リニア同期モータ
【課題】 推力変動を小さくすることができるリニア同期モータを提供する。
【解決手段】 移相器22を介して第2電機子U相、V相、W相コイル11Ub,11Vb,11Wbに対して、第1電機子U相、V相、W相コイル11Ua,11Va,11Waへの供給電流に比して、空間20の長さ寸法Lに相当する電気角90°に相当する大きさの位相角90°だけ位相をずらした電流を供給する。第1電機子8aのコイルヘの通電で得られる推力(第1電機子側部材側推力Fa)と、第2電機子8bのコイルヘの通電で得られる推力(第2電機子側部材側推力Fb)と、を合せて得られる合成推力Fgは、第1電機子側部材側推力Faに含まれる推力脈動及び第2電機子側部材側推力Fbに含まれる推力脈動が略打ち消し合うようになる。このため、全体として、推力変動が抑制される。
【解決手段】 移相器22を介して第2電機子U相、V相、W相コイル11Ub,11Vb,11Wbに対して、第1電機子U相、V相、W相コイル11Ua,11Va,11Waへの供給電流に比して、空間20の長さ寸法Lに相当する電気角90°に相当する大きさの位相角90°だけ位相をずらした電流を供給する。第1電機子8aのコイルヘの通電で得られる推力(第1電機子側部材側推力Fa)と、第2電機子8bのコイルヘの通電で得られる推力(第2電機子側部材側推力Fb)と、を合せて得られる合成推力Fgは、第1電機子側部材側推力Faに含まれる推力脈動及び第2電機子側部材側推力Fbに含まれる推力脈動が略打ち消し合うようになる。このため、全体として、推力変動が抑制される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機や自動車、搬送装置などに用いられるリニア同期モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、永久磁石回転同期モータにおいては、モータに電流を流さない状態で、外部から軸を回転させるとガタガタと引っかかるようなトルクを受ける。回転により軸の位置が変わると永久磁石からの磁束の経路が変化する。すると、磁場のエネルギーが周期的に変化し、磁場エネルギーを下げる方向にトルクが発生する。これをコギングトルクと呼んでいる。コギングトルクは、回転同期モータの回転時においても発生し、振動などの原因となる。
リニア同期モータにおいても同様に、磁場エネルギーの周期的な変化によって、推力の変動が発生する。これはコギング推力と呼ばれており、リニア同期モータのスムーズな運転を妨げる要因となっている。
従来のリニア同期モータの一例として図11に示すリニア同期モータ1がある(特許文献1参照)。
このリニア同期モータ1は、図11に示すように、長手方向に相対移動可能に設けられた軸状の界磁側部材2及び筒状の電機子側部材3を有している。
界磁側部材2は、軸状の界磁側鉄心4と、界磁側鉄心4に挿通された環状の10個の磁極6からなる界磁5と、から大略構成されている。磁極6は、N極6N及びS極6Sから構成され、N極6N及びS極6Sは、界磁側部材2の軸方向に交互に配置されている。
【0003】
電機子側部材3は、外筒7と、筒状をなし外筒7の内周側に挿通されて内側がギャップ(符号省略)を介して界磁5に対面する電機子8と、から大略構成されている。電機子8は、内周側に6個の環状のスリット9a〜9f(以下、適宜、スリット9と総称する。)が形成された筒状の電機子鉄心10と、電機子鉄心10のスリット9a〜9f内に嵌合された6個の電機子コイル11と、から大略構成されている。前記スリット9a〜9fについて、以下、適宜、図11左から順に、第1〜第6スリット9a〜9fという。
【0004】
6個の電機子コイル11は、120°ずつ位相がずれた所定周波数の正弦波状の三相交流(U相、V相、W相電流)を発生する電源12(図1参照)に接続され、各端子(U相、V相、W相電流供給端子13U,13V,13W)〔図1参照〕からU相、V相、W相電流の供給を受けるようになっている。
U相電流供給端子13Uには、第1、第4スリット9a、9dに嵌合された電機子コイル11が接続され、V相電流供給端子13Vには、第2、第5スリット9b、9eに嵌合された電機子コイル11が接続され、W相電流供給端子13Wには、第3、第6スリット9c、9fに嵌合された電機子コイル11が接続されている。
【0005】
このリニア同期モータ1では、位相のずれた電流を第1〜第6スリット9a〜9fに嵌合された電機子コイル11を流すことにより、電機子8の界磁5との対向部分〔電機子鉄
心10におけるスリット9及びスリット9の間の部分(電機子鉄心ティース14)〕に、軸方向(図11左右方向)に前記周波数に対応した速度で移動する磁界(移動磁界)が発生する。そして、移動磁界と界磁5による磁力とが相互作用し、移動磁界の移動速度に同期して界磁側部材2及び電機子側部材3が界磁側部材2の長手方向に相対的に変位する。
【特許文献1】特開2001‐268884
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、リニア同期モータでは、滑らかな運転を確保する観点から、発生する推力の変動は極力少ないことが望まれている。しかしながら、図11に示すリニア同期モータ1では、図12に示すようにかなり大きい推力脈動が前記所定周波数の約2倍周波数(360°の周波数変化に対して2波長分の変化となる推力脈動)で発生することがある。なお、図12は、リニア同期モータ1の変位位置−推力特性を示し、縦軸に電機子コイル11への通電により発生する推力をとり、横軸に、界磁側部材2及び電機子側部材3の相対変位(電気角で示される)をとっている。このため、図11に示すリニア同期モータ1を工作機や自動車、搬送装置などに適用した場合、滑らかな運転が得られ難く、上記要望に適切には応え得るものになっていなかった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、推力変動を小さくすることができるリニア同期モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、長手方向に相対移動可能に設けられた長手状の第1、第2部材を有し、前記第1部材は、N極及びS極を前記第1部材の長手方向に交互に配置してなる界磁を有し、前記第2部材は、該第2部材の長手方向に順番に配置される複数個の電機子コイルからなり前記界磁に対向して配置される電機子と、該電機子を支持する支持部材と、を備え、前記界磁及び電機子の相互作用により、前記第1、第2部材が前記界磁の長手方向に沿って相対的に移動するリニア同期モータにおいて、前記電機子は、前記第2部材の長手方向に所定長さの空間を空けて少なくとも2組設けられ、前記空間を空けて隣接する二組の電機子の各電機子コイルに対し、前記空間の長さに相当する電気角に相当する大きさの位相角だけ位相をずらした電流を通電させる通電手段を設けたことを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載のリニア同期モータにおいて、前記隣接する二組の電機子の各電機子コイルに対する前記位相角だけ位相をずらした電流の通電における該位相のずらしは、コンデンサ若しくはコイルを用いて行うか、又は前記電機子コイルを駆
動するドライバを介して前記電機子コイルを励磁することにより行うことを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のリニア同期モータにおいて、前記空間には、前記隣接する2組の電機子を支持するスペーサを介在させたことを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のリニア同期モータにおいて、前記スペーサは、その材料にステンレス鋼、アルミニウム合金、FRP又はセラミックスを用いたことを特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載のリニア同期モータにおいて、前記複数個の電機子に備えられる電機子コイルは各3個からなり、該3個の電機子コイルには、当該3個の電機子コイルの配置方向に沿って、位相が120°ずつ順次遅れ又は進むようにされた電流が通電されることを特徴とする。
請求項6記載の発明は、請求項1から5のいずれかに記載のリニア同期モータにおいて、前記空間の長さに相当する電気角は、90°であり、前記位相角は、60°から120°の範囲の値であることを特徴とする。
【0009】
請求項7記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載のリニア同期モータにおいて、前記複数組は3組であり、前記空間の長さに相当する電気角は、60°又は120°であることを特徴とする。
請求項8記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載のリニア同期モータにおいて、前記複数組はn組であり、前記空間の長さに相当する電気角は、180°/nであることを特徴とする。
請求項9記載の発明は、請求項1から8のいずれかに記載のリニア同期モータにおいて、N極及びS極間に非磁性材料からなるスペーサを介在したことを特徴とする。
請求項10記載の発明は、長手方向に相対移動可能に設けられた長手状の第1、第2部材を有し、前記第1部材は、N極及びS極を前記第1部材の長手方向に交互に配置してなる界磁を有し、前記第2部材は、該第2部材の長手方向に順番に配置される複数個の電機子コイルからなり前記界磁に対向して配置される電機子と、該電機子を支持する支持部材と、前記各電機子コイルに電流を供給する通電手段とを備え、前記界磁及び電機子の相互作用により、前記第1、第2部材が前記界磁の長手方向に沿って相対的に移動するリニア同期モータにおいて、前記電機子は、前記第2部材の長手方向に所定長さの空間を空けて少なくとも2組設けられ、前記空間を空けて隣接する二組の電機子の各電機子コイルが発生する磁界は、前記空間の長さに相当する電気角に相当する大きさの位相角だけ位相をずらした磁界が生じるように前記電機子及び前記通電手段を構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1から10に記載の発明によれば、空間を空けて隣接する二組の電機子の各電機子コイルに対し、前記空間の長さに相当する電気角に略相当する大きさの位相角だけ位相をずらした電流を通電させるので、二組の電機子で得られる推力波形(変位位置−推力特性)が変位方向にずれる。このため、空間を形成せず二組の電機子間に空間に対応した位相角をずらせた電流を供給しない場合に比べて、二組の電機子で得られる推力を合せて得られる合成推力の推力脈動が打ち消しあって小さくなり、この分、推力変動を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の第1実施の形態に係るリニア同期モータ1Aを図1(a)〜(c)に基づいて説明する。なお、図11に示す部材と同等の部材については同一の符号で付し、その説明は適宜、省略する。
図1(a)において、リニア同期モータ1Aは、長手方向に相対移動可能に設けられた軸状の界磁側部材2(第1部材)及び筒状の電機子側部材3(第2部材)を有している。
界磁側部材2は、軸状の界磁側鉄心4と、界磁側鉄心4に挿通された環状の10個の磁極6からなる界磁5と、から大略構成されている。磁極6は、N極6N及びS極6Sから構成され、N極6N及びS極6Sは、界磁側部材2の軸方向に交互に配置されている。
電機子側部材3は、外筒7(支持部材)と、筒状をなし外筒7の内周側に挿通されて内側がギャップ(符号省略)を介して界磁5に対面する電機子8と、から大略構成されている。電機子8は、二組設けられており、図1(a)左側、右側のものをそれぞれ第1、第2電機子8a,8bという。
【0012】
第1、第2電機子8a,8bは、長さ寸法Lの空間20を空けて配置されている。この空間20の長さ寸法Lは、電気角で90°になるように設定されている。
各電機子8(第1、第2電機子8a,8b)は、内周側に3個の環状のスリット9a〜9fが形成された筒状の電機子鉄心10と、電機子鉄心10のスリット9a〜9f内に嵌合され、かつ図1(b)に示すようにスター結線された3個の電機子コイル11と、から大略構成されている。電機子鉄心10は電機子コイル11と磁気的に結合したものになっている。前記スリット9a〜9fについて、以下、適宜、図1(a)左から順に、第1〜第6スリット9a〜9fという。
【0013】
第1電機子8aの3個の電機子コイル11は、120°ずつ位相がずれた(後述するU相、V相、W相の順に遅れ位相となる)所定周波数の正弦波状の三相交流(U相、V相、W相電流)を発生する電源12に接続されている。そして、第1電機子8の3個の電機子コイル11は、電源12に設けられたU相、V相、W相電流供給用の端子(以下、U相、V相、W相電流供給端子13U,13V,13Wという。)に接続したU相、V相、W相接続線21U,21V,21Wを通してU相、V相、W相電流の供給を受けるようになっている。
第2電機子8bの3個の電機子コイル11は、図1(b)に示すように、U相、V相、W相接続線21U,21V,21Wに分岐接続される移相器22を介してU相、V相、W相電流供給端子13U,13V,13Wに接続され、U相、V相、W相電流の供給を受けるようになっている。第1、第2電機子8a,8bの計6個の電機子コイル11について、供給電流に対応して、以下、適宜、第1電機子U相、V相、W相コイル11Ua,11Va,11Wa、第2電機子U相、V相、W相コイル11Ub,11Vb,11Wbという。
【0014】
移相器22は、電源12からの電流の入力を受けてこの電流について所定位相角(以下、便宜上、調整位相角という。)分、位相を遅らせて第2電機子U相、V相、W相コイル11Ub,11Vb,11Wbに出力する。
本実施の形態では、前記調整位相角は、前記空間20の電気角90°(空間20の長さ寸法L)に対応して90°に設定している。このため、第2電機子U相、V相、W相コイル11Ub,11Vb,11Wbには、第1電機子U相、V相、W相コイル11Ua,11Va,11Waに比して位相が90°遅れた電流が供給される。
なお、本実施の形態では、前記調整位相角は、所定位相角を90°に設定しているが、これに代えて、前記空間20の電気角90°とほぼ同等の角度である60°〜120°〔90°を除く〕に設定してもよい。
【0015】
上述したように構成したリニア同期モータ1Aによれば、移相器22を介して第2電機子U相、V相、W相コイル11Ub,11Vb,11Wbに対して、第1電機子U相、V相、W相コイル11Ua,11Va,11Waへの供給電流に比して、空間20の長さ寸法Lに相当する電気角90°に相当する大きさの位相角(調整位相角90°)だけ位相をずらした電流を供給する。
これにより、図1(c)に示すように、第1電機子U相、V相、W相コイル11Ua,11Va,11Waヘの通電で得られる推力(第1電機子側部材側推力Fa)と、第2電機子U相、V相、W相コイル11Ub,11Vb,11Wbヘの通電で得られる推力(第2電機子側部材側推力Fb)と、を合せて得られる合成推力Fgは、第1電機子側部材側推力Faに含まれる推力脈動及び第2電機子側部材側推力Fbに含まれる推力脈動が略打ち消し合うようになる。
このため、全体として、推力変動が抑制されて、界磁側部材2及び電機子側部材3の相対変位〔図1(c)では電気角で示す〕に対してなだらかに変化する特性を示す。なお、図1(c)では、実線で、合成推力Fg(第1電機子側部材側推力Fa+第2電機子側部材側推力Fb)の1/2(第1電機子側部材側推力Fa及び第2電機子側部材側推力Fbの平均値)を示している。
【0016】
本実施の形態のリニア同期モータ1Aでは、上述したように、推力変動が抑制されることにより、本実施の形態のリニア同期モータ1Aが用いられる工作機や自動車、搬送装置などについて、滑らかな稼働を図ることが可能となる。
さらに、第2電機子U相、V相、W相コイル11Ub,11Vb,11Wbに対して、第1電機子U相、V相、W相コイル11Ua,11Va,11Waへの供給電流に比して、空間20の長さ寸法Lに相当する電気角90°に相当する大きさの位相角(調整位相角90°)だけ位相をずらした電流を供給することにより、空間20を形成しているものの、空間20を形成しないときと同様に各コイルに電流を供給することにより、同期モータとして良好に機能し、界磁側部材2及び電機子側部材3の相対変位を良好に果たすことができる。
【0017】
また、一般に、リニア誘導モータでは、誘導電流を用いて推力を得ることから、効率、位置精度、発熱などの面で問題を有するものであった。これに比してこの第1実施の形態のリニア同期モータ1Aによれば、効率の向上、また、位置精度の向上及び発熱の低減を図ることができる。
【0018】
本第1実施の形態では、空間20の長さ寸法について、電気角90°に相当する寸法Lに設定し、第2電機子U相、V相、W相コイル11Ub,11Vb,11Wbに対して、第1電機子U相、V相、W相コイル11Ua,11Va,11Waへの供給電流に比して、電気角90°に相当する大きさの位相角(調整位相角90°)だけ位相をずらした電流を供給する場合を例にしたが、本発明はこれに限られない。例えば、空間20の長さを任意に設定し、第2電機子U相、V相、W相コイル11Ub,11Vb,11Wbに対して、第1電機子U相、V相、W相コイル11Ua,11Va,11Waへの供給電流に比して、空間20の長さ寸法に相当する電気角に相当する調整位相角だけ位相がずれる電流を供給するように構成してもよい。このように構成することにより第1電機子側部材側推力Faと第2電機子側部材側推力Fbと、を合せて得られる合成推力Fgは、全体として推力変動が抑制されて、界磁側部材2及び電機子側部材3の相対変位に対してなだらかに変化する特性を示すことになる。
【0019】
本願発明者らは、本実施の形態で空間20を設けず、かつ移相器22を用いないもの(以下、比較リニア同期モータという。)と本実施の形態(リニア同期モータ1A)を対象にして磁場解析を実施した。そして、本実施の形態によれば、合成推力Fgの低下を、比較リニア同期モータに比して、10%以内に抑えること、ひいては運転効率の低下を実用上支障が生じない範囲に抑えることを確認できた。
【0020】
上記実施の形態では、移相器22を用いて第2電機子U相、V相、W相コイル11Ub,11Vb,11Wbに供給される電流の位相をずらす場合を例にしたが、本発明はこれに限られない。例えば図2に示すように、図1の移相器22に代えて、電源12及び第1電機子U相、V相、W相コイル11Ua,11Va,11Wa間、電源12及び第2電機子U相、V相、W相コイル11Ub,11Vb,11Wb間にそれぞれドライバ23a、23bを介在し、この2個のドライバ23a、23bを用いて、前記第1実施の形態と同様に第2電機子U相、V相、W相コイル11Ub,11Vb,11Wbに位相をずらした電流を供給するようにしてもよい。
【0021】
次に、本発明の第2実施の形態に係るリニア同期モータ1Bを、図3(a)、(b)に基づいて説明する。
このリニア同期モータ1Bは、図3(a)に示すように、第1実施の形態のリニア同期モータ1Aに比して、第4〜第6スリット9d〜9fに嵌合される電機子コイル11について、各2個とし、第4〜第6スリット9d〜9fの各2個の電機子コイル11に対して、第1電機子U相、V相、W相コイル11Ua,11Va,11Waへの供給電流と同じ位相の電流を供給するようにしたことが主に異なっている。ここで、第4〜第6スリット9d〜9fに嵌合される電機子コイル11を、供給する電流に対応して、以下、図3(a)左から順に、第2電機子分割V相コイル11Vs、分割−W相コイル11Wf、分割W相コイル11Ws、分割−U相コイル11Uf、分割U相コイル11Us、分割−V相コイル11Vfという。ここで、−U相とは、U相と180°位相のずれた電流であり、この電流をコイルに通電するには、例えば、分割−U相コイル11Ufの結線を分割U相コイル11Usと逆にすればよい。また、分割−U相コイル11Ufの巻き方向を逆にしてもよい。
【0022】
すなわち、図3(b)に示すように、一般に120°ずつ遅れ位相となるU相電流IU、V相電流IV、W相電流IWに対して、差分電流〔IV−IW〕、〔IW−IU〕、〔IU−IV〕を得た場合、これら差分電流は、U相電流IU、V相電流IV、W相電流IWにそれぞれ90°位相が遅れた電流になる。このように構成すると、左右の電機子の各電機子コイルが発生する磁界は、前記空間の長さに相当する電気角に相当する大きさの位相角だけ位相をずらした磁界が生じることとなる。本第2実施の形態では、このことを利用して、第1実施の形態と同様にして、推力変動を抑制できる。そして、このように構成することで、移相器が不要となり、製造コストを低減することができる。
【0023】
上記第1実施の形態で用いた移相器22に代えて、リアクタンス(コイル)又はコンデンサを用いてリニア同期モータ1Cを構成してもよい(第3実施の形態)。例えば、図4に示すように、図1の移相器22に代えてU相、V相、W相接続線21U,21V,21W及び第2電機子U相、V相、W相コイル11Ub,11Vb,11Wbとの間に、図1の移相器22に代えてコイル24を介在させ図1の移相器22の機能を果たすようにすることができる。また、図4において、コイル24に代えてコイルとコンデンサを適宜組み合わせて設けるように構成してもよい。このように構成することで、2つの電機子間の空間の長さに対応する電気角に応じて、2つの電機子の位相差を設定することができる。
【0024】
次に、本発明の第4実施の形態に係るリニア同期モータ1Dを図5に基づいて説明する。
このリニア同期モータ1Dは、空間20に、非磁性のステンレス鋼材料からなる空間用スペーサ25を介在している。この実施の形態によれば、空間用スペーサ25の材料がステンレス鋼であり、剛性が高いことから、第1、第2電機子8a,8bの支持を容易に強化することが可能となる。
【0025】
なお、空間用スペーサ25としては、その材料に、ステンレス鋼に代えてアルミニウム合金を用いることができる。この場合、アルミニウム合金が放熱性の高いことから、モータの発熱を抑えることができる。
また、空間用スペーサ25としては、その材料に、FRP又はセラミックスを用いることもできる。この場合、FRP又はセラミックスが軽量であることから、モータの軽量化と支持の強化が容易に可能となる。
また、空間用スペーサ25を空洞にして配線に利用することにより、配線に必要な空間を確保しモータの製造を容易にすることが可能となる。また、空間用スペーサ25において外部から界磁5側に貫通する孔を設け、それをベアリングのグリス供給通路として使用することにより容易にグリスを界磁5と電機子8の間に供給することが可能となり滑らかな駆動が可能となる。
【0026】
次に、本発明の第5実施の形態に係るリニア同期モータ1Eを図6(a)、(b)に基づいて説明する。
このリニア同期モータ1Eは、第1実施の形態(図1)に比して、図6(a)に示すように、N極6N及びS極6S間に非磁性材料からなる磁極間スペーサ26を介在させていることが異なっている。
この第5実施の形態によれば、N極6N及びS極6S間の急激な磁場変化を緩和することになる。このため、第5実施の形態によれば、図6(b)に示すように、磁極間スペーサ26を介在させていない場合(図6(b)で点線で示す。)に比して、発生推力の変動〔第5実施の形態の推力特性を図6(b)で実線で示す。〕を減少させる効果が得られるとともに、N極6N及びS極6S(磁石間)の吸引力を緩和しさらにそれらの電磁力に対して支持を強化することが可能となる。
【0027】
次に、本発明の第6実施の形態に係るリニア同期モータ1Fを図7に基づいて説明する。
このリニア同期モータ1F(第6実施の形態)は、第1実施の形態(図1)に比して、移相器22を廃止した〔移相器22の機能は第2実施の形態で説明した技術(図3(b))が果たすようにしている〕こと、図7に示すように、第2実施の形態(図3)と同様に第4〜第6スリット9d〜fには各2個のコイルを配置したこと、第4実施の形態(図5)と同様に空間用スペーサ25を設けたこと、第5実施の形態(図6)と同様に磁極間スペーサ26を設けたことが、異なっている。
この第6実施の形態によれば、上述した第2、第4、第5実施の形態が奏する作用・効果を合せて奏することになる。
【0028】
次に、本発明の第7実施の形態に係るリニア同期モータ1Gを図8(a)、(b)に基づいて説明する。
第7実施の形態に係るリニア同期モータ1Gは、図8(a)に示すように、単相巻線と電機子鉄心10にて構成された第1、第2電機子8a,8bが電気角にてほぼ90°に相当する長さ寸法Lだけ離して配置され、外筒7(支持部材)に支持されている。このリニア同期モータ1Gは一般家庭に供給される単相電源を用いて駆動することが出来る。
リニア同期モータ1Gは、第2電機子8bに第1電機子8aに比して90°位相がずれた電流を通電させるべく、図8(b)に示すように、コンデンサ30を用いて構成されている。
第7実施の形態では、単相巻線を用いているが、二相巻線に代えて単相巻線を用いてもよい。この場合、第1電機子1aと第2電機子1bにそれぞれの相の電流を流してやればよい。
【0029】
次に、本発明の第8実施の形態に係るリニア同期モータ1Hを図9(a)、(b)に基づいて説明する。
前記第1実施の形態では、電機子8を2組備えたものであった。これに対し、第8実施の形態に係るリニア同期モータ1Hは、図9(a)に示すように、3組の電機子8(第1〜第3電機子8a〜8c)を備え、さらに第1〜第3電機子8a〜8cの各間に空間20Hを形成しており、この点で、第1実施の形態と主に異なっている。
【0030】
この第8実施の形態では、第1〜第3電機子8a〜8cが電気角にてほぼ60°あるいは120°に相当する距離を離して(空間20Hを形成して)設置している。そして、第1〜第3電機子8a〜8cの各電機子コイル11(第3電機子8cの電機子コイル11を第3電機子U相、V相、W相コイル11Uc,11Vc,11Wcという。)に空間20Hの距離分に相当する前記電気角(ほぼ60°)にほぼ相当する位相(調整位相角60°)をずらした電流を通電させることにより、発生推力(第1〜第3電機子8a〜8cの各電機子コイル11ヘの通電で得られる推力を、第1,第2,第3電機子側部材側推力Fa,Fb,Fcという。)の変動分(推力脈動)を低減するようにしている。本願発明者らは、本第8実施の形態を用いた検証を行い、図9(b)に示すように合成推力Fg〔図9(b)では、実線で合成推力Fgの1/3を示している。〕を得ることができ、第8実施の形態によれば、発生推力の変動分を著しく低減できることを確認することができた。
なお、第8実施の形態では、調整位相角を60°とした場合を例にしたが、120°としてもよい。
【0031】
次に、本発明の第9実施の形態に係るリニア同期モータ1Iを図10に基づいて説明する。
前記第1実施の形態(図1)では、電機子8が2組で、かつ空間20の長さ寸法Lが電気角で90°である場合を例にした。これに対し、第9実施の形態に係るリニア同期モータ1Iでは、電機子8がn組(本実施の形態ではn=3とし、3組の電機子8を用いている。)で、空間20の長さ寸法Lが電気角で180°/nであるように設定しており、この点で、第1実施の形態に比して、主に異なっている。
この第9実施の形態によれば、空間20Hの長さ寸法Lが電気角で180°/nにほぼ相当する電気角の位相をずらした電流を通電させることにより、発生推力の変動を著しく低減する効果が期待できる。
【0032】
上記の各実施の形態では、軸状の界磁側部材2(第1部材)が筒状の電機子側部材3(第2部材)内に収納されて,両者が相対変位する場合を例にしたが,これに代えて、第1部材を筒状に形成し、かつ第2部材を軸状に形成し、第1部材内に第2部材を挿入し両者を相対変位するように構成してもよい。
また、上記の各実施の形態では、円筒型のリニア同期モータを例にしたが、これに代えて、板状のリニア同期モータに本発明を用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施の形態に係るリニア同期モータを模式的に示す図であり、(a)は模式的な断面図、(b)は回路図、(c)は変位位置−推力特性を示す図である。
【図2】図1の移相器に代えてドライバを用いるリニア同期モータの回路図である。
【図3】本発明の第2実施の形態に係るリニア同期モータを模式的に示す図であり、(a)は模式的な断面図、(b)はコイルに流れる電流の位相関係を示すベクトル図である。
【図4】本発明の第3実施の形態に係るリニア同期モータの回路図である。
【図5】本発明の第4実施の形態に係るリニア同期モータを模式的に示す断面図である。
【図6】本発明の第5実施の形態に係るリニア同期モータを模式的に示す図であり、(a)は模式的な断面図、(b)は変位位置−推力特性を示す図である。
【図7】本発明の第6実施の形態に係るリニア同期モータを模式的に示す断面図である。
【図8】本発明の第7実施の形態に係るリニア同期モータを模式的に示す図であり、(a)は模式的な断面図、(b)は回路図である。
【図9】本発明の第8実施の形態に係るリニア同期モータを模式的に示す図であり、(a)は模式的な断面図、(b)は変位位置−推力特性を示す図である。
【図10】本発明の第9実施の形態に係るリニア同期モータを模式的に示す断面図である。
【図11】従来のリニア同期モータの一例を模式的に示す断面図である。
【図12】図11のリニア同期モータの変位位置−推力特性を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1A〜1I…リニア同期モータ、2…界磁側部材(第1部材)、3…電機子側部材(第2部材)、8a…第1電機子、8b…第2電機子、11Ua,11Va,11Wa、11Ub,11Vb,11Wb…第1、第2電機子U相、V相、W相コイル、20…空間、22…移相器。
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機や自動車、搬送装置などに用いられるリニア同期モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、永久磁石回転同期モータにおいては、モータに電流を流さない状態で、外部から軸を回転させるとガタガタと引っかかるようなトルクを受ける。回転により軸の位置が変わると永久磁石からの磁束の経路が変化する。すると、磁場のエネルギーが周期的に変化し、磁場エネルギーを下げる方向にトルクが発生する。これをコギングトルクと呼んでいる。コギングトルクは、回転同期モータの回転時においても発生し、振動などの原因となる。
リニア同期モータにおいても同様に、磁場エネルギーの周期的な変化によって、推力の変動が発生する。これはコギング推力と呼ばれており、リニア同期モータのスムーズな運転を妨げる要因となっている。
従来のリニア同期モータの一例として図11に示すリニア同期モータ1がある(特許文献1参照)。
このリニア同期モータ1は、図11に示すように、長手方向に相対移動可能に設けられた軸状の界磁側部材2及び筒状の電機子側部材3を有している。
界磁側部材2は、軸状の界磁側鉄心4と、界磁側鉄心4に挿通された環状の10個の磁極6からなる界磁5と、から大略構成されている。磁極6は、N極6N及びS極6Sから構成され、N極6N及びS極6Sは、界磁側部材2の軸方向に交互に配置されている。
【0003】
電機子側部材3は、外筒7と、筒状をなし外筒7の内周側に挿通されて内側がギャップ(符号省略)を介して界磁5に対面する電機子8と、から大略構成されている。電機子8は、内周側に6個の環状のスリット9a〜9f(以下、適宜、スリット9と総称する。)が形成された筒状の電機子鉄心10と、電機子鉄心10のスリット9a〜9f内に嵌合された6個の電機子コイル11と、から大略構成されている。前記スリット9a〜9fについて、以下、適宜、図11左から順に、第1〜第6スリット9a〜9fという。
【0004】
6個の電機子コイル11は、120°ずつ位相がずれた所定周波数の正弦波状の三相交流(U相、V相、W相電流)を発生する電源12(図1参照)に接続され、各端子(U相、V相、W相電流供給端子13U,13V,13W)〔図1参照〕からU相、V相、W相電流の供給を受けるようになっている。
U相電流供給端子13Uには、第1、第4スリット9a、9dに嵌合された電機子コイル11が接続され、V相電流供給端子13Vには、第2、第5スリット9b、9eに嵌合された電機子コイル11が接続され、W相電流供給端子13Wには、第3、第6スリット9c、9fに嵌合された電機子コイル11が接続されている。
【0005】
このリニア同期モータ1では、位相のずれた電流を第1〜第6スリット9a〜9fに嵌合された電機子コイル11を流すことにより、電機子8の界磁5との対向部分〔電機子鉄
心10におけるスリット9及びスリット9の間の部分(電機子鉄心ティース14)〕に、軸方向(図11左右方向)に前記周波数に対応した速度で移動する磁界(移動磁界)が発生する。そして、移動磁界と界磁5による磁力とが相互作用し、移動磁界の移動速度に同期して界磁側部材2及び電機子側部材3が界磁側部材2の長手方向に相対的に変位する。
【特許文献1】特開2001‐268884
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、リニア同期モータでは、滑らかな運転を確保する観点から、発生する推力の変動は極力少ないことが望まれている。しかしながら、図11に示すリニア同期モータ1では、図12に示すようにかなり大きい推力脈動が前記所定周波数の約2倍周波数(360°の周波数変化に対して2波長分の変化となる推力脈動)で発生することがある。なお、図12は、リニア同期モータ1の変位位置−推力特性を示し、縦軸に電機子コイル11への通電により発生する推力をとり、横軸に、界磁側部材2及び電機子側部材3の相対変位(電気角で示される)をとっている。このため、図11に示すリニア同期モータ1を工作機や自動車、搬送装置などに適用した場合、滑らかな運転が得られ難く、上記要望に適切には応え得るものになっていなかった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、推力変動を小さくすることができるリニア同期モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、長手方向に相対移動可能に設けられた長手状の第1、第2部材を有し、前記第1部材は、N極及びS極を前記第1部材の長手方向に交互に配置してなる界磁を有し、前記第2部材は、該第2部材の長手方向に順番に配置される複数個の電機子コイルからなり前記界磁に対向して配置される電機子と、該電機子を支持する支持部材と、を備え、前記界磁及び電機子の相互作用により、前記第1、第2部材が前記界磁の長手方向に沿って相対的に移動するリニア同期モータにおいて、前記電機子は、前記第2部材の長手方向に所定長さの空間を空けて少なくとも2組設けられ、前記空間を空けて隣接する二組の電機子の各電機子コイルに対し、前記空間の長さに相当する電気角に相当する大きさの位相角だけ位相をずらした電流を通電させる通電手段を設けたことを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載のリニア同期モータにおいて、前記隣接する二組の電機子の各電機子コイルに対する前記位相角だけ位相をずらした電流の通電における該位相のずらしは、コンデンサ若しくはコイルを用いて行うか、又は前記電機子コイルを駆
動するドライバを介して前記電機子コイルを励磁することにより行うことを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のリニア同期モータにおいて、前記空間には、前記隣接する2組の電機子を支持するスペーサを介在させたことを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のリニア同期モータにおいて、前記スペーサは、その材料にステンレス鋼、アルミニウム合金、FRP又はセラミックスを用いたことを特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載のリニア同期モータにおいて、前記複数個の電機子に備えられる電機子コイルは各3個からなり、該3個の電機子コイルには、当該3個の電機子コイルの配置方向に沿って、位相が120°ずつ順次遅れ又は進むようにされた電流が通電されることを特徴とする。
請求項6記載の発明は、請求項1から5のいずれかに記載のリニア同期モータにおいて、前記空間の長さに相当する電気角は、90°であり、前記位相角は、60°から120°の範囲の値であることを特徴とする。
【0009】
請求項7記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載のリニア同期モータにおいて、前記複数組は3組であり、前記空間の長さに相当する電気角は、60°又は120°であることを特徴とする。
請求項8記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載のリニア同期モータにおいて、前記複数組はn組であり、前記空間の長さに相当する電気角は、180°/nであることを特徴とする。
請求項9記載の発明は、請求項1から8のいずれかに記載のリニア同期モータにおいて、N極及びS極間に非磁性材料からなるスペーサを介在したことを特徴とする。
請求項10記載の発明は、長手方向に相対移動可能に設けられた長手状の第1、第2部材を有し、前記第1部材は、N極及びS極を前記第1部材の長手方向に交互に配置してなる界磁を有し、前記第2部材は、該第2部材の長手方向に順番に配置される複数個の電機子コイルからなり前記界磁に対向して配置される電機子と、該電機子を支持する支持部材と、前記各電機子コイルに電流を供給する通電手段とを備え、前記界磁及び電機子の相互作用により、前記第1、第2部材が前記界磁の長手方向に沿って相対的に移動するリニア同期モータにおいて、前記電機子は、前記第2部材の長手方向に所定長さの空間を空けて少なくとも2組設けられ、前記空間を空けて隣接する二組の電機子の各電機子コイルが発生する磁界は、前記空間の長さに相当する電気角に相当する大きさの位相角だけ位相をずらした磁界が生じるように前記電機子及び前記通電手段を構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1から10に記載の発明によれば、空間を空けて隣接する二組の電機子の各電機子コイルに対し、前記空間の長さに相当する電気角に略相当する大きさの位相角だけ位相をずらした電流を通電させるので、二組の電機子で得られる推力波形(変位位置−推力特性)が変位方向にずれる。このため、空間を形成せず二組の電機子間に空間に対応した位相角をずらせた電流を供給しない場合に比べて、二組の電機子で得られる推力を合せて得られる合成推力の推力脈動が打ち消しあって小さくなり、この分、推力変動を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の第1実施の形態に係るリニア同期モータ1Aを図1(a)〜(c)に基づいて説明する。なお、図11に示す部材と同等の部材については同一の符号で付し、その説明は適宜、省略する。
図1(a)において、リニア同期モータ1Aは、長手方向に相対移動可能に設けられた軸状の界磁側部材2(第1部材)及び筒状の電機子側部材3(第2部材)を有している。
界磁側部材2は、軸状の界磁側鉄心4と、界磁側鉄心4に挿通された環状の10個の磁極6からなる界磁5と、から大略構成されている。磁極6は、N極6N及びS極6Sから構成され、N極6N及びS極6Sは、界磁側部材2の軸方向に交互に配置されている。
電機子側部材3は、外筒7(支持部材)と、筒状をなし外筒7の内周側に挿通されて内側がギャップ(符号省略)を介して界磁5に対面する電機子8と、から大略構成されている。電機子8は、二組設けられており、図1(a)左側、右側のものをそれぞれ第1、第2電機子8a,8bという。
【0012】
第1、第2電機子8a,8bは、長さ寸法Lの空間20を空けて配置されている。この空間20の長さ寸法Lは、電気角で90°になるように設定されている。
各電機子8(第1、第2電機子8a,8b)は、内周側に3個の環状のスリット9a〜9fが形成された筒状の電機子鉄心10と、電機子鉄心10のスリット9a〜9f内に嵌合され、かつ図1(b)に示すようにスター結線された3個の電機子コイル11と、から大略構成されている。電機子鉄心10は電機子コイル11と磁気的に結合したものになっている。前記スリット9a〜9fについて、以下、適宜、図1(a)左から順に、第1〜第6スリット9a〜9fという。
【0013】
第1電機子8aの3個の電機子コイル11は、120°ずつ位相がずれた(後述するU相、V相、W相の順に遅れ位相となる)所定周波数の正弦波状の三相交流(U相、V相、W相電流)を発生する電源12に接続されている。そして、第1電機子8の3個の電機子コイル11は、電源12に設けられたU相、V相、W相電流供給用の端子(以下、U相、V相、W相電流供給端子13U,13V,13Wという。)に接続したU相、V相、W相接続線21U,21V,21Wを通してU相、V相、W相電流の供給を受けるようになっている。
第2電機子8bの3個の電機子コイル11は、図1(b)に示すように、U相、V相、W相接続線21U,21V,21Wに分岐接続される移相器22を介してU相、V相、W相電流供給端子13U,13V,13Wに接続され、U相、V相、W相電流の供給を受けるようになっている。第1、第2電機子8a,8bの計6個の電機子コイル11について、供給電流に対応して、以下、適宜、第1電機子U相、V相、W相コイル11Ua,11Va,11Wa、第2電機子U相、V相、W相コイル11Ub,11Vb,11Wbという。
【0014】
移相器22は、電源12からの電流の入力を受けてこの電流について所定位相角(以下、便宜上、調整位相角という。)分、位相を遅らせて第2電機子U相、V相、W相コイル11Ub,11Vb,11Wbに出力する。
本実施の形態では、前記調整位相角は、前記空間20の電気角90°(空間20の長さ寸法L)に対応して90°に設定している。このため、第2電機子U相、V相、W相コイル11Ub,11Vb,11Wbには、第1電機子U相、V相、W相コイル11Ua,11Va,11Waに比して位相が90°遅れた電流が供給される。
なお、本実施の形態では、前記調整位相角は、所定位相角を90°に設定しているが、これに代えて、前記空間20の電気角90°とほぼ同等の角度である60°〜120°〔90°を除く〕に設定してもよい。
【0015】
上述したように構成したリニア同期モータ1Aによれば、移相器22を介して第2電機子U相、V相、W相コイル11Ub,11Vb,11Wbに対して、第1電機子U相、V相、W相コイル11Ua,11Va,11Waへの供給電流に比して、空間20の長さ寸法Lに相当する電気角90°に相当する大きさの位相角(調整位相角90°)だけ位相をずらした電流を供給する。
これにより、図1(c)に示すように、第1電機子U相、V相、W相コイル11Ua,11Va,11Waヘの通電で得られる推力(第1電機子側部材側推力Fa)と、第2電機子U相、V相、W相コイル11Ub,11Vb,11Wbヘの通電で得られる推力(第2電機子側部材側推力Fb)と、を合せて得られる合成推力Fgは、第1電機子側部材側推力Faに含まれる推力脈動及び第2電機子側部材側推力Fbに含まれる推力脈動が略打ち消し合うようになる。
このため、全体として、推力変動が抑制されて、界磁側部材2及び電機子側部材3の相対変位〔図1(c)では電気角で示す〕に対してなだらかに変化する特性を示す。なお、図1(c)では、実線で、合成推力Fg(第1電機子側部材側推力Fa+第2電機子側部材側推力Fb)の1/2(第1電機子側部材側推力Fa及び第2電機子側部材側推力Fbの平均値)を示している。
【0016】
本実施の形態のリニア同期モータ1Aでは、上述したように、推力変動が抑制されることにより、本実施の形態のリニア同期モータ1Aが用いられる工作機や自動車、搬送装置などについて、滑らかな稼働を図ることが可能となる。
さらに、第2電機子U相、V相、W相コイル11Ub,11Vb,11Wbに対して、第1電機子U相、V相、W相コイル11Ua,11Va,11Waへの供給電流に比して、空間20の長さ寸法Lに相当する電気角90°に相当する大きさの位相角(調整位相角90°)だけ位相をずらした電流を供給することにより、空間20を形成しているものの、空間20を形成しないときと同様に各コイルに電流を供給することにより、同期モータとして良好に機能し、界磁側部材2及び電機子側部材3の相対変位を良好に果たすことができる。
【0017】
また、一般に、リニア誘導モータでは、誘導電流を用いて推力を得ることから、効率、位置精度、発熱などの面で問題を有するものであった。これに比してこの第1実施の形態のリニア同期モータ1Aによれば、効率の向上、また、位置精度の向上及び発熱の低減を図ることができる。
【0018】
本第1実施の形態では、空間20の長さ寸法について、電気角90°に相当する寸法Lに設定し、第2電機子U相、V相、W相コイル11Ub,11Vb,11Wbに対して、第1電機子U相、V相、W相コイル11Ua,11Va,11Waへの供給電流に比して、電気角90°に相当する大きさの位相角(調整位相角90°)だけ位相をずらした電流を供給する場合を例にしたが、本発明はこれに限られない。例えば、空間20の長さを任意に設定し、第2電機子U相、V相、W相コイル11Ub,11Vb,11Wbに対して、第1電機子U相、V相、W相コイル11Ua,11Va,11Waへの供給電流に比して、空間20の長さ寸法に相当する電気角に相当する調整位相角だけ位相がずれる電流を供給するように構成してもよい。このように構成することにより第1電機子側部材側推力Faと第2電機子側部材側推力Fbと、を合せて得られる合成推力Fgは、全体として推力変動が抑制されて、界磁側部材2及び電機子側部材3の相対変位に対してなだらかに変化する特性を示すことになる。
【0019】
本願発明者らは、本実施の形態で空間20を設けず、かつ移相器22を用いないもの(以下、比較リニア同期モータという。)と本実施の形態(リニア同期モータ1A)を対象にして磁場解析を実施した。そして、本実施の形態によれば、合成推力Fgの低下を、比較リニア同期モータに比して、10%以内に抑えること、ひいては運転効率の低下を実用上支障が生じない範囲に抑えることを確認できた。
【0020】
上記実施の形態では、移相器22を用いて第2電機子U相、V相、W相コイル11Ub,11Vb,11Wbに供給される電流の位相をずらす場合を例にしたが、本発明はこれに限られない。例えば図2に示すように、図1の移相器22に代えて、電源12及び第1電機子U相、V相、W相コイル11Ua,11Va,11Wa間、電源12及び第2電機子U相、V相、W相コイル11Ub,11Vb,11Wb間にそれぞれドライバ23a、23bを介在し、この2個のドライバ23a、23bを用いて、前記第1実施の形態と同様に第2電機子U相、V相、W相コイル11Ub,11Vb,11Wbに位相をずらした電流を供給するようにしてもよい。
【0021】
次に、本発明の第2実施の形態に係るリニア同期モータ1Bを、図3(a)、(b)に基づいて説明する。
このリニア同期モータ1Bは、図3(a)に示すように、第1実施の形態のリニア同期モータ1Aに比して、第4〜第6スリット9d〜9fに嵌合される電機子コイル11について、各2個とし、第4〜第6スリット9d〜9fの各2個の電機子コイル11に対して、第1電機子U相、V相、W相コイル11Ua,11Va,11Waへの供給電流と同じ位相の電流を供給するようにしたことが主に異なっている。ここで、第4〜第6スリット9d〜9fに嵌合される電機子コイル11を、供給する電流に対応して、以下、図3(a)左から順に、第2電機子分割V相コイル11Vs、分割−W相コイル11Wf、分割W相コイル11Ws、分割−U相コイル11Uf、分割U相コイル11Us、分割−V相コイル11Vfという。ここで、−U相とは、U相と180°位相のずれた電流であり、この電流をコイルに通電するには、例えば、分割−U相コイル11Ufの結線を分割U相コイル11Usと逆にすればよい。また、分割−U相コイル11Ufの巻き方向を逆にしてもよい。
【0022】
すなわち、図3(b)に示すように、一般に120°ずつ遅れ位相となるU相電流IU、V相電流IV、W相電流IWに対して、差分電流〔IV−IW〕、〔IW−IU〕、〔IU−IV〕を得た場合、これら差分電流は、U相電流IU、V相電流IV、W相電流IWにそれぞれ90°位相が遅れた電流になる。このように構成すると、左右の電機子の各電機子コイルが発生する磁界は、前記空間の長さに相当する電気角に相当する大きさの位相角だけ位相をずらした磁界が生じることとなる。本第2実施の形態では、このことを利用して、第1実施の形態と同様にして、推力変動を抑制できる。そして、このように構成することで、移相器が不要となり、製造コストを低減することができる。
【0023】
上記第1実施の形態で用いた移相器22に代えて、リアクタンス(コイル)又はコンデンサを用いてリニア同期モータ1Cを構成してもよい(第3実施の形態)。例えば、図4に示すように、図1の移相器22に代えてU相、V相、W相接続線21U,21V,21W及び第2電機子U相、V相、W相コイル11Ub,11Vb,11Wbとの間に、図1の移相器22に代えてコイル24を介在させ図1の移相器22の機能を果たすようにすることができる。また、図4において、コイル24に代えてコイルとコンデンサを適宜組み合わせて設けるように構成してもよい。このように構成することで、2つの電機子間の空間の長さに対応する電気角に応じて、2つの電機子の位相差を設定することができる。
【0024】
次に、本発明の第4実施の形態に係るリニア同期モータ1Dを図5に基づいて説明する。
このリニア同期モータ1Dは、空間20に、非磁性のステンレス鋼材料からなる空間用スペーサ25を介在している。この実施の形態によれば、空間用スペーサ25の材料がステンレス鋼であり、剛性が高いことから、第1、第2電機子8a,8bの支持を容易に強化することが可能となる。
【0025】
なお、空間用スペーサ25としては、その材料に、ステンレス鋼に代えてアルミニウム合金を用いることができる。この場合、アルミニウム合金が放熱性の高いことから、モータの発熱を抑えることができる。
また、空間用スペーサ25としては、その材料に、FRP又はセラミックスを用いることもできる。この場合、FRP又はセラミックスが軽量であることから、モータの軽量化と支持の強化が容易に可能となる。
また、空間用スペーサ25を空洞にして配線に利用することにより、配線に必要な空間を確保しモータの製造を容易にすることが可能となる。また、空間用スペーサ25において外部から界磁5側に貫通する孔を設け、それをベアリングのグリス供給通路として使用することにより容易にグリスを界磁5と電機子8の間に供給することが可能となり滑らかな駆動が可能となる。
【0026】
次に、本発明の第5実施の形態に係るリニア同期モータ1Eを図6(a)、(b)に基づいて説明する。
このリニア同期モータ1Eは、第1実施の形態(図1)に比して、図6(a)に示すように、N極6N及びS極6S間に非磁性材料からなる磁極間スペーサ26を介在させていることが異なっている。
この第5実施の形態によれば、N極6N及びS極6S間の急激な磁場変化を緩和することになる。このため、第5実施の形態によれば、図6(b)に示すように、磁極間スペーサ26を介在させていない場合(図6(b)で点線で示す。)に比して、発生推力の変動〔第5実施の形態の推力特性を図6(b)で実線で示す。〕を減少させる効果が得られるとともに、N極6N及びS極6S(磁石間)の吸引力を緩和しさらにそれらの電磁力に対して支持を強化することが可能となる。
【0027】
次に、本発明の第6実施の形態に係るリニア同期モータ1Fを図7に基づいて説明する。
このリニア同期モータ1F(第6実施の形態)は、第1実施の形態(図1)に比して、移相器22を廃止した〔移相器22の機能は第2実施の形態で説明した技術(図3(b))が果たすようにしている〕こと、図7に示すように、第2実施の形態(図3)と同様に第4〜第6スリット9d〜fには各2個のコイルを配置したこと、第4実施の形態(図5)と同様に空間用スペーサ25を設けたこと、第5実施の形態(図6)と同様に磁極間スペーサ26を設けたことが、異なっている。
この第6実施の形態によれば、上述した第2、第4、第5実施の形態が奏する作用・効果を合せて奏することになる。
【0028】
次に、本発明の第7実施の形態に係るリニア同期モータ1Gを図8(a)、(b)に基づいて説明する。
第7実施の形態に係るリニア同期モータ1Gは、図8(a)に示すように、単相巻線と電機子鉄心10にて構成された第1、第2電機子8a,8bが電気角にてほぼ90°に相当する長さ寸法Lだけ離して配置され、外筒7(支持部材)に支持されている。このリニア同期モータ1Gは一般家庭に供給される単相電源を用いて駆動することが出来る。
リニア同期モータ1Gは、第2電機子8bに第1電機子8aに比して90°位相がずれた電流を通電させるべく、図8(b)に示すように、コンデンサ30を用いて構成されている。
第7実施の形態では、単相巻線を用いているが、二相巻線に代えて単相巻線を用いてもよい。この場合、第1電機子1aと第2電機子1bにそれぞれの相の電流を流してやればよい。
【0029】
次に、本発明の第8実施の形態に係るリニア同期モータ1Hを図9(a)、(b)に基づいて説明する。
前記第1実施の形態では、電機子8を2組備えたものであった。これに対し、第8実施の形態に係るリニア同期モータ1Hは、図9(a)に示すように、3組の電機子8(第1〜第3電機子8a〜8c)を備え、さらに第1〜第3電機子8a〜8cの各間に空間20Hを形成しており、この点で、第1実施の形態と主に異なっている。
【0030】
この第8実施の形態では、第1〜第3電機子8a〜8cが電気角にてほぼ60°あるいは120°に相当する距離を離して(空間20Hを形成して)設置している。そして、第1〜第3電機子8a〜8cの各電機子コイル11(第3電機子8cの電機子コイル11を第3電機子U相、V相、W相コイル11Uc,11Vc,11Wcという。)に空間20Hの距離分に相当する前記電気角(ほぼ60°)にほぼ相当する位相(調整位相角60°)をずらした電流を通電させることにより、発生推力(第1〜第3電機子8a〜8cの各電機子コイル11ヘの通電で得られる推力を、第1,第2,第3電機子側部材側推力Fa,Fb,Fcという。)の変動分(推力脈動)を低減するようにしている。本願発明者らは、本第8実施の形態を用いた検証を行い、図9(b)に示すように合成推力Fg〔図9(b)では、実線で合成推力Fgの1/3を示している。〕を得ることができ、第8実施の形態によれば、発生推力の変動分を著しく低減できることを確認することができた。
なお、第8実施の形態では、調整位相角を60°とした場合を例にしたが、120°としてもよい。
【0031】
次に、本発明の第9実施の形態に係るリニア同期モータ1Iを図10に基づいて説明する。
前記第1実施の形態(図1)では、電機子8が2組で、かつ空間20の長さ寸法Lが電気角で90°である場合を例にした。これに対し、第9実施の形態に係るリニア同期モータ1Iでは、電機子8がn組(本実施の形態ではn=3とし、3組の電機子8を用いている。)で、空間20の長さ寸法Lが電気角で180°/nであるように設定しており、この点で、第1実施の形態に比して、主に異なっている。
この第9実施の形態によれば、空間20Hの長さ寸法Lが電気角で180°/nにほぼ相当する電気角の位相をずらした電流を通電させることにより、発生推力の変動を著しく低減する効果が期待できる。
【0032】
上記の各実施の形態では、軸状の界磁側部材2(第1部材)が筒状の電機子側部材3(第2部材)内に収納されて,両者が相対変位する場合を例にしたが,これに代えて、第1部材を筒状に形成し、かつ第2部材を軸状に形成し、第1部材内に第2部材を挿入し両者を相対変位するように構成してもよい。
また、上記の各実施の形態では、円筒型のリニア同期モータを例にしたが、これに代えて、板状のリニア同期モータに本発明を用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施の形態に係るリニア同期モータを模式的に示す図であり、(a)は模式的な断面図、(b)は回路図、(c)は変位位置−推力特性を示す図である。
【図2】図1の移相器に代えてドライバを用いるリニア同期モータの回路図である。
【図3】本発明の第2実施の形態に係るリニア同期モータを模式的に示す図であり、(a)は模式的な断面図、(b)はコイルに流れる電流の位相関係を示すベクトル図である。
【図4】本発明の第3実施の形態に係るリニア同期モータの回路図である。
【図5】本発明の第4実施の形態に係るリニア同期モータを模式的に示す断面図である。
【図6】本発明の第5実施の形態に係るリニア同期モータを模式的に示す図であり、(a)は模式的な断面図、(b)は変位位置−推力特性を示す図である。
【図7】本発明の第6実施の形態に係るリニア同期モータを模式的に示す断面図である。
【図8】本発明の第7実施の形態に係るリニア同期モータを模式的に示す図であり、(a)は模式的な断面図、(b)は回路図である。
【図9】本発明の第8実施の形態に係るリニア同期モータを模式的に示す図であり、(a)は模式的な断面図、(b)は変位位置−推力特性を示す図である。
【図10】本発明の第9実施の形態に係るリニア同期モータを模式的に示す断面図である。
【図11】従来のリニア同期モータの一例を模式的に示す断面図である。
【図12】図11のリニア同期モータの変位位置−推力特性を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1A〜1I…リニア同期モータ、2…界磁側部材(第1部材)、3…電機子側部材(第2部材)、8a…第1電機子、8b…第2電機子、11Ua,11Va,11Wa、11Ub,11Vb,11Wb…第1、第2電機子U相、V相、W相コイル、20…空間、22…移相器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に相対移動可能に設けられた長手状の第1、第2部材を有し、
前記第1部材は、N極及びS極を前記第1部材の長手方向に交互に配置してなる界磁を有し、
前記第2部材は、該第2部材の長手方向に順番に配置される複数個の電機子コイルからなり前記界磁に対向して配置される電機子と、該電機子を支持する支持部材と、を備え、
前記界磁及び電機子の相互作用により、前記第1、第2部材が前記界磁の長手方向に沿って相対的に移動するリニア同期モータにおいて、
前記電機子は、前記第2部材の長手方向に所定長さの空間を空けて少なくとも2組設けられ、
前記空間を空けて隣接する二組の電機子の各電機子コイルに対し、前記空間の長さに相当する電気角に相当する大きさの位相角だけ位相をずらした電流を通電させる通電手段を設けたことを特徴とするリニア同期モータ。
【請求項2】
前記隣接する二組の電機子の各電機子コイルに対する前記位相角だけ位相をずらした電流の通電における該位相のずらしは、コンデンサ若しくはコイルを用いて行うか、又は前記電機子コイルを駆動するドライバを介して前記電機子コイルを励磁することにより行うことを特徴とする請求項1記載のリニア同期モータ。
【請求項3】
前記空間には、前記隣接する2組の電機子を支持するスペーサを介在させたことを特徴とする請求項1又は2記載のリニア同期モータ。
【請求項4】
前記スペーサは、その材料にステンレス鋼、アルミニウム合金、FRP又はセラミックスを用いたことを特徴とする請求項3記載のリニア同期モータ。
【請求項5】
前記複数個の電機子に備えられる電機子コイルは各3個からなり、該3個の電機子コイルには、当該3個の電機子コイルの配置方向に沿って、位相が120°ずつ順次遅れ又は進むようにされた電流が通電されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のリニア同期モータ。
【請求項6】
前記空間の長さに相当する電気角は、90°であり、前記位相角は、60°から120°の範囲の値であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のリニア同期モータ。
【請求項7】
前記複数組は3組であり、前記空間の長さに相当する電気角は、60°又は120°であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のリニア同期モータ。
【請求項8】
前記複数組はn組であり、前記空間の長さに相当する電気角は、180°/nであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のリニア同期モータ。
【請求項9】
N極及びS極間に非磁性材料からなるスペーサを介在したことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のリニア同期モータ。
【請求項10】
長手方向に相対移動可能に設けられた長手状の第1、第2部材を有し、
前記第1部材は、N極及びS極を前記第1部材の長手方向に交互に配置してなる界磁を有し、
前記第2部材は、該第2部材の長手方向に順番に配置される複数個の電機子コイルからなり前記界磁に対向して配置される電機子と、該電機子を支持する支持部材と、
前記各電機子コイルに電流を供給する通電手段とを備え、
前記界磁及び電機子の相互作用により、前記第1、第2部材が前記界磁の長手方向に沿って相対的に移動するリニア同期モータにおいて、
前記電機子は、前記第2部材の長手方向に所定長さの空間を空けて少なくとも2組設けられ、
前記空間を空けて隣接する二組の電機子の各電機子コイルが発生する磁界は、前記空間の長さに相当する電気角に相当する大きさの位相角だけ位相をずらした磁界が生じるように前記電機子及び前記通電手段を構成したことを特徴とするリニア同期モータ。
【請求項1】
長手方向に相対移動可能に設けられた長手状の第1、第2部材を有し、
前記第1部材は、N極及びS極を前記第1部材の長手方向に交互に配置してなる界磁を有し、
前記第2部材は、該第2部材の長手方向に順番に配置される複数個の電機子コイルからなり前記界磁に対向して配置される電機子と、該電機子を支持する支持部材と、を備え、
前記界磁及び電機子の相互作用により、前記第1、第2部材が前記界磁の長手方向に沿って相対的に移動するリニア同期モータにおいて、
前記電機子は、前記第2部材の長手方向に所定長さの空間を空けて少なくとも2組設けられ、
前記空間を空けて隣接する二組の電機子の各電機子コイルに対し、前記空間の長さに相当する電気角に相当する大きさの位相角だけ位相をずらした電流を通電させる通電手段を設けたことを特徴とするリニア同期モータ。
【請求項2】
前記隣接する二組の電機子の各電機子コイルに対する前記位相角だけ位相をずらした電流の通電における該位相のずらしは、コンデンサ若しくはコイルを用いて行うか、又は前記電機子コイルを駆動するドライバを介して前記電機子コイルを励磁することにより行うことを特徴とする請求項1記載のリニア同期モータ。
【請求項3】
前記空間には、前記隣接する2組の電機子を支持するスペーサを介在させたことを特徴とする請求項1又は2記載のリニア同期モータ。
【請求項4】
前記スペーサは、その材料にステンレス鋼、アルミニウム合金、FRP又はセラミックスを用いたことを特徴とする請求項3記載のリニア同期モータ。
【請求項5】
前記複数個の電機子に備えられる電機子コイルは各3個からなり、該3個の電機子コイルには、当該3個の電機子コイルの配置方向に沿って、位相が120°ずつ順次遅れ又は進むようにされた電流が通電されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のリニア同期モータ。
【請求項6】
前記空間の長さに相当する電気角は、90°であり、前記位相角は、60°から120°の範囲の値であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のリニア同期モータ。
【請求項7】
前記複数組は3組であり、前記空間の長さに相当する電気角は、60°又は120°であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のリニア同期モータ。
【請求項8】
前記複数組はn組であり、前記空間の長さに相当する電気角は、180°/nであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のリニア同期モータ。
【請求項9】
N極及びS極間に非磁性材料からなるスペーサを介在したことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のリニア同期モータ。
【請求項10】
長手方向に相対移動可能に設けられた長手状の第1、第2部材を有し、
前記第1部材は、N極及びS極を前記第1部材の長手方向に交互に配置してなる界磁を有し、
前記第2部材は、該第2部材の長手方向に順番に配置される複数個の電機子コイルからなり前記界磁に対向して配置される電機子と、該電機子を支持する支持部材と、
前記各電機子コイルに電流を供給する通電手段とを備え、
前記界磁及び電機子の相互作用により、前記第1、第2部材が前記界磁の長手方向に沿って相対的に移動するリニア同期モータにおいて、
前記電機子は、前記第2部材の長手方向に所定長さの空間を空けて少なくとも2組設けられ、
前記空間を空けて隣接する二組の電機子の各電機子コイルが発生する磁界は、前記空間の長さに相当する電気角に相当する大きさの位相角だけ位相をずらした磁界が生じるように前記電機子及び前記通電手段を構成したことを特徴とするリニア同期モータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−89260(P2007−89260A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−272226(P2005−272226)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年3月17日 社団法人電気学会発行の「平成17年 電気学会全国大会 講演論文集[5]電気機器」に発表
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年3月17日 社団法人電気学会発行の「平成17年 電気学会全国大会 講演論文集[5]電気機器」に発表
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]