説明

リバースエンジニアリングを用いたコイルばね設計方法

リバースエンジニアリングを用いたコンセプトを利用する有限要素法(FEA)を用いたコイルばねの設計方法。本方法は、まず従来のFEAを用いた設計では一般的に出力である所望の圧縮形状を設計し、次いで所望の性能仕様を有するばねを製造するのに必要な対応フリー形状を逆に決定する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的なコイルばねに関するものである。特に、設計者に依存せず、自動的に最適化されたコイルばね形状の設計方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コイルばねは、簡単な静力学で得られる応力を基に、コイルばねの湾曲の効果による応力変化を補正するワールの修正係数を含めた理論を用いて設計されてきた。しかしながら、この理論は、ばね全体がピッチ角度がゼロであるとの仮定のもとで得られたものである。近年、高応力材が開発されたことから、高応力材の性能を効果的に利用するために、より少ない巻数のコイルばねが設計されつつある。その結果、コイルばねのピッチ角度が高くなり、簡単な静力学に基づいた設計では、十分な精度を得ることができなくなっている。
【0003】
1990年代、コイルばねの荷重軸位置(FLP, Force Line Position)の推定を含め、高精度な設計に対する要求を満たす方法として、有限要素法(FEA, Finite Element Analysis)を用いたコイルばね設計方法が一般化していった。さらに、コンピューター処理速度の高速化が、コイルばね設計方法へのFEAの応用を促進した。FEAは不可逆的な計算手法であるため、高さ及び半径の分布により表現されるコイルばね形状のFEAモデルは、コイルばねの無荷重時(フリー)状態で作成される必要がある。このフリー形状モデルはFEAを用いて圧縮され、ばね定数、荷重、FLP、応力、変形形状等、圧縮時の仕様要求を満たしているか確認される。FEA結果により仕様要求を満たしていないと判断された場合には、図1に示されるように、圧縮状態のばね特性から得られる情報を基に修正による効果を予測することで、フリー形状が修正される。この修正は、多くの設計経験を通してどのような修正がどのような変更をもたらすかといった技術を習得した設計者によって行われる。
【0004】
従来のFEAを用いたコイルばね設計方法では、迅速で最適な設計のための多くのスキルや経験が必要である。このため、フリー形状が個々の設計者に依存し、同じ客先仕様を同じ設計者が設計しても、毎回同じ形状を再現するのは困難である。
【0005】
また、FEAを用いたコイルばね設計方法は、設計段階における問題解決能力に長けている反面、設計の難しさを増長し、設計結果の設計者依存度を増大しているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、設計者に依存することなく迅速でロバストなFEAを用いた理想のコイルばね形状を設計する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願明細書の記載から明らかとなるであろう本発明の様々な態様、特徴及び実施形態によれば、本願発明は、圧縮時に所定のばね特性を有するコイルばねのフリー状態における形状の設計方法であって、
a)圧縮時のコイルばね特性目標値、少なくとも圧縮時設計形状と荷重軸位置、を決定する工程と、
b)初期フリーコイルばね形状を選択する工程と、
c)圧縮形状を得るために有限要素法を用いてフリーコイルばね形状を圧縮する工程と、
d)c)工程における圧縮ばねの特性とa)工程における所望の設計圧縮特性とを比較する工程と、
e)c)工程における圧縮ばね形状の特性がa)工程における所望の設計圧縮特性の公差内となるまで、先の非圧縮ばね形状を調整した後にc)工程及びd)工程を繰り返す工程とを備えていることを特徴とするコイルばね設計の計算方法を提供する。
【0008】
さらに、本願発明は、圧縮時に所望のばね特性を有するコイルばねのフリー状態における形状の設計方法であって、
a)圧縮時のコイルばね特性目標値、少なくとも圧縮時設計形状と荷重軸位置、を決定する工程と、
b)初期フリーコイルばね形状を選択する工程と、
c)圧縮形状を得るために有限要素法を用いてフリーコイルばね形状を圧縮する工程と、
d)圧縮形状と目標圧縮形状とを比較する工程と、
e)d)工程における圧縮形状が目標圧縮形状の公差内となるまで、先の非圧縮ばね形状を調整した後にc)工程及びd)工程を繰り返す工程と、
f)圧縮時の荷重軸位置と目標荷重軸位置とを比較する工程と、
g)f)工程における荷重軸位置が目標荷重軸位置の公差内となるまで、先の非圧縮ばね形状を調整した後にc)工程及びf)工程を繰り返す工程と、
h)d)工程における圧縮形状が目標圧縮形状の公差内となり、f)工程における荷重軸位置が目標荷重軸位置の公差内となるまで、c)工程からg)工程までを繰り返す工程とを備えていることを特徴とするコイルばねの設計方法を提供する。
【0009】
さらに、本発明は、上記設計方法により製造される、応力及び重量について理想の形状を有するコイルばねを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】従来のコイルばねの設計方法を説明するフローチャートである。
【図2】本発明の一実施形態のコイルばねの設計工程を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態の圧縮形状調整工程がどのように行われるかを説明する詳細なフローチャートである。
【図4】1G高さにおける対象シート傾斜によるFLP移動量試験を示す図である。
【図5】シート傾斜とFLPとの関係を示したグラフである。
【図6】1G高さにおけるシート傾斜試験で得られたFLPに基づくフリー形状修正を説明する図である。
【図7】本発明の一実施形態のFLP調整がどのように行われるかを説明する詳細なフローチャートである。
【図8】初期フリー形状(a)及び設計圧縮形状(b)の設計繰り返しにおける初期形状を示すグラフである。
【図9】繰り返し工程における圧縮形状の差異に基づいてフリー形状がどのように更新されるかを逐次的に示すグラフである。
【図10】繰り返し工程で更新されたフリー形状によって圧縮形状がどのように変更されるかを逐次的に示すグラフである。
【図11】繰り返し工程で更新されたフリー形状によって圧縮形状がどのように変更されるかを逐次的に示すグラフである。
【図12】1G高さにおけるシート傾斜試験結果を示す図である。
【図13】シート傾斜による節点移動に基づくフリー形状修正を示すグラフである。
【図14】連続繰り返しにおけるFLP移動方法を説明するグラフである。
【図15】本発明の方法を用いたばね設計の収束歴を示すグラフである。
【図16】本発明により設計されたばねの高さ及び半径分布である。
【図17】本発明により設計されたばねの中心線とフリー形状の側面図(a)及び上面図(b)、並びに、圧縮状態の側面図(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この実施例のみに限定されない添付図を参照して本発明を説明する。
本発明は、自動的で最適化された設計者に依存しないコイルばねの設計方法に関するものである。本発明の方法は、まず従来のFEAを用いた設計では概して出力である設計圧縮形状を設計し、次いで所望の仕様を備えたばねを製造するために必要な対応フリー形状を逆に決定するリバースエンジニアリングを用いたコンセプトを利用する、FEAを用いたコイルばね設計の新コンセプトを含むものである。以下で用いるように、圧縮高さは、ばねが最も圧縮された場合のばねの高さであり、圧縮形状は、圧縮高さでのばね形状である。
【0012】
本発明によれば、設計/仕様要求を満たすために、まず理想の変形ばね形状が設計され、次いで逆にそれに対応した唯一のフリー形状が自動化されたFEA繰り返しにより決定される。第一段階で設計された変形ばね形状の一定範囲において総巻数を調べることにより、重量、応力及び製造性に関する最適なばね設計が選択される。
【0013】
本発明の方法は、設計者依存型設計のみならず、設計再現性を困難にしている設計者の主観性をも排除する。また、本発明の方法は、応力、重量及び変形形状の観点から最適なばね形状を設計する。さらに、本発明の方法は、コイルばね設計について多くのトレーニングや経験がない者にとっても容易に操作可能な自動化された設計システムを提供する。
【0014】
自動車のコイルばねの一般的な要求には、所望のばね定数、荷重及びFLP(全て1G高さにおいて)、ばね振幅中の線間干渉がないこと(特に圧縮高さにおいて)、及び、ばね周囲の他の部品に干渉がないこと(特に圧縮高さにおいて)が含まれる。
【0015】
仕様の全ては、ばねのフリー状態ではない圧縮状態において設定される。したがって、まず理想の圧縮形状を設計し、次いで仕様の全てを満たしながら設計圧縮形状に対応するフリー形状を決定することが設計者にとって望ましいと考えられる。理論上では、あるばね総巻数において圧縮形状及びばね反力ベクトルが決まると、唯一の対応フリー形状が決定される。本発明は、自動化FEA繰り返し計算に基づく独自のFLP調整のアルゴリズムを有し、設計された理想圧縮形状を実現するフリー形状を逆に決定する方法に関するものである。
【0016】
図2は本発明の一実施形態のコイルばねの設計工程を説明するフローチャートである。図2は、本発明の設計フロー全体を示している。まず、図2のブロック1〜3に示されているように、目標ばね仕様を満たすワール応力修正係数を有する静力学を用いた簡易計算によりコイルばねの初期の総巻数及び線径が決定される。図2のブロック4に示された理想圧縮形状は、線間隙間を最大にしつつ、寸法情報及びばねパッケージング空間仕様に基づいて設計される。
【0017】
一方、任意の初期フリー形状(ブロック5参照)は、図2のブロック1〜3で得られた基礎的な寸法情報に基づいてばね特性に関係なく自動的に生成される。従来の設計者により使用される初期形状に類似のこの初期フリー形状は、後述のように、設計ループにおける最適化の間に修正される。
【0018】
図2のブロック7に示された次のステップにおいて、初期フリー形状は、FEAによって圧縮され、続いて変形圧縮形状と1G荷重調整を備えた設計理想圧縮形状とを比較することにより修正される。理想圧縮形状に対応するフリー形状を決定した後に、この工程がブロック8のFLP調整に移行される。このステップ(ブロック8)における形状修正のため、圧縮形状は理想圧縮形状から変更される。そのため、理想圧縮形状に対応するフリー形状及びFLP調整がともに満たされるまで、ブロック7及び8に示されたステップが繰り返される。
【0019】
図2に示されているように、ブロック3〜8は、特定の巻数及び特定の線径のもとで実施される内部ループに含まれる。応力及び重量を最適化するために、本発明の方法は、ブロック9におけるFEA結果に基づいて総巻数及び線径を変更することができる。
【0020】
図3は本発明の一実施形態の圧縮形状の調整がどのように行われるかを説明する詳細なフローチャートである。初期フリー形状が自動的かつ任意に生成されることから、圧縮形状は繰り返しの最初の設計理想圧縮形状とは異なるであろう。圧縮形状及び設計理想圧縮形状の高さ及び半径分布の差異は、理想圧縮形状からFEA結果を差し引くことにより個々に決定される。フリー形状は、この差異を重ねることにより更新される。同時に、1G荷重を仕様に合わせるために、フリー形状高さがスケーリングされる。スケーリング量は、FEA結果から得られたばね定数に基づいて計算される。フリー形状の修正後、再びFEAを用いて圧縮される。理想とFEAとの間の圧縮形状の差異並びに目標とFEAとの間の1G荷重の差異がともに予め設定された所望の公差を満たすまで、この工程が繰り返される。
【0021】
図4は1G高さにおける対象シート傾斜による移動量試験を示す図である。FLP仕様は1G高さにおいて定められているものとする。シートとコイルとの間の接触力分布の圧力中心としてFLPが表現されることから、図4に示されているように、1G高さにおける接触力分布を変更する上下シートを傾斜することによりFLPが調整される。
【0022】
本発明のために、FLPは4要素ベクトル、すなわち上側X、上側Y、下側X及び下側Yとして表現される。
【数1】

表1に示されているように、下付のiはFLPの状態を表現している。
【0023】
【表1】

【0024】
本発明におけるシート傾斜とFLP移動との間の関係を確認するために、上下シートを個々に5度づつ回転させる予備試験を実施し、その結果を図5に示した。この関係は直線関係に近似していると結論づけられた。
【0025】
これは、FLP移動量がシート単位傾斜の結果をスケーリングすることにより得られることを意味している。上下シートを個々にX軸及びY軸周りにシート単位傾斜当たりFLPがどれくらい移動するか試験することにより、目標に合致するよう現在のFLPを移動するのに必要なシート傾斜及びその方向は、重みθiにて各シート単位傾斜試験結果の線形結合により推定できる。
【0026】
【数2】

ΔPはもとのFLP(ΔP=P−P)からの各シート単位傾斜によるFLP移動量であり、θは必要なi番目の状態のシート傾斜である。
【0027】
必要なシート傾斜が上記線形連立方程式(1)を解くことにより推定されれば、シート単位傾斜試験で得られた線形結合を節点移動にも同様に適用することにより、推定されたシート傾斜によるばねの各節点移動が推定される。次いで、決定された各節点移動は、1G高さでのシート傾斜から逆に変形するように、フリー形状から差し引かれる。これは、もとのシートと同じ位置に留まっている図5に示された傾斜シートにより強い接触位置が形成されたことを意味している。言い換えると、1G高さでのシート傾斜によって得られた接触力分布は、図6に示すように、フリー形状を修正することによってシートを傾斜することなく部分的に実現される。図6は1G高さでのFLP移動試験で得られたシート傾斜量に基づいたフリー形状の修正を示している。
【0028】
このFLP調整工程を繰り返すことにより、FLPは、最後には予め設定された所望の公差付き目標値を満たすであろう。FLP調整フローは、本発明の一実施形態のFLP調整がどのように行われるかを説明する詳細なフローチャートである図7に示される。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、FEA結果に基づき総巻数及び線径を効果的に修正するために、工程中にエキスパートシステムを備えることが可能である。単純化された実施形態においては、このシステムは、ある範囲内で線径を変更しつつコイルの総巻数を走査するだけである。各巻数の最適形状が設計ループ内で決定され、応力及び重量の観点から形状の1つが選択される。
【0030】
以下に本方法を用いて設計されたばねの一例を示す。まず、形状調整工程を説明する。初期フリー形状と設計圧縮形状は、それぞれ図8(a)及び(b)に示されており、これらは設計繰り返し計算の初期形状、及び目標圧縮形状のために準備される。この例は、傾斜及びオフセットされた下側シートを持つストラットアプリケーション用であり、圧縮形状は線間隙間を最大化すると同時に、下側シート形状に沿うように設計されたものである。図8(b)の形状が波打っているのはそのためである。
【0031】
図9〜11は、繰り返し計算工程における圧縮形状の差異に基づいてフリー形状がどのように変更されるかを逐次的に示している。図を見てわかるように、繰り返し計算によって、最初見られた目標値との大きな差が徐々に収束していく。
【0032】
繰り返し計算によりフリー形状が所望の設計圧縮形状に合致すると、工程がFLP調整工程に移行する。図12は1G高さにおけるシート傾斜試験結果を示している。シート傾斜によるFLP移動を顕著にするために、この場合には、1度のシート(単位)傾斜よりむしろX及びY軸周りに3度のシート回転を行う。
【0033】
上記結果の線形結合は、もとのFLPを所望の目標に移動するのに必要なシート傾斜量を形成する。この実施例においては、シート傾斜量は以下のように決定された。
θ(i=1〜4)=−8.5、−1.2、18.4、−3.1[度]
【0034】
FLP調整の最初の繰り返しからのシート傾斜による節点移動に基づくフリー形状修正は図13に示されている。次に、修正されたフリー形状は図8に示されたフローにしたがって1G高さに圧縮される。
【0035】
図14は連続繰り返しの間にFLPがどのように移動するかを示している。この実施例に見られるように、上側FLP及び下側FLPは、最初の繰り返しの間ではそれぞれの目標値から離れていくが、やがては許容公差内に収束する。
【0036】
図15は以下の条件でのシステム全体の収束歴を示している。
圧縮高さ公差:目標+/−1mm
圧縮半径公差:目標+/−2mm
1G荷重公差:目標+/−100N
FLP公差:目標+/−5mm
【0037】
本発明の方法は圧縮形状及びFLPを個々に調整するため、上記のように、FLPは圧縮形状調整の間に悪化し、また、圧縮形状はFLP調整の間に悪化する。しかしながら、繰り返し回数の増加に伴って両者は所望の目標に次第に収束する。この実施例においては、設計ループ全体が3分以内の計算時間で収束した。
【0038】
高さ/半径分布を図16に、中心線付きフリー形状及び圧縮状体を図17に示す。中心線は、ばね上の隣接する3節点の曲率中心を結んで決定した。図に示されているように、本発明の設計方法により決定されたフリー形状は、コイル中心線のパラメーター化可能な曲率、周期的な半径及び高さ分布のような顕著な幾何学的特徴をなんら有さない。しかしながら、本方法は、他のばね仕様を全て満たしつつ、最適化された設計圧縮形状を実現する唯一かつ最適な形状を構成する。ばね端部は1G高さにおけるばねシートを傾斜することにより形成されるが、ばね端面がフリー状態におけるシート面からある角度だけ傾いているわけではない。むしろ、ばね端部の形状は、シート単位傾斜試験の間にシート上でどのようにばね端部が変形するかに依存する。したがって、ばね形状は、パラメーター化された幾何学的値よりむしろ半径及び高さ分布の一連の節点位置データポイントとして常に表されなければならない。この意味では、本発明の方法により設計されたばねは、現存する他のいずれのばね形状とも異なっている。
【0039】
図17(c)はFEAにおけるフリー形状から圧縮された圧縮形状を示している。下端から0.75〜1.25巻は故意に高ピッチで設計され、一方、コイルの残りは、設計ループの開始において設計された線間隙間が最大になる目標形状に正確に合致するように設計された。
【0040】
例えばコイル−オン−アーム・アプリケーションのようにFLPが要求仕様にない場合には、目標FLPは均一な応力分布のために暫定的にばね中心に設定される。本発明の方法は、要求に応じて設計ループにおけるより多くのばね仕様、すなわち、異なるばね高さにおける異なるパッケージング空間仕様、製造性限界、等を満たすよう拡張することができる。本方法は、理想圧縮形状の半径分布を正確に追従する必要がない場合には、ブロック7の半径分布フィードバックループを省略することにより熱間成形のばね設計に適用することができる。
【0041】
本発明は特定の手段、材料及び実施形態を題材にして記述したが、当業者が本発明の本質的な特徴を容易に確認できる前述の記載から、上記のように本発明の目的及び趣旨を逸脱することなく様々な使用及び特徴に適合するように様々な変更及び修正がなされてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮時に所望のばね特性を有するコイルばねの非圧縮状態における形状の計算方法であって、
a)コイルばねの所望の設計圧縮特性を決定する工程と、
b)初期非圧縮コイルばね形状を選択する工程と、
c)圧縮形状を得るために有限要素法(FEA)を用いてコイルばね形状を圧縮する工程と、
d)c)工程における圧縮ばね形状の特性とa)工程における所望の設計圧縮特性とを比較する工程と、
e)c)工程における圧縮ばね形状の特性がa)工程における所望の設計圧縮特性の許容公差内となるまで、先の非圧縮ばね形状を調整した後にc)工程及びd)工程を繰り返す工程とを備えていることを特徴とするコイルばね設計の計算方法。
【請求項2】
前記圧縮特性は、ばね定数、荷重、荷重軸位置、応力及び変形形状のうち1つ以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の非圧縮状態におけるコイルばね設計の計算方法。
【請求項3】
前記圧縮形状の圧縮特性は、線間隙間、胴曲がり、空間干渉のうち1つ以上を含むことを特徴とする請求項2に記載の非圧縮状態におけるコイルばね設計の計算方法。
【請求項4】
e)工程においてなされる前記調整は、
i)c)工程における圧縮ばねの圧縮形状をa)工程の所望の設計圧縮コイルばねの圧縮形状に調整する工程と、
ii)c)工程における圧縮ばねの荷重軸位置をa)工程の所望の設計圧縮コイルばねの荷重軸位置に調整する工程と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の非圧縮状態におけるコイルばね設計の計算方法。
【請求項5】
a)工程の所望の設計圧縮コイルばねの圧縮形状へのc)工程における圧縮ばねの圧縮形状は、a)工程の所望の設計圧縮コイルばねの荷重軸位置へのc)工程における圧縮ばねの荷重軸位置とは別々に調整されることを特徴とする請求項4に記載の非圧縮状態におけるコイルばね設計の計算方法。
【請求項6】
a)工程の所望の設計圧縮コイルばねの圧縮形状へのc)工程における圧縮ばねの圧縮形状と、a)工程の所望の設計圧縮コイルばねの荷重軸位置へのc)工程における圧縮ばねの荷重軸位置とは、それぞれ交互に調整されることを特徴とする請求項5に記載の非圧縮状態におけるコイルばね設計の計算方法。
【請求項7】
a)工程の所望の設計圧縮コイルばねの圧縮形状にc)工程における圧縮ばねの圧縮形状を調整するi)工程は、高さ及び半径の差異の調整並びに荷重の調整を備えることを特徴とする請求項4に記載の非圧縮状態におけるコイルばね設計の計算方法。
【請求項8】
a)工程の所望の設計圧縮コイルばねの荷重軸位置にc)工程における圧縮ばねの荷重軸位置を調整するii)工程においてなされる調整は、シート傾斜試験及びフリー形状調整を含むことを特徴とする請求項4に記載の非圧縮状態におけるコイルばね設計の計算方法。
【請求項9】
前記シート傾斜試験は、1つ以上の軸周りの上下シートの単位角度傾斜による各荷重軸位置移動の線形結合により荷重軸位置を目標に移動するのに必要なシート傾斜を決定することを特徴とする請求項8に記載のシート傾斜試験。
【請求項10】
請求項10において決定されたシート傾斜を適用する前後における形状の差異を先のフリー形状から差し引くことによりフリー形状が調整されることを特徴とする請求項8に記載のフリー形状調整。
【請求項11】
前記b)工程における初期フリーコイルばね形状は、予め設定された高さ、巻数及び線径を有し、前記方法は、高さ、巻数及び線径のうち少なくとも1つを調整する工程をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の非圧縮状態におけるコイルばね設計の計算方法。
【請求項12】
圧縮時に所望のばね特性を有するコイルばねの非圧縮状態における形状の設計方法であって、
a)圧縮時のコイルばね特性目標値、少なくとも圧縮時設計形状と荷重軸位置、を決定する工程と、
b)初期非圧縮コイルばね形状を選択する工程と、
c)圧縮形状を得るために有限要素法(FEA)を用いてコイルばね形状を圧縮する工程と、
d)圧縮ばね形状の圧縮形状と設計圧縮形状とを比較する工程と、
e)d)工程における圧縮形状が設計圧縮形状の許容公差内となるまで、先の非圧縮ばね形状を調整した後にc)工程及びd)工程を繰り返す工程と、
f)圧縮ばね形状の荷重軸位置と設計荷重軸位置とを比較する工程と、
g)f)工程における荷重軸位置が設計荷重軸位置の許容公差内となるまで、先の非圧縮ばね形状を調整した後にc)工程及びf)工程を繰り返す工程と、
h)d)工程における圧縮形状が設計圧縮形状の許容公差内となり、f)工程における荷重軸位置が設計荷重軸位置の許容公差内となるまで、c)工程からg)工程までを繰り返す工程とを備えていることを特徴とするコイルばねの設計方法。
【請求項13】
e)工程における圧縮ばねの圧縮形状を設計圧縮形状に調整する工程は、高さ及び半径の差異の調整並びに荷重の調整を備えることを特徴とする請求項12に記載のコイルばねの設計方法。
【請求項14】
a)工程の所望の設計圧縮コイルばねの荷重軸位置にc)工程における圧縮ばねの荷重軸位置を調整するii)工程においてなされる調整は、シート傾斜試験及びフリー形状調整を含むことを特徴とする請求項4に記載の非圧縮状態におけるコイルばね設計の計算方法。
【請求項15】
前記シート傾斜試験は、1つ以上の軸周りの上下シートの単位角度傾斜による各荷重軸位置移動の線形結合により荷重軸位置を目標に移動するのに必要なシート傾斜を決定することを特徴とする請求項14に記載のシート傾斜試験。
【請求項16】
請求項10において決定されたシート傾斜を適用する前後における形状の差異を先のフリー形状から差し引くことによりフリー形状が調整されることを特徴とする請求項14に記載のフリー形状調整。
【請求項17】
a)少なくとも設計された圧縮形状及び設計された荷重軸位置を含むコイルばねの所望の設計圧縮特性を決定する工程と、
b)初期非圧縮コイルばね形状を選択する工程と、
c)圧縮形状を得るために有限要素法(FEA)を用いてコイルばね形状を圧縮する工程と、
d)圧縮ばね形状の圧縮形状と設計圧縮形状とを比較する工程と、
e)d)工程における圧縮形状が設計圧縮形状の許容公差内となるまで、先の非圧縮ばね形状を調整した後にc)工程及びd)工程を繰り返す工程と、
f)圧縮ばね形状の荷重軸位置と設計荷重軸位置とを比較する工程と、
g)f)工程における荷重軸位置が設計荷重軸位置の許容公差内となるまで、先の非圧縮ばね形状を調整した後にc)工程及びf)工程を繰り返す工程と、
h)d)工程における圧縮形状が設計圧縮形状の許容公差内となり、f)工程における荷重軸位置が設計荷重軸位置の許容公差内となるまで、c)工程からg)工程までを繰り返す工程とを備えた方法により設計されたことを特徴とするコイルばね。
【請求項18】
前記コイルばねは、コイル中心線にパラメータ化できない曲率を有することを特徴とする請求項17に記載のコイルばね。
【請求項19】
自動車サスペンションシステムの構成要素となる請求項17に記載のコイルばね。
【請求項20】
自動車サスペンションシステムの構成要素となる請求項18に記載のコイルばね。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2011−501799(P2011−501799A)
【公表日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529918(P2010−529918)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/011588
【国際公開番号】WO2009/054886
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(508054105)エヌエイチケー・インターナショナル・コーポレーション (2)
【Fターム(参考)】