説明

リニアモータ

【課題】リニアモータにおけるコイルユニットの組立を容易にし、コイルユニットの製造に要する部材を簡素化する。
【解決手段】
このリニアモータは、複数のコイル組立体20を有するコイルユニットと、永久磁石とを有している。コイル組立体20は、コイル32が設けられる円筒形状のボビン27を有し、ボビンの両端にはマグネットワイヤ31が接続される一端側と他端側のワイヤ接続ピン35a,35bとが設けられている。ボビン27には中継部を構成する連結部33b,33cが設けられており、連結部33b,33c内に挿入される中継金具37を介して同位相のコイル組立体20のワイヤ接続ピン35a,35bが接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動部材を直線往復動するリニアモータに関する。
【背景技術】
【0002】
リニアモータは、直線状に配置される複数の永久磁石を有する磁石ユニットと、磁石ユニットの磁極配列方向に沿って複数のコイル組立体が直線状に配置されて形成されるコイルユニットとを有しており、磁石ユニットとコイルユニットは相対的に移動自在となっている。コイル組立体の複数のコイルに電流の大きさを変えながら順番に通電して、永久磁石の磁極との間の吸引力あるいは斥力を変化させると、配列方向の推力が磁石ユニットとコイルユニット相互間に発生し、磁石ユニットとコイルユニットが配列方向に相対駆動される。
【0003】
特許文献1には、複数の永久磁石が設けられた界磁子と、コイルユニットからなる電機子とを有し、コイルユニットを直線往復動させるようにしたリニアモータが記載されている。特許文献2には、複数のコイルが設けられた固定子と、永久磁石が設けられた可動子とを有し、可動子を直線往復動させるようにしたリニアモータが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−357353号公報
【特許文献2】特開2008−79358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コイルユニットは、例えば、U相,V相,W相の3相等の複数相のコイルを直線状に配置することにより形成されており、同一位相のコイルは隣り合った他の相のコイルをジャンプして結線される。特許文献2に記載されるように、コイルの内側に永久磁石を直線往復動自在に配置したリニアモータにおいては、コイルの径方向外方の部分に渡り線を組み込むことができる。しかしながら、コイルの外側に永久磁石を配置するようにしたリニアモータにおいては、コイルの外側に渡り線を這い回すようにすると、永久磁石の内面とコイル外面との間のギャップを小さくすることができなくなる。永久磁石とコイルとの間のギャップが大きくなると、移動部材に対して大きな推力を加えることかできなくなる。
【0006】
一方、特許文献1に記載されたリニアモータは、3相のコイルを樹脂モールドして形成されるコイルユニットを有している。それぞれの樹脂モールドには接続部が外方に突出して設けられ、接続部同士を接続することにより隣り合ったコイルユニットを電気的に接続するようにしている。このように、樹脂モールドされたコイルユニットの外方に接続部を突出するようにすると、円筒形状の永久磁石の内側にコイルユニットを配置することができない。
【0007】
本発明の目的は、永久磁石の内側にコイルユニットが配置され相対的に往復動するリニアモータにおいて、コイルユニットの組立を容易にし、コイルユニットの製造に要する部材の簡素化を行うことにある。
【0008】
本発明の他の目的は、リニアモータにおけるコイルユニットの外側に配線が這い回ることがなく、半田付け作業をなくして、断線等の故障を生じないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のリニアモータは、外側に複数のコイル組立体が固定されるロッドと、前記コイル組立体の外側に配置される永久磁石とを有し、前記ロッドと前記永久磁石の一方を軸方向に往復動させるリニアモータであって、それぞれの前記コイル組立体は、マグネットワイヤを巻き付けて形成されるコイルが設けられ前記ロッドの外側に配置される円筒形状のボビンと、前記ボビンの一端面に前記コイルの径方向内方に位置させて設けられ前記マグネットワイヤの一端が接続される一端側のワイヤ接続ピンと、前記ボビンの他端面に前記コイルの径方向内方に位置させて設けられ前記マグネットワイヤの他端が接続される他端側のワイヤ接続ピンと、前記ボビンに前記コイルの径方向内方に設けられる中継部とを有し、それぞれの前記コイル組立体の前記ワイヤ接続ピンは、少なくとも1つの他の位相の前記コイル組立体の前記中継部を介して他の同位相の前記コイル組立体の前記ワイヤ接続ピンに接続されることを特徴とする。
【0010】
本発明のリニアモータは、前記ボビンに複数の中継部を設けることを特徴とする。本発明のリニアモータは、前記中継部は、前記ボビンに形成された貫通孔内に配置され、同一位相の前記コイル組立体の前記ワイヤ接続ピンを電気的に接続する中継金具を有することを特徴とする。本発明のリニアモータは、前記中継部には、前記ボビンに形成される貫通孔と、両端部に嵌合部が設けられた中継金具が固定される貫通孔とがあり、複数の前記コイル組立体が配置された状態のもとで軸方向に隣り合う2つの前記ボビンのうち一方の前記ボビンの前記貫通孔内に挿入される他方の前記ボビンの前記中継金具を介して同一位相の前記コイル組立体の前記ワイヤ接続ピンを電気的に接続することを特徴とする。
【0011】
本発明のリニアモータは、前記中継部は、前記ボビンに形成された貫通孔に配置され、前記貫通孔の内部に位置する内側嵌合部および前記ボビンの端面から突出する外側嵌合部を有する第1の中継金具と、それぞれ前記貫通孔の内部に内側嵌合部が両端に設けられた第2の中継金具とを有し、複数の前記コイル組立体が配置された状態のもとで軸方向に隣り合う2つの前記ボビンのうち一方の前記ボビンの前記第1の中継金具と、これに嵌合される他方の前記ボビンの前記第2の中継金具とを介して同一位相の前記コイル組立体の前記ワイヤ接続ピンを電気的に接続することを特徴とする。本発明のリニアモータは、前記一端側のワイヤ接続ピンと前記他端側のワイヤ接続ピンとを前記ボビンに一直線状に形成することを特徴とする。本発明のリニアモータは、前記ロッドの一端側に全ての位相のコイルに接続されるコモン結線板を配置し、他端側にそれぞれの位相のコイルの給電端子が接続される配線基板を配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
リニアモータのコイル組立体は、ボビンとその外側に巻き付けられるマグネットワイヤにより形成されるコイルとを有しており、複数相のコイル組立体が永久磁石の内側に配置される。コイル組立体には、ワイヤ接続ピンと中継部とがともにコイルよりも径方向内側に位置しかつ相互に円周方向にずらして設けられている。これにより、複数のコイル組立体を直線状に配置すると、コイルの内側の中継部を介して同一位相のコイルのワイヤ接続ピンが接続されるので、コイルの外側に接続配線を這い回すことが不要となる。したがって、永久磁石の内周面とコイル外周面とのギャップを小さくすることでき、コイルを大径とすることなく、大きな推力を得ることができる。
【0013】
コイル組立体のボビンの一端面と隣のコイル組立体の他端面とを相互に突き当てながら、複数のコイル組立体を次々に配置するだけで、同一位相のコイルを相互に接続することができる。したがって、コイル組立体を容易に組み立てることができ、リニアモータのストロークに対応させてコイル組立体の増設を容易に行うことができる。また、半田付けなどの配線作業がないので、断線などの故障を生じないリニアモータを提供することができる。コイル組立体として順巻きと逆巻きの2種類を用意しておけば良いので、リニアモータを製造するための部材の準備が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(A)は本発明の一実施の形態であるリニアモータを示す縦断面図であり、(B)は(A)の平面図である。
【図2】(A)は図1(A)における2A−2A線断面図であり、(B)は図1(A)における2B−2B線矢視図である。
【図3】図1(A)に示されたコイルユニットを拡大して示す一部省正面図である。
【図4】図3の縦断面図である。
【図5】(A)は図4における5A−5A線断面図であり、(B)は図4の5B−5B線矢視図である。
【図6】コイルユニットを構成する一部のコイル組立体を示す斜視図である。
【図7】図6の一部切欠き斜視図である。
【図8】コイルユニットに設けられたコイルの一部省略結線図である。
【図9】本発明の他の実施の形態であるリニアモータのコイルユニットの一部を示す分解斜視図である。
【図10】図9の展開図である。
【図11】コイルユニットの一端部を示す断面図である。
【図12】ロッドの変形例を示す断面図である。
【図13】ロッドの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。このリニアモータは、図1(A)に示されるように、モータケース11を有している。モータケース11は両端部に端板12a,12bが取り付けられるケース本体11aを有し、ケース本体11aにはケースカバー11bが取り付けられる。ケースカバー11bの外側には長方形の移動テーブル13が直線往復動自在に装着されており、移動テーブル13は、図2に示されるように、ケースカバー11bのガイド部14の両側に設けられたガイド溝14aにボール15を介して案内される。
【0016】
モータケース11の内部の収容室16には、ロッド17が組み込まれており、このロッド17の一端部は端板12aに固定され、他端部は端板12bに固定されている。ロッド17の外側には複数のコイル組立体20が配置されている。図1に示すリニアモータにおいては、ロッド17の外側には18個のコイル組立体20が配置されており、コイル組立体20とその中心部を貫通するコア部材としてのロッド17とによりコイルユニット21が構成される。コイル組立体20の外側には円筒形状の磁石ユニット22が配置されており、磁石ユニット22は図2(A)に示されるように、磁石ケース23内に組み込まれている。ガイド部14の幅方向中央部には長手方向に伸びてスリット24が形成されており、磁石ケース23はスリット24を貫通する連結ブロック25により移動テーブル13に連結されている。このリニアモータは、ロッド17に固定されたコイル組立体20の外側の磁石ユニット22を直線往復動させて移動テーブルを駆動するようにした形態となっている。
【0017】
磁石ユニット22は複数の円筒形状の永久磁石26により形成されている。それぞれの永久磁石26は軸方向に着磁されており、磁石ユニット22は永久磁石26を同極同士が向き合うように相互に突き当てられた状態で磁石ケース23内に組み込まれている。磁石ケース23内には3つの永久磁石26が組み込まれているが、永久磁石26の数と磁石ケース23の長さは図示する場合に限られることなく、永久磁石26の数と磁石ケース23の長さは任意に設定することができる。
【0018】
コイルユニット21は、図1(A)に示されるように、U相、V相、およびW相の3相を1組として6組、18個のコイル組立体20を有している。ただし、組数は任意の数に設定される。
【0019】
図7に示されるように、それぞれのコイル組立体20は円筒形状のボビン27を有し、ボビン27は円筒部28とその両端部に径方向外方に突出して設けられたフランジ29a,29bを有している。円筒部28の外周面にはマグネットワイヤ31を巻き付けることにより形成されるコイル32が設けられており、コイル32はマグネットワイヤ31を円筒部28の外周面に複数層巻き付けることにより形成されている。
【0020】
ボビン27の内周面には円周方向に120度の間隔を置いて3つの連結部33a〜33cが径方向内方に突出して設けられている。連結部33aはワイヤピン連結部であり、連結部33bは中継連結部であり、連結部33cは貫通連結部であり、それぞれの連結部33a〜33cは軸方向に伸びている。コイル組立体20が外側に装着されるロッド17には、図5(A)に示されるように、それぞれの連結部33a〜33cが係合する3つの噛み合い溝34が形成されており、コイル組立体20がロッド17に対して回転することが防止される。
【0021】
ワイヤピン連結部33aの一端部には金属製のピンからなる一端側のワイヤ接続ピン35aが取り付けられている。このワイヤ接続ピン35aはボビン27の一方の端面29aから軸方向外方に突出し、ワイヤ接続ピン35aの根本にはコイル32を形成するマグネットワイヤ31の一端が接続されている。ワイヤピン連結部33aの他端部には同様に金属製のピンからなる他端側のワイヤ接続ピン35bが取り付けられている。このワイヤ接続ピン35bはボビン27の他方の端面29bから軸方向外方に突出し、ワイヤ接続ピン35bにはマグネットワイヤ31の他端が接続されている。このように、コイル32に対して径方向内方に位置させてボビン27の両端面から突出するワイヤ接続ピン35a,35bにマグネットワイヤ31の両端が接続されている。マグネットワイヤ31の両端にそれぞれ接続されるワイヤ接続ピン35a,35bは一直線状となっている。
【0022】
中継連結部33bには軸方向に貫通する貫通孔36が形成されている。この貫通孔36には中空の金属棒材からなる中継金具37が取り付けられており、中継金具37は他のコイル組立体20のワイヤ接続ピンを相互に電気的に接続する中継部を構成している。中継金具37の両端部にはワイヤ接続ピンが嵌合される嵌合部38a,38bが設けられ、一方の嵌合部38aは貫通孔36の中に位置し、他方の嵌合部38bはボビン27のフランジ29bよりも軸方向外方に突出している。
【0023】
中継金具37の嵌合部38a側の端面は貫通孔36の中央に位置する。また、中継金具37の軸方向中央部はフランジ29bの端面に位置する。ただし、中継金具37の軸方向中央部はフランジ29aの端面に位置しても良い。このように、中継金具37の軸方向の半分はボビン27に埋没し、残りの半分はボビンの端面から突出する。貫通孔36は中央部分を境にして一方の内径は若干大きく、他の一方の内径は若干小さく形成され、中央部には段差が設けられる。中継金具37は内径の大きい方から圧入され中央部の段差部で止まる。コイル組立体同士を連結するときには、ボビンの端面から突出している中継金具37の軸方向の半分が、隣のボビン27の貫通連結部33cに入り込む。
【0024】
貫通連結部33cには貫通孔39が中継部として形成されている。このように、ボビン27には、ワイヤ接続ピン35a,35bが取り付けられたワイヤピン連結部33aと、中継部としての中継金具37が取り付けられた中継連結部33bと、中継部としての貫通孔39が形成された貫通連結部33cが円周方向に120度置きに設けられている。したがって、軸方向に隣り合うコイル組立体20を120度ずらして突き合わせると、中継金具37の突出部は貫通孔39内に挿入される。中継金具37の嵌合部38aには隣のコイル組立体20のワイヤ接続ピン35bが嵌合され、中継金具37の嵌合部38bには隣のコイル組立体20を隔てた1つ先のコイル組立体20のワイヤ接続ピン35aが嵌合される。これにより、中継金具37を介して同一位相のコイル組立体20のワイヤ接続ピンが電気的に接続される。
【0025】
つまり、2つのコイル組立体20を隔てて2つのコイル組立体20のコイル32が電気的に接続されることになり、図4に示されるように、複数のコイル組立体20が直線状にロッド17に配置された状態のもとでは、軸方向に隣り合う2つのボビン27のうち一方のボビン27の貫通孔39内に挿入される他方のボビン27の中継金具37を介して同一位相のコイル組立体20のワイヤ接続ピン35a,35bが電気的に接続される。つまり、図4のV1相のコイルは、W1とU2にかけて設けられている中継金具37を介して、V2相のコイルに接続される。U1相のコイル、W1相のコイルについては図4には示されていないが、同様である。
【0026】
図1(A)に示されるように、18個のコイル組立体20を一直線状に配置し、図において左側からそれぞれのコイル32をU1相、V1相、W1相とすると、それぞれ同一位相のコイルが6つずつ中継部を介して接続される。
【0027】
ロッド17の一端部には、図4に示されるように、コモンプレート41が配置される。このコモンプレート41にはコモンプレート41に隣り合ったU1相のコイル組立体20のワイヤ接続ピン35aが嵌合される嵌合孔が形成されている。図4に示されるように、貫通連結部33cにはワイヤ接続ピン35aに嵌合されるコンタクトピン42が装着され、中継連結部33bには中継金具37の嵌合部38aに嵌合される図示しないコンタクトピンが装着される。コモンプレート41にはそれぞれのコンタクトピンが嵌合される嵌合孔が形成されており、コモンプレート41に設けられる金具により、ワイヤ接続ピン35aと2つのコンタクトピンは電気的に接続される。このように、U相、V相、W相の一端は導電性のコモンプレートにより相互に接続されスター結線を構成する。コモンプレート41とロッド17は絶縁プレート43により絶縁されている。
【0028】
ロッド17の他端部には絶縁性の配線基板44が配置される。この配線基板44には図5(B)に示されように、3つの給電端子45u,45v,45wが設けられている。配線基板44には配線基板44に隣り合ったW6相のコイル組立体20のワイヤ接続ピン35aが嵌合される嵌合孔が形成されている。図4に示されるように、貫通連結部33cにはワイヤ接続ピン35bに嵌合されるコンタクトピン46が装着され、中継連結部33bには中継金具37の嵌合部38aに嵌合される図示しないコンタクトピンが装着される。配線基板44にはそれぞれのコンタクトピンが嵌合される嵌合孔が形成されており、ワイヤ接続ピン35aと2つのコンタクトピンは、配線基板44に設けられる金具により配線基板44に設けられた給電端子に接続される。
【0029】
コモンプレート41とこれに隣り合うコイル組立体20との間には、ワイヤ接続ピン35aおよびコンタクトピン42にそれぞれ取り付けられる環状のスペーサ47が配置される。同様に、配線基板44とこれに隣り合うコイル組立体20との間には、ワイヤ接続ピン35bおよびコンタクトピン46にそれぞれ取り付けられる環状のスペーサが配置される。
【0030】
全てのコイル組立体20が相互に突き当てられた状態となって図4に示されるようにロッド17の外側に取り付けられた状態のもとで、配線基板44には固定板48が突き当てられ、ロッド17の端部にはナット49がねじ止めされる。これにより、複数のコイル組立体20とロッド17とにより三相のコイルユニット21が組み立てられる。また、コイルユニット21はコイル組立体20を端面同士で突き当てることにより容易に組み立てられる。マグネットワイヤ31を半田付けすることなく、ワイヤ接続ピン35a,35bと中継金具37との嵌合によりコイル32の相互の接続は容易に行うことができる。
【0031】
図8は図1(A)に示されたコイルユニット21の結線図であり、軸方向に隣り合うコイル32は相互に逆極性ないし逆巻きとなっている。例えば、U1相のコイルを順巻きとすると、これに隣り合うV1相のコイルは逆巻きとなっており、これに隣り合うW1相のコイルは順巻きとなっている。
【0032】
したがって、コイルユニット21を組み立てるには、まず、順巻きのコイル32となったコイル組立体20と逆巻きのコイル32のコイル組立体20とが製造される。次に、順巻きのコイル組立体20と逆巻きのコイル組立体20を120度だけ角度を変えながら、交互に配置する。例えば、図1(A)に示すように18個のコイル組立体20を一直線状にロッド17の外側に配置する。このときには、軸方向に隣り合う2つのコイル組立体20のボビン27の端面同士が突き当てられる。これにより、図8の結線図に示すように、相互に同一位相のコイル32のワイヤ接続ピン35a,35bが2つのコイル組立体20をジャンプして、コイル32の径方向内方の中継部としての中継金具37を介して接続される。
【0033】
このように、同一位相のコイル32を接続する中継部としての中継金具37は、コイル32の内側に設けられるので、渡り線として機能する中継金具37がコイル32の外側に配置されることがない。これにより、コイルの外周面と永久磁石26の内周面との隙間を極力小さくするこができ、コイルと永久磁石との間に強い吸引力を生じさせることができ、大きな軸方向の推力を移動テーブル13に加えることができる。三相それぞれのコイルに対して電力を供給するために、それぞれの給電端子45u,45v,45wに接続される給電ケーブル40が図1に示されるように配線基板44に取り付けられている。
【0034】
図7に示されるように、3つの連結部33a〜33cが円周方向に120度置きに設けられており、ワイヤ接続ピン35a,35bが設けられるワイヤピン連結部33aに対して時計回りに120度だけ隔たった位置に、中継金具37が取り付けられる中継連結部33bが設けられている。ワイヤピン連結部33aに対して反時計回りに120度だけ隔たった位置に、貫通孔39が形成された貫通連結部33cが設けられている。コイルユニット21を構成するそれぞれのコイル組立体20は、マグネットワイヤが巻き付けられる前のボビン27の形状が全て同一であり、1種類のボビン27により全てのコイル組立体20を製造することができる。ボビン27に巻き付けられるコイルには、順巻きと逆巻きとがあるので、マグネットワイヤ31が巻き付けられた後のコイル組立体20は2種類となる。図示するコイル組立体20には、ワイヤ接続ピン35a,35bが一直線状となってボビン27に取り付けられているが、ワイヤ接続ピン35a,35bを円周方向にずらして取り付けるようにしても良い。
【0035】
図9は本発明の他の実施の形態であるリニアモータのコイルユニットの一部を示す分解斜視図であり、図10は図9の展開図であり、図11はコイルユニットの一端部を示す断面図である。図9〜図11においては、上述した部材と共通する部材には同一の符号が付されている。
【0036】
上述したコイル組立体20と同様に、図9に示すコイル組立体30のボビン27の内側には、円周方向に120度の間隔を置いて3つの連結部50a〜50cが径方向内方に突出して設けられている。それぞれの連結部50a〜50cは軸方向に伸びており、貫通孔51〜53がそれぞれ形成されている。連結部50aはワイヤ連結部であり、他の2つの連結部50b,50cはそれぞれ中継用の連結部である。
【0037】
ワイヤ連結部50aの両端部には、上述したコイル組立体20と同様に、金属製のピンからなるワイヤ接続ピン54a,54bがボビン27の端面から突出して取り付けられ、それぞれのワイヤ接続ピン54a,54bの根本にはマグネットワイヤ31の両端が接続されている。それぞれのワイヤ接続ピン54a,54bの基端部に設けられた大径部55が貫通孔51に嵌合され、それぞれの大径部55の間には絶縁部材56が設けられ、ワイヤ接続ピン54aとワイヤ接続ピン54bとを絶縁している。
【0038】
中継用の第1の連結部50bに形成された貫通孔52には、第1の中継金具57が取り付けられている。この中継金具57は、貫通孔52に嵌合される大径の内側嵌合部57aとこの内側嵌合部57aよりも小径となって外部に突出する外側嵌合部57bとを有している。内側嵌合部57aにはワイヤ接続ピン54bまたはコンタクトピン42が嵌合される嵌合孔58が形成されている。中継用の第2の連結部50cに形成された貫通孔53には、第2の中継金具59が取り付けられている。この中継金具59は貫通孔53内に埋め込まれており、両端部にはそれぞれ内側嵌合部としての嵌合孔60a,60bが形成されている。
【0039】
したがって、複数のコイル組立体30を端面同士が突き当てられるようにロッド17の外側に配置すると、ワイヤ接続ピン54aが第2の中継金具59の嵌合孔60bに嵌合され、ワイヤ接続ピン54bが第1の中継金具57の嵌合孔58に嵌合される。さらに、第1の中継金具57の外側嵌合部57bは第2の中継金具59の嵌合孔60aに嵌合され、第2の中継金具59の嵌合孔60bにはワイヤ接続ピン54aが嵌合される。これにより、相互に軸方向に隣り合う2つのコイル組立体30のうち一方のコイル組立体30の第1の中継金具57と、これに嵌合される他のコイル組立体30の第2の中継金具59とを介して同一位相のコイル組立体30のワイヤ接続ピン54a,54bが電気的に接続される。
【0040】
図9および図10に示されるように、コモンプレート41に隣り合うU1相のコイル組立体30のワイヤ接続ピン54aが嵌合する嵌合孔41aがコモンプレート41に形成されている。このコイル組立体30の中継金具57に設けられた嵌合孔58と、中継金具59に設けられた嵌合孔60aにはそれぞれコンタクトピン42が装着される。それぞれのコンタクトピン42が嵌合する嵌合孔41b,41cがコモンプレート41に形成されている。コモンプレート41により、ワイヤ接続ピン54aと2つのコンタクトピン42は電気的に接続される。このように、U相、V相、W相の一端は導電性のコモンプレートにより相互に接続されスター結線を構成する。コモンプレート41とロッド17は絶縁プレート43により絶縁されている。
【0041】
配線基板44に隣り合うW6相のコイル組立体30のワイヤ接続ピン54bが嵌合する嵌合孔44aと、中継金具59の外側嵌合部57bが嵌合する嵌合孔44bとが配線基板44に形成されている。このコイル組立体30の中継金具59に設けられた嵌合孔60bにはコンタクトピン46が装着され、このコンタクトピン46が嵌合される嵌合孔44cが配線基板44に形成されている。ワイヤ接続ピン54bと外側嵌合部57bとコンタクトピン46は、絶縁性の配線基板44に設けられた3つの金具によりそれぞれ独立して給電端子に接続される。コイルの結線状態は、図8に示した場合と同様となる。
【0042】
図12はロッド17の変形例を示す断面図である。上述したロッド17には、図5(A)に示すように、連結部33a〜33cに対応させて3つの噛み合い溝34が形成されているのに対し、図12に示されるロッド17は断面がほぼ三角形となっている。
【0043】
上述したそれぞれのコイル組立体20とコイル組立体30においては、連結部33a〜33c(50a〜50c)を円周方向に120度隔てて設けられているので、隣り合うコイル組立体20または30の円周方向の角度を120度ずらして突き合わせることにより、2つの中継部を貫通して相互に同一位相のコイル32が接続される。ただし、連結部33a〜33cや連結部50a〜50cをボビン27の一部に寄せ集めるようにして設けるようにしても良い。
【0044】
図13はロッド17の変形例を示す断面図である。このロッド17は断面形状が円形部17aと平坦部17bとを有し、3つの連結部33a〜33c(50a〜50c)が平坦部に隣接するようにボビン27の一部に寄せ集められている。このような形態のコイル組立体20,30によりコイルユニット21を組み立てるには、U相、V相、W相のそれぞれに対応させてワイヤ接続ピンの位置を相違させた3種類のコイル組立体20,30と、3種類のそれぞれに順巻きと逆巻きのコイル組立体20,30を製造することになる。つまり、合計6種類のコイル組立体20,30を製造することになる。
【0045】
上述したそれぞれのコイル組立体20とコイル組立体30は、3相タイプのコイルユニットであるが、3相に限られることなく、2相または5相等の複数相のコイルユニットとすることができる。2相の場合には、ボビン27にはワイヤ接続ピンと1つの中継部とが、例えば、円周方向に180度ずらして設けられことになる。また、5相の場合には、ボビン27にはワイヤ接続ピンと4つの中継部とが、例えば、円周方向に72度ずらして設けられることになる。
【0046】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上述したリニアモータは、磁石ユニット22をコイルユニット21に対して移動させるようにしているが、磁石ユニットをモータケース11に固定し、コイルユニット21が取り付けられるロッド17を軸方向に往復動させるようにしても良い。その場合にはロッド17の両端部が軸受により往復動自在に支持される。
【符号の説明】
【0047】
11 モータケース
12a,12b 端板
13 移動テーブル
16 収容室
17 ロッド
20 コイル組立体
21 コイルユニット
22 磁石ユニット
23 磁石ケース
26 永久磁石
27 ボビン
28 円筒部
29a,29b フランジ
30 コイル組立体
31 マグネットワイヤ
32 コイル
33a〜33c 連結部
34 噛み合い溝
35a,35b ワイヤ接続ピン
36 貫通孔
37 中継金具
38a 嵌合部
38b 嵌合部
39 貫通孔
41 コモンプレート
44 配線基板
50a〜50c 連結部
51〜53 貫通孔
54a,54b ワイヤ接続ピン
57 第1の中継金具
57a 内側嵌合部
57b 外側嵌合部
58 嵌合孔
59 第2の中継金具
60a,60b 嵌合孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側に複数のコイル組立体が固定されるロッドと、前記コイル組立体の外側に配置される永久磁石とを有し、前記ロッドと前記永久磁石の一方を軸方向に往復動させるリニアモータであって、
それぞれの前記コイル組立体は、
マグネットワイヤを巻き付けて形成されるコイルが設けられ前記ロッドの外側に配置される円筒形状のボビンと、
前記ボビンの一端面に前記コイルの径方向内方に位置させて設けられ前記マグネットワイヤの一端が接続される一端側のワイヤ接続ピンと、
前記ボビンの他端面に前記コイルの径方向内方に位置させて設けられ前記マグネットワイヤの他端が接続される他端側のワイヤ接続ピンと、
前記ボビンに前記コイルの径方向内方に設けられる中継部とを有し、
それぞれの前記コイル組立体の前記ワイヤ接続ピンは、少なくとも1つの他の位相の前記コイル組立体の前記中継部を介して他の同位相の前記コイル組立体の前記ワイヤ接続ピンに接続されることを特徴とするリニアモータ。
【請求項2】
請求項1記載のリニアモータにおいて、前記ボビンに複数の中継部を設けることを特徴とするリニアモータ。
【請求項3】
請求項1または2記載のリニアモータにおいて、前記中継部は、前記ボビンに形成された貫通孔内に配置され、同一位相の前記コイル組立体の前記ワイヤ接続ピンを電気的に接続する中継金具を有することを特徴とするリニアモータ。
【請求項4】
請求項2記載のリニアモータにおいて、前記中継部には、前記ボビンに形成される貫通孔と、両端部に嵌合部が設けられた中継金具が固定される貫通孔とがあり、複数の前記コイル組立体が配置された状態のもとで軸方向に隣り合う2つの前記ボビンのうち一方の前記ボビンの前記貫通孔内に挿入される他方の前記ボビンの前記中継金具を介して同一位相の前記コイル組立体の前記ワイヤ接続ピンを電気的に接続することを特徴とするリニアモータ。
【請求項5】
請求項2記載のリニアモータにおいて、前記中継部は、前記ボビンに形成された貫通孔に配置され、前記貫通孔の内部に位置する内側嵌合部および前記ボビンの端面から突出する外側嵌合部を有する第1の中継金具と、それぞれ前記貫通孔の内部に内側嵌合部が両端に設けられた第2の中継金具とを有し、複数の前記コイル組立体が配置された状態のもとで軸方向に隣り合う2つの前記ボビンのうち一方の前記ボビンの前記第1の中継金具と、これに嵌合される他方の前記ボビンの前記第2の中継金具とを介して同一位相の前記コイル組立体の前記ワイヤ接続ピンを電気的に接続することを特徴とするリニアモータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のリニアモータにおいて、前記一端側のワイヤ接続ピンと前記他端側のワイヤ接続ピンとを前記ボビンに一直線状に形成することを特徴とするリニアモータ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のリニアモータにおいて、前記ロッドの一端側に全ての位相のコイルに接続されるコモン結線板を配置し、他端側にそれぞれの位相のコイルの給電端子が接続される配線基板を配置することを特徴とするリニアモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−85405(P2013−85405A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224480(P2011−224480)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000145611)株式会社コガネイ (142)
【Fターム(参考)】