉を、真空乾燥機を用いて真空中80℃で1時間乾燥することによりMEKを除去し、Si粒子(活物質粒子)を得た。図5および図6に、作製したSi粉の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を示す。
【0057】
なお、得られたSi粒子は、ナノサイズであるため凝集力が強く、一次粒子が凝集した二次粒子となっている。そのため、Si粒子のBET値を求め、この値からSi粒子の平均一次粒子径を算出した結果、25nmであった。なお、BET値の測定条件は、脱気温度:250℃、脱気時間:20分、脱気圧力:Nガスフロー、大気圧、吸着ガス:N、キャリアガス:He、ガス混合濃度30.1%である。
【0058】
次いで、上記ビーズミルを用い、上記作製したSi粒子(平均一次粒子径25nm)と市販のケッチェンブラック(KB)粒子(導電性粒子)(平均一次粒子径40nm、ケッチェン・ブラック・インターナショナル(株)製、「ケッチェンブラックEC」)とを質量比で1:1に混合し、混合粉を得た。
【0059】
次に、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF、クレハ(株)製、「KFポリマー」)粉末を、溶媒としてのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に適量(具体的には、後述の表1の配合比になる量)溶解させた。
【0060】
次いで、このPVdFが溶解された溶媒中に、上述の混合粉を適量添加(具体的には、後述の表1の配合比になる量)し、乳化分散装置を用いて30分間撹拌することにより、懸濁液を得た。
【0061】
以上のようにして、PVdFが溶解された溶媒中に、平均一次粒子径が25nmのSi粒子と平均一次粒子径が40nmのKB粒子とが分散された溶液を調製した。なお、調製した溶液におけるSi粒子:KB粒子:バインダーの配合比(質量比)は、10:10:80である。
【0062】
<乳化分散処理>
上記調製した溶液に、PVdFに対する貧溶媒としてエタノールを3倍量加え、このエタノールを含む溶液を、乳化分散装置を用いて、回転速度6,000rpmにて30分間、乳化分散処理した。
【0063】
<電気泳動法による導電性基材への複合物の堆積(電着)>
上記乳化分散処理工程を経た溶液中に、厚み18μmのCu箔を2枚浸漬し、両Cu箔間の距離が10mmとなるように配置し、正負一対の電極とした。なお、JIS B0601(2001)に準拠して測定したCu箔の表面粗さRaは、5.3μmであった。この電極間に1〜50mAの電流を流して電気泳動を行い、Si粒子とKB粒子とエタノールの添加によって析出したPVdFとの複合物を、正極表面に堆積(電着)させた。
【0064】
<熱処理>
上記Cu箔の表面に堆積により形成された複合膜を、真空中にて200℃で1時間熱処理した。上記熱処理により膜は焼き締められた。これにより、実施例1に係るリチウム二次電池用負極を作製した。
【0065】
(実施例2)
実施例1において、Si粒子:KB粒子:バインダーの配合比(質量比)が20:20:60となるように、混合粉の調製、溶液の調製を行った以外は同様にして、実施例2に係るリチウム二次電池用負極を作製した。
【0066】
(実施例3)
実施例1において、Si粒子:KB粒子:バインダーの配合比(質量比)が25:25:50となるように、混合粉の調製、溶液の調製を行った以外は同様にして、実施例3に係るリチウム二次電池用負極を作製した。
【0067】
(実施例4)
実施例1において、Si粒子:KB粒子:バインダーの配合比(質量比)が25:25:50となるように、混合粉の調製、溶液の調製を行った点、表面粗さRaが0.9μmのCu箔を用いた点以外は同様にして、実施例4に係るリチウム二次電池用負極を作製した。
【0068】
(実施例5)
実施例1において、Si粒子:KB粒子:バインダーの配合比(質量比)が30:30:40となるように、混合粉の調製、溶液の調製を行った以外は同様にして、実施例5に係るリチウム二次電池用負極を作製した。
【0069】
(実施例6)
実施例1において、Si粒子:KB粒子:バインダーの配合比(質量比)が40:40:20となるように、混合粉の調製、溶液の調製を行った以外は同様にして、実施例6に係るリチウム二次電池用負極を作製した。
【0070】
(実施例7)
実施例1において、Si粒子:KB粒子:バインダーの配合比(質量比)が40:10:50となるように、混合粉の調製、溶液の調製を行った以外は同様にして、実施例7に係るリチウム二次電池用負極を作製した。
【0071】
(実施例8)
実施例1において、Si粒子:KB粒子:バインダーの配合比(質量比)が10:40:50となるように、混合粉の調製、溶液の調製を行った以外は同様にして、実施例8に係るリチウム二次電池用負極を作製した。
【0072】
(実施例9)
実施例1において、ガス噴霧法によりSi−0.1mass%B粗粉を作製し、これを粉砕して平均一次粒子径54nmのSi−0.1mass%B粒子(活物質粒子)を得て、その後、この粒子を用いて各工程を実施した点、Si−0.1mass%B粒子:KB粒子:バインダーの配合比(質量比)が25:25:50となるように、混合粉の調製、溶液の調製を行った以外は同様にして、実施例9に係るリチウム二次電池用負極を作製した。
【0073】
(比較例1)
先ず、ガス噴霧法、ボールミルにより、粒度分布測定装置(日機装(株)製「マイクロトラックMT3000」)を用いて測定される平均一次粒子径が10μmのSi粒子を作製した。次いで、このSi粒子と市販のアセチレンブラック(AB)粒子(導電性粒子)(平均一次粒子径36nm、デンカ(株)製、「デンカブラック」)とを質量比で17:1)に混合し、混合粉を得た。次いで、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF、クレハ(株)製、「KFポリマー」)粉末を、溶媒としてのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に適量(具体的には、後述の表2の配合比になる量)溶解させた。
【0074】
次いで、このPVdFが溶解された溶媒中に、上述の混合粉を適量添加(具体的には、後述の表2の配合比になる量)し、乳化分散装置を用いて30分間撹拌することにより、スラリーを調製した。調製したスラリーにおけるSi粒子:AB粒子:バインダーの配合比(質量比)は、85:5:10である。
【0075】
次に、厚み18μmのCu箔の表面に、ドクターブレードを用いて上記調製したスラリーを塗工し、乾燥させた後、ロールプレスした。これにより、比較例1に係るリチウム二次電池用負極を作製した。
【0076】
(比較例2)
実施例3で調製した溶液を用い、比較例1と同様にして、厚み18μmのCu箔の表面に、ドクターブレードを用いて上記溶液を塗工し、比較例2に係るリチウム二次電池用負極を作製しようと試みた。しかし、溶液の粘度が高すぎて塗工することができなかった。
【0077】
(比較例3)
実施例1において、平均一次粒子径1μmのSi粒子(活物質粒子)を得て、その後、この粒子を用いて各工程を実施した点、Si粒子:KB粒子:バインダーの配合比(質量比)が25:25:50となるように、混合粉の調製、溶液の調製を行った以外は同様にして、比較例3に係るリチウム二次電池用負極を作製した。
【0078】
(比較例4)
実施例1において、Si粒子:KB粒子:バインダーの配合比(質量比)が25:25:50となるように、混合粉の調製、溶液の調製を行った点、電気泳動により形成された複合膜に対して熱処理を行わなかった以外は同様にして、比較例4に係るリチウム二次電池用負極を作製した。
【0079】
2.評価
2.1 コインセルの作製
【0080】
上記作製したリチウム二次電池用負極から、直径12mmの円板を打ち抜き、試験用負極を作製した。
【0081】
次いで、リチウム金属箔(厚み500μm)を上記試験用負極と略同形に打ち抜き、正極を作製した。また、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比1:1で混合した溶媒中に、LiPFを1.0mol/lの濃度で溶解させ、非水電解液を調製した。
【0082】
次いで、試験用負極と正極との間に、セパレータ(ポリオレフィン系多孔質膜)およびガラスフィルタを挟み込み、これを上記調製した非水電解液に含浸し、2032型のコインセルを作製した。
【0083】
3.2 充放電によるサイクル試験
作製したコインセルを用い、0.2C(5時間で電池容量を充電または放電する)レートで充放電を行うサイクル試験を実施した。初期放電容量は、0.1mA定電流充放電1〜0.002V[vs Li/Li]の条件で、初回の放電容量を0.1Cとして求めた。また、放電容量維持率は、(50サイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量)×100より算出した。
【0084】
3.3 密着性試験
各リチウム二次電池用負極における複合膜の密着性を以下のようにして評価した。すなわち、JIS K5400 6.15に記載の碁盤目付着性試験に準拠して、有効面に2mmの碁盤目100個(20×20)を作り、碁盤目上にセロハン粘着テープ(幅24mm)を完全に付着させ、直ちにテープの一端を塗膜面に直角に保ち、瞬間的に引き離し、はがれないで残った碁盤目の数を調べた。複合膜が全く剥離しなかった場合を「○」、複合膜が一部剥離した場合を「△」、複合膜がほとんど剥離した場合を「×」と評価した。
【0085】
表1、表2に、実施例、比較例に係るリチウム二次電池用負極の製造条件の詳細、得られたリチウム二次電池用負極の評価結果をまとめて示す。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
表1、表2から以下のことが分かる。すなわち、比較例1は、通常のペースト法でリチウム二次電池用負極を作製したものであるが、初期放電容量、放電容量維持率ともに悪い。これは、Si粒子の一次粒子径が大きく比表面積が小さいため、当初はSiがCu箔に密着しているが、Siのリチウムイオンの吸蔵・放出による体積変化により、簡単にCu箔からSiが脱落してしまうからであると考えられる。
【0089】
比較例2は、バインダー量が多すぎて、塗工性に優れた状態にペースト化できなかった。このことからペースト法では、バインダーを増量することが困難であることが分かる。
【0090】
比較例3は、電気泳動法を用いてリチウム二次電池用負極を作製したものであり、バインダ−を多く配合しているため密着力はある。しかしながら、Si粒子の一次粒子径が1μm以上と大きいため、リチウムイオンの吸蔵・放出によるSi粒子の微細化による脱落により放電容量維持率が低い。また、Si粒子の一次粒子径が大きいため、電気泳動し難く、Cu箔表面に均一に付着し難く、初期放電容量も低い。
【0091】
比較例4は、電気泳動によりCu箔表面に複合膜を形成した後、複合膜を熱処理していない。そのため、初期放電容量、放電容量維持率ともに悪い。これは、熱処理なしでは、バインダーが焼き着かないため、Cu箔に複合膜が十分に密着しないためである。また、熱処理によりバインダーが焼き締まると、複合膜の膜厚が圧縮され、Si粒子(活物質粒子)とKB粒子(導電性粒子)との接触が高まり、イオン伝導性と電子伝導性が確保されると推測されるが、比較例4はこのような効果が得られず、初期放電容量も低いものと考えられる。
【0092】
これらに対し、実施例に係るリチウム二次電池用負極は、いずれも初期放電容量、サイクル特性に優れていることが確認できた。
【0093】
実施例1〜6を比較すると、バインダー量が多くなるほど、密着性が向上し、サイクル特性が向上する傾向にあることが分かる。また、Si粒子は多いほど良いが、40質量%を越えると逆に初期放電容量が低下する傾向が見られる。
【0094】
実施例3、7、8を比較すると、Si粒子、KB粒子の配合割合は、Si粒子:KB粒子=1:1程度が最も良く、Si粒子が多過ぎてもKB粒子が多過ぎても初期放電容量は増えないことが分かる。このことから、溶液に配合するSi粒子の割合は、10〜40質量%、溶液に配合するKB粒子の割合は、40〜10質量%であると良いと言える。
【0095】
実施例3、4を比較すると、実施例3は、実施例4と比較して、初期放電容量はほぼ同じであるが、放電容量維持率に優れる。これは、実施例3は、導電性基材であるCu箔の表面粗さRaが1μm以上と粗面化されているため、複合膜の密着性が良く、サイクルを重ねてもCu箔からSi粒子が剥離し難いためである。
【0096】
実施例8は、Si粒子に代えてSi−0.1mass%B粒子を用いている。そのため、初期放電容量が増加する。これは、純Siよりも導電性の高いSi−0.1mass%Bに変更したためである。
【0097】
以上、本発明について説明したが、本発明は、上記実施形態、実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0098】
10 バインダーが溶解された溶媒
12 活物質粒子
14 導電性粒子
16 溶液
18 析出バインダー
20 複合物
22a 正極(導電性基材)
22b 負極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均一次粒子径が1μm未満の活物質粒子と平均一次粒子径が1μm未満の導電性粒子とを、バインダーが溶解された溶媒中に含有する溶液を準備する溶液準備工程と、
前記準備した溶液中に前記バインダーに対する貧溶媒を加え、この貧溶媒を含む溶液を乳化分散処理する乳化分散処理工程と、
前記乳化分散処理工程を経た溶液中に、少なくとも一方が導電性基材となる正負一対の電極を配置し、前記正負一対の電極間に電位差を与え、前記活物質粒子、前記導電性粒子および前記貧溶媒によって析出したバインダーの複合物を、電気泳動により前記導電性基材の表面に堆積させる堆積工程と、
前記導電性基材の表面に堆積させた複合物を熱処理する熱処理工程と、
を有するリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項2】
前記溶液準備工程において、前記活物質粒子、前記導電性粒子および前記バインダーに対する前記バインダーの割合が、20〜80質量%の範囲内となるように溶液の配合を行うことを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項3】
前記活物質粒子は、Si系粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項4】
前記導電性粒子は、多数の空隙を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項5】
前記導電性基材の表面粗さRaが1μm以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−238354(P2011−238354A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106102(P2010−106102)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【Fターム(参考)】