説明

リニアアクチュエータの制御装置

【課題】電磁ソレノイドに供給される駆動電流を遮断する際にプランジャがストッパーに当接する衝撃を抑制する制御装置を構成する。
【解決手段】プランジャを目標とする位置まで移動させる際には、電磁ソレノイドVsに駆動電流を供給する電力制御部Bが、第1設定値F1を目標電流値に設定して駆動電流を供給するノーマル駆動モードの制御を実行する。次に、プランジャをストッパーに当接する位置まで戻す際には、電力制御部Bが、第1設定値F1より低い値で、プランジャがストッパーに当接しない値となる第2設定値F2を目標電流値に設定して駆動電流を供給する保持モードの制御を実行し、これに続いて、目標電流値を段階的に低減するスイープ駆動モードの制御を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアアクチュエータの制御装置に関し、詳しくは、付勢手段からの付勢力によりストッパーに当接する当接位置で停止するプランジャと、通電時の磁力の作用により前記付勢手段の付勢力に抗して前記プランジャを直線的に作動させる電磁ソレノイドとを備えたリニアアクチュエータの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成されたリニアアクチュエータとして特許文献1には、電磁ソレノイド(文献ではコイル)を外周に備えた円筒形状の磁性スリーブの内部空間に対して、直線上に作動自在にプランジャを配置した電磁弁装置が示されている。この電磁弁装置では、リニアアクチュエータがプランジャの作動によりスプール弁を操作するように構成され、磁性スリーブの端部側のカバーにはプランジャの底部が当接するストッパー(文献では緩衝部材)を備えており、スプール弁にはプランジャの底部をストッパーに当接させる付勢力を作用させる付勢手段(文献ではスプリング)を備えている。
【0003】
また、リニアアクチュエータの制御装置として特許文献2には、電磁ソレノイド(文献ではリニアソレノイド)に対してPWM出力部から指令電流値に基づいた電流を供給し、この電流の供給時に電磁ソレノイドに流れる電流値をモニタし、モニタした電流値をフィードバックすることで電磁ソレノイドの抵抗値等を取得し、これに基づいて指令電流値を演算する制御形態が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009‐79605号公報
【特許文献2】特開平09‐280411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電磁バルブのスプールを作動させるプランジャを備えたリニアアクチュエータでは、電磁ソレノイドに駆動電流を供給した場合に、付勢手段の付勢力に抗してプランジャが所定位置まで作動する。この作動状態で駆動電流を遮断した(消磁した)場合には、付勢手段の付勢力により、プランジャがストッパーに当接する位置まで変位する(戻る)ため、この当接により衝撃を生ずるだけではなく、スプールを破損させることもある。
【0006】
このような不都合を解消するために、特許文献1ではストッパーとして緩衝部材を用いることで衝撃を抑制し、作動音を軽減している。
【0007】
また、ストッパーとして緩衝部材を用いたものであっても、衝撃や作動音を完全に無くすことは困難であり、付勢手段の付勢力によりプランジャが当接位置に到達した際の衝撃の低減が望まれている。そこで、電磁ソレノイドに供給される駆動電流を遮断する際に、駆動電流を徐々に低減する制御形態も考えられるが、電磁バルブの駆動対象が油圧クラッチである場合には、入り状態から切り状態への切り換わりに時間を要することになり改善の余地がある。
【0008】
本発明の目的は、電磁ソレノイドに供給される駆動電流を遮断する制御時にプランジャがストッパーに当接する際の衝撃を抑制する制御装置を合理的に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の特徴は、付勢手段からの付勢力によりストッパーに当接する当接位置で停止するプランジャと、通電時の磁力の作用により前記付勢手段の付勢力に抗して前記プランジャを直線的に作動させる電磁ソレノイドとを備えてリニアアクチュエータが構成され、前記電磁ソレノイドに駆動電流を供給する電力制御部を備え、この電力制御部は、前記プランジャを目標位置まで作動させるよう目標電流値を第1設定値に設定して前記電磁ソレノイドに駆動電流を供給するノーマル駆動モードと、このノーマル駆動モードから前記プランジャの前記当接位置への移行時に前記目標電流値を前記第1設定値より低い値で前記プランジャが前記ストッパーに当接しない値の第2設定値に設定して前記電磁ソレノイドに駆動電流を供給する保持モードと、この保持モードから前記プランジャの前記当接位置への移行時に前記電磁ソレノイドに供給される駆動電流を時間経過に伴って低減するスイープ駆動モードとに制御切換可能な点にある。
【0010】
この構成によると、電力制御手段がノーマル駆動モードを実行することで、目標電流値に第1設定値を設定して電磁ソレノイドに駆動電流が供給され、プランジャを目標位置まで作動させる。このノーマル駆動モードにおいて、プランジャを当接位置へ移行させる際には、電力制御手段が保持モードを実行することで、目標電流値を第2設定値に設定して電磁ソレノイドに駆動電流が供給され、プランジャはストッパーに当接しない位置に保持される。このようにノーマル駆動モードから保持モードに移行した場合には、目標電流値を第1設定値から第2設定値まで即座に下降させるため、目標電流値を第1設定値から徐々に低減するものと比較して、プランジャがストッパーに当接する位置の近傍まで高速で作動させることも可能となる。
この後に、電力制御手段がスイープ駆動モードを実行することで、電磁ソレノイドに供給される駆動電流が時間経過に伴って低減し、付勢手段の付勢力によりプランジャがストッパーに接近する方向に移動し、駆動電流を遮断した際にはストッパーに対して近接する位置からプランジャを低速度で当接させることになり、衝撃を発生させることがない。
従って、電磁ソレノイドに供給される駆動電流を遮断する制御時にプランジャがストッパーに当接する際の速度を低くして、この当接の際の衝撃を抑制する制御装置が構成された。特に、この構成では、緩衝部材を用いる必要もない。
【0011】
本発明は、前記電力制御部が、入り信号により前記ノーマル駆動モードでの制御を実行し、このノーマル駆動モードにおいて切り信号により前記保持モードでの制御を実行し、これに続き、前記スイープ駆動モードの制御を実行しても良い。
【0012】
これによると、例えば、プランジャが油圧バルブのスプールを作動させるものであり、このスプールが油圧クラッチを断続する作動油を制御するものである場合に、入り信号を取得した場合にプランジャを目標位置まで迅速に作動させて油圧クラッチを入り操作し、この後に切り信号を取得した場合に、保持モードとスイープ駆動モードとをシーケンシャルに実行することで衝撃や作動音を招くことなく油圧クラッチを切り操作する。つまり、入り信号と切り信号との2種の信号だけで、プランジャを目標位置まで作動させ、この後に、プランジャをストッパーと当接する位置までソフトに戻す作動が実現する。
【0013】
本発明は、前記電磁ソレノイドに供給される駆動電流を検出電流値として取得する電流値取得手段を備え、前記電力制御部は、前記保持モードにおいて前記電流値取得手段で取得した前記検出電流値が前記第2設定値より高い値の第3設定値に達するまで前記目標電流値を前記第2設定値に保持し、前記検出電流値が第3設定値まで低減した場合に、前記スイープ駆動モードに移行しても良い。
【0014】
ノーマル駆動モードから保持モードに切り換わり、第2設定値を目標電流値として駆動電流が供給された場合には、電磁ソレノイドに供給される実電流値が第1設定値から第2設定値に向けて低減する。この実電流値は電磁ソレノイドからプランジャに作用する磁力に比例するため、プランジャの位置を反映している。従って、電流値取得手段が取得した検出電流値が第3設定値まで低減したタイミングではプランジャは第3設定値に対応する位置に達しており、この位置からスイープ駆動モードに移行することで、プランジャがストッパーに近接する位置でスイープ駆動モードに移行できる。
【0015】
本発明は、前記電力制御部が、前記スイープ駆動モードでは、設定時間毎に目標電流値を低減することで前記電磁ソレノイドに供給される駆動電流の低減を図り、このスイープ駆動モードにおいて前記電流値取得手段で取得される検出電流値が、予め設定された第4設定値まで低下した場合に、前記電磁ソレノイドへの駆動電力の供給を停止しても良い。
【0016】
これによると、設定時間毎に目標電流値を低減することで電磁ソレノイドに供給される駆動電流の低減が図られ、プランジャをストッパーに接近させる方向に変位させ、電流値取得手段で取得した検出電流値が第4設定値まで低下した場合に駆動電流の供給を停止することでストッパーに極めて近い位置から付勢手段の付勢力でプランジャを移動させてストッパーに当接させることが可能となる。また、これによると、スイープ駆動モードの実行時にプランジャを短いストロークで移動させる際にストッパーに当接させることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】電磁弁の断面図である。
【図2】電磁弁制御ユニットの構成を示すブロック回路図である。
【図3】目標電流値と検出電流値とをグラフ化した図である。
【図4】プランジャ制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔全体構成〕
図1及び図2示すように、電磁ソレノイドVsと、この電磁ソレノイドVsの作動力によって操作される弁ユニットVtとを備えて電磁弁Vが構成され、電磁ソレノイドVsに供給する電力を制御する制御装置としての電力制御部Bを備えて電磁弁制御ユニットDが構成されている。この電磁弁制御ユニットDは、乗用車等の車輌の変速系等に備えられる油圧クラッチCを制御するものであり、ECUとして構成されるクラッチ制御ユニットAから制御信号により電磁弁Vの制御を行うように構成されている。
【0019】
〔電磁弁〕
電磁ソレノイドVsは、プランジャ1と、このプランジャ1とスライド移動自在に内挿する磁性体製のヨーク2と、ヨーク2の外周に嵌め込まれるコイル3とを円筒状のソレノイドケース4の内部に収め、端部に蓋体5を備えている。この電磁ソレノイドVsとプランジャ1とでリニアアクチュエータが構成され、このリニアアクチュエータは、電磁ソレノイドVsの電磁力でプランジャ1を直線的に作動させる。弁ユニットVtは、弁ボディ7と、この弁ボディ7の内部空間に軸芯方向に移動自在に嵌め込んだスプール8と、このスプール8を電磁ソレノイドVsの方向に付勢する付勢手段としてのスプリング9とを備えている。蓋体5はプランジャ1の位置を決めるストッパーとして機能するものであり、プランジャ1の外端部1sとの当接部位にストッパー部5sが形成されている。
【0020】
弁ボディ7には、油圧ポンプPからの作動油が供給されるポンプポート7pと、油圧クラッチCに作動油を供給する出力ポート7cと、油圧クラッチCの作動油を排出するドレンポート7dとが形成されている。スプール8には作動油を制御する大径となる複数のランド部8aが形成されている。
【0021】
図1には、電磁ソレノイドVsに電流(電力)が供給されない非駆動状態を示しており、この非駆動状態ではスプリング9の付勢力によりスプール8の内端部がプランジャ1の内端部に当接し、更に、このプランジャ1の外端部1sが蓋体5のストッパー部5sに当接する。この非駆動状態では、スプール8のランド部8aと各ポートの位置関係から油圧ポンプPの作動油は油圧クラッチCに供給されず、油圧クラッチCの作動油はドレンポート7dから排出され、この油圧クラッチCは切り状態に維持される。
【0022】
図面には示していないが、電磁ソレノイドVsに駆動電流が供給される駆動状態では、電磁ソレノイドVsの電磁力と、スプリング9の付勢力とがバランスする位置までスプール8を作動させ、その位置にスプール8が保持される。特に、後述するノーマル駆動モードで設定される駆動電流が電磁ソレノイドVsに供給される駆動状態では、ドレンポート7dが閉じられ、ポンプポート7pからの作動油が出力ポート7cから油圧クラッチCに供給する位置までスプール8が作動し、油圧クラッチCは入り状態に設定される。
【0023】
この実施形態では、電磁弁Vで油圧クラッチCに作動油を給排するものを示しているが、電磁弁Vの作動油を油圧クラッチC以外のアクチュエータに供給するものでも良い。また、この実施形態では、油圧クラッチCが、電磁ソレノイドVsが非駆動状態にある場合に切り状態あり、駆動状態で入り状態に達するものを想定しているが、これとは逆に、電磁ソレノイドVsが非駆動状態にある場合に、入り状態にあり、駆動状態で切り状態に達するものであっても良い。
【0024】
〔電磁弁制御ユニット〕
図2に示す電磁弁制御ユニットDは、前述したクラッチ制御ユニットAからの制御信号が入力する電力制御部Bと、この電力制御部Bからの制御信号により駆動電流を制御する電力制御回路11とを有している。電力制御回路11はパワートランジスタ等の電力制御素子を備えており、パルス信号を間歇的に出力する際の出力周期におけるパルスのON時間の比率(デューティ比・デューティサイクル)からPWM式に駆動電流の値を設定する。この電力制御回路11から電磁ソレノイドVsのコイル3に供給される電力系にシャント抵抗器Rが直列に介装されている。
【0025】
電力制御部Bは、プログラムに従って処理を実現するCUPやDSP等を有しており、メモリ等のストレージで構成される設定情報保存部12と、シャント抵抗器Rで取得した電圧信号をデジタル信号に変換する電流値取得手段としてのA/D変換部13とを有すると共に、モード設定処理部14と、目標値設定処理部15と、比較処理部16とを有している。
【0026】
尚、モード設定処理部14と、目標値設定処理部15と、比較処理部16とはプログラムで構成されるものを想定しているが、ロジック等のハードウエアで構成されるものや、プログラム(ソフトウエア)とハードウエアとの組み合わせによって構成されるものでも良い。
【0027】
電力制御部Bは、クラッチ制御ユニットAから入り信号を取得した場合にノーマル駆動モードで電磁ソレノイドVsに駆動電流を供給し、このノーマル駆動モードにある状態でクラッチ制御ユニットAから切り信号を取得した場合に、保持モードで電磁ソレノイドVsに駆動電流を供給し、これに続いてスイープ駆動モードで電磁ソレノイドVsに駆動電流を供給し、この後に電磁ソレノイドVsに供給される駆動電流の停止を行うように基本的な処理シーケンスが設定されている。
【0028】
図3にはノーマル駆動モードと、保持モードと、スイープ駆動モードとにおいて設定される目標電流値と、夫々のモードにおいて電磁ソレノイドVsに流れる実電流値を重ねて示している。目標電流値は決まった値に維持されるため、同図において直線で示され、実電流値(後述する検出電流値)は、電力制御回路11でPWM式に駆動電流を制御するため、同図に示す如く鋸歯状の波形を示す。また、ノーマル駆動モードと、保持モードと、スイープ駆動モードとにおいて駆動電流が供給された際の時間領域をノーマル駆動領域N、保持モード領域K、スイープ駆動領域Sとして示し、駆動電流が供給されない領域を停止領域OFFとして示している。
【0029】
具体的な数値として、ノーマル駆動モードの目標電流値は1000mA(第1設定値F1)に設定され、保持モードでは目標電流値は380mA(第2設定値F2)に設定され、スイープ駆動モードでは目標電流値が段階的に低減するように設定される。電力制御部Bによる制御形態の概要を前述した数値に従って以下に説明する。
【0030】
〔制御形態〕
図4のフローチャートに示すように、電力制御部Bがクラッチ制御ユニットAから入り信号を取得した場合には、ノーマル駆動モードが設定され、第1設定値F1として1000mAを目標電流値にセットして電磁ソレノイドVsに駆動電流が供給される(#101〜#103ステップ)。
【0031】
つまり、モード設定処理部14は、電磁ソレノイドVsが非駆動状態にある際に、入り信号を取得した場合にノーマル駆動モードを設定すると共に、目標値設定処理部15は、設定情報保存部12に第1設定値F1として保存されている1000mAの数値を目標電流値に設定し、電力制御回路11に与えることで、この電力制御回路11から1000mAを目標電流値とする駆動電流が電磁ソレノイドVsに供給される。これにより油圧ポンプPの作動油を電磁弁Vから油圧クラッチCに供給して、この油圧クラッチCを入り操作する。
【0032】
このノーマル駆動モードで駆動電流が供給されている状況においてクラッチ制御ユニットAから切り信号を取得した場合には、保持モードが設定され、第2設定値F2として380mAを目標電流値にセットして電磁ソレノイドVsに駆動電流が供給される(#104〜#106ステップ)。
【0033】
つまり、ノーマル駆動モードにある状況において切り信号を取得した場合には、モード設定処理部14は、保持モードを設定すると共に、目標値設定処理部15は、設定情報保存部12に第2設定値F2として保存されている380mAを目標電流値に設定することで、電力制御回路11から380mA(第2設定値F2)を目標電流値とする駆動電流が電磁ソレノイドVsに供給される。
【0034】
この380mA(第2設定値F2)は、電磁弁Vのプランジャ1の外端部1sが蓋体5のストッパー部5sに近接するが当接しない位置関係を現出する値であり、駆動電流が低下し380mA(第2設定値F2)に近い値まで達した時点において電磁弁Vが、油圧ポンプPから油圧クラッチCに供給される作動油を遮断し、油圧クラッチCの作動油をドレンポート7dに排出し、これにより油圧クラッチCは切り状態に達する。
【0035】
保持モードにおいては電磁ソレノイドVsに供給される駆動電流を検出電流値(実電流値)として取得し、この検出電流値が第3設定値F3としての400mAまで低下したことを判別した場合にスイープ駆動モードに移行する(#104〜#111ステップ)。
【0036】
保持モードでは、1000mA(第1設定値F1)より低い値の380mA(第2設定値F2)が目標電流値に設定されるものであるが、保持モードに移行した後において駆動電流(実電流値)は即座に380mAまで低減するものではなく、時間経過に伴い380mA(第2設定値F2)まで低減する。比較処理部16は、設定情報保存部12に第3設定値F3として保存されている400mAを閾値に設定する。そして、A/D変換部13により取得した検出電流値(実電流値)が400mA(第3設定値F3)まで低下するのを待ち、検出電流値が400mA(第3設定値F3)に達したことを判別した時点でモード設定処理部14がスイープ駆動モードを設定する。
【0037】
つまり、検出電流値(実電流値)が400mA(第3設定値F3)に低減するまで、保持モードが維持されることになり、この保持モードにおいてプランジャ1の運動を一時的に停止させ、このプランジャ1の運動エネルギーを小さくしている。
【0038】
スイープ駆動モードに移行する際には、電磁ソレノイドVsに供給されている駆動電流(実電流)を検出して基準値にセットし、基準値から設定時間毎に(設定時間間隔で)設定値(40mA)を減じた値を目標電流値に設定して駆動電流を供給する処理を反復して行うことで、電磁ソレノイドVsに供給される駆動電流を段階的に低減する処理を行う。そして、このスイープ駆動モードで電磁ソレノイドVsに供給される駆動電流(実電流値)としての検出電流値(実電流値)が第4設定値F4としての140mAまで低下したことを判別した場合に電磁ソレノイドVsへの駆動電流の供給を停止する(#109〜#113ステップ)。
【0039】
この処理では、スイープ駆動モードに移行する際に、A/D変換部13を介して取得した検出電流値(実電流値)を基準値にセットして、最初に基準値から40mA(設定値)だけ減じた値を目標電流値に設定しで電力制御回路11から電磁ソレノイドVsに駆動電流の供給を行う。次に、この目標電流値から40mA(設定値)だけ減じた値を目標電流値に設定して電力制御回路11から電磁ソレノイドVsに駆動電流を供給する制御を反復して行う。これにより、電磁ソレノイドVsに供給される駆動電流が徐々に低減する。そして、このスイープ駆動モードでは設定情報保存部12に第4設定値F4として保存されている140mAを閾値に設定し、比較処理部16は、A/D変換部13を介して取得した検出電流値(実電流値)が140mA(第4設定値F4)まで低減したことを判別すると、電磁ソレノイドVsへの駆動電流の供給を停止する。これにより電磁ソレノイドVsは消磁状態となり、スプリング9の付勢力によりプランジャ1の外端部1sを蓋体5のストッパー部5sに当接させた状態に達する。
【0040】
このように、スイープ駆動モードでは、プランジャ1の外端部1sをストッパーとしての蓋体5のストッパー部5sに低速で接近させるために、検出電流値(実電流値)が140mA(第4設定値F4)まで低減した時点で駆動電流の供給を停止する。これにより、プランジャ1の外端部1sと蓋体5のストッパー部5sとを極めて近い位置から接当させることができる。また、スイープ駆動モードにおいてプランジャ1を短いストロークで作動させる制御の途中でプランジャ1の外端部1sと蓋体5のストッパー部5sとを当接させることもできる。このように外端部1sと蓋体5との当接の衝撃を極めて小さいものにして、衝撃音を招く不都合や、プランジャ1を破損させる不都合等を解消している。
【0041】
この制御では、保持モードの実行時、あるいは、スイープ駆動モードの実行時において、クラッチ制御ユニットAからの入り信号を電力制御部Bが取得することもあり、このように入り信号を取得した場合には、そのタイミングで行われているモードでの制御を停止して、ノーマル駆動モードでの制御に移行するようにプログラムが構成されている。
【0042】
〔実施形態の作用・効果〕
このように本発明の電磁弁制御ユニットDでは、電力制御部Bが、クラッチ制御ユニットAから入り信号を取得した際に、モード設定処理部14がノーマル駆動モードを設定し、第1設定値F1を目標駆動電流に設定して電磁ソレノイドVsに駆動電流を供給することで、プランジャ1を大きく作動させる。これにより、油圧クラッチCに作動油を供給して油圧クラッチCの入り操作(切り操作でも良い)を実現する。このノーマル駆動モードにおいて電力制御部Bが切り信号を取得した場合には、モード設定処理部14が保持モードを設定してプランジャ1をスプリング9の付勢力によりプランジャ1の外端部1sは蓋体5(ストッパーの一例)のストッパー部5sに近接する位置まで高速で戻すことが可能となり、油圧クラッチCは迅速に切り操作(入り操作でも良い)される。これに続いて、スイープ駆動モードに移行することで、電磁ソレノイドVsに供給される駆動電流は段階的に低減した後に遮断されるため、プランジャ1の外端部1sは蓋体5(ストッパーの一例)のストッパー部5sには緩速で当接することになり、衝撃を招くことがなく、緩衝部材を特別に用いずとも衝撃音を抑制し、プランジャ1の破損も抑制できる。
【0043】
電力制御部Bでは、保持モードからスイープ駆動モードに移行するタイミングを、第2設定値F2より少し高い値となる第3設定値F3に設定しているため、プランジャ1の外端部1sが蓋体5(ストッパーの一例)のストッパー部5sに近接する位置に達した後にスイープ駆動モードに移行する作動を実現している。このスイープ駆動モードでは、電磁ソレノイドVsに供給する駆動電流を段階的に低減しているので、プランジャ1の外端部1sが蓋体5(ストッパーの一例)のストッパー部5sに低速で当接させる作動を実現する。
【0044】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い。
【0045】
(a)保持モードでは、目標電流値を設定時間だけ維持する制御を行うように制御形態を設定しても良い。このように制御形態を設定することで、検出電流値を検出して第3設定値F3と比較する処理を行わずに済み、処理形態を単純化できる。
【0046】
(b)スイープ駆動モードにおいて、設定時間毎に目標電流値を設定値(例えば、40mA)だけ減ずる処理を、設定回数だけ行う、又は、設定時間だけ行い、この後に駆動電流の供給を停止するように制御形態を設定しても良い。このように制御形態を設定することで検出電流値を検出して比較する処理を行わずに済み、処理形態を単純化できる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、リニアアクチュエータの電磁ソレノイドに電力を供給する制御装置の全般に利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 プランジャ
5 ストッパー(蓋体)
9 付勢手段(スプリング)
13 電流値取得手段(A/D変換部)
B 電力制御部
F1 第1設定値
F2 第2設定値
F3 第3設定値
F4 第4設定値
Vs 電磁ソレノイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
付勢手段からの付勢力によりストッパーに当接する当接位置で停止するプランジャと、通電時の磁力の作用により前記付勢手段の付勢力に抗して前記プランジャを直線的に作動させる電磁ソレノイドとを備えてリニアアクチュエータが構成され、
前記電磁ソレノイドに駆動電流を供給する電力制御部を備え、この電力制御部は、前記プランジャを目標位置まで作動させるよう目標電流値を第1設定値に設定して前記電磁ソレノイドに駆動電流を供給するノーマル駆動モードと、このノーマル駆動モードから前記プランジャの前記当接位置への移行時に前記目標電流値を前記第1設定値より低い値で前記プランジャが前記ストッパーに当接しない値の第2設定値に設定して前記電磁ソレノイドに駆動電流を供給する保持モードと、この保持モードから前記プランジャの前記当接位置への移行時に前記電磁ソレノイドに供給される駆動電流を時間経過に伴って低減するスイープ駆動モードとに制御切換可能なリニアアクチュエータの制御装置。
【請求項2】
前記電力制御部が、入り信号により前記ノーマル駆動モードでの制御を実行し、このノーマル駆動モードにおいて切り信号により前記保持モードでの制御を実行し、これに続き、前記スイープ駆動モードの制御を実行する請求項1記載のリニアアクチュエータの制御装置。
【請求項3】
前記電磁ソレノイドに供給される駆動電流を検出電流値として取得する電流値取得手段を備え、
前記電力制御部は、前記保持モードにおいて前記電流値取得手段で取得した前記検出電流値が前記第2設定値より高い値の第3設定値に達するまで前記目標電流値を前記第2設定値に保持し、前記検出電流値が第3設定値まで低減した場合に、前記スイープ駆動モードに移行する請求項1又は2記載のリニアアクチュエータの制御装置。
【請求項4】
前記電力制御部が、前記スイープ駆動モードでは、設定時間毎に目標電流値を低減することで前記電磁ソレノイドに供給される駆動電流の低減を図り、このスイープ駆動モードにおいて前記電流値取得手段で取得される検出電流値が、予め設定された第4設定値まで低下した場合に、前記電磁ソレノイドへの駆動電力の供給を停止する請求項3記載のリニアアクチュエータの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−68230(P2013−68230A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205091(P2011−205091)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】