説明

リチウム電池用電解液、リチウム電池及びリチウム電池の作動方法

【課題】ニッケル−コバルト−マンガン系活物質を含有する正極を採用したリチウム電池に用いられ、高容量を達成しつつも、長寿名及び高温安定性を同時に向上させることが可能なリチウム電池用電解液、リチウム電池及びリチウム電池の作動方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係るリチウム電池用電解液は、ニッケル、コバルト、及びマンガンを含む正極活物質を有する正極を備えるリチウム電池用の電解液であって、電解液は、非水系有機溶媒、リチウム塩及びアジポニトリルを含み、電解液のうちアジポニトリルの含量は、非水系有機溶媒及びリチウム塩の総質量100質量部当たり10質量部以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル(Ni)−コバルト(Co)−マンガン(Mn)系活物質−含有正極を採用したリチウム電池用電解液、これを含むリチウム電池及びリチウム電池の作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学物質の電気化学的な酸化還元反応時に発生する化学エネルギーを電気エネルギーに変換させる装置である電池のうち、リチウム電池は、正極、負極及び電解液を含む。
【0003】
近年、各種の電子機器の高機能化によって、高容量及び高出力を有する電池が要求されている。高容量を有する電池を得るために、高容量を有する活物質を使用するか、または電池の充電電圧を高める方法が使われうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−108586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電池の充電電圧を高めれば、電極と電解液との副反応も増加して、電池の寿命特性及び高温安定性が低下する恐れがあるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、ニッケル−コバルト−マンガン系活物質を含有する正極を採用したリチウム電池に用いられ、高容量を達成しつつも、長寿名及び高温安定性を同時に向上させることが可能な、リチウム電池用電解液、リチウム電池及びリチウム電池の作動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、ニッケル、コバルト、及びマンガンを含む正極活物質を有する正極を備えるリチウム電池用の電解液であって、前記電解液は、非水系有機溶媒、リチウム塩及びアジポニトリルを含み、前記電解液のうち前記アジポニトリルの含量は、前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部当たり10質量部以下であるリチウム電池用電解液が提供される。
【0008】
前記正極活物質は、下記化学式1で表示される物質であることが好ましい。
【0009】
Li(NiCoMn)O ・・・(化学式1)
【0010】
ここで、前記化学式1において、0.95≦x≦1.05であり、0<p<1であり、0<q<1であり、0<r<1であり、p+q+r=1であり、0<y≦2である。
【0011】
前記正極活物質は、LiNi0.5Co0.2Mn0.3を含んでもよい。
【0012】
前記アジポニトリルの含量は、前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部当たり0.1質量部〜10質量部であってもよく、1質量部〜5質量部であってもよい。
【0013】
前記電解液は、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及びこれらの組合わせからなる群から選択された一つ以上のカーボネート系添加剤をさらに含んでもよい。
【0014】
前記カーボネート系添加剤の含量は、前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部当たり0.1質量部〜10質量部であってもよい。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、ニッケル、コバルト及びマンガンを含む正極活物質を有する正極と、負極活物質を含む負極と、電解液と、を含み、前記電解液は、非水系有機溶媒、リチウム塩及びアジポニトリルを含み、前記電解液のうち前記アジポニトリルの含量は、前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部当たり10質量部以下であるリチウム電池が提供される。
【0016】
前記アジポニトリルの含量は、前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部当たり0.1質量部〜10質量部であってもよく、1質量部〜5質量部であってもよい。
【0017】
前記正極活物質は、下記化学式1で表示される物質であることが好ましい。
【0018】
Li(NiCoMn)O ・・・(化学式1)
【0019】
ここで、前記化学式1において、0.95≦x≦1.05であり、0<p<1であり、0<q<1であり、0<r<1であり、p+q+r=1であり、0<y≦2である。
【0020】
前記正極活物質は、LiNi0.5Co0.2Mn0.3を含んでもよい。
【0021】
前記正極は、第2正極活物質をさらに含んでもよい。
【0022】
前記第2正極活物質として、LiCoOをさらに含んでもよい。
【0023】
前記電解液は、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及びこれらの組合わせからなる群から選択されたカーボネート系添加剤をさらに含んでもよい。
【0024】
前記カーボネート系添加剤の含量は、前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部当たり0.1質量部〜10質量部であってもよい。
【0025】
充電終止電圧は、4.25V以上であってもよい。
【0026】
また、上記課題を解決するために、本発明の更に別の観点によれば、上記リチウム電池を提供するステップと、前記リチウム電池の充電終止電圧が4.25V以上となるように前記リチウム電池を充電するステップと、を含むリチウム電池の作動方法が提供される。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係るニッケル−コバルト−マンガン系活物質を含有した正極を採用したリチウム電池用電解液を用いたリチウム電池は、高電圧下で充電しても、長寿名及び高温安定性を同時に達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係るリチウム電池の概略的な構造を示す概略図である。
【図2】比較例1、2及び実施例1、2の電池の寿命特性をそれぞれ示す図面である。
【図3】比較例3〜5と実施例3〜6との電池の寿命特性をそれぞれ示す図面である。
【図4】比較例6、7及び実施例7〜9の電池の寿命特性をそれぞれ示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0030】
本発明の実施形態に係るニッケル−コバルト−マンガン系正極活物質を含有する正極を採用したリチウム電池用電解液は、非水系有機溶媒、リチウム塩及びアジポニトリル(NC(CHCN)を含み、この電解液のうち、アジポニトリルの含量は、非水系有機溶媒及びリチウム塩の総質量100質量部当たり、10質量部以下である。
【0031】
前記ニッケル−コバルト−マンガン系正極活物質は、高容量、長寿名及び高温安定性を有するリチウム電池の具現に適切である。例えば、前記ニッケル−コバルト−マンガン系活物質は、下記化学式1で表示される物質である。
【0032】
Li(NiCoMn)O ・・・(化学式1)
【0033】
前記化学式1において、x、p、q、r及びyは、原子間モル比を表したものである。
前記化学式1において、0.95≦x≦1.05であり、0<p<1であり、0<q<1であり、0<r<1であり、p+q+r=1であり、0<y≦2である。これらのパラメータx、p、q、rの値は、例えば、0.97≦x≦1.03であり、pは、0.5であり、qは、0.2であり、rは、0.3であり、yは、2であるが、これに限定されるものではない。
【0034】
本発明の実施形態によれば、前記ニッケル−コバルト−マンガン系活物質は、LiNi0.5Co0.2Mn0.3であるが、これに限定されるものではない。
【0035】
前記電解液のうち、アジポニトリルは、ニッケル−コバルト−マンガン系正極活物質を含有した正極を採用したリチウム電池を高電圧充電した場合であっても、前記リチウム電池の寿命特性及び高温安定性の低下を実質的に防止するか、またはさらに前記リチウム電池の寿命特性及び高温安定性を向上させることによって、高容量、長寿名及び高温安定性がいずれも改善されたリチウム電池を提供する役割を行う。したがって、前記リチウム電池は、高容量、長寿名及び優秀な高温安定性を有しうる。
【0036】
ニッケル−コバルト−マンガン系正極活物質を含有する正極を採用したリチウム電池の高容量を具現するために、高電圧、例えば、4.25V以上の高電圧で充電して、さらに多いLiイオンを活用できる。しかし、前記高電圧充電システムで、ニッケル−コバルト−マンガン系活物質と電解液との反応が増加して、リチウム電池の寿命特性及び高温安定性が低下する恐れがある。
【0037】
しかし、アジポニトリルは、ニッケル−コバルト−マンガン系活物質の表面との反応で、前記活物質を含む正極の構造を安定させることによって、前記正極表面での電解液との副反応を抑制し、高電圧充電時にもリチウム電池の寿命及び高温安定性の低下を防止するか、またはさらにリチウム電池の寿命及び高温安定性を向上させうる。
【0038】
前記アジポニトリルの含量は、前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部当たり10質量部以下である。具体的には、アジポニトリルの含量は、例えば、0.1質量部〜10質量部であってもよい。前記アジポニトリルの含量が、前述したような範囲を満足する場合、これを採用したニッケル−コバルト−マンガン系正極を有するリチウム電池を高電圧(例えば、4.25V以上)充電しても、寿命特性及び高温安定性がいずれも実質的に向上しうる。
【0039】
例えば、前記アジポニトリルの含量は、前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部当たり0.1質量部〜5質量部、更に詳細には、前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部当たり1質量部〜5質量部でありうるが、これに限定されるものではない。
【0040】
具体的には、前記アジポニトリルの含量は、前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部当たり1質量部、2質量部、5質量部、または10質量部であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0041】
前記電解液のうち、非水系有機溶媒は、リチウム電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質の役割を行う。
【0042】
このような非水系有機溶媒としては、例えば、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系、または非プロトン性溶媒を挙げることができる。
【0043】
前記カーボネート系溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0044】
前記エステル系溶媒としては、例えば、メチルアセテート、エチルアセテート、n−プロピルアセテート、ジメチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、γ−ブチロラクトン、デカノライド、バレロラクトン、メバロノラクトン、カプロラクトンが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0045】
前記エーテル系溶媒としては、例えば、ジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0046】
前記ケトン系溶媒としては、例えば、シクロヘキサノンが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0047】
前記アルコール系溶媒としては、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコールが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0048】
前記非プロトン性溶媒としては、R−CN(Rは、炭素数2〜20の直鎖状、分枝状、または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含みうる。)のニトリル類、ジメチルフォルムアミドなどのアミド類、1,3−ジオキソランなどのジオキソランスルホラン類が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0049】
前記非水系有機溶媒は、単一物質で形成されるか、または2種以上の溶媒の組合わせであってもよい。前記非水系有機溶媒が2種以上の溶媒の組合わせである場合、前記2種以上の溶媒の混合比は、電池性能によって適切に調節でき、これは、当業者には広く理解されうる。
【0050】
例えば、前記非水系有機溶媒として、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びジメチルカーボネート(DMC)(1:1:1の体積比)の混合物を使用できるが、これに限定されるものではない。
【0051】
前記電解液のうち、リチウム塩は、非水系有機溶媒に溶解され、リチウム電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム電池の作動を可能にし、正極と負極との間のリチウムイオンの移動を促進する役割を行う物質である。
【0052】
前記リチウム塩は、例えば、LiPF、LiBF、LiSbF、LIAsF、LiN(SO、Li(CFSON、LiCSO、LiClO、LiAlO、LiAlCl、LiN(C2x+1SO)(C2y+1SO)(ここで、x及びyは、自然数である)、LiCl、LiI及びLiB(C(リチウムビスオキサレートボレート:LiBOB)からなる群から選択される1種以上の支持電解塩である。
【0053】
前記リチウム塩の濃度は、例えば、0.1M〜2.0M、好ましくは、0.6M〜2.0Mである。前記リチウム塩の濃度が前記範囲を満足すれば、電解液の適切な伝導度及び粘度を達成でき、リチウムイオンが効果的に移動できる。
【0054】
前記電解液は、リチウム電池の低温特性、高温スウェリング特性を向上させうる添加剤をさらに含んでもよい。前記添加剤として、例えば、カーボネート系添加剤を使用可能である。
【0055】
前記カーボネート系添加剤は、例えば、ビニレンカーボネート(VC);ハロゲン(例えば、−F、−Cl、−Br、−Iなど)、シアノ基(CN)及びニトロ基(NO)からなる群から選択された一つ以上の置換基を有するビニレンカーボネート誘導体;ハロゲン(例えば、−F、−Cl、−Br、−Iなど)、シアノ基(CN)及びニトロ基(NO)からなる群から選択された一つ以上の置換基を有するエチレンカーボネート誘導体;及びこれらのうち2以上の組合わせ;からなる群から選択されうるが、これに限定されるものではない。
【0056】
前記添加剤は、1種の物質のみで形成されてもよく、2種以上の物質の混合物であってもよい。
【0057】
具体的に、前記電解液は、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)及びこれらの組合わせからなる群から選択されたカーボネート系添加剤をさらに含んでもよい。
【0058】
本発明の実施形態に係る電解液は、添加剤としてフルオロエチレンカーボネートをさらに含んでもよい。
【0059】
本発明の他の実施形態に係る電解液は、添加剤としてビニレンカーボネート及びフルオロエチレンカーボネートをさらに含んでもよい。
【0060】
ここで、前記添加剤の含量は、前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部当たり0.1質量部〜10質量部であってもよい。前記添加剤の含量が、前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部当たり0.1質量部〜10質量部である場合、これを採用したニッケル−コバルト−マンガン系正極を有するリチウム電池を高電圧(例えば、4.25V以上)で充電しても、寿命特性及び高温安定性がいずれも実質的に向上するだけでなく、低温特性、高温スウェリング特性も満足するほどに向上できる。
【0061】
前記添加剤の含量は、好ましくは、前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部当たり1質量部〜5質量部であり、より好ましくは、前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部当たり3質量部〜4質量部であるが、これに限定されるものではない。
【0062】
更に好ましくは、前記添加剤の含量は、前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部当たり3質量部または4質量部であるが、これに限定されるものではない。
【0063】
本発明の実施形態に係るリチウム電池は、ニッケル−コバルト−マンガン系正極活物質を含有した正極、負極活物質を含む負極、及び電解液を含み、前記電解液は、非水系有機溶媒、リチウム塩、及びアジポニトリルを含み、前記電解液のうち、アジポニトリルの含量は、前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部当たり10質量部以下である。
【0064】
前記リチウム電池は、その形態が特別に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、リチウムスルファ電池のようなリチウム2次電池はもとより、リチウム1次電池を含みうる。
【0065】
前記正極は、集電体及び前記集電体上に形成される正極活物質層を備える。前記正極の形成方法の一例として、正極活物質、バインダー及び溶媒を混合して正極活物質層形成用組成物を準備する。この後、前記正極活物質層形成用組成物を集電体(例えば、アルミニウム集電体)上に直接コーティング及び乾燥して正極活物質層を形成することによって、正極の極板を製造するか、または前記正極活物質層形成用組成物を別途の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得たフィルムを、前記集電体上にラミネーションして正極活物質層を形成することによって、正極の極板を製造できる。このような正極の製造方法は、当該分野に公知された内容であるので、本明細書で詳細な説明は省略する。前記溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン、アセトン、水を使用できるが、これに限定されるものではない。
【0066】
前記正極活物質層に含まれる正極活物質は、前述したようなニッケル−コバルト−マンガン系活物質を必ず含む。前記ニッケル−コバルト−マンガン系活物質は、前述したような化学式1で表示されうる。例えば、前記ニッケル−コバルト−マンガン系活物質は、LiNi0.5Co0.2Mn0.3であるが、これに限定されるものではない。
【0067】
前記正極活物質は、前述したようなニッケル−コバルト−マンガン系活物質のみを含むものであってもよく、前記ニッケル−コバルト−マンガン系活物質と1種以上の第2正極活物質との混合物であってもよい。
【0068】
ここで、前記第2正極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーション及びデインターカレーションが可能な公知の化合物(Lithiatedインターカレーション化合物)を使用できる。前記第2正極活物質の具体的な例としては、下記化学式2〜化学式26のうちいずれか一つで表わされる化合物を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0069】
Li1−b・・・(化学式2)
(化学式2において、0.95≦a≦1.1、及び0≦b≦0.5である。)
【0070】
Li1−b2−c ・・・(化学式3)
(化学式3において、0.95≦a≦1.1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である。)
【0071】
LiE2−b4−c ・・・(化学式4)
(化学式4において、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である。)
【0072】
LiNi1−b−cCoα ・・・(化学式5)
(化学式5において、0.95≦a≦1.1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である。)
【0073】
LiNi1−b−cCo2−αα ・・・(化学式6)
(化学式6において、0.95≦a≦1.1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である。)
【0074】
LiNi1−b−cCo2−α ・・・(化学式7)
(化学式7において、0.95≦a≦1.1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である。)
【0075】
LiNi1−b−cMnα ・・・(化学式8)
(化学式8において、0.95≦a≦1.1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である。)
【0076】
LiNi1−b−cMn2−αα ・・・(化学式9)
(化学式9において、0.95≦a≦1.1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である。)
【0077】
LiNi1−b−cMn2−α ・・・(化学式10)
(化学式10において、0.95≦a≦1.1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である。)
【0078】
LiNi ・・・(化学式11)
(化学式11において、0.90≦a≦1.1、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0.001≦d≦0.1である。)
【0079】
LiNiCoMn ・・・(化学式12)
(化学式12において、0.90≦a≦1.1、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0.001≦e≦0.1である。)
【0080】
LiNiG ・・・(化学式13)
(化学式13において、0.90≦a≦1.1、0.001≦b≦0.1である。)
【0081】
LiCoG ・・・(化学式14)
(化学式14において、0.90≦a≦1.1、0.001≦b≦0.1である。)
【0082】
LiMnG ・・・(化学式15)
(化学式15において、0.90≦a≦1.1、0.001≦b≦0.1である。)
【0083】
LiMn ・・・(化学式16)
(化学式16において、0.90≦a≦1.1、0.001≦b≦0.1である。)
【0084】
QO ・・・(化学式17)
QS ・・・(化学式18)
LiQS ・・・(化学式19)
・・・(化学式20)
LiV ・・・(化学式21)
LiZO ・・・(化学式22)
LiNiVO ・・・(化学式23)
Li(3−f)(PO(0≦f≦2) ・・・(化学式24)
Li(3−f)Fe(PO(0≦f≦2) ・・・(化学式25)
LiFePO ・・・(化学式26)
【0085】
前記化学式2〜化学式26において、Aは、Ni、Co、Mn、及びこれらの組合わせからなる群から選択され、Xは、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素及びこれらの組合わせからなる群から選択され、Dは、O、F、S、P、及びこれらの組合わせからなる群から選択され、Eは、Co、Mn、及びこれらの組合わせからなる群から選択され、Mは、F、S、P、及びこれらの組合わせからなる群から選択され、Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、及びこれらの組合わせからなる群から選択され、Qは、Ti、Mo、Mn、及びこれらの組合わせからなる群から選択され、Zは、Cr、V、Fe、Sc、Y、及びこれらの組合わせからなる群から選択され、Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、及びこれらの組合わせからなる群から選択される。
【0086】
もちろん、前述したような化学式2〜化学式26の化合物の表面にコーティング層を有するものも使用でき、また、前記化学式2〜化学式26の化合物とコーティング層を有する化合物とを混合して使用することも可能である。このコーティング層は、コーティング元素のオキシド、コーティング元素(コーティング置換基)のヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネート及びコーティング元素のヒドロキシカーボネートからなる群から選択される少なくとも一つのコーティング元素化合物を含みうる。これらのコーティング層を形成する化合物は、非晶質または結晶質であってもよい。前記コーティング層に含まれるコーティング元素としては、例えば、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zrまたはこれらの混合物を使用できる。
【0087】
前記コーティング層の形成工程は、前記化合物にこのような元素や置換基を使用して、正極活物質の物性に悪影響を与えない方法であれば、例えば、スプレーコーティング、浸漬法によるコーティングなど、いかなるコーティング方法を使用してもよく、これについては、当業者によく理解されうる内容であるので、ここで、詳細な説明は省略する。
【0088】
前記正極活物質がニッケル−コバルト−マンガン系活物質と前記第2正極活物質との混合物である場合、前記ニッケル−コバルト−マンガン系活物質と前記第2正極活物質との混合比は、具現しようとするリチウム電池の目的性能を考慮して、適切に選択されうる。
【0089】
本発明の実施形態によれば、前記正極活物質層のうち、正極活物質は、前述したようなニッケル−コバルト−マンガン系活物質のみを含む。
【0090】
また、本発明の他の実施形態によれば、前記正極活物質層のうち、正極活物質は、前述したようなニッケル−コバルト−マンガン系活物質と前述したような第2正極活物質との混合物である。ここで、前記第2正極活物質は、LiCoOであってもよい。例えば、前記ニッケル−コバルト−マンガン系活物質と前記第2正極活物質とは、3:7の質量比で混合されうるが、これに限定されるものではない。
【0091】
前記正極活物質層に含まれるバインダーは、正極活物質粒子を互いによく付着させ、また正極活物質を集電体によく付着させる役割を行う。バインダーの代表的な例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、塩化ポリビニル、カルボキシル化された塩化ポリビニル、フッ化ポリビニル、酸化エチレンを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ポリビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエンラバー、アクリレート化スチレン−ブタジエンラバー(SBR)、エポキシ樹脂、ナイロン等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0092】
前記正極活物質層は、導電剤をさらに含んでもよい。前記導電剤は、電極に導電性を付与するために使われるものであって、構成される電池において、化学変化をもたらさず、電子伝導性材料ならば、いかなるものも使用可能である。かかる導電剤の例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケチェンブラック、炭素ファイバのような炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀のような金属粉末または金属ファイバのような金属系物質;ポリフェニレン誘導体のような導電性ポリマー、またはこれらの混合物を含む導電性材料を挙げることができる。
【0093】
前記集電体としては、例えば、アルミニウムを使用できるが、これに限定されるものではない。
【0094】
前述した正極極板の製造時と同様に、負極活物質、導電剤、結合剤及び溶媒を混合して負極活物質組成物を製造し、これを集電体(例えば、銅集電体)に直接コーティングするか、または別途の支持体上にキャスティングして、この支持体から剥離させた負極活物質フィルムを銅集電体にラミネーションして負極極板を製造できる。このとき、負極活物質、導電剤、結合剤及び溶媒の含量は、リチウム電池で通常的に使用するレベルであってもよい。
【0095】
前記負極活物質としては、例えば、天然黒鉛、シリコン/炭素複合体(SiO)、シリコン金属、シリコン薄膜、リチウム金属、リチウム合金、炭素材またはグラファイトを使用できる。負極活物質組成物において、導電剤、バインダー及び溶媒は、正極の場合と同じものを使用できる。場合によっては、前記正極電極活物質組成物及び負極電極活物質組成物に可塑剤をさらに付加して電極板の内部に気孔を形成できる。
【0096】
リチウム電池の種類によって、正極と負極との間にセパレータが存在してもよい。このようなセパレータとしては、リチウム電池で通常的に使われるものならば、いずれも使用できる。特に、電解質のイオン移動に対して低抵抗でありつつ、電解液の含湿能力が優秀なものが適している。かかるセパレータとして、例えば、ガラスファイバ、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、これらのうち任意の組合わせのうちから選択された材質を利用可能であり、不織布または織布形態でも関係ない。これをさらに詳細に説明すれば、リチウムイオン電池の場合には、ポリエチレン、ポリプロピレンのような材料からなる巻取可能なセパレータを使用でき、リチウムイオンポリマー電池の場合には、有機電解液の含湿能力が優秀なセパレータを使用するが、このようなセパレータは、下記の方法によって製造できる。
【0097】
高分子樹脂、充填剤及び溶媒を混合してセパレータ組成物を準備した後、前記セパレータ組成物を電極の上部に直接コーティング及び乾燥してセパレータフィルムを形成するか、または前記セパレータ組成物を支持体上にキャスティング及び乾燥した後、前記支持体から剥離させたセパレータフィルムを電極の上部にラミネーションして形成できる。
【0098】
前記高分子樹脂は、特別に限定されず、電極板の結合剤に使われる物質がいずれも使用可能である。かかる高分子樹脂として、例えば、ビニリデンフルオライド/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート及びその混合物を使用できる。特に、ヘキサフルオロプロピレンの含量が8〜25質量%であるビニリデンフルオライド/ヘキサフルオロプロピレン共重合体を使用できる。
【0099】
前述したような正極極板と負極極板との間にセパレータを配して電池構造体を形成する。このような電池構造体をワインディングするか、または折り畳んで円筒形の電池ケースやまたは角形の電池ケースに入れ込んだ後、本発明の実施形態に係る有機電解液を注入すれば、リチウムイオン電池が完成される。また、前記電池構造体をバイセル構造で積層した後、これを本発明の実施形態に係る有機電解液に含浸させ、得られた結果物をパウチに入れて密封すれば、リチウムイオンポリマー電池が完成される。
【0100】
図1は、本発明の一具現例によるリチウム電池の代表的な構造を概略的に示した図面である。図1に示したように、前記リチウム電池30は、正極23、負極22及び前記正極23と負極22との間に配されたセパレータ24、前記正極23、負極22及びセパレータ24に含浸された電解液(図示せず)、電池容器25、及び前記電池容器25を封入する封入部材26を主部分として構成されている。このようなリチウム電池30は、正極23、負極22及びセパレータ24を順次に積層した後、スパイラル状に巻き取られた状態で電池容器25に受納して構成できる。
【0101】
前記リチウム電池の電解液に含まれた分析対象成分(例えば、アジポニトリル)の存否及び/又は含量は、例えば、ガスクロマトグラフィ(GC)を利用して分析できる。
【0102】
ここで、前記分析対象成分の含量を分析する定量分析方法としては、例えば、ISTD(Internal Standard Method)及び/又はESTD(External Standard Method)を利用できる。
【0103】
前記ISTDは、例えば、エチルアセテート(エチルアセテート:EA)を内部基準成分として使用して行われうる。一方、前記ESTDは、例えば、分析対象成分(例えば、アジポニトリル)に対して濃度別基準成分を2以上設け、これを使用することによって行われうる。
【0104】
前記リチウム電池の電解液のうち、分析対象成分(例えば、アジポニトリル)の定量分析方法の一例は、分析対象リチウム電池のうち、電解液を抽出するステップと、前記抽出された電解液に対して、前述したようなISTDまたはESTDを利用したGC分析を行って前記分析対象成分についてのデータを収集するステップと、前記データから前記分析対象成分の含量(例えば、質量%または体積%)を計算するステップと、を含みうるが、これに限定されるものではない。
【0105】
さらに詳細なGC分析方法は、例えば、Principles Of Instrumental Analysis、fifth edition、douglas A.skoog、et al.、pp.701−722を参照できる。
【0106】
本発明の実施形態に係るリチウム電池は、ニッケル−コバルト−マンガン系活物質を含む正極を採用し、前述したようなアジポニトリルを含む電解液を含み、高電圧、例えば、4.25V以上、具体的には、4.3V以上、さらに具体的には、4.4V以上の高電圧条件下で充電しても、長寿名及び高温安定性が向上しうる。したがって、前記リチウム電池は、高容量、長寿名、及び高温安定性がいずれも同時に改善されうる。
【0107】
したがって、本発明の実施形態に係るリチウム電池は、充電終止電圧が4.25V以上、例えば、4.3V以上、具体的には、4.4V以上となりうる。
【0108】
本発明の他の観点によれば、前述したようなリチウム電池を提供するステップと、前記リチウム電池の充電終止電圧が4.25V以上となるように、前記リチウム電池を充電するステップと、を含むリチウム電池の作動方法が提供される。
【0109】
前記リチウム電池の作動方法によれば、充電終止電圧が4.25V以上となるように充電しても、長寿名及び高温安定性の確保が可能であるため、4.25Vのような高電圧充電による高容量で作動されうる。
【実施例】
【0110】
以下、望ましい実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0111】
(実施例1)
天然黒鉛及びポリフッ化ビニリデンバインダーを96:4の質量比でN−メチルピロリドン溶媒で混合して、負極スラリーを製造した。前記負極スラリーを14μmの厚さに銅箔上にコーティングして薄い極板の形態に形成した後、135℃で3時間以上乾燥させ、圧延して負極を製造した。
【0112】
LiNi0.5Co0.2Mn0.3正極活物質、ポリフッ化ビニリデンバインダー、及びカーボン導電剤を96:2:2の質量比でN−メチルピロリドン溶媒で分散させて、正極スラリーを製造した。前記正極スラリーを60μmの厚さにアルミニウム箔上にコーティングして薄い極板の形態に形成した後、135℃で3時間以上乾燥させ、圧延して正極を製造した。
【0113】
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、及びジメチルカーボネート(DMC)を1:1:1の体積比で混合した溶媒にフルオロエチレンカーボネート(FEC)、アジポニトリル及び1.3M LiPFを添加して電解液を製造した。ここで、フルオロエチレンカーボネートの含量は、前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部当たり3質量部であり、アジポニトリルの含量は、前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部当たり1質量部であった。
【0114】
前記製造された負極及び正極を多孔質ポリエチレン(PE)フィルムからなるセパレータを使用して巻取及び圧縮して電池ケースに入れた後、前記電解液を注入して2600mAh容量のリチウム電池を製造した。
【0115】
(実施例2)
前記アジポニトリルの含量を、前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部当たり2質量部に調節したことを除いては、前記実施例1と同じ方法でリチウム電池を製造した。
【0116】
(比較例1)
前記アジポニトリルを添加しなかった以外は、前記実施例1と同じ方法を利用して、リチウム電池を製造した。
【0117】
(比較例2)
前記アジポニトリルの代わりに、スクシノニトリルを使用(スクシノニトリルの含量は、前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部当たり2質量部である。)した点を除いては、前記実施例1と同じ方法を利用して、リチウム電池を製造した。
【0118】
(評価例1:寿命及び高温安定性の評価)
実施例1、2と比較例1、2とから製造されたリチウム電池に対して、常温で520mAの充放電速度で4.3V CC(Constant Current)/CV(Constant Voltage)20mAのカットオフ充電をした後、520mAの充放電速度で2.75Vカットオフ放電する充放電過程を3回反復することによって、化成工程を行った。
【0119】
(寿命評価)
前述したように、化成工程が行われた実施例1、2及び比較例1、2のリチウム電池を常温(約25℃)で2080mAの充放電速度で4.3V CC/CV 100mAのカットオフ充電した後、2600mAの充放電速度で3Vカットオフ放電する1サイクル実行後に初期容量を測定した。この後、各リチウム電池に対して100サイクルを行い、100サイクル後の容量を測定した。これから、容量維持率((100サイクル後の容量/初期容量)×100)(%)を計算して、常温−寿命特性(100サイクル)を評価した。
【0120】
一方、容量評価温度を常温から45℃に変更し、サイクルを反復回数を100回から300回に変更したことを除いては、前記常温−寿命特性評価方法と同じ方法で各電池に対して寿命特性を評価して、45℃−寿命特性(300サイクル)を評価した。
【0121】
前記寿命評価結果を、下記の表1に示す。また、常温−寿命特性(100サイクル)を、図2に示す。
【0122】
(高温安定性評価)
前述したように、化成工程が行われた実施例1、2と比較例1、2のリチウム電池を常温(約25℃)で1300mA充放電速度で4.3V CC/CV 100mAカットオフ充電した後、520mAの充放電速度で2.75Vカットオフ放電して初期容量を測定した。この後、各リチウム電池に対して1300mA充放電速度で4.3V CC/CV 100mAカットオフ充電した後、60℃で30日間放置した後、520mAの充放電速度で2.75Vカットオフ放電して1000khzでOCV(Open Circuit Voltage)及び60℃で30日放置した後の容量を測定した。これから、60℃で30日放置した後の容量維持率((60℃で30日放置した後の容量/初期容量)×100)(%)を計算した。
【0123】
前記高温安定性の評価結果を、下記表1に示す。
【0124】
【表1】

【0125】
表1及び図2から、実施例1、2のリチウム電池は、4.3Vの高電圧下で充電されても、比較例1、2のリチウム電池に比べて、優秀な寿命特性及び高温安定性を有することが確認できる。また、実施例2(2質量部のアジポニトリル)のリチウム電池は、比較例2(2質量部のサクシノニトリル)の電池に比べて、顕著に向上した寿命及び高温安定性を有することが分かる。
【0126】
(比較例3)
添加剤として3質量部のFECの代わりに、2質量部(前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部基準である。)のビニレンカーボネート(VC)及び2質量部(前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部基準である。)のFECを使用した点を除いては、前記比較例1と同じ方法でリチウム電池を製造した。
【0127】
(比較例4)
添加剤として3質量部のFECの代わりに、2質量部(前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部基準である。)のビニレンカーボネート(VC)及び2質量部(前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部基準である。)のFECを使用した点を除いては、前記比較例2と同じ方法でリチウム電池を製造した。
【0128】
(実施例3)
添加剤として3質量部のFECの代わりに、2質量部(前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部基準である。)のビニレンカーボネート(VC)及び2質量部(前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部基準である。)のFECを使用した点を除いては、前記実施例1と同じ方法でリチウム電池を製造した。
【0129】
(実施例4)
添加剤として3質量部のFECの代わりに、2質量部(前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部基準である。)のビニレンカーボネート(VC)及び2質量部(前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部基準である。)のFECを使用した点を除いては、前記実施例2と同じ方法でリチウム電池を製造した。
【0130】
(実施例5)
2質量部のアジポニトリルの代わりに、5質量部(前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部基準である。)のアジポニトリルを使用した点を除いては、前記実施例4と同じ方法でリチウム電池を製造した。
【0131】
(実施例6)
2質量部のアジポニトリルの代わりに、10質量部(前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部基準である。)のアジポニトリルを使用した点を除いては、前記実施例4と同じ方法でリチウム電池を製造した。
【0132】
(比較例5)
2質量部のアジポニトリルの代わりに、15質量部(前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部基準である。)のアジポニトリルを使用した点を除いては、前記実施例4と同じ方法でリチウム電池を製造した。
【0133】
(評価例2:寿命評価)
比較例3〜5と実施例3〜6のリチウム電池に対して、前記評価例1に記載されたものと同じ方法で45℃寿命特性(300サイクル)を寿命特性を評価した。その結果を、表2及び図3に示す。
【0134】
【表2】

【0135】
表2及び図3から、実施例3〜6のリチウム電池は、4.3Vの高電圧下で充電されても、比較例3〜5のリチウム電池に比べて、優秀な高温安定性を有することが確認できる。また、実施例4(2質量部のアジポニトリル)の電池は、比較例4(2質量部のサクシノニトリル)の電池に比べて、顕著に向上した効果を有し、実施例3、4、5及び6(それぞれ1、2、5及び10質量部のアジポニトリル)の電池は、比較例5(15質量部のアジポニトリル)に比べて、顕著に向上した効果を有することが分かる。
【0136】
(比較例6)
正極活物質として、LiNi0.5Co0.2Mn0.3のみを使用する代わりに、LiCoO及びLiNi0.5Co0.2Mn0.3(7:3の質量比)の混合物を使用した点を除いては、前記比較例3と同じ方法でリチウム電池を製造した。
【0137】
(比較例7)
正極活物質として、LiNi0.5Co0.2Mn0.3のみを使用する代わりに、LiCoO及びLiNi0.5Co0.2Mn0.3(7:3の質量比)の混合物を使用した点を除いては、前記比較例4と同じ方法でリチウム電池を製造した。
【0138】
(実施例7)
正極活物質として、LiNi0.5Co0.2Mn0.3のみを使用する代わりに、LiCoO及びLiNi0.5Co0.2Mn0.3(7:3の質量比)の混合物を使用した点を除いては、前記実施例3と同じ方法でリチウム電池を製造した。
【0139】
(実施例8)
正極活物質として、LiNi0.5Co0.2Mn0.3のみを使用する代わりに、LiCoO及びLiNi0.5Co0.2Mn0.3(7:3の質量比)の混合物を使用した点を除いては、前記実施例4と同じ方法でリチウム電池を製造した。
【0140】
(実施例9)
正極活物質として、LiNi0.5Co0.2Mn0.3のみを使用する代わりに、LiCoO及びLiNi0.5Co0.2Mn0.3(7:3の質量比)の混合物を使用した点を除いては、前記実施例5と同じ方法でリチウム電池を製造した。
【0141】
(評価例3)
比較例6及び7と実施例7〜9のリチウム電池に対して、充放電300サイクルを行う代わりに、充放電200サイクルを行った点を除いては、前記評価例1に記載されたことと同じ方法で45℃−寿命特性(200サイクル)を評価した。その結果を、表3及び図4に示す。
【0142】
【表3】

【0143】
表3及び図4より、実施例7〜9のリチウム電池は、4.3Vの高電圧下で充電されても、比較例6及び7のリチウム電池に比べて、優秀な高温安定性を有することが確認できる。また、実施例9(2質量部のアジポニトリル)の電池は、比較例7(2質量部のサクシノニトリル)の電池に比べて、顕著に向上した効果を有することが分かる。
【0144】
(比較例8)
正極活物質として、LiNi0.5Co0.2Mn0.3を使用する代わりに、LiCoOを使用した点を除いては、前記比較例3と同じ方法でリチウム電池を製造した。
【0145】
(比較例9)
正極活物質として、LiNi0.5Co0.2Mn0.3を使用する代わりに、LiCoOを使用した点を除いては、前記実施例4と同じ方法でリチウム電池を製造した。
【0146】
(評価例4:安全弁(Current Interrupt Device:CID)作動時間評価)
比較例8、9と、実施例3〜5から製造されたリチウム電池に対して、常温で520mAの充放電速度で4.3V CC/CV 20mAカットオフ充電した後、520mAの充放電速度で2.75Vカットオフ放電する充放電過程を3回反復することによって、化成工程を行った。
【0147】
前述したように、化成工程が行われた比較例8、9と実施例3〜5から製造されたリチウム電池のそれぞれに対して、常温(約25℃)で1300mAの充放電速度で4.4V CC/CV 100mAカットオフ充電した後、90℃で放置した後、CID作動時点を測定した。前記CIDとは、密閉された素子内の圧力の変化、すなわち、圧力上昇を感知して一定圧力以上となる場合、それ自体が電流を遮断する素子であって、これは、当業界に自明なことであるでの、これについての説明は省略する。
【0148】
【表4】

【0149】
前記表4より、実施例3、4、5のリチウム電池が、比較例8、9のリチウム電池より4.4Vの高電圧充電及び90℃放置後のCID作動時点が長いことが分かる。特定理論によって限定されるものではないが、前記表4の結果から、実施例3、4、5のリチウム電池は、比較例8、9のリチウム電池に比べて、90℃という高温でも、正極と電解液との副反応によるガス発生が実質的に抑制されることが確認できる。また、実施例4(LiNi0.5Co0.2Mn0.3及び2質量部のアジポニトリル)の電池は、比較例9(LiCoO及び2質量部のアジポニトリル)の電池に比べて、顕著に優秀なCID作動時間性能を表すことが分かる。
【0150】
(比較例10)
正極活物質として、LiNi0.5Co0.2Mn0.3の代わりに、LiCoOを使用した点を除いては、前記比較例2と同じ方法でリチウム電池を製作した。
【0151】
(比較例11)
サクシノニトリルの代わりに、グルタロニトリルを使用した点を除いては、前記比較例2と同じ方法でリチウム電池を製作した。
【0152】
(比較例12)
サクシノニトリルの代わりに、グルタロニトリルを使用した点を除いては、前記比較例10と同じ方法でリチウム電池を製作した。
【0153】
(評価例5:安全弁評価作動時間の評価)
前記評価例4に記載されたような方法を利用して、比較例2、比較例10、実施例2、比較例11及び比較例12のリチウム電池に対して、安全弁実験を行った。その結果を前記比較例9の結果と共に、下記表5に表した。
【0154】
【表5】

【0155】
前記表5より、比較例2(サクシノニトリル使用)及び比較例10(サクシノニトリル使用)のリチウム電池のCID作動時点は、それぞれ10時間及び2時間である一方、アジノニトリルの代わりに、サクシノニトリルを使用する場合、正極活物質をLiNi0.5Co0.2Mn0.3またはLiCoOで使用しても、CID作動時点には顕著な差が無いことが分かる。これと類似して、比較例11(グルタロニトリル使用)及び比較例12(グルタロニトリル)のリチウム電池のCID作動時点は、それぞれ12時間及び2時間である一方、アジノニトリルの代わりに、グルタロニトリルを使用する場合、正極活物質をLiNi0.5Co0.2Mn0.3またはLiCoOとしても、CID作動時点には顕著な差が無いことが分かる。
【0156】
一方、比較例9(アジポニトリル使用)及び実施例2(アジポニトリル使用)のリチウム電池のCID作動時点は、それぞれ2時間及び28時間であるが、正極活物質としてLiCoOの代わりに、LiNi0.5Co0.2Mn0.3をアジポニトリルと使用する場合、顕著に向上した効果を有することが分かる。
【0157】
また、前記表5より、比較例11(グルタロニトリル使用)及び比較例2(サクシノニトリル使用)のリチウム電池のCID作動時点は、それぞれ12時間及び10時間であるが、正極活物質としてLiNi0.5Co0.2Mn0.3を使用する場合、サクシノニトリル及びグルタロニトリルの性能は、類似していることが分かる。比較例10(サクシノニトリル使用)及び比較例12(グルタロニトリル)のリチウム電池のCID作動時点は、いずれも2時間であるが、正極活物質としてLiCoOを使用する場合、サクシノニトリル及びグルタロニトリルの性能は、類似していることが分かる。
【0158】
また、表5から、LiNi0.5Co0.2Mn0.3正極活物質とサクシノニトリルまたはグルタロニトリルとの組合わせを含む電池と、LiCoO正極活物質とサクシノニトリルまたはグルタロニトリルとの組合わせを含む電池とのCID作動時点性能の差は、極めて微小であることが分かる。逆に、表5から、LiNi0.5Co0.2Mn0.3正極活物質とアジポニトリルとの組合わせを含む電池は、LiCoO正極活物質とアジポニトリルとの組合わせを含む電池に比べて、顕著に向上したCID作動時点を表すことが分かる。
【0159】
また、比較例11(グルタロニトリル使用)及び比較例2(サクシノニトリル使用)の電池のCID作動時点は、それぞれ12時間及び10時間であるが、実施例2(アジポニトリル使用)の電池のCID作動時点は、28時間であるので、実施例2の電池は、サクシノニトリル及びグルタロニトリルを使用した電池に比べて、顕著に向上した効果を有することが分かる。
【0160】
前述したように、本発明の実施形態によれば、正極活物質として、Ni−Co−Mn系活物質を含み、アジポニトリルを含む電解液を備えたリチウム電池は、高温で充電されても、顕著に向上した寿命及び高温安定性を有しうる。
【0161】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本発明は、リチウム電池関連の技術分野に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0163】
22 負極
23 正極
24 セパレータ
25 電池容器
26 封入部材
30 リチウム電池



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル、コバルト及びマンガンを含む正極活物質を有する正極を備えるリチウム電池用の電解液であって、
前記電解液は、非水系有機溶媒、リチウム塩及びアジポニトリルを含み、
前記電解液のうち前記アジポニトリルの含量は、前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部当たり10質量部以下である
ことを特徴とする、リチウム電池用電解液。
【請求項2】
前記正極活物質は、下記化学式1で表示される物質であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム電池用電解液。

Li(NiCoMn)O ・・・(化学式1)

ここで、前記化学式1において、0.95≦x≦1.05であり、0<p<1であり、0<q<1であり、0<r<1であり、p+q+r=1であり、0<y≦2である。
【請求項3】
前記正極活物質は、LiNi0.5Co0.2Mn0.3を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のリチウム電池用電解液。
【請求項4】
前記アジポニトリルの含量は、前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部当たり0.1質量部〜10質量部であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウム電池用電解液。
【請求項5】
前記アジポニトリルの含量は、前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部当たり1質量部〜5質量部であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウム電池用電解液。
【請求項6】
前記電解液は、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及びこれらの組合わせからなる群から選択された一つ以上のカーボネート系添加剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のリチウム電池用電解液。
【請求項7】
前記カーボネート系添加剤の含量は、前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部当たり0.1質量部〜10質量部であることを特徴とする、請求項6に記載のリチウム電池用電解液。
【請求項8】
ニッケル、コバルト及びマンガンを含む正極活物質を有する正極と、
負極活物質を含む負極と、
電解液と、
を含み、
前記電解液は、非水系有機溶媒、リチウム塩及びアジポニトリルを含み、
前記電解液のうち前記アジポニトリルの含量は、前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部当たり10質量部以下である
ことを特徴とする、リチウム電池。
【請求項9】
前記アジポニトリルの含量は、前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部当たり0.1質量部〜10質量部であることを特徴とする、請求項8に記載のリチウム電池。
【請求項10】
前記アジポニトリルの含量は、前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部当たり1質量部〜5質量部であることを特徴とする、請求項8または9に記載のリチウム電池。
【請求項11】
前記正極活物質は、下記化学式1で表示される物質であることを特徴とする、請求項8〜10のいずれか1項に記載のリチウム電池。

Li(NiCoMn)O ・・・(化学式1)

ここで、前記化学式1において、0.95≦x≦1.05であり、0<p<1であり、0<q<1であり、0<r<1であり、p+q+r=1であり、0<y≦2である。
【請求項12】
前記正極活物質は、LiNi0.5Co0.2Mn0.3を含むことを特徴とする、請求項11に記載のリチウム電池。
【請求項13】
前記正極は、第2正極活物質をさらに含むことを特徴とする、請求項8〜12のいずれか1項に記載のリチウム電池。
【請求項14】
前記第2正極活物質として、LiCoOをさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載のリチウム電池。
【請求項15】
前記電解液は、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及びこれらの組合わせからなる群から選択されたカーボネート系添加剤をさらに含むことを特徴とする、請求項8〜14のいずれか1項に記載のリチウム電池。
【請求項16】
前記カーボネート系添加剤の含量は、前記非水系有機溶媒及び前記リチウム塩の総質量100質量部当たり0.1質量部〜10質量部であることを特徴とする、請求項15に記載のリチウム電池。
【請求項17】
充電終止電圧は、4.25V以上であることを特徴とする、請求項8〜16のいずれか1項に記載のリチウム電池。
【請求項18】
請求項8〜17のうちいずれか1項に記載のリチウム電池を提供するステップと、
前記リチウム電池の充電終止電圧が4.25V以上となるように前記リチウム電池を充電するステップと、
を含むことを特徴とする、リチウム電池の作動方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−54560(P2011−54560A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168685(P2010−168685)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】