説明

リチウム電池のためのカソード材料

リチウム電池は、リチウム化γ−二酸化マンガンを含むカソードを含む。この電池は、高い電流能力、及び熱処理された二酸化マンガンを含むリチウム−二酸化マンガン電池よりも大きな放電容量を有することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウム電池のためのカソード材料に関する。
【背景技術】
【0002】
電池は、一般に使用される電気エネルギー源である。電池は通常アノードと称される負の電極、及び通常カソードと称される正の電極を含有する。アノードは酸化されることができる活性物質を含有し、カソードは還元されることができる活性物質を含有し又は消費する。アノード活性物質はカソード活性物質を還元することができる。
【0003】
電池が装置内で電気エネルギー源として使用される場合、アノードとカソードに対して電気的接触がなされて電子がこの装置を貫流するようにし、それぞれ酸化及び還元反応によって電力の供給が起こるようにする。アノード及びカソードと接触している電解質はそれらの電極の間のセパレータを貫流するイオンを含有し、放電中の電池全体にわたる荷電平衡を維持する。
【0004】
一般に、リチウム電池はリチウム化二酸化マンガンを含むカソードを含む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
1つの態様では、一次リチウム電池のためのリチウム化二酸化マンガンの製造方法は、二酸化マンガン中のプロトンをリチウムイオンで実質的に置換するのに十分なリチウム化温度において、二酸化マンガンをリチウムイオン源と接触させ、並びに残留の及び表面の水を実質的に除去するのに十分な水除去温度に二酸化マンガンを加熱し、リチウム化前の二酸化マンガンのX線回折パターンと実質的に類似したX線回折パターンを有するリチウム化二酸化マンガンを生成することを含む。
【0006】
別の態様では、電池用カソードの製造方法は、二酸化マンガンをリチウムイオン源と接触させ、前記二酸化マンガンを加熱し、リチウム化前の二酸化マンガンのX線回折パターンと実質的に類似したX線回折パターンを有するリチウム化二酸化マンガンを生成し、並びに炭素源、及び二酸化マンガンを包含するカソード活性物質を含む組成物でカレントコレクタを被覆することを含む。
【0007】
別の態様では、一次リチウム電池は、リチウム含有アノード活性物質を含むアノードと、リチウム化前の二酸化マンガンのX線回折パターンと実質的に類似したX線回折パターンを有するリチウム化二酸化マンガンを含むカソードと、前記アノードと前記カソードの間のセパレータとを含む。
【0008】
二酸化マンガンは、過硫酸塩由来の化学的二酸化マンガン、電気化学的二酸化マンガン、又はγ−二酸化マンガンであることができる。リチウムイオン源は、水酸化リチウムのようなリチウム塩を含む水溶液であることができる。リチウム化温度は40℃〜100℃であることができる。水除去温度は180℃〜500℃、例えば200℃〜460℃であることができる。
【0009】
電池においては、リチウム含有アノード活性物質はリチウム又はリチウム合金であることができる。この電池は前記アノード、前記カソード及び前記セパレータと接触している非水性電解質を含むことができる。非水性電解質は有機溶媒を含むことができる。リチウム化γ−二酸化マンガンは、24°及び32°の2θ(CuK 照射)付近にピークを有するX線回折パターンを有することができ、またリチウムイオンによって置換されたγ−二酸化マンガン中に通常存在するプロトン含有量の実質的に全て又は大部分を有することができる。この電池は、高い電流能力、及び熱処理された二酸化マンガン(HEMD)を含むリチウム/二酸化マンガン電池よりも大きな放電容量を有することができる。
【0010】
リチウム化二酸化マンガンは、高いドレーン条件における改善された容量及び稼動電圧(running voltage)を有するLi/MnO電池内で使用することができ、従来のLi/MnO電池と比較して気体発生を低減させることができる。例えば、リチウム化γ−二酸化マンガンは、デジタルカメラ用の電池に使用するのに好適であることができる。リチウム化二酸化マンガンを含む一次リチウム電池は、熱処理された二酸化マンガン(HEMD)を含むリチウム/二酸化マンガン電池と比較して高い稼動電圧(running voltage)、電流能力、及び放電容量を有することができる。リチウム化二酸化マンガンはまた、電池内で貯蔵される間の気体の発生を少なくすることができる。リチウム化二酸化マンガンは、少ない表面積及び高い電気的性能を有する。リチウム化二酸化マンガンは、二酸化マンガンのプロトン含有量が実質的に完全にリチウムで置換されているにもかかわらず、元の二酸化マンガン出発物質のものと実質的に同一のX線回折パターンを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
1以上の実施形態の詳細が、添付の図面及び下記の説明において述べられている。他の特徴、目的、及び利点は、説明及び図面から、並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0012】
図1を参照すると、一次リチウム電気化学セル10は、マイナスのリード線14と電気的に接触しているアノード12、クラウン18と電気的に接触しているカソード16、セパレータ20、及び電解質を含む。アノード12、カソード16、セパレータ20、及び電解質は、ハウジング22内に収容されている。電解質は、溶媒系とその溶媒系に少なくとも部分的に溶解されている塩とを含む溶液であることができる。ハウジング22の一端は、プラスの外部接触部24と、気密な及び流体密封の封止を提供することができる環状絶縁ガスケット26とで閉じられている。クラウン18及びプラスのリード線28は、カソード16をプラスの外部接触部24に接続することができる。安全バルブはプラスの外部接触部24の内側に配置され、また電池10内の圧力が予め決定されたある値を超えた場合にその圧力を低下させるように構成されている。特定の環境では、プラスのリード線は円形又は環状とすることができ、円筒と同軸に配置され、またカソードの方向に放射状の延長部を含む。電気化学セル10は、例えば円筒状の巻かれたセル、ボタン若しくはコインセル、プリズムセル、剛性薄層状セル又は可撓性ポーチ、エンベロープ若しくはバッグセルであることができる。
【0013】
アノード12は、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ及びアルカリ土類金属、又はそれらの合金を含むことができる。アノードは、アルカリ又はアルカリ土類金属と、例えばアルミニウムなどの別の金属、又はその他の金属との合金を含むことができる。リチウムを含むアノードは、元素リチウム、リチウム挿入化合物、若しくはリチウム合金、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0014】
電解質は、溶媒及び塩を含む非水性電解質溶液であることができる。電解質は液体又は高分子電解質であることができる。塩は、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ若しくはアルカリ土類塩、又はこれらの組み合わせであることができる。リチウム塩の例としては、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、過塩素酸リチウム、ヨウ化リチウム、臭化リチウム、テトラクロロアルミン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、LiN(CFSO及びLiB(Cが挙げられる。過塩素酸リチウムなどの過塩素酸塩は電解質中に含まれて、セル内の、例えばカレントコレクタ内のアルミニウム又はアルミニウム合金の腐蝕を抑えるのに役立つことができる。電解質溶液中の塩の濃度は、0.01モル〜3モル、0.5モル〜1.5モルの範囲であることができ、特定の実施形態では1モルであることができる。
【0015】
溶媒は有機溶媒であることができる。有機溶媒の例としては、カーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、及びホスフェート類が挙げられる。カーボネート類の例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートが挙げられる。エーテル類の例としては、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、及びテトラヒドロフランが挙げられる。エステル類の例としては、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、メチルブチレート、及びγ−ブチロラクトンが挙げられる。ニトリル類の例としては、アセトニトリルが挙げられる。ホスフェート類の例としては、トリエチルホスフェート及びトリメチルホスフェートが挙げられる。電解質は高分子電解質であることができる。
【0016】
セパレータ20は、リチウム一次又は二次電池セパレータにおいて使用されるいかなるセパレータ材料で形成されることもできる。例えば、セパレータ20は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド(例えばナイロン)、ポリスルホン、ポリ塩化ビニル、又はこれらの組み合わせで形成されることができる。セパレータ20は約12ミクロン〜約75ミクロン、より好ましくは12〜約37ミクロンの厚さを有することができる。セパレータ20は、図1に示されるように、アノード12及びカソード16と同様の大きさの部片に切断されてそれらの間に配置されることができる。アノード、セパレータ、及びカソードは、特に円筒状セルにおいて使用するために、共に巻かれることができる。次いで、アノード12、カソード16、及びセパレータ20は、ニッケル若しくはニッケルメッキしたスチール、ステンレススチール、アルミニウム被覆ステンレススチール、アルミニウム又はアルミニウム合金などの金属、あるいはポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスルホン、ABS又はポリアミドなどのプラスチックで作製することができるハウジング22内に配置されることができる。アノード12、カソード16及びセパレータ20を収容するハウジング22は、電解質溶液で満たされることができ、その後プラスの外部接続部24及び環状絶縁ガスケット26で密閉封止されることができる。
【0017】
カソード16は、リチウム化二酸化マンガンを含む組成物を含む。リチウム化二酸化マンガンは、過硫酸塩由来の化学的二酸化マンガン又はγ−二酸化マンガンをリチウムイオン源で処理して、二酸化マンガンのプロトンをリチウムイオンで置換することによって調製することができる。過硫酸塩由来の化学的二酸化マンガン(p−CMD)の調製は、例えば、米国特許第5,277,890号、第5,348,728号、及び第5,482,796号に記載されており、これらのそれぞれはその全体が参考として組み込まれる。熱処理された二酸化マンガンの調製は、例えば、米国特許第4,133,856号に記載され、その全体が参考として組み込まれる。γ−二酸化マンガンは、例えば、「酸化マンガン(IV)の間の構造的関係」(”Structural Relationships Between the Manganese(IV)Oxides”)、二酸化マンガンシンポジウム(Manganese Dioxide Symposium)、1、電気化学学会(The Electrochemical Society)、クリーブランド(Cleveland)、1975年、306〜327頁中に記載されており、その全体が参考として本明細書に組み込まれる。リチウムイオン源は、例えば水酸化リチウムのようなリチウム塩を含む水溶液であることができる。リチウムイオン交換は、室温より高い温度、例えば40℃〜120℃の間で、又は60℃及び100℃において、若しくは60℃〜100℃の間で行うことができる。
【0018】
リチウム交換された材料は次に、残留の及び表面の水分を除去するために加熱される。この材料は空気中で、酸素中で、不活性雰囲気中で、又は真空中で加熱されることができる。この材料は、150℃よりも高い、180℃よりも高い、500℃未満の、又は480℃未満の温度に加熱されることができる。これにより、二酸化マンガンをリチウム化γ−二酸化マンガン相に又はラムスデライトLiMD相に変換することができる。
【0019】
γ二酸化マンガンは次式を有することができ:
(a)MnO(b)MnOOH(c)□(OH)
式中、デルタはMn(IV)格子中のカチオン空格子点を示すために用いられる。例えば、一組成物では、(a)は0.9であり、(b)は0.06であり、(c)は0.04である。米国特許第6,190,800号(全体が参考として組み込まれる)に開示されているように、pH13で周囲温度において二酸化マンガンを水性水酸化リチウムに曝すことによって、二酸化マンガン中の格子プロトンの約半分がリチウムイオンで置換される。より高い温度、例えば、60℃又は100℃においてリチウム交換を行うことにより、カチオン空格子点部位の破壊を低減又は回避すること、及びγ−二酸化マンガン中に元々存在するプロトンの75%以上を置換するためにリチウムの取り込みを増加させることが可能である。
【0020】
特定の環境では、p−CMDは低いBET表面積、例えば30m/g未満を有することができる。この方法によって処理することができる他の二酸化マンガン材料としては、例えば、LiMnスピネルの酸浸出によって、並びにMn及びMnの酸処理によって誘導されるγ−二酸化マンガン材料のような、人工のラムスデライト特性の別の形態のγ−二酸化マンガンを挙げることができ、好適であり得、又はλ−二酸化マンガンを挙げることができる。リチウム化p−CMDを加熱することによって生ずるリチウム化二酸化マンガン相の安定化は、部分的には、高いカチオン空格子点濃度によってもたらされる高いリチウム含有量に起因すると考えることができる。したがって、高いカチオン空格子点レベルを有する他の二酸化マンガン材料は、この方法において使用することができる。加えて、特定の条件下では、リチウム化温度を高くすることで、材料のリチウムイオン含有量を有利に増加させることができる。例えば、空気中で200℃で6時間熱処理されたLi0.22MnOのリチウムレベルは、約15m/gのBET表面積を有する材料を形成することができる。選択される材料は、Liセル用に一般に使用されるHEMDよりもむしろγ二酸化マンガンのX線回折パターンの特性を有するものとして識別することができる。
【0021】
カソード組成物はまた、結合剤、例えば、PTFE、PVDF、クレイトン(Kraton)、又はバイトン(Viton)などの高分子結合剤(例えば、ビニリデンジフルオライド及びヘキサフルオロプロピレンのコポリマー)も含むことができる。カソード組成物はまた、例えば、カーボンブラック、膨張黒鉛を含む合成黒鉛若しくは天然黒鉛を含む非合成黒鉛、アセチレンメソフェーズ炭素(acetylenic mesophase carbon)、コークス、黒鉛化炭素ナノ繊維、又はポリアセチレン半導体などの炭素源も含むことができる。
【0022】
カソードは、カソード活性物質が被覆又は他の方法で付着され得るカレントコレクタを含む。カレントコレクタは、プラスのリード線28と接触している領域、及び活性物質と接触している第2の領域を有することができる。カレントコレクタは、プラスのリード線28と活性物質との間に電気を伝導させる役割をする。カレントコレクタは、頑丈であり且つ良好な導電体である(すなわち抵抗の低い)材料、例えばステンレススチール、チタン、アルミニウム、又はアルミニウム合金などの金属で作製することができる。カレントコレクタが取ることのできる1つの形態は、不織エキスパンドメタルホイルのようなエキスパンドメタルスクリーン又はグリッドである。ステンレススチール、アルミニウム又はアルミニウム合金のグリッドは、エクスメット社(Exmet Corporation)(コネチカット州ブランフォード(Branford))から入手可能である。
【0023】
一般に、カソードはカレントコレクタ上にカソード材料を被覆させ、乾燥させ、その後被覆されたカレントコレクタをカレンダー加工することによって作製される。カソード材料は活性物質を結合剤、溶媒/水、及び炭素源などのその他の構成成分と共に混合することによって調製される。カレントコレクタは、チタン、ステンレススチール、アルミニウム又はアルミニウム合金などの金属を含むことができる。カレントコレクタは、エキスパンドメタルグリッドであることができる。カソード材料を形成するために、二酸化マンガンのような活性物質を黒鉛及び/又はアセチレンブラックなどの炭素と組み合わせて、少量の水と混合することができる。カレントコレクタは次にカソードスラリーで被覆される。
【0024】
円筒形セルにおいては、アノード及びカソードは、ロールの一端から軸方向に延長するカソードカレントコレクタの一部と共に螺旋状に巻かれる。ロールから延長するカレントコレクタの一部は、カソード活性物質を含まないことが可能である。カレントコレクタを外部接触部と接続するために、カレントコレクタの露出端部を外部電池接触部と電気的に接触している金属タブに溶接することができる。グリットは機械方向に、引張方向に、その機械方向と垂直に、又はその引張方向と垂直に、巻かれることができる。グリッド及びタブのアセンブリの伝導度を最小限に抑えるように、タブをグリッドに溶接することができる。あるいは、カレントコレクタの露出端部は、外部電池接触部と電気的に接触しているプラスのリード線と機械的に接触している(すなわち溶接されていない)ことも可能である。機械的接触を有するセルは、溶接接触を有するセルよりも必要とされる部品数及び製造工程を少なくすることができる。機械的な接触は、露出されたグリッドがロールの中心に向かって曲げられて、ドーム又はクラウンを、そのクラウンの最も高い点が円筒形セルの中心に相当するそのロールの軸の上にくるように形成する場合に、より効果的であることができる。クラウン形状では、グリッドは、非形状形態の場合よりも緻密なストランド配置を有することができる。クラウンは規則正しく折り畳まれることができ、クラウンの寸法は精密に制御することができる。
【0025】
プラスのリード線28はステンレススチール、アルミニウム、又はアルミニウム合金を含むことができる。プラスのリード線は環状形状であることができ、また円筒と同軸に配置されることができる。プラスのリード線はまた、カレントコレクタを係合させることができるカソードの方向に放射状の延長部を含むことができる。延長部は丸型(例えば円形又は楕円形)、方形、三角形、又は他の形状であることができる。プラスのリード線は、異なる形状を有する延長部を含むことができる。プラスのリード線及びカレントコレクタは電気的に接触している。プラスのリード線とカレントコレクタとの間の電気的接触は、機械的接触によって達成することができる。あるいは、プラスのリード線及びカレントコレクタは共に溶接されることができる。プラスのリード線及びカソードカレントコレクタは電気的に接触している。電気的接触は、プラスのリード線とカレントコレクタとの間の機械的接触の結果であることができる。
【実施例】
【0026】
実施例1(リチウム化p−CMD)
p−CMDは以下のように調製された。硫酸マンガン(239g、1.6モル)を1.8Lの水に溶解し、過硫酸ナトリウム(346g、1.45モル)を加えて溶解されるまで攪拌した。溶液を攪拌しながら55℃に加熱した。5時間後、pHは0.98であり、溶液中に多量の黒色固体が存在した。加熱を取り除き、溶液を一晩放置した。酸化プロセスで生成された酸を中和するためにLiOH固体を添加し、pHは1.14に達した。次に溶液を84℃に加熱すると、1日を通してpHは0.48まで下がる。pH2.05まで、LiOHでの2度目の中和が行われる。次に溶液を90℃に1時間加熱し、冷却させてフリット化ガラスフィルター上に収集した。収集された沈殿は60℃で一晩乾燥されて水に分散された濾塊を形成し、ろ過されて超微粒子状粉末を形成した。生成物の収量の合計は約129g、1.48モルであった。
【0027】
以下のようにp−CMD上でリチウム交換を行った。p−CMD(50g、0.6モル)を50mlの脱イオン水中に分散させ、連続的に攪拌しながら固体LiOHO(3.4g、0.08モル)を添加した。約1時間後に到達した最終pHは12.6であった。LiOH溶液中のスラリーMnOを脇に置き、高pHで一晩置いた。次にスラリーを加圧フィルターを通してろ過し、リチウム交換されたp−CMDを単離した。湿潤p−CMDを一晩放置して室温で乾燥させ、次いで60℃で乾燥させた。生成物の収量の合計は約50.7g、0.6モルである。過硫酸塩で調製された二酸化マンガンのX線回折パターンを図2Dに示す。リチウム交換p−CMDは次に350℃で1時間熱処理されて、リチウム化過硫酸塩−二酸化マンガンを生成した。リチウム化過硫酸塩−二酸化マンガンのX線回折パターンは、図2Eに示されているパターンとほぼ同一であった。他の実施例では、リチウム化p−CMDは、450℃で異なる長さの時間、熱処理された。
【0028】
実施例2(リチウム化γ−二酸化マンガン)
EMD(カーマギー・ハイパワーアルカリグレード(Kerr-McGee High Power alkaline grade)MnO(300g))を2Lビーカー中に入れ、約1Lの水で分散させた。硫酸を添加して交換可能なナトリウムを除去した。米国特許第5,698,176号に記載されているように、酸中のMnOの懸濁液をろ過すると、ろ液は破棄され酸洗浄された、ナトリウムを含まないMnOを残した。二酸化マンガンを再び水中に分散させ、ホットプレート上で60℃に加熱して、pHを観察しながら、固体LiOHO(30.7g)を連続的に攪拌しながら添加した。名目上pH13が達成された室温でのリチウム化と対照的に、懸濁液のpHは約11.3にとどまった。このMnOのLiOH溶液中スラリーを脇に置き、一晩放置した。次に更なる固体水酸化リチウムで、pHを目標のpH12.5に調整した。次いでスラリーを微細多孔性のガラスフリット化フィルター又は加圧フィルターを通してろ過し、リチウム交換二酸化マンガンを単離した。次に湿潤二酸化マンガンを100℃で一晩乾燥させ、暗褐色粉末を準備した。観測されたリチウムの取り込みはMnO1モル当たり0.21Liに相当する。次に、残留の表面及び格子水分を除去するために、MnOを200℃で6時間乾燥させた。固体状態のMASLi NMR測定により、EMD中のLi及びプロトンの両方が200℃において移動可能であることが示されたため、200℃の乾燥温度が選択された。図2A(カーマギー(Kerr-McGee)からのプロトン化γ−二酸化マンガン)と図2Bとを比較することにより示されるように、リチウム化γ−二酸化マンガンは200℃で乾燥後y位相にあった。
【0029】
比較例1(HEMD)
デルタEMDリチウムグレードMnO)(1200g)をオーブンに入れ、気流下350℃で7時間にわたり加熱した。オーブンの温度は徐々に上昇し6時間かけて350度に達した後、7時間350℃とした。得られた材料、HEMDは、図2Cに示されたX線回折パターンを有し、実質的に米国特許第4,133,856号の材料であると考えられる。この材料は続く実施例における比較例1として用いられる。
【0030】
比較例2(リチウム化熱処理二酸化マンガン(LiMD)
カーマギー・ハイパワーアルカリグレード(Kerr-McGee High Power alkaline grade)EMD又はデルタEMDリチウムグレードMnO)(1200g)を2Lビーカーに入れて、約1Lの水で分散させた。pHを観察しながら、固体LiOHH2Oを連続的に攪拌しながら加えた。12.5付近の所望のpHが達成されたとき、そのMnOのLiOH溶液中スラリーを脇に置き、一晩放置した。次に更なる固体水酸化リチウムで、pHを目標のpH12.5に調整した。水酸化リチウム溶液中で一晩置くことにより、プロトン及びリチウムイオンを二酸化マンガン内で拡散させて平衡化することができ、プロトンのリチウムによる最大限の置換を可能にする。次いでスラリーを微細多孔性ガラスフリット化フィルター又は加圧フィルターを通してろ過し、リチウム交換二酸化マンガンを単離した。次に湿潤二酸化マンガンを100℃で一晩乾燥させ、暗褐色粉末を準備した。次に、残留の表面及び格子水分を除去するために、MnOを空気中350℃で6時間乾燥させた。反応の生成物を変えることなく、温度を400℃程の高温まで上げることができるが、Mnを生じさせるその加熱、例えば空気中での450℃までの加熱は、酸素の有害な損失が起こったことを示し得る。この場合もまた、リチウム化二酸化マンガンは図2Fに表されるような回折パターンを有し、米国特許第6,190,800号に記載されているような物質であることを示している。
【0031】
実施例4(SPECS)
実施例1〜2のリチウム化γ−二酸化マンガン生成物は、SPECS低率放電試験を用いることによって、比較例1の熱処理二酸化マンガン(HEMD)及び比較例2のリチウム交換熱処理EMD(LiMD)と区別された。SPECS試験では、セルは予め選択された時間の間、定電圧で放電され、その後新たな電圧へと進む。SPECSは、例えばA.H.トンプソン(A.H.Thompson)、電気化学電圧分光法(Electrochemical Potential Spectroscopy):新規な電気化学的測定(A New Electrochemical Measurement)、電気化学学会誌(J.Electrochemical Society)126(4)、608〜616(1979);Y.シャブレ(Y.Chabre)及びJ.パネティエ(J.Pannetier)、プロトン/γ−MnO系の構造及び電気化学特性(Structural and Electrochemical Properties of the Proton/γ-MnO2 System)、固体化学の進展(Prog.Solid St.Chem.)23、1〜130(1995);並びにそれらの参考文献に記載されており、それらの各々はその全体が本明細書に参考として組み込まれる。この実験の出力の1つは、材料が所与の電圧においてどれだけ速く放電できるかという問題に対応する電圧スペクトルである。
【0032】
実施例2のリチウム化γ−二酸化マンガン及びHEMDのSPECS曲線が図3Aに示されている。図3Aに示されているように、実施例1のリチウム化γ−二酸化マンガンは、比較例1のHEMDに対する約2.68Vを中心とする単一のプロセスと比較すると、約3.25Vを中心とするより高い初期放電プロセス及び約2.87Vを中心とする第2の放電プロセスを有する。実施例1の材料の高い電圧は、比較例1よりも改善され、放電の間、より高い稼動電圧(running voltage)を提供する。
【0033】
実施例1のリチウム化過硫酸塩−二酸化マンガン及びHEMDのSPECS曲線が図3Bに示されている。図3Bに示されているように、リチウム化過硫酸塩二酸化マンガンは、HEMDに対して見られる約2.68Vを中心とする単一プロセスに対して約3.07及び2.94Vを中心とする2つの最隆起プロセス(most prominent processes)を有する種々の放電プロセスを受ける。
【0034】
図3Cにおいて、熱処理されたリチウム化過硫酸塩二酸化マンガンの電気化学スペクトルが元の過硫酸塩二酸化マンガンのSPECS曲線と比較される。図3Cに示されているように、リチウム化過硫酸塩二酸化マンガンは、350℃処理の後、熱処理後の過硫酸塩二酸化マンガンよりも高い稼動電圧(running voltage)を有する。
【0035】
本発明の比較例2及び実施例2の熱処理されたリチウム含有二酸化マンガンの電気化学スペクトルが、図3Dに提示されている。図3Dに示されているように、実施例1の材料はより高い電圧を示し、したがって電池中でより良好な稼動電圧(running voltage)を示す。
【0036】
実施例5(ホイルバッグ気体試験)
電解質と接触しているリチウム化γ−二酸化マンガンによる気体発生が試験された。HEMD、実施例1を350℃で熱処理した後のリチウム化p−CMD、実施例2を200℃に熱処理した後のリチウム化γ−二酸化マンガン、比較例2を空気中で350℃に7時間熱処理した後のリチウム化二酸化マンガン、及び比較例1のHEMDで、ホイルバッグ気体試験を行った。ホイルバッグ気体試験において、電解質(0.6M LiTFS(1.8g)で10w/oEC、20w/oPC及び70w/oDME)及びリチウム化二酸化マンガン(6.5g)の両方を、アルミでメッキしたマイラーバッグ(Mylar bag)中に密封し、60℃で保存した。気体の発生が水中置換及び重量によって決定された。BET表面積もまた決定された。結果は、表1に列記されており、実施例2のリチウム化γ−二酸化マンガンは、比較例1又は比較例2のどちらよりも生ずる気体が少なく、実施例1のリチウム化過硫酸塩二酸化マンガンは比較例1及び2よりもわずかに多い気体を生ずるだけであることを示す。
【表1】

【0037】
実施例6(スケーリングされたオプティオ試験(Scaled Optio Tests))
リチウム化γ−二酸化マンガンカソード材料及びリチウムアノードを含む2430サイズコインセルの電気化学性能を試験した。オプティオ試験(Optio test)の条件は表2に要約されている。
【表2】

【0038】
実施された試験の1つは、オプティオデジタルカメラ試験であった。オプティオ試験は、オプティオ330カメラに対する負荷流量(load regime)を取り、それを2430サイズコインセルに適合するようにスケーリングすることによって判定された。それはカメラ内で使用されている電池上の負荷個所をシミュレートする一連のパルスから成る。HEMD(比較例1)、p−CMD(対照)、実施例1のLi−p−CMD、及び実施例2のリチウム化二酸化マンガンを含有するセルが調製され、未使用の状態で試験された。5〜8個のセルを試験して、結果を平均した。2.5、2.0、1.8、及び1.5の閾値電圧よりも上で達成されたサイクルの数を表3に要約する。
【表3】

【0039】
表2に示されているように、実施例1のLi−p−CMD及び実施例2のリチウム化γ−二酸化マンガンは、2.0Vの標準的カットオフに対してHEMD材料よりも性能が優れており、より高いカットオフ電圧でより多くの供給を送達した。実施例1のLi−p−CMD及びリチウム化γ−二酸化マンガンの高い性能はまた、高い平均稼動電圧(running voltage)によっても実証された。リチウム化γ−二酸化マンガンは2.5Vのカットオフに対してさえ優れた供給を提供する。オプティオプロトコルの高いドレインステップ(drain step)における初期の及び最終の電圧をプロットし、オプティオ試験における供給の品質の尺度として放電の中間点での電圧を取った。この技術によって評価した場合、HEMDを有するセルは2.35の平均負荷電圧を有するが、一方実施例1のLi−p−CMDを有するセルは2.68(330mVアドバンテージ(advantage))の平均電圧を有し、リチウム化γ−二酸化マンガンを有するセルは2.78(430mVアドバンテージ)の平均電圧を有していた。
【0040】
多数の実施形態について記載してきた。それにもかかわらず、種々の修正がなされ得ることが理解されるであろう。したがって、他の実施形態は以下の特許請求の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】電池の概略図。
【図2A】高プロトン含有γ−二酸化マンガンの代表的なX線回折パターン。
【図2B】本発明の200〜400℃で乾燥されたリチウム交換γ−二酸化マンガンの代表的なX線回折パターン。
【図2C】熱処理された二酸化マンガン(HEMD)の代表的なX線回折パターン。
【図2D】過硫酸塩で調製された二酸化マンガン(p−CMD)の代表的なX線回折パターン。
【図2E】熱処理されリチウム化され過硫酸塩で調製された二酸化マンガン(Li−p−CMD)の代表的なX線回折パターン。
【図2F】米国特許第6,190,800号の熱処理されたリチウム交換二酸化マンガンの代表的なX線回折パターン。
【図3A】放電電圧の関数としての、熱処理された二酸化マンガン(HEMD)及びリチウム処理され過硫酸塩で調製された二酸化マンガン(Li−p−CMD)の容量スペクトル。
【図3B】リチウム化過硫酸塩二酸化マンガン及び熱処理された二酸化マンガンの代表的な電気化学スペクトル。
【図3C】リチウム化過硫酸塩二酸化マンガン及び過硫酸塩二酸化マンガンの代表的な電気化学スペクトル。
【図3D】リチウム化γ−二酸化マンガン及びリチウム含有熱処理二酸化マンガンの代表的な電気化学スペクトル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次リチウム電池のためのリチウム化二酸化マンガンの製造方法であって、
二酸化マンガン中のプロトンをリチウムイオンで実質的に置換するのに十分なリチウム化温度において、二酸化マンガンをリチウムイオン源と接触させ、並びに
残留の及び表面の水を実質的に除去するのに十分な水除去温度に二酸化マンガンを加熱し、リチウム化前の二酸化マンガンのX線回折パターンと実質的に類似したX線回折パターンを有するリチウム化二酸化マンガンを生成することを含んでなる、製造方法。
【請求項2】
前記二酸化マンガンが、過硫酸塩由来の化学的二酸化マンガンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記二酸化マンガンがγ−二酸化マンガンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記リチウムイオン源が、リチウム塩を含む水溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記リチウム塩が水酸化リチウムである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記リチウム化温度が40℃〜100℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記水除去温度が180℃〜500℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記水除去温度が200℃〜460℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
電池用カソードの製造方法であって、
二酸化マンガンをリチウムイオン源と接触させ、
前記二酸化マンガンを加熱し、リチウム化前の二酸化マンガンのX線回折パターンと実質的に類似したX線回折パターンを有するリチウム化二酸化マンガンを生成し、並びに
炭素源、及び二酸化マンガンを包含するカソード活性物質を含む組成物でカレントコレクタを被覆することを含んでなる、製造方法。
【請求項10】
前記二酸化マンガンが、過硫酸塩由来の化学的二酸化マンガンである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記二酸化マンガンがγ−二酸化マンガンである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記リチウムイオン源が、リチウム塩を含む水溶液である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記リチウム塩が水酸化リチウムである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記リチウム化温度が40℃〜100℃である、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記水除去温度が180℃〜500℃である、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記水除去温度が200℃〜460℃である、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
リチウム含有アノード活性物質を含むアノードと、
リチウム化前の二酸化マンガンのX線回折パターンと実質的に類似したX線回折パターンを有するリチウム化二酸化マンガンを含むカソードと、
前記アノードと前記カソードの間のセパレータとを備えてなる、一次リチウム電池。
【請求項18】
前記リチウム含有アノード活性物質がリチウム又はリチウム合金である、請求項17に記載の電池。
【請求項19】
前記アノード、前記カソード及び前記セパレータと接触している非水性電解質を更に含む、請求項17に記載の電池。
【請求項20】
前記非水性電解質が有機溶媒を含む、請求項19に記載の電池。
【請求項21】
前記電池が、高い電流能力、及び熱処理された二酸化マンガンを含むリチウム−二酸化マンガン電池よりも大きな放電容量を有する、請求項17に記載の電池。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【公表番号】特表2007−519210(P2007−519210A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551335(P2006−551335)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/002071
【国際公開番号】WO2005/074058
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(593093249)ザ ジレット カンパニー (349)
【Fターム(参考)】