説明

リチウム鉄リン酸塩を調製するため鉄源を調製する方法、およびリチウム鉄リン酸塩を調製する方法

リチウム鉄リン酸塩を調製するために使用される鉄源を調製する方法は、鉄塩および可溶性非鉄金属塩を含む溶液の第1の液体流を、シュウ酸塩溶液の第2の液体流と接触させるステップと、生成物を回収するステップと、を有する。前記第1および第2の液体流の流速は、混合の結果生じるスラリーのpHが3−6になるようにされる。前記可溶性非鉄金属塩は、IIA、IIIA、IVA、IB、IIB、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB、およびVIII族の非鉄金属の塩から選定された1または2以上の可溶性塩である。本発明の方法により調製された鉄源(シュウ酸第1鉄)は、規則的な粒子形状、小さな粒子サイズ、および均一な粒子サイズ分布を有する。従って、前記鉄源から調製されたリチウム鉄リン酸塩は、微細で均一に分布された粒子サイズ、均一な炭素分布、および優れた電気化学的特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、リチウムイオン二次電池のアノード活物質としてリチウム鉄リン酸塩を調製するため、鉄源を調製する方法、およびリチウム鉄リン酸塩を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオンバッテリは、高い電圧、高いエネルギー密度、軽量性、高い信頼性、低自己放電性、長寿命性、および非メモリ効果性の利点を有し、携帯用電子機器および電気自動車等の分野で広く使用されている。現在、市販のリチウムバッテリアノード用の最も好適なアノード活物質は、LiCoO(コバルト酸リチウム)である。しかしながら、コバルト化合物は、高価で毒性があるため、低コスト、豊富な資源量、および非毒性の利点を有する、鉄化合物に関して、次第に注目が集まるようになってきている。規則橄欖石型LiFePO(リチウム鉄リン酸塩)は、3.4V(Li/Li基準)の電圧を発生させることができ、LiFePOの充電−放電反応は、LiFePO相とFePO相の間で生じ、これは、小さな格子体積変化を伴い、安定な構造が得られる。LiFePOがFePO(鉄リン酸塩)に酸化されると、その体積は、6.81%だけ減少する。ここで、充電過程での体積収縮は、炭素カソードの膨脹と相殺され、これは、リチウムイオンバッテリの体積利用率の改善に有益である。
【0003】
リチウム鉄リン酸塩を調製する従来技術では、使用される鉄源は、通常、シュウ酸第1鉄である。利用可能なシュウ酸第1鉄の粒子は、大きな粒子サイズ(D50は、約8−10ミクロン)を有し、広い粒子サイズ分布を有するため、シュウ酸第1鉄粒子が予備粉砕されなければ、生成されるリチウム鉄リン酸塩は、大きな粒子サイズを有する。また、利用可能なシュウ酸第1鉄を予備粉砕処理した後であっても、その後、これをリチウム化合物およびリン酸化合物と焼結させた場合、生成されるリチウム鉄リン酸塩の粒子サイズを制御することは容易ではなく、生成されるリチウム鉄リン酸塩は、不均一な粒子サイズ分布を有し、不規則な粒子形状を有するようになる。リチウム鉄リン酸塩自身の低導電性のため、大きな粒子サイズ、不均一な粒子サイズ分布、および不規則な粒子形状は、リチウム鉄リン酸塩の特性を十分に活用する際の障害となっている。
【0004】
「シュウ酸第1鉄の組成に及ぼす反応時間の影響」(SUN,Yue,QIAO,Qingdong,Journal of Liaoning University of Petroleum&Chemical Technology,第25巻,第4号)という文献には、シュウ酸第1鉄を調製する方法が示されており、この方法は、シュウ酸第1鉄の粒子を得るために、18gの硫酸鉄アルミニウムと90mLの蒸溜水とを混合し、2mol/Lの濃度の硫酸を6mL加えて、溶液を酸性にし、加熱溶解し、1mol/Lのシュウ酸溶液を120mL加えて、溶液を加熱沸騰させ、継続的に撹拌して、黄色析出物を分離し、撹拌を止めて、上澄みを除去し、洗浄し、乾燥する。
【0005】
中国特許公開第CN1948259A号には、特にリチウム鉄(第1鉄)リン酸塩に使用されるシュウ酸第1鉄を調製する方法が示されている。この方法は、原材料として硫酸鉄とシュウ酸を使用し、合成し、分離し、洗浄し、乾燥するステップを有し、この方法は、シュウ酸第1鉄の粒子を得るために、硫酸鉄を前処理し、シュウ酸アンモニウムと混合することに特徴がある。前記前処理は、硫酸鉄を水洗するステップ、溶液のpHを3−4に調節するステップ、および/または0.5−3wt%のインヒビターを加えるステップを有する。ここで、インヒビターは、多糖類、グルコース、サッカロース、およびポリオールから選定された1または2以上である。前記合成ステップは、65−95℃で、シュウ酸およびシュウ酸アンモニウムの混合溶液と硫酸鉄溶液を撹拌しながら10−20分間反応させ、2−4時間静置させるステップを有する。混合溶液中のシュウ酸アンモニウムとシュウ酸のモル比は、3:7−8:2である。
【0006】
前述の方法は、生成するシュウ酸第1鉄の鉄源の粒子サイズおよび粒子サイズ分布を効果的に制御することができない。従って、前述のように、このシュウ酸第1鉄から生成されるリチウム鉄リン酸塩の粒子サイズを制御することは、容易ではない。リチウム鉄リン酸塩は、不均一な粒子サイズ分布および不規則な粒子形状を有し、これは、好ましくない導電率および容量特性につながり、さらには、調製されたリチウムイオンバッテリの電気化学的特性に影響が生じる。
【0007】
リチウム鉄リン酸塩の大きな問題は、導電性が低いことである。従って、通常、リチウム鉄リン酸塩の調製の際に、炭素コーティング法またはイオンドープ法が使用され、リチウム鉄リン酸塩の導電性が改善される。
【0008】
「バッテリ」第33巻、第3号、2003年のQIU Weihuaらの「LiFePO材料の電気化学的特性に及ぼすMnドープの影響」では、原材料として、LiCO、FeC・2HO、MnCO、および(NHHPOが使用され、ボールミル処理の後、高温で焼結され、Mnドープされたリチウム鉄リン酸塩が調製される。
【0009】
「バッテリ」第35巻、第1号、2005年のWEN Yanxuanらの「LiMgFe1−xPOの調製および特性研究」では、原材料として、酢酸マグネシウム、シュウ酸第1鉄、炭酸リチウム、およびリン酸水素2アンモニウムが使用され、ボールミル処理により混合され、高温で焼結され、マグネシウムドープされたリチウム鉄リン酸塩が得られる。これらの2つの方法は、いずれも固相ドーピング法を使用しており、原子レベルでドーパント金属元素と鉄元素を混合することは難しく、従って、ドーピング効果に影響が生じる。
【0010】
中国特許公開第CN1585168A号には、ドープされたリチウム鉄リン酸塩を調製する方法が示されており、Cr、Co、Mn、Mg、Ni、およびLaの1または2以上の金属元素でドープされたLiFe1−xPOアノード材料が得られる。この方法は、鉄源、リチウム源、金属M源、およびリン源を、Li/Fe+M=1−1.1、Fe/P=1、およびFe/M=32−99となる原子比で混合し、混合材料に導電性助剤を添加し、均一に混合し、不活性雰囲気下で10−18時間、300−400℃で加熱し、不活性雰囲気下で、20−24時間、650−750℃で焼結し、冷却し、ボールミル処理し、300メッシュのふるいで仕分け、改質リチウム鉄リン酸塩アノード材料を得るステップを有する。全ての方法において、リチウム鉄リン酸塩の合成の間、ドーパント元素を含む化合物が添加され、高温固相法が使用される。固相のイオン泳動を介して、ドーパントイオンと鉄イオンの均一分布を達成することは、難しいため、高焼結温度、および長時間の焼結処理が必要となる。
【0011】
従って、要約すると、従来のような焼結によってシュウ酸第1鉄の鉄源から調製されたリチウム鉄リン酸塩の粒子サイズを制御することは未だ難しく、不均一な粒子サイズ分布および不規則な粒子形状のため、リチウム鉄リン酸塩の導電性および特性を効果的に改善することは難しい。また、これに対して、リチウム鉄リン酸塩の合成の際、および高温固相合成による固相イオン泳動の際に、ドーパント元素を含有する化合物を添加するステップを有する方法では、ドーパントイオンと鉄イオンの均一な分布を得ることはできず、高温および長時間の焼結処理が必要となる。炭素コーティング法またはドーピング法では、リチウム鉄リン酸塩の電子導電性をある程度改善できるが、材料のイオン導電性は、根本的には改善されず、そのため、これらのリチウム鉄リン酸塩から調製されたリチウムイオンバッテリは、電気化学的特性が劣る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】中国特許公開第1585168A号公報
【特許文献2】中国特許公開第1948259A号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】「シュウ酸第1鉄の組成に及ぼす反応時間の影響」(SUN,Yue,QIAO,Qingdong,Journal of Liaoning University of Petroleum&Chemical Technology,第25巻,第4号)
【非特許文献2】「LiFePO4材料の電気化学的特性に及ぼすMnドープの影響」(QIU Weihua、etc. , バッテリ, 第33巻, 第3号, 2003年)
【非特許文献3】「LiMgxFe1−xPO4の調製および特性研究」(WEN Yanxuan, etc., バッテリ, 第35巻, 第1号, 2005年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、不規則な粒子形状、大きな粒子サイズ、不均一な粒子サイズ分布、および鉄源から調製されたリチウム鉄リン酸塩の低い電気化学的特性のような、従来技術で調製された鉄源の問題に対処することである。本発明では、狭小で均一に分布された粒子サイズ、および規則的な粒子形状を有する鉄源を調製する方法が提供される。この方法によれば、鉄源から調製されたリチウム鉄リン酸塩は、優れた電気化学的特性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明の発明者らは、連続的に減少するLiFePO/FePO界面を通り、リチウムイオンがFePO構造に埋没されることを見出した。徐々に減少するFePO界面領域により、界面を通過するリチウムイオンは、電流を維持するには不十分となり、これにより、高電流放電の際に、バッテリの可逆容量の損失が生じる。リチウムイオンが、狭小の均一に分布された粒子サイズを有するLiFePO/FePO界面に埋設される場合、リチウムイオンの有効量が増加し、LiFePOの充電−放電容量が改善される。鉄源の調製の間、鉄源には、金属元素がドープされることが好ましく、これにより、調製されたリチウム鉄リン酸塩では、ドーパント元素と鉄元素の分布がより均一となり、より望ましい特性が得られる。
【0016】
本発明は、リチウム鉄リン酸塩の調製に使用される鉄源を調製する方法を提供し、当該方法は、鉄塩および可溶性非鉄金属塩を含む溶液の第1の液体流を、シュウ酸塩溶液の第2の液体流と接触させるステップと、生成物を回収するステップと、を有する。ここで、前記第1および第2の液体流の流速は、混合の結果生じるスラリーのpHが3−6になるようにされ、前記可溶性非鉄金属塩は、IIA、IIIA、IVA、IB、IIB、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB、およびVIII族の非鉄金属の可溶性塩から選定された1または2以上である。
【0017】
また、本発明では、リチウム鉄リン酸塩を調製する方法が提供され、当該方法は、リチウム源、リン源、および鉄源を含む混合物を焼結するステップと、焼結生成物を冷却するステップと、を有し、前記鉄源は、本発明の方法により調製される。
【0018】
本発明の方法により調製される鉄源は、第1の液体流とシュウ酸塩溶液の第2の液体流の流速が、混合によって得られるスラリーのpHが所定範囲内になるように制御されるため、生成したシュウ酸第1鉄粒子の形状および寸法が制御され、規則的な粒子形状を有し、狭小の均一に分布された粒子サイズを有する鉄源(シュウ酸第1鉄)が得られる。従って、本方法により得られたシュウ酸第1鉄から調製されたリチウム鉄リン酸塩は、狭小の均一に分布された粒子サイズを有し、均一な炭素分布を有し、優れた電気化学的特性を有するようになる。本発明では、鉄源の調製の際、鉄塩および可溶性非鉄金属塩を含む溶液において、非鉄金属塩中の金属イオンが、鉄源中に均一に分配される。従って、本発明の方法で得られた鉄源から調製されたリチウム鉄リン酸塩の生成物では、鉄イオンおよびドーパント金属イオンは、リチウム鉄リン酸塩粒子内に均一に分布され、リチウム鉄リン酸塩の導電性の向上が助長される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の方法により調製された鉄源のSEM像である。
【図2】本発明の方法によって得られた鉄源から調製されたリチウム鉄リン酸塩のSEM像である。
【図3】本発明の方法によって得られた鉄源から調製されたリチウム鉄リン酸塩のXRD回折パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明による方法は、鉄塩および可溶性非鉄金属塩を含む溶液の第1の液体流を、シュウ酸塩溶液の第2液体流に接触させるステップと、生成物を回収するステップとを有する。ここで、第1および第2の液体流の流速は、混合の結果得られるスラリーのpHが、3−6、好ましくは4−5となるようにされる。可溶性非鉄金属塩は、IIA、IIIA、IVA、IB、IIB、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB、およびVIII族の非鉄金属の可溶性塩から選定された1または2以上である。
【0021】
生成される鉄源の粒子サイズをより正確に制御するため、第1の液体流の流速は、1−10L/時間であることが好ましく、1−5L/時間であることがより好ましく、第2の液体流の流速は、混合の結果得られるスラリーのpHが3−6、好ましくは4−5となるようにされる。
【0022】
本発明では、2つの液体流の混合の結果生じるスラリーのpHの値を制御するため、シュウ酸塩溶液の流れを測定する計測ポンプに、pH制御器が接続されても良い。pH制御器の制御下で計測ポンプを用いることにより、シュウ酸塩溶液の流れが鉄塩溶液の流れと接触することが可能となる。pH制御器は、混合溶液のpH値をリアルタイムで監視することができ、混合溶液のpH値は、シュウ酸塩溶液の流速の制御により調節できる。これにより、混合により得られるスラリーのpH値が制御される。
【0023】
シュウ酸第1鉄の鉄源の粒子サイズを狭小の均一な分布にするため、第1の液体流および第2の液体流の流速は、等しくされる。
【0024】
2つの液体流を十分に接触させ、局部的な過剰濃縮を避けるため、および生成されるシュウ酸第1鉄粒子の鉄源の形態を制御するため、第1の液体流と第2の液体流の接触は、第1の液体流および第2の液体流が、水中で撹拌しながら、同時に流入するようにして行われることが好ましい。接触は、第1の液体流および第2液体流が水の入った容器内で接触することにより、行われることがより好ましく、水の量は、容器体積の少なくとも1/10であり、容器体積の1/5−1/2であることが好ましい。
【0025】
鉄塩および可溶性非鉄金属塩を含む溶液と、シュウ酸塩の溶液とは、いずれも水溶液である。鉄塩は、硫酸第1鉄、塩化第1鉄、および酢酸第1鉄から選定された1または2以上である。可溶性非鉄金属塩は、IIA、IIIA、IVA、IB、IIB、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB、およびVIII族の非鉄金属の水溶性硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、ならびに塩化物から選定された1または2以上であり、好ましくは、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、酢酸アルミニウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、塩化スカンジウム、硫酸スカンジウム、塩化チタン、酢酸クロム、硫酸マンガン、塩化マンガン、硝酸マンガン、酢酸マンガン、硫酸コバルト、塩化コバルト、硝酸コバルト、酢酸コバルト、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、硝酸銅、硫酸銅、塩化銅、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、塩化スズ、塩化ガリウム、硝酸ガリウム、硫酸ガリウム、塩化バリウム、塩化ストロンチウム、硝酸ビスマス、塩化ニオブ、塩化タンタル、硝酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化イットリウム、硝酸イットリウム、塩化ジスプロシウム、硝酸ジスプロシウム、硫酸セリウム、塩化セリウム、硝酸セリウム、硫酸ランタン、塩化ランタン、硝酸ランタン、塩化ルテニウム、硝酸ルテニウム、塩化イッテリビウム、硝酸イッテリビウム、硫酸イッテリビウム、酢酸イッテリビウム、塩化エリビウム、および硝酸エリビウムである。シュウ酸塩は、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸アンモニウム、およびシュウ酸リチウムから選定された1または2以上である。
【0026】
共析出の実現のため、鉄塩と非鉄金属塩の選択は、非鉄金属塩同士、および非鉄金属塩と鉄塩との間で、いかなる反応も生じないように行う必要がある。
【0027】
IIIB族金属の希土類元素のシュウ酸塩は、有機酸にある溶解度を有し、この溶解度は、溶液の酸性度の上昇とともに増加する。酸性度が極端に高くなると、希土類のシュウ酸水素塩が生成するようになり、このため、溶液のpH値は、希土類元素と鉄および他の金属イオンとの共析出が確実に生じるように制御する必要がある。従って、希土類元素が使用される際、混合溶液のpH値は、3−5であることが好ましい。鉄塩と可溶性非鉄塩を含む溶液中の鉄イオンと可溶性非鉄金属イオンの全濃度は、0.5−5mol/Lである。混合溶液中の非鉄金属イオンに対する鉄イオンのモル比は、1:0.005−0.25である。シュウ酸塩溶液中のシュウ酸イオン濃度は、0.1−5mol/Lである。
【0028】
本発明では、生成物を回収する方法は、鉄塩および可溶性非鉄塩を含む溶液の液体流と、シュウ酸塩溶液の液体流とを接触させることにより生じたスラリーをフィルタ処理するステップと、生成した固体生成物を乾燥させるステップとを有する。固体生成物を乾燥させる方法および条件は、当業者には良く知られており、例えば、自然乾燥法、ブラスト乾燥法、および真空乾燥法などがある。乾燥時間は、0.5−10時間であっても良く、乾燥温度は、室温から100℃の範囲であっても良い。
【0029】
完全な反応のため、この方法は、さらに、鉄塩溶液とシュウ酸塩溶液とを接触させることにより得られたスラリーを、フィルタ処理の前にエージング処理するステップを有することが好ましい。エージング温度は、40−90℃であっても良く、エージング時間は、1−10時間であっても良い。
【0030】
さらに、この方法は、第1の液体流と第2の液体流の接触で得られたスラリーをフィルタ処理した後、乾燥処理の前に、固体生成物を洗浄するステップを有する。洗浄ステップは、水または有機溶媒で固体生成物を洗浄することにより、実施されても良い。固体生成物に残留する残留溶液が洗浄除去される限り、洗浄時間および洗浄回数に、特別な制約はない。
【0031】
本発明の方法により得られた鉄源(シュウ酸第1鉄)粒子は、1−3ミクロン、好ましくは1.5−2.5ミクロンの中間粒子サイズ(D50)を有する。本発明の好適実施例により調製された非鉄金属元素を含む鉄源Fe1−x(C・2HO(xは、0.005から0.2、yは、1から1.3)は、0.5から8ミクロン、好ましくは0.5から5ミクロンの粒子サイズを有する。
【0032】
本発明は、さらに、リチウム鉄リン酸塩を調製する方法を提供する。この方法は、リチウム源、リン源、および鉄源を含む混合物を焼結するステップと、冷却して焼結生成物を得るステップと、を有する。ここで、鉄源は、本発明の方法により調製される。
【0033】
リチウム源は、リチウム鉄リン酸塩を調製するための一般的な各種リチウム化合物から選定され、例えば、LiOH、LiCO、CHCOOLi、LiNO、LiPO、LiHPO、およびLiHPOの1または2以上であり、LiCOおよび/またはLiHPOが好ましい。LiHPOは、リチウムイオンとリン酸イオンを同時に提供し得るため、LiHPOがより好ましい。リン源は、リチウム鉄リン酸塩を調製するための一般的な各種リン化合物から選定され、例えば(NHPO、(NHHPO、NHPO、LiPO、LiHPO、およびLiHPOの1または2以上である。
【0034】
リチウム源、リン源、および本発明の方法により調製された鉄源の量は、Li:FeまたはFeと非鉄金属:Pがモル比で(1−1.07):1:1となるようにされる。
【0035】
本発明のリチウム鉄リン酸塩を調製する方法では、リチウム源、リン源、および鉄源を含む混合物は、さらに、炭素源としての添加物を含むことが好ましく、これにより、リチウム鉄リン酸塩の導電性が改善されるという利点が得られる。添加物の種類および使用量は、当業者には良く知られている。添加物は、例えば、グルコース、サッカロース、およびクエン酸のような低温嫌気性分解有機化合物から選定された、1または2以上であっても良い。これらの有機化合物は、低温で嫌気分解され、低温でも高活性および高還元性のナノスケールの炭素が生成され、第1鉄の酸化が回避され、大きな粒子の形成が抑制できる。
【0036】
当該方法は、反応体を十分に混合するため、さらに、焼結前に、リチウム源、リン源、鉄源、および必要に応じて添加された添加物を含む混合物を粉砕処理するステップ、好ましくは当該混合物をボールミル処理するステップを有することが好ましい。ボールミル処理法は、当業者には良く知られており、例えば、前述の化合物を分散媒と混合した後、ボールミル処理される。分散媒は、通常の有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、もしくはアセトンの1または2以上であっても良い。
【0037】
当該方法は、焼結の際に、リチウム源、リン源、および鉄源を十分に反応させるため、ボールミル処理後に、混合物を乾燥させ、粉末状にするステップを有することが好ましい。粉末化の方法および条件は、当業者には良く知られている。
【0038】
焼結方法および条件は、当業者には良く知られている。従来技術では、通常、焼結処理は、2段階焼結法で行われる。目的としては、第1段階の焼結の際に、鉄源(例えばシュウ酸第1鉄)の大きな粒子を小さな粒子に分解し、その後、第2段階の焼結を通じて、リチウム鉄リン酸塩の結晶を得ることである。通常、第1段階の焼結温度は、300−500℃、好ましくは350−450℃であり、焼結時間は、4−10時間、好ましくは6−8時間であり、第2段階の焼結温度は、600−800℃、好ましくは650−750℃であり、焼結時間は、8−30時間、好ましくは12−20時間である。2段階焼結法を使用する場合、調製されるリチウム鉄リン酸塩の粒子サイズをより均一に分布させるため、第1段階の焼結後、かつ第2段階の焼結の前に、第1段階の焼結の生成物の粉砕処理が実施されることが好ましい。この粉砕処理方法は、前述のボールミル処理法であっても良い。
【0039】
本発明では、本発明の方法によって得られる鉄源は、小さな粒子サイズおよび均一な粒子サイズ分布を有する非鉄金属でドープされたシュウ酸第1鉄であるため、シュウ酸第1鉄および他の原材料は、均一に混合され、このため、高温固相反応の間、各種イオンの固相泳動距離が短くなる。その結果、1回の焼結処理で、目的が達成される。焼結温度は、650−850℃、好ましくは700−800℃であり、焼結時間は、8−40時間、好ましくは10−20時間である。
【0040】
焼結過程における鉄源の酸化を抑制するため、焼結処理は、不活性または還元性雰囲気下で行われることが好ましい。不活性または還元性雰囲気は、反応体もしくは反応生成物と反応しない、いかなる単一のガスまたは混合ガスをも表し、例えば、水素、窒素、一酸化炭素、アンモニア分解ガス、および希ガスの1または2以上である。不活性または還元性雰囲気は、静的な雰囲気であっても良いが、ガス流速が2−50L/分のガス流通雰囲気であることが好ましい。
【0041】
以下の実施例により、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0042】
(実施例1)
この実施例では、本発明によって提供される鉄源を調製する方法、および鉄源からリチウム鉄リン酸塩を調製する方法について示す。
【0043】
(1)硫酸第1鉄を7水和物(9.7mol)と硫酸マグネシウム7水和物(0.3mol)とを、脱イオン水中に溶解し、金属イオン濃度が1mol/L(混合水溶液中の鉄イオンとマグネシウムイオンのモル比は、97:3)の混合溶液を形成した。脱イオン水中にシュウ酸カリウム(10mol)を溶解し、シュウ酸イオン濃度が1mol/Lのシュウ酸カリウム溶液を形成した。体積30Lの反応器に脱イオン水(6L)を加え、計測ポンプを介して、硫酸第1鉄と硫酸マグネシウムを含む溶液を、反応器に均一に供給した。これと同時に、pH制御器(WALCHEM、WPH320−5NN)に接続された計測ポンプを介して、シュウ酸カリウム塩の溶液を反応器に均一に供給した。鉄塩および非鉄金属塩を含む液体流の流速は、2L/時間とし、シュウ酸塩溶液の流速は、混合によって生じるスラリーのpH値が4となるようにした。5時間後に反応を停止させ、反応器内で4時間、混合スラリーのエージング処理を行い、フィルタ処理により固体生成物を得た。これを水で3回洗浄し、さらに、エタノールで1回洗浄し、固体生成物から溶液を完全に洗浄除去した。フィルタ処理の後、固体生成物を80℃で5時間真空乾燥処理し、粒子サイズが0.8−5ミクロンで、中間粒子サイズ(D50)が2.0ミクロンのFe0.97Mg0.03・2HO粒子を得た(鉄源の粒子サイズは、Honeywell社から市販されているX100粒子アナライザで分析した)。SSX−550走査型電子顕微鏡(Shimadzu)によって解析された鉄源のSEM像は、図1に示されている。
【0044】
(2)炭酸リチウム(370g)、ステップ(1)によって得られた鉄源(1789g)、およびリン酸2水素アンモニウム(1150g)を、リチウム:鉄および非鉄金属:リンがモル比で1:1:1となるように添加し、炭素源として、C:Feがモル比で0.5となるように、グルコース(165g)を加えた。炭酸リチウム、鉄源、リン酸2水素アンモニウム、およびグルコースをボールミル器に入れ、分散媒として無水エタノール(5000ml)を加え、0.5時間ボールミル処理した。ボールミル処理されたスラリーをスプレー乾燥処理し、スプレー造粒器で粉末化した。粒子をコランダムボートに詰め、高温窯内で、流速が20L/分のアルゴンガス雰囲気下、700℃で20時間焼結した。冷却後、空気粉砕処理し、金属マグネシウムでドープされたリチウム鉄リン酸塩粒子を得た。走査型電子顕微鏡(Shimadzu、SSX−550)で得られた金属マグネシウムでドープされたリチウム鉄リン酸塩のSEM像は、図2に示されている。X線粉末回折装置(Rigaku、D/MAX−2200/PC)で得られた金属マグネシウムでドープされたリチウム鉄リン酸塩のXRD回折パターンは、図3に示されている。
【0045】
(実施例2)
この実施例では、本発明によって提供される鉄源を調製する方法、および鉄源からリチウム鉄リン酸塩を調製する方法について示す。
【0046】
鉄源およびリチウム鉄リン酸塩は、実施例1に示した方法で調製した。ただし、ここでは、以下の点が異なっている。鉄源の調製の間、鉄塩および可溶性非鉄金属塩を含む溶液は、硫酸第1鉄7水和物(9.9mol)と、硝酸ジルコニウム5水和物(0.1mol)を脱イオン水中に溶解させることにより調製し、金属イオン濃度が1mol/Lの混合溶液(混合溶液中の鉄イオンとジルコニウムイオンのモル比は、99:1)を形成した。シュウ酸塩溶液は、シュウ酸ナトリウム(10mol)および水から調製した、シュウ酸イオン濃度が1mol/Lのシュウ酸塩溶液である。鉄塩および可溶性非鉄金属塩を含む溶液の液体流の流速は、3.5L/時間であり、シュウ酸塩溶液の液体流の流速は、混合により生じるスラリーのpH値が5となるようにした。他の全ての条件および手順は、実施例1に示したものと同様である。
【0047】
反応完了後には、粒子サイズが0.9−4ミクロンで、中間粒子サイズ(D50)が1.5ミクロンのFe0.99Zr0.01(C1.01・2HO粒子が得られた(鉄源の粒子サイズは、Honeywell社のX100粒子アナライザにより分析した)。リチウム鉄リン酸塩を調製する際の使用鉄源は、実施例2で得られたFe0.99Zr0.01(C1.01・2HOである。
【0048】
(実施例3)
この実施例では、本発明によって提供される鉄源を調製する方法、および鉄源からリチウム鉄リン酸塩を調製する方法について示す。
【0049】
鉄源およびリチウム鉄リン酸塩は、実施例1に示した方法で調製した。ただし、ここでは、以下の点が異なっている。鉄源の調製の間、鉄塩および可溶性非鉄金属塩を含む溶液は、硫酸第1鉄(0.8mol)と、硫酸マンガン(0.2mol)を脱イオン水中に溶解させることにより調製し、金属イオン濃度が0.5mol/Lの混合溶液(混合溶液中の鉄イオンとマンガンイオンのモル比は、4:1)を形成した。シュウ酸カリウム(10mol)を脱イオン水中に溶解することにより、シュウ酸塩溶液を調製し、シュウ酸イオン濃度が0.5mol/Lのシュウ酸カリウム溶液を形成した。鉄塩および可溶性非鉄金属塩を含む溶液の液体流の流速は、5L/時間であり、シュウ酸塩溶液の液体流の流速は、混合により生じるスラリーのpH値が3となるようにした。他の全ての条件および手順は、実施例1に示したものと同様である。反応完了後には、粒子サイズが1−6ミクロンで、中間粒子サイズ(D50)が2.2ミクロンのFe0.8Mn0.2・2HO粒子が得られた(鉄源の粒子サイズは、Honeywell社のX100粒子アナライザにより分析した)。
【0050】
リチウム鉄リン酸塩を調製する際、炭素源として、モル比でC:Feが0.5となるように、クエン酸175gを添加した点が異なっている。使用する鉄源は、この実施例3で得られたFe0.8Mn0.2・2HOである。焼結処理は、℃の焼結温度で、15時間実施した。
【0051】
(実施例4)
この実施例では、本発明によって提供される鉄源を調製する方法、および鉄源からリチウム鉄リン酸塩を調製する方法について示す。
【0052】
鉄源およびリチウム鉄リン酸塩は、実施例1に示した方法で調製した。ただし、ここでは、以下の点が異なっている。鉄源の調製の間、鉄塩および可溶性非鉄金属塩を含む溶液は、塩化第1鉄(9.95mol)と、塩化スズ(0.05mol)を脱イオン水中に溶解させることにより調製し、金属イオン濃度が2mol/Lの混合溶液(混合溶液中の鉄イオンとスズイオンのモル比は、199:10)を形成した。シュウ酸カリウム(5mol)およびシュウ酸ナトリウム(5mol)を脱イオン水中に溶解することにより、シュウ酸塩溶液を調製し、シュウ酸塩ラジカル濃度が2mol/Lの混合シュウ酸溶液を形成した。反応前に、30Lの反応器に脱イオン水(10L)を加え、実施例1に示した方法により、鉄塩および可溶性非鉄金属塩を含む溶液と、シュウ酸第1鉄塩を含む溶液とを、反応器に供給した。鉄塩および可溶性非鉄金属塩を含む溶液の液体流の流速は、1L/時間であり、シュウ酸塩溶液の液体流の流速は、混合により生じるスラリーのpH値が6となるようにした。反応から10時間後に反応を停止させ、反応器内での混合により生じたスラリーを、5時間エージング処理した。反応完了後に、粒子サイズが0.7−4.6ミクロンで、中間粒子サイズ(D50)が1.3ミクロンのFe0.995Sn0.005・2HO鉄源が得られた(鉄源の中間粒子サイズは、Honeywell社のX100粒子アナライザにより分析した)。
【0053】
リチウム鉄リン酸塩の調製の際、以下の点が異なっている。リン酸2水素リチウム(831.2g)と、ステップ(1)で得た鉄源(1441.7g)を、リチウム:鉄および非鉄金属:リンのモル比が1:1:1となるように秤量した。炭素源として、C:Feのモル比が0.5となるように、サッカロース(114.1g)を添加した。使用鉄源は、この実施例4で得られたFe0.995Sn0.005・2HOである。
【0054】
(実施例5)
この実施例では、本発明によって提供される鉄源を調製する方法、および鉄源からリチウム鉄リン酸塩を調製する方法について示す。
【0055】
鉄源およびリチウム鉄リン酸塩は、実施例1に示した方法で調製した。ただし、ここでは、以下の点が異なっている。鉄源の調製の間、鉄塩および可溶性非鉄金属塩を含む溶液は、硫酸第1鉄(0.98mol)と、硫酸アルミニウム18水和物(0.02mol)を脱イオン水中に溶解させることにより調製し、金属イオン濃度が1.5mol/Lの混合溶液(混合溶液中の鉄イオンとアルミニウムイオンのモル比は、98:2)を形成した。シュウ酸ナトリウム(5mol)およびシュウ酸カリウム(5mol)を脱イオン水中に溶解することにより、シュウ酸塩溶液を調製し、シュウ酸塩ラジカル濃度が1.5mol/Lの混合シュウ酸溶液を形成した。鉄塩および可溶性非鉄金属塩を含む溶液の液体流の流速は、1.5L/時間であり、シュウ酸塩溶液の流速は、混合により生じるスラリーのpH値が4.5となるようにした。他の全ての条件および手順は、実施例1に示したものと同様である。
【0056】
反応完了後には、粒子サイズが1.0−6.0ミクロンで、中間粒子サイズ(D50)が2.5ミクロンのFe0.98Al0.02(C1.01・2HO粒子が得られた(鉄源の粒子サイズは、Honeywell社のX100粒子アナライザにより分析した)。リチウム鉄リン酸塩を調製する際の使用鉄源は、実施例5で得られたFe0.98Al0.02(C1.01・2HO粒子である。
【0057】
(実施例6)
この実施例では、本発明によって提供される鉄源を調製する方法、および鉄源からリチウム鉄リン酸塩を調製する方法について示す。
【0058】
鉄源およびリチウム鉄リン酸塩は、実施例1に示した方法で調製した。ただし、ここでは、以下の点が異なっている。鉄源の調製の間、鉄塩および可溶性非鉄金属塩を含む溶液は、硫酸第1鉄7水和物(8.5mol)と、塩化コバルト6水和物(1.5mol)を脱イオン水中に溶解させることにより調製し、金属イオン濃度が1mol/Lの混合溶液(混合溶液中の鉄イオンとコバルトイオンのモル比は、85:15)を形成した。シュウ酸ナトリウム(10mol)を脱イオン水中に溶解することにより、シュウ酸塩溶液を調製し、シュウ酸塩ラジカル濃度が1mol/Lの混合シュウ酸溶液を形成した。鉄塩および可溶性非鉄金属塩を含む溶液の液体流の流速は、3L/時間であり、シュウ酸塩溶液の流速は、混合により生じるスラリーのpH値が4となるようにした。他の全ての条件および手順は、実施例1に示したものと同様である。反応完了後には、粒子サイズが0.7−5.5ミクロンで、中間粒子サイズ(D50)が1.2ミクロンのFe0.85Co0.15・2HO粒子が得られた(鉄源の粒子サイズは、Honeywell社のX100粒子アナライザにより分析した)。リチウム鉄リン酸塩を調製する際、鉄源として、実施例6で調製されたFe0.85Co0.15・2HOを使用した。
【0059】
(実施例7)
この実施例では、本発明によって提供される鉄源を調製する方法、および鉄源からリチウム鉄リン酸塩を調製する方法について示す。
【0060】
鉄源およびリチウム鉄リン酸塩は、実施例1に示した方法で調製した。ただし、ここでは、以下の点が異なっている。鉄源の調製の間、鉄塩および可溶性非鉄金属塩を含む溶液は、硫酸第1鉄7水和物(9mol)と、硫酸ニッケル6水和物(1mol)を脱イオン水中に溶解させることにより調製し、金属イオン濃度が1mol/Lの混合溶液(混合溶液中の鉄イオンとニッケルイオンのモル比は、9:1)を形成した。シュウ酸ナトリウム(10mol)を脱イオン水中に溶解することにより、シュウ酸塩溶液を調製し、シュウ酸塩イオン濃度が1mol/Lのシュウ酸溶液を形成した。反応器には、予め脱イオン水は、添加していない。鉄塩および可溶性非鉄金属塩を含む溶液の液体流の流速は、1L/時間であり、シュウ酸塩溶液の流速は、混合により生じるスラリーのpH値が3.5となるようにした。他の全ての条件および手順は、実施例1に示したものと同様である。
【0061】
反応完了後には、粒子サイズが0.9−5.4ミクロンで、中間粒子サイズ(D50)が2.3ミクロンのFe0.9Ni0.1・2HO粒子が得られた(鉄源の粒子サイズは、Honeywell社のX100粒子アナライザにより分析した)。リチウム鉄リン酸塩を調製する際、鉄源として、実施例7で調製されたFe0.9Ni0.1・2HOを使用した。
【0062】
(実施例8)
この実施例では、本発明によって提供される鉄源を調製する方法、および鉄源からリチウム鉄リン酸塩を調製する方法について示す。
【0063】
鉄源およびリチウム鉄リン酸塩は、実施例1に示した方法で調製した。ただし、ここでは、以下の点が異なっている。鉄源の調製の間、鉄塩および可溶性非鉄金属塩を含む溶液は、硫酸第1鉄7水和物(9mol)と、硫酸マンガン1水和物(0.5mol)と、硫酸マグネシウム7水和物(0.5mol)と、を脱イオン水中に溶解させることにより調製し、金属イオン濃度が3mol/Lの混合溶液(混合溶液中の鉄イオン、マンガンイオン、およびマグネシウムイオンのモル比は、18:1:1)を形成した。シュウ酸ナトリウム(10mol)を脱イオン水中に溶解することにより、シュウ酸塩溶液を調製し、シュウ酸塩イオン濃度が3mol/Lのシュウ酸溶液を形成した。鉄塩および可溶性非鉄金属塩を含む溶液の液体流の流速は、2.5L/時間であり、シュウ酸塩溶液の流速は、混合により生じるスラリーのpH値が5となるようにした。他の全ての条件および手順は、実施例1に示したものと同様である。反応完了後には、粒子サイズが0.4−6ミクロンで、中間粒子サイズ(D50)が1.8ミクロンのFe0.9Mn0.05Mg0.05・2HO粒子が得られた(鉄源の粒子サイズは、Honeywell社のX100粒子アナライザにより分析した)。リチウム鉄リン酸塩を調製する際、鉄源として、実施例8で調製されたFe0.9Mn0.05Mg0.05・2HOを使用した。
【0064】
(実施例9)
この実施例では、本発明によって提供される鉄源を調製する方法、および鉄源からリチウム鉄リン酸塩を調製する方法について示す。
【0065】
鉄源およびリチウム鉄リン酸塩は、実施例4に示した方法で調製した。ただし、ここでは、以下の点が異なっている。リチウム鉄リン酸塩の調製の際、2段階焼結法を採用した。
該2段階焼結法は、第1段階の焼結処理において、高温窯内で、20L/分のアルゴンガス流の雰囲気下、350℃の焼結温度で8時間、混合粉末粒子を焼結するステップと、冷却後、ボールミル器内で、粉末を0.5時間ボールミル処理し、コランダムボートに添加するステップと、を有する。第2段階の焼結処理は、高温窯内で、20L/分のアルゴンガス流の雰囲気下、750℃焼結温度で20時間行われ、冷却後の空気粉砕処理により、リチウム鉄リン酸塩が得られる。
【0066】
(実施例10)
この実施例では、本発明によって提供される鉄源を調製する方法、および鉄源からリチウム鉄リン酸塩を調製する方法について示す。
【0067】
鉄源およびリチウム鉄リン酸塩は、実施例8に示した方法で調製した。ただし、ここでは、以下の点が異なっている。鉄源の調製の間、鉄塩および可溶性非鉄金属塩を含む溶液は、硫酸第1鉄7水和物(9mol)と、塩化銅(0.5mol)と、塩化亜鉛(0.5mol)と、を脱イオン水中に溶解させることにより調製し、金属イオン濃度が3mol/Lの混合溶液(混合溶液中の鉄イオン、銅イオン、および亜鉛イオンのモル比は、18:1:1)を形成した。他の全ての条件および手順は、実施例8に示したものと同様である。反応完了後には、粒子サイズが0.1−8.36ミクロンで、中間粒子サイズ(D50)が3.12ミクロンのFe0.9Cu0.05Zn0.05・2HO粒子が得られた(鉄源の粒子サイズは、Honeywell社のX100粒子アナライザにより分析した)。リチウム鉄リン酸塩を調製する際、鉄源として、実施例10で調製されたFe0.9Cu0.05Zn0.05・2HOを使用した。
【0068】
(実施例11)
この実施例では、本発明によって提供される鉄源を調製する方法、および鉄源からリチウム鉄リン酸塩を調製する方法について示す。
【0069】
鉄源およびリチウム鉄リン酸塩は、実施例8に示した方法で調製した。ただし、ここでは、以下の点が異なっている。鉄源の調製の間、鉄塩および可溶性非鉄金属塩を含む溶液は、硫酸第1鉄7水和物(9mol)と、塩化バナジウム(0.25mol)と、塩化チタン(0. 5mol)と、酢酸クロム(0.25mol)とを脱イオン水中に溶解させることにより調製し、金属イオン濃度が3mol/Lの混合溶液(混合溶液中の鉄イオン、チタンイオン、クロムイオン、およびバナジウムイオンのモル比は、36:2:1:1)を形成した。他の全ての条件および手順は、実施例8に示したものと同様である。反応完了後には、粒子サイズが0.18−7.24ミクロンで、中間粒子サイズ(D50)が3.26ミクロンのFe0.9Ti0.05Cr0.0250.025(C1.08・2HO粒子が得られた(鉄源の粒子サイズは、Honeywell社のX100粒子アナライザにより分析した)。リチウム鉄リン酸塩を調製する際、鉄源として、実施例11で調製されたFe0.9Ti0.05Cr0.0250.025(C1.08・2HOを使用した。
【0070】
(実施例12)
この実施例では、本発明によって提供される鉄源を調製する方法、および鉄源からリチウム鉄リン酸塩を調製する方法について示す。
【0071】
鉄源およびリチウム鉄リン酸塩は、実施例1に示した方法で調製した。ただし、ここでは、以下の点が異なっている。鉄源の調製の間、鉄塩および可溶性非鉄金属塩を含む溶液は、硫酸第1鉄7水和物(9.7mol)と、硫酸セリウム(0.3mol)とを脱イオン水中に溶解させることにより調製し、金属イオン濃度が1mol/Lの混合溶液(混合溶液中の鉄イオンおよびセリウムイオンのモル比は、97:3)を形成した。他の全ての条件および手順は、実施例1に示したものと同様である。反応完了後には、粒子サイズが0.08−7.38ミクロンで、中間粒子サイズ(D50)が2.84ミクロンのFe0.97Ce0.03 (C1.015・2HO粒子が得られた(鉄源の粒子サイズは、Honeywell社のX100粒子アナライザにより分析した)。リチウム鉄リン酸塩を調製する際、鉄源として、実施例12で調製されたFe0.97Ce0.03 (C1.015・2HOを使用した。
【0072】
(実施例13)
この実施例では、本発明によって提供される鉄源を調製する方法、および鉄源からリチウム鉄リン酸塩を調製する方法について示す。
【0073】
鉄源およびリチウム鉄リン酸塩は、実施例1に示した方法で調製した。ただし、ここでは、以下の点が異なっている。鉄源の調製の間、鉄塩および可溶性非鉄金属塩を含む溶液は、硫酸第1鉄7水和物(9.95mol)と、塩化エルビウム(0.05mol)とを脱イオン水中に溶解させることにより調製し、金属イオン濃度が1mol/Lの混合溶液(混合溶液中の鉄イオンおよびエルビウムイオンのモル比は、99.5:0.5)を形成した。他の全ての条件および手順は、実施例1に示したものと同様である。反応完了後には、粒子サイズが0.1−8.53ミクロンで、中間粒子サイズ(D50)が2.77ミクロンのFe0.995Er0.005・2HO粒子が得られた(鉄源の粒子サイズは、Honeywell社のX100粒子アナライザにより分析した)。リチウム鉄リン酸塩を調製する際、鉄源として、実施例13で調製されたFe0.995Er0.005・2HOを使用した。
【0074】
(比較例1)
この比較例では、比較例に係る鉄源を調製する方法、および鉄源からリチウム鉄リン酸塩を調製する方法について示す。
【0075】
「シュウ酸第1鉄の組成に及ぼす反応時間の影響」(SUN Yue,QIAO Qingdong,Journal of Liaoning University of Petroleum&Chemical Technology,第25巻,第4号)に記載された方法により、シュウ酸第1鉄を調製した。この方法は、アンモニウム鉄硫酸塩(18g)を蒸留水(90mL)と混合するステップ、2mol/Lの硫酸(6mL)を添加し、溶液を酸性にするステップと、加熱溶解し、1mol/Lのシュウ酸(120mL)を加えるステップと、80分間、撹拌しながら溶液を加熱し、静置し、上澄みを除去するステップと、得られた黄色析出物を洗浄し、真空フィルタ処理し乾燥し、中間粒子サイズ(D50)が11ミクロンのシュウ酸第1鉄を得るステップとを有する。
【0076】
リチウム鉄リン酸塩は、比較例1の方法で得られたシュウ酸第1鉄から調製される。リチウム鉄リン酸塩の調製は、炭酸リチウム(370g)、前述の得られたシュウ酸第1鉄(1745g)、酸化マグネシウム(12g)、リン酸2水素アンモニウム(1150g)を、Li:Fe:Mg:Pが1:0.97:0.03:1となるモル比で秤量するステップと、炭素源として、グルコース(165g)を、C:(Fe+Mg)がモル比で0.5となるように添加するステップと、炭酸リチウム、シュウ酸第1鉄、リン酸2水素アンモニウム、酸化マグネシウム、およびグルコースをボールミル器に入れ、分散媒として無水エタノール(5000ml)を添加し、0.5時間ボールミル処理するステップと、ボールミル処理されたスラリーを、スプレー乾燥し、スプレー粉砕器で粉砕処理するステップと、コランダムボートに粒子を添加し、最初に高温窯で、20L/分のアルゴン流の雰囲気下、350℃で8時間、焼結処理し、0.5時間ボールミル処理するステップと、コランダムボートに戻し、高温窯で、20L/分のアルゴン流雰囲気下、750℃で20時間、焼結し冷却するステップと、空気粉砕して、金属マグネシウムがドープされたリチウム鉄リン酸塩を得るステップと、を有する。
【0077】
(比較例2)
この比較例では、比較例に係るシュウ酸第1鉄からリチウム鉄リン酸塩を調製する方法について示す。
【0078】
金属マグネシウムがドープされたリチウム鉄リン酸塩は、比較例1に示した方法で調製した。ただし、ここでは、以下の点が異なっている。シュウ酸第1鉄は、市販のシュウ酸第1鉄である(Shanghai Dafeng社、粒子サイズ0.5−300ミクロン、D50は、11.5ミクロン)。
【0079】
(比較例3)
この比較例では、比較例に係るシュウ酸第1鉄からリチウム鉄リン酸塩を調製する方法について示す。
【0080】
鉄源およびリチウム鉄リン酸塩は、実施例1に示した方法で調製した。ただし、ここでは、以下の点が異なっている。鉄源の調製の間、鉄塩および可溶性非鉄金属塩を含む溶液の流速は、5L/時間とし、シュウ酸塩溶液の流速は、混合スラリーのpHが1となるようにした。2時間後に反応を停止させた。生成物は、フィルタ処理し、エージング処理を行わずに、直接洗浄した。80℃で5時間、真空乾燥し、粒子サイズが0.3−25ミクロンで、中間粒子サイズ(D50)が13ミクロンのFe0.97Mg0.03・2HO鉄源を得た。リチウム鉄リン酸塩を調製する際、鉄源として、比較例3で調製されたFe0.97Mg0.03・2HOを使用した。
【0081】
(比較例4)
この比較例では、比較例に係るシュウ酸第1鉄からリチウム鉄リン酸塩を調製する方法について示す。
【0082】
鉄源およびリチウム鉄リン酸塩は、実施例1に示した方法で調製した。ただし、ここでは、以下の点が異なっている。鉄塩および可溶性非鉄金属塩を含む溶液の流速、ならびにシュウ酸塩溶液の流速は、得られる混合物のpHが8となるようにした。2時間後に反応を停止させ、固体生成物をエージング処理し、フィルタ処理し、洗浄し、80℃で5時間真空乾燥し、粒子サイズが3−30ミクロンで、中間粒子サイズ(D50)が18ミクロンのFe0.97Mg0.03・2HO鉄源を得た。リチウム鉄リン酸塩を調製する際、鉄源として、比較例4で調製されたFe0.97Mg0.03・2HOを使用した。
【0083】
(比較例5)
この比較例では、比較例に係るシュウ酸第1鉄からリチウム鉄リン酸塩を調製する方法について示す。
【0084】
シュウ酸第1鉄は、中国特許公報CN1948259Aの実施例に記載の方法により調製し、中間粒子サイズ(D50)が20.4ミクロンのシュウ酸第1鉄2水和物を得た。また、実施例1による方法により、リチウム鉄リン酸塩を調製した。ただし、ここでは、鉄源が、この比較例5で調製されたシュウ酸第1鉄である点が異なっている。
【0085】
(実施例14−26)
以下の実施例は、本発明により提供されたリチウム鉄リン酸塩アノード活物質から準備されたバッテリの特性試験を含む。
【0086】
(1)バッテリの準備
アノードの作製
実施例1−13により調製された各LiFePOアノード活物質(100g)と、ポリ(ビニリデン ジフルオライド)(PVDF)バインダ(3g)と、アセチレンブラック導電性助剤(2g)とを、N−メチルピロリドン(50g)に加え、真空攪拌機で撹拌し、均一なアノードスラリーを形成した。20μmの厚さのアルミ箔の両側に、片側のコーティング領域密度が12mg/cmとなるように、アノードスラリーを均一にコーティングし、150℃で乾燥し、巻き回し、活性成分として5.63gのLiFePOを含むアノードを、540mm×43.5mmに切断した。
【0087】
カソードの作製
カソード活性成分としての天然グラファイト(100g)と、PVDFバインダ(3g)と、カーボンブラック導電性助剤(3g)とを、N−メチルピロリドン(100g)に加え、真空撹拌機で撹拌し、均一なカソードスラリーを形成した。12μm厚さの銅箔の両側に、片側のコーティングの領域密度が5mg/cmとなるように、スラリーを均一にコーティングし、90℃で乾燥し、巻き回し、活性成分として2.6gの天然グラファイトを含むカソードを、500mm×44mmに切断した。
【0088】
バッテリの組立
バッテリの組み立ては、前述のアノード、カソード、およびポリプロピレン膜の各々を巻き回し、正方形リチウムイオンバッテリコアにし、EC/EMC/DEC(1:1:1)混合溶媒中で、1Mの濃度でLiPFを溶解し、非水電解質を形成し、3.8g/Ahの量で、電解質をバッテリアルミニウムケーシング内に注入し、シールし、それぞれ、本発明によるリチウムイオン二次電池A1−A13のそれぞれを準備した。
【0089】
(2)バッテリの特性試験
準備したリチウムイオンバッテリA1−A13の各々を、試験棚に配置し、充電上限を3.85Vに設定して、定電流および定電圧下、15mAh/gの電流密度で2.5時間充電し、20分間中断し、3.85Vから2.5Vまで、15mAh/gの定電流密度で放電し、バッテリの初期放電容量を記録した。このサイクルを20回繰り返し、バッテリの放電容量を再度記録した。以下の式により、バッテリ質量比容量、およびバッテリ容量維持率を計算した:

質量比容量=バッテリの初期放電容量(mAh)/アノード材料の重量(g)

容量維持率=(20回のサイクル後の放電容量/バッテリの初期放電容量)×100%

得られた結果を表1に示す。
【0090】
(比較例6−10)
以下の比較例は、従来技術により提供された比較例に係るリチウム鉄リン酸塩アノード活物質から準備されたバッテリの特性試験を含む。
【0091】
比較例のバッテリAC1−AC5は、前述の実施例14−26に示した方法により準備した。バッテリの初期放電容量およびバッテリサイクル特性を評価し、サイクル前後のバッテリ質量比容量を計算した。先ほどの例との差異は、バッテリを準備する際のアノード活物質が、比較例1−5に記載の方法により調製された、リチウム鉄リン酸塩アノード材料であることである。
【0092】
得られた結果を表1に示す。
【0093】
【表1】


例えば実施例1を見ると、図1は、本発明の方法により調製された、鉄源(金属マグネシウムがドープされたシュウ酸第1鉄)のSEM像(5000倍)である。当該図から、金属元素がドープされたシュウ酸第1鉄は、均一に分布された粒子サイズと、均一な粒子サイズ分布を有することが観測され、大部分の粒子は、1−5ミクロンの粒子サイズを有する。
【0094】
図2には、本発明の方法による鉄源から調製された、金属元素がドープされたリチウム鉄リン酸塩のSEM像(10000倍)を示す。当該図から、本発明の方法により調製された、金属元素がドープされたリチウム鉄リン酸塩は、小さな粒子サイズと、均一な粒子サイズ分布を有することが観測され、大部分の粒子は、0.8−1.5ミクロンの範囲の粒子サイズを有する。
【0095】
図3から、前記リチウム鉄リン酸塩は、不純物相のない、標準的な橄欖石型構造を有することが観測される。
【0096】
表1のデータから、本発明の鉄源から得られたリチウム鉄リン酸塩アノード材料から準備されたバッテリは、従来技術のシュウ酸第1鉄から得られたリチウム鉄リン酸塩から準備されたバッテリに比べて、有意に高い初期放電質量比容量と、20サイクル後の大きな放電質量比容量を有し、20サイクル後に、96%よりも高い容量維持率を有することが観測される。このように、バッテリは、良好な特性を有し、本発明のリチウム鉄リン酸塩アノード活物質は、優れた電気的特性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム鉄リン酸塩を調製するために使用される鉄源を調製する方法であって、
鉄塩および可溶性非鉄金属塩を含む溶液の第1の液体流を、シュウ酸塩溶液の第2の液体流と接触させるステップであって、前記第1および第2の液体流の流速は、混合の結果生じるスラリーのpHが3−6になるようにされ、前記可溶性非鉄金属塩は、IIA、IIIA、IVA、IB、IIB、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB、およびVIII族の非鉄金属の可溶性塩から選定された1または2以上であるステップと、
生成物を回収するステップと、
を有する鉄源の調製方法。
【請求項2】
前記第1の液体流は、1−10L/時間の流速を有し、前記第2の液体流の流速は、混合の結果生じる前記スラリーのpHが3−6となるようにされることを特徴とする請求項1に記載の鉄源の調製方法。
【請求項3】
前記第1の液体流および第2の液体流の流速は、それぞれ等しいことを特徴とする請求項1または2に記載の鉄源の調製方法。
【請求項4】
前記第1の液体流と第2の液体流の接触は、前記第1の液体流および第2の液体流が、水中で撹拌しながら、同時に流れるようにして行われることを特徴とする請求項1に記載の鉄源の調製方法。
【請求項5】
前記接触は、前記第1の液体流と第2の液体流が、水を含む容器内で接触するような方法で行われ、
前記水の量は、前記容器の体積の少なくとも1/10であることを特徴とする請求項4に記載の鉄源の調製方法。
【請求項6】
前記鉄塩および可溶性非鉄金属塩を含む溶液、ならびにシュウ酸塩を含む溶液は、いずれも水溶液であり、
前記鉄塩は、硫酸第1鉄、塩化第1鉄、酢酸第1鉄から選定された1または2以上であり、
前記可溶性非鉄金属塩は、IIA、IIIA、IVA、IB、IIB、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB、およびVIII族の非鉄金属の水溶性硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、ならびに塩化物塩から選定された1または2以上であり、
前記シュウ酸塩は、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸アンモニウム、およびシュウ酸リチウムから選定された1または2以上であることを特徴とする請求項1に記載の鉄源の調製方法。
【請求項7】
前記可溶性非鉄金属塩は、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、酢酸アルミニウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、塩化スカンジウム、硫酸スカンジウム、塩化チタン、酢酸クロム、硫酸マンガン、塩化マンガン、硝酸マンガン、酢酸マンガン、硫酸コバルト、塩化コバルト、硝酸コバルト、酢酸コバルト、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、硝酸銅、硫酸銅、塩化銅、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、塩化スズ、塩化ガリウム、硝酸ガリウム、硫酸ガリウム、塩化バリウム、塩化ストロンチウム、硝酸ビスマス、塩化ニオブ、塩化タンタル、硝酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化イットリウム、硝酸イットリウム、塩化ジスプロシウム、硝酸ジスプロシウム、硫酸セリウム、塩化セリウム、硝酸セリウム、硫酸ランタン、塩化ランタン、硝酸ランタン、塩化ルテニウム、硝酸ルテニウム、塩化イッテリビウム、硝酸イッテリビウム、硫酸イッテリビウム、酢酸イッテリビウム、塩化エリビウム、および硝酸エリビウムから選定された、1または2以上であることを特徴とする請求項6に記載の鉄源の調製方法。
【請求項8】
前記鉄塩および可溶性非鉄金属塩を含む前記溶液中の鉄イオンおよび可溶性非鉄金属イオンの全濃度は、0.5−5mol/Lであり、
前記非鉄金属イオンに対する前記鉄イオンのモル比は、1:0.005−0.25であり、
前記シュウ酸塩溶液中の前記シュウ酸イオンの濃度は、0.1−5mol/Lであることを特徴とする請求項1または2に記載の鉄源の調製方法。
【請求項9】
当該方法は、さらに、前記第1の液体流および第2の液体流の混合の結果得られた前記スラリーを、40−90℃のエージング温度で、1−10時間、エージング処理するステップを有することを特徴とする請求項1に記載の鉄源の調製方法。
【請求項10】
リチウム鉄リン酸塩を調製する方法であって、
リチウム源、リン源、および鉄源を含む混合物を焼結するステップと、
焼結生成物を冷却するステップと、
を有し、
前記鉄源は、請求項1乃至9のいずれか一つの方法により調製されることを特徴とするリチウム鉄リン酸塩の調製方法。
【請求項11】
前記リチウム源は、LiOH、LiCO、CHCOOLi、LiNO、LiPO、LiHPO、およびLiHPOから選定された1または2以上であり、
前記リン源は、(NHPO、(NHHPO、NHPO、LiPO、LiHPO、およびLiHPOから選定された1または2以上であり、
前記リチウム源、リン源、および鉄源の使用量は、リチウム:鉄または鉄および非鉄金属:リンが、(1−1.07):1:1のモル比となるようにされることを特徴とする請求項10に記載のリチウム鉄リン酸塩の調製方法。
【請求項12】
焼結温度は、650−850℃であり、
焼結時間は、8−10時間であり、
前記焼結するステップは、不活性または還元性雰囲気下で行われることを特徴とする請求項10に記載のリチウム鉄リン酸塩の調製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−516375(P2011−516375A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502210(P2011−502210)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【国際出願番号】PCT/CN2008/070680
【国際公開番号】WO2009/124431
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(510177809)ビーワイディー カンパニー リミテッド (15)
【Fターム(参考)】